IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルテロン・セラピューティクス・インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許-TDP-43のモジュレーター 図1
  • 特許-TDP-43のモジュレーター 図2
  • 特許-TDP-43のモジュレーター 図3
  • 特許-TDP-43のモジュレーター 図4
  • 特許-TDP-43のモジュレーター 図5
  • 特許-TDP-43のモジュレーター 図6
  • 特許-TDP-43のモジュレーター 図7
  • 特許-TDP-43のモジュレーター 図8
  • 特許-TDP-43のモジュレーター 図9
  • 特許-TDP-43のモジュレーター 図10
  • 特許-TDP-43のモジュレーター 図11
  • 特許-TDP-43のモジュレーター 図12
  • 特許-TDP-43のモジュレーター 図13
  • 特許-TDP-43のモジュレーター 図14
  • 特許-TDP-43のモジュレーター 図15
  • 特許-TDP-43のモジュレーター 図16
  • 特許-TDP-43のモジュレーター 図17
  • 特許-TDP-43のモジュレーター 図18
  • 特許-TDP-43のモジュレーター 図19
  • 特許-TDP-43のモジュレーター 図20
  • 特許-TDP-43のモジュレーター 図21
  • 特許-TDP-43のモジュレーター 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】TDP-43のモジュレーター
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/473 20060101AFI20241217BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20241217BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241217BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20241217BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241217BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20241217BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20241217BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20241217BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
A61K31/473
A61P1/18 ZNA
A61P11/00
A61P21/00
A61P25/00
A61P25/02
A61P25/16
A61P25/28
A61P43/00 105
A61P43/00 111
【請求項の数】 36
(21)【出願番号】P 2022504031
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 US2020022972
(87)【国際公開番号】W WO2020190866
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】62/820,158
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521435237
【氏名又は名称】アルテロン・セラピューティクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チェンリャン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】シンチュン・ジャン
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/111504(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/088712(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)毒性に関連する疾患の処置において使用するための医薬組成物であって、
疾患が、嚢胞性線維症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症及びパーキンソン病からなる群より選択され、
治療有効量の式(IV)の化合物又その薬学的に許容される塩:
【化1】
[式中、
R 1 は、H、OH又は低級アルキルであり、
R 2 は、場合により置換されている、4、5又は6個の炭素の芳香族環であり、
ここで、芳香族環は、炭素環式又はヘテロ環式であり、芳香族環上の各位置は、独立して、H、ハロ、ハロアルキル、低級アルキル、OH、低級アルコキシ、NH 2 、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、SH、低級アルキルチオ、NO 2 であるか、又は2つの残基が一緒になってヘテロ環式環を形成し、
R 3 、R 4 、R 5 、R 6 及びR 7 は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、OH、NH 2 、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH 2 、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、
R 8 、R 9 、R 10 、R 11 、R 12 及びR 13 は、それぞれ独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ又はNO 2 であり、ここで、式(VI)の縮合環のいずれか1つに存在する炭素原子のいずれか1個は、窒素原子で場合により置きかえられている]
を含む医薬組成物。
【請求項2】
TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)毒性に関連する疾患の処置において使用するための医薬組成物であって、
疾患が、嚢胞性線維症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症及びパーキンソン病からなる群より選択され、
治療上有効量のALT-212、ALT-215、ALT-308、ALT-309、ALT-408、ALT-411、ALT-59、ALT-110、ALT-201、ALT-202、ALT-204、ALT-208、ALT-207、ALT-210、ALT-211、ALT-302、ALT-306、ALT-307、ALT-311、ALT-318、ALT-322、ALT-324、ALT-402、ALT-404、ALT-406、ALT-409、ALT-410、ALT-413、又はALT-414の化合物を含む医薬組成物。
【請求項3】
記化合物が、ALT-212、ALT-215、ALT-308、ALT-309、ALT-59、ALT-201、ALT-204、ALT-208、ALT-207、ALT-211、ALT-302、ALT-306、ALT-307、ALT-311、ALT-318、ALT-322、ALT-404又はALT-410である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
記化合物が、ALT-59である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)毒性に関連する疾患の処置において使用するための医薬組成物であって、
疾患が、嚢胞性線維症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症及びパーキンソン病からなる群より選択され、
前記医薬組成物が治療有効量の化合物又はその薬学的に許容される塩を含み、
記化合物が、ALT-108、ALT-317、ALT-333又はALT-403である、医薬組成物。
【請求項6】
記式化合物が、ALT-308又はALT-309である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記式(VI)の化合物が、ALT-302又はALT-306である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
嚢胞性線維症の処置において使用するための、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
嚢胞性線維症の進行又は発症を阻害する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
神経変性疾患の処置において使用するための、請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記神経変性疾患の進行又は発症を阻害する、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症又はパーキンソン病である、請求項10又は11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
記化合物が、0.01mgから3000mgの量で存在する、請求項1から12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
経口又は非経口投与のために製剤化されている、請求項1から13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
薬学的に許容される担体又は添加剤を更に含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
対象において、TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)を低減させる又は阻害する方法で使用するための、請求項1から15のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、前記方法が、
TDP-43を低減させる又は阻害する化合物を必要とする対象を選択する工程と、
前記対象に、請求項1から15のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与する工程と
を含む医薬組成物
【請求項17】
前記対象が、TDP-43毒性に関連する疾患又は状態を有すると同定される、請求項16に記載の医薬組成物
【請求項18】
前記疾患が、嚢胞性線維症又は神経変性疾患である、請求項17に記載の医薬組成物
【請求項19】
前記方法が、前記嚢胞性線維症の又は前記神経変性疾患の進行又は発症を阻害する又は遅延させる、請求項18に記載の医薬組成物
【請求項20】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症又はパーキンソン病である、請求項18又は19に記載の医薬組成物
【請求項21】
前記組成物が、前記対象に経口的に又は非経口的に投与される、請求項16から20のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項22】
TDP-43が、少なくとも10%低減する、請求項16から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)毒性に関連する疾患又は状態に罹患している対象を処置する方法で使用するための、請求項1から15のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、前記方法が、
TDP-43毒性を低減させる、阻害する、遅延させる、軽快させる又は予防する化合物を必要とする対象を同定する工程と、
前記対象に、請求項1から15のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与する工程と
を含む医薬組成物
【請求項24】
前記疾患が、嚢胞性線維症又は神経変性疾患である、請求項23に記載の医薬組成物
【請求項25】
前記方法が、嚢胞性線維症の又は前記神経変性疾患の進行又は発症を阻害する又は遅延させる、請求項24に記載の医薬組成物
【請求項26】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症又はパーキンソン病である、請求項24又は25に記載の医薬組成物
【請求項27】
前記組成物が、前記対象に経口的に又は非経口的に投与される、請求項23から26のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項28】
前記方法がTDP-43毒性を低減させる、請求項23から27のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項29】
対象におけるTAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)毒性に関連する疾患又は状態の処置用医薬の製造における、請求項1から15のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項30】
前記疾患が、嚢胞性線維症又は神経変性疾患である、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記医薬が、嚢胞性線維症の又は前記神経変性疾患の進行又は発症を阻害する又は遅延させる、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症又はパーキンソン病である、請求項30又は31に記載の使用。
【請求項33】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、又はパーキンソン病である、請求項10又は11に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記疾患が、嚢胞性線維症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、又はパーキンソン病である、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記疾患が、嚢胞性線維症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、又はパーキンソン病である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記疾患が、嚢胞性線維症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、又はパーキンソン病である、請求項30に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月18日に出願された米国仮出願第62/820,158号の優先権を主張し、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子フォーマットの配列表及び表の参照
本出願は、2020年3月6日に作成され、サイズ1.9KBのALTER001WOSEQLIST.TXTと題された電子配列表とともに出願される。電子配列表中の情報は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)毒性に関連する疾患又は状態を、処置する、予防する、阻害する、軽快させる、又はその発生若しくは発症を減速させるための化合物、組成物及びそれらを使用する方法に関する。そのような疾患は、嚢胞性線維症、並びに、例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症及びパーキンソン病を含む神経変性障害を含むがこれらに限定されない。
【背景技術】
【0004】
TDP-43はTARDBPとも呼ばれ、転写調節(Bersonら、(2017)、Curr Biol 27、3579~3590 e3576; Ignatiusら、1995、J Virol 69、3584~3596)、プレmRNAスプライシング(Ayalaら、(2006)、Febs Lett 580、1339~1344; Boseら、(2008)、J Biol Chem 283、28852~28859; Buratti及びBaralle、(2001a)、J Biol Chem 276、36337~36343; Mercadoら、2005、Nucleic Acids Res 33、6000~6010)、mRNA安定性及び輸送(Alamiら、2014、Neuron 81、536~543; Ayalaら、(2011)、Embo Journal 30、277~288; Strongら、2007、Mol Cell Neurosci 35、320~327)、並びに翻訳調節(Neelagandanら、2018、Nucleic Acids Res)における役割を伴う多面的機能を果たすDNA/RNA結合タンパク質である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第6,800,634号
【文献】米国特許出願公開第2012/0220610号
【文献】米国特許出願公開第2017/0362221号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Bersonら、(2017)、Curr Biol 27、3579~3590 e3576
【文献】Ignatiusら、1995、J Virol 69、3584~3596
【文献】Ayalaら、(2006)、Febs Lett 580、1339~1344
【文献】Boseら、(2008)、J Biol Chem 283、28852~28859
【文献】Buratti及びBaralle、(2001a)、J Biol Chem 276、36337~36343
【文献】Mercadoら、2005、Nucleic Acids Res 33、6000~6010
【文献】Alamiら、2014、Neuron 81、536~543
【文献】Ayalaら、(2011)、Embo Journal 30、277~288
【文献】Strongら、2007、Mol Cell Neurosci 35、320~327
【文献】Neelagandanら、2018、Nucleic Acids Res
【文献】Buratti及びBaralle、(2001b)、J Biol Chem 276、36337~36343
【文献】Kuoら、2009、Nucl Acids Res 37、1799~1808
【文献】Chillonら、(1995)、N Engl J Med 332、1475~1480
【文献】Nooneら、2001、Gastroenterology 121、1310~1319
【文献】Kostuchら、2005、Eur Arch Oto-Rhino-L 262、982~986
【文献】Casalsら、(2004)、Clin Genet 65、490~495
【文献】Millerら、1996、Am J Hum Genet 59、45~51
【文献】Strongら、1993、Hum Mol Genet 2、225~230
【文献】Gromanら、2004、American Journal of Human Genetics 74、176~179
【文献】Araiら、2006、Biochem Bioph Res Co 351、602~611
【文献】Lingら、2013、Neuron 79、416~438
【文献】Mackenzieら、2007、Ann Neurol 61、427~434
【文献】Neumannら、2006、Science 314、130~133
【文献】Jamesら、2016、Brain 139、2983~2993
【文献】Iharaら、2018、Ann Neurol 84、741~753
【文献】McKeeら、2013、Brain 136、43~64
【文献】Nakashima-Yasudaら、2007、Acta Neuropathol 114、221~229
【文献】Josephsら、2014、Acta Neuropathol 127、811~824
【文献】Sephtonら、2010、J Biol Chem 285、38740~38740
【文献】Uchidaら、2012、Brain 135、833~846
【文献】Wilsら、2010、PNAS 107、3858~3863
【文献】Kabashiら、2010、Hum Mol Genet 19、671~683
【文献】Liら、2010、PNAS 107、3169~3174
【文献】Miguelら、2011、Neurobiol Dis 41、398~406
【文献】Ashら、(2010)、Hum Mol Genet 19、3206~3218
【文献】Frattaら、(2018)、EMBO J 37
【文献】Whiteら、2018、Nature Neuroscience 21、1138~1138
【文献】Fujiwaraら、2015、Biochem Biophys Res Commun 460、281~286
【文献】Mercadoら、2015、Nucleic Acids Res 33、6000~6010
【文献】Gumyら、2017、Neuron 94、347~362 e347
【文献】Iharaら、2013、Hum Mol Genet、22(22)、4474~4484
【文献】Voigtら、2010、PLoS One、5(8)、e12247
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書において記述されるのは、TDP-43毒性に関連する疾患又は状態を処置する又はその発生若しくは発症を低減させる際に使用するための化合物、並びに、TDP-43毒性に関連する疾患又は状態の、処置、阻害、軽快、予防又は減速のためにそれを使用する方法である。
【0008】
本明細書において提供される一部の実施形態は、医薬組成物に関する。一部の実施形態では、医薬組成物は、TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)毒性に関連する疾患又は状態の処置において使用するためのものである。一部の実施形態では、組成物は、治療有効量の式(I)の化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩:
【0009】
【化1】
【0010】
