(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/337 20060101AFI20241217BHJP
H01L 21/338 20060101ALI20241217BHJP
H01L 29/808 20060101ALI20241217BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20241217BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20241217BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20241217BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20241217BHJP
H01L 29/423 20060101ALI20241217BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H01L29/80 V
H01L29/80 H
H01L29/44 P
H01L21/28 301B
H01L29/58 Z
H01L29/50 J
H01L29/80 C
H01L29/80 F
(21)【出願番号】P 2021569816
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2020047685
(87)【国際公開番号】W WO2021140898
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2020001752
(32)【優先日】2020-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、環境省、未来のあるべき社会ライフスタイルを創造する技術イノベーション事業委託業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】小川 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】柴田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田村 聡之
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/181391(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/097813(WO,A1)
【文献】特開2004-260140(JP,A)
【文献】国際公開第2013/008422(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/060206(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 21/337
H01L 21/338
H01L 29/808
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面、及び、前記第1の主面の反対側の第2の主面を有する基板と、
前記第1の主面の上方に設けられた、第1の導電型を有する第1の電子走行層と、
前記第1の電子走行層の上方に設けられた第1の電子供給層と、
前記第1の電子供給層の上方に設けられた、前記第1の導電型とは異なる第2の導電型を有する第1の窒化物半導体層と、
前記第1の電子供給層及び前記第1の窒化物半導体層を貫通し、前記第1の電子走行層にまで達する第1の開口部と、
前記第1の窒化物半導体層の上方部分と、前記第1の開口部の内面に沿った部分とに設けられた第2の電子走行層と、
前記第2の電子走行層の上方で、かつ、前記第1の開口部を覆うように設けられた第2の電子供給層と、
前記第2の電子供給層の上方で、かつ、前記第1の開口部を覆うように設けられたゲート電極と、
前記第1の窒化物半導体層及び前記第2の電子走行層に接続されたソース電極と、
前記基板の前記第2の主面側に設けられたドレイン電極とを備える
窒化物半導体装置。
【請求項2】
さらに、前記第1の開口部の内面に沿って、前記第1の窒化物半導体層と前記第2の電子走行層との間に設けられた、窒化物半導体からなる、前記第1の窒化物半導体層よりも抵抗が高い高抵抗層を備える
請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記高抵抗層は、鉄を含む
請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項4】
前記高抵抗層は、前記第1の開口部の内面に沿って、前記第1の電子供給層と前記第2の電子走行層との間に設けられている
請求項2又は3に記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
さらに、前記ゲート電極と前記第2の電子供給層との間に設けられた、前記第2の導電型を有する第2の窒化物半導体層を備える
請求項1~4のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項6】
前記基板を平面視した場合に、前記ゲート電極の端部は、前記第1の開口部の端部よりも前記ソース電極に近い位置に位置している
請求項1~5のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項7】
さらに、前記ゲート電極から離れた位置において、前記第2の電子走行層を貫通し、前記第1の窒化物半導体層にまで達する第2の開口部を備え、
前記ソース電極の少なくとも一部は、前記第2の開口部内に設けられている
請求項1~6のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項8】
前記第1の電子走行層は、
前記第1の導電型の第3の窒化物半導体層と、
前記第3の窒化物半導体層と前記第1の電子供給層との間に位置するアンドープの第4の窒化物半導体層とを含む
請求項1~7のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項9】
第1の主面、及び、前記第1の主面の反対側の第2の主面を有する基板と、
前記第1の主面の上方に設けられた、第1の導電型を有する第1の電子走行層と、
前記第1の電子走行層の上方に設けられた、前記第1の導電型とは異なる第2の導電型を有する第1の窒化物半導体層と、
前記第1の窒化物半導体層を貫通し、前記第1の電子走行層にまで達する第1の開口部と、
前記第1の窒化物半導体層の上方部分と、前記第1の開口部の内面に沿った部分とに設けられた第2の電子走行層と、
前記第2の電子走行層の上方で、かつ、前記第1の開口部を覆うように設けられた電子供給層と、
前記電子供給層の上方で、かつ、前記第1の開口部を覆うように設けられたゲート電極と、
前記第1の窒化物半導体層及び前記第2の電子走行層に接続されたソース電極と、
前記基板の前記第2の主面側に設けられたドレイン電極とを備え、
前記第1の電子走行層は、
前記第1の導電型の第3の窒化物半導体層と、
前記第3の窒化物半導体層と前記第1の窒化物半導体層との間に位置し、前記第3の窒化物半導体層よりも不純物濃度が高い第4の窒化物半導体層とを含む
窒化物半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窒化物半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
