(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】パイプ用ポリエチレン樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 23/04 20060101AFI20241217BHJP
C08J 3/00 20060101ALI20241217BHJP
F16L 11/06 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C08L23/04
C08J3/00 CES
F16L11/06
(21)【出願番号】P 2022190388
(22)【出願日】2022-11-29
【審査請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0168772
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0124246
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515253049
【氏名又は名称】ハンファ トタルエナジーズ ペトロケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨン グ
(72)【発明者】
【氏名】チェ ヨン ポム
(72)【発明者】
【氏名】ハン ジェイ ヒョク
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0025195(US,A1)
【文献】特表2019-526686(JP,A)
【文献】特表2015-535035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、F16L、C08F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2段反応器を通過してポリエチレン樹脂を得る段階、及び
前記ポリエチレン樹脂に過酸化物を添加し、押出機を通過してポリエチレン樹脂組成物を得る段階を含み、
前記押出機は、230℃~250℃の温度及び1,050rpm~1,150rpmの速度条件で運転され、
前記ポリエチレン樹脂組成物の溶融流れ指数(5kg荷重、190℃)が0.16g/10分~0.24g/10分であり、
2段反応器通過後、押出機通過時に過酸化物の添加で製造されるポリエチレン樹脂組成物において、前記押出機による溶融流れ指数(MI)(5kg荷重、190℃)の変化率が下記式(1)によって60%~90%であり、前記過酸化物による溶融流れ指数(MI)(5kg荷重、190℃)の変化率が下記式(2)によって10%~40%であり、
前記ポリエチレン樹脂組成物のゼロせん断粘度(η0)は、8,000,000ポイズ~
12,000,000ポイズであり
、
前記ポリエチレン樹脂組成物の押出時に垂れが発生しない場合の落下時間に対して垂れが発生する場合の落下時間の減少率が
10%~17%であり、前記落下時間は、一軸押出機で測定されたものであり、
前記ポリエチレン樹脂組成物のひずみ硬化率(strain hardening modulus)は、53MPa~80MPaである、パイプ用ポリエチレン樹脂組成物の製造方法。
{(2段反応器通過後のMI-過酸化物添加なしに押出機通過後のMI)/(2段反応器通過後のMI-最終MI)}×100 …(1)
{(過酸化物添加なしに押出機通過後のMI-過酸化物の添加条件で押出機を通過した後のMI)/(2段反応器通過後のMI-最終MI)}×100 …(2)
【請求項2】
前記過酸化物は、ポリエチレン樹脂100重量部に対して0.001重量部~0.01重量部で添加される、請求項1に記載のパイプ用ポリエチレン樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記2段反応器を通過した後のポリエチレン樹脂の溶融流れ指数(5kg荷重、190℃)は、0.32g/10分~0.44g/10分である、請求項1に記載のパイプ用ポリエチレン樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記過酸化物の添加前に前記押出機を通過した後のポリエチレン樹脂組成物の溶融流れ指数(5kg荷重、190℃)は、0.24g/10分~0.32g/10分である、請求項1に記載のパイプ用ポリエチレン樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記過酸化物を添加して前記押出機を通過した後のポリエチレン樹脂組成物の溶融流れ指数(5kg荷重、190℃)は、0.16g/10分~0.24g/10分である、請求項1に記載のパイプ用ポリエチレン樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
