(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61N 5/067 20060101AFI20241217BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20241217BHJP
A61B 18/24 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
A61N5/067
A61M25/10
A61B18/24
(21)【出願番号】P 2022505141
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2021006827
(87)【国際公開番号】W WO2021177103
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2020039082
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇都 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】大角 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 弘規
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-183127(JP,A)
【文献】特開2008-264134(JP,A)
【文献】特表2005-534409(JP,A)
【文献】米国特許第6755849(US,B1)
【文献】特開2004-344627(JP,A)
【文献】特開平3-30760(JP,A)
【文献】米国特許第5029574(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06― 5/08
A61M 25/10―25/12
A61B 18/18―18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内の組織に光を照射するバルーンカテーテルであって、
第1ルーメンおよび第2ルーメンを備える第1シャフトと、
前記第1シャフトの遠位側に配置されている第2シャフトと、
前記第2シャフトの遠位側に配置されているバルーンと、
前記バルーンの内方に配置されている光ファイバーと、を有しており、
前記第1シャフトを構成する材料は、樹脂であって、
長手方向に垂直な断面において、前記第1シャフトを形成する樹脂の断面積は、前記第1ルーメンと前記第2ルーメンの断面積が大きいいずれか一方の断面積よりも大きく、
前記光ファイバーは、前記第1ルーメンの遠位端に接合されており、
前記バルーンの近位端は、前記第2シャフトに接合されており、
前記バルーンの遠位端は、前記光ファイバーに接合されていることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
体内の組織に光を照射するバルーンカテーテルであって、
第1ルーメンを有する内筒部と、第2ルーメンと、を備える第1シャフトと、
前記第1シャフトの遠位側に配置されている第2シャフトと、
前記第2シャフトの遠位側に配置されているバルーンと、
前記バルーンの内方に配置されている光ファイバーと、を有しており、
前記内筒部の外表面の少なくとも一部は、前記第1シャフトの内表面に固定されており、
前記光ファイバーは、前記内筒部の遠位端に接合されており、
前記バルーンの近位端は、前記第2シャフトに接合されており、
前記バルーンの遠位端は、前記光ファイバーに接合されていることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項3】
長手方向における前記第2シャフトの長さは、前記第2シャフトの最小外径の10倍以上である請求項1または2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
前記第2シャフトの近位端での長手方向に垂直な断面において、前記第2シャフトの外形の中心軸の位置と、前記光ファイバーの外形の中心軸の位置とが異なっている請求項1~3のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項5】
前記第2シャフトの長手方向に垂直な断面において、前記第2シャフトの内表面と前記光ファイバーの外表面とで形成される間隙部分の面積は、前記第2シャフトの内腔の面積の40%以上である請求項1~4のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項6】
前記第2シャフトの内表面に、前記光ファイバーの外表面と接触する突起を有している請求項1~5のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項7】
前記光ファイバーの遠位側に先端チップが配置されており、
前記先端チップの遠位端は、前記バルーンの遠位端よりも遠位側にある請求項1~6のいずれか一項に記載のバルーンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管や消化管等の体内管腔において、がん細胞等の組織に光を照射する際等に用いるバルーンカテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光線力学的療法(Photodynamic Therapy:PDT)では、光増感剤を静脈注射や腹腔内投与で体内に投与し、がん細胞等の対象組織に光増感剤を集積させ、特定の波長の光を対象組織に照射することにより光増感剤を励起させる。励起された光増感剤が基底状態に戻るときにエネルギー転換が生じ、活性酸素種を発生させる。この活性酸素種が対象組織を攻撃することにより、対象組織を除去することができる。また、レーザー光を用いたアブレーション(組織焼灼)では、対象組織にレーザー光を照射して焼灼することが行われる。
【0003】
光照射医療装置は、PDTやレーザー光を用いたアブレーションにおいて、血管や消化管等の体内管腔にてがん細胞等の対象組織である処置部に対して特定の波長の光を照射するために用いられる。光照射医療装置では、対象組織に光を照射するためにカテーテルの管内に光ファイバーが配置される。
【0004】