[式中、R1は、H、OH又は低級アルキルであり、R2は、場合により置換されている、4、5又は6個の炭素の芳香族環であり、ここで、芳香族環は、炭素環式又はヘテロ環式であり、芳香族環上の各位置は、独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ、NH2、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、SH、低級アルキルチオ、NO2であるか、又は2つの残基が一緒になってヘテロ環式環を形成し、R3及びR8は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、=O、=S、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R9及びR10、R10及びR11、又はR11及びR12のうちの少なくとも1つは、一緒になって、場合により置換されているベンゼン環を形成し、ここで、ベンゼン環は、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ又はNO2で場合により置換されており、ここで、式(I)の縮合環のいずれか1つに存在する炭素原子のいずれか1個は、窒素原子で場合により置きかえられている]を含む。一部の実施形態では、式(I)の化合物は、ALT-212、ALT-215、ALT-308、ALT-309、ALT-408、ALT-411、ALT-59、ALT-110、ALT-201、ALT-202、ALT-204、ALT-208、ALT-207、ALT-210、ALT-211、ALT-302、ALT-306、ALT-307、ALT-311、ALT-318、ALT-322、ALT-324、ALT-402、ALT-404、ALT-406、ALT-409、ALT-410、ALT-413、ALT-414、ALT-108、ALT-317、ALT-333、ALT-403又はALT-205である。一部の実施形態では、式(I)の化合物は、式(II)、(III)又は(IV)のいずれか1つの化合物:
【0011】
【化2】
【0012】
[式中、R1は、H、OH又は低級アルキルであり、R2は、場合により置換されている、4、5又は6個の炭素の芳香族環であり、ここで、芳香族環は、炭素環式又はヘテロ環式であり、芳香族環上の各位置は、独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ、NH2、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、SH、低級アルキルチオ、NO2であるか、又は2つの残基が一緒になってヘテロ環式環を形成し、R3及びR8は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、=O、=S、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R9、R10、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ又はNO2であり、ここで、式(II)、(III)又は(IV)の縮合環のいずれか1つに存在する炭素原子のいずれか1個は、窒素原子で場合により置きかえられている]である。一部の実施形態では、式(II)の化合物は、ALT-212、ALT-215、ALT-308、ALT-309、ALT-408、ALT-411、ALT-59、ALT-110、ALT-201、ALT-202、ALT-204、ALT-208、ALT-207、ALT-210、ALT-211、ALT-302、ALT-306、ALT-307、ALT-311、ALT-318、ALT-322、ALT-324、ALT-402、ALT-404、ALT-406、ALT-409、ALT-410、ALT-413又はALT-414である。一部の実施形態では、式(II)の化合物は、ALT-59である。一部の実施形態では、式(III)の化合物は、ALT-108、ALT-317、ALT-333又はALT-403である。一部の実施形態では、式(IV)の化合物は、ALT-205である。一部の実施形態では、医薬組成物は、嚢胞性線維症の処置において使用するためのものである。一部の実施形態では、組成物は、嚢胞性線維症の進行又は発症を阻害する。一部の実施形態では、医薬組成物は、神経変性疾患の処置において使用するためのものである。一部の実施形態では、組成物は、神経変性疾患の進行又は発症を阻害する。一部の実施形態では、神経変性疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症又はパーキンソン病である。一部の実施形態では、式(I)の化合物は、0.01mgから3000mgの量で存在する。一部の実施形態では、組成物は、経口又は非経口投与のために製剤化されている。
【0013】
本明細書において提供される一部の実施形態は、対象において、TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)を低減させる又は阻害する方法に関する。一部の実施形態では、方法は、TDP-43を低減させる又は阻害する化合物を必要とする対象を選択する工程と、対象に、治療有効量の式(I)のいずれか1つの化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩:
【0014】
【化3】
【0015】
[式中、R1は、H、OH又は低級アルキルであり、R2は、場合により置換されている、4、5又は6個の炭素の芳香族環であり、ここで、芳香族環は、炭素環式又はヘテロ環式であり、芳香族環上の各位置は、独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ、NH2、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、SH、低級アルキルチオ、NO2であるか、又は2つの残基が一緒になってヘテロ環式環を形成し、R3及びR8は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、=O、=S、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R9及びR10、R10及びR11、又はR11及びR12のうちの少なくとも1つは、一緒になって、場合により置換されているベンゼン環を形成し、ここで、ベンゼン環は、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ又はNO2で場合により置換されており、ここで、式(I)の縮合環のいずれか1つに存在する炭素原子のいずれか1個は、窒素原子で場合により置きかえられている]を含む組成物を投与する工程とを含む。一部の実施形態では、式(I)の化合物は、式(II)、(III)又は(IV)のいずれか1つの化合物:
【0016】
【化4】
【0017】
[式中、R1は、H、OH又は低級アルキルであり、R2は、場合により置換されている、4、5又は6個の炭素の芳香族環であり、ここで、芳香族環は、炭素環式又はヘテロ環式であり、芳香族環上の各位置は、独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ、NH2、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、SH、低級アルキルチオ、NO2であるか、又は2つの残基が一緒になってヘテロ環式環を形成し、R3及びR8は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、=O、=S、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R9、R10、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ又はNO2であり、ここで、式(II)、(III)又は(IV)の縮合環のいずれか1つに存在する炭素原子のいずれか1個は、窒素原子で場合により置きかえられている]である。一部の実施形態では、対象は、TDP-43毒性に関連する疾患又は状態を有すると同定される。一部の実施形態では、疾患は、嚢胞性線維症又は神経変性疾患である。一部の実施形態では、方法は、嚢胞性線維症の又は神経変性疾患の進行又は発症を阻害する又は遅延させる。一部の実施形態では、神経変性疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症又はパーキンソン病である。一部の実施形態では、式(I)の化合物は、ALT-212、ALT-215、ALT-308、ALT-309、ALT-408、ALT-411、ALT-59、ALT-110、ALT-201、ALT-202、ALT-204、ALT-208、ALT-207、ALT-210、ALT-211、ALT-302、ALT-306、ALT-307、ALT-311、ALT-318、ALT-322、ALT-324、ALT-402、ALT-404、ALT-406、ALT-409、ALT-410、ALT-413、ALT-414、ALT-108、ALT-317、ALT-333、ALT-403又はALT-205である。一部の実施形態では、式(I)の化合物は、ALT-59である。一部の実施形態では、組成物は、対象に経口的に又は非経口的に投与される。一部の実施形態では、TDP-43は、少なくとも10%低減する。
【0018】
本明細書において提供される一部の実施形態は、TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)毒性に関連する疾患又は状態に罹患している対象を処置する方法に関する。一部の実施形態では、方法は、TDP-43毒性を低減させる、阻害する、遅延させる、軽快させる又は予防する化合物を必要とする対象を同定する工程と、対象に、治療有効量の式(I)の化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩:
【0019】
【化5】
【0020】
[式中、R1は、H、OH又は低級アルキルであり、R2は、場合により置換されている、4、5又は6個の炭素の芳香族環であり、ここで、芳香族環は、炭素環式又はヘテロ環式であり、芳香族環上の各位置は、独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ、NH2、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、SH、低級アルキルチオ、NO2であるか、又は2つの残基が一緒になってヘテロ環式環を形成し、R3及びR8は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、=O、=S、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R9及びR10、R10及びR11、又はR11及びR12のうちの少なくとも1つは、一緒になって、場合により置換されているベンゼン環を形成し、ここで、ベンゼン環は、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ又はNO2で場合により置換されており、ここで、式(I)の縮合環のいずれか1つに存在する炭素原子のいずれか1個は、窒素原子で場合により置きかえられている]を含む組成物を投与する工程とを含む。一部の実施形態では、式(I)の化合物は、式(II)、(III)又は(IV)の化合物のいずれか1つの化合物:
【0021】
【化6】
【0022】
[式中、R1は、H、OH又は低級アルキルであり、R2は、場合により置換されている、4、5又は6個の炭素の芳香族環であり、ここで、芳香族環は、炭素環式又はヘテロ環式であり、芳香族環上の各位置は、独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ、NH2、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、SH、低級アルキルチオ、NO2であるか、又は2つの残基が一緒になってヘテロ環式環を形成し、R3及びR8は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、=O、=S、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R9、R10、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ又はNO2であり、ここで、式(II)、(III)又は(IV)の縮合環のいずれか1つに存在する炭素原子のいずれか1個は、窒素原子で場合により置きかえられている]である。一部の実施形態では、疾患は、嚢胞性線維症又は神経変性疾患である。一部の実施形態では、方法は、嚢胞性線維症の又は神経変性疾患の進行又は発症を阻害する又は遅延させる。一部の実施形態では、神経変性疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症又はパーキンソン病である。一部の実施形態では、式(I)の化合物は、ALT-212、ALT-215、ALT-308、ALT-309、ALT-408、ALT-411、ALT-59、ALT-110、ALT-201、ALT-202、ALT-204、ALT-208、ALT-207、ALT-208、ALT-210、ALT-211、ALT-302、ALT-306、ALT-307、ALT-311、ALT-318、ALT-322、ALT-324、ALT-402、ALT-404、ALT-406、ALT-409、ALT-410、ALT-413、ALT-414、ALT-108、ALT-317、ALT-333、ALT-403又はALT-205である。一部の実施形態では、式(I)の化合物は、ALT-59である。一部の実施形態では、組成物は、対象に経口的に又は非経口的に投与される。一部の実施形態では、方法は、TDP-43毒性を低減させる。
【0023】
本明細書において提供される一部の実施形態は、対象におけるTAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)毒性に関連する疾患又は状態の処置用医薬の製造における、式(I)の化合物の使用に関し、ここで、式(I)の化合物は、構造:
【0024】
【化7】
【0025】
[式中、R1は、H、OH又は低級アルキルであり、R2は、場合により置換されている、4、5又は6個の炭素の芳香族環であり、ここで、芳香族環は、炭素環式又はヘテロ環式であり、芳香族環上の各位置は、独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ、NH2、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、SH、低級アルキルチオ、NO2であるか、又は2つの残基が一緒になってヘテロ環式環を形成し、R3及びR8は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、=O、=S、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R9及びR10、R10及びR11、又はR11及びR12のうちの少なくとも1つは、一緒になって、場合により置換されているベンゼン環を形成し、ここで、ベンゼン環は、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ又はNO2で場合により置換されており、ここで、式(I)の縮合環のいずれか1つに存在する炭素原子のいずれか1個は、窒素原子で場合により置きかえられている]を有する。一部の実施形態では、式(I)の化合物は、式(II)、(III)又は(IV)のいずれか1つの化合物:
【0026】
【化8】
【0027】
[式中、R1は、H、OH又は低級アルキルであり、R2は、場合により置換されている、4、5又は6個の炭素の芳香族環であり、ここで、芳香族環は、炭素環式又はヘテロ環式であり、芳香族環上の各位置は、独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ、NH2、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、SH、低級アルキルチオ、NO2であるか、又は2つの残基が一緒になってヘテロ環式環を形成し、R3及びR8は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、=O、=S、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R9、R10、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ又はNO2であり、ここで、式(II)、(III)又は(IV)の縮合環のいずれか1つに存在する炭素原子のいずれか1個は、窒素原子で場合により置きかえられている]である。一部の実施形態では、疾患は、嚢胞性線維症又は神経変性疾患である。一部の実施形態では、医薬は、嚢胞性線維症の又は神経変性疾患の進行又は発症を阻害する又は遅延させる。一部の実施形態では、神経変性疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症又はパーキンソン病である。一部の実施形態では、式(I)の化合物は、ALT-212、ALT-215、ALT-308、ALT-309、ALT-408、ALT-411、ALT-59、ALT-110、ALT-201、ALT-202、ALT-204、ALT-207、ALT-208、ALT-210、ALT-211、ALT-302、ALT-306、ALT-307、ALT-311、ALT-318、ALT-322、ALT-324、ALT-402、ALT-404、ALT-406、ALT-409、ALT-410、ALT-413、ALT-414、ALT-108、ALT-317、ALT-333、ALT-403又はALT-205である。一部の実施形態では、式(I)の化合物は、ALT-59である。
【0028】
一部の実施形態では、式(I)の化合物は、式(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物である。本明細書において提供される一部の実施形態は、医薬組成物に関する。一部の実施形態では、医薬組成物は、TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)毒性に関連する疾患又は状態の処置において使用するためのものである。一部の実施形態では、組成物は、治療有効量の式(V)の化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩:
【0029】
【化9】
【0030】
[式中、R1は、H、OH又は低級アルキルであり、R2は、場合により置換されている、4、5又は6個の炭素の芳香族環であり、ここで、芳香族環は、炭素環式又はヘテロ環式であり、芳香族環上の各位置は、独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ、NH2、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、SH、低級アルキルチオ、NO2であるか、又は2つの残基が一緒になってヘテロ環式環を形成し、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R8及びR9、R9及びR10、又はR10及びR11のうちの少なくとも1つは、一緒になって、場合により置換されているベンゼン環を形成し、ここで、ベンゼン環は、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ又はNO2で場合により置換されており、ここで、式(V)の縮合環のいずれか1つに存在する炭素原子のいずれか1個は、窒素原子で場合により置きかえられている]を含む。一部の実施形態では、式(V)の化合物は、ALT-212、ALT-215、ALT-308、ALT-309、ALT-408、ALT-411、ALT-59、ALT-110、ALT-201、ALT-202、ALT-204、ALT-208、ALT-207、ALT-210、ALT-211、ALT-302、ALT-306、ALT-307、ALT-311、ALT-318、ALT-322、ALT-324、ALT-402、ALT-404、ALT-406、ALT-409、ALT-410、ALT-413、ALT-414、ALT-108、ALT-317、ALT-333、ALT-403又はALT-205である。一部の実施形態では、式(V)の化合物は、ALT-212、ALT-215、ALT-308、ALT-309、ALT-408、ALT-411、ALT-59、ALT-110、ALT-202、ALT-204、ALT-208、ALT-207、ALT-210、ALT-211、ALT-302、ALT-306、ALT-307、ALT-311、ALT-318、ALT-322、ALT-324、ALT-402、ALT-404、ALT-406、ALT-409、ALT-410、ALT-413、ALT-414、ALT-108、ALT-317、ALT-333、ALT-403又はALT-205である。一部の実施形態では、式(V)の化合物は、式(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物:
【0031】
【化10】
【0032】
[式中、R1は、H、OH又は低級アルキルであり、R2は、場合により置換されている、4、5又は6個の炭素の芳香族環であり、ここで、芳香族環は、炭素環式又はヘテロ環式であり、芳香族環上の各位置は、独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ、NH2、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、SH、低級アルキルチオ、NO2であるか、又は2つの残基が一緒になってヘテロ環式環を形成し、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R8、R9、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ又はNO2であり、ここで、式(VI)、(VII)又は(VIII)の縮合環のいずれか1つに存在する炭素原子のいずれか1個は、窒素原子で場合により置きかえられている]である。一部の実施形態では、式(VI)の化合物は、ALT-212、ALT-215、ALT-308、ALT-309、ALT-408、ALT-411、ALT-59、ALT-110、ALT-201、ALT-202、ALT-204、ALT-208、ALT-207、ALT-210、ALT-211、ALT-302、ALT-306、ALT-307、ALT-311、ALT-318、ALT-322、ALT-324、ALT-402、ALT-404、ALT-406、ALT-409、ALT-410、ALT-413又はALT-414である。一部の実施形態では、式(VI)の化合物は、ALT-212、ALT-215、ALT-308、ALT-309、ALT-408、ALT-411、ALT-59、ALT-110、ALT-202、ALT-204、ALT-208、ALT-207、ALT-210、ALT-211、ALT-302、ALT-306、ALT-307、ALT-311、ALT-318、ALT-322、ALT-324、ALT-402、ALT-404、ALT-406、ALT-409、ALT-410、ALT-413又はALT-414である。一部の実施形態では、式(VI)の化合物は、ALT-59である。一部の実施形態では、式(VII)の化合物は、ALT-108、ALT-317、ALT-333又はALT-403である。一部の実施形態では、式(VIII)の化合物は、ALT-205である。一部の実施形態では、医薬組成物は、嚢胞性線維症の処置において使用するためのものである。一部の実施形態では、組成物は、嚢胞性線維症の進行又は発症を阻害する。一部の実施形態では、医薬組成物は、神経変性疾患の処置において使用するためのものである。一部の実施形態では、組成物は、神経変性疾患の進行又は発症を阻害する。一部の実施形態では、神経変性疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症又はパーキンソン病である。一部の実施形態では、式(V)の化合物は、0.01mgから3000mgの量で存在する。一部の実施形態では、組成物は、経口又は非経口投与のために製剤化されている。
