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特許7605840B細胞性悪性疾患を処置するための細胞療法と関連する毒性および奏効に関係する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】B細胞性悪性疾患を処置するための細胞療法と関連する毒性および奏効に関係する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20241217BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241217BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241217BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241217BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20241217BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241217BHJP
   A61K 31/56 20060101ALI20241217BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20241217BHJP
   A61K 31/7076 20060101ALI20241217BHJP
   A61K 31/64 20060101ALI20241217BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20241217BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241217BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20241217BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241217BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241217BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20241217BHJP
   G01N 33/49 20060101ALI20241217BHJP
   C07K 14/525 20060101ALN20241217BHJP
   C07K 14/54 20060101ALN20241217BHJP
   C07K 16/24 20060101ALN20241217BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20241217BHJP
   C07K 14/475 20060101ALN20241217BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
G01N33/50 Z
A61P35/02 ZNA
A61P35/00
A61P25/00
A61K35/12
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K31/56
A61K31/573
A61K31/7076
A61K31/64
A61K31/519
C12N5/10
C07K19/00
C12N15/13
C12N15/62 Z
G01N33/574 A
G01N33/49 A
C07K14/525
C07K14/54
C07K16/24
C07K16/28
C07K14/475
C07K14/705
【請求項の数】 52
(21)【出願番号】P 2022534164
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-06
(86)【国際出願番号】 US2020063486
(87)【国際公開番号】W WO2021113770
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-12-04
(31)【優先権主張番号】62/945,105
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516316897
【氏名又は名称】ジュノー セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】デュボフスキー ジェイソン エイ.
(72)【発明者】
【氏名】リトレフスキ ジュリー
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン イーサン
(72)【発明者】
【氏名】ソープ ジェリル
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/223101(WO,A1)
【文献】特表2018-510340(JP,A)
【文献】特表2019-517589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、細胞療法の投与後に毒性を発現するリスク決定を補助する方法:
細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象において、リンパ節腫瘍負荷量、血液腫瘍負荷量、およびリンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比の中から選択される1つまたは複数の疾患負荷量パラメータを評価する工程であって、該細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、該1つまたは複数のパラメータは該細胞療法を投与する前の対象から評価される、工程;ならびに、
前記1つまたは複数のパラメータの値を、各パラメータについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、
(1)(a)リンパ節腫瘍負荷量がリンパ節腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり、(b)血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり、および/または(c)リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベル未満であるなら、対象、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクがあると示され、または
(2)(a)リンパ節腫瘍負荷量が腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり、(b)血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり、および/または(c)リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベルを上回るのであれば、対象、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクはないと示される、
工程。
【請求項2】
慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象を処置する方法において使用するための細胞療法を含む医薬であって、該方法が以下の工程を含む、医薬:
(a)リンパ節腫瘍負荷量、血液腫瘍負荷量、およびリンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比の中から選択される1つまたは複数の疾患負荷量パラメータを評価する工程であって、該細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、該1つまたは複数のパラメータは該細胞療法を投与する前の対象から評価される、工程;
(b)前記1つまたは複数のパラメータの値を、各パラメータについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、
(1)(a)リンパ節腫瘍負荷量がリンパ節腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり、(b)血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり、および/または(c)リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベル未満であるなら、対象を、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクがあると同定し、または
(2)(a)リンパ節腫瘍負荷量が腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり、(b)血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり、および/または(c)リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベルを上回るのであれば、対象を、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクはないと同定する、
工程;ならびに、
(c)対象が神経毒性を発現するリスクがない場合、該対象に細胞療法を投与する工程。
【請求項3】
慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象を処置する方法において使用するための細胞療法を含む医薬であって、
該方法は、請求項1記載の細胞療法の投与後に毒性を発現するリスクを決定する工程を含み、
対象が神経毒性を発現するリスクがあると示された場合は、該方法は、該対象に細胞療法を、低減された用量で、投与する工程をさらに含み、
細胞療法は、請求項1に記載のとおりであり、
(a)該方法は、神経毒性の発現もしくは神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しもしくは減弱することができる作用物質もしくは他の処置を対象に投与する工程をさらに含む、および/または
(b)対象に対する細胞療法の投与は、入院患者設定でおよび/または1日もしくは複数日の入院を伴って、実行されるかまたは実行されるように指定される、
医薬。
【請求項4】
神経毒性を発現するリスクがあると対象が同定された場合に、前記方法が、
(i)対象に細胞療法を、低減された用量で、投与する工程であって、ここで、
(a)前記方法は、神経毒性の発現もしくは神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しもしくは減弱することができる作用物質もしくは他の処置を対象に投与する工程をさらに含み、および/または
(b)対象に対する細胞療法の投与は、入院患者設定でおよび/または1日もしくは複数日の入院を伴って、実行されるかまたは実行されるように指定される、
工程;あるいは
(ii)CLLまたはSLLを処置するための細胞療法以外の代替処置を対象に投与する工程
をさらに含む、請求項2記載の医薬。
【請求項5】
神経毒性を発現するリスクはないと対象が同定された場合に、前記方法が、
(i)細胞療法を対象に投与する工程であって、ここで、
(a)持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈する時または呈した後、対象が毒性の徴候もしくは症状を呈さない限りまたは呈するまで、対象には、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質および他の処置を投与せず;ならびに/あるいは
(b)持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、細胞療法の投与および経過観察が実行される、
工程
をさらに含む、請求項2または請求項3記載の医薬。
【請求項6】
以下の工程を含む、細胞療法による処置のために対象を選択する方法:
細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象において、リンパ節腫瘍負荷量、血液腫瘍負荷量、およびリンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比の中から選択される1つまたは複数の疾患負荷量パラメータを評価する工程であって、該細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、該パラメータは該細胞療法を投与する前の対象から評価される、工程;ならびに、
前記1つまたは複数のパラメータの値を、各パラメータについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、
(1)(a)リンパ節腫瘍負荷量がリンパ節腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり、(b)血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり、および/または(c)リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベル未満であるなら、対象を、
(i)低減された用量での細胞療法の投与;
(ii)神経毒性の発現または神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置の投与;
(iii)入院患者設定で、および/または1日もしくは複数日の入院を伴って、実行されるかまたは実行されるように指定される細胞療法の投与;および/または
(iv)CLLもしくはSLLを処置するための細胞療法以外の代替処置の投与
のために選択し;または
(2)(a)リンパ節腫瘍負荷量が腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり、(b)血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり、および/または(c)リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベルを上回るのであれば、対象を、
(i)細胞療法の投与のために選択し、ここで、
(a)持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈する時または呈した後、対象が毒性の徴候もしくは症状を呈さない限りまたは呈するまで、対象には、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質および他の処置を投与せず;ならびに/あるいは
(b)持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、細胞療法の投与および経過観察が実行される、
工程。
【請求項7】
慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象を処置する方法において使用するための細胞療法を含む医薬であって、該方法が以下の工程を含む、医薬:
リンパ節腫瘍負荷量、血液腫瘍負荷量、およびリンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比の中から選択される1つまたは複数の疾患負荷量パラメータを評価する工程であって、該対象は、細胞療法による処置の候補であり、該細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、該パラメータは該細胞療法を投与する前の対象から評価される、工程;ならびに、
前記1つまたは複数のパラメータの値を、各パラメータについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、
(1)(a)リンパ節腫瘍負荷量がリンパ節腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり、(b)血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり、および/または(c)リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベル未満であるなら、対象に、
(i)低減された用量での細胞療法;
(ii)神経毒性の発現または神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置;
(iii)入院患者設定で、および/または1日もしくは複数日の入院を伴って、実行されるかまたは実行されるように指定される細胞療法;および/または
(iv)CLLもしくはSLLを処置するための細胞療法以外の代替処置
を投与し;または
(2)(a)リンパ節腫瘍負荷量が腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり、(b)血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり、および/または(c)リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベルを上回るのであれば、対象に、細胞療法を投与し、ここで、
(i)持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈する時または呈した後、対象が毒性の徴候もしくは症状を呈さない限りまたは呈するまで、対象には、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質および他の処置を投与せず;ならびに/あるいは
(ii)持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、細胞療法の投与および経過観察が実行される、
工程。
【請求項8】
血液腫瘍負荷量を評価する工程が、対象の血液中のリンパ球濃度を決定する工程を含み、該濃度が血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数である、請求項1または請求項6記載の方
【請求項9】
