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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】電極材料、電極および全固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20241217BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241217BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241217BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241217BHJP
   H01M 4/505 20100101ALN20241217BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 A
H01M4/36 C
H01M10/052
H01M10/0562
H01M4/505
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022119623
(22)【出願日】2022-07-27
(65)【公開番号】P2024017161
(43)【公開日】2024-02-08
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢部 裕城
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 出
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】杉本 裕太
(72)【発明者】
【氏名】西尾 勇祐
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-154407(JP,A)
【文献】国際公開第2021/187391(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/36
H01M 4/525
H01M 4/505
H01M 10/052
H01M 10/0562
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合粒子を含み、
前記複合粒子は、コア粒子と被覆層とを含み、
前記被覆層は、前記コア粒子の表面の少なくとも一部を被覆しており、
前記コア粒子は、活物質を含み、
前記被覆層は、第1層と第2層とを含み、
前記第1層の少なくとも一部は、前記コア粒子と前記第2層との間に配置されており、
前記第1層は、第1固体電解質を含み、
前記第2層は、第2固体電解質を含み、
前記第1固体電解質は、フッ化物であり、
前記第2固体電解質は、硫化物であ
100質量部の前記活物質に対して、
前記第1固体電解質は、2~3質量部であり、かつ
前記第2固体電解質は、1.3~4.8質量部である、
電極材料。
【請求項2】
前記第2層は、前記第2固体電解質に加えて、前記第1固体電解質をさらに含み、
前記第2層において、前記第2固体電解質の体積分率は、前記第1固体電解質の体積分率に比して大きい、
請求項1に記載の電極材料。
【請求項3】
前記第2層は、前記第2固体電解質に加えて、前記活物質をさらに含み、
前記第2層において、前記第2固体電解質の体積分率は、前記活物質の体積分率に比して大きい、
請求項1に記載の電極材料。
【請求項4】
前記第2層は、前記第2固体電解質に加えて、前記第1固体電解質と前記活物質とをさらに含み、
前記第2層において、前記第2固体電解質の体積分率は、前記第1固体電解質と前記活物質との合計体積分率に比して大きい、
請求項1に記載の電極材料。
【請求項5】
前記第2層において、前記第1固体電解質が前記活物質に付着している、
請求項4に記載の電極材料。
【請求項6】
前記第1固体電解質は、式(1):
Li6-nxx6 …(1)
により表され、
前記式(1)中、
xは、0<x<2を満たし、
Mは、半金属原子と、Liを除く金属原子とからなる群より選択される少なくとも1種であり、
nは、Mの酸化数を示す、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の電極材料。
【請求項7】
前記式(1)中、
Mは、+4の酸化数を有する原子を含む、
請求項に記載の電極材料。
【請求項8】
前記式(1)中、
Mは、+3の酸化数を有する原子を含む、
請求項に記載の電極材料。
【請求項9】
前記式(1)中、
Mは、Ca、Mg、Al、Y、Ti、およびZrからなる群より選択される少なくとも1種を含む、
請求項に記載の電極材料。
【請求項10】
請求項1に記載の電極材料を含む、
電極。
【請求項11】
請求項10に記載の電極を含む、
全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極材料、電極および全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-154407号公報(特許文献1)は、活物質を被覆する酸化物固体電解質を含有する複合粒子と、該複合粒子を被覆する硫化物固体電解質と、を備える複合活物質を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-154407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下、固体電解質(Solid Electrolyte)が「SE」と略記され得る。例えば、硫化物固体電解質は「硫化物SE」と略記され得る。
【0005】
硫化物SEは、高いイオン伝導性と、優れた成形性とを併せ持つ。硫化物SEは、バルク型全固体電池に好適である。しかし、電極中において硫化物SEが活物質と直接接触することにより、硫化物SEの劣化が促進され得る。硫化物SEの劣化により、例えばイオン伝導性が損なわれる可能性がある。
【0006】
