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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】電子基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20241217BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H05K1/02 B
H05K1/02 J
H05K9/00 L
H05K9/00 R
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021539187
(86)(22)【出願日】2020-07-21
(86)【国際出願番号】 JP2020028282
(87)【国際公開番号】W WO2021029194
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2019147349
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138771
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 将明
(72)【発明者】
【氏名】藤野 新九郎
(72)【発明者】
【氏名】出耒 智一
(72)【発明者】
【氏名】田原 裕之
(72)【発明者】
【氏名】竹下 貴雄
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-165273(JP,A)
【文献】特開平02-187093(JP,A)
【文献】特開2010-135607(JP,A)
【文献】特開2004-311797(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013ー0105151(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に上面グランドを有する基板と、
前記上面に形成され第1の信号線と接続する少なくとも1つの第1のランドと、
前記上面に形成され第2の信号線と接続する少なくとも1つの第2のランドと、
前記少なくとも1つの第1のランドと前記少なくとも1つの第2のランドとの間の前記上面に配置され、前記上面グランドに接続される少なくとも1つの第3のランドと、
前記少なくとも1つの第1のランドを挟んで前記少なくとも1つの第3のランドと反対側の前記上面に配置され、前記上面グランドに接続される少なくとも1つの第4のランドと、を備え、
前記基板が前記少なくとも1つの第1のランドと前記第1信号線を電磁的にシールドするための遮蔽導体をさらに含み、
前記遮蔽導体は、第1の接点で、前記少なくとも1つの第3のランド接続され
前記遮蔽導体は、第2の接点で、前記少なくとも1つの第4のランドに接続され、
前記第1の接点を中心として発生する第1の磁界ループおよび前記第2の接点を中心として発生し前記第1の磁界ループと同方向に回る第2の磁界ループが互いに打ち消し合うように、前記少なくとも1つの第3のランドおよび前記少なくとも1つの第4のランドが配置される、
電子基板。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第3のランドおよび前記少なくとも1つの第4のランドは、前記少なくとも1つの第1のランドを挟んで左右対象に配置される、
請求項1に記載の電子基板。
【請求項3】
前記遮蔽導体は、前記少なくとも1つの第1のランドおよび前記第1の信号線の一部を覆うように筒状に形成された、
請求項1に記載の電子基板。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第1のランドが、前記少なくとも1つの第3のランドと前記少なくとも1つの第4のランドの中心間距離の80%の領域内に配置される、
請求項1に記載の電子基板。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第1のランドおよび前記少なくとも1つの第2のランドのそれぞれの外周と前記上面グランドとの間に設けられる間隙が、所定距離のクリアランスを含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電子基板。
【請求項6】
前記基板が、前記上面と反対側の下面に、この下面を覆う下面グランドを有し、
前記下面グランドが、前記少なくとも1つの第1のランドおよび前記少なくとも1つの第2のランドに対応する位置に存在しない、
請求項1~のいずれか1項に記載の電子基板。
