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特許7605776TDDワイヤレス通信システムにおけるダウンリンク/アップリンク動作モードの切替のための回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】TDDワイヤレス通信システムにおけるダウンリンク/アップリンク動作モードの切替のための回路
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/48 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
H04B1/48
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021574944
(86)(22)【出願日】2020-07-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(86)【国際出願番号】 IB2020056472
(87)【国際公開番号】W WO2021005555
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】102019000011475
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】520107582
【氏名又は名称】テコ テレコム エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】デュランテ,ダヴィデ
(72)【発明者】
【氏名】ノタルジャコモ,マッシモ
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/154659(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/125424(WO,A1)
【文献】特開平05-252074(JP,A)
【文献】特開2012-120230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/40 - 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TDDワイヤレス通信システムでダウンリンク/アップリンク動作モードの切替のための回路(C)であって、TDDワイヤレス通信システムにおける、RFのフロントエンド装置ダウンリンク経路(DL)の電力増幅器(PA)に動作可能に接続された、少なくとも1つの電界効果トランジスタ(RF FET)を含み、
なくとも1つの、大容量の第1の抵抗器(Rhold)に接続された、第1の電圧発生器(VgsOFF)と、
第2の抵抗器(RGate)に接続された、第2の電圧発生器(VGate)と、
第1端がグランドに接続された、少なくとも1つの、大容量のホールドコンデンサ(Chold)と、
前記第1の電圧発生器(VgsOFF)が、前記電界効果トランジスタ(RF FET)のゲート(G)に接続され、かつ前記ホールドコンデンサ(Choldの第2端が前記第1の抵抗器(Rhold)を介して前記第1の電圧発生器(VgsOFF)に接続された、受信(Rx)構成、及び、前記電界効果トランジスタ(RF FET)の前記ゲート(G)が、前記ホールドコンデンサ(Choldの第2端に接続され、かつ前記ホールドコンデンサ(Choldの第2端が、前記第2の抵抗器(RGate)を介して前記第2の電圧発生器(VGate)に接続された、送信(Tx)構成、との間で切り替えられるよう構成された、サンプルホールド回路と、
を備えることを特徴とする、回路(C)。
【請求項2】
前記サンプルホールド回路は、前記電界効果トランジスタ(RF FET)の前記ゲート(G)に接続された第1の電子スイッチ(SW1)を備え、前記ゲート(G)が、前記受信(Rx)構成において前記第1の電圧発生器(VgsOFF)に接続されるよう、及び前記送信(Tx)構成において前記ホールドコンデンサ(Choldの第2端に接続されるよう、構成されることを特徴とする、請求項1に記載の回路(C)。
【請求項3】
前記サンプルホールド回路は、前記ホールドコンデンサ(Choldの第2端に接続された第2の電子スイッチ(SW2)を備え、前記第2端が、前記受信(Rx)構成において、前記第1の抵抗器(Rhold)を介して前記第1の電圧発生器(VgsOFF)に接続されるよう、及び前記送信(Tx)構成において、前記第2の抵抗器(RGate)を介して前記第2の電圧発生器(VGate)に接続されるよう、構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の回路(C)。
