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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】廃液固化剤および廃液固化方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/32 20060101AFI20241217BHJP
   A61G 12/00 20060101ALI20241217BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20241217BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20241217BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20241217BHJP
   C08L 33/02 20060101ALI20241217BHJP
   C08L 101/14 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C09K3/32 L
A61G12/00 W
C08J3/12 CEY
C08J3/24
C08K3/34
C08L33/02
C08L101/14
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021502218
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2020007216
(87)【国際公開番号】W WO2020171228
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-04-19
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-24
(31)【優先権主張番号】P 2019030680
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪本 繁
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】北畑 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 澄人
(72)【発明者】
【氏名】宇野 美沙恵
【合議体】
【審判長】光本 美奈子
【審判官】弘實 由美子
【審判官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-533213(JP,A)
【文献】特開2006-143972(JP,A)
【文献】国際公開第2018/155591(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/170605(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/158975(WO,A1)
【文献】特開2005-194376(JP,A)
【文献】特開2001-137704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/00-3/32
C08J3/00-3/28
B01J10/00-19/32
JDreamIII
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)表面架橋された吸水性樹脂粉末と、(B)該吸水性樹脂粉末の表面に存在する水不溶性カチオン性添加剤と、を含む吸水性樹脂組成物を含有する、前記吸水性樹脂組成物を廃液に沈降させて廃液のゲル化に用いる廃液固化剤による廃液の固化方法であって、
前記水不溶性のカチオン性添加剤は、コロイダルシリカ、ハイドロタルサイト、及びゼオライトよりなる群から選ばれる少なくとも1種の水不溶性無機化合物であり、
前記吸水性樹脂組成物中において、前記表面架橋された吸水性樹脂粉末100重量部あたり水不溶性カチオン性添加剤を0.01~5重量部含む、
廃液固化剤による廃液の固化方法。
【請求項2】
前記水不溶性カチオン性添加剤が粒径50μm以下の微粒子である、請求項1に記載の廃液固化剤による廃液の固化方法。
【請求項3】
遠心保持容量(CRC)が25~50g/g、
加圧下吸収倍率(AAP0.3)が15~40g/g、
加圧下吸収倍率(AAP0.7)が10~35g/g、
吸収速度(Vortex)が60秒以下、
重量平均粒子径(D50)が200~600μmである、請求項1または2に記載の廃液固化剤による廃液の固化方法。
【請求項4】
前記表面架橋された吸水性樹脂粉末は、ポリアクリル酸(塩)系架橋重合体を主成分とする請求項1~3の何れか1項に記載の廃液固化剤による廃液の固化方法。
【請求項5】
1000mlメスシリンダー(外径70mm)中の1000mlの0.9%塩化ナトリウム水溶液(23±1℃)に対する前記廃液固化剤33gの投入後30秒後の前記廃液固化剤の沈降率(質量比)が80%以上である、請求項1~4の何れか1項に記載の廃液固化剤による廃液の固化方法。
【請求項6】
1000mlメスシリンダー(外径70mm)中の1000mlの0.9%塩化ナトリウム水溶液(23℃±1℃)に対する前記廃液固化剤33gの投入後のゲル化時間が15分以内である、請求項1~5の何れか1項に記載の廃液固化剤による廃液の固化方法。
【請求項7】
1000mlメスシリンダー(外径70mm)中の1000mlの0.9%塩化ナトリウム水溶液(23℃±1℃)に対する前記廃液固化剤33gの投入後の15分後のゲル流動性が0~5mmである請求項1~6の何れか1項に記載の廃液固化剤による廃液の固化方法。
ただし、ゲル流動性は1000mlメスシリンダーを45°傾けて、30秒後の膨潤ゲルの移動距離(mm)で規定される。
【請求項8】
下記式によって求められる1000mlメスシリンダー(外径70mm)中の1000mlの0.9%塩化ナトリウム水溶液(23℃±1℃)に対する廃液固化剤33gの投入後のゲル化後の上下ゲル倍率の比が2倍以内である、請求項1~7の何れか1項に記載の廃液固化剤による廃液の固化方法。
上下ゲル倍率=上層ゲル膨潤倍率/下層ゲル膨潤倍率
(式中、
上記上層ゲル膨潤倍率と下層ゲル膨潤倍率は下記式に基づいて得られる値である。
・上層ゲル膨潤倍率[g/g]=WA/WB
式中、WA(g)は、廃液固化剤を用いて0.9質量%塩化ナトリウム水溶液を固化させた後、廃液固化剤の投入から15分後に前記1000mlのメスシリンダーの800~1000mlの位置(最上層)の内容物(膨潤ゲル)を全て取り出し、測定した質量である。
WB(g)は、上記WA(g)測定後の膨潤ゲルをステンレス製のバットに移して、180℃で16時間、熱風乾燥し、室温まで冷却後、乾燥後に測定した質量である。
・下層ゲル膨潤倍率[g/g]=WA/WB
式中、WA(g)は、廃液固化剤を用いて0.9質量%塩化ナトリウム水溶液を固化させた後、廃液固化剤の投入から15分後に前記1000mlのメスシリンダーの80~200mlの位置(最下層)の内容物(膨潤ゲル)を全て取り出し、測定した質量である。WB(g)は、上記WA(g)測定後の膨潤ゲルをステンレス製のバットに移して、180℃で16時間、熱風乾燥し、室温まで冷却後、乾燥後に測定した質量である。)
【請求項9】
さらに水に対する溶解度が10g/水100g以上である水溶性の多価金属カチオン性添加剤を含む、請求項1~8の何れか1項に記載の廃液固化剤による廃液の固化方法。
【請求項10】
廃液を含む容器に、廃液固化剤を添加する、請求項1~9の何れか1項に記載の廃液の固化方法。
【請求項11】
廃液固化剤を含む容器に、廃液を添加する請求項1~9の何れか1項に記載の廃液の固化方法。
【請求項12】
廃液が、血液を含む医療廃液である請求項1~11の何れか1項に記載の廃液の固化方法。
【請求項13】
さらに、請求項1~12の何れか1項に記載の廃液の固化方法により固化された廃液を容器ごと廃棄する、廃液の廃棄方法。
【請求項14】
前記廃液を含む容器、および/または前記廃液固化剤を含む容器は、該容器の高さ方向に縦長である請求項10または11に記載の廃液の固化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂を含む粒子状廃液固化剤および該廃液固化剤を用いた廃液固化方法に関するものである。さらに詳しくは、廃液、さらには,水が主成分の水性廃液、特に血液や体液等を含有した医療廃液を均一に固化し、かつ固化時間を短くする粒子状廃液固化剤と、その廃液固化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種産業分野から排出される廃液は増加の一途をたどっている。廃液(水性廃液)として例えば工場廃液、肉や魚などの食品加工で生ずる廃液、放射性廃液、飲料物廃液、汚泥などを含んだ廃液、尿や痰などの体液廃液、歯科医院での治療や病院での手術に伴って排出される血液、出産の際に排出される羊水や血液等の医療廃液などがある。従来からこれら廃液を安全に廃棄するために容器等に回収した後、焼却処理あるいは薬剤処理後に浄化槽内で処理されている。
【0003】