GaN(窒化ガリウム)などの窒化物半導体は、バンドギャップが大きいワイドギャップ半導体であり、絶縁破壊電界が大きく、電子の飽和ドリフト速度がGaAs(ヒ化ガリウム)半導体又はSi(シリコン)半導体などに比べて大きいという特長を有している。このため、高出力化、かつ、高耐圧化に有利な窒化物半導体を用いたパワートランジスタの研究開発が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、GaN系積層体に形成された半導体装置が開示されている。特許文献1に記載の半導体装置は、GaN系積層体に設けられた開口部を覆うように位置する再成長層と、再成長層に沿って再成長層上に位置するゲート電極とを備える縦型の電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)である。再成長層に発生する二次元電子ガス(2DEG:2-Dimensional Electron Gas)によってチャネルが形成され、移動度が高く、オン抵抗が低いFETが実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の電界効果トランジスタでは、電流は開口部の直下方向で流れるだけで横方向に拡散しない。このため、電界効果トランジスタの動作時の抵抗値が大きくなるという問題がある。
【0006】
そこで、本開示は、動作時の抵抗値を低減することができる窒化物半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本開示の一態様に係る窒化物半導体装置は、第1の主面、及び、前記第1の主面の反対側の第2の主面を有する基板と、前記第1の主面の上方に設けられた、第1の導電型を有する第1の電子走行層と、前記第1の電子走行層の上方に設けられた第1の電子供給層と、前記第1の電子供給層の上方に設けられた、前記第1の導電型とは異なる第2の導電型を有する第1の窒化物半導体層と、前記第1の電子供給層及び前記第1の窒化物半導体層を貫通し、前記第1の電子走行層にまで達する第1の開口部と、前記第1の窒化物半導体層の上方部分と、前記第1の開口部の内面に沿った部分とに設けられた第2の電子走行層と、前記第2の電子走行層の上方で、かつ、前記第1の開口部を覆うように設けられた第2の電子供給層と、前記第2の電子供給層の上方で、かつ、前記第1の開口部を覆うように設けられたゲート電極と、前記第1の窒化物半導体層及び前記第2の電子走行層に接続されたソース電極と、前記基板の前記第2の主面側に設けられたドレイン電極とを備える。
【0008】
また、本開示の一態様に係る窒化物半導体装置は、第1の主面、及び、前記第1の主面の反対側の第2の主面を有する基板と、前記第1の主面の上方に設けられた、第1の導電型を有する第1の電子走行層と、前記第1の電子走行層の上方に設けられた、前記第1の導電型とは異なる第2の導電型を有する第1の窒化物半導体層と、前記第1の窒化物半導体層を貫通し、前記第1の電子走行層にまで達する第1の開口部と、前記第1の窒化物半導体層の上方部分と、前記第1の開口部の内面に沿った部分とに設けられた第2の電子走行層と、前記第2の電子走行層の上方で、かつ、前記第1の開口部を覆うように設けられた電子供給層と、前記電子供給層の上方で、かつ、前記第1の開口部を覆うように設けられたゲート電極と、前記第1の窒化物半導体層及び前記第2の電子走行層に接続されたソース電極と、前記基板の前記第2の主面側に設けられたドレイン電極とを備える。前記第1の電子走行層は、前記第1の導電型の第3の窒化物半導体層と、前記第3の窒化物半導体層と前記第1の窒化物半導体層との間に位置し、前記第3の窒化物半導体層よりも不純物濃度が高い第4の窒化物半導体層とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る窒化物半導体装置によれば、動作時の抵抗値を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る窒化物半導体装置の平面レイアウトを示す平面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る窒化物半導体装置の断面図である。
【
図3A】
図3Aは、実施の形態1に係る窒化物半導体装置の製造方法において、窒化物半導体の積層工程を示す断面図である。
【
図3B】
図3Bは、実施の形態1に係る窒化物半導体装置の製造方法において、レジストのパターニング工程を示す断面図である。
【
図3C】
図3Cは、実施の形態1に係る窒化物半導体装置の製造方法において、ゲート開口部の形成工程を示す断面図である。
【
図3D】
図3Dは、実施の形態1に係る窒化物半導体装置の製造方法において、窒化物半導体の再成長工程を示す断面図である。
【
図3E】
図3Eは、実施の形態1に係る窒化物半導体装置の製造方法において、ゲート電極の形成工程を示す断面図である。
【
図3F】
図3Fは、実施の形態1に係る窒化物半導体装置の製造方法において、ソース開口部の形成工程を示す断面図である。
【
図4】
図4は、変形例1に係る窒化物半導体装置の断面図である。
【
図5A】
図5Aは、変形例1に係る窒化物半導体装置の製造方法において、イオン注入時のマスク用のレジストのパターニング工程を示す断面図である。
【
図5B】
図5Bは、変形例1に係る窒化物半導体装置の製造方法において、イオン注入工程を示す断面図である。
【
図6】
図6は、変形例2に係る窒化物半導体装置の断面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態2に係る窒化物半導体装置の断面図である。
【
図8】
図8は、実施の形態3に係る窒化物半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の概要)
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る窒化物半導体装置は、第1の主面、及び、前記第1の主面の反対側の第2の主面を有する基板と、前記第1の主面の上方に設けられた、第1の導電型を有する第1の電子走行層と、前記第1の電子走行層の上方に設けられた第1の電子供給層と、前記第1の電子供給層の上方に設けられた、前記第1の導電型とは異なる第2の導電型を有する第1の窒化物半導体層と、前記第1の電子供給層及び前記第1の窒化物半導体層を貫通し、前記第1の電子走行層にまで達する第1の開口部と、前記第1の窒化物半導体層の上方部分と、前記第1の開口部の内面に沿った部分とに設けられた第2の電子走行層と、前記第2の電子走行層の上方で、かつ、前記第1の開口部を覆うように設けられた第2の電子供給層と、前記第2の電子供給層の上方で、かつ、前記第1の開口部を覆うように設けられたゲート電極と、前記第1の窒化物半導体層及び前記第2の電子走行層に接続されたソース電極と、前記基板の前記第2の主面側に設けられたドレイン電極とを備える。
【0012】
これにより、第1の電子走行層に発生する二次元電子ガスがチャネルを形成するので、開口部を流れるソース-ドレイン間電流は、第1の電子走行層内でチャネルに沿って横方向に拡散する。つまり、第1の電子走行層内を流れる電流の経路を広くすることができるので、ソース-ドレイン間電流が流れやすくなる。したがって、本態様によれば、動作時の抵抗値を低減することができる窒化物半導体装置が提供される。
【0013】
また、例えば、本開示の一態様に係る窒化物半導体装置は、さらに、前記第1の開口部の内面に沿って、前記第1の窒化物半導体層と前記第2の電子走行層との間に設けられた、窒化物半導体からなる、前記第1の窒化物半導体層よりも抵抗値が高い高抵抗層を備えてもよい。
【0014】
これにより、第1の窒化物半導体層と第2の電子走行層との間に高抵抗層が設けられているので、ソース電極から第1の窒化物半導体層及び第2の電子走行層を介してゲート電極に至るリーク電流が高抵抗層によって抑制される。例えば、高抵抗層が絶縁層として機能することで、リーク電流の経路が実質的に遮断され、リーク電流を十分に低減することができる。
【0015】
また、例えば、前記高抵抗層は、鉄を含んでもよい。
【0016】
これにより、窒化物半導体に鉄を含ませることにより、高抵抗層の抵抗を高くすることができるので、リーク電流をより低減することができる。また、高抵抗層は、イオン注入などによって所望の領域に所望の形状で容易に形成することができる。例えば、イオン注入によれば、鉄イオンが注入された領域の窒化物半導体を容易にアモルファス状態にすることができ、当該領域を高抵抗化することができる。イオン注入によれば、高抵抗層の抵抗値及び形状などを精度良く調整できるので、リーク電流の抑制効果の信頼性を高めることができる。
【0017】
また、例えば、前記高抵抗層は、前記第1の開口部の内面に沿って、前記第1の電子供給層と前記第2の電子走行層との間に設けられていてもよい。
