(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】圧力制御バルブ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20241217BHJP
F16K 51/02 20060101ALI20241217BHJP
F16K 49/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
F16K51/02 A
F16K49/00 B
F16K49/00 A
(21)【出願番号】P 2022035237
(22)【出願日】2022-03-08
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻須 俊和
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-202644(JP,A)
【文献】特開2014-090174(JP,A)
【文献】特開2008-186864(JP,A)
【文献】特開2020-077759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
F16K 51/02
F16K 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置に用いられる真空チャンバと、真空チャンバの排気を行う排気ポンプと、を接続する円形の開口部の開閉を行う圧力制御バルブにおいて、
前記開口部の半径方向の外方に設けられる弁座に当接離間する弁体を備えること、
前記弁体は、
前記弁体の前記真空チャンバの側の上面と前記弁体の前記排気ポンプの側の下面との間に位置する中空部と、
前記中空部において前記上面の第1裏面を覆う第1面状ヒータと、
前記中空部において前記下面の第2裏面を覆う第2面状ヒータと、
を備え
、前記真空チャンバの排気時に、前記上面の全体と前記下面の全体を均等に加熱していること、
を特徴とする圧力制御バルブ。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力制御バルブにおいて、
前記上面から前記第1裏面までの厚みと、前記下面から前記第2裏面までの厚みと、は4mm以上、8mm以下であること、
を特徴とする圧力制御バルブ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧力制御バルブにおいて、
前記弁体は、前記弁座に当接離間する環状シール部を備えること、
前記中空部は、前記環状シール部の半径方向の内周側に位置すること、
を特徴とする圧力制御バルブ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の圧力制御バルブにおいて、
前記中空部に、冷却ガスを供給可能な冷却ガス供給路が連通していること、
を特徴とする圧力制御バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置に用いられる真空チャンバと、真空チャンバの排気を行う排気ポンプと、を接続する円形の開口部の開閉を行う圧力制御バルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置におけるウエハの表面処理(エッチング等)は、真空チャンバ内にウエハを載置し、各種のプロセスガスを真空チャンバ内に導入することで行われる。真空チャンバは排気口を介して排気ポンプと接続されており、真空チャンバに導入されたプロセスガスは、排気ポンプにより吸引され排気口から排気される。排気口には、排気口の開閉を行うための圧力制御バルブが設けられており、圧力制御バルブの開度調整により、排気口からの排気量調整を行うことができる。これにより、真空チャンバ内の圧力の調整を行うことが可能である。なお、圧力制御バルブとしては、例えば、特許文献1に開示されるメインバルブが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
