(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの短絡検査方法、蓄電デバイスの製造方法、及び、接続済みデバイス拘束体の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/378 20190101AFI20241217BHJP
G01R 31/52 20200101ALI20241217BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20241217BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20241217BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G01R31/378
G01R31/52
H01M10/48 P
H01M10/04 Z
H02J7/00 Y
(21)【出願番号】P 2022150809
(22)【出願日】2022-09-22
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】トヨタバッテリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 博昭
(72)【発明者】
【氏名】米山 俊樹
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-045874(JP,A)
【文献】特開2018-055878(JP,A)
【文献】特開2020-061301(JP,A)
【文献】特開2018-067498(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0153290(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
G01R 31/52
H01M 10/48
H01M 10/04
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
初充電を経た蓄電デバイスを充電又は放電して第1デバイス電圧に調整する電圧調整工程と、
前記蓄電デバイスの放置前デバイス電圧を測定する放置前電圧測定工程と、
前記放置前デバイス電圧を測定した前記蓄電デバイスを、放置期間に亘り、端子開放状態で放置する放置工程と、
前記放置工程の後に、前記蓄電デバイスの放置後デバイス電圧を測定する放置後電圧測定工程と、
前記蓄電デバイスの前記放置前デバイス電圧と前記放置後デバイス電圧との間の実測電圧低下率を
、前記放置前デバイス電圧から前記放置後デバイス電圧までの電圧低下量を前記放置期間で除して得る実測工程と、
前記蓄電デバイスの前記実測電圧低下率を用いて、当該蓄電デバイスの短絡の有無を判定する短絡判定工程と、を備える
蓄電デバイスの短絡検査方法であって、
前記短絡判定工程に先立ち、
予め得ておいた前記電圧調整工程での調整完了時以降のデバイス電圧の典型変化例を用いて、
前記電圧調整工程での電圧調整完了から前記放置前電圧測定工程での前記放置前デバイス電圧の測定までに掛かった経過時間、及び、前記放置期間に応じて、
前記蓄電デバイスに生じると推定される推定電圧低下率を取得する推定工程を更に備え、
前記短絡判定工程は、
前記実測電圧低下率と前記推定電圧低下率を用いて、当該蓄電デバイスの短絡の有無を判定する
蓄電デバイスの短絡検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電デバイスの短絡検査方法であって、
前記電圧調整工程の後、前記放置前電圧測定工程の前に、
前記第1デバイス電圧に調整された複数の前記蓄電デバイスを、相互に未接続としつつ、拘束部材で拘束して、
複数の被拘束デバイスを含むデバイス拘束体を構成する拘束工程をさらに備え、
前記放置前電圧測定工程、前記放置工程、及び、前記放置後電圧測定工程を、前記デバイス拘束体に拘束された前記被拘束デバイスについて行う
蓄電デバイスの短絡検査方法。
【請求項3】
請求項1に記載の蓄電デバイスの短絡検査方法により、前記蓄電デバイスの短絡の有無を検査する短絡検査工程と、
上記短絡検査工程で短絡と判定された前記蓄電デバイスを排出する排出工程と、を備える
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載の蓄電デバイスの短絡検査方法により、単一の前記デバイス拘束体に含まれる各々の前記被拘束デバイスの短絡の有無を検査する短絡検査工程と、
含まれている複数の前記被拘束デバイスがいずれも短絡を生じていないと判定された前記デバイス拘束体の前記被拘束デバイス同士を接続する接続工程と、を備える
接続済みデバイス拘束体の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の接続済みデバイス拘束体の製造方法であって、
同じ前記デバイス拘束体に含まれていた複数の前記被拘束デバイスから、前記短絡検査工程で短絡を生じていると判定された少なくとも1つの前記被拘束デバイスを除去する除去工程と、