血液腫瘍負荷量についての閾値レベルが、800または約800リンパ球/μL~3000または約3000リンパ球/μLの値、または800リンパ球/μL、900リンパ球/μL、1000リンパ球/μL、1250リンパ球/μL、1500リンパ球/μL、1750リンパ球/μL、2000リンパ球/μL、2250リンパ球/μL、2500リンパ球/μL、2750リンパ球/μLもしくは3000リンパ球/μL、または約800リンパ球/μL、900リンパ球/μL、1000リンパ球/μL、1250リンパ球/μL、1500リンパ球/μL、1750リンパ球/μL、2000リンパ球/μL、2250リンパ球/μL、2500リンパ球/μL、2750リンパ球/μLもしくは3000リンパ球/μLの値、または前記のいずれかの間の値である、請求項1、6、および8のいずれか一項記載の方
【請求項10】
リンパ節腫瘍負荷量を評価する工程が、最大リンパ節径を決定する工程を含み、最大リンパ節径がセンチメートル(cm)の単位で測定される、請求項1、6、8、および9のいずれか一項記載の方
【請求項11】
リンパ節腫瘍負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルが4または約4cm~7または約7cmの値である、請求項10記載の方
【請求項12】
リンパ節腫瘍負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルが、4cm、4.25cm、4.5cm、4.75cm、5cm、5.25cm、5.5cm、5.75cm、6cm、6.25cm、6.5cm、6.75cmもしくは7cm、または約4cm、4.25cm、4.5cm、4.75cm、5cm、5.25cm、5.5cm、5.75cm、6cm、6.25cm、6.5cm、6.75cmもしくは7cmの値、または前記のいずれかの間の値である、請求項10または請求項11記載の方
【請求項13】
リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比を評価する工程が、センチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比を決定する工程を含み、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルが、300または約300から、1000または約1000の値である、請求項1、6、8、および9のいずれか一項記載の方
【請求項14】
リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルが、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950もしくは1000、または約300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950もしくは1000の値、または前記のいずれかの間の値である、請求項13記載の方
【請求項15】
リンパ節腫瘍負荷量を評価する工程が二方向積和(SPD)を決定する工程を含む、請求項1、6、8、および9のいずれか一項記載の方
【請求項16】
SPDが平方センチメートル(cm2)の単位で測定される、請求項15記載の方
【請求項17】
リンパ節腫瘍負荷量としてのSPDについての閾値レベルが10または約10cm2~40または約40cm2の値である、請求項15または請求項16記載の方
【請求項18】
リンパ節腫瘍負荷量としてのSPDについての閾値レベルが、10cm2、12.5cm2、15cm2、17.5cm2、20cm2、22.5cm2、25cm2、27.5cm2、30cm2、32.5cm2、35cm2、37.5cm2もしくは40cm2、または約10cm2、12.5cm2、15cm2、17.5cm2、20cm2、22.5cm2、25cm2、27.5cm2、30cm2、32.5cm2、35cm2、37.5cm2もしくは40cm2の値、または前記のいずれかの間の値である、請求項1517のいずれか一項記載の方
【請求項19】
リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比を評価する工程が、平方センチメートル(cm2)の単位での二方向積和(SPD)に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比を決定する工程を含み、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルが、25または約25から、500または約500の値である、請求項1、6、8、および9のいずれか一項記載の方
【請求項20】
リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルが、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450もしくは500、または約25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450もしくは500の値、または前記のいずれかの間の値である、請求項19記載の方
【請求項21】
1つまたは複数の疾患負荷量パラメータの値が、対象にリンパ球枯渇療法を投与する前の前記1つまたは複数の疾患負荷量パラメータの値である、請求項1、6、および8~20のいずれか一項記載の方
【請求項22】
血液腫瘍負荷量を評価する工程が、対象の血液中のリンパ球濃度を決定する工程を含み、該濃度が血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数である、請求項2~5、および7のいずれか一項記載の医薬。
【請求項23】
血液腫瘍負荷量についての閾値レベルが、800または約800リンパ球/μL~3000または約3000リンパ球/μLの値、または800リンパ球/μL、900リンパ球/μL、1000リンパ球/μL、1250リンパ球/μL、1500リンパ球/μL、1750リンパ球/μL、2000リンパ球/μL、2250リンパ球/μL、2500リンパ球/μL、2750リンパ球/μLもしくは3000リンパ球/μL、または約800リンパ球/μL、900リンパ球/μL、1000リンパ球/μL、1250リンパ球/μL、1500リンパ球/μL、1750リンパ球/μL、2000リンパ球/μL、2250リンパ球/μL、2500リンパ球/μL、2750リンパ球/μLもしくは3000リンパ球/μLの値、または前記のいずれかの間の値である、請求項2~5、7、および22のいずれか一項記載の医薬。
【請求項24】
リンパ節腫瘍負荷量を評価する工程が、最大リンパ節径を決定する工程を含み、最大リンパ節径がセンチメートル(cm)の単位で測定される、請求項2~5、7、22、および23のいずれか一項記載の医薬。
【請求項25】
リンパ節腫瘍負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルが4または約4cm~7または約7cmの値である、請求項24記載の医薬。
【請求項26】
リンパ節腫瘍負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルが、4cm、4.25cm、4.5cm、4.75cm、5cm、5.25cm、5.5cm、5.75cm、6cm、6.25cm、6.5cm、6.75cmもしくは7cm、または約4cm、4.25cm、4.5cm、4.75cm、5cm、5.25cm、5.5cm、5.75cm、6cm、6.25cm、6.5cm、6.75cmもしくは7cmの値、または前記のいずれかの間の値である、請求項24または請求項25記載の医薬。
【請求項27】
リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比を評価する工程が、センチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比を決定する工程を含み、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルが、300または約300から、1000または約1000の値である、請求項2~5、および7のいずれか一項記載の医薬。
【請求項28】
リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルが、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950もしくは1000、または約300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950もしくは1000の値、または前記のいずれかの間の値である、請求項27記載の医薬。
【請求項29】
リンパ節腫瘍負荷量を評価する工程が二方向積和(SPD)を決定する工程を含む、請求項2~5、および7のいずれか一項記載の医薬。
【請求項30】
SPDが平方センチメートル(cm 2 )の単位で測定される、請求項29記載の医薬。
【請求項31】
リンパ節腫瘍負荷量としてのSPDについての閾値レベルが10または約10cm 2 ~40または約40cm 2 の値である、請求項29または請求項30記載の医薬。
【請求項32】
リンパ節腫瘍負荷量としてのSPDについての閾値レベルが、10cm 2 、12.5cm 2 、15cm 2 、17.5cm 2 、20cm 2 、22.5cm 2 、25cm 2 、27.5cm 2 、30cm 2 、32.5cm 2 、35cm 2 、37.5cm 2 もしくは40cm 2 、または約10cm 2 、12.5cm 2 、15cm 2 、17.5cm 2 、20cm 2 、22.5cm 2 、25cm 2 、27.5cm 2 、30cm 2 、32.5cm 2 、35cm 2 、37.5cm 2 もしくは40cm 2 の値、または前記のいずれかの間の値である、請求項29~31のいずれか一項記載の医薬。
【請求項33】
リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比を評価する工程が、平方センチメートル(cm 2 )の単位での二方向積和(SPD)に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比を決定する工程を含み、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルが、25または約25から、500または約500の値である、請求項2~5、および7のいずれか一項記載の医薬。
【請求項34】
リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルが、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450もしくは500、または約25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450もしくは500の値、または前記のいずれかの間の値である、請求項33記載の医薬。
【請求項35】
1つまたは複数の疾患負荷量パラメータの値が、対象にリンパ球枯渇療法を投与する前の前記1つまたは複数の疾患負荷量パラメータの値である、請求項2~5、7、および22~34のいずれか一項記載の医薬。
【請求項36】
細胞療法の投与前に対象にリンパ球枯渇療法を投与する工程をさらに含む、請求項2~5、7、および22~35のいずれか一項記載の医薬
【請求項37】
対象にブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤(BTKi)を投与する工程をさらに含み、BTKiがイブルチニブである、請求項2~5、7、および22~36のいずれか一項記載の医薬
【請求項38】
BTKi投与が、細胞療法の投与開始前に開始される、請求項37記載の医薬
【請求項39】
イブルチニブが1日あたり140または約140mg~840または約840mgの用量で投与される;
イブルチニブが1日あたり280または約280mg~560または約560mgの用量で投与される;あるいは
イブルチニブが1日あたり420または約420mgの用量で投与される、
請求項37または請求項38記載の医薬
【請求項40】
疾患が再発性または難治性(r/r)CLLである、および/あるいは疾患が再発性または難治性(r/r)SLLである、請求項2~5、7、および22~35のいずれか一項記載の医薬
【請求項41】
操作された細胞の前記用量が、CAR発現CD4細胞 対 CAR発現CD8細胞の所定の比を含み、該比はおよそ1:3~およそ3:1である、請求項2~5、7、および22~40のいずれか一項記載の医薬
【請求項42】
操作された細胞の前記用量が、2.5×107または約2.5×107個の総CAR発現細胞~1.0×108または約1.0×108個の総CAR発現細胞を含む、請求項2~5、7、および22~41のいずれか一項記載の医薬
【請求項43】
細胞療法の投与前に、
対象が、CAR発現細胞の別の用量およびリンパ球枯渇療法の他に、CLLまたはSLLのための1つまたは複数の前治療で、処置されている;ならびに/あるいは
対象が、2つ以上の前治療による処置後の寛解に続いて再発しており、または2つ以上の前治療による処置に対して抵抗性になっており、2つ以上の前治療による処置に失敗しており、および/または2つ以上の前治療による処置に対して不耐容である、
請求項2~5、7、および22~42のいずれか一項記載の医薬
【請求項44】
1つまたは複数の前治療が、少なくとも2つの前治療である、請求項43記載の医薬。
【請求項45】
1つまたは複数の前治療が、キナーゼ阻害剤、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤、イブルチニブ;ベネトクラクス;フルダラビンとリツキシマブを含む併用治療;放射線治療;および造血幹細胞移植(HSCT)から選択される、請求項43記載の医薬
【請求項46】
対象が、イブルチニブおよびベネトクラクスによる処置後の寛解に続いて再発しており、イブルチニブおよびベネトクラクスによる処置に対して抵抗性になっており、イブルチニブおよびベネトクラクスによる処置に失敗しており、ならびに/またはイブルチニブおよびベネトクラクスに対して不耐容である、請求項43~45のいずれか一項記載の医薬
【請求項47】
操作された細胞が、対象から得られた初代T細胞である、請求項2~5、7、および22~46のいずれか一項記載の医薬
【請求項48】
操作された細胞が、対象にとって自己由来である、請求項2~5、7、および22~47のいずれか一項記載の医薬
【請求項49】
CARが、CD19に特異的な細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、4-1BBである、共刺激分子由来の細胞質シグナル伝達ドメインと、CD3ゼータである、一次シグナル伝達ITAM含有分子由来の細胞質シグナル伝達ドメインとを含み、および/または
CARは、順に、CD19に特異的な細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、共刺激分子由来の細胞質シグナル伝達ドメインと、一次シグナル伝達ITAM含有分子由来の細胞質シグナル伝達ドメインとを含む、
請求項2~5、7、および22~48のいずれか一項記載の医薬
【請求項50】
抗原結合ドメインがscFvである、請求項49記載の医薬
【請求項51】
scFvが、RASQDISKYLN(SEQ ID NO:35)のCDRL1配列、SRLHSGV(SEQ ID NO:36)のCDRL2配列、および/もしくはGNTLPYTFG(SEQ ID NO:37)のCDRL3配列、ならびに/またはDYGVS(SEQ ID NO:38)のCDRH1配列、VIWGSETTYYNSALKS(SEQ ID NO:39)のCDRH2配列、および/もしくはYAMDYWG(SEQ ID NO:40)のCDRH3配列を含み;
scFvが、FMC63の可変重鎖領域およびFMC63の可変軽鎖領域、ならびに/またはFMC63のCDRL1配列、FMC63のCDRL2配列、FMC63のCDRL3配列、FMC63のCDRH1配列、FMC63のCDRH2配列、およびFMC63のCDRH3配列を含むか、または前記のいずれかと同じエピトープに結合するか、または前記のいずれかと結合に関して競合し;
scFvが、SEQ ID NO:41に示すVHおよびSEQ ID NO:42に示すVLを含み、該VHと該VLとはフレキシブルリンカーで隔てられ、該フレキシブルリンカーはSEQ ID NO:24に示す配列であるか、もしくはSEQ ID NO:24に示す配列を含み;および/または
scFvがSEQ ID NO:43に示す配列であるか、もしくはSEQ ID NO:43に示す配列を含む、
請求項50記載の医薬
【請求項52】
CD19に結合するCARを発現するT細胞を含む、細胞療法のための組成物、または細胞療法のための複数の組成物のうちの1つと、請求項2~5、7、および22~51のいずれか一項記載の医薬に従ってT細胞組成物を投与することを指定する、細胞療法を投与するための説明書とを含む、製造物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年12月6日に出願された「METHODS RELATED TO TOXICITY AND RESPONSE ASSOCIATED WITH CELL THERAPY FOR TREATING B CELL MALIGNANCIES」と題する米国仮出願第62/945,105号に基づく優先権を主張し、その内容は参照により、あらゆる目的で本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表の参照による組入れ
本出願は電子形式の配列表と共に出願されている。配列表は、2020年12月3日に作成された735042022840SeqList.TXTという名称のファイルとして提供され、そのサイズは36,864バイトである。配列表の電子形式の情報は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0003】
分野
本開示は、いくつかの局面において、毒性(例えば神経毒性)のリスクおよび/または細胞療法の奏効の見込みを決定するための方法に関する。いくつかの局面において、本方法は一般に、毒性および/または奏効と関連するパラメータまたはバイオマーカー(例えば血中分析物)を評価する工程を伴う。いくつかの局面において、本方法は、特定のB細胞性悪性疾患、例えば再発性もしくは難治性CLLなどの慢性リンパ性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を持つ対象を処置するための細胞の複数用量の投与を伴う養子細胞療法に関する。養子細胞療法のための細胞は、一般に、キメラ抗原受容体(CAR)などの組換え受容体を発現する。いくつかの局面において、本方法は、例えば細胞療法による処置のために対象を同定または選択するために使用することができる。