光照射医療装置は、単独で処置部まで送達されるものもあるが、一般的には、送達用のカテーテルや内視鏡と共に用いられる。内視鏡を用いた治療において光照射医療装置は、内視鏡の鉗子口を通じて内視鏡の鉗子口の遠位側から体内に配置され、処置部まで送達される。
【0005】
例えば、特許文献1には、末梢端部及び手元端部を有する管状基体と、その末梢端部に配置されて管状基体の末梢端部のある部分を囲撓しているバルーンメンバとでなるバルーンカテーテルであり、光導装置が手元端部から末梢端部に延在しており、この光導装置はその末梢端部に近いところにバルーンメンバ内に配された発光端部を管状基体に固定した状態で具備しており、光導装置を有するバルーンカテーテルにおいて、光導装置は管状基体の管路内に延在しており、また、管状基体の端部外壁はバルーンメンバ内に延出し、かつ管路を画成していて、少なくとも部分的に予め取り除いてあることにより、光導装置の発光端部をバルーンメンバ内に露呈してあることが記載されており、発光端部に光ファイバーを用いることが記載されている。
【0006】
特許文献2には、シャフトは、内側チューブと外側チューブとを有し、外側チューブの先端にバルーンを配置し、内側チューブを外側チューブの後方からバルーンの内部を経てバルーンの先端に至るまで配置し、少なくとも内側チューブの内部にレーザーファイバーを挿入可能なルーメンを有し、外側チューブの後端にレーザーファイバーの挿入口を形成し、バルーンの外周に光感受性物質を固定し、位置決め用のマーカーをバルーン中央の内側チューブの外周に一箇所設けるか、または、バルーン中央から等間隔にバルーン両側の内側チューブの外周に二箇所設け、レーザーファイバーのストッパーをレーザーファイバーの先端がバルーンの中央で止まるように、バルーン中央の内側チューブ内に設けたことを特徴とするレーザーファイバーの誘導カテーテルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平8-317991号公報
【文献】特開2009-160446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1および2のバルーンカテーテルでは、バルーンカテーテルを内視鏡等から抜去するためにバルーンカテーテルを手元側へ引いた際に、バルーンカテーテルを手元側へ引く力がバルーンの遠位端部まで伝わりにくい。そのため、内視鏡からバルーンカテーテルを抜去することが困難であるという問題があった。
【0009】
さらに、特許文献1および2のバルーンカテーテルでは、バルーンカテーテルを屈曲した体内管腔に配置した際に、光ファイバーも屈曲する。また、体内管腔に特許文献1および2のバルーンカテーテルを配置した際にバルーンが体内管腔に拘束され、バルーンが圧縮されて軸方向の長さが短くなる場合にも光ファイバーは屈曲する。そのため、バルーンの内部における光ファイバーの位置が長手方向に垂直なバルーンの断面の中心部から外れ、対象組織に十分な光を照射することができずに光線力学的療法が十分に行えないことや、対象組織に想定よりも強い光を照射してしまい体内組織が穿孔してしまうことがあるという問題もあった。
【0010】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、内視鏡等からの抜去性がよく、シャフトが屈曲した状態やバルーンが圧縮された状態であっても光ファイバーの位置が長手方向に垂直なバルーンの断面の中心部となるバルーンカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決することができた第1のバルーンカテーテルは、第1ルーメンおよび第2ルーメンを備える第1シャフトと、第1シャフトの遠位側に配置されている第2シャフトと、第2シャフトの遠位側に配置されているバルーンと、バルーンの内方に配置されている光ファイバーと、を有しており、第1シャフトを構成する材料は、樹脂であって、長手方向に垂直な断面において、第1シャフトを形成する樹脂の断面積は、第1ルーメンと第2ルーメンの断面積が大きいいずれか一方の断面積よりも大きく、光ファイバーは、第1ルーメンの遠位端に接合されており、バルーンの近位端は、第2シャフトに接合されており、バルーンの遠位端は、光ファイバーに接合されていることを特徴とするものである。
【0012】
前記課題を解決することができた第2のバルーンカテーテルは、第1ルーメンを有する内筒部と、第2ルーメンと、を備える第1シャフトと、第1シャフトの遠位側に配置されている第2シャフトと、第2シャフトの遠位側に配置されているバルーンと、バルーンの内方に配置されている光ファイバーと、を有しており、内筒部の外表面の少なくとも一部は、第1シャフトの内表面に固定されており、光ファイバーは、内筒部の遠位端に接合されており、バルーンの近位端は、第2シャフトに接合されており、バルーンの遠位端は、光ファイバーに接合されていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、長手方向における第2シャフトの長さは、第2シャフトの最小外径の10倍以上であることが好ましい。
【0014】
本発明のバルーンカテーテルは、第2シャフトの近位端での長手方向に垂直な断面において、第2シャフトの外形の中心軸の位置と、光ファイバーの外形の中心軸の位置とが異なっていることが好ましい。
【0015】
本発明のバルーンカテーテルは、第2シャフトの長手方向に垂直な断面において、第2シャフトの内表面と光ファイバーの外表面とで形成される間隙部分の面積は、第2シャフトの内腔の面積の40%以上であることが好ましい。
【0016】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、第2シャフトの内表面に、光ファイバーの外表面と接触する突起を有していることが好ましい。
【0017】