【請求項7】
前記クリアランスは均等でない、
請求項に記載の電子基板。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1のランド、前記少なくとも1つの第2のランド、前記少なくとも1つの第3のランドおよび前記少なくとも1つの第4のランドのうち少なくとも1つは複数である、
請求項1~のいずれか1項に記載の電子基板。
【請求項9】
複数の第3のランドまたは複数の第4のランドは、前記複数の第3のランドの1つと前記複数の第4のランドの1つとを通る線に交差する方向に並んで配置される、
請求項に記載の電子基板。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第3のランドの面積が、前記少なくとも1つの第4のランドの面積以下である、
請求項1~のいずれか1項に記載の電子基板。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の電子基板を備えた、
車載用カメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レンズを通った光を電気信号に変換する回路基板と、外皮導電体を有し、回路基板と外部ケーブルとを接続するコネクタと、回路基板の外側に配置される遮蔽導体と、回路基板および遮蔽導体を収容する絶縁ハウジングと、を備えるカメラが開示されている。このカメラにおけるコネクタは、回路基板に実装された内側コネクタと、内側コネクタに接続され、かつ遮蔽導体と接続される中間コネクタと、中間コネクタに外部ケーブルを接続する外側コネクタと、から構成され、遮蔽導体は、中間コネクタの外皮導電体に支持されており、外皮導電体による遮蔽導体の支持構造は、外皮導電体の全周囲に対して回転対称性を有しており、遮蔽導体は、中間コネクタの外皮導電体と遮蔽導体との境界部を起点に回路基板を包み込む形態を有し、絶縁ハウジングは、中間コネクタに接続されて支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-75715号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示は、上述した従来の状況に鑑みて案出され、ノイズの影響を抑制できる電子基板を提供することを目的とする。
【0005】
本開示は、上面に上面グランドを有する基板と、前記上面に形成され第1の信号線と接続する少なくとも1つの第1のランドと、前記上面に形成され第2の信号線と接続する少なくとも1つの第2のランドと、前記少なくとも1つの第1のランドと前記少なくとも1つの第2のランドとの間の前記上面に配置され、前記上面グランドに接続される少なくとも1つの第3のランドと、前記少なくとも1つの第1のランドを挟んで前記少なくとも1つの第3のランドと反対側の前記上面に配置され、前記上面グランドに接続される少なくとも1つの第4のランドと、を備え、前記基板が前記少なくとも1つの第1のランドと前記第1信号線を電磁的にシールドするための遮蔽導体をさらに含み、前記遮蔽導体は、第1の接点で、前記少なくとも1つの第3のランド接続され前記遮蔽導体は、第2の接点で、前記少なくとも1つの第4のランドに接続され、前記第1の接点を中心として発生する第1の磁界ループおよび前記第2の接点を中心として発生し前記第1の磁界ループと同方向に回る第2の磁界ループが互いに打ち消し合うように、前記少なくとも1つの第3のランドおよび前記少なくとも1つの第4のランドが配置される、電子基板を提供する。
【0006】
本開示によれば、ノイズの影響を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態1に係る電子基板を有するカメラが使用されるシステム構成例を示す図
図2】実施の形態1に係る電子基板の一例の平面図
図3図2の3-3断面を示す模式図
図4A】比較例に係る電子基板における磁界ループ発生状況例を示す平面図
図4B図4Aの4B-4B断面を示す模式図
図5】実施の形態1に係る電子基板における磁界ループ発生状況例を平面図で示した作用説明図
図6】2つの磁界ループのそれぞれによる磁界減衰量と距離との相関例を表した作用説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施の形態1の内容に至る経緯)