【0018】
これにより、第1の窒化物半導体層だけでなく、第1の電子供給層の第1開口部内への露出部分を高抵抗層によって覆うことができる。このため、第1の窒化物半導体層の端部を高抵抗層によって確実に覆うことができるので、リーク電流の抑制効果の信頼性を更に高めることができる。
【0019】
また、例えば、前記第1の開口部は、底部と、側壁部とを含み、前記高抵抗層は、前記側壁部から前記底部の一部に亘って設けられていてもよい。
【0020】
これにより、第1の開口部の内面の側壁部から底部の一部に亘って設けられているので、側壁部と底部との境界部分に電界が集中するのを抑制することができる。電界集中が抑制されることで、窒化物半導体装置の耐圧を高めることができる。
【0021】
また、例えば、本開示の一態様に係る窒化物半導体装置は、さらに、前記ゲート電極と前記第2の電子走行層との間に設けられた、前記第2の導電型を有する第2の窒化物半導体層を備えてもよい。
【0022】
これにより、第2の窒化物半導体層によってゲート電極の直下のキャリア濃度を低減することができ、窒化物半導体装置の閾値電圧を正側にシフトさせることができる。したがって、本態様に係る窒化物半導体装置を、ノーマリオフ型のFETとして動作させることができる。
【0023】
また、例えば、前記基板を平面視した場合に、前記ゲート電極の端部は、前記第1の開口部の端部よりも前記ソース電極に近い位置に位置していてもよい。
【0024】
これにより、再成長層に形成されるチャネルの制御性を高めることができる。
【0025】
また、例えば、本開示の一態様に係る窒化物半導体装置は、さらに、前記ゲート電極から離れた位置において、前記第2の電子走行層を貫通し、前記第1の窒化物半導体層にまで達する第2の開口部を備え、前記ソース電極の少なくとも一部は、前記第2の開口部内に設けられていてもよい。
【0026】
これにより、ソース電極及びドレイン電極間に印加される電圧によって、第2の窒化物半導体層と第1の窒化物半導体層との界面近傍に空乏層を形成することができる。空乏層が形成されることにより、ソース-ドレイン間のリーク電流の発生を抑制することができる。したがって、窒化物半導体装置の耐圧を高めることができる。
【0027】
また、例えば、前記第1の電子走行層は、前記第1の導電型の第3の窒化物半導体層と、前記第3の窒化物半導体層と前記第1の電子供給層との間に位置するアンドープの第4の窒化物半導体層とを含んでもよい。
【0028】
これにより、第4の窒化物半導体層に発生する二次元電子ガスがチャネルを形成するので、開口部を流れるソース-ドレイン間電流は、第4の窒化物半導体層内でチャネルに沿って横方向に拡散する。つまり、第1の電子走行層内を流れる電流の経路を広くすることができるので、ソース-ドレイン間電流が流れやすくなる。したがって、本態様によれば、動作時の抵抗値を低減することができる窒化物半導体装置が提供される。また、第4の窒化物半導体層は、アンドープの窒化物半導体層であり、含まれる不純物が少ないので、移動度を高めることができる。
【0029】
また、例えば、本開示の別の一態様に係る窒化物半導体装置は、第1の主面、及び、前記第1の主面の反対側の第2の主面を有する基板と、前記第1の主面の上方に設けられた、第1の導電型を有する第1の電子走行層と、前記第1の電子走行層の上方に設けられた、前記第1の導電型とは異なる第2の導電型を有する第1の窒化物半導体層と、前記第1の窒化物半導体層を貫通し、前記第1の電子走行層にまで達する第1の開口部と、前記第1の窒化物半導体層の上方部分と、前記第1の開口部の内面に沿った部分とに設けられた第2の電子走行層と、前記第2の電子走行層の上方で、かつ、前記第1の開口部を覆うように設けられた電子供給層と、前記電子供給層の上方で、かつ、前記第1の開口部を覆うように設けられたゲート電極と、前記第1の窒化物半導体層及び前記第2の電子走行層に接続されたソース電極と、前記基板の前記第2の主面側に設けられたドレイン電極とを備える。前記第1の電子走行層は、前記第1の導電型の第3の窒化物半導体層と、前記第3の窒化物半導体層と前記第1の窒化物半導体層との間に位置し、前記第3の窒化物半導体層よりも不純物濃度が高い第4の窒化物半導体層とを含む。
【0030】
これにより、不純物濃度が高い第4の窒化物半導体層に発生する二次元電子ガスがチャネルを形成するので、開口部を流れるソース-ドレイン間電流は、第4の窒化物半導体層内でチャネルに沿って横方向に拡散する。つまり、第1の電子走行層内を流れる電流の経路を広くすることができるので、ソース-ドレイン間電流が流れやすくなる。また、第4の窒化物半導体層は、不純物濃度が高くて抵抗が低いので、電流の拡散をより促進することができる。したがって、本態様によれば、動作時の抵抗値をより低減することができる窒化物半導体装置が提供される。
【0031】
以下では、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0032】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0033】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0034】
また、本明細書において、平行又は一致などの要素間の関係性を示す用語、及び、矩形又は台形などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0035】
また、本明細書において、「上方」及び「下方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)及び下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構成における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語として用いる。また、「上方」及び「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔を空けて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに密着して配置されて2つの構成要素が接する場合にも適用される。
【0036】
(実施の形態1)
[構成]
まず、実施の形態1に係る窒化物半導体装置の構成について、
図1及び
図2を用いて説明する。
【0037】
図1は、本実施の形態に係る窒化物半導体装置10の平面レイアウトを示す平面図である。
図2は、本実施の形態に係る窒化物半導体装置10の断面図である。
【0038】
ここで、
図1の(a)は、窒化物半導体装置10を上方から見たときの平面図である。
図1の(b)は、窒化物半導体装置10の1つの単位セル11を拡大して示している。
図2は、
図1のII-II線における本実施の形態に係る窒化物半導体装置10の断面を示している。
【0039】
図1の(a)に示すように、窒化物半導体装置10は、複数の単位セル11を備える。複数の単位セル11は、二次元状に並んで設けられている。複数の単位セル11はそれぞれ、互いに同じ構成を有する。1つの単位セル11の平面視形状は、六角形である。複数の単位セル11は、平面視において、充填配置された正六角形の頂点に複数の単位セル11の各々の中心が位置するように配置されている。
【0040】
単位セル11は、1つのソース電極36を中心に構成されている。
図2は、隣り合う2つの単位セル11の中心を通るII-II線における断面を示している。
【0041】
図2に示すように、窒化物半導体装置10は、基板12と、ドリフト層14と、第1の下地層16と、第2の下地層18と、第3の下地層20と、第4の下地層22と、ゲート開口部24と、電子走行層28と、電子供給層30と、ゲート電極32と、ソース開口部34と、ソース電極36と、ドレイン電極38とを備える。さらに、
図1の(a)に示すように、窒化物半導体装置10は、ゲート電極パッド40と、ソース電極パッド42とを備える。なお、
図1の(a)では、ソース電極パッド42の外形を破線で模式的に表している。
【0042】