硫化物SEと活物質との直接接触を低減するため、活物質を酸化物SEで被覆することにより、複合粒子を形成することが提案されている。さらに、複合粒子と硫化物SEとの界面形成を促進するため、複合粒子を硫化物SEで被覆することも提案されている。活物質、酸化物SE、および硫化物SEの複合化により、初期抵抗の低減が期待される。ただし、耐久後の抵抗増加率に改善の余地がある。
【0007】
本開示の目的は、耐久後の抵抗増加率を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本開示の技術的構成および作用効果が説明される。ただし本明細書の作用メカニズムは推定を含む。作用メカニズムは本開示の技術的範囲を限定しない。
【0009】
1.電極材料は、複合粒子を含む。複合粒子は、コア粒子と被覆層とを含む。被覆層は、コア粒子の表面の少なくとも一部を被覆している。コア粒子は、活物質を含む。被覆層は、第1層と第2層とを含む。第1層の少なくとも一部は、コア粒子と第2層との間に配置されている。第1層は、第1固体電解質を含む。第2層は、第2固体電解質を含む。第1固体電解質は、フッ化物である。第2固体電解質は、硫化物である。
【0010】
従来、活物質と硫化物SEとの間に酸化物SEが介在する。酸化物SE(例えばLiNbO3等)は、耐久時、反応抵抗が増加しやすい傾向がある。
【0011】
上記「1」の電極材料においては、活物質(コア粒子)と硫化物SE(第2SE)との間に、フッ化物SE(第1SE)が介在する。本開示の新知見によると、フッ化物SEは、酸化物SEに比して、反応抵抗が増加し難い傾向がある。耐久時、フッ化物SEの反応抵抗が増加し難いことにより、抵抗増加率の低減が期待される。
【0012】
2.上記「1」に記載の電極材料において、第2層は、第2固体電解質に加えて、第1固体電解質をさらに含んでいてもよい。第2層において、第2固体電解質の体積分率は、第1固体電解質の体積分率に比して大きい。
【0013】
第1層の形成時、第1SE(フッ化物SE)の一部がコア粒子に付着しないことがある。また、第2層の形成時、コア粒子に付着していた第1SEが脱落することもある。その結果、第1SEの細片が発生し得る。複合粒子に取り込まれず、単独で存在する第1SEの細片が電極材料中に拡散すると、電極における電子伝導およびイオン伝導が阻害される可能性がある。第1SEの細片が、電極材料中に拡散せず、第2層に取り込まれていることにより、電極における電子伝導およびイオン伝導が促進されることが期待される。
【0014】
3.上記「1」または上記「2」に記載の電極材料において、第2層は、第2固体電解質に加えて、活物質をさらに含んでいてもよい。第2層において、第2固体電解質の体積分率は、活物質の体積分率に比して大きい。
【0015】
第1層の形成時、コア粒子(活物質)の一部が欠損することがある。これにより、活物質の細片が発生し得る。コア粒子の欠損により発生する細片は、「チッピング」とも称され得る。活物質の細片は、第2層の形成時にも発生し得る。活物質の細片が、電極材料中に拡散すると、電極における電子伝導およびイオン伝導が阻害される可能性がある。活物質の細片が電極材料中に拡散せず、第2層に取り込まれていることにより、電極における電子伝導およびイオン伝導が促進されることが期待される。
【0016】
4.上記「1」に記載の電極材料において、第2層は、第2固体電解質に加えて、第1固体電解質と活物質とをさらに含んでいてもよい。第2層において、第2固体電解質の体積分率は、第1固体電解質と活物質との合計体積分率に比して大きい。
【0017】
第2層は、第1SEの細片、および活物質の細片の両方を取り込んでいてもよい。
【0018】
5.上記「4」の記載の第2層において、第1固体電解質が活物質に付着していてもよい。
【0019】
例えば、第2層の形成時、コア粒子が欠損した場合、活物質と第1SEとを含む複合的な細片が発生し得る。
【0020】
6.上記「1」~「5」のいずれか1項に記載の電極材料において、100質量部の活物質に対して、第1固体電解質は、例えば1~10質量部であってもよい。100質量部の活物質に対して、第2固体電解質は、例えば0.1~20質量部であってもよい。
【0021】
7.上記「1」~「6」のいずれか1項に記載の電極材料において、第1固体電解質は、下記式(1)により表されてもよい。
Li6-nxx6 …(1)
上記式(1)中、xは、0<x<2を満たす。Mは、半金属原子と、Liを除く金属原子とからなる群より選択される少なくとも1種である。nは、Mの酸化数を示す。
【0022】
上記式(1)で表されるフッ化物SEは、耐久時、反応抵抗が増加し難い傾向がある。
【0023】
8.上記「7」に記載の電極材料において、上記式(1)中、Mは、例えば+4の酸化数を有する原子を含んでいてもよい。
【0024】
9.上記「7」または「8」に記載の電極材料において、上記式(1)中、Mは、例えば+3の酸化数を有する原子を含んでいてもよい。
【0025】
10.上記「7」~「9」のいずれか1項に記載の電極材料において、上記式(1)中、Mは、例えば、Ca、Mg、Al、Y、Ti、およびZrからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0026】
11.電極は、上記「1」~「10」のいずれか1項に記載の電極材料を含む。
【0027】
12.全固体電池は、上記「11」に記載の電極を含む。
【0028】
全固体電池は、耐久時の抵抗増加率が低いことが期待される。
【0029】
以下、本開示の実施形態(以下「本実施形態」と略記され得る。)、および本開示の実施例(以下「本実施例」と略記され得る。)が説明される。ただし、本実施形態および本実施例は、本開示の技術的範囲を限定しない。本実施形態および本実施例は、全ての点で例示である。本実施形態および本実施例は、非制限的である。本開示の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内における全ての変更を包含する。例えば、本実施形態および本実施例から、任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも当初から予定されている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本実施形態における複合粒子の一例を示す第1概念図である。
