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特許7605734CD3/C20二重特異性抗体のサイトカイン放出症候群を軽減する投与戦略
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  • 特許-CD3/C20二重特異性抗体のサイトカイン放出症候群を軽減する投与戦略 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】CD3/C20二重特異性抗体のサイトカイン放出症候群を軽減する投与戦略
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20241217BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241217BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241217BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241217BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241217BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20241217BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20241217BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20241217BHJP
   A61K 31/475 20060101ALI20241217BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20241217BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20241217BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20241217BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20241217BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20241217BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20241217BHJP
   C07K 16/46 20060101ALN20241217BHJP
   C07K 16/30 20060101ALN20241217BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20241217BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P35/02
A61P35/00
A61K39/395 E
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/573
A61K39/395 T
A61K31/675
A61K31/704
A61K31/475
A61K33/24
A61K31/7048
A61K31/7068
A61K31/282
A61K31/454
A61P37/02
A61K39/395 D
C07K16/46 ZNA
C07K16/30
C12N15/13
C12N15/62 Z
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021510712
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 US2019049027
(87)【国際公開番号】W WO2020047389
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】62/726,137
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/774,019
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/861,100
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】キャリー・ブラウンステイン
(72)【発明者】
【氏名】イザレル・ロウィ
(72)【発明者】
【氏名】リーヴ・ルシール・アドリアンス
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/112762(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/093821(WO,A1)
【文献】特表2013-534925(JP,A)
【文献】国際公開第2017/112775(WO,A1)
【文献】Best Practice & Research Clinical Haematology,2017年,Vol.30,pp.336-340
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61K 39/00-39/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD20+B細胞悪性腫瘍を治療する方法で使用するための治療用タンパク質を含む医薬組成物であって、該方法は、サイトカイン放出症候群(CRS)または注入関連反応(IRR)の発生率および重症度を軽減する投与計画において対象に該治療用タンパク質を静脈内投与することを含み、該投与計画が、
該投与計画の第1週に該治療用タンパク質の一次用量(D1)の画分を投与することであって、該一次用量が0.5mg~2mgの該治療用タンパク質を含み、第1の用量画分(F1D1)が、該一次用量の40%~60%を構成し、第1週の1日目に該対象に投与され、第2の用量画分(F2D1)が該一次用量の残り40%~60%を構成し、該F1D1の投与後12~96時間で該対象に投与される、投与することと、
該投与計画の第2週に該治療用タンパク質の二次用量(D2)の画分を投与することであって、該二次用量が該一次用量より多く、かつ該治療用タンパク質の最大週用量の半分以下であり、第1の用量画分(F1D2)が該二次用量の40~60%を構成し、第2週に該対象に投与され、第2の用量画分(F2D2)が該二次用量の残り40%~60%を構成し、該F2D2が該投与計画の第2週の間に該F1D2の投与後12~96時間で該対象に投与される、投与することと、
該投与計画のその後の週に該治療用タンパク質の該最大週用量を該対象に単回用量として投与することであって、該最大週用量が40mg~320mgの該治療用タンパク質を含むことと、
を含み、
該治療用タンパク質が、ヒトCD3に結合し、配列番号19、20、および21のアミノ酸配列を含む、それぞれ、相補性決定領域HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む重鎖可変領域(HCVR)ならびに配列番号22、23、および24のアミノ酸配列を含む、それぞれ、相補性決定領域LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む第1の抗原結合アーム、ならびにヒトCD20に結合し、配列番号16、17、および18のアミノ酸配列を含む、それぞれ、相補性決定領域HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含むHCVRならびに配列番号22、23、および24のアミノ酸配列を含む、それぞれ、相補性決定領域LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含むLCVRを含む第2の抗原結合アームを含む、二重特異性抗CD
20×抗CD3抗体である、
前記医薬組成物。
【請求項2】
前記F1D1が前記一次用量の50%を構成し、前記F2D1が前記一次用量の50%を構成する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記F1D2が前記二次用量の50%を構成し、前記F2D2が前記二次用量の50%を構成する、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記一次用量(D1)が1mgである、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記二次用量(D2)が20mgである、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記最大週用量が80mg、160mg、または320mgである、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記F2D1が前記F1D1の投与後18~72時間で前記対象に投与される、または前記F2D2が前記F1D2の投与後18~72時間で前記対象に投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記その後の週が、前記投与計画の第3週、第4週、第14週、または第4週~第36週のうちのいずれか1つである、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記投与計画の週1回期の間、1~8週間、1~12週間、または1~16週間にわたり、前記治療用タンパク質の前記最大週用量が前記対象に単回用量として投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記投与計画の週1回期の完了後、前記投与計画の維持期の間に2週間に1回、3週間に1回、または4週間に1回、前記治療用タンパク質の前記最大週用量が前記対象に単回用量として投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記最大週用量が160mgである、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記最大週用量が320mgである、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記CD20+B細胞悪性腫瘍が、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、またはワルデンシュトレームマクログロブリン血症である、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記対象が、
(i)濾胞性リンパ腫;
(ii)グレード1~3aの濾胞性リンパ腫;
(iii)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL);
(iv)マントル細胞リンパ腫(MCL);または
(v)辺縁帯リンパ腫(MZL);
と診断されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記対象が、DLBCLと診断され、以前のCAR-T療法が不成功であった、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記対象が、MCLと診断され、以前のブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤療法が不成功であった、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記治療用タンパク質が、ステロイド、抗ヒスタミン薬、アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、IL-6アンタゴニスト、またはIL-6Rアンタゴニストと組み合わせて前記対象に投与される、請求項1~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記治療用タンパク質が、第2の治療薬と組み合わせて前記対象に投与される、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記第2の治療薬が、
(a)リツキシマブ、オビヌツズマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ベンダムスチン、レナリドマイド、クロラムブシル、イブリツモマブチウキセタン、イデラリシブ、コパンリシブ、デュベリシブ、エトポシド、メチルプレドニゾロン、シタラビン、シスプラチン、メスナ、イホスファミド、ミトキサントロン、およびプロカルバジンのうちの少なくとも1つを含む;
(b)シクロホスファミドと、ドキソルビシンと、ビンクリスチンと、プレドニゾンの組み合わせを含む;
(c)イホスファミドと、シスプラチンと、エトポシドの組み合わせを含む;
(d)ゲムシタビンとオキサリプラチンの組み合わせを含む;
(e)レナリドマイドとリツキシマブの組み合わせを含む;または
(f)レナリドマイドを含む;
を含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
(a)前記対象が、以前に抗がん療法で治療されている;
(b)前記対象が、以前の治療に抵抗性があるか、もしくは以前の治療後に再発した;または
(c)前記対象が、以前に抗CD20抗体療法で治療されている、
請求項1~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
グレード3のCRSおよびIRRの発生率が、少なくとも80mgの最大週用量を投与された対象の集団において10%未満である、請求項1~20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記グレード3のCRSおよびIRRの発生率が、7.5%未満である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記ヒトCD3に結合する第1の抗原結合アームのHCVRおよびLCVRが、それぞれ、配列番号14および15のアミノ酸配列を含み、前記ヒトCD20に結合する第2の抗原結合アームのHCVRおよびLCVRが、それぞれ、配列番号13および15のアミノ酸配列を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記二重特異性抗CD20×抗CD3抗体が、配列番号11のアミノ酸配列または配列
番号11の残基1~448を含むアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号10のアミノ酸配列または配列番号10の残基1~452を含むアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号12のアミノ酸配列を含む共通の軽鎖を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表の参照
本出願は、2019年8月30日に作成され、162,944バイトを含むファイル10496WO01-Sequenceとしてコンピュータ可読形式で提出された配列表を参照により組み入れる。
【0002】
本発明は医学の分野にあり、免疫療法を受けている患者におけるサイトカイン放出症候群または注入関連反応の有病率および重症度を軽減する治療用抗体(例えば、T細胞を標的とする二重特異性抗体)の投与戦略および投与計画(administration regimen)に関する。
【背景技術】
【0003】
サイトカイン放出症候群(CRS)は全身性炎症反応であり、特定の薬物を含む様々な要因によって引き起こされる可能性がある。T細胞活性化がん免疫療法はCRSのリスクが特に高く、これは通常、二重特異性抗体またはキメラ抗原受容体(CAR)T細胞の抗原への結合によって誘導されるオンターゲット効果とそれに続くバイスタンダー免疫細胞および内皮細胞などの非免疫細胞の活性化によるものである。バイスタンダー細胞の活性化は、様々なサイトカインの大量放出をもたらす。IL-6、IL-10、およびインターフェロン(IFN)-γは、CRS患者の血清で一貫して上昇していることがわかっている中心的なサイトカインの1つである。腫瘍細胞に対するT細胞活性化療法では、CRSは活性化T細胞または腫瘍細胞自体によるIFN-γの大量放出によって引き起こされる。分泌されたIFN-γは他の免疫細胞、最も重要なのはマクロファージの活性化を誘導し、それにより次々にIL-6、TNF-α、IL-10などの追加のサイトカインを過剰に産生する。特にIL-6は、血管漏出、播種性血管内凝固症候群を誘発する補体および凝固カスケードの活性化などを含む、CRSの主要な症状の多くに関与している。さらに、IL-6は心筋機能障害を促進することによって心筋症に寄与する可能性がある。非特許文献1。場合によっては、CRSに関連する症状は、注入開始後6時間以内に発生する場合は注入関連反応(IRR)と呼ばれ、注入開始後6時間以降に発生する場合はCRSと呼ばれる。
【0004】
がん免疫療法の毒性の管理は、困難な臨床問題である。CRSまたはIRRを軽減することは、特定の治療法、例えばCAR T細胞およびT細胞を標的とする二重特異性抗体を投与することの特徴である。低グレードのCRSは、一般的に、抗ヒスタミン薬、解熱薬、および水分で対症療法的に治療される。重度のCRSは、迅速かつ積極的な治療を必要とする生命を脅かす有害事象を示し得る。腫瘍量の減少、投与される療法の用量の制限、およびステロイドによる前投薬は、抗サイトカイン治療の使用と同様に、重度のCRSの発生率を減少させた。抗IL-6抗体であるトシリズマブは、状況によっては重度のCRSの標準的な初期治療となっている。しかしながら、サイトカイン活性を最小限に抑えるための用量制限および治療の使用は、免疫療法の有効性に悪影響を与える可能性がある。したがって、免疫療法の治療上の利点に悪影響を与えることなく、CRSの潜在的な生命を脅かす影響を軽減するための代替戦略の必要性が残っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Shimabukaro-Vornhagen et al.,Journal for Immunotherapy of Cancer,6:56,pp.1-14,2018
【発明の概要】
【0006】
一態様では、本発明は、サイトカイン放出症候群または注入関連反応の有害作用を軽減するために、投与計画(dosing regimen)において対象に治療用タンパク質を投与する方法であって、(i)投与計画の第1週に治療用タンパク質の一次用量(D1)の画分を投与することであって、一次用量が10mg以下の治療用タンパク質を含み、第1の用量画分(F1D1)が、総一次用量の40%~60%を構成し、第1週の1日目に対象に投与され、第2の用量画分(F2D1)が総一次用量の残り40%~60%を構成し、F1D1の投与後12~96時間で対象に投与される、投与することと、(ii)投与計画の第2週に治療用タンパク質の二次用量(D2)の画分を投与することであって、二次用量が治療用タンパク質の最大週用量の半分以下であり、第1の用量画分(F1D2)が総二次用量の40~60%を構成し、第2の用量画分(F2D2)が総二次用量の残り40%~60%を構成し、F2D2が投与計画の第2週の間にF1D2の投与後12~96時間で対象に投与される、投与することと、(iii)投与計画のその後の週に治療用タンパク質の最大週用量を対象に単回用量として投与することと、を含む、方法を提供する。
【0007】
場合によっては、F2D1は、F1D1の投与後24~96時間で対象に投与される。場合によっては、F2D1は、F1D1の投与後18~72時間で対象に投与される。場合によっては、F2D2は、F1D2の投与後24~96時間で対象に投与される。場合によっては、F2D2は、F1D2の投与後18~72時間で対象に投与される。場合によっては、その後の週は、投与計画の第3週である。場合によっては、その後の週は、投与計画の第4週である。場合によっては、その後の週は、投与計画の第14週である。場合によっては、その後の週は、投与計画の第4週~第36週のうちのいずれか1つである。
【0008】
いくつかの実施形態では、方法は、(i)投与計画の第3週に、治療用タンパク質の三次用量(D3)の画分を投与することであって、三次用量が治療用タンパク質の最大週用量の半分以上かつ治療用タンパク質の最大週用量以下であり、第1の用量画分(F1D3)が総三次用量の40%~60%を構成し、第2の用量画分(F2D3)が総三次用量の残り40%~60%を構成し、F2D3が投与計画の第3週の間にF1D3の投与後12~96時間で対象に投与される、投与することと、(ii)投与計画のその後の週に治療用タンパク質の最大週用量を対象に単回用量として投与することと、をさらに含む。
【0009】
場合によっては、F2D3は、F1D3の投与後24~96時間で対象に投与される。場合によっては、F2D3は、F1D3の投与後18~72時間で対象に投与される。
【0010】
場合によっては、その後の週は、投与計画の第4週である。場合によっては、その後の週は、投与計画の第14週である。場合によっては、その後の週は、投与計画の第4週~第36週のうちのいずれか1つである。様々な実施形態では、三次用量は、投与計画の第4週~第12週に単回用量として投与される。
【0011】
一態様では、本発明は、サイトカイン放出症候群または注入関連反応の有害作用を軽減するために、投与計画において対象に治療用タンパク質を投与する方法であって、(i)投与計画の第1週に治療用タンパク質の一次用量(D1)の画分を投与することであって、一次用量が10mg以下の治療用タンパク質を含み、第1の用量画分(F1D1)が、総一次用量の40%~60%を構成し、第1週の1日目に対象に投与され、第2の用量画分(F2D1)が、総一次用量の残り40%~60%を構成し、F1D1の投与後12~96時間で対象に投与される、投与することと、(ii)投与計画の第2週に治療用タンパク質の二次用量(D2)の画分を投与することであって、二次用量は治療用タンパク質の最大週用量に等しく、第1の用量画分(F1D2)は総二次用量の50%を構成し、第2の用量画分(F2D2)は、総二次用量の50%を構成し、F2D2は、投与計画の第2週の間にF1D2の投与後12~96時間で対象に投与することと、(iii)投与計画のその後の週に治療用タンパク質の最大週用量を対象に単回用量として投与することと、を含む、方法を提供する。
【0012】
一態様では、本発明は、サイトカイン放出症候群または注入関連反応の有害作用を軽減するために、投与計画において対象に治療用タンパク質を投与する方法であって、(i)投与計画の第1週に治療用タンパク質の一次用量(D1)の画分を投与することであって、一次用量が10mg以下の治療用タンパク質を含み、D1が複数の用量画分(例えば、F1D1、F2D1、F3D1、F4D1、F5D1)で、第1週以内で後続する日に対象に投与される、投与することと、(ii)投与計画の第2週に治療用タンパク質の二次用量(D2)の画分を投与することであって、二次用量は治療用タンパク質の最大週用量以下であり、複数の用量画分(例えば、F1D2、F2D2、F3D2、F4D2、F5D2)で、第2週以内で後続する日に対象に投与される、投与することと、(iii)投与計画のその後の週に治療用タンパク質の最大週用量(MD)を、MDの複数の画分として、または単回用量として対象に投与することと、を含む、方法を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態では、第2の用量画分(F2)は、第1の用量画分(F1)の投与後12~96(例えば、24~72)時間で対象に投与され、任意選択で第3の用量画分(F3)が、第2の用量画分(F2)の投与後24時間以上で対象に投与され、任意選択で第4の用量画分(F4)が、第3の用量画分(F3)の投与後24時間以上で対象に投与され、任意選択で第5の用量画分(F5)が、投与計画の第1週、第2週または第3週の間に第4の用量画分(F4)の投与後24時間以上で対象に投与される。
【0014】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、計画の週1回期の完了後の投与計画の維持期の間に1回以上の「維持」用量を投与することをさらに含む。場合によっては、各維持用量は、直前の用量の2、3、または4週間後に投与される。一実施形態では、維持用量は、単回用量として投与される治療用タンパク質の最大週用量である。
【0015】
場合によっては、投与計画の週1回期の間、1~8週間、1~12週間、または1~16週間にわたり、治療用タンパク質の最大週用量(MD)は対象に単回用量として投与される。場合によっては、投与計画の週1回期の完了後、投与計画の維持期の間に2週間に1回、治療用タンパク質の最大週用量は対象に単回用量として投与される。場合によっては、投与計画の週1回期の完了後、投与計画の維持期の間に3週間に1回、治療用タンパク質の最大週用量は対象に単回用量として投与される。場合によっては、投与計画の週1回期の完了後、投与計画の維持期の間に4週間に1回、治療用タンパク質の最大週用量は対象に単回用量として投与される。いくつかの実施形態では、維持期は最大86週間の期間である。いくつかの実施形態では、維持期は最大87週間の期間である。いくつかの実施形態では、維持期は最大88週間の期間である。いくつかの実施形態では、維持期は、86週間を超える、100週間を超える、150週間を超える、200週間を超える、または250週間を超える。いくつかの実施形態では、維持期は少なくとも24週間である。いくつかの実施形態では、維持期は24週間である。