しかし、廃液を液状のままで保管、輸送等を行うと、廃液容器の破損や廃液の飛散による二次汚染の恐れがある。そのため廃液、特に医療廃液を固化(ゲル化ともいう)する方法が提案されている。例えば廃液のゲル化剤として吸水性樹脂(別称;高吸水性ポリマー)が提案されている(特許文献1~13)。吸水性樹脂は紙おむつを中心に多くの用途で使用され(非特許文献1,2)、吸水性樹脂の様々な用途のひとつに廃液固化剤が提案されている。
【0004】
具体的には効率的な廃液固化のために、吸水性樹脂を用いた廃液固化剤、廃液固化方法において、界面活性剤の添加(特許文献1~4,11)、シリカなどの無機粒子の添加(特許文献5~8)、金属石鹸などの疎水性物質の添加(特許文献8,9),アルカリ可溶性樹脂の吸水性樹脂への添加(特許文献10)、ポリアクリル酸塩などのアニオン性吸水性樹脂およびノニオン性吸水性樹脂の併用(特許文献12)、吸水性樹脂およびキレート剤を使用する方法(特許文献13)などが提案されている。
【0005】
これら特許文献1~13で、吸水性樹脂は比重(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム系吸水性樹脂で比重約1.6g/cm前後)から一般に廃液(水が主成分の水性廃液で、比重は約1.0g/cm前後)に沈降し、廃液中に沈降した廃液固化剤が廃液の下部から徐々に膨潤ゲル化して廃液全体をゲル化する(以下、沈降タイプの廃液固化剤という)。しかし、廃液を収容する容器が縦長の筒状容器(高さ10数cm~数m)である場合、沈降タイプの廃液固化剤では、一旦沈降した吸水性樹脂が縦方向(10数cm~数m)に膨潤するのに長時間が必要であった。さらに、容器内で沈降した吸水性樹脂が下部から膨潤し、徐々に容器中部、最後に容器の上部まで膨潤する。そのため、下部に比べて容器の上部付近では吸水性樹脂の量が不足すると、廃液上部のゲル化が不十分となり易かった。その結果、廃液のゲル化後も容器中で上部のゲルが流動し易かった。
【0006】
そこで、かかる問題を解決するため、従来の沈降タイプの廃液固化剤のように、廃液中に廃液固化剤を沈降させるのではなく、吸水性樹脂を疎水化するなどして、廃液固化剤の一部を廃液中に浮遊させ、一部を沈降させることで、廃液の上部および下部の両方向から廃液をゲル化させ、廃液が迅速かつ均一にゲル化するような廃液固化剤も提案されている(以下、浮遊タイプの廃液固化剤という。特許文献8,9,11)。
【0007】
しかし、特許文献8,9,11に記載の、廃液の上部および下部の両方向から廃液をゲル化させる浮遊タイプの廃液固化剤では、廃液の組成(成分や濃度)によって浮遊率が影響を受けるため、固化時間やゲル化の状態が変動する問題がある。さらに浮遊タイプの廃液固化剤は、廃液の組成(例えば、塩濃度や血液濃度など)によっては、廃液固化剤が廃液上に完全に浮遊し、固化が進まない場合があるという問題があった。このような浮遊タイプの廃液固化剤では、容器中の廃液の上部および下部が同時にゲル化し、最後に容器の中間(縦長の容器では中央部分)がゲル化する。したがって廃液固化剤の廃液への投入量が不足して、中間部分のゲル化が不十分な場合、廃液の上部はすでにゲル化(固化)しているため、追加の廃液固化剤の投入は困難であった。一般に廃液はその組成(例えば、吸水性樹脂の膨潤を阻害する塩濃度や血液濃度など)が毎回異なるため、浮遊率が変化するだけでなく、廃液固化に必要な吸水性樹脂量は毎回異なる。したがって浮遊タイプの廃液固化剤を実使用する場合は、廃液組成によらず廃液全体を完全に固化させるには、廃液量に対して過剰量の廃液固化剤の投入が必要であった。このような過剰の廃液固化剤の投入の必要性は、廃液の迅速かつ均一なゲル化を達成できるが、浮遊タイプの廃液固化剤はコスト面で不利であった。
【0008】
一方、従来の沈降タイプの廃液固化剤では依然、追加投入後もゲル化時間が遅く、かつ上層のゲル倍率が低いため、廃液固化剤の過剰の投入が必要であった。そこで、毎回変化する廃液の組成に合わせて、必要最低限の添加量で廃液全体を迅速かつ均一にゲル化する廃液固化剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2017-125132号公報
【文献】特開2016-136133号公報
【文献】特開2015-052091号公報
【文献】特開2009-167371号公報
【文献】特開平04-235783号公報
【文献】特開平06-000216号公報
【文献】特開平08-047637号公報
【文献】特開2016-203106号公報
【文献】WO2005/107940号公報
【文献】特開2006-143972号公報
【文献】WO2005/024039号公報
【文献】特開2002-119853号公報
【文献】特開平11-169451号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】Modern Superabsorbent Polymer Technology(1988),page69-103,pages251-272
【文献】高吸水性ポリマー 高分子新素材 One Point-4 高分子学会-編集 増田房義-著 共立出版、p81-110
【文献】NONWOVENS STANDARD PROCEDURES(2015年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、浮遊タイプおよび沈降タイプの廃液固化剤の上記の問題点に鑑みてなされたものである。本発明は、毎回変化する廃液の組成に合わせて、従来よりも少ない添加量、好ましくは必要最低限の添加量で廃液全体を迅速かつ均一にゲル化する廃液固化剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、特許文献1~13に記載の従来の廃液固化剤の添加剤(界面活性剤、無機粒子、キレート剤、ノニオン性吸水性樹脂、アルカリ可溶性樹脂、疎水性物質など)に代えて、カチオン性添加剤を表面架橋された吸水性樹脂の表面に使用することで上記課題を解決し、沈降タイプの廃液固化剤で初めて迅速かつ均一な廃液のゲル化を行えることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
(本発明の廃液固化剤)
すなわち、上記課題を解決するために、本発明の廃液固化剤は、(A)表面架橋された吸水性樹脂粉末と、(B)該表面架橋された吸水性樹脂粉末の表面に存在する水不溶性のカチオン性添加剤とを含む吸水性樹脂組成物を含有する。
【0014】
(本発明の廃液の固化方法)
上記課題を解決するために、本発明は、上記の廃液固化剤による廃液の固化方法を提供する。
【0015】
(本発明の廃液の廃棄方法)
上記課題を解決するために、本発明は、上記の廃液の固化方法で固化された廃液を容器ごと廃棄する、廃液の廃棄方法を提供する。
【0016】
(本発明の廃液固化剤包装体)
上記課題を解決するために、上記何れかの廃液固化剤が排出口を有する水不溶性容器で包装された廃液固化剤包装体を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、廃液の迅速かつ上層下層で均一なゲル化が可能なだけでなく、廃液の濃度に合わせて追加投入が容易な沈降タイプの廃液固化剤である。そのため、毎回変化する廃液の組成に合わせて、廃液の上部がゲル化するまで適宜、廃液固化剤を投入すればよく、毎回、必要最低限の廃液固化剤の添加量で廃液全体を迅速かつ均一にゲル化できる。浮遊タイプの廃液固化剤では毎回変化する廃液の組成に合わせて廃液固化剤の投入量を調整することや、投入量が不足した場合に追加投入することが困難である。これに対して、沈降タイプの廃液固化剤では廃液への投入量が不足しても上部が廃液のまま残るため、必要に合わせて不足分の廃液固化剤の追加投入が比較的容易である。さらに、沈降タイプの廃液固化剤には、浮遊沈降タイプの廃液固化剤のような固化時間を支配する浮遊率が廃液組成によって毎回変化するという問題もない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の廃液固化剤のゲル流動性の評価方法を示す図である。
図2】上下ゲル倍率の測定において、1000mlメスシリンダーの最上層約200ml部分、最下層約200ml部分を示す図である。
図3】浮遊タイプの廃液固化剤において、1000mlメスシリンダーの中央部8がゲル化していない状態(中央部に余剰水)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するために、本発明は、[(A)表面架橋された吸水性樹脂粉末と、(B)該吸水性樹脂粉末の表面に存在する水不溶性のカチオン性添加剤と、を含む吸水性樹脂組成物]を含有する廃液固化剤を提供する。以下、本発明についてさらに説明する。
【0020】
(1)吸水性樹脂、吸水性樹脂粉末
吸水性樹脂とは、ヒドロゲルを形成しうる水膨潤性水不溶性の架橋重合体のことであり、非特許文献3に規定の吸水倍率(CRC)(NWSP241.0.R2(15))が5g/g以上で、非特許文献3に規定の可溶分(Extractables)(NWSP270.0.R2(15))が0~50質量%、より好ましくは0~25質量%、さらに好ましくは0~20質量%、特に好ましくは0~15質量%、最も好ましくは0~10質量%のものを指す。なお、「NWSP」は非特許文献3の「Non-Woven Standard Procedures-Edition 2015」を表し、EDANA(European Disposables And Nonwovens Association、欧州不織布工業会)とINDA(Association of the Nonwoven Fabrics Industry、北米不織布工業会)が、不織布及びその製品の評価法を米国および欧州で統一して共同で発行したものであり、吸水性樹脂の標準的な測定法を示すものである。