特許文献1には、遮蔽導体が回路基板を包み込む形態を有し、かつ中間コネクタの外皮導電体による遮蔽導体の支持構造が外皮導電体の全周囲に対して回転対称性を有したカメラが開示されている。これにより、従来のカメラは、電位を安定化させ、周辺機器から放射されて回路基板へ向かう電磁波を効果的に遮蔽し、耐ノイズ性能を得ることができた。また、従来のカメラは、回路基板から放射されて周辺機器へ向かう電磁波も効果的に遮蔽できた。しかしながら、従来のカメラの回路基板の構造では、回路基板に異なるシステムのそれぞれとの間で接続される複数のケーブルのそれぞれが近接して接続される場合、相互のケーブルの間で干渉が生じ、ノイズの影響を抑制できない可能性があった。
【0009】
そこで、以下の実施の形態1において、複数のケーブルを使用する場合において、ノイズの影響を抑制できる電子基板の例を説明する。
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係るカメラ基板の構成および作用を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであって、これらにより請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0011】
図1は、実施の形態1に係る電子基板13を有するカメラ11が使用されるシステムの構成例を示す図である。図2は、電子基板13の平面図である。実施の形態1に係るカメラ11は、例えば車載用のカメラである。また、実施の形態1に係る電子基板13は、カメラ11に備えられる電子基板として説明するが、用途はカメラに限定されないことは言うまでもない。また、電子基板13は、カメラ11に備えられる基板でなくてもよい。例えば、電子基板13は、映像、音声、制御信号などを分離するための変換器などに備えられる基板であってもよい。
【0012】
カメラ11は、少なくともレンズ(不図示)とイメージセンサ(不図示)とを有して構成される。イメージセンサは、例えばCCD(Charged-Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)の固体撮像素子であり、撮像面に結像した光学像を電気信号に変換する。カメラ11は、例えば車両の自動運転を実現するためのセンシング技術の一つとして用いられ、第1の制御装置15および第2の制御装置17との間で通信可能に接続される。カメラ11は、撮像した撮像画像を含む映像信号を第1の制御装置15に送信する。また、カメラ11は、制御信号を生成し、生成された制御信号を第2の制御装置17に送信する。なお、例えば、映像信号は周波数が数MHz以上の信号(高速信号)であり、制御信号は周波数が数百kHz以下の信号(低速信号)であり、映像信号の方が制御信号よりも高速な信号になっている。
【0013】
なお、カメラ11の撮像画像を含む映像信号の伝送方式は、アナログビデオ信号出力方式であっても、高精細画像情報を安定して出力できる高速シリアルデジタル信号出力方式であってもよい。
【0014】
第1の制御装置15は、カメラ11によって撮像された撮像画像の映像信号を受信し、この映像信号を出力制御する。第1の制御装置15は、例えば車載用のナビゲーションシステムなどである。
【0015】
第2の制御装置17は、カメラ11から受信された制御信号に基づく制御を実行する。第2の制御装置17は、例えば車両の中央制御装置などである。
【0016】
実施の形態1に係る電子基板13(図2参照)は、車載用のカメラ11に備えられ、第1の制御装置15に映像信号を送信し、第2の制御装置17に制御信号を送信する。
【0017】
電子基板13は、基板19と、第1のランド21と、第2のランド23と、第3のランド25と、第4のランド27と、を含んで構成される。
【0018】
電子基板13は、カメラ11との間で一体的に接続される。電子基板13は、例えばカメラレンズ(不図示)と反対側(つまり、カメラ11の背面)のイメージセンサから変換された電気信号を入力される。
【0019】
イメージセンサ(不図示)には、撮像面と反対側にバンプなどの複数の端子部(不図示)が設けられる。電子基板13には、カメラ11と複数のケーブル(不図示)との間を接続するために複数の端子部が設けられている。さらに、複数の端子部のそれぞれは、複数のケーブルのそれぞれが半田などを用いて、接続される。
【0020】
電子基板13は、多層基板である。なお、電子基板13は、多層基板に限らず、片面基板、両面基板、ビルドアップ基板、リジッド基板あるいはフレキシブル基板のいずれであってもよい。
【0021】
電子基板13には、基板19の上面29に、複数の第1のランド21のそれぞれと、第2のランド23と、第3のランド25と、第4のランド27とが形成される。実施の形態1において、これら複数のランドのそれぞれが形成されるカメラ11のレンズ(不図示)と反対側の面を、基板19の上面29と称する。
【0022】