【0016】
様々な実施形態では、一次用量は1mgである。様々な実施形態では、二次用量は20mgである。様々な実施形態では、三次用量は40mgである。様々な実施形態では、三次用量は80mgである。様々な実施形態では、三次用量は160mgである。様々な実施形態では、三次用量は320mgである。
【0017】
様々な実施形態では、F1D1は、総一次用量の50%を構成し、F2D1は、総一次用量の50%を構成する。様々な実施形態では、F1D2は、総二次用量の50%を構成し、F2D2は、総二次用量の50%を構成する。様々な実施形態では、F1D3は、総三次用量の50%を構成し、F2D3は、総三次用量の50%を構成する。
【0018】
場合によっては、治療用タンパク質の最大週用量(MD)は5mg~320mgである。様々な実施形態では、治療用タンパク質の最大週用量は、6~320mg、10~320mg、5~40mg、5~80mg、5~160mg、12~40mg、18~80mg、40~80mg、80~160mg、160~320mg、5mg、6mg、7mg、8mg、12mg、18mg、27mg、40mg、80mg、160mg、または320mgである。いくつかの実施形態では、最大週用量は80mgである。いくつかの実施形態では、最大週用量は160mgである。いくつかの実施形態では、最大週用量は320mgである。
場合によっては、治療用タンパク質の維持用量は、5mg~320mgである。様々な実施形態では、治療用タンパク質の維持用量は、6~320mg、10~320mg、5~40mg、5~80mg、5~160mg、12~40mg、18~80mg、40~80mg、80~160mg、160~320mg、5mg、6mg、7mg、8mg、12mg、18mg、27mg、40mg、80mg、160mgまたは320mgである。いくつかの実施形態では、維持用量は80mgである。いくつかの実施形態では、維持用量は160mgである。いくつかの実施形態では、維持用量は320mgである。
【0019】
場合によっては、各用量または用量画分が、1~6時間の期間にわたって対象に投与される。
【0020】
いくつかの実施形態では、対象はがんと診断されている。場合によっては、がんはB細胞悪性腫瘍である。場合によっては、B細胞悪性腫瘍はCD20+B細胞悪性腫瘍である。場合によっては、がんは、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、原発性縦隔B細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、またはバーキットリンパ腫である。場合によっては、がんは、膵臓がん、頭頸部がん、前立腺がん、悪性神経膠腫、骨肉腫、結腸直腸がん、胃がん、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、滑膜肉腫、甲状腺がん、乳がん、黒色腫神経膠腫(melanomaglioma)、乳がん、扁平上皮がん、食道がん、淡明細胞型腎細胞がん、色素嫌性腎細胞がん、オンコサイトーマ、移行上皮がん、尿路上皮がん、膀胱腺がん、または膀胱小細胞がんから選択される。いくつかの実施形態では、対象は濾胞性リンパ腫(FL)と診断されている。場合によっては、FLはグレード1~3aである。いくつかの実施形態では、対象はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)と診断されている。一実施形態では、対象は再発性/難治性DLBCLと診断されている。場合によっては、DLBCLと診断された対象は、以前のCAR-T療法が不成功であった。いくつかの実施形態では、対象はマントル細胞リンパ腫(MCL)と診断されている。場合によっては、MCLと診断された対象は、以前のブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤療法が不成功であった。いくつかの実施形態では、対象は辺縁帯リンパ腫(MZL)と診断されている。
【0021】
場合によっては、対象はヒト、ヒト成人、またはヒト子供(18歳未満)である。
【0022】
様々な実施形態では、治療用タンパク質は、抗体またはその抗原結合断片である。場合によっては、抗体は完全ヒト抗体である。場合によっては、抗体は二重特異性抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体または抗原結合断片は、T細胞抗原に結合する第1の抗原結合アームを含む。場合によっては、T細胞抗原はCD3である。場合によっては、T細胞抗原はCD28である。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体または抗原結合断片は、腫瘍細胞抗原(tumor cell antigen)に結合する第2の抗原結合アームを含む。場合によっては、腫瘍細胞抗原は、AFP、ALK、BAGEタンパク質、BCMA、BIRC5(サバイビン)、BIRC7、β-カテニン、brc-abl、BRCA1、BORIS、CA9、炭酸脱水素酵素IX、カスパーゼ-8、CALR、CCR5、CD19、CD20(MS4A1)、CD22、CD40、CD70、CDK4、CEA、サイクリン-B1、CYP1B1、EGFR、EGFRvIII、ErbB2/Her2、ErbB3、ErbB4、ETV6-AML、EpCAM、EphA2、Fra-1、FOLR1、GAGEタンパク質(例えば、GAGE-1、-2)、GD2、GD3、GloboH、グリピカン-3、GM3、gp100、Her2、HLA/B-raf、HLA/k-ras、HLA/MAGE-A3、hTERT、LMP2、MAGEタンパク質(例えば、MAGE-1、-2、-3、-4、-6、および-12)、MART-1、メソテリン、ML-IAP、Muc1、Muc2、Muc3、Muc4、Muc5、Muc16(CA-125)、MUM1、NA17、NY-BR1、NY-BR62、NY-BR85、NY-ESO1、p15、p53、PAP、PAX3、PAX5、PCTA-1、PLAC1、PRLR、PRAME、PSMA(FOLH1)、RAGEタンパク質、Ras、RGS5、Rho、SART-1、SART-3、STEAP1、STEAP2、TAG-72、TGF-β、TMPRSS2、トンプソン-ヌーベル抗原(Tn)、TRP-1、TRP-2、チロシナーゼ、およびウロプラキン-3からなる群から選択される。
【0023】
いくつかの実施形態では、腫瘍細胞抗原は、CD20である。場合によっては、二重特異性抗体は、抗CD20×抗CD3抗体である。場合によっては、抗CD20×抗CD3抗体は、REGN1979である。
【0024】
いくつかの実施形態では、腫瘍細胞抗原は、BCMAである。場合によっては、二重特異性抗体は、抗BCMA×抗CD3抗体である。
【0025】
いくつかの実施形態では、腫瘍細胞抗原は、PSMAである。場合によっては、二重特異性抗体は、抗PSMA×抗CD3抗体である。
【0026】
いくつかの実施形態では、腫瘍細胞抗原は、MUC16である。場合によっては、二重特異性抗体は、抗MUC16×抗CD3抗体である。
【0027】
いくつかの実施形態では、腫瘍細胞抗原は、STEAP2である。場合によっては、二重特異性抗体は、抗STEAP2×抗CD3抗体である。
【0028】
様々な実施形態では、治療用タンパク質は、投与計画の期間中の最大週用量の投与後、約2000マイクログラム/リットル(mcg/L)以上の血清濃度に維持される。場合によっては、治療用タンパク質は、投与計画の期間中の最大週用量の投与後、約2600mcg/L以上の血清濃度に維持される。いくつかの実施形態では、治療用タンパク質は、投与計画の期間中の最大週用量の投与後、約3700mcg/L以上の血清濃度に維持される。
【0029】
いくつかの実施形態では、治療用タンパク質は、ステロイド、抗ヒスタミン薬、アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、IL-6アンタゴニスト、またはIL-6Rアンタゴニストから選択される第2の薬剤と組み合わせて対象に投与される。場合によっては、ステロイドはデキサメタゾンである。場合によっては、NSAIDはインドメタシンである。場合によっては、IL-6アンタゴニストは抗IL-6抗体であるか、またはIL-6Rアンタゴニストは抗IL-6R抗体である。いくつかの実施形態では、抗IL-6R抗体はサリルマブである。様々な実施形態では、第2の薬剤の投与は、投与計画の期間中の最大週用量の最初の投与後、除外される。他の実施形態では、第2の薬剤は、治療用タンパク質の投与の前に投与される(例えば、F1D1、F2D1、F1D2、F2D2、F1D3および/またはF2D3の約1~3時間前)。さらに他の実施形態では、治療用タンパク質は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12時間、またはそれ以上の時間などの期間にわたる注入によって投与される。
【0030】
様々な実施形態では、治療用タンパク質は、第2の治療薬と組み合わせて対象に投与される。いくつかの実施形態では、第2の治療薬は、リツキシマブ、オビヌツズマブ、シクロホファミド(cyclophophamide)、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ベンダムスチン、レナリドマイド、クロラムブシル、イブリツモマブチウキセタン、イデラリシブ、コパンリシブ、デュベリシブ、エトポシド、メチルプレドニゾロン、シタラビン、シスプラチン、メスナ、イホスファミド、ミトキサントロン、およびプロカルバジンのうちの少なくとも1つを含む。場合によっては、第2の治療薬は、シクロホスファミドと、ドキソルビシンと、ビンクリスチンと、プレドニゾンの組み合わせを含む。場合によっては、第2の治療薬は、イホスファミドと、シスプラチンと、エトポシドの組み合わせを含む。場合によっては、第2の治療薬は、ゲムシタビンとオキサリプラチンの組み合わせを含む。場合によっては、第2の治療薬は、レナリドマイドとリツキシマブの組み合わせを含む。場合によっては、第2の治療薬は、レナリドマイドである。
【0031】
一態様では、本発明は、対象におけるB細胞がんを治療する方法であって、(a)B細胞がんと診断された対象を選択することと、(b)サイトカイン放出症候群または注入関連反応の有害作用を軽減するために投与計画を利用して、上記または本明細書で論じられる方法のいずれかに従って対象に治療用タンパク質を投与することと、を含む、方法を含む。いくつかの実施形態では、対象は、以前に抗CD20抗体療法で治療されている。いくつかの実施形態では、対象は、以前にCAR-T療法で治療されている。場合によっては、B細胞がんは濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、および辺縁帯リンパ腫からなる群から選択される。
【0032】
上記または本明細書で論じられる実施形態のいずれにおいても、グレード3のCRSおよびIRRの発生率は10%未満である。場合によっては、グレード3のCRSおよびIRRの発生率は7.5%未満または7%未満である。いくつかの実施形態では、CRSおよびIRRの発生率が10%未満、9%未満、8%未満、7.5%未満または7%未満である場合、最大週用量は80mg以上である。実施形態のいずれにおいても、単回用量として投与される任意の用量は、1時間以内に投与され得る。
【0033】
様々な実施形態では、上記または本明細書で論じられる任意の実施形態の特徴または構成要素のいずれかを組み合わせることができ、かかる組み合わせは、本開示の範囲内に包含される。上記または本明細書で論じられるいずれの特定の値も、上記または本明細書で論じられる別の関連値と組み合わせられて、それらの値が範囲の上限および下限を表す範囲を列挙することができ、かかる範囲は本開示の範囲内に包含される。本明細書で論じられる方法のいずれかで使用するための治療用タンパク質、または本明細書で論じられる方法のいずれかで使用するための薬剤の製造における治療用タンパク質の使用もまた、本開示の範囲内に含まれる。
【0034】
他の実施形態は、後述の詳細な説明の精査から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】様々な用量レベルでのREGN1979による治療の最初の5週間におけるCRS/IRRの発生率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明を説明する前に、説明される特定の方法および実験条件が異なり得るため、本発明がかかる方法および条件に限定されないことを理解されたい。本明細書で使用される用語が、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、限定するようには意図されていないことも理解されたい。
【0037】
別段定義されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は全て、本発明が属する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、特定の列挙された数値に関して使用される場合、その値が列挙された値から1%以下だけ変動し得ることを意味する。例えば、本発明で使用する場合、「約100」という表現は、99および101、ならびにその間の全値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
【0038】
本明細書に記載されるものと同様または同等のいずれの方法および材料も本発明の実施または試験に使用され得るが、好ましい方法および材料をこれから説明する。本明細書で言及される特許、出願、および非特許刊行物は全て、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0039】
本明細書で用いられる「CD3」という表現は、多分子T細胞受容体(TCR)の一部としてT細胞上に発現され、4つの受容体鎖すなわちCD3-イプシロン、CD3-デルタ、CD3-ゼータ、CD3-ガンマのうち2つの会合から形成されるホモ二量体またはヘテロ二量体からなる抗原を指す。ヒトCD3-イプシロンは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、ヒトCD3-デルタは、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含み、ヒトCD3-ゼータは、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含み、CD3-ガンマは、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む。
【0040】
本明細書におけるタンパク質、ポリペプチド、およびタンパク質断片への全ての言及は、非ヒト種由来であると明確に特定されない限り、それぞれのタンパク質、ポリペプチド、またはタンパク質断片のヒトバージョンを指すよう意図されている。したがって、「CD3」という表現は、非ヒト種、例えば、「マウスCD3」、「サルCD3」など由来であると特定されない限り、ヒトCD3を意味する。
【0041】
「CD3に結合する抗原結合ドメイン」、「CD3に結合する抗体」または「抗CD3抗体」には、単一のCD3サブユニット(例えば、イプシロン、デルタ、ガンマ、またはゼータ)を特異的に認識する抗体およびその抗原結合断片、ならびに2つのCD3サブユニットの二量体複合体(例えば、ガンマ/イプシロン、デルタ/イプシロン、およびゼータ/ゼータCD3二量体)を特異的に認識する抗体およびその抗原結合断片が含まれる。本発明の抗体および抗原結合断片は、可溶性CD3および/または細胞表面発現CD3に結合することができる。可溶性CD3には、天然CD3タンパク質、ならびに膜貫通ドメインを欠くか、または細胞膜と会合していない組換えCD3タンパク質バリアント、例えば、単量体および二量体CD3構築物などが含まれる。
【0042】
「CD20」という表現は、成熟B細胞の細胞膜上に発現する非グリコシル化リンタンパク質を指す。CD20は、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)およびその他のB細胞悪性腫瘍の95%以上で発現しているため、B細胞腫瘍関連抗原とみなされるが、前駆B細胞、樹状細胞、および形質細胞には存在しない。ヒトCD20タンパク質は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する。
【0043】
「CD20に結合する抗原結合ドメイン」、「CD20に結合する抗体」または「抗CD20抗体」には、CD20を特異的に認識する抗体およびその抗原結合断片が含まれる。
【0044】
本明細書で使用される「BCMA」という表現は、B細胞成熟抗原を指す。BCMA(TNFRSF17およびCD269としても知られる)は、悪性形質細胞上で発現される細胞表面タンパク質であり、B細胞成熟および免疫グロブリン産生形質細胞への分化の調節に中心的な役割を果たす。ヒトBCMAのアミノ酸配列は配列番号6に示される。
【0045】
「BCMAに結合する抗原結合ドメイン」、「BCMAに結合する抗体」または「抗BCMA抗体」には、BCMAを特異的に認識する抗体およびその抗原結合断片が含まれる。
【0046】
「PSMA」という表現は、葉酸加水分解酵素1(folate hydrolase 1)(FOLH1)としても知られる前立腺特異的膜抗原を指す。PSMAは、前立腺上皮細胞で高度に発現し、前立腺がんの細胞表面マーカーである、内在性非シェッド膜糖タンパク質(integral,non-shed membrane glycoprotein)である。ヒトPSMAのアミノ酸配列は配列番号7に示される。
【0047】
「PSMAに結合する抗原結合ドメイン」、「PSMAに結合する抗体」または「抗PSMA抗体」には、PSMAを特異的に認識する抗体およびその抗原結合断片が含まれる。
【0048】
「MUC16」という表現は、ムチン16を指す。MUC16は、卵巣がんで高度に発現される単一膜貫通ドメインの高度にグリコシル化された内在性膜糖タンパク質である。ヒトMUC16のアミノ酸配列は配列番号8に示される。
【0049】
「MUC16に結合する抗原結合ドメイン」、「MUC16に結合する抗体」または「抗MUC16抗体」には、MUC16を特異的に認識する抗体およびその抗原結合断片が含まれる。
【0050】
「STEAP2」という表現は、前立腺の6回膜貫通上皮抗原2を指す。STEAP2は、前立腺上皮細胞で高度に発現し、前立腺がんの細胞表面マーカーである、内在性6回膜貫通型タンパク質である。STEAP2は、ヒトの染色体領域7q21にあるSTEAP2遺伝子によってコードされる490アミノ酸のタンパク質である。ヒトSTEAP2のアミノ酸配列は配列番号9に示される。
【0051】
「STEAP2に結合する抗原結合ドメイン」、「STEAP2に結合する抗体」または「抗STEAP2抗体」には、STEAP2を特異的に認識する抗体およびその抗原結合断片が含まれる。
【0052】
「治療用タンパク質」という用語は、抗体およびその抗原結合断片、ならびに対象の任意の状態、疾患または障害を予防、治療または改善する(ameliorate)ために使用される二重特異性抗体およびその抗原結合断片を含む任意のポリペプチドを含む。
【0053】
「抗原結合分子」という用語は、例えば、二重特異性抗体を含む、抗体および抗体の抗原結合断片を含む。
【0054】
「抗体」という用語は、特定の抗原(例えば、CD20、BCMA、PSMA、MUC16、STEAP2またはCD3)に特異的に結合するかまたはそれと相互作用する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む、任意の抗原結合分子または分子複合体を意味する。「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互連結された4本のポリペプチド鎖、2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子、ならびにそれらの多量体(例えば、IgM)を含む。「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互連結された4本のポリペプチド鎖、2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖からなる免疫グロブリン分子も含む。重鎖は各々、重鎖可変領域(本明細書でHCVRまたはVと略される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、C1、C2、およびC3を含む。軽鎖は各々、軽鎖可変領域(本明細書でLCVRまたはVと略される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(C1)を含む。V領域およびV領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が点在する相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに細分され得る。VおよびVは各々、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順にアミノ末端からカルボキシ末端に配置された3つのCDRおよび4つのFRからなる。本発明の異なる実施形態では、抗体(もしくはその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であってもよく、または天然にもしくは人工的に修飾されていてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRの並列分析に基づいて定義され得る。「抗体」という用語は、特に断りのない限り、「二重特異性抗体」を含む。
【0055】
「抗体」という用語はまた、完全抗体分子の抗原結合断片を含む。抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」および同様の用語は、抗原を特異的に結合して複合体を形成する、天然に存在する、酵素処理で入手可能な、合成の、または遺伝子操作された、ポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合断片は、例えば、抗体可変ドメインおよび任意選択で抗体定常ドメインをコードするDNAの操作および発現に関与するタンパク質分解消化技法または組換え遺伝子操作技法などの任意の好適な標準的な技法を使用して、完全抗体分子から得られ得る。かかるDNAは既知であり、かつ/または例えば、商業的供給源、DNAライブラリ(例えば、ファージ抗体ライブラリを含む)から容易に入手可能であるか、または合成され得る。DNAは、化学的に、または分子生物学技法を使用することによって配列決定および操作されて、例えば、1つ以上の可変ドメインおよび/もしくは定常ドメインを好適な立体配置に配置するか、またはコドンを導入し、システイン残基を作成し、アミノ酸を修飾、付加、もしくは欠失などすることができる。
【0056】
「二重特異性抗原結合分子」という表現は、少なくとも第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインを含むタンパク質、ポリペプチドまたは分子複合体を意味する。二重特異性抗原結合分子内の各抗原結合ドメインは、単独で、または1つ以上の追加のCDRおよび/またはFRと組み合わせて、特定の抗原に特異的に結合する少なくとも1つのCDRを含む。二重特異性抗原結合分子には、二重特異性抗体が含まれる。
【0057】
抗原結合断片の非限定的な例には、(i)Fab断片、(ii)F(ab’)2断片、(iii)Fd断片、(iv)Fv断片、(v)一本鎖Fv(scFv)分子、(vi)dAb断片、および(vii)抗体の超可変領域(例えば、CDR3ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR))を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位、または拘束されたFR3-CDR3-FR4ペプチドが挙げられる。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小型モジュール型免疫医薬品(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインなどの他の操作された分子も、「抗原結合断片」という表現に包含される。
【0058】
抗体の抗原結合断片は、典型的には、少なくとも1つの可変ドメインを含むであろう。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成のものであり得、一般に、1つ以上のフレームワーク配列に隣接しているか、またはそれとインフレームである少なくとも1つのCDRを含む。VドメインがVドメインに結合した抗原結合断片では、VドメインおよびVドメインは、任意の好適な配置で互いに対して位置付けられ得る。例えば、可変領域は二量体であり、V-V、V-V、またはV-V二量体を含み得る。あるいは、抗体の抗原結合断片は、単量体VまたはVドメインを含み得る。
【0059】
