(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】電極用触媒の製造システムおよび製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/88 20060101AFI20241217BHJP
B01D 25/12 20060101ALI20241217BHJP
B01J 23/42 20060101ALI20241217BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20241217BHJP
B01J 37/06 20060101ALI20241217BHJP
B01J 37/14 20060101ALI20241217BHJP
F26B 11/16 20060101ALI20241217BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20241217BHJP
【FI】
H01M4/88 K
B01D25/12 D
B01D25/12 G
B01J23/42 M
B01J37/04 101
B01J37/04 102
B01J37/06
B01J37/14
F26B11/16
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2022510565
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2021012069
(87)【国際公開番号】W WO2021193664
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2024-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2020050941
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020050942
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020161815
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000228198
【氏名又は名称】エヌ・イーケムキャット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西別当 誠
(72)【発明者】
【氏名】関 安宏
(72)【発明者】
【氏名】竹野谷 明伸
(72)【発明者】
【氏名】永森 聖崇
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 寛
(72)【発明者】
【氏名】椎名 博紀
(72)【発明者】
【氏名】田村 美絵
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-293768(JP,A)
【文献】特開2007-214130(JP,A)
【文献】特開2016-221477(JP,A)
【文献】特開2007-203284(JP,A)
【文献】特開2012-220041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86- 4/98
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
B01D 23/00-35/04
B01D 35/08-37/08
B01J 21/00-38/74
F26B 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極用触媒の原料である電極用触媒前駆体を製造する電極用触媒前駆体製造装置と、
前記電極用触媒前駆体を洗浄する洗浄装置と、
前記洗浄装置により洗浄された前記電極用触媒前駆体を、螺旋リボン回転翼を有する攪拌羽根を備えた攪拌処理装置により乾燥する乾燥装置とを有する、電極用触媒を製造するための製造システムであって、
前記乾燥装置は、
前記電極用触媒前駆体を前記攪拌処理装置の容器本体に導入する導入工程と、
前記容器本体を加熱すると共に減圧し、前記容器本体内の前記電極用触媒前駆体を前記攪拌羽根により攪拌混合することにより、前記電極用触媒前駆体を乾燥させる乾燥工程と、
前記容器本体を冷却すると共に減圧し、前記容器本体内の前記電極用触媒前駆体を前記攪拌羽根により攪拌混合することにより、前記電極用触媒前駆体を冷却させる冷却工程と、
前記容器本体内に空気を供給し、前記電極用触媒前駆体を徐酸化処理する徐酸化工程と、
前記容器本体内の前記電極用触媒前駆体を取り出す取出し工程とを実行する手段を備える電極用触媒の製造システム。
【請求項2】
前記攪拌羽根は、駆動装置により回転することで当該攪拌羽根を回転させる回転主軸と、前記容器本体内で前記電極用触媒前駆体を攪拌混合する前記螺旋リボン回転翼と、前記回転主軸および前記螺旋リボン回転翼と接続する回転翼支柱とを備え、
前記回転主軸および前記回転翼支柱は中空の管状に形成され、
前記回転翼支柱は、先端部の下側にガス噴出孔が設けられ、
前記回転主軸は、ガスの流路に接続されることを特徴とする請求項1に記載の電極用触媒の製造システム。
【請求項3】
電極用触媒の原料である電極用触媒前駆体を製造する電極用触媒前駆体製造ステップと、
前記電極用触媒前駆体を洗浄する洗浄ステップと、
前記洗浄ステップで洗浄された洗浄後の前記電極用触媒前駆体を、螺旋リボン回転翼を有する攪拌羽根を備えた攪拌処理装置により乾燥する乾燥ステップとを含む、電極用触媒を製造するための製造方法であって、
前記乾燥ステップは、
前記
攪拌処理装置の容器本体を加熱すると共に減圧し、前記容器本体内の前記電極用触媒前駆体を前記攪拌羽根により攪拌混合することにより、前記電極用触媒前駆体を乾燥させる乾燥工程と、
前記容器本体を冷却すると共に減圧し、前記容器本体内の前記電極用触媒前駆体を前記攪拌羽根により攪拌混合することにより、前記電極用触媒前駆体を冷却させる冷却工程と、
前記容器本体内に空気を供給し、前記電極用触媒前駆体を徐酸化処理する徐酸化工程とを含む電極用触媒の製造方法。
【請求項4】
前記容器本体内の前記電極用触媒前駆体を取り出す取出し工程を更に含み、
前記取出し工程は、前記螺旋リボン回転翼を支持する回転翼支柱の先端に設けられたガス噴出孔から下向きにガスを噴出させるスクレーパー工程を含む請求項3に記載の電極用触媒の製造方法。
【請求項5】
前記乾燥ステップを経て得られる前記電極用触媒前駆体の物性分析を実施する第1分析工程と、
前記乾燥ステップを経て得られる前記電極用触媒前駆体とイオン交換水とを混合して再びスラリーを調製するリスラリーステップと、
前記リスラリーステップを経て得られる前記スラリーを乾燥させ、所定の範囲の含水率に調節された複数の固体状の触媒ケーキを調製する触媒ケーキ調製ステップと、
を更に含む請求項3に記載の電極用触媒の製造方法。
【請求項6】
前記触媒ケーキ調製ステップにおいて使用する撹拌式乾燥装置が、前記攪拌処理装置である請求項5に記載の電極用触媒の製造方法。
【請求項7】
前記リスラリーステップにおいて撹拌装置を具備する反応器を使用する請求項5又は6に記載の電極用触媒の製造方法。
【請求項8】
前記反応器が前記攪拌処理装置である請求項7に記載の電極用触媒の製造方法。
【請求項9】
前記触媒ケーキの含水率が80wt%未満である請求項5~8の何れか1項に記載の電極用触媒の製造方法。
【請求項10】
前記触媒ケーキ調製ステップを経て得られる前記触媒ケーキの含水率を測定する第2分析工程を更に含む請求項5~9の何れか1項に記載の電極用触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極用触媒の製造システムおよび製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:以下、必要に応じて「PEFC」という)は、作動温度が室温から80℃程度である。また、PEFCは、燃料電池本体を構成する部材に安価な汎用プラスチック等を採用することができるので、軽量化が可能となる。さらに、PEFCは、固体高分子電解質膜の薄膜化が可能であり、電気抵抗を小さくすることができ、発電ロスを比較的容易に少なくすることができる。このようにPEFCは、多くの利点を有しているので、燃料電池自動車、家庭用コジェネレーションシステム等への応用が可能となっている。
【0003】
PEFC用の電極用触媒としては、例えば担体であるカーボンに電極用触媒成分である白金(Pt)又は白金(Pt)合金が担持された電極用触媒が知られている。こうした電極用触媒を燃料電池用の電極用触媒として使用する場合、電極用触媒に、その原料に由来する不純物やその製造設備から混入する不純物の含有量が多いと、十分な触媒活性を得ることができなかったり、触媒層の腐食が発生し、燃料電池の寿命が短縮してしまったりする。そのため、電極用触媒の不純物の含有量、特に塩素含有量を低く抑えることが好ましい。ここで、不純物としては、ハロゲンに属する化学種(イオンやその塩など)、有機物(有機酸、その塩、有機酸の縮合物)などが挙げられる。
【0004】
こうした理由から、電極用触媒の原料である電極用触媒前駆体の製造後に、塩素を除去する工程が行われる場合があり、その場合は、洗浄工程後の電極用触媒前駆体を乾燥する工程が行われる。例えば、特許文献1および2には、洗浄後の乾燥方法に関して、棚式乾燥機、回転乾燥機、気流乾燥機、噴霧乾燥機 撹拌乾燥機、凍結乾燥機などを使用することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-158674号公報
【文献】特開2014-42910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、棚式乾燥機を用いて電極用触媒前駆体を乾燥する場合は、乾燥を効率的に行うために、湿った電極用触媒前駆体の塊を細かく解砕してから棚式乾燥機に入れて乾燥し、乾燥後も、乾燥した電極用触媒前駆体の塊を細かく粉砕する工程が行われることがあった。この従来の電極用触媒前駆体の乾燥方法では、洗浄後の湿った電極用触媒前駆体を解砕する専用の解砕機と、乾燥させた電極用触媒前駆体を粉砕するハンマーミルとを必要とし、解砕機から乾燥機、乾燥機からハンマーミルへと、電極用触媒前駆体を移すための作業が必要とされていた。しかし電極用触媒前駆体を構成する白金は高い活性を有し、急激に空気中の酸素に触れると燃焼する恐れがあるため、慎重な作業が要求されていた。また棚式乾燥機で電極用触媒前駆体を乾燥する方法では、電極用触媒前駆体を静置して輻射伝熱により乾燥する方式のため乾燥速度が遅く長時間を費やしてしまうという問題もあった。特許文献1および2では、燃料電池用触媒の乾燥に撹拌乾燥機を用いることができることが記載されているが、撹拌乾燥機の具体的構成、運転条件の記載はない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、作業者による電極用触媒前駆体を移すための作業をなくし、且つ、電極用触媒前駆体の乾燥時間を短縮することで、電極用触媒を製造するための手間と時間を大幅に低減することができる電極用触媒の製造システムおよび製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる課題を解決するため、
電極用触媒の原料である電極用触媒前駆体を製造する電極用触媒前駆体製造装置と、
前記電極用触媒前駆体を洗浄する洗浄装置と、
前記洗浄装置により洗浄された前記電極用触媒前駆体を、螺旋リボン回転翼を有する攪拌羽根を備えた攪拌処理装置により乾燥する乾燥装置とを有する、電極用触媒を製造するための製造システムであって、
前記乾燥装置は、
前記電極用触媒前駆体を前記攪拌処理装置の容器本体に導入する導入工程と、
前記容器本体を加熱すると共に減圧し、前記容器本体内の前記電極用触媒前駆体を前記攪拌羽根により攪拌混合することにより、前記電極用触媒前駆体を乾燥させる乾燥工程と、
前記容器本体を冷却すると共に減圧し、前記容器本体内の前記電極用触媒前駆体を前記攪拌羽根により攪拌混合することにより、前記電極用触媒前駆体を冷却させる冷却工程と、
前記容器本体内に空気を供給し、前記電極用触媒前駆体を徐酸化処理する徐酸化工程と、
