(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】複合フィルムならびにその製造および使用の方法
(51)【国際特許分類】
H01B 1/06 20060101AFI20241217BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20241217BHJP
C01F 17/235 20200101ALI20241217BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20241217BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H01B1/06 A
H01B13/00 Z
C01F17/235
C08L101/12
C08K3/22
(21)【出願番号】P 2021548541
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(86)【国際出願番号】 US2019058719
(87)【国際公開番号】W WO2020092473
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-28
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ミリロン,デリア
(72)【発明者】
【氏名】オング,ゲイリー
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-300135(JP,A)
【文献】特開2004-165148(JP,A)
【文献】特開平05-314995(JP,A)
【文献】特開2011-086572(JP,A)
【文献】特開2010-138325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/06
H01B 13/00
C01F 17/235
C08L 101/12
C08K 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトン伝導性ポリマー相内に分散した複数のナノ構造化金属酸化物結晶を含む複合フィルムであって、前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、1nm~20nmの平均粒度、および単分散の粒度分布であってメジアン粒度から25%以内に80%がある粒度分布を有し、前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶を前記複合フィルムに対して20%~90体積%含
み、但し、前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶は金属酸化物の水和物でない、複合フィルム。
【請求項2】
前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶が還元性金属酸化物を含む、請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項3】
前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶が、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化マグネシウム、酸化バナジウム、酸化鉄、酸化クロム、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化セリウム、酸化ガドリニウム、酸化サマリウムまたはそれらの組合せを含む、請求項1または2に記載の複合フィルム。
【請求項4】
前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶が、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化タングステン、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化鉄、酸化クロム、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化セリウム、酸化ガドリニウム、酸化サマリウムまたはそれらの組合せを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項5】
前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶が酸化セリウムを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項6】
前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶が、1種または複数のドーパントをドープした酸化セリウムを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項7】
前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶が、ガドリニウムをドープした酸化セリウム、サマリウムをドープした酸化セリウムまたはそれらの組合せを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項8】
前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶のそれぞれが、1nm~5nmのサイズである少なくとも1つの寸法を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項9】
前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶が、実質的に等方性である平均粒子形状を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項10】
前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶が1nm~10nmの平均粒度を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項11】
前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶が配位子および/またはキャッピング材料を実質的に含まない、請求項1~10のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項12】
前記プロトン伝導性ポリマー相が、ポリエーテル、ポリスルホネート、ポリスルホン、ポリ(イミダゾール)、トリアゾール、ベンゾイミダゾール、ポリエステル、ポリカルボネート、ピリジンモノマー由来のポリマー、それらの誘導体、またはそれらの組合せを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項13】
前記プロトン伝導性ポリマー相がポリエーテルまたはその誘導体を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項14】
前記プロトン伝導性ポリマー相が、ポリエチレンオキシド、ポリエーテルピリジン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラヒドロフラン、ポリビニルブチラール、ポリベンゾイミダゾール、それらの誘導体、またはそれらの組合せを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項15】
前記プロトン伝導性ポリマーが、ポリエチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、それらの誘導体、またはそれらの組合せを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項16】
前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶を、前記複合フィルムに対して30~90体積%、20~70体積%または20~50体積%含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項17】
100nm~500μm、1μm~500μmまたは10μm~100μmの平均厚さを有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項18】
100℃以上、200℃以上または300℃以上の温度で、10
-8S/cm以上、10
-6S/cm以上、10
-4S/cm以上、0.01S/cm以上または0.1S/cm以上のプロトン伝導率を有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項19】
自立性膜を形成する、請求項1~18のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項20】
基材によって支持されている、請求項1~18のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の複合フィルムを製造する方法であって、
前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶と、前記プロトン伝導性ポリマー相を含むポリマーとを溶媒中に分散させ、それによって分散液を形成する工程;
前記分散液を基材上に堆積させる工程;および
それによって前記複合フィルムを形成する工程
を含む、方法。
【請求項22】
前記溶媒が、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルホルムアミド、ホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、n-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、またはそれらの組合せを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記溶媒が、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、またはそれらの組合せを含む、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記分散液を堆積させる工程が、印刷、スピンコーティング、ドロップキャスティング、ゾーンキャスティング、ディップコーティング、ブレードコーティング、噴霧、真空濾過、スロットダイコーティング、カーテンコーティング、またはそれらの組合せを含む、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記分散液を堆積させる工程がスピンコーティングを含む、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記基材から前記複合フィルムを取り出す工程をさらに含む、請求項21~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶を製造する工程をさらに含む、請求項21~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶から配位子および/またはキャッピング剤を除去して、前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶が配位子および/またはキャッピング材料を実質的に含まない工程をさらに含む、請求項21~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