図2図2は、本実施形態における複合粒子の一例を示す第2概念図である。
図3図3は、複合粒子の断面SEM画像、およびSEM-EDXによる元素マッピング画像の一例である。
図4図4は、本実施形態における複合粒子の製造方法の概略フローチャートである。
図5図5は、本実施形態における全固体電池の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<用語およびその定義等>
「備える」、「含む」、「有する」、および、これらの変形(例えば「から構成される」等)の記載は、オープンエンド形式である。オープンエンド形式は必須要素に加えて、追加要素をさらに含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。「からなる」との記載はクローズド形式である。ただしクローズド形式であっても、通常において付随する不純物であったり、本開示技術に無関係であったりする付加的な要素は排除されない。「実質的に…からなる」との記載はセミクローズド形式である。セミクローズド形式においては、本開示技術の基本的かつ新規な特性に実質的に影響しない要素の付加が許容される。
【0032】
「してもよい」、「し得る」等の表現は、義務的な意味「しなければならないという意味」ではなく、許容的な意味「する可能性を有するという意味」で使用されている。
【0033】
単数形で表現される要素は、特に断りの無い限り、複数形も含む。例えば「粒子」は「1つの粒子」のみならず、「粒子の集合体(粉体、粉末、粒子群)」も意味し得る。
【0034】
例えば「m~n%」等の数値範囲は、上限値および下限値を含む。すなわち「m~n%」は、「m%以上n%以下」の数値範囲を示す。また「m%以上n%以下」は「m%超n%未満」を含む。さらに数値範囲内から任意に選択された数値が、新たな上限値または下限値とされてもよい。例えば、数値範囲内の数値と、本明細書中の別の部分、表中、図中等に記載された数値とが任意に組み合わされることにより、新たな数値範囲が設定されてもよい。
【0035】
全ての数値は用語「約」によって修飾されている。用語「約」は、例えば±5%、±3%、±1%等を意味し得る。全ての数値は、本開示技術の利用形態によって変化し得る近似値であり得る。全ての数値は有効数字で表示され得る。測定値は、複数回の測定における平均値であり得る。測定回数は、3回以上であってもよいし、5回以上であってもよいし、10回以上であってもよい。一般に測定回数が多い程、平均値の信頼性が向上することが期待される。測定値は有効数字の桁数に基づいて、四捨五入により端数処理され得る。測定値は、例えば測定装置の検出限界等に伴う誤差等を含み得る。
【0036】
化合物が化学量論的組成式(例えば「LiCoO2」等)によって表現されている場合、該化学量論的組成式は該化合物の代表例に過ぎない。化合物は、非化学量論的組成を有していてもよい。例えば、コバルト酸リチウムが「LiCoO2」と表現されている時、特に断りのない限り、コバルト酸リチウムは「Li/Co/O=1/1/2」の組成比に限定されず、任意の組成比でLi、CoおよびOを含み得る。さらに、微量元素によるドープ、置換等も許容され得る。
【0037】
「半金属」は、B、Si、Ge、As、Sb、およびTeを含む。「金属」は、周期表の第1族元素~第16元素のうち、「H、B、Si、Ge、As、Sb、Te、C、N、P、O、S、およびSe」以外の元素を示す。無機化合物が、半金属および金属の少なくとも一方と、Fとを含む時、半金属および金属は、正(+)の酸化数を有し得る。
【0038】
「電極」は、正極および負極の総称である。電極は、正極であってもよいし、負極であってもよい。
【0039】
被覆層、第1層、および第2層の「厚さ」は、次の手順で測定され得る。複合粒子が樹脂材料に包埋されることにより、試料が準備される。イオンミリング装置により、試料に断面出し加工が施される。例えば、日立ハイテクノロジーズ社製の製品名「Arblade(登録商標)5000」(またはこれと同等品)が使用されてもよい。試料の断面がSEM(Scanning Electron Microscope)により観察される。例えば、日立ハイテクノロジーズ社製の製品名「SU8030」(またはこれと同等品)が使用されてもよい。10個の複合粒子について、それぞれ、20個の視野で対象部分(被覆層、第1層、第2層)の厚さが測定される。合計で200箇所の厚さの算術平均が、対象部分の厚さとみなされる。
【0040】
SEM-EDX(Energy Dispersive X-ray Spectrometry)による元素マッピング画像において、各層の厚さが測定されてもよい。元素マッピング画像においては、各部を代表する元素が選択される。一例として、コア粒子(活物質)の代表元素としてNi、第1層(フッ化物SE)の代表元素としてF、第2層(硫化物SE)の代表元素としてSが選択され得る。
【0041】
「被覆率」は、次の手順で測定される。被覆層の厚さの測定用試料と同様に、複合粒子の断面試料が準備される。断面SEM画像において、コア粒子(活物質)の輪郭線の長さ(L0)が測定される。コア粒子の輪郭線のうち、フッ化物SEおよび硫化物SEの少なくとも一方によって、被覆されている部分の長さ(L1)が測定される。L1がL0で除された値の百分率が被覆率である。20個の複合粒子について、それぞれ、被覆率が測定される。20個の被覆率の算術平均が「被覆率」とみなされる。
【0042】
例えば、SEM-EDXによる元素マッピング画像に画像処理が施されることにより、L0およびL1が算出されてもよい。
【0043】
「中空粒子」は、粒子の断面画像(例えば断面SEM画像等)において、中心部の空洞の面積が、粒子全体の断面積の30%以上である粒子を示す。「中実粒子」は、粒子の断面画像において、中心部の空洞の面積が、粒子全体の断面積の30%未満である粒子を示す。
【0044】
「D50」は、体積基準の粒度分布において、粒子径が小さい方からの頻度の累積が50%に達する粒子径を示す。D50は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定され得る。