前記短絡判定工程で短絡を生じていないと判定された、残る複数の前記被拘束デバイスと、別の前記デバイス拘束体に含まれて、前記短絡検査工程で短絡を生じていないと判定されており、予め用意しておいた補充用蓄電デバイスとで、前記デバイス拘束体を再構成する再拘束工程と、を備える
接続済みデバイス拘束体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスの短絡検査方法、蓄電デバイスの製造方法、及び、接続済みデバイス拘束体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池などの蓄電デバイスを製造するに当たり、短絡検査を行うことが行われている。例えば,特許文献1には、初期活性化工程で初期充電された二次電池(以下、電池ともいう)を放電してSOCの値を調整するSOC調整工程と、SOC調整された電池を、即ち、所定の電池電圧に調整された電池を放置等して自己放電させる自己放電工程と、を備え、自己放電工程における電池の電圧降下量に基づいて短絡の有無を検出する二次電池の短絡検査方法が示されている。短絡している電池は、短絡していない電池に比して、同じ自己放電工程の期間に、大きな電圧降下量を生じるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、初充電した後の電池を所定の電池電圧とし、その後に放置すると、上述したように、短絡している電池は、短絡していない電池に比して、同じ期間に、大きく電池電圧が低下する。電池内の短絡部位を介して、電池に蓄えられている電荷が放電されるからである。なお、この場合には、短絡部分の抵抗値が変化しないとすると、概ね定電流放電となり、電池のSOCが低い場合(例えばSOC10%以下の場合)など蓄積電荷量に対して電池電圧が非線形に急変する範囲を除いて、短絡している電池の電池電圧は概ね一定の割合で低下する。
【0005】
しかるに、初充電した後の電池を所定の電池電圧とし、その後に放置した場合に生じる電池電圧の低下は、上述の短絡による電池電圧の低下のみではない。例えば、短絡を生じていない(良品の)電池を初充電する。容量検査などのため充放電を行う。さらに充電により所定の電池電圧に調整し、その後さらに放置した場合、電池電圧を調整した直後に、電池電圧が比較的大きく低下する。しかし、その後は、時間の経過と共に電圧低下が緩やかになり、ついには概ね一定の電池電圧値に近づく挙動を取る。活物質粒子と電解液との反応による粒子表面へのSEI被膜形成が時間と共に鈍化し、このような被膜形成による電池電圧の低下が収束するためであると考えられる。つまり、初充電及び充放電を経た電池では、充電又は放電により所定の電池電圧に調整を完了してから短絡検査を開始するまでの経過時間の長短により、短絡検査の期間に生じる電池電圧の低下量の大きさが変化する。また、放置前の電圧測定から放置後の電圧測定までの期間(放置期間)の長さによっても、電池電圧の低下量の大きさは変化する。
【0006】
従って、短絡を生じていない電池では、所定の電池電圧に調整完了した以降、上述のように電池電圧が低下する。一方、短絡を生じている電池では、短絡を生じていない電池に生じる電圧低下に、短絡による電圧低下が加わった電圧低下が生じる。このため、短絡検査の期間に生じる電池電圧の低下率を得るだけでは、電池(蓄電デバイス)の短絡の有無を判断するのが難しかった。
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、初充電し所定のデバイス電圧に調整した蓄電デバイスについて、適切に短絡の有無を判定できる蓄電デバイスの短絡検査方法、この検査方法を用いた蓄電デバイスの製造方法、及び、この検査方法を用いた接続済みデバイス拘束体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するための本発明の一態様は、初充電を経た蓄電デバイスを充電又は放電して第1デバイス電圧に調整する電圧調整工程と、前記蓄電デバイスの放置前デバイス電圧を測定する放置前電圧測定工程と、前記放置前デバイス電圧を測定した前記蓄電デバイスを、放置期間に亘り、端子開放状態で放置する放置工程と、前記放置工程の後に、前記蓄電デバイスの放置後デバイス電圧を測定する放置後電圧測定工程と、前記蓄電デバイスの前記放置前デバイス電圧と前記放置後デバイス電圧との間の実測電圧低下率を、前記放置前デバイス電圧から前記放置後デバイス電圧までの電圧低下量を前記放置期間で除して得る実測工程と、前記蓄電デバイスの前記実測電圧低下率を用いて、当該蓄電デバイスの短絡の有無を判定する短絡判定工程と、を備える蓄電デバイスの短絡検査方法であって、前記短絡判定工程に先立ち、予め得ておいた前記電圧調整工程での調整完了時以降のデバイス電圧の典型変化例を用いて、前記電圧調整工程での電圧調整完了から前記放置前電圧測定工程での前記放置前デバイス電圧の測定までに掛かった経過時間、及び、前記放置期間に応じて、前記蓄電デバイスに生じると推定される推定電圧低下率を取得する推定工程を更に備え、前記短絡判定工程は、前記実測電圧低下率と前記推定電圧低下率を用いて、当該蓄電デバイスの短絡の有無を判定する蓄電デバイスの短絡検査方法である。