請求項1~20のいずれか一項に記載の複合フィルムを含むデバイスであって、燃料電池、電解槽、プロトン交換電気分解装置またはバッテリーを構成する、デバイス。
【請求項30】
プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)を構成する、請求項29に記載のデバイス。
【請求項31】
25℃以上、50℃以上、100℃以上、200℃以上または300℃以上の温度で作動される、請求項29または30に記載のデバイス。
【請求項32】
前記複合フィルムを、プロトン交換膜として、イオン交換膜として、水素分離膜として、固体電解質またはそれらの組合せとして使用する工程を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の複合フィルムの使用の方法。
【請求項33】
前記複合フィルムを燃料電池において使用する工程を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の複合フィルムの使用の方法。
【請求項34】
前記複合フィルムをプロトン交換膜燃料電池(PEMFC)においてプロトン交換膜として使用する工程を含む、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
25℃以上、50℃以上、100℃以上、200℃以上または300℃以上の温度で行われる、請求項32~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
請求項1~20のいずれか一項に記載の前記複合フィルムの使用の方法であって、電気分解において、可逆的電気透析において、塩素アルカリシステムにおいて、またはそれらの組合せにおいて前記複合フィルムを使用するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月31日に出願された米国特許仮出願第62/753,271号に対して優先権の利益を主張し、その全体は参照により本明細書において組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
プロトン交換膜は、プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)または幾つかのエレクトロクロミックデバイスにおいて充放電の間に負極と正極の間でプロトンを輸送するために使用される。電気化学的効率および安定性の増加のためにより高温、例えば100℃を超えてPEMFCを運転する苦難が現存する。しかしながら、100℃を超えてプロトン伝導を示す材料の数は限定され、既存のものは、安定性の問題、拡張性の問題または不十分な性能のいずれかを示す。既存のアイディアは、通常、過剰プロトン(これは多湿条件下で不安定である)を有する酸の固体型、有機ポリマーと無機成分(通常金属水和物)とが混合された有機-無機材料であって、その水和物によって保持される水分子(水分子は高温で脱着される場合にその有益な効果を無効にする)からプロトン伝導が生じる材料、および膜の減湿防止を支援する様々な有機コーティング層を使用するものである。したがって、周囲条件下の伝導率に加えて100℃超において安定で十分なプロトン伝導を示す材料に対する必要性が存在する。本明細書において論じられる組成物および方法は、このようなニーズに取り組む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
開示される組成物および方法の目的によると、本明細書で具体化され広く記載されるように、開示内容は、複合フィルムならびにその製造および使用の方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
幾つかの例において、プロトン伝導性ポリマー相内に分散した、1nm~20nmの平均粒度を有する複数のナノ構造化金属酸化物結晶を含む複合フィルムであって、複合フィルムに対して20体積%~90体積%の複数のナノ構造化金属酸化物結晶を含む複合フィルムが本明細書において開示される。
【0005】
幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、還元性金属酸化物を含む。幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化マグネシウム、酸化バナジウム、酸化鉄、酸化クロム、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化セリウム、酸化ガドリニウム、酸化サマリウムまたはそれらの組合せを含む。幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化タングステン、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化鉄、酸化クロム、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化セリウム、酸化ガドリニウム、酸化サマリウムまたはそれらの組合せを含む。幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、酸化セリウムを含む。幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、1種または複数のドーパントをドープした酸化セリウムを含む。幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、ガドリニウムをドープした酸化セリウム、サマリウムをドープした酸化セリウムまたはそれらの組合せを含む。
【0006】
幾つかの例において、各々の複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、1nm~5nmのサイズである少なくともの1つの寸法を有する。幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、実質的に等方性である平均粒子形状を有する。幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は1nm~10nmの平均粒度を有する。
【0007】
幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、配位子および/またはキャッピング材料を実質的に含まない。
【0008】
幾つかの例において、プロトン伝導性ポリマー相は、ポリエーテル、ポリスルホネート、ポリスルホン、ポリ(イミダゾール)、トリアゾール、ベンゾイミダゾール、ポリエステル、ポリカーボネート、ピリジンモノマー由来のポリマー、その誘導体またはそれらの組合せを含む。幾つかの例において、プロトン伝導性ポリマー相はポリエーテルまたはその誘導体を含む。幾つかの例において、プロトン伝導性ポリマー相は、ポリエチレンオキシド、ポリエーテルピリジン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラヒドロフラン、ポリビニルブチラール、ポリベンゾイミダゾール、その誘導体またはそれらの組合せを含む。幾つかの例において、プロトン伝導性ポリマーは、ポリエチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、その誘導体またはそれらの組合せを含む。
【0009】
幾つかの例において、複合フィルムは、複合フィルムに対して30体積%~90体積%、20体積%~70体積%または20体積%~50体積%の複数のナノ構造化金属酸化物結晶を含む。幾つかの例において、複合フィルムは、100nm~500μm、1μm~500μmまたは10μm~100μmの平均厚さを有する。幾つかの例において、複合フィルムは、25℃以上、100℃以上、200℃以上または300℃以上の温度で10-8S/cm以上、10-6S/cm以上、10-4S/cm以上、0.01S/cm以上または0.1S/cm以上のプロトン伝導率を有する。幾つかの例において、複合フィルムは自立性膜を形成する。幾つかの例において、複合フィルムは基材によって支持されている。
【0010】
また、本明細書に記載される複合フィルムのいずれかを製造する方法であって、複数のナノ構造化金属酸化物結晶、およびプロトン伝導性ポリマー相を含むポリマーを溶媒中に分散させ、それによって分散液を形成するステップ;および分散液を基材上に堆積させるステップを含み、それによって複合フィルムを形成する、方法が本明細書において開示される。
【0011】
幾つかの例において、溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルホルムアミド、ホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、n-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドまたはそれらの組合せを含む。幾つかの例において、溶媒は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリルまたはそれらの組合せを含む。
【0012】
幾つかの例において、分散液を堆積させるステップは、印刷、スピンコーティング、ドロップキャスティング、ゾーンキャスティング、ディップコーティング、ブレードコーティング、噴霧、真空濾過、スロットダイコーティング、カーテンコーティング、またはそれらの組合せを含む。幾つかの例において、分散液を堆積させるステップは、スピンコーティングを含む。
【0013】
幾つかの例において、方法は、基材から複合フィルムを取り出すステップをさらに含む。幾つかの例において、方法は、複数のナノ構造化金属酸化物結晶を製造するステップをさらに含む。幾つかの例において、方法は、複数のナノ構造化金属酸化物結晶が配位子および/またはキャッピング材料を実質的に含まないように、複数のナノ構造化金属酸化物結晶から配位子および/またはキャッピング剤を除去するステップを含む。
【0014】
また、燃料電池、電解槽、プロトン交換電気分解装置またはバッテリーを含むことができる、本明細書に記載の複合フィルムのいずれかを含むデバイスが本明細書において開示される。幾つかの例において、デバイスはプロトン交換膜燃料電池(PEMFC)を含む。幾つかの例において、デバイスは、25℃以上、50℃以上、100℃以上、200℃以上または300℃以上の温度で作動される。
【0015】
また、本明細書に記載の複合フィルムのいずれかを使用する方法であって、複合フィルムを、プロトン交換膜として、イオン交換膜として、水素分離膜として、固体電解質として、またはそれらの組合せとして使用するステップを含む方法が本明細書において開示される。また、本明細書に記載の複合フィルムのいずれかを使用する方法であって、複合フィルムを燃料電池において使用するステップを含む方法が本明細書において開示される。幾つかの例において、方法は、複合フィルムをプロトン交換膜燃料電池(PEMFC)においてプロトン交換膜として使用するステップを含む。幾つかの例において、方法は、25℃以上、50℃以上、100℃以上、200℃以上または300℃以上の温度で行われる。
【0016】
また、本明細書に記載の複合フィルムのいずれかの使用の方法であって、複合フィルムを電気分解において、可逆的電気透析において、塩素アルカリシステムにおいて、またはそれらの組合せにおいて使用するステップを含む方法が本明細書において開示される。
【0017】