真空チャンバに導入されるプロセスガスは、例えば約100℃と高温にされているが、真空チャンバから排気される際に、圧力制御バルブの弁体に接触することで冷却され、プロセスガスの成分が弁体の表面に堆積するおそれがあった。プロセスガスの成分が弁体の表面に堆積すると、ウエハの表面処理を行う時にパーティクルとして舞い上がり、表面処理の不良を引き起こすおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、真空チャンバの排気時にプロセスガスが冷却されることを防止し、パーティクルの発生を防止することが可能な圧力制御バルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様における圧力制御バルブは、次のような構成を有している。
【0007】
(1)半導体製造装置に用いられる真空チャンバと、真空チャンバの排気を行う排気ポ
ンプと、を接続する円形の開口部の開閉を行う圧力制御バルブにおいて、前記開口部の半
径方向の外方に設けられる弁座に当接離間する弁体を備えること、前記弁体は、前記弁体
の前記真空チャンバの側の上面と前記弁体の前記排気ポンプの側の下面との間に位置する
中空部と、前記中空部において前記上面の第1裏面を覆う第1面状ヒータと、前記中空部
において前記下面の第2裏面を覆う第2面状ヒータと、を備え、前記真空チャンバの排気時に、前記上面の全体と前記下面の全体を均等に加熱していること、を特徴とする。
【0008】
(1)に記載の圧力制御バルブによれば、弁体は、弁体の真空チャンバ側の上面と弁体の排気ポンプ側の下面との間に位置する中空部を備えることで、熱容量が小さくされている。これに加え、中空部において前記上面の裏面を覆う第1面状ヒータと、中空部において前記下面の裏面を覆う第2面状ヒータと、を備えているため、弁体の上面全体と下面全体を均等に加熱することが可能である。
【0009】
真空チャンバの排気時には、プロセスガスは弁体の上面および下面に主に接触するため、弁体の上面全体と下面全体を均等に加熱することが可能であれば、プロセスガスが弁体に冷却されることを防ぐことができる。これにより、プロセスガスの成分が弁体の表面に堆積することを防止することができ、ひいては堆積した成分がパーティクルとして舞い上がり、ウエハの表面処理の不良を引き起こすおそれを低減することができる。
【0010】
従来、弁体の上面(すなわち上流側の面)に堆積したプロセスガスの成分がパーティクルとして真空チャンバ内に舞い上がるおそれがあることは知られていたが、弁体の下面(すなわち下流側の面)に堆積したプロセスガスの成分は、排気時にプロセスガスと共に流れてしまい、真空チャンバ内に舞い上がるとは考えられていなかった。しかし、本願発明者は、下面に堆積したプロセスガスの成分がパーティクルとして真空チャンバ内に飛散すると考えたため、(1)に記載の圧力制御バルブでは、弁体の上面だけでなく下面も面状ヒータで加熱することで、パーティクルの発生を防いでいる。
【0011】
(2)(1)に記載の圧力制御バルブにおいて、前記上面から前記第1裏面までの厚みと、前記下面から前記第2裏面までの厚みと、は4mm以上、8mm以下であること、を特徴とする。
【0012】
上面から第1裏面までの厚みと、下面から第2裏面までの厚みとは、薄いほど弁体の熱容量が小さくなるため、第1面状ヒータ,第2面状ヒータによる加熱がしやすくなる。一方で、弁体の強度が低くなる。したがって、熱容量と強度のバランスを取ることが重要となる。本願発明者は、実験により、(2)に記載の圧力制御バルブのように、上面から第1裏面までの厚みと、下面から第2裏面までの厚みとを4mm以上、8mm以下とすることで、熱容量と強度のバランスを取ることができると確認した。
【0013】
(3)(1)または(2)に記載の圧力制御バルブにおいて、前記弁体は、前記弁座に当接離間する環状シール部を備えること、前記中空部は、前記環状シール部の半径方向の内周側に位置すること、を特徴とする。
【0014】
中空部を備える弁体は、中実の弁体に比べると強度が低い。このため、例えば、弁体の中空部が環状シール部の裏側に設けられていると、環状シール部が弁座に当接した時に、弁体が撓み、環状シール部が弁座12に押し付けられる力が吸収されてしまうおそれがある。(3)に記載の圧力制御バルブによれば、中空部は、環状シール部の半径方向の内周側に位置するため、弁体の環状シール部の裏側を中実として弁体が撓むことを防止することができる。これにより、環状シール部が弁座に押し付けられる力が吸収されることを防止できる。
【0015】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の圧力制御バルブにおいて、前記中空部に、冷却ガスを供給可能な冷却ガス供給路が連通していること、を特徴とする。
