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特許7605762電力装置、表示装置、充電率算出方法、プログラム及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】電力装置、表示装置、充電率算出方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/387 20190101AFI20241217BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20241217BHJP
   B60L 53/80 20190101ALI20241217BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20241217BHJP
   B60L 58/16 20190101ALI20241217BHJP
   G01R 31/3828 20190101ALI20241217BHJP
   G01R 31/396 20190101ALI20241217BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G01R31/387
B60L3/00 S
B60L53/80
B60L58/12
B60L58/16
G01R31/3828
G01R31/396
H02J7/00 X
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021565649
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2020047216
(87)【国際公開番号】W WO2021125282
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-12-11
(31)【優先権主張番号】P 2019228412
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 学
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-070782(JP,A)
【文献】特開2012-175734(JP,A)
【文献】特開2017-034951(JP,A)
【文献】特開2019-187189(JP,A)
【文献】特開2017-093250(JP,A)
【文献】特開2011-226805(JP,A)
【文献】特開2019-029173(JP,A)
【文献】国際公開第2013/051135(WO,A1)
【文献】特開2018-066682(JP,A)
【文献】国際公開第2016/147302(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/36-31/396、
19/00-18/32、
H01M 10/42-10/48、
H02J 7/00-7/12、
7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電可能な複数の蓄電部(16、16a~16d)を有する電力装置(10)であって、
複数の前記蓄電部のそれぞれの満充電容量の合計(FCC)と、複数の前記蓄電部のそれぞれの現在充電容量の合計(RC)とに基づいて、複数の前記蓄電部の全体の充電率(RSOC)を算出する充電率算出部(30)を有し、
前記満充電容量は、複数の前記蓄電部に仕様差がある場合、該仕様差に応じて設定される仕様差値に基づいて求められる、電力装置。
【請求項2】
充放電可能な複数の蓄電部(16、16a~16d)を有する電力装置(10)であって、
複数の前記蓄電部のそれぞれの満充電容量の合計(FCC)と、複数の前記蓄電部のそれぞれの現在充電容量の合計(RC)とに基づいて、複数の前記蓄電部の全体の充電率(RSOC)を算出する充電率算出部(30)を有し、
前記充電率算出部は、複数の前記蓄電部の個数及び種類に応じて、前記現在充電容量の前記合計を補正する、電力装置。
【請求項3】
充放電可能な複数の蓄電部(16、16a~16d)を有する電力装置(10)であって、
複数の前記蓄電部のそれぞれの満充電容量の合計(FCC)と、複数の前記蓄電部のそれぞれの現在充電容量の合計(RC)とに基づいて、複数の前記蓄電部の全体の充電率(RSOC)を算出する充電率算出部(30)を有し、
前記充電率算出部は、前記現在充電容量が0である前記蓄電部の個数に応じて、前記現在充電容量の前記合計を補正する、電力装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の電力装置において、
前記満充電容量は、複数の前記蓄電部に仕様差がある場合、該仕様差に応じて設定される仕様差値に基づいて求められる、電力装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電力装置において、
前記満充電容量は、前記蓄電部の満充電容量に関する仕様値又は初期値に基づいて求められる、電力装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電力装置において、
前記満充電容量は、前記蓄電部の温度又は劣化度合の少なくとも1つに基づいて求められる、電力装置。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の電力装置において、
前記現在充電容量は、前記蓄電部を充放電する電流の積算値に基づいて求められる、電力装置。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の電力装置において、
前記充電率算出部は、前記現在充電容量の前記合計を前記満充電容量の前記合計で除算することにより、複数の前記蓄電部の全体の前記充電率を算出する、電力装置。
【請求項9】
請求項1、請求項3、及び、請求項1又は3に従属する請求項4~8のいずれか1項に記載の電力装置において、
前記充電率算出部は、複数の前記蓄電部の個数及び種類に応じて、前記現在充電容量の前記合計を補正する、電力装置。
【請求項10】
請求項1、請求項2、及び、請求項1又は2に従属する請求項4~8のいずれか1項に記載の電力装置において、
前記充電率算出部は、前記現在充電容量が0である前記蓄電部の個数に応じて、前記現在充電容量の前記合計を補正する、電力装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の電力装置において、
複数の前記蓄電部は、車両(12)に対して着脱可能な蓄電装置であり、