開示される組成物および方法の追加の利点について、一部は以下の記載で述べられ、また一部は記載から明白になるであろう。開示される組成物および方法の利点は、添付された特許請求の範囲において具体的に記載される要素および組合せによって実現され達成される。前述の一般的な記載および以下の詳細な記載の両方は単なる例示の説明であり、開示されるデバイスおよび方法を限定するものではなく、特許請求されるとおりであることが理解されるべきである。
【0018】
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の記載に述べられる。本発明の他の特色、目的および利点は、以下の記載、図面および特許請求の範囲から明白になるであろう。
【0019】
添付の図は、本明細書に組み込まれ、その一部を構成し、本開示のいくつかの態様を例示するものであり、本記載と共に、本開示の原理について説明する役目をする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、酸化セリウムの酸化を示すEllingham構造である。
【
図2】
図2は、酸化セリウムの酸化を示すEllingham構造である。
【
図3】
図3は、CeO
2ナノ結晶の走査型透過電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図4】
図4は、CeO
2ナノ結晶のX線回折である。
【
図5】
図5は、体積分率で50:50のナノ結晶:ポリマーを含む複合フィルムの走査型顕微鏡画像である。
【
図6】
図6は、体積分率で50:50のナノ結晶:ポリマーを含む複合フィルムの走査型顕微鏡画像である。
【
図7】
図7は、CeO
2のみのフィルムのイオン伝導率である。
【
図8】
図8は、PEOのみのフィルムのイオン伝導率である。
【
図9】
図9は、CeO
2-PEO複合フィルムのイオン伝導率である。
【
図10】
図10は、CeO
2-ポリベンゾイミダゾール複合フィルムのイオン伝導率である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書において記載の組成物、デバイスおよび方法は、開示される内容および本明細書に含まれる実施例の特定の態様の以下の詳細な記載を参照することによってより容易に理解することができる。
【0022】
本組成物、デバイスおよび方法が開示および記載される前に、以下に記載の態様は、特定の合成方法にも特定の試薬にも限定されず、変化し得ることが当然に理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特定の態様のみを記載するためのものであり、限定するように意図されないことが理解されるべきである。
【0023】
またこの明細書を通じて、様々な刊行物が参照される。これらの刊行物の開示はその全体で、開示される事項と関係する技術分野の状態をより十分に記載するために、本明細書中での参照によって本出願に組み込まれる。開示される参照もまた、参照が依拠する、文中で論じられる、その中に含まれる材料について、参照によって本明細書中に個々に具体的に組み込まれる。
【0024】
一般的な定義
以下に続く本明細書および特許請求の範囲において、以下の意味を有すると定義するものとする幾つかの用語に対して言及される:
【0025】
本明細書の記載および特許請求の範囲の全体にわたって、単語「含む(comprise)」および単語の他の形、例えば「含む(comprising)」および「含む(comprises)」は、例えば、他の添加剤、成分、整数またはステップを含むがこれらに限定されず、これらを除外するようには意図されない。
【0026】
記載および添付される特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他のものを指さない場合に複数の記載物を含む。したがって、例えば、「組成物(a composition)」への言及は、2以上のそのような組成物の混合物を含み、「化合物(the compound)」への言及は、2以上のそのような化合物の混合物を含み、「作用物質(an agent)」への言及は2以上のそのような作用物質の混合物を含む、などである。
【0027】
「任意選択の」または「任意選択で」は、続いて説明される事象または状況が生じることもあれば生じないこともあり、また、この記載は、上記の事象または状況が生じる事例も、生じない事例も含むことを意味する。
【0028】
複合フィルム
イオン伝導性ポリマー相(例えば、プロトン伝導性ポリマー相)内に分散した、複数のナノ構造化金属酸化物結晶を含む複合フィルムが、本明細書において開示される。本明細書において使用される場合、「ナノ構造化」は、1つまたは複数のナノ寸法の特徴を有する任意の構造を意味する。ナノ寸法の特色は、20ナノメートル(nm)以下(例えば、10nm以下)のサイズである少なくとも1つの寸法を有する任意の特色であり得る。例えば、ナノ寸法の特徴は、ナノワイヤー、ナノチューブ、ナノ粒子、ナノ孔など、またはそれらの組合せを含むことができる。したがって、複数のナノ構造化金属酸化物結晶のそれぞれは、例えば、ナノワイヤー、ナノチューブ、ナノ粒子、ナノ孔またはそれらの組合せを含むことができる。幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶のそれぞれは、ナノ寸法でないが、ナノワイヤー、ナノチューブ、ナノ粒子、ナノ孔またはそれらの組合せを有する改変されている金属酸化物結晶を含むことができる。
【0029】
本明細書において使用される場合、「相」は、一般に、不均質系の明瞭な物理的に別々の部分である、実質的に一様な組成を有する材料の領域を指す。用語「相」は、相を構成する材料が化学的に純粋な物質であることを暗示せず、単に、相を構成する材料の化学的および/または物理的性質が材料の全体にわたって基本的に一様であること、また、化学的および/または物理的性質が、材料内の別の相の化学的および/または物理的性質と有意に異なることを暗示する。物理的性質の例としては、密度、厚さ、アスペクト比、比表面積、空隙率および次元性が挙げられる。化学的性質の例としては化学組成が挙げられる。
【0030】
複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、例えば、平均合計表面が大きく、還元性金属酸化物を含み、酸素空孔欠陥形成エネルギーが低く、等電点が高く、実質的に電子的に絶縁し、高い表面酸素空孔濃度またはそれらの組合せを有することができる。
【0031】
複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、任意選択で1種または複数のドーパントをドープした、任意の適切な金属酸化物を含むことができる。例えば、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は還元性金属酸化物を含むことができる。本明細書において使用される場合、「還元性金属酸化物」は、一般に、バルク形態でまたは金属酸化物の表面の欠陥状態として、異なる原子価状態(例えば+1、+2、+3、+4、+5などの1つまたは複数)を保持することができる金属を含む金属の酸化物を指す。例えば、還元性金属酸化物は、同一の陽イオン成分を含む金属酸化物の酸化を示すエリンガム(Ellingham)構造において、金属酸化物の曲線が、水素、酸素、水の平衡よりも低い金属酸化物を含み、例えば、
図1および
図2において酸化セリウムについて示されるように、金属酸化物は、水蒸気の存在下で酸化され水の同時還元を伴って吸着された水素または水素ガスを形成することを示唆する。
【0032】
幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化シリコン、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化マグネシウム、酸化バナジウム、酸化鉄、酸化クロム、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化セリウム、酸化ガドリニウム、酸化サマリウムまたはそれらの組合せを含むことができる。幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化タングステン、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化鉄、酸化クロム、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化セリウム、酸化ガドリニウム、酸化サマリウムまたはそれらの組合せを含むことができる。幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は酸化セリウムを含むことができる。複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、ある種の例において、1種または複数のドーパント、例えば1種または複数の異原子価アクセプタードーパント(例えば、三価アクセプタードーパント)をドープした酸化セリウムを含むことができる。幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、ガドリニウムをドープした酸化セリウム、サマリウムをドープした酸化セリウムまたはそれらの組合せを含むことができる。複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、幾つかの例において、配位子および/またはキャッピング材料を実質的に含まなくてもよい。
【0033】
複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、任意の形状(例えば、球体、棒、四角形、楕円、三角形、多角形など)の結晶を含むことができる。幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は等方性の形状を有することができる。幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は異方性の形状を有することができる。幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶の形状は、特定の小面を露出するように選択することができる。ある種の例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶の形状は(100)小面を露出するように選択することができる。
【0034】
幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶のそれぞれは、20nm以下(例えば、19.5nm以下、19nm以下、18.5nm以下、18nm以下、17.5nm以下、17nm以下、16.5nm以下、16nm以下、15.5nm以下、15nm以下、14.5nm以下、14nm以下、13.5nm以下、13nm以下、12.5nm以下、12nm以下、11.5nm以下、11nm以下、10.5nm以下、10nm以下、9.75nm以下、9.5nm以下、9.25nm以下、9nm以下、8.75nm以下、8.5nm以下、8.25nm以下、8nm以下、7.75nm以下、7.5nm以下、7.25nm以下、7nm以下、6.75nm以下、6.5nm以下、6.25nm以下、6nm以下、5.75nm以下、5.5nm以下、5.25nm以下、5nm以下、4.75nm以下、4.5nm以下、4.25nm以下、4nm以下、3.75nm以下、3.5nm以下、3.25nm以下、3nm以下、2.75nm以下、2.5nm以下、2.25nm以下または2nm以下)のサイズである寸法を少なくとも1つ有することができる。幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶のそれぞれは、1nm以上(例えば、1.25nm以上、1.5nm以上、1.75nm以上、2nm以上、2.25nm以上、2.5nm以上、2.75nm以上、3nm以上、3.25nm以上、3.5nm以上、3.75nm以上、4nm以上、4.25nm以上、4.5nm以上、4.75nm以上、5nm以上、5.25nm以上、5.5nm以上、5.75nm以上、6nm以上、6.25nm以上、6.5nm以上、6.75nm以上、7nm以上、7.25nm以上、7.5nm以上、7.75nm以上、8nm以上、8.25nm以上、8.5nm以上、8.75nm以上、9nm以上、9.25nm以上、9.5nm以上、9.75nm以上、10nm以上、10.5nm以上、11nm以上、11.5nm以上、12nm以上、12.5nm以上、13nm以上、13.5nm以上、14nm以上、14.5nm以上、15nm以上、15.5nm以上、16nm以上、16.5nm以上、17nm以上、17.5nm以上、18nm以上、18.5nm以上または19nm以上)のサイズである寸法を少なくとも1つ有することができる。複数のナノ構造化金属酸化物結晶のそれぞれは、上に記載の最小値のいずれかから、上に記載の最大値のいずれかまでのサイズの範囲にある寸法を少なくとも1つ有することができる。例えば、複数のナノ構造化金属酸化物結晶のそれぞれは、1nm~20nm(例えば1nm~10nm、10nm~20nm、1nm~5nm、5nm~10nm、10nm~15nm、15nm~20nm、1nm~4nm、4nm~7nm、7nm~10nm、10nm~13nm、13nm~16nm、16nm~20nm、1nm~15nm、2nm~20nmまたは2nm~9nm)のサイズである寸法を少なくとも1つ有することができる。本明細書において使用される場合、複数のナノ構造化金属酸化物結晶のそれぞれの少なくとも1つの寸法のサイズは、電子顕微鏡法によって求められる。
【0035】
幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は平均粒度を有することができる。「平均(average)粒度」および「統計平均(mean)粒度」は、本明細書において同じ意味で使用され、一般に粒子(または結晶)の集団において粒子(または結晶)の統計的平均粒度を指す。例えば、実質的に球形を有する複数の粒子についての平均粒度は、複数の粒子の平均直径を含むことができる。実質的に球形を有する粒子について、粒子の直径は、例えば、流体力学的直径を指すことができる。本明細書において使用される場合、粒子の流体力学的直径は、粒子の表面で2点間の最大の直線距離を指すことができる。異方性粒子について、平均粒度は、例えば、粒子の平均最大寸法(例えば、棒形状粒子の長さ、立方体形状粒子の対角線、三角形状粒子の二等分線など)を指すことができる。異方性粒子については、平均粒度は、例えば、粒子の流体力学的サイズを指すことができる。統計平均粒度は、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、および/または動的光散乱による評価などの当該分野で公知の方法を使用して測定することができる。本明細書において使用される場合、平均粒度は電子顕微鏡法によって求められる。
【0036】
複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、例えば、1nm以上(例えば、1.25nm以上、1.5nm以上、1.75nm以上、2nm以上、2.25nm以上、2.5nm以上、2.75nm以上、3nm以上、3.25nm以上、3.5nm以上、3.75nm以上、4nm以上、4.25nm以上、4.5nm以上、4.75nm以上、5nm以上、5.25nm以上、5.5nm以上、5.75nm以上、6nm以上、6.25nm以上、6.5nm以上、6.75nm以上、7nm以上、7.25nm以上、7.5nm以上、7.75nm以上、8nm以上、7.25nm以上、8.5nm以上、8.75nm以上、9nm以上、9.25nm以上、9.5nm以上、9.75nm以上、10nm以上、10.5nm以上、11nm以上、11.5nm以上、12nm以上、12.5nm以上、13nm以上、13.5nm以上、14nm以上、14.5nm以上、15nm以上、15.5nm以上、16nm以上、16.5nm以上、17nm以上、17.5nm以上、18nm以上、18.5nm以上、19nm以上、19.5nm以上、20nm以上、21nm以上、22nm以上、23nm以上、24nm以上、25nm以上、30nm以上、35nm以上、40nm以上、45nm以上、50nm以上、60nm以上、70nm以上または80nm以上)の平均粒度を有することができる。
【0037】
幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は100nm以下(例えば、90nm以下、80nm以下、70nm以下、60nm以下、50nm以下、45nm以下、40nm以下、35nm以下、30nm以下、25nm以下、24nm以下、23nm以下、22nm以下、21nm以下、20nm以下、19.5nm以下、19nm以下、18.5nm以下、18nm以下、17.5nm以下、17nm以下、16.5nm以下、16nm以下、15.5nm以下、15nm以下、14.5nm以下、14nm以下、13.5nm以下、13nm以下、12.5nm以下、12nm以下、11.5nm以下、11nm以下、10.5nm以下、10nm以下、9.75nm以下、9.5nm以下、9.25nm以下、9nm以下、8.75nm以下、8.5nm以下、8.25nm以下、8nm以下、7.75nm以下、7.5nm以下、7.25nm以下、7nm以下、6.75nm以下、6.5nm以下、6.25nm以下、6nm以下、5.75nm以下、5.5nm以下、5.25nm以下、5nm以下、4.75nm以下、4.5nm以下、4.25nm以下、4nm以下、3.75nm以下、3.5nm以下、3.25nm以下、3nm以下、2.75nm以下、2.5nm以下、2.25nm以下または2nm以下)の平均粒度を有することができる。
【0038】
複数のナノ構造化金属酸化物ナノ結晶の平均粒度は、上に記載の最小値のいずれかから、上に記載の最大値のいずれかまでの範囲を有することができる。複数のナノ構造化金属酸化物ナノ結晶は、例えば、1nm~100nm(例えば1nm~50nm、50nm~100nm、1nm~20nm、20nm~40nm、40nm~60nm、60nm~80nm、80nm~100nm、1nm~40nm、1nm~30nm、1nm~20nm、1nm~10nm、10nm~20nm、1nm~5nm、5nm~10nm、10nm~15nm、15nm~20nm、1nm~4nm、4nm~7nm、7nm~10nm、10nm~13nm、13nm~16nm、16nm~20nm、1nm~15nm、5nm~20nm、5nm~15nm、2nm~10nm、1nm~9.5nm、1nm~9nm、1nm~8.5nm、1nm~8nm、1nm~7.5nm、1nm~7nm、1nm~6.5nm、1nm~6nm、1nm~5.5nmまたは2nm~9nm)の平均粒度を有することができる。
【0039】
幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は実質的に単分散であってもよい。「単分散」および「均質な粒度分布」とは、本明細書において使用される場合、一般に、粒子はすべて同じまたはほとんど同じサイズである粒子の集団を記載する。本明細書において使用される場合、単分散の分布とは、分布の80%(例えば分布の85%、分布の90%または分布の95%)が、メジアン粒度から25%以内(例えば平均粒度から20%以内、平均粒度から15%以内、平均粒度から10%または平均粒度から5%以内)にある粒子分布を指す。
【0040】
幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は酸化セリウムを含むことができ、複数のナノ構造化金属酸化物結晶のそれぞれは、1nm~5nmのサイズである寸法を少なくとも1つ有することができる。幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、酸化セリウムを含むことができ、実質的に等方性である平均粒子形状を有し、1nm~10nmの平均粒度を有することができる。
【0041】
幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、酸化セリウムを含むことができ、複数のナノ構造化金属酸化物結晶のそれぞれは、1nm~5nmのサイズである寸法を少なくとも1つ有することができ、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、立方形または小板形状などの(100)小面を露出する形状を有することができる。幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、酸化セリウムを含むことができ、(100)小面を露出する平均粒子形状を有し、1nm~10nmの平均粒度を有することができる。
【0042】
イオン伝導性ポリマー相は、例えば、イオン移動度が高い、実質的に熱安定性がある、実質的に機械的安定性がある、低いガラス転移温度を有する、高い分節型鎖運動性を有する、結晶化が低温である、非晶質である、またはそれらの組合せとすることができる。
【0043】
幾つかの例において、イオン伝導性ポリマー相はプロトン伝導性ポリマー相を含むことができる。プロトン伝導性ポリマー相は、例えば、高いイオン移動度を有する、実質的に熱安定性がある、実質的に機械的安定性がある、低いガラス転移温度を有する、高い分節型鎖運動性を有する、結晶化が低温である、非晶質である、またはそれらの組合せとすることができる。
【0044】
プロトン伝導性ポリマー相は、例えば、当該分野で公知のものなどのポリマー電解質を含むことができる。例えば、プロトン伝導性ポリマー相は、Kreuer, "Ion Conducting Membranes for Fuel Cells and other Electrochemical Devices," Chem. Mater., 2014, 26, 361-380;Hickner et al. "Alternate Polymer Systems for Proton Exchange Membranes (PEMs)," Chem. Rev., 2004, 104, 4587-4612;Cheng et al. "Gel Polymer Electrolytes for Electrochemical Energy Storage," Adv. Ener. Mat., 2018, 8, 1702184;Meyer, "Polymer Electrolytes for Lithium-Ion Batteries," Adv. Mat., 1998, 10, 439-448;Hallinan et al. "Polymer Electrolytes," Annu. Rev. Mater. Res 2013, 43, 503-525;およびMindemark et al. "Beyond PEO - Alternate host materials for Li conducting solid polymer electrolytes," Progress in Polymer Science 2018, 81, 114-143に記載のもののいずれかを含むことができ、これによって、これら文献のそれぞれがポリマーについての教示のために参照によってその全体が本明細書において組み込まれる。幾つかの例において、プロトン伝導性ポリマー相は、1種または複数の塩基性官能基(例えば、エーテル、ピリジン、スルホネートなど)を含む任意のポリマーを含むことができる。