【請求項4】
前記第1の電圧発生器(VgsOFF)は、前記電界効果トランジスタ(RF FET)のゲート・ソース間の閾値電圧(Vgsth)よりも低い一定の値に維持されることを特徴とする、請求項1~3のうちいずれか一項に記載の回路(C)。
【請求項5】
前記ホールドコンデンサ(Chold)及び前記第1の抵抗器(Rhold)は、経時的なコンデンサの電圧値(Vchold)の変動(Vripple)を最小にすることによってが決められることを特徴とする、請求項1~4のうちいずれか一項に記載の回路(C)。
【請求項6】
前記ホールドコンデンサ(Chold)及び前記第1の抵抗器(Rhold)は、前記ホールドコンデンサ(Chold)の電圧値(Vchold)を、前記システムがTx構成で無期限に作動するときに到達する電圧上限値として定められた、ゲート・ソース間の電圧の安定した値(Vgs_SS)に可能な限り近く維持することによって、が決められることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の回路(C)。
【請求項7】
前記ホールドコンデンサ(Chold)及び前記第1の抵抗器(Rhold)は、前記受信(Rx)構成における前記ホールドコンデンサ(Chold)の放電フェーズを表わし、
【数1】
ここで、
rippleは、前記ホールドコンデンサ(Chold)の電圧値(Vchold)の変動であり、
choldは、前記ホールドコンデンサ(Chold)の電圧値であり、
VgsOFFは、前記第1の電圧発生器の電圧値であり、
ULは、TDD用途の3GPP(登録商標)規格におけるUL期間の最大持続時間であり、
holdは、前記第1の抵抗器の値であり、
holdは、前記ホールドコンデンサの値であり、
前記ホールドコンデンサ(C hold )及び前記第1の抵抗器(R hold )は、上記の式を、最小にするように値が決められることを特徴とする、請求項1~6のうちいずれか一項に記載の回路(C)。
【請求項8】
前記ホールドコンデンサ(Chold)及び前記第2の抵抗器(R Gate は、前記送信(Tx)構成の間における前記ホールドコンデンサ(Chold)の充電フェーズを表わし、
【数2】
ここで、
rippleは、前記ホールドコンデンサ(Chold)の電圧値(Vchold)の変動であり、
gs_SSは、前記システムが送信(Tx)構成において無期限に作動するときに到達する電圧の上限値として定められた、Vgsの安定した値であり、
choldは、ダウンリンク期間の始めに得られたホールドコンデンサ(Chold)の電圧値であり、
DLは、TDD用途の3GPP(登録商標)規格におけるダウンリンク期間の最小持続時間であり、
gate は、前記第2の抵抗器(R Gate の値であり、
holdは、前記ホールドコンデンサの値であり、
前記ホールドコンデンサ(C hold )及び前記第2の抵抗器(R Gate )は、上記の式を、最小にするように値が決められることを特徴とする、請求項1~7のうちいずれか一項に記載の回路(C)。
【請求項9】
少なくとも1つの電力増幅器(PA)が設けられた少なくとも1つのダウンリンク経路(DL PATH)、少なくとも1つの低ノイズ増幅器(LNA)が設けられた少なくとも1つのアップリンク経路(UL PATH)、ならびに前記ダウンリンク経路(DL PATH)及び前記アップリンク経路(UL PATH)に接続された、少なくとも1つのアンテナ(ANT)、を備えるTDDワイヤレス通信システム(S)であって、
前記電力増幅器(PA)及び前記アンテナ(ANT)の間に動作可能に挟まれた、請求項1~8のうちいずれか一項に記載の、ダウンリンク/アップリンク動作モードの切替のための、回路(C)と、
前記低ノイズ増幅器(LNA)に接続された受信(Rx)構成、及び前記低ノイズ増幅器(LNA)から接続解除された送信(Tx)構成、との間で切り替えられるよう構成され、前記アップリンク経路(UL PATH)に設置され、かつ前記回路(C)に接続された、少なくとも1つのRFスイッチ(RF SWITCH)と、
を備えることを特徴とする、TDDワイヤレス通信システム(S)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TDDワイヤレス通信システムにおけるダウンリンク/アップリンク動作モードの切替のための回路に関する。
【背景技術】
【0002】
遠距離通信の分野において、DL/UL(ダウンリンク/アップリンク)動作モード、すなわちTx/Rx(送信/受信)の効率的かつ迅速な切替は、時分割二重化(TDD)信号を扱うとき、最も重要であることが知られている。
【0003】