【0045】
「平均フェレ径」は、粒子の二次元画像において測定される。20個以上の粒子における最大フェレ径の算術平均が「平均フェレ径」である。
【0046】
<電極材料>
電極材料は、電極の原料である。電極材料は、粉末であってもよい。例えば、電極材料を含む塗料が形成されてもよい。塗料が、集電体の表面に塗布されることにより、電極が製造され得る。
【0047】
電極材料は、複合粒子を含む。電極材料は、複合粒子に加えて、例えば遊離成分をさらに含んでいてもよい。遊離成分は、複合粒子から遊離して存在する。遊離成分は、粒子状であってもよい。遊離成分は、例えば、活物質、フッ化物SE、硫化物SE等を含んでいてもよい。遊離成分は、例えば、チッピングを含んでいてもよい。遊離成分は、例えば、複合粒子の製造過程で得られる副産物を含んでいてもよい。遊離成分は、例えば、複合粒子の原料の残渣を含んでいてもよい。例えば、複合粒子の原料として投入された硫化物SEの一部が、複合粒子の形成に寄与せず、遊離成分となる可能性がある。電極材料は、質量分率で、例えば、0~10%の遊離成分と、残部の複合粒子とからなっていてもよい。遊離成分の質量分率は、例えば、0~5%または1~3%であってもよい。遊離成分の最大フェレ径は、例えば、1nm~5μmであってもよい。
【0048】
《複合粒子》
図1は、本実施形態における複合粒子の一例を示す第1概念図である。
複合粒子30は、コア粒子10と被覆層20とを含む。複合粒子30のD50は、例えば、1~30μm、2~20μm、3~15μm、3~6μm、または4~5μmであってもよい。複合粒子30は、任意の形状を有し得る。複合粒子30は、例えば、球状、楕円体状、フレーク状、または繊維状等であってもよい。
【0049】
《被覆層》
被覆層20は、コア粒子10の表面の少なくとも一部を被覆している。例えば、コア粒子10の表面の凹凸を埋めるように、被覆層20が形成されていてもよい。被覆層20は、コア粒子10の表面の全部を被覆していてもよい。被覆層20は、コア粒子10の表面の一部を被覆していてもよい。被覆層20は、コア粒子10の表面に島状に分布していてもよい。被覆率は、例えば、50~100%、60~100%、70~100%、80~100%、または90~100%であってもよい。被覆率が高い程、例えば、初期抵抗の低減が期待される。
【0050】
被覆層20の厚さは、例えば、6~300nm、または11~150nmであってもよい。被覆層20が薄い程、例えば、初期抵抗の低減が期待される。
【0051】
被覆層20は、第1層21と第2層22とを含む。第1層21の少なくとも一部は、コア粒子10と第2層22との間に配置されている。例えば、第1層21は、コア粒子10の表面を直接被覆していてもよい。例えば、第2層22は、第1層21の全部を被覆していてもよい。第2層22は、第1層21の一部を被覆していてもよい。第1層21が第2層22から露出している部分があってもよい。第2層22がコア粒子10に直接接触している部分があってもよい。
【0052】
〈第1層、フッ化物SE〉
第1層21は、いわば「下層」である。第1層21は、例えば、コア粒子10の全体を隙間なく被覆していてもよい。第1層21は、例えば、1~100nmまたは1~50nmの厚さを有していてもよい。第1層21が薄い程、例えば初期抵抗の低減が期待される。
【0053】
第1層21は、第1固体電解質(第1SE)を含む。第1SEはフッ化物である。フッ化物SEは、耐久時、反応抵抗が増加し難い傾向がある。
【0054】
第1SEは、Fを含む限り、任意の組成を有し得る。第1SEは、例えば、LiとFとを含んでいてもよい。第1SEは、例えば、下記式(1)により表されてもよい。
Li6-nxx6 …(1)
上記式(1)中、xは、0<x<2を満たす。Mは、半金属原子と、Liを除く金属原子とからなる群より選択される少なくとも1種である。nは、Mの酸化数を示す。
【0055】
Mは、単一の原子からなっていてもよいし、複数種の原子からなっていてもよい。Mが複数種の原子からなる場合、nは、各原子の酸化数の加重平均を示す。例えば、Mが、Ti(酸化数=+4)およびAl(酸化数=+3)を含み、TiとAlとのモル比が「Ti/Al=3/7」であり、かつx=1である時、算式「n=0.3×4+0.7×3」により、nは3.3となる。
【0056】
xは、例えば、0.1≦x≦1.9、0.2≦x≦1.8、0.3≦x≦1.7、0.4≦x≦1.6、0.5≦x≦1.5、0.6≦x≦1.4、0.7≦x≦1.3、0.8≦x≦1.2、または0.9≦x≦1.1を満たしていてもよい。
【0057】
Mは、例えば、+4の酸化数を有する原子を含んでいてもよい。Mは、例えば、+3の酸化数を有する原子を含んでいてもよい。Mは、例えば、+4の酸化数を有する原子と、+3の酸化数を有する原子とを含んでいてもよい。
【0058】
Mは、例えば、Ca、Mg、Al、Y、Ti、およびZrからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。Mは、例えば、Al、Y、およびTiからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。Mは、例えば、AlおよびTiからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0059】
第1SEは、例えば、下記式(2)で表されてもよい。
Li3-xTixAl1-x6 …(2)
上記式(2)中、xは、例えば、0≦x≦1、0.1≦x≦0.9、0.2≦x≦0.8、0.3≦x≦0.7、または0.4≦x≦0.6を満たしていてもよい。
【0060】
第1SEは、例えば、粒子状であってもよい。すなわち、第1層21は、例えば粒子層であってもよい。粒子層は、粒子の集合体である。第1SEの平均フェレ径は、例えば、第1層21の厚さの0.1~1倍であってもよい。
【0061】
〈第2層、硫化物SE〉
第2層22は、いわば「上層」である。第2層22は、複合粒子30の最外層を形成していてもよい。第2層22は、コア粒子10の周囲を隙間なくとり囲んでいてもよい。第2層22は、例えば、第1層21に比して厚くてもよい。第2層22は、例えば、5~200nm、または10~100nmの厚さを有していてもよい。