【0045】
プロトン伝導性ポリマー相は、例えば、ポリエーテル、ポリスルホネート、ポリスルホン、ポリ(イミダゾール)、トリアゾール、ベンゾイミダゾール、ポリエステル、ポリカルボネート、ピリジンモノマー由来のポリマー、その誘導体またはそれらの組合せを含むことができる。幾つかの例において、プロトン伝導性ポリマー相はポリエーテルまたはその誘導体を含むことができる。幾つかの例において、プロトン伝導性ポリマー相は、ポリエチレンオキシド、ポリエーテルピリジン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラヒドロフラン、ポリビニルブチラール、ポリベンゾイミダゾール、その誘導体またはそれらの組合せを含むことができる。ある種の例において、プロトン伝導性ポリマーは、ポリエチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、その誘導体またはそれらの組合せを含むことができる。
【0046】
幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、酸化セリウムを含むことができ、複数のナノ構造化金属酸化物結晶のそれぞれは、1nm~5nmのサイズである寸法を少なくとも1つ有することができ、プロトン伝導性ポリマーは、ポリエチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、その誘導体またはそれらの組合せを含むことができる。幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、酸化セリウムを含み、実質的に等方性である平均粒子形状を有し、1nm~10nmの平均粒度を有することができ、プロトン伝導性ポリマーは、ポリエチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、その誘導体またはそれらの組合せを含むことができる。
【0047】
複合フィルムは、例えば、複合フィルムに対して体積で20%以上(例えば、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、36%以上、37%以上、38%以上、39%以上、40%以上、41%以上、42%以上、43%以上、44%以上、45%以上、46%以上、47%以上、48%以上、49%以上、50%以上、51%以上、52%以上、53%以上、54%以上、55%以上、56%以上、57%以上、58%以上、59%以上、60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上または85%以上)の複数のナノ構造化金属酸化物結晶を含むことができる。
【0048】
幾つかの例において、複合フィルムは、複合フィルムに対して体積で90%以下(例えば、89%以下、88%以下、87%以下、86%以下、85%以下、84%以下、83%以下、82%以下、81%以下、80%以下、79%以下、78%以下、77%以下、76%以下、75%以下、74%以下、73%以下、72%以下、71%以下、70%以下、69%以下、68%以下、67%以下、66%以下、65%以下、64%以下、63%以下、62%以下、61%以下、60%以下、59%以下、58%以下、57%以下、56%以下、55%以下、54%以下、53%以下、52%以下、51%以下、50%以下、49%以下、48%以下、47%以下、46%以下、45%以下、44%以下、43%以下、42%以下、41%以下、40%以下、39%以下、38%以下、37%以下、36%以下、35%以下、34%以下、33%以下、32%以下、31%以下、30%以下、29%以下、28%以下、27%以下、26%以下または25%以下)の複数のナノ構造化金属酸化物結晶を含むことができる。
【0049】
複合フィルム中の複数のナノ構造化金属酸化物結晶の量は、上に記載の最小値のいずれかから、上に記載の最大値のいずれかまでの範囲とすることができる。例えば、複合フィルムは、複合フィルムに対して体積で20%~90%(例えば、20%~55%、55%~90%、20%~30%、30%~40%、40%~50%、50%~60%、60%~70%、70%~80%、80%~90%、30%~90%、20%~80%、30%~80%、30%~70%、20%~70%、30%~60%、20%~50%または30%~50%)の複数のナノ構造化金属酸化物結晶を含むことができる。
【0050】
幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は酸化セリウムを含むことができ、複数のナノ構造化金属酸化物結晶のそれぞれは、1nm~5nmのサイズである寸法を少なくとも1つ有することができ;プロトン伝導性ポリマーは、ポリエチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、その誘導体またはそれらの組合せを含むことができ;複合フィルムは、20体積%~70体積%の複数のナノ構造化金属酸化物結晶を含むことができる。幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、酸化セリウムを含み、実質的に等方性である平均粒子形状を有し、1nm~10nmの平均粒度を有することができ;プロトン伝導性ポリマーは、ポリエチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、その誘導体またはそれらの組合せを含むことができ;複合フィルムは20体積%~70体積%の複数のナノ構造化金属酸化物結晶を含むことができる。
【0051】
複合フィルムは、例えば、100ナノメートル(nm)以上(例えば、150nm以上、200nm以上、250nm以上、300nm以上、350nm以上、400nm以上、450nm以上、500nm以上、600nm以上、700nm以上、800nm以上、900nm以上、1マイクロメーター(ミクロン、μm)以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上、35μm以上、40μm以上、45μm以上、50μm以上、60μm以上、70μm以上、80μm以上、90μm以上、100μm以上、125μm以上、150μm以上、175μm以上、200μm以上、225μm以上、250μm以上、300μm以上、350μm以上または400μm以上)の平均厚さを有することができる。幾つかの例において、複合フィルムは500μm以下(例えば、450μm以下、400μm以下、350μm以下、300μm以下、250μm以下、225μm以下、200μm以下、175μm以下、150μm以下、125μm以下、100μm以下、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、15μm以下、10μm以下、9μm以下、8μm以下、7μm以下、6μm以下、5μm以下、4μm以下、3μm以下、2μm以下、1μm以下、900nm以下、800nm以下、700nm以下、600nm以下、500nm以下、450nm以下、400nm以下、350nm以下、300nm以下、250nm以下または200nm以下)の平均厚さを有することができる。複合フィルムの平均厚さは、上に記載の最小値のいずれかから、上に記載の最大値のいずれかまでの範囲にあってよい。例えば、複合フィルムは、100nm~500μm(例えば、500nm~500μm、1μm~500μm、10μm~500μm、10μm~400μm、10μm~300μm、10μm~200μm、または10μm~100μm)の平均厚さを有することができる。複合フィルムの平均厚さは当該分野で公知の方法、例えば、プロフィロメトリー、断面電子顕微鏡、原子間力顕微鏡(AFM)、偏光解析、ベニヤノギス、マイクロメーターゲージまたはそれらの組合せによって測定できる。
【0052】
複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、例えば、表面で水の優先吸着および欠陥部位で水の解離を示して、常温以上(例えば、25℃以上、100℃以上)で、例えばさらなる高温(例えば、100℃以上)で、水を保持して移動性のプロトンを発生させることができ、一方、プロトン伝導性ポリマー相は、例えば、プロトンの伝導性経路を与えて、それによって、複合材料の絶対プロトン伝導率を劇的に増加させることができる(例えば、Meng et. al., "Review: recent progress in low temperature proton conducting ceramics," Journal of Materials Science 2019, 54, 9291-9312によって記載されるとおりであり、これによって、この文献は、金属酸化物についての教示のために参照によってその全体が本明細書において組み込まれる)。
【0053】
複合フィルムは、例えば、10-8S/cm以上(例えば、1×10-7S/cm以上、1×10-6S/cm以上、1×10-5S/cm以上、1×10-4S/cm以上、1×10-3S/cm以上、0.01S/cm以上または0.1S/cm以上)のプロトン伝導率を25℃以上(例えば、30℃以上、35℃以上、40℃以上、45℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上、150℃以上、200℃以上、250℃以上、300℃以上、350℃以上、400℃以上、450℃以上、500℃以上または550℃以上)の温度で有することができる。幾つかの例において、複合フィルムは、1S/cm以下(例えば、0.1S/cm以下、0.01S/cm以下、1×10-3S/cm以下、1×10-4S/cm以下、1×10-5S/cm以下、1×10-6S/cm以下、または1×10-7S/cm以下)のプロトン伝導率を25℃以上(例えば、30℃以上、35℃以上、40℃以上、45℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上、150℃以上、200℃以上、250℃以上、300℃以上、350℃以上、400℃以上、450℃以上、500℃以上または550℃以上)の温度で有することができる。複合フィルムのプロトン伝導率は、上に記載の最小値のいずれかから、上に記載の最大値のいずれかまでの範囲を取ることができる。例えば、複合フィルムは、10-8S/cm~1S/cm(例えば、10-8S/cm~10-4S/cm、10-4S/cm~1S/cm、10-8S/cm~10-6S/cm、10-6S/cm~10-4S/cm、10-4S/cm~10-2S/cm、10-2S/cm~1S/cm、10-6S/cm~1S/cm、10-4S/cm~1S/cm、0.01S/cm~1S/cmまたは0.1S/cm~1S/cm)のプロトン伝導率を25℃~600℃(例えば、25℃~300℃、300℃~600℃、25℃~100℃、100℃~350℃、350℃~600℃、100℃~200℃、200℃~300℃、300℃~400℃、400℃~500℃、500℃~600℃、100℃~600℃、100℃~450℃または100℃~300℃)の温度で有することができる。
【0054】
複合フィルムは、幾つかの例において、自立性膜を形成することができる。幾つかの例において、複合フィルムは基材によって支持されている。適切な基材の例としては、ポリマー(例えば、多孔性ポリマー)、ガラス繊維、ガラス、石英、シリコン、およびそれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない。
【0055】
幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、酸化セリウムを含むことができ、複数のナノ構造化金属酸化物結晶のそれぞれは、1nm~5nmのサイズである寸法を少なくとも1つ有することができ;プロトン伝導性ポリマーは、ポリエチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、その誘導体またはそれらの組合せを含むことができ;複合フィルムは、25℃以上(例えば、100℃以上)の温度で10-8S/cm以上のプロトン伝導率を有することができる。幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、酸化セリウムを含み、実質的に等方性である平均粒子形状を有し、1nm~10nmの平均粒度を有することができ;プロトン伝導性ポリマーは、ポリエチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、その誘導体またはそれらの組合せを含むことができ;複合フィルムは、25℃以上(例えば、100℃以上)の温度で10-8S/cm以上のプロトン伝導率を有することができる。
【0056】
幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶は、複合フィルム内でプロトン伝導性ポリマー相と緊密に混合される。幾つかの例において、複数のナノ構造化金属酸化物結晶およびプロトン伝導性ポリマー相は、複合フィルム内で相分離しない。
【0057】
製造方法
また、本明細書において記載される複合フィルムのいずれかを製造する方法であって、複数のナノ構造化金属酸化物結晶、およびプロトン伝導性ポリマー相を含むポリマーを溶媒中に分散させ、それによって分散液を形成するステップ;および分散液を基材上に堆積させて、それによって複合フィルムを形成するステップを含む方法が本明細書において開示される。幾つかの例において、方法は、基材から複合フィルムを取り出すステップをさらに含むことができる。
【0058】
溶媒の例としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルホルムアミド、ホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、n-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドまたはそれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない。幾つかの例において、溶媒は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリルまたはそれらの組合せを含むことができる。
【0059】
分散液を堆積させるステップは、例えば、印刷、スピンコーティング、ドロップキャスティング、ゾーンキャスティング、ディップコーティング、ブレードコーティング、噴霧、真空濾過、スロットダイコーティング、カーテンコーティング、またはそれらの組合せを含むことができる。幾つかの例において、分散液を堆積させるステップはスピンコーティングを含むことができる。
【0060】
幾つかの例において、方法は、複数のナノ構造化金属酸化物結晶を製造するステップ(例えばコロイド法を使用する)をさらに含むことができる。幾つかの例において、方法は、複数のナノ構造化金属酸化物結晶が配位子および/またはキャッピング材料を実質的に含まないように、複数のナノ構造化金属酸化物結晶から配位子および/またはキャッピング剤を除去するステップをさらに含むことができる。
【0061】
使用方法
また、本明細書において記載の複合フィルムのいずれかの使用の方法が本明細書において提供される。例えば、本明細書において記載の複合フィルムは、電気分解において、可逆的電気透析において、塩素アルカリシステムにおいて、またはそれらの組合せにおいて使用することができる。幾つかの例において、本明細書において記載の複合フィルムは、プロトン交換膜として、イオン交換膜として、水素分離膜として、固体電解質として、またはそれらの組合せとして使用することができる。幾つかの例において、本明細書において記載の複合フィルムは燃料電池において使用することができる。複合フィルムは、例えば、プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)においてプロトン交換膜として使用することができる。幾つかの例において、使用の方法は、25℃以上(例えば、30℃以上、35℃以上、40℃以上、45℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上、150℃以上、200℃以上、250℃以上、300℃以上、350℃以上、400℃以上、450℃以上、500℃以上または550℃以上)の温度で行うことができる。
【0062】
幾つかの例において、本明細書において記載の複合フィルムは、燃料電池、電解槽、プロトン交換電気分解装置、およびバッテリーを含む様々な製造物品またはデバイスにおいて使用することができる。そのような製造物品およびデバイスは、当該分野で公知の方法によって製造することができる。幾つかの例において、製造物品またはデバイスは、25℃以上(例えば、30℃以上、35℃以上、40℃以上、45℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上、150℃以上、200℃以上、250℃以上、300℃以上、350℃以上、400℃以上、450℃以上、500℃以上または550℃以上)の温度で作動することができる。
【0063】
下記の実施例は、本明細書において記載の方法および化合物のある種の態様をさらに例示するように意図され、本出願の特許請求の範囲を限定するようには意図されない。
【実施例】
【0064】
以下の実施例は、開示される内容に従う方法および結果を例示するために以下に述べられる。これらの実施例は、本明細書において開示される内容のすべての態様を包含することは意図せず、むしろ代表的な方法、組成および結果を例示するものである。これらの実施例は、当業者にとって明らかである本発明の均等物および変形物を除外することを意図するものではない。
【0065】
数(例えば、量、温度など)に関して正確さを保証する努力がなされているが、ある程度の誤差および偏差は考慮されるべきである。他の方法で示されない場合、部は重量部であり、温度は℃であるかまたは常温であり、圧力は大気圧であるかまたはその近傍である。反応条件、例えば、成分濃度、温度、圧力、ならびに他の反応の範囲および条件の多数の変形および組合せが存在し、これらは、記載されるプロセスから得られる生成物の純度および収率を最適化するために使用することができる。そのようなプロセス条件を最適化するためには、妥当であり慣用的な実験作業のみが必要とされる。
【0066】
[実施例1]
ナノ材料の特性を規定する1つは、大きい表面と体積との比である。この単純であるが重要なこの特性は、材料の性質を表面によって支配される特性へと変えて、嵩高い(バルク)対応物からの全般的性質の大きな逸脱を可能にする。イオン輸送材料の文脈内で界面が後押しする性質は、酸化セリウム、酸化ジルコニウムおよび酸化チタンなどの多孔性ナノ結晶性金属酸化物系の中位温度(300℃~100℃)のプロトン伝導である。金属酸化物の先行研究は、これらの材料を、バルクの形態での不十分なプロトン伝導体として確立していた。しかし、ナノサイズ化され多孔性にされると、これらの同じ材料は、多湿条件下で著しいプロトン伝導率を示すことができ;この逸脱は、嵩高い結晶サイズからナノ結晶サイズへと移った界面密度の変化、および固体蒸気界面の導入に起因して、イオン輸送を可能にすることができる。
【0067】
これらの材料についての中位温度のプロトン伝導の発見は、高温でプロトン交換膜燃料電池(PEMFC)および電気分解を運転する目下の興味に沿っている。より高温への推進は、3つの主な理由によって合理化される。第一に、高温での電気化学的効率および触媒速度の増加があり、これらは遅い酸素還元反応または酸素発生反応に対して特に重要になり得る。第二に、より高温で作動する燃料電池は、COおよびH2Sなどのガス流中の不純物により耐性があり得、これらは負極および正極で触媒の被毒の原因となり得る。第三に、デバイス設計は、外側の熱管理および複雑な水管理の必要性をなくすことによって単純化することができる。しかしながら、目下のPEMFCの動作温度は、80℃を超える温度で脱水し、80℃より上でプロトン伝導率の著しい消失に結びつくプロトン交換膜(ほとんどはNafion)の動作温度によって限定される。動作のための温度ウィンドウを広げる試みは、新しいプロトン伝導性材料、例えば:CsHSO4、BaZrO3およびBaCeO3セラミックのような固体酸;ゾル-ゲルシリカガラス;金属有機骨格;シリカリンタングステン酸ハイブリッド;およびポリベンゾイミダゾールまたはポリエーテルピリジンと、リン酸またはポリリン酸との物理的混合物などのポリマー-リン酸ハイブリッドをもたらした。
【0068】
多孔性ナノ結晶構造によって示される中位温度のプロトン伝導についての理解が確立すると、さらなる調査によって、プロトン伝導率が、ナノ結晶表面の水の解離によるプロトンの形成によって制限され得るのではなく、むしろプロトンが伝導できるマトリックスを欠いていることにより制限され得ることが明らかにされた。100℃以上の高温で、多孔性ナノ結晶構造の吸着水の量は、多くとも1または2層の厚さで、温度上昇につれて低下すると推定される。好適なイオン伝導マトリックスは、系中でイオン伝導率を押し上げるために導入することができる。最終生成物は、ナノ結晶ポリマー複合体などの無機-有機材料であり、ここで、ナノ結晶は系中でプロトンの供給源として機能し、ポリマーはプロトンのために伝導マトリックスとして機能する。無機成分の添加を含むプロトン交換膜の性能を押し上げる以前の試みは、毛管凝縮を促進することができる親水性表面または微細孔のいずれかを有することよって系中で水を保存するというアイディアに基づいていた。一方、本明細書において記載の手法は、多孔性ナノ結晶性金属酸化物によって提示される界面のプロトン伝導率に基づく。
【0069】
本明細書において、好適なプロトン伝導マトリックスを導入して伝導率の押し上げを含む前述の概念を示す。実証は、金属酸化物表面の中位温度のプロトン伝導率の現象を利用し、高温燃料電池であろうと電気分解であろうと、デバイス動作に関連するプロトン伝導性能へ伝導率を押し上げる。
【0070】
方法
ナノ結晶合成
4nmの酸化セリウムナノ結晶の典型的な合成において、硝酸セリウム六水和物0.868g(2mmol、Sigma 99.999%)およびオレイルアミン5.36g(20mmol、90%のAcros Organics)を1-オクタデセン10ml(Aldrich 90%)に溶解した。最初の混合の後、窒素下80℃で1時間、溶液を撹拌し、続いて<100ミリトールの真空下120℃で1時間脱気した。次いで、溶液を230℃に加熱した。一旦溶液温度が230℃に達したら、さらに250℃に溶液を加熱し、250℃で2時間反応させた。2時間後、溶液を空気中で80℃未満に放冷し、その時点で、トルエン5mLを溶液へ添加した。次いで、混合物を1500rpmで10分間遠心分離機にかけてバルクの沈澱を取り出した。上澄みをイソプロパノール60mLと混合し、7000rpmで遠心分離機に10分間かけた。合成後、分散および沈澱のためにナノ結晶をヘキサン/イソプロパノールの組合せで3回洗浄し、0.2μm PTFEフィルターを使用して濾過し、保管した。
【0071】
配位子の交換