詳細には、システムがTxモードにあるとき、DLにおけるPA(電力増幅器)はオンにされるべきであり、これは、熱補償のために埋め込まれた熱追跡装置が装備されたLDMOSトランジスタを配置することによって実現することができる。
【0004】
アンテナポートに高分離RFスイッチを伴って設計された、高レベル規格のTDD RFのフロントエンドの例が、図1に示される。
【0005】
特に、RF電力増幅器の設計段階中に考慮すべき重要な態様は、温度による性能の変動であることが知られている。この点において、制御するための主なパラメートの1つは、広い温度範囲にわたり一定に維持するよう努める、静止電流である。それは、この種の設計において大きな困難である。
【0006】
静止電量は、作動温度と共に上昇する傾向があり、その影響は直線性を減少させる。この困難を克服するために、トランジスタ製造者は、静止電流熱追跡回路T(有効電力LDMOSの近くに位置された、小型の集積LDMOS FET)を、最新のRF電力集積回路に埋め込んだ。
【0007】
熱追跡デバイスTの例が、図2に示される。
【0008】
一定の電流源がゲート電圧Vに加えられたとき、熱追跡RF FETは、一定のゲート電流Iを取り出し、温度が変化したとき、ゲート・ソース間の電圧VGSは、ゲート電流Iを一定に維持するために変化する。その結果LDMOS電力FETは、変化するゲート電圧VGSを見込み、その静止電流IDQも、温度を通して一定に維持する。
【0009】
しかし、熱追跡デバイスTの存在は、3GPP規格で定められたTx/Rx切替時間(概ね1マイクロ秒)内で、トランジスタの完全なシャットダウンを可能にしない。
【0010】
これは、アンテナポートに位置され、TDD同期信号によって駆動されるRFスイッチが、TxとRxとの間で通信することを必要とされ、高分離性能を伴って設計しなければならないことを意味する(図1参照)。
【0011】
しかし上記のソリューションには、いくつかの欠点が知られている。
【0012】
第1の欠点は、構成要素の高いコストに関係する。詳細には、RFスイッチのための高い分離要求による、高いコストである。
【0013】
別の欠点は、DL経路における効率の損失に関係する。特に、PAの後にRFスイッチを導入すると、DL経路の挿入損失を増加させ、そのためシステム全体の効率を低下させる。
【0014】
さらに、公知のソリューションは、システムの信頼性を低下させる。低下した信頼性は、RFスイッチが高い電力レベルに対応するためである。
【0015】
最後に、公知のソリューションによって実現されたシステムは、電力消費が大きい。特に、PAは完全にオフにならず、Rx時間スロットの間も休止電力を取り出す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の主な目的は、TDDワイヤレス通信システムにおけるDL/UL(ダウンリンク/アップリンク)動作モードの、効果的かつ迅速な切替のための回路を提供することである。
【0017】
詳細には、システムがTxモードにあるとき、及び時分割二重化(TDD)信号に対応するときに、本発明による回路は、規格によって定められた厳格な時間要求に従って、埋め込まれた熱追跡デバイスを装備したLDMOSトランシスタの、オン/オフを可能にする。
【0018】
本発明の別の目標は、使用する構成要素の全体コストを低減させるのを可能にする、TDDワイヤレス通信システムにおけるダウンリンク/アップリンク動作モードの切替のための回路を、提供することである。
【0019】
本発明の別の目標は、DL経路の効率の損失を低減させるのを可能にする、TDDワイヤレス通信システムにおけるダウンリンク/アップリンク動作モードの切替のための回路を、提供することである。
【0020】
本発明の別の目標は、システムの信頼性を向上させるのを可能にする、TDDワイヤレス通信システムにおけるダウンリンク/アップリンク動作モードの切替のための回路を、提供することである。
【0021】
本発明の別の目標は、電力消費を低減させるのを可能にする、TDDワイヤレス通信システムにおけるダウンリンク/アップリンク動作モードの切替のための回路を、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上述の目標は、請求項1の特徴によるTDDワイヤレス通信システムにおけるダウンリンク/アップリンク動作モードの切替のための、本回路によって実現される。