前記容器本体内の前記電極用触媒前駆体を取り出す取出し工程とを実行する手段を備える電極用触媒の製造システムを提供する。
【0009】
前記電極用触媒の製造システムは、
前記攪拌羽根は、駆動装置により回転することで当該攪拌羽根を回転させる回転主軸と、前記容器本体内で前記電極用触媒前駆体を攪拌混合する前記螺旋リボン回転翼と、前記回転主軸および前記螺旋リボン回転翼と接続する回転翼支柱とを備え、
前記回転主軸および前記回転翼支柱は中空の管状に形成され、
前記回転翼支柱は、先端部の下側にガス噴出孔が設けられ、
前記回転主軸は、ガスの流路に接続される場合がある。
【0010】
また、本発明は、
電極用触媒の原料である電極用触媒前駆体を製造する電極用触媒前駆体製造ステップと、
前記電極用触媒前駆体を洗浄する洗浄ステップと、
前記洗浄ステップで洗浄された洗浄後の前記電極用触媒前駆体を、螺旋リボン回転翼を有する攪拌羽根を備えた攪拌処理装置により乾燥する乾燥ステップとを含む、電極用触媒を製造するための製造方法であって、
前記乾燥ステップは、
前記攪拌処理装置の容器本体を加熱すると共に減圧し、前記容器本体内の前記電極用触媒前駆体を前記攪拌羽根により攪拌混合することにより、前記電極用触媒前駆体を乾燥させる乾燥工程と、
前記容器本体を冷却すると共に減圧し、前記容器本体内の前記電極用触媒前駆体を前記攪拌羽根により攪拌混合することにより、前記電極用触媒前駆体を冷却させる冷却工程と、
前記容器本体内に空気を供給し、前記電極用触媒前駆体を徐酸化処理する徐酸化工程とを含む電極用触媒の製造方法を提供する。
【0011】
前記電極用触媒の製造方法において、
前記容器本体内の前記電極用触媒前駆体を取り出す取出し工程を更に含み、
前記取出し工程は、前記螺旋リボン回転翼を支持する回転翼支柱の先端に設けられたガス噴出孔から下向きにガスを噴出させるスクレーパー工程を含む場合がある。
【0012】
前記電極用触媒の製造方法において、
前記乾燥ステップを経て得られる前記電極用触媒前駆体の物性分析を実施する第1分析工程と、
前記乾燥ステップを経て得られる前記電極用触媒前駆体とイオン交換水とを混合して再びスラリーを調製するリスラリーステップと、
前記リスラリーステップを経て得られる前記スラリーを乾燥させ、所定の範囲の含水率に調節された複数の固体状の触媒ケーキを調製する触媒ケーキ調製ステップと、
を更に含む場合がある。
【0013】
前記電極用触媒の製造方法において、前記触媒ケーキ調製ステップにおいて使用する撹拌式乾燥装置が、前記攪拌処理装置である場合がある。
【0014】
前記電極用触媒の製造方法において、前記リスラリーステップにおいて撹拌装置を具備する反応器を使用する場合がある。
【0015】
前記電極用触媒の製造方法において、前記反応器が前記攪拌処理装置である場合がある。
【0016】
前記電極用触媒の製造方法において、前記触媒ケーキの含水率が80wt%未満である場合がある。
【0017】
前記電極用触媒の製造方法において、前記触媒ケーキ調製ステップを経て得られる前記触媒ケーキの含水率を測定する第2分析工程を更に含む場合がある。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電極用触媒の製造システムおよび製造方法によれば、作業者による電極用触媒前駆体を移すための作業をなくし、且つ、電極用触媒前駆体の乾燥時間を短縮することで、ハロゲン含有量、特に塩素含有量を低く抑えた電極用触媒を製造するための手間と時間を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の電極用触媒の製造システムの好適な一実施形態を示すブロック図である。
【
図2】本発明の電極用触媒の製造システムおよび製造方法の洗浄装置の好適な一実施形態を示す側面図である。
【
図3】本発明の電極用触媒の製造システムおよび製造方法の閉板工程における脱水装置の動作状態の好適な一実施形態を示す斜視図である。
【
図4】本発明の電極用触媒の製造システムおよび製造方法の圧入工程における脱水装置の動作状態の好適な一実施形態を示す斜視図である。
【
図5】本発明の電極用触媒の製造システムおよび製造方法の正洗浄工程における脱水装置の動作状態の好適な一実施形態を示す斜視図である。
【
図6】本発明の電極用触媒の製造システムおよび製造方法の逆洗浄工程における脱水装置の動作状態の好適な一実施形態を示す斜視図である。
【
図7】本発明の電極用触媒の製造システムおよび製造方法の開板工程における脱水装置の動作状態の好適な一実施形態を示す斜視図である。
【
図8】本発明の電極用触媒の製造システムおよび製造方法のケーキ剥離工程における脱水装置の動作状態の好適な一実施形態を示す斜視図である。
【
図9】本発明の電極用触媒の製造システムおよび製造方法のろ布洗浄工程における脱水装置の動作状態の好適な一実施形態を示す斜視図である。
【
図10】本発明の電極用触媒の製造システムおよび製造方法の圧搾工程における脱水装置の動作状態の好適な一実施形態を示す斜視図である。
【
図11】本発明の電極用触媒の製造システムおよび製造方法の乾燥装置の好適な一実施形態を示す概略図である。
【
図12】本発明の電極用触媒の製造システムおよび製造方法の乾燥装置の攪拌羽根の好適な一実施形態を示す斜視図である。
【
図13】本発明の電極用触媒の製造システムおよび製造方法の乾燥ステップにおける乾燥装置の動作状態の好適な一実施形態を示す概略図である。
【
図14】本発明の電極用触媒の製造システムおよび製造方法で製造できる電極用触媒(コア・シェル触媒)の構造の一例を示す模式断面図である。
【
図15】本発明の電極用触媒の製造システムおよび製造方法で製造できる電極用触媒(コア・シェル触媒)の構造の別の一例を示す模式断面図である。
【
図16】本発明の電極用触媒の製造システムおよび製造方法で製造できる電極用触媒(コア・シェル触媒)の構造の別の一例を示す模式断面図である。
【
図17】本発明の電極用触媒の製造システムおよび製造方法で製造できる電極用触媒(コア・シェル触媒)の構造の別の一例を示す模式断面図である。
【
図18】本発明の電極用触媒の製造方法の流れの好適な一実施形態を示すフロー図である。
【
図19】本発明の電極用触媒の製造方法の洗浄ステップの流れの好適な一実施形態を示すフロー図である。
【
図20】本発明の電極用触媒の製造方法の乾燥ステップの流れの好適な一実施形態を示すフロー図である。
【
図21】本発明の電極用触媒の製造システムの好適なさらなる実施形態を示すブロック図である。
【
図22】本発明の電極用触媒の製造方法のリスラリーステップの流れの好適な一実施形態を示すフロー図である。
【
図23】本発明の電極用触媒の製造方法のリスラリーステップの混合試験で使用した滴下漏斗の模式図である。
【
図24】本発明の乾燥工程における、容器本体の加熱温度と、容器本体の槽内温度と、電極用触媒前駆体の温度と、ケーキの含水率と、の経時的な変化を示すグラフである。
【
図25】本発明の乾燥工程における、容器本体の加熱温度と、容器本体の槽内温度と、電極用触媒前駆体の温度と、ケーキの含水率と、の経時的な変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の電極用触媒の製造システムおよび製造方法の好ましい実施形態について説明する。
【実施例1】
【0021】
<電極用触媒の製造システム>
図1は、第1の実施形態に係る電極用触媒の製造システムの概略を示すブロック図である。電極用触媒の製造システム10は、電極用触媒1(
図18を参照)の原料である電極用触媒前駆体を製造する電極用触媒前駆体製造装置12と、電極用触媒前駆体をフィルタープレスにより洗浄する洗浄装置13と、洗浄装置13により洗浄された洗浄後の電極用触媒前駆体41(
図19を参照)を、螺旋リボン回転翼を有する攪拌羽根を備えた攪拌処理装置により乾燥する乾燥装置14とを有する。
【0022】
(電極用触媒前駆体製造装置)
電極用触媒前駆体製造装置12は、電極用触媒1の原料である電極用触媒前駆体を製造する。電極用触媒前駆体製造装置12は、電極用触媒前駆体を製造するための反応工程を実行する反応工程実行手段21を含む。反応工程では、電極用触媒1の原料である電極用触媒前駆体が、電極用触媒1の触媒成分(コア部4、シェル部5)を担体2に担持させることにより製造される(
図14を参照)。電極用触媒前駆体の製造方法は、担体2に電極用触媒1の触媒成分を担持させることができる方法であれば、特に制限されるものではない。例えば、担体2に電極用触媒1の触媒成分を含有する溶液を接触させ、担体2に触媒成分を含浸させる含浸法、電極用触媒1の触媒成分を含有する溶液に還元剤を投入して行う液相還元法、アンダーポテンシャル析出(UPD)法等の電気化学的析出法、化学還元法、吸着水素による還元析出法、合金触媒の表面浸出法、置換めっき法、スパッタリング法、真空蒸着法等を採用した製造方法を例示することができる。
【0023】
(洗浄装置)
洗浄装置13は、上記の電極用前駆体製造装置12で製造された電極用触媒前駆体をフィルタープレスにより洗浄する。当該洗浄装置13では、電極用触媒前駆体の洗浄とともにろ過および脱水も行われる。
【0024】
図2は、フィルタープレスを行う洗浄装置13の一例を示すものである。同図に示す洗浄装置13は、フロントフレーム101とリアフレーム102に橋架したガイドレール103上に、複数の脱水装置104が水平方向に並列に配置されている。これらの脱水装置104は、ガイドレール103上を水平方向に移動し得るように支持される。リアフレーム102には例えば電動シリンダ105が支架し、電動シリンダ105の駆動力で往復移動する押圧部材106により脱水装置104が締め付けられる。このようなフィルタープレスの洗浄装置13は従来公知であり、例えば特許第5950207号公報に記載されたものが知られている。特に脱水装置104については、例えば特許第5327000号公報に記載されたものが知られている。
【0025】
フィルタープレスによる洗浄の流れの概略を説明する(
図3~
図10を参照)。まず閉板したろ板111,111’間のろ室112に原液30を供給すると、原液30がろ布113を通過してろ過され、ろ液42が外部に排出される。ろ布113で捕捉された固形物はケーキ層を形成しながら脱水される。脱水終了後、電動シリンダ105を収縮して複数のろ板111,111’を一斉に開板すると同時に、ろ布113を下降走行させながら、脱水されたケーキ40を排出する。
【0026】
洗浄装置13は、
図1のブロック図に示すように、閉板工程と、圧入工程と、正洗浄工程と、逆洗浄工程と、開板工程と、ケーキ剥離工程と、ろ布洗浄工程とをそれぞれ実行する手段である、閉板工程実行手段31と、圧入工程実行手段32と、正洗浄工程実行手段33と、逆洗浄工程実行手段34と、開板工程実行手段35と、ケーキ剥離工程実行手段36と、ろ布洗浄工程実行手段37とを備える。後述する
図19の電極用触媒1の製造方法のフロー図にも示す各工程S21~S27の構成について以下に説明する。
【0027】
[閉板工程]
閉板工程S21は、ろ板111,111’を締め付けてろ室112を形成する工程であり、閉板工程実行手段31により実行される。
図3は、
図2の洗浄装置13における1つの脱水装置104を抜き出した図であり、閉板工程S21における動作状態の好適な一実施形態を示す。閉板工程実行手段31は、電動シリンダ105を駆動して押圧部材106をフロントフレーム101側に移動させることにより、脱水装置104の2枚のろ板111,111’を接近させて締め付け、ろ室112を形成する。
【0028】
[圧入工程]
圧入工程S22は、電極用触媒前駆体を含む液(原液)30を原液供給管114からろ室112に圧入してろ過し、ろ液42をろ液排出口115,115’から排出する工程であり、圧入工程実行手段32により実行される。
図4は、
図2の洗浄装置13における1つの脱水装置104を抜き出した図であり、圧入工程S22における動作状態の好適な一実施形態を示す。圧入工程実行手段32により、電極用触媒前駆体を含む液30を原液供給管114からろ室112に圧入すると、電極用触媒前駆体を含む液30の水分は、ろ布113を介してろ過床116にしみだし、ろ液排出口115,115’から外部に排出される。これにより、ろ室112に圧入された電極用触媒前駆体を含む液30はろ過される。すなわち、電極用触媒前駆体を含む液30中の固形成分は電極用触媒前駆体を含むケーキ40としてろ室112に残留し、電極用触媒前駆体を含む液30の水分はろ液42として外部に排出される。