前記充電率算出部は、前記車両に搭載された制御装置である、電力装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の電力装置において、
前記充電率算出部が算出した複数の前記蓄電部の全体の前記充電率を、表示装置(38)に送信する送信部(30a)をさらに有する、電力装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の電力装置から複数の前記蓄電部の全体の前記充電率を受信する受信部(38a)を有し、受信した複数の前記蓄電部の全体の前記充電率を表示する、表示装置(38)。
【請求項14】
充放電可能な複数の蓄電部(16、16a~16d)を有する電力装置(10)の充電率算出方法であって、
複数の前記蓄電部のそれぞれの満充電容量を取得するステップと、
複数の前記満充電容量の合計(FCC)を算出するステップと、
複数の前記蓄電部のそれぞれの現在充電容量を取得するステップと、
複数の前記現在充電容量の合計(RC)を算出するステップと、
前記満充電容量の前記合計及び前記現在充電容量の前記合計に基づき、複数の前記蓄電部の全体の充電率(RSOC)を算出するステップと、
を有し、
前記満充電容量は、複数の前記蓄電部に仕様差がある場合、該仕様差に応じて設定される仕様差値に基づいて求められる、充電率算出方法。
【請求項15】
充放電可能な複数の蓄電部(16、16a~16d)を有する電力装置(10)の充電率算出方法であって、
複数の前記蓄電部のそれぞれの満充電容量を取得するステップと、
複数の前記満充電容量の合計(FCC)を算出するステップと、
複数の前記蓄電部のそれぞれの現在充電容量を取得するステップと、
複数の前記現在充電容量の合計(RC)を算出するステップと、
前記満充電容量の前記合計及び前記現在充電容量の前記合計に基づき、複数の前記蓄電部の全体の充電率(RSOC)を算出するステップと、
を有し、
前記充電率を算出するステップでは、複数の前記蓄電部の個数及び種類に応じて、前記現在充電容量の前記合計を補正する、充電率算出方法。
【請求項16】
充放電可能な複数の蓄電部(16、16a~16d)を有する電力装置(10)の充電率算出方法であって、
複数の前記蓄電部のそれぞれの満充電容量を取得するステップと、
複数の前記満充電容量の合計(FCC)を算出するステップと、
複数の前記蓄電部のそれぞれの現在充電容量を取得するステップと、
複数の前記現在充電容量の合計(RC)を算出するステップと、
前記満充電容量の前記合計及び前記現在充電容量の前記合計に基づき、複数の前記蓄電部の全体の充電率(RSOC)を算出するステップと、
を有し、
前記充電率を算出するステップでは、前記現在充電容量が0である前記蓄電部の個数に応じて、前記現在充電容量の前記合計を補正する、充電率算出方法。
【請求項17】
請求項14~16のいずれか1項に記載の充電率算出方法をコンピュータ(30)に実行させる、プログラム。
【請求項18】
請求項17記載のプログラムが記憶された、記憶媒体(30b)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充放電可能な複数の蓄電部を有する電力装置、複数の蓄電部の全体の充電率を表示する表示装置、複数の蓄電部の全体の充電率を算出する充電率算出方法、複数の蓄電部の全体の充電率を算出するためのプログラム、及び、該プログラムが記憶された記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(電動車両)に搭載されたバッテリ(蓄電部)の残容量をリアルタイムに検出し、その検出結果を残容量表示器に表示することが、例えば、特開2000-92604号公報に開示されている。
【発明の概要】
【0003】
ところで、複数の蓄電部の間で、温度、劣化度合、又は、種類等の仕様が互いに異なる場合、単純に、それぞれの蓄電部の充電率の平均値を算出しても、算出した平均値が複数の蓄電部の全体の充電率にならないことがある。
【0004】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、複数の蓄電部の全体の充電率を精度良く求めることが可能な電力装置、充電率算出方法、プログラム及び記憶媒体を提供することを目的とする。また、本発明は、そのように求めた複数の蓄電部の全体の充電率を表示可能な表示装置を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の第1の態様は、充放電可能な複数の蓄電部を有する電力装置であって、複数の前記蓄電部のそれぞれの満充電容量の合計と、複数の前記蓄電部のそれぞれの現在充電容量の合計とに基づいて、複数の前記蓄電部の全体の充電率を算出する充電率算出部を有する。
【0006】
本発明の第2の態様は、表示装置であって、該表示装置は、上記の電力装置から複数の前記蓄電部の全体の前記充電率を受信する受信部を有し、受信した複数の前記蓄電部の全体の前記充電率を表示する。
【0007】
本発明の第3の態様は、充放電可能な複数の蓄電部を有する電力装置の充電率算出方法であって、複数の前記蓄電部のそれぞれの満充電容量を取得するステップと、複数の前記満充電容量の合計を算出するステップと、複数の前記蓄電部のそれぞれの現在充電容量を取得するステップと、複数の前記現在充電容量の合計を算出するステップと、前記満充電容量の前記合計及び前記現在充電容量の前記合計に基づき、複数の前記蓄電部の全体の充電率を算出するステップとを有する。
【0008】
本発明の第4の態様は、プログラムであって、該プログラムは、複数の蓄電部のそれぞれの満充電容量を取得するステップと、複数の前記満充電容量の合計を算出するステップと、複数の前記蓄電部のそれぞれの現在充電容量を取得するステップと、複数の前記現在充電容量の合計を算出するステップと、前記満充電容量の前記合計及び前記現在充電容量の前記合計に基づき、複数の前記蓄電部の全体の充電率を算出するステップとをコンピュータに実行させる。
【0009】
本発明の第5の態様は、記憶媒体であって、該記憶媒体には、上記のプログラムが記憶されている。
【0010】
本発明によれば、複数の蓄電部のそれぞれの満充電容量の合計と、複数の蓄電部のそれぞれの現在充電容量の合計とを用いることで、複数の蓄電部の全体の充電率を精度良く算出することが可能となる。また、本発明では、そのように求めた複数の蓄電部の全体の充電率を表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る電力装置の一実施形態の構成図である。
図2図1の電力装置を搭載した車両の模式的平面図である。
図3図2の車両の模式的背面図である。
図4図1の表示装置の表示例を示す図である。
図5図5Aは、満充電状態の表示例を示す図であり、図5Bは、SOCが低下した場合の表示例を示す図である。