【0023】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図において非限定の表示として例示した、好ましいが排他的ではない、TDDワイヤレス通信システムにおけるダウンリンク/アップリンク動作モードの切替のための回路における実施形態の説明から、より明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】公知のソリューションによる、アンテナポートに高分離RFスイッチを伴って設計された、高レベル規格のTDD RFのフロントエンドを示す図である。
図2】公知のソリューションによる、熱追跡デバイスを示す図である。
図3】本発明による、アンテナポートに高分離RFスイッチを伴って設計された、高レベル規格のTDD RFのフロントエンドを示す図である。
図4】Rx動作モード構成における、RF LDMOS作動/作動停止のための切替回路の、高レベル電気方式を示す図である。
図5】Rx動作モード構成における等価回路を示す図である。
図6】Tx動作モード構成における、RF LDMOS作動/作動停止のための切替回路の、高レベル電気方式を示す図である。
図7】Tx動作モード構成における等価回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
これらの例示を詳細に参照すると、全体的に参照記号Cで示されるのは、TDDワイヤレス通信システムにおけるダウンリンク/アップリンク動作モードの切替のための回路である。
【0026】
本発明による回路Cは、高レベルTDD RFのフロントエンドにおいて、アンテナポートにおけるRFスイッチを取り除き、図3に示されるように、RFスイッチをUL経路でLNAの前に設置するのを可能にし、それによって公知のソリューションにおける全ての課題に対処する。
【0027】
特に、回路Cは、電力増幅器LDMOS FETのゲート電圧に作用するよう設計され、その一方でドレーン電圧は一定に維持される。
【0028】
高レベルの観点から、本発明による回路Cは:
-電力増幅器LDMOSの静止ドレーン電流を設定するための、電圧発生器と;
-電圧源に直列で接続された、大容量抵抗器と;
-TDD規格の同期信号及びホールドコンデンサによって駆動される、2つのアナログスイッチを備えた、サンプルホールド回路と、
を備える。
【0029】
この回路Cは、埋め込まれた熱追跡デバイスが、正しく機能するためにLDMOSのゲートポートにおいて直列で大きい抵抗器を必要としても、非常に限定された時間間隔において、LDMOSの電力増幅器PAが完全にシャットダウンするのを可能にする。
【0030】
抵抗器は、ゲートポートに供給する電流を制限して、LDMOSの状態を変え(すなわちオンからオフ、及びその逆)、それによって作動/作動停止時間を増加させ、3GPP規格の制限を超過する。
【0031】
さらに、長い整流期間は、周囲の回路構成要素の敏感な寄生効果を非常に重く生じさせ、より大きいドレーン電流の減衰振動をもたらす可能性がある(そのモジュールは、最大LDMOS電流をよりも大幅に大きく成り得る)。
【0032】
TDDの状況に注目すると、電力増幅器PAを実現するために使用されるRF LDMOSは、Txフェーズ(DL期間)の間のみ作動させる必要がある。電力増幅器PAの出力における熱雑音の考えられる源を除去しながら、システム全体の効率を向上させるための、1つの選択肢は、静止電流IDQを最小にすることによって、RXフェーズ(ULフェーズ)の間にRF LDMOSをオフにすることである。
【0033】
この難題は、熱追跡デバイスを装備したRF FETを使用して、一方でTXからRXフェーズへの移行におけるレイテンシを、3GPP規格によって要求されるように1マイクロ秒未満に維持するよう実現することである。
【0034】
提案する本発明は、上記の課題に対処するよう回路Cを実現化する。その高いレベルの電気的表現は、Rx及びTxの動作モードそれぞれに対して、図4及び図6に示される。
【0035】
回路Cは、TDDワイヤレス通信システムにおけるRFのフロントエンド装置のダウンリンク経路(DL)において、電力増幅器PAに動作可能に接続された、少なくとも1つの電界効果トランジスタRF FETを備える。
【0036】
さらに回路Cは:
-少なくとも1つの大容量の第1の抵抗器Rholdに接続された、第1の電圧発生器VgsOFFと;
-第2の抵抗器RGateに接続された、第2の電圧発生器VGateと;
-少なくとも1つの、大容量ホールドコンデンサCholdと;
-サンプルホールド回路と、
を備える。
【0037】
詳細には、サンプルホールド回路は:
-第1の電圧発生器VgsOFFが電界効果トランジスタRF FETのゲートGに接続され、かつ大容量コンデンサCholdが、第1の抵抗器Rholdを介して第1の電圧発生器VgsOFFに接続された、受信(Rx)構成と、