【0029】
また、この圧入工程S22においては、電極用触媒前駆体を含むケーキ40について、予め実験的に決定された厚さの範囲となるように形成する。ケーキ40の厚さは、使用する電極用触媒前駆体に対して要求される洗浄度合と洗浄時間とを考慮して予め実験的に決定される。
【0030】
ここで、使用する電極触媒が、担体として導電性カーボンを使用する場合、圧入工程S22時のケーキ40の厚さTは5~10mmに調整されていることが好ましい。ケーキ40の厚さTが10mm以下であると後述する正洗浄工程および/または逆洗浄工程の洗浄時間を調節することにより比較的容易に十分な洗浄効果を得ることができる。ケーキ40の厚さTが10mmを超えると、後述する正洗浄工程および/または逆洗浄工程の洗浄時間を長くしても、十分な洗浄効果が得られない傾向が大きくなる。
【0031】
また、ケーキ40の厚さTが5mm以上とするとケーキに亀裂が形成されにくくでき、洗浄水がケーキの上流の側の面からケーキの下流側の面に向けて当該ケーキ内を通過せずに流通してしまうパスが形成されることを防止できる傾向が大きくなる。
【0032】
[正洗浄工程]
正洗浄工程S23は、洗浄水43を原液供給管114からろ室112に供給して電極用触媒前駆体を含むケーキ40の中を通過させた後にろ液排出口115,115’から排出させる工程であり、正洗浄工程実行手段33により実行される。
図5は、
図2の洗浄装置13における1つの脱水装置104を抜き出した図であり、正洗浄工程S23における動作状態の好適な一実施形態を示す。正洗浄工程実行手段33により、原液供給管114からろ液排出口115,115’に向けて洗浄水43を流し、圧入工程S22でろ室112に残留した電極用触媒前駆体を含むケーキ40を洗浄する。これにより、JIS規格試験法(JIS K0522)により測定されるろ液の電気伝導率ρを下げ、電極用触媒前駆体のハロゲン含有量、特に塩素含有量を低減することができる。
【0033】
正洗浄工程S23では、洗浄中に、ろ液の電気伝導率ρが所定の値以下になった時点で、洗浄水43の温度を切り替えることが好ましい。例えば、ろ液の電気伝導率ρが所定の値以下になった時点で洗浄水43を常温水(例えば23℃)から加温水(例えば70℃)に切り替えることができる。前記ろ液の電気伝導率ρの所定の値は、20~40μS/cmの範囲から選択される値とすることが好ましい。常温水の温度は、20~25℃とすることが好ましい。加温水の温度は60~80℃とすることが好ましい。
【0034】
[逆洗浄工程]
逆洗浄工程S24は、洗浄水43をろ液排出口115からろ室112に供給して電極用触媒前駆体を含むケーキ40の中を通過させた後に、洗浄水43を供給するろ液排出口115とは異なる別のろ液排出口115’から排出する工程であり、逆洗浄工程実行手段34により実行される。
図6は、
図2の洗浄装置13における1つの脱水装置104を抜き出した図であり、逆洗浄工程S24における動作状態の好適な一実施形態を示す。脱水装置104は例えば少なくとも2つのろ液排出口115,115’を備える。正洗浄工程S23とは逆に、逆洗浄工程実行手段34により、ろ液排出口115からろ室112に向けて洗浄水43を流すことで、ろ室112に残留した電極用触媒前駆体を含むケーキ40を洗浄する。ろ液42は、例えば、洗浄水43を供給するろ液排出口115とは異なる別のろ液排出口115’から排出される。逆洗浄工程S24を行うことで、ろ液の電気伝導率ρをさらに下げ、電極用触媒前駆体のハロゲン含有量、特に塩素含有量をより低減することができる。
【0035】
逆洗浄工程S24では、常温水(例えば23℃)での洗浄を行ってもよいが、正洗浄工程S23の終了時点でろ液の電気伝導率ρがある程度低下しているので、初めから加温水(例えば70℃)での洗浄を行うことが好ましい。加温水の温度は60~80℃とすることが好ましい。
【0036】
[開板工程]
開板工程S25は、ろ室112を形成するろ板111,111’を開く工程であり、開板工程実行手段35により実行される。
図7は、
図2の洗浄装置13における1つの脱水装置104を抜き出した図であり、開板工程S25における動作状態の好適な一実施形態を示す。開板工程実行手段35は、電動シリンダ105を駆動して、押圧部材106をリアフレーム102側に移動させることにより、脱水装置104の締め付けを解除する。こうして脱水装置104の2枚のろ板111,111’が引き離され、ろ室112が開かれる。
【0037】
[ケーキ剥離工程]
ケーキ剥離工程S26は、ろ布を下降させて脱水された電極用触媒前駆体を含むケーキ40を剥離落下させる工程であり、ケーキ剥離工程実行手段36により実行される。
図8は、
図2の洗浄装置13における1つの脱水装置104を抜き出した図であり、ケーキ剥離工程S26における動作状態の好適な一実施形態を示す。ケーキ剥離工程実行手段36により、脱水装置104の2枚のろ板111,111’が所定の距離まで引き離されると、電極用触媒前駆体を含むケーキ40を保持していたろ布113が下方へ走行する。こうして電極用触媒前駆体を含むケーキ40はろ布113から自動的に剥離される。
【0038】
[ろ布洗浄工程]
ろ布洗浄工程S27は、ケーキ剥離工程S26後に、洗浄水43でろ布113を洗浄する工程であり、ろ布洗浄工程実行手段37により実行される。
図9は、
図2の洗浄装置13における1つの脱水装置104を抜き出した図であり、ろ布洗浄工程S27における動作状態の好適な一実施形態を示す。電極用触媒前駆体を含むケーキ40がろ布113から剥離された後、ろ布113は上方に走行し、元の位置まで戻る。ろ布洗浄工程実行手段37により、ろ布113が上方に走行中に、ろ布洗浄用のポンプ(図示せず)で脱水装置104の下方に設けられた洗浄水管117から洗浄水43が供給される。この洗浄水43をろ布113に噴射することによりろ布113を洗浄し、ろ布113の目詰まりを防止するとともに、ろ布113に付着した電極用触媒前駆体等を確実に回収する。すなわち、ろ布洗浄時の排水は、電極用触媒前駆体を含むため、全て回収することが好ましい。このようにして、ろ布113に付着した電極用触媒前駆体を流して回収することで、電極用触媒前駆体の収率を高めることができる。また、例えばろ布113を上下に繰り返し走行させながら洗浄することで、電極用触媒前駆体の回収量をさらに高めることもできる。
【0039】
[圧搾工程]
尚、正洗浄工程S23の後、および/または、逆洗浄工程S24の後に、圧搾工程を行ってもよい。圧搾工程は、電極用触媒前駆体を含むケーキ40をさらに圧搾脱水する工程であり、圧搾工程実行手段(図示せず)により実行される。
図10は、
図2の洗浄装置13における1つの脱水装置104を抜き出した図であり、圧搾工程における動作状態の好適な一実施形態を示す。圧搾工程実行手段により、一方のろ板111’に設けられたダイアフラム118の中に加圧水119を注入することで、電極用触媒前駆体を含むケーキ40をさらに圧搾脱水する。圧搾工程により、電極用触媒前駆体を含むケーキ40の固形分濃度が高められ、含水率の極めて低い電極用触媒前駆体を含むケーキ40が生成される。
ここで、圧搾工程の終了後にダイアフラム118から加圧水119を抜くように構成すると、ダイアフラム118による押圧がなくなるため、ダイアフラム118により押圧されていたろ布113がケーキ40から剥離されやすくなるので好ましい。
なお、この圧搾工程においては、他方のろ板111にもダイアフラム(図示せず)を具備する構成を有していてもよい。この場合、ろ板111の側に設けられたダイアフラム(図示せず)の中にも加圧水を注入し、電極用触媒前駆体を含むケーキ40を圧搾脱水できるようになる。この場合にも、圧搾工程の終了後、ダイアフラムから加圧水を抜くように構成すると、ダイアフラム(図示せず)による押圧がなくなるため、ダイアフラム(図示せず)により押圧されていたろ布113がケーキ40から剥離されやすくなるので好ましい。
【0040】
上記では1つの脱水装置104について説明したが、
図2のような洗浄装置13によれば、全ての脱水装置104が同じ動作をすることができるので、一台の装置で一度に処理する量を増大させることができ、電極用触媒の生産効率が向上する。また上記脱水装置104は、ろ過面積が大きく、高耐圧構造であるので、処理速度を向上することができる。また、原液の導入からケーキの排出を経て装置の洗浄まで全自動で処理することができるので、洗浄工程における処理の手間と時間を低減することができる。さらに、装置の材料として樹脂やライニング材等を選定することができるので、装置の高耐食化が可能である。
【0041】
[ろ液の電気伝導率ρ]
正洗浄工程S23を経た後、および/または、逆洗浄工程S24を経た後に得られるろ液のJIS規格試験法(JIS K0522)により測定される電気伝導率ρが、予め設定された設定値以下となるように、正洗浄工程S23の正洗浄時間や、逆洗浄工程S24の逆洗浄時間等の処理条件を調整する。例えば、逆洗浄工程の洗浄時間を、正洗浄工程の洗浄時間と同程度に長くすると洗浄効果が増大する。同程度とは、0~15分の違い(正洗浄工程の洗浄時間と逆洗浄工程の洗浄時間との差の絶対値)であることを意味する。また、ろ液は、洗浄後にろ液排出口から排水される液であり、その工程で排出される全ろ液を使用することが好ましい。
【0042】
正洗浄工程S23を経た後に得られるろ液の電気伝導率ρの設定値は、20μS/cm以下の範囲から選択される値とすることが好ましい。逆洗浄工程S24を経た後に得られるろ液の電気伝導率ρの設定値は、10μS/cm以下の範囲から選択される値とすることが好ましい。ろ液の電気伝導率ρが10μS/cm以下であれば、燃料電池用の電極用触媒として実用できる程度に電極用触媒前駆体に含まれる塩素(Cl)種や臭素(Br)種の濃度が低減されている。
【0043】
洗浄装置13で使用する洗浄水43は、超純水等の純水を使用することもできるが、純水でなくてもよい。例えばpH6~8、JIS規格試験法(JIS K0522)により測定される電気伝導率ρiが10μS/cm未満のイオン交換水等を使用することができる。
【0044】
なお本実施形態では、洗浄工程において、フィルタープレスを使用した洗浄方法およびろ過方法を採用したが、従来の遠心分離機(図示せず)等を使用した洗浄方法およびろ過方法を採用してもよい。
【0045】
(乾燥装置)
図11は本発明に係る乾燥装置14の概略構成を示している。乾燥装置14は、上記の洗浄装置13で洗浄された電極用触媒前駆体を、攪拌羽根204を備えた攪拌処理装置201により乾燥する。乾燥装置としての攪拌処理装置201は、逆円錐形の中空容器状の容器本体202と、容器本体202の内部を減圧する減圧機構203と、攪拌羽根204と、を主に備えている。容器本体202は、上部が、容器本体202に着脱可能に設けられる蓋205で覆われており、周壁には、容器本体202の内部を加熱する加熱媒体としてのスチームSを流すジャケット206が設けられ、外側面に容器本体202を支持する支持部210,210が設けられている。支持部210,210の下面には重量変化が確認可能なロードセル212,212が設けられており、ロードセル212,212を介して支持部210,210を設置場所に設置することで、容器本体202が設置場所に吊設されるようになっている。
また容器本体202の内部を攪拌するように攪拌羽根204が設けられ、攪拌羽根204の駆動装置207が容器本体202上部の蓋205に設けられ、容器本体202の下端である円錐頂部に、容器本体202内の電極用触媒前駆体を取り出す開口部208が形成される。この開口部208には取出バルブ209が設けられ、当該取出バルブ209を操作して開口することにより容器本体202内の電極用触媒前駆体を取り出す構成となっている。そして、供給口211が容器本体202上部の蓋205に設けられ、この供給口211に供給バルブ215が設けられて、当該供給バルブ215を操作して開口することにより電極用触媒前駆体を容器本体202に供給するようになっている。