ある特定の実施形態では、抗体の抗原結合断片は、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合された少なくとも1つの可変ドメインを含み得る。本発明の抗体の抗原結合断片内に見られ得る可変ドメインおよび定常ドメインの非限定的な例示的な立体配置には、(i)V-C1、(ii)V-C2、(iii)V-C3、(iv)V-C1-C2、(v)V-C1-C2-C3、(vi)V-C2-C3、(vii)V-C、(viii)V-C1、(ix)V-C2、(x)V-C3、(xi)V-C1-C2、(xii)V-C1-C2-C3、(xiii)V-C2-C3、および(xiv)V-Cが挙げられる。上に列記される例示的な立体配置のうちのいずれかを含む、可変ドメインおよび定常ドメインのいずれの立体配置でも、可変ドメインおよび定常ドメインは、互いに直接連結されているか、または完全もしくは部分的ヒンジ領域もしくはリンカー領域によって連結されているかのいずれかであり得る。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子において隣接する可変ドメインおよび/または定常ドメイン間の可動性または半可動性連結をもたらす少なくとも2つの(例えば、5、10、15、20、40、60、またはそれ以上の)アミノ酸からなり得る。さらに、本発明の抗体の抗原結合断片は、互いとのおよび/または1つ以上の単量体VもしくはVドメインとの(例えば、ジスルフィド結合(複数可)による)非共有結合において、上に列記される可変ドメイン立体配置および定常ドメイン立体配置のうちのいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含み得る。
【0060】
完全抗体分子と同様に、抗原結合断片は、単一特異性または多重特異性(例えば、二重特異性)であり得る。抗体の多重特異性抗原結合断片は、典型的には、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含み、各可変ドメインは、別個の抗原に、または同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合することができる。本明細書に開示される例示的な二重特異性抗体フォーマットを含む任意の多重特異性抗体フォーマットは、当該技術分野で利用可能な通例の技法を使用して、本発明の抗体の抗原結合断片との関連での使用に適合され得る。
【0061】
本発明の抗体は、補体依存性細胞傷害(CDC)または抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を介して機能し得る。「補体依存性細胞傷害」(CDC)とは、補体の存在下での本発明の抗体による抗原発現細胞の溶解を指す。「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」(ADCC)とは、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)が標的細胞上の結合した抗体を認識し、それにより、標的細胞の溶解をもたらす、細胞媒介性反応を指す。CDCおよびADCCは、当該技術分野で周知であり、かつ利用可能なアッセイを使用して測定され得る。(例えば、米国特許第5,500,362号および同第5,821,337号、ならびにClynes et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)95:652-656を参照されたい)。抗体の定常領域は、補体を固定して細胞依存性細胞傷害性を媒介する抗体の能力に重要である。したがって、抗体のアイソタイプは、その抗体が細胞傷害性を媒介することが望ましいかに基づいて選択され得る。本開示の抗体は、ヒトIgG重鎖を含み得る。様々な実施形態では、重は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプのものであり得る。
【0062】
本発明の特定の実施形態では、抗体または二重特異性抗体は、ヒト抗体である。「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むことを意図する。本発明のヒト抗体は、例えば、CDR、特にCDR3における、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的変異誘発またはインビボでの体細胞変異によって導入された変異)によってコードされないアミノ酸残基を含み得る。しかしながら、「ヒト抗体」という用語は、別の哺乳類種、例えば、マウスの生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列へと移植された抗体を含むことを意図するものではない。
【0063】
本発明の抗体は、いくつかの実施形態では、組換えヒト抗体であり得る。「組換えヒト抗体」という用語は、組換え手段によって調製、発現、作成、または単離された全てのヒト抗体(以下に記載)、例えば、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現された抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体(以下に記載)、ヒト免疫グロブリン遺伝子に対してトランスジェニックな動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylor et al.(1992)Nucl.Acids Res.20:6287-6295を参照のこと)、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって調製、発現、作成、または単離された抗体を含むよう意図されている。かかる組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する。しかしながら、ある特定の実施形態では、かかる組換えヒト抗体は、インビトロ変異誘発(または、ヒトIg配列に対してトランスジェニックな動物が使用される場合、インビボ体細胞変異誘発)を受け、それ故に、組換え抗体のV領域およびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列V配列およびV配列に由来し関連しているが、インビボでヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然に存在し得ない配列である。
【0064】
ヒト抗体は、ヒンジの不均一性に関連する2つの形態で存在し得る第1の形態では、免疫グロブリン分子は、二量体が鎖間重鎖ジスルフィド結合によって一緒に保持されているおよそ150~160kDaの安定した四本鎖構築体を含む。第2の形態では、二量体は鎖間ジスルフィド結合によって連結されておらず、共有結合した軽鎖および重鎖から成る約75~80kDaの分子が形成される(半抗体)。これらの形態は、親和性精製後でさえも分離が極めて困難とされている。
【0065】
様々なインタクトなIgGアイソタイプにおける第2の形態の出現頻度は、抗体のヒンジ領域アイソタイプに関連する構造差によるが、それに限定されない。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一アミノ酸置換は、ヒトIgG1ヒンジを使用して典型的に観察されるレベルまで第2の形態の出現を著しく減少させることができる(Angal et al.(1993)Molecular Immunology 30:105)。本発明は、ヒンジ領域、C2領域、またはC3領域に1つ以上の変異を有する抗体を包含し、例えば、産生において、所望の抗体形態の収率を改善する(improve)のに望ましくあり得る。
【0066】
本発明の抗体は、単離された抗体であり得る。本明細書で使用される「単離された抗体」は、その天然環境の少なくとも1つの成分から同定され、および分離および/または回収された抗体を意味する。例えば、生物の少なくとも1つの成分から、または抗体が天然に存在するか、または天然に産生される組織または細胞から分離または除去された抗体は、本発明の目的のための「単離された抗体」である。単離された抗体は、組換え細胞内の原位置の抗体も含む。単離された抗体は、少なくとも1つの精製または単離ステップを受けた抗体である。ある特定の実施形態によれば、単離された抗体は、他の細胞性物質および/または化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0067】
本明細書論じられる抗体は、抗体が由来した対応する生殖系列配列と比較して、重鎖および軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域および/またはCDR領域において1つ以上のアミノ酸置換、挿入、および/または欠失を含み得る。かかる変異は、本明細書に開示されるアミノ酸配列を、例えば、公共の抗体配列データベースから入手可能な生殖系列配列と比較することによって、容易に確認され得る。本発明は、本明細書に開示されるアミノ酸配列のうちのいずれかに由来する抗体およびその抗原結合断片を含み、1つ以上のフレームワーク領域および/またはCDR領域内の1つ以上のアミノ酸は、抗体が由来した生殖系列配列の対応する残基(複数可)に変異するか、または別のヒト生殖系列配列の対応する残基(複数可)に変異するか、または対応する生殖系列残基(複数可)の保存的アミノ酸置換に変異する(かかる配列変化は、本明細書で集合的に「生殖系列変異」と称される)。当業者であれば、本明細書に開示される重鎖および軽鎖可変領域配列から出発して、1つ以上の個々の生殖系列変異またはそれらの組み合わせを含む多数の抗体および抗原結合断片を容易に産生することができる。ある特定の実施形態では、Vおよび/またはVドメイン内のフレームワークおよび/またはCDR残基は全て、抗体が由来した元の生殖系列配列に見られる残基に戻り変異する。他の実施形態では、ある特定の残基のみが元の生殖系列配列に戻り変異し、例えば、変異した残基が、FR1の最初の8つのアミノ酸内またはFR4の最後の8つのアミノ酸内にのみ見られるか、または変異した残基が、CDR1、CDR2、またはCDR3内にのみ見られる。他の実施形態では、フレームワークおよび/またはCDR残基(複数可)のうちの1つ以上は、異なる生殖系列配列(すなわち、抗体が本来由来した生殖系列配列とは異なる生殖系列配列)の対応する残基(複数可)に変異する。さらに、本発明の抗体は、フレームワークおよび/またはCDR領域内に2つ以上の生殖系列変異の任意の組み合わせを含んでもよく、例えば、ある特定の個々の残基が、特定の生殖系列配列の対応する残基に変異する一方で、元の生殖系列配列とは異なるある特定の他の残基は、維持されるか、または異なる生殖系列配列の対応する残基に変異する。いったん得られれば、1つ以上の生殖系列変異を含む抗体および抗原結合断片は、結合特異性の改善、結合親和性の増加、アンタゴニストまたはアゴニスト生物学的特性の改善または増強(場合によって)、免疫原性の低下などの1つ以上の所望の特性について容易に試験することができる。この一般的な様式で得られた抗体および抗原結合断片は、本発明の範囲内に包含される。
【0068】
本発明は、1つ以上の保存的置換を有する本明細書に開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のうちのいずれかのバリアントを含む抗体も含む。例えば、本発明は、本明細書に記載のHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列に対して例えば、10以下、8以下、6以下、4以下などのいずれか保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列を有する抗体、WO2014/047231またはWO2017/053856に開示されている抗CD3抗体、WO2014/047231に開示されている二重特異性抗CD20×抗CD3抗体、WO2017/023761に開示されている抗PSMAまたは抗PSMA×抗CD3抗体、WO2018/067331に開示されている抗MUC16または抗MUC16×抗CD3抗体、WO2018/058001に開示されている抗STEAP2または抗STEAP2×抗CD3抗体、またはUS62/700,596(2018年7月19日に出願)に開示されている抗BCMAまたは抗BCMA×抗CD3抗体、を含み、これらは各々参照により本明細書に組み込まれる。
【0069】
「エピトープ」という用語は、パラトープとして既知の抗体分子の可変領域における特異的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原は、1つより多くのエピトープを有し得る。したがって、異なる抗体は抗原上の異なる領域に結合し得、異なる生物学的効果を有し得る。エピトープは、立体配座または直鎖状のいずれかであり得る。立体配座エピトープは、直鎖状ポリペプチド鎖の異なるセグメント由来の空間的に並置されたアミノ酸によって産生される。直鎖状エピトープは、ポリペプチド鎖内の隣接するアミノ酸残基によって産生されたものである。ある特定の状況では、エピトープは、抗原上のサッカリド、ホスホリル基、またはスルホニル基の部分を含み得る。
【0070】
「実質的同一性」または「実質的に同一である」という用語は、核酸またはその断片を指す場合、別の核酸(またはその相補鎖)との適切なヌクレオチド挿入または欠失と最適に整列させた場合、以下で論じられるように、FASTA、BLAST、またはGapなどの既知の任意の配列同一性アルゴリズムによって測定される、ヌクレオチド塩基の少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約96%、97%、98%、または99%においてヌクレオチド配列が同一であることを示す。参照核酸分子と実質的同一性を有する核酸分子は、ある特定の場合では、参照核酸分子によってコードされるポリペプチドと同じまたは実質的に同様のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードし得る。
【0071】
ポリペプチドに適用される場合、「実質的類似性」または「実質的に類似の」という用語は、2つのペプチド配列が、既定のギャップ重みを使用してプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適に整列させた場合、少なくとも95%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%または99%の配列同一性を共有する。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換が異なる。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、同様の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を備えた側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されたものである。概して、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変化させない。2つ以上のアミノ酸配列の保存的置換が互いに異なる場合、配列同一性パーセントまたは類似性程度は、置換の保存的性質を補正するために上向きに調整され得る。この調整を行うための手段は、当業者に周知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれるPearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307-331を参照されたい。同様の化学的特性を備えた側鎖を有するアミノ酸基の例には、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン、(2)脂肪族ヒドロキシル側鎖:セリンおよびトレオニン、(3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン、(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン、(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、およびヒスチジン、(6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸、ならびに(7)硫黄含有含硫側鎖:システインおよびメチオニンが挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換基は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸塩-アスパラギン酸塩、およびアスパラギン-グルタミンである。あるいは、保存的置換とは、参照により本明細書に組み込まれるGonnet et al.(1992)Science 256:1443-1445に開示されるPAM250対数尤度行列において正値を有する任意の変化である。「中程度に保存的な」置換とは、PAM250対数尤度行列において非負値を有する任意の変化である。
【0072】
配列同一性とも呼ばれるポリペプチドの配列類似性は、典型的には、配列分析ソフトウェアを使用して測定される。タンパク質分析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む様々な置換、欠失、および他の修飾に割り当てられた類似性の測定値を使用して類似の配列を一致させる。例えば、GCGソフトウェアは、異なる種の生物由来の相同ポリペプチドなどの密接に関連するポリペプチド間または野生型タンパク質とその変異タンパク質との間の配列相同性または配列同一性を決定するための既定パラメータとともに使用され得るGapおよびBestfitなどのプログラムを含む。例えば、GCGバージョン6.1を参照されたい。ポリペプチド配列は、GCGバージョン6.1のプログラムである既定パラメータまたは推奨パラメータを用いたFASTAを使用して比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、問い合わせ配列と検索配列との間の最良重複領域の整列および配列同一性パーセントを提供する(Pearson(2000)(上記参照))。本発明の配列を、異なる生物由来の多数の配列を含むデータベースと比較する際の別の好ましいアルゴリズムは、既定パラメータを使用したコンピュータプログラムBLAST、特にBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、各々参照により本明細書に組み込まれる、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410およびAltschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-402を参照されたい。
【0073】
投与戦略および投与計画
様々な治療法のために患者に治療用タンパク質を投与することにより、サイトカイン放出症候群(CRS)または注入関連反応(IRR)の有病率または重症度、あるいはその両方を軽減する投与計画を提供する投与戦略が作成された。本発明の特定の実施形態によれば、これらの戦略は、投与計画を作成するために定義された時間経過にわたって対象に投与され得る治療用タンパク質または抗原結合分子(例えば、抗体または二重特異性抗体)の複数回投与を含む。本発明のこの態様による方法は、本発明の治療用タンパク質の複数回用量を対象へ連続的に投与することを含む。本発明で使用する場合、「連続的に投与すること」は、治療用タンパク質の各用量が、異なる時点、例えば、所定の間隔(例えば、数時間、数日、数週間、または数か月)よって分けられた異なる日に、対象へ投与されることを意味する。本発明は、患者に治療用タンパク質の分割一次用量(split primary dose)を、続いて治療用タンパク質の分割二次用量を、任意選択で続いて治療用タンパク質の分割三次用量を、続いて治療用タンパク質の最大週用量の単回用量を、連続的に投与することを含む、方法を含む。本投与計画は、治療効果を高めるために望ましいが、CRSまたはIRRに関連する有害な影響を伴わない、より高用量の治療用タンパク質を可能にする。特定の理論に拘束されることを意図することなく、本投与計画は、治療投与計画の初期の間でのCRSおよびIRRの発生率および重症度を最小限に抑えるために、治療用タンパク質の投与に対する免疫応答のプライミングを提供し、これにより、CRSまたはIRRに関連する重大な有害事象を伴わない、治療投与計画のその後の期間での治療用タンパク質の高用量を可能にする。
【0074】
例示的な投与計画は、(i)投与計画の第1週(W1)に治療用タンパク質の一次用量の画分を投与することであって、一次用量は、1mg以下の治療用タンパク質を含み、第1の用量画分(F1D1)は一次用量の50%を構成し、第1週の1日目に対象に投与され、第2の用量画分(F2D1)は総一次用量の50%を構成し、F1D1の投与後96時間以内に対象に投与される、投与することと、(ii)投与計画の第2週(W2)に治療用タンパク質の二次用量の画分を投与することであって、二次用量は、治療用タンパク質の最大週用量の半分以下であり、第1の用量画分(F1D2)は二次用量の50%を構成し、第2の投与画分(F2D2)は二次用量の50%を構成し、F1D2およびF2D2は投与計画の第2週の間に互いに96時間以内に対象に投与される、投与することと、(iii)投与計画のその後の週(Ws)に、治療用タンパク質の最大週用量を単回用量として対象に投与することと、とを含む。
【0075】
別の例示的な投与計画は、(i)投与計画の第1週(W1)に治療用タンパク質の一次用量の画分を投与することであって、一次用量は、1mg以下の治療用タンパク質を含み、第1の用量画分(F1D1)は一次用量の50%を構成し、第1週の1日目に対象に投与され、第2の用量画分(F2D1)は総一次用量の50%を構成し、F1D1の投与後96時間以内に対象に投与される、投与することと、(ii)投与計画の第2週(W2)に治療用タンパク質の二次用量の画分を投与することであって、二次用量は、治療用タンパク質の最大週用量の半分以下であり、第1の用量画分(F1D2)は二次用量の50%を構成し、第2の用量画分(F2D2)は二次用量の50%を構成し、F1D2およびF2D2は投与計画の第2週の間に互いに96時間以内に対象に投与される、投与することと、(iii)投与計画の第3週(W3)に治療用タンパク質の三次用量の画分を投与することであって、三次用量は、治療用タンパク質の最大週用量の半分以上、かつ治療用タンパク質の最大週用量未満であり、第1の用量画分(F1D3)は三次用量の50%を構成し、第2の用量画分(F2D3)は三次用量の50%を構成し、F1D3およびF2D3は投与計画の第3週の間に互いに96時間以内に対象に投与される、投与することと、(iv)投与計画のその後の週(Ws)において、治療用タンパク質の最大週用量を単回用量として対象に投与することと、を含む。
【0076】
様々な実施形態では、治療用タンパク質の一次用量は、0.1mg~10mgまたはそれ以上の範囲であり得る。場合によっては、治療用タンパク質の一次用量は、0.5mg~10mg、1~10mg、2~5mg、または5~10mgである。場合によっては、治療用タンパク質の一次用量は、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5または10mgである。様々な実施形態では、治療用タンパク質の一次用量は、範囲の上限または下限として上記された値のいずれかを含む範囲を含む(例えば、1~5mg)。
【0077】
様々な実施形態では、治療用タンパク質の最大週用量は、5mg~320mgである。いくつかの実施形態では、治療用タンパク質の最大週用量は、5mgを超えて320mgまでである。場合によっては、治療用タンパク質の最大週用量は、6~320mg、10~320mg、5~40mg、5~80mg、5~160mg、12~40mg、18~80mg、40~80mg、80~160mg、160~320mg、5mg、6mg、7mg、8mg、12mg、18mg、27mg、40mg、80mg、160mg、または320mg。場合によっては、治療用タンパク質の最大週用量は5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、または320mgである。様々な実施形態では、治療用タンパク質の最大週用量は、範囲の上限または下限として上記された値のいずれかを含む範囲を含む(例えば、200~300mg)。
【0078】
様々な実施形態では、二次用量は、治療用タンパク質の最大週用量の50%を構成する。場合によっては、二次用量は、治療用タンパク質の最大週用量の、49%、48%、47%、46%、45%、44%、43%、42%、41%、40%、39%、38%、37%、36%、35%、34%、33%、32%、31%、30%、29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%を構成する。場合によっては、治療用タンパク質の二次用量は、範囲の上限または下限として上記された値のいずれかを含む最大週用量のパーセンテージ範囲(例えば、35~50%)を含む。
【0079】
様々な実施形態では、三次用量は、治療用タンパク質の最大週用量の50%を構成する。場合によっては、三次用量は、治療用タンパク質の最大週用量の、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、または90%を構成する。場合によっては、治療用タンパク質の三次用量は、範囲の上限または下限として上記された値のいずれかを含む、最大週用量のパーセンテージ範囲(例えば、50~75%)を含む。
【0080】