-電界効果トランジスタRF FETのゲート(G)が、ホールドコンデンサCholdに接続され、かつホールドコンデンサCholdが、第2の抵抗器RGateを介して第2の電圧発生器VGateに接続された、送信(Tx)構成と、
の間で切り替えられるよう構成される。
【0038】
回路Cの好ましい実施形態によると、サンプルホールド回路は、電界効果トランジスタRF FETのゲートGに接続された第1の電子スイッチSW1を備え、受信構成において第1の電圧発生器VgsOFFに接続されるよう、及び送信構成においてホールドコンデンサCholdに接続されるよう、構成される。
【0039】
さらに、サンプルホールド回路は、ホールドコンデンサCholdに接続された第2の電子スイッチSW2を備え、受信構成において第1の抵抗器Rholdを介して第1の電圧発生器VgsOFFに接続されるよう、及び送信構成において第2の抵抗器RGateを介して第2の電圧発生器VGateに接続されるよう、構成される。
【0040】
詳細には、TDD RXフェーズ(図4)の間、電界効果トランジスタRF FETのゲートGは、TDD同期信号(TDD CRTL)によって駆動される第1の電子スイッチSW1を介して、第1の電圧発生器VgsOFFに接続される。
【0041】
第1の電圧発生器VgsOFFは、電界効果トランジスタRF FETにおけるゲート・ソース間の閾値電圧Vgsth未満の一定値に維持される。RF FETにおけるゲート・ソース間の閾値電圧Vgsthは、作動される電界効果トランジスタRF FETに対応した電圧レベル(すなわちドレーンからソースまで流れる小さい電流量)として定められる。
【0042】
これらの条件において、電界効果トランジスタRF FETのドレーン電流Iは、ゼロに近い。
【0043】
第2の電気スイッチSW2は、大容量コンデンサCholdを、大容量の第1の抵抗器Rhold(ホールド抵抗器)を介して、第1の電圧発生器VgsOFFに接続する。
【0044】
第1の抵抗器Rholdは、ホールドコンデンサCholdの放電時間を制御するのを可能にし、それはTDDフレーム期間より大きい等級のいくつかのオーダをもたらす。このように、Vchold=VgsONは、システムが安定したとき(すなわち当初の移行フェーズ以外)、RXフェーズ全体にわたってほぼ一定である。ここでVcholdは、ホールドコンデンサCholdにわたる電圧値である。
【0045】
有利には、第1の(ホールド)抵抗器Rholdの存在は、システムがいかなる信号も供給されない(TDD CTRLがサンプルホールド回路に導かれない)とき、回路Cは定められた時間量において、すなわちホールドコンデンサCholdがその放電フェーズを完了し、システムが最後の作動状態(TxまたはRxのいずれか)を維持しない場合、アイドル状態に達することを保証する。
【0046】
TXフェーズ(図6を参照)の間、電界効果トランジスタRF FETのゲートは、TDD同期信号(TDD CRTL)によって駆動される第1の電子スイッチSW1を介して、大容量ホールドコンデンサCholdに接続される。第2の電気スイッチSW2は、ホールドコンデンサCholdを、適切なサイズの第2の抵抗器RGateを介して、第2の電圧発生器VGateに接続する。
【0047】
詳細には、第2の電圧発生器VGate及び第2の抵抗器RGateは直列に接続され、等価電流発生器として挙動して、温度を通してトランジスタRF FETの静止電流Iを一定に維持するのを可能にする。
【0048】
ホールドコンデンサChold及び第1のホールド抵抗器Rholdの適切な寸法決めを実現するために、満たすべき第1の条件は、Vrippleとして定められる経時的なコンデンサの電圧値Vcholdの変動を、最小にすることである。
【0049】
同時に、コンデンサの電圧値Vcholdは、可能な限りVgsの安定した値Vgs_SSに近付けるべきである。Vgs_SSは、システムがTx構成において無期限に作動するときに到達する、電圧の上限値として定められる。
【0050】
電圧の変動Vrippleは、Rx動作構成のときの、ホールドコンデンサCholdの放電フェーズを表わす式を介して計算される。この場合、サンプルホールド回路は、図5に示されるものと同等の構成を実現し、電圧の変動Vrippleは以下で定められる。
【0051】
【数1】
【0052】
ここで、tULは、TDD用途の3GPP規格におけるUL期間の最大持続時間、すなわち最悪の条件であり、Vcholdは、UL期間の始めに得られた値である。
【0053】
chold及びVgsOFFについて、目的は、ホールドコンデンサChold及びホールド抵抗器Rholdの最適な選択のために、電圧の変動Vrippleを最小にすることである。
【0054】