本発明のバルーンカテーテルにおいて、光ファイバーの遠位側に先端チップが配置されており、先端チップの遠位端は、バルーンの遠位端よりも遠位側にあることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1のバルーンカテーテルによれば、長手方向に垂直な断面において第1シャフトを形成する樹脂の断面積は第1ルーメンと第2ルーメンの断面積が大きいいずれか一方の断面積よりも大きく、光ファイバーは第1ルーメンの遠位端に接合されており、バルーンの近位端は第2シャフトに接合されており、バルーンの遠位端は光ファイバーに接合されていることにより、バルーンカテーテルに加えられた力がバルーンの近位端と遠位端の両方に伝わりやすい。そのため、内視鏡等からのバルーンカテーテルの抜去性を向上させることができる。また、光ファイバーがバルーンの近位端ではなく、バルーンの近位端よりも近位側にある第1ルーメンの遠位端に接合されるため、長手方向において、バルーンの遠位端から第1ルーメンの遠位端までの間は光ファイバーが他物に固定されておらず、自由に動くことが可能である。その結果、バルーンカテーテルのシャフトが屈曲した状態やバルーンが圧縮された状態であっても、長手方向に垂直なバルーンの断面の中心部に光ファイバーを配置することができる。
【0019】
本発明の第2のバルーンカテーテルによれば、第1シャフトが第1ルーメンを有する内筒部と第2ルーメンとを備え、内筒部の外表面の少なくとも一部は第1シャフトの内表面に固定されており、光ファイバーは内筒部の遠位端に接合されており、バルーンの近位端は第2シャフトに接合されており、バルーンの遠位端は光ファイバーに接合されていることにより、内視鏡等からバルーンカテーテルを抜去する際にバルーンカテーテルを引く力がバルーンの近位端および遠位端に伝わりやすく、バルーンカテーテルを内視鏡等から抜去しやすくなる。また、光ファイバーが内筒部の遠位端に接合されることより、長手方向におけるバルーンの遠位端から第1ルーメンの遠位端までの間は光ファイバーが自由に動くことができる。そのため、バルーンカテーテルのシャフトが屈曲した状態やバルーンが圧縮された状態であっても、長手方向に垂直なバルーンの断面の中心部に光ファイバーを配置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施の形態における第1のバルーンカテーテルの長手方向に沿った断面図を表す。
【
図2】
図1に示したバルーンカテーテルのII-II断面図を表す。
【
図3】本発明の一実施の形態における第2のバルーンカテーテルの長手方向に沿った断面図を表す。
【
図4】
図3に示したバルーンカテーテルのIV-IV断面図を表す。
【
図5】本発明の別の実施の形態におけるバルーンカテーテルの第2シャフトでの長手方向に垂直な断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0022】
まず、本発明の第1のバルーンカテーテルについて説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施の形態における第1のバルーンカテーテル1の長手方向に沿った断面図であり、
図2は
図1に示したバルーンカテーテル1の長手方向に垂直なII-II断面図である。
図1に示すように、本発明のバルーンカテーテル1は、第1ルーメン11および第2ルーメン12を備える第1シャフト10と、第1シャフト10の遠位側に配置されている第2シャフト20と、第2シャフト20の遠位側に配置されているバルーン30と、バルーン30の内方に配置されている光ファイバー40と、を有しており、光ファイバー40は、第1ルーメン11の遠位端11dに接合されており、バルーン30の近位端30pは、第2シャフト20に接合されており、バルーン30の遠位端30dは、光ファイバー40に接合されている。また、第1シャフト10を構成する材料は樹脂であって、
図2に示すように、長手方向に垂直な断面において、第1シャフト10を形成する樹脂の断面積は、第1ルーメン11と第2ルーメン12の断面積が大きいいずれか一方の断面積よりも大きい。つまり、第1ルーメン11の断面積と第2ルーメン12の断面積のうち、大きい方の断面積よりも第1シャフト10を形成する樹脂の断面積が大きい。換言すると、第1シャフト10を形成する樹脂の断面積は、第1ルーメン11と第2ルーメン12のいずれの断面積よりも大きい。
【0024】
長手方向に垂直な断面において、第1シャフト10を形成する樹脂の断面積は、第1ルーメン11と第2ルーメン12の断面積が大きいいずれか一方の断面積よりも大きく、光ファイバー40が第1ルーメン11の遠位端11dに接合されており、バルーン30の近位端30pが第2シャフト20に接合されており、バルーン30の遠位端30dが光ファイバー40に接合されていることにより、バルーン30の近位端30pが第2シャフト20を介して第1シャフト10に接続されるとともに、バルーン30の遠位端30dが光ファイバー40を介して第1シャフト10に接続される構造であるため、第1シャフト10を引く力がバルーン30の近位端30pと遠位端30dの両方に伝わりやすくなる。そのため、バルーンカテーテル1を内視鏡等から抜去する際の抜去性を向上させることが可能となる。
【0025】
光ファイバー40が第1ルーメン11の遠位端11dに接合されており、バルーン30の近位端30pが第2シャフト20に接合されており、バルーン30の遠位端30dが光ファイバー40に接合されていることにより、光ファイバー40がバルーン30の近位端30pよりも近位側にある第1ルーメン11の遠位端11dに接合されることとなる。そのため、バルーンカテーテル1の長手方向において、バルーン30の遠位端30dから第1ルーメン11の遠位端11dまでの間は光ファイバー40が他物に固定されず、バルーンカテーテル1の屈曲状態に合わせて光ファイバー40が自由に位置を変えたり曲がったりすることが可能となる。その結果、対象組織に光を照射して光線力学的療法を行う際に、光ファイバー40を長手方向に垂直なバルーン30の断面の中心部に配置することができ、光線力学的療法を行いやすくすることができる。
【0026】
バルーン30の近位端30pは、第2シャフト20の遠位端20dに接合されていることが好ましく、バルーン30の遠位端30dは、光ファイバー40の遠位端40dに接合されていることが好ましい。
【0027】
光ファイバー40と第1ルーメン11との接合、バルーン30と第2シャフト20との接合、およびバルーン30と光ファイバー40との接合は、それぞれが互いに直接接合されていてもよく、他部材を介して接合されていてもよい。光ファイバー40と第1ルーメン11との接合、バルーン30と第2シャフト20との接合、およびバルーン30と光ファイバー40との接合は、例えば、溶着、接着等の方法が挙げられる。
【0028】