パイプ用ポリエチレン樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン材のパイプは、水道管、下水管、産業管などの用途に使用されており、垂れに対する抵抗性及び低速亀裂成長に対する抵抗性に優れているため、大口径パイプへの適用が増加し、その適用用途が次第に多様化している。
【0003】
大口径パイプの加工時には、パイプそのものの重量による垂れ(sagging)現象に対する抵抗性を持たなければならず、これはポリエチレン樹脂の溶融流れ指数(melt index)を減少させることにより改善できる。
【0004】
溶融流れ指数を減少させる方法としては、ポリエチレン樹脂の物性そのものを変化させることができ、または後処理方法で押出条件を変化させるか、または押出時に過酸化物(peroxide)を添加してもよい。
【0005】
過酸化物を添加して溶融流れ指数を減少させると、垂れに対する抵抗性は大きく増加するが、低速亀裂成長に対する抵抗性が減少し、臭気レベルが増加する傾向がある。一方、ポリエチレン樹脂の物性そのものを変化させるか、または押出条件のみで溶融流れ指数を減少させることは、垂れに対する抵抗性を増加させるのに限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一具現例では、パイプの垂れに対する抵抗性、低速亀裂成長に対する抵抗性及び臭気レベルのすべてに優れたパイプ用ポリエチレン樹脂組成物を提供する。
【0007】
他の一具現例では、前記パイプ用ポリエチレン樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0008】
さらに他の一具現例では、パイプ用ポリエチレン樹脂組成物から製造された成形品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一具現例では、溶融流れ指数(5kg荷重、190℃)が0.16g/10分~0.24g/10分であり、2段反応器通過、押出機通過及び過酸化物の添加により製造されるポリエチレン樹脂組成物において、前記押出機による溶融流れ指数(MI)(5kg荷重、190℃)の変化率が下記式(1)によって60%~90%であり、前記過酸化物による溶融流れ指数(MI)(5kg荷重、190℃)の変化率が下記式(2)によって10%~40%であるパイプ用ポリエチレン樹脂組成物を提供する。
【0010】
{(2段反応器通過後のMI-押出機通過後のMI)/(2段反応器通過後のMI-最終MI)}×100 …(1)
【0011】
{(押出機通過後のMI-過酸化物の添加後のMI)/(2段反応器通過後のMI-最終MI)}×100 …(2)
【0012】
前記ポリエチレン樹脂組成物のゼロせん断粘度(η0)は、8,000,000ポイズ~20,000,000ポイズであってもよい。
【0013】
前記ポリエチレン樹脂組成物の溶融強度は、200mN~300mNであってもよい。
【0014】
前記ポリエチレン樹脂組成物の押出時に垂れが発生しない場合の落下時間に対して垂れが発生する場合の落下時間の減少率が0%~17%であり、前記落下時間は、一軸押出機で測定されたものであってもよい。
【0015】
前記ポリエチレン樹脂組成物のひずみ硬化率(strain hardening modulus)は、53MPa~80MPaであってもよい。
【0016】
他の一具現例では、二段反応器を通過してポリエチレン樹脂を得る段階、及び前記ポリエチレン樹脂に過酸化物を添加し、押出機を通過してポリエチレン樹脂組成物を得る段階を含み、前記押出機は、230℃~250℃の温度及び1,050rpm~1,150rpmの速度条件で運転されるものであるパイプ用ポリエチレン樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0017】
前記過酸化物は、ポリエチレン樹脂100重量部に対して0.001重量部~0.01重量部で添加されてもよい。
【0018】
前記2段反応器を通過した後のポリエチレン樹脂の溶融流れ指数(5kg荷重、190℃)は、0.32g/10分~0.44g/10分であってもよい。
【0019】