【0033】
本明細書において提供される一部の実施形態は、対象において、TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)を低減させる又は阻害する方法に関する。一部の実施形態では、方法は、TDP-43を低減させる又は阻害する化合物を必要とする対象を選択する工程と、対象に、治療有効量の式(V)のいずれか1つの化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩:
【0034】
【化11】
【0035】
[式中、R1は、H、OH又は低級アルキルであり、R2は、場合により置換されている、4、5又は6個の炭素の芳香族環であり、ここで、芳香族環は、炭素環式又はヘテロ環式であり、芳香族環上の各位置は、独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ、NH2、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、SH、低級アルキルチオ、NO2であるか、又は2つの残基が一緒になってヘテロ環式環を形成し、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R8及びR9、R9及びR10、又はR10及びR11のうちの少なくとも1つは、一緒になって、場合により置換されているベンゼン環を形成し、ここで、ベンゼン環は、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ又はNO2で場合により置換されており、ここで、式(V)の縮合環のいずれか1つに存在する炭素原子のいずれか1個は、窒素原子で場合により置きかえられている]を含む組成物を投与する工程とを含む。一部の実施形態では、式(V)の化合物は、式(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物:
【0036】
【化12】
【0037】
[式中、R1は、H、OH又は低級アルキルであり、R2は、場合により置換されている、4、5又は6個の炭素の芳香族環であり、ここで、芳香族環は、炭素環式又はヘテロ環式であり、芳香族環上の各位置は、独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ、NH2、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、SH、低級アルキルチオ、NO2であるか、又は2つの残基が一緒になってヘテロ環式環を形成し、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R8、R9、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ又はNO2であり、ここで、式(VI)、(VII)又は(VIII)の縮合環のいずれか1つに存在する炭素原子のいずれか1個は、窒素原子で場合により置きかえられている]である。一部の実施形態では、対象は、TDP-43毒性に関連する疾患又は状態を有すると同定される。一部の実施形態では、疾患は、嚢胞性線維症又は神経変性疾患である。一部の実施形態では、方法は、嚢胞性線維症の又は神経変性疾患の進行又は発症を阻害する又は遅延させる。一部の実施形態では、神経変性疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症又はパーキンソン病である。一部の実施形態では、式(V)の化合物は、ALT-212、ALT-215、ALT-308、ALT-309、ALT-408、ALT-411、ALT-59、ALT-110、ALT-201、ALT-202、ALT-204、ALT-208、ALT-207、ALT-210、ALT-211、ALT-302、ALT-306、ALT-307、ALT-311、ALT-318、ALT-322、ALT-324、ALT-402、ALT-404、ALT-406、ALT-409、ALT-410、ALT-413、ALT-414、ALT-108、ALT-317、ALT-333、ALT-403又はALT-205である。一部の実施形態では、式(V)の化合物は、ALT-212、ALT-215、ALT-308、ALT-309、ALT-408、ALT-411、ALT-59、ALT-110、ALT-202、ALT-204、ALT-208、ALT-207、ALT-210、ALT-211、ALT-302、ALT-306、ALT-307、ALT-311、ALT-318、ALT-322、ALT-324、ALT-402、ALT-404、ALT-406、ALT-409、ALT-410、ALT-413、ALT-414、ALT-108、ALT-317、ALT-333、ALT-403又はALT-205である。一部の実施形態では、式(V)の化合物は、ALT-59である。一部の実施形態では、組成物は、対象に経口的に又は非経口的に投与される。一部の実施形態では、TDP-43は、少なくとも10%低減する。
【0038】
本明細書において提供される一部の実施形態は、TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)毒性に関連する疾患又は状態に罹患している対象を処置する方法に関する。一部の実施形態では、方法は、TDP-43毒性を低減させる、阻害する、遅延させる、軽快させる又は予防する化合物を必要とする対象を同定する工程と、対象に、治療有効量の式(V)の化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩:
【0039】
【化13】
【0040】
[式中、R1は、H、OH又は低級アルキルであり、R2は、場合により置換されている、4、5又は6個の炭素の芳香族環であり、ここで、芳香族環は、炭素環式又はヘテロ環式であり、芳香族環上の各位置は、独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ、NH2、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、SH、低級アルキルチオ、NO2であるか、又は2つの残基が一緒になってヘテロ環式環を形成し、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R8及びR9、R9及びR10、又はR10及びR11のうちの少なくとも1つは、一緒になって、場合により置換されているベンゼン環を形成し、ここで、ベンゼン環は、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ又はNO2で場合により置換されており、ここで、式(V)の縮合環のいずれか1つに存在する炭素原子のいずれか1個は、窒素原子で場合により置きかえられている]を含む組成物を投与する工程とを含む。一部の実施形態では、式(V)の化合物は、式(VI)、(VII)又は(VIII)の化合物のいずれか1つの化合物:
【0041】
【化14】
【0042】
[式中、R1は、H、OH又は低級アルキルであり、R2は、場合により置換されている、4、5又は6個の炭素の芳香族環であり、ここで、芳香族環は、炭素環式又はヘテロ環式であり、芳香族環上の各位置は、独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ、NH2、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、SH、低級アルキルチオ、NO2であるか、又は2つの残基が一緒になってヘテロ環式環を形成し、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R8、R9、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ又はNO2であり、ここで、式(VI)、(VII)又は(VIII)の縮合環のいずれか1つに存在する炭素原子のいずれか1個は、窒素原子で場合により置きかえられている]である。一部の実施形態では、疾患は、嚢胞性線維症又は神経変性疾患である。一部の実施形態では、方法は、嚢胞性線維症の又は神経変性疾患の進行又は発症を阻害する又は遅延させる。一部の実施形態では、神経変性疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症又はパーキンソン病である。一部の実施形態では、式(V)の化合物は、ALT-212、ALT-215、ALT-308、ALT-309、ALT-408、ALT-411、ALT-59、ALT-110、ALT-201、ALT-202、ALT-204、ALT-208、ALT-207、ALT-208、ALT-210、ALT-211、ALT-302、ALT-306、ALT-307、ALT-311、ALT-318、ALT-322、ALT-324、ALT-402、ALT-404、ALT-406、ALT-409、ALT-410、ALT-413、ALT-414、ALT-108、ALT-317、ALT-333、ALT-403又はALT-205である。一部の実施形態では、式(V)の化合物は、ALT-212、ALT-215、ALT-308、ALT-309、ALT-408、ALT-411、ALT-59、ALT-110、ALT-202、ALT-204、ALT-208、ALT-207、ALT-208、ALT-210、ALT-211、ALT-302、ALT-306、ALT-307、ALT-311、ALT-318、ALT-322、ALT-324、ALT-402、ALT-404、ALT-406、ALT-409、ALT-410、ALT-413、ALT-414、ALT-108、ALT-317、ALT-333、ALT-403又はALT-205である。一部の実施形態では、式(V)の化合物は、ALT-59である。一部の実施形態では、組成物は、対象に経口的に又は非経口的に投与される。一部の実施形態では、方法は、TDP-43毒性を低減させる。
【0043】
本明細書において提供される一部の実施形態は、対象におけるTAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)毒性に関連する疾患又は状態の処置用医薬の製造における、式(V)の化合物の使用に関し、ここで、式(V)の化合物は、構造:
【0044】
【化15】
【0045】
[式中、R1は、H、OH又は低級アルキルであり、R2は、場合により置換されている、4、5又は6個の炭素の芳香族環であり、ここで、芳香族環は、炭素環式又はヘテロ環式であり、芳香族環上の各位置は、独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ、NH2、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、SH、低級アルキルチオ、NO2であるか、又は2つの残基が一緒になってヘテロ環式環を形成し、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R8及びR9、R9及びR10、又はR10及びR11のうちの少なくとも1つは、一緒になって、場合により置換されているベンゼン環を形成し、ここで、ベンゼン環は、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ又はNO2で場合により置換されており、ここで、式(V)の縮合環のいずれか1つに存在する炭素原子のいずれか1個は、窒素原子で場合により置きかえられている]を有する。一部の実施形態では、式(V)の化合物は、式(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物:
【0046】
【化16】
【0047】
[式中、R1は、H、OH又は低級アルキルであり、R2は、4場合により置換されている、、5又は6個の炭素の芳香族環であり、ここで、芳香族環は、炭素環式又はヘテロ環式であり、芳香族環上の各位置は、独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ、NH2、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、SH、低級アルキルチオ、NO2であるか、又は2つの残基が一緒になってヘテロ環式環を形成し、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R8、R9、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ又はNO2であり、ここで、式(VI)、(VII)又は(VIII)の縮合環のいずれか1つに存在する炭素原子のいずれか1個は、窒素原子で場合により置きかえられている]である。一部の実施形態では、疾患は、嚢胞性線維症又は神経変性疾患である。一部の実施形態では、医薬は、嚢胞性線維症の又は神経変性疾患の進行又は発症を阻害する又は遅延させる。一部の実施形態では、神経変性疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症又はパーキンソン病である。一部の実施形態では、式(V)の化合物は、ALT-212、ALT-215、ALT-308、ALT-309、ALT-408、ALT-411、ALT-59、ALT-110、ALT-201、ALT-202、ALT-204、ALT-207、ALT-208、ALT-210、ALT-211、ALT-302、ALT-306、ALT-307、ALT-311、ALT-318、ALT-322、ALT-324、ALT-402、ALT-404、ALT-406、ALT-409、ALT-410、ALT-413、ALT-414、ALT-108、ALT-317、ALT-333、ALT-403又はALT-205である。一部の実施形態では、式(V)の化合物は、ALT-212、ALT-215、ALT-308、ALT-309、ALT-408、ALT-411、ALT-59、ALT-110、ALT-202、ALT-204、ALT-207、ALT-208、ALT-210、ALT-211、ALT-302、ALT-306、ALT-307、ALT-311、ALT-318、ALT-322、ALT-324、ALT-402、ALT-404、ALT-406、ALT-409、ALT-410、ALT-413、ALT-414、ALT-108、ALT-317、ALT-333、ALT-403又はALT-205である。一部の実施形態では、式(V)の化合物は、ALT-59である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】ALT-59結合タンパク質の単離を示すブロットを描写する図である。PLC/PRF/5及びMDA-MB-231細胞由来の細胞溶解物を使用して、固相親和性沈殿を実施した。沈殿したタンパク質を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)ゲルによって分割し、銀染色した。43kDaの見掛けの分子量を持つ主要バンドが両方の試料から可視化された。
図2】質量分析によって同定された潜在的なALT-59結合タンパク質のリストを示す表である。ALT-59の沈殿したタンパク質試料を、タンパク質同定のための質量分析に供した。TDP-43(枠で囲われたもの)がトップヒットとしてランク付けされ、図1において可視化された43kDaバンドである可能性が高い。
図3】エシェリキア・コリ(E. coli)全細胞溶解物におけるヒスチジンタグ付きTDP-43の発現を描写する図である。pRETb/TDP43-Hisを持つ形質転換体ロゼッタ(DE3)細胞は、誘発されなかったか、イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)単独で、或いはALT-59(30又は60μM)若しくはポリミキシンBノナペプチド(PMBN)又は両方と一緒に誘発された。PMBNは、ALT-59の移入増大のためにグラム陰性細菌の外膜の透過性を増大させる。PMBNの存在下、60μMの濃度のALT-59は、TDP43-Hisの発現を増大させ、ALT-59が、細菌においてTDP-43発現によって引き起こされた毒性を低減させることができることを示唆していた。しかしながら、タンパク質は比較的低レベルで発現され、TDP-43の凝集しやすい性質により精製することができなかった。
図4図4A及び図4Bは、His-Sumo-TDP43の発現及び精製を描写する図である。溶解度を増大させるために、SumoタグをTDP-43のN末端に挿入した。図4Aは、IPTG誘発を伴う又は伴わないHis-Sumo-TDP43を発現している2つの細菌のクローン由来の全細胞溶解物におけるタンパク質発現を示す。図4Bは、Ni-NTAアガロースを使用する精製後の溶離したタンパク質を示す。
図5】ALT-59による、His-Sumo-TDP43のTG12-ビオチンとの結合の阻害を描写する図である。組換えHis-Sumo-TDP43を、TG12-ビオチン(TGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTG-ビオチン(配列番号1))とともに、担体又はALT-59の存在下でインキュベートした。ストレプトアビジン磁気ビーズを添加して、DNA-タンパク質複合体を解体し、次いで、これを煮沸し、SDS-PAGEによって分画した。抗TDP-43抗体を使用してTDP-43を検出するために、ウエスタンブロッティングを実施した。
図6】ALT-59によるDNA-タンパク質複合体からのHis-Sumo-TDP43の溶離を描写する図である。組換えHis-Sumo-TDP43を、TG12-ビオチンとともにインキュベートした。ストレプトアビジン磁気ビーズを添加して、DNA-タンパク質複合体を解体した。結合緩衝液で3回洗浄して未結合のタンパク質を除去した後、DNA-タンパク質複合体を3つの部分に分け、1つを煮沸し、他の2つを担体又はALT-59とともにインキュベートした。上清を煮沸し、SDS-PAGEによって分画した。抗TDP-43抗体を使用してTDP-43を検出するために、ウエスタンブロッティングを実施した。
図7図7A~7Cは、ALT-59処理後のリソソーム関連膜タンパク質2(LAMP2)プレmRNAスプライシングの変化を描写する図である。LAMP2プレmRNAは11個のエクソンを含有する。ジヌクレオチドTG繰り返しの2つの長いストレッチは、エクソン9及びイントロン9に位置していた(図7A)。LAMP2プレmRNAの選択的スプライシングは、3つのアイソフォームを生成し、これらは5'末端の同じ8つのエクソンを共有し、異なるC末端尾部を持つタンパク質に翻訳される。エクソン1及び11上に位置するプライマーは、LAMP2A及びLAMP2C mRNA由来の異なる長さを持つフラグメントを増幅する(図7B)。ジメチルスルホキシド(DMSO)又はALT-59で処理したMDA-MB-231細胞から精製されたRNA試料を使用して、半定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)実験を実施した。1%のアガロースゲルを使用して、RT-PCR試料を分離した。ALT-59によるTDP-43の阻害は、エクソン10及び11の除外につながり、LAMP2C mRNAの増大をもたらす(図7C)。
図8】アポリポタンパク質A2(ApoA2)、嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子(CFTR)及びポリメラーゼデルタ相互作用タンパク質3(POLDIP3)のプレmRNAスプライシングに対するALT-59処理の効果を描写する図である。DMSO又はALT-59で処理したMDA-MB-231細胞から精製されたRNA試料を使用して、RT-PCR実験を実施した。TBE-PAGEゲルを使用して、RT-PCR試料を分離した。ALT-59によるTDP-43の阻害は、ApoA2プレmRNAスプライシング及びCFTRエクソン9スキッピングを阻害したが、POLDIP3のスプライシングは変化させなかった。
図9図9A~9Dは、ALT-59処理後のCFTRの発現及びグリコシル化の増大を描写する図である。U-87MG細胞を、DMSO、3μM又は6μMのALT-59で処理した。抗CFTR抗体を使用してCFTRのレベルを検出するために、ウエスタンブロッティングを実施した。複数のCFTRアイソフォームが検出された。同じ膜のより短期の曝露(図9A、上部パネル)及びより長期の曝露(図9A、下部パネル)は、160kDa、240kDa及び300kDaにおいてCFTRバンドからのシグナルの増大を示し、これらはそれぞれ、図9B図9C及び図9Dにおいて定量化されている。
図10】ALT-59による処理時の、MDA-MB-231及びU-87MG細胞の両方における原形質膜上でのCFTR局在化の増大を示す顕微鏡写真を描写する図である。MDA-MB-231及びU-87MG細胞を、カバースリップ上で培養し、DMSO又は4μMのALT-59で処理した。細胞を固定し、透過化し、免疫染色した。Carl Zeiss社LSM510レーザー走査型顕微鏡を使用して画像を撮影した。パラメーターはすべての画像について同一であった。ALT-59処理は、核周辺領域から原形質膜へのCFTRの再分布を引き起こした。
図11】ΔF508突然変異についてホモ接合型の嚢胞性線維症患者から単離されたALT-59処理した初代気管支上皮細胞における原形質膜上でのCFTR局在化の増大を示す顕微鏡写真を描写する図である。細胞を、カバースリップ上で培養し、担体又は4μMのALT-59で処理した。細胞を固定し、透過化し、免疫染色した。Carl Zeiss社LSM510レーザー走査型顕微鏡を使用して画像を撮影した。パラメーターはすべての画像について同一であった。ALT-59処理は、原形質膜上でのΔF508-CFTRの局在化の増大を引き起こした。
図12】ΔF508突然変異についてホモ接合型の嚢胞性線維症患者から単離されたALT-308及びALT-410処理した初代気管支上皮細胞における原形質膜上でのCFTR局在化の増大を示す顕微鏡写真を描写する図である。細胞を、カバースリップ上で培養し、担体又は2μMのALT-59で処理した。細胞を固定し、透過化し、免疫染色した。Carl Zeiss社LSM510レーザー走査型顕微鏡を使用して画像を撮影した。パラメーターはすべての画像について同一であった。ALT-59処理は、原形質膜上でのCFTRの局在化の増大を引き起こした。
図13】ALT-59処理後の神経変性疾患に関連するタンパク質の改変された発現を描写する図である。U-87MG細胞を、DMSO、3μM又は6μMのALT-59で処理し、ウエスタンブロッティング解析に供した。指示された抗体を使用して、タンパク質発現を決定した。ベータ-アクチンを、試料の等しいローディングを指し示すための内部対照として使用した。バンドの下の数字は、対応するバンドの相対分量を指し示す。