本発明において、近位側とは、第1シャフト10の長手方向に対して使用者、つまり術者の手元側を指し、遠位側とは近位側の反対方向、すなわち処置対象側を指す。また、第1シャフト10の近位側から遠位側への方向、または、遠位側から近位側への方向を長手方向と称する。長手方向は、第1シャフト10の遠近方向と言い換えることができる。
【0029】
図1に示すように、第1シャフト10は、長手方向に延在しており、第1ルーメン11および第2ルーメン12を備える筒状の構造である。第1ルーメン11は、第1ルーメン11の遠位端11dが光ファイバー40に接合されており、第1ルーメン11の内部に光ファイバー40を配置することができる。第2ルーメン12は、バルーン30の内腔と連通しており、バルーン30の内部に流体を供給するための経路とすることができる。
【0030】
図1に示すように、第1ルーメン11の遠位端11dと光ファイバー40との接合部は、第1ルーメン11と第1ルーメン11の外部とが連通する空隙を有していないことが好ましい。つまり、光ファイバー40は、第1ルーメン11の遠位端11dをシールするように接合されていることが好ましい。第1ルーメン11の遠位端11dと光ファイバー40との接合部が、第1ルーメン11と第1ルーメン11の外部とが連通する空隙を有していないことにより、第2ルーメン12を通って供給された流体が第1ルーメン11に入ることを防止する。その結果、バルーン30を素早く拡張することができ、バルーン30の拡張にかかる時間を短くして手技時間の短縮を図ることができる。
【0031】
第1シャフト10は、少なくとも第1ルーメン11と第2ルーメン12を備えていればよく、第1ルーメン11および第2ルーメン12と異なるルーメンをさらに有していてもよい。
【0032】
第1シャフト10は、可撓性を有していることが好ましい。第1シャフト10が可撓性を有していることにより、第1シャフト10が柔軟なものとなって曲げやすくなる。そのため、バルーンカテーテル1を体内へ挿入しやすくなる。
【0033】
第1シャフト10を構成する材料は樹脂であり、
図2に示すように、長手方向に垂直な断面において、第1シャフト10を形成する樹脂の断面積は、第1ルーメン11と第2ルーメン12の断面積が大きいいずれか一方の断面積よりも大きい。具体的には、例えば、
図2に示すバルーンカテーテル1では、第2ルーメン12の断面積が第1ルーメン11の断面積よりも大きいため、第2ルーメン12の断面積と第1シャフト10を形成する樹脂の断面積とを比較する。なお、第1ルーメン11の断面積と第2ルーメン12の断面積とが同じである場合には、第1ルーメン11の断面積と第2ルーメン12の断面積のいずれを、第1シャフト10を形成する樹脂の断面積との比較に用いてもよい。第1シャフト10を形成する樹脂の断面積が、第1ルーメン11と第2ルーメン12の断面積が大きいいずれか一方の断面積よりも大きいことにより、第1シャフト10の剛性を高めることができる。その結果、バルーンカテーテル1の挿通時にバルーンカテーテル1を押す力や、バルーンカテーテル1の抜去時にバルーンカテーテル1を引く力を第1シャフト10に加えた際に、第1シャフト10を通じてバルーン30の遠位端30dおよび近位端30pにこの力を伝えやすくなり、バルーンカテーテル1の抜去性を向上させることができる。
【0034】
長手方向に垂直な断面において、第1シャフト10を形成する樹脂の断面積は、第1ルーメン11と第2ルーメン12の断面積が大きいいずれか一方の断面積の1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることがさらに好ましい。第1シャフト10を形成する樹脂の断面積と、第1ルーメン11と第2ルーメン12の断面積が大きいいずれか一方の断面積との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、第1シャフト10の剛性を十分に高めることが可能となる。また、第1シャフト10を形成する樹脂の断面積は、第1ルーメン11と第2ルーメン12の断面積が大きいいずれか一方の断面積の5倍以下であることが好ましく、4倍以下であることがより好ましく、3倍以下であることがさらに好ましい。第1シャフト10を形成する樹脂の断面積と、第1ルーメン11と第2ルーメン12の断面積が大きいいずれか一方の断面積との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、第1シャフト10が有している第1ルーメン11および第2ルーメン12の広さを確保することができ、第1ルーメン11への光ファイバー40の挿通や、第2ルーメン12へのバルーン30拡張用の流体の供給および除去を円滑に行うことができる。
【0035】
第1シャフト10を構成する材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、PET等のポリエステル系樹脂、PEEK等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエーテルポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、第1シャフト10を構成する材料は、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂を含んでいることが好ましい。第1シャフト10を構成する材料がポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂を含んでいることにより、第1シャフト10が可撓性を有し、また、第1シャフト10の表面の滑り性も向上するため、挿通性のよいバルーンカテーテル1とすることができる。
【0036】
図1に示すように、第2シャフト20は、長手方向に延在しており、内腔を有する筒状の構造である。第2シャフト20は、第1シャフト10の遠位側に配置されている。つまり、第2シャフト20は、第1シャフト10の遠位端10dよりも遠位側に配置されている。第2シャフト20の内腔には、光ファイバー40が配置される。第2シャフト20は、可撓性を有していることが好ましい。第2シャフト20が可撓性を有していることにより、第2シャフト20が柔軟になり、バルーンカテーテル1の挿入性を高めることが可能となる。
【0037】
第2シャフト20は、複数の部材から構成されていてもよいが、1つの筒部材から構成されていることが好ましい。第2シャフト20が1つの筒部材から構成されていることにより、第2シャフト20が柔軟なものとなる。その結果、屈曲した体内管腔にバルーンカテーテル1を挿入した際に、第2シャフト20が曲がりやすくなり、バルーンカテーテル1の挿入性を高めることができる。