窒化物半導体装置10は、GaN及びAlGaNなどの窒化物半導体を主成分とする半導体層の積層構造を有するデバイスである。具体的には、窒化物半導体装置10は、AlGaN膜とGaN膜とのヘテロ構造を有する。
【0043】
AlGaN膜とGaN膜とのヘテロ構造において、(0001)面で表されるc面上での自発分極又はピエゾ分極によって、ヘテロ界面には高濃度の二次元電子ガス(2DEG)が発生する。このため、アンドープ状態であっても、当該界面には、1×1013cm-2以上のシートキャリア濃度が得られる特徴を有する。
【0044】
窒化物半導体装置10は、ヘテロ構造を複数有する。具体的には、ドリフト層14と第1の下地層16との積層構造、及び、電子走行層28と電子供給層30との積層構造がそれぞれ、ヘテロ構造を形成している。ドリフト層14内において、ドリフト層14と第1の下地層16との界面の近傍には二次元電子ガス46が発生する。電子走行層28内において、電子走行層28と電子供給層30との界面の近傍には二次元電子ガス44が発生する。本実施の形態に係る窒化物半導体装置10は、電子走行層28内に発生する二次元電子ガス44をチャネルとして利用した電界効果トランジスタ(FET)である。具体的には、窒化物半導体装置10は、いわゆる縦型FETである。なお、
図2では、二次元電子ガス44及び46をそれぞれ、破線で模式的に示している。
【0045】
基板12は、窒化物半導体からなる基板であり、
図2に示すように、互いに背向する第1の主面12a及び第2の主面12bを有する。第1の主面12aは、ドリフト層14が形成される側の主面である。具体的には、第1の主面12aは、c面に略一致する。第2の主面12bは、第1の主面12aの反対側の主面であり、ドレイン電極38が形成される側の主面である。基板12の平面視形状は、例えば矩形であるが、これに限らない。
【0046】
基板12は、例えば、厚さが300μmであり、キャリア濃度が1×1018cm-3であるn型のGaNからなる基板である。なお、n型及びp型は、半導体の導電型を示している。本実施の形態では、n型は、窒化物半導体の第1の導電型の一例である。p型は、第1の導電型とは極性が異なる第2の導電型の一例である。
【0047】
なお、基板12は、窒化物半導体基板でなくてもよい。例えば、基板12は、シリコン(Si)基板、炭化シリコン(SiC)基板、又は、酸化亜鉛(ZnO)基板などであってもよい。
【0048】
ドリフト層14は、基板12の第1の主面12aの上方に設けられた、第1の導電型を有する第1の電子走行層の一例である。ドリフト層14は、第1の導電型の窒化物半導体から構成されている。ドリフト層14は、例えば、厚さが8μmであり、キャリア濃度が1×1016cm-3であるn型のGaNからなる膜である。ドリフト層14は、基板12の第1の主面12aに接触して設けられている。
【0049】
第1の下地層16は、ドリフト層14の上方に設けられた第1の電子供給層の一例である。第1の下地層16は、窒化物半導体から構成されている。第1の下地層16は、例えば、厚さが50nmのアンドープAl0.2Ga0.8Nからなる膜である。第1の下地層16は、ドリフト層14との間でAlGaN/GaNのヘテロ界面を形成している。これにより、ドリフト層14内に二次元電子ガス46が発生する。
【0050】
第2の下地層18は、第1の下地層16の上方に設けられた、第1の導電型とは異なる第2の導電型を有する第1の窒化物半導体層の一例である。第2の下地層18は、例えば、厚さが400nmであり、キャリア濃度が1×1017cm-3であるp型のGaNからなる膜である。第2の下地層18は、第1の下地層16の上面に接触して設けられている。
【0051】
第2の下地層18は、ソース電極36とドレイン電極38との間のリーク電流を抑制する。例えば、第2の下地層18とドリフト層14とで形成されるpn接合に対して逆方向電圧が印加された場合、具体的には、ソース電極36よりもドレイン電極38が高電位となった場合に、ドリフト層14に空乏層が延びる。これにより、窒化物半導体装置10の高耐圧化が可能である。
【0052】
第3の下地層20は、第2の下地層18上に配置されている。第3の下地層20は、絶縁性又は半絶縁性の窒化物半導体により形成されている。第3の下地層20は、例えば、厚さが200nmであるアンドープGaNからなる膜である。第3の下地層20は、第2の下地層18に接触して設けられている。
【0053】
なお、ここで“アンドープ”とは、GaNの極性をn型又はp型に変化させるシリコン(Si)又はマグネシウム(Mg)などのドーパントがドープされていないことを意味する。本実施の形態では、第3の下地層20には、炭素がドープされている。具体的には、第3の下地層20の炭素濃度は、第2の下地層18の炭素濃度より高い。
【0054】
また、第3の下地層20には、成膜時に混入する珪素(Si)又は酸素(O)が含まれる場合がある。この場合に、第3の下地層20の炭素濃度は、例えば3×1017cm-3以上であるが、1×1018cm-3以上でもよい。第3の下地層20の珪素濃度又は酸素濃度は、例えば、5×1016cm-3以下であるが、2×1016cm-3以下でもよい。
【0055】
ここで、仮に、窒化物半導体装置10が第3の下地層20を備えない場合、ソース電極36とドレイン電極38との間には、n型の電子供給層30及び電子走行層28/p型の第2の下地層18/n型の第1の下地層16及びn型のドリフト層14という積層構造を有する。この積層構造は、寄生npn構造からなる寄生バイポーラトランジスタとなっている。
【0056】
窒化物半導体装置10がオフ状態である場合、第2の下地層18に電流が流れると、この寄生バイポーラトランジスタがオンしてしまい、窒化物半導体装置10の耐圧を低下させる場合がある。この場合、窒化物半導体装置10の誤動作が生じやすい。
【0057】
第3の下地層20は、この寄生npn構造が形成されることを抑制する。このため、寄生npn構造が形成されることによる、窒化物半導体装置10の誤動作を低減することができる。なお、第2の下地層18に流れる電流が十分に抑制されている場合、窒化物半導体装置10は、第3の下地層20を備えなくてもよい。
【0058】
第4の下地層22は、第3の下地層20上に配置されている。第4の下地層22は、例えば、厚さが20nmのAl0.2Ga0.8Nからなる膜である。第4の下地層22は、第3の下地層20に接触して設けられている。
【0059】
第4の下地層22は、第2の下地層18からのMgなどのp型不純物の拡散を抑制する。仮にMgが電子走行層28中のチャネルにまで拡散した場合、二次元電子ガス44のキャリア濃度が低下してオン抵抗が増加する恐れがある。なお、Mgの拡散の程度は、エピタキシャル成長の成長条件などによっても異なる。このため、Mgの拡散が抑制されている場合には、窒化物半導体装置10は、第4の下地層22を備えなくてもよい。
【0060】
また、第4の下地層22は、電子走行層28と電子供給層30との界面に形成されるチャネルへの電子の供給機能を有してもよい。第4の下地層22は、例えば、電子供給層30よりもバンドギャップが大きい。
【0061】
ゲート開口部24は、第1の下地層16を貫通し、ドリフト層14にまで達する第1の開口部の一例である。具体的には、ゲート開口部24は、第4の下地層22の上面から、第4の下地層22、第3の下地層20、第2の下地層18及び第1の下地層16をこの順で貫通し、ドリフト層14まで達している。ゲート開口部24の底部24aは、ドリフト層14の上面である。本実施の形態では、
図2に示すように、ゲート開口部24の底部24aは、ドリフト層14と第1の下地層16との界面よりも下側に位置している。
【0062】
本実施の形態では、ゲート開口部24は、基板12から遠ざかる程、開口面積が大きくなるように形成されている。具体的には、ゲート開口部24の側壁部24bは、斜めに傾斜している。例えば、ゲート開口部24の断面形状は、逆台形、より具体的には、逆等脚台形である。なお、
図1の(b)では、ゲート開口部24の上端の輪郭を破線で示している。ゲート開口部24の底部24aの輪郭は、
図1の(b)に示す輪郭よりも一回り小さくなる。
【0063】