またジャケット206には、スチームSを注入する加熱媒体注入口213と、スチームSを排出する加熱媒体排出口214とが設けられている。そして容器本体202には、温度指示調節計216が設けられており、これにより容器本体202内の電極用触媒前駆体の温度の監視を行ない、加熱媒体注入口213に供給されるスチームSの量と加熱媒体排出口214から排出されるスチームSの量とを調節することにより、容器本体202内の電極用触媒前駆体の温度を調節できるようになっている。また、加熱媒体注入口213は加熱媒体に加えて冷却媒体Cも注入できるように構成されており、加熱媒体排出口214は加熱媒体に加えて冷却媒体Cも排出できるように構成されている。
【0046】
図12は攪拌羽根204の斜視図を示している。攪拌羽根204は、蓋205の中心を貫通して延びている回転主軸222と、回転主軸222の先端に取付けられ、回転主軸222と共に回転する螺旋リボン回転翼223と、回転主軸222および螺旋リボン回転翼223と接続する回転翼支柱としてのアーム224と、螺旋リボン回転翼223の上方で回転主軸222に設けられる渦流ブレーカ225と、を備えており、回転主軸222、螺旋リボン回転翼223、アーム224および渦流ブレーカ225が一体に構成されている。
【0047】
回転主軸222は、シールユニット221(
図11参照)を介して駆動装置207に組み込まれており、この駆動装置207を駆動させることにより回転主軸222が回転し、それに伴い、回転主軸222と一体に構成された螺旋リボン回転翼223、アーム224および渦流ブレーカ225を回転させる。したがって駆動装置207により回転主軸222が回転することで、回転主軸222が攪拌羽根204を回転させる構成となっている。また回転主軸222は中空の管状に形成されており、同じく中空の管状に形成されたアーム224と流通可能に連結されている。そして回転主軸222の駆動装置207側の端部が、スクレーパー用の気体Gの流路、例えば窒素ガス、常圧空気、窒素ガスと酸素ガスとを任意の割合で混合し酸素ガス濃度を調製した混合ガス、窒素ガスと空気とを任意の割合で混合し酸素ガス濃度を調製した混合ガス、高圧空気の流路に流通可能に接続され、例えば後述する徐酸化工程実行手段54や取出し工程実行手段55により、当該気体Gを回転主軸222に注入するように構成されている。
【0048】
図11を参照すると、駆動装置207はギアドモータ等を使用しており、回転数を所定の値に調整して攪拌羽根204を回転させるようになっている。また駆動装置207は攪拌羽根204の回転及び位置を検出する位置検出装置(図示せず)を備えている。シールユニット221は、例えばドライシールおよびメカニカルシールを装着しており、容器本体202内が高真空または高圧の時でも処理の対応ができるように構成されている。
【0049】
螺旋リボン回転翼223は、容器本体202に攪拌羽根204が配置されたときに、円錐形状の容器本体202の内壁面に沿って、僅かなクリアランスを保って配置されるような螺旋状に形成されており、容器本体202内で螺旋リボン回転翼223が回転することで、電極用触媒前駆体が容器本体202の内壁面に沿って上昇する。また上部へ行くほど螺旋リボン回転翼223のリボンの幅が広くなるように形成され、容器本体202垂直方向の各断面における粉体搬送が一定比率となるように構成されている。なお本実施形態では
図12に示されるように、螺旋リボン回転翼223が1本のシングルリボン翼を採用しているが、螺旋リボン回転翼223が2本のダブルリボン翼を採用してもよい。
【0050】
図12を参照すると、アーム224は螺旋リボン回転翼223を支持しており、回転主軸222に螺旋リボン回転翼223を確実に固定している。また各アーム224の先端部の下側にはスクレーパー用のガス噴出孔226が設けられており、上述した気体Gの流路から気体Gが回転主軸222に注入されると、回転主軸222内および各アーム224内を通って各ガス噴出孔226から気体Gが噴射するように構成されており、後述する取出し工程S35のときに電極用触媒前駆体の滞留を防止するようになっている。
【0051】
渦流ブレーカ225は、容器本体202内で回転することで、容器本体202の内壁面に沿って上昇する電極用触媒前駆体を容器本体202の中央部に導く。そのため電極用触媒前駆体の循環流が容器本体202の中央部で下方へ導かれ、自然落下時の層表面での濁流が原因の分級作用が防止される。
なお、
図12においては、渦流ブレーカ225は、蓋205の内側の面との間に隙間が空くようにして配置されている。しかし、本発明においては、渦流ブレーカ225は、蓋205の内側の面に接するように一体的に配置されている構成を有していてもよい。この場合でも上述の分級作用の防止を図ることができる。
【0052】
図11に戻って、減圧機構203について説明すると、231はバグフィルタであり、蓋205の排気孔232に設けられ、このバグフィルタ231を介して、容器本体202内で電極用触媒前駆体から蒸発した液体や気体が排出される。また233は凝縮器であるコンデンサであり、バグフィルタ231から流れてきた液体を凝縮するものである。このコンデンサ233と蓋205の排気孔232とは、バグフィルタ231を介して接続配管235により接続される。そして234は真空ポンプであり、吸引配管236によりコンデンサ233と接続しており、この真空ポンプ234を駆動することにより、容器本体202内からバグフィルタ231及びコンデンサ233に、電極用触媒前駆体から蒸発した液体や気体が流れるように構成されている。また接続配管235には、減圧乾燥を行なう場合に容器本体202内の圧力を調節するように、圧力指示調節計237が設けられている。圧力指示調節計237の調節信号により、吸引配管236に設けられた調節弁238を調節し、真空ポンプ234で吸引する真空度を調節するようになっている。なお接続配管235によりバグフィルタ231から流れてきた気体および蒸気はコンデンサ233で凝縮処理され、凝縮しやすい成分は凝縮液として気体と分離される。分離された気体が吸引配管236により真空ポンプ234に吸気されて、この真空ポンプ234から排気される。なお、容器本体202下部にエアブローノズル(図示せず)を設け、このエアブローノズルにより不活性ガスや空気を入れることにより、容器本体202を減圧状態から常圧状態に戻すように構成してもよい。
【0053】
乾燥装置14は、
図1のブロック図および
図20のフローチャートに示すように、導入工程S31と、乾燥工程S32と、冷却工程S33と、冷却された電極用触媒前駆体を徐酸化処理する徐酸化工程S34と、徐酸化処理された電極用触媒前駆体を取出す取出し工程S35とをそれぞれ実行する手段である、導入工程実行手段51と、乾燥工程実行手段52と、冷却工程実行手段53と、徐酸化工程実行手段54と、取出し工程実行手段55とを備えている。各工程S31~S35について以下に説明する。
【0054】
[導入工程]
導入工程S31は、洗浄された電極用触媒前駆体を乾燥装置14内に導入する工程であり、導入工程実行手段51により実行される。
図13Aを参照して説明すると、導入工程実行手段51は、攪拌処理装置201の供給バルブ215を操作して開口させ、所定の含水率の電極用触媒前駆体を供給口211から容器本体202に導入する。電極用触媒前駆体の前記含水率は事前に計測されていることが好ましい。この電極用触媒前駆体を導入する方法は、漏斗などを用いて人の手による作業で導入されてもよく、
図13Aに示すように、電極用触媒前駆体が移送される管やベルトコンベア等から、人の手を介さずに直接導入されてもよい。ここで、導入された電極用触媒前駆体の重量がロードセル212,212により計測される。なお、この導入工程S31の前に、ジャケット206にスチームSを注入して容器本体202内を所定の温度に予熱する予熱工程が行なわれてもよい。その後、導入工程実行手段51は供給バルブ215を操作して閉口させて容器本体202を密閉し、導入工程S31が完了する。
【0055】
[乾燥工程]
乾燥工程S32は、容器本体202内に導入された電極用触媒前駆体を乾燥させる工程(いわゆる真空乾燥を実施する工程)であり、乾燥工程実行手段52により実行される。
図13Bに
図11等を併せて参照して説明すると、乾燥工程実行手段52は、駆動装置207を駆動させて攪拌羽根204を回転させると共に、真空ポンプ234を駆動させて容器本体202内を排気及び減圧し、圧力指示調節計237により操作圧力を所定の圧力に調整して電極用触媒前駆体を攪拌混合する。前記攪拌羽根204の回転速度は、毎分40~80回転とすることが好ましく、また前記操作圧力は、5~20kPa(ゲージ圧)とすることが好ましい。また乾燥工程実行手段52は、温度指示調節計216により加熱媒体注入口213からジャケット206にスチームSを注入し、当該スチームSの伝導伝熱により容器本体202を加熱することで容器本体202内の電極用触媒前駆体を所定の温度(乾燥温度)に調節して乾燥させる。さらに攪拌羽根204の攪拌による発熱が、電極用触媒前駆体の乾燥に寄与する。前記乾燥温度は、50~150℃の範囲から選択される値とすることが好ましい。なお、操作圧力及び加熱温度は、電極用触媒前駆体の温度(品温)を測定し当該品温の変化の度合いをみて乾燥時間の調節のために乾燥工程の最中に変更してもよい。
【0056】
乾燥工程S32における容器本体202内の電極用触媒前駆体の循環流について、さらに詳細に説明すると、攪拌羽根204が回転することにより、電極用触媒前駆体が容器本体202の内側壁面に沿って上昇する。その後、電極用触媒前駆体が、螺旋リボン回転翼223の上方に設けられた渦流ブレーカ225により容器本体202の中央部に寄せられると、この中央部から直ちに下降して層内に潜り込むという循環が行なわれる。
【0057】
また電極用触媒前駆体から蒸発した蒸気や気体は真空ポンプ234により吸引され、バグフィルタ231により粉塵が濾過捕集される。その後、接続配管235を通ってコンデンサ233に流れ、コンデンサ233により冷却され凝縮液化されて凝縮液が回収されると共に、真空ポンプ234により気体が排気される。このようにして電極用触媒前駆体から蒸気や気体が蒸発することで、電極用触媒前駆体の重量が変化する。このときの容器本体202内の電極用触媒前駆体の重量はロードセル212,212により計測されており、導入時の電極用触媒前駆体の重量及び含水率、及び現在の電極用触媒前駆体の重量から、現在の電極用触媒前駆体の含水率が算出される。容器本体202内の電極用触媒前駆体が所定の含水率以下になったときに乾燥工程S32が完了する。前記所定の含水率は3wt%とすることが好ましい。以下、含水率の値はウェットベースの表示で記載する。
なお、本発明の場合、ロードセル212を有しない構成であってもよい。この場合、容器本体202内の電極用触媒前駆体の重量の変化は、乾燥工程S32における乾燥条件(容器本体202内投入する電極用触媒前駆体の重量、乾燥条件)を同一にした予備試験を予め行い、予め把握しておいてもよい。そして、予備試験の結果に基づいて乾燥開始からの経過時間などをモニタすることなどで容器本体202内の電極用触媒前駆体の重量の変化を簡易的に把握できるようにしてもよい。
【0058】
[冷却工程]
冷却工程S33は、容器本体202内で乾燥させた電極用触媒前駆体を冷却させる工程であり、冷却工程実行手段53により実行される。
図13Cに
図11等を併せて参照して説明すると、冷却工程実行手段53は温度指示調節計216により加熱媒体排出口214からジャケット206内のスチームSを排出する。ここで冷却工程実行手段53は駆動装置207および真空ポンプ234の駆動を継続させ、攪拌羽根204を回転させると共に容器本体202内を排気及び減圧して、電極用触媒前駆体の攪拌混合を継続する。この時の前記攪拌羽根204の回転速度は、毎分40~80回転とすることが好ましく、また前記減圧時の操作圧力は、大気圧とすることが好ましい。また冷却工程実行手段53は、温度指示調節計216により加熱媒体排出口214からジャケット206へ冷却媒体Cを注入させ、冷却媒体の伝導伝熱により容器本体202を冷却することで容器本体202内の電極用触媒前駆体を所定の温度に冷却する。冷却媒体Cの温度は10~30℃とすることが好ましく、前記所定の温度は、40℃以下、好ましくは10~40℃の範囲から選択される値とすることが好ましい。冷却工程実行手段53が温度指示調節計216により、電極用触媒前駆体が前記所定の温度になったことを検出したときに冷却工程が完了する。