【0009】
この蓄電デバイスの短絡検査方法では、個々の蓄電デバイスについて、実測電圧低下率を実測する一方、経過時間及び放置期間に応じた推定電圧低下率を得、この二者を用いて当該蓄電デバイスの短絡の有無を判定するので、適切に蓄電デバイスの短絡の有無を判定できる。
【0010】
なお、推定工程で、経過時間及び放置期間に応じた推定電圧低下率を得るに当たっては、先行する同一ロットや同一品番の別ロットなどの蓄電デバイスで得た経過時間及び放置期間に応じた実測電圧低下率を利用して、推定電圧低下率を得るようにすると良い。
【0011】
「蓄電デバイス」としては、例えば、リチウムイオン二次電池等の二次電池や、リチウムイオンキャパシタ等のキャパシタなどが挙げられる。
行っても良い。
【0012】
(2)(1)蓄電デバイスの短絡検査方法であって、前記電圧調整工程の後、前記放置前電圧測定工程の前に、前記第1デバイス電圧に調整された複数の前記蓄電デバイスを、相互に未接続としつつ、拘束部材で拘束して、複数の被拘束デバイスを含むデバイス拘束体を構成する拘束工程をさらに備え、前記放置前電圧測定工程、前記放置工程、及び、前記放置後電圧測定工程を、前記デバイス拘束体に拘束された前記被拘束デバイスについて行う蓄電デバイスの短絡検査方法とすると良い。
【0013】
この蓄電デバイスの短絡検査方法では、蓄電デバイスを拘束した被拘束デバイスの状態で、当該被拘束デバイスの短絡の有無を適切に判定できる。
【0014】
「デバイス拘束体」としては、複数の蓄電デバイスを、拘束部材を用いてそれぞれ所定の方向に拘束した拘束体であれば良い。例えば、複数の二次電池などの蓄電デバイスを積層方向に一列に積み重ねた電池スタックなどのデバイススタックが挙げられる。
【0015】
電圧調整工程で第1デバイス電圧に調整した後の複数の蓄電デバイスを拘束して、複数の被拘束デバイスを含むデバイス拘束体を構成するに当たっては、蓄電デバイスを第1デバイス電圧に調整した後、速やかに拘束してデバイス拘束体としても良い。また、適宜の期間、無拘束下或いはデバイス拘束体での拘束よりも弱い弱拘束下で各蓄電デバイスを放置し、この状態で短絡していると判定した蓄電デバイスを除去してから、デバイス拘束体を構成するようにしても良い。
【0016】
(3)或いは(1)に記載の蓄電デバイスの短絡検査方法により、前記蓄電デバイスの短絡の有無を検査する短絡検査工程と、上記短絡検査工程で短絡と判定された前記蓄電デバイスを排出する排出工程と、を備える蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0017】
上述の蓄電デバイスの製造方法では、短絡している蓄電デバイスを排出するので、短絡していない蓄電デバイスを適切に製造することができる。
【0018】
(4)あるいは(2)に記載の蓄電デバイスの短絡検査方法により、単一の前記デバイス拘束体に含まれる各々の前記被拘束デバイスの短絡の有無を検査する短絡検査工程と、含まれている複数の前記被拘束デバイスがいずれも短絡を生じていないと判定された前記デバイス拘束体の前記被拘束デバイス同士を接続する接続工程と、を備える接続済みデバイス拘束体の製造方法とすると良い。
【0019】
この接続済みデバイス拘束体の製造方法では、短絡検査工程で単一の前記デバイス拘束体に含まれる各々の被拘束デバイスの短絡の有無を検査し、含まれている複数の被拘束デバイスがいずれも短絡を生じていないと判定されたデバイス拘束体について、接続工程で被拘束デバイス同士を接続する。かくして、いずれも短絡を生じていないと判定された複数の被拘束デバイスを有するデバイス拘束体についてのみ、相互に接続して、容易に接続済みデバイス拘束体を製造できる。
【0020】
なお、被拘束デバイス(蓄電デバイス)同士の接続は、蓄電デバイスの接続端子の構造等に応じて適宜選択すれば良いが、例えば、バスバを用いて接続することができる。また、蓄電デバイス同士を電気的に直列接続とすることも、並列接続とすることもできる。
【0021】
(5)さらに(4)に記載の接続済みデバイス拘束体の製造方法であって、同じ前記デバイス拘束体に含まれていた複数の前記被拘束デバイスから、前記短絡検査工程で短絡を生じていると判定された少なくとも1つの前記被拘束デバイスを除去する除去工程と、前記短絡判定工程で短絡を生じていないと判定された、残る複数の前記被拘束デバイスと、別の前記デバイス拘束体に含まれて、前記短絡検査工程で短絡を生じていないと判定されており、予め用意しておいた補充用蓄電デバイスとで、前記デバイス拘束体を再構成する再拘束工程と、を備える接続済みデバイス拘束体の製造方法とすると良い。
【0022】
この接続済みデバイス拘束体の製造方法では、除去工程で短絡と判定された蓄電デバイスを除去する一方、再拘束工程では、短絡を生じていない残りの蓄電デバイスと、別のデバイス拘束体に含まれて短絡を生じていないと判定された補充用蓄電デバイスとで、デバイス拘束体を再構成する。かくして、被拘束デバイス内に短絡を生じた蓄電デバイスが含まれていた場合でも、容易にデバイス拘束体を再構成して接続済みデバイス拘束体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】実施形態1,2に係る電池の製造工程を示すフローチャートである。