【0038】
第2シャフト20を構成する材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、PET等のポリエステル系樹脂、PEEK等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエーテルポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂等の合成樹脂や、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケルチタン合金等の金属等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、第2シャフト20を構成する材料は、第1シャフト10を構成する材料と同じものを含んでいることが好ましい。第2シャフト20を構成する材料が第1シャフト10を構成する材料と同じものを含んでいることにより、第1シャフト10と第2シャフト20との硬度や表面の滑り性等の物性が近いものとなり、体内への挿入性のよいバルーンカテーテル1とすることができる。また、第1シャフト10と第2シャフト20とを直接接合する際に、第1シャフト10と第2シャフト20との接合強度を高めることが可能となる。
【0039】
バルーン30は、第2シャフト20の遠位側に配置されている。つまり、バルーン30は、第2シャフト20の遠位端20dよりも遠位側に配置されている。また、バルーン30の近位端30pは第2シャフト20に接合されており、バルーン30の遠位端30dは光ファイバー40に接合されている。バルーン30の近位端30pは、第2シャフト20の遠位端20dに接合されていることが好ましい。
【0040】
バルーン30は、流体供給器から第1シャフト10および第2シャフト20を通じて、バルーン30の内部に流体が供給されるように構成されている。バルーン30の内部に流体が供給されることにより、バルーン30を拡張することが可能である。また、バルーン30の内部にある流体をバルーン30から除去することにより、バルーン30を収縮することができる。バルーン30を拡張させることによって、バルーン30の外表面が血管や消化管等の体内管腔の管壁と接触するため、バルーン30を体内に固定することができる。バルーン30の内部に供給される流体は、ポンプ等によって加圧した圧力流体であってもよい。
【0041】
バルーン30内に供給される流体の種類は、例えば、生理食塩水、造影剤、またはこれらの混合液等の液体や、空気、窒素、炭酸ガス等の気体を用いることができる。中でも、バルーン30内に供給される流体は、気体であることが好ましい。バルーン30内に供給される流体が気体であることにより、光線力学的療法を行う際にバルーン30の内方に配置されている光ファイバー40の射出光をバルーン30内に存在している流体が妨げにくくなる。
【0042】
図1に示すように、バルーン30は、直管部31を有することが好ましい。バルーン30が直管部31を有することにより、バルーン30と体内の管腔壁とが接する面積を大きくすることができる。そのため、バルーン30を体内管腔に固定することが可能となり、光線力学的療法が行いやすくなる。
【0043】
バルーン30は、直管部31の近位端31pよりも近位側において直管部31に接続されている近位側テーパー部と、直管部31の遠位端31dよりも遠位側において直管部31に接続されている遠位側テーパー部とを有し、近位側テーパー部と遠位側テーパー部は直管部31から離れるに従って縮径するように形成されていることがより好ましい。バルーン30が、直管部31から離れるに従って縮径するように形成されている近位側テーパー部および遠位側テーパー部を有していることにより、バルーン30の強度を高めることができ、バルーン30に力が加わった際にバルーン30が破損しにくくすることができる。また、バルーン30をシャフトに巻き付けた際に生じる段差を小さくすることができるため、バルーン30を体内の管腔内に挿通させやすくなる。バルーン30は流体が供給されることにより近位側テーパー部から直管部31を経て、遠位側テーパー部が膨らむように構成することができる。なお、本発明においては、膨張可能な部分をバルーン30と見なす。
【0044】
バルーン30を構成する材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルエラストマー等のポリエステル系樹脂、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー等のポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー等のポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ラテックスゴム等の天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、バルーン30を構成する材料は、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂であることが好ましい。バルーン30を構成する材料がポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂であることにより、バルーン30の薄膜化や柔軟性の向上を図ることができる。
【0045】
図1に示すように、光ファイバー40は、長手方向に延在している。また、光ファイバー40は、バルーン30の内方に配置されており、第1ルーメン11の遠位端11dに接合されている。光ファイバー40は、対象組織まで光信号を送信する伝送路である。図示していないが、光ファイバー40は、近位端に設けられたコネクタ等によって半導体レーザー等の光源に接続される。光ファイバー40は、コアと、コアの径方向外方を被覆するクラッドとを有している。コアおよびクラッドを構成する材料は、例えば、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂等の合成樹脂、石英ガラス、フッ化物ガラス等のガラスを用いることができる。
【0046】