図14】T98G細胞におけるALT-59処理時のベータ-セクレターゼ1(BACE1)の発現の低減を描写する図である。細胞を、DMSO、3μM又は6μMのALT-59で処理し、ウエスタンブロッティング解析に供した。抗BACE1抗体を使用して、タンパク質発現を決定した。ベータ-アクチンを、試料の等しいローディングを指し示すための内部対照として使用した。バンドの下の数字は、対応するバンドの相対分量を指し示す。
図15】ALT-59類似体のスクリーニングからの結果を描写する図である。U-87MG細胞を、指示された濃度の指示された化合物で処理した。BACE1発現レベルを、TDP-43活性を指し示すためのスクリーニングマーカーとして使用した。
図16】ALT-59類似体のスクリーニングからの結果を描写する図である。U-87MG細胞を、指示された濃度の指示された化合物で処理した。BACE1発現レベルを、TDP-43活性を指し示すためのスクリーニングマーカーとして使用した。
図17】ALT-59類似体のスクリーニングからの結果を描写する図である。U-87MG細胞を、指示された濃度の指示された化合物で処理した。BACE1発現レベルを、TDP-43活性を指し示すためのスクリーニングマーカーとして使用した。
図18図15に示される通りのBACE1タンパク質発現を抑制することができる化合物の化学構造を描写する図である。
図19図16に示される通りのBACE1タンパク質発現を抑制することができる化合物の化学構造を描写する図である。
図20図17に示される通りのBACE1タンパク質発現を抑制することができる化合物の化学構造を描写する図である。
図21】シノラブダイティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)の顕微鏡写真を描写する図である。左から右へ、野生型シー・エレガンス(C. elegans)、対照で処理したヒトTDP-43を持つトランスジェニックシー・エレガンス、及び本明細書において記述されている化合物で処理したヒトTDP-43を持つトランスジェニックシー・エレガンスを示す。
図22図21に示される3つのシー・エレガンス群について麻痺の百分率をグラフで描写する図であり、ヒトTDP-43を持つトランスジェニックシー・エレガンスが、本明細書において記述されている化合物での処理時に、表現型のレスキューを呈することを描写している。
【発明を実施するための形態】
【0049】
下記の詳細な記述において、その一部を形成する添付の図面を参照する。図面において、同様の記号は、文脈上別のことを指示するのでない限り、典型的には同様の成分を同定する。詳細な記述、図面及び請求項において記述されている例証的な実施形態は、限定的であるようになっていない。本明細書において提示される主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用されてよく、他の変更が為されてよい。本開示の態様は、本明細書において概して記述され、図において例証される通り、多種多様な異なる構成で配置され、置換され、組み合わされ、分離され、且つ設計されてよく、それらのすべてが本明細書において明確に企図されていることが、容易に理解されるであろう。本明細書において引用されるすべての参考文献は、参照によりその全体が及び本明細書で参照される具体的な開示について、本明細書に明示的に組み込まれる。
【0050】
I.疾患
TDP-43は、そのRNA認識モチーフ(RRM)ドメインを経由して、UG(又はTG)一本鎖ジヌクレオチド繰り返しと優先的に結合する。結合親和性は繰り返し数とともに増大し、8回を超えるそのような繰り返しがある場合、平衡解離定数(Kd)は10nMを下回る(Buratti及びBaralle、(2001b)、J Biol Chem 276、36337~36343; Kuoら、2009、Nucl Acids Res 37、1799~1808)。UG/TGリッチモチーフは、微小管関連タンパク質tau(MAPT)及び嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子(CFTR)等の神経変性障害及び嚢胞性線維症に関与する種々の遺伝子において見ることができる。
【0051】
したがって、本明細書において提供されるのは、TDP-43毒性に関連する疾患又は状態の処置において使用するための、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む組成物である。TDP-43毒性に関連する疾患又は状態を処置する方法も提供される。更なる実施形態は、対象においてTDP-43レベルを低減させる方法に関する。TDP-43毒性に関連する疾患又は状態は、例えば、嚢胞性線維症及び神経変性疾患を含む。
【0052】
一部の実施形態では、式(I)の化合物は、式(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物である。一部の実施形態では、本明細書において提供されるのは、TDP-43毒性に関連する疾患又は状態の処置において使用するための、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)の化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む組成物である。TDP-43毒性に関連する疾患又は状態を処置する方法も提供される。更なる実施形態は、対象においてTDP-43レベルを低減させる方法に関する。TDP-43毒性に関連する疾患又は状態は、例えば、嚢胞性線維症及び神経変性疾患を含む。
【0053】
嚢胞性線維症は、上皮細胞膜を越えて塩化物及びチオシアン酸イオンを伝導するABC輸送体クラスイオンチャネルタンパク質をコードするCFTR遺伝子における突然変異によって、引き起こされる。CFTRの塩化物イオンチャネル機能に影響を与える突然変異は、肺、膵臓及び他の臓器における上皮液輸送を損ない、致死的疾患である嚢胞性線維症をもたらす。CFTR突然変異は、先天性両側輸精管欠損(CBAVD)(Chillonら、(1995)、N Engl J Med 332、1475~1480)、特発性膵炎(Nooneら、2001、Gastroenterology 121、1310~1319)、鼻ポリープ(Kostuchら、2005、Eur Arch Oto-Rhino-L 262、982~986)、気管支拡張症(Casalsら、(2004)、Clin Genet 65、490~495)及びアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(Millerら、1996、Am J Hum Genet 59、45~51)等の様々な他の臨床症状にも寄与する。
【0054】
正常に機能するために、CFTRは、完全長タンパク質として翻訳され、正確に折り畳まれ、グリコシル化され、ER-ゴルジ分泌経路を経由して細胞表面に輸送されることが必要である。TDP-43は、CFTRイントロン8における3'スプライス部位で多形TG繰り返しと結合し、エクソン9のスキッピングを引き起こす。エクソン9が欠けたCFTR転写産物は正常にプロセシングされず、細胞膜を越えて塩化物を伝導することができない(Buratti及びBaralle、(2001b)、J Biol Chem 276、36337~36343; Strongら、1993、Hum Mol Genet 2、225~230)。TG繰り返し直後の連続するチミジンの数は、エクソン9スキッピングと相関するとされてきた。9Tと命名された9つの連続するチミジンを持つ対立遺伝子は、より短いTG繰り返し(<12)を有し、通常のCFTR mRNAの最も高い発現をもたらす。5つのチミジン及び12のTGを持つ5T-TG12対立遺伝子は、エクソン9のスキッピングを悪化させ、それにより、機能的CFTRタンパク質のレベルの低減をもたらす。5T-TG12対立遺伝子は、一般集団のおよそ10%及び男性不妊又は非古典的嚢胞性線維症を患っている個体の91%においてみられる(Gromanら、2004、American Journal of Human Genetics 74、176~179)。TDP-43のDNA/RNA結合活性をブロックすることができるモジュレーターは、より長いTG繰り返しを持つ個体において、機能的完全長CFTRのレベルを増大させるであろう。
【0055】
TDP-43の異常な蓄積は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び前頭側頭葉変性症(FTLD)の両方の病理学的特質として同定されてきた。TDP-43陽性封入体は、約97%のALS及びFTLD症例の約50%に一般的であることが示されている(Araiら、2006、Biochem Bioph Res Co 351、602~611; Lingら、2013、Neuron 79、416~438; Mackenzieら、2007、Ann Neurol 61、427~434; Neumannら、2006、Science 314、130~133)。この病理は、アルツハイマー病患者の52%(Jamesら、2016、Brain 139、2983~2993)、高齢者の海馬硬化症(HS老化)患者の92.4%(Iharaら、2018、Ann Neurol 84、741~753)、慢性外傷性脳症患者の85%(McKeeら、2013、Brain 136、43~64)及びパーキンソン病患者の10%(Nakashima-Yasudaら、2007、Acta Neuropathol 114、221~229)等、他の神経変性疾患においても観察される。TDP-43陽性個体は、死亡時に認知障害がある可能性がTDP-43陰性個体と比べて10倍高い。より大きいTDP-43負荷及びより広範囲のTDP-43分布は、より大きい認知機能障害及び内側側頭葉萎縮に関連する(Josephsら、2014、Acta Neuropathol 127、811~824)。現在、神経変性疾患のための有効な処置を見つける差し迫ったアンメットメディカルニーズがある。
【0056】
TDP-43は、胚発生の間に高レベルで発現され、生後発育の間に次第に減少し、成体ニューロンにおいて低レベルで維持される(Sephtonら、2010、J Biol Chem 285、38740~38740; Uchidaら、2012、Brain 135、833~846)。高いTDP-43活性は、胚発生のためには必須であるが、成熟ニューロンにとっては毒性であることが証明されている。TDP-43又はTDP-43突然変異体の過剰発現は、マウス(Wilsら、2010、PNAS 107、3858~3863)、ゼブラフィッシュ(Kabashiら、2010、Hum Mol Genet 19、671~683)、ショウジョウバエ(Drosophila)(Liら、2010、PNAS 107、3169~3174; Miguelら、2011、Neurobiol Dis 41、398~406)及びシー・エレガンス(Ashら、(2010)、Hum Mol Genet 19、3206~3218)を含む種々の動物モデルにおいて、神経変性疾患につながる。ノックインマウスでは、ネイティブTDP-43プロモーターによる制御下でTDP-43突然変異体を発現させて、過剰発現による潜在的なアーチファクトを避けることができる。Whiteら(2018)は、疾患の原因となる突然変異TDP-43Q331Kの導入が、機能獲得型及び認知機能不全並びにパルブアルブミン介在ニューロンの不足につながることを示した。Frattaら(2018)によって作出されたTDP-43M323K又はTDP-43Q331Kを抱えるノックインマウスは、機能獲得型スプライシング活性並びに神経筋及び神経変性表現型も示した。RNA認識モチーフ2(RRM2)ドメインにおけるF210I突然変異は、TDP-43のRNA/DNA結合能を低減させ、ノックインマウスにおいていかなる運動表現型も引き起こさない。重要なことに、F210I突然変異は、化合物ヘテロ接合型TDP-43M323K/TDP-43F331IマウスにおいてM323K突然変異によって引き起こされた毒性を部分的にレスキューすることができる(Frattaら、(2018)、EMBO J 37; Whiteら、2018、Nature Neuroscience 21、1138~1138)。これらの研究は、TDP-43神経毒性が機能獲得型機構によって引き起こされることを決定的に実証した。
【0057】
したがって、本明細書において提供されるのは、TDP-43過剰発現又は突然変異によって引き起こされる疾患の処置のための、TDP-43のRNA/DNA結合活性を破壊する又は低減させることができる化合物である。
【0058】
一部の実施形態では、神経変性疾患は、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、FTLD-U(プログラニュリンタンパク質における突然変異によって引き起こされた前頭側頭型認知症)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン舞踏病、クロイツフェルト・ヤコブ(Creutzfeld-Jacob)病、トリプレットリピート病、脳変性疾患初老期認知症、老年性認知症、第17番染色体に連鎖するパーキンソニズム(FTDP-17)、進行性核上性麻痺(PSP)、ハンチントン病(HD)、ピック病、原発性進行性失語症、大脳皮質基底核認知症、パーキンソン病、認知症を伴うパーキンソン病、レビー小体型認知症、ダウン症候群、多系統萎縮症、脊髄性筋萎縮症(SMA)、脊髄小脳変性症、脊椎変性疾患/運動ニューロン変性疾患、ハレルフォルデン・スパッツ症候群、脳梗塞、脳外傷、慢性外傷性脳症、一過性虚血発作、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0059】
II.式(I)から(VIII)の化合物の医薬組成物
本明細書において提供される実施形態は、嚢胞性線維症、又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症及びパーキンソン病を含む神経変性等のTDP-43毒性に関連する疾患又は状態の処置において使用するための化合物、並びにTDP-43毒性に関連する疾患又は状態を処置するためにそれらを使用する方法に関する。
【0060】
本明細書において使用される場合、用語「処置すること」、「処置」、「治療的」又は「療法」は、本明細書を踏まえて理解される通りのそれらの普通の意味を有し、疾患又は状態の全治癒又は根絶を必ずしも意味するとは限らない。
【0061】
本明細書において使用される場合、用語「阻害する」は、本明細書を踏まえて理解される通りのその普通の意味を有し、嚢胞性線維症又は神経変性等のTDP-43毒性に関連する疾患又は状態の遅延又は予防を指す。本明細書において使用される場合、用語「遅延させる」は、本明細書を踏まえて理解される通りのその普通の意味を有し、嚢胞性線維症又は神経変性等のTDP-43毒性に関連する疾患又は状態の、そうでなければ期待されるであろうよりも遅い時間までの遅延等、ある事象の減速、延期又は繰り延べを指す。遅延は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、又は前述の値の任意の2つによって定義される範囲内の量の遅延でありうる。阻害する及び遅延させるという用語は、100%の阻害又は遅延を必ずしも指し示すとして解釈されるべきであるとは限らない。部分的な阻害又は遅延が実現されうる。
【0062】
用語「治療有効量」は、本明細書を踏まえて理解される通りのその普通の意味を有し、指示されている生物学的又は医薬的応答を導出する活性化合物又は医薬作用物質の量を指し示すために使用される。例えば、治療有効量の化合物は、疾患の症状を予防する、緩和する若しくは軽快させる、又は療法を施されている対象の生存を延長するために必要とされる量でありうる。この応答は、組織、系、動物又はヒトにおいて起こることがあり、処置されている疾患の兆候又は症状の緩和を含む。治療有効量の決定は、本明細書において提供される開示を考慮して、当業者の能力内である。用量として必要とされる本明細書において開示されている化合物の治療有効量は、投与ルート、ヒトを含む処置されている動物の種類、及び検討中の具体的な動物の身体的特徴によって決まることになる。用量は、所望の効果を達成するように合わせることができるが、体重、食習慣、併用薬剤等の要因及び医療技術分野の当業者ならば認識するであろう他の要因によって決まることになる。
【0063】
本明細書において使用される場合、用語「誘導体」は、本明細書を踏まえて理解される通りのその普通の意味を有し、酸のエステル又はアミド、或いはアルコール若しくはチオールのためのベンジル基又はアミンのためのtert-ブトキシカルボニル基等の保護基等、修飾が通常の技量の化学者によって日常的とみなされる化学的に修飾された化合物を指す。
【0064】
本明細書において使用される場合、用語「類似体」は、本明細書を踏まえて理解される通りのその普通の意味を有し、具体的な化合物又はクラス自体の化学的に修飾された形態を含み、前記化合物又はクラスに特徴的な薬学的及び/又は薬理学的活性を維持する化合物を指す。
【0065】
本明細書において使用される場合、限定されないが、R、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14等の任意の「R」基は、指示された原子に結合することができる置換基を表す。R基は、置換されていても非置換であってもよい。
【0066】
ある基が「場合により置換されている」として記述される場合にはいつでも、その基は非置換であっても指示された置換基の1つ又は複数で置換されていてもよい。同様に、ある基が「非置換であるか又は置換されている」として記述されている場合、置換されていれば、置換基は1つ又は複数の指示された置換基から選択されうる。置換基が指示されていなければ、指示された「場合により置換されている」又は「置換されている」基が、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル(heteroalicyclyl)、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロゲン、チオカルボニル、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、S-スルホンアミド、N-スルホンアミド、C-カルボキシ、保護されたC-カルボキシ、O-カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、アミノ、一置換アミノ基及び二置換アミノ基、並びにそれらの保護された誘導体から個々に且つ独立して選択される1つ又は複数の基で置換されていてよいことを意味する。
【0067】
用語「アルキル」は、本明細書において使用される場合、本明細書を踏まえて理解される通りのその普通の意味を有し、1から約25個までの炭素原子を有する、炭素及び水素のみからなる完全飽和基を指す。用語「低級アルキル」は、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、3-メチルペンチル、ヘキシル等、1から約6個までの炭素原子を有するアルキル基を指す。
【0068】
用語「低級アルコキシ」は、本明細書を踏まえて理解される通りのその普通の意味を有し、形態RO-[式中、Rは、低級アルキルである]の基を指す。低級アルコキシの好適な例は、限定されないが、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、2-プロピルオキシ、ブトキシ、t-ブトキシ、ヘキシルオキシ等を含む。同様に、「低級アルキルチオ」は、形態RS-[式中、Rは、低級アルキルである]の基を指す。「低級アルキレンジオキシ」は、形態-O-R'-O-[式中、R'は、低級アルキルジラジカルである]のジラジカルを指す。例示的なアルキレンジオキシ部分は、限定されないが、メチレンジオキシ、1,2-エチレンジオキシ、2,2-プロピレンジオキシ等を含む。
【0069】
用語「アリール」は、本明細書を踏まえて理解される通りのその普通の意味を有し、フェニル又はナフチルを指す。「アラルキル」は、形態Ar-R'-[式中、Arは、アリールであり、R'は、低級アルキレンである]の部分を指す。例示的なアラルキル基は、限定されないが、ベンジル、フェネチル、4-フェニルヘキシル、2-ナフチルメチル、1-ナフチルエチル等を含む。
【0070】
「ヘテロ環式環」は、本明細書において使用される場合、本明細書を踏まえて理解される通りのその普通の意味を有し、炭素並びにO、N、S及び/又はPのうちの少なくとも1個の原子を含有する3~7個の原子の閉ループを指す。ヘテロ環式環は、飽和であっても不飽和であってもよい。例示的なヘテロ環式環は、限定されないが、ピペリジン、フラン、テトラヒドロ-フラン、ピロール、トリアゾール、ピラン、テトラヒドロピラン、チアゾール、ジオキシン、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン等を含む。本発明の文脈にけるヘテロ環式環は、R9、R10、R11、R12、R13及びR14を担持するフェニル環と縮合し、それにより、例えば、ベンズイミダゾール、ベンゾフラン等の環系を形成することになる。
【0071】
用語「ハロ」は、本明細書において使用される場合、本明細書を踏まえて理解される通りのその普通の意味を有し、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを指す。
【0072】
用語「薬学的に許容される」は、本明細書を踏まえて理解される通りのその普通の意味を有し、処置される生物にも組織にも許容できないほど毒性ではない化合物及び誘導体を指す。
【0073】
用語「塩」は、本明細書を踏まえて理解される通りのその普通の意味を有し、本発明の塩基性化合物への単純な酸の添加又は本発明の酸性化合物への塩基の添加によって誘導される、本発明の化合物の誘導体を指す。例えば、本発明の化合物は、塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、メシル酸塩等の酸付加塩を形成することができる。用語「エステル」は、本明細書を踏まえて理解される通りのその普通の意味を有し、遊離-OH基を有する本発明の化合物を、カルボン酸と凝縮することによって誘導される、本発明の化合物の誘導体を指す。例示的なエステルは、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、クエン酸エステル等を含む。用語「アミド」は、本明細書を踏まえて理解される通りのその普通の意味を有し、遊離-NH基を有する本発明の化合物を、カルボン酸と凝縮することによって誘導される、本発明の化合物の誘導体を指す。例示的な酸は、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、マロン酸等を含む。
【0074】
一部の実施形態では、TDP-43毒性に関連する疾患又は状態の処置において使用するための化合物は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含み、ここで、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、
【0075】
【化17】
【0076】