【背景技術】
【0004】
背景
慢性リンパ性白血病(CLL)および小リンパ球性リンパ腫(SLL)は、血中および骨髄中ならびに/またはリンパ節中に未熟リンパ球が見いだされる低悪性度(indolent)がんである。CLLおよびSLLは不治と考えられており、患者は結局は再発するか、利用可能な治療に対して難治性になる。キメラ抗原受容体(CAR)などの組換え受容体を発現する操作された細胞を使った養子細胞療法には、特定の方法を利用することができる。例えば毒性のリスクを低減するために、および/または処置の奏効を高めるために、改良された方法が必要とされている。そのような必要性を満たす方法、使用および製造物品が提供される。
【発明の概要】
【0005】
概要
本明細書では、毒性を発現するリスクを決定する方法および細胞療法を投与した後の奏効の見込みを決定する方法が提供される。任意の態様の一部において、本方法は、パラメータの値またはバイオマーカーもしくは分析物のレベル、濃度もしくは量を、その特定パラメータ、バイオマーカーまたは分析物についての閾値と比較する工程を伴う。任意の態様の一部において、比較は、毒性のリスクおよび/または細胞療法の奏効の見込みを決定するために使用することができる。任意の態様の一部において、比較は、毒性のリスクを決定するために使用することができる。任意の態様の一部において、比較は、細胞療法の奏効の見込みを決定するために使用することができる。任意の態様の一部において、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含む。任意の態様の一部において、パラメータ、バイオマーカーまたは分析物は、慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象から評価されるか、またはそのような対象から得られた試料において評価される。いくつかの態様において、対象は慢性リンパ芽球性白血病(CLL)を有する。いくつかの態様において、対象は小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する。任意の態様の一部において、対象は、細胞療法による処置の候補であり、および/または細胞療法による処置を受けている。任意の態様の一部において、対象は細胞療法による処置の候補である。いくつかの態様において、対象は細胞療法による処置を受けている。任意の態様の一部において、提供される方法は、毒性を発現するリスクを持ちおよび/または細胞療法が奏効する可能性が高い対象を同定しまたは選択するために、ならびに/または特定の処置、例えば追加の治療作用物質による処置の対象を選択するために、使用することができる。任意の態様の一部において、提供される方法は、毒性を発現するリスクを持つ対象を同定しまたは選択するために使用することができる。任意の態様の一部において、提供される方法は、細胞療法が奏効する可能性が高い対象を同定しまたは選択するために使用することができる。任意の態様の一部において、提供される方法は、特定の処置、例えば追加の治療作用物質による処置の対象を選択するために使用することができる。
【0006】
本明細書では、以下の工程を伴う、細胞療法の投与後に毒性を発現するリスクを決定する方法が提供される:
細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象において、リンパ節腫瘍負荷量、血液腫瘍負荷量およびリンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比の中から選択される1つまたは複数の疾患負荷量パラメータを評価する工程であって、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、該パラメータは該細胞療法を投与する前の対象から評価される、工程;ならびに、
前記1つまたは複数のパラメータの値を、各パラメータについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、リンパ節腫瘍負荷量がリンパ節腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり、血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり、および/またはリンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベル未満であるなら、対象を、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクがあると同定し、またはリンパ節腫瘍負荷量が腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり、血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり、および/またはリンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベルを上回るのであれば、対象を、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクはないと同定する、工程。
【0007】
任意の態様の一部において、神経毒性を発現するリスクがあると対象が同定された場合、本方法は、対象に細胞療法を、任意で低減された用量で、投与する工程をさらに含み、この場合、本方法は、任意で、神経毒性の発現または神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置を対象に投与する工程をさらに含み、および/または対象に対する細胞療法の投与は、入院患者設定でおよび/または1日もしくは複数日の入院を伴って、実行されるかまたは実行されるように指定されるか;または本方法は、CLLもしくはSLLを処置するための細胞療法以外の代替処置を対象に投与する工程を、さらに含む。任意の態様の一部において、神経毒性を発現するリスクがあると対象が同定された場合、本方法は、細胞療法を低減された用量で対象に投与する工程を、さらに含む。いくつかの態様において、神経毒性を発現するリスクがあると対象が同定された場合、本方法は、神経毒性の発現または神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置を対象に投与する工程を、さらに含む。いくつかの態様において、神経毒性を発現するリスクがあると対象が同定された場合、対象に対する細胞療法の投与は、入院患者設定でおよび/または1日もしくは複数日の入院を伴って、実行されるかまたは実行されるように指定される。いくつかの態様において、神経毒性を発現するリスクがあると対象が同定された場合、本方法は、CLLまたはSLLを処置するための細胞療法以外の代替処置を対象に投与する工程を含む。
【0008】
任意の態様の一部において、神経毒性を発現するリスクはないと対象が同定された場合、本方法は、細胞療法を対象に投与する工程をさらに含み、任意で、ここで、
任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈する時または呈した後、対象が毒性の徴候もしくは症状を呈さない限りまたは呈するまで、対象には、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質および他の処置を投与せず;ならびに/あるいは、
任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、細胞療法の投与および任意の経過観察が実行される。任意の態様の一部において、神経毒性を発現するリスクはないと対象が同定された場合、本方法は、細胞療法を対象に投与する工程を、さらに含む。任意の態様の一部において、神経毒性を発現するリスクはないと対象が同定された場合、対象には、対象が毒性の徴候または症状を呈さない限り、または対象が毒性の徴候もしくは症状を呈するまでは、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置が投与されない。任意の態様の一部において、神経毒性を発現するリスクはないと対象が同定された場合、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、対象には、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質および他の処置が投与されない。いくつかの態様において、神経毒性を発現するリスクはないと対象が同定された場合、細胞療法の投与および任意の経過観察は、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、実行される。いくつかの態様において、神経毒性を発現するリスクはないと対象が同定された場合、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、細胞療法の投与および任意の経過観察が実行される。
【0009】
本明細書では、以下の工程を伴う、細胞療法による処置のために対象を選択する方法が提供される:
細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象において、リンパ節腫瘍負荷量、血液腫瘍負荷量、およびリンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比の中から選択される1つまたは複数の疾患負荷量パラメータを評価する工程であって、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、該パラメータは該細胞療法を投与する前の対象から評価される、工程;ならびに、
前記1つまたは複数のパラメータの値を、各パラメータについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、リンパ節腫瘍負荷量がリンパ節腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり、血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり、および/またはリンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベル未満であるなら、対象を、低減された用量での細胞療法の投与;神経毒性の発現または神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置の投与;入院患者設定でおよび/または1日もしくは複数日の入院を伴って、実行されるかまたは実行されるように指定される細胞療法の投与;および/またはCLLもしくはSLLを処置するための細胞療法以外の代替処置の投与のために選択し;またはリンパ節腫瘍負荷量が腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり、血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり、および/またはリンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベルを上回るのであれば、対象を、細胞療法の投与のために選択し、任意で、ここで、
任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈する時または呈した後、対象が毒性の徴候もしくは症状を呈さない限りまたは呈するまで、対象には、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質および他の処置を投与せず;ならびに/あるいは
任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、細胞療法の投与および任意の経過観察が実行される、工程。
【0010】
また、本明細書では、以下の工程を伴う、細胞療法による処置のために対象を選択する方法が提供される:
細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象において、リンパ節腫瘍負荷量、血液腫瘍負荷量、およびリンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比の中から選択される1つまたは複数の疾患負荷量パラメータを評価する工程であって、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、該パラメータは該細胞療法を投与する前の対象から評価される、工程;ならびに、
前記1つまたは複数のパラメータの値を、各パラメータについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、リンパ節腫瘍負荷量がリンパ節腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり、血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり、および/またはリンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベル未満であるなら、対象を、低減された用量での細胞療法の投与;神経毒性の発現または神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置の投与;入院患者設定でおよび/または1日もしくは複数日の入院を伴って、実行されるかまたは実行されるように指定される細胞療法の投与;および/またはCLLもしくはSLLを処置するための細胞療法以外の代替処置の投与のために選択し;またはリンパ節腫瘍負荷量が腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり、血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり、および/またはリンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベルを上回るのであれば、対象を、細胞療法の投与のために選択する、工程。いくつかの態様において、対象には、対象が毒性の徴候または症状を呈さない限り、または対象が毒性の徴候もしくは症状を呈するまでは、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置が投与されない。いくつかの態様において、対象には、対象が毒性の徴候または症状を呈さない限り、または対象が毒性の徴候もしくは症状を呈するまでは、例えば対象が持続的発熱または解熱剤による処置後も下がらないか下がっていない発熱もしくは解熱剤による処置後も1℃超は下がらない発熱を呈さないうちは、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置が投与されない。いくつかの態様において、細胞療法の投与および任意の経過観察は、外来患者ベースで実行される。いくつかの態様において、細胞療法の投与および任意の経過観察は、対象を入院させることなく実行される。いくつかの態様において、細胞療法の投与および任意の経過観察は、病院に一泊させることなく実行される。いくつかの態様において、細胞療法の投与および任意の経過観察は、入院もしくは病院への一泊を要求することなく実行される。いくつかの態様において、細胞療法の投与および任意の経過観察は、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、実行される。
【0011】
任意の態様の一部において、本方法は、細胞療法、毒性の発現もしくは毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しもしくは減弱することができる作用物質もしくは他の処置、および/または代替処置を、対象に投与する工程を、さらに含む。任意の態様の一部において、本方法は、細胞療法を対象に投与する工程を、さらに含む。任意の態様の一部において、本方法は、前記作用物質を対象に投与する工程を、さらに含む。任意の態様の一部において、本方法は、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる他の処置を対象に投与する工程を、さらに含む。任意の態様の一部において、本方法は、代替処置を対象に投与する工程を、さらに含む。
【0012】
任意の態様の一部において、血液腫瘍負荷量を評価する工程は、対象の血液中のリンパ球濃度を決定する工程を含む。任意の態様の一部において、濃度は、血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数である。任意の態様の一部において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは、800または約800リンパ球/μL~3000または約3000リンパ球/μLの値である。任意の態様の一部において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは、800リンパ球/μL、900リンパ球/μL、1000リンパ球/μL、1250リンパ球/μL、1500リンパ球/μL、1750リンパ球/μL、2000リンパ球/μL、2250リンパ球/μL、2500リンパ球/μL、2750リンパ球/μLもしくは3000リンパ球/μL、または約800リンパ球/μL、900リンパ球/μL、1000リンパ球/μL、1250リンパ球/μL、1500リンパ球/μL、1750リンパ球/μL、2000リンパ球/μL、2250リンパ球/μL、2500リンパ球/μL、2750リンパ球/μLもしくは3000リンパ球/μLの値、または前記のいずれかの間の値である。任意の態様の一部において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは800または約800リンパ球/μLの値である。任意の態様の一部において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは900または約900リンパ球/μLの値である。任意の態様の一部において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは1000または約1000リンパ球/μLの値である。任意の態様の一部において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは1250または約1250リンパ球/μLの値である。任意の態様の一部において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは1500または約1500リンパ球/μLの値である。任意の態様の一部において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは1750または約1750リンパ球/μLの値である。任意の態様の一部において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは2000または約2000リンパ球/μLの値である。任意の態様の一部において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは2250または約2250リンパ球/μLの値である。任意の態様の一部において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは2500または約2500リンパ球/μLの値である。任意の態様の一部において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは2750または約2750リンパ球/μLの値である。任意の態様の一部において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは3000または約3000リンパ球/μLの値である。