光ファイバー40は、コアの遠位部の一部にクラッドの非存在部を有していることが好ましい。クラッドの非存在部は、コアの周方向の少なくとも一部においてクラッドが存在していない部分を指し、光ファイバー40の発光エリアとなる。光ファイバー40がクラッドの非存在部を有していることにより、側面照射型であり、光線力学的療法に用いるバルーンカテーテル1を構成することができる。
【0047】
長手方向におけるクラッドの非存在部が設けられる位置は、コアの遠位部の一部であれば特に制限されないが、コアの遠位端を含む部分に設けられていることが好ましい。クラッドの非存在部がコアの遠位端を含む部分に設けられていることにより、クラッドの非存在部が形成しやすくなる。
【0048】
クラッドの非存在部は、例えば、エッチングや研磨等によってクラッドを剥離することにより形成することができる。また、やすり掛け等の方法によりクラッドの非存在部の外側表面を荒らすことがより好ましい。クラッドの非存在部の外側表面を荒らすことにより、光拡散性を向上させることができる。
【0049】
光ファイバー40を、第1ルーメン11に接合する方法としては、例えば、融着、接着剤による接着等が挙げられる。また、図示していないが、光ファイバー40は、さらに被覆材を有していてもよい。光ファイバー40が被覆材を有している場合、第1ルーメン11との接合性の観点から、被覆材を構成する材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、PET等のポリエステル系樹脂、PEEK等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエーテルポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂等の合成樹脂であることが好ましい。
【0050】
バルーンカテーテル1が光ファイバー40を有しており、光ファイバー40がバルーン30の内方に配置されていることにより、光ファイバー40から発せられた光がバルーン30の直管部31に向かいやすくなる。そのため、光ファイバー40を通じて光線力学的療法に用いる光を対象組織へ照射しやすくなり、光線力学的療法を効率的に行うことができる。
【0051】
図1に示すように、光ファイバー40の遠位端40dは、バルーン30の遠位端30dよりも遠位側にあることが好ましい。光ファイバー40の遠位端40dがバルーン30の遠位端30dよりも遠位側にあることにより、バルーンカテーテル1の遠位端部の剛性が増す。そのため、体内へバルーンカテーテル1を挿通しやすくなる。また、光ファイバー40の遠位端40dがバルーン30の遠位端30dよりも遠位側にあることにより、バルーン30の長手方向の全長にわたって光ファイバー40が存在することとなる。その結果、長手方向におけるバルーン30の直管部31の全体へ光ファイバー40を存在させることが可能となり、光線力学的療法が行いやすくなる。
【0052】
光ファイバー40の最先端は光量が弱まっており、光線力学的療法を行うにあたって光量が十分ではないことがある。バルーン30に十分な光量を供給するために、光ファイバー40の遠位端40dは、バルーン30の直管部31よりも遠位側、または、バルーン30の遠位側テーパー部よりも遠位側にあることが好ましい。光ファイバー40の遠位端40dが、バルーン30の直管部31よりも遠位側や遠位側テーパー部よりも遠位側にあることにより、光線力学療法における光の量を十分に確保することができる。また、バルーン30の直管部31には光ファイバー40から光を供給し、バルーン30のテーパー部には光を供給したくないといった場合には、被覆材を光ファイバー40上に適切に配置するなどによって所望の部位に光を照射することが可能である。
【0053】
光ファイバー40の遠位端40dは、バルーン30の遠位側テーパー部よりも遠位側にあることが好ましい。光ファイバー40の遠位端40dが、バルーン30の遠位側テーパー部よりも遠位側にあることにより、光線力学療法における光の量を十分に確保することができる。また、光ファイバー40の遠位端40dがバルーン30の遠位端30dよりも遠位側にあることにより、バルーンカテーテル1の遠位端部の剛性が増す。そのため、体内へバルーンカテーテル1を挿通しやすくなる。
【0054】
図示していないが、バルーンカテーテル1は、近位側にハンドル部を有することが好ましい。ハンドル部は、第1ルーメン11と連通する、長手方向に延在する内腔を有していることが好ましい。ハンドル部が有しており、第1ルーメン11と連通する内腔は、光ファイバー40等の挿通路として用いることができる。また、ハンドル部は、流体の注入部を備え、第2ルーメン12と連通する内腔を有していることが好ましい。ハンドル部が有しており、第2ルーメン12と連通する内腔は、バルーン30を拡張するための流体の供給および除去の経路として用いることができる。
【0055】
第2シャフト20の近位端20pは、第1シャフト10の遠位端10dに接合されていることが好ましい。つまり、第1シャフト10と第2シャフト20とが直接接合されていることが好ましい。第2シャフト20の近位端20pが第1シャフト10の遠位端10dに接合されていることにより、第1シャフト10へ第2シャフト20を接合しやすくなる。その結果、バルーンカテーテル1の製造の効率を高めることができる。
【0056】
次に、本発明の第2のバルーンカテーテルについて説明する。なお、第2のバルーンカテーテルの説明において、上記の説明と重複する部分は説明を省略する。
【0057】
図3は、本発明の一実施の形態における第2のバルーンカテーテル1の長手方向に沿った断面図であり、
図4は、
図3に示したバルーンカテーテル1の長手方向に垂直なIV-IV断面図である。
図3および
図4に示すように、バルーンカテーテル1の第1シャフト10は、第1ルーメン11を有する内筒部50と、第2ルーメン12とを備えており、内筒部50の外表面の少なくとも一部は、第1シャフト10の内表面に固定されている。
【0058】
第1シャフト10が第1ルーメン11を有する内筒部50と第2ルーメン12とを備え、内筒部50の外表面の少なくとも一部が第1シャフト10の内表面に固定されており、光ファイバー40が内筒部50の遠位端50dに接合されており、バルーン30の近位端30pが第2シャフト20に接合されており、バルーン30の遠位端30dが光ファイバー40に接合されていることにより、バルーン30の近位端30pが第2シャフト20を介して第1シャフト10に接続されるとともに、バルーン30の遠位端30dが光ファイバー40を介して第1シャフト10に接続される構造となる。そのため、バルーンカテーテル1を内視鏡等から抜去する際に第1シャフト10を手元側へ引く力が、バルーン30の遠位端30dおよび近位端30pの両方に伝わりやすく、バルーンカテーテル1の抜去性を向上させることができる。なお、バルーン30の近位端30pは、第2シャフト20の遠位端20dに接合されていることが好ましく、バルーン30の遠位端30dは、光ファイバー40の遠位端40dに接合されていることが好ましい。