[式中、R1は、H、OH又は低級アルキルであり、R2は、場合により置換されている、4、5又は6個の炭素の芳香族環であり、ここで、芳香族環は、炭素環式又はヘテロ環式であり、芳香族環上の各位置は、独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ、NH2、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、SH、低級アルキルチオ、NO2であるか、又は2つの残基が一緒になってヘテロ環式環を形成し、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R8及びR9、R9及びR10、又はR10及びR11のうちの少なくとも1つは、一緒になって、場合により置換されているベンゼン環を形成し、ここで、ベンゼン環は、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ又はNO2で場合により置換されており、ここで、式(I)の縮合環のいずれか1つに存在する炭素原子のいずれか1個は、窒素原子で場合により置きかえられている]である。
【0077】
一部の実施形態では、式(I)の化合物は、式(II)、(III)又は(IV)のいずれか1つの化合物である。一部の実施形態では、式(I)の化合物は、本明細書における実施形態のいずれかにおいて更に詳細に記述される通り、ALT-59、ALT-212、ALT-215、ALT-308、ALT-309、ALT-408、ALT-411、ALT-110、ALT-201、ALT-202、ALT-204、ALT-207、ALT-208、ALT-210、ALT-211、ALT-302、ALT-306、ALT-307、ALT-311、ALT-318、ALT-322、ALT-324、ALT-402、ALT-404、ALT-406、ALT-409、ALT-410、ALT-413、ALT-414、ALT-108、ALT-317、ALT-333、ALT-403又はALT-205のいずれか1つを含む、本明細書において記述されている化合物のいずれか1つである。
【0078】
一部の実施形態では、TDP-43毒性に関連する疾患又は状態の処置において使用するための化合物は、式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含み、ここで、式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、
【0079】
【化18】
【0080】
[式中、R1は、H、OH又は低級アルキルであり、R2は、場合により置換されている、4、5又は6個の炭素の芳香族環であり、ここで、芳香族環は、炭素環式又はヘテロ環式であり、芳香族環上の各位置は、独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ、NH2、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、SH、低級アルキルチオ、NO2であるか、又は2つの残基が一緒になってヘテロ環式環を形成し、R3及びR8は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、=O、=S、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R9、R10、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ又はNO2であり、ここで、式(II)の縮合環のいずれか1つに存在する炭素原子のいずれか1個は、窒素原子で場合により置きかえられている]である。
【0081】
一部の実施形態は、式(II)の化合物の類似体又は誘導体に関し、ここで、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(II)の化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩は、例えば、嚢胞性線維症及び神経変性疾患を含むTDP-43毒性に関連する疾患又は状態の処置において使用される。式(II)の化合物の誘導体又は類似体の例は、下記の化合物:
5-(3-ブロモ-4-(ジメチルアミノ)フェニル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-59又はその薬学的に許容される塩:
【0082】
【化19】
【0083】
2,2-ジメチル-5-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-212又はその薬学的に許容される塩:
【0084】
【化20】
【0085】
2,2-ジメチル-5-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-215又はその薬学的に許容される塩:
【0086】
【化21】
【0087】
5-(4-(tert-ブチル)フェニル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-308又はその薬学的に許容される塩:
【0088】
【化22】
【0089】
5-(4-イソプロピルフェニル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-309又はその薬学的に許容される塩:
【0090】
【化23】
【0091】
2-メトキシ-4-(4-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-5-イル)酪酸フェニルの化学名を持つ、ALT-408又はその薬学的に許容される塩:
【0092】
【化24】
【0093】
メチル2-(4-(4-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-5-イル)フェノキシ)アセテートの化学名を持つ、ALT-411又はその薬学的に許容される塩:
【0094】
【化25】
【0095】
2,2-ジメチル-5-(3-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル)-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-110又はその薬学的に許容される塩:
【0096】
【化26】
【0097】
5-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-3,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-1(2H)-オンの化学名を持つ、ALT-201又はその薬学的に許容される塩:
【0098】
【化27】
【0099】
5-(5-ブロモチオフェン-2-イル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-202又はその薬学的に許容される塩:
【0100】
【化28】
【0101】
5-(3,4-ジクロロフェニル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-204又はその薬学的に許容される塩:
【0102】
【化29】
【0103】
5-(4-エトキシ-3-メトキシフェニル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-207又はその薬学的に許容される塩:
【0104】
【化30】
【0105】
5-(3-ブロモ-4,5-ジメトキシフェニル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-208又はその薬学的に許容される塩:
【0106】
【化31】
【0107】
5-(3-((6-クロロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)メトキシ)フェニル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-210又はその薬学的に許容される塩:
【0108】
【化32】
【0109】
5-(7-メトキシベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-211又はその薬学的に許容される塩:
【0110】
【化33】
【0111】
5-(4-メトキシフェニル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-302又はその薬学的に許容される塩:
【0112】
【化34】
【0113】
2,2-ジメチル-5-(p-トリル)-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-306又はその薬学的に許容される塩:
【0114】
【化35】
【0115】
5-(3-ブロモ-4-メトキシフェニル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-307又はその薬学的に許容される塩:
【0116】
【化36】
【0117】
2,2-ジメチル-5-(4-(メチルチオ)フェニル)-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-311又はその薬学的に許容される塩:
【0118】
【化37】
【0119】
5-(4-(ジエチルアミノ)フェニル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-318又はその薬学的に許容される塩:
【0120】
【化38】
【0121】
2,2-ジメチル-5-(4-(4-メチルピペリジン-1-イル)-3-ニトロフェニル)-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-322又はその薬学的に許容される塩:
【0122】
【化39】
【0123】
2,2-ジメチル-5-(4-((1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)チオ)-3-ニトロフェニル)-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-324又はその薬学的に許容される塩:
【0124】
【化40】
【0125】
5-(3-ヨード-5-メトキシ-4-(プロパ-2-イン-1-イルオキシ)フェニル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-402又はその薬学的に許容される塩:
【0126】
【化41】
【0127】
8-(4-(ジエチルアミノ)フェニル)-11,11-ジメチル-8,10,11,12-テトラヒドロベンゾ[a][4,7]フェナントロリン-9(7H)-オンの化学名を持つ、ALT-404又はその薬学的に許容される塩:
【0128】
【化42】
【0129】
エチル2-(2-クロロ-6-メトキシ-4-(4-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-5-イル)フェノキシ)アセテートの化学名を持つ、ALT-406又はその薬学的に許容される塩:
【0130】
【化43】
【0131】
5-(4-(アリルオキシ)-3-メトキシフェニル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-409又はその薬学的に許容される塩:
【0132】
【化44】
【0133】
5-(4-プロポキシフェニル)-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-410又はその薬学的に許容される塩:
【0134】
【化45】
【0135】
2-(4-(2,2-ジメチル-4-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-5-イル)-2-メトキシフェノキシ)酢酸の化学名を持つ、ALT-413又はその薬学的に許容される塩:
【0136】
【化46】
【0137】
2-(4-(2,2-ジメチル-4-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-5-イル)-2-メトキシフェノキシ)酢酸の化学名を持つ、ALT-414又はその薬学的に許容される塩:
【0138】
【化47】
【0139】
を含む。
【0140】
一部の実施形態では、本明細書においてALT-59、ALT-212、ALT-215、ALT-308、ALT-309、ALT-408、ALT-411、ALT-110、ALT-201、ALT-202、ALT-204、ALT-207、ALT-208、ALT-210、ALT-211、ALT-302、ALT-306、ALT-307、ALT-311、ALT-318、ALT-322、ALT-324、ALT-402、ALT-404、ALT-406、ALT-409、ALT-410、ALT-413又はALT-414と称される化合物等、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む式(II)の化合物は、嚢胞性線維症、又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症及びパーキンソン病を含む神経変性等のTDP-43毒性に関連する疾患又は状態の処置において使用するための医薬組成物として製剤化されている。一部の実施形態では、式(II)の化合物、又はその類似体、誘導体若しくは薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、TDP-43毒性に関連する疾患又は状態を、阻害する、遅延させる、処置する、予防する又は軽快させる。
【0141】
一部の実施形態では、TDP-43毒性に関連する疾患又は状態の処置において使用するための化合物は、式(III)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含み、ここで、式(III)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、
【0142】
【化48】
【0143】
[式中、R1は、H、OH又は低級アルキルであり、R2は、場合により置換されている、4、5又は6個の炭素の芳香族環であり、ここで、芳香族環は、炭素環式又はヘテロ環式であり、芳香族環上の各位置は、独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ、NH2、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、SH、低級アルキルチオ、NO2であるか、又は2つの残基が一緒になってヘテロ環式環を形成し、R3及びR8は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、=O、=S、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R9、R10、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ又はNO2であり、ここで、式(III)の縮合環のいずれか1つに存在する炭素原子のいずれか1個は、窒素原子で場合により置きかえられている]である。
【0144】
一部の実施形態は、式(III)の化合物の類似体又は誘導体に関し、ここで、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(III)の化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩は、例えば、嚢胞性線維症及び神経変性疾患を含むTDP-43毒性に関連する疾患又は状態の処置において使用される。式(III)の化合物の誘導体又は類似体の例は、下記の化合物:
6-(3-ブロモ-4-メトキシフェニル)-6,8,9,10-テトラヒドロベンゾ[c]フェナントリジン-7(5H)-オンの化学名を持つ、ALT-108又はその薬学的に許容される塩:
【0145】
【化49】
【0146】
6-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-6,8,9,10-テトラヒドロベンゾ[c]フェナントリジン-7(5H)-オンの化学名を持つ、ALT-317又はその薬学的に許容される塩:
【0147】
【化50】
【0148】
9,9-ジメチル-6-(p-トリル)-6,8,9,10-テトラヒドロベンゾ[c]フェナントリジン-7(5H)-オンの化学名を持つ、ALT-333又はその薬学的に許容される塩:
【0149】
【化51】
【0150】
6-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-6,8,9,10-テトラヒドロベンゾ[c][1,7]フェナントロリン-7(5H)-オンの化学名を持つ、ALT-403又はその薬学的に許容される塩:
【0151】
【化52】
【0152】
を含む。
【0153】
一部の実施形態では、本明細書においてALT-108、ALT-317、ALT-333又はALT-403と称される化合物等、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む式(III)の化合物は、嚢胞性線維症、又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症及びパーキンソン病を含む神経変性等のTDP-43毒性に関連する疾患又は状態の処置において使用するための医薬組成物として製剤化されている。一部の実施形態では、式(III)の化合物、又はその類似体、誘導体若しくは薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、TDP-43毒性に関連する疾患又は状態を、阻害する、遅延させる、処置する、予防する又は軽快させる。
【0154】
一部の実施形態では、TDP-43毒性に関連する疾患又は状態の処置において使用するための化合物は、式(IV)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含み、ここで、式(IV)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、
【0155】
【化53】
【0156】
[式中、R1は、H、OH又は低級アルキルであり、R2は、場合により置換されている、4、5又は6個の炭素の芳香族環であり、ここで、芳香族環は、炭素環式又はヘテロ環式であり、芳香族環上の各位置は、独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ、NH2、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、SH、低級アルキルチオ、NO2であるか、又は2つの残基が一緒になってヘテロ環式環を形成し、R3及びR8は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、=O、=S、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R9、R10、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ又はNO2であり、ここで、式(IV)の縮合環のいずれか1つに存在する炭素原子のいずれか1個は、窒素原子で場合により置きかえられている]である。
【0157】
一部の実施形態は、式(IV)の化合物の類似体又は誘導体に関し、ここで、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(IV)の化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩は、例えば、嚢胞性線維症及び神経変性疾患を含むTDP-43毒性に関連する疾患又は状態の処置において使用される。式(IV)の化合物の誘導体又は類似体の例は、下記の化合物:
5-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[b]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-205又はその薬学的に許容される塩:
【0158】
【化54】
【0159】
を含む。
【0160】
一部の実施形態では、本明細書においてALT-205と称される化合物等、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む式(IV)の化合物は、嚢胞性線維症、又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症及びパーキンソン病を含む神経変性等のTDP-43毒性に関連する疾患又は状態の処置において使用するための医薬組成物として製剤化されている。一部の実施形態では、式(IV)の化合物、又はその類似体、誘導体若しくは薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、TDP-43毒性に関連する疾患又は状態を、阻害する、遅延させる、処置する、予防する又は軽快させる。
【0161】
一部の実施形態では、式(I)、(II)、(III)若しくは(IV)のいずれか1つの化合物、又はその類似体、誘導体若しくは薬学的に許容される塩は、米国特許第6,800,634号又は米国特許出願公開第2012/0220610号若しくは同第2017/0362221号のいずれか1つにおいて開示される通りの化合物を含み、これらのそれぞれは、参照によりその全体が及び本明細書で参照される具体的な開示について、本明細書に明示的に組み込まれる。故に、本明細書において提供される化合物は、本明細書において記述されている化合物のいずれか、本明細書において記述されている式(I)、(II)、(III)及び(IV)の化合物のいずれか、並びにこれらの参考文献のそれぞれにおいて記述及び開示されている化合物のいずれかを含む。
【0162】
一部の実施形態では、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(I)、(II)、(III)若しくは(IV)のいずれか1つの化合物、又はその類似体、誘導体若しくは薬学的に許容される塩は、化合物の生成物製剤への組み込みを容易にし、且つ/或いは本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(I)、(II)、(III)若しくは(IV)のいずれか1つの化合物、又はその類似体、誘導体若しくは薬学的に許容される塩の、処置のための細胞又は組織への送達を容易にする、薬学的に許容される担体を用いて調製される。一部の実施形態では、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(I)、(II)、(III)又は(IV)のいずれか1つの化合物を含む医薬組成物は、式(I)、(II)、(III)若しくは(IV)のいずれか1つの化合物、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、及び/又は少なくとも1つの添加剤を含みうる。一部の実施形態では、少なくとも1つの添加剤は、結合剤、崩壊剤、界面活性剤又は安定剤であってよい。
【0163】