基板19の上面29には、グランド31が形成される。基板19の上面29に形成された複数のランドのそれぞれは、スルーホール、ビアホール、あるいは印刷回路パターンによりイメージセンサ(不図示)などの端子部と接続される。なお、基板19は、例えばリジッド基板である場合、例えばガラスエポキシ基板などを用いることができるが、これに限定されない。
【0023】
また、基板19は、矩形状に形成されるが、これに限らない。例えば、基板19の形状は、矩形状の四隅がラウンド形状に形成されてもよい。
【0024】
グランド31は、この基板19よりも小さい略相似形で上面29を覆う銅箔などにより形成される。グランド31は、例えば複数のランドのそれぞれの形状に沿って線状に設けられてもよい。
【0025】
複数の第1のランド21のそれぞれは、基板19の上面29に形成される。複数の第1のランド21のそれぞれは、基板19の長辺に沿う方向に並んで配置され、グランド31との間で絶縁されて形成される。第1のランド21は、例えば基板19の短辺に沿う方向が長辺となる矩形状に形成される。なお、複数の第1のランド21のそれぞれの形状は、これに限定されない。さらに、複数の第1のランド21のそれぞれの数は、図2に示す数に限定されず、1つであっても3つ以上であってもよい。
【0026】
第2のランド23は、基板19の上面29に形成される。第2のランド23は、基板19の長辺に沿う方向に、複数の第1のランド21それぞれのうち左側の第1のランド21に並んで配置され、グランド31と絶縁されて形成される。第2のランド23は、基板19の短辺に沿う方向が長辺となる矩形状に形成される。なお、第2のランド23の形状は、これに限定されない。さらに、第2のランド23の数は、図2に示す数に限定されず、複数であってもよい。
【0027】
第3のランド25は、基板19の上面29に形成される。第3のランド25は、複数の第1のランド21のそれぞれと第2のランド23との間に配置され、グランド31に接続されて形成される。実施の形態1に係る第3のランド25は、矩形状に形成された四隅をL形に切り抜くことにより、四辺の中点部分がグランド31に接続されるとともに、略十字状の形状に形成される。これにより、第3のランド25は、半田などを用いて配線導体を接合する際に、熱伝導による熱の拡散を抑制して半田付けを容易にできる。
【0028】
第4のランド27は、基板19の上面29に形成される。第4のランド27は、複数の第1のランド21のそれぞれを挟んで第3のランド25と反対側に配置され、グランド31に接続されて形成される。第4のランド27は、第3のランド25と同様に、矩形状の四隅をL形に切り抜くことにより、四辺の中点部分がグランド31に接続した略十字状に形成される。これにより、第4のランド27は、半田などを用いて配線導体を接合する際に、熱伝導による熱の拡散を抑制して半田付けを容易にできる。
【0029】
電子基板13は、基板19の上面29に、複数の第1のランド21のそれぞれと、第2のランド23と、第3のランド25と、第4のランド27とが一列に並んで配置される。これら複数のランドのそれぞれは、図2に示す基板19の一端側(図2の左端側)から他端側(図2の右端側)へ向かって、第2のランド23、第3のランド25、複数の第1のランド21のそれぞれ、および第4のランド27の順で並んで配置される。複数の第1のランド21のそれぞれは、差動用に複数隣接して設けられている。よって、電子基板13は、第2のランド23、第3のランド25、複数の第1のランド21のそれぞれ、および第4のランド27からなる5つのランドのそれぞれが、基板19の長辺に沿って整列して配置される。なお、ランドのそれぞれの数および面積は、図2に示す例に限定されない。
【0030】
また、実施の形態1に係る電子基板13は、ノイズの影響の低減という効果を得るにあたって、第3のランド25および第4のランド27の数が同数であり、かつ第3のランド25および第4のランド27が互いに対称となるように配置されている構成が好ましいが、これに限定されない。例えば、第3のランド25および第4のランド27の数および面積は、異なっていてもよい。具体的には、第3のランド25の面積は、第4のランド27の面積より小さくてよいし、大きくてもよい。また、第3のランド25および第4のランド27は、複数であってよい。具体的には、第3のランド25が2つ形成され、第4のランド27が1つ形成されてもよい。このような場合、第3のランド25および第4のランド27は、1つの第3のランド25と1つの第4のランド27とを通る線(つまり、図2の3-3断面線)に交差(好ましくは直交)する方向に並んで配置される。言い換えると、第3のランド25および第4のランド27は、複数設けられる場合、基板19の短辺に沿う方向に並んで配置される。
【0031】