【0016】
プロセスガスの種類により、ウエハの表面処理のための温度条件が異なるところ、圧力制御バルブの弁体の温度を低下させる必要がある場合がある。従来、自然に弁体の温度が低下するのを待たなければならず、ウエハの表面処理工程の効率低下が懸念されていた。(4)に記載の圧力制御バルブによれば、中空部に、冷却ガスを供給可能な冷却ガス供給路が連通しているため、中空部に冷却ガスを供給することで、弁体の温度を素早く低下させることが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の圧力制御バルブによれば、真空チャンバの排気時にプロセスガスが冷却されることを防止し、パーティクルの発生を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】ウエハの表面処理を行うための半導体製造装置の概略構成図である。
【
図2】第1の実施形態に係る圧力制御バルブの斜視図である。
【
図3】第1の実施形態に係る圧力制御バルブの部分断面図である。
【
図5】閉位置から開位置にむかって動作し始めた直後の弁体の部分拡大図である。
【
図6】第2の実施形態に係る圧力制御バルブの弁体の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
本発明に係る圧力制御バルブの第1の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は、ウエハの表面処理を行うための半導体製造装置の概略構成図である。
図2は、第1の実施形態に係る圧力制御バルブ1の斜視図である。
図3は、本実施形態に係る圧力制御バルブ1の部分断面図である。なお、図中の矢印は、排気時のプロセスガスの流れを表している。
図4は、
図3の部分Aの部分拡大図である。
【0021】
半導体製造装置は、
図1に示すように、圧力制御バルブ1と、真空チャンバ2と、排気ポンプ3と、プロセスコントローラ4と、ガス供給源5と、マスフローコントローラ(MFC)6と、圧力計7,8と、バルブコントローラ9と、を備えている。
【0022】
真空チャンバ2の内部には、表面処理を行うウエハが載置される。ガス供給源5は、ウエハの表面処理に用いるプロセスガスの供給源である。ガス供給源5から出力されるプロセスガスは、MFC6で流量調整された上で、真空チャンバ2に導入される。
【0023】
圧力計7,8は、真空チャンバ2内の圧力を測定する。プロセスコントローラ4は、ガス供給源5、MFC6、圧力計7と電気的に接続されている。これにより、プロセスコントローラ4は、圧力計7が測定する圧力値を監視しながら、ガス供給源5のプロセスガスの出力のON・OFFや、MFC6によるプロセスガスの流量調整を行う。
【0024】
真空チャンバ2の底面には、
図3に示すように、円形の排気口15(開口部の一例)が貫通して形成されている。また、真空チャンバ2の底面の、排気口15の半径方向の外周近傍は、後述する弁体11が当接離間する弁座12である。
【0025】
真空チャンバ2は、排気口15を介して排気ポンプ3に接続されている。排気ポンプ3が動作することで、真空チャンバ2に導入されたプロセスガスを排気口15から排気することが可能である。
【0026】
圧力制御バルブ1は、排気口15から排気されるプロセスガスの排気量を調整することで、真空チャンバ2内の圧力を制御するためのバルブである。圧力制御バルブ1は、バルブコントローラ9と電気的に接続されており、さらに、圧力計8がバルブコントローラ9と電気的に接続されている。これにより、バルブコントローラ9は、圧力計7が測定する圧力値を監視しながら、真空チャンバ2内の圧力値が、表面処理を行うために最適な圧力となるように、圧力制御バルブ1の開度調整を行う。
【0027】
圧力制御バルブ1は、
図2および
図3に示すように、弁体11と一対のアクチュエータ13とを備えている。一対のアクチュエータ13,13は、排気口15の半径方向外側において、排気ポンプ3を挟んで配設されている。一対のアクチュエータ13のそれぞれからは、排気口15の貫通方向(図中の上下方向)に駆動されるロッド14,14が真空チャンバ2内につきでている。なおロッド14,14は、例えばベローズ(不図示)に覆われているため、ロッド14,14が挿通されている箇所で、真空チャンバ2の内部と外部が連通してしまうことはない。
【0028】