一部の実施形態では、式(I)の化合物は、式(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物である。一部の実施形態では、TDP-43毒性に関連する疾患又は状態の処置において使用するための化合物は、式(V)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含み、ここで、式(V)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、
【0164】
【化55】
【0165】
[式中、R1は、H、OH又は低級アルキルであり、R2は、場合により置換されている、4、5又は6個の炭素の芳香族環であり、ここで、芳香族環は、炭素環式又はヘテロ環式であり、芳香族環上の各位置は、独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ、NH2、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、SH、低級アルキルチオ、NO2であるか、又は2つの残基が一緒になってヘテロ環式環を形成し、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R8及びR9、R9及びR10、又はR10及びR11のうちの少なくとも1つは、一緒になって、場合により置換されているベンゼン環を形成し、ここで、ベンゼン環は、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ又はNO2で場合により置換されており、ここで、式(V)の縮合環のいずれか1つに存在する炭素原子のいずれか1個は、窒素原子で場合により置きかえられている]である。一部の実施形態では、式(V)のケトン位における酸素は、硫黄によって置きかえられて、チオケトンを形成している。
【0166】
一部の実施形態では、式(V)の化合物は、式(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物である。一部の実施形態では、式(V)の化合物は、本明細書における実施形態のいずれかにおいて更に詳細に記述される通り、ALT-59、ALT-212、ALT-215、ALT-308、ALT-309、ALT-408、ALT-411、ALT-110、ALT-201、ALT-202、ALT-204、ALT-207、ALT-208、ALT-210、ALT-211、ALT-302、ALT-306、ALT-307、ALT-311、ALT-318、ALT-322、ALT-324、ALT-402、ALT-404、ALT-406、ALT-409、ALT-410、ALT-413、ALT-414、ALT-108、ALT-317、ALT-333、ALT-403又はALT-205のいずれか1つを含む、本明細書において記述されている化合物のいずれか1つである。一部の実施形態では、式(V)の化合物は、本明細書における実施形態のいずれかにおいて更に詳細に記述される通り、ALT-59、ALT-212、ALT-215、ALT-308、ALT-309、ALT-408、ALT-411、ALT-110、ALT-202、ALT-204、ALT-207、ALT-208、ALT-210、ALT-211、ALT-302、ALT-306、ALT-307、ALT-311、ALT-318、ALT-322、ALT-324、ALT-402、ALT-404、ALT-406、ALT-409、ALT-410、ALT-413、ALT-414、ALT-108、ALT-317、ALT-333、ALT-403又はALT-205のいずれか1つを含む、本明細書において記述されている化合物のいずれか1つである。
【0167】
一部の実施形態では、TDP-43毒性に関連する疾患又は状態の処置において使用するための化合物は、式(VI)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含み、ここで、式(VI)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、
【0168】
【化56】
【0169】
[式中、R1は、H、OH又は低級アルキルであり、R2は、場合により置換されている、4、5又は6個の炭素の芳香族環であり、ここで、芳香族環は、炭素環式又はヘテロ環式であり、芳香族環上の各位置は、独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ、NH2、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、SH、低級アルキルチオ、NO2であるか、又は2つの残基が一緒になってヘテロ環式環を形成し、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R8、R9、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ又はNO2であり、ここで、式(VI)の縮合環のいずれか1つに存在する炭素原子のいずれか1個は、窒素原子で場合により置きかえられている]である。一部の実施形態では、式(VI)のケトン位における酸素は、硫黄によって置きかえられて、チオケトンを形成している。
【0170】
一部の実施形態は、式(VI)の化合物の類似体又は誘導体に関し、ここで、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(VI)の化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩は、例えば、嚢胞性線維症及び神経変性疾患を含むTDP-43毒性に関連する疾患又は状態の処置において使用される。式(VI)の化合物の誘導体又は類似体の例は、下記の化合物:
5-(3-ブロモ-4-(ジメチルアミノ)フェニル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-59又はその薬学的に許容される塩:
【0171】
【化57】
【0172】
2,2-ジメチル-5-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-212又はその薬学的に許容される塩:
【0173】
【化58】
【0174】
2,2-ジメチル-5-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-215又はその薬学的に許容される塩:
【0175】
【化59】
【0176】
5-(4-(tert-ブチル)フェニル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-308又はその薬学的に許容される塩:
【0177】
【化60】
【0178】
5-(4-イソプロピルフェニル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-309又はその薬学的に許容される塩:
【0179】
【化61】
【0180】
2-メトキシ-4-(4-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-5-イル)酪酸フェニルの化学名を持つ、ALT-408又はその薬学的に許容される塩:
【0181】
【化62】
【0182】
メチル2-(4-(4-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-5-イル)フェノキシ)アセテートの化学名を持つ、ALT-411又はその薬学的に許容される塩:
【0183】
【化63】
【0184】
2,2-ジメチル-5-(3-(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)フェニル)-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-110又はその薬学的に許容される塩:
【0185】
【化64】
【0186】
5-(5-ブロモチオフェン-2-イル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-202又はその薬学的に許容される塩:
【0187】
【化65】
【0188】
5-(3,4-ジクロロフェニル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-204又はその薬学的に許容される塩:
【0189】
【化66】
【0190】
5-(4-エトキシ-3-メトキシフェニル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-207又はその薬学的に許容される塩:
【0191】
【化67】
【0192】
5-(3-ブロモ-4,5-ジメトキシフェニル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-208又はその薬学的に許容される塩:
【0193】
【化68】
【0194】
5-(3-((6-クロロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)メトキシ)フェニル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-210又はその薬学的に許容される塩:
【0195】
【化69】
【0196】
5-(7-メトキシベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-211又はその薬学的に許容される塩:
【0197】
【化70】
【0198】
5-(4-メトキシフェニル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-302又はその薬学的に許容される塩:
【0199】
【化71】
【0200】
2,2-ジメチル-5-(p-トリル)-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-306又はその薬学的に許容される塩:
【0201】
【化72】
【0202】
5-(3-ブロモ-4-メトキシフェニル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-307又はその薬学的に許容される塩:
【0203】
【化73】
【0204】
2,2-ジメチル-5-(4-(メチルチオ)フェニル)-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-311又はその薬学的に許容される塩:
【0205】
【化74】
【0206】
5-(4-(ジエチルアミノ)フェニル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-318又はその薬学的に許容される塩:
【0207】
【化75】
【0208】
2,2-ジメチル-5-(4-(4-メチルピペリジン-1-イル)-3-ニトロフェニル)-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-322又はその薬学的に許容される塩:
【0209】
【化76】
【0210】
2,2-ジメチル-5-(4-((1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)チオ)-3-ニトロフェニル)-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-324又はその薬学的に許容される塩:
【0211】
【化77】
【0212】
5-(3-ヨード-5-メトキシ-4-(プロパ-2-イン-1-イルオキシ)フェニル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-402又はその薬学的に許容される塩:
【0213】
【化78】
【0214】
8-(4-(ジエチルアミノ)フェニル)-11,11-ジメチル-8,10,11,12-テトラヒドロベンゾ[a][4,7]フェナントロリン-9(7H)-オンの化学名を持つ、ALT-404又はその薬学的に許容される塩:
【0215】
【化79】
【0216】
エチル2-(2-クロロ-6-メトキシ-4-(4-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-5-イル)フェノキシ)アセテートの化学名を持つ、ALT-406又はその薬学的に許容される塩:
【0217】
【化80】
【0218】
5-(4-(アリルオキシ)-3-メトキシフェニル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-409又はその薬学的に許容される塩:
【0219】
【化81】
【0220】
5-(4-プロポキシフェニル)-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-410又はその薬学的に許容される塩:
【0221】
【化82】
【0222】
2-(4-(2,2-ジメチル-4-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-5-イル)-2-メトキシフェノキシ)酢酸の化学名を持つ、ALT-413又はその薬学的に許容される塩:
【0223】
【化83】
【0224】
2-(4-(2,2-ジメチル-4-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[a]フェナントリジン-5-イル)-2-メトキシフェノキシ)酢酸の化学名を持つ、ALT-414又はその薬学的に許容される塩:
【0225】
【化84】
【0226】
を含む。
【0227】
一部の実施形態では、本明細書においてALT-59、ALT-212、ALT-215、ALT-308、ALT-309、ALT-408、ALT-411、ALT-110、ALT-201、ALT-202、ALT-204、ALT-207、ALT-208、ALT-210、ALT-211、ALT-302、ALT-306、ALT-307、ALT-311、ALT-318、ALT-322、ALT-324、ALT-402、ALT-404、ALT-406、ALT-409、ALT-410、ALT-413又はALT-414と称される化合物等、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む式(VI)の化合物は、嚢胞性線維症、又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症及びパーキンソン病を含む神経変性等のTDP-43毒性に関連する疾患又は状態の処置において使用するための医薬組成物として製剤化されている。一部の実施形態では、本明細書においてALT-59、ALT-212、ALT-215、ALT-308、ALT-309、ALT-408、ALT-411、ALT-110、ALT-202、ALT-204、ALT-207、ALT-208、ALT-210、ALT-211、ALT-302、ALT-306、ALT-307、ALT-311、ALT-318、ALT-322、ALT-324、ALT-402、ALT-404、ALT-406、ALT-409、ALT-410、ALT-413又はALT-414と称される化合物等、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む式(VI)の化合物は、嚢胞性線維症、又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症及びパーキンソン病を含む神経変性等のTDP-43毒性に関連する疾患又は状態の処置において使用するための医薬組成物として製剤化されている。一部の実施形態では、式(VI)の化合物、又はその類似体、誘導体若しくは薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、TDP-43毒性に関連する疾患又は状態を、阻害する、遅延させる、処置する、予防する又は軽快させる。
【0228】
一部の実施形態では、TDP-43毒性に関連する疾患又は状態の処置において使用するための化合物は、式(VII)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含み、ここで、式(VII)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、
【0229】
【化85】
【0230】
[式中、R1は、H、OH又は低級アルキルであり、R2は、場合により置換されている、4、5又は6個の炭素の芳香族環であり、ここで、芳香族環は、炭素環式又はヘテロ環式であり、芳香族環上の各位置は、独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ、NH2、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、SH、低級アルキルチオ、NO2であるか、又は2つの残基が一緒になってヘテロ環式環を形成し、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R8、R9、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ又はNO2であり、ここで、式(VII)の縮合環のいずれか1つに存在する炭素原子のいずれか1個は、窒素原子で場合により置きかえられている]である。一部の実施形態では、式(VII)のケトン位における酸素は、硫黄によって置きかえられて、チオケトンを形成している。
【0231】
一部の実施形態は、式(VII)の化合物の類似体又は誘導体に関し、ここで、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(VII)の化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩は、例えば、嚢胞性線維症及び神経変性疾患を含むTDP-43毒性に関連する疾患又は状態の処置において使用される。式(VII)の化合物の誘導体又は類似体の例は、下記の化合物:
6-(3-ブロモ-4-メトキシフェニル)-6,8,9,10-テトラヒドロベンゾ[c]フェナントリジン-7(5H)-オンの化学名を持つ、ALT-108又はその薬学的に許容される塩:
【0232】
【化86】
【0233】
6-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-6,8,9,10-テトラヒドロベンゾ[c]フェナントリジン-7(5H)-オンの化学名を持つ、ALT-317又はその薬学的に許容される塩:
【0234】
【化87】
【0235】
9,9-ジメチル-6-(p-トリル)-6,8,9,10-テトラヒドロベンゾ[c]フェナントリジン-7(5H)-オンの化学名を持つ、ALT-333又はその薬学的に許容される塩:
【0236】
【化88】
【0237】
6-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-6,8,9,10-テトラヒドロベンゾ[c][1,7]フェナントロリン-7(5H)-オンの化学名を持つ、ALT-403又はその薬学的に許容される塩:
【0238】
【化89】
【0239】
を含む。
【0240】
一部の実施形態では、本明細書においてALT-108、ALT-317、ALT-333又はALT-403と称される化合物等、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む式(VII)の化合物は、嚢胞性線維症、又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症及びパーキンソン病を含む神経変性等のTDP-43毒性に関連する疾患又は状態の処置において使用するための医薬組成物として製剤化されている。一部の実施形態では、式(VII)の化合物、又はその類似体、誘導体若しくは薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、TDP-43毒性に関連する疾患又は状態を、阻害する、遅延させる、処置する、予防する又は軽快させる。
【0241】
一部の実施形態では、TDP-43毒性に関連する疾患又は状態の処置において使用するための化合物は、式(VIII)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含み、ここで、式(VIII)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、
【0242】
【化90】
【0243】
[式中、R1は、H、OH又は低級アルキルであり、R2は、場合により置換されている、4、5又は6個の炭素の芳香族環であり、ここで、芳香族環は、炭素環式又はヘテロ環式であり、芳香族環上の各位置は、独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ、NH2、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、SH、低級アルキルチオ、NO2であるか、又は2つの残基が一緒になってヘテロ環式環を形成し、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、H、低級アルキル、OH、NH2、アリール又はアラルキルであり、ここで、アリール及びアラルキルは、ハロ、OH、NH2、低級アルキル、低級アルコキシ、SH、低級アルキルチオ及び低級アルキルアミノからなる群から選択される0~3つの部分で置換されており、R8、R9、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立して、H、ハロ、低級アルキル、OH、低級アルコキシ又はNO2であり、ここで、式(VIII)の縮合環のいずれか1つに存在する炭素原子のいずれか1個は、窒素原子で場合により置きかえられている]である。一部の実施形態では、式(VIII)のケトン位における酸素は、硫黄によって置きかえられて、チオケトンを形成している。
【0244】
一部の実施形態は、式(VIII)の化合物の類似体又は誘導体に関し、ここで、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(VIII)の化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩は、例えば、嚢胞性線維症及び神経変性疾患を含むTDP-43毒性に関連する疾患又は状態の処置において使用される。式(VIII)の化合物の誘導体又は類似体の例は、下記の化合物:
5-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-2,2-ジメチル-2,3,5,6-テトラヒドロベンゾ[b]フェナントリジン-4(1H)-オンの化学名を持つ、ALT-205又はその薬学的に許容される塩:
【0245】
【化91】
【0246】
を含む。
【0247】
一部の実施形態では、本明細書においてALT-205と称される化合物等、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む式(VIII)の化合物は、嚢胞性線維症、又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症及びパーキンソン病を含む神経変性等のTDP-43毒性に関連する疾患又は状態の処置において使用するための医薬組成物として製剤化されている。一部の実施形態では、式(VIII)の化合物、又はその類似体、誘導体若しくは薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、TDP-43毒性に関連する疾患又は状態を、阻害する、遅延させる、処置する、予防する又は軽快させる。