典型的な配位子ストリッピング処置のために、ヘキサンおよび試薬アルコールまたはアセトンを用いた4サイクルの懸濁および沈殿によってヘキサン(Aldrich >95%のnヘキサン)中に懸濁したナノ結晶を精製した。次いで、ナノ結晶の濃度を5mg/mLに希釈し、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(Aldrich ≧99%)を等量添加して二相混合物を形成した。次いで、二相混合物を振盪して、配位子ストリッピングの前にナノ結晶の適切な洗浄を確実にした。二相混合物が振盪の際に曇ったら、ナノ結晶を沈澱させて、さらに2回洗浄し、試験を繰り返した。混合物が透明なままで、相が二相混合物に分離して戻ったら、溶液中のナノ結晶の半分の重量と等価または溶液中のナノ結晶のおよその重量までのニトロシルテトラフルオロボレート(Aldrich 95%)を混合物へ添加し、次いで、配位子ストリッピングを促進するために30分間その混合物を超音波処理した。ヘキサンからDMFまでの相間移動の後、ヘキサン相を除去し新しいヘキサンと置換して振盪した。相分離の後、ヘキサン相を除去し、さらに2回このヘキサン洗浄を繰り返した。次いで、DMF中のナノ結晶を、懸濁および沈澱のためにDMF/トルエンの組合せを用いて精製し、最大6回精製し、DMFとトルエンの1:2、1:3、1:4から最終的に1:6の比にDMF:トルエン比を変えた。最終洗浄のために、DMF500μL中でナノ結晶を再懸濁し、続いてエタノール500μLを添加した。次いで、ナノ結晶溶液をトルエンと激しく混ぜ、無水DMF中で再懸濁し保管した。
【0072】
ポリマー-ナノ結晶溶液の調製
複合材溶液を調製するために、配位子をストリップしたナノ結晶を好適な溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル)中で別のポリマー溶液と混合し、少なくとも30分間混合した。ナノ結晶およびポリマーのバルク密度を使用して、体積分率を調節した。典型的な溶液濃度は、ナノ結晶が20-100mg/mlおよびポリマーが1-20mg/mlの程度であった。
【0073】
薄膜の堆積
シリコンウェーハまたは石英基板を1cm×1cmの基材に切断し、順次、Hellmanex、エタノール、クロロホルム、アセトンおよびイソプロパノール中で超音波処理を15分間使用して清浄にして、UVオゾンで15分間清浄にした。典型的な約400nmのフィルムのために、複合材溶液の20μLを使用して2秒の立ち上げで1000rpmに3分間、ポリマーナノ結晶フィルムをスピン注型し、続いて4000rpmで1分間乾燥させた。
【0074】
白金コンタクト堆積
60ワットおよび1.5ミリトールのAr圧で10nm/分の堆積速度で作動するCooke RFスパッタリングシステムを使用して、中央に1mmのギャップを画定するシャドウマスクを用いてナノ結晶フィルムの上側表面上にPtの400nmのフィルムをスパッタリングした。チャンバ圧を、Arの導入前に<1e-6トールに真空引きして、酸素からの外来汚染を最小限にした。
【0075】
インピーダンス分光法
0.12Vの電圧振幅を用いて1MHzから1-10Hzの周波数範囲にわたってNovocontrol Alpha-Aインピーダンスアナライザーを使用し、独立した温度および環境管理を可能にするカスタムステージを使用して、2点配置でインピーダンス分光法を行った。酸素トラップ(Agilent OT1-4)に不活性ガスを通し、ステージへの流入前にCO2およびH2Oトラップにガスをすべて通した。pH2O約20mbarに相当する17℃に設定した水に通して溶液を泡立たせることにより、セルへ湿分を導入した。各温度で30分の初期平衡の後に、1MHzから1Hzまたは0.1Hzで30分毎の1測定で、試料を450℃で6時間、450℃と100℃の間の他の全温度で2時間、平衡させた。伝導率値を試料の膜厚に対して規格化した。酸素分圧をCambridge Sensotech Rapidox 2100 Oxygen Analyzerを用いて測定した。
【0076】
結果
図3~
図6で上に概説した概念を示すために使用するナノ結晶-ポリマー複合体の製作のために原型の材料例を示す。
図3は、複合材料に中位温度プロトン伝導性を吹き込むために使用する酸化セリウムナノ結晶の透過型電子顕微鏡を示し、
図4はそのX線回折パターンを示す。ナノ結晶材料は、4nmの平均直径を有し、酸化セリウムの標準的立方晶系蛍石構造に索引付けした。
図5および
図6は、50:50体積分率で製作した酸化セリウム-ポリマー複合体の走査型電子顕微鏡画像である。
図5および
図6で、より暗く灰色に見えるポリマーに対してナノ結晶は明るく見える。
【0077】
図7~
図9で、ナノ複合体対その個々の対応物について観察されたプロトタイプの性能改善を示す。
図7および
図8は、それぞれナノ結晶のみのフィルムおよびポリマーのみのフィルムの伝導率である。
図9は、ナノ複合体の、その個々の対応物に対してイオン伝導率の2桁の大きさの改善を説明する。この実証については、複合材料を形成するために適正なイオン伝導体であると知られている標準的なエーテルポリマー(ポリエチレンオキシド)を使用した。PEOは、200℃未満の限定された熱的安定性ウィンドウを有する。しかし、ナノ結晶のみの事例(
図7)とPEOのみの事例(
図8)の両方で不十分なイオン伝導率を示した。前者について、低いイオン伝導率は、イオン伝導率の移動度を与える伝導マトリックスの欠如による場合がある。後者については、低いイオン伝導率は伝導するべきイオンの欠如による場合がある。成分を組み合わせると、かなりのイオン伝導率を示す複合体が認められたが、これは、標準的イオン塩と混合されたPEOを想起させる(
図9)。この高まった伝導率は、穏やかな温度依存性であり、多湿の「湿潤」環境の存在により動きやすいプロトンの追加発生のため酸化セリウムの表面の水が解離吸着することによってさらに改善された。
【0078】
[実施例2]
プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)または幾つかのエレクトロクロミックデバイスの充放電の間に負極と正極の間でプロトン輸送するためにプロトン交換膜を使用する。Nafionなどのポリマー系から固体酸などの完全無機系までの範囲のプロトン伝導性を有する様々な材料がある。
【0079】
ポリマーイオン交換膜、特に高温でのプロトン交換膜において、これらの膜はプロトン伝導率を担う移動性プロトンための水に依存するので、最も重要な難問の1つは水の配置である。多くのポリマー系のもの、特にNafionは、水の沸点(100℃)よりも上で脱水し、その結果として伝導性を失う。例えば、PEMFC中でプロトン交換膜の役目を担うポリマー材料はNafionであり、これは100℃未満で伝導性であるが100℃超ではNafionは脱水し、その材料はもはや良好な伝導率を示さなくなる。固体酸などの完全無機系は、湿度に敏感であるため動作条件で本質的に不安定である。これらの制限が累積的に、90℃のプロトン交換膜燃料電池(PEMFC)に対する動作温度ウィンドウの上限を直接もたらす。これは、電気化学的効率および安定性の獲得のために、より高温、例えば100℃超でPEMFCを運転する現在の推進とは真っ向から対立するものであり、例えば、燃料電池は、より速い反応速度、より高い電圧の利得、より高温でのコーキングに対する感受性を少なくして作動することができる。またより高い動作温度で、熱エネルギーはPEMFC中で触媒プロセスにおいて活性化をサポートすることができ、質量拡散消失が減少し、白金触媒は一酸化炭素に被毒しにくい。
【0080】
ナノスケール金属酸化物を含む多孔性のプロトン輸送複合材は、高湿条件(湿潤ガス条件)下で中位温度プロトン伝導(100℃~300℃)を示し、特に100℃を超える温度で強力なプロトン輸送膜または電解質として有用であり得る。しかし、高湿条件下の多孔質金属酸化物によって示される表面が媒介するプロトン酸伝導率の限界の1つは、高温での持続性にもかかわらず絶対伝導率は限定されることである。とりわけ、そのようなナノスケール金属酸化物のプロトン伝導率は、実用的なプロトン輸送材料に必要とされるよりも数桁低いものある。(燃料電池用途のための現在の産業界の必要条件>10-3S/cmに対して10-6S/cm)。
【0081】
中位温度(例えば100℃以上、200℃以上、300℃まで)で固体電解質としてプロトン伝導に使用することができる、ナノ構造化無機-有機複合体が本明細書において記載される。複合材料は、100℃から200℃以上で高いイオン伝導率を示すことができ、最先端技術のポリマー伝導膜に匹敵する(この範囲内のより高温でこれらを改善する)。加えて、複合材料は、金属酸化物のみを含む無機のみの系と比較して伝導率の最大5桁の増加を示す。複合材料は、100℃より十分高く200℃以上まで良好で使用可能な伝導率を有するプロトン交換膜のために動作ウィンドウを広げることができ、より速い反応速度、高い電圧利得およびより少ないコーキング感受性によってより効率的に作動することができる燃料電池の構築を可能にする。
【0082】
ナノ寸法であり表面積の大きい結晶性金属酸化物および有機伝導マトリックスで構成される複合有機-無機プロトン伝導性材料の組成物、ならびに前記組成物を製造する方法が本明細書中に開示される。複合材料は、表面上で水の優先的な吸着を示し、欠陥部位において水解離を示して、水を保持することおよび移動性プロトンを発生させることの両方を行うナノ結晶性金属酸化物を、利用する。複合材料はまた、系外または系内の手段いずれかによって有機マトリクスの導入を使用して、プロトンのための伝導性経路を与えてそれによって複合材料の絶対イオン伝導率を劇的に増加させる。
【0083】
本明細書に記載の複合材料は、多孔性ナノ構造化金属酸化物を有する界面領域を形成し伝導を容易にするポリマーマトリクスを用いて伝導率の増大させることによって、金属酸化物の開けた表面上での中位温度プロトン伝導を構築して、実際の用途の合格水準へと伝導率を増加させる。この概念を示すために、インサイチュー重合法を使用して例示の複合材料を形成し、その結果、ほぼ5桁の大きさの安定なプロトン伝導率の増強が観測された。インサイチュー法はスケーラブルであり、特に薄膜電解質の場合には直接適用できる。したがって、複合材料、およびそれ製造する方法は、コスト上効果的で耐久性のあるものとなり得る。本明細書に記載の複合材料を燃料電池、プロトン交換膜、イオン交換膜および可逆的な電気透析に使用することができる。
【0084】
本明細書に記載の複合材料中のプロトン輸送は、プロトン輸送ポリマーマトリクスを用いて金属酸化物表面をコーティングすることにより高めることができる。多くのそのようなポリマーが、ポリマーのみの電解質およびハイブリッドポリマー-無機電解質についてのこれまでの開発から公知であり、そのような1つのクラスのポリマーはポリテトラヒドロフランなどのポリエーテルである。複合材料の実証において、ポリテトラヒドロフランの薄層は、多孔性のCeO2ナノ結晶フィルムにインサイチュー堆積して、プロトン伝導性のためのマトリックスをもたらすことによってプロトン伝導率を著しく(最大5桁)増加させた。さらに、複合材料の伝導性は、これまでのポリマー系プロトン伝導体が典型的に低迷していたより高い中位温度の状況(regime)にまで存続した。
【0085】
複合材を形成するために使用したポリマーがポリベンゾイミダゾールの場合の、ナノ複合体対CeO
2ナノ結晶のみについて観測された性能改善を示す結果を
図10に示す(複合材は2度試験した)。
図10は、CeO
2ナノ結晶単独に対するナノ複合体の450℃でのイオン伝導率の2桁の改善を説明する。
【0086】
本明細書において、ポリマー材料および無機金属酸化物を組み合わせて、ポリマーマトリックスが効率的な伝導率経路を与えつつ金属酸化物が高温でプロトン保持をもたらす、相乗的な複合材料を作製した。これらの複合材料は、任意の型のインターフェース駆動型プロトン輸送デバイスに、例えば、イオン交換膜、特に、プロトン交換膜燃料電池またはマイクロ燃料電池用プロトン交換膜などに適用可能である。