ロッド14,14の真空チャンバ2内の先端には、ロッド14,14同士を横架するように弁体11が固定されている。これにより、ロッド14,14が駆動されることで、弁体11は図中の上下方向に沿って、排気口15を遮断する閉位置と排気口15を開放する開位置との間を無段階に移動可能となっている。つまり、バルブコントローラ9は、ロッド14,14の駆動量を調整することで、弁体11の開度の調整を無段階に行うことができる。なお、閉位置と開位置との間のストロークは、特に限定されないが、本実施形態においては、約100mmとされている。また、
図2および
図3に示す圧力制御バルブ1は、弁体11が開位置にある状態を示している。
【0029】
弁体11は、本体部材20と、本体部材20を支持する一対の支持部材16,16と、弁体11の上面11aを形成する円盤状の上板18と、弁体11の下面11bを形成する円盤状の下板19と、弁体ブロック21と、Oリング22(環状シール部の一例)と、第1ラバーヒータ23(第1面状ヒータの一例)と、第2ラバーヒータ24(第2面状ヒータの一例)と、を備える。
【0030】
本体部材20は、アルミ合金からなり、上下が開口した円筒状に形成されている。本体部材20の外周面の内、支持部材16に対向する部分には、本体部材20の下端部にフランジ部20cが残るように、平面部20eが切りかかれている。
【0031】
支持部材16,16は、アルミ合金からなり、厚みが約30mmに形成されている。支持部材16は、本体部材20側とは反対側の端部でロッド14に結合されている。そして、支持部材16の本体部材20側の端部は、本体部材20の平面部20eに突き当てられている。そして、支持部材16は、平面部20eに対して垂直方向から螺合されるボルト25(
図2参照)により、本体部材20に締結されている。これにより、一対の支持部材16,16が本体部材20を、排気口15と同軸上に位置するように支持している。なお、
図2においては、ボルト25が1つしか見えていないが、1つの支持部材16につき、2つのボルト25が用いられている。
【0032】
また、支持部材16,16には、本体部材20側の端部であって上面11a側に、上側段差部16dが穿設されている(
図4参照)。上側段差部16dの深さは、上板18の厚みと略同一である。また、上側段差部16dの本体部材20側に向く内面16fは、円盤状の上板18の外径と略同一の半径を備えた円弧状の面とされている。さらに、支持部材16には、本体部材20側の端部であって下面11b側に、下側段差部16eが穿設されている(
図4参照)。下側段差部16eの深さは、本体部材20のフランジ部20cの厚みと略同一である。また、下側段差部16eの本体部材20側に向く内面16gは、本体部材20(フランジ部20c)の外径と略同一の半径を備えた円弧状の面とされている。そして、支持部材16が本体部材20に締結された状態で、本体部材20のフランジ部20cは、支持部材16の下側段差部16e内に位置しており、本体部材20の下面と支持部材16の下面は同一平面を形成している。
【0033】
上板18は、アルミ合金からなり、厚み約5mmの円盤状に形成されている。上板18の外径は、本体部材20の外径と略同一の大きさである。上板18は、本体部材20の上面11a側の端面に、ボルト26(
図2参照)により固定されている。これにより、上板18が、本体部材20と同軸上に位置するとともに、本体部材20の上側の開口を塞いでいる。また、上板18は、本体部材20に固定された状態で、支持部材16の上側段差部16d内に位置しており、上板18の上面と支持部材16の上面は同一平面を形成している。なお、上板18はアルマイト加工等の表面処理がなされたものであっても良い。
【0034】
下板19は、アルミ合金からなり、厚み約5mmの円盤状に形成されている。下板19の外径は、本体部材20の外径と略同一の大きさである。また、下板19は、本体部材20の下面11b側の端面に固定されている。これにより、下板19が、本体部材20と同軸上に位置するとともに、本体部材20の下側の開口を塞いでいる。なお、下板19はアルマイト加工等の表面処理がなされたものであっても良い。
【0035】
上板18が本体部材20の上側の開口を塞ぎ、下板19が本体部材20の下側の開口を塞ぐことで、弁体11には、上板18の裏面18a(第1裏面)と、本体部材20の内周面20dと、下板19の裏面19a(第2裏面)とに囲われた空間として、中空部17が形成されている。
【0036】