【0248】
一部の実施形態では、式(V)、(VI)、(VII)若しくは(VIII)のいずれか1つの化合物、又はその類似体、誘導体若しくは薬学的に許容される塩は、米国特許第6,800,634号又は米国特許出願公開第2012/0220610号若しくは同第2017/0362221号のいずれか1つにおいて開示される通りの化合物を含み、これらのそれぞれは、参照によりその全体が及び本明細書で参照される具体的な開示について、本明細書に明示的に組み込まれる。故に、本明細書において提供される化合物は、本明細書において記述されている化合物のいずれか、本明細書において記述されている式(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)の化合物のいずれか、並びにこれらの参考文献のそれぞれにおいて記述及び開示されている化合物のいずれかを含む。
【0249】
一部の実施形態では、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(V)、(VI)、(VII)若しくは(VIII)のいずれか1つの化合物、又はその類似体、誘導体若しくは薬学的に許容される塩は、化合物の生成物製剤への組み込みを容易にし、且つ/或いは本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(V)、(VI)、(VII)若しくは(VIII)のいずれか1つの化合物、又はその類似体、誘導体若しくは薬学的に許容される塩の、処置のための細胞又は組織への送達を容易にする、薬学的に許容される担体を用いて調製される。一部の実施形態では、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物を含む医薬組成物は、式(V)、(VI)、(VII)若しくは(VIII)の少なくとも1つの化合物、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、及び/又は少なくとも1つの添加剤を含みうる。一部の実施形態では、少なくとも1つの添加剤は、結合剤、崩壊剤、界面活性剤又は安定剤であってよい。
【0250】
本明細書において記述されている医薬組成物は、経口、鼻腔内又は非経口投与のために製剤化されうる。経口投与は、口腔を通る消化管、頬側の内層又は気道への投与を含む、口腔への投与のための組成物の製剤、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、ペレット剤、糖衣錠剤、ガム状剤、散剤、軟ゲル剤、液体剤、シロップ剤、懸濁剤、溶液剤又は吸入可能な組成物等、固体又は液体製剤としての組成物の製剤を含みうる。鼻腔内投与は、鼻腔による投与のための製剤を含んでよく、液滴剤、スプレー剤、吹送又は吸入可能な組成物を含みうる。非経口投与は、例えば、腹腔内、注入、筋肉内、皮下、皮内又は静脈内注射を含みうる。
【0251】
一部の実施形態では、本明細書において記述されている組成物は、所望の送達又は投与モードフォーマットに応じて、薬学的に許容される担体及び添加剤を更に含む。
【0252】
III.処置の方法
一部の実施形態は、嚢胞性線維症、又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症及びパーキンソン病を含む神経変性等のTDP-43毒性に関連する疾患又は状態を、処置する、軽快させる、阻害する、予防する又は遅延させる方法に関する。一部の実施形態では、方法は、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(I)、(II)、(III)又は(IV)のいずれか1つの化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩、或いは本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(I)、(II)、(III)又は(IV)のいずれか1つの化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む医薬組成物の、それを必要とする対象への投与を含む。
【0253】
一部の実施形態では、式(I)の化合物は、式(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物である。一部の実施形態は、嚢胞性線維症、又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症及びパーキンソン病を含む神経変性等のTDP-43毒性に関連する疾患又は状態を、処置する、軽快させる、阻害する、予防する又は遅延させる方法に関する。一部の実施形態では、方法は、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩、或いは本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む医薬組成物の、それを必要とする対象への投与を含む。
【0254】
本明細書において使用される場合、「対象」は、処置、阻害又は軽快、観察又は実験の客体である動物を指す。「動物」は、魚類、貝類又は爬虫類等の冷血及び温血脊椎動物及び/又は無脊椎動物、並びに、特に哺乳動物を含む。「哺乳動物」は、限定されないが、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、雌ウシ、ウマ、サル、チンパンジー及び/又は類人猿等の霊長類、並びに、特にヒトを含む。一部の実施形態では、対象は、ヒトである。
【0255】
一部の実施形態では、方法は、対象を、嚢胞性線維症、又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症及びパーキンソン病を含む神経変性等のTDP-43毒性に関連する疾患又は状態に罹患していると診断する工程を含む。一部の実施形態では、診断する工程は、対象がTDP-43毒性に関連する疾患又は状態を有する又は発症する可能性が高いという決定を下すことを含む。一部の実施形態では、対象を診断する工程は、対象を、TDP-43毒性に関連する疾患又は状態を有する又は発症する可能性が高いと同定することに等しい。
【0256】
一部の実施形態では、方法は、嚢胞性線維症、又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症及びパーキンソン病を含む神経変性等のTDP-43毒性に関連する疾患又は状態を有する又は発症する可能性が高いと診断された又は同定された対象を選択する工程と、対象に、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(I)、(II)、(III)又は(IV)のいずれか1つの化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む組成物を投与する工程とを含む。一部の実施形態では、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(I)、(II)、(III)又は(IV)のいずれか1つの化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む組成物の、必要とする対象への投与が、TDP-43毒性に関連する疾患又は状態の発生及び/又は発症を、軽快させる、処置する、予防する、遅延させる、阻害する又は減速させる。
【0257】
一部の実施形態では、方法は、TDP-43毒性に罹患している対象において、TDP-43を低減させる又は阻害する工程を含む。一部の実施形態では、方法は、TDP-43毒性を有する対象を選択する又は同定する工程と、前記対象に、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(I)、(II)、(III)又は(IV)のいずれか1つの化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む組成物を投与する工程とを含む。一部の実施形態では、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(I)、(II)、(III)又は(IV)のいずれか1つの化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む組成物の投与は、対象におけるTDP-43活性レベルの低減をもたらす。TDP-43活性レベルは、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくは99%よりも大きい量で、又は前述の値の任意の2つによって定義される範囲内の量で、低減されうる。一部の実施形態では、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(I)、(II)、(III)又は(IV)のいずれか1つの化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む組成物の投与は、TDP-43毒性を阻害する。
【0258】
一部の実施形態では、本明細書において開示される通り、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(I)、(II)、(III)又は(IV)のいずれか1つの化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、0.01mgから3000mgの間の、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(I)、(II)、(III)又は(IV)のいずれか1つの化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含有しうる。
【0259】
一部の実施形態では、式(I)の化合物は、式(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物である。一部の実施形態では、方法は、嚢胞性線維症、又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病、高齢者の海馬硬化症(HS老化)、慢性外傷性脳症及びパーキンソン病を含む神経変性等のTDP-43毒性に関連する疾患又は状態を有する又は発症する可能性が高いと診断された又は同定された対象を選択する工程と、対象に、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む組成物を投与する工程とを含む。一部の実施形態では、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む組成物の、必要とする対象への投与は、TDP-43毒性に関連する疾患又は状態の発生及び/又は発症を、軽快させる、処置する、予防する、遅延させる、阻害する又は減速させる。
【0260】
一部の実施形態では、方法は、TDP-43毒性に罹患している対象において、TDP-43を低減させる又は阻害する工程を含む。一部の実施形態では、方法は、TDP-43毒性を有する対象を選択する又は同定する工程と、前記対象に、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む組成物を投与する工程とを含む。一部の実施形態では、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む組成物の投与は、対象におけるTDP-43活性レベルの低減をもたらす。TDP-43活性レベルは、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくは99%よりも大きい量で、又は前述の値の任意の2つによって定義される範囲内の量で、低減されうる。一部の実施形態では、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む組成物の投与は、TDP-43毒性を阻害する。
【0261】
一部の実施形態では、本明細書において開示される通り、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、0.01mgから3000mgの間の、本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含有しうる。
【0262】
当業者には理解されるであろうように、ある特定の状況では、特に侵攻性の疾患を有効に且つ積極的に処置するために、上記した投薬量範囲を超える又ははるかに超える量の本明細書において開示されている活性成分を投与することが必要となりうる、或いは、例えば維持療法のために、上記した投薬量範囲未満又はそれよりも有意に少ない量の本明細書において開示されている活性成分を投与することが必要となりうる。
【0263】
投薬量及び間隔は、モジュレート効果又は最小有効濃度(MEC)を維持するのに十分な活性成分の血漿中レベルを提供するために、個々に調整されうる。MECは、各活性成分によって変動することになるが、インビトロデータから推定することができる。MECを達成するために必要な投薬量は、個体の特徴及び投与ルートによって決まることになる。しかしながら、HPLCアッセイ又はバイオアッセイを使用して、血漿中濃度を決定することができる。投薬間隔は、MEC値を使用して決定することもできる。組成物は、時間の10~90%、好ましくは30~90%の間、最も好ましくは50~90%の間についてMECを上回る血漿中レベルを維持するレジメンを使用して投与すべきである。局部的投与又は選択的取り込みの事例において、薬物の有効な局部濃度は、血漿中濃度に関係しない場合がある。
【0264】
本明細書において開示されている活性成分は、公知の方法を使用して、効能及び毒性について評価されうる。例えば、特定の活性成分の又はある特定の化学部分を共有する活性成分のサブセットの毒物学は、哺乳類及び好ましくはヒト細胞株等の細胞株に対するインビトロ毒性を決定することによって確立されうる。そのような研究の結果は、多くの場合、哺乳動物又はより具体的にはヒト等の動物において毒性の前兆となる。代替として、マウス、ラット、ウサギ又はサル等の動物モデルにおける特定の化合物の毒性は、公知の方法を使用して決定されうる。特定の活性成分の効能は、インビトロ方法、動物モデル又はヒト臨床試験等のいくつかの認識されている方法を使用して確立されうる。効能を決定するためのモデルを選択する場合、当業者は、適切なモデル、用量、投与ルート及び/又はレジメン(regime)を選択するように技術水準によって指導されうる。
【0265】
本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(I)、(II)、(III)又は(IV)のいずれか1つの化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む医薬組成物の毒物学は、哺乳類及び好ましくはヒト細胞株等の細胞株に対するインビトロ毒性を決定することによって確立されうる。そのような研究の結果は、多くの場合、哺乳動物又はより具体的にはヒト等の動物において毒性の前兆となる。式(I)、(II)、(III)又は(IV)のいずれか1つの化合物を含む医薬組成物の毒性は、マウス、ラット、ウサギ又はサル等の動物モデルにおけるインビボ毒性を決定することによって確立されうる。
【0266】
一部の実施形態では、式(I)の化合物は、式(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物である。本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む医薬組成物の毒物学は、哺乳類及び好ましくはヒト細胞株等の細胞株に対するインビトロ毒性を決定することによって確立されうる。そのような研究の結果は、多くの場合、哺乳動物又はより具体的にはヒト等の動物において毒性の前兆となる。式(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物を含む医薬組成物の毒性は、マウス、ラット、ウサギ又はサル等の動物モデルにおけるインビボ毒性を決定することによって確立されうる。
【実施例
【0267】
本発明の実施形態を、下記の実施例において更に定義する。これらの実施例は、例証としてのみ与えられていることが理解されるべきである。上記の考察及びこれらの実施例から、当業者ならば、本発明の本質的な特徴を解明することができ、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明を種々の用法及び条件に適応させるために、その実施形態の種々の変更及び修正を行うことができる。故に、本明細書において示されている及び記述されているものに加えて、本発明の実施形態の種々の修正が、前述の記述から当業者には明らかとなるであろう。そのような修正も、添付の請求項の範囲内にあることが意図されている。本明細書において明記されている各参考文献の開示は、参照によりその全体が及び本明細書で参照される開示について、本明細書に組み込まれる。
【0268】
(実施例1)
ALT-59結合タンパク質の精製
潜在的なALT-59標的タンパク質を同定するために、実験を実施した。下記の方法を使用して、これらの実験を実施した。
【0269】
組織培養及び細胞処理
MDA-MB-231及びPLC/PRF/5細胞を、CO2インキュベーター内、10%のウシ胎児血清(FBS)及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen社)を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中、37℃で維持した。
【0270】
固相化合物-タンパク質複合体解体
細胞を、20mMの4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、pH7.5、0.3%の3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート(CHAPS)、150mMのNaCl(Sigma-Aldrich社)及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche社)を含有する溶解緩衝液中、回転させながら4℃で1時間にわたって溶解し、続いて、15000で20分間にわたって遠心分離した。DMSOに20mMで溶解した10ミリグラムのALT-59を、5mgのタンパク質を含有する全細胞溶解物に添加し、氷上で1時間にわたってインキュベートした。化合物は、高い疎水性により凝結する。化合物-タンパク質複合体を1000rpmで沈降させ、溶解緩衝液で5回洗浄して、未結合のタンパク質を除去した。化合物-タンパク質複合体を、SDS-PAGEタンパク質試料緩衝液(1×)(80mMのトリス-HCl、pH6.8、2%のSDS、10%のグリセロール、0.1%のブロモフェノールブルー)中で煮沸した。
【0271】
銀染色法のために、タンパク質を10%のSDS-PAGEゲル上で分離した。質量分析を使用するタンパク質同定のための試料を調製するために、タンパク質試料をスタッキングゲルに流し込み、試料を単一バンドに圧縮した後、電気泳動を停止した。ゲルをクマシーブリリアントブルーで30分間にわたって染色し、脱イオン水を少なくとも3回換えて終夜脱染した。バンドを切除し、タンパク質同定のための質量分析に供した。これらの実験からのデータは、およそ43kDaの見掛けの分子量を持つ主要タンパク質バンドが、両方の細胞株由来の試料の銀染色法によって明らかにされたことを示す(図1)。質量分析による解析は、TDP-43をナンバーワンヒットとして、続いて、豊富なシャペロニン及びケラチンを同定した(図2)。
【0272】
(実施例2)
組換えTDP-43発現及び精製
発現ベクターpRETb/TDP43-Hisを構築し、組換えTDP-43を精製することを目的として、下記の実験において使用した。
【0273】
ロゼッタ(DE3)細胞を、製造業者の(manufacture's)指示に従って、pRETb/TDP43-Hisで形質転換した。37℃で5時間にわたって振とうして単一コロニー由来の培養物が外径0.6に到達した後、それを6つの等しい培養物に分割し、図3において指示されている通りに処理した。(レーン1)誘発されていないブランク;(レーン2)0.5mMのIPTG、60μMのDMSO;(レーン3)0.5mMのIPTG、60μMのALT-59;(レーン4)0.5mMのIPTG、2μg/mlのPMBN;(レーン5)0.5mMのIPTG、2μg/mlのPMBN、30μMのALT-59;(レーン6)0.5mMのIPTG、2μg/mlのPMBN、60μMのALT-59。細胞をシェーカー上にて25℃で終夜培養し、次いで、収集し、タンパク質試料緩衝液中で音波処理し、煮沸した後、10%のSDS-PAGEゲル上にローディングした。クマシーブリリアントブルー染色によってタンパク質を可視化した。
【0274】
結果は、TDP-43の凝集する固有の傾向による、エシェリキア・コリにおけるTDP43-Hisの低発現を示す。60μMのALT-59、及び疎水性化合物に対するグラム陰性細菌の外膜の透過性を特異的に増大させることができるカチオン性環状ペプチドであるPMBNによる処理は、タンパク質発現を増大させたが、すべての培養物由来の発現タンパク質をニッケル-NTAアガロース樹脂(Qiagen社)によって直接精製することはできない。ALT-59の存在下でのTDP43-Hisの発現の増大は、2つの間の直接結合を示唆している(図3)。
【0275】
組換えTDP-43発現及び溶解度を増大させるために、追加の実験を実施した。TDP-43をSumoタグの後ろにインフレームで挿入し、これにはpSumo-Kanベクター上のHis-タグが先行する。得られたpSumo/TDP43をロゼッタ(DE3)細胞に導入した。2つのコロニーを選別し、外径が0.6に到達するまで、37℃で振とうすることによって培養した。各培養物を2つに分割し、そのうちの一方に0.5mMの最終濃度のIPTGを受けさせる。細胞をシェーカー上にて25℃で終夜培養し、次いで、収集し、タンパク質試料緩衝液で音波処理し、煮沸した後、10%のSDS-PAGEゲル上にローディングした。製造業者の指示に従って、ニッケル-NTAアガロース樹脂(Qiagen社)を使用するタンパク質精製、続いて、10%のSDS-PAGEゲルによる溶離したタンパク質の分別を実施した。クマシーブリリアントブルー染色によってタンパク質を可視化した。
【0276】
これらの実験からのデータは、SumoタグをTDP-43の前に挿入することが、TDP-43発現を劇的に増大させ(図4A)、それを可溶性にする(図4B)ことを示す。
【0277】
(実施例3)
ALT-59はTDP-43のTG12との結合を阻害する