【0059】
また、光ファイバー40が内筒部50の遠位端50dに接合されており、バルーン30の近位端30pが第2シャフト20に接合されており、バルーン30の遠位端30dが光ファイバー40に接合されていることにより、バルーンカテーテル1の長手方向において、バルーン30の遠位端30dから第1ルーメン11の遠位端11dまでの間は光ファイバー40が他物に固定されず、光ファイバー40がバルーンカテーテル1の屈曲状態に合わせて自由に位置を変えたり曲がったりすることが可能となる。そのため、対象組織に光を照射する光線力学的療法を行う際に、光ファイバー40を長手方向に垂直なバルーン30の断面の中心部に配することができ、光線力学的療法が行いやすくなる。
【0060】
図3に示すように、内筒部50は、長手方向に延在している。内筒部50は、内腔に光ファイバー40が挿通されている。
【0061】
内筒部50の外表面の少なくとも一部を第1シャフト10の内表面に固定する方法としては、例えば、溶着、接着、他部品を介した固定等が挙げられる。
【0062】
図1および
図3に示すように、長手方向における第2シャフト20の長さL1は、第2シャフト20の最小外径の10倍以上であることが好ましい。長手方向における第2シャフト20の長さL1とは、第2シャフト20の遠位端20dと、第2シャフト20の近位端20pとの長手方向の距離を示す。第2シャフト20の長さL1が第2シャフト20の最小外径の10倍以上であることにより、第2シャフト20の長さL1を十分なものとすることができ、光ファイバー40に接合されているバルーン30の遠位端30dから、光ファイバー40に接合されている第1ルーメン11の遠位端11dまでの距離を離すことができる。つまり、光ファイバー40が他物に接合されている2つの箇所の距離を離すことができ、この光ファイバー40が他物に接合されていない部分において光ファイバー40がバルーンカテーテル1の屈曲状態に合わせて自由に位置を変えることや曲がることが可能となる。その結果、長手方向に垂直なバルーン30の断面の中心部に光ファイバー40が位置し、光線力学的療法を効率的に行うことができる。
【0063】
長手方向における第2シャフト20の長さL1は、第2シャフト20の最小外径の10倍以上であることが好ましく、第2シャフト20の最小外径の11倍以上であることがより好ましく、第2シャフト20の最小外径の12倍以上であることがさらに好ましい。第2シャフト20の長さL1と第2シャフト20の最小外径との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、光ファイバー40に接合されているバルーン30の遠位端30dから光ファイバー40に接合されている第1ルーメン11の遠位端11dまでの距離を十分に離すことができる。また、第2シャフト20の長さL1と第2シャフト20の最小外径との比率の上限値は、例えば、600倍以下、400倍以下、200倍以下とすることができる。
【0064】
図4に示すように、第2シャフト20の近位端20pでの長手方向に垂直な断面において、第2シャフト20の外形の中心軸C20の位置と、光ファイバー40の外形の中心軸C40の位置とが異なっていることが好ましい。第2シャフト20の外形の中心軸C20の位置と、光ファイバー40の外形の中心軸C40の位置とが異なっていることにより、第2シャフト20およびバルーン30のそれぞれの内腔において、光ファイバー40が自由に位置を変えたり曲がったりすることが行いやすくなる。そのため、屈曲した体内管腔にバルーンカテーテル1を挿入した場合に、バルーンカテーテル1の屈曲状態に合わせて光ファイバー40が動きやすく、長手方向に垂直なバルーン30の断面の中心部に光ファイバー40が位置しやすくなる。その結果、光線力学的療法が行いやすくなる。
【0065】
図4に示すように、第2シャフト20の長手方向に垂直な断面において、第2シャフト20の内表面と光ファイバー40の外表面とで形成される間隙部分の断面積は、第2シャフト20の内腔の断面積の40%以上であることが好ましい。第2シャフト20の内表面と光ファイバー40の外表面とで形成される間隙部分の断面積が、第2シャフト20の内腔の断面積の40%以上であることにより、第2シャフト20内において光ファイバー40が自由に動くことができる。そのため、第2シャフト20が屈曲した状態であっても、光ファイバー40が長手方向に垂直なバルーン30の断面での中心部に位置しやすくなり、光線力学的療法が行いやすくなる。
【0066】
第2シャフト20の長手方向に垂直な断面において、第2シャフト20の内表面と光ファイバー40の外表面とで形成される間隙部分の断面積は、第2シャフト20の内腔の断面積の40%以上であることが好ましく、45%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。第2シャフト20の内表面と光ファイバー40の外表面とで形成される間隙部分の断面積と、第2シャフト20の内腔の断面積との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、第2シャフト20の内腔にて光ファイバー40が自由に動きやすくなる。また、第2シャフト20の内表面と光ファイバー40の外表面とで形成される間隙部分の断面積と、第2シャフト20の内腔の断面積との比率の上限値は、例えば、99%以下、97%以下、95%以下とすることができる。
【0067】
図5は、本発明の別の実施の形態におけるバルーンカテーテル1の第2シャフト20での長手方向に垂直な断面図である。
図5に示すように、第2シャフト20の内表面に、光ファイバー40の外表面と接触する突起70を有していることが好ましい。第2シャフト20の内表面に突起70を有していることにより、突起70が第2シャフト20内での光ファイバー40の位置を定めることが可能となる。その結果、光ファイバー40の位置がバルーン30の中心軸から大きくずれないように規制することができる。なお、突起70は、光ファイバー40に接合されていないものである。