【0059】
[徐酸化工程]
徐酸化工程S34は、容器本体202内で冷却された電極用触媒前駆体を徐酸化処理する工程であり、徐酸化工程実行手段54により実行される。徐酸化工程実行手段54は、加熱媒体注入口213からジャケット206内の冷却媒体Cを排出し、駆動装置207および真空ポンプ234を停止し、供給バルブ215を操作して容器本体202内の圧力を少しずつ常圧に戻すことにより、乾燥した電極用触媒前駆体の徐酸化を行なう。なお、スクレーパー用の気体Gが高圧空気の場合は、徐酸化工程実行手段54が高圧空気をスクレーパー用の気体Gの流路から回転主軸222に注入し、各ガス噴出孔226から高圧空気を噴射させることにより容器本体202内の圧力を少しずつ常圧に戻すように構成してもよい。また容器本体202下部にエアブローノズルが設けられている場合は、徐酸化工程実行手段54が当該エアブローノズルにより容器本体202内の圧力を少しずつ常圧に戻すように構成してもよい。容器本体202内の電極用触媒前駆体の徐酸化処理が完了したときに徐酸化工程が完了する。
なお、徐酸化工程S34では、容器本体202内の圧力を少しずつ常圧に戻し、容器本体202内を最終的に常圧の空気の雰囲気に戻す際に、各ガス噴出孔226から窒素ガスと酸素ガスとを任意の割合で混合し酸素ガス濃度を調製した混合ガス、又は、窒素ガスと空気とを任意の割合で混合し酸素ガス濃度を調製した混合ガスを噴出させ、容器本体202内の酸素ガス濃度を本工程中で電極用触媒前駆体が発火しないよう予め実験的に求められた数値範囲に制御しながら経時的に増加させ、最終的に空気と同じ酸素濃度にすることが好ましい。
【0060】
[取出し工程]
取出し工程S35は、容器本体202内で冷却された電極用触媒前駆体を取出す工程であり、取出し工程実行手段55により実行される。
図13Dに
図11等を併せて参照して説明すると、取出し工程実行手段55は、取出バルブ209を操作して開口することにより、開口部208から容器本体202内の電極用触媒前駆体を取り出す。攪拌処理装置201は容器本体202の内部構造がシンプルであるため、取出し工程S35のときに電極用触媒前駆体の残粉を少なくすることができる。また、このとき取出し工程実行手段55は、スクレーパー用の気体Gの流路から気体Gを回転主軸222に注入させ、各ガス噴出孔226から気体Gを下向きに噴射させるスクレーパー工程を実施することにより、容器本体202内壁や攪拌羽根204に付着した電極用触媒前駆体を下方に吹き飛ばし、電極用触媒前駆体の回収率を高める。容器本体202内の電極用触媒前駆体を全て取り出したときに取出し工程が完了する。
【0061】
<電極用触媒>
本実施形態で製造する電極用触媒の構造は特に限定されず、導電性担体(導電性カーボン担体、導電性金属酸化物担体など)の担体に貴金属触媒粒子が担持された構造を有していればよい。例えば、いわゆるPt触媒、Pt合金触媒(PtCo触媒、PtNi触媒など)及びコア・シェル構造を有するいわゆるコア・シェル触媒であってもよい。
例えば、コア部4の構成元素としてパラジウム、シェル部5の構成元素として白金を採用した構成のコア・シェル触媒は、白金(Pt)の塩化物塩、パラジウム(Pd)の塩化物塩などの塩素(Cl)種を含む材料が原料として使用される場合が多い。本実施形態に係る電極用触媒の製造システムおよび製造方法によれば、これらの塩素(Cl)種の含有量を低減した電極用触媒を製造することができる。
【0062】
電極用触媒の構造の一例について図を参照してより詳しく説明すると、コア・シェル構造を有する電極用触媒1は、
図14に示すように、担体2と、当該担体2上に担持された触媒粒子3とを含む。触媒粒子3は、コア部4と、コア部4の少なくとも一部を被覆するように形成されたシェル部5とを備える。触媒粒子3はコア部4とコア部4上に形成されるシェル部5とを含むいわゆるコア・シェル構造を有する。
【0063】
すなわち、電極用触媒1は、担体2に担持された触媒粒子3を有しており、この触媒粒子3は、コア部4を核(コア)とし、シェル部5がシェルとなってコア部4の表面を被覆する構造を備える。また、コア部4の構成元素(化学組成)と、シェル部5の構成元素(化学組成)は異なる構成となっている。
【0064】
コア・シェル構造の具体例をさらに例示すると、
図15では、電極用触媒1Aが、コア部4と、コア部4の表面の一部を被覆するシェル部5aおよびコア部4の他の表面の一部を被覆するシェル部5bから構成される触媒粒子3aを有する。また
図16では、電極用触媒1Bが、コア部4と、コア部4の表面の略全域を被覆するシェル部5から構成される触媒粒子3を有し、シェル部5が第1シェル部6と第2シェル部7とを備えた二層構造である。さらに
図17では、電極用触媒1Cが、コア部4と、コア部4の表面の一部を被覆するシェル部5a、およびコア部4の他の表面の一部を被覆するシェル部5bから構成される触媒粒子3aを有し、シェル部5aが第1シェル部6aと第2シェル部7aとを備えた二層構造であり、シェル部5bが第1シェル部6bと第2シェル部7bとを備えた二層構造である。
【0065】
本実施形態において、塩素(Cl)種とは、構成成分元素として塩素を含む化学種をいう。具体的には、塩素を含む化学種には、塩素原子(Cl)、塩素分子(Cl2)、塩素化物イオン(Cl-)、塩素ラジカル(Cl・)、多原子塩素イオン、塩素化合物(X-Cl等、ここで、Xは対イオン)が含まれる。
【0066】
本実施形態において、臭素(Br)種とは、構成成分元素として臭素を含む化学種をいう。具体的には、臭素を含む化学種には、臭素原子(Br)、臭素分子(Br2)、臭素化物イオン(Br-)、臭素ラジカル(Br・)、多原子臭素イオン、臭素化合物(X-Br等、ここで、Xは対イオン)が含まれる。
【0067】
<電極用触媒の製造方法>
図18に示すように、本実施形態に係る電極用触媒の製造方法は、電極用触媒の原料である電極用触媒前駆体を製造する電極用触媒前駆体製造ステップS1と、電極用触媒前駆体製造ステップS1で製造された電極用触媒前駆体を含む液30をフィルタープレスにより洗浄する洗浄ステップS2と、洗浄ステップS2で洗浄された電極用触媒前駆体を、螺旋リボン回転翼223を有する攪拌羽根204を備えた攪拌処理装置201により乾燥する乾燥ステップS3とを含む。各ステップS1,S2,S3は、上述の電極用触媒の製造システム10の電極用触媒前駆体製造装置12、洗浄装置13としてのフィルタープレス、および、乾燥装置14としての攪拌処理装置201でそれぞれ実行されることができる。
【0068】
洗浄ステップS2は、
図19に示すように、閉板工程S21と、圧入工程S22と、正洗浄工程S23と、逆洗浄工程S24と、開板工程S25と、ケーキ剥離工程S26と、ろ布洗浄工程S27とを含む。洗浄ステップS2では、電極用触媒前駆体製造ステップS1で製造された電極用触媒前駆体を含む液30を洗浄、ろ過および脱水することにより、洗浄後の電極用触媒前駆体41を得ることができる。また、正洗浄工程S23の後、および/または、逆洗浄工程S24の後に、圧搾工程を実行してもよい。各工程S21~S27および圧搾工程の構成は上述の<電極用触媒の製造システム>(洗浄装置)で説明した通りである。
【0069】
乾燥ステップS3は、
図20に示すように、導入工程S31と、乾燥工程S32と、冷却工程S33と、徐酸化工程S34と、取出し工程S35とを含む。乾燥ステップS3では、洗浄ステップS2で洗浄された電極用触媒前駆体を乾燥することにより、乾燥後の電極用触媒1を得ることができる。各工程S31~S35の構成は上述の<電極用触媒の製造システム>(乾燥装置)で説明した通りである。
【0070】
ここに記述される実施例は本発明の実施形態を例示するものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0071】
<電極用触媒前駆体の製造(反応工程、電極用触媒前駆体製造ステップ)>
(製造例1)
[電極用触媒前駆体を含む液(原液)の調製]
電極用触媒として、Pt粒子担持カーボン触媒(以下、「Pt/C触媒」という。N.E.CHEMCAT社製、Pt担持率50wt%、商品名:「SA50BK」)を使用した。まずその前駆体を含む液を調製した。
この前駆体の担体には、市販の導電性中空カーボン担体{ライオン株式会社製、商品名「カーボンECP」(登録商標)(ケッチェンブラックEC300J)、比表面積750~800m2/g}を使用した。
この担体と水溶性Pt塩とを水中に分散させた。次に、担体と水溶性Pt塩を含む分散液に水溶性還元剤を添加し所定の温度でPt成分の還元反応を進行させた。これにより、本実施形態で使用する電極用触媒前駆体を含む液を調製した。
【0072】
上述のようにして得られた電極用触媒前駆体を含む液を乾燥させずにケトルに分散させて、洗浄装置で処理する原液として使用した。
【0073】
<電極用触媒の製造>
(実施例1)
[洗浄装置による処理(洗浄ステップ)]
製造例1で得られた電極用触媒前駆体を含む液を洗浄装置に導入し、洗浄処理を行った。洗浄装置における各工程の処理時間を表1に示す。まず、20分間で圧入工程を行った。圧入工程における電極用触媒前駆体を含むケーキの厚さは5~10mmとした。
【0074】
このケーキの厚さは、使用する電極用触媒前駆体に対して要求される洗浄度合と洗浄時間とを考慮して予備実験により予め決定された厚さの範囲である。
【0075】
次に、正洗浄工程を行った。正洗浄工程では、まず常温(23℃)の洗浄水で24分間処理し、ろ液の電気伝導率ρが40μS/cm以下になった時点で加温水(70℃)に切り替え、加温水で50分間処理を行った。正洗浄工程の後、5分間で圧搾工程を行った。その後、逆洗浄工程を行い、当該逆洗浄工程では、加温水(70℃)の洗浄水で73分間処理を行った。合計で約2.9時間の洗浄処理を行った。
【0076】
洗浄水はイオン交換水を使用した。使用したイオン交換水の常温(23℃)時の電気伝導率ρiは7.70μS/cm、加温(70℃)時の電気伝導率ρiは4.6μS/cmである。
【0077】
[乾燥装置による処理(乾燥ステップ)]
洗浄装置による処理後に得られた電極用触媒前駆体を含むケーキを乾燥装置としての攪拌処理装置201に導入し、乾燥ステップS3を行った。
なお、本実施例1では、撹拌機構を有する攪拌処理装置201を使用した電極用触媒前駆体を含むケーキの乾燥を実施するため、後述の比較例1で実施する電極用触媒前駆体を含むケーキの解砕(棚段真空乾燥機に導入する前のケーキの粗粉砕)は不要である。即ち、後述の比較例1における解砕工程は不要になる。
攪拌処理装置201における各工程の処理時間を表2に示す。
導入工程S31においてケーキ52kgを仕込むときの攪拌処理装置201の容器本体202内の粉面高さを基に攪拌処理装置201の容量を選定し、容器本体202の有効容量が100Lで螺旋リボン回転翼223がシングルリボン翼の攪拌処理装置201を採用した。
まず導入工程S31で含水率が約82%のケーキ52kgを容器本体202内に仕込むケーキ仕込を行った。
その後、乾燥工程S32、冷却工程S33、徐酸化工程S34と順に行ない、取出し工程S35でケーキの取出しを行ない、含水率が3wt%以下の電極用触媒を得るために必要とする時間を測定した。
また、攪拌乾燥に伴う「摩擦」が製品に影響を与えないか確認するために、冷却工程S33では攪拌羽根204を回転させると共に、加熱媒体排出口214からジャケット206へ冷却媒体Cを注入し、冷却しながら電極用触媒前駆体での攪拌試験を実施した。
【0078】
(比較例1)
[洗浄装置による処理(洗浄ステップ)]
製造例1で得られた電極用触媒前駆体を含む液を洗浄装置に導入し、洗浄処理を行った。洗浄装置における各工程の処理時間を表1に示す。まず、40分間で圧入工程を行った。圧入工程における電極用触媒前駆体を含むケーキの厚さは11~15mmとした。
【0079】
このケーキの厚さは、使用する電極用触媒前駆体に対して要求される洗浄度合と洗浄時間とを考慮して予備実験により予め決定された厚さの範囲から外れた範囲にある。
【0080】
次に、正洗浄工程を行った。正洗浄工程では、まず常温(23℃)の洗浄水で33分間処理し、ろ液の電気伝導率ρが40μS/cm以下になった時点で加温水(70℃)に切り替え、加温水で60分間処理を行った。正洗浄工程の後、圧搾工程を5分間行い、続いて、逆洗浄工程を行ったが、ろ液の伝導率ρが、正洗浄工程終了時のろ液の電気伝導率ρから変化がなかったため、逆洗浄工程を36分間行った後、すなわち合計約2.9時間の洗浄処理後、処理を中断した。