電子走行層28は、第2の下地層18の上方部分と、ゲート開口部24の内面に沿った部分とに設けられた第2の電子走行層の一例である。電子走行層28は、ゲート開口部24を形成した後に、窒化物半導体の再成長によって形成される第1の再成長層である。具体的には、電子走行層28は、第4の下地層22の上面と、ゲート開口部24の側壁部24b及び底部24aとに沿って略均一な厚さで形成されている。電子走行層28は、例えば、厚さが100nmであるアンドープGaNからなる膜である。
【0064】
電子走行層28は、ゲート開口部24の底部24aにおいてドリフト層14に接触している。電子走行層28は、ゲート開口部24の側壁部24bにおいて、第1の下地層16、第2の下地層18、第3の下地層20及び第4の下地層22の各々の側面に接触している。さらに、電子走行層28は、第4の下地層22の上面に接触している。
【0065】
電子走行層28は、チャネルを有する。具体的には、電子走行層28と電子供給層30との界面の近傍には、二次元電子ガス44が発生する。二次元電子ガス44が電子走行層28のチャネルとして機能する。電子走行層28は、アンドープであるが、Siドープなどにより、n型化してもよい。
【0066】
また、図示しないが、本実施の形態では、電子走行層28と電子供給層30との間に、厚さが1nm程度のAlN膜が第2の再成長層として設けられている。AlN膜は、合金散乱を抑制し、チャネルの移動度を向上させることができる。なお、AlN膜は設けられていなくてもよく、電子走行層28と電子供給層30とは直接接触していてもよい。
【0067】
電子供給層30は、第2の下地層18の上方に、及び、ゲート開口部24の内面に沿って設けられた第2の電子供給層の一例である。電子供給層30は、ゲート開口部24を形成した後に、窒化物半導体の再成長によって形成される第3の再成長層である。なお、電子走行層28と電子供給層30とは、基板12側からこの順で設けられている。電子供給層30は、電子走行層28の上面に沿った形状で略均一な厚さで形成されている。電子供給層30は、例えば、厚さが50nmのアンドープAl0.2Ga0.8Nからなる膜である。
【0068】
電子供給層30は、例えば、厚さが1nmのAlN膜を挟んで、電子走行層28との間でAlGaN/GaNのヘテロ界面を形成している。これにより、電子走行層28内に二次元電子ガス44が発生する。
【0069】
電子供給層30は、電子走行層28に形成されるチャネル(すなわち、二次元電子ガス44)への電子の供給を行う。なお、上述したように、本実施の形態では、第4の下地層22も電子の供給機能を有している。電子供給層30及び第4の下地層22はいずれも、AlGaNから形成されているが、このときのAl組成比は特に限定されない。例えば、電子供給層30のAl組成比は20%であってもよく、第4の下地層22のAl組成比は25%であってもよい。
【0070】
ゲート電極32は、電子供給層30の上方で、かつ、ゲート開口部24を覆うように設けられている。本実施の形態では、ゲート電極32は、電子供給層30の上面に沿った形状で、電子供給層30の上面に接触して略均一な厚さで形成されている。
【0071】
ゲート電極32は、金属などの導電性の材料を用いて形成されている。例えば、ゲート電極32は、パラジウム(Pd)を用いて形成されている。なお、ゲート電極32の材料としては、n型の半導体に対してショットキー接続される材料を用いることができ、例えば、ニッケル(Ni)系材料、タングステンシリサイド(WSi)、金(Au)などを用いることができる。
【0072】
ゲート電極32は、ソース電極36と接触しないように、平面視において離間させて形成されている。具体的には、
図1の(b)に示すように、ゲート電極32は、平面視において、ソース電極36を囲むように設けられている。より具体的には、ゲート電極32は、六角形のソース電極36に相当する開口が複数設けられた一枚の板状に形成されている。
【0073】
本実施の形態では、平面視において、ゲート電極32の端部は、ゲート開口部24の端部よりもソース電極36に近い位置に位置している。具体的には、平面視において、ゲート電極32の内側に、ゲート開口部24が設けられている。つまり、平面視において、ゲート電極32は、ゲート開口部24を完全に覆っている。
【0074】
ソース開口部34は、ゲート電極32から離れた位置において、電子走行層28を貫通し、第2の下地層18にまで達する第2の開口部の一例である。具体的には、ソース開口部34は、電子供給層30、電子走行層28、第4の下地層22及び第3の下地層20をこの順で貫通し、第2の下地層18まで達している。本実施の形態では、
図2に示すように、ソース開口部34の底部34aは、第2の下地層18の上面である。底部34aは、第2の下地層18と第3の下地層20との界面よりも下側に位置している。ソース開口部34は、平面視において、ゲート開口部24から離れた位置に配置されている。
【0075】
図2に示すように、ソース開口部34は、開口面積が略一定に形成されている。具体的には、ソース開口部34の側壁部34bは、基板12の厚み方向に沿って略平行である。例えば、ソース開口部34の断面形状は、矩形である。あるいは、ソース開口部34の断面形状は、ゲート開口部24と同様に、逆台形であってもよい。
【0076】
本実施の形態では、ソース開口部34の開口形状、すなわち、平面視形状は、
図1の(b)に示すように、正六角形である。ソース開口部34の外周を囲むように設けられたゲート電極32との距離は略一定である。ソース開口部34の側壁部34bは、{1-100}面を有する。ここで、{1-100}面は、(1-100)面と、(1-100)面に等価な面とを総称したものである。
【0077】
ソース電極36は、ソース開口部34に設けられている。具体的には、ソース電極36は、ソース開口部34内を充填するように設けられている。
【0078】
ソース電極36は、第2の下地層18に接続されている。ソース電極36は、具体的には、電子供給層30、電子走行層28、第4の下地層22及び第3の下地層20の各々の端面に接続されている。ソース電極36は、電子走行層28及び電子供給層30に対してオーミック接続されている。
【0079】
ソース電極36は、金属などの導電性の材料を用いて形成されている。ソース電極36の材料としては、例えば、Ti/Alなど、n型の半導体層に対してオーミック接続される材料を用いることができる。
【0080】
ソース電極36が第3の下地層20に接続されていることで、第3の下地層20の電位を固定することができる。これにより、窒化物半導体装置10の動作を安定させることができる。
【0081】
また、Alは、p型の窒化物半導体からなる第2の下地層18に対してショットキー接続される。このため、ソース電極36の下層部分には、p型の窒化物半導体に対して低コンタクト抵抗となるPd又はNiなどの仕事関数の大きい金属材料を設けてもよい。これにより、第2の下地層18の電位をより安定させることができる。
【0082】
ドレイン電極38は、基板12の第2の主面12b側に設けられている。具体的には、ドレイン電極38は、第2の主面12bに接触して設けられている。ドレイン電極38は、金属などの導電性の材料を用いて形成されている。ドレイン電極38の材料としては、ソース電極36の材料と同様に、例えばTi/Alなど、n型の半導体層に対してオーミック接続される材料を用いることができる。
【0083】
ゲート電極パッド40は、ゲート電極32と電気的に接続されている。ゲート電極パッド40は、例えば、ゲート電極32より上方に設けられている。本実施の形態では、ゲート電極32が一枚の板状に形成されているので、
図1の(a)に示すように、ゲート電極パッド40は、窒化物半導体装置10の平面視における一部の領域のみに設けられている。ゲート電極パッド40には、ゲート電極32の制御用の電源が接続される。
【0084】
ソース電極パッド42は、複数のソース電極36の各々に電気的に接続されている。ソース電極パッド42は、ソース電極36の上方に設けられている。本実施の形態では、複数のソース電極36がそれぞれ、六角形の島状に形成されている。このため、ソース電極パッド42は、複数のソース電極36の各々を覆うように、窒化物半導体装置10の平面視において、ゲート電極パッド40を除いた大部分の領域に設けられている。
【0085】