様々な実施形態では、一次、二次、および/または三次用量の第1の用量画分および第2の用量画分は、それぞれ、用量の50%を構成する。場合によっては、一次、二次、および/または三次用量の第1の用量画分および第2の用量画分は、総用量の異なるパーセンテージ(合計100%)を含む。例えば、第1の用量画分は、用量の45%を構成し得、第2の用量画分は、用量の55%を構成し得る。あるいは、第1の用量画分は、用量の55%を構成し得、第2の用量画分は、用量の45%を構成し得る。様々な実施形態では、第1および第2の用量画分は、それぞれ総一次、二次、または三次用量の10%/90%、15%/85%、20%/80%、25%/75%、30%/70%、35%/65%、40%/60%、46%/54%、47%/53%、48%/52%、49%/51%、またはその逆を含み得る。
【0081】
様々な実施形態では、一次、二次および/または三次用量(D1、D2および/またはD3)は、2つ以上の画分に分割され得る。用量を2つの画分に分割するための様々なオプションについては上記で論じられている。しかしながら、場合によっては、用量が3、4、または5つ画分に分割される。例えば、一次用量は、それぞれが総一次用量の20%を構成する5つの画分に分割することができ、各用量画分(F1D1、F2D1、F3D1、F4D1、およびF5D1)は、投与計画の第1週期間中5日間連続して対象に投与することができる。他の場合では、総用量(例えば、一次用量)のパーセンテージは、各用量画分の間で変化する可能性がある。例えば、一次用量が3つの画分に分割されている場合、第1の用量画分(F1D1)には総一次線量の30%が含まれ、第2の用量画分(F2D1)には合計一次用量の30%が含まれ、第3の用量画分(F3D1)には率には、総一次用量の残り40%が含まれていてよい。総用量の100%に等しいパーセンテージおよび分割用量(fractional dose)の数の、他の組み合わせが、本明細書で明確に企図されている。
【0082】
投与計画の1つの例示的な実施形態では、治療用タンパク質を、一次用量では1mg含み、第1の用量画分(F1D1)および第2の用量画分(F2D1)の各々では500mcg含み、二次用量では6mgを含み、第1の用量画分(F1D2)および第2の用量画分(F2D2)の各々では3mg含み、三次用量では12mg含み、第1の用量画分(F1D3)および第2の用量画分F2D3)の各々では6mg含み、最大週用量では12mg含む。
【0083】
投与計画の1つの例示的な実施形態では、治療用タンパク質を、一次用量では1mg含み、第1の用量画分(F1D1)および第2の用量画分(F2D1)の各々では500mcg含み、二次用量では9mg含み、第1の用量画分(F1D2)および第2の用量画分(F2D2)の各々では4.5mg含み、三次用量では18mg含み、第1の用量画分(F1D3)および第2の用量画分F2D3)の各々では9mg含み、最大週用量では18mg含む。
【0084】
投与計画の1つの例示的な実施形態では、治療用タンパク質を、一次用量では1mg含み、第1の用量画分(F1D1)および第2の用量画分(F2D1)の各々では500mcg含み、二次用量では13.5mg含み、第1の用量画分(F1D2)および第2の用量画分(F2D2)の各々では6.75mg含み、三次用量では27mg含み、第1の用量画分(F1D3)および第2の用量画分F2D3)の各々では13.5mg含み、最大週用量では27mg含む。
【0085】
投与計画の1つの例示的な実施形態では、治療用タンパク質を、一次用量では1mg含み、第1の用量画分(F1D1)および第2の用量画分(F2D1)の各々では500mcg含み、二次用量では20mg含み、第1の用量画分(F1D2)および第2の用量画分(F2D2)の各々では10mg含み、三次用量では40mg含み、第1の用量画分(F1D3)および第2の用量画分F2D3)の各々では20mg含み、最大週用量では40mg含む。
【0086】
投与計画の1つの例示的な実施形態では、治療用タンパク質を、一次用量では1mg含み、第1の用量画分(F1D1)および第2の用量画分(F2D1)の各々では500mcg含み、二次用量では20mg含み、第1の用量画分(F1D2)および第2の用量画分(F2D2)の各々では10mg含み、三次用量では60mg含み、第1の用量画分(F1D3)および第2の用量画分F2D3)の各々では30mg含み、最大週用量では80mg含む。
【0087】
投与計画の1つの例示的な実施形態では、治療用タンパク質を、一次用量では1mg含み、第1の用量画分(F1D1)および第2の用量画分(F2D1)の各々では500mcg含み、二次用量では20mg含み、第1の用量画分(F1D2)および第2の用量画分(F2D2)の各々では10mg含み、三次用量では80mg含み、第1の用量画分(F1D3)および第2の用量画分F2D3)の各々では40mg含み、最大週用量では160mg含む。
【0088】
投与計画の1つの例示的な実施形態では、治療用タンパク質を、一次用量では1mg含み、第1の用量画分(F1D1)および第2の用量画分(F2D1)の各々では500mcg含み、二次用量では20mg含み、第1の用量画分(F1D2)および第2の用量画分(F2D2)の各々では10mg含み、三次用量では120mg含み、第1の用量画分(F1D3)および第2の用量画分F2D3)の各々では60mg含み、最大週用量では240mg含む。
【0089】
投与計画の1つの例示的な実施形態では、治療用タンパク質を、一次用量では1mg含み、第1の用量画分(F1D1)および第2の用量画分(F2D1)の各々では500mcg含み、二次用量では20mg含み、第1の用量画分(F1D2)および第2の用量画分(F2D2)の各々では10mg含み、三次用量では160mg含み、第1の用量画分(F1D3)および第2の用量画分F2D3)の各々では80mg含み、最大週用量では320mg含む。
【0090】
投与計画の1つの例示的な実施形態では、治療用タンパク質を、一次用量(D1)では1mg含み、一次用量の第1の用量画分(F1D1)および第2の用量画分(F2D2)の各々では500mcg含み、二次用量(D2)では3mg含み、二次用量の第1の用量画分(F1D2)および第2の用量画分(F2D2)では各々1.5mg含み、最大週用量では3mg含む。
【0091】
投与計画の1つの例示的な実施形態では、治療用タンパク質を、一次用量(D1)では3mg含み、一次用量の第1の用量画分(F1D1)および第2の用量画分(F2D2)の各々では1.5mg含み、二次用量(D2)では9mg含み、二次用量の第1の用量画分(F1D2)および第2の用量画分(F2D2)の各々では4.5mg含み、最大週用量では9mg含む。
【0092】
投与計画の1つの例示的な実施形態では、治療用タンパク質を、一次用量(D1)では5mg含み、一次用量の第1の用量画分(F1D1)および第2の用量画分(F2D2)の各々では2.5mg含み、二次用量(D2)では15mg含み、二次用量の第1の用量画分(F1D2)および第2の用量画分(F2D2)の各々では7.5mg含み、最大週用量では15mg含む。
【0093】
投与計画の1つの例示的な実施形態では、治療用タンパク質を、一次用量(D1)では10mg含み、一次用量の第1の用量画分(F1D1)および第2の用量画分(F2D2)の各々では5mg含み、二次用量(D2)では30mg含み、二次用量の第1の用量画分(F1D2)および第2の用量画分(F2D2)の各々では15mg含み、最大週用量では30mg含む。
【0094】
様々な実施形態では、治療用タンパク質は、投与計画の期間中の最大週用量の投与後に、少なくとも約2000mcg/Lの血清濃度を維持する用量で投与される。場合によっては、治療用タンパク質は、投与計画の期間中の最大週用量の投与後に、少なくとも約2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、または3500mcg/Lの血清濃度を維持する用量で投与される。
【0095】
様々な実施形態では、治療用タンパク質は、投与計画の期間中の最大週用量の投与後に、少なくとも約2600mcg/Lの平均血清濃度を維持する用量で投与される。場合によっては、治療用タンパク質は、投与計画の期間中の最大週用量の投与後に、少なくとも約2000、2100、2200、2300、2400、2500、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900または4000mcg/Lの平均血清濃度を維持する用量で投与される。
【0096】
様々な実施形態では、投与計画のその後の週(Ws)は、第3週(W3)、第4週(W4)、第5週(W5)、第6週(W6)、第7週(W7)、第8週(W8)、第9週(W9)、第10週(W10)、第11週(W11)、第12週(W12)、第13週(W13)、第14週(W14)、第15週(W15)、第16週(W16)、第17週(W17)、第18週(W18)、第19週(W19)、第20週(W20)、第21週(W21)、第22週(W22)、第23週(W23)、第24週(W24)、第25週(W25)、第26週(W26)、第27週(W27)、第28週(W29)、第30週(W30)、第31週(31)、第32週(32)、第33週(33)、第34週(W34)、第35週(W35)、または第36週(W36)である。
【0097】
様々な実施形態では、投与計画の任意の所与の週における第2の分割用量は、第1の分割用量の投与後24、36、48、60、72、84または96時間以内に投与される。
【0098】
様々な実施形態では、治療用タンパク質の最大週用量は、投与計画の週1回期の間で、1~8週の間、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26週、もしくはそれ以上の週の間、単回用量として対象に投与される。場合によっては、治療用タンパク質の最大週用量は、範囲の上限または下限として上記された値のいずれかを含む週の範囲(例えば、1~12週間)にわたって単回用量として対象に投与される。
【0099】
様々な実施形態では、治療用タンパク質の最大週用量は、投与計画の2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、もしくは5週間に1回(維持期)の間に、最大24週間、または最大25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260もしくはそれ以上の週の間、2週間に1回、単回用量(維持用量)として対象に投与され、これは投与計画の週1回期(すなわち、最大週用量の週1回投与または一次、二次および(任意選択で)三次用量の分割投与のいずれか)の完了後であり得る。場合によっては、治療用タンパク質の最大週用量は、範囲の上限または下限として上記されている任意の値を含む週の範囲(例えば24~86週間)にわたって、2週間に1回、3週間に1回、または4週間に1回の、単回用量(維持用量)として対象に投与される。
【0100】
投与計画の1つの例示的な実施形態では、治療用タンパク質を、一次用量では1mg含み、第1の用量画分(F1D1)および第2の用量画分(F2D1)の各々では500mcg含み、二次用量では20mg含み、第1の用量画分(F1D2)および第2の用量画分(F2D2)の各々では10mg含み、三次用量では80mg含み、第1の用量画分(F1D3)および第2の用量画分F2D3)の各々では40mgを含み、最大週用量は160mg含み、投与計画の第4週~第12週の間に三次次用量が週1回(QW)単回用量(すなわち80mg)として投与され、投与計画の第14週以降に最大週用量が、2週間に1回(Q2W)単回用量(すなわち160mg)として投与される。
【0101】
場合によっては、上記で特定された投与計画は、侵攻性リンパ腫(aggressive lymphoma)(例えば、マントル細胞リンパ腫または辺縁帯リンパ腫)を治療する方法で使用するためのものである。
【0102】
投与計画の1つの例示的な実施形態では、治療用タンパク質を、一次用量では1mg含み、第1の用量画分(F1D1)および第2の用量画分(F2D1)の各々では500mcg含み、二次用量では20mg含み、第1の用量画分(F1D2)および第2の用量画分(F2D2)の各々では10mg含み、三次用量では160mg含み、第1の用量画分(F1D3)および第2の用量画分F2D3)の各々では80mgを含み、最大週用量は320mg含み、投与計画の第4週~第12週の間に三次用量が週1回(QW)単回用量(すなわち160mg)として投与され、投与計画の第14週以降に最大週用量が、2週間に1回(Q2W)単回用量(すなわち320mg)として投与される。
【0103】
場合によっては、上記で特定された投与計画は、侵攻性リンパ腫(例えば、マントル細胞リンパ腫または辺縁帯リンパ腫)を治療する方法で使用するためのものである。場合によっては、上記で特定された投与計画は、濾胞性リンパ腫(例えば、グレード1~3a)を治療する方法で使用するためのものである。場合によっては、上記で特定された投与計画は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(例えば、以前にCAR-T療法が不成功であった患者の、再発性または難治性のDLBCLを含む)を治療するためのものである。
【0104】
様々な実施形態では、治療用タンパク質の各用量または分割用量は、1~4、1~5、または1~6時間の期間にわたって(例えば、注入を介して)対象に投与される。場合によっては、用量または分割用量は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12時間以上の期間にわたって投与される。場合によっては、治療用タンパク質の各用量または分割用量が、範囲の上限または下限として上記された値のいずれかを含む時間の範囲(例えば、1~8時間)にわたって対象に投与される。様々な実施形態では、各最大週用量は、単回注入として投与される。
【0105】
本明細書で論じられる投与計画のいくつかの実施形態では、第2の薬剤は、前処理として、または治療用タンパク質と組み合わせて投与される。場合によっては、デキサメタゾンなどのステロイドが、一次分割用量および二次分割用量の投与前、および任意選択で三次分割用量の前に、前処理として患者に投与される。いくつかの実施形態では、デキサメタゾンは、第1の用量画分(F1D1)の約1~3時間前に患者に投与される。特定の実施形態では、デキサメタゾン用量は、静脈内注入によって投与される。場合によっては、抗IL-6抗体または抗IL-6R抗体などのサイトカインアンタゴニストが、一次、二次、および任意選択で三次用量の投与中に治療用タンパク質と組み合わせて投与される。場合によっては、抗CD20単一特異性抗体(例えば、リツキシマブ)が、一次分割用量および任意選択で二次分割用量の投与前、および任意選択で三次分割用量の前に、前処理として患者に投与される。第2の薬剤のこれらの前処理または併用投与は、一実施形態では、サイトカイン活性を人為的に弱め、それによって治療用タンパク質の治療効果を妨げないようにするため、投与計画の例えば第3週、第4週、第5週または第6週に開始する最大週用量の単回用量により中止される。
【0106】
「一次用量」、「二次用量」、および「三次用量」という用語は、本発明の抗原結合分子の投与の時系列を指す。したがって、「一次用量」は、治療計画の開始時に投与される用量であり、「二次用量」は、一次用量(一次用量の全ての用量画分を含む)の後に投与される用量であり、「三次用量」は、二次用量(二次用量の全ての用量画分を含む)の後に投与される用量である。一次、二次、および三次用量(またはそれらの用量画分)は、本明細書で論じられるような治療用タンパク質の量を含み得る。場合によっては、「一次用量」および「二次用量」、ならびに任意選択的な「三次用量」は「負荷用量」と称されることがあり、その後の最大週用量は「維持用量」と称されることがある。場合によっては、「一次用量」は「初回用量」と称されることがある。場合によっては、「二次用量」は「中間用量」と称されることがある。場合によっては、「三次用量」は「ステップアップ用量」と称されることがある。
【0107】
「直前の用量」という句は、一連の複数回投与において、介在する用量なしに、順で次の用量を投与する前に患者に投与される抗原結合分子の用量を指す。
【0108】
抗原結合分子
本発明に関連して使用するための抗体は、単一特異性、二重特異性、または多重特異性であり得る。多重特異性抗体は、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的であり得るか、または1つより多くの標的ポリペプチドに特異的な抗原結合ドメインを含み得る。例えば、Tutt et al.,1991,J.Immunol.147:60-69、Kufer et al.,2004,Trends Biotechnol. 22:238-244を参照されたい。本発明の抗体および二重特異性抗体は、別の機能性分子、例えば、別のペプチドまたはタンパク質に連結するか、またはそれと同時発現させることができる。例えば、抗体またはその断片は、別の抗体または抗体断片などの1つ以上の他の分子実体に(例えば、化学的結合、遺伝的融合、非共有結合的会合、または別様により)機能的に連結されて、第2のまたは追加の結合特異性を有する二重特異性または多重特異性抗体を産生することができる。
【0109】
本発明は、本明細書に記載の抗体のHCVR、LCVRおよび/またはCDRアミノ酸配列を有する抗体、WO2014/047231またはWO2017/053856に開示される抗CD3抗体、WO2014/047231に開示される二重特異性抗CD20×抗CD3抗体、WO2017/023761に開示される抗PSMAまたは抗PSMA×抗CD3抗体、WO2018/067331に開示される抗MUC16または抗MUC16×抗CD3抗体、WO2018/058001に開示される抗STEAP2または抗STEAP2×抗CD3抗体、またはUS62/700,596(2018年7月19日に出願)に開示される抗BCMAまたは抗BCMA×抗CD3抗体を含み、これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0110】
本明細書における「抗CD3抗体」、「抗CD20抗体」、「抗PSMA抗体」、抗MUC16抗体、「抗STEAP2抗体」、「抗BCMA抗体」などの表現の使用は、単一特異性抗体、ならびにそれぞれの抗原結合アーム(例えば、CD3)を含む二重特異性抗体の両方を含むことを意図している。したがって、本発明は、免疫グロブリンの一方のアームがヒトCD3に結合し、免疫グロブリンの他方のアームが例えば、ヒトCD20、ヒトPSMA、ヒトMUC16、ヒトSTEAP2、またはヒトBCMAに特異的である二重特異性抗体を含む。
【0111】
ある特定の実施形態では、CD3結合アームは、ヒトCD3に結合し、ヒトT細胞活性化を誘導する。ある特定の実施形態では、CD3結合アームは、ヒトCD3に弱く結合し、ヒトT細胞活性化を誘導する。他の実施形態では、CD3結合アームは、ヒトCD3に弱く結合し、二重特異性抗体または多重特異性抗体との関連で腫瘍関連抗原発現細胞死滅を誘導する。他の実施形態では、CD3結合アームは、ヒトおよびカニクイザル(サル)CD3に弱く結合または会合するが、結合相互作用は当該技術分野で既知のインビトロアッセイによっては検出不能である。特定の実施形態では、本発明で使用するための二重特異性抗体または抗原結合断片は、T細胞の活性化を誘導する、CD28、ICOS、HVEM、CD27、4-1BB、OX40、DR3、GITR、CD30、SLAM、CD2、2B4、CD226、TIM1、またはTIM2に結合する抗原結合アームを含む。
【0112】
本発明のある特定の例示的な実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、二重特異性抗体である。二重特異性抗体の各抗原結合ドメインは、重鎖可変ドメイン(HCVR)および軽鎖可変ドメイン(LCVR)を含む。第1および第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗原結合分子(例えば、二重特異性抗体)との関連で、第1の抗原結合ドメインのCDRは接頭辞「A1」を付けて指定され、第2の抗原結合ドメインのCDRは接頭辞「A2」を付けて指定され得る。したがって、第1の抗原結合ドメインのCDRは、本明細書でA1-HCDR1、A1-HCDR2、およびA1-HCDR3と称され得、第2の抗原結合ドメインのCDRは、本明細書でA2-HCDR1、A2-HCDR2、およびA2-HCDR3と称され得る。
【0113】
一実施形態では、治療用タンパク質は、REGN1979として知られている二重特異性抗CD20×抗CD3抗体である。REGN1979は、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗CD20結合アーム、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗CD3結合アーム、および配列番号12のアミノ酸配列を含む(抗CD20および抗CD3結合アームの両方に対応する)共通の軽鎖を含む。場合によっては、成熟型の抗体は、配列番号10および11のC末端リジン残基を含まない可能性がある。したがって、場合によっては、REGN1979の抗CD20結合アームは、配列番号10の残基1~452を含む重鎖を含み、REGN1979の抗CD3結合アームは、配列番号11の残基1~448を含む重鎖を含む。REGN1979には、添付の配列表に記載されているHCVR、LCVR、およびCDR配列も含まれている。抗CD20のHCVRは配列番号13に対応し、抗CD3 HCVRは配列番号14に対応し、共通のLCVRは配列番号15に対応する。抗CD20のHCDR1-HCDR2-HCDR3ドメインは、それぞれ配列番号16-17-18に対応する。抗CD3のHCDR1-HCDR2-HCDR3ドメインは、それぞれ配列番号19-20-21に対応する。共通のLCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインは、それぞれ配列番号22-23-24に対応する。
【0114】
上記または本明細書で論じられる二重特異性抗原結合分子は、二重特異性抗体であり得る。場合によっては、二重特異性抗体は、ヒトIgG重鎖定常領域を含む。場合によっては、ヒトIgG重鎖定常領域は、アイソタイプIgG1である。場合によっては、ヒトIgG重鎖定常領域は、アイソタイプIgG4である。様々な実施形態では、二重特異性抗体は、同じアイソタイプの野生型ヒンジと比較してFcγ受容体結合を減少させるキメラヒンジを含む。場合によっては、本発明の二重特異性抗原結合分子は、参照により本明細書に組み込まれる、Brinkmann et al.,MABS,9(2):182-212,2017で議論されているフォーマットのいずれか1つを含む。
【0115】
第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインは、互いに直接または間接的に連結されて、本発明の二重特異性抗原結合分子を形成し得る。あるいは、第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインは各々、別個の多量体化ドメインに連結され得る。ある多量体化ドメインと別の多量体化ドメインとの会合により、それらの2つの抗原結合ドメイン間の会合が促進され、それにより、二重特異性抗原結合分子が形成される。本明細書で使用される場合、「多量体化ドメイン」は、同一または類似の構造または構成の第2の多量体化ドメインと会合する能力を有する任意の高分子、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、またはアミノ酸である。例えば、多量体化ドメインは、免疫グロブリンC3ドメインを含むポリペプチドであり得る。多量体化成分の非限定的な例は、免疫グロブリンのFc部分(C2-C3ドメインを含む)、例えば、アイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4から選択されるIgGのFcドメイン、ならびに各アイソタイプ群内の任意のアロタイプである。
【0116】
本発明の二重特異性抗原結合分子は、典型的には、2つの多量体化ドメイン、例えば、各々別個の抗体重鎖の一部である2つのFcドメインを含む。第1および第2の多量体化ドメインは、例えば、IgG1/IgG1、IgG2/IgG2、IgG4/IgG4などの同じIgGアイソタイプのものであり得る。あるいは、第1および第2の多量体化ドメインは、例えば、IgG1/IgG2、IgG1/IgG4、IgG2/IgG4などの異なるIgGアイソタイプのものであり得る。
【0117】
ある特定の実施形態では、多量体化ドメインは、Fc断片または少なくとも1つのシステイン残基を含む1~約200アミノ酸長のアミノ酸配列である。他の実施形態では、多量体化ドメインは、システイン残基、または短いシステイン含有ペプチドである。他の多量体化ドメインには、ロイシンジッパー、ヘリックスループモチーフ、またはコイルドコイルモチーフを含むか、またはそれからなるペプチドまたはポリペプチドが含まれる。
【0118】