中空部17には、第1ラバーヒータ23および第2ラバーヒータ24が配設されている。第1ラバーヒータ23は、円盤状に形成されている。直径は、本体部材20の内径より小さいが、上板18の裏面18aの中空部17内に露出する部分を覆うことが可能な大きさである。第1ラバーヒータ23は、上板18の裏面18aに接着されており、上板18を加熱することが可能である。第2ラバーヒータ24は、第1ラバーヒータ23と同様のヒータであり、円盤状に形成されている。直径は、本体部材20の内径より小さいが、下板19の裏面19aの中空部17内に露出する部分を覆うことが可能な大きさである。第2ラバーヒータ24は、下板19の裏面19aに接着されており、下板19を加熱することが可能である。
【0037】
中空部17には、配線路16b・20aが連通しており、例えば、ロッド14の内部を通した電線を、配線路6b・20aに通して中空部17にまで延伸させることが可能である。これにより、第1ラバーヒータ23,第2ラバーヒータ24を、バルブコントローラ9に電気的に接続することができる。よって、第1ラバーヒータ23,第2ラバーヒータ24は、バルブコントローラ9により温度制御される。そして、第1ラバーヒータ23,第2ラバーヒータ24は、上板18,下板19を、真空チャンバ2に導入されるプロセスガスが弁体11(上板18,下板19)に接触したときに液化しない程度の温度(例えば120℃)にまで加熱する。
【0038】
弁体11は、中空部17を備えることで熱容量が小さくされている。これに加え、裏面18aを覆う第1ラバーヒータ23と、裏面19aを覆う第2ラバーヒータ24と、を備えているため、弁体11の上面11a全体と下面11b全体を均等に加熱することが可能である。
【0039】
真空チャンバ2の排気時には、プロセスガスは弁体11の上面11aおよび下面11bに主に接触するため、弁体11の上面11a全体と下面11b全体を均等に加熱することが可能であれば、プロセスガスが弁体11に冷却されることを防ぐことができる。これにより、プロセスガスの成分が弁体11の表面に堆積することを防止することができ、ひいては堆積した成分がパーティクルとして舞い上がり、ウエハの表面処理の不良を引き起こすおそれを低減することができる。
【0040】
なお、上板18と下板19の厚みを5mmとしているのは、あくまで一例である。上板18と下板19の厚みは、薄いほど弁体11の熱容量が小さくなるため、第1ラバーヒータ23,第2ラバーヒータ24による加熱がしやすくなる。一方で、弁体11の強度が低くなる。したがって、熱容量と強度のバランスを取ることが重要となる。そこで、上板18と下板19の厚みは、4mm以上、8mm以下の範囲で設定することが望ましい。
【0041】
下板19の、下面11bを形成する面のうち、弁座12と対向する部分には、環状の第1溝19bが、排気口15と同軸に形成されている。この第1溝19bには、Oリング22(環状シール部の一例)がはめ込まれている。弁体11の閉位置とは、Oリング22が弁座12に当接する位置である。Oリング22が弁座12に当接すると、Oリング22の弾性力により、真空チャンバ2内を気密に保つことができる。
【0042】
ここで、上記した中空部17は、Oリング22の半径方向の内周側に位置している。具体的には、中空部17の直径(すなわち、本体部材20の内径)が、Oリング22の直径よりも小さくされている。つまり、弁体11のOリング22が取り付けられている箇所が中実であるため、弁体11が閉位置にあるとき、Oリング22の弾性力により弁体11が撓んでしまうことを防止している。
【0043】
下板19の、第1溝19bの半径方向の内方側には、環状の第2溝19cが、排気口15と同軸に形成されている。この第2溝19cには弁体ブロック21が取り付けられている。
【0044】
弁体ブロック21は、アルミ合金からなっており、上下が開口した円筒状の本体部21aと、本体部21aの下板19側の上端部から半径方向の外方に延在するフランジ部21bとを有する。
【0045】
フランジ部21bには、ねじを挿通可能な第1通し穴(不図示)が図中の上下方向に貫通して設けられている。さらに、下板19には、第1通し穴と同軸上に、第2通し穴(不図示)が図中の上下方向に貫通して設けられている。第1通し穴および第2通し穴に挿通したボルトを本体部材20に螺合することで、弁体ブロック21が第2溝19cに固定されるとともに、下板19が本体部材20に固定されている。なお、弁体ブロック21を下板19に固定し、下板19を本体部材20に固定するなど、弁体ブロック21と下板19を、それぞれ別個に固定するものとしても良い。