【0062】
第2層22は、第2固体電解質(第2SE)を含む。第2SEは硫化物である。硫化物SEは、高いイオン伝導性を示し得る。第2SEは、S(硫黄)を含む限り、任意の組成を有し得る。第2SEは、例えば、Li、P、およびSを含んでいてもよい。第2SEは、例えば、O、Ge、Si等をさらに含んでいてもよい。第2SEは、例えばハロゲン等をさらに含んでいてもよい。第2SEは、例えばI、Br等をさらに含んでいてもよい。第2SEは、例えばガラスセラミックス型であってもよいし、アルジロダイト型であってもよい。第2SEは、例えば、LiI-LiBr-Li3PS4、Li2S-SiS2、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Li2S-P25、LiI-Li2O-Li2S-P25、LiI-Li2S-P25、LiI-Li3PO4-P25、Li2S-GeS2-P25、Li2S-P25、Li426、Li7311、およびLi3PS4からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0063】
例えば、「LiI-LiBr-Li3PS4」は、LiIとLiBrとLi3PS4とが任意のモル比で混合されることにより生成された硫化物SEを示す。例えば、メカノケミカル法により第2SEが生成されてもよい。「Li2S-P25」はLi3PS4を含む。Li3PS4は、例えばLi2SとP25とが「Li2S/P25=75/25(モル比)」で混合されることにより生成され得る。
【0064】
第2SEは、例えば、粒子状であってもよい。すなわち、第2層22は、例えば粒子層であってもよい。第2SEの平均フェレ径は、第2層22の厚さ以下であってもよい。第2SEの平均フェレ径は、コア粒子10の最大フェレ径の1/3(3分の1)以下であってもよい。第2SEのサイズが、コア粒子10のサイズに比して十分に小さいことにより、被覆層20がコア粒子10の表面の凹凸を埋めやすくなる傾向がある。これにより、例えば被覆率の向上が期待される。第2SEの平均フェレ径は、例えば5~200nm、または10~100nmであってもよい。
【0065】
〈第2層の追加成分〉
図2は、本実施形態における複合粒子の一例を示す第2概念図である。
第2層22は、第2SEに加えて、第1細片41をさらに含んでいてもよい。第1細片41は、第1SEを含む。すなわち、第2層22は、第1SEをさらに含んでいてもよい。ただし、第2層22において、第2SEの体積分率は、第1SEの体積分率に比して大きい。第1細片41は、第2層22中に分散していてもよい。第1細片41は、例えば、第1層21から第1SEが脱落することにより発生し得る。第1細片41は、例えば、一部の第1SEが第1層21の形成に寄与しないことにより発生し得る。
【0066】
第2層22は、第2SEに加えて、第2細片42をさらに含んでいてもよい。第2細片42は、活物質を含む。すなわち、第2層22は、活物質をさらに含んでいてもよい。ただし、第2層22において、第2SEの体積分率は、活物質の体積分率に比して大きい。第2細片42は、第2層22中に分散していてもよい。第2細片42は、例えば、コア粒子10の欠損により発生し得る。
【0067】
第2層22は、第2SEに加えて、第3細片43をさらに含んでいてもよい。第3細片43は、第1SEと活物質とを含む。すなわち、第2層22は、第1SEおよび活物質の両方をさらに含んでいてもよい。第2層22において、第1SEが活物質に付着していてもよい。例えば、第2層22の形成時に、コア粒子10の一部と共に第1層21の一部が欠損することにより、第3細片43が発生し得る。
【0068】
ここでは、第1細片41、第2細片42、および第3細片43が「細片」と総称される。細片は、任意の形状を有し得る。細片は、例えば、球状、楕円体状、フレーク状、または繊維状であってもよい。細片は、例えば、1nm以上の最大フェレ径を有する。細片は、第2層22の厚さ以下の最大フェレ径を有する。1個の複合粒子30は、例えば、1~100個、20~80個、30~70個、または30~50個の細片を含んでいてもよい。細片の個数は、10個以上の複合粒子30において測定される。複合粒子30の断面SEM画像において、1nm以上の最大フェレ径を有する細片が計数される。10個の複合粒子30における算術平均が採用される。
【0069】
図3は、複合粒子の断面SEM画像、およびSEM-EDXによる元素マッピング画像の一例である。Sの元素マッピング画像は、第2層(第2SE)の分布を示す。Fの元素マッピング画像は、第1層(第1SE)の分布を示す。Niの元素マッピング画像は、コア粒子(活物質)の分布を示す。例えば、Sの元素マッピング画像と、Niの元素マッピング画像とから、第2層に活物質の細片(チッピング)が含まれていることが確認できる。なお、図3の複合粒子は、体積分率で、4.6%の第1SEと、10%の第2SEと、残部の活物質とからなる。例えば、断面SEM画像、または元素マッピング画像における面積分率が、体積分率とみなされ得る。
【0070】
第2層は、体積分率で、例えば、0~10%の第1細片と、0~10%の第2細片と、0~10%の第3細片と、残部の第2SEとからなっていてもよい。第2層は、体積分率で、例えば、1~5%の第1細片と、1~5%の第2細片と、1~5%の第3細片と、残部の第2SEとからなっていてもよい。第2層は、体積分率で、例えば、1~3%の第1細片と、1~3%の第2細片と、1~3%の第3細片と、残部の第2SEとからなっていてもよい。
【0071】
〈配合量〉
活物質、第1SE、第2SEの配合量は任意である。例えば、100質量部の活物質に対して、第1SEは、1~10質量部、または2~3質量部であってもよい。例えば、100質量部の活物質に対して、第1SEは、1.3~8.8質量部、2.4~4.8質量部、または3.8~4.8質量部であってもよい。
【0072】