前記過酸化物の添加前に前記押出機を通過した後のポリエチレン樹脂組成物の溶融流れ指数(5kg荷重、190℃)は、0.24g/10分~0.32g/10分であってもよい。
【0020】
前記過酸化物を添加して前記押出機を通過した後のポリエチレン樹脂組成物の溶融流れ指数(5kg荷重、190℃)は、0.16g/10分~0.24g/10分であってもよい。
【0021】
さらに他の一具現例では、前記パイプ用ポリエチレン樹脂組成物から製造された成形品を提供する。
【発明の効果】
【0022】
一具現例によるパイプ用ポリエチレン樹脂組成物は、パイプの垂れに対する抵抗性、低速亀裂成長に対する抵抗性及び臭気レベルのすべてに優れているため、パイプ、具体的に大口径パイプに有用に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、具現例について、技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、具現例は、様々な異なる形態で具現されてもよく、ここで説明する具現例に限定されるものではない。
【0024】
一具現例によるパイプ用ポリエチレン樹脂組成物は、溶融流れ指数(5kg荷重、190℃)が0.16g/10分~0.24g/10分であってよく、例えば、0.18g/10分~0.22g/10分であってもよい。前記ポリエチレン樹脂組成物の溶融流れ指数が前記範囲内の場合、パイプ加工時の加工負荷及び製品の表面粗さが減少し、パイプの垂れに対する抵抗性及びひずみ硬化率(strain hardening modulus)が増加することがある。これにより、パイプの垂れに対する抵抗性(resistance to sagging)とこれに相反する性質である低速亀裂成長に対する抵抗性(resistance to slow crack growth)の両方に優れたポリエチレン樹脂組成物を確保しうる。
【0025】
前記ポリエチレン樹脂組成物は、前記最終溶融流れ指数を得る前に製造過程において溶融流れ指数が段階別に変化できる。一具現例によれば、二段反応器を通過しながらエチレン重合してポリエチレン樹脂を得て、その後、前記ポリエチレン樹脂に過酸化物の添加とともに押出機を通過しながらポリエチレン樹脂組成物を製造できる。このとき、前記2段反応器を通過した直後のポリエチレン樹脂の溶融流れ指数(MI1)、前記過酸化物の添加前に前記押出機を通過した直後のポリエチレン樹脂組成物の溶融流れ指数(MI2)、及び最終ポリエチレン樹脂組成物の溶融流れ指数に該当する、すなわち、前記過酸化物の添加とともに前記押出機を通過した後の溶融流れ指数MI3は、各段階で異なってもよい。言い換えれば、2段反応器を通過した直後の溶融流れ指数は、次に、所定の運転条件を有する押出機を通過した後、その値が変わることがあり(MI1からMI2への変化)、また、前記過酸化物の添加なしに押出機を通過した後の溶融流れ指数は、所定の運転条件を有する押出機を通過し、さらに過酸化物を添加した後、その値が変わることがある(MI2からMI3への変化)。
【0026】
一具現例によれば、前記MI1からMI2への変化率に該当する、すなわち、前記押出機による溶融流れ指数(MI)(5kg荷重、190℃)の変化率は、下記式(1)によって60%~90%であってもよく、例えば、70%~80%であってもよい。
【0027】
{(2段反応器通過後のMI-押出機通過後のMI)/(2段反応器通過後のMI-最終MI)}×100 …(1)
【0028】
また、前記MI2からMI3への変化率に該当する、すなわち、前記過酸化物による溶融流れ指数(MI)(5kg荷重、190℃)の変化率は、下記式(2)により10%~40%であってもよく、例えば、20%~30%であってもよい。
【0029】
{(押出機通過後のMI-過酸化物の添加後のMI)/(2段反応器通過後のMI-最終MI)}×100 …(2)
【0030】
前記押出機による溶融流れ指数の変化率と前記過酸化物による溶融流れ指数の変化率がそれぞれ前記範囲内の場合、パイプの垂れに対する抵抗性とそれに相反する性質である低速亀裂成長に対する抵抗性、及び臭気レベルともに優れたポリエチレン樹脂組成物を確保しうる。
【0031】