【0013】
任意の態様の一部において、リンパ節負荷量を評価する工程は、最大リンパ節径を決定する工程を含む。任意の態様の一部において、最大リンパ節径は、センチメートル(cm)の単位で測定される。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは、4または約4cm~7または約7cmの値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは、4cm、4.25cm、4.5cm、4.75cm、5cm、5.25cm、5.5cm、5.75cm、6cm、6.25cm、6.5cm、6.75cmもしくは7cm、または約4cm、4.25cm、4.5cm、4.75cm、5cm、5.25cm、5.5cm、5.75cm、6cm、6.25cm、6.5cm、6.75cmもしくは7cmの値、または前記のいずれの間の値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは、4または約4cmの値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは、4.25または約4.25cmの値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは、4.5または約4.5cmの値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは、4.75または約4.75cmの値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは、5または約5cmの値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは、5.25または約5.25cmの値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは、5.5または約5.5cmの値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは、5.75または約5.75cmの値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは、6.0または約6.0cmの値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは、6.25または約6.25cmの値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは、6.5または約6.5cmの値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは、6.75または約6.75cmの値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは、7.0または約7.0cmの値である。
【0014】
任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比を評価する工程は、センチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比を決定する工程を含む。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、300または約300から、1000または約1000の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950もしくは1000、または約300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950もしくは1000の値、または前記のいずれかの間の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、300または約300の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、350または約350の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、400または約400の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、450または約450の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、500または約500の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、550または約550の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、600または約600の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、650または約650の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、700または約700の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、750または約750の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、800または約800の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、850または約850の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、900または約900の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、950または約950の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、1000または約1000の値である。
【0015】
任意の態様の一部において、リンパ節負荷量を評価する工程は、二方向積和(sum of the products of diameters:SPD)を決定する工程を含む。任意の態様の一部において、SPDは、平方センチメートル(cm2)の単位で測定される。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、10または約10cm2~40または約40cm2の値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、10cm2、12.5cm2、15cm2、17.5cm2、20cm2、22.5cm2、25cm2、27.5cm2、30cm2、32.5cm2、35cm2、37.5cm2もしくは40cm2、または約10cm2、12.5cm2、15cm2、17.5cm2、20cm2、22.5cm2、25cm2、27.5cm2、30cm2、32.5cm2、35cm2、37.5cm2もしくは40cm2の値、または前記のいずれかの間の値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、10または約10cm2の値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、12.5または約12.5cm2の値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、15または約15cm2の値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、17.5または約17.5cm2の値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、20または約20cm2の値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、22.5または約22.5cm2の値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、25または約25cm2の値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、27.5または約27.5cm2の値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、30または約30cm2の値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、32.5または約32.5cm2の値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、35または約35cm2の値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、37.5または約37.5cm2の値である。任意の態様の一部において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、40または約40cm2の値である。
【0016】
任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比を評価する工程は、平方センチメートル(cm2)の単位での二方向積和(SPD)に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比を決定する工程を含む。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、25または約25から、500または約500の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450もしくは500、または約25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450もしくは500の値、または前記のいずれかの間の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、25または約25の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、50または約50の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、75または約75の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、100または約100の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、150または約150の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、200または約200の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、250または約250の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、300または約300の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、350または約350の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、400または約400の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、450または約450の値である。任意の態様の一部において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、500または約500の値である。
【0017】
本明細書では、以下の工程を伴う、細胞療法の投与後に毒性を発現するリスクを決定する方法が提供される:
生物学的試料を、腫瘍壊死因子(TNF)および/またはインターロイキン-16(IL-16)のレベル、量または濃度についてアッセイする工程であって、生物学的試料は、細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象に由来し、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、生物学的試料が、細胞療法を投与する前に、またはピークCAR+T細胞拡大増殖前におよび/もしくは細胞療法の投与開始後11日もしくは約11日以内に、対象から得られる、工程;ならびに
TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度を、それぞれについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、TNFについての閾値レベルは7もしくは約7pg/mL~25もしくは約25pg/mLの値であり、および/またはIL-16についての閾値レベルは400もしくは約400pg/mL~900もしくは約900pg/mLの値であり、TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクがあると同定し、またはTNFおよび/もしくはIL-16のレベル、量または濃度がそれぞれの閾値レベル未満であるなら、対象を、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクはないと同定する、工程。
【0018】
本明細書では、以下の工程を伴う、細胞療法の投与後に毒性を発現するリスクを決定する方法が提供される:
生物学的試料を、腫瘍壊死因子(TNF)および/またはインターロイキン-16(IL-16)のレベル、量または濃度についてアッセイする工程であって、生物学的試料は、細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象に由来し、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、生物学的試料が、細胞療法を投与する前に、対象から得られる、工程;ならびに
TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度を、それぞれについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、TNFについての閾値レベルは7もしくは約7pg/mL~25もしくは約25pg/mLの値であり、および/またはIL-16についての閾値レベルは400もしくは約400pg/mL~900もしくは約900pg/mLの値であり、TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクがあると同定し、またはTNFおよび/もしくはIL-16のレベル、量または濃度がそれぞれの閾値レベル未満であるなら、対象を、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクはないと同定する、工程。
【0019】
任意の態様の一部において、神経毒性を発現するリスクがあると対象が同定された場合、本方法は、対象に細胞療法を、任意で低減された用量で、投与する工程をさらに含み、この場合、本方法は、任意で、神経毒性の発現または神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置を対象に投与する工程をさらに含み、および/または対象に対する細胞療法の投与は、入院患者設定でおよび/または1日もしくは複数日の入院を伴って、実行されるかまたは実行されるように指定されるか;または本方法は、CLLもしくはSLLを処置するための細胞療法以外の代替処置を対象に投与する工程を、さらに含む。任意の態様の一部において、神経毒性を発現するリスクがあると対象が同定された場合、本方法は、細胞療法を対象に投与する工程を、さらに含む。任意の態様の一部において、神経毒性を発現するリスクがあると対象が同定された場合、本方法は、細胞療法を低減された用量で対象に投与する工程を、さらに含む。任意の態様の一部において、神経毒性を発現するリスクがあると対象が同定された場合、本方法は、神経毒性の発現または神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置を対象に投与する工程を、さらに含む。任意の態様の一部において、神経毒性を発現するリスクがあると対象が同定された場合、対象に対する細胞療法の投与は、入院患者設定でおよび/または1日もしくは複数日の入院を伴って、実行されるかまたは実行されるように指定される。任意の態様の一部において、神経毒性を発現するリスクがあると対象が同定された場合、本方法は、CLLまたはSLLを処置するための細胞療法以外の代替処置を対象に投与する工程を、さらに含む。
【0020】
任意の態様の一部において、神経毒性を発現するリスクはないと対象が同定された場合、本方法は、細胞療法を対象に投与する工程をさらに含み、任意で、ここで、