【
図3】実施形態1,2に係り、短絡を生じていない電池の、電圧調整工程後の電池電圧の変化例を示すグラフである。
【
図4】実施形態2に係る電池スタックの説明図である。
【
図5】実施形態2に係る未接続電池スタックの説明図である。
【
図6】実施形態2に係る電池スタックの製造工程を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態2に係る電池スタックの製造工程のうち、拘束短絡検査工程の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施形態1)
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1に本実施形態等に係る電池(蓄電デバイス)10の縦断面図を示す。この電池10は、例えば、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、電気自動車等の車両やドローン、各種機器に搭載される角型で密閉型のリチウムイオン二次電池である。
【0025】
この電池10は、直方体状でアルミニウムからなるケース11と、ケース11の内部に収容された電極体12と、ケース11に支持され、ケース11の内部で電極体12に接続すると共に、ケース11の外部(
図1において上方)に突出する正極端子14及び負極端子15等を有している。
【0026】
次いで、電池10の製造について、
図2,
図3を参照して説明する。先ず、未充電の電池10を製造する。直方体状のケース11を有する密閉型の電池10の製造については、公知であるので説明を省略する。初充電工程S1(
図2参照)では、まず未充電の電池10に対し常温下でSOC60~100%とするCCCV充電による初充電を行う。本実施形態では、例えば、25℃の環境下で、定電流7C、カット電圧3.75V(SOC60%相当)、カット電流0.3CのCCCV充電を行う。次いで、高温エージング工程S2では、初充電した各電池10を開放状態で、50~80℃の環境下で10~200時間に亘り放置する高温エージング(本実施形態では、例えば70℃の環境下に18時間)を行う。電池10を冷却した後、更に、容量検査工程S3では、電池10をSOC100%まで充電し、その後、SOC0%まで電池10を放電させて電池10の容量(上述の手法による場合は放電容量)を測定する。
【0027】
ついで、電圧調整工程S4で、各電池10の電池電圧VBを常温下でSOC30~100%の範囲内の第1電圧VB1まで充電する。本実施形態では、例えば、25℃の環境下で、初充電工程S1と同じ、定電流7C、カット電圧3.75V(SOC60%相当)、カット電流0.3CのCCCV充電を行う。即ち、各電池10の電池電圧VBを、一旦、同じ第1電圧VB1(本実施形態では、VB1=3.75V)に揃える。
【0028】
続いて個別短絡検査工程S5では、電圧調整工程S4を行った後の個々の電池10について短絡検査を行う。具体的にはまず、放置前電圧測定工程S51で、電池10の電池電圧VBである放置前第2電圧VB2aを測定する。なお、前述のように、CCCV充電により電池10の電池電圧VBを、一旦、同じ第1電圧VB1に揃えた。しかし、CCCV充電を終了した直後に、CV充電時に電池抵抗分に充電電流によって生じる電圧降下分だけ電池電圧VBが低下する。このほか、電池10が短絡していない場合でも、後述するように、時間の経過と共に、電池電圧VBは徐々に低下する(
図3参照)。このため、次述する個別放置工程S52に先立ち、第1電圧VB1に充電された後の各々の電池10の放置前第2電圧VB2aを測定しておく。
【0029】
前述したように、電圧調整工程S4で、CCCV充電により、電池10の電池電圧VBを第1電圧VB1とする(以下、このタイミングを調整完了時Tcとする。)と、調整完了時Tc以降、電池10が短絡していない場合には、例えば
図3のグラフに示すように、経過時間KTの増加と共に、電池10の電池電圧VBは減少する。即ち、CCCV充電を終了すると、CV充電の終了直前には、電池10にカットオフ電流(例えば1C)を流すことによって電池抵抗によって生じていた電圧降下分だけ、電池電圧VBが速やかに低下する。更に、調整完了時Tcの直後から数時間~1日程度経過するまでの期間に電池電圧VBが大きく(例えば
図6では、0.003V=3mV)程度低下した後、さらに徐々に低下する。但し、電池電圧VBの低下は、徐々に緩やかになり、数100日掛かって、電池電圧VBは安定する。即ち、電池電圧VBを第1電圧VB1とした調整完了時Tcから、数日経過以降も電池電圧VBは低下し続けるが、直線的に低下するのではなく、経過時間KTが大きくなるほど電池電圧VBの低下が緩やかになり、
図3に示すように、下に凸の形状のグラフとなる。
【0030】
一方、電池10が短絡していた場合には、電池10内の短絡部位(図示しない)を介して、電池10に蓄えられている電荷が放電される。このため、短絡部分の短絡抵抗値が変化しないとすると、概ね定電流放電となり、電池10の電池電圧VBは概ね一定の割合で低下する。つまり、電池10が短絡していた場合には、前述の電池10が短絡していない場合の電池電圧VBの低下(