前記ポリエチレン樹脂組成物のゼロせん断粘度(η0、zero shear viscosity)は、8,000,000ポイズ(poise)~20,000,000ポイズ(poise)であってもよく、例えば、8,000,000ポイズ~12,000,000ポイズであってもよい。前記ゼロせん断粘度は、せん断速度(shear rate)(単位rad/sec)による貯蔵弾性率(storage modulus)と損失弾性率(loss modulus)を測定し、これからその値を得ることができる。前記ポリエチレン樹脂組成物のゼロせん断粘度が前記範囲内の場合、パイプの加工時、具体的に大口径パイプ加工時の垂れに対する優れた抵抗性を有してよく、これにより前記ポリエチレン樹脂組成物は、大口径パイプに有用に使用されてもよい。
【0032】
前記ポリエチレン樹脂組成物の溶融強度は、200mN~300mNであってもよく、例えば、200mN~250mNであってもよい。前記溶融強度は、樹脂温度200℃、チャンバー温度180℃で樹脂を引っ張る速度を増加させることによって安定化する力を測定することにより得ることができる。前記ポリエチレン樹脂組成物の溶融強度が前記範囲内の場合、パイプ加工時、具体的に大口径パイプ加工時の垂れに対する優れた抵抗性を有してもよく、これにより前記ポリエチレン樹脂組成物は、大口径パイプに有用に使用されてもよい。
【0033】
前記ポリエチレン樹脂組成物は、押出時に垂れが発生しない場合の落下時間(drop time)に対して垂れが発生する場合の落下時間(drop time0)の減少率が0%~17%であってもよく、例えば、10%~17%であってもよい。前記落下時間は、一軸押出機で測定されてもよい。具体的に押出時、200℃の温度、38.1g/分の押出量、及び押出される樹脂の初期線速は0.546cm/secの条件で、地面までの高さは90.5cmであり、押出される樹脂の垂れが発生しない場合に地面到達時間は165.7秒である場合を基準に、前記ポリエチレン樹脂組成物の地面到達時間を測定し、前記垂れが発生しない場合に対して減少率を計算できる。前記落下時間の減少率が前記範囲内の場合、パイプ加工時、具体的に大口径パイプ加工時の垂れに対する優れた抵抗性を有してもよく、これにより前記ポリエチレン樹脂組成物は、大口径パイプに有用に使用されてもよい。
【0034】
前記ポリエチレン樹脂組成物のひずみ硬化率(strain hardening modulus)は、53MPa~80MPaであってもよく、例えば、53MPa~70MPaであってもよい。前記ポリエチレン樹脂組成物のひずみ硬化率が前記範囲内の場合、低速亀裂成長に対する抵抗性に優れているため、パイプを長期的に使用可能になり、耐久性に優れた大口径パイプを提供しうる。
【0035】
以下、他の一具現例によって前記パイプ用ポリエチレン樹脂組成物の製造方法について説明する。
【0036】
前記ポリエチレン樹脂組成物は、二段反応器を通過してポリエチレン樹脂を得る段階、及び前記ポリエチレン樹脂に過酸化物を添加して押出機を通過する段階を経て製造されてもよい。このとき、押出機は、230℃~250℃の温度、例えば、240℃~250℃の温度、及び1,050rpm~1,150rpmの速度、例えば、1,080rpm~1,140rpmの速度条件で運転されてもよい。
【0037】
前記ポリエチレン樹脂組成物が前記温度及び速度範囲内で運転される押出機を通過して製造される場合、前記押出機によるポリエチレン樹脂組成物の溶融流れ指数(MI)(5kg荷重、190℃)の変化率を60%~90%の範囲内で得ることができ、これによりパイプの垂れに対する抵抗性とそれに相反する性質である低速亀裂成長に対する抵抗性、及び臭気レベルのすべてに優れたポリエチレン樹脂組成物を確保しうる。前記押出機による溶融流れ指数の変化率は、前述のように前記式(1)によって得られる。
【0038】
具体的に、前記2段反応器を通過した後のポリエチレン樹脂の溶融流れ指数(5kg荷重、190℃)は、0.32g/10分~0.44g/10分であってもよく、例えば、0.35g/10分~0.42g/10分であってもよい。また、前記過酸化物の添加前に前記押出機を通過した後のポリエチレン樹脂組成物の溶融流れ指数(5kg荷重、190℃)は、0.24g/10分~0.32g/10分であってもよく、例えば、0.24g/10分~0.28g/10分であってもよい。
【0039】
また、前記ポリエチレン樹脂組成物が前記過酸化物の添加とともに押出機を通過して製造される場合、前記過酸化物によるポリエチレン樹脂組成物の溶融流れ指数(MI)(5kg荷重、190℃)の変化率を10%~40%の範囲内で得ることができ、これによりパイプの垂れに対する抵抗性とそれに相反する性質である低速亀裂成長に対する抵抗性、及び臭気レベルのすべてに優れたポリエチレン樹脂組成物を確保しうる。
【0040】