任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈する時または呈した後、対象が毒性の徴候もしくは症状を呈さない限りまたは呈するまで、対象には、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質および他の処置を投与せず;ならびに/あるいは
任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、細胞療法の投与および任意の経過観察が実行される。任意の態様の一部において、神経毒性を発現するリスクはないと対象が同定された場合、本方法は、細胞療法を対象に投与する工程を、さらに含む。いくつかの態様において、神経毒性を発現するリスクはないと対象が同定された場合、対象には、対象が毒性の徴候または症状を呈さない限り、または対象が毒性の徴候もしくは症状を呈するまでは、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置が投与されない。いくつかの態様において、神経毒性を発現するリスクはないと対象が同定された場合、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、対象には、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質および他の処置が投与されない。いくつかの態様において、神経毒性を発現するリスクはないと対象が同定された場合、細胞療法の投与および任意の経過観察は、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、実行される。いくつかの態様において、神経毒性を発現するリスクはないと対象が同定された場合、細胞療法の投与および任意の経過観察は、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、実行される。
【0021】
本明細書では、以下の工程を伴う、細胞療法による処置のために対象を選択する方法が提供される:
生物学的試料を、腫瘍壊死因子(TNF)および/またはインターロイキン-16(IL-16)のレベル、量または濃度についてアッセイする工程であって、生物学的試料は、細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象に由来し、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、生物学的試料が、細胞療法を投与する前に、対象から得られる、工程;ならびに
TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度を、それぞれについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、TNFについての閾値レベルは7もしくは約7pg/mL~25もしくは約25pg/mLの値であり、および/またはIL-16についての閾値レベルは400もしくは約400pg/mL~900もしくは約900pg/mLの値であり、TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、低減された用量での細胞療法の投与;神経毒性の発現または神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置の投与;入院患者設定でおよび/または1日もしくは複数日の入院を伴って、実行されるかまたは実行されるように指定される細胞療法の投与;および/またはCLLもしくはSLLを処置するための細胞療法以外の代替処置の投与のために選択し;またはTNFおよび/もしくはIL-16のレベル、量または濃度がそれぞれの閾値レベル未満であるなら、対象を、細胞療法の投与のために選択し、任意で、ここで、
任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈する時または呈した後、対象が毒性の徴候もしくは症状を呈さない限りまたは呈するまで、対象には、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質および他の処置を投与せず;ならびに/あるいは
任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、細胞療法の投与および任意の経過観察が実行される、工程。
【0022】
任意の態様の一部において、本方法は、細胞療法、毒性の発現もしくは毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しもしくは減弱することができる作用物質もしくは他の処置、および/または代替処置を、対象に投与する工程を、さらに含む。任意の態様の一部において、本方法は、細胞療法を対象に投与する工程を、さらに含む。任意の態様の一部において、本方法は、前記作用物質を対象に投与する工程を、さらに含む。任意の態様の一部において、本方法は、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる他の処置を投与する工程を、さらに含む。任意の態様の一部において、本方法は、代替処置を対象に投与する工程を、さらに含む。
【0023】
本明細書では、以下の工程を伴う、細胞療法の投与後に毒性を発現するリスクを決定する方法が提供される:
CLLまたはSLLを処置するためのCARを発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含む細胞療法の投与を受けた対象からの生物学的試料を、TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度についてアッセイする工程であって、生物学的試料が、ピークCAR+T細胞拡大増殖前に、および/または細胞療法の投与開始後11日もしくは約11日以内に、対象から得られる、工程;ならびに
TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度を、それぞれについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、TNFについての閾値レベルは7もしくは約7pg/mL~25もしくは約25pg/mLの値であり、および/またはIL-16についての閾値レベルは400もしくは約400pg/mL~900もしくは約900pg/mLの値であり、TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、神経毒性を発現するリスクがあると同定し;またはTNFおよび/もしくはIL-16のレベル、量または濃度がそれぞれの閾値レベル未満であるなら、対象を、神経毒性を発現するリスクはないと同定する、工程。
【0024】
任意の態様の一部において、神経毒性を発現するリスクがあると対象が同定された場合、本方法は、神経毒性の発現または神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置を、任意でピークCAR+T細胞拡大増殖前におよび/または対象に対する細胞療法の投与から11日もしくは約11日以内に、対象に投与する工程をさらに含み;および/または経過観察が、入院患者設定で、および/または1日もしくは複数日の入院を伴って、実行される。任意の態様の一部において、神経毒性を発現するリスクはないと対象が同定された場合、経過観察は、任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、実行される。任意の態様の一部において、神経毒性を発現するリスクがあると対象が同定された場合、本方法は、神経毒性の発現または神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置を対象に投与する工程を、さらに含む。任意の態様の一部において、神経毒性を発現するリスクがあると対象が同定された場合、本方法は、神経毒性の発現または神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置を、ピークCAR+T細胞拡大増殖前に、対象に投与する工程を、さらに含む。任意の態様の一部において、神経毒性を発現するリスクがあると対象が同定された場合、本方法は、神経毒性の発現または神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置を、対象に対する細胞療法の投与から11または約11日以内に、対象に投与する工程を、さらに含む。任意の態様の一部において、神経毒性を発現するリスクがあると対象が同定された場合、経過観察は、入院患者設定で、および/または1日もしくは複数日の入院を伴って、実行される。任意の態様の一部において、神経毒性を発現するリスクはないと対象が同定された場合、経過観察は、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、実行される。任意の態様の一部において、神経毒性を発現するリスクはないと対象が同定された場合、経過観察は、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、実行される。
【0025】
本明細書では、以下の工程を伴う、処置の方法が提供される:
神経毒性を発現するリスクがあると同定された対象に、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置を投与する工程であって、該対象はCLLまたはSLLを処置するための細胞療法の投与を前もって受けており、作用物質の投与時または作用物質を投与する直前において、ピークCAR+T細胞拡大増殖前におよび/または細胞療法の投与開始から11日もしくは約11日以内に対象から得られた生物学的試料中のTNFおよび/またはIL-16のレベルまたは量または濃度がそれぞれについての閾値レベルを上回るのであれば、神経毒性を発現するリスクがあるとして、対象が選択または同定され、ここで、TNFについての閾値レベルは7もしくは約7pg/mL~25もしくは約25pg/mLの値であり、および/またはIL-16についての閾値レベルは400もしくは約400pg/mL~900もしくは約900pg/mLの値である、工程。いくつかの態様において、TNFについての閾値レベルは、7もしくは約7pg/mL~25もしくは約25pg/mLの値である。いくつかの態様において、IL-16についての閾値レベルは、400もしくは約400pg/mL~900もしくは約900pg/mLの値である。
【0026】
本明細書では、以下の工程を伴う、作用物質による処置のために対象を選択する方法が提供される:
CLLまたはSLLを処置するためのCD19に結合するCARを発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含む細胞療法の投与を受けた対象からの生物学的試料をTNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度についてアッセイする工程であって、生物学的試料が、ピークCAR+T細胞拡大増殖前におよび/または細胞療法の投与開始後11日もしくは約11日以内に、対象から得られる工程;ならびに
TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度を、それぞれについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、TNFについての閾値レベルは7もしくは約7pg/mL~25もしくは約25pg/mLの値であり、および/またはIL-16についての閾値レベルは400もしくは約400pg/mL~900もしくは約900pg/mLの値であり、TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、神経毒性の発現または神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置の投与のために選択する、工程。
【0027】
任意の態様の一部において、本方法は、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置を対象に投与する工程を、さらに含む。任意の態様の一部において、作用物質または他の処置を投与する工程は、対象が持続的発熱または解熱剤による処置後も下がらないか下がっていない発熱もしくは解熱剤による処置後も1℃超は下がらない発熱を呈する時に実行される。任意の態様の一部において、細胞療法を対象に投与する工程は外来患者ベースで実行され、TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度が閾値レベルを上回るのであれば、本方法は、患者を1日または複数日にわたって入院させる工程を伴う。
【0028】
任意の態様の一部において、TNFについての閾値レベルは、7pg/mL、8pg/mL、9pg/mL、10pg/mL、15pg/mL、20pg/mLもしくは25pg/mL、または約7pg/mL、8pg/mL、9pg/mL、10pg/mL、15pg/mL、20pg/mLもしくは25pg/mLの値、または前記のいずれかの間の値である。任意の態様の一部において、TNFについての閾値レベルは、8または約8pg/mL~10または約10pg/mLの値である。任意の態様の一部において、TNFについての閾値レベルは、7または約7pg/mLの値である。任意の態様の一部において、TNFについての閾値レベルは、8または約8pg/mLの値である。任意の態様の一部において、TNFについての閾値レベルは、9または約9pg/mLの値である。任意の態様の一部において、TNFについての閾値レベルは、10または約10pg/mLの値である。任意の態様の一部において、TNFについての閾値レベルは、15または約15pg/mLの値である。任意の態様の一部において、TNFについての閾値レベルは、20または約20pg/mLの値である。任意の態様の一部において、TNFについての閾値レベルは、25または約25pg/mLの値である。
【0029】
任意の態様の一部において、IL-16についての閾値レベルは、400pg/mL、500pg/mL、600pg/mL、700pg/mL、800pg/mL、900pg/mLもしくは1000pg/mL、または約400pg/mL、500pg/mL、600pg/mL、700pg/mL、800pg/mL、900pg/mLもしくは1000pg/mLの値、または前記のいずれかの間の値である。任意の態様の一部において、IL-16についての閾値レベルは、500または約500pg/mL~700または約700pg/mLの値である。任意の態様の一部において、IL-16についての閾値レベルは、400または約400pg/mLである。任意の態様の一部において、IL-16についての閾値レベルは500または約500pg/mLの値である。任意の態様の一部において、IL-16についての閾値レベルは600または約600pg/mLの値である。任意の態様の一部において、IL-16についての閾値レベルは700または約700pg/mLの値である。任意の態様の一部において、IL-16についての閾値レベルは800または約800pg/mLの値である。任意の態様の一部において、IL-16についての閾値レベルは900または約900pg/mLの値である。任意の態様の一部において、IL-16についての閾値レベルは1000または約1000pg/mLの値である。
【0030】
任意の態様の一部では、TNFとIL-16の両方のレベル、量または濃度が評価され、TNFについての閾値レベルは7pg/mL、8pg/mL、9pg/mL、10pg/mL、15pg/mL、20pg/mLもしくは25pg/mL、または約7pg/mL、8pg/mL、9pg/mL、10pg/mL、15pg/mL、20pg/mLもしくは25pg/mLの値、または前記のいずれかの間の値であり、IL-16についての閾値レベルは、400pg/mL、500pg/mL、600pg/mL、700pg/mL、800pg/mL、900pg/mLもしくは1000pg/mL、または約400pg/mL、500pg/mL、600pg/mL、700pg/mL、800pg/mL、900pg/mLもしくは1000pg/mLの値、または前記のいずれかの間の値である。
【0031】
任意の態様の一部では、TNFとIL-16の両方のレベル、量または濃度が評価され、TNFについての閾値レベルは8または約8pg/mL~10または約10pg/mLの値であり、IL-16についての閾値レベルは500または約500pg/mL~700または約700pg/mLの値である。
【0032】
任意の態様の一部において、生物学的試料は、血液、血漿もしくは血清試料であるか、または血液、血漿もしくは血清試料から得られる。任意の態様の一部において、評価する工程は、生物学的試料を、TNFおよび/またはIL-16を検出することができるかまたはTNFおよび/もしくはIL-16に特異的である1つまたは複数の試薬と接触させる工程を含み、任意で、1つまたは複数の試薬が、TNFおよび/またはIL-16を特異的に認識する抗体を含む工程;および前記1つまたは複数の試薬とTNFおよび/またはIL-16とを含む複合体の有無を検出する工程を含む。任意の態様の一部において、評価する工程は、生物学的試料を、TNFを検出することができるかまたはTNFに特異的である1つまたは複数の試薬と接触させる工程、および前記1つまたは複数の試薬とTNFとを含む複合体の有無を検出する工程を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の試薬は、TNFを特異的に認識する抗体を含む。任意の態様の一部において、評価する工程は、生物学的試料を、IL-16を検出することができるかまたはIL-16に特異的である1つまたは複数の試薬と接触させる工程、および前記1つまたは複数の試薬とIL-16とを含む複合体の有無を検出する工程を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の試薬は、IL-16を特異的に認識する抗体を含む。任意の態様の一部において、評価する工程はイムノアッセイを含む。いくつかの態様において、評価する工程は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、イムノブロッティング、免疫沈降、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫染色、フローサイトメトリーアッセイ、表面プラズモン共鳴(SPR)、ケミルミネセンスアッセイ、ラテラルフローイムノアッセイ、阻害アッセイまたはアビディティアッセイを含む。いくつかの態様において、評価する工程は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を含む。いくつかの態様において、評価する工程はサンドイッチ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を含む。いくつかの態様において、ELISAはビーズベースのELISAである。