図3参照)に、短絡部分の定電流放電による電池電圧VBの一定割合での低下が加わった変化となる。
【0031】
次いで、個別放置工程S52において、正極端子14及び負極端子15を開放状態とした電池10を、無拘束或いは僅かに拘束した状態として、25℃の環境下で個別放置期間IH(本実施形態1では、IH≧5.0日(IH≧120時間))に亘り放置する。その後、放置後電圧測定工程S53で、放置後の電池10の電池電圧VBである放置後第2電圧VB2bを測定する。
【0032】
続く低下率取得工程S54では、放置前第2電圧VB2aと放置後第2電圧VB2bとの差電圧(第2電圧低下量ΔVB2)を実際の個別放置期間IHで除して、単位時間当たり(例えば、1日当たりの、或いは1時間当たり)の第2電圧低下量である第2電圧低下率DVB2を算出する。
【0033】
個別放置期間IHの長さは、個別放置期間IH内に週末を含むか否か、放置後電圧測定工程S53の遅延の有無などにより、個別放置工程S52のロット毎に放置後電圧測定工程S53を行い得るタイミングが異なり、個別放置期間IHの長さが変動する場合があり得る。このため、後述する短絡判定工程S57において、放置前第2電圧VB2aと放置後第2電圧VB2bとの差電圧(第2電圧低下量ΔVB2)を用いるよりも、第2電圧低下率DVB2などの低下率を用いた方が、判定基準との比較がしやすいからである。
【0034】
なお、
図3では、経過時間KT=5.0
日で、個別放置期間IH=5.0
日であるとしたときに、放置前第2電圧VB2a、放置後第2電圧VB2b、第2電圧低下量ΔVB2、及び、第2電圧低下率DVB2を得る場合を例示している。
【0035】
続く推定低下率取得工程S55では、電池10に生じると推定される推定電圧低下率EDV2を取得する。具体的には、別途、先行する同一ロットや同一品番の別ロットなどの電池10から得ておいた、電池10の電圧調整工程S4での調整完了時Tc以降の電池電圧VBの典型変化例(
図3参照)や、電圧調整工程S4での調整完了時Tcから放置前電圧測定工程S51での放置前第2電圧VB2aの測定までの経過時間KT、及び、個別放置期間IHに応じて実測した第2電圧低下率DVB2などを用いて得た関係式、関係式を示すグラフや関係表を得ておく。これらを用いて、今回供試された電池10について、調整完了時Tcからの経過時間KT及び個別放置期間IHに応じた推定電圧低下率EDV2を得る。
【0036】
例えば、電池電圧VBの典型変化例として、予め、
図3に示すグラフが得られていたとした場合には、この
図3のグラフを用いて、上述の第2電圧低下率DVB2と同様にして、経過時間KT及び個別放置期間IHに応じた推定電圧低下率EDV2を得ることができる。なお
図3には、経過時間KT=5.0
日で、個別放置期間IH=5.0
日であるとしたときに、推定電圧低下率EDV2を得る場合をも例示している。即ち、調整完了時Tcから放置前第2電圧VB2aの測定までの経過時間KT(
図3ではKT=5.0日)が経過時点の推定放置前第2電圧EV2aと、さらにこれから個別放置期間IHが経過した時点(
図3ではKT+IH=10.0日)の推定放置後第2電圧EV2bを取得し、推定第2電圧低下量ΔEV2(=EV2a-EV2b)を算出し、これを個別放置期間IHで除して推定電圧低下率EDV2(=ΔEV2/IH)を得る。
【0037】
容易に理解できるように、本実施形態1では、電池10毎に、調整完了時Tc以降、個別短絡検査工程S5(放置前電圧測定工程S51)を行うまでの経過時間KTが変動したり、個別放置期間IHの長さが変動しても、経過時間KTや個別放置期間IHに応じた推定電圧低下率EDV2を得ることができる。
【0038】
さらに、しきい低下率算出工程S56では、取得した推定電圧低下率EDV2に予め定めた許容幅PW2を加えて、しきい低下率THD2(=EDV2+PW2)を算出する。許容幅PW2は、推定電圧低下率EDV2に生じ得るバラツキなどを考慮して定めておく。
【0039】
そして、短絡判定工程S57では、電池10について取得した第2電圧低下率DVB2により、電池10の短絡の有無を判定する。具体的には、第2電圧低下率DVB2がしきい低下率THD2よりも大きい(DVB2>THD2)か否かを判断する。Noの場合、即ち、第2電圧低下率DVB2がしきい低下率THD2よりも小さい(DVB2<THD2)場合には、電池10には短絡が生じていないとする。かくして、個別短絡検査工程S5を終了し、電池10を完成する。
【0040】
なお、個別短絡判定工程S57でYes、即ち、第2電圧低下率DVB2がしきい低下率THD2よりも大きい(DVB2>THD2)の場合には、電池10は短絡していると判断し、電池排出工程S6に移行する。電池排出工程S6では、短絡していると判断された不良電池10Nを製造工程から排出する。
【0041】