図6図6Aは、バッテリ交換の表示例を示す図であり、図6Bは、蓋部材を開いたときの表示例を示す図である。
図7図7Aは、着脱式バッテリを取り外した状態の表示例を示す図であり、図7Bは、着脱式バッテリを装填したときの表示例を示す図である。
図8】本実施形態に係る電力装置の動作(充電率算出方法)の第1実施例を示すフローチャートである。
図9】第2実施例及び第3実施例を示すフローチャートである。
図10図10Aは、標準タイプの着脱式バッテリにおける出力電圧と放電可能容量との関係を示す図であり、図10Bは、高出力の着脱式バッテリにおける出力電圧と放電可能容量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る電力装置、表示装置、充電率算出方法、プログラム及び記憶媒体について好適な実施形態を例示し、添付の図面を参照しながら説明する。
【0013】
[1.本実施形態の概略構成]
図1は、本実施形態に係る電力装置10の一実施形態を示す構成図である。図1は、本実施形態に係る電力装置10を、車両12の駆動源(負荷)である駆動モータ14に電力を供給するための電源システム15(電力供給システム)に適用した場合を図示している。
【0014】
車両12は、図2及び図3に示すように、電力装置10を構成する4個の着脱式バッテリ16a~16d(蓄電部)が着脱可能に搭載される四輪の電気自動車である。4個の着脱式バッテリ16a~16dは、図1の駆動モータ14に電力を供給する。以下の説明では、複数の着脱式バッテリ16a~16dを特に区別しないときに、着脱式バッテリ16と記載する場合がある。また、着脱式バッテリ16は、車両12から取り外した状態で、外部の不図示の充電器によって充電される。すなわち、着脱式バッテリ16は、充放電可能な蓄電装置である。
【0015】
なお、本実施形態において、車両12は、電気自動車等の電動車両やハイブリッド車両のように、駆動モータ14が搭載される車両であればよい。従って、本実施形態に係る電力装置10は、四輪の電気自動車に限定されることはなく、一輪、二輪、四輪等の各種の車両の電源システムに適用可能である。
【0016】
また、電力装置10は、車両12の電源システム15に限定されることはなく、各着脱式バッテリ16から駆動モータ14等の負荷に電力を供給する各種の電源システムに適用可能である。従って、電力装置10は、車両12や飛行体を含む各種の移動体や各種の電子機器において、負荷に電力を供給可能な電源システムに適用可能である。
【0017】
さらに、着脱式バッテリ16は、電力装置10や車両12等に対して着脱可能な可搬型の蓄電装置であればよい。従って、電力装置10は、標準的なバッテリパック、高出力のバッテリパック、高容量のバッテリパック、ハイブリッド車両用のバッテリを含む各種の蓄電装置を、着脱式バッテリ16として採用することが可能である。また、電力装置10が具備する着脱式バッテリ16の個数についても、2個以上の複数個であればよい。
【0018】
以下の説明では、図1図3に示すように、四輪の電気自動車の電源システム15において、4個の着脱式バッテリ16から駆動モータ14に電力を供給する場合について説明する。
【0019】
図2及び図3に示すように、車両12において、車体18の前後方向(車長方向としての矢印A方向)の略中央部に、すなわち、矢印Af方向側(前側)の前輪20Fと、矢印Ab方向側(後側)の後輪20Rとの略中間位置に、運転席であるシート22が設けられている。4個の着脱式バッテリ16a~16d(16)は、車体18の左右方向(車幅方向としての矢印B方向)間に配置される。
【0020】
具体的に、車体18における矢印B1方向側(左側)の後輪20Rの上方近傍には、1個の着脱式バッテリ16を収容可能な蓄電装置収容部24が矢印B方向に2つ並んで設けられている。また、車体18における矢印B2方向側(右側)の後輪20Rの上方近傍には、1個の着脱式バッテリ16を収容可能な蓄電装置収容部24が矢印B方向に2つ並んで設けられている。各蓄電装置収容部24の矢印Ab方向側(後側)には、着脱式バッテリ16を着脱する際に開放される蓋部材26が設けられる。なお、4個の着脱式バッテリ16a~16dは、図2及び図3の配置に限定されることはなく、シート22に着座する運転者の運転操作に支障が無い範囲で、車両12内の任意の場所に配置可能である。
【0021】
図1に戻り、電力装置10(電源システム15)は、車両統括コントロールユニット30(充電率算出部)、DC/DCコンバータ32a~32d、ジョイントボックス34及びインバータ36を有している。また、電源システム15には、表示装置38が設けられている。さらに、各着脱式バッテリ16a~16dは、バッテリマネージメントユニット40a~40d(以下、BMU40a~40dと呼称する。)を有する。以下の説明では、車両統括コントロールユニット30をコントロールユニット30と記載する場合がある。また、DC/DCコンバータ32a~32dを特に区別しないときにはDC/DCコンバータ32と記載する場合がある。さらに、複数のBMU40a~40dについても、特に区別しないときにはBMU40と記載する場合がある。
【0022】
コントロールユニット30は、通信部(送信部)30aを有する。また、表示装置38は、通信部(受信部)38aを有する。各通信部30a、38aは、車両12内の各装置と通信を行うためのCAN42、及び、着脱式バッテリ16a~16dに関連する各装置と通信を行うためのCAN44にそれぞれ接続されている。DC/DCコンバータ32a~32d、及び、各着脱式バッテリ16a~16dのBMU40a~40dは、CAN44と接続されている。
【0023】
コントロールユニット30は、車両12に搭載されるECU(電子制御装置)としてのコンピュータ(情報処理装置)であり、非一過性の記憶媒体である記憶部30bに記憶されたプログラムを読み出して実行することで、後述する充電率の算出を含む各種の機能を実現する。すなわち、コントロールユニット30は、車両12の駆動スイッチであるイグニッションスイッチ46からオン信号であるイグニッション信号を取得する。また、コントロールユニット30は、アクセルペダルセンサ48からアクセルペダル開度情報を取得する。この場合、コントロールユニット30は、アクセルペダル開度情報に応じて、駆動モータ14のトルクを設定し、トルク指令値として通信部30aからCAN42に出力する。また、コントロールユニット30は、トルク指令値に応じて、着脱式バッテリ16の出力電圧を変換するためのPWM信号である電流指令値を設定し、設定した電流指令値を通信部30aからCAN44に出力する。
【0024】