好ましくは、ホールドコンデンサCholdは、通信フェーズの間に起こり得る寄生効果を無視するために、トランジスタRF FET固有の入力容量よりも大幅に大容量に(例えば10倍よりも大きく)すべきである。
【0055】
上述のように、電圧の変動Vrippleは、第2の要件も満たすべきであり、それによってホールドコンデンサChold及び第1の抵抗Rholdは、送信(Tx)構成の間におけるホールドコンデンサCholdの充電フェーズを表わす、以下の式を最小にするよう最適化するべきである。
【0056】
【数2】
【0057】
ここで、tDLは、TDD用途の3GPP規格におけるDL期間の最小持続時間、及びVcholdは、DL期間の始めに得られた電圧値である。
【0058】
choldがVgs_SSに近い場合、RF FETによって実際に取り出された静止電流は、予想される公称Iに非常に近い。
【0059】
送信構成において、サンプルホールド回路は、図7に示されるものと同等の構成を実現する。
【0060】
回路Cのレイアウト及び上記で説明した機能の原理を考慮すると、トランジスタRF FETがオン(すなわちTX期間)になると思われる時間間隔の間、並列で接続された大容量コンデンサCholdのために、ゲートは低い動的インピーダンスを計測する。
【0061】
同様に、トランジスタRF FETがオフ(すなわちRX期間)になると思われる時間間隔の間、この場合は第1の電圧発生器VgsOFFへの接続のために、ゲートはやはり低い動的インピーダンスを計測する。
【0062】
このように、トランジスタRF FETの切替のレイテンシは、規格によって定められた制限に適合するよう十分短く、その一方で確実に、静止電流Iの温度を通して正確な熱補償をする。
【0063】
さらに、Tx/Rxフェーズ間の短い通信のレイテンシを実現することで、周囲の回路構成要素の敏感な寄生効果による損傷衝撃の可能性を、最小にする。
【0064】
図3に示される、本発明によるTDDワイヤレス通信システムSは、少なくとも1つの電力増幅器PAが設けられたダウンリンク経路DL PATHと、少なくとも1つの低ノイズ増幅器LNAが設けられた少なくとも1つのアップリンク経路UL PATHと、ダウンリンク経路DL PATH及びアップリンク経路UL PATHに接続された、少なくとも1つのアンテナANTと、を備える。
【0065】
システムSは、上記で開示したように、ダウンリンク/アップリンク動作モードの切替のための回路Cをさらに備え、回路Cは、上記の電力増幅器PAと上記のアンテナANTとの間に、動作可能に挟まれる。
【0066】
さらに、システムSは、RFスイッチを備える。RFスイッチは、アップリンク経路UL PATHに設置され、かつ回路Cに接続されて、上記の低ノイズ増幅器LNAに接続された受信(Rx)構成と、上記の低ノイズ増幅器LNAから接続解除された送信(Tx)構成と、の間で切り替えられるよう構成される。
【0067】
詳細には、送信(Tx)構成において、RFスイッチは、抵抗器Rに接続される。
【0068】
公知のシステムに対して、提案された新たな回路Cによる新たなシステムSに導入された恩恵は、図3に示されるように、アンテナポートにおけるRFスイッチを除去し、LNAの前のUL経路にRFスイッチを設置することを可能にする。
【0069】
したがって、本発明による回路は、TDD動作モードの切替におけるレイテンシのために3GPP規格で定められた、厳格な時間要求に適合できる。
【0070】
提案された本発明は、埋め込まれた熱追跡デバイスが設けられた、LDMOSトランジスタを制御するためにソリューションを実現する。埋め込まれた熱追跡デバイスは、TDD用途のためのPAステージを実現するために、RFのフロントエンド回路に使用される。
【0071】
詳細には、本発明による回路は、使用する構成要素全体のコストを低減させるのを可能にする。RFスイッチの分離の要求は、トランジスタRF FETを完全にオフにできる、提案された本発明の導入のおかげで、軽減させることができる。
【0072】
さらに、本発明による回路は、DL経路の効率の損失を低減させるのを可能にする。詳細には、提案された本発明の導入は、DL経路のPAの後におけるRFスイッチの導入を回避し、それによってDLのI.L.を減少させ、システム全体の効率を向上させる。
【0073】
本発明による回路は、システムの信頼性をさらに向上させる。RFスイッチは、UL経路に設置され、そのため低電力レベルに対処し、システムの信頼性を向上させる。
【0074】
さらに、本発明による回路は、電力消費を低減させるのを可能にする。詳細には、RF FETトランジスタは、Rxフェーズにおいて完全にオフにされ、静止電流をほぼゼロに維持する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7