本実施形態1の電池10の短絡検査方法及び製造方法では、個々の電池10について、第2電圧低下率DVB2を実測する一方、経過時間KT及び個別放置期間IHに応じた推定電圧低下率EDV2を得る。そして、この二者を用いて当該電池10の短絡の有無を判定するので、適切に電池10の短絡の有無を判定できる。そして、短絡している電池10を製造工程から排出するので、短絡していない電池10を適切に製造することができる。
【0042】
(実施形態2)
以下、実施形態2に係る電池スタック1を、図面を参照しつつ説明する。
図4に本実施形態2に係る電池スタック(接続済みデバイス拘束体)1を示す。電池スタック1は、実施形態1の直方体状の電池(蓄電デバイス)10(
図1参照)を複数(例えば、本実施形態2では28個)積層し、拘束部材5で定寸に拘束してなる。この電池スタック1は、スペーサ2を介して複数の電池10を互いに積層方向(
図1において左右方向)SHに積層し、これらを拘束部材5で積層方向SHに押圧して拘束している。具体的には、複数の被拘束電池10P(電池10)とスペーサ2とを交互に積層し、これらを一対の拘束板51で挟み、積層方向SHに延び拘束板51の間に架け渡した拘束ボルト52、これに螺着したナット53及びワッシャ54を用いて積層方向SHに各被拘束電池10Pを押圧して拘束している。各被拘束電池10Pの正極端子14及び負極端子15)同士は、バスバ3を介して互いに接続されている。なお、本実施形態2の電池スタック1では、
図4に示すように、各被拘束電池10Pを交互に反転させて配置し、正極端子14と負極端子15とが積層方向SHに一列に且つ交互に並ぶようにしてあり、バスバ3の接続によって、各被拘束電池10Pは直列に接続されている。電池スタック1は、例えば、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、電気自動車等の車両などに搭載されて使用される。
【0043】
ついで、電池スタック1の製造について、
図5~
図7を参照して、以下に説明する。公知の手法で未充電の電池10を製造しておく。そして実施形態1と同様にして、初充電工程S1(
図6参照)でCCCV充電による初充電を行う。次いで、高温エージング工程S2で高温エージングを行う。電池10を冷却した後、更に、容量検査工程S3で電池10を充放電して電池10の容量を測定する。さらに、実施形態1と同様、電圧調整工程S4で、各電池10を充電して、その電池電圧VBを、一旦、第1電圧VB1に、具体的には、VB1=3.75Vに揃える。さらに、実施形態1と同様、個別短絡検査工程S5を行い、電池排出工程S6で不良電池10Nを製造工程から排出する一方、短絡していない電池10を得る。
【0044】
従って、ここまでの段階で、実施形態1と同様、個々の電池10について、適切に電池10の短絡の有無を判定できる。そして、短絡している電池10を製造工程から排出するので、短絡していない電池10を適切に製造して、以降の工程に供給することができる。
【0045】
続く拘束工程S27(
図6参照)では、上述の個別短絡検査工程S5(短絡判定工程S57)で短絡していないと判断された各電池10のほか、スペーサ2及び拘束部材5を用いて、公知の手法により、未接続電池スタック1M(
図5参照)を形成する。この未接続電池スタック1Mでは、各電池10は、積層方向SH(図中左右方向)に押圧され拘束された被拘束電池10Pとなっている。このため、被拘束電池10Pの電極体12では、図示しない正極板及び負極板がセパレータを介して積層方向SHに一致する厚み方向に圧縮される。しかし、電池スタック1(
図4参照)と異なり、バスバ3は用いられておらず、被拘束電池10P同士の正極端子14及び負極端子15は相互に接続しておらず、各被拘束電池10Pは開放状態となっている。この未接続電池スタック1Mの状態で、拘束下の各被拘束電池10Pについて短絡検査を行う。拘束工程S27以降は、単一の未接続電池スタック1M(或いは電池スタック1)に含まれる複数(例えば、本実施形態では28個)の被拘束電池10Pを一群として扱う。
【0046】
本実施形態2では、拘束工程S27に続いて、拘束短絡検査工程S28(
図7参照)において、未接続電池スタック1Mの状態で、拘束下(圧縮下)の各被拘束電池10Pについて短絡検査を行い、各被拘束電池10Pについて短絡の発生の有無を検知する。
【0047】
拘束短絡検査工程S28のうち放置前電圧測定工程S281では、単一の未接続電池スタック1Mをなす一群の被拘束電池10Pについて、各被拘束電池10Pの電池電圧VBである放置前第3電圧VB3aをそれぞれ測定する。なお、前述したように、被拘束電池10Pが短絡していない場合でも、時間の経過と共に、電池電圧VBは徐々に低下する(
図3参照)ため、次述する拘束放置工程S282に先立ち、各々の被拘束電池10Pの放置前第3電圧VB3aを測定しておく。
【0048】
次いで、拘束放置工程S282において、未接続電池スタック1Mを、従って、拘束部材5で拘束され、正極端子14及び負極端子15を開放状態とした一群の各被拘束電池10Pを、25℃の環境下で拘束放置期間PH(本実施形態では、PH≧5.0日(≧120時間))に亘り放置する。その後、放置後電圧測定工程S283で、単一の未接続電池スタック1Mに属する放置後の被拘束電池10Pについて、その電池電圧VBである放置後第3電圧VB3bをそれぞれ測定する。