任意の二重特異性抗体フォーマットまたは技術を使用して、本発明の二重特異性抗原結合分子を作製することができる。例えば、第1の抗原結合特異性を有する抗体またはその断片は、第2の抗原結合特異性を有する別の抗体または抗体断片などの1つ以上の他の分子実体に(例えば、化学的結合、遺伝的融合、非共有結合、または別様により)機能的に連結されて、二重特異性抗原結合分子を生成することができる。本発明との関連で使用され得る特定の例示的な二重特異性フォーマットには、例えば、scFvベースのフォーマットまたはダイアボディ二重特異性フォーマット、IgG-scFv融合物、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、Quadroma、ノブ・イントゥ・ホール、共通の軽鎖(例えば、ノブ・イントゥ・ホールを備えた共通の軽鎖など)、CrossMab、CrossFab、(SEED)ボディ、ロイシンジッパー、デュオボディ、IgG1/IgG2、二重作用型Fab(DAF)-IgG、およびMab二重特異性フォーマットが含まれるが、これらに限定されない(上述のフォーマットの総説については、例えば、Klein et al.2012,mAbs 4:6,1-11、およびそこに引用されている参考文献を参照されたい)。
【0119】
本発明の二重特異性抗原結合分子との関連で、多量体化ドメイン、例えば、Fcドメインは、Fcドメインの野生型の天然に存在するバージョンと比較して、1つ以上のアミノ酸変化(例えば、挿入、欠失、または置換)を含み得る。例えば、本発明は、FcとFcRnとの間の修飾された結合相互作用(例えば、増強または減少)を有する修飾Fcドメインをもたらす、Fcドメインに1つ以上の修飾を含む二重特異性抗原結合分子を含む。一実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、C2またはC3領域に修飾を含み、この修飾により、酸性環境(例えば、pH範囲約5.5~約6.0のエンドソーム内)においてFcRnに対するFcドメインの親和性が増加する。かかるFc修飾の非限定的な例には、例えば、250位(例えば、EまたはQ)、250位および428位(例えば、LまたはF)、252位(例えば、L/Y/F/WまたはT)、254位(例えば、SまたはT)、および256位(例えば、S/R/Q/E/DまたはT)での修飾、または428位および/もしくは433位(例えば、L/R/S/P/QまたはK)および/または434位(例えば、H/FまたはY)での修飾、または250位および/もしくは428位での修飾、または307位もしくは308位(例えば、308F、V308F)および434位での修飾が挙げられる。一実施形態では、修飾は、428L(例えば、M428L)および434S(例えば、N434S)修飾、428L、259I(例えば、V259I)、および308F(例えば、V308F)修飾、433K(例えば、H433K)および434(例えば、434Y)修飾、252、254、および256(例えば、252Y、254T、および256E)修飾、250Qおよび428L修飾(例えば、T250QおよびM428L)、ならびに307および/または308修飾(例えば、308Fまたは308P)を含む。
【0120】
本発明は、第1のC3ドメインおよび第2のIg C3ドメインを含む二重特異性抗原結合分子も含み、第1および第2のIg C3ドメインは、少なくとも1つのアミノ酸が互いに異なり、少なくとも1つのアミノ酸の差により、そのアミノ酸の差を欠く二重特異性抗体と比較して、プロテインAへの二重特異性抗体の結合が減少する。一実施形態では、第1のIg C3ドメインは、プロテインAに結合し、第2のIg C3ドメインは、H95R修飾(IMGTエクソン番号付けによるもの、EU番号付けによるH435R)などのプロテインA結合を減少または消失させる変異を含む。第2のC3は、Y96F修飾(IMGTによるもの、EUによるY436F)をさらに含み得る。例えば、米国特許第8,586,713号を参照されたい。第2のC3内に見られ得るさらなる修飾には、IgG1抗体の場合、D16E、L18M、N44S、K52N、V57M、およびV82I(IMGTによるもの、EUによるD356E、L358M、N384S、K392N、V397M、およびV422I)、IgG2抗体の場合、N44S、K52N、およびV82I(IMGTによるもの、EUによるN384S、K392N、およびV422I)、ならびにIgG4抗体の場合、Q15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、およびV82I(IMGTによるもの、EUによるQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、およびV422I)が含まれる。
【0121】
ある特定の実施形態では、Fcドメインは、1つより多くの免疫グロブリンアイソタイプに由来するFc配列を組み合わせたキメラであり得る。例えば、キメラFcドメインは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4 C2領域に由来するC2配列の一部または全部、およびヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4に由来するC3配列の一部または全部を含み得る。キメラFcドメインは、キメラヒンジ領域も含み得る。例えば、キメラヒンジは、ヒトIgG1ヒンジ領域、ヒトIgG2ヒンジ領域、またはヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「下部ヒンジ」配列と組み合わせられた、ヒトIgG1ヒンジ領域、ヒトIgG2ヒンジ領域、またはヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「上部ヒンジ」配列を含み得る。本明細書に記載の抗原結合分子のうちのいずれかに含まれ得るキメラFcドメインの具体的な例は、N末端からC末端に、[IgG4 C1]-[IgG4上部ヒンジ]-[IgG2下部ヒンジ]-[IgG4 CH2]-[IgG4 CH3]を含む。本明細書に記載の抗原結合分子のうちのいずれかに含まれ得るキメラFcドメインの別の例は、N末端からC末端に、[IgG1 C1]-[IgG1上部ヒンジ]-[IgG2下部ヒンジ]-[IgG4 CH2]-[IgG1 CH3]を含む。本発明の抗原結合分子のうちのいずれかに含まれ得るキメラFcドメインのこれらおよび他の例は、全体が本明細書に組み込まれる、2014年8月28日に公開された米国公開第2014/0243504号に記載されている。これらの一般的な構造配置を有するキメラFcドメインおよびそのバリアントは、改変されたFc受容体結合を有し得、次いで、Fcエフェクター機能に影響を及ぼす。
【0122】
抗原結合分子の結合特性
抗体、免疫グロブリン、抗体結合断片、またはFc含有タンパク質のいずれかが、例えば、細胞表面タンパク質またはその断片などの所定の抗原へ結合することに関連する用語「結合」は、典型的には、抗体-抗原相互作用などの、最低2つの実体または分子構造間の相互作用または会合を指す。
【0123】
例えば、結合親和性は、リガンドとして抗原および、分析物(または抗リガンド)として抗体、Ig、抗体結合断片、またはFc含有タンパク質を使用して、例えば、BIAcore 3000機器における表面プラズモン共鳴(SPR)技術により決定される場合、典型的には約10-7M以下、例えば約10-8M以下、例えば約10-9M以下のK値に対応する。蛍光活性化セルソーティング(FACS)結合アッセイなどの細胞ベースの結合戦略もまた日常的に使用されており、FACSデータは放射性リガンド競合結合およびSPR(Benedict,CA,J Immunol Methods1997,201(2):223-31、Geuijen,CA,et al.J Immunol Methods.2005,302(1-2):68-77)などの他の方法とよく相関する。
【0124】
したがって、本発明の抗体または抗原結合タンパク質は、非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)へ結合するその親和性よりも少なくとも10倍低いK値に対応する親和性を有する所定の抗原または細胞表面分子(受容体)に結合する。本発明によれば、非特異的抗原よりも10倍以下の低いK値に対応する抗体の親和性は、検出不可能な結合とみなすことができるが、そのような抗体は、本発明の二重特異性抗体を産生するための第2の抗原結合アームと対をなすことができる。
【0125】
「K」(M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数、または抗原に結合する抗体もしくは抗体結合断片の解離平衡定数を指す。Kと結合親和性との間には逆の関係があり、したがって、K値が小さいほど、親和性は高い、すなわちより強い。したがって、「より高い親和性」または「より強い親和性」という用語は、相互作用を形成するより高い能力、つまりより小さいK値に関し、逆に「より低い親和性」または「より弱い親和性」という用語は、相互作用を形成するより低い能力、つまりより大きなK値に関する。状況によっては、他の相互作用パートナー分子(例えば抗原Y)に対する分子(例えば抗体)の結合親和性と比較して、その相互作用パートナー分子(例えば抗原X)に対する特定の分子(例えば抗体)のより高い結合親和性(またはK)は、より大きなK値(より低い、またはより弱い、親和性)をより小さなK(より高い、またはより強い、親和性)で割ることによって決定される結合比として表され、例えば、場合によって5倍または10倍高い結合親和性として表される。
【0126】
「k」(秒-1または1/秒)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数、または抗体もしくは抗体結合断片の解離速度定数を指す。その値はkoff値とも呼ばれる。
【0127】
「k」(M-1×秒-1または1/M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度定数、または抗体もしくは抗体結合断片の会合速度定数を指す。
【0128】
「K」(M-1または1/M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の会合平衡定数、または抗体もしくは抗体結合断片の会合平衡定数を指す。会合平衡定数は、kをkで割ることによって得られる。
【0129】
「EC50」または「EC50」という用語は、半数効果濃度(half maximal effective concentration)を指し、特定の曝露時間後にベースラインと最大値との間の中間で反応(response)を誘導する抗体の濃度を含む。EC50は、その最大効果の50%が観察される抗体の濃度を本質的に表す。ある特定の実施形態では、EC50値は、例えばFACS結合アッセイによって決定されるように、例えばCD3または腫瘍関連抗原(例えばCD20)を発現する細胞に最大半量の結合を与える本発明の抗体の濃度に等しい。したがって、低下したまたは弱い結合は、EC50の増加、または半数効果濃度値で観察される。
【0130】
一実施形態では、結合の低下は、最大半量の標的細胞への結合を可能にするEC50抗体濃度の増加として定義することができる。
【0131】
別の実施形態では、EC50値は、T細胞の細胞傷害活性による標的細胞の最大半量の枯渇を誘発する本発明の抗体の濃度を表す。したがって、細胞傷害活性の増加(例えば、T細胞媒介性腫瘍細胞死滅)は、EC50または半数効果濃度値の低下で観察される。
【0132】
配列バリアント
本明細書の抗体および二重特異性抗原結合分子は、個々の抗原結合ドメインが由来した対応する生殖系列配列と比較して、重鎖および軽鎖可変ドメインのフレームワークおよび/またはCDR領域に1つ以上のアミノ酸置換、挿入および/または欠失を含み得る。かかる変異は、本明細書に開示されるアミノ酸配列を、例えば、公共の抗体配列データベースから入手可能な生殖系列配列と比較することによって、容易に確認され得る。本発明の抗原結合分子は、本明細書に開示される例示的なアミノ酸配列のいずれかに由来する抗原結合ドメインを含んでもよく、1つ以上のフレームワークおよび/またはCDR領域内の1つ以上のアミノ酸は、その抗体が由来した生殖系列配列の対応する残基(複数可)に変異するか、または別のヒト生殖系列配列の対応する残基(複数可)に変異するか、または対応する生殖系列残基(複数可)の保存的アミノ酸置換に変異する(かかる配列変化は本明細書で集合的に「生殖系列変異」と呼ばれる)。当業者であれば、本明細書に開示される重鎖および軽鎖可変領域配列から出発して、1つ以上の個々の生殖系列変異またはそれらの組み合わせを含む多数の抗体および抗原結合断片を容易に産生することができる。特定の実施形態では、Vドメインおよび/またはVドメイン内のフレームワークおよび/またはCDR残基は全て、抗原結合ドメインが本来由来した元の生殖系列配列に認められる残基へと変異して戻る。他の実施形態では、ある特定の残基のみが元の生殖系列配列に戻り変異し、例えば、変異した残基が、FR1の最初の8つのアミノ酸内またはFR4の最後の8つのアミノ酸内にのみ見られるか、または変異した残基が、CDR1、CDR2、またはCDR3内にのみ見られる。他の実施形態では、フレームワークおよび/またはCDR残基(複数可)の1つ以上は、異なる生殖系列配列(すなわち、抗原結合ドメインが本来由来した生殖系列配列とは異なる生殖系列配列)の対応する残基(複数可)へ変異する。さらに、抗原結合ドメインは、フレームワークおよび/またはCDR領域内に2つ以上の生殖系列変異の任意の組み合わせを含んでもよく、例えば、特定の個々の残基が、特定の生殖系列配列の対応する残基へ変異するのに対し、元の生殖系列配列とは異なるある特定の他の残基は維持されるか、または異なる生殖系列配列の対応する残基に変異する。いったん得られれば、1つ以上の生殖系列変異を含む抗原結合ドメインは、結合特異性の改善、結合親和性の増加、アンタゴニストまたはアゴニストの生物学的特性の改善または増強(場合によって)、免疫原性の低下などの1つ以上の所望の特性について容易に試験することができる。この一般的な様式で得られた1つ以上の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗原結合分子は、本発明の範囲内に包含される。
【0133】
pH依存的結合
本発明は、pH依存的結合特性を有する、抗体および二重特異性抗原結合分子を含む。例えば、本発明の抗体は、中性pHと比較して酸性pHで、例えば、CD20などの腫瘍抗原への結合の低減を呈し得る。あるいは、本発明の抗体は、中性pHと比較して酸性pHで、例えば、CD20などの腫瘍抗原への結合の増強を呈し得る。「酸性pH」という表現は、約6.2未満、例えば、約6.0、5.95、5、9、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0以下のpH値を含む。「中性pH」という表現は、約7.0~約7.4のpHを意味する。「中性pH」という表現は、約7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、および7.4のpH値を含む。
【0134】
場合によっては、「中性pHと比較して、酸性pHで...結合の低下」は、中性pHでその抗原に結合する抗体のK値に対する酸性pHでその抗原に結合する抗体のK値の比に関して、表される(またはその逆)。例えば、抗体またはその抗原結合断片が、約3.0以上の酸性/中性K比を呈する場合、本発明の目的のために、抗体またはその抗原結合断片は、「中性pHと比較して酸性pHでCD20への結合の低下」を呈するとみなされ得る。特定の例示的実施形態では、本発明の抗体または抗原結合断片の酸性/中性K比は、約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、20.0、25.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、100.0以上であり得る。
【0135】
pH依存性結合特性を有する抗体は、例えば、中性pHと比較して酸性pHで特定の抗原への結合の低下(または増強)について抗体の集団をスクリーニングすることによって得ることができる。さらに、アミノ酸レベルでの抗原結合ドメインの修飾は、pH依存的特徴を有する抗体を産生し得る。例えば、抗原結合ドメイン(例えばCDR内)の1つ以上のアミノ酸をヒスチジン残基で置換することにより、中性pHに対して酸性pHで抗原結合が低下した抗体を得ることができる。
【0136】
Fcバリアントを含む抗体
本発明の特定の実施形態によれば、例えば、中性pHと比較して酸性pHで、FcRn受容体への抗体結合を増強または減少させる1つ以上の突然変異を含むFcドメインを含む、抗体および二重特異性抗原結合分子が提供される。例えば、本発明は、FcドメインのC2またはC3領域での変異を含む抗体を含み、変異(複数可)は、酸性環境において(例えば、pHが約5.5~約6.0の範囲のエンドソームにおいて)FcRnに対するFcドメインの親和性を増加させる。そのような変異は、動物に投与したときに抗体の血清半減期の増加をもたらし得る。そのようなFc修飾の非限定的な例には、例えば、250位(例えば、EまたはQ)での、250位および428位(例えば、LまたはF)での、252位(例えば、L/Y/F/WまたはT)、254位(例えば、SまたはT)、および256位(例えば、S/R/Q/E/DまたはT)での修飾、あるいは428位および/または433位(例えばH/L/R/S/P/QまたはK)および/または434位(例えばH/FまたはY)での修飾、あるいは250位および/または428位での修飾、あるいは307位もしくは308位(例えば、308F、V308F)、および434位での修飾が含まれる。一実施形態では、修飾は、428L(例えば、M428L)および434S(例えば、N434S)修飾、428L、259I(例えば、V259I)、および308F(例えば、V308F)修飾、433K(例えば、H433K)および434(例えば、434Y)修飾、252、254、および256(例えば、252Y、254T、および256E)修飾、250Qおよび428L修飾(例えば、T250QおよびM428L)、ならびに307および/または308修飾(例えば、308Fまたは308P)を含む。
【0137】
例えば、本発明は、250Qおよび248L(例えば、T250QおよびM248L);252Y、254Tおよび256E(例えば、M252Y、S254TおよびT256E);428Lおよび434S(例えば、M428LおよびN434S);ならびに433Kおよび434F(例えば、H433KおよびN434F)からなる群から選択される、1つ以上の変異対または変異群を含むFcドメインを含む、抗体および二重特異性抗原結合分子を含む。前述のFcドメイン変異、および本明細書に開示される抗体可変ドメイン内の他の変異の全ての可能な組み合わせが、本発明の範囲内で熟慮される。
【0138】
抗原結合ドメインの調製と二重特異性分子の構築
特定の抗原に特異的な抗原結合ドメインは、当該技術分野で既知の任意の抗体産生技術によって調製することができる。いったん得られれば、2つの異なる抗原(例えばCD3およびCD20)に特異的な2つの異なる抗原結合ドメインを互いに適切に配置して、常法を用いて本発明の二重特異性抗原結合分子を産生することができる。(本発明の二重特異性抗原結合分子を構築するために使用できる例示的な二重特異性抗体フォーマットの考察は、本明細書の他所に提供される)。ある特定の実施形態では、本発明の多重特異性抗原結合分子の1つ以上の個々の構成要素(例えば、重鎖および軽鎖)は、キメラ抗体、ヒト化抗体または完全ヒト抗体に由来する。そのような抗体を作製するための方法は当該技術分野において周知である。例えば、本発明の二重特異性抗原結合分子の1つ以上の重鎖および/または軽鎖は、VELOCIMMUNE(商標)技術を用いて調製することができる。VELOCIMMUNE(商標)技術(または任意の他のヒト抗体産生技術)を使用して、特定の抗原(例えば、CD3またはCD20)に対する高親和性キメラ抗体が、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有して最初に単離される。抗体を、親和性、選択性、エピトープなどを含む望ましい特徴について特徴付けし、選択する。マウス定常領域は、所望のヒト定常領域と置換されて、本発明の二重特異性抗原結合分子に組み込まれ得る完全ヒト重鎖および/または軽鎖を産生する。
【0139】
遺伝子操作された動物は、ヒト二重特異性抗原結合分子を作製するために使用され得る。例えば、内在性マウス免疫グロブリン軽鎖可変配列を再編成および発現することができない、遺伝子改変マウスを使うことができ、マウスは、内在性マウスカッパ遺伝子座のマウスカッパ定常遺伝子に作動可能に連結されているヒト免疫グロブリン配列によってコードされる1つまたは2つのヒト軽鎖可変ドメインのみを発現する。そのような遺伝子改変マウスを使用して、2つの異なるヒト軽鎖可変領域遺伝子セグメントのうちの1つに由来する可変ドメインを含む同一の軽鎖と会合する2つの異なる重鎖を含む完全ヒト二重特異性抗原結合分子を産生することできる。(例えば、US2011/0195454を参照されたい)。完全ヒトとは、抗体またはその抗原結合断片もしくは免疫グロブリンドメインの各ポリペプチドの全長にわたるヒト配列に由来するDNAによってコードされるアミノ酸配列を含む、抗体、またはその抗原結合断片もしくは免疫グロブリンドメインを指す。いくつかの例において、完全ヒト配列は、ヒトの内在性タンパク質に由来する。他の例において、完全ヒトタンパク質またはタンパク質配列は、各成分配列がヒト配列に由来するキメラ配列を含む。いずれの理論にも縛られないが、キメラタンパク質またはキメラ配列は、一般に、例えば任意の野生型ヒト免疫グロブリン領域またはドメインと比較して、成分配列の接合部における免疫原性エピトープの作成を最小にするように設計される。
【0140】
生物学的等価物
本発明は、本明細書に開示される例示的な分子のものとは異なるが、同じ抗原または抗原類に結合する能力を保持するアミノ酸配列を有する抗原結合分子を包含する。このようなバリアント抗体は、親配列と比較してアミノ酸の1つ以上の付加、欠失、または置換を含み得るが、説明された抗体または二重特異性抗原結合分子の生物学的活性とは本質的に等価である生物学的活性を示す。
【0141】
本発明は、本明細書に記載の例示的な抗原結合分子のいずれかと生物学的に等価な抗原結合分子を含む。2つの抗原結合タンパク質、または抗体は、例えば、それらが類似の実験条件下で単回用量または複数回用量のいずれかで同じモル用量で投与された場合に、吸収速度および吸収の程度が有意差を示さない薬学的等価物または薬学的選択肢である場合、生物学的等価物とみなされる。これらの吸収の程度は等価であるが吸収速度は等価ではなく、吸収速度におけるこのような差が意図的で、かつ標識に反映されており、例えば長期使用に及ぼす有効な身体薬剤濃度の達成に必須ではなく、試験した特定の薬剤製品にとって医学的に有意ではないとみなされるため、生物学的に等価とみなされ得る場合、いくつかの抗原結合タンパク質は、等価物または薬学的選択肢とみなされるであろう。
【0142】
一実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、これらの安全性、純度、または有効性において臨床的に有意性のある差がない場合、生物学的に等価である。
【0143】
一実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、免疫原性の臨床的に有意な変化または有効性の減退を含む有害作用のリスクの期待される上昇なしで参照生成物と生物学的生成物の間での切り替えなしで持続される療法と比較して、患者が1回以上切り替えられることができる場合、生物学的に等価である。
【0144】
一実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、これらが両方とも、条件または使用条件についての共通の機序または作用機序によって、このような機序が既知である程度まで作用する場合、生物学的に等価である。
【0145】
生物学的等価性は、インビボおよびインビトロの方法によって実証され得る。生物学的等価性測定法には、例えば、(a)抗体またはその代謝産物の濃度が血液、血漿、血清または他の生物学的流体中で時間の関数として測定される、ヒトまたは他の哺乳類におけるインビボでの試験、(b)ヒトインビボ生物学的利用能データと相関した、このデータを合理的に予測しているインビトロ試験、(c)抗体(またはその標的)の適切な急性薬理学的効果が時間の関数として測定されるヒトまたは他の哺乳類におけるインビボ試験、および(d)抗原結合タンパク質の安全性、効能、または生物学的利用能もしくは生物学的等価性を確立する、十分に管理された臨床試験、が含まれる。
【0146】
本明細書に示す例示的な抗体および二重特異性抗原結合分子の生物学的に等価なバリアントは、例えば、残基もしくは配列の種々の置換を生じること、または生物活性に必要とされない末端もしくは内部の残基もしくは配列を欠失することによって構築され得る。例えば、生物学的活性にとって必須ではないシステイン残基は、再生の際の不必要または不正確な分子内ジスルフィド架橋の形成を防止するために、欠失または他のアミノ酸で置換することができる。他の文脈において、生物学的等価な抗原結合タンパク質は、分子のグリコシル化特性を修飾するアミノ酸変化、例えばグリコシル化を排除または除去する変異を含む、本明細書に記載の例示的な抗体および二重特異性抗原結合分子のバリアントを含み得る。
【0147】
治療用製剤および送達