【0021】
吸水性樹脂の製造方法は、限定されず、各種公知の製造方法を採用できる。例えば非特許文献1の第3章のp69-101や特許文献8に記載のように、架橋剤を含む単量体水溶液をラジカル重合開始剤で重合し、重合後の含水ゲルを乾燥することで得ることができる。また例えば非特許文献1や特許文献1~12(特に特許文献8,9)に記載方法で適宜、本発明の吸水性樹脂は製造できる。
以下、より具体的に説明する。
【0022】
本発明では、吸水性樹脂として、吸収特性の面から、水溶性エチレン性不飽和単量体を重合して得られる架橋構造を有する吸水性樹脂の1種または混合物が必須に用いられる。コストと廃液固化性能の面から、好ましくは、酸基、特にカルボキシル基含有の水溶性エチレン性不飽和単量体から得られる吸水性樹脂であり、より好ましくは、アクリル酸および/またはその塩(中和物)を主成分とする単量体を重合・架橋することにより得られるポリアクリル酸部分中和物架橋体である(以下、アクリル酸および/またはその塩(中和物)の混合物をアクリル酸(塩)と表し、ポリアクリル酸部分中和物架橋体をポリアクリル酸(塩)系架橋重合体と表すことがある)。本発明でアクリル酸(塩)を用いる場合には、該アクリル酸(塩)以外の単量体は、主成分として用いるアクリル酸およびその塩との合計量に対して、好ましくは0~30モル%、より好ましくは0~10モル%の割合である。この範囲であれば、適切なゲル化時間に加えて、抗菌や消臭等といった別の機能を付与すると共に、より一層安価に廃液固化剤を得ることができる。アクリル酸以外の単量体として2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロキシアルカンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩などの酸基含有不飽和単量体、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルアセトアミド、(メタ)アクリルアミドなどが適宜使用できる。本発明の廃液固化剤に好適に使用できる吸水性樹脂は、ポリアクリル酸(塩)系架橋重合体を主成分とする吸水性樹脂である。
【0023】
吸水性樹脂に含まれる酸基の中和率(全体の酸基のうちで中和された酸基のモル%)は、好ましくは10~100モル%、より好ましくは30~90モル%、さらに好ましくは40~80モル%である。上記塩を形成するためには単量体の状態で中和してもよく、未中和単量体と中和された単量体を混合してもよく、また、単量体の重合途中または重合後に重合体として中和しても良く、それらを併用しても良い。なお、本発明の数値範囲の記載、例えばAA~AA、好ましくはBB~BB、より好ましくはCC~CC、更に好ましくはDD~DD(アルファベットは数字を表す)との記載は、適宜組み合わせて上限、下限を選択できる。例えば数値範囲をAA~BBとしたり、CC~BBとするなど、好適な範囲の組み合わせから任意に上限、下限を選択して数値範囲を設定できる(以下、数値範囲の記載に適用される)。また、本明細書において、「質量」と「重量」、「質量部」と「重量部」、「質量%」と「重量%」、「質量ppm」と「重量ppm」は、それぞれ同じ意味として扱う。体積の単位「リットル」を「l」または「L」と表記する場合がある。「質量%」を「wt%」と表記することがある。
【0024】
本発明の吸水性樹脂は架橋体であり、内部架橋剤が重合時に用いられることが好ましい。内部架橋剤の具体例としては、例えば、N,N´-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アクリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネートなどである。これら内部架橋剤の使用量は物性面から前記単量体(内部架橋剤を除く)に対して、好ましくは0.001~2モル%、より好ましくは0.005~0.5モル%、さらに好ましくは0.01~0.2モル%、特に好ましくは0.03~0.15モル%の範囲内である。
【0025】
本発明の吸水性樹脂は、単量体の水溶液(以下、単量体水溶液と称する)を重合して得られる。単量体水溶液中の単量体の濃度としては、水溶液の温度や単量体によって決まり、特に限定されるものではないが、好ましくは10~70質量%、より好ましくは20~60質量%である。また、上記単量体水溶液には、水以外の溶媒を必要に応じて併用してもよく、併用して用いられる溶媒の種類は、特に限定されるものではない。さらに、重合により得られた架橋体を、上述した特許文献等に記載の方法で脱水、乾燥、必要に応じて粉砕等を行うことにより、吸水性樹脂粉末を得ることができる。
【0026】
本発明の吸水性樹脂を乾燥する場合は通常60~250℃、好ましくは100~220℃、より好ましくは120~200℃の温度範囲で行われる。乾燥時間は、架橋体の表面積、含水率、および乾燥機の種類に依存し、目的とする含水率になるよう選択される。
【0027】
本発明に用いることのできる吸水性樹脂粉末(組成物)の含水率(吸水性樹脂や廃液固化剤中に含まれる水分量で規定/吸水性樹脂又は廃液固化剤1gの180℃、3時間後の乾燥減量で測定)は特に限定されないが、より好ましくは0.2~30質量%、さらに好ましくは0.3~15質量%、特に好ましくは0.5~10質量%である。本発明の吸水性樹脂粉末は、廃液固化剤としての性能面から室温でも流動性を示す粉末である。吸水性樹脂粉末(および吸水性樹脂組成物)の好ましい粒子径は後述する。
【0028】
(2)表面架橋された吸水性樹脂粉末
本発明の廃液固化剤は、表面架橋された吸水性樹脂粉末が必須に使用される。廃液固化剤に使用される吸水性樹脂が表面架橋されていない場合、本発明の課題である迅速かつ均一な廃液のゲル化(実質的に非流動性ゲルへの廃液のゲル化)が達成されない。
【0029】
本発明の廃液固化剤に用いられる吸水性樹脂は上記の架橋重合および乾燥(又は部分乾燥)し、必要により粉砕したものに、さらに、表面に架橋(二次架橋)処理される。
【0030】
上記表面に架橋を行うための表面架橋剤としては、種々のものがあるが、物性の観点から、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、多価アミン化合物またはそのハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、モノ、ジ、またはポリオキサゾリジノン化合物、多価金属塩、アルキレンカーボネート化合物等が使用できる。本発明で用いられる表面架橋剤としては、具体的には、特許文献8,9や米国特許6228930号、同6071976号、同6254990号などに例示されている。例えば、モノ、ジまたはポリの、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,3,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、グリセリン、2-ブテン-1,4-ジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノールなどの多価アルコール化合物、モノ、ジまたはポリのエチレングリコールジグリシジルエーテルやグリシドールなどのエポキシ化合物、2-オキサゾリジノンなどのオキサゾリジノン化合物、エチレンカーボネートなどのアルキレンカーボネート化合物等が挙げられるが、特に限定されるものではない。本発明の効果を最大限にするために、これらの架橋剤の中でも少なくとも多価アルコールを用いることが好ましく、炭素数2~10、好ましくは炭素数3~8の多価アルコールがより好ましく用いられる。
【0031】
表面架橋剤の使用量は吸水性樹脂100質量部に対して通常0.001~10質量部、好ましくは0.01~5質量部である。本発明において、表面架橋剤を添加する際には水を用いることが好ましく、表面架橋剤の水溶液を吸水性樹脂に添加し混合することが好ましい。この際、使用される水の量は吸水性樹脂100質量部に対し0.5~20質量部、好ましくは0.5~10質量部の範囲である。また、本発明において、水以外に親水性有機溶媒を用いてもよい。親水性有機溶媒の量は、吸水性樹脂に対して0~10質量部、好ましくは0~5質量部、より好ましくは0~3質量部の範囲である。
【0032】
また、吸水性樹脂が逆相懸濁重合で得られる場合には、重合終了後に共沸脱水途中および/または共沸脱水終了時において、例えば吸水性樹脂の含水率が5~50質量%、好ましくは5~40質量%、より好ましくは5~30質量%で上記表面架橋剤を疎水性有機溶媒中に分散させることにより、表面が架橋処理された吸水性樹脂を得ることができる。
【0033】
表面架橋剤を混合後の吸水性樹脂は好ましくは加熱処理される。上記加熱処理を行う際の条件としては、吸水性樹脂の温度もしくは熱媒温度は通常60~280℃、好ましくは100~250℃、より好ましくは150~240℃であり、加熱時間は好ましくは1分~2時間である。
【0034】
(3)カチオン性添加剤