電子基板13は、第1のランド21が、第3のランド25と第4のランド27の中心間距離の80%の領域内に配置されている(図6参照)。また、電子基板13は、第3のランド25の面積が、第4のランド27の面積以下となるように形成されている。
【0032】
図3は、図2に示した電子基板13の一例の3-3断面を示す模式図である。
【0033】
電子基板13は、複数の第1のランド21のそれぞれに第1の信号線33が接続される。複数の第1のランド21のそれぞれと複数の第1の信号線33のそれぞれとは、例えば半田などにより接続される。第2のランド23には、第2の信号線35が接続される。第2のランド23と第2の信号線35とは、例えば半田などにより接続される。第3のランド25と第4のランド27は、同一の遮蔽導体37と接続される。遮蔽導体37は、少なくとも下部が開口した箱状の導体からなる。
【0034】
実施の形態1に係る遮蔽導体37は、複数の第1のランド21および複数の第1の信号線33を覆うように筒状に形成される。図2における3-3断面位置における遮蔽導体37は、半田などにより第3のランド25と第4のランド27との間で接続される。つまり、遮蔽導体37は、第3のランド25およびと第4のランド27を介してグランド31との間で接続され、グランド31と同電位となる。これにより、第1のランド21および第1の信号線33は、遮蔽導体37により電磁シールドされる。この半田などによる第3のランド25および第4のランド27と遮蔽導体37との接続部分は、後述する接点39となる。なお、一般的には、遮蔽導体37の全周がグランド31に接続されない、つまり、遮蔽導体37およびグランド31は、複数の箇所で接続され、接続されていない箇所には複数の隙間が生じる。
【0035】
電子基板13は、複数の第1のランド21のそれぞれおよび第2のランド23の外周とグランド31との間に間隙41が設けられ、グランド31、第3のランド25および第4のランド27との間での接続を回避する。複数の間隙41のそれぞれは、隣接するランド同士あるいはグランドとの結合を回避するための絶縁間隙43に加えて、所定距離のクリアランス45を含む。絶縁間隙43は、通常、0.1mm程度に形成される。後述する磁界ループを発生しやすくするためのクリアランス45は、所定距離である例えば0.2~0.4mm程度に設定される。なお、複数の間隙41のそれぞれは、0.3mm~0.5mmで設けられることが好ましいが、これに限定されない。例えば、実施の形態1に係る電子基板13が十分に大きい場合、複数の間隙41のそれぞれは、0.5mmより大きく設けられてよい。
【0036】
また、複数のクリアランス45のそれぞれは、複数の第1のランド21のそれぞれ、第2のランド23、第3のランド25および第4のランド27の各辺において均等でなくてもよい。複数のクリアランス45のそれぞれは、上述したように絶縁間隙43を含む複数の間隙41のそれぞれが0.3mm~0.5mmとなるように設けられればよい。つまり、実施の形態1に係る基板19の製造作業者は、クリアランス45および絶縁間隙43を含む複数の間隙41のそれぞれが0.3mm~0.5mmとなるように各ランドのそれぞれを配置(接続)すればよく、各ランドの配置(接続)作業を効率化できる。
【0037】
電子基板13における基板19は、上面29と反対側の下面47に、この下面47を覆うグランド31を有する。グランド31は、複数の第1のランド21のそれぞれおよび第2のランド23の位置に応じて複数のグランド抜き部49のそれぞれが設けられる。これにより、電子基板13は、複数のグランド抜き部49のそれぞれによって、複数の第1のランド21のそれぞれおよび第2のランド23とグランド31との間の接続(接触)を回避できる。
【0038】
図4Aは、比較例に係る電子基板51における磁界ループ発生状況例を平面図であり、図4Bは、の4B-4B断面を示す模式図である。
【0039】
図4Aに示す比較例に係る電子基板51においては、高速信号を出力するカメラ11の映像伝送ピン(不図示)が、例えば電子基板51を貫通するビアホールなどにより複数の第1のランド21のそれぞれと接続される。また、電子基板51においては、低速信号を送信する制御信号ピン(不図示)が、第2のランド23に接続される。比較例に係る複数の第1のランド21のそれぞれは、基板19の上面29で複数の第1の信号線33のそれぞれと接続される。また、図5に示す比較例に係る第2のランド23は、基板19の上面29で第2の信号線35と接続される。
【0040】
比較例に係る電子基板51においては、複数の第1の信号線33のそれぞれから発生する高速信号における映像信号のノイズが、第2の信号線35に飛び込む。これにより、第2の信号線35は、アンテナとなり、輻射ノイズを発生させる。第2の信号線35は、外部の電波を受信するとアンテナとなり、発生させた輻射ノイズを複数の第1の信号線33のそれぞれの映像信号へ飛び込ませ、画像乱れを発生させる。