【0049】
続く電圧低下率取得工程S284では、単一の未接続電池スタック1Mに属する一群の被拘束電池10Pについて、放置前第3電圧VB3aと放置後第3電圧VB3bとの差電圧である第3電圧低下量ΔVB3(=VB3a-VB3b)をそれぞれ算出する。
【0050】
さらに、各被拘束電池10Pの第3電圧低下量ΔVB3を、実際の拘束放置期間PHで除して、単位時間当たり(例えば、1日当たりの、或いは1時間当たり)の第3電圧低下量である第3電圧低下率DVB3をそれぞれ算出する。拘束放置期間PHの長さは、拘束放置期間PH内に週末を含むか否か、放置後電圧測定工程S283の遅延の有無などにより、未接続電池スタック1M毎に若干異なる場合があり得る。このため、後述する拘束短絡判定工程S287などにおいて、第3電圧低下量ΔVB3そのものを用いるよりも、第3電圧低下率DVB3を用いた方が、判定容易である。
【0051】
なお、
図3では、経過時間KT=20.0
日で、拘束放置期間PH=5.0
日であるとしたときに、放置前第3電圧VB3a、放置後第3電圧VB3b、第3電圧低下量ΔVB3、及び、第3電圧低下率DVB3を得る場合を例示している。
【0052】
続く推定低下率取得工程S285では、各被拘束電池10Pに生じると推定される推定電圧低下率EDV3を取得する。具体的には、別途、先行する同一ロットや同一品番の別ロットなどの被拘束電池10Pから得ておいた、調整完了時Tc以降の電池電圧VBの典型変化例(
図3参照)や、電圧調整工程S4での調整完了時Tcから放置前電圧測定工程S281での放置前第3電圧VB3aの測定までの経過時間KT、及び、拘束放置期間PHに応じて実測した第3電圧低下率DVB3などを用いて得た関係式、関係式を示すグラフや関係表を得ておく。これらを用いて、今回供試された各被拘束電池10Pについて、調整完了時Tcからの経過時間KT及び拘束放置期間PHに応じた推定電圧低下率EDV3を得る。
【0053】
例えば、電池電圧VBの典型変化例として、予め、
図3に示すグラフが得られていたとした場合には、この
図3のグラフを用いて、上述の第3電圧低下率DVB3と同様にして、経過時間KT及び
拘束放置期間
PHに応じた推定電圧低下率EDV3を得ることができる。なお
図3には、経過時間KT=20.0
日で、拘束放置期間PH=5.0
日であるとしたときに、推定電圧低下率EDV3を得る場合をも例示している。即ち、調整完了時Tcから放置前第3電圧VB3aの測定までの経過時間KT(
図3ではKT=20.0日)が経過時点の推定放置前第3電圧EV3aと、さらにこれから拘束放置期間PHが経過した時点(
図3ではKT+PH=25.0日)の推定放置後第3電圧EV3bを取得し、推定第3電圧低下量ΔEV3(=EV3a-EV3b)を算出し、これを拘束放置期間PHで除して推定電圧低下率EDV3(=ΔEV3/IH)を得る。
【0054】
容易に理解できるように、本実施形態2では、単一の未接続電池スタック1Mに属する一群の被拘束電池10Pにおいて、調整完了時Tc以降、拘束短絡検査工程S28(放置前電圧測定工程S281)を行うまでの経過時間KTが被拘束電池10P毎に異なっていても、また、拘束放置期間PHの長さが未接続電池スタック1M毎に異なっていても、各々の被拘束電池10Pの経過時間KTや拘束放置期間PHに応じた推定電圧低下率EDV3を得ることができる。
【0055】
さらに、しきい低下率算出工程S286では、取得した推定電圧低下率EDV3に予め定めた許容幅PW3を加えて、しきい低下率THD3(=EDV3+PW3)を算出する。許容幅PW3は、推定電圧低下率EDV3に生じ得るバラツキなどを考慮して定める。
【0056】
そして拘束短絡判定工程S287では、単一の未接続電池スタック1Mに属する一群の被拘束電池10Pについてそれぞれ取得した第3電圧低下率DVB3を用いて、当該未接続電池スタック1Mに属する各被拘束電池10Pの短絡の有無を判定する。具体的には、第3電圧低下率DVB3がしきい低下率THD3よりも小さい(DVB3<THD3)場合には、当該被拘束電池10Pは短絡していないとする。一方、第3電圧低下率DVB3がしきい低下率THD3よりも大きい(DVB3>THD3)場合には、当該被拘束電池10Pは短絡している、即ち不良電池10Nであるとする。
【0057】
さらにこの拘束短絡判定工程S287では、単一の未接続電池スタック1Mに属する一群の被拘束電池10Pに、不良電池10Nが含まれているか否かを判定する。ここで、Yes、即ち、未接続電池スタック1Mに不良電池10Nが含まれている場合には、この未接続電池スタック1Mを後述する除去工程S2Aに移行させる。一方、No、即ち、未接続電池スタック1Mに不良電池10Nが含まれていない場合には、この未接続電池スタック1Mを接続工程S29に移行させる。
【0058】
続いて接続工程S29では、未接続電池スタック1Mをなす一群の被拘束電池10Pの正極端子14及び負極端子15にバスバ3を接続し、被拘束電池10Pを相互に接続して、電池スタック1(
図4参照)を完成させる。
【0059】