本発明の廃液固化剤は、吸水性樹脂組成物を含有する。該吸水性樹脂組成物は(A)表面架橋された吸水性樹脂粉末と、(B)該吸水性樹脂粉末の表面に存在する水不溶性のカチオン性添加剤と、を含有する。本発明の吸水性樹脂組成物は、(A)上記(2)の表面架橋された吸水性樹脂粉末の表面に必須に(B)水不溶性のカチオン性添加剤を含むことが好ましい。吸水性樹脂粉末の表面に水不溶性のカチオン性添加剤を「含む」、或いは水不溶性のカチオン性添加剤が「存在する」とは、吸水性樹脂粉末の表面にカチオン性添加剤が付着している状態、吸水性樹脂粉末内部取り込まれたカチオン性添加剤の一部が吸水性樹脂粉末の表面に出現している状態など、カチオン性添加剤が吸水性樹脂粉末の表面に存在していることをいう。またカチオン性添加剤は吸水性樹脂粉末の表面の少なくとも一部に存在していればよく、好ましくは表面近傍に局在化していればよい。なお、水不溶性のカチオン性添加剤の存在状態は、蛍光X線で確認できる。具体的には、蛍光X線分析により、吸水性樹脂組成物中の金属カチオン量を測定することができ、必要に応じて粉砕や磨砕等の前処理を行った吸水性樹脂粉末の測定を行うことにより、吸水性樹脂粉末の表面に水不溶性のカチオン性添加剤が存在することを確認することができる。
【0035】
また本発明の廃液固化剤に含有される吸水性樹脂組成物は(A)表面架橋された吸水性樹脂粉末が主成分であり、(B)該吸水性樹脂粉末の表面に水不溶性のカチオン性添加剤が含まれている構成も好ましい実施態様である。表面架橋された吸水性樹脂粉末が主成分であるとは、吸水性樹脂組成物中の該吸水性樹脂粉末の含有量が50~100質量%未満、好ましくは70~99質量%、さらに好ましくは80~98質量%であり、該吸水性樹脂粉末以外の成分として上記カチオン性添加剤が含まれる。なお、吸水性樹脂組成物は、吸水性樹脂組成物と水不溶性のカチオン性添加剤とで構成されていることが好ましいが、その他成分として、下記(4-1)に記載されている添加剤が含まれていてもよい。
【0036】
本発明の廃液固化剤には、表面架橋された吸水性樹脂粉末と水不溶性カチオン性添加剤が必須に使用される。カチオン性添加剤が使用されない場合、沈降タイプの廃液固化剤について、本発明の課題である迅速かつ均一な廃液のゲル化(実施的に非流動性ゲルへの廃液のゲル化)が達成されない。本発明では特許文献1~13に記載の従来の添加剤に代わって、表面架橋された吸水性樹脂粉末に水不溶性のカチオン性添加剤を使用することで、廃液固化剤は沈降して且つ迅速かつ均一にゲル化できる。そのため、毎回変化する廃液の組成に合わせて、必要最低限の添加量で廃液全体を迅速かつ均一にゲル化する廃液固化剤を提供できる。
【0037】
(3-1)水不溶性のカチオン性添加剤
(カチオン)
本発明の課題を解決するため、本発明でカチオン性添加剤は特定のカチオンを含む化合物であればよく、好ましく3価以上の金属カチオン、代表的にはアルミニウムカチオンを含む化合物であればよい。カチオン性添加剤がアルミニウムカチオンを含む無機系添加剤であり、カウンターアニオンは有機アニオンでもよく無機アニオンでもよいが、好ましくは無機アニオンをカウンターに持つ無機化合物であるカチオン性無機添加剤が使用される。
【0038】
(溶解度)
本発明の課題を解決するため、カチオン性添加剤は水不溶性である。なお、水不溶性とは、水難溶性も含み、具体的には水(23℃)に対する添加剤の溶解度が10g/水100g以下であり、好ましくは5g/水100g以下であり、さらには1g/水100g以下、0.1g/100g以下の順に好ましい。また、水不溶性のカチオン性添加剤はカチオン性微粒子であることが好ましい。水不溶性のカチオン性微粒子はコロイド状態(ゾル)やスラリー状態を含め水分散状態でもあってもよく、必要により界面活性剤や分散剤で水に分散させてもよい。カチオン性コロイダルシリカなどが好適に水不溶性のカチオン性微粒子として使用される。
【0039】
(粒径)
本発明の課題を解決するため、カチオン性添加剤が微粒子として使用される場合、その粒径は50μm以下、30μm以下、10μm以下、5μm以下、2μm以下、1μm以下の順に好ましい。下限は10nm程度である。なお、カチオン性添加剤の粒径、特に体積平均粒子径は、「レーザー回折散乱法」(例えば、日機装社製、商品名:マイクロトラックMT3000II粒度分析計を使用して測定)で測定することができる。
【0040】
(代表的なカチオン性添加剤)
本発明で好適に使用されるカチオン性添加剤として、カチオン性コロイダルシリカ、ハイドロタルサイト、ゼオライト、アルミニウム塩から選ばれる1種以上の無機微粒子が挙げられる。これらのカチオン性添加剤として、カチオン性コロイダルシリカ、ハイドロタルサイト、ゼオライトが特に好ましい。また、正電荷を帯びていることが好ましく、正電荷を帯びたカチオン性添加剤として、カチオン性コロイダルシリカ、ハイドロタルサイトが挙げられ、好適に使用することができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また以下の具体的な例示において複数例示されているときは、1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
(カチオン性コロイダルシリカ)
カチオン性コロイダルシリカとしては、二酸化ケイ素粒子表面をアルミニウムイオンで被覆されたカチオン性コロイダルシリカが使用できる。カチオン性コロイダルシリカとしては、アルミニウムイオンにより被覆されていることにより正電荷を帯びた微粒子であることが好ましい。また、ゼータ電位が正の値であり、通常は+60mV以下、好適には+5~+55mVの範囲にあるカチオン性コロイダルシリカが好ましい。このような、カチオン性コロイダルシリカの製法は、特に限定はされないが、例えば特開平2-172812号公報に記載されている方法等、公知の製法が挙げられる。
【0042】
前記カチオン性コロイダルシリカのカチオン化の方法は、特に限定はない。アルミニウムイオン等の多価金属イオンの化合物を反応させて、コロイダルシリカの表面をアルミニウムイオンで被覆する方法が一般的であるが、さらに、アンモニウム基を持つシランカップリング剤をコロイダルシリカの表面に付加して、カチオン性コロイダルシリカに変性してもよい。
【0043】
前記コロイダルシリカは、市販品でも入手でき、Merck製のKlebosol 20H12、Klebosol 30CAL25、Klebosol 30CALなど商品等が好ましく例示できる。
【0044】
(ハイドロタルサイト)
ハイドロタルサイトとは、2価及び3価の2種類の金属カチオンと水酸基とを含有する多元金属化合物であり、下記一般式(1)
(1)
【0045】
(M1 2+は2価の金属カチオン、M2 3+は3価の金属カチオン、An-はn価の陰イオン、H2Oは水を表す)で表される層状化合物の構造であり、二価の金属カチオンが一部3価の金属カチオンに置き換えられているため、そのホスト層は正電荷を帯びていることが知られている。一般式(1)における2価の金属カチオンと3価の金属カチオンとの比率は、xが0.2~0.75の範囲が好ましく、0.25~0.7の範囲がより好ましく、0.25~0.5の範囲がさらに好ましい。また、陰イオンとしては、OH-、F-、Cl-、Br-、NO3 -、CO3 2-、SO4 2-、Fe(CN)6 3-、CH3COO-、シュウ酸イオンまたはサリチル酸イオン等が挙げられるが、炭酸アニオンが好ましい。また、mは、0より大きい実数で、0<m≦10であることが好ましい。
【0046】
形状は特に制限されないが、球状(粉末状を含む)であることが好ましい。また、一定の粒度であることが好ましく、体積平均粒子径は2μm以下が好ましく、1.5μm以下がより好ましく、1μm以下が更に好ましい。粒子径が大きくなると、本発明の課題である迅速かつ均一な廃液の固化を示すためには添加量を多くする必要があり、その結果、得られた廃液固化剤の性能を損なう事がある。小さすぎると添加工程時の作業性が低下したり、十分な性能を得られない恐れがあるので、体積平均粒子径は0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましい。
更に、層間に有機化合物をインターカレーションしていても良く、吸水性樹脂等との混合性を高めるための表面処理が施されていても良い。
【0047】
ハイドロタルサイトの好ましい構造式として、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2Oや、Mg4Al2(OH)12CO3・3H2O等が挙げられ、具体的には、協和化学工業株式会社製のDHT-4H、DHT-6、堺化学工業株式会社製のSTABIACE HT-1-NC、STABIACE HT-P等が挙げられる。
【0048】
(ゼオライト)
ゼオライトは、構造中にSiO4およびAlO4四面体(以下両者をまとめてTO4四面体と呼ぶ)が頂点酸素を共有し3次元に無限に連なった網目状構造を有する結晶性含水アルミノケイ酸塩である。
本発明に用いることが出来るゼオライトは、アルミニウムカチオンを含んでいればよく、天然ゼオライト及び合成ゼオライトのいずれを用いることも可能であるが、好ましくは商業的に安定に入手しうる合成ゼオライトである。具体的には、例えば、A型ゼオライト(Na12 (AlO2)12(SiO2)12・27H2O)、X型ゼオライトゼオライト(Na86 (AlO2)86(SiO2)106・264H2O) 、Y型ゼオライト(Na56(AlO2)56(SiO2)136 ・250H2O) 、L型ゼオライト(K9(AlO2)9(SiO2)27 ・22H2O)、オメガ型ゼオライト(Na6.8TMA1.6(AlO2)8(SiO2)28 ・21H2O 、TMA:tetramethyl-ammonium) 、ZSM-5((Na,TPA)3 (AlO2)3(SiO2)93・16H2O 、TPA:tetrapropyl-ammonium) 等が挙げられる。