【0046】
本体部21aは、弁体ブロック21が固定された状態で、排気口15と同軸に位置している。また、本体部21aの外径は、排気口15よりも小さくされており、弁体11が閉位置にあるとき、本体部21aは排気口15に挿入される。
【0047】
本体部21aが排気口15に挿入されることで、弁体ブロック21は、弁体11が閉位置から開位置に動作し始めたときに、真空チャンバ2内の圧力が急変動してしまうことを防止している。具体的に説明すると、弁体11が弁体ブロック21を有しないものとした場合、弁体11が閉位置から開位置に動作し始めた直後に排気口15の内径分の流路が形成されるため、プロセスガスの排気が急激に行われ、真空チャンバ2内の圧力が急変動してしまう。一方、本実施形態に示すように、弁体11が閉位置にあるときに弁体ブロック21の本体部21aが排気口15に挿入されていると、
図5に示すように、弁体11が閉位置から開位置に動作し始めた瞬間には、排気口15の内径と本体部21aの外径の差分の流路しか形成されないため、プロセスガスの排気は緩やかに開始される。このため、真空チャンバ2内の圧力が急変動することを防止することが可能である。なお、弁体11が閉位置から開位置に向かって10~70mm程度移動したとき、本体部21aは排気口15から抜け出るため、排気口15の直径分の流路が確保されるようになっている。
【0048】
弁体11が弁体ブロック21を備えることで、排気されるプロセスガスが弁体11の下面11bには接触しないよう見えるため、下板19を第2ラバーヒータ24で加熱することに、プロセスガスの成分の堆積を防止するという効果が無いように思われる。たしかに、弁体11が閉位置から動き始め、弁体ブロック21の本体部21aが排気口15に挿入されている状態では、プロセスガスは下面11bに接触しにくい状態である。しかし、本体部21aが排気口15から抜け出た後は、プロセスガスが本体部21aを回り込んで、下面11bに接触する。よって、下板19を第2ラバーヒータ24で加熱することには、プロセスガスの成分の堆積を防止するという効果がある。
【0049】
以上説明したように、第1の実施形態に係る圧力制御バルブ1によれば、
(1)半導体製造装置に用いられる真空チャンバ2と、真空チャンバ2の排気を行う排気ポンプ3と、を接続する円形の開口部(排気口15)の開閉を行う圧力制御バルブ1において、開口部(排気口15)の半径方向の外方に設けられる弁座12に当接離間する弁体11を備えること、弁体11は、弁体11の真空チャンバ2の側の上面11aと弁体11の排気ポンプ3の側の下面11bとの間に位置する中空部17と、中空部17において上面11aの第1裏面18aを覆う第1面状ヒータ(第1ラバーヒータ23)と、中空部17において下面11bの第2裏面19aを覆う第2面状ヒータ(第2ラバーヒータ24)と、を備えること、を特徴とする。
【0050】
(1)に記載の圧力制御バルブ1によれば、弁体11は、弁体11の真空チャンバ2側の上面11aと弁体11の排気ポンプ3側の下面11bとの間に位置する中空部17を備えることで、熱容量が小さくされている。これに加え、中空部17において上面11aの第1裏面18aを覆う第1面状ヒータ(第1ラバーヒータ23)と、中空部17において下面11bの第2裏面19aを覆う第2面状ヒータ(第2ラバーヒータ24)と、を備えているため、弁体11の上面11a全体と下面11b全体を均等に加熱することが可能である。
【0051】
真空チャンバ2の排気時には、プロセスガスは弁体11の上面11aおよび下面11bに主に接触するため、弁体11の上面11a全体と下面11b全体を均等に加熱することが可能であれば、プロセスガスが弁体11に冷却されることを防ぐことができる。これにより、プロセスガスの成分が弁体11の表面に堆積することを防止することができ、ひいては堆積した成分がパーティクルとして舞い上がり、ウエハの表面処理の不良を引き起こすおそれを低減することができる。
【0052】
従来、弁体11の上面11aに堆積したプロセスガスの成分がパーティクルとして真空チャンバ2内に舞い上がるおそれがあることは知られていたが、弁体11の下面11bに堆積したプロセスガスの成分は、排気時にプロセスガスと共に流れてしまい、真空チャンバ2内に舞い上がるとは考えられていなかった。しかし、本願発明者は、下面に堆積したプロセスガスの成分がパーティクルとして真空チャンバ2内に飛散すると考えたため、(1)に記載の圧力制御バルブ1では、弁体11の上面11aだけでなく下面11bも面状ヒータ(ラバーヒータ23,24)で加熱することで、パーティクルの発生を防いでいる。