ALT-59のTDP-43との直接結合を確認するために、追加の実験を実施した。1マイクログラムの精製されたHis-Sumo-TDP43を、1μgのTG12-ビオチン(TGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTGTG-ビオチン(配列番号1))とともに、20mMのHEPES、pH7.5、0.3%のCHAPS、150mMのNaCl(Sigma-Aldrich社)及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche社)を含有する結合緩衝液中、担体(50%のクレモホルEL、50%の無水エタノール)又は担体に溶解した30μMのALT-59の存在下、氷上で4時間にわたってインキュベートした。ストレプトアビジン磁気ビーズ(20μlの沈んだビーズ、GE Healthcare Life Sciences社)を添加して、4℃で2時間にわたって回転させることにより、DNA-タンパク質複合体を解体した。結合緩衝液で5回洗浄した後、試料をタンパク質試料緩衝液中で煮沸した。別の実験では、ストレプトアビジン磁気ビーズと結合しているDNA-タンパク質複合体を洗浄し、3つの部分に分割し、そのうちの2つを、担体又はALT-59のいずれかとともに、4℃で回転させながら4時間にわたってインキュベートして、TDP-43をTG12-ビオチン-ストレプトアビジンから溶離した。第3の部分及び溶出物をタンパク質試料緩衝液と混合し、煮沸した。上記の実験からのタンパク質試料を、分別のために4~20%のトリス-グリシンゲル(Invitrogen社)上にローディングした。抗TDP-43抗体(Proteintech Group社)を使用して、ウエスタンブロッティングを実施した。
【0278】
これらの実験からのデータは、ALT-59がTDP-43のTG12との結合をブロックすることができることを示す(図5)。ALT-59はTG12をTDP43-TG12複合体から移動させることもでき(図6)、ALT-59がTDP-43とTG12よりも高い親和性で結合することを示唆している。
【0279】
(実施例4)
ALT-59によるTDP-43の阻害はLAMP2プレmRNAスプライシングを改変する
LAMP2プレmRNAは、11個のエクソンからなる(図7A)。プレmRNAの選択的スプライシングは、3つの成熟mRNAアイソフォーム:LAMP2a、LAMP2b及びLAMP2cをもたらす。3つのアイソフォームは、最初の8個のエクソン、続いて、終止コドンを含有する異なるエクソンを共有する。転写産物の翻訳は、異なるc末端配列を持つ3つのタンパク質アイソフォームを生成し、これは、45又は46個のアミノ酸を含有する。2A及び2Bは除くが、LAMP2Cは、それらのリソソーム分解のためのRNA/DNA受容体として働くリソソーム膜タンパク質であり、したがって、不要な核酸を除去するための廃棄物除去タンパク質(garbage-disposal protein)として役立つことが示されている(Fujiwaraら、2015、Biochem Biophys Res Commun 460、281~286)。
【0280】
TG繰り返しの長いストレッチは、Lamp2遺伝子のエクソン9及びイントロン9において見られる。より短いストレッチはイントロン10に位置している。これらの高親和性TDP-43結合配列の存在は、LAMP2プレmRNAスプライシングにおけるTDP-43の潜在的な調節的役割を示唆している。ALT-59処理がLAMP2選択的スプライシングに影響を与えるか否かを試験するために、RT-PCR解析を実施した。MDA-MB-231細胞を上述された通りに培養し、DMSO又は6μMのALT-59で処理した。RNイージーミニキット(Qiagen社)を使用して全RNAを抽出し、スーパースクリプトIIIファーストストランド合成システム(Invitrogen社)を使用して等量のRNAを逆転写した。エクソン1上に位置するフォワードプライマー及びエクソン11上に位置するリバースプライマーを使用して、PCR反応を実施した。PCR試料を1.2%のアガロースゲル中で分割し、臭化エチジウムで染色した。
【0281】
Lamp2フォワードプライマー:ATGGTGTGCTTCCGCCTCTTC(配列番号2)。
【0282】
Lamp2リバースプライマー:TTACACAGACTGATAACCAGTACG(配列番号3)。
【0283】
得られたデータは、ALT-59処理が、LAMP2a mRNAのレベルを低減させ、LAMP2c mRNAのレベルを増大させることを示す(図7C)。リソソーム膜上の十分なLAMP2Cタンパク質は、リソソームが不要なジャンク核酸を、分解のためにそれらを内腔にインポートすることによって浄化することを可能にする。他方では、野生型TDP-43又は機能獲得型突然変異体の異常な高発現が、LAMP2Cのより低い発現、結果として、細胞質における核酸結合タンパク質と一緒になったジャンク核酸の蓄積につながりうる。この機構は、神経変性障害患者において見られるTDP-43凝集体の説明を提供する。
【0284】
(実施例5)
ALT-59によるTDP-43の阻害はCFTRエクソン9封入を誘発する
TDP-43は、CFTRエクソン9スキッピング、ApoA2エクソン3スキッピング及びPOLDIP3エクソン3封入を引き起こすことが報告されている。TDP-43がALT-59の標的であることを更に確認するために、追加の実験を実施した。RT-PCR解析は、これらの遺伝子について下記のプライマーを使用して上述された通りに実施した。PCR試料をポリアクリルアミドゲル電気泳動によって解析し、臭化エチジウムで染色した。
【0285】
CFTRフォワードプライマー:CAGAAGTAGTGATGGAGAATGTAAC(配列番号4)。
【0286】
CFTRリバースプライマー:GTTGACCTCCACTCAGTGTGATTC(配列番号5)。
【0287】
ApoA2フォワードプライマー:ATGAAGCTGCTCGCAGCAAC(配列番号6)。
【0288】
ApoA2リバースプライマー:TCACTGGGTGGCAGGCTGTG(配列番号7)。
【0289】
POLDIP3フォワードプライマー :TGCTCTGAAGCTCACCAAAA(配列番号8)。
【0290】
POLDIP3リバースプライマー:GGAACGGAAGCTATACCATCAT(配列番号9)。
【0291】
これらの実験からのデータは、TDP-43を阻害することにより、ALT-59が、実際にCFTRエクソン9封入を促進しApoA2スプライシングをブロックすることができることを確認した(図8)。ApoA2の事例において、ALT-59による阻害されたTDP-43核酸結合は、より少ない成熟mRNA及びより多くのApoA2プレmRNAにつながり、これは、エクソン3のみ(Mercadoら、2015、Nucleic Acids Res 33、6000~6010)ではなく他のエクソン及びイントロンのすべても保持していることによる。異なる観察は異なる実験設定によって説明することができた。内因性ApoA2遺伝子発現がこの研究において決定されたのに対し、Mercadoら(2015)は、その隣接するイントロン領域(イントロン2の174nt及びイントロン3の116nt)を持つエクソン3(133nt)のみを含む人工ミニ遺伝子のスプライシングを決定した。POLDIP3エクソン3のスプライシングは不変のままであり、これは以前の報告と矛盾する。
【0292】
(実施例6)
ALT-59によるTDP-43の阻害はCFTRタンパク質発現を増大させる
ALT-59処理がCFTRタンパク質レベルにどのように影響を与えるかを決定するために、追加の実験を実施した。U-87MG細胞を、CO2インキュベーター内、10%のウシ胎児血清(FBS)及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen社)を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中、37℃で維持し、DMSO、3μM又は6μMのALT-59で処理した。細胞を、RIPA緩衝液(25mMのトリス、pH7.4、150mMのNaCl、0.1%のSDS、0.5%のデオキシコール酸ナトリウム、1%のトリトンX-100、コンプリートプロテアーゼ阻害剤カクテル)を使用して溶解した。抗CFTR(Novus Biologicals社)及び抗-ベータ-アクチン(Sigma-Aldrich社)抗体を使用して、ウエスタンブロッティングを実施した。Odyssey社撮像装置を使用して画像を取得し、Odyssey社ソフトウェア(LI-COR)を使用して定量化した。
【0293】
得られたデータは、ALT-59による完全長CFTR発現の増大を確認した(図9A)。およそ160、240及び300kDaの分子量を持つ複数のCFTRアイソフォームが検出された。3μMのALT-59による処理は、CFTR160のレベルに影響を与えなかったが、CFTR240レベルを1倍及びCFTR300のレベルを10倍増大させた。6μMのALT-59による処理は、CFTR160、CFTR240及びCFTR300のレベルを、それぞれ30%、3倍及び18倍増大させた(図9B図9D)。CFTR300は、グリコシル化CFTRを表す可能性が高い。
【0294】
(実施例7)
ALT-59によるTDP-43の阻害は原形質膜上におけるCFTR局在化を増大させる
ALT-59処理がCFTR局在化にどのように影響を与えるかを決定するために、免疫蛍光顕微鏡検査法を実施した。
【0295】
MDA-MB-231及びU-87MG細胞を、上述された通りの条件下、カバースリップ上で培養した。細胞をDMSO又は4μMのALT-59で3日間にわたって処理した。Phe508del-CFTRについてホモ接合型の嚢胞性線維症患者から単離された初代ヒト気管支上皮細胞(Lifeline Cell Technology社)を、BrochiaLife LifeFactorsキット(Lifeline Cell Technology社)を補充したBronchiaLife細胞培養培地中、カバースリップ上で培養し、CO2インキュベーター内、37℃で維持した。細胞を、DMSO、4μMのALT-59、2μMのALT-308又は4μMのALT-410で3日間にわたって処理した。
【0296】
細胞を4%のパラホルムアルデヒド中で15分間にわたって固定し、0.1%のトリトンX-100中で2分間にわたって透過化した。5%のBSA(Sigma-Aldrich社)中でブロックした後、細胞を、抗CFTR抗体(Alomone Labs社)、続いて、アレクサフルオル488抗ウサギ二次抗体とともにインキュベートした。試薬をGIBCO社PBS(リン酸緩衝溶液)中で緩衝化した。Carl Zeiss社LSM510レーザー走査型顕微鏡を使用して画像を撮影した。パラメーターはすべての画像について同一に設定した。
【0297】
これらの実験からのデータは、ALT-59が、MDA-MB-231及びU-87MG細胞において核周辺領域から原形質膜へのCFTRの再分布を引き起こすことを示す(図10)。ALT-59処理は、核周辺領域から原形質膜へのCFTRの再分布を引き起こした。Phe508del-CFTRについてホモ接合型の嚢胞性線維症患者から単離された初代気管支上皮細胞の、ALT-59並びにその誘導体ALT-308及びALT-410による処理も、原形質膜上におけるPhe508del-CFTRの局在化の増大につながる(図11図12)。
【0298】
(実施例8)
ALT-59によるTDP-43の阻害は神経変性疾患に関連するタンパク質の発現を変化させる
U-87MG及びT98G細胞を、CO2インキュベーター内、10%のウシ胎児血清(FBS)及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen社)を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中、37℃で維持した。細胞を、DMSO、3μM又は6μMのALT-59で2日間にわたって処理し、指示された抗体を使用するウエスタンブロッティング解析に供した。イメージJソフトウェアを使用してタンパク質バンドを定量化した。
【0299】
得られたデータは、U-87MG細胞において、3μM及び6μMのALT-59によるTDP-43の阻害が、ベータ-セクレターゼ1(BACE1)タンパク質レベルをそれぞれ20%及び50%低減させることを示す。3μM及び6μMのALT-59は、Tau発現をそれぞれ52%及び38%低減させた。対照的に、該処理はMAP2発現をそれぞれ1.42及び2.51倍増大させた(図13)。ALT-59処理によるBACE1発現の調節はT98G細胞において確認され、その中で、3μM及び6μMのALT-59はBACE1発現をそれぞれ31%及び53%低減させた(図14)。
【0300】
BACE1は、神経変性疾患患者において見られるアミロイド斑の成分である40又は42アミノ酸-長アミロイド-βペプチドへの、アミロイド前駆体タンパク質(APP)の蛋白質分解プロセシングを司る。微小管関連タンパク質tau(MAPT)は、神経変性疾患を含む多くの疾患において神経原線維のもつれとして蓄積する不溶性フィラメントを形成する。MAP2は、軸索貨物輸送を方向付けることによって感覚ニューロンの軸索成長の可能性を制御する重大なトラフィック調節因子であることが示されている(Gumyら、2017、Neuron 94、347~362 e347)。まとめると、これらのデータは、ALT-59処理によるTDP-43の阻害が、神経変性疾患に関連する病理学的タンパク質の発現を減少させ、同時に、有益なタンパク質発現を増大させることができることを示す。
【0301】
(実施例9)
ALT-59誘導体のスクリーニング
より高い効力及びBACE1タンパク質レベルを指標として使用して血液脳関門に浸透する能力を持つ化合物をスクリーニングするために、追加の実験を実施した。U-87MG細胞を、これまでに記述されている通りに培養し、図15図17において指示されている通りの濃度の化合物で2日間にわたって処理した。次いで、細胞を、抗BACE1及び抗ベータ-アクチン抗体を使用するウエスタンブロッティング解析に供した。
【0302】
これらの実験からのデータは、BACE1タンパク質発現を低下させることができる化合物の同定につながる。BACE1発現を低下させることができる化合物の化学構造は、本明細書において記述されており、図18図20において示されている。これらの化合物は、本明細書において、ALT-108、ALT-212、ALT-215、ALT-308、ALT-317、ALT-309、ALT-408、ALT-411、ALT-333、ALT-59、ALT-110、ALT-201、ALT-202、ALT-204、ALT-205、ALT-207、ALT-208、ALT-210、ALT-211、ALT-302、ALT-306、ALT-307、ALT-311、ALT-318、ALT-322、ALT-324、ALT-402、ALT-403、ALT-404、ALT-406、ALT-409、ALT-410、ALT-413及びALT-414と称される。
【0303】
(実施例10)
ALT-59処理はシー・エレガンスにおいてhTDP-43発現によって引き起こされた麻痺をレスキューする
野生型N2株又は完全長(野生型)ヒトTDP-43を発現しているトランスジェニックシー・エレガンス(菌株番号、CL6049、Caenorhabditis Genetics Center、Minneapolis、MN)を、10μMのALT-59を加えた又は加えていない新たに調製した線虫成長培地(NGM)ペトリ皿上に載置した。
【0304】
非協調的表現型を撮像し、倒立顕微鏡下で記録した後、液体中で体の波打ち(body thrashes)をカウントすることによって運動欠損を定量化した。
【0305】
シー・エレガンスにおける完全長ヒトTDP-43のニューロンの発現は、運動ニューロン機能不全につながり、動物に、コイル状の体姿勢、非協調的運動及び液体中での体の波打ちの低減を有させる(Ashら、2010)。故に、この例に使用されるシー・エレガンスモデルは、神経変性障害との公知の相関関係を有するヒトTDP-43に対する本明細書において提供される組成物の効果のインビボ試験に適切なモデルである。ALT-59による処理は、コイル状の体姿勢及び非協調的表現型をレスキューし(図21)、麻痺の百分率を93%から29.5%まで低減させた(図22)。これらの結果は、本明細書において提供される組成物を使用してTDP-43の核酸結合活性をブロックする際のインビボ治療的利益を実証する。
【0306】
(実施例11)
マウスにおける神経変性障害の処置
本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を調製する。医薬組成物は、治療有効量で存在する、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物を含む。
【0307】
TDP-43毒性は、その核酸結合活性を起源とする(Iharaら、2013、Hum Mol Genet、22(22)、4474~4484; Voigtら、2010、PLoS One、5(8)、e12247; Wilsら、2010、PNAS 107、3858~3863)。マウス中枢神経系の全体にわたるニューロンにおけるヒトTDP-43遺伝子の発現は、皮質及び脊髄運動ニューロンの変性並びに痙性麻痺を引き起こす(Wilsら、2010、PNAS 107、3858~3863)。TDP-43神経変性のマウスモデル、マウス株B6;SJL-Tg(Thy1-TARDBP)4Singh/JをJackson Laboratory社から取得する(ストック番号:012836)。該マウスモデルは、そのために確立されたため、神経変性及びTDP-43毒性についての受け入れられている動物モデルであり、この動物モデルで本明細書において提供される化合物を使用してスクリーニングを行う。マウス株にヒトTDP-43遺伝子を発現させ、本明細書において提供される組成物のインビボ効能を試験するために使用する。化合物を、ホモ接合型マウスに、10mg/kg体重で、腹腔内注射により、週に3回、4週間にわたって投与する。処置群の運動表現型を、ビヒクル処置対照群と比較する。
【0308】
化合物で処置したマウスは、ニューロンにおいてTDP-43発現によって引き起こされた麻痺の軽快及び生存の改善を呈する。
【0309】
(実施例12)
医薬組成物を使用する神経変性障害の処置
本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を調製する。医薬組成物は、治療有効量で、例えば、0.01mgから3000mgまでの範囲の量で存在する、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物を含む。
【0310】
本明細書において具体的に開示されている化合物のいずれかを含む式(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物、その類似体、誘導体又は薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を調製する。医薬組成物は、治療有効量で、例えば、0.01mgから3000mgまでの範囲の量で存在する、式(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)のいずれか1つの化合物を含む。
【0311】
神経変性障害に罹患している対象は、神経変性障害を有すると対象を診断することによって同定される。対象は、神経変性障害の程度に基づき選択される。神経変性障害の重症度は、処置の前、最中及び後に査定される。査定は、対象の応答、対象の神経学的検査及びバイオマーカー査定を含む。
【0312】
対象に、あらゆる神経変性処置の使用を中断し、いかなる新たな処置も回避するように指導する。同定された対象を、対照及び処置群に群分けする。研究の開始時に、すべての対象を疾患の重症度について査定する。同じ日に、各対象に組成物を投与し、ここで、対照群にはプラセボ組成物を投与し、処置群には医薬組成物を投与する。処置過程の間、必要に応じて処置を繰り返す。
【0313】
研究過程の間及び最終処置後に、処置の転帰を査定する。処置群の転帰を対照群の転帰と比較する。医薬組成物の効能を、処置過程の間の査定及び処置後の査定に基づき、対照群と比較して評価する。医薬組成物を受けている対象は、対照群と比較して、神経学的査定における改善を呈する。
【0314】
本明細書において使用される場合、項の見出しは、組織化のみを目的とし、記述されている主題を何ら限定するものとして解釈されるべきではない。特許、特許出願、論文、書籍、専門書及びインターネットのウェブページを含むがこれらに限定されない、本出願において引用されるすべての文献及び同様の資料は、本明細書において具体的に参照される開示を含み、あらゆる目的のために参照によりその全体が明示的に組み込まれる。組み込まれた参考文献における用語の定義が、本発明の教示において提供される定義と異なると思われる場合、本発明の教示において提供される定義が優先するものとする。本発明の教示において論じられている温度、濃度、時間等の前には暗黙の「約」があり、それにより、わずかな実質的でない逸脱は、本明細書における本発明の教示の範囲内であることが分かるであろう。
【0315】
本出願において、単数形の使用は、具体的に別段の記載がない限り、複数形を含む。また、「を含む(comprise)」、「を含む(comprises)」、「を含む(comprising)」、「を含有する(contain)」、「を含有する(contains)」、「を含有する(containing)」、「を含む(include)」、「を含む(includes)」及び「を含む(including)」の使用は、限定的であることを意図したものではない。
【0316】
本明細書及び請求項において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、内容上明確に別のことを指示するのでない限り、複数の参照物を含む。
【0317】
ある特定の実施形態及び実施例の文脈で本発明を開示してきたが、当業者であれば、本発明は、具体的に開示されている実施形態を超えて、本発明の他の代替的な実施形態及び/又は使用並びにその明白な修正形態及び均等物まで拡大することを理解するであろう。加えて、本発明のいくつかの変形形態が示され詳細に記述されているが、本発明の範囲内にある他の修正形態は、本開示に基づき、当業者には容易に明らかとなるであろう。実施形態の具体的な特色及び態様の種々の組合せ又はサブ組合せが為されてよく、依然として本発明の範囲内にあることも企図されている。開示されている発明の様々なモード又は実施形態を形成するために、開示されている実施形態の種々の特色及び態様を、互いに組み合わせる又は置換することができることが理解されるべきである。故に、本明細書において開示されている本発明の範囲は、上述された特定の開示されている実施形態によって限定されるべきではないことが意図されている。
【0318】
しかしながら、この詳細な記述は、本発明の好ましい実施形態を指し示しているが、本発明の趣旨及び範囲内の種々の変更及び修正が当業者に明らかとなることから、例証としてのみ与えられていることが理解されるべきである。
【0319】
本明細書において提示される記述において使用される術語は、何ら限定された又は制限的な方式で解釈されることを意図したものではない。むしろ、術語は単に、システム、方法及び関連成分の実施形態の詳細な記述と併せて利用されている。更に、実施形態は、どの1つもその望ましい属性を単独で司る又は本明細書において記述されている発明を実践するために必須であるとは考えられない、いくつかの新規特色を含んでよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【配列表】
0007605820000001.app