【0049】
(アルミニウム塩)
本発明の水不溶性のカチオン性微粒子として、アルミニウム塩を用いることもできる。水不溶性のアルミニウム塩として、乳酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種が使用できる。なお、これらアルミニウム塩は、粉体として使用しても良いし、前駆体を水中で反応させて水分散体として調製したものをスラリーまたは粉体として使用しても良い。
【0050】
(3-2)カチオン性添加剤の含有量
本発明の吸水性樹脂組成物でカチオン性添加剤の添加量は、表面架橋された吸水性樹脂粉末に対して0.01~5質量%が好ましく、より好ましくは0.01~4.5質量%であり、更に好ましくは0.1~4.5質量%であり、より更に好ましくは0.1~4質量%であり、特に好ましくは0.15~3.5質量%である。
水不溶性カチオン性添加剤の添加量が0.01質量%未満では、迅速かつ均一な廃液の固化で十分な効果が得られないことがあり、5質量%を超えて添加しても添加量に見合うだけの効果は得られない。
【0051】
(4)吸水性樹脂組成物を含む廃液固化剤
本発明の廃液固化剤は表面架橋された吸水性樹脂粉末が主成分であることが好ましく、吸水性樹脂粉末の含有量は廃液固化剤中に50~100質量%未満、好ましくは70~99質量%、さらに好ましくは80~98質量%とされ、吸水性樹脂粉末以外の成分として上記カチオン性添加剤が用いられる。
【0052】
(4-1)その他添加剤
本発明の廃液固化剤は上記水不溶性カチオン性添加剤に加え、さらに好ましくは、本発明の課題をより解決するために、通液性の観点から、水溶性アルミニウム塩などの水溶性のカチオン性多価金属添加剤(水への溶解度が上記不溶性カチオン性添加剤以上の水溶性のカチオン性多価金属添加剤)を含んでも良い。また廃液固化剤は水を含んでいることが好ましい。その他、さらに、必要に応じて、消臭剤、抗菌剤、香料、発泡剤、顔料、染料、可塑剤、粘着剤、界面活性剤、肥料、酸化剤、タンパク架橋剤、還元剤、水、塩類、キレート剤、殺菌剤、ポリエチレングリコールやポリエチレンイミンなどの親水性高分子、ポリエステル樹脂やユリア樹脂などの熱硬化性樹脂等を添加する等、種々の機能を付与する添加剤を含んでいてもよい。
【0053】
これら水不溶性カチオン性添加剤以外のその他添加剤(例えば、水)の使用量は吸水性樹脂粉末100質量部に対して通常0~30質量部、好ましくは0~10質量の範囲、より好ましくは0~1質量部の範囲である。
【0054】
(4-2)廃液固化剤の製造方法
本発明の廃液固化剤の製造方法は、水溶性エチレン性不飽和単量体を重合することによって得られる架橋構造を有する吸水性樹脂粉末を必須とする粒子状廃液固化剤の製造方法であって、上記吸水性樹脂粉末の表面架橋前、表面架橋中、表面架橋後のいずれかに上記カチオン性添加剤を混合して、表面架橋された吸水性樹脂の表面にカチオン性添加剤を存在させる。
【0055】
本発明で用いるカチオン性添加剤が粉体である場合、例えば粉体そのままで表面架橋前、表面架橋中、表面架橋後のいずれかの吸水性樹脂粉末に直接混合させる方法や、あるいは上記表面架橋剤と水および必要に応じて親水性有機溶媒が混合された表面架橋剤溶液に該カチオン性添加剤をスラリー状に分散させて吸水性樹脂粉末に混合する手法や、水や親水性有機溶媒中に該カチオン性添加剤をスラリー状に分散させて表面架橋前、表面架橋中、表面架橋後のいずれかの吸水性樹脂に混合する手法が用いられる。
【0056】
カチオン性添加剤をスラリー状で分散させて吸水性樹脂粉末に混合する場合、必要により用いる水、または水と親水性有機溶媒を含む水分散液等の添加量は、吸水性樹脂の種類や粒度によってその最適量は異なるが、通常、水の場合、吸水性樹脂粉末の固形分100質量部に対して、10質量部以下、好ましくは1~5質量部の範囲である。また使用される親水性有機溶媒の量は、同様に通常、吸水性樹脂粉末の固形分100質量部に対して、10質量部以下、好ましくは0.1~5質量部の範囲である。また、そのスラリー中のカチオン性添加剤質濃度は使用する該添加剤や分散溶媒の種類、スラリーの粘性により適宜選択され、特に限定されるものではないが、通常0.001~30質量%、好ましくは0.01~10質量%の範囲である。カチオン性添加剤と混合する際の吸水性樹脂の粉体温度は通常室温以上で混合されるが、粒子状廃液固化剤の安定した吸液特性や吸湿時の流動性を得るためには、好ましくは40~180℃、より好ましくは50~100℃で混合される。
【0057】
本発明において吸水性樹脂粉末とカチオン性添加剤を含んだ液体、粉末および/またはスラリー溶液とを混合する場合に使用する装置としては、公知の装置でよく、例えば、円筒型混合機、スクリュー型混合機、スクリュー型押出機、タービュライザー、ナウター型混合機、V型混合機、リボン型混合機、双腕型ニーダー、流動式混合機、気流型混合機、回転円盤型混合機、ロールミキサー、転動式混合機などを挙げることができ、混合の際の速度は高速、低速を問わない。なお、これらの混合機は上述した吸水性樹脂の表面架橋を行う際での表面架橋剤の混合にも使用できる。
【0058】
(5)吸水性樹脂および吸水性樹脂組成物の物性
本発明の課題を解決するため、本発明の表面架橋された吸水性樹脂粉末、吸水性樹脂組成物、および吸水性樹脂組成物を含む廃液固化剤(以下、(5-1)~(5-6)に共通して「廃液固化剤」と称する)は下記の物性を更に満たすことが好ましい。以下、代表的な物性は非特許文献3のNONWOVENS STANDARD PROCEDURES(2015年)で規定でき、同様の測定法は特許文献8,9にも記載されている。
【0059】
(5-1)CRC(NWSP241.0.R2(15))
本発明の廃液固化剤の吸収倍率(CRC)は生理食塩水に対して通常10g/g以上、好ましくは25g/g以上、より好ましくは30g/g以上、さらに好ましくは33g/g以上とされる。上限は特に問わないが、通常100g/g程度,50g/g程度で十分である。25~50g/gの範囲に好適に調整される。吸収倍率(CRC)が低い場合、多量の固化剤が必要である上、固化時間も長くなる。上述した通り、吸水性樹脂の内部架橋および表面架橋を適宜調整することにより、上記範囲の吸水倍率(CRC)とすることができる。
【0060】
(5-2)AAP(Absorption Against Pressure)(NWSP242.0.R2(15))
本発明の廃液固化剤の加圧下吸収倍率(AAP0.3)は好ましくは15~40g/g、加圧下吸収倍率(AAP0.7)が10~35g/gである。
【0061】
加圧下吸収倍率(AAP0.3)(吸水性樹脂0.9gを、0.9質量%の塩化ナトリウム水溶液に対して2.06kPa荷重下で1時間膨潤させた後の吸水倍率)は、24[g/g]以上が好ましく、26[g/g]以上がより好ましく、28[g/g]以上が更に好ましく、30[g/g]以上が最も好ましい。AAP0.3の上限値は、特に限定されないが、他の物性とのバランスから、40[g/g]以下が好ましく、38[g/g]以下がより好ましく、35[g/g]以下が更に好ましい。
【0062】
加圧下吸収倍率(AAP0.7)(吸水性樹脂0.9gを、0.9質量%の塩化ナトリウム水溶液に対して4.83kPa荷重下で1時間膨潤させた後の吸水倍率)は、20[g/g]以上が好ましく、22[g/g]以上がより好ましく、24[g/g]以上が更に好ましい。AAP0.7の上限値は、特に限定されないが、他の物性とのバランスから、35[g/g]以下が好ましく、30[g/g]以下がより好ましく、28[g/g]以下が更に好ましい。
【0063】
(5-3)重量平均粒子径(D50)、PSD(粒度分布)NWSP 220.0.R2(15)
本発明の廃液固化剤の重量平均粒子径(D50)は、200~600μm、好ましくは250~500μm、より好ましくは280~500μm、更に好ましくは300~450μmである。また、目開き150μmの篩(JIS標準篩)を通過する微細な粒子(吸水性樹脂の微粉)は、全体に対して、好ましくは0~25重量%、より好ましくは0~15重量%、更に好ましくは0~10重量%である。また目開き850μm以上(或いは710μm以上)(JIS標準篩)を通過しない巨大な粒子は少ないほどよく、吸水性樹脂粒子全体に対して、好ましくは0~3重量%、より好ましくは0~1重量%、更に好ましくは0重量%である。
【0064】
また本発明では廃液固化剤の粒子径が150μm以上850μm未満である粒子の割合、更には150μm以上710μm未満である粒子の割合が、吸水性樹脂粉末全体に対して、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上(上限は100重量%)に調整される。更に、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.20~0.50、より好ましくは0.25~0.50、更に好ましくは0.25~0.45、特に好ましくは0.30~0.40である。これらの粒度は、欧州特許第0349240号明細書7頁25~43行に記載された「(1) Average Particle Diameter and Distribution of Particle Diameter」と同様の方法で測定できる。