かくして、この電池10の短絡検査方法では、電池10を拘束した被拘束電池10Pの状態で、当該被拘束電池10Pの短絡の有無を適切に判定できる。また、いずれも短絡を生じていないと判定された複数の被拘束電池10Pを有する未接続電池スタック1Mについてのみ、相互に接続して、容易に接続済み電池スタック1を製造できる。
【0060】
一方、除去工程S2Aでは、少なくとも1つの不良電池10Nが含まれている未接続電池スタック1Mから、不良電池10Nを除去する。具体的には、拘束部材5の拘束ボルト52とナット53との締結を緩め、未接続電池スタック1Mから不良電池10Nを除去し、製造工程から排出する。
【0061】
続く再拘束工程S2Bでは、不良電池10Nを除去した未接続電池スタック1Mに、不足数分の補充用電池10Hを補充し、拘束部材5を用いて、一群の被拘束電池10Pを再度拘束して、未接続電池スタック1M(
図6参照)を再構成する。補充用電池10Hとしては、別の未接続電池スタック1Mに含まれて、既に拘束短絡検査工程S28で短絡を生じていないと判定されており、補充用として予め用意しておいた電池10を用いる。その後、再構成された未接続電池スタック1Mについて、再度、拘束短絡検査工程S28を行い、不良電池10Nが発生しなくなるまで補充用電池10Hを補充し未接続電池スタック1Mの再構成を繰り返す。拘束短絡判定工程S287において、再構成した未接続電池スタック1Mに不良電池10Nが含まれていない場合には、前述と同様、再構成した未接続電池スタック1Mを接続工程S29に移行させる。
【0062】
その後、接続工程S29では、再構成された未接続電池スタック1Mをなす一群の被拘束電池10Pの正極端子14及び負極端子15にバスバ3を接続し、被拘束電池10Pを相互に接続して、電池スタック1(図4参照)を完成させる。かくして、未接続電池スタック1M内に短絡を生じた電池10が含まれていた場合でも、容易に未接続電池スタック1Mを再構成して電池スタック1を製造することができる。
【0063】
なお、再拘束工程S2Bで、再拘束することで再構成した未接続電池スタック1Mにおいて不良電池10Nの発生する可能性が低い場合には、
図6において破線で示すように、第2接続工程S2Cで、再構成された未接続電池スタック1Mをなす一群の被拘束電池10Pの正極端子14及び負極端子15にバスバ3を接続し、被拘束電池10Pを相互に接続して、電池スタック1(図
4参照)を完成させようにしても良い。このようにすると、さらに容易に未接続電池スタック1Mを再構成して電池スタック1を製造することができる。
【0064】
以上において、本発明を実施形態1,2に即して説明したが、本発明は実施形態1,2に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態2の電池スタック1では、被拘束電池10P同士をバスバ3で電気的に直列接続した。しかし、被拘束電池10Pを電気的に並列接続したデバイス拘束体とすることもできる。
【0065】
また、実施形態1,2では、電池10の製造工程において、容量検査工程S3で、電池10をSOC100%まで充電し、その後、SOC0%まで電池10を放電させて電池10の容量を測定し、その後、電圧調整工程S4で、充電により電池電圧VBを第1電圧VB1とした。しかし実施形態とは逆に、容量検査工程で、電池10をSOC0%まで放電させ、その後、SOC100%まで電池10を充電して電池10の充電容量を測定し、その後、電圧調整工程S4で、放電により電池電圧VBを第1電圧VB1としても良い。
【符号の説明】
【0066】
1 電池スタック(接続済みデバイス拘束体)
1M 未接続電池スタック(デバイス拘束体)
SH 積層方向
5 拘束部材
10 電池(二次電池、蓄電デバイス)
10N 不良電池
10H 補充用電池
10P 被拘束電池(被拘束デバイス)
VB 電池電圧
VB1 第1電圧(第1デバイス電圧)
VB2a 放置前第2電圧(放置前デバイス電圧)
VB2b 放置後第2電圧(放置後デバイス電圧)
DVB2 第2電圧低下率(実測電圧低下率)
EDV2,EDV3 推定低下率
PW2,PW3 許容幅
THD2,THD3 しきい低下率
VB3a 放置前第3電圧(放置前デバイス電圧)
VB3a 放置後第3電圧(放置後デバイス電圧)
ΔVB3 第3電圧低下量
DVB3 第3電圧低下率(実測電圧低下率)
EV3a 推定放置前第3電圧
EV3b 推定放置後第3電圧
ΔEV3 推定第3電圧低下量
Tc 調整完了時
KT 経過時間
S1 初充電工程
S4 電圧調整工程
S5 個別短絡検査工程(短絡検査工程)
S51,S281 放置前電圧測定工程
S52 個別放置工程(放置工程)
IH 個別放置期間
S53,S283 放置後電圧測定工程
S54,S284 低下量算出工程(実測工程)
S55,S285 推定低下率取得工程(推定工程)
S56,S286 しきい低下率算出工程
S57 個別短絡判定工程(短絡判定工程)
S6 電池排出工程(排出工程)
S27 拘束工程
S28 拘束短絡検査工程(短絡検査工程)
S282 拘束放置工程(放置工程)
PH 拘束放置期間
S287 拘束短絡判定工程(短絡判定工程)
S29 接続工程
S2A 除去工程
S2B 再拘束工程
S2C 第2接続工程