本発明は、本発明の抗原結合分子を含む薬学的組成物を提供する。本発明の薬学的組成物は、適切な担体、賦形剤、および改善された移動、送達、耐性などをもたらす他の薬剤とともに製剤化される。多くの適切な製剤は、薬剤師全員に既知の処方集:Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PAにおいて認めることができる。これらの製剤には、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、ベシクル(LIPOFECTIN(商標)、Life Technologies、Carlsbad、CAなど)を含む脂質(カチオン性またはアニオン性)、DNA複合体、無水吸収ペースト、水中油エマルションおよび油中水エマルション、エマルションカーボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、ならびにカーボワックスを含む半固体混合物が含まれる。Powell et al.”Compendium of excipients for parenteral formulations”PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238-311も参照されたい。
【0148】
種々の送達系は既知であり、本発明の薬学的組成物を投与するために使用することができ、例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル、変異ウイルスを発現することのできる組換え細胞、受容体媒介性エンドサイトーシス、への封入である(例えば、Wu et al.,1987,J.Biol.Chem.262:4429-4432を参照されたい)。導入方法には、皮内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻腔内経路、硬膜外経路および経口経路が含まれるが、これらに限定されない。組成物は、例えば、注入もしくはボーラス注射による、上皮または粘膜皮膚内層(lining)(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)を介した吸収による任意の好都合な経路によって投与することができ、他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与することができる。投与は全身または局所であり得る。一実施形態では、本発明の治療用タンパク質は、静脈内注入を介して投与される。
【0149】
本発明の薬学的組成物は、標準的な針および注射器を用いて皮下にまたは静脈内に送達することができる。加えて、皮下送達に関して、ペン型送達デバイスは、本発明の薬学的組成物を送達する際の適用を容易にする。このようなペン型送達デバイスは、再利用可能または使い捨て可能であり得る。再利用可能なペン型送達デバイスは、概して、薬学的組成物を含む交換可能なカートリッジを利用する。一度、カートリッジ内の薬学的組成物が全て投与され、カートリッジが空になると、この空のカートリッジは容易に廃棄することができ、薬学的組成物を含む新しいカートリッジと容易に交換することができる。次に、ペン型送達デバイスは再利用することができる。使い捨てのペン型送達デバイスにおいて、交換可能なカートリッジは存在しない。むしろ、使い捨てペン型送達デバイスは、このデバイス内の貯蔵器の中に保持された薬学的組成物が事前に充填されている。貯蔵器から薬学的組成物が空になると、デバイス全体が廃棄される。
【0150】
数多くの再利用可能なペン型送達デバイスおよび自動注射送達デバイスは、本発明の薬学的組成物の皮下送達の用途を有する。例としては、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.,Woodstock,UK)、DISETRONIC(商標)pen(Disetronic Medical Systems,Bergdorf,Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)pen、HUMALOG(商標)pen、HUMALIN 70/30(商標)pen(Eli Lilly and Co.,Indianapolis,IN)、NOVOPEN(商標)I,IIおよびIII (Novo Nordisk,Copenhagen,Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk,Copenhagen,Denmark)、BD(商標)pen(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、およびOPTICLIK(商標)(sanofi-aventis,Frankfurt,Germany)が挙げられるが、これらに限定されず、ほんの数種類しか挙げていない。本発明の薬学的組成物の皮下送達での用途を有する使い捨てペン型送達デバイスの例としては、SOLOSTAR(商標)pen(Sanofi-Aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)自動注射器(Amgen,Thousand Oaks,CA)、PENLET(商標)(Haselmeier,Stuttgart,Germany)、EPIPEN(Dey,L.P.)およびHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs,Abbott Park IL)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0151】
ある特定の状況において、薬学的組成物は、徐放系で送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用することができる(Langer,上記、Sefton,1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201を参照されたい)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができ、Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),1974,CRC Pres.,Boca Raton,Floridaを参照されたい。さらに別の実施形態では、徐放系を組成物の標的の近傍に配置することができ、それによって全身用量のほんの一部のみが必要となる(例えば、Goodson,1984,Medical Applications of Controlled Release,上記,vol.2,pp.115-138を参照されたい)。他の徐放系は、Langer,1990,Science249:1527-1533による総説で論じられている。
【0152】
注射可能な調製物には、静脈内注射、皮下注射、皮内注射および筋肉内注射、点滴注入などのための剤形が含まれ得る。これらの注射可能な調製物は、公に知られている方法によって調製され得る。例えば、注射可能な調製物は、例えば、注射用に従来通り使用される滅菌水性媒体または油性媒体中に上述の抗体またはその塩を溶解、懸濁または乳化させることによって調製され得る。注射用水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコース含有等張液、および他の補助剤などがあり、これらは、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加物)]などの適切な可溶化剤と組み合わせて使用してもよい。油性媒体として、例えば、ゴマ油、ダイズ油などが使用され、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどの可溶化剤と組み合わせて使用してもよい。このように調製された注射は、好ましくは適切なアンプルに充填される。
【0153】
抗原結合分子の治療的使用
本発明は、それを必要とする対象に、治療用タンパク質を含む治療用組成物を投与することを含む方法を含む。治療用組成物は、本明細書に開示される抗体または二重特異性抗原結合分子のいずれかと薬学的に許容される担体または希釈剤とを含み得る。本明細書で使用される場合、「それを必要とする対象」という表現は、がんの1つ以上の症状または徴候を呈するヒトまたは非ヒト動物(例えば、腫瘍を発現する対象または本明細書で後述されるがんのうちのいずれかに罹患している対象)を意味する。
【0154】
本発明の抗体および二重特異性抗原結合分子(およびそれを含む治療用組成物)は、とりわけ、免疫応答の刺激、活性化および/または標的化が有益である任意の疾患または障害の治療に有用である。特に、本発明の抗体または二重特異性抗原結合分子は、例えばCD20、PSMA、MUC16、STEAP2、BCMA発現もしくは活性またはCD20+、PSMA+、MUC16+、STEAP2+、もしくはBCMA+細胞の増殖に関連するかまたはそれによって媒介される任意の疾患または障害の治療、予防、および/または改善に使用され得る。本発明の治療方法が達成される作用機序は、例えば、CDC、アポトーシス、ADCC、食作用、またはこれらの機序のうちの2つ以上の組み合わせによって、エフェクター細胞の存在下でそのような抗原を発現する細胞の死滅させることを含む。
【0155】
本発明の抗原結合分子は、例えば、脳および髄膜、頭頸部、中咽頭、肺および気管支樹、胃腸管、男性および女性生殖器管、筋肉、骨、皮膚および付属器、結合組織、脾臓、免疫系、造血細胞および骨髄、肝臓および尿路、腎臓、膀胱および/または眼などの特殊感覚器官で生じる原発性および/または転移性腫瘍を治療するために使用され得る。特定の実施形態では、本発明の抗体および二重特異性抗原結合分子は、以下のがんの1つ以上を治療するために使用されるが、これらに限定されない:膵臓がん、頭頸部がん、前立腺がん、悪性神経膠腫、骨肉腫、結腸直腸がん、胃がん(例えば、MET増幅を伴う胃がん)、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、滑膜肉腫、甲状腺がん、乳がん、黒色腫神経膠腫(melanomaglioma)、乳がん(例えば、乳管がんまたは乳管内がん、扁平上皮がん、食道がん、淡明細胞型腎細胞がん、嫌色素性腎細胞がん、(腎)オンコサイトーマ、(腎)移行上皮がん、尿路上皮がん、(膀胱)腺がん、または(膀胱)小細胞がん。本発明の特定の実施形態によれば、抗体または二重特異性抗体は、難治性または治療抵抗性のがん、例えば去勢抵抗性前立腺がんに罹患している患者を治療するのに有用である。
【0156】
いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、原発性縦隔B細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、またはバーキットリンパ腫を含むCD20発現がんを治療するのに有用な二重特異性抗CD3×抗CD20抗体である。いくつかの実施形態では、がんは濾胞性骨髄腫である。いくつかの実施形態では、がんはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。いくつかの実施形態では、がんはマントル細胞リンパ腫である。いくつかの実施形態では、がんは辺縁帯リンパ腫である。いくつかの実施形態では、がんは濾胞性リンパ腫であり、二重特異性抗体の最大週用量は80mgである。いくつかの実施形態では、がんはDLBCLであり、二重特異性抗体の最大週用量は80mgである。いくつかの実施形態では、がんはDLBCLであり、二重特異性抗体の最大週用量は160mgである。いくつかの実施形態では、がんはDLBCLであり、二重特異性抗体の最大週用量は320mgである。これらの実施形態のいずれか、または本明細書で論じられる他の実施形態では、がん患者は、抗CD20単一特異性抗体療法で前治療されている可能性がある。
【0157】
非ホジキンリンパ腫(NHL)は、最も一般的な血液学的悪性腫瘍である。NHLの異種グループの中で、85~90%はB細胞起源であり、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、および他のいくつかのB-NHLを含む。化学療法と組み合わせた抗CD20抗体は、B-NHLの治療の標準治療であるが、初期反応にもかかわらず、多くの患者が再発し、多くの場合、その後の治療ラインでの反応期間が次第に短くなり、転帰が不良になる。したがって、いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、CD3+T細胞およびCD20+B細胞に結合し、T細胞媒介性細胞傷害を介してCD20+腫瘍細胞を標的とする二重特異性抗CD3×抗CD20である。場合によっては、抗CD3×CD20二重特異性抗体は、抗CD20単一特異性抗体による以前の治療が不成功であった対象のB細胞がん(例えば、NHL)の治療のためのものである。
【0158】
CAR-T療法に対する反応が完全ではない患者の場合、転帰は一般的に不良であり、標準治療の選択肢はない。したがって、場合によっては、本発明の抗CD3×CD20二重特異性抗体は、以前のCAR-T療法が不成功であったかまたは以前のCAR-T療法(例えば、抗CD19CAR-T療法)に反応しない対象におけるB細胞がん(例えば、DLBCLなどのNHL)の治療のためのものである。
【0159】
いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、前立腺がん、腎臓がん、膀胱がん、結腸直腸がん、および胃がんを含むPSMA発現がんを治療するのに有用な二重特異性抗CD3×抗PSMA抗体である。いくつかの実施形態では、がんは前立腺がん(例えば、去勢抵抗性前立腺がん)である。
【0160】
いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、卵巣がん、乳がん、膵臓がん、非小細胞肺がん、肝内胆管細胞がん腫瘤形成型、子宮頸部腺がん、および胃管腺がん(adenocarcinoma of the gastric tract)を含むMUC16発現がんを治療するのに有用な二重特異性抗CD3×抗MUC16抗体である。いくつかの実施形態では、がんは卵巣がんである。
【0161】
いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、前立腺がん、膀胱がん、子宮頸がん、肺がん、結腸がん、腎臓がん、乳がん、膵臓がん、胃がん、子宮がん、および卵巣がんを含むSTEAP2発現がんを治療するのに有用な二重特異性抗CD3×抗STEAP2抗体である。いくつかの実施形態では、がんは前立腺がん(例えば、去勢抵抗性前立腺がん)である。
【0162】
いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、多発性骨髄腫または他のB細胞または形質細胞がん、例えば、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、バーキットリンパ腫、およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、およびホジキンリンパ腫を含むBCMA発現がんを治療するのに有用な二重特異性抗CD3×抗BCMA抗体である。いくつかの実施形態では、がんは、多発性骨髄腫である。
【0163】
併用療法
本発明は、本明細書に記載の例示的な抗体および二重特異性抗原結合分子のいずれかを含む薬学的組成物を1つ以上の追加の治療薬と組み合わせて投与することを含む方法を提供する。本発明の抗原結合分子と組み合わせて、または組み合わせて投与することができる例示的な追加の治療薬は、例えば、抗腫瘍剤(例えば、メルファラン、ビンクリスチン(Oncovin)、シクロホスファミド(Cytoxan)、エトポシド(VP-16)、ドキソルビシン(Adriamycin)、リポソームドキソルビシン(Doxil)、オベンダムスチン(Treanda)を含む化学療法剤、または対象における形質細胞腫瘍の治療に有効であることが知られている任意の他のもの)を含む。ある特定の実施形態では、第2の治療薬は、放射線療法または造血幹細胞移植を含む投与計画である。ある特定の実施形態では、第2の治療薬は、免疫調節剤であり得る。ある特定の実施形態では、第2の治療薬は、ボルテゾミブ(Velcade)、カルフィルゾミブ(Kyprolis)、イキサゾミブ(Ninlaro)を含むプロテアソーム阻害剤であり得る。ある特定の実施形態では、第2の治療薬は、パノビノスタット(Farydak)などのヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であり得る。ある特定の実施形態では、第2の治療薬は、モノクローナル抗体、抗体薬物コンジュゲート、抗腫瘍剤にコンジュゲートした二重特異性抗体、免疫チェックポイント阻害剤、またはそれらの組み合わせであり得る。本発明の薬学的組成物(例えば、本明細書に開示される、二重特異性抗原結合分子を含む薬学的組成物)はまた、形質細胞表面上の異なる抗原と相互作用し得る本明細書に記載の抗体以外のモノクローナル抗体、腫瘍細胞表面上の抗原に結合する一方のアームおよびT細胞上の抗原に結合する他方のアームを有する二重特異性抗体、抗体薬物コンジュゲート、抗腫瘍剤にコンジュゲートした二重特異性抗体、チェックポイント阻害剤、例えば、PD-1またはCTLA-4を標的化するもの、またはそれらの組み合わせ、から選択される1つ以上の治療的組み合わせを含む治療的計画の一部として投与され得る。ある特定の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、ペンブロリズマブ(Keytruda)、ニボルマブ(Opdivo)、またはセミプリマブなどのPD-1阻害剤から選択され得る。ある特定の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ(Tecentriq)、アベルマブ(Bavencio)、またはデュルバルマブ(Imfinzi)などのPD-L1阻害剤から選択され得る。ある特定の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、イピリムマブ(Yervoy)などのCTLA-4阻害剤から選択され得る。本発明の抗体と併用して使用することができる他の組み合わせは、上に記載されている。
【0164】
本発明はまた、本明細書に記載の抗原結合分子のいずれかと、VEGF、Ang2、DLL4、EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4、EGFRvIII、cMet、IGF1R、B-raf、PDGFR-α、PDGFR-β、FOLH1(PSMA)、PRLR、STEAP1、STEAP2、TMPRSS2、MSLN、CA9、ウロプラキンのうちの1つ以上の阻害剤と含む治療用の組み合わせを含み、阻害剤は、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、siRNA、ペプチボディ、ナノボディもしくは抗体断片(例えば、Fab断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、またはダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、および最小認識ユニットなどの他の操作された分子)である。本発明の抗原結合分子は、抗ウイルス薬、抗生物質、鎮痛薬、および/またはNSAIDと組み合わせて投与および/または同時処方することもできる。本発明の抗原結合分子はまた、放射線治療および/または従来の化学療法も含む治療計画の一部として投与してもよい。
【0165】
追加の治療活性成分(複数可)は、本発明の抗原結合分子の投与の直前、同時に、または直後に投与してもよい。(本開示の目的のために、このような投与計画は、追加の治療活性成分と「組み合わせて」抗原結合分子を投与することとみなされる。
【0166】
本発明には、本発明の抗原結合分子が、本明細書の他所に記載の追加の治療活性成分(複数可)の1つ以上と同時処方された薬学的組成物が含まれる。
【実施例
【0167】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物をどのように作製および使用するかに関する完全な開示および説明を当業者に提供するために提示されており、本発明者らが本発明とみなすことの範囲を限定することを企図するものではない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力はしてきたが、いくつかの実験上の誤差および偏差が考慮されるべきである。別段示されない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧またはそれに近い圧力である。
【0168】
実施例1:二重特異性抗体の臨床評価および用量漸増
以下に説明する臨床試験は、以前にCD20指向抗体療法による治療を受けたCD20+B細胞悪性腫瘍の患者における、抗CD20×抗CD3二重特異性モノクローナル抗体であるREGN1979の安全性と忍容性を調査する非盲検多施設第1相試験である。
【0169】
目的:この治験の主な目的は、静脈内投与(IV)されたREGN1979の安全性、忍容性、および用量制限毒性(DLT)を査定し、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法の不成功後のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、侵攻性リンパ腫(CAR-T療法の不成功後のDLBCLを除く)、濾胞性リンパ腫(FL)グレード1~3a、および慢性リンパ性白血病(CLL)を含む拡大コホートにおける、REGN1979の抗腫瘍活性を調査することであった。この治験の副次的目的は、次の通りであった。(1)REGN1979の薬物動態(PK)プロファイルを特徴付けること、(2)REGN1979の免疫原性を査定すること、(3)CD20+B細胞悪性腫瘍(以前に抗CD20抗体療法で治療された非ホジキンリンパ腫[NHL]、または慢性リンパ性白血病[CLL])の患者に投与されたREGN1979の予備的な抗腫瘍活性を調査すること、(4)治験の用量漸増部分におけるREGN1979の予備的抗腫瘍活性を調査すること。微小残存病変(MRD)の査定は、CLLの患者で行われた。この治験の探索的目的は、作用機序、観察された毒性、および以下を含むがこれらに限定されない潜在的な抗腫瘍活性と相関する可能性のあるバイオマーカーを評価することであった:(1)サイトカインプロファイリングおよび炎症マーカー(例えば、C-反応性タンパク質[CRP])の査定、(2)末梢血のB細胞およびT細胞のサブセットと免疫表現型、および(3)末梢血における遺伝子発現の変化。
【0170】
研究デザイン:患者は、最初の開始用量と、それに続く2回目以降の用量投与のためのより高いステップアップ用量からなる用量レベル(DL)コホートに割り当てられた。患者は適応症(NHLまたはCLL)に基づいて登録された。各DLには、2つのコホート(各適応症に1つ)があり、NHLコホートごとに3~6人の患者、CLLコホートごとに1~6人の患者がいた。小リンパ球性リンパ腫(SLL)の患者は、CLL群に登録され、NHL査定に従った。
【0171】
最初に臨床的利益を示し、その後再発もしくは進行したか、または治療に対して次善の反応を示した患者は、再発または進行時に許容できるとみなされた最高のDLでREGN1979により再治療された可能性がある。
【0172】
患者は、REGN1979の最初の投与前の28日以内に適格性を決定するためのスクリーニング手順を受けた。患者は、各コホートがプロトコル基準に従って満たされるまで、治験依頼者による適格性の確認の順序で、適応症(NHLまたはCLL)に基づいて順番に登録された。
【0173】
各DLには、NHLとCLLの個別の独立した用量漸増コホートがあった。各DLは、初回用量および2回目以降の用量で構成され、それは初回用量が許容される場合は、開始用量よりも高かった。
【0174】
用量漸増は、NHLの患者のための従来の3+3用量漸増設計に従った。観察された毒性に基づいて、コホートごとに3~6人の患者が計画された。
【0175】
用量漸増は、CLLの患者のための促進的タイトレーション成分(accelerated titration component)を伴う修正された3+3に従った。観察された毒性に基づいて、コホートごとに1~6人の患者が計画された。
【0176】
用量漸増期が完了し、NHLの患者でのさらなる治験のための推奨用量が決定されると、1)CAR-T療法の不成功後DLBCLの患者(20人の患者)、2)侵攻性リンパ腫(CAR-T療法の不成功後のDLBCLを除く)(40人の患者、そのうち20人の患者が各々侵攻性リンパ腫コホート1[160mgステップアップ用量])に、およびコホート2[80mgステップ-アップ用量]に登録されることになった)、および3)再発/難治性濾胞性リンパ腫グレード1~3aの患者(60人の患者、そのうち30人は各々コホート1[80mgのステップアップ用量]およびコホート2[160mgのステップアップ用量]に登録されることになった)、に対する3つの拡大コホートが開始されることになった。これらの拡大コホート(侵攻性リンパ腫コホート2および濾胞性リンパ腫コホート1を除く)の各々に対するREGN1979の週1回のステップアップ用量は、週1回160mgに設定され、続いて320mgのREGN1979によるQ2W維持療法を行った。侵攻性リンパ腫コホート2および濾胞性リンパ腫コホート1では、REGN1979の週1回のステップアップ用量は80mgであり、REGN1979のQ2W維持用量は160mgであった80mgのステップアップ用量に割り当てられた患者の場合、患者は、最初の用量漸増後、4週間の導入期間中に週1回80mgを投与され、その後さらに8回の週1回用量が投与され、および患者がCRの最初の実証後少なくとも9ヶ月間持続的な反応を示した後に治療を中止する選択肢とともに進行中の160mgのQ2W治療が行われた。160mgのステップアップ用量に割り当てられた患者の場合、患者は、最初の用量漸増後、4週間の導入期間中に週1回160mgを投与され、その後さらに8回の週1回用量が投与され、患者がCRの最初の実証後少なくとも9ヶ月間持続的な反応を示した後に治療を中止する選択肢とともに進行中の320mgのQ2W治療が行われた。