【0065】
(5-4)Vortex
本発明の廃液固化剤の吸収速度(Vortex)は好ましくは60秒以下、50秒以下、40秒以下、30秒以下である。なお、VortexはJIS K7224に記載される、高吸水性樹脂の吸水速度試験法に準拠し、液温30℃の0.9%塩化ナトリウム水溶液に対する吸収時間で規定される。
【0066】
(5-5)「Moisture Content」(NWSP230.0.R2(15))
「Moisture Content」は、吸水性樹脂の含水率を意味し、具体的には、廃液固化剤1gを105℃で3時間乾燥した際の乾燥減量から算出した値(単位;質量%)である。なお、乾燥温度を180℃に変更しても良い。本発明の表面架橋された吸水性樹脂粉末、吸水性樹脂組成物、および吸水性樹脂組成物からなる廃液固化剤の含水率は、乾燥温度を1gで180℃に変更した測定条件で、0%~20%、より好ましくは1%~10%である。
【0067】
(5-6)さらに好適な物性
本発明の廃液固化剤は、遠心保持容量(CRC)が25~50g/g、加圧下吸収倍率(AAP0.3)が15~40g/g、加圧下吸収倍率(AAP0.7)が10~35g/g、吸収速度(Vortex)が60秒以下、重量平均粒子径(D50)が200~600μmの吸水性樹脂粉末を主成分として含有し、さらに上記の範囲を満たすものであることが好ましい。
【0068】
(6)吸水性樹脂組成物を含有する廃液固化剤の固化性能
本発明の課題を解決するため、本発明の吸水性樹脂組成物を含有する廃液固化剤は下記の物性を更に満たすことが好ましい。
【0069】
(6-1)廃液固化剤の沈降率
本発明の廃液固化剤は、1000mlメスシリンダー(外径70mm)中の1000mlの0.9%塩化ナトリウム水溶液(23±1℃、更に好ましくは23±0.5℃)に対する廃液固化剤33gの投入後30秒での沈降率が80%以上であることが好ましい。
【0070】
浮遊状態、および沈降状態の判定としては、23±1℃の0.90質量%塩化ナトリウム水溶液1000mlを入れた、軸方向を鉛直として置かれた(水平な架台上に設置した)有効容量1000ml(外径70mm)のメスシリンダー内に、廃液固化剤33gを一括で投入した後、30秒経過後の状態で規定し、当該メスシリンダーの500ml位置より上部に存在する廃液固化剤を浮遊状態、500ml位置より下部に存在する廃液固化剤を沈降状態とする。
【0071】
本発明の廃液固化剤の沈降率は、具体的には実施例で記載する方法で評価すればよいが、投入した廃液固化剤の80質量%超~100質量%であることが好ましく、さらに好ましい範囲としては85質量%超、90質量%超、95%超、98質量%超の順である。
【0072】
(6-2)廃液固化剤のゲル化時間
本発明の廃液固化剤のゲル化時間は、具体的には実施例で記載する方法で評価すればよいが、水平な架台上に設置した1000mlメスシリンダー(外径70mm)に入れた1000mlの0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(23±1℃、更に好ましくは23±0.5℃)に対する廃液固化剤33gの投入後のゲル化時間(廃液固化剤が吸液し切るまでの時間)で規定し、好ましくは15分以内であり、より好ましくは13分以内、さらに好ましくは10分以内である。ゲル化時間が15分を超える場合、実使用で不便をきたす場合があり、更にはゲル化に至らない場合がある。
【0073】
(6-3)廃液固化剤のゲル流動性
本発明の廃液固化剤のゲル流動性は、具体的には実施例で記載する方法で評価すればよいが、水平な架台上に設置した1000mlメスシリンダー(外径70mm)中の1000mlの0.9質量%生理食塩水(23±1℃、更に好ましくは23±0.5℃)に対する廃液固化剤33gの投入後の15分後のゲル流動性で規定する。より具体的には、図1に示すように、1000mlメスシリンダーを45°傾けて、30秒後の膨潤ゲルの移動距離(メスシリンダーに沿った距離、mm)で規定される。当該ゲル流動性は好ましくは0~5mmである。より好ましくは3mm以内、最も好ましくは1mm以内である。
【0074】
(6-4)廃液固化剤の上下ゲル倍率の比
本発明の廃液固化剤の上下ゲル倍率の比は、2倍以内であることが好ましい。上下ゲル倍率の比は、具体的には実施例で記載する方法で評価すればよいが、図2に示すように、水平な架台上に設置した1000mlメスシリンダー(外径70mm)中の1000mlの0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(23±1℃、更に好ましくは23±0.5℃)に対して、廃液固化剤33gを投入し、ゲル化後の上下ゲル倍率の比で規定する。ゲル化後の上下ゲル倍率の比は、1000mlメスシリンダー中の最上層約200ml部分に存在する膨潤ゲルと最下層約200ml部分に存在する膨潤ゲルの吸収倍率の比率で規定され、具体的には下記式で算出できる。
上下ゲル倍率=上層ゲル膨潤倍率/下層ゲル膨潤倍率
【0075】
ゲル化後の上下ゲル倍率の比の好ましい範囲は、5倍以内、さらには4倍以内、3倍以内、2倍以内、1.8倍以内、1.6倍以内、1.4倍以内、1.2倍以内、特に1.1倍以内が好ましい。上下ゲル倍率が5.0倍を超える場合、吸水性樹脂が不均一に分布していることになり、吸水性樹脂濃度が低い部分では廃液が固化に至らない恐れがあり、追加の廃液固化剤を投入する必要が生じる。
【0076】
(7)廃液
本発明の廃液固化剤で固化(ゲル化、流動性のある液体を全て吸液し、流動性のないゲル状態とする)できる廃液としては、吸水性樹脂が膨潤ゲル化しうる限り特に問わず、廃棄を前提とする液であればよく、廃液中で水を主成分とし、その他、血液中の各種成分や水以外の溶媒、無機塩、有機物などが含まれた排液である。当該廃液中の水の含有量としては、50重量%以上であればよく、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上が水であることが好ましい。なお、水とは血液中の水、排水や汚泥に含まれる水、尿中の水など、当該廃液中に含まれる水の合計量を指す。また、廃液の温度は液体である限り特に問わないが、通常は室温程度である。
【0077】
廃液としては、工場廃液、肉や魚などの食品加工で生ずる廃液、糞尿廃液、放射性廃液、飲料物廃液、尿や痰などの体液廃液、汚泥を含む泥水、歯科医院での治療や病院での手術、治療や出産の際に排出される羊水や血液等を含む医療廃液などがあり、好ましくは、医療廃液の固化に使用される。さらには、血液を含む医療廃液の固化に好適に使用できる。これらを安全に廃棄するために容器に回収した後、焼却処理あるいは薬剤処理後に浄化槽内で処理される。
【0078】
(8)廃液固化剤による、廃液の固化方法および廃棄方法
本発明の廃液固化方法は、廃液に処理剤を投入することによって前記廃液をゲル状に固化させる廃液の処理方法であって、処理剤として前述した本発明の廃液固化剤を用いるものである。本発明の廃液固化剤は、飲料廃液、工場廃液、放射線廃液、など各種の廃液の固化に使用でき、廃液中に有機物や固体分散物等が含まれていてもよく、その迅速かつ均一な固化から、従来の問題を多く抱えた医療廃液の固化に好ましく使用される。廃液とは、廃棄するための水性液もしくは濾漏した水性液を指す。水性液は例えば上記である。
【0079】
本発明の固化方法において、廃液を収容又は保管する種々の容器形状(縦長、横長など)や固化剤の投入方法(廃液への一括投入/分割投入、廃液への前投入/後投入)に関しては公知の方法が広く適用できる。また、漏洩した廃液を固化する場合は、漏洩した水性液に本発明の廃液固化剤を散布することにより固化させることができる。本発明の廃液固化剤は、その迅速かつ均一な固化から、好ましくは縦長容器(メスシリンダー形状の容器)中の廃液の固化に好ましく使用される。縦長容器として、当該容器の高さは10cm以上、さらには20cm以上であり、高さと底面の直径の比が1.5倍以上さらには5倍以上の容器である(容器の底面が円でない場合は面積で円の直径に換算)ことが好ましい。
【0080】
なお、廃液固化剤の投入には、廃液固化剤を粉体のまま直接投入してもよいし、水溶性、水壊性ないし透水性の容器又は袋に廃液固化剤を入れた状態で、投入してもよい。
本発明の方法で固化された廃液は容器から取り出してもよいが、好ましくは廃液を収容した容器(ただし多重容器の場合は廃液と接している内側の容器)ごと廃棄されることで衛生的に処理できる。
【0081】
(9)廃液固化剤を包装した廃液固化剤包装体
本発明の廃液固化用包装体は、排出口を有する水不溶性容器中に包装された廃液固化剤の廃液への投入用包装体である。廃液固化を行う場合は、当該排出口を開放して、粉体状の廃液固化剤を廃液が収容された容器に投入することができる。
【0082】
本発明の包装体において、廃液固化材の包装に用いる容器や包装材の形状や材質は、特に限定されるものではなく、水不溶性の包装材であればよい。包装体容器の大きさとしては、10~1,000gの廃液固化剤を密封することができ、その一部を開放して、そこから廃液固化剤を取り出せるものが好ましく、例えば、ポリ広口ビン、ポリ狭口ビン、ポリエチレン製、ポリプロピレン製などの袋等が挙げられる。
【0083】