【0041】
また、比較例に係る電子基板51においては、複数の第1のランド21のそれぞれに接続される複数の第1の信号線33のそれぞれ(映像伝送ケーブル)の接続先のシステムと、第2のランド23に接続される第2の信号線35(車両制御ケーブル)の接続先のシステムとが異なるため、接続先が異なる複数の第1のランド21のそれぞれおよび第2のランド23を同一の遮蔽導体37で覆うことはできない。さらに、通常、映像信号は、高速で通信される信号であり、ノイズの影響において懸念がある。よって、上述のようにノイズを遮蔽する遮蔽導体を設ける必要がある。なお、制御信号は、低速で通信される信号であり、一般的にノイズの影響が小さいため、必ずしも遮蔽を行う必要はない(つまり、必須でない)。
【0042】
したがって、比較例に係る電子基板51のように、同一基板上において、複数のランドのそれぞれの接続先のシステムが異なり、かつそのうち1つが高速通信される映像信号を含む場合には、映像信号からのノイズ放射あるいは外来電波による映像信号の乱れなどが生じる可能性があった。
【0043】
しかし、上述した比較例に係る電子基板51には、遮蔽導体37と第3のランド25とを導通(接続)する接点39が1つだけ設けられている。このとき、コモンモード電流により、グランド31と遮蔽導体37とを接続している接点39を中心に図4Aに示す1つの磁界ループ55が発生する。したがって、比較例に係る電子基板51においては、磁界ループ55を起因とする映像伝送ケーブル(複数の第1の信号線33のそれぞれ)にノイズが飛び込むため、ノイズの影響の抑制が困難だった。
【0044】
図5は、実施の形態1に係る電子基板13における磁界ループ55の発生状況例を平面図で示した作用説明図である。
【0045】
実施の形態1に係る電子基板13には、複数の第1のランド21のそれぞれと第2のランド23との間に、グランド31と接続される第3のランド25が配置され、第1のランド21を挟んで第3のランド25と反対側に、グランド31と接続される第4のランド27が配置される。図5に示す第3のランド25および第4のランド27は、第1のランド21を挟んで左右対称に配置される。つまり、実施の形態1に係る電子基板13においては、グランド31と遮蔽導体37との接点39が、第1のランド21を挟んで左右対称に配置される。これにより、電子基板13には、複数の第1のランド21の左側に配置された第3のランド25および右側に配置された第4のランド27と、遮蔽導体37とを接続する2つの接点39のそれぞれを中心とし、同方向に回る磁界ループ55が発生する。
【0046】
なお、第3のランド25および第4のランド27の配置は、上述した左右対称に限定されない。第3のランド25および第4のランド27は、互いを発生源とする磁界ループを打ち消すように配置されていればよい。例えば、第3のランド25および第4のランド27は、図2に示す複数の第1のランド21の中点を通り、3-3断面線と直交する線に対して線対称に配置されてよい。また、第3のランド25および第4のランド27は、3-3断面線に対して線対称に配置されてもよい。
【0047】
2つの磁界ループ55は、複数の第1のランド21が配置された部分(つまり、遮蔽導体37内)で互いに逆方向の磁界となり打ち消し合う。つまり、電子基板13は、2つの磁界ループ55を発生させることにより、コモンモード電流によって発生する複数の第1のランド21が配置された部分(つまり、遮蔽導体37内)における磁界ループ55を相殺(キャンセル)させることができる。
【0048】
これにより、実施の形態1に係る電子基板13は、複数の第1の信号線33のそれぞれに対する第2の信号線35から発生するノイズを軽減できる。また、電子基板13は、回路基板を同一の遮蔽導体37で覆うことが不可能な場合、あるいは一部の配線のみを不完全な状態でしか遮蔽導体37で覆うことができない場合においても、ノイズの影響を抑制できる。その結果、電子基板13は、低ノイズ・耐ノイズ性能を向上させることができる。
【0049】
また、実施の形態1に係る電子基板13は、同一基板上において、複数のランドのそれぞれの接続先のシステムが異なり、かつそのうち1つが高速通信される映像信号を含む場合であっても、映像信号からのノイズ放射を抑制するとともに、外来電波による映像信号の乱れを抑制することができる。
【0050】
図6は、2つの磁界ループ55のそれぞれによる磁界減衰量と距離との相関例を表した作用説明図である。
【0051】