また、コントロールユニット30は、リッドスイッチ50から蓋部材26の開閉の検知結果を示すリッド開閉信号を取得する。コントロールユニット30は、リッド開閉信号の示す蓋部材26の開いた状態又は閉じた状態に応じて、表示装置38の表示内容を設定し、設定した表示内容を示す表示指示信号を通信部30aからCAN44に出力する。
【0025】
さらに、コントロールユニット30は、各BMU40a~40dからCAN44を介して各着脱式バッテリ16a~16dの情報を通信部30aが取得(受信)した場合、取得した情報に基づいて複数の着脱式バッテリ16a~16dの個々のSOC(以下、充電率又は充電容量と称する場合がある。)を把握する。そして、所定値未満のSOCを有する着脱式バッテリ16a~16dが存在する場合、コントロールユニット30は、該着脱式バッテリ16a~16dの交換を通知する旨の表示内容を設定し、設定した表示内容を示す表示指示信号を通信部30aからCAN44に出力する。
【0026】
さらにまた、コントロールユニット30は、通信部30aが取得した各着脱式バッテリ16a~16dの情報から、各着脱式バッテリ16a~16dが蓄電装置収容部24に装填されているか否か、すなわち、着脱式バッテリ16a~16dとDC/DCコンバータ32a~32dとが電気的に接続されているか否かを判断する。コントロールユニット30は、その判断結果に応じた表示内容を設定し、設定した表示内容を示す表示指示信号を通信部30aからCAN44に出力する。
【0027】
また、コントロールユニット30は、通信部30aが取得した各着脱式バッテリ16a~16dの情報から、複数の着脱式バッテリ16a~16dの全体のSOC(複数の着脱式バッテリ16a~16dを1個の蓄電装置とみなしたときの該1個の蓄電装置のSOC(充電率))を算出する。コントロールユニット30は、算出した各着脱式バッテリ16a~16dの全体のSOCの表示内容を設定し、設定した表示内容を示す表示指示信号を通信部30aからCAN44に出力する。
【0028】
BMU40a~40dは、着脱式バッテリ16a~16dのSOC、温度(温度係数)、劣化度(劣化度合、劣化係数)、内部抵抗、残容量としての現在充電容量、及び、着脱式バッテリ16a~16dとDC/DCコンバータ32a~32dとの接続状態を管理する。また、BMU40a~40dは、着脱式バッテリ16a~16dの仕様(仕様係数等の仕様差値)、満充電容量の仕様値又は初期値、現在の満充電容量も管理している。BMU40a~40dは、これらの情報をCAN44に出力する。
【0029】
従って、コントロールユニット30は、各着脱式バッテリ16a~16dの現在充電容量、現在の満充電容量、及び、満充電容量の仕様値又は初期値等をBMU40a~40dから取得する。なお、満充電容量の仕様値とは、着脱式バッテリ16a~16dの満充電容量の規格値をいう。また、満充電容量の初期値とは、着脱式バッテリ16a~16dの使用開始時(工場出荷時)の満充電容量の値(初期満充電量)をいう。
【0030】
DC/DCコンバータ32は、電流指令値に応じて着脱式バッテリ16の出力電圧を変換し、変換後の出力電圧をジョイントボックス34に出力する。ジョイントボックス34は、着脱式バッテリ16からインバータ36に直流電力を供給する。インバータ36は、トルク指令値にしたがって、ジョイントボックス34から供給される直流電力を三相の交流電力に変換して、駆動モータ14に供給する。また、インバータ36は、駆動モータ14の回転数情報、実トルク情報をCAN42に出力する。
【0031】
表示装置38は、車両12のダッシュボード等に設定された画面62(図4参照)と、その画面62に表示させる文字や画像を処理する処理装置とから構成されている。表示装置38には、インバータ36又は駆動モータ14からの情報が通信部38aを介して入力(受信)され、CAN44から通信部38aを介して着脱式バッテリ16のSOC情報(各種の充電率又は充電容量の情報)、及び、コントロールユニット30の表示指示信号が入力(受信)される。表示装置38は、通信部38aに入力された各種の情報に基づいて、着脱式バッテリ16の状態を表示する。
【0032】
[2.表示装置38における表示内容]
図4は、表示装置38の表示例を示す図である。表示装置38は、バッテリ残量表示部52a~52d、合計残量表示部54、開閉状態表示部56a~56d、バッテリ交換表示部58a~58d、及び、バッテリ接続状態表示部60a~60dを有する。
【0033】
各バッテリ残量表示部52a~52dは、表示装置38の画面62の右側に設けられている。このうち、右側の2つのバッテリ残量表示部52a、52bは、車体18(図2及び図3参照)の右側に配置される2個の着脱式バッテリ16a、16bに対応する。また、左側の2つのバッテリ残量表示部52c、52dは、車体18の左側に配置される2個の着脱式バッテリ16c、16dに対応する。
【0034】
各バッテリ残量表示部52a~52dは、各着脱式バッテリ16a~16dの番号と、棒状グラフが内部に配置された乾電池を模した絵と、各着脱式バッテリ16a~16dのSOCの数値とを表示する。また、乾電池の内部の棒状グラフは、対応する着脱式バッテリ16a~16dのSOCの大きさに応じて上下方向に変化する。
【0035】
図4では、乾電池の絵の内部に10個の矩形状のセグメントが上下方向に並んで配置されている。各セグメントは、例えば、LEDであり、1つのセグメントが点灯することで、10%分のSOCを表示する。図4図7Bでは、点灯状態をハッチングで図示すると共に、消灯状態を白抜きで図示している。従って、各バッテリ残量表示部52a~52dは、対応する着脱式バッテリ16a~16dのSOCの大きさに応じて、下側のセグメントから上側のセグメントに向かって順に点灯することで、SOCの大きさを概略的に表示する。
【0036】
図4では、全てのセグメントが点灯しておらず、各着脱式バッテリ16a~16dのSOCが0%であることを示している。図5Aでは、1個の着脱式バッテリ16aについて、全てのセグメントが点灯することで、該着脱式バッテリ16aのSOCが100%であることを示している。図5Bでは、下側の3つのセグメントが点灯しており、該着脱式バッテリ16aのSOCが30%であることを示している。図6Aでは、下側の1つのセグメントが点灯しており、該着脱式バッテリ16aのSOCが10%であることを示している。
【0037】
この場合、SOCの大きさに応じて、セグメントの点灯色を変化させてもよい。図5B及び図6Aでは、図5Aの場合と比較して、セグメント内のハッチングの向きを異なるものとすることで、セグメントが異なる色で点灯していることを図示している。
【0038】
各バッテリ残量表示部52a~52dの乾電池を模した絵の周囲には、開閉状態表示部56a~56d、バッテリ交換表示部58a~58d及びバッテリ接続状態表示部60a~60dが配置されている。これらの表示部は、対応する着脱式バッテリ16a~16dのバッテリ残量表示部52a~52dの周囲に設けられている。