【0177】
REGN1979の最初の投与前のリツキシマブ導入用量の有用性をNHLの患者で治験し、この介入が注入関連反応(IRR)およびサイトカイン放出症候群(CRS)の発生率と重症度を低下させることができるかどうかを判断した。リツキシマブ導入コホートでは、REGN1979は、毎週の治療中に160mg、Q2W維持治療中に320mgのステップアップ用量を使用して投与された。その後、さらに24人の患者が最適な用量投与計画と用量で治療されることになり、最適用量で治療されたリツキシマブ導入群の6人の患者と一緒に、合計30人の患者が安全性と忍容性について検討された。
【0178】
用量漸増部分の最初のDLでは、同じ適応症内の最初の3人の患者に対する最初の治験薬投与の間に48時間の待機期間が必要であった。最初のDLの後続の患者は、適応症に関係なく、同じ日に治療されなかった。その後のコホートでは、以前のコホートまたはコホート内で予期しない毒性が観察されなかった場合、最初の3人の患者への最初の注入は少なくとも24時間間隔で投与された。
【0179】
患者の各コホートが登録され、治療され、DLT観察期間が完了した後、治験依頼者と治験責任医師(複数可)の両方が安全性データを確認した後、登録のための後続のDLコホートの開始(または現在行われているDLコホートの拡大)が決定された。
【0180】
DLT観察期間は、治療の最初の28日間として定義され、この治験ではこれは導入期間に対応する。導入の間、患者はREGN1979の4回の週1回投与で治療された。
【0181】
DLTを評価できるようにするには、個々の患者がREGN1979の少なくとも最初の2回の投与(第1週の1日目[「初回または一次用量」]および第2週の1日目[「二次およびその後の用量」])を受けているか、またはDLTを経験している必要がある。DL11以上に登録された患者は、REGN1979の少なくとも最初の3回の投与(第1週の初回用量、第2週の中間または二次用量、および第3週の三次用量またはステップアップ用量)を受けているか、またはDLTを経験している必要がある。さらに、患者は最初の投与から少なくとも28日間、2回目の投与から少なくとも21日間評価されている必要がある。
【0182】
NHLおよびCLLの患者の用量漸増およびコホートを以下の表1に示す。
【表1】
【0183】
この治験では、各用量レベルは、最初のREGN1979用量と、それに続くステップアップ用量で構成されている。コホートDL11以上の場合、ステップアップ用量に達する前に二次用量が追加されている(表1を参照)。初回(一次)用量、中間(二次)用量(該当する場合)、およびステップアップ(三次)用量の最初の投与は、各々任意選択で少なくとも2日間に分割される。DL7以上の最大用量コホートの全ての患者は、初回(一次)および中間(二次)用量で分割投与(例えば、細分投与)を受けた。DL11以上の最大用量コホートの患者は、初回(一次)、中間(二次)、および最初のステップアップ(三次)用量の分割投与(例えば、細分投与)を受け、その後、ステップアップ用量(最大週用量)を受けた。
【0184】
治験期間:治療期間は9ヶ月である。患者は、最大24回用量のREGN1979の投与で治療される-4週間の導入期間中に4回の週1回用量、続いてさらに8回の週1回用量、および患者が完全奏功を達成してから9ヶ月後に治療を中止する選択肢とともに進行中の維持期間中に月2回(Q2W)で12回以上の用量が投与される。患者は、治療終了後最大15か月間、有効性および安全性について追跡され得る。
【0185】
治験対象集団:DL17による登録と全ての拡大コホートへの完全な登録を想定すると、米国およびドイツの約15のサイトで最大370人の患者が計画されている。最大204人の患者が、用量漸増期間中の両方の適応症(NHLおよびCLL)について、DL17によって用量漸増コホートに登録される。90人のNHLの患者(CAR-T療法の不成功後の20人のDLBCLの患者、40人の侵攻性リンパ腫の患者[CAR-T療法の不成功後のDLBCLを除く]、30人のFLグレード1-3aの患者)、および10人のCLLの患者から構成される最大100人の患者が疾患特異的拡大コホートに登録される。最大42人の患者がリツキシマブ導入コホートに登録され、最適な用量投与計画が決定される。最適なリツキシマブ導入用量投与計画が決定されると、追加の24人の患者がリツキシマブ導入拡大に登録され、最適な用量投与計画および用量で治療された上記のリツキシマブ導入グループの6人の患者と組み合わされる。したがって、合計30人の患者が最適なリツキシマブ導入用量投与計画と用量で評価される。
【0186】
患者は、CD20+B細胞の悪性腫瘍を記録している必要があり、活動性疾患は以前の治療に反応せず、標準治療の選択肢がなく、抗CD20抗体による治療が適切である可能性がある。NHLの患者は、以前にCD20指向性抗体療法で治療されている必要がある。
【0187】
選択基準:患者は、治験に含まれるのに適格であるために以下の基準を満たさなければならない。
1.CD20+B細胞の悪性腫瘍を記録しており、活動性疾患が以前の治療に反応せず、標準治療の選択肢がなく、抗CD20抗体による治療が適切である可能性がある:
・2007年のNCIワーキンググループ基準によって確認されたB-NHL(Cheson 2007,Appendix2)、および
・慢性リンパ性白血病に関する国際ワークショップ(IWCLL)ワーキンググループ基準、2008年(Hallek 2008、Appendix3)によって確認されたCLL-小リンパ球性リンパ腫(SLL)の患者は、CLL群に登録され、NHL査定に従う。
注-登録直前に標準治療として実施されたCD20陰性リンパ節(NHL)生検の患者は、患者が以前にCD20+疾患を記録しており、かつ約6ヶ月以内に以前にリツキシマブまたは他のCD20指向性抗体療法で治療されていれば、引き続き治験の対象となる。個々の症例は、メディカルモニターと議論することができる。
2.NHLの患者は、抗CD20抗体療法による前治療を受けている必要がある。CLLの患者は、患者がBTK阻害剤またはPI3K阻害剤のいずれかに不成功であって、治療を行う医師が患者を第1相試験に入れることが適切であると判断した場合、抗CD20抗体療法による前治療を受けている必要はない。FLグレード1~3aの拡大コホートに含めるには、患者は、抗CD20抗体およびアルキル化剤を含む、全身療法の少なくとも2つの以前のラインを受けている必要がある。CAR-T療法の不成功後にDLBCLの患者を登録する疾患特異的拡大コホートに含めるためには、患者はリンパ球枯渇療法およびCAR-T注入の毒性から回復している必要がある。以前のCAR-T療法が、治験登録前の最新の治療ラインである必要はない。
3.全ての患者(B細胞NHLおよびCLL)は、CTスキャンが実行可能でない場合は、CTまたはMRIスキャンによって記録される、少なくとも1つの二次元的に測定可能な病変≧1.5cm)を有している必要がある。
4.CLLの患者は≦200×109/Lの白血球(WBC)を有する必要がある。
5.年齢≧18歳
6.Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータス≦1
7.少なくとも6か月の平均余命
8.以下により記載された適切な骨髄機能:a.血小板数≧75×109/L、b.Hbレベル≧9g/dL、c.ANC≧1×109/L、
注-治験責任医師の意見で、理由が基礎疾患による骨髄浸潤に起因すると考えられる場合、上記の閾値を下回る細胞数の患者は登録を検討される可能性がある。このような場合、治験責任医師は治験依頼者と適格性について話し合い、書面で登録の承認を受ける必要がある。
9.以下により記載された適切な臓器機能:
・アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)≦2.5×ULN
・総ビリルビン≦1.5×ULN
注-ジルベール症候群の患者は、総ビリルビンがベースラインから変化していない限り、この要件を満たす必要はない。
・コッククロフト-ゴールト式によるクレアチニンクリアランスの計算≧50mL/分
注-治験責任医師の意見で、異常な検査結果が基礎疾患によるものである場合、患者は登録を検討される可能性がある。このような場合、治験責任医師は治験依頼者と適格性について話し合い、書面で登録の承認を受ける必要がある。
注-コッククロフト-ゴールト式による境界性クレアチニンクリアランスのある患者は、測定されたクレアチニンクリアランス(24時間尿または他の信頼できる方法に基づく)が≧50mL/分である場合、登録を検討される可能性がある。
10.治験責任医師の意見で、患者が、患者への重大なリスクなしに生検できるアクセス可能な病変がある場合、強制的な腫瘍生検前治療を受ける意欲。
11.来診および治験関連手順を順守する意思があり、順守することができる
12.署名されたインフォームドコンセントを提供する。
【0188】
除外基準:以下の基準のいずれかを満たす患者は治験から除外される。
1.原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫または非原発性CNS NHLによる既知または疑われるCNS関与
2.以下のような病歴または現在の関連するCNS病理、
・てんかん、発作、不全麻痺、失語症、卒中、重度の脳損傷、小脳疾患、器質性脳症候群、精神病、または
・大脳MRIでの炎症性病変および/または血管炎の存在の証拠
3.治験薬の最初の投与前の、半減期の5倍以内または28日以内のいずれか短い方の標準的な抗腫瘍化学療法(非生物学的)。
4.治験薬の最初の投与から14日以内の標準的な放射線療法。
注-症候性リンパ節/病変に対する緩和的放射線療法は、照射された病変(複数可)またはリンパ節(複数可)が腫瘍査定の標的病変として含まれていない場合に許可される
5.同種幹細胞移植
6.治験薬の最初の投与前の12週間以内のリツキシマブ、アレムツズマブまたは他の治験中または市販の生物学的薬剤による治療。
注-即時治療が必要な侵攻性リンパ腫の患者の場合、ウォッシュアウト期間は28日に短縮される場合がある。これには、書面による治験依頼者との話し合いと承認が必要になる。
7.治験薬の最初の投与から28日以内の免疫抑制療法(生物学的製剤を除く)。
8.治験薬の最初の投与から28日以内の治験中の非生物学的薬剤による治療。
9.治験薬の類似の化学的または生物学的組成の化合物に起因するアレルギー反応の病歴。
10.テトラサイクリン抗生物質グループの任意の化合物に対する過敏症の病歴。
11.患者が治療を受けている同時進行性の活動性悪性腫瘍。
12.活動性細菌、ウイルス、真菌、マイコバクテリアもしくはその他の感染症、または最初の投与から4週間以内に入院もしくはIV抗感染薬による治療を必要とする感染症の重大なエピソードが確認されている。
13.重大な心血管疾患(例えば、ニューヨーク心臓協会クラスIIIまたはIVの心臓病、過去6か月以内の心筋梗塞、不安定狭心症または不安定狭心症)および/または重大な肺疾患(例えば、閉塞性肺疾患および症候性気管支痙攣の病歴)を含むが、これらに限定されない、治験の実施を妨害する、または患者を重大なリスクにさらす可能性のある重大な併発疾患または病状の証拠。
注-心臓病の病歴のある患者は、適切な心臓予備能と機能を確保するために、REGN1979の最初の投与前にエコーまたはマルチゲート収集スキャン(MUGA)によって評価する必要がある。
14.最大10mg/日までのプレドニゾンまたは同等物による他の(非腫瘍性および非免疫抑制性)適応症に対する、コルチコステロイドの使用を除く、進行中の全身性コルチコステロイド治療。
15.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による感染症、またはB型肝炎ウイルス(HBV)またはC型肝炎ウイルス(HCV)による慢性感染症。感染症を制御した(血清B型肝炎ウイルスDNAが検出限界を下回り、かつB型肝炎の抗ウイルス療法を受けている)B型肝炎(HepBsAg+)の患者は、感染症を管理している医師と相談して許容される。
16.アロプリノールとラスブリカーゼの両方に対する過敏症が確認されている。
17.妊娠中または授乳中の女性。
18.最初の治験薬治療前、治験中、および最後の投与後少なくとも6か月間、非常に効果的な避妊を実践することを望まない出産の可能性のある女性*。非常に効果的な避妊手段には、スクリーニング前の2回以上の月経周期で開始される排卵の抑制に関連する(エストロゲンおよびプロゲストゲン含有)ホルモン避妊薬(経口、膣内、経皮)またはプロゲストゲンのみのホルモン避妊薬(経口、注射、埋め込み型)の安定した使用、子宮内避妊器具、子宮内ホルモン放出システム、両側卵管結紮術、精管切除されたパートナー、およびまたは性禁欲†,‡が含まれる。
*閉経後の女性は、出産の可能性を考慮しないためには、少なくとも12ヶ月間にわたって無月経でなければならない。子宮摘出術または卵管結紮術が記録されている女性には、妊娠検査および避妊は必要ない。
†性禁欲は、治験治療に関連するリスクの全期間中に異性間性交を控えると定義される場合のみ、非常に効果的な方法とみなされる。性禁欲の信頼性は、臨床試験の期間と患者の好ましい通常のライフスタイルに関連して評価する必要がある。
‡周期的禁欲(月経周期(calendar)、基礎体温(symptothermal)、排卵後法)、抜去(膣外射精)、殺精子剤のみ、および泌乳性無月経法(LAM)は、許容される避妊法ではない。女性用コンドームおよび男性用コンドームは一緒に使用されるべきではない。
19.治験薬の最初の投与から28日以内の生ワクチンの投与
20.治験依頼者による事前の承認がない限り、臨床現場試験チームのメンバーおよび/またはその近親者。
【0189】
治療法:REGN1979は、無菌の使い捨てバイアルに液体として供給された。各バイアルには、2mg/mLの濃度でREGN1979が含まれていた。詳細な準備と管理の指示は、治験製品管理手順書(pharmacy manual)でサイトに提供された。希釈剤は、REGN1979治験薬の調製に供給された。
【0190】
患者は、4週間の導入期間中に週1回REGN1979を投与され、その後、割り当てられたコホートごとの用量で、さらに8回の週1回用量、進行までQ2W用量が投与された。
【0191】
リツキシマブ導入コホートおよび拡大のみにおいて、リツキシマブの単回用量(375mg/m)が、REGN1979の第1の用量の1日前[すなわち、治験日(-1)]に投与された。REGN1979は第1週の1日目に開始され、REGN1979の治療期間は9ヶ月であった。患者は最大24回用量のREGN1979で治療された:4週間の導入期間中に4回の週1回用量、続いてさらに8回の週1回用量、および進行まで維持期間中にQ2Wで12回以上の用量が投与された。リツキシマブ導入コホートでは、REGN1979は、週1回の治療中に160mg、Q2W維持治療中に320mgのステップアップ用量を使用して投与された。週1回160mg未満のREGN1979治療およびQ2Wで320mg未満のREGN1979維持治療のステップアップ用量の用量群も評価することができる。その後、さらに24人の患者が最適な用量投与計画と用量で評価され、最適な用量投与計画と用量で治療されたリツキシマブ導入群の6人の患者と一緒に、合計30人の患者が安全性と忍容性について検討された。
【0192】
評価項目(Endpoint)
主要評価項目:主要評価項目は、REGN1979の推奨第2相用量(RP2D)としての最大耐量(MTD)および/または最適生物学的用量(OBD)を決定するための安全性(具体的には、有害事象[AE]およびDLT)、ならびにCAR-T療法の不成功後のDLBCLの患者の拡大コホート、侵攻性リンパ腫(CAR-T療法の不成功後のDLBCLを除く)拡大コホート1および2、FLグレード1~3a拡大コホート、およびCLL拡大コホートにおける客観的奏効率(ORR)によって測定される有効性であった。
【0193】
副次的評価項目:副次的評価項目は次の通りである:
・薬物動態:REGN1979の濃度
・免疫原性:抗REGN1979抗体
・抗腫瘍活性:
-客観的奏功率(ORR)
・NCI-国際ワーキンググループ(NCI-WG)の改訂版悪性リンパ腫効果判定基準(Revised Response Criteria for Malignant Lymphoma)による腫瘍反応査定
・CLLの診断と治療のための慢性リンパ性白血病ガイドラインに関する国際ワークショップ(the International Workshop on Chronic Lymphocytic Leukemia Guidelines for the Diagnosis and treatment of CLL)による腫瘍反応査定
・NHL拡大コホートに登録された患者の場合、ルガーノ分類による腫瘍反応査定
-無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)
-CLLの患者の最小残存病変(MRD)
【0194】
探索的評価項目は以下を含む:
・以下を含む薬力学的(PD)尺度:
-B細胞およびT細胞のサブセットと表現型
-循環サイトカインレベル
CRP
-末梢血における遺伝子発現の変化
【0195】
手順および査定
ベースライン手順:脳MRI、心電図(ECG)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、およびB型肝炎ウイルス(HBV)の検査、および凝固。
安全手順:病歴、身体検査、症状の査定、パフォーマンスステータスの評価、臨床検査、バイタルサイン、AE、および併用薬。
【0196】
有効性の手順:CTまたはMRIスキャン、18F-フルオロデオキシグルコース-ポジトロン放出断層撮影(FDG-PET)スキャン、骨髄穿刺液および生検、リンパ節および/または腫瘍生検、末梢血試料(CLLの患者のみ)を含む腫瘍査定。
PKおよび抗薬物抗体(ADA)査定のための血液試料が収集された。
サイトカイン産生の変化、炎症誘発性サイトカインの血清レベル、およびリンパ球サブセットと活性化状態の変化をモニターするために、バイオマーカー試料が収集された。さらに、これらの試料は、基礎疾患の臨床経過に影響を与える、または治療の副作用を調節する変動について、腫瘍または体細胞の遺伝子分析を可能にした。
【0197】
統計的計画:研究デザインは、NHLの患者のDLあたり3~6人の患者を対象とした従来の3+3デザインと、CLLの患者のDLあたり1~6人の患者を対象とした促進的タイトレーション成分を備えた修正3+3デザインに基づいていた。登録された患者の正確な数は、プロトコルで定義されたDLTおよびグレード2以上の治療関連毒性で観察された患者(NHLおよびCLL)の数に依存し、急性効果(関連する検査室の異常を除く)は72時間以内に≦グレード1またはベースライン(促進的タイトレーション成分中のCLL)に解消し、および現在定義されているDLを拡大するか、より低いDLで追加のコホートを開く必要がある。
【0198】
患者の登録は継続中であり、最大370人の患者が計画されている。最大204人の患者が、用量漸増期間中の両方の適応症(NHLおよびCLL)について、DL17によって用量漸増コホートに登録される。90人のNHLの患者(CAR-T療法の不成功後の20人のDLBCLの患者、40人の侵攻性リンパ腫の患者[CAR-T療法の不成功後のDLBCLを除く]、および30人のFLグレード1-3aの患者)、および10人のCLLの患者を含む最大100人の患者は、疾患特異的拡大コホートに登録される。最大42人の患者がリツキシマブ導入コホートに登録され、最適な用量投与計画が決定される。追加の24人の患者がリツキシマブ導入拡大に登録され、最適な用量投与計画と用量で治療された上記のリツキシマブ導入コホートからの6人の患者と組み合わされる。したがって、合計30人の患者が、最適なリツキシマブ導入用量投与計画および用量で評価される。
【0199】
データは記述統計のみを使用して集約される。一般に、データはDLおよび適応症(NHLまたはCLL)によって集約される。NHLの適応範囲内で、データは、CAR-T療法の不成功後のDLBCL、侵攻性リンパ腫(CAR-T療法の不成功後のDLBCLを除く)コホート1および2、ならびにFLグレード1~3aのサブグループと用量によっても集約される。NHLの適応範囲内で、データは緩慢進行性および侵攻性NHLのサブグループによっても集約される。人口統計的特性およびベースラインの特性は、グループごとに記述的に集約される。
【0200】
安全性の集約および分析は、安全性対象解析集団(safety analysis set)(SAF)で実施された。安全性の主要な分析は、治療中発生したAE(TEAE)に基づいていた。この分析は、REGN1979の安全性プロファイルに関して結論が導き出された基礎を構成した。この治験で報告された全てのAEは、現在利用可能なバージョンのICH国際医薬用語集(the Medical Dictionary for Regulatory Activities)(MedDRA(登録商標))を使用してコード化された。コーディングは下層語になる。逐語的なテキスト(verbatim text)、基本語(PT)、およびプライマリー器官別大分類(SOC)がリストされた。有効性およびベースライン変数の分析は、有効性解析対象集団(efficacy analysis set)(FAS)で実施される。CAR-T療法の不成功後のDLBCL、侵攻性リンパ腫(CAR-T療法の不成功後のDLBCLを除く)コホート1および2、FLグレード1~3a、ならびにCLLを含む拡大コホートの有効性解析は、それぞれのコホートの全ての患者が24週間の訪問を完了した後、またはこの時間より前に治験を中止した後に個別に実施される。
【0201】
結果:5~320mgの最大週用量を投与された患者の結果は、CRSの発生率が低いことを示している。わずか12mgの最大週用量を投与されている患者のREGN1979の血清濃度は、Raji腫瘍異種移植マウスモデルで有効であることが実証されている血清濃度レベルに近づくか、それを超えることが観察された(データは示さず)。わずか40mgの最大週用量を投与されている患者は、Raji腫瘍異種移植マウスモデルで有効であることが実証された最小濃度レベル(2000μg/L)を超える血清濃度を維持した(データは示さず)。さらに、以下の表2~9に示すように、これらのレベルで治療された患者でも多数の部分的および完全な反応が観察された。コホート13N(27,000mcg REGN1979)のDLT評価期間中の累積されたREGN1979安全性およびPK経験は、CRSまたはIRR反応の管理アルゴリズム(すなわち、増分用量漸増、REGN1979投与の最初の数週間の分割投与、およびコルチコステロイドによる前投薬)が、連続投与コホートでの投与量の漸増にもかかわらず、重度のCRSまたはIRRの予防に効果的であることが証明されたことを示している。分割投与は、第1週~第4週(入手可能なデータ)の患者の安全性に利益をもたらし、重度のCRS/IRRの全体的な発生はほとんど観察されなかった。特に、本明細書で論じられる投薬戦略は、用量を、80mgを超えるレベル、さらには160mg以上のレベルに漸増するためのより安全な戦略を提供し、より高い用量が上記で論じられる所望の血清濃度に到達し、それを超えた第3週および第4週に発生するより軽度の事象を伴った。図1は、最大用量320mgまで投与されている患者のCRS/IRRの発生率を示している。現在まで、CRS/IRRの有害事象のために中止された患者はいない。
【表2】
【0202】
データカットオフ後(表2)、2人の追加の評価可能な患者が、1人は40mg、もう1人は320mgで完全奏効(CR)を示した。
【表3】
【0203】
CRの80mg患者3人のうち2人はCAR T細胞療法不成功であった。表3に記載されている完全奏功は全て、完全な代謝反応であった。
【0204】
80mg、160mg、320mgの用量の全てのCRは、治験治療で継続中のCRであり、反応の持続性を示している。
【表4】


【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】
【0205】
一般に、REGN1979で治療された重度の前治療を受けた再発/難治性B-NHLの患者で広く観察された活動には、以前のCAR T細胞療法後に進行したものも含まれ、以下を含む:
(i)FLグレード1-3a:≧5mgの用量で、12/13(92.3%)ORR、8/13CR(61.5%)、
(ii)DLBCL:80~160mgの用量で、4/6(66.7%)ORR(全てCR)、2人の患者がCD19指向性CAR T細胞療法の不成功後にCRを達成、
(iii)MCL:≧5mgの用量で、1人のCRを含む3/3の反応、
(iv)MZL:≧5mgの用量で、2人のCRを含む3/5の反応、
(v)B-NHLの患者の忍容性は、週1回320mgの用量まで実証されており、B-NHLの患者ではDLTは観察されていない。
(vi)軽度から中等度の重症度を伴う有害事象の大部分、
(vii)感染が患者の49.4%で報告された(2人の死亡(2.5%)を含む、14.8%グレード3~4)、
(viii)CRSまたは神経学的有害事象のために治療を中止した患者はいなかった、96人の初回患者のうち、7人の患者だけがグレード3のCRSを経験した、
(ix)デキサメタゾンは、REGN1979の細胞傷害性を阻害せず、T細胞活性化のアップレギュレーションに中程度の影響を及ぼし、サイトカイン放出を阻害した。
【0206】
実施例2:二重特異性抗体の臨床評価
以下に説明する臨床試験は、再発または難治性濾胞性リンパ腫の患者を対象に、抗CD20×抗CD3二重特異性抗体であるREGN1979の抗腫瘍活性と安全性を査定するための非盲検多施設第2相試験である。