以上のように、本実施の形態に係る窒化物半導体装置10では、電子走行層28と電子供給層30との界面がAlGaN/GaNのヘテロ界面となる。これにより、電子走行層28中に二次元電子ガス44が発生し、チャネルが形成される。二次元電子ガス44は、キャリア濃度が高いので、チャネルの移動度が高くなり、動作時の抵抗値(オン抵抗)が低減される。
【0086】
窒化物半導体装置10では、二次元電子ガス46が、ドリフト層14内において、ゲート開口部24の底部24aの近傍から横方向(具体的には、基板12の第1の主面12aに平行な方向)に延びるように形成されている。このため、電子走行層28内の二次元電子ガス44を介して移動する電子は、底部24aの近傍において二次元電子ガス46を通って横方向に広がりやすくなる。このため、ドリフト層14内において、底部24aの直下方向に位置する部分だけでなく、当該部分の外側(平面視において底部24aの外側)に位置する部分も電流の流れる経路として利用可能になる。このため、ソース-ドレイン間電流が、ドリフト層14内の広い領域に拡散されやすくなる。よって、窒化物半導体装置10の動作時の抵抗値を低減することができる。
【0087】
[製造方法]
続いて、本実施の形態に係る窒化物半導体装置10の製造方法について、
図3A~
図3Fを用いて説明する。
図3A~
図3Fは、本実施の形態に係る窒化物半導体装置10の製造方法の各工程を示す断面図である。
【0088】
以下では、窒化物半導体装置10を構成する各窒化物半導体層を、有機金属気相成長(MOVPE:Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)法によって成膜する場合を説明する。なお、窒化物半導体層の成膜方法は、これに限らず、例えば、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法によって成膜してもよい。
【0089】
また、n型の窒化物半導体は、例えばシリコン(Si)を添加することにより形成される。p型の窒化物半導体は、マグネシウム(Mg)を添加することにより形成される。なお、n型不純物及びp型不純物は、これらに限られない。
【0090】
まず、第1の主面12aが(0001)面、すなわち、c面であるn型GaNからなる基板12を準備する。
図3Aに示すように、基板12の第1の主面12a上に、Siをn型不純物として添加したn型GaN膜13、アンドープAl
0.2Ga
0.8NからなるアンドープAlGaN膜15、Mgをp型不純物として添加したp型GaN膜17、アンドープGaN膜19、及び、アンドープAl
0.2Ga
0.8NからなるアンドープAlGaN膜21をこの順で成膜する。なお、n型GaN膜13、アンドープAlGaN膜15、p型GaN膜17、アンドープGaN膜19及びアンドープAlGaN膜21はそれぞれ、所定形状にパターニングされることで、
図2に示すドリフト層14、第1の下地層16、第2の下地層18、第3の下地層20、第4の下地層22になる。
【0091】
各層の厚さ及びキャリア濃度は、例えば、次の通りである。n型GaN膜13は、厚さが8μmであり、キャリア濃度が1×1016cm-3である。アンドープAlGaN膜15は、厚さ20nmである。p型GaN膜17は、厚さが400nmであり、キャリア濃度が1×1017cm-3である。アンドープGaN膜19は、厚さが200nmである。アンドープAlGaN膜21は、厚さ20nmである。なお、これらの数値は一例に過ぎない。
【0092】
次に、
図3Bに示すように、アンドープAlGaN膜21上にレジストを塗布し、塗布したレジストをフォトリソグラフィによってパターニングすることで、レジストマスク90を形成する。レジストマスク90は、ゲート開口部24を形成するためのマスクであり、ゲート開口部24の平面視形状に応じた開口91を有する。
【0093】
次に、
図3Cに示すように、ドライエッチングによって、ゲート開口部24を形成する。ゲート開口部24は、アンドープAlGaN膜21、アンドープGaN膜19及びp型GaN膜17、アンドープAlGaN膜15を貫通しており、n型GaN膜13が露出している。このとき、ゲート開口部24の底部24aは、基板12の第1の主面12aに平行である。ゲート開口部24の側壁部24bは、底部24aに対して、所定の傾斜角で傾斜している。傾斜角は、例えば、20°以上80°以下の範囲である。これにより、側壁部24b上に再成長層を均一な厚さで形成することができるので、チャネルの狭窄が抑えられ、キャリア濃度の低下及びオン抵抗の増加の両方を抑制することができる。
【0094】
次に、レジストマスク90を除去した後、
図3Dに示すように、ゲート開口部24の形状に沿って全面に、アンドープGaN膜27、アンドープAlN膜(図示せず)、及び、アンドープAlGaN膜29を、MOVPE法によってこの順で成膜する。アンドープGaN膜27及びアンドープAlGaN膜29はそれぞれ、所定形状にパターニングされることで電子走行層28及び電子供給層30になる。
【0095】
各層の厚さは、略均一であり、例えば、次の通りである、アンドープGaN膜27は、厚さが100nmである。アンドープAlN膜は、厚さが1nmである。アンドープAlGaN膜29は、厚さが50nmである。なお、これらの数値は一例に過ぎない。
【0096】
次に、ゲート開口部24を覆うように、Pdからなるゲート金属膜を蒸着法又はスパッタリング法などによって成膜する。
図3Eに示すように、成膜したゲート金属膜をパターニングすることで、ゲート電極32を形成する。
【0097】
さらに、
図3Fに示すように、ゲート電極32から離れた位置に、アンドープAlGaN膜29、アンドープAlN膜(図示せず)、アンドープGaN膜27、アンドープAlGaN膜21、及び、アンドープGaN膜19を貫通し、p型GaN膜17にまで達するソース開口部34を形成する。ソース開口部34の形成は、ゲート開口部24と同様に、フォトリソグラフィ及びドライエッチングによって形成される。アンドープAlGaN膜29、アンドープGaN膜27、アンドープAlGaN膜21、アンドープGaN膜19及びp型GaN膜17がそれぞれパターニングされることで、電子供給層30、電子走行層28、第4の下地層22、第3の下地層20及び第2の下地層18が形成される。
【0098】
続いて、ソース開口部34を埋めるように、TiとAuとからなるソース金属膜を蒸着法又はスパッタリング法などによって成膜し、パターニングすることで、ソース電極36を形成する。さらに、基板12の第2の主面12bに、TiとAlとからなるドレイン金属膜を蒸着法又はスパッタリング法などによって成膜し、必要に応じてパターニングすることで、ドレイン電極38を形成する。
【0099】
以上の工程を経て、
図2に示す窒化物半導体装置10が形成される。
【0100】
なお、ゲート電極32及びソース電極36を形成した後、絶縁膜を成膜し、複数のソース電極36の各々の一部、及び、ゲート電極32の一部を露出させるコンタクトホールを、成膜した絶縁膜に形成する。その後、金属膜を成膜してパターニングすることで、ゲート電極パッド40及びソース電極パッド42が形成される。
【0101】
[変形例]
ここで、本実施の形態に係る窒化物半導体装置10の変形例について説明する。
【0102】
[変形例1]
図4は、変形例1に係る窒化物半導体装置110の断面図である。
図4に示されるように、窒化物半導体装置110は、
図2に示される窒化物半導体装置10と比較して、高抵抗層126を新たに備える点が相違する。以下では、実施の形態との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0103】
高抵抗層126は、ゲート開口部24において第2の下地層18と電子走行層28との間に設けられている。本変形例では、高抵抗層126は、第1の下地層16と電子走行層28との間にも設けられている。具体的には、高抵抗層126は、ゲート開口部24の側壁部24bから底部24aの一部に亘って設けられている。より具体的には、高抵抗層126は、ゲート開口部24の上端部、すなわち、第4の下地層22の上面の一部から、底部24aの一部に至るまで、側壁部24bの全面を覆うように設けられている。つまり、高抵抗層126は、第1の下地層16、第2の下地層18、第3の下地層20及び第4の下地層22の各々と電子走行層28との間に設けられている。