【0033】
任意の態様の一部において、作用物質または他の処置は、抗IL-6抗体、抗IL-6R抗体もしくはステロイドであるか、または抗IL-6抗体、抗IL-6R抗体もしくはステロイドを含む。任意の態様の一部において、作用物質または他の処置は、抗IL-6抗体であるか、または抗IL-6抗体を含む。任意の態様の一部において、作用物質または他の処置は、抗IL-6R抗体であるか、または抗IL-6R抗体を含む。任意の態様の一部において、作用物質または他の処置は、ステロイドであるか、またはステロイドを含む。任意の態様の一部において、作用物質はトシリズマブ、シルツキシマブもしくはデキサメタゾンであるか、またはトシリズマブ、シルツキシマブもしくはデキサメタゾンを含む。任意の態様の一部において、作用物質はトシリズマブであるか、またはトシリズマブを含む。任意の態様の一部において、作用物質はシルツキシマブであるか、またはシルツキシマブを含む。任意の態様の一部において、作用物質はデキサメタゾンであるか、またはデキサメタゾンを含む。任意の態様の一部において、神経毒性は重度の神経毒性である。任意の態様の一部において、神経毒性はグレード3以上の神経毒性である。任意の態様の一部において、神経毒性はグレード3の神経毒性である。任意の態様の一部において、神経毒性はグレード4の神経毒性である。任意の態様の一部において、神経毒性はグレード5の神経毒性である。
【0034】
本明細書では、以下の工程を伴う、細胞療法の奏効の見込みを評価する方法が提供される:
生物学的試料中の血管内皮増殖因子C(VEGFC)および/または血管内皮増殖因子受容体1(VEGFR1)のレベル、量または濃度を評価する工程であって、生物学的試料は、細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象に由来し、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、生物学的試料が、細胞療法を投与する前に、対象から得られる、工程;ならびに
試料中のVEGFCおよび/またはVEGFR1のレベル、量または濃度を閾値レベルと個別に比較する工程であって、VEGFCおよび/もしくはVEGFR1のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル未満であるなら、対象を、細胞療法に対する奏効を達成する見込みが高いと同定し、またはVEGFCおよび/もしくはVEGFR1のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、細胞療法に対する奏効を達成する見込みが低いと同定する、工程。
【0035】
本明細書では、以下の工程を伴う、細胞療法による処置のために対象を選択する方法が提供される:
生物学的試料中の血管内皮増殖因子C(VEGFC)および/または血管内皮増殖因子受容体1(VEGFR1)のレベル、量または濃度を評価する工程であって、生物学的試料は、細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象に由来し、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、生物学的試料が、細胞療法を投与する前に、対象から得られる、工程;ならびに
試料中のVEGFCおよび/またはVEGFR1のレベル、量または濃度をそれぞれについての閾値レベルと個別に比較することによって対象が細胞療法に対する奏効を達成する見込みを決定した結果に基づいて処置が奏効する可能性が高い対象を選択する工程であって、VEGFCおよび/もしくはVEGFR1のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル未満であるなら、対象を、細胞療法に対する奏効を達成する見込みが高いと同定し、またはVEGFCおよび/もしくはVEGFR1のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、細胞療法に対する奏効を達成する見込みが低いと同定する、工程。任意の態様の一部において、本方法は、処置のために選択された対象に細胞療法を投与する工程を、さらに含む。
【0036】
本明細書では、以下の工程を伴う、処置のための方法が提供される:
生物学的試料中の血管内皮増殖因子C(VEGFC)および/または血管内皮増殖因子受容体1(VEGFR1)のレベル、量または濃度をそれぞれについての閾値レベルと個別に比較することによって対象が細胞療法に対する奏効を達成する見込みを決定した結果に基づいて処置が奏効する可能性が高い対象を選択する工程であって、VEGFCおよび/もしくはVEGFR1のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル未満であるなら、対象を、細胞療法に対する奏効を達成する見込みが高いと同定し、またはVEGFCおよび/もしくはVEGFR1のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、細胞療法に対する奏効を達成する見込みが低いと同定し、ここで、生物学的試料は、細胞療法による処置の候補であるCLLまたはSLLを有する対象に由来し、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、生物学的試料が、細胞療法を投与する前に対象から得られ、および/または対象はCARを発現するT細胞を含まない、工程;および
処置のために選択された対象に細胞療法を投与する工程。
【0037】
任意の態様の一部において、閾値レベルは、細胞療法を受ける前に対象の群から得られた生物学的試料中のVEGFCおよび/またはVEGFR1の中央または平均のレベル、量もしくは濃度の、またはその前後の、またはそれを上回って、25%以内、20%以内、15%以内、10%以内もしくは5%以内、および/または1標準偏差以内であり、該群の対象のそれぞれは、CLLまたはSLLを処置するためのCARを発現する操作された細胞のある用量の投与後に奏効を達成し;閾値レベルは、細胞療法を受ける前に対象の群から得られた生物学的試料中のVEGFCおよび/またはVEGFR1の中央または平均のレベル、量または濃度よりも、1.25倍以上高いか、1.3倍以上高いか、1.4倍以上高いか、または1.5倍以上高く、該群の対象のそれぞれは、CLLまたはSLLを処置するためのCARを発現する操作された細胞のある用量の投与後に奏効を達成し;閾値レベルは、細胞療法による処置の候補ではない正常または健常対象の群から得られた生物学的試料中のVEGFCおよび/またはVEGFR1のレベル、量または濃度よりも、1.25倍以上高いか、1.3倍以上高いか、1.4倍以上高いか、または1.5倍以上高い。任意の態様の一部において、VEGFCについての閾値レベルは60または約60pg/mL~70または約70pg/mLの値である。任意の態様の一部において、VEGFR1についての閾値レベルは80または約80pg/mL~120または約120pg/mLの値である。任意の態様の一部では、VEGFCとVEGFR1の両方のレベル、量または濃度が評価され、VEGFCについての閾値レベルは60または約60pg/mL~70または約70pg/mLの値であり、VEGFR1についての閾値レベルは80または約80pg/mL~120または約120pg/mLの値である。任意の態様の一部において、VEGFCについての閾値レベルは60または約60pg/mLの値である。任意の態様の一部において、VEGFCについての閾値レベルは65または約65pg/mLの値である。任意の態様の一部において、VEGFCについての閾値レベルは70または約70pg/mLの値である。任意の態様の一部において、VEGFR1についての閾値レベルは80または約80pg/mLの値である。任意の態様の一部において、VEGFR1についての閾値レベルは90または約90pg/mLの値である。任意の態様の一部において、VEGFR1についての閾値レベルは、100または約100pg/mLの値である。任意の態様の一部において、VEGFR1についての閾値レベルは、11または約11pg/mLの値である。任意の態様の一部において、VEGFR1についての閾値レベルは120または約120pg/mLの値である。
【0038】
任意の態様の一部において、生物学的試料は、血液、血漿もしくは血清試料であるか、または血液、血漿もしくは血清試料から得られる。任意の態様の一部において、評価する工程は、生物学的試料を、VEGFCおよび/もしくはVEGFR1を検出することができるかまたはVEGFCおよび/もしくはVEGFR1に特異的である1つまたは複数の試薬と接触させる工程であって、任意で、1つまたは複数の試薬が、VEGFCおよび/またはVEGFR1を特異的に認識する抗体を含む工程;ならびに前記1つまたは複数の試薬とVEGFCおよび/またはVEGFR1とを含む複合体の有無を検出する工程を含む。任意の態様の一部において、評価する工程は、生物学的試料を、VEGFCを検出することができるかまたはVEGFCに特異的である1つまたは複数の試薬と接触させる工程、および前記1つまたは複数の試薬とVEGFCとを含む複合体の有無を検出する工程を含む。任意の態様の一部において、1つまたは複数の試薬は、VEGFCを特異的に認識する抗体を含む。任意の態様の一部において、評価する工程は、生物学的試料を、VEGFR1を検出することができるかまたはVEGFR1に特異的である1つまたは複数の試薬と接触させる工程、および前記1つまたは複数の試薬とVEGFR1とを含む複合体の有無を検出する工程を含む。任意の態様の一部において、1つまたは複数の試薬は、VEGFR1を特異的に認識する抗体を含む。任意の態様の一部において、評価する工程はイムノアッセイを含む。任意の態様の一部において、奏効は客観的奏効を含む。任意の態様の一部において、客観的奏効(objective response)は、完全奏効(complete response:CR;場合によっては完全寛解(complete remission)としても知られる)、血球数回復が不完全な完全寛解(complete remission with incomplete blood count recovery:CRi)、完全寛解(complete remission:CR)、骨髄回復が不完全なCR(CR with incomplete marrow recovery:CRi)、結節性部分寛解(nodular partial remission:nPR)、部分奏効(partial response:PR)を含む。任意の態様の一部において、奏効は、細胞療法の投与開始の1、2もしくは3ヶ月後または約1、2もしくは3ヶ月後またはそれ以上後に評価される。
【0039】
任意の態様の一部において、奏効は、細胞療法の投与開始の1または約1ヶ月後に評価される。任意の態様の一部において、奏効は、細胞療法の投与開始の2または約2ヶ月後に評価される。任意の態様の一部において、奏効は、細胞療法の投与開始の3または約3ヶ月後に評価される。
【0040】
任意の態様の一部において、本方法は、細胞療法の投与前に、対象にリンパ球枯渇療法を投与する工程を、さらに含む。任意の態様の一部において、対象は、リンパ球枯渇療法によりプレコンディショニングされている。任意の態様の一部において、リンパ球枯渇療法は、フルダラビンおよび/またはシクロホスファミドの投与を含む。いくつかの態様において、生物学的試料は、対象にリンパ球枯渇療法を投与する前に、対象から得られる。いくつかの態様において、前記1つまたは複数の疾患負荷量パラメータの値は、対象に対してリンパ球枯渇療法を投与する前の、1つまたは複数の疾患負荷量パラメータの値である。いくつかの態様において、前記1つまたは複数の疾患負荷量パラメータは、対象にリンパ球枯渇療法を投与する前に評価される。
【0041】
任意の態様の一部において、リンパ球枯渇療法はフルダラビンの投与を含む。任意の態様の一部において、リンパ球枯渇療法はシクロホスファミドの投与を含む。任意の態様の一部において、リンパ球枯渇療法はフルダラビンおよびシクロホスファミドの投与を含む。任意の態様の一部において、リンパ球枯渇療法は、両端の値を含む約200~400mg/m2、任意で300もしくは約300mg/m2のシクロホスファミド、および/または約20~40mg/m2、任意で30mg/m2のフルダラビンの、2~4日間、任意で3日間にわたる毎日の投与を含む。任意の態様の一部において、リンパ球枯渇療法は、300または約300mg/m2のシクロホスファミドおよび約30mg/m2のフルダラビンの、3日間にわたる毎日の投与を含み、任意で、細胞の当該用量は、リンパ球枯渇療法の少なくとも2~7日後もしくは少なくとも約2~7日後またはリンパ球枯渇療法開始の少なくとも2~7日後もしくは少なくとも約2~7日後に投与される。
【0042】
任意の態様の一部において、本方法は、対象にブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤(BTKi)を投与する工程を、さらに含む。任意の態様の一部において、BTKiはイブルチニブである。任意の態様の一部において、BTKi投与は、細胞療法の投与開始前に開始される。任意の態様の一部において、BTKi投与は細胞療法の投与開始後まで継続される。任意の態様の一部において、BTKi投与は、細胞療法の投与開始後、少なくとも90日または少なくとも約90日にわたって継続される。任意の態様の一部では、イブルチニブが、1日あたり140または約140mg~840または約840mgの用量で投与される。任意の態様の一部では、イブルチニブが、1日あたり280または約280mg~560または約560mgの用量で投与される。任意の態様の一部では、イブルチニブが、1日あたり420または約420mgの用量で投与される。任意の態様の一部において、疾患または病態は再発性または難治性(r/r)CLLである。任意の態様の一部において、疾患または病態は再発性または難治性(r/r)SLLである。
【0043】
任意の態様の一部において、操作された細胞の前記用量は、CAR発現CD4細胞 対 CAR発現CD8細胞の所定の比を含み、任意で、該比はおよそ1:3~およそ3:1である。任意の態様の一部において、操作された細胞の前記用量は、CAR発現CD4細胞 対 CAR発現CD8細胞の所定の比を含む。いくつかの態様において、比はおよそ1:3~およそ3:1である。任意の態様の一部において、操作された細胞の前記用量は、1:1またはおよそ1:1である、CAR発現CD4細胞 対 CAR発現CD8細胞の所定の比を含む。任意の態様の一部において、操作された細胞の前記用量は、2.5×107または約2.5×107個の総CAR発現細胞~1.0×108または約1.0×108個の総CAR発現細胞を含む。任意の態様の一部において、操作された細胞の前記用量は、2.5×107または約2.5×107個の総CAR発現細胞を含む。
【0044】
任意の態様の一部において、操作された細胞の前記用量は、5×107または約5×107個の総細胞または総CAR発現細胞を含む。任意の態様の一部において、操作された細胞の前記用量は、1×108または約1×108個の総細胞または総CAR発現細胞を含む。任意の態様の一部において、細胞療法の投与は、複数の別個の組成物を投与する工程を含み、ここで、複数の別個の組成物は、CD4T細胞およびCD8T細胞のうちの一方を含む第1組成物、ならびにCD4T細胞およびCD8T細胞のうちの他方を含む第2組成物を含む。任意の態様の一部において、第1組成物はCD8T細胞を含み、第2組成物はCD4T細胞を含む。
【0045】
任意の態様の一部において、第1組成物の投与の開始は、第2組成物の投与の開始前に実行され、任意で、48時間を超える間隔をあけずに実行される。任意の態様の一部において、第1組成物の投与の開始は、第2組成物の投与開始前48時間以内に実行される。任意の態様の一部において、CD4T細胞に含まれるCARおよび/またはCD8T細胞に含まれるCARは、同じCARを含み、ならびに/またはCD4T細胞および/もしくはCD8T細胞は、同じCARを発現するように遺伝子操作される。任意の態様の一部において、CD4T細胞によって発現されるCARとCD8T細胞によって発現されるCARは同じである。いくつかの態様において、CD4T細胞およびCD8T細胞は、同じCARを発現するように遺伝子操作される。任意の態様の一部において、対象は、細胞療法の投与前に、CAR発現細胞の別の用量およびリンパ球枯渇療法の他に、CLLまたはSLLのための1つまたは複数の前治療(prior therapy)で、任意で少なくとも2つの前治療で、処置されている。任意の態様の一部において、対象は、細胞療法の投与前に、CAR発現細胞の別の用量およびリンパ球枯渇療法の他に、CLLまたはSLLのための1つまたは複数の前治療で処置されている。任意の態様の一部において、対象は、細胞療法の投与前に、CAR発現細胞の別の用量およびリンパ球枯渇療法の他に、CLLまたはSLLのための少なくとも2つの前治療で処置されている。任意の態様の一部において、対象は、細胞療法の投与前に、2つ以上の前治療による処置後の寛解に続いて再発しており、2つ以上の前治療による処置に対して抵抗性になっており、2つ以上の前治療による処置に失敗しており、および/または2つ以上の前治療による処置に対して不耐容である。
【0046】
任意の態様の一部において、1つまたは複数の前治療は、キナーゼ阻害剤、任意でブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤、任意でイブルチニブ;ベネトクラクス;フルダラビンとリツキシマブを含む併用治療;放射線治療;および造血幹細胞移植(HSCT)から選択される。任意の態様の一部において、1つまたは複数の前治療はイブルチニブを含む。任意の態様の一部において、1つまたは複数の前治療はベネトクラクスを含む。任意の態様の一部において、1つまたは複数の前治療は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤および/またはベネトクラクスを含む。任意の態様の一部において、1つまたは複数の前治療はイブルチニブおよびベネトクラクスを含む。
【0047】