【0081】
洗浄水はイオン交換水を使用した。使用したイオン交換水の常温(23℃)時の電気伝導率ρiは7.70μS/cm、加温(70℃)時の電気伝導率ρiは4.6μS/cmである。
【0082】
[乾燥装置による処理(乾燥ステップ)]
洗浄装置による処理後に得られた電極用触媒前駆体を含むケーキについて、専用の解砕機、棚段真空乾燥機およびハンマーミルを用いて、乾燥ステップを行った。
まずケーキを専用の解砕機で解砕する解砕工程で、含水率が約80~82%の電極用触媒前駆体52kgを得た。
この解砕工程では、ケーキを洗浄装置から取出し、電極用触媒前駆体を含むケーキの解砕(棚段真空乾燥機に導入する前のケーキの粗粉砕)を行う。実施例1の攪拌処理装置201と異なり、本比較例1で使用する棚段真空乾燥機には撹拌機構が装備されていないので解砕機を使用して棚段真空乾燥機に導入する前のケーキの粗粉砕を行い、棚にケーキの解砕物を略均等に配分して配置する必要がある。
その後の導入工程で、この電極用触媒前駆体を、幅600mm、長さ780mm、高さ20mmのバット20枚に配膳するケーキ配膳を行ない、電極用触媒前駆体が配膳されたバットを棚段真空乾燥機に設置して扉を閉め、減圧下で電極用触媒前駆体を乾燥させる乾燥工程、および減圧下で電極用触媒前駆体を冷却させる冷却工程を行なった。
冷却工程の後、扉をゆっくりと開く徐酸化工程を行ない、その後の取出し工程で、棚段真空乾燥機からバットを取り出して電極用触媒前駆体を取り出した。
その後、この取り出した電極用触媒前駆体をハンマーミルで粉砕する粉砕工程を行なって、含水率が3wt%以下の電極用触媒を得るために必要とする時間を測定した。
実施例1の攪拌処理装置201と異なり、本比較例1で使用する棚段真空乾燥機には撹拌機構が装備されていないので、ハンマーミルを使用した電極用触媒前駆体の粉体の塊を粉砕することが必要になる。また、ハンマーミルの粉砕前に棚段真空乾燥機から電極用触媒前駆体の粉体の塊を取り出す必要が生じる。
【0083】
【0084】
<評価結果>
表1に示すように、実施例1では、正洗浄工程終了時のろ液の電気伝導率ρが15.9μS/cmであったのに対し、逆洗浄工程終了時のろ液の電気伝導率ρは9.7μS/cmまで低下した。3時間未満の洗浄処理時間で、ろ液の電気伝導率ρを10μS/cm以下まで低下させることができた。一方、比較例1では、正洗浄工程終了時のろ液の電気伝導率ρは19.3μS/cmまで低下したが、その後、逆洗浄工程を行っても、19.3μS/cmから全く下がらなかった。
【0085】
【0086】
<評価結果>
表2に示すように、実施例1において、導入工程S31では電極用触媒前駆体を配膳する必要が無く、容器本体202に電極用触媒前駆体を仕込むだけなので、比較例1では2時間必要とするところを0.4時間まで短縮できた。
また実施例1において、乾燥工程S32および冷却工程S33では、高い混合能力とジャケット206からの伝熱により、棚段真空乾燥機と比較して乾燥速度が向上しており、比較例1では24時間必要とするところを3.1時間まで短縮できた。
ここで、得られた電極用触媒は比較例1と殆ど遜色なく、攪拌乾燥に伴う「摩擦」が製品品質に殆ど影響を与えないことが確認できた。更に、実施例1において、徐酸化工程S34、取出し工程S35では比較例1と比較して時間の短縮は確認できなかった一方で、実施例1では解砕工程および粉砕工程を省略できた。
【0087】
(比較例2)
[洗浄装置による処理(洗浄ステップ)]
製造例1で得られた電極用触媒前駆体を含む液を遠心分離機に導入し、洗浄処理を行った。JIS規格試験法(JIS K0522)により測定されるろ液の電気伝導率ρが10μS/cm以下になるまで洗浄を繰り返し、得られた電極用触媒前駆体を超純水に分散させて分散液を調製し、当該分散液をろ過した。ろ過により得られたろ物を乾燥装置で、温度70℃、空気中、24時間の条件下で乾燥し、電極用触媒を得た。表3に、実施例1および比較例2の洗浄装置による処理(洗浄ステップ)の処理時間を比較して示す。なお表2では、原料フィード~固液分離までの処理時間と、ケーキ洗浄および脱水に要する時間とを分けて示している。
【0088】
【0089】
<評価結果>
従来のように遠心分離機を使用して洗浄した比較例2では、ろ液の電気伝導率ρを10μS/cm以下まで低下させるには、3回実施した結果、15~19時間を要した。
【0090】
したがって、実施例1と比較例1および2とを比較したときに理解されるように、本実施形態の電極用触媒の製造システムおよび製造方法によれば、洗浄装置による処理(洗浄ステップ)に要する時間を、従来の遠心分離機を使用した処理に比べて、1/5以下に大幅に短縮することができる。さらに、本実施形態に係る洗浄装置では、電極用触媒前駆体を含むケーキが自動で剥離されるので、作業者が電極用触媒前駆体を掻き取る作業をなくすことができ、手間も大幅に低減することができる。
【0091】
また実施例1と比較例1とを比較したときに理解されるように、本実施形態の電極用触媒の製造システムおよび製造方法によれば、乾燥装置14による処理(乾燥ステップS3)に要する時間を約1/5~約1/6に大幅に短縮することができる。さらに、本実施形態に係る乾燥装置14としての攪拌処理装置201は乾燥工程S32、冷却工程S33、徐酸化工程S34および取出し工程S35を全て自動で行なうことができるため、手間も大幅に低減することができ、可能な限り人の手による作業を介さない電極用触媒の製造方法及び製造システムを提供することができる。
【実施例2】
【0092】
<電極用触媒の製造システム>
図21は、第2の実施形態に係る電極用触媒の製造システムの概略を示すブロック図である。電極用触媒の製造システム150は、第1の実施形態で説明した電極用触媒前駆体製造装置12、洗浄装置13および乾燥装置14に加えて、乾燥後の電極用触媒1や触媒ケーキ調製後のWET品を物性分析する分析装置151と、乾燥後の電極用触媒1にイオン交換水を混合させてリスラリー化する反応器152とをさらに有している。
【0093】
従来、粉末状の電極用触媒の出荷時の梱包作業や、顧客による電極用触媒使用時の計量作業において、粉末状の触媒の発火、消失の懸念が課題となっており、この電極用触媒の発火、消失対策や将来的な梱包、納入形態において、電極用触媒の粉体を純水で濡らした状態であるWET品での供給が想定され、今後、需要が増大することが見込まれている。しかしながら、例えば重量比で電極用触媒:水を1:4にすると、WET品が固体状とならず液状になってしまう。電極用触媒は高価であるため可能な限り回収する必要があるが、装置や電極用触媒を収容する容器にWET品が粘着したまま乾燥し容器内壁に付着してしまっていた。また第1の実施形態の乾燥工程S32で電極用触媒:水を所望の重量比のWET品にして取り出す方法も考案されるが、この場合、徐酸化工程S34を経ていない状態のWET品となり、電極用触媒の触媒粒子表面の酸化状態を大気中で十分に安定な状態とできなくなる恐れ、ひいては水素酸化反応、酸素還元反応に対する初期活性が異なる電極用触媒となってしまう恐れがある。またこの場合、洗浄ステップS2では電極用触媒前駆体を洗浄およびろ過するだけであるので、WET品の水分量の均一性にムラが出てしまう可能性があった。このような理由により、WET品での供給は製造元、顧客への供給先の双方で取扱い性、回収性に難があった。
【0094】
そこで本実施形態では、洗浄後の電極用触媒前駆体を乾燥させ、電極用触媒の触媒粒子表面の酸化状態を大気中で十分に安定な状態とさせる。また、乾燥後の電極用触媒1にイオン交換水を混合させ、電極用触媒を含むスラリーの水分量を均一にしてから固体状(ペレット状、ケーキ状)とできる水準まで乾燥させる。これにより、狙いとなる数値範囲までWET品の水分量を調節して複数の固体状の触媒ケーキに調製しており、所望の重量比のWET品で供給することにより、粉末状の触媒の発火、消失の恐れを確実に防止し、また上記した製造元、顧客への供給先の双方で取扱い性、回収性を向上させている。なお固体状の触媒ケーキについては、触媒の合成プロセスの中で、その触媒担体の表面は、合成に使用される各試薬、各合成反応で生成する生成物、副生成物、不純物から様々な化学作用を受ける。その結果、触媒担体の表面官能基の種類、総量、単位面積当たりの存在量が異なってくる。これにより、触媒の種類(担体の種類)、採用する合成反応プロセスの種類により、触媒の水に対する親和性(濡れ性)は変化する。したがって、取扱い性・回収性に優れた固体状とできる含水率(含水率の範囲)は、各触媒毎に予め実験的に求められるものである。
【0095】
(分析装置)
分析装置151は、第1の実施形態の乾燥ステップS3を経て得られる電極用触媒1を物性分析する。分析装置151では、第1の実施形態の取出し工程S35で取出された電極用触媒1の第1の物性分析ステップS36を実行する第1の物性分析実行手段153を含む。この第1の物性分析ステップS36では、少なくとも電極用触媒1の触媒担持量、含水率(wt%)、および触媒粒子径を分析することが好ましい。なお本実施形態では、取出し工程S35で取出された電極用触媒1の粉体の一部を抜き取り、分析装置151で物性分析する方法を採用しているが、他の分析方法でもよい。
【0096】
(反応器)
反応器152は、第1の物性分析ステップS36の後に、上記の乾燥装置14で乾燥された電極用触媒1をリスラリー化する。本実施形態では反応器152を使用して電極用触媒1をリスラリー化しており、必要とする設備が1つ多くなる一方で、電極用触媒1のリスラリー化をより迅速、確実に実行している。反応器152では、取出し工程S35で取出された電極用触媒1をリスラリー化するためのリスラリーステップS40を実行するリスラリーステップ実行手段154を含む。リスラリーステップS40におけるリスラリー化の方法としては、撹拌装置を具備する反応器、例えば撹拌器の付いたケトルを使用したリスラリー化の方法を採用することができる。
【0097】
リスラリーステップ実行手段154は、
図21のブロック図および
図22のフローチャートに示すように、導入工程S41と、混合工程S42と、取出し工程S43とをそれぞれ実行する手段である、導入工程実行手段156と、混合工程実行手段157と、取出し工程実行手段158とを備えている。本実施形態では、使用する電極用触媒の触媒粒子表面の酸化状態を大気中で安定な状態に保持するため、各工程S41~S43を常温、大気圧、大気中で実行しており、窒素などの特別なガス雰囲気としていない。各工程S41~S43について以下に説明する。
【0098】
[導入工程]
導入工程S41は、乾燥装置14で乾燥された電極用触媒1と、混合用のイオン交換水とを反応器152内に導入する工程であり、導入工程実行手段156により実行される。電極用触媒1やイオン交換水を導入する方法は、導入工程S31と同様に、漏斗などを用いて人の手による作業で導入されてもよく、電極用触媒1やイオン交換水が移送される管やベルトコンベア等を反応器152に設けて、人の手を介さずに直接導入されてもよい。
【0099】
イオン交換水については純水を使用することができ、「超純水」を使用することが好ましい。「超純水」は、
R=1/ρ・・・(1)
の式で表される比抵抗R(JIS規格試験法(JIS K0552)により測定される電気伝導率の逆数)が3.0MΩ・cm以上である水である。なお上記式(1)において、Rは比抵抗を表し、ρはJIS規格試験法(JIS K0552)により測定される電気伝導率を表す。また「超純水」は、JIS K0557「用水・排水の試験に用いる水」に規定されている「A3」のに相当する水質又はそれ以上の清浄な水質を有していることが好ましいが、この式(1)で表される関係を満たす電気伝導率を有している水であれば、特に限定されず、例えば、この「超純水」として、「Milli Qシリーズ」(メルク株式会社製)や「Elix UV シリーズ」(日本ミリポア株式会社製)の超純水製造装置を使用して 製造される超純水を使用してもよい。なおイオン交換水については、必ずしも純水でなくてもよく、例えばpH6~8であって、JIS規格試験法(JIS K0522)により測定される電気伝導率ρiが10μS/cm未満のイオン交換水等も使用することができる。