電子基板13は、複数の第1のランド21のそれぞれが、第3のランド25と第4のランド27の中心間距離Dの80%の領域(つまり、図6に示す領域0.8D)内に位置するように配置される。領域0.8Dの中点(0.8D)/2の位置は、中心間距離Dの中点D/2の位置と一致する。
【0052】
ここで、有限長の配線に電流が流れているとき、配線から距離R離れた点Pでの磁界強度Hは、H=(cosθ1+cosθ2)/4πRとなり、距離Rに反比例する。よって、磁界強度Hは、第1のランド21のそれぞれの中点D/2で最大となり、この中心位置から第3のランド25あるいは第4のランド27の方向に離れるにしたがって小さくなる。
【0053】
第3のランド25および第4のランド27のそれぞれを中心に発生している2つの磁界ループ55(図5参照)は、第1のランド21のそれぞれの中心位置で同じ磁界強度を有し、かつ逆方向の磁界となり互いに打ち消し合う。図6に示すように、第3のランド25および第4のランド27のそれぞれの磁界強度Hは、中心間距離Dの中点D/2において、双方の磁界ループ55が逆方向かつ等しい強度となる。
【0054】
電子基板13は、複数の第1のランド21のそれぞれが、第3のランド25と第4のランド27における中心間距離Dの80%の領域(つまり、図6に示す領域0.8D)内に位置するように配置されることにより、ノイズ低減効果の実効性が確保される。つまり、電子基板13は、図6に示す領域0.8D内に位置するように複数の第1のランド21のそれぞれを配置することにより、2つの磁界ループ55のそれぞれによるノイズ低減効果の実効性が確保されるように構成されている。
【0055】
以上により、実施の形態1に係る電子基板13は、グランド31を有する基板19と、基板19の上面29に形成され第1の信号線33と接続する第1のランド21と、上面29に形成され第2の信号線35と接続する第2のランド23と、第1のランド21と第2のランド23との間の上面29に配置されてグランド31に接続される第3のランド25と、第1のランド21を挟んで第3のランド25と反対側の上面29に配置されてグランド31に接続される第4のランド27と、を備える。
【0056】
これにより、実施の形態1に係る電子基板13においては、基板19がグランド31を有する。グランド31は、例えば基板19の上面29を覆って設けられる。基板19の上面29には、4種のランドが一列に並んで配置される。4種のランドは、基板19の一端側から他端側へ向かって、第2のランド23、第3のランド25、第1のランド21、および第4のランド27の順で並んでいる。実施の形態1における第1のランド21は、2つ設けられる。したがって、ランドは、5つが整列する。
【0057】
このうち、第1のランド21には、例えば映像伝送ケーブルである第1の信号線33が接続される。第2のランド23には、例えば車両制御ケーブルである第2の信号線35が接続される。
【0058】
第1のランド21および第2のランド23は、グランド31と絶縁される。グランド31とランドとの絶縁は、基板19の上面29を覆っているグランド31を、それぞれのランドの位置でランドの外周から切り離すことにより可能となる。この際、ランドの周囲とグランド31との間に形成される間隙41は、絶縁間隙43を含む。
【0059】
一方、2つの第1の信号線33を挟んで両側に配置された第3のランド25と第4のランド27とは、グランド31に接続される。これらのランドとグランド31との接続は、それぞれのランドの外周における一部分をグランド31に接続状態のまま残すことにより可能となる。
【0060】
したがって、実施の形態1に係る電子基板13は、同一基板上において、複数のランドのそれぞれの接続先のシステムが異なり、かつそのうち1つが高速通信される映像信号を含む場合であっても、映像信号からのノイズ放射を抑制するとともに、外来電波による映像信号の乱れを抑制することができる。
【0061】
また、実施の形態1に係る電子基板13は、第1のランドが、第3のランドと第4のランドの中心間距離の80%の領域内に配置される。これにより、実施の形態1に係る電子基板13は、2つの磁界ループ55のそれぞれによるノイズ低減効果の実効性が確保されるように構成されている。
【0062】
また、実施の形態1に係る電子基板13は、第1のランド21および第2のランド23が、それぞれの外周とグランド31との間に間隙41を有して形成される。この間隙41には、絶縁間隙43と、クリアランス45とが含まれる。絶縁間隙43は、ランドとグランド31の短絡を防止するために設けられ、通常、0.1mm程度に形成される。クリアランス45は、絶縁間隙43とは別に、磁界ループ55を発生しやすくするために設けられ、0.2~0.4mm程度に設定される。つまり、電子基板13は、第1のランド21および第2のランド23の外周とグランド31との間に、0.3~0.5mm程度の間隙41が設定される。これにより、電子基板13は、磁界ループ55を発生し易くし(言い換えると、磁界ループ55がグランド31と結合しにくくし)、ノイズ低減効果を得られ易くしている。なお、絶縁間隙43およびクリアランス45は、上記した数値には限定されないことは言うまでもない。