以上のように、本発明の廃液固化剤は、血液を含む医療廃液を処理する廃液固化剤として好適に用いられる。また本発明は廃液固化剤による廃液固化方法も含まれる。廃液の固化方法として例えば廃液を含む容器に、本発明の廃液固化剤を添加してもよい。また廃液固化剤を含む容器に、廃液を添加してもよい。このような廃液の固化方法における廃液として、血液を含む医療廃液が例示される。更に本発明には廃液の廃棄方法も含まれる。例えば上記廃液の固化方法により固化された廃液を容器ごと廃棄してもよい。また本発明には廃液固化剤包装体も含まれており、上記廃液固化剤が排出口を有する水不溶性容器で包装されていてもよい。
【0084】
本願は、2019年2月22日に出願された日本国特許出願第2019-030680号に基づく優先権の利益を主張するものである。2019年2月22日に出願された日本国特許出願第2019-030680号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例
【0085】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限りこれらの実施例等に限定されるものではない。なお、実施例の物性は非特許文献3のEDANA NONWOVENS STANDARD PROCEDURES(2015年)および特許文献8に準じて測定され、EDANAに規定のない物性は下記(1)~(4)の記載に基づいて測定される。
【0086】
(1)ゲル化時間
本実施例の廃液固化剤のゲル化時間は、1000mlメスシリンダー(外径70mm)中の1000mlの0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(23±1℃)に対する廃液固化剤33gの投入後のゲル化時間で規定した。
【0087】
具体的には、以下の方法でゲル化時間の測定(固化試験)を行った。0.9質量%塩化ナトリウム水溶液1000mlを入れた、水平な架台上に設置した有効容量1000mlのメスシリンダー(外径70mm、高さ420mm、SIBATA製、理化学研究機器総合カタログ2015、A-7000記載、コードNo9189-11)の上部に、JIS K3362記載の見かけ密度測定用ロートを、その下部口の液面からの高さが40mmになるように設置した。該ロートの下部口を開けた状態で、該ロート内に静かに廃液固化剤33gを投入し、0.9%塩化ナトリウム水溶液を吸液し切るまでの時間をゲル化時間とした。測定時の塩化ナトリウム水溶液の温度は23±1℃で行った。
【0088】
(2)固化剤沈降率
本実施例の廃液固化剤の沈降率は、1000mlメスシリンダー(外径70mm)中の1000mlの0.9%塩化ナトリウム水溶液(23±1℃)に対する廃液固化剤33gの投入後30秒での沈降率で規定した。
【0089】
上記(1)の固化試験において、廃液固化剤の投入から30秒経過後、0.9%塩化ナトリウム水溶液1000mlのメスシリンダーの上部500mlおよび下部500mlを取り出し、廃液固化剤およびその膨潤ゲルを該JIS目開き45μmふるい(内径300mm)で濾過した。その後、該JIS目開き45μmのふるい(内径300mm)を180℃で16時間、熱風乾燥することで廃液固化剤に由来する固形分重量を求めることで、上層に浮遊する廃液固化剤および下層に沈降する廃液固化剤33gの重量比率(固化剤沈降率)を下式(1)より求めた。
固化剤沈降率(%)=下層500mL分の固形分重量(g)/33(g)×100(式1)
なお、廃液固化剤の投入30秒後に、廃液固化剤全量の沈降が目視確認できた場合は100%としても良い。
【0090】
(3)ゲル流動性
本実施例の廃液固化剤のゲル流動性は、1000mlメスシリンダー(外径70mm)中の1000mlの0.9%生理食塩水(23±1℃)に対する廃液固化剤33gの投入後の15分後のゲル流動性で規定した。
【0091】
上記(1)の固化試験と同様の方法で、廃液固化剤を用いて0.9%塩化ナトリウム水溶液を固化させた後、廃液固化剤の投入から15分経過後に、1000mlメスシリンダー中の膨潤ゲルを45°傾けて30秒静置し、膨潤ゲルの移動距離(mm)を計測した。移動距離は図1に示した通り、メスシリンダーに沿って測定した。
【0092】
(4)上下ゲル倍率の比
本実施例の廃液固化剤の上下ゲル倍率の比は、1000mlメスシリンダー(外径70mm)中の1000mlの0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(23±1℃)に対して廃液固化剤33gを投入し、ゲル化後の上下ゲル倍率の比で規定した。上下ゲル倍率の比は、1000mlメスシリンダーの最上層約200ml部分に存在する膨潤ゲルと最下層約200ml部分に存在する膨潤ゲルの吸収倍率の比率で規定した。
【0093】
上記(1)の固化試験と同様の方法で、廃液固化剤を用いて0.9質量%塩化ナトリウム水溶液を固化させた後、廃液固化剤の投入から15分後に前記1000mlのメスシリンダーの800~1000mlの位置(最上層)の内容物(膨潤ゲル)を全て取り出し、質量WA(g)を測定した。これをステンレス製のバットに移して、180℃で16時間、熱風乾燥し、室温まで冷却後、乾燥後の質量WB(g)を測定し、下式(2)により最上層ゲル膨潤倍率を求めた。
上層ゲル膨潤倍率[g/g]=WA/WB (式2)
前記1000mlのメスシリンダーの0~200mlの位置(最下層)の内容物(膨潤ゲル)についても同様に、下層ゲル膨潤倍率を求めた。これらにより、下式(3)に従い、上下ゲル倍率を算出した。
上下ゲル倍率=上層ゲル膨潤倍率/下層ゲル膨潤倍率 (式3)
【0094】
(5)廃液固化剤を追加投入しての固化試験
上記(1)のゲル化時間測定(固化試験)において、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液に代えて、模擬廃液(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液:カルボキシメチルセルロース:グリセリン=94.75重量部:0.25重量部:5重量部)を使用し、同様の操作を行った。ただし、15分後にゲル化が完了していない場合、さらに廃液固化剤を33g追加し、引き続きゲル化時間を測定した。
【0095】
[製造例1]
容量1Lのポリプロピレン製容器に、アクリル酸351g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量522.66、平均エチレンオキサイドユニット数;n=9)0.76g、0.1重量%のジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム水溶液21.50g、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液296g及びイオン交換水316gを投入して撹拌、混合した。当該操作で得られた混合液を単量体水溶液(a)とした。また、単量体水溶液(a)は、中和熱によって約80℃まで上昇した。その後も攪拌を継続し、単量体水溶液(a)の液温が78℃となった時点で、3.8重量%の過硫酸ナトリウム水溶液15.4gを添加し、反応液(a)とした。
上記反応液(a)を直ちにステンレス製バット型反応装置(底面;340×340mm、高さ;25mm、内表面;テフロン(登録商標)コーティング)に大気開放系で注ぎ込んだところ、間もなく重合反応が開始した。なお、上記ステンレス製バット型反応装置は、ホットプレート(NEO HOTPLATE HI-1000/株式会社井内盛栄堂製)を用いて、表面温度を50℃に予め設定しておいた。
【0096】
上記重合反応は、水蒸気を発生させながらバット型反応装置の上方に向かって四方八方に膨張発泡して進行し、その後、当該反応装置の底面より若干大きなサイズまで収縮した。当該操作で得られた重合物を、含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)(a)とした。なお、当該重合反応(膨張・収縮)は約1分間で終了したが、その後3分間、当該含水ゲル(a)を反応装置内に保持した。なお、これら一連の操作は大気中に開放された系で行った。
【0097】
次に、得られた含水ゲル(a)を、ダイス孔径9.5mmを有するダイスを備え付けたミートチョッパー(No.32型/株式会社平賀製作所製)を用いてゲル粉砕し、粒子状の含水ゲル(a)とした。当該ゲル粉砕は、該ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を130rpmとした状態で、含水ゲル(a)2.4(kg/min)および水蒸気5.0(kg/h)をミートチョッパーに投入することで行った。次いで、上記ゲル粉砕で得られた粒子状の含水ゲル(a)を、目開き850μmのステンレス製金網上に広げ、熱風乾燥機を用いて180℃で30分間加熱乾燥した後、ロールミル(WML型ロール粉砕機/有限会社井ノ口技研製)を用いて粉砕し、目開き850μm及び150μmのJIS標準篩を用いて分級した。この一連の操作により、不定形破砕状の吸水性樹脂(含水率4.9質量%)である吸水性樹脂粉末(a)を得た。尚、吸水性樹脂粉末(a)のCRC(無加圧下吸収倍率)は47.9[g/g]であった。
【0098】
[製造例2]
上記製造例1で得られた吸水性樹脂粉末(a)をドイツレーディゲ社製回転ミキサーに移し、吸水性樹脂粉末(a)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03重量部、プロピレングリコール1.5重量部、水3.5重量部からなる表面架橋剤水溶液を均一に混合し、100℃で40分間加熱処理した。その後、目開きが850μmのJIS標準篩を通過させることで、含水率7.8%の吸水性樹脂(表面架橋された吸水性樹脂粉末)(A)を得た。吸水性樹脂(A)は、不定形であり、150μm以上850μm未満の範囲に95質量%以上含まれていた。尚、吸水性樹脂粉末(a)のCRC(無加圧下吸収倍率)は35.6[g/g]であった。