【0039】
開閉状態表示部56a~56dは、点灯することにより、対応する着脱式バッテリ16a~16dを収容する蓄電装置収容部24の蓋部材26が開いていることを表示し、消灯することにより、該蓋部材26が閉じていることを表示する。図4図7Bでは、点灯状態を実線で図示すると共に、消灯状態を破線で図示している。
【0040】
バッテリ交換表示部58a~58dは、点灯することにより、対応する着脱式バッテリ16a~16dの交換が必要であることを表示し、消灯することにより、該交換が不要であることを表示する。図4図7Bでは、点灯状態を実線で図示すると共に、消灯状態を破線で図示している。
【0041】
バッテリ接続状態表示部60a~60dは、点灯することにより、対応する着脱式バッテリ16a~16dが蓄電装置収容部24に装填され、該着脱式バッテリ16a~16dとDC/DCコンバータ32a~32dとが電気的に接続されていることを表示する。また、バッテリ接続状態表示部60a~60dは、消灯することにより、該着脱式バッテリ16a~16dが蓄電装置収容部24に装填されていないか、又は、装填されていても、該着脱式バッテリ16a~16dとDC/DCコンバータ32a~32dとが電気的に接続されていないことを表示する。図4図7Bでは、点灯状態を黒塗りの円で図示すると共に、消灯状態を白抜きの円で図示している。
【0042】
合計残量表示部54は、4つの着脱式バッテリ16a~16dの全体のSOCを表示する。合計残量表示部54は、横方向に並んだ10個のセグメントで構成される。各セグメントは、例えば、LEDであり、1つのセグメントが点灯することで、10%分のSOCを表示する。従って、合計残量表示部54は、各着脱式バッテリ16a~16dの全体のSOCの大きさに応じて、左側(0%のSOCを示すE側)のセグメントから右側(100%のSOCを示すF側)のセグメントに向かって順に点灯することで、該SOCの概略的な大きさを表示する。
【0043】
図5A図7Bは、1個の着脱式バッテリ16aについて、バッテリ交換の前後での表示装置38の表示内容の変化を図示したものである。なお、他の着脱式バッテリ16b~16dについても、バッテリ交換の際には、表示装置38の表示内容が同様に変化する。
【0044】
図5Aは、着脱式バッテリ16aが蓄電装置収容部24(図2及び図3参照)に収容され、蓋部材26が閉じており、且つ、該着脱式バッテリ16aのSOCが100%の状態の場合を示している。この場合、バッテリ残量表示部52aでは、全てのセグメントが点灯し、SOCの数値を示す「100%」の文字が表示されている。また、バッテリ接続状態表示部60aが点灯すると共に、開閉状態表示部56a及びバッテリ交換表示部58aが消灯している。
【0045】
図5Bは、着脱式バッテリ16aのSOCが30%にまで低下した場合を示している。この場合、バッテリ残量表示部52aでは、下側の3つのセグメントが点灯すると共に、SOCの数値を示す「30%」の文字が表示されている。SOCが低下しているため、下側の3つのセグメントは、図5Aの場合とは異なる点灯色で点灯している。
【0046】
図6Aは、着脱式バッテリ16aのSOCが10%にまで低下した場合を示している。この場合、バッテリ残量表示部52aは、下側の1つのセグメントが点灯すると共に、SOCの数値を示す「10%」の文字が表示されている。また、バッテリ交換表示部58aが点灯することで、運転者等に対して着脱式バッテリ16aの交換を促す。
【0047】
図6Aの画面表示を見て、運転者等が着脱式バッテリ16aを収容する蓄電装置収容部24の蓋部材26(図2及び図3参照)を開いた場合、表示装置38の画面62は、図6Bの表示内容に切り替わる。図6Bでは、開閉状態表示部56aが点灯することで、蓋部材26が開いていることを報知する。
【0048】
運転者等が蓄電装置収容部24から着脱式バッテリ16aを取り外した場合、表示装置38の画面62は、図7Aの表示内容に切り替わる。図7Aでは、バッテリ接続状態表示部60aが消灯すると共に、開閉状態表示部56a及びバッテリ交換表示部58aが点灯している。また、バッテリ残量表示部52aは、全てのセグメントを消灯させると共に、SOCの数値を示す「0%」の文字を表示させる。
【0049】
次に、運転者等が蓄電装置収容部24に満充電状態の着脱式バッテリ16aを装填した場合、表示装置38の画面62は、図7Bの表示内容に切り替わる。図7Bでは、バッテリ接続状態表示部60a、開閉状態表示部56a及びバッテリ交換表示部58aが共に点灯している。また、バッテリ残量表示部52aは、全てのセグメントを点灯させると共に、SOCの数値を示す「100%」の文字を表示させる。
【0050】
次に、運転者等が蓋部材26を閉じた場合、表示装置38の画面62は、図5Aの表示内容に切り替わる。これにより、開閉状態表示部56a及びバッテリ交換表示部58aは消灯する。
【0051】
[3.SOCの算出処理]
次に、本実施形態に係る電力装置10の特徴的な機能について、図8図10Bを参照しながら説明する。特徴的な機能とは、種類の異なる複数の着脱式バッテリ16が蓄電装置収容部24に収容されている場合でも、複数の着脱式バッテリ16の全体のSOCを精度良く算出するというものである。なお、この特徴的な機能では、同じ種類の複数の着脱式バッテリ16に対するSOCの算出処理にも適用可能である。
【0052】
ここで、特徴的な機能によるSOCの算出処理に関する3つの手法(図8の第1実施例、図9の第2実施例及び第3実施例)について、順に説明する。
【0053】
<3.1 第1実施例>
図8の第1実施例では、コントロールユニット30(図1参照)は、4個の着脱式バッテリ16について、各着脱式バッテリ16の温度係数、劣化係数及び仕様係数(仕様差値)を考慮して、複数の着脱式バッテリ16の全体のSOCを算出する。従って、第1実施例では、同じ種類の4個の着脱式バッテリ16や、種類の異なる4個の着脱式バッテリ16の双方の場合に適用可能である。
【0054】
なお、着脱式バッテリ16の種類としては、例えば、容量又は出力の違いや、バッテリ構造の違いがある。本実施形態では、同じ構造の着脱式バッテリ16でも、標準タイプ、高出力タイプ又は高容量タイプであれば、異なる種類の着脱式バッテリ16として取り扱う。また、一般的なバッテリパック及びハイブリッド車両用バッテリについても、異なる種類の着脱式バッテリ16として取り扱う。
【0055】
先ず、ステップS1において、運転者がイグニッションスイッチ46をオンにすると、イグニッションスイッチ46からコントロールユニット30にイグニッション信号が供給される。これにより、車両12内の電源システム15(電力装置10)が起動する。
【0056】