任意の態様の一部において、対象は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤および/もしくはベネトクラクスによる処置後の寛解に続いて再発しており、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤および/またはベネトクラクスによる処置に対して抵抗性になっており、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤および/またはベネトクラクスによる処置に失敗しており、ならびに/またはブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤および/もしくはベネトクラクスに対して不耐容である。任意の態様の一部において、対象は、イブルチニブによる処置後の寛解に続いて再発しており、イブルチニブによる処置に対して抵抗性になっており、イブルチニブによる処置に失敗しており、および/またはイブルチニブに対して不耐容である。任意の態様の一部において、対象は、ベネトクラクスによる処置後の寛解に続いて再発しており、ベネトクラクスによる処置に対して抵抗性になっており、ベネトクラクスによる処置に失敗しており、および/またはベネトクラクスに対して不耐容である。任意の態様の一部において、対象は、イブルチニブおよびベネトクラクスによる処置後の寛解に続いて再発しており、イブルチニブおよびベネトクラクスによる処置に対して抵抗性になっており、イブルチニブおよびベネトクラクスによる処置に失敗しており、ならびに/またはイブルチニブおよびベネトクラクスに対して不耐容である。任意の態様の一部において、操作された細胞は、対象から得られた初代T細胞である。任意の態様の一部において、操作された細胞は、対象にとって自己由来である。
【0048】
任意の態様の一部において、CARは、CD19に特異的な細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、任意で4-1BBである、共刺激分子由来の細胞質シグナル伝達ドメインと、任意でCD3ゼータである、一次シグナル伝達ITAM含有分子由来の細胞質シグナル伝達ドメインとを含み、CARは、順に、CD19に特異的な細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、共刺激分子由来の細胞質シグナル伝達ドメインと、一次シグナル伝達ITAM含有分子由来の細胞質シグナル伝達ドメインとを含む。任意の態様の一部において、抗原結合ドメインはscFvである。
【0049】
任意の態様の一部において、scFvは、RASQDISKYLN(SEQ ID NO:35)のCDRL1配列、SRLHSGV(SEQ ID NO:36)のCDRL2配列、および/もしくはGNTLPYTFG(SEQ ID NO:37)のCDRL3配列、ならびに/またはDYGVS(SEQ ID NO:38)のCDRH1配列、VIWGSETTYYNSALKS(SEQ ID NO:39)のCDRH2配列、および/もしくはYAMDYWG(SEQ ID NO:40)のCDRH3配列を含み;scFvは、FMC63の可変重鎖領域およびFMC63の可変軽鎖領域、ならびに/またはFMC63のCDRL1配列、FMC63のCDRL2配列、FMC63のCDRL3配列、FMC63のCDRH1配列、FMC63のCDRH2配列およびFMC63のCDRH3配列を含むか、または前記のいずれかと同じエピトープに結合するか、または前記のいずれかと結合に関して競合し;scFvは、SEQ ID NO:41に示すVHおよびSEQ ID NO:42に示すVLを含み、任意で、該VHと該VLとはフレキシブルリンカーで隔てられ、任意で、該フレキシブルリンカーはSEQ ID NO:24に示す配列であるか、もしくはSEQ ID NO:24に示す配列を含み;および/またはscFvはSEQ ID NO:43に示す配列であるか、もしくはSEQ ID NO:43に示す配列を含む。
【0050】
任意の態様の一部において、共刺激シグナル伝達領域はCD28または4-1BBのシグナル伝達ドメインである。任意の態様の一部において、共刺激シグナル伝達領域は4-1BBのシグナル伝達ドメインである。任意の態様の一部において、共刺激ドメインは、SEQ ID NO:12、またはそれに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有するそのバリアントを含む。任意の態様の一部において、一次シグナル伝達ドメインはCD3ゼータシグナル伝達ドメインである。任意の態様の一部において、一次シグナル伝達ドメインは、それに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するSEQ ID NO:13または14または15を含む。
【0051】
任意の態様の一部において、CARは、膜貫通ドメインとscFvの間にスペーサーを、さらに含む。任意の態様の一部において、スペーサーは、免疫グロブリンヒンジまたはその改変バージョンの、任意でIgG4ヒンジまたはその改変バージョンの、全部もしくは一部を含むかまたは全部もしくは一部からなる、ポリペプチドスペーサーである。任意の態様の一部において、スペーサーは約15アミノ酸以下であり、CD28細胞外領域もCD8細胞外領域も含まない。任意の態様の一部において、スペーサーは12または約12アミノ酸長である。任意の態様の一部において、スペーサーは、SEQ ID NO:1の配列、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:34によってコードされる配列、またはそれに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有する前記いずれかのバリアントを有するかまたはそれからなり、および/あるいは式X1PPX2Pを含むかまたはそれからなり、式中、X1はグリシン、システインまたはアルギニンであり、X2はシステインまたはスレオニンである。
【0052】
任意の態様の一部において、scFvは、RASQDISKYLN(SEQ ID NO:35)のアミノ酸配列、SRLHSGV(SEQ ID NO:36)のアミノ酸配列、および/もしくはGNTLPYTFG(SEQ ID NO:37)のアミノ酸配列、ならびに/またはDYGVS(SEQ ID NO:38)のアミノ酸配列、VIWGSETTYYNSALKS(SEQ ID NO:39)のアミノ酸配列、および/もしくはYAMDYWG(SEQ ID NO:40)のアミノ酸配列を含むか、またはscFvは、FMC63の可変重鎖領域およびFMC63の可変軽鎖領域ならびに/もしくはFMC63のCDRL1配列、FMC63のCDRL2配列、FMC63のCDRL3配列、FMC63のCDRH1配列、FMC63のCDRH2配列、およびFMC63のCDRH3配列を含むか、または前記のいずれかと同じエピトープに結合し、もしくは前記のいずれかと結合に関して競合し、任意で、scFvは、順に、VH、リンカー、任意でSEQ ID NO:24を含むもの、およびVLを含み、ならびに/またはscFvは、フレキシブルリンカーを含み、および/もしくはSEQ ID NO:43に示すアミノ酸配列を含み;ならびに/またはスペーサーは、(a)免疫グロブリンヒンジもしくはその改変バージョンの全部もしくは一部を含むかもしくはそれからなり、または約15個以下のアミノ酸を含み、CD28細胞外領域もCD8細胞外領域も含まず、(b)免疫グロブリンヒンジの、任意でIgG4ヒンジもしくはその改変バージョンの、全部もしくは一部を含むかもしくはそれからなり、および/または約15個以下のアミノ酸を含み、CD28細胞外領域もCD8細胞外領域も含まず、または(c)12もしくは約12アミノ酸長であり、および/もしくは免疫グロブリンヒンジの、任意でIgG4もしくはその改変バージョンの、全部もしくは一部分を含むかもしくはそれからなり、または(d)SEQ ID NO:1の配列、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:34によってコードされる配列、もしくはそれに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有する前記いずれかのバリアントを有するかまたはそれからなり、または(e)式X1PPX2Pを含むかまたはそれからなり、ここで、X1はグリシン、システインもしくはアルギニンであり、X2はシステインもしくはスレオニンである、ポリペプチドスペーサーであり;および/または共刺激ドメインは、SEQ ID NO:12、またはそれに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有するそのバリアントを含み;および/または一次シグナル伝達ドメインは、それに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するSEQ ID NO:13、14または15を含む。
【0053】
任意の態様の一部において、抗原結合ドメインは、FMC63の可変重鎖領域およびFMC63の可変軽鎖領域を含むscFvを含み;スペーサーはSEQ ID NO:1の配列を含むポリペプチドスペーサーであり;共刺激ドメインはSEQ ID NO:12を含み;一次シグナル伝達ドメインはSEQ ID NO:13、14または15を含む。任意の態様の一部において、対象はヒト対象である。
【0054】
本明細書では、CD19に結合するCARを発現するT細胞を含む、細胞療法のための組成物、または細胞療法のための複数の組成物のうちの1つと、提供される方法のいずれかに従ってT細胞組成物を投与することを指定する、細胞療法を投与するための説明書とを含む、製造物品が提供される。
[本発明1001]
以下の工程を含む、細胞療法の投与後に毒性を発現するリスクを決定する方法:
細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象において、リンパ節腫瘍負荷量、血液腫瘍負荷量、およびリンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比の中から選択される1つまたは複数の疾患負荷量パラメータを評価する工程であって、該細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、該パラメータは該細胞療法を投与する前の対象から評価される、工程;ならびに、
前記1つまたは複数のパラメータの値を、各パラメータについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、
(1)(a)リンパ節腫瘍負荷量がリンパ節腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり、(b)血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり、および/または(c)リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベル未満であるなら、対象を、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクがあると同定し、または
(2)(a)リンパ節腫瘍負荷量が腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり、(b)血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり、および/または(c)リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベルを上回るのであれば、対象を、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクはないと同定する、
工程。
[本発明1002]
神経毒性を発現するリスクがあると対象が同定された場合に、
(i)対象に細胞療法を、任意で低減された用量で、投与する工程であって、任意で、ここで、
(a)前記方法は、神経毒性の発現もしくは神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しもしくは減弱することができる作用物質もしくは他の処置を対象に投与する工程をさらに含み、および/または
(b)対象に対する細胞療法の投与は、入院患者設定でおよび/または1日もしくは複数日の入院を伴って、実行されるかまたは実行されるように指定される、
工程;あるいは
(ii)CLLまたはSLLを処置するための細胞療法以外の代替処置を対象に投与する工程
をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
神経毒性を発現するリスクはないと対象が同定された場合に、
(i)細胞療法を対象に投与する工程であって、任意で、ここで、
(a)任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈する時または呈した後、対象が毒性の徴候もしくは症状を呈さない限りまたは呈するまで、対象には、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質および他の処置を投与せず;ならびに/あるいは
(b)任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、細胞療法の投与および任意の経過観察が実行される、
工程
をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1004]
以下の工程を含む、細胞療法による処置のために対象を選択する方法:
細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象において、リンパ節腫瘍負荷量、血液腫瘍負荷量、およびリンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比の中から選択される1つまたは複数の疾患負荷量パラメータを評価する工程であって、該細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、該パラメータは該細胞療法を投与する前の対象から評価される、工程;ならびに、
前記1つまたは複数のパラメータの値を、各パラメータについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、
(1)(a)リンパ節腫瘍負荷量がリンパ節腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり、(b)血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり、および/または(c)リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベル未満であるなら、対象を、
(i)低減された用量での細胞療法の投与;
(ii)神経毒性の発現または神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置の投与;
(iii)入院患者設定で、および/または1日もしくは複数日の入院を伴って、実行されるかまたは実行されるように指定される細胞療法の投与;および/または
(iv)CLLもしくはSLLを処置するための細胞療法以外の代替処置の投与
のために選択し;または
(2)(a)リンパ節腫瘍負荷量が腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり、(b)血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり、および/または(c)リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベルを上回るのであれば、対象を、
(i)細胞療法の投与のために選択し、任意で、ここで、
(a)任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈する時または呈した後、対象が毒性の徴候もしくは症状を呈さない限りまたは呈するまで、対象には、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質および他の処置を投与せず;ならびに/あるいは
(b)任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、細胞療法の投与および任意の経過観察が実行される、
工程。
[本発明1005]
細胞療法、毒性の発現もしくは毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しもしくは減弱することができる作用物質もしくは他の処置、および/または代替処置を、対象に投与する工程をさらに含む、本発明1004の方法。
[本発明1006]
血液腫瘍負荷量を評価する工程が、対象の血液中のリンパ球濃度を決定する工程を含む、本発明1001~1005のいずれかの方法。
[本発明1007]
濃度が血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数である、本発明1006の方法。
[本発明1008]
血液腫瘍負荷量についての閾値レベルが、800または約800リンパ球/μL~3000または約3000リンパ球/μLの値である、本発明1001~1007のいずれかの方法。
[本発明1009]
血液腫瘍負荷量についての閾値レベルが、800リンパ球/μL、900リンパ球/μL、1000リンパ球/μL、1250リンパ球/μL、1500リンパ球/μL、1750リンパ球/μL、2000リンパ球/μL、2250リンパ球/μL、2500リンパ球/μL、2750リンパ球/μLもしくは3000リンパ球/μL、または約800リンパ球/μL、900リンパ球/μL、1000リンパ球/μL、1250リンパ球/μL、1500リンパ球/μL、1750リンパ球/μL、2000リンパ球/μL、2250リンパ球/μL、2500リンパ球/μL、2750リンパ球/μLもしくは3000リンパ球/μLの値、または前記のいずれかの間の値である、本発明1008の方法。
[本発明1010]
リンパ節腫瘍負荷量を評価する工程が、最大リンパ節径を決定する工程を含む、本発明1001~1009のいずれかの方法。
[本発明1011]
最大リンパ節径がセンチメートル(cm)の単位で測定される、本発明1010の方法。
[本発明1012]
リンパ節腫瘍負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルが4または約4cm~7または約7cmの値である、本発明1010または本発明1011の方法。
[本発明1013]