【0099】
[実施例1]
上記製造例2で得られた表面架橋された吸水性樹脂(A)100重量部に対して、カチオン性添加剤としてコロイダルシリカ(Klebosol30CAL25,粒径25μm;Merck製)0.3質量%(固形分30%)を混合した。混合は、表面架橋された吸水性樹脂(A)30gを容量225mLのマヨネーズ瓶にコロイダルシリカと共に入れ、ペイントシェーカー(東洋精機製)を用いて3分間振とうすることで行い、カチオン性コロイダルシリカ(固形分で対吸水性樹脂0.09質量%)を表面架橋吸水性樹脂(A)の表面に含む吸水性樹脂組成物からなる廃液固化剤(1)を得た。廃液固化剤(1)のCRC=35.3[g/g]、AAP0.3=31.9[g/g]、AAP0.7=23.0[g/g]、vortex=42[秒]、D50=360[μm]であった。廃液固化剤(1)の固化剤沈降率を測定したところ、100%であった。
【0100】
[実施例2]
上記実施例1において、コロイダルシリカ0.3質量%をカチオン性添加剤としてハイドロタルサイト(DHT-6,粒径0.5μm;共和化学工業株式会社製)0.3質量%に代えた他は同様の操作を行い、ハイドロタルサイトを表面架橋吸水性樹脂(A)の表面に含む吸水性樹脂組成物からなる廃液固化剤(2)を得た。廃液固化剤(2)のCRC=35.6[g/g]、AAP0.3=31.2[g/g]、AAP0.7=22.4[g/g]、vortex=40[秒]、D50=350[μm]であった。廃液固化剤(2)の固化剤沈降率を測定したところ、100%であった。
【0101】
[実施例3]
上記実施例1において、コロイダルシリカ0.3質量%をゼオライト(Y型、HSZ-360CHUA,平均粒径6.0μm;東ソー株式会社製)0.3質量%に代えた他は同様の操作を行い、ゼオライトを表面架橋吸水性樹脂(A)の表面に含む吸水性樹脂組成物からなる廃液固化剤(3)を得た。廃液固化剤(3)のCRC=35.3[g/g]、AAP0.3=31.1[g/g]、AAP0.7=21.3[g/g]、vortex=44[秒]、D50=345[μm]であった。廃液固化剤(3)の固化剤沈降率を測定したところ、100%であった。
【0102】
[比較例1]
上記製造例2で得られた表面架橋された吸水性樹脂(A)をそのまま比較廃液固化剤(1)として使用した。比較廃液固化剤(1)の固化剤沈降率を測定したところ、100%であった。
【0103】
[比較例2]
上記実施例2において、表面架橋された吸水性樹脂(A)を製造例1の吸水性樹脂粉末(a)(表面架橋されていない吸水性樹脂粉末)に代えた以外は同様の操作を行い、ハイドロタルサイトを吸水性樹脂(a)の表面に含む吸水性樹脂組成物からなる比較廃液固化剤(2)を得た。比較廃液固化剤(2)の固化剤沈降率を測定したところ、100%であった。
【0104】
[比較例3]
上記実施例1において、コロイダルシリカ0.3質量%をアニオン性添加剤のモンモリロナイト(粒径0.5μm;Alfa Aesar製)0.3質量%に代えた他は同様の操作を行い、モンモリロナイトを表面架橋吸水性樹脂(A)の表面に含む吸水性樹脂組成物からなる比較廃液固化剤(3)を得た。比較廃液固化剤(3)の固化剤沈降率を測定したところ、100%であった。
【0105】
[比較例4]
上記実施例1において、コロイダルシリカ0.3質量%を中性添加剤のカオリン(粒径0.7μm;IMERYS製)0.3質量%に代えた他は同様の操作を行い、カオリンを表面架橋吸水性樹脂(A)の表面に含む吸水性樹脂組成物からなる比較廃液固化剤(4)を得た。比較廃液固化剤(4)の固化剤沈降率を測定したところ、100%であった。
【0106】
[比較例5]
上記実施例1において、コロイダルシリカ0.3質量%を中性添加剤のタルク(SG-2000,粒径1.0μm;日本タルク株式会社製)0.3質量%に代えた他は同様の操作を行い、タルクを表面架橋吸水性樹脂(A)の表面に含む吸水性樹脂組成物からなる比較廃液固化剤(5)を得た。比較廃液固化剤(5)の固化剤沈降率を測定したところ、100%であった。
【0107】
(評価結果)
上記して得られた沈降タイプの廃液固化剤(1)~(3)、および比較廃液固化剤(1)~(5)についてゲル化時間、ゲル流動性の評価結果を表1に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
[比較例6]
上記製造例2で得られた表面架橋された吸水性樹脂(A)について、特許文献8(特開2016-203106号公報)の実施例1に準じて、上記表面架橋された吸水性樹脂(A)100部に対してステアリン酸亜鉛(関東化学株式会社製鹿1級)0.1質量%を、25℃・相対湿度50%RH下でレディゲミキサー(レディゲ社製、タイプ:M5R)に投入し、330rpmで90秒間攪拌することにより、ステアリン酸亜鉛を吸水性樹脂の表面に含む吸水性樹脂組成物からなる比較廃液固化剤(6)を得た。比較廃液固化剤(6)の固化剤沈降率を測定したところ、25%であった。
【0110】
比較廃液固化剤(6)について、(5)廃液固化剤を追加投入しての固化試験を行ったところ、比較廃液固化剤(6)33gを投入後に、比較廃液固化剤(6)の一部が浮遊、一部が沈降し、廃液の上部および下部の両方からゲル化が進行したが、15分後には、図3に示すように、メスシリンダー中央部8がゲル化しておらず、余剰液が観察された。余剰液をゲル化させる目的で、さらに比較廃液固化剤(6)33gを追加したが、廃液の上部が既にゲル化(固化)している状態であり、追加分の比較廃液固化剤(6)がメスシリンダー中央部8(図3)に到達できず、固化できなかった。
【0111】
[実施例4]
実施例2で得られた廃液固化剤(2)についてゲル化時間を測定したところ、廃液固化剤(2)33gを投入後に、廃液固化剤(2)は全て沈降し、廃液の下部からゲル化が進行したが、15分後には、メスシリンダー上部(図3では上部2)がゲル化しておらず、余剰液が観察された。余剰液をゲル化させる目的で、さらに廃液固化剤(2)33gを追加したところ、30秒後に余剰液が全てゲル化できた。
【0112】
(まとめ)
廃液固化剤(1)~(3)はその固化剤沈降率から、沈降タイプの廃液固化剤として迅速かつ均一に固化することが明らかとなった。比較廃液固化剤(1)~(5)はその沈降率から沈降タイプの廃液固化剤であるが、比較廃液固化剤(1)、(3)、(4)、(5)はカチオン性添加剤を含まないため、比較廃液固化剤(2)は吸水性樹脂粉末が表面架橋されていないため、迅速な固化や均一な固化ができないことが判明した。また特許文献8の実施例1に相当する比較廃液固化剤(6)は沈降率の測定値からは浮遊タイプの廃液固化剤であるため、固化量に合わせて適宜、廃液固化剤を添加することが困難であることが示された。
【0113】
以上、本発明は廃液の濃度に合わせて追加投入が容易な沈降タイプの廃液固化を提供する。本件発明は、特許文献1~13に記載の従来の廃液固化剤の添加剤(界面活性剤、無機粒子、キレート剤、ノニオン性吸水性樹脂、アルカリ可溶性樹脂、疎水性物質など)に代えて、カチオン性添加剤を表面架橋された吸水性樹脂の表面に使用することで上記課題を解決し、沈降タイプの廃液固化剤で初めて迅速かつ均一な廃液のゲル化を行えることを見出し、本発明を完成させた。
【0114】
上記特許文献1~13などの廃液固化剤は、表面架橋された吸水性樹脂粉末を主成分とし、さらに吸水性樹脂粉末の表面に水不溶性のカチオン性添加剤を含む粒子状吸水性樹脂組成物からなる廃液固化剤を示唆しない。また、吸水性樹脂には非特許文献1,2に記載の各種用途を含め、広義に水を対象とする無数の用途が提案され、また、吸水性樹脂は単に吸水機能に限らず、耐久性、耐尿性、ゲル強度、粉体流動性、Anti-Caking性、通液性、制ダスト性、消臭性、抗菌性、廃棄時の分解性、耐衝撃安定性、製造工程での混合性などの数多くの各種付加機能が要求され、そのために数多くの各種添加剤が提案されている。しかし、特許文献1~13に限らず、吸水性樹脂の従来技術は、吸水性樹脂の無数の用途と無数の添加剤および付加機能において、水不溶性のカチオン性添加剤が廃液固化剤の上記課題を解決することを示唆しない。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の廃液固化剤を用いて廃液を固化した場合、廃液固化剤が実質沈降することにより、廃液の下部から固化が進行するので、特に、鉛直方向に長い容器を使用した場合、固化量に合わせて適宜、廃液固化剤を添加できるので、必要最低限量で低コストに廃液の固化ができる。
したがって、本発明にかかる廃液固化剤は、例えば、飲料廃液、工場廃液、放射線廃液、糞尿廃液等の各種廃液、特に血液や体液等を含有した廃液の固化に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0116】
1 メスシリンダー
2 膨潤ゲル
3 800~1000mlの位置(最上層)のゲル物
4 600~800mlの位置のゲル物
5 400~600mlの位置のゲル物
6 200~400mlの位置のゲル物
7 0~200mlの位置(最下層約200ml部分)のゲル物
8 余剰液(浮遊タイプの廃液固化剤では図3の中央部8に余剰水が生じる。)
図1
図2
図3