次のステップS2において、コントロールユニット30の通信部30aは、各BMU40からCAN44を介して各着脱式バッテリ16の情報を取得する。取得する情報には、各着脱式バッテリ16のSOCや、各蓄電装置収容部24に対する各着脱式バッテリ16の装填の有無を示す状態等が含まれる。なお、ステップS2において、通信部30aが取得するSOCの情報としては、各着脱式バッテリ16の現在充電容量、現在の満充電容量及び満充電容量の仕様値又は初期値が含まれる。
【0057】
次のステップS3において、コントロールユニット30は、通信部30aが取得した各着脱式バッテリ16の情報に基づいて、各蓄電装置収容部24に着脱式バッテリ16が収容されているか否かを判定する。また、コントロールユニット30は、各着脱式バッテリ16のSOCが0%でないか否かを判定する。
【0058】
ステップS3において、全ての蓄電装置収容部24に着脱式バッテリ16が収容され、且つ、SOCが0%の着脱式バッテリ16が存在しない場合(ステップS3:YES)、コントロールユニット30は、ステップS4の処理に進む。
【0059】
ステップS4において、コントロールユニット30は、ステップS2で取得した各着脱式バッテリ16の情報に基づき、各着脱式バッテリ16の種類を確認する。
【0060】
ステップS5において、コントロールユニット30の通信部30aは、各BMU40からCAN44を介して各着脱式バッテリ16の温度係数、劣化係数及び仕様係数を取得する。なお、仕様係数とは、任意の着脱式バッテリ16を基準のバッテリとした場合、該基準の着脱式バッテリ16に対する自己の着脱式バッテリ16の仕様差に関わる係数である。従って、仕様係数は、仕様差値の一種である。例えば、基準の着脱式バッテリ16の容量が1000Whである場合、500Whの容量の着脱式バッテリ16の仕様係数は0.5となる(500/1000=0.5)。また、2000Whの容量の着脱式バッテリ16の仕様係数は2.0となる(2000/1000=2.0)。
【0061】
ステップS6において、コントロールユニット30は、各BMU40からCAN44を介して通信部30aが取得した各着脱式バッテリ16の情報に基づき、各着脱式バッテリ16の満充電容量の合計FCCを算出する。この場合、各満充電容量の合計FCCは、各着脱式バッテリ16が劣化していなければ、各着脱式バッテリ16の満充電容量の仕様値又は初期値の合計FCC0となる。また、各着脱式バッテリ16が劣化している場合には、各満充電容量の合計FCCは、現時点での各満充電容量の合計となる。すなわち、各満充電容量の合計FCCは、下記の(1)式で表わされる。なお、Σは、総和を示す数学記号である。
FCC=Σ(各着脱式バッテリ16の満充電容量) (1)
【0062】
ステップS7において、コントロールユニット30は、各BMU40からCAN44を介して通信部30aが取得した各着脱式バッテリ16の情報に基づき、各着脱式バッテリ16の現在の残容量(現在充電容量)の合計RCを算出する。この場合、コントロールユニット30は、各着脱式バッテリ16の満充電容量と現在のSOCとに基づいて算出する。あるいは、コントロールユニット30は、各着脱式バッテリ16のSOC、温度係数、劣化係数及び仕様係数に基づいて現在充電容量の合計RCを算出してもよい。さらには、コントロールユニット30は、各着脱式バッテリ16を充放電する電流(充電電流、放電電流)の時間積算値に基づいて、現在充電容量の合計RCを算出してもよい。
【0063】
従って、現在充電容量の合計RCは、下記の(2)式~(4)式のいずれかで表わされる。
RC=Σ{(各着脱式バッテリ16のSOC)×(温度係数)
×(劣化係数)×(仕様係数)} (2)
RC=Σ{(各着脱式バッテリ16の満充電容量)
×(各着脱式バッテリ16のSOC)} (3)
RC=Σ(各着脱式バッテリ16を充放電する電流の積算値)(4)
【0064】
ステップS8において、コントロールユニット30は、各着脱式バッテリ16の現在充電容量の合計RCを、各着脱式バッテリ16の満充電容量の合計FCCで除算することにより、各着脱式バッテリ16の全体のSOCであるRSOCを算出する。この場合、RSOCは、下記の(5)式で表わされる。
RSOC=RC/FCC (5)
【0065】
ステップS9において、コントロールユニット30は、算出したRSOC等に基づき、各BMU40及び各DC/DCコンバータ32を制御する。
【0066】
この場合、コントロールユニット30は、各BMU40(各着脱式バッテリ16)に対して、CAN44経由で情報の送受信を行う際のIDを付与し、付与したIDを通信部30aからCAN44に出力する。また、コントロールユニット30は、RSOC等に基づき、IDを付与したBMU40を制御するための制御指令を通信部30aからCAN44に出力する。これにより、BMU40は、CAN44から取得した制御指令に基づき、着脱式バッテリ16からDC/DCコンバータ32に向けて電流を流す。
【0067】
また、コントロールユニット30は、RSOCを考慮して、各DC/DCコンバータ32に対する電流指令値を調整し、調整した各電流指令値を通信部30aからCAN44に出力する。DC/DCコンバータ32は、CAN44から取得した電流指令値に基づき着脱式バッテリ16の出力電圧を変換する。
【0068】
ステップS10において、コントロールユニット30は、算出したRSOC等に応じた表示装置38の表示内容を表示指示信号として設定し、設定した表示指示信号を通信部30aからCAN44に出力する。これにより、表示装置38は、CAN44を介して通信部38aが取得した表示指示信号等に基づき、図5A図7B等の画面表示を行う。
【0069】
ステップS11において、ステップS2~S11の処理を繰り返し実行する場合(ステップS11:YES)、コントロールユニット30は、ステップS2に戻る。また、ステップS10で運転者が表示装置38の表示内容を確認した後、ステップS12において、車両12を運転操作することで、該車両12を移動させることができる。この場合、ステップS12後、ステップS11の判定処理が実行される。
【0070】
<3.2 第2実施例>
第2実施例は、着脱式バッテリ16が収容されていない蓄電装置収容部24が存在する場合や、各蓄電装置収容部24に着脱式バッテリ16が収容されていても、SOCが0%の着脱式バッテリ16が存在する場合における、各着脱式バッテリ16の全体のSOCの算出処理に関する。
【0071】
この場合、電力を供給する着脱式バッテリ16の本数が少なくなるため、着脱式バッテリ16の1個当たりの負荷が増大すると共に、複数の着脱式バッテリ16の全体の出力が低下する。この結果、複数の着脱式バッテリ16の全体の容量が却って減少する。このことについて、図10A及び図10Bを参照しながら具体的に説明する。