第2SEの配合量は、第1SEの配合量より少なくてもよい。第2SEの配合量は、第1SEの配合量より多くてもよい。第1SEと第2SEとの質量比(第1SE/第2SE)は、例えば、0.5~2であってもよい。例えば、100質量部の活物質に対して、第2SEは、0.1~20質量部または0.5~15質量部であってもよい。
【0073】
100質量部の活物質に対して、第1SEの配合量と第2SEの配合量との合計は、例えば、2.7~11.5質量部、4~7.5質量部、5.1~7.5質量部、または6.5~7.5質量部であってもよい。
【0074】
《コア粒子》
コア粒子10は、複合粒子30の基材である。複合粒子30は、1個のコア粒子10を単独で含んでいてもよい。複合粒子30は、複数個のコア粒子10を含んでいてもよい。コア粒子10は、例えば、二次粒子であってもよい。二次粒子は、一次粒子の集合体である。例えば、一次粒子の粒界に沿ってチッピングが発生することがある。二次粒子のD50は、例えば、1~30μm、2~20μm、3~15μm、3~6μm、または4~5μmであってもよい。一次粒子の平均フェレ径は、例えば、0.01~3μmであってもよい。
【0075】
コア粒子10は、任意の形状を有し得る。コア粒子10は、例えば、球状、楕円体状、フレーク状、または繊維状等であってもよい。コア粒子10は、中実粒子であってもよいし、中空粒子であってもよい。
【0076】
コア粒子10は、活物質を含む。活物質は、電極反応を生起し得る。コア粒子10は、例えば正極活物質を含んでいてもよい。正極活物質は、任意の成分を含み得る。正極活物質は、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn24、Li(NiCoMn)O2、Li(NiCoAl)O2、Li(NiCoMnAl)O2、およびLiFePO4からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。例えば「Li(NiCoMn)O2」における「(NiCoMn)」は、括弧内の組成比の合計が1であることを示す。合計が1である限り、個々の成分量は任意である。Li(NiCoMn)O2は、例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/32、LiNi0.4Co0.3Mn0.32、LiNi0.5Co0.2Mn0.32、LiNi0.5Co0.3Mn0.22、LiNi0.5Co0.4Mn0.12、LiNi0.5Co0.1Mn0.42、LiNi0.6Co0.2Mn0.22、LiNi0.6Co0.3Mn0.12、LiNi0.6Co0.1Mn0.32、LiNi0.7Co0.1Mn0.22、LiNi0.7Co0.2Mn0.12、LiNi0.8Co0.1Mn0.12、およびLiNi0.9Co0.05Mn0.052からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。Li(NiCoAl)O2は、例えばLiNi0.8Co0.15Al0.052等を含んでいてもよい。
【0077】
正極活物質は、例えば下記式(3)により表されてもよい。
Li1-yNix1-x2 …(3)
0.5≦x≦1
-0.5≦y≦0.5
上記式(3)中、Mは、例えば、Co、MnおよびAlからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。xは、例えば、0.6以上であってもよいし、0.7以上であってもよいし、0.8以上であってもよいし、0.9以上であってもよい。
【0078】
正極活物質は、例えば添加物を含んでいてもよい。添加物は、例えば、置換型固溶原子、または侵入型固溶原子であってもよい。添加物は、正極活物質(一次粒子)の表面に付着する付着物であってもよい。付着物は、例えば、単体、酸化物、炭化物、窒化物、ハロゲン化物等であってもよい。添加量は、例えば、0.01~0.1、0.02~0.08、または0.04~0.06であってもよい。添加量は、正極活物質の物質量に対する、添加物の物質量の比を示す。添加物は、例えば、B、C、N、ハロゲン、Sc、Ti、V、Cu、Zn、Ga、Ge、Se、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、In、Sn、W、およびランタノイドからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0079】
コア粒子10は、例えば負極活物質を含んでいてもよい。負極活物質は、任意の成分を含み得る。負極活物質は、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、Si、SiOx(0<x<2)、Si基合金、Sn、SnOx(0<x<2)、Li、Li基合金、およびLi4Ti512からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。SiOx(0<x<2)は、例えばMg等がドープされていてもよい。合金系活物質(例えばSi等)が、炭素系活物質(例えば黒鉛等)に担持されることにより、複合材料が形成されてもよい。
【0080】
<複合粒子の製造方法>
図4は、本実施形態における複合粒子の製造方法の概略フローチャートである。
本実施形態における複合粒子の製造方法(以下「本製造方法」と略記され得る)は、「(a)コア粒子の準備」および「(b)被覆層の形成」を含む。
【0081】
《(a)コア粒子の準備》
本製造方法は、コア粒子10を準備することを含む。コア粒子10は、任意の方法で準備され得る。例えば、コア粒子10が合成されてもよい。例えば、既製品のコア粒子10が入手されてもよい。
【0082】
《(b)被覆層の形成》
本製造方法は、被覆層20を形成することを含む。被覆層20は、コア粒子10の表面の少なくとも一部を被覆するように形成される。被覆層20は、第1層21および第2層22を含む。例えば、メカノケミカル法により、第1層21および第2層22が順次形成されてもよい。例えば、機械的負荷が加わる条件下で、コア粒子10と、第1SEとが混合されることにより、第1層21が形成され得る。各層の形成時、例えば、コア粒子10等に加わる機械的負荷の大きさにより、第2層22に含まれる細片の個数(チッピングの発生量)が調整され得る。機械的負荷の大きさは、例えば、装置のタイプ、装置の運転条件等により調整され得る。機械的負荷は、例えば、せん断負荷、衝撃負荷、圧縮負荷等を含む。例えば、乾式の粒子複合化装置(例えば、循環型メカノフュージョン装置等)においては、比較的大きなせん断負荷、および衝撃負荷が発生し得る。例えば、乾式の攪拌造粒機、湿式の混練装置(例えば、羽根回転式混練装置、容器回転式混練装置、ニーダー等)においては、比較的小さなせん断負荷が発生し得る。