具体的に、前記過酸化物の添加前に前記押出機を通過した後のポリエチレン樹脂組成物の溶融流れ指数(5kg荷重、190℃)、及び前記過酸化物の添加とともに押出機を通過した後のポリエチレン樹脂組成物の溶融流れ指数、すなわち、最終ポリエチレン樹脂組成物の溶融流れ指数は、それぞれ前記で例示した通りである。
【0041】
前記過酸化物は、前記ポリエチレン樹脂100重量部に対して0.001重量部~0.01重量部で添加されてもよく、例えば、0.001重量部~0.005重量部、0.001重量部~0.003重量部で添加されてもよい。前記含量範囲内の過酸化物を添加する場合、パイプの垂れに対する抵抗性、低速亀裂成長に対する抵抗性、及び臭気レベルのすべてに優れたポリエチレン樹脂組成物を確保しうる。
【0042】
前記ポリエチレン樹脂組成物を得る段階において、酸化防止剤、中和剤、またはそれらの組み合わせを含む添加剤をさらに含むことができる。前記添加剤は、前記ポリエチレン樹脂組成物100重量部に対して0.01重量部~0.5重量部で含まれてもよい。
【0043】
前記酸化防止剤は、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,6-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]ヘキサン、1,6-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]プロパン、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシナメート)]メタン、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0044】
前記酸化防止剤は、前記ポリエチレン樹脂組成物100重量部に対して0.01重量部~0.5重量部で含まれてもよく、例えば、0.2重量部~0.4重量部で含まれてもよい。前記酸化防止剤が前記含量範囲内に含まれる場合、パイプの垂れに対する抵抗性、低速亀裂成長に対する抵抗性及び臭気レベルに優れたポリエチレン樹脂組成物を確保しうる。
【0045】
前記中和剤は、カルシウムステアリン酸、亜鉛ステアリン酸、マグネシウムアルミニウムヒドロキシカーボネート、酸化亜鉛、マグネシウムヒドロキシステアリン酸、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0046】
前記中和剤は、ポリエチレン樹脂組成物100重量部に対して0.01重量部~0.3重量部で含まれてもよく、例えば、0.1重量部~0.2重量部で含まれてもよい。前記中和剤が前記含量範囲内に含まれる場合、パイプの垂れに対する抵抗性、低速亀裂成長に対する抵抗性及び臭気レベルに優れたポリエチレン樹脂組成物を確保しうる。
【0047】
さらに他の一具現例によれば、前述したポリエチレン樹脂組成物から製造された成形品が提供される。
【0048】
前記成形品は、水道管、下水管、産業管などに使用されるパイプであってもよく、具体的に大きな直径を持つ大口径パイプであってもよい。
【0049】
前述したポリエチレン樹脂組成物は、パイプの垂れに対する抵抗性、低速亀裂成長に対する抵抗性、及び臭気レベルのすべてに優れているため、大口径パイプに有用に使用されてもよい。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記に記載される実施例は、本発明を具体的に例示または説明するためのものに過ぎず、これにより本発明が制限されるものではない。また、ここに記載されていない内容は、当技術分野で熟練した者であれば十分に技術的に類推できるものであるため、その説明を省略する。
【0051】
<ポリエチレン樹脂組成物の製造>
[実施例1]
2つの反応器が直列に連結された連続(series)重合方式でチーグラーナッタ(ziegler-natta)触媒と1-ヘキセン(1-hexene)コモノマー(co-monomer)を用いてエチレン重合を行った。
【0052】
2段反応器後に得られたパウダー型ポリエチレン樹脂の溶融流れ指数(5kg荷重、190℃)は、0.40g/10分であった。
【0053】
前記で得られたパウダー型ポリエチレン樹脂100重量部に酸化防止剤としてIrganox 1010 0.15重量部及びIrgafos-168 0.15重量部、中和剤としてカルシウムステアリン酸0.15重量部、及び過酸化物としてTrigonox 101 0.001重量部をヘンシェルミキサーで混合した後、二軸押出機(twin screw extruder)を使用してペレット状のポリエチレン樹脂組成物を製造した。このとき、二軸押出機は、直径608mm、L/D(スクリューの長さ/直径)8のスクリューを使用し、温度240℃及び速度1,090rpmで運転した。