【0072】
図10Aは、標準タイプの着脱式バッテリ16での電圧と複数の着脱式バッテリ16の全体の放電可能容量との関係を示す図である。実線は、4個の着脱式バッテリ16を車両12に搭載した場合の結果である。満充電状態の4個の着脱式バッテリ16を車両12に搭載する場合、4個の着脱式バッテリ16の全体の放電可能容量は、100%となる。また、4個の着脱式バッテリ16の場合、1C放電となる。
【0073】
また、図10Aにおいて、破線は、2個の着脱式バッテリ16を車両12に搭載した場合である。破線の場合は、満充電状態の2個の着脱式バッテリ16を車両12に搭載すると、2個の着脱式バッテリ16の全体の放電可能容量は、4個の着脱式バッテリ16の全体の放電可能容量(100%)と比較して、95%にまで低下する。また、4個の着脱式バッテリ16の場合と比較して、2個の着脱式バッテリ16では、1個当たりの負荷が増大するので、放電レートが高い2C放電となる。例えば、4個の着脱式バッテリ16(実線)と2個の着脱式バッテリ16(破線)とについて、同じ出力(10kW)を出す場合、4個の着脱式バッテリ16では、閉路電圧が50V、放電電流が160A(1個当たり40A)程度となるが、2個の着脱式バッテリ16では、閉路電圧が45Vに低下し、放電電流が200A(1個当たり100A)にまで増加する。
【0074】
図10Bは、高出力タイプの着脱式バッテリ16での電圧と複数の着脱式バッテリ16の全体の放電可能容量との関係を示す図である。実線は、4個の着脱式バッテリ16を車両12に搭載した場合を示す。図10Bでも、満充電状態の4個の着脱式バッテリ16を車両12に搭載する場合、4個の着脱式バッテリ16の全体の放電可能容量は、100%となる。また、4個の着脱式バッテリ16では、1C放電となる。
【0075】
また、図10Bにおいて、破線は、2個の着脱式バッテリ16を車両12に搭載した場合を示す。高出力タイプにおいて、破線の場合は、満充電状態の2個の着脱式バッテリ16を車両12に搭載すると、2個の着脱式バッテリ16の全体の放電可能容量は、4個の着脱式バッテリ16の全体の放電可能容量(100%)と比較して、98%にまで低下する。従って、図10Bにおいても、4個の着脱式バッテリ16の場合と比較して、2個の着脱式バッテリ16では、1個当たりの負荷が増大し、2C放電となる。但し、標準タイプの着脱式バッテリ16の結果(図10Aの破線)と比較して、図10Bの破線の結果では、放電可能容量の低下は2%に抑えられている。
【0076】
そこで、第2実施例では、このような本数の減少による着脱式バッテリ16の負荷の増大を考慮して、各着脱式バッテリ16の全体のSOCを算出する。なお、第2実施例での以下の説明では、同じ種類の2個の着脱式バッテリ16が車両12に搭載される場合について説明する。
【0077】
具体的に、図8のステップS2で、4個の着脱式バッテリ16が蓄電装置収容部24に収容されていないか、又は、各着脱式バッテリ16のうち、少なくとも1個の着脱式バッテリ16のSOCが0%である場合(ステップS2:NO)、コントロールユニット30は、図9のステップS21に進む。
【0078】
ステップS21において、コントロールユニット30は、通信部30aが取得した各着脱式バッテリ16の情報に基づき、車両12に搭載されている各着脱式バッテリ16の個数と、各着脱式バッテリ16の種類とを確認する。
【0079】
ステップS22において、コントロールユニット30の通信部30aは、ステップS4と同様に、各BMU40からCAN44を介して各着脱式バッテリ16の温度係数、劣化係数及び仕様係数を取得する。なお、蓄電装置収容部24に着脱式バッテリ16が収容されていない場合、上記の情報を取得することはできない。また、蓄電装置収容部24に着脱式バッテリ16が収容されている場合でも、SOCが0%の場合、コントロールユニット30の通信部30aは、SOCが0%である旨を含む情報を取得する。
【0080】
ステップS23において、コントロールユニット30は、ステップS6と同様に、各着脱式バッテリ16の満充電容量の合計FCCを算出する。この場合、コントロールユニット30は、2個の着脱式バッテリ16の満充電容量の合計FCCを算出する。
【0081】
ステップS24において、コントロールユニット30は、収容されている2個の着脱式バッテリ16の現在充電容量の合計RC0を算出する。次に、コントロールユニット30は、車両12に搭載されている着脱式バッテリ16の個数及び種類に応じた補正係数を決定する。
【0082】
ここで、補正係数とは、例えば、車両12に搭載される着脱式バッテリ16の本数が、4個から2個に減少することによる放電可能容量の減少分に相当する数値である。具体的に、図10Aの標準タイプの着脱式バッテリ16の場合、補正係数は、5%の減少分に相当する0.95となる。また、図10Bの高出力タイプの着脱式バッテリ16の場合、補正係数は、2%の減少分に相当する0.98となる。
【0083】
ステップS25において、コントロールユニット30は、補正係数を加味して各着脱式バッテリ16の現在充電容量の合計RCを算出する。すなわち、コントロールユニット30は、下記の(6)式を用いて、合計RCを算出する。
RC=RC0×(補正係数) (6)
【0084】
そして、ステップS25後の図8のステップS8において、コントロールユニット30は、(6)式で算出した現在充電容量の合計RCと、満充電容量の合計FCCとを用いて、(5)式からRSOCを算出する。
【0085】
<3.3 第3実施例>
第3実施例は、車両12に搭載される着脱式バッテリ16の本数が少ない場合でも、4個分の着脱式バッテリ16の満充電容量の和を、満充電容量の合計FCCとし、一方で、搭載されている着脱式バッテリ16の本数分の残容量を、現在充電容量の合計RCとする点で、第2実施例とは異なる。
【0086】
この場合、ステップS23において、コントロールユニット30は、ステップS6と同様に、4個の着脱式バッテリ16の本数分の満充電容量の合計FCCを算出する。
【0087】
ステップS23後、コントロールユニット30は、ステップS31に進み、車両12に搭載されていない着脱式バッテリ16の本数を考慮して、現在充電容量の合計RCを算出する。すなわち、コントロールユニット30は、車両12に搭載されている2個の着脱式バッテリ16についての現在充電容量の和を、合計RCとして算出する。
【0088】
そして、ステップS31後の図8のステップS8において、コントロールユニット30は、ステップS23で算出した満充電容量の合計FCCと、ステップS31で算出した現在充電容量の合計RCとを用いて、(5)式からRSOCを算出する。
【0089】
<3.4 各実施例の変形例>