【0104】
例えば、
図4に示すように、高抵抗層126の上端部の上面は、第4の下地層22の上面と面一である。また、高抵抗層126の下端部の上面は、ドリフト層14の上面のうち、底部24aを形成する部分と面一である。高抵抗層126は、第4の下地層22の表層部分及び端面部分、第3の下地層20の端面部分、第2の下地層18の端面部分、第1の下地層16の端面部分、並びに、ドリフト層14の表層部分の各々に埋め込まれたように形成されている。
【0105】
高抵抗層126は、第2の下地層18よりも抵抗値が高い。本変形例では、高抵抗層126は、第3の下地層20よりも抵抗値が高い。
【0106】
高抵抗層126は、窒化物半導体からなる。本変形例では、高抵抗層126は、鉄(Fe)を含んでいる。高抵抗層126は、例えば、鉄がドープされ、高抵抗化されたGaNからなる。高抵抗層126の厚さは、例えば50nmである。
【0107】
ここで、本変形例に係る窒化物半導体装置110の製造方法について、
図5A及び
図5Bを用いて説明する。
図5A及び
図5Bは、本変形例に係る窒化物半導体装置110の製造方法を示す断面図である。
【0108】
本変形例に係る窒化物半導体装置110の製造方法は、ゲート開口部24を形成するまでの工程が実施の形態1に係る窒化物半導体装置10と同様である。
図3Cに示されるゲート開口部24を形成した後、レジストマスク90を除去する。その後、アンドープAlGaN膜21上、及び、ゲート開口部24内に再びレジストを塗布する。
図5Aに示すように、塗布したレジストをフォトリソグラフィによってパターニングすることで、レジストマスク192を形成する。
【0109】
レジストマスク192は、高抵抗層126を形成するためのマスクである。レジストマスク192は、ゲート開口部24の側壁部24bより大きな開口193を有する。開口193は、側壁部24bの上端からアンドープAlGaN膜21の上面の一部から底部24aの一部にかけて設けられ、平面視において、少なくとも側壁部24bの全体を露出させている。
【0110】
次に、レジストマスク192の開口193に露出した部分に、鉄イオンのイオン注入を行うことで、
図5Bに示すように、高抵抗層126を形成する。高抵抗層126は、アンドープAlGaN膜21、アンドープGaN膜19、p型GaN膜17、アンドープAlGaN膜15及びn型GaN膜13の各々の、開口193に露出した部分に鉄がドープされた層である。なお、n型GaN膜13の高抵抗層126を除いた部分がドリフト層14になる。
【0111】
イオン注入の注入条件は、例えば加速エネルギー40keV、ドーズ量1×1014cm-2である。これにより、約50nmの厚さの高抵抗層126が形成される。鉄イオンが注入された領域、すなわち、高抵抗層126は、結晶構造が破壊されてアモルファス状態になることにより、高抵抗化される。
【0112】
このとき、鉄イオンの代わりに、例えば、チタンイオン、クロムイオン、銅イオン又はニッケルイオンなどの、原子番号が大きい金属のイオンを利用してもよい。これにより、後工程における加熱処理による高抵抗層126の再結晶化を抑制することができ、高抵抗層126の抵抗値が大きくなる。
【0113】
高抵抗層126を形成した後の工程は、実施の形態1に係る窒化物半導体装置10と同様である。具体的には、高抵抗層126を形成した後、
図3Dに示すように、アンドープGaN膜27、アンドープAlN膜(図示せず)及びアンドープAlGaN膜29を順に再成長によって成膜する。なお、高抵抗層126が窒化物半導体で形成されているので、アンドープGaN膜27、アンドープAlN膜(図示せず)及びアンドープAlGaN膜29の再成長による膜質が高められる。
【0114】
以上のように、本変形例では、電子走行層28と第2の下地層18との間に高抵抗層126が設けられているので、ソース電極36から、第2の下地層18及び電子走行層28を通ってゲート電極32に至るリーク電流を抑制することができる。このように、本変形例によれば、リーク電流が抑制された窒化物半導体装置110が実現される。
【0115】
なお、レジストマスク192は、開口193が側壁部24bにおいてp型GaN膜17のみを露出させるように形成されてもよい。つまり、開口193の平面視形状は、p型GaN膜17とアンドープGaN膜19との境界、及び、p型GaN膜17とアンドープAlGaN膜15との境界に一致していてもよい。あるいは、レジストマスク192は、開口193が側壁部24bにおいてp型GaN膜17の全体とアンドープAlGaN膜15の全体とを露出させるように形成されてもよい。開口193が側壁部24bにおいてp型GaN膜17の全体を露出させることにより、p型GaN膜17の側壁部24bに露出する部分を確実に覆うように高抵抗層126を形成することができる。
【0116】
[変形例2]
図6は、変形例2に係る窒化物半導体装置210の断面図である。
図6に示されるように、窒化物半導体装置210は、
図2に示す窒化物半導体装置10と比較して、閾値制御層248を備える点が相違する。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0117】
閾値制御層248は、ゲート電極32と電子走行層28との間に設けられた、第2の導電型の第2の窒化物半導体層の一例である。閾値制御層248は、電子供給層30上に設けられ、電子供給層30とゲート電極32とに接触している。
【0118】
本変形例では、基板12を平面視した場合に、閾値制御層248の端部は、ゲート電極32の端部よりもソース電極36に近い位置に位置している。閾値制御層248とソース電極36とは離間しており、接触していない。
【0119】
閾値制御層248は、例えば、厚さが100nmであり、キャリア濃度が1×1017cm-3であるp型のAl0.2Ga0.8Nからなる窒化物半導体層である。閾値制御層248は、電子供給層30を形成するアンドープAlGaN膜29の成膜から引き続いてMOVPE法によって成膜され、パターニングされることで形成される。
【0120】
本変形例によれば、閾値制御層248によって、チャネル部分の伝導帯端のポテンシャルが持ち上げられる。このため、窒化物半導体装置210の閾値電圧を大きくすることができる。したがって、窒化物半導体装置210をノーマリオフ型のFETとして実現することができる。
【0121】
なお、閾値制御層248は、絶縁性材料を用いて形成されていてもよい。つまり、閾値制御層248は、絶縁層であってもよい。
【0122】
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2について説明する。実施の形態2では、実施の形態1と比較して、第1の電子走行層が2層構造を有する点が相違する。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0123】
図7は、本実施の形態に係る窒化物半導体装置310の断面図である。
図7に示されるように、窒化物半導体装置310は、
図2に示す窒化物半導体装置10と比較して、ドリフト層14の代わりに電子走行層314を備える点が相違する。
【0124】
電子走行層314は、第1の電子走行層の一例である。電子走行層314は、ドリフト層314aと、アンドープ窒化物半導体層314bとを含む。
【0125】
ドリフト層314aは、第1の導電型の第3の窒化物半導体層の一例であり、実施の形態1に係るドリフト層14とほぼ同じである。本実施の形態では、ドリフト層314aには、ゲート開口部24が到達していない点のみが相違する。このため、ドリフト層314aの上面は平坦である。
【0126】
アンドープ窒化物半導体層314bは、ドリフト層314aと第1の下地層16との間に位置するアンドープの第4の窒化物半導体層の一例である。アンドープ窒化物半導体層314bは、具体的には、アンドープGaNからなる膜である。アンドープ窒化物半導体層314bの膜厚は、例えば200nmであるが、これに限定されない。
【0127】
アンドープ窒化物半導体層314bは、第1の下地層16に接触しており、第1の下地層16との間でAlGaN/GaNのヘテロ界面を形成している。これにより、アンドープ窒化物半導体層314b内に二次元電子ガス46が発生する。