【0054】
これから製造されたペレット状のポリエチレン樹脂組成物の溶融流れ指数(5kg荷重、190℃)は、過酸化物を投入する前は0.25g/10分であり、過酸化物を投入した後は0.21g/10分であった。これを下記表1に示した。
【0055】
[実施例2]
2つの反応器が直列に連結された連続(series)重合方式でチーグラーナッタ(ziegler-natta)触媒と1-ヘキセン(1-hexene)コモノマ(co-monomer)を用いてエチレン重合を行った。
【0056】
2段反応器後に得られたパウダー型ポリエチレン樹脂の溶融流れ指数(5kg荷重、190℃)は、0.40g/10分であった。
【0057】
前記で得られたパウダー型ポリエチレン樹脂100重量部に酸化防止剤としてIrganox 1010 0.15重量部及びIrgafos-168 0.15重量部、中和剤としてカルシウムステアリン酸0.15重量部、及び過酸化物としてTrigonox 101 0.002重量部をヘンシェルミキサーで混合した後、二軸押出機(twin screw extruder)を使用してペレット状のポリエチレン樹脂組成物を製造した。このとき、二軸押出機は、直径608mm、L/D(スクリューの長さ/直径)8のスクリューを使用し、温度240℃及び速度1,090rpmで運転した。
【0058】
これから製造されたペレット状のポリエチレン樹脂組成物の溶融流れ指数(5kg荷重、190℃)は、過酸化物を投入する前は0.25g/10分であり、過酸化物を投入した後は0.19g/10分であった。これを下記表1に示した。
【0059】
[比較例1]
実施例1において過酸化物を添加しなかったことを除いては、実施例1と同じ方法でポリエチレン樹脂組成物を製造した。
【0060】
これから製造されたペレット状のポリエチレン樹脂組成物の溶融流れ指数(5kg荷重、190℃)は、0.25g/10分であった。
【0061】
[比較例2]
2段反応器後に得られたパウダー型ポリエチレン樹脂の溶融流れ指数(5kg荷重、190℃)は、0.40g/10分の代わりに0.35g/10分で、過酸化物を添加しなかったことを除いては、実施例1と同じ方法でポリエチレン樹脂組成物を製造した。
【0062】
これから製造されたペレット状のポリエチレン樹脂組成物の溶融流れ指数(5kg荷重、190℃)は、0.21g/10分であった。
【0063】
[比較例3]
実施例1において過酸化物を添加せず、また、二軸押出機が温度252℃及び速度1,140rpmで運転したことを除いては、実施例1と同じ方法でポリエチレン樹脂組成物を製造した。
【0064】
これから製造されたペレット状のポリエチレン樹脂組成物の溶融流れ指数(5kg荷重、190℃)は、0.21g/10分であった。
【0065】
[比較例4]
2つの反応器が直列に連結された連続(series)重合方式でチーグラーナッタ(ziegler-natta)触媒と1-ヘキセン(1-hexene)コモノマー(co-monomer)を用いてエチレン重合を行った。
【0066】
2段反応器後に得られたパウダー型ポリエチレン樹脂の溶融流れ指数(5kg荷重、190℃)は、0.41g/10分であった。
【0067】
前記で得られたパウダー型ポリエチレン樹脂100重量部に酸化防止剤としてIrganox 1010 0.15重量部及びIrgafos-168 0.15重量部、中和剤としてカルシウムステアリン酸0.15重量部、及び過酸化物としてTrigonox 101 0.02重量部をヘンシェルミキサーで混合した後、一軸押出機(single screw extruder)を使用してペレット状のポリエチレン樹脂組成物を製造した。このとき、一軸押出機は、直径40mm、L/D(スクリューの長さ/直径)33のスクリューを使用し、温度200℃及び速度90rpmで運転した。
【0068】
これから製造されたペレット状のポリエチレン樹脂組成物の溶融流れ指数(5kg荷重、190℃)は、過酸化物を投入する前は0.36g/10分であり、過酸化物を投入した後は0.20g/10分であった。これを下記表1に示した。
【0069】
<評価:ポリエチレン樹脂組成物の物性測定>
前記実施例1及び2と比較例1~4で製造されたポリエチレン樹脂組成物について下記物性を測定し、その結果を下記表1及び2に示した。
【0070】
[溶融流れ指数(melt index,MI)]
ASTM D1238によって190℃で5kg荷重で測定した。