【0068】
突起70は、第2シャフト20の遠位端部の内表面に配置されていることが好ましい。光ファイバー40が第2シャフト20の長手方向に垂直な断面での中心部に位置するように光ファイバー40の外表面と接触する突起70を第2シャフト20の遠位端部の内表面に配置することにより、第2シャフト20の遠位端部において光ファイバー40の位置が第2シャフト20の中心部に位置しやすくなる。その結果、第2シャフト20の遠位側に配置されており、第2シャフト20に接合されているバルーン30の内腔においても光ファイバー40の位置がバルーン30の中心部に配されやすくなり、光線力学的療法が行いやすいバルーンカテーテル1とすることができる。
【0069】
第2シャフト20の内表面に配置されている突起70の数は、複数であることが好ましい。突起70の数が複数であることにより、第2シャフト20内での光ファイバー40の位置を突起70によって規制しやすくなる。
【0070】
図1および
図3に示すように、光ファイバー40の遠位側に先端チップ60が配置されており、先端チップ60の遠位端60dは、バルーン30の遠位端30dよりも遠位側にあることが好ましい。先端チップ60の遠位端60dがバルーン30の遠位端30dよりも遠位側にあることにより、バルーンカテーテル1の遠位端部の剛性が高まる。その結果、バルーンカテーテル1の挿入性を高めることが可能となる。
【0071】
光ファイバー40の遠位側に先端チップ60が設けられている場合、先端チップ60の色は、光ファイバー40の色とは異なっていることが好ましい。先端チップ60の色と光ファイバー40の色とが異なっているとは、JIS Z8721で定める色相、明度、および彩度の少なくとも1つが異なっていることを指す。先端チップ60の色が光ファイバー40の色と異なっていることにより、内視鏡下において先端チップ60が視認しやすくなる。その結果、体内管腔において先端チップ60やバルーン30の位置が確認しやすくなる。
【0072】
以上のように、本発明のバルーンカテーテルは、第1ルーメンおよび第2ルーメンを備える第1シャフトと、第1シャフトの遠位側に配置されている第2シャフトと、第2シャフトの遠位側に配置されているバルーンと、バルーンの内方に配置されている光ファイバーと、を有しており、第1シャフトを構成する材料は、樹脂であって、長手方向に垂直な断面において、第1シャフトを形成する樹脂の断面積は、第1ルーメンと第2ルーメンの断面積が大きいいずれか一方の断面積よりも大きく、光ファイバーは、第1ルーメンの遠位端に接合されており、バルーンの近位端は、第2シャフトに接合されており、バルーンの遠位端は、光ファイバーに接合されている。長手方向に垂直な断面において第1シャフトを形成する樹脂の断面積は第1ルーメンと第2ルーメンの断面積が大きいいずれか一方の断面積よりも大きく、光ファイバーは第1ルーメンの遠位端に接合されており、バルーンの近位端は第2シャフトに接合されており、バルーンの遠位端は光ファイバーに接合されていることにより、バルーンカテーテルに加えられた力がバルーンの近位端と遠位端の両方に伝わりやすい。そのため、内視鏡等からのバルーンカテーテルの抜去性を向上させることができる。また、光ファイバーがバルーンの近位端ではなく、バルーンの近位端よりも近位側にある第1ルーメンの遠位端に接合されるため、長手方向において、バルーンの遠位端から第1ルーメンの遠位端までの間は光ファイバーが他物に固定されておらず、自由に動くことが可能である。その結果、対象組織に光を照射して光線力学的療法を行う際に、バルーンカテーテルのシャフトが屈曲した状態やバルーンが圧縮された状態であっても、長手方向に垂直なバルーンの断面の中心部に光ファイバーを配することができ、光線力学的療法を行いやすくすることができる。
【0073】
また、本発明の第2のバルーンカテーテルは、第1ルーメンを有する内筒部と、第2ルーメンと、を備える第1シャフトと、第1シャフトの遠位側に配置されている第2シャフトと、第2シャフトの遠位側に配置されているバルーンと、バルーンの内方に配置されている光ファイバーと、を有しており、内筒部の外表面の少なくとも一部は、第1シャフトの内表面に固定されており、光ファイバーは、内筒部の遠位端に接合されており、バルーンの近位端は、第2シャフトに接合されており、バルーンの遠位端は、光ファイバーに接合されている。第1シャフトが第1ルーメンを有する内筒部と第2ルーメンとを備え、内筒部の外表面の少なくとも一部は第1シャフトの内表面に固定されており、光ファイバーは内筒部の遠位端に接合されており、バルーンの近位端は第2シャフトに接合されており、バルーンの遠位端は光ファイバーに接合されていることにより、内視鏡等からバルーンカテーテルを抜去する際にバルーンカテーテルを引く力がバルーンの近位端および遠位端に伝わりやすく、バルーンカテーテルを内視鏡等から抜去しやすくなる。また、光ファイバーが第1ルーメンの遠位端に接合されることより、長手方向におけるバルーンの遠位端から第1ルーメンの遠位端までの間は光ファイバーが自由に動くことができる。そのため、バルーンカテーテルのシャフトが屈曲した状態やバルーンが圧縮された状態であっても、長手方向に垂直なバルーンの断面の中心部に光ファイバーを配することが可能となる。
【0074】
本願は、2020年3月6日に出願された日本国特許出願第2020-039082号に基づく優先権の利益を主張するものである。2020年3月6日に出願された日本国特許出願第2020-039082号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【符号の説明】
【0075】
1:バルーンカテーテル
10:第1シャフト
10d:第1シャフトの遠位端
11:第1ルーメン
11d:第1ルーメンの遠位端
11p:第1ルーメンの近位端
12:第2ルーメン
20:第2シャフト
20d:第2シャフトの遠位端
20p:第2シャフトの近位端
30:バルーン
30d:バルーンの遠位端
30p:バルーンの近位端
31:直管部
31d:直管部の遠位端
31p:直管部の近位端
40:光ファイバー
40d:光ファイバーの遠位端
50:内筒部
50d:内筒部の遠位端
60:先端チップ
60d:先端チップの遠位端
70:突起
L1:第2シャフトの長さ
C20:第2シャフトの外形の中心軸
C40:光ファイバーの外形の中心軸