【0053】
(2)(1)に記載の圧力制御バルブ1において、上面11aから第1裏面18aまでの厚みと、下面11bから第2裏面19aまでの厚みと、は4mm以上、8mm以下であること、を特徴とする。
【0054】
上面11aから第1裏面18aまでの厚みと、下面11bから第2裏面19aまでの厚みとは、薄いほど弁体11の熱容量が小さくなるため、第1面状ヒータ,第2面状ヒータ(第1ラバーヒータ23,第2ラバーヒータ24)による加熱がしやすくなる。一方で、弁体11の強度が低くなる。したがって、熱容量と強度のバランスを取ることが重要となる。本願発明者は、実験により、(2)に記載の圧力制御バルブ1のように、上面11aから第1裏面18aまでの厚みと、下面11bから第2裏面19aまでの厚みとを4mm以上、8mm以下とすることで、熱容量と強度のバランスを取ることができると確認した。
【0055】
(3)(1)または(2)に記載の圧力制御バルブ1において、弁体11は、弁座12に当接離間する環状シール部(Oリング22)を備えること、中空部17は、環状シール部(Oリング22)の半径方向の内周側に位置すること、を特徴とする。
【0056】
中空部17を備える弁体11は、中実の弁体に比べると強度が低い。このため、例えば、弁体11の中空部17が環状シール部(Oリング22)の裏側に設けられていると、環状シール部(Oリング22)が弁座12に当接した時に、弁体11が撓み、環状シール部(Oリング22)が弁座12に押し付けられる力が吸収されてしまうおそれがある。(3)に記載の圧力制御バルブ1によれば、中空部17は、環状シール部(Oリング22)の半径方向の内周側に位置するため、弁体11の環状シール部(Oリング22)の裏側を中実として弁体11が撓むことを防止することができる。これにより、環状シール部(Oリング22)が弁座12に押し付けられる力が吸収されることを防止できる。
【0057】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る圧力制御バルブの第2の実施形態について、
図6を参照しながら説明する。
図6は、第2の実施形態に係る圧力制御バルブ1の弁体11の構成を示す図である。
【0058】
第2の実施形態に係る圧力制御バルブ1では、弁体11の配線路16b・20aを、中空部17に冷却ガスを供給可能な冷却ガス供給路として利用する。この場合、中空部17に供給された冷却ガスを、中空部17から排出可能なように、排出路16c・20bを設ける必要がある。これにより、
図6中の矢印に示す通り、冷却ガスの流れが生じる。その他の構成は、第1の実施形態に係る圧力制御バルブ1と同一である。なお、配線路16b・20aとは別に、中空部17に連通する冷却ガスの供給路を設けても良い。
【0059】
以上説明したように、第2の実施形態に係る圧力制御バルブ1によれば、
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の圧力制御バルブ1において、中空部17に、冷却ガスを供給可能な冷却ガス供給路(配線路16b・20a)が連通していること、を特徴とする。
【0060】
プロセスガスの種類により、ウエハの表面処理のための温度条件が異なるところ、圧力制御バルブ1の弁体11の温度を低下させる必要がある場合がある。従来、自然に弁体の温度が低下するのを待たなければならず、ウエハの表面処理工程の効率低下が懸念されていた。(4)に記載の圧力制御バルブ1によれば、中空部17に、冷却ガスを供給可能な冷却ガス供給路(配線路16b・20a)が連通しているため、中空部17に冷却ガスを供給することで、弁体の温度を素早く低下させることが可能である。
【0061】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、面状ヒータとしてラバーヒータではなく、その他の面状ヒータを用いても良い。
【符号の説明】
【0062】
1 圧力制御バルブ
2 真空チャンバ
3 排気ポンプ
11 弁体
11a 上面
11b 下面
12 弁座
15 排気口(開口部の一例)
17 中空部
18a 第1裏面
19a 第2裏面
23 第1ラバーヒータ(第1面状ヒータの一例)
24 第2ラバーヒータ(第2面状ヒータの一例)