【0207】
目的:この治験の主要目的は、再発したか、または抗CD20抗体とアルキル化剤を含む全身療法の少なくとも2つの以前のラインに抵抗性である濾胞性リンパ腫(FL)の患者において、第三者の中央判定(independent central review)による悪性リンパ腫の反応のルガーノ(Lugano)分類(Cheson、2014)に従う客観的奏功率(ORR)によって測定された単剤REGN1979の抗腫瘍活性を査定することである。この治験の副次的目的は、(1)再発または難治性のFLの患者における単剤REGN1979の抗腫瘍活性を査定することであって、(a)施設の治験責任医師の評価により査定されたルガーノ分類(Cheson、2014)によるORR、(b)第三者の中央判定、および施設の治験責任医師の評価により査定されたルガーノ分類による完全奏効(CR)率、(c)第三者の中央判定、および施設の治験責任医師の評価により査定されたルガーノ分類による無増悪生存期間(PFS)、(d)全生存期間(OS)、(e)第三者の中央判定、および施設の治験責任医師の評価により査定されたルガーノ分類による奏功期間(DOR)、(f)第三者の中央判定、および施設の治験責任医師の評価により査定されたルガーノ分類による病勢コントロール率(DCR)、(g)第三者の中央判定、および施設の治験責任医師の評価により査定されたルガーノ分類による病勢コントロール期間(DDC)、によって測定される、評価することと、(2)REGN1979の安全性と忍容性を評価することと、(3)REGN1979の薬物動態(PK)を評価することと、(4)REGN1979の免疫原性を評価することと、(5)検証済みの手段である欧州がん研究治療機関の生活の質に関する質問票(EORTC QLQ-C30)およびEuroQoL 5 Dimensions 3 Levels(EQ-5D-3L)によって測定されたREGN1979の生活の質への影響を評価すること、である。
【0208】
研究デザイン:この治験は、最大28日間のスクリーニング期間と、12週間の週1回(QW)の投与と、それに続く最大86週間の2週に1回(Q2W)の投与を含む最大98週間の総治療期間と、96週間の治療後のフォローアップ期間とで構成される。
【0209】
REGN1979は、単剤として静脈内(IV)に1mgの初回(一次)用量、続いて20mgの中間(二次)用量、続いて80mgの名目(三次および最大週)用量で、12QW治療の投与計画で投与され、それに続いてQ2Wで80mgのREGN1979を投与される。
【0210】
登録は、非盲検のシングルアームデザインに従う。
【0211】
スクリーニング期間は、インフォームドコンセントフォーム(ICF)の署名から始まり、患者が治験に適格であることが確認されて治療を開始したとき、または患者が不適格でありスクリーニング不合格として指定されたと判断されたときに終了する。
【0212】
患者が疾患の進行、その後のリンパ腫治療の開始、有害事象(AE)、またはその他の理由で治験治療を中止しない限り、治療期間は、REGN1979の初回投与から始まり、REGN1979の12回のQW注入と、それに続く86週間のQ2W投与の、合計98週間の治験薬投与で構成される。
【0213】
治療後のフォローアップ期間は、治験治療の最後の投与後96週間である。全ての患者は、死亡、フォローアップの喪失、患者のフォローアップへの同意の撤回、または治験依頼者による治験終了のいずれか早い方まで、生存状態について12週間ごとにフォローされる。疾患の進行、その後のリンパ腫治療の開始、または死亡以外の理由で治験治療を中止した患者については、疾患の反応は、治療後のフォローアップ期間中で疾患の進行、死亡、その後のリンパ腫治療の開始、または患者のフォローアップへの同意の撤回のいずれか早い方まで、12週間ごとに査定される。
【0214】
治験期間:スクリーニング期間を除く各患者の治験期間は、患者が疾患の進行またはその後の治療を開始しない限り、または死亡、フォローアップの喪失、患者のフォローアップ同意の撤回、または治験依頼者による治験終了まで、約194週間になる。治験の終了は、最後の患者の最後の来診として定義される。
【0215】
研究対象集団:最大481人の患者が最大100のサイトに登録される。研究対象集団は、再発したか、または抗CD20抗体とアルキル化剤を含む全身療法の少なくとも2つの以前のラインに抵抗性である、以前に治療を受けたFLグレード1~3aの、18歳以上の患者で構成される。登録前に、FL診断の中枢神経系組織病理学的確定が必要になる。FLグレード3bの患者は不適格である。難治性疾患は、最後の治療から6か月以内の標準的な投与計画または進行に対する反応の欠如として定義される。
【0216】
選択基準:患者は、治験に含まれるのに適格であるために以下の基準を満たさなければならない:
1.18歳以上
2.FLグレード1~3a診断の中枢神経系組織病理学的確定は、治験登録前に取得する必要がある。FLグレード3bの患者は不適格である。濾胞性リンパ腫の細分類は、世界保健機関(WHO)の分類に基づく(Swerdlow,2017年)。
3.疾患は再発しているか、抗CD20抗体とアルキル化剤を含む、全身療法の≧2つの以前のラインに抵抗性である必要がある。患者は、治験責任医師の意見では、治験登録時にFLの治療を必要とするはずである。
4.画像診断(コンピュータ断層撮影[CT]、または磁気共鳴画像法[MRI])によって記録された断面画像(短軸の直径に関係なく、最大横径(GTD)で≧1.5cmの少なくとも1つの二次元的に測定可能なリンパ節病変として定義される)上の測定可能な疾患。
5.米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)のパフォーマンスステータス0または1。
6.以下に記載されている適切な骨髄機能:(a)血小板数≧50×10/L。患者は、血小板適格性基準を満たすために、REGN1979の第1の用量前の7日以内に血小板輸血を投与されていない可能性がある、(b)ヘモグロビン≧9.0g/dL、(c)絶対好中球数(ANC)≧1.0×10/L。患者は、ANC適格基準を満たすために、REGN1979の第1の用量前の2日以内に顆粒球コロニー刺激因子を投与されていない可能性がある。
7.適切な肝機能:(a)総ビリルビン≦1.5×通常の上限(ULN)(肝臓のリンパ腫浸潤に起因する場合は≦3×ULN)、(b)アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)≦2.5×ULN(肝臓のリンパ腫浸潤に起因する場合は≦5×ULN)、(c)アルカリホスファターゼ(ALP)≦2.5×ULN(肝臓のリンパ腫浸潤に起因する場合は≦5×ULN)、注-肝臓のリンパ腫浸潤の存在に関係なく、AST>2.5×ULNおよび/またはALT>2.5×ULNと総ビリルビン>1.5×ULNの患者は除外され、既知のジルベール症候群の患者は値がベースラインレベルから変わらない限り、この総ビリルビン要件を満たす必要はない。
8.血清クレアチン≦1.5×ULN、またはコッククロフト-ゴールト式によって計算されたクレアチニンクリアランス≧50mL/分、注-計算されたクレアチニンクリアランスが<50mL/分の患者は、測定されたクレアチニンクリアランス(24時間の採尿または他の信頼できる方法に基づく)が≧50mL/分である場合、登録を検討される可能性がある。
9.ベースラインで腫瘍生検を受ける意欲。ベースラインの腫瘍生検を安全に取得できないと治験責任医師が判断した場合、治験依頼者は、メディカルモニターとの話し合いと承認後にのみ、生検の要件に例外を認めることができる。
10.治験の目的とリスクを理解し、署名および日付のあるインフォームドコンセントと保護された健康情報(国および地域の対象のプライバシー規制に従う)を使用するための承認を提供する能力。
11.来診および治験関連手順を順守する意思があり、順守することができる。
12.治験患者または法定代理人によって署名されたインフォームドコンセントを提供する。
13.治験関連の質問票を理解し、記入することができる。
【0217】
除外基準:以下の基準のいずれかを満たす患者は治験から除外される。
1.原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫または非原発性CNS NHLによる関与がわかっている(CNSリンパ腫が疑われる場合は、必須の頭部CTまたはMRIに加えて、必要に応じて腰椎穿刺によって評価する必要がある)。
2.5半減期内または治験薬の最初の投与前28日以内のいずれか短い方の全身性抗リンパ腫療法による治療。
3.同種幹細胞移植の病歴。
4.キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法による以前の治療。
5.治験薬の開始から72時間以内に、1日あたり10mgを超えるプレドニゾンまたは抗炎症同等物による継続的な全身性コルチコステロイド治療。
6.神経変性状態またはCNS運動障害の病歴。治験登録前の12か月以内の発作として定義される、制御不能な発作障害の病歴。
7.複製の可能性があるベクターによる、最初の治験薬物投与の前の28日以内のワクチン接種。
8.過去5年間にFLを除く別の悪性腫瘍、ただし、治癒の可能性のある治療を受けた非黒色腫皮膚がん、子宮頸部上皮内がん、または根治的局所制御および治療目的で効果的に治療されたとみなされたその他の腫瘍を除く。
9.重大な心血管疾患(例えば、ニューヨーク心臓協会クラスIIIまたはIVの心臓病、過去6か月以内の心筋梗塞、不安定狭心症または不安定狭心症)および/または重大な肺疾患(例えば、閉塞性肺疾患および症候性気管支痙攣の病歴)を含むが、これらに限定されない、治験の実施を妨害する、または患者を重大なリスクにさらす可能性のある重大な併発疾患または病状の証拠
10.心エコー図またはマルチゲート収集(MUGA)スキャンによる心臓駆出率<40%。
11.治験薬の最初の投与から2週間以内に入院またはIV抗感染薬による治療を必要とする感染症。
12.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染による制御不能な感染症、B型肝炎もしくはC型肝炎感染症、または他の制御不能な感染症で、ただし以下を除く:(a)感染を制御したHIVの患者(自発的にまたは安定した抗ウイルス療法のいずれかでウイルス量が検出できず、CD4数が350細胞/マイクロリットルを超える)は許可され、(b)感染を制御したB型肝炎(HepBsAg+)の患者(検出限界を下回る血清B型肝炎ウイルスDNAポリメラーゼ連鎖反応[PCR]、かつB型肝炎の抗ウイルス療法を受けている)は許可され、(c)感染を制御したC型肝炎ウイルス抗体陽性(HCV Ab+)の患者(自発的にまたは成功した以前の抗HCV治療過程に反応してPCRによって検出できないHCV RNA)は許可される。
13.治験薬または賦形剤と同様の化学的または生物学的組成を有する化合物に起因する重度のアレルギー反応の病歴。重度のアレルギー反応は、この目的のために、入院および/またはエピネフリンによる治療を必要とするものとして定義されている。
14.アロプリノールとラスブリカーゼの両方に対する過敏症が確認されている。
15.治験依頼者による事前の承認がない限り、臨床現場治験チームのメンバーまたはその近親者。
16.スクリーニング来診時に血清β-hCG妊娠検査が陽性の女性。陽性の場合、患者が適格であるためには、超音波によって妊娠を除外する必要がある。
17.司法当局または行政当局のいずれかによって発行された命令によって施設に献身している患者。
18.妊娠中または授乳中の女性。
19.最初の投与前/最初の治療の開始前、治験中、および最後の投与後少なくとも6か月間、非常に効果的な避妊を実践することを望まない、出産の可能性がある女性*または男性。非常に効果的な避妊手段には、(a)スクリーニング前の2回以上の月経周期で開始される排卵の抑制に関連する(エストロゲンおよびプロゲストゲン含有)ホルモン避妊薬(経口、膣内、経皮)またはプロゲストゲンのみのホルモン避妊薬(経口、注射、埋め込み型)の安定した使用、(b)子宮内避妊器具(IUD)、子宮内ホルモン放出システム(IUS)、(c)両側卵管結紮術、(d)精管切除されたパートナー、(e)および/または性禁欲が含まれる。
閉経後の女性は、出産の可能性を考慮しないためには、少なくとも12ヶ月間にわたって無月経でなければならない。子宮摘出術または卵管結紮術が記録されている女性には、妊娠検査および避妊は必要ない。
性禁欲は、治験薬に関連するリスクの全期間中に異性間性交を控えると定義される場合のみ、非常に効果的な方法とみなされる。性的禁欲の信頼性は、臨床試験の期間と対象の好ましい通常のライフスタイルに関連して評価する必要がある。
周期的禁欲(月経周期(calendar)、基礎体温(symptothermal)、排卵後法)、抜去(膣外射精)、殺精子剤のみ、および泌乳性無月経法(LAM)は、許容される避妊法ではない。女性用コンドームおよび男性用コンドームは一緒に使用されるべきではない。
【0218】
治療:REGN1979は、第1週に1mgの初回用量、第2週に20mgの中間用量、およびその後の投与中に80mgまたは160mgの名目用量でIV注入によって投与される。初回用量、中間用量、および最初の名目用量(それぞれ、一次、二次、および三次用量)について、治療は2つの別々の注入に分割され、各々が2日ごとに4時間にわたって、好ましくは連続しているが3日以内の間隔である(例えば、第1週の1日目および第1週の2日目)。その後の治療(最大週用量、例えば、320mg)は、単回注入または2回の別々の注入として投与され得、忍容性に応じて1~4時間にわたって投与され得る。治験治療は、12回のQW投与と、それに続く86週間のQ2W投与、合計98週間の治験薬投与で構成される。
【0219】
評価項目:この治験の主要評価項目は、悪性リンパ腫の反応のルガーノ分類(Cheson,2014)によっておよび第三者の中央判定によって測定される、再発したか、または抗CD20抗体およびアルキル化剤を含む全身療法の少なくとも2つの以前のラインに抵抗性のあるFLの患者における第1の用量から第1の用量後194週間までのORRである。副次的評価項目は次の通りである:(1)第1の用量から第1の用量後194週間までの、施設の治験責任医師の評価により査定されたルガーノ分類によるORR、(2)第三者の中央判定、および施設の治験責任医師の評価により査定されたルガーノ分類による、第1の用量から第1の用量後194週間までのCR率、(3)第三者の中央判定、および施設の治験責任医師の評価により査定されたルガーノ分類による、第1の用量から第1の用量後194週間までのPFS、(4)第1の用量から第1の用量後194週間までのOS、(5)第三者の中央判定、および施設の治験責任医師の評価により査定されたルガーノ分類による、第1の用量から第1の用量後194週間までのDOR、(6)第三者の中央判定、および施設の治験責任医師の評価により査定されたルガーノ分類による、第1の用量から第1の用量後194週間までのDCR、(7)第三者の中央判定、および施設の治験責任医師の評価により査定されたルガーノ分類による、第1の用量から第1の用量後194週間までのDDC、(8)第1の用量から第1の用量後194週間までの治療中発生した有害事象(TEAE)の発生率および重症度、ならびに(9)検証済みの手段であるEORTC QLQ-C30およびEQ-5D-3Lによって測定された、第1の用量から第1の用量後194週間までの患者報告結果のスコアの変化。
【0220】
手順と査定:全ての患者について、コンピュータ断層撮影(CT)または磁気共鳴画像法(MRI)を使用して、18F-フルオロデオキシグルコース-ポジトロン放出断層撮影(FDG-PET)画像法によって疾患を放射線学的に査定する。ルガーノ分類基準に従った腫瘍反応は、第三者の中央放射線学的判定(independent central radiology review)によって判断される。骨髄穿刺、骨髄生検、リンパ節および/または腫瘍生検が実施され、試料は組織学的に評価され、免疫組織化学を含む他の研究に使用され得る。安全性は、バイタルサインの査定、身体検査、米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)のパフォーマンスステータス、心電図(ECG)、AEの発生率、および併用薬の報告によって評価される。検査室での評価には、微分による全血球算定、血液化学値、血清免疫グロブリンG(IgG)、血清妊娠検査(該当する場合)、フェリチン、およびC反応性タンパク質(CRP)が含まれる。PKおよび抗薬物抗体(ADA)査定のための血液試料が収集される。末梢血試料は、バイオマーカーの変化(例えば、サイトカイン産生、炎症誘発性サイトカインの血清レベル、およびリンパ球サブセットと活性化状態の変化)を査定するために収集される。さらに、これらの試料は、基礎疾患の臨床経過に影響を与える、または治療の副作用を調節する変動について、腫瘍または体細胞の遺伝子分析を可能にする。生活の質の査定は、自己記入式のEORTC QLQ-C30およびEQ-5D-3L質問票を使用して実施される。
【0221】
統計的計画:この治験は、再発した、または全身療法の少なくとも2つの以前のラインに抵抗性のあるFLの患者に対するREGN1979の有効性と安全性を評価するように設計されている。主要有効性評価項目の分析は、全ての患者が査定までの28週間の治験治療期間を完了し、腫瘍反応の査定を受けたか、治験から離脱した後に実施される。サンプルサイズの正当化-ORRの主要評価項目には、単段階の正確な二項設計が採用されている。観察されたORRの両側95%信頼区間は、サンプルサイズ100に基づいて計算された。100人の患者で、観察されたORRが少なくとも60%、66%、70%、および75%である場合、95%CIの下限はそれぞれ49%、55%、60%、および65%のORRを除外し、すなわち、以下の表10に示すように、ORRは49%、55%、60%、および65%とは有意差がある。
【表10】

100人の患者のサンプルサイズで、REGN1979の真の治療効果が64%、70%、75%、または80%の場合、95%CIの観測された下限の確率は82%、83%、89%、または91%であり、それぞれ49%、55%、60%、または65%を除外する。サンプルサイズは、治験から時期尚早に撤退した患者を考慮して、さらに10%増加する。したがって、合計サンプルサイズは112人の患者になる。
【0222】
統計的手法:人口統計学的およびベースライン特性を記述的に集約する。主要有効性評価項目は、第三者の中央判定に基づくルガーノ分類によるORRである。ORRと両側95%信頼区間を集約する。最良総合効果について評価可能ではない患者は、ノンレスポンダーとみなされる。ルガーノ分類による治験責任医師の判定によって決定されたORR、およびルガーノ分類による施設の治験責任医師の評価によるおよび第三者の中央判定によるCR率およびDCRの副次的有効性評価項目は、両側95%信頼区間とともに集約される。DOR、DDC、PFS、OSを含む他の副次的有効性評価項目は、ルガーノ分類によるカプランマイヤー法を使用して、中央値とその95%信頼区間によって集約される。病勢コントロール率は、両側信頼区間とともに集約される。検証済みの手段であるEORTC QLQ-C30およびEQ-5D-3Lによって測定された生活の質は、記述統計によって集約される。薬物曝露、AE、検査データ、バイタルサインおよびECOGパフォーマンスステータスを含む安全性観察および測定は、表およびリストに要約され、提示される。
【0223】
中間解析:中間解析は、最初の50人の患者が28週で腫瘍査定を完了した後、または以前に治験から撤退した後に実施される。ORRおよび関連する95%信頼区間が集約される。この中間解析の主な目的は、ORRでの点推定と点推定の精度の特性評価であるため、この中間解析に関連する仮説検定はない。したがって、第1種の過誤の補正は、この計画された中間解析には適用されない。その他の有効性評価項目については、両側95%信頼区間も提示される。
【0224】
REGN1979の追加の有効性調査は、本治験に、または、以下の患者が含まれる、追加の治験に含まれ得る:(a)第3ライン以上(3L+)療法としての濾胞性リンパ腫(グレード1~3a)の患者、(b)(グレード1-3a)第2ライン以上(2L+)療法としての全用量化学療法(full dose chemotherapy)に適している濾胞性リンパ腫の患者、(c)2L+療法としての全用量化学療法に適していない濾胞性リンパ腫(グレード1-3a)の患者、(d)以前に治療されておらず、全用量化学免疫療法に適している濾胞性リンパ腫(グレード1~3a)の患者、(e)以前に治療されておらず、全用量化学免疫療法に適していない濾胞性リンパ腫(グレード1~3a)の患者、(f)標準治療に対する第1ライン(1L)療法としての全用量化学免疫療法に適合している濾胞性リンパ腫(グレード1~3a)の患者、(g)標準治療に対する1L療法としての全用量化学免疫療法に適合していない濾胞性リンパ腫(グレード1~3a)の患者、(h)標準治療に対する2L+療法としての全用量化学免疫療法に適合している濾胞性リンパ腫(グレード1~3a)の患者、(i)標準治療に対する2L+療法としての全用量化学免疫療法に適合していない濾胞性リンパ腫(グレード1~3a)の患者、および/または(j)標準治療と組み合わせた濾胞性リンパ腫の患者。
【0225】
REGN1979の追加の有効性調査は、本治験に、または、以下の患者が含まれる、追加の治験に含まれ得る:(a)3L+療法として新規または変換されたびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の患者、(b)CAR-T療法の不成功後のDLBCLの患者、(c)2L+療法として自己HSCT(造血幹細胞移植)に適格なDLBCLの患者、(d)2L+療法としてHSCTに不適格なDLBCLの患者、(e)以前に未治療で、分子予後不良因子(poor molecular prognostic factors)(非胚中心B細胞型、ダブルヒットもしくはトリプルヒット)を有し、全用量化学免疫療法に適合しているDLBCLの患者、(f)以前に未治療で、分子予後不良因子(非胚中心B細胞型、ダブルヒットもしくはトリプルヒット)を有し、全用量化学免疫療法に適合していないDLBCLの患者、(g)CAR-TナイーブであるDLBCLの患者、(h)最大週用量320mgのDLBCLの患者、(i)標準治療と組み合わせたDLBCLの患者、(j)標準治療に対する1L療法としての全用量化学免疫療法に適合しているDLBCLの患者、(k)標準治療に対する1L療法としての全用量化学免疫療法に適合していないDLBCLの患者、(l)標準治療に対する2L+療法としてのauto-HSCTに適格なDLBCLの患者、および/または(m)標準治療に対する2L+療法としてのauto-HSCTに不適格なDLBCLの患者。
【0226】
REGN1979の追加の有効性調査は、本治験、または、以下の患者が含まれる、追加の治験に含まれ得る:(a)2L+療法としてのBTK阻害剤不成功後のマントル細胞リンパ腫(MCL)の患者、(b)2L+療法としての辺縁帯リンパ腫(MZL)の患者の、および/または(c)2L+療法としての、リンパ芽球性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、または他のB-NHLサブタイプの患者。
【0227】
REGN1979の追加の有効性調査は、本治験、または(a)REGN1979の第1の用量の1日前にリツキシマブの単回用量を受けたCD20+B細胞悪性腫瘍の患者が含まれる、追加の治験に含まれ得る。このリツキシマブ導入コホートおよび拡大のみには、REGN1979の第1の用量の1日前[すなわち、治験日(-1)]にリツキシマブの単回用量(375mg/m)が投与される。REGN1979は第1週の1日目に開始され、REGN1979の治療期間は9ヶ月になる。患者は最大24回用量のREGN1979で治療される:4週間の導入期間中に4回の週1回用量、続いてさらに8回の週1回用量、および6か月の維持期間中にQ2Wで12回用量が投与される。このリツキシマブ導入コホートの最初の部分では、REGN1979は80mgのステップアップ用量を使用して投与される。最適な用量投与計画が特定されると、320mgのREGN1979のステップアップ用量で6人の患者からなる1つの追加投与グループが最適な用量投与計画で評価される。REGN1979のステップアップ用量が80mg~320mgの用量グループも評価することができる。その後、さらに24人の患者がこの最適な用量投与計画と最適な用量で評価され、最適な用量で治療されたリツキシマブ導入グループの6人の患者と一緒に、合計30人の患者が安全性と忍容性について判定される。
【0228】
標準治療との組み合わせ治験のいずれにおいても、組み合わせには、REGN1979とCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニゾン)、ICE(イホスファミド、カルボプラチンおよびエトポシド)、Gem-Ox(ゲムシタビンおよびオキサリプラチン)、レナリドマイド、またはレナリドマイドとリツキシマブが含まれ得る。
【0229】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態によって範囲が限定されるべきではない。実際、本明細書に記載されるものに加えて本発明の様々な変更が前述の記載から当業者には明らかとなるであろう。そのような変更は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
図1
【配列表】
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