上記の各実施例では、満充電容量の合計FCCを算出した後に、現在充電容量の合計RCを算出する場合について説明した(ステップS6→S7、ステップS23→S25、S31)。本実施形態では、現在充電容量の合計RCを先に算出し、その後、満充電容量の合計FCCを算出することも可能である(ステップS7→S6、ステップS25、S31→S23)。
【0090】
また、上記の各実施例では、ステップS2において、コントロールユニット30が満充電容量及び現在充電容量を取得する場合について説明した。本実施形態では、ステップS5又はS22において、コントロールユニット30が現在充電容量及び満充電容量を取得することも可能である。あるいは、ステップS2において、満充電容量及び現在充電容量のうち、いずれか一方をコントロールユニット30が取得し、ステップS5又はS22において、他方をコントロールユニット30が取得することも可能である。
【0091】
また、本実施形態では、コントロールユニット30は、満充電容量及び現在充電容量のいずれか一方を取得した後に、取得した一方の充電容量の合計を算出し、次に、他方の充電容量を取得し、取得した他方の充電容量の合計を算出するように処理を実行することも可能である。
【0092】
このように、本実施形態において、コントロールユニット30での処理順序は、第1~第3実施例に記載した順序に限定されないことに留意する。
【0093】
[4.本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態は、充放電可能な複数の着脱式バッテリ16a~16d(16)(蓄電部)を有する電力装置10であって、コントロールユニット30(充電率算出部)は、複数の着脱式バッテリ16a~16dのそれぞれの満充電容量の合計FCCと、複数の着脱式バッテリ16a~16dのそれぞれの現在充電容量の合計RCとに基づいて、複数の着脱式バッテリ16a~16dの全体のSOC(充電率)であるRSOCを算出する。
【0094】
また、本実施形態は、表示装置38であって、該表示装置38は、電力装置10から複数の着脱式バッテリ16a~16dの全体のSOC(RSOC)を受信する通信部38a(受信部)を有し、受信したRSOCを表示する。
【0095】
さらに、本実施形態は、充放電可能な複数の着脱式バッテリ16a~16d(16)を有する電力装置10の充電率算出方法であって、複数の着脱式バッテリ16a~16dのそれぞれの満充電容量を取得するステップ(ステップS2)と、複数の満充電容量の合計FCCを算出するステップ(ステップS6、S23)と、複数の着脱式バッテリ16a~16dのそれぞれの現在充電容量を取得するステップ(ステップS2)と、複数の現在充電容量の合計RCを算出するステップ(ステップS7、S25、S31)と、満充電容量の合計FCC及び現在充電容量の合計RCに基づき、RSOCを算出するステップ(ステップS8)とを有する。
【0096】
さらにまた、本実施形態は、プログラムであって、該プログラムは、複数の着脱式バッテリ16a~16dのそれぞれの満充電容量を取得するステップ(ステップS2)と、複数の満充電容量の合計FCCを算出するステップ(ステップS6、S23)と、複数の着脱式バッテリ16a~16dのそれぞれの現在充電容量を取得するステップ(ステップS2)と、複数の現在充電容量の合計RCを算出するステップ(ステップS7、S25、S31)と、満充電容量の合計FCC及び現在充電容量の合計RCに基づき、RSOCを算出するステップ(ステップS8)とを、コンピュータとしての電力装置10のコントロールユニット30に実行させる。
【0097】
また、本実施形態は、記憶部30b(記憶媒体)であって、該記憶部30bには、上記のプログラムが記憶されている。
【0098】
このように、複数の着脱式バッテリ16a~16dのそれぞれの満充電容量の合計FCCと、複数の着脱式バッテリ16a~16dのそれぞれの現在充電容量の合計RCとを用いることで、複数の着脱式バッテリ16a~16dの全体のSOCであるRSOCを精度良く算出することが可能となる。また、そのように求めたRSOCを表示することが可能となる。
【0099】
この場合、満充電容量は、着脱式バッテリ16a~16dの満充電容量に関する仕様値又は初期値に基づいて求められる。これにより、RSOCを一層精度良く算出することができる。
【0100】
また、満充電容量は、着脱式バッテリ16a~16dのの温度又は劣化度合の少なくとも1つに基づいて求められる。これにより、各着脱式バッテリ16a~16dの現在の状況に基づき、RSOCを一層精度良く算出することができる。
【0101】
さらに、満充電容量は、複数の着脱式バッテリ16a~16dに仕様差がある場合、該仕様差に応じて設定される仕様差値(例えば、仕様係数等)に基づいて求められる。これにより、各着脱式バッテリ16a~16dの仕様差を考慮して、RSOCを精度良く算出することができる。
【0102】
さらにまた、現在充電容量は、着脱式バッテリ16a~16dを充放電する電流の積算値に基づいて求められる。これにより、RSOCを正確に算出することができる。
【0103】
また、コントロールユニット30は、現在充電容量の合計RCを満充電容量の合計FCCで除算することにより、RSOCを算出すればよい。これにより、RSOCを簡単に算出することができる。
【0104】
さらに、コントロールユニット30は、第2実施例のように、複数の着脱式バッテリ16a~16dの個数及び種類に応じて、現在充電容量の合計RCを補正する。これにより、着脱式バッテリ16a~16dの個数の減少による放電容量の低下を考慮して、最適なRSOCを算出することができる。
【0105】
さらにまた、コントロールユニット30は、第3実施例のように、現在充電容量が0である着脱式バッテリ16a~16dの個数に応じて、現在充電容量の合計RCを補正する。この場合でも、着脱式バッテリ16a~16dの個数の減少による放電容量の低下を考慮して、最適なRSOCを算出することができる。
【0106】
また、複数の着脱式バッテリ16a~16dは、車両12に対して着脱可能な蓄電装置であり、コントロールユニット30は、車両12に搭載された制御装置である。これにより、車両12の電源システム15として電力装置10を好適に適用することができる。
【0107】
また、電力装置10は、コントロールユニット30が算出したRSOCを、表示装置38に送信する通信部30a(送信部)をさらに有する。これにより、表示装置38は、通信部38aでRSOCを受信し、受信したRSOCを確実に表示することができる。
【0108】
なお、本発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることは勿論である。
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