【0071】
[溶融流れ指数(MI)の変化率]
押出機による溶融流れ指数の変化率は、下記式(1)により得られ、過酸化物による溶融流れ指数の変化率は、下記式(2)により得られた。
【0072】
{(2段反応器通過後のMI-押出機通過後のMI)/(2段反応器通過後のMI-最終MI)}×100 …(1)
【0073】
{(押出機通過後のMI-過酸化物添加後のMI)/(2段反応器通過後のMI-最終MI)}×100 …(2)
【0074】
[ゼロせん断粘度(η0)]
ARES(advanced rheometer expansion system,190℃)を用いてせん断速度(shear rate)(単位rad/sec)による貯蔵弾性率(G’,storage modulus)と損失弾性率(G'',loss modulus)を測定し、Carreau modelに適用して、ゼロせん断粘度(η0、zero shear viscosity)を計算した。
【0075】
[溶融強度(melt strength)]
樹脂温度200℃及びチャンバー温度180℃で樹脂を引っ張る速度を増加させることにより、安定化する力を測定した。
【0076】
[落下時間(drop time)減少率]
HAAKETM Reomex OS一軸押出機(single screw extruder)を使用し、ダイ(die)は、直径12mmのバー(bar)状を使用した。温度は200℃で加工し、押出量は38.1g/minに維持し、押出される樹脂の初期線速は0.546cm/secであった。地面までの高さは90.5cmであり、押出される樹脂の垂れが発生しない場合、地面到達時間は165.7秒であった。各ポリエチレン樹脂組成物の地面到達時間を測定して垂れが発生しない場合に対して減少率を計算した。
【0077】
[ひずみ硬化率(strain hardening modulus,SHM)]
ISO 18488に準じて測定した。
【0078】
[臭気]
密閉容器に前記ポリエチレン樹脂組成物100g及び水5mLを入れ、80℃オーブンで3時間放置した後、常温で1時間放置後の臭気レベルを評価した。臭気レベルが悪いほど高い点数を与え、点数は1~5点で評価した。
【0079】
[衝撃強度]
シャルピー衝撃(charpy impact)試験により、-30℃でISO 179-1に準じて測定した。
【0080】
[酸化誘導時間(oxidation induction time,OIT)]
210℃でISO 11357-6に準じて測定した。
【0081】
【0082】
【0083】
前記表1を通じて実施例1及び2によるポリエチレン樹脂組成物は、最終溶融流れ指数、押出機による溶融流れ指数の変化率、過酸化物による溶融流れ指数の変化率が一具現例による所定の範囲を満たしている。このような実施例1及び2の場合、比較例1~4に対してパイプの垂れに対する抵抗性、低速亀裂成長に対する抵抗性及び臭気レベルのすべてに優れていることが確認できる。
【0084】
一方、過酸化物を添加していない比較例1は、最終溶融流れ指数が一具現例による範囲を外れており、この場合、低速亀裂成長に対する抵抗性及び臭気レベルは、僅かに優れているが、ゼロせん断粘度及び溶融強度が大きく減少し、落下時間の減少率は大きく増加しているので、これからパイプの垂れに対する抵抗性が低下することが分かる。また、比較例2は、低速亀裂成長に対する抵抗性が増加したが、過酸化物を添加しないため、パイプの垂れに対する抵抗性が低下することが分かる。
【0085】
比較例3は、過酸化物を添加せず、また、所定の温度及び速度条件を外れた押出機を通過した場合で、パイプの垂れに対する抵抗性は僅かに増加したが、高いせん断応力(shear stress)により臭気レベルが増加し、酸化誘導時間が減少することが分かる。
【0086】
比較例4のポリエチレン樹脂組成物は、一軸押出機を使用してせん断応力の少ない押出条件で押出して押出機による溶融流れ指数の変化率を24%に減少させ、過酸化物を過量添加して過酸化物による溶融流れ指数変化率を76%に大きく増加させた。これによりパイプの垂れに対する抵抗性は大幅に増加したが、高含量の過酸化物の添加により低速亀裂成長に対する抵抗性と酸化誘導時間が大きく減少し、臭気レベルが大きく増加した。
【0087】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明及び添付図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属することは当然である。