【0100】
導入工程S41で導入される電極用触媒1とイオン交換水との重量比は、電極用触媒1とイオン交換水と混合物が液状のスラリーになるくらいの比率であることが好ましく、例えば重量比で電極用触媒:イオン交換水が1:2~1:3.5の範囲の中から触媒種に応じて実験的に最適な比率を定める。本実施形態では、物性分析工程で物性分析された電極用触媒1の触媒担持量や含水率などの結果と、導入される電極用触媒1の分量とから導入されるイオン交換水の分量が算出され、決定される。なお導入される電極用触媒1の分量は、人の手による作業で計測してもよく、第1の実施形態の取出し工程S35の開始時および終了時において電極用触媒1の重量をロードセル212,212により計測し、その結果を使用して電極用触媒1の分量を算出してもよい。
【0101】
[混合工程]
混合工程S42は、導入された電極用触媒1とイオン交換水とを反応器152内で混合する工程であり、混合工程実行手段157により実行される。混合工程実行手段157は、反応器152の撹拌装置を駆動させ、常温、大気圧で電極用触媒1とイオン交換水とを撹拌混合する。本実施形態では、電極用触媒1とイオン交換水と混合物が液状のスラリーになるくらいの比率であるため、常温、大気圧でも混合中に電極用触媒1が発火、消失する恐れがなく、また、より均一に前記混合物を撹拌混合することができる。電極用触媒1とイオン交換水が混合されて均一になり、電極用触媒を含むスラリー159が調製されたときに混合工程S42が完了する。なお撹拌装置の駆動時間や回転数については、反応器152の容量や種類、導入された電極用触媒1およびイオン交換水の分量等により異なるため、ここでは詳述しない。
【0102】
[取出し工程]
取出し工程S43は、反応器152内で調製された電極用触媒を含むスラリー159を取出す工程であり、取出し工程実行手段158により実行される。その後、取出された電極用触媒を含むスラリー159は乾燥装置14に再度導入される。そのため、乾燥装置14に人の手による作業で導入される場合は、電極用触媒を含むスラリー159が一旦別の容器等に取出されてもよい。また乾燥装置14に人の手を介さずに直接導入される場合は、乾燥装置14に管等が連結され、この管等を介して反応器152から乾燥装置14に電極用触媒を含むスラリー159が移送されてもよい。反応器152内の電極用触媒を含むスラリー159を全て取り出したときに取出し工程S43が完了する。なお取出し工程実行手段158については、反応器152の種類等により異なるため、ここでは詳述しない。
【0103】
(乾燥装置)
乾燥装置14は、リスラリーステップS40でリスラリー化された電極用触媒を含むスラリー159を、攪拌羽根204を備えた攪拌処理装置201で乾燥させ、複数の固体状の触媒ケーキを調製する。この工程で使用する乾燥装置14は、第1の実施形態の乾燥ステップS3で使用した乾燥装置14でもよく、他の乾燥装置14でもよい。乾燥装置としての攪拌処理装置201の構造については第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0104】
固体状の触媒ケーキを調製する触媒ケーキ調製ステップS50は、第1の実施形態の乾燥ステップS3と同様に、導入工程S31’と、乾燥工程S32’と、冷却工程S33’と、冷却されたWET品を徐酸化処理する徐酸化工程S34’と、徐酸化処理されたWET品を取出す取出し工程S35’とを含む。各工程S31’~S35’の動作条件は第1の実施形態の乾燥ステップS3の各工程S31~S35と同様にしており、そのため各工程S31’~S35’の主な作用については、第1の実施形態の乾燥ステップS3の各工程S31~S35の主な作用と同様である。
【0105】
乾燥工程S32’で、容器本体202内のスラリー159から蒸気や気体が蒸発することで、スラリー159の重量が変化する。このときの容器本体202内のスラリー159の重量はロードセル212,212により計測されており、導入時のスラリー159の重量及び導入工程S41で決定された電極用触媒1とイオン交換水との重量比、及び現在のスラリー159の重量から、現在のスラリー159の含水率が算出される。容器本体202内のスラリー159が所定の含水率以下になり、固体状(ペレット状、ケーキ状)のWET品となったときに乾燥工程S32’が完了する。このように、水分量が均一であるスラリー159を乾燥させて触媒ケーキのWET品を調製することにより、このWET品の水分量を均一にすることができる。ここで、前記所定の含水率は80wt%未満であることが好ましく、容器本体202や攪拌羽根204にWET品が粘着しない。
【0106】
徐酸化工程S34’で、乾燥ステップS3の時と同様に、加熱媒体注入口213からジャケット206内の冷却媒体Cを排出し、駆動装置207および真空ポンプ234を停止し、供給バルブ215を操作して容器本体202内の圧力を少しずつ常圧に戻すことにより、触媒ケーキのWET品の徐酸化を行なう。そのため、従来の箱型棚式真空乾燥機と比較して、作業時間を大幅に短縮・自動化できる。さらに徐酸化工程S34’も自動化できるため、より確実に徐酸化工程を実施できる。容器本体202内の触媒ケーキのWET品の徐酸化処理が完了したときに徐酸化工程が完了する。
【0107】
(分析装置)
分析装置151は、触媒ケーキ調製ステップS50を経て得られるWET品を物性分析する。分析装置151では、取出し工程S35’で取出されたWET品の第2の物性分析ステップS60を実行する第2の物性分析実行手段161を含む。この第2の物性分析ステップS60では、少なくともWET品の含水率(wt%)を分析することが好ましい。なお本実施形態では、取出し工程S35’で取出されたWET品の一部を抜き取り、分析装置151で物性分析する方法を採用しているが、他の分析方法でもよい。
【0108】
[第1収容工程]
第1収容工程は、取出し工程S35’で取出された触媒ケーキのWET品を容器または袋に収容する工程である。この第1収容工程で使用する、収容する容器または袋はプラスチック製であり、内側に帯電防止剤が塗工されている。第2の物性分析工程の実行後、取出し工程S35’で取出されたWET品がこのプラスチック製の包装容器または包装袋に収容される。この第1収容工程は大気中で実行され、WET品を大気に慣らしながら包装容器または包装袋に収容している。この工程では、取出し工程S35’でプラスチック製の包装容器または包装袋を開口部208の下方に予め設置しておき、容器本体202内からこの包装容器内または包装袋内にWET品を落下させるように直接収容するように実行してもよく、取出し工程S35’で一旦取出してから、プラスチック製の包装容器または包装袋に収容するように実行してもよい。
【0109】
その後、触媒ケーキのWET品を収容したプラスチック製の包装容器または包装袋をさらに容器に収容する。この時に使用する容器はステンレス製のUN缶(国際基準に伴い日本船用品検定協会が行う容器性能試験に合格した“UN検査証(UNマーク)”が表示されている容器:危険物運搬容器)であり、内側に帯電防止剤が塗工されている。このUN缶はSUS316製であることが好ましく、国連番号:3178、品名:その他の可燃性物質、国連分類:4.1に区分される物質を収容可能で、容器等級が2又は3であることが好ましい。第2収容工程の完了後に、このUN缶が移送され、顧客へと供給される。
【0110】
[第2収容工程]
第2収容工程では、別の態様として、第1収容工程のプラスチック製の包装容器または包装袋の代わりに上記のUN缶を使用している。この場合、使用されるUN缶はWET品を密閉収容できるように構成される。
【0111】
(実施例2)
[反応器による処理(リスラリーステップ)]
乾燥装置による処理後に得られた電極用触媒1の粉体を、反応器152に見立てた滴下漏斗に導入し、リスラリーステップS40を行った。
導入工程S41において電極用触媒1の粉体100gおよびイオン交換水400mlを導入するときの反応器152内の液面高さを基に滴下漏斗の容量を選定し、滴下漏斗の有効容量が2Lで、
図23に示されるように、撹拌装置の撹拌羽根の直径が8cmの滴下漏斗を採用した。なお、この滴下漏斗に電極用触媒1の粉体100gおよびイオン交換水400mlを導入したときの液面の直径は16cmである。
【0112】
まず導入工程S41で、電極用触媒1の粉体100gおよびイオン交換水400mlの滴下漏斗への導入を行った。導入直後は電極用触媒1の粉体の略1/4が滴下漏斗の底に沈殿し、その他の電極用触媒1の粉体はイオン交換水の液面上に堆積した。このまま撹拌装置を駆動させずに30分静置したところ、電極用触媒1の粉体の大部分がイオン交換水の中に沈降した一方で、電極用触媒1の粉体の一部がまだイオン交換水の液面上に2~3cm程度堆積していた。なお、この堆積していた電極用触媒1の粉体は、イオン交換水を吸水しており湿った状態であった。
【0113】
この状態から混合工程S42に移行し、撹拌羽根が60rpm(毎分60回転)になるように撹拌装置を駆動させて、常温、大気圧で電極用触媒1とイオン交換水との撹拌混合を行なった。撹拌直後は電極用触媒1とイオン交換水とがすぐには混ざり合わない状態であった。30分経過後、回転している撹拌羽根の軸に沿った滴下漏斗の中心部のみ、電極用触媒1とイオン交換水とが混ざり合って撹拌される一方で、滴下漏斗の内壁近傍である電極用触媒1およびイオン交換水の外周部は、混合工程S42の移行前と同様に、電極用触媒1の粉体が湿った湿潤粉体の状態を維持していた。そして60分経過後、この電極用触媒1およびイオン交換水の外周部の湿潤粉体の濡れ、すなわち電極用触媒1とイオン交換水とが混ざり合って撹拌された部分が拡大し、電極用触媒1およびイオン交換水の中心部および外周部の一部がスラリー化し始めている一方で、この外周部の大部分が、やはり混合工程S42の移行前と同様に、電極用触媒1の粉体が湿ったケーキ状のままであった。
【0114】
この状態から、イオン交換水をさらに100ml導入し、電極用触媒1の粉体100gおよびイオン交換水500mlで撹拌羽根が60rpmになるように撹拌装置を駆動させて、常温、大気圧で電極用触媒1とイオン交換水との撹拌混合を行なった。30分経過後、滴下漏斗内の電極用触媒1およびイオン交換水の全体がスラリー状になった一方で、粘度が非常に高い状態であり、電極用触媒1の粉体が球状で点在していた。そして60分経過後、球状で点在していたこれらの電極用触媒1の粉体は減少した一方で、滴下漏斗の内壁近傍である電極用触媒1およびイオン交換水の縁の部分を中心に電極用触媒1の粉体が球状で点在しており、完全なスラリー状には至っていなかった。
【0115】
この状態から、撹拌羽根の回転数をさらに増加させ、電極用触媒1の粉体100gおよびイオン交換水500mlで撹拌羽根が80rpmになるように撹拌装置を駆動させて、常温、大気圧で電極用触媒1とイオン交換水との撹拌混合を行なった。しかしながら、撹拌羽根が60rpmのときと比較して劇的な変化はなく、やはり電極用触媒1およびイオン交換水の縁の部分を中心に電極用触媒1の粉体が球状で点在しており、撹拌する撹拌羽根の回転数を増加させた顕著な効果を見つけることができなかった。その後、撹拌羽根の回転数をさらに増加させ、電極用触媒1の粉体100gおよびイオン交換水500mlで撹拌羽根が250rpmになるように撹拌装置を駆動させて、常温、大気圧で電極用触媒1とイオン交換水との撹拌混合を行なった。その結果、球状で点在していた電極用触媒1の粉体は、電極用触媒1およびイオン交換水の縁の部分も大部分が消滅し、完全なスラリー状に変化した。
【0116】
<評価結果>
電極用触媒1の粉体とイオン交換水との比率が1:4(粉体:イオン交換水=1:4)の場合は、電極用触媒1とイオン交換水との撹拌混合を行なっても、全体が均一に湿潤してスラリー化させることは困難であった。
また電極用触媒1の粉体とイオン交換水との比率が1:5(粉体:イオン交換水=1:5)の場合、撹拌羽根の回転数が60rpmであるときは電極用触媒1およびイオン交換水をスラリー化させることは困難であり、撹拌羽根の回転数が80rpmであっても、電極用触媒1およびイオン交換水を完全にスラリー化させることはできなかった。攪拌処理装置201の攪拌羽根204を想定して撹拌羽根の回転数を80rpmに設定しており、そのため、反応器152を使用せずに乾燥装置14でリスラリーステップS40を実行することが困難であることが分かった。