【0063】
また、実施の形態1に係る電子基板13は、基板19が、上面29と反対側の下面47に、この下面47を覆うグランド31を有している。下面47のグランド31は、第1のランド21および第2のランド23に応じた位置が除かれている。これにより、電子基板13は、基板19の下面47においても磁界ループ55がグランド31と結合しにくくなる。その結果、磁界ループ55を発生しやすくし、ノイズ低減効果をより得られやすくしている。
【0064】
また、基板19は、薄厚で形成される。薄厚の基板19では、例えば第2のランド23に接続される第2の信号線35とその直下に設けられた下面47のグランド31とが結合してノイズの拡がる現象が起きる。電子基板13では、下面47のグランド31が、第1のランド21および第2のランド23に応じた位置で除かれることにより、この下面47に設けたグランド31によるノイズの拡がりを抑制できる。
【0065】
また、実施の形態1に係る電子基板13は、第1のランド21および第2のランド23が、それぞれの外周とグランド31との間に間隙41が設けられる。この間隙41は、結合回避用の絶縁間隙43と、所定距離のクリアランス45とからなる。絶縁間隙43は、通常、0.1mm程度に形成される。磁界ループ55を発生しやすくするためのクリアランス45は、所定距離であり、例えば0.2~0.4mm程度に設定される。クリアランス45は、所定距離で確保されればよく、特に均等に形成される必要はない。これにより、電子基板13は、ランド形成時の加工精度を緩和できる。
【0066】
電子基板13は、第1のランド21、第2のランド23、第3のランド25および第4のランド27の少なくとも1つが複数である。
【0067】
また、実施の形態1に係る電子基板13は、第1のランド21、第2のランド23、第3のランド25および第4のランド27のうち任意のランドが複数で設けられる。例えば映像伝送ケーブルである第1の信号線33が接続される第1のランド21は、例えば、2つとすることにより、位相が180°異なる2つの映像信号を用いた平衡伝送を可能とすることができる。これにより、電子基板13は、平衡伝送を行うことにより、輻射を小さくし、かつ外部からのノイズも受けにくくすることができる。
【0068】
電子基板13においては、それぞれが複数で並べられる第3のランド25と第4のランド27とは、1つの第3のランド25と1つの第4のランド27を通る線に交差する方向に並んで配置される。
【0069】
また、実施の形態1に係る電子基板13は、第3のランド25および第4のランド27が複数で配置される。この場合、複数の第3のランド25と、複数の第4のランド27とは、1つの第3のランド25と1つの第4のランド27を通る線に交差する方向に並んで配置される。つまり、複数の第3のランド25と複数の第4のランド27とは、直線状に並ばないように配置される。例えば、2つの第3のランド25と2つの第4のランド27とが配置される場合、四角形の隣接する一対の角部のそれぞれに第3のランド25が配置され、他の隣接する一対の角部のそれぞれに第4のランド27が配置される。これにより、電子基板13は、第3のランド25および第4のランド27が1つずつの場合に比べ、磁界ループのキャンセル効果を大きくすることができ、よりノイズ低減効果を得ることができる。
【0070】
また、実施の形態1に係る電子基板13は、第3のランド25が、第1のランド21と第2のランド23との間に配置される。これにより、第3のランド25は、第4のランド27の面積以下で形成される場合、他の素子やランド(例えば、第1のランド21あるいは第2のランド23)と干渉しにくくできる。
【0071】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本開示は、ノイズの影響を抑制する電子基板として有用である。
【符号の説明】
【0073】
13 電子基板
19 基板
21 第1のランド
23 第2のランド
25 第3のランド
27 第4のランド
29 上面
31 グランド
33 第1の信号線
35 第2の信号線
41 間隙
43 絶縁間隙
45 クリアランス
47 下面
49 グランド抜き部
D 中心間距離
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6