【0083】
<全固体電池>
図5は、本実施形態における全固体電池の概念図である。
全固体電池200は、発電要素150を含む。全固体電池200は、例えば、外装体(不図示)を含んでいてもよい。外装体が、発電要素150を収納していてもよい。外装体は任意の形態を有し得る。外装体は、例えば、金属箔ラミネートフィルム製のパウチ等であってもよいし、金属製のケース等であってもよい。
【0084】
全固体電池200は、1個の発電要素150を単独で含んでいてもよいし、複数個の発電要素150を含んでいてもよい。複数個の発電要素150は、例えば、直列回路を形成していてもよいし、並列回路を形成していてもよい。
【0085】
発電要素150は、正極110とセパレータ層130と負極120とを含む。すなわち全固体電池200は、電極を含む。正極110および負極120の少なくとも一方は、本実施形態における電極材料を含む。すなわち、電極は電極材料を含む。
【0086】
《正極》
正極110は層状である。正極110は、例えば、正極活物質層と、正極集電体とを含んでいてもよい。例えば、正極集電体の表面に正極合材が塗着されることにより、正極活物質層が形成されていてもよい。正極集電体は、例えば、アルミニウム箔等を含んでいてもよい。正極集電体は、例えば、5~50μmの厚さを有していてもよい。
【0087】
正極活物質層は、例えば、10~200μmの厚さを有していてもよい。正極活物質層は、セパレータ層130に密着している。正極活物質層は、正極合材を含む。正極合材は、正極活物質と硫化物SEとを含む。正極合材は、本実施形態における電極材料を含んでいてもよい。正極合材は、フッ化物SE、導電材およびバインダ等をさらに含んでいてもよい。電極材料、正極活物質、フッ化物SE、および硫化物SEの詳細は、前述のとおりである。
【0088】
硫化物SEは、正極活物質層内にイオン伝導パスを形成し得る。硫化物SEの配合量は、100体積部の正極活物質に対して、例えば、1~200体積部であってもよいし、50~150体積部であってもよいし、50~100体積部であってもよい。正極合材(正極活物質層)に混合される硫化物SEは、電極材料に含まれる第2SEと同種であってもよいし、異種であってもよい。
【0089】
導電材は、正極活物質層内に電子伝導パスを形成し得る。導電材の配合量は、100質量部の正極活物質に対して、例えば0.1~10質量部であってもよい。導電材は、任意の成分を含み得る。導電材は、例えば、カーボンブラック(CB)、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)およびグラフェンフレーク(GF)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。CBは、例えば、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(登録商標)、およびファーネスブラックからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0090】
バインダは、固体材料同士を結合し得る。バインダの配合量は、100質量部の正極活物質に対して、例えば0.1~10質量部であってもよい。バインダは任意の成分を含み得る。バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0091】
《負極》
負極120は層状である。負極120は、例えば、負極活物質層と、負極集電体とを含んでいてもよい。例えば、負極集電体の表面に負極合材が塗着されることにより、負極活物質層が形成されていてもよい。負極集電体は、例えば、銅箔、ニッケル箔等を含んでいてもよい。負極集電体は、例えば、5~50μmの厚さを有していてもよい。
【0092】
負極活物質層は、例えば、10~200μmの厚さを有していてもよい。負極活物質層は、セパレータ層130に密着している。負極活物質層は負極合材を含む。負極合材は、負極活物質と硫化物SEとを含む。負極合材は、本実施形態における電極材料を含んでいてもよい。負極合材は、フッ化物SE、導電材およびバインダ等をさらに含んでいてもよい。各材料の詳細は、前述のとおりである。正極110と負極120との間で、硫化物SE、導電材およびバインダは同種であってもよいし、異種であってもよい。
【0093】
《セパレータ層》
セパレータ層130は、例えば1~100μmの厚さを有していてもよい。セパレータ層130は、「SE層」とも称され得る。セパレータ層130は、正極110と負極120との間に介在している。セパレータ層130は、正極110を負極120から分離している。セパレータ層130は、硫化物SEを含む。セパレータ層130は、フッ化物SEおよびバインダをさらに含んでいてもよい。各材料の詳細は、前述のとおりである。セパレータ層130と正極110との間で、硫化物SEは同種であってもよいし、異種であってもよい。セパレータ層130と負極120との間で、硫化物SEは同種であってもよいし、異種であってもよい。
【実施例
【0094】
<実験1>
以下のように、No.1-1~1-4に係る電極材料、正極および全固体電池が製造された。
【0095】
《No.1-1》
コア粒子として、Li(NiCoAl)O2が準備された。以下「Li(NiCoAl)O2」が「NCA」と略記され得る。
【0096】
エトキシリチウムと、ペンタエトキシニオブと、超脱水エタノールとが混合されることにより、前駆体溶液が準備された。NCAの表面が前駆体溶液でコーティングされることにより、複合粒子が形成された。複合粒子が熱処理されることにより、前駆体溶液が被覆層に変換された。被覆層は、第1層からなっていた。第1層は、酸化物SEを含んでいた。酸化物SEは、LiNbO3の組成を有していた。