【0087】
添付された特許請求の範囲の組成物、デバイスおよび方法は、本明細書に記載の特定のデバイスおよび方法によって範囲を限定されず、特許請求の範囲幾つかの態様の実例として意図されており、機能的に等価である任意のデバイスおよび方法が本開示の範囲内である。本明細書において示され記載されたそれらに加えて、組成物、デバイスおよび方法の様々な変形物は、添付された特許請求の範囲内にあることが意図される。さらに、本発明に係る組成物、デバイスおよび方法の態様うち、特定の代表的な組成物、デバイスおよび方法のみが具体的に記載されるが、具体的には記述されなくとも、これら組成物、デバイスおよび方法のうちの、他の組成物、デバイスおよび方法の様々な特徴の組合せは、添付された特許請求の範囲内に属することが意図される。したがって、本明細書において、工程、要素、成分または構成体の組合せが明示的に述べられ得るが、工程、要素、成分および構成体の他のすべての組合せは、明示的に述べられなくても含まれている。
以上の説明に基づく本願発明の例として、以下のものが挙げられる。
[1] プロトン伝導性ポリマー相内に分散した複数のナノ構造化金属酸化物結晶を含む複合フィルムであって、前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶は1nm~20nmの平均粒度を有し、前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶を前記複合フィルムに対して20%~90体積%含む、複合フィルム。
[2] 前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶が還元性金属酸化物を含む、上記[1]に記載の複合フィルム。
[3] 前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶が、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化マグネシウム、酸化バナジウム、酸化鉄、酸化クロム、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化セリウム、酸化ガドリニウム、酸化サマリウムまたはそれらの組合せを含む、上記[1]または[2]に記載の複合フィルム。
[4] 前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶が、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化タングステン、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化鉄、酸化クロム、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化セリウム、酸化ガドリニウム、酸化サマリウムまたはそれらの組合せを含む、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の複合フィルム。
[5] 前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶が酸化セリウムを含む、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の複合フィルム。
[6] 前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶が、1種または複数のドーパントをドープした酸化セリウムを含む、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の複合フィルム。
[7] 前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶が、ガドリニウムをドープした酸化セリウム、サマリウムをドープした酸化セリウムまたはそれらの組合せを含む、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の複合フィルム。
[8] 前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶のそれぞれが、1nm~5nmのサイズである少なくとも1つの寸法を有する、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の複合フィルム。
[9] 前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶が、実質的に等方性である平均粒子形状を有する、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載の複合フィルム。
[10] 前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶が1nm~10nmの平均粒度を有する、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の複合フィルム。
[11] 前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶が配位子および/またはキャッピング材料を実質的に含まない、上記[1]~[10]のいずれか一項に記載の複合フィルム。
[12] 前記プロトン伝導性ポリマー相が、ポリエーテル、ポリスルホネート、ポリスルホン、ポリ(イミダゾール)、トリアゾール、ベンゾイミダゾール、ポリエステル、ポリカルボネート、ピリジンモノマー由来のポリマー、それらの誘導体、またはそれらの組合せを含む、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の複合フィルム。
[13] 前記プロトン伝導性ポリマー相がポリエーテルまたはその誘導体を含む、上記[1]~[12]のいずれか一項に記載の複合フィルム。
[14] 前記プロトン伝導性ポリマー相が、ポリエチレンオキシド、ポリエーテルピリジン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラヒドロフラン、ポリビニルブチラール、ポリベンゾイミダゾール、それらの誘導体、またはそれらの組合せを含む、上記[1]~[13]のいずれか一項に記載の複合フィルム。
[15] 前記プロトン伝導性ポリマーが、ポリエチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、それらの誘導体、またはそれらの組合せを含む、上記[1]~[14]のいずれか一項に記載の複合フィルム。
[16] 前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶を、前記複合フィルムに対して30~90体積%、20~70体積%または20~50体積%含む、上記[1]~[15]のいずれか一項に記載の複合フィルム。
[17] 100nm~500μm、1μm~500μmまたは10μm~100μmの平均厚さを有する、上記[1]~[16]のいずれか一項に記載の複合フィルム。
[18] 100℃以上、200℃以上または300℃以上の温度で、10
-8
S/cm以上、10
-6
S/cm以上、10
-4
S/cm以上、0.01S/cm以上または0.1S/cm以上のプロトン伝導率を有する、上記[1]~[17]のいずれか一項に記載の複合フィルム。
[19] 自立性膜を形成する、上記[1]~[18]のいずれか一項に記載の複合フィルム。
[20] 基材によって支持されている、上記[1]~[18]のいずれか一項に記載の複合フィルム。
[21] 上記[1]~[20]のいずれか一項に記載の複合フィルムを製造する方法であって、
前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶と、前記プロトン伝導性ポリマー相を含むポリマーとを溶媒中に分散させ、それによって分散液を形成する工程;
前記分散液を基材上に堆積させる工程;および
それによって前記複合フィルムを形成する工程
を含む、方法。
[22] 前記溶媒が、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルホルムアミド、ホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、n-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、またはそれらの組合せを含む、上記[21]に記載の方法。
[23] 前記溶媒が、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、またはそれらの組合せを含む、上記[21]または[22]に記載の方法。
[24] 前記分散液を堆積させる工程が、印刷、スピンコーティング、ドロップキャスティング、ゾーンキャスティング、ディップコーティング、ブレードコーティング、噴霧、真空濾過、スロットダイコーティング、カーテンコーティング、またはそれらの組合せを含む、上記[21]~[23]のいずれか一項に記載の方法。
[25] 前記分散液を堆積させる工程がスピンコーティングを含む、上記[21]~[24]のいずれか一項に記載の方法。
[26] 前記基材から前記複合フィルムを取り出す工程をさらに含む、上記[21]~[25]のいずれか一項に記載の方法。
[27] 前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶を製造する工程をさらに含む、上記[21]~[26]のいずれか一項に記載の方法。
[28] 前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶から配位子および/またはキャッピング剤を除去して、前記複数のナノ構造化金属酸化物結晶が配位子および/またはキャッピング材料を実質的に含まない工程をさらに含む、上記[21]~[27]のいずれか一項に記載の方法。
[29] 上記[1]~[20]のいずれか一項に記載の複合フィルムを含むデバイスであって、燃料電池、電解槽、プロトン交換電気分解装置またはバッテリーを構成する、デバイス。
[30] プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)を構成する、上記[29]に記載のデバイス。
[31] 25℃以上、50℃以上、100℃以上、200℃以上または300℃以上の温度で作動される、上記[29]または[30]に記載のデバイス。
[32] 前記複合フィルムを、プロトン交換膜として、イオン交換膜として、水素分離膜として、固体電解質またはそれらの組合せとして使用する工程を含む、上記[1]~[20]のいずれか一項に記載の複合フィルムの使用の方法。
[33] 前記複合フィルムを燃料電池において使用する工程を含む、上記[1]~[20]のいずれか一項に記載の複合フィルムの使用の方法。
[34] 前記複合フィルムをプロトン交換膜燃料電池(PEMFC)においてプロトン交換膜として使用する工程を含む、上記[32]または[33]に記載の方法。
[35] 25℃以上、50℃以上、100℃以上、200℃以上または300℃以上の温度で行われる、上記[32]~[34]のいずれか一項に記載の方法。
[36] 上記[1]~[20]のいずれか一項に記載の前記複合フィルムの使用の方法であって、電気分解において、可逆的電気透析において、塩素アルカリシステムにおいて、またはそれらの組合せにおいて前記複合フィルムを使用するステップを含む、方法。