電極用触媒1の粉体とイオン交換水との比率が1:5(粉体:イオン交換水=1:5)の場合、撹拌羽根の回転数が80rpmを超えた250rpmであるときは電極用触媒1およびイオン交換水を完全なスラリー化ができた。
【0117】
(実施例3)
[乾燥装置による処理(乾燥ステップ)]
洗浄装置としてフィルタープレスによる処理後に得られた電極用触媒前駆体を含むケーキを乾燥装置としての攪拌処理装置201に導入し、乾燥ステップS3を行った。
導入工程S31において、含水率が72.1wt%であり、見掛密度が540kg/m
3(タッピング後の見掛密度が700kg/m
3)のケーキを4.98kg導入した。以下、ケーキやスラリーの含水率(水分率)は、ケーキに含まれる水分の重量を、ケーキに含まれる触媒粉体の重量+水分の重量で割った値であり、水分の重量は、測定容器を温度70℃、空気中、70分の条件下で加熱し、赤外線水分計により、この測定容器内の水を含有しているケーキの測定前後の重量変化を測定することにより検出している。
乾燥工程S32において、真空ポンプ234を駆動させて容器本体202内をゲージ圧で12.3kPaに減圧し、攪拌羽根204を毎分85回転の回転速度で回転させ、加熱媒体注入口213からジャケット206にスチームSを注入して容器本体202の加熱温度t
1を110℃にして、容器本体202の槽内温度t
2、電極用触媒前駆体の温度(実測品温)t
3、ケーキの含水率C
1の経時変化を180分間測定した。この測定結果のグラフおよび表を
図24に示している(Run1乾燥曲線)。
この180分間の乾燥工程S32で、容器本体202の槽内温度が18.8℃から77.8℃に上昇し、電極用触媒前駆体の温度も19.7℃から108.9℃に上昇した。その後、冷却工程S33、徐酸化工程S34と順に行ない、取出し工程S35において、含水率が2.2wt%であり、見掛密度が450kg/m
3(タッピング後の見掛密度が480kg/m
3)のケーキを1.4kg取出すことができた。
また容器本体202内の電極用触媒の付着量は6.8gであり、測定用などでサンプルとして取出した電極用触媒前駆体の量は46gだった。そしてバグフィルタ231を介して排出され、コンデンサ233で凝縮されて回収された凝縮液の量は3.1kgであった。
【0118】
(実施例4)
反応器152としてのケトルによる処理後に得られた、電極用触媒をリスラリー化したスラリーを乾燥装置としての攪拌処理装置201に導入し、乾燥ステップS3を行った。
導入工程S31において、含水率が93.3wt%のスラリーを11.25kg導入した。ここでスラリーの含水率は、電極用触媒の粉体の含水率を5wt%とし、リスラリーステップS40で導入したイオン交換水の重量と合わせて計算することにより算出している。
乾燥工程S32において、真空ポンプ234を駆動させて容器本体202内をゲージ圧で12.3kPaに減圧し、攪拌羽根204を毎分85回転の回転速度で回転させ、加熱媒体注入口213からジャケット206にスチームSを注入して容器本体202の加熱温度t
4を110℃にして、容器本体202の槽内温度t
5、電極用触媒前駆体の温度(実測品温)t
6、ケーキの含水率C
2の経時変化を170分間測定した。この測定結果のグラフおよび表を
図25に示している(Run2乾燥曲線)。
この170分間の乾燥工程S32で、容器本体202の槽内温度t
5が約20℃から約50℃に上昇し、電極用触媒前駆体の温度t
6も20.2℃から52.5℃に上昇した。その後、冷却工程S33、徐酸化工程S34と順に行ない、取出し工程S35において、含水率が41.1wt%であり、見掛密度が840kg/m
3(タッピング後の見掛密度が900kg/m
3)のケーキを1.1kg取出すことができた。
また容器本体202内の電極用触媒の付着量は317gであり、測定用などでサンプルとして取出した電極用触媒前駆体の量は45gだった。そしてバグフィルタ231を介して排出され、コンデンサ233で凝縮されて回収された凝縮液の量は9.3kgであった。
【0119】
<評価結果>
[電極用触媒の製造]
(1)電極用触媒前駆体製造ステップS1でケトルにより電極用触媒前駆体の製造を行ない、洗浄ステップS2でフィルタープレスによりろ過、洗浄および脱水を行なって含水率60~80wt%の電極用触媒前駆体を取得し、この電極用触媒前駆体において乾燥ステップS3で攪拌処理装置201により乾燥、粗粉砕を行なって含水率1~5wt%の電極用触媒を取得し、この電極用触媒を粉砕機により粉砕を行なって電極用触媒の粉体を取得する工程。
この工程において、洗浄ステップS2でフィルタープレスによりろ過、洗浄および脱水を行なって取得した含水率72.1wt%の電極用触媒前駆体のケーキである湿潤化触媒ケーキを攪拌処理装置201に導入すると、
図24に示されるように乾燥ステップS3の乾燥工程S32において145分で湿潤化触媒ケーキの含水率が5.0wt%となり、(1)の工程で目標となる5.0wt%の電極用触媒を145分で作成できた。
【0120】
(2)電極用触媒前駆体製造ステップS1でケトルにより電極用触媒前駆体の製造を行ない、洗浄ステップS2で遠心分離機によりろ過、洗浄および脱水を行なって含水率60~80wt%の電極用触媒前駆体を取得し、この電極用触媒前駆体において乾燥ステップS3で攪拌処理装置201により乾燥、粗粉砕を行なって含水率1~5wt%の電極用触媒を取得し、この電極用触媒を粉砕機により粉砕を行なって電極用触媒の粉体を取得する工程。
比較例としてのこの工程において、洗浄ステップS2で遠心分離機によりろ過、洗浄および脱水を行なって取得した含水率72.1wt%の電極用触媒前駆体のケーキである湿潤化触媒ケーキを攪拌処理装置201に導入すると、乾燥ステップS3の乾燥工程S32において、240分で湿潤化触媒ケーキの含水率が5.0wt%となり、(2)の工程で目標となる5.0wt%の電極用触媒を240分で作成できた。
【0121】
[電極用触媒の粉体から湿潤化触媒ケーキの製造]
(3)リスラリーステップS40で、(1)の工程で得られた電極用触媒の粉体を反応器152としてのケトルによりリスラリー化し、この電極用触媒を含むスラリーを遠心分離器により脱水を行なって含水率60~80wt%の電極用触媒を取得する工程。
この工程において、ケトルにより実施例4で使用する含水率が93.3wt%のスラリーを作成し、このスラリーを遠心分離器により脱水を行なって、含水率72.1wt%の湿潤化触媒ケーキを作成できた。
【0122】
(4)触媒ケーキ調製ステップS50で、(3)の工程で得られた含水率60~80wt%の電極用触媒を攪拌処理装置201により乾燥、粗粉砕を行なって含水率20~75wt%の電極用触媒、好ましくは含水率30~70wt%の電極用触媒を取得する工程。
この工程において、含水率72.1wt%の湿潤化触媒ケーキを攪拌処理装置201に導入すると、
図24に示されるように乾燥ステップS3の乾燥工程S32において5~120分で湿潤化触媒ケーキの含水率が20.3~69.8wt%となってさらに含水率が低くなり、(4)の工程で目標となる含水率20~75wt%の電極用触媒を5~120分で作成できた。また5~95分で湿潤化触媒ケーキの含水率が31.3~69.8wt%となり、(4)の工程で好ましい目標となる含水率30~70wt%の電極用触媒を5~95分で作成できた。
【0123】
(5)リスラリーステップS40で、(1)の工程で得られた電極用触媒の粉体を反応器152としてのケトルによりリスラリー化し、この電極用触媒を含むスラリーをフィルタープレスにより脱水を行なって含水率60~80wt%の電極用触媒を取得し、この電極用触媒において乾燥ステップS3で攪拌処理装置201により乾燥、粗粉砕を行なって含水率20~75wt%の電極用触媒、好ましくは含水率30~70wt%の電極用触媒を取得する工程。
(1)と(2)との比較により、遠心分離機の代わりにフィルタープレスを使用して脱水を行なうことができ、この場合は脱水の時間短縮が可能であることが上述した第1の実施形態により理解されよう。そのため、フィルタープレスにより脱水を行なって含水率72.1wt%の湿潤化触媒ケーキを作成し、その後で攪拌処理装置201により乾燥、粗粉砕を行なって、(4)の工程と同様の結果を得ることができると想定される。
【0124】
(6)リスラリーステップS40で、(1)の工程で得られた電極用触媒の粉体を反応器152としてのケトルによりリスラリー化し、この電極用触媒を含むスラリーを攪拌処理装置201に直接導入し、攪拌処理装置201により乾燥、粗粉砕を行なって含水率20~75wt%の電極用触媒、好ましくは含水率30~70wt%の電極用触媒を取得する工程。
この工程において、ケトルによりリスラリー化した含水率が93.3wt%のスラリーを攪拌処理装置201に導入すると、
図25に示されるように、触媒ケーキ調製ステップS50の乾燥工程S32’において87~170分で湿潤化触媒ケーキの含水率が41.1~74.7wt%となってさらに含水率が低くなり、(4)の工程よりも多少時間がかかってしまうが、(6)の工程で目標となる含水率30~70wt%の電極用触媒を87~170分で作成できた。
【0125】
(参考例)
(7)攪拌処理装置201に(1)の工程で得られた電極用触媒の粉体およびイオン交換水を攪拌処理装置201に導入してリスラリー化し、この攪拌処理装置201内の電極用触媒を含むスラリーを当該攪拌処理装置201により乾燥、粗粉砕を行なって含水率20~75wt%の電極用触媒、好ましくは含水率30~70wt%の電極用触媒を取得する工程。
この工程において、上述したように攪拌処理装置201を使用して電極用触媒の粉体およびイオン交換水をリスラリー化することができなかった。
【0126】
以上、本発明を実施形態および実施例に基づいて説明したが、本発明は種々の変形実施をすることができる。特に、電極用触媒前駆体製造装置12(反応工程、電極用触媒前駆体製造装置ステップS1)、および、洗浄装置13(洗浄ステップS2)については、特に限定されず、種々の変形例を採用することができる。
【0127】
例えば洗浄装置13において、その構造は
図2に示すものに限定されず、ろ室112の構造も
図3~
図10に示すものに限定されるものではなく、本実施形態に係る洗浄ステップS2の各工程S21~S27および圧搾工程において同様の作用効果を得られる構造のものであれば、種々の変形例を採用することができる。また乾燥装置14においても、その構造は
図11に示すものに限定されず、容器本体202の構造も
図11~
図13に示すものに限定されるものではなく、本実施形態に係る乾燥ステップS3の各工程S31~S35において同様の作用効果を得られる構造のものであれば、種々の変形例を採用することができる。
【符号の説明】
【0128】
1 電極用触媒
2 担体
3 触媒粒子
4 コア部
5 シェル部
10 電極用触媒の製造システム
12 電極用触媒前駆体製造装置
13 洗浄装置
14 乾燥装置
201 攪拌処理装置
202 容器本体
204 攪拌羽根
222 回転主軸
223 螺旋リボン回転翼
224 アーム(回転翼支柱)
226 ガス噴出孔
152 反応器
S1 電極用触媒前駆体製造ステップ
S2 洗浄ステップ
S3 乾燥ステップ
S31 導入工程
S32 乾燥工程
S33 冷却工程
S34 徐酸化工程
S35 取出し工程
S36 第1の物性分析ステップ(第1分析工程)
S40 リスラリーステップ
S50 触媒ケーキ調製ステップ
S60 第2の物性分析ステップ(第2分析工程)
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明の電極用触媒の製造システムおよび製造方法によれば、作業者による電極用触媒前駆体を移すための作業をなくし、且つ、電極用触媒前駆体の乾燥時間を短縮することで、ハロゲン含有量、特に塩素含有量を低く抑えた電極用触媒を製造するための手間と時間を大幅に低減することができる。
【0130】
したがって、本発明は、燃料電池や燃料電池自動車、携帯モバイル等の電機機器産業のみならず、エネファームやコジェネレーションシステム等に適用することができる電極用触媒の製造システムおよび製造方法であり、エネルギー産業や環境技術関連の発達に寄与する。