【0128】
ドリフト層314a及びアンドープ窒化物半導体層314bは、例えば、次のような方法で形成される。具体的には、
図3Aに示す製造工程において、n型GaN膜13を成膜した後、アンドープAlGaN膜15を成膜する前に、アンドープGaN膜を成膜する。その後、
図3Cに示す製造工程において、アンドープGaN膜を露出させるように、ゲート開口部24を形成する。このため、本実施の形態では、ゲート開口部24の底部24aは、アンドープ窒化物半導体層314bの上面になる。
【0129】
本実施の形態によれば、アンドープ窒化物半導体層314b内に形成される二次元電子ガス46によって、電子が横方向に広がる。したがって、実施の形態1と同様に、ソース-ドレイン間電流が、ドリフト層314a内の広い領域に拡散されやすくなる。また、アンドープ窒化物半導体層314bは、不純物が少ないので、電子移動度を高めることができる。よって、窒化物半導体装置310の動作の高速化が実現される。
【0130】
(実施の形態3)
続いて、実施の形態3について説明する。実施の形態3では、実施の形態1と比較して、第1の電子走行層が2層構造を有し、かつ、第1の電子供給層を備えない点が相違する。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0131】
図8は、本実施の形態に係る窒化物半導体装置410の断面図である。
図8に示されるように、窒化物半導体装置410は、
図2に示す窒化物半導体装置10と比較して、ドリフト層14の代わりに電子走行層414を備える点が相違する。また、窒化物半導体装置410は、第1の下地層16を備えない。
【0132】
電子走行層414は、第1の電子走行層の一例である。電子走行層414は、低濃度層414aと、高濃度層414bとを含む。
【0133】
低濃度層414aは、第1の導電型の第3の窒化物半導体層の一例であり、実施の形態1に係るドリフト層14とほぼ同じである。本実施の形態では、低濃度層414aには、ゲート開口部24が到達していない点のみが相違する。このため、低濃度層414aの上面は平坦である。
【0134】
高濃度層414bは、低濃度層414aと第2の下地層18との間に位置し、低濃度層414aよりも不純物濃度が高い第4の窒化物半導体層の一例である。高濃度層414bは、具体的には、低濃度層414aよりもn型不純物の濃度が高いn型のGaNからなる膜である。高濃度層414bのキャリア濃度は、例えば、1×1018cm-3以上であるが、これに限定されない。高濃度層414bの膜厚は、低濃度層414aの膜厚より小さく、例えば1μm未満であるが、これに限定されない。低濃度層414aの膜厚を高濃度層414bより厚くすることにより、窒化物半導体装置の耐圧を高めることができる。
【0135】
高濃度層414bは、第2の下地層18に接触している。本実施の形態では、低濃度層414a、高濃度層414b、第2の下地層18のいずれもバンドギャップの差が小さく、ヘテロ界面が形成されない。このため、
図2などに示した二次元電子ガス46が発生しない。
【0136】
二次元電子ガス46は発生しないが、高濃度層414bは、n型不純物の濃度が高いので、抵抗が小さい。このため、電子は、高濃度層414b内を横方向に広がる。したがって、実施の形態1と同様に、ソース-ドレイン間電流が、高濃度層414b及び低濃度層414a内の広い領域に拡散されやすくなる。
【0137】
低濃度層414a及び高濃度層414bは、例えば、次のような方法で形成される。具体的には、
図3Aに示す製造工程において、n型GaN膜13を成膜した後、アンドープAlGaN膜15を成膜する前に、n型GaN膜13よりも不純物濃度が高いn型GaN膜を成膜する。その後、
図3Cに示す製造工程において、不純物濃度が高いn型GaN膜を露出させるように、ゲート開口部24を形成する。このため、本実施の形態では、ゲート開口部24の底部24aは、高濃度層414bの上面になる。
【0138】
本実施の形態によれば、高濃度層414bの抵抗が小さいので、電子が横方向に広がりやすい。したがって、実施の形態1と同様に、ソース-ドレイン間電流が、電子走行層414内の広い領域に拡散されやすくなる。よって、動作時の抵抗値をより低減することができる。
【0139】
(他の実施の形態)
以上、1つ又は複数の態様に係る窒化物半導体装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、及び、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【0140】
例えば、上記の各実施の形態では、第1の導電型がn型であり、第2の導電型がp型である例について示したが、これに限らない。第1の導電型がp型であり、第2の導電型がn型でもよい。
【0141】
また、例えば、高抵抗層126は、電子走行層28と第2の下地層18との間にのみ設けられていてもよい。例えば、高抵抗層126は、ゲート開口部24の側壁部24bの一部にのみ設けられていてもよく、第1の下地層16、第3の下地層20及び第4の下地層22の端面を覆っていなくてもよい。
【0142】
また、例えば、平面視において、ゲート電極32の端部は、ゲート開口部24の端部と一致していてもよい。あるいは、平面視において、ゲート電極32は、ゲート開口部24の内側に設けられていてもよい。
【0143】
また、例えば、上記の実施の形態では、第2の下地層18にまで達するソース開口部34を設けたが、これに限らない。例えば、ソース開口部34は、電子走行層28にまで達する開口部であってもよく、ソース電極36は、電子走行層28に接続され、第2の下地層18には接続されていなくてもよい。
【0144】
また、例えば、第1の電子走行層の一例であるドリフト層14は、第2の電子走行層の一例である電子走行層28と同じ組成であってもよい。あるいは、ドリフト層14の炭素濃度は、電子走行層28の炭素濃度より高くてもよい。例えば、ドリフト層14の炭素濃度は、1018cm-3オーダーであり、電子走行層28の炭素濃度は1016cm-3オーダーであってもよい。ドリフト層14の炭素濃度を高くすることにより、窒化物半導体装置10の耐圧を高めることができる。
【0145】
また、ドリフト層14内で炭素濃度は、均一でなくてもよい。例えば、ドリフト層14の表層部分、すなわち、第1の下地層16との界面近傍では、炭素濃度が低くてもよい。これにより、二次元電子ガス46の発生を促進させ、チャネル移動度を高めることができるので、電流を拡散させやすくすることができる。
【0146】
また、例えば、窒化物半導体装置の平面レイアウトは、
図1に示される例に限らない。例えば、ソース電極36は、平面視形状が、一方向に延びる長方形であってもよい。複数のソース電極36が、短手方向に並んでいてもよい。この場合、短手方向がII-II線に沿った方向に相当する。
【0147】
また、上記の各実施の形態は、請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本開示は、抵抗値の小さい窒化物半導体装置として利用でき、例えば、テレビなどの民生機器の電源回路などで用いられるパワートランジスタなどに利用することができる。
【符号の説明】
【0149】
10、110、210、310、410 窒化物半導体装置
11 単位セル
12 基板
12a 第1の主面
12b 第2の主面
13 n型GaN膜
14、314a ドリフト層
15、21、29 アンドープAlGaN膜
16 第1の下地層
17 p型GaN膜
18 第2の下地層
19、27 アンドープGaN膜
20 第3の下地層
22 第4の下地層
24 ゲート開口部
24a、34a 底部
24b、34b 側壁部
28、314、414 電子走行層
30 電子供給層
32 ゲート電極
34 ソース開口部
36 ソース電極
38 ドレイン電極
40 ゲート電極パッド
42 ソース電極パッド
44、46 二次元電子ガス
90、192 レジストマスク
91、193 開口
126 高抵抗層
248 閾値制御層
314b アンドープ窒化物半導体層
414a 低濃度層
414b 高濃度層