【0097】
《No.1-2》
遊星型ボールミルによって、LiFと、TiF4と、AlF3とが混合されることにより、フッ化物SEが合成された。フッ化物SEは、Li2.7Ti0.3Al0.76の組成を有していた。以下「Li2.7Ti0.3Al0.76」が「LTAF」と略記され得る。
【0098】
粒子複合化装置として、「ノビルタNOB-MINI(ホソカワミクロン社製)」が準備された。粒子複合化装置において、48.7質量部のNCAと、1.3質量部のLTAFとに対して、複合化処理が施されることにより、複合粒子が形成された。装置の運転条件は、下記のとおりである。
【0099】
電力:材料1gあたり12W
回転数:6000rpm
処理時間:30分
【0100】
複合粒子は、被覆層を含んでいた。被覆層は第1層からなっていた。第1層は、LTAFを含んでいた。
【0101】
《No.1-3》
硫化物SEとして、Li2S-P25が準備された。硫化物SEは、ガラスセラミックスであった。以下「Li2S-P25」が「LPS」と略記され得る。
【0102】
No.1-1に係る複合粒子が準備された。粒子複合化装置において、71.6質量部の複合粒子と、3.4質量部のLPSとに対して、複合化処理が施された。装置の運転条件は、下記のとおりである。
【0103】
電力:材料1gあたり3W
回転数:1000rpm
処理時間:30分
【0104】
複合化処理により、第1層と第2層とを含む被覆層が形成された。第1層は、LiNbO3を含んでいた。第2層は、LPSを含んでいた。
【0105】
《No.1-4》
No.1-2に係る複合粒子が準備された。粒子複合化装置において、71.6質量部の複合粒子と、3.4質量部のLPSとに対して、複合化処理が施された。装置の運転条件は、下記のとおりである。
【0106】
電力:材料1gあたり3W
回転数:1000rpm
処理時間:30分
【0107】
複合化処理により、第1層と第2層とを含む被覆層が形成された。第1層は、LTAFを含んでいた。第2層は、LPSを含んでいた。
【0108】
<評価>
上記で得られた複合粒子(電極材料)を含む正極が製造された。さらに正極を含む試験電池(全固体電池)が製造された。試験電池の構成は下記のとおりである。
【0109】
外装体:Alラミネートフィルム
正極活物質層の組成:複合粒子+LPS+AB+VGCF+バインダ
正極集電体:アルミニウム箔
負極活物質:Li4Ti512
【0110】
《初期抵抗》
試験電池のSOC(State Of Charge)が50%に調整された。60.2Cの時間率で試験電池が2秒間放電された。放電時の電圧降下量と、電流とから、初期抵抗が求められた。下記表1の初期抵抗は、No.1-1の初期抵抗に対する、相対値である。No.1-1の初期抵抗が100%とみなされる。
【0111】
なお「C」は電流の時間率(レート)を表す記号である。1Cの時間率においては、電池の定格容量が1時間で放電される。
【0112】
《抵抗増加率》
初期抵抗の測定後、耐久試験が実施された。すなわち、下記条件でパルス充放電サイクルが実施された。
【0113】
試験温度:80℃
SOC範囲:50~60%
充放電サイクル回数:800
【0114】
耐久試験後、初期抵抗と同様に、耐久後抵抗が測定された。耐久後抵抗が初期抵抗で除されることにより、抵抗増加率が求められた。下記表1の抵抗増加率は、No.1-1の抵抗増加率に対する、相対値である。No.1-1の抵抗増加率が100%とみなされる。
【0115】
《電子伝導度》
試験電池に使用された正極と同一仕様の正極が準備された。打ち抜き加工により、正極から、2枚の円板試料が打ち抜かれた。各円板試料の面積は、1cm2であった。正極活物質層同士が対向するように、2枚の円板試料が圧着されることにより、積層体が形成された。積層体の厚さ、積層体の直流抵抗が測定された。厚さおよび直流抵抗から、電子伝導度が求められた。下記表1の電子伝導度は、No.1-2の電子伝導度に対する、相対値である。No.1-2の電子伝導度が1.00とみなされる。
【0116】
【表1】
【0117】
上記表1に示されるように、No.1-4は、その他の試料に比して、抵抗増加率が顕著に低減していた。No.1-4の被覆層は、第1層と第2層とを含む。第1層は、フッ化物SE(LTAF)を含む。第2層は、硫化物SE(LPS)を含む。
【0118】
上記表1において、第2層目としてLPSを被覆することにより、電子伝導度が向上する傾向がみられる。コア粒子(活物質)または第1層の細片が、第2層に留まることにより、細片が電極中に拡散することが抑制され得るためと推測される。
【0119】
<実験2>
以下のように、No.2-1~2-6に係る電極材料、正極および全固体電池が製造された。
【0120】
《No.2-1、2-5》
No.2-1は、No.1-2と同一仕様を有する。No.2-5は、No.1-4と同一仕様を有する。
【0121】
《No.2-2~2-4、2-6》
下記表1に示されるように、LPSの配合量が変更されることを除いては、No.1-4と同様に、電極材料、正極および全固体電池が製造された。
【0122】
<評価>
実験1と同様に抵抗増加率が測定された。下記表2の抵抗増加率は、No.1-1の抵抗増加率に対する、相対値である。No.1-1の抵抗増加率が100%とみなされる。
【0123】
実験1と同様に、電子伝導度が測定された。下記表2の電子伝導度は、No.2-1(No.1-2)に対する、相対値である。No.2-1の電子伝導度が1.00とみなされる。
【0124】
【表2】
【0125】
上記表2に示されるように、例えば、第2SE(LPS)の配合量が調整されることにより、抵抗増加率がいっそう低減することが期待される。
【0126】
上記表2において、第2SE(LPS)の配合量が増加する程、電子伝導度が向上する傾向がみられる。
【符号の説明】
【0127】
10 コア粒子、20 被覆層、21 第1層、22 第2層、30 複合粒子、41 第1細片、42 第2細片、43 第3細片、110 正極、120 負極、130 セパレータ層、150 発電要素、200 全固体電池。
図1
図2
図3
図4
図5