リンパ節腫瘍負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルが、4cm、4.25cm、4.5cm、4.75cm、5cm、5.25cm、5.5cm、5.75cm、6cm、6.25cm、6.5cm、6.75cmもしくは7cm、または約4cm、4.25cm、4.5cm、4.75cm、5cm、5.25cm、5.5cm、5.75cm、6cm、6.25cm、6.5cm、6.75cmもしくは7cmの値、または前記のいずれの間の値である、本発明1010~1012のいずれかの方法。
[本発明1014]
リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比を評価する工程が、センチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比を決定する工程を含む、本発明1001~1009のいずれかの方法。
[本発明1015]
リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルが、300または約300から、1000または約1000の値である、本発明1014の方法。
[本発明1016]
リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルが、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950もしくは1000、または約300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950もしくは1000の値、または前記のいずれかの間の値である、本発明1014または本発明1015の方法。
[本発明1017]
リンパ節腫瘍負荷量を評価する工程が二方向積和(SPD)を決定する工程を含む、本発明1001~1009のいずれかの方法。
[本発明1018]
SPDが平方センチメートル(cm 2 )の単位で測定される、本発明1017の方法。
[本発明1019]
リンパ節腫瘍負荷量としてのSPDについての閾値レベルが10または約10cm 2 ~40または約40cm 2 の値である、本発明1017または本発明1018の方法。
[本発明1020]
リンパ節腫瘍負荷量としてのSPDについての閾値レベルが、10cm 2 、12.5cm 2 、15cm 2 、17.5cm 2 、20cm 2 、22.5cm 2 、25cm 2 、27.5cm 2 、30cm 2 、32.5cm 2 、35cm 2 、37.5cm 2 もしくは40cm 2 、または約10cm 2 、12.5cm 2 、15cm 2 、17.5cm 2 、20cm 2 、22.5cm 2 、25cm 2 、27.5cm 2 、30cm 2 、32.5cm 2 、35cm 2 、37.5cm 2 もしくは40cm 2 の値、または前記のいずれかの間の値である、本発明1017~1019のいずれかの方法。
[本発明1021]
リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比を評価する工程が、平方センチメートル(cm 2 )の単位での二方向積和(SPD)に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比を決定する工程を含む、本発明1001~1009および本発明1017~1020のいずれかの方法。
[本発明1022]
リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルが、25または約25から、500または約500の値である、本発明1021の方法。
[本発明1023]
リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルが、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450もしくは500、または約25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450もしくは500の値、または前記のいずれかの間の値である、本発明1021または本発明1022の方法。
[本発明1024]
1つまたは複数の疾患負荷量パラメータの値が、対象にリンパ球枯渇療法を投与する前の前記1つまたは複数の疾患負荷量パラメータの値である、本発明1001~1023のいずれかの方法。
[本発明1025]
以下の工程を含む、細胞療法の投与後に毒性を発現するリスクを決定する方法:
生物学的試料を、腫瘍壊死因子(TNF)および/またはインターロイキン-16(IL-16)のレベル、量または濃度についてアッセイする工程であって、生物学的試料は、細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象に由来し、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、生物学的試料が、細胞療法を投与する前に、またはピークCAR+T細胞拡大増殖前におよび/もしくは細胞療法の投与開始後11もしくは約11日以内に、対象から得られる、工程;ならびに
TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度を、それぞれについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、
TNFについての閾値レベルは7もしくは約7pg/mL~25もしくは約25pg/mLの値であり、および/または
IL-16についての閾値レベルは400もしくは約400pg/mL~1000もしくは約1000pg/mLの値であり、
(1)TNFおよび/もしくはIL-16のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクがあると同定し、または
(2)TNFおよび/もしくはIL-16のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル未満であるなら、対象を、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクはないと同定する、
工程。
[本発明1026]
作用物質または他の処置が、抗IL-6抗体、抗IL-6R抗体もしくはステロイドであるか、または抗IL-6抗体、抗IL-6R抗体もしくはステロイドを含む、本発明1002~1024のいずれかの方法。
[本発明1027]
作用物質が、トシリズマブ、シルツキシマブもしくはデキサメタゾンであるか、またはトシリズマブ、シルツキシマブもしくはデキサメタゾンを含む、本発明1002~1024のいずれかの方法。
[本発明1028]
神経毒性が重度の神経毒性である、本発明1001~1027のいずれかの方法。
[本発明1029]
神経毒性がグレード3以上の神経毒性である、本発明1001~1028のいずれかの方法。
[本発明1030]
以下の工程を含む、細胞療法の奏効の見込みを評価する方法:
生物学的試料中の血管内皮増殖因子C(VEGFC)および/または血管内皮増殖因子受容体1(VEGFR1)のレベル、量または濃度を評価する工程であって、生物学的試料は、細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象に由来し、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、生物学的試料が、細胞療法を投与する前に、対象から得られる、工程;ならびに
試料中のVEGFCおよび/またはVEGFR1のレベル、量または濃度を閾値レベルと個別に比較する工程であって、
(1)VEGFCおよび/もしくはVEGFR1のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル未満であるなら、対象を、細胞療法に対する奏効を達成する見込みが高いと同定し、または
(2)VEGFCおよび/もしくはVEGFR1のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、細胞療法に対する奏効を達成する見込みが低いと同定する、
工程。
[本発明1031]
以下の工程を含む、細胞療法による処置のために対象を選択する方法:
生物学的試料中の血管内皮増殖因子C(VEGFC)および/または血管内皮増殖因子受容体1(VEGFR1)のレベル、量または濃度を評価する工程であって、生物学的試料は、細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象に由来し、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、生物学的試料が、細胞療法を投与する前に、対象から得られる、工程;ならびに
試料中のVEGFCおよび/またはVEGFR1のレベル、量または濃度をそれぞれについての閾値レベルと個別に比較することによって対象が細胞療法に対する奏効を達成する見込みを決定した結果に基づいて処置が奏効する可能性が高い対象を選択する工程であって、
(1)VEGFCおよび/もしくはVEGFR1のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル未満であるなら、対象を、細胞療法に対する奏効を達成する見込みが高いと同定し、または
(2)VEGFCおよび/もしくはVEGFR1のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、細胞療法に対する奏効を達成する見込みが低いと同定する、
工程。
[本発明1032]
処置のために選択された対象に細胞療法を投与する工程をさらに含む、本発明1030または本発明1031の方法。
[本発明1033]
以下の工程を含む、処置のための方法:
(a)生物学的試料中の血管内皮増殖因子C(VEGFC)および/または血管内皮増殖因子受容体1(VEGFR1)のレベル、量または濃度をそれぞれについての閾値レベルと個別に比較することによって対象が細胞療法に対する奏効を達成する見込みを決定した結果に基づいて処置が奏効する可能性が高い対象を選択する工程であって、
(1)VEGFCおよび/もしくはVEGFR1のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル未満であるなら、対象を、細胞療法に対する奏効を達成する見込みが高いと同定し、または
(2)VEGFCおよび/もしくはVEGFR1のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、細胞療法に対する奏効を達成する見込みが低いと同定し、
ここで、生物学的試料は、細胞療法による処置の候補であるCLLまたはSLLを有する対象に由来し、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、生物学的試料が、細胞療法を投与する前に対象から得られ、および/または対象はCARを発現するT細胞を含まない、
工程;ならびに
(b)処置のために選択された対象に細胞療法を投与する工程。
[本発明1034]
閾値レベルは、細胞療法を受ける前に対象の群から得られた生物学的試料中のVEGFCおよび/またはVEGFR1の中央または平均のレベル、量もしくは濃度の、またはその前後の、またはそれを上回って、25%以内、20%以内、15%以内、10%以内または5%以内であり、および/または1標準偏差以内であり、該群の対象のそれぞれは、CLLまたはSLLを処置するためのCARを発現する操作された細胞のある用量の投与後に奏効を達成し;
閾値レベルは、細胞療法を受ける前に対象の群から得られた生物学的試料中のVEGFCおよび/またはVEGFR1の中央または平均のレベル、量または濃度よりも、1.25倍以上高いか、1.3倍以上高いか、1.4倍以上高いか、または1.5倍以上高く、該群の対象のそれぞれは、CLLまたはSLLを処置するためのCARを発現する操作された細胞のある用量の投与後に奏効を達成し;
閾値レベルは、細胞療法による処置の候補ではない正常または健常対象の群から得られた生物学的試料中のVEGFCおよび/またはVEGFR1のレベル、量または濃度よりも、1.25倍以上高いか、1.3倍以上高いか、1.4倍以上高いか、または1.5倍以上高い、
本発明1030~1033のいずれかの方法。
[本発明1035]
VEGFCについての閾値レベルが60または約60pg/mL~70または約70pg/mLの値である、本発明1030~1034のいずれかの方法。
[本発明1036]
VEGFR1についての閾値レベルが80または約80pg/mL~120または約120pg/mLの値である、本発明1030~1035のいずれかの方法。
[本発明1037]
VEGFCとVEGFR1の両方のレベル、量または濃度が評価され、
VEGFCについての閾値レベルは60または約60pg/mL~70または約70pg/mLの値であり、
VEGFR1についての閾値レベルは80または約80pg/mL~120または約120pg/mLの値である、
本発明1030~1036のいずれかの方法。
[本発明1038]
生物学的試料が血液試料、血漿試料もしくは血清試料であるか、または血液試料、血漿試料もしくは血清試料から得られる、本発明1030~1037のいずれかの方法。
[本発明1039]
評価する工程が、
(a)生物学的試料を、VEGFCおよび/もしくはVEGFR1を検出することができるかまたはVEGFCおよび/もしくはVEGFR1に特異的である1つまたは複数の試薬と接触させる工程であって、任意で、1つまたは複数の試薬が、VEGFCおよび/またはVEGFR1を特異的に認識する抗体を含む工程;ならびに
(b)前記1つまたは複数の試薬とVEGFCおよび/またはVEGFR1とを含む複合体の有無を検出する工程
を含む、本発明1030~1038のいずれかの方法。
[本発明1040]
評価する工程がイムノアッセイを含む、本発明1030~1039のいずれかの方法。
[本発明1041]
評価する工程が、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、イムノブロッティング、免疫沈降、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫染色、フローサイトメトリーアッセイ、表面プラズモン共鳴(SPR)、ケミルミネセンスアッセイ、ラテラルフローイムノアッセイ、阻害アッセイまたはアビディティアッセイを含む、本発明1030~1040のいずれかの方法。
[本発明1042]
評価する工程が、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、任意でビーズベースのELISAを含む、本発明1030~1041のいずれかの方法。
[本発明1043]
奏効が客観的奏効を含む、本発明1030~1042のいずれかの方法。
[本発明1044]
客観的奏効が、完全奏効(CR;場合により、完全寛解としても知られる)、血球数回復が不完全な完全寛解(CRi)、完全寛解(CR)、骨髄回復が不完全なCR(CRi)、結節性部分寛解(nPR)、部分奏効(PR)を含む、本発明1043の方法。
[本発明1045]
奏効が、細胞療法の投与開始の1、2もしくは3ヶ月後または約1、2もしくは3ヶ月後またはそれ以上後に評価される奏効である、本発明1030~1044のいずれかの方法。
[本発明1046]
奏効が、細胞療法の投与開始の3または約3ヶ月後に評価される奏効である、本発明1030~1045のいずれかの方法。
[本発明1047]
細胞療法の投与前に対象にリンパ球枯渇療法を投与する工程をさらに含む、本発明1001~1046のいずれかの方法。
[本発明1048]
対象がリンパ球枯渇療法によりプレコンディショニングされている、本発明1001~1047のいずれかの方法。
[本発明1049]
生物学的試料が、対象へのリンパ球枯渇療法の投与の前に対象から得られる、本発明1048の方法。
[本発明1050]
1つまたは複数の疾患負荷量パラメータが、対象へのリンパ球枯渇療法の投与の前に評価される、本発明1048の方法。
[本発明1051]
リンパ球枯渇療法がフルダラビンおよび/またはシクロホスファミドの投与を含む、本発明1047~1050のいずれかの方法。
[本発明1052]
リンパ球枯渇療法が、両端の値を含む約200~400mg/m 2 、任意で300もしくは約300mg/m 2 のシクロホスファミド、および/または約20~40mg/m 2 、任意で30mg/m 2 のフルダラビンの、2~4日間、任意で3日間にわたる毎日の投与を含む、本発明1047~1051のいずれかの方法。
[本発明1053]
リンパ球枯渇療法が、300または約300mg/m 2 のシクロホスファミドおよび約30mg/m 2 のフルダラビンの、3日間にわたる毎日の投与を含み、任意で、細胞の前記用量は、リンパ球枯渇療法の少なくとも2~7日後もしくは少なくとも約2~7日後またはリンパ球枯渇療法開始の少なくとも2~7日後もしくは少なくとも約2~7日後に投与される、本発明1047~1052のいずれかの方法。
[本発明1054]
対象にブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤(BTKi)を投与する工程をさらに含む、本発明1001~1053のいずれかの方法。
[本発明1055]
BTKiがイブルチニブである、本発明1054の方法。
[本発明1056]
BTKi投与が、細胞療法の投与開始前に開始される、本発明1054または本発明1055の方法。
[本発明1057]
BTKi投与が、細胞療法の投与開始後まで継続される、本発明1056の方法。
[本発明1058]
BTKi投与が、細胞療法の投与開始後、少なくとも約90日または約90日にわたって継続される、本発明1056または本発明1057の方法。
[本発明1059]
イブルチニブが1日あたり140または約140mg~840または約840mgの用量で投与される、本発明1055~1058のいずれかの方法。
[本発明1060]
イブルチニブが1日あたり280または約280mg~560または約560mgの用量で投与される、本発明1055~1059のいずれかの方法。
[本発明1061]
イブルチニブが1日あたり420または約420mgの用量で投与される、本発明1055~1060のいずれかの方法。
[本発明1062]
疾患または病態が再発性または難治性(r/r)CLLである、本発明1001~1061のいずれかの方法。
[本発明1063]
疾患または病態が再発性または難治性(r/r)SLLである、本発明1001~1062のいずれかの方法。
[本発明1064]
操作された細胞の前記用量が、CAR発現CD4 細胞 対 CAR発現CD8 細胞の所定の比を含み、任意で、該比はおよそ1:3~およそ3:1である、本発明1001~1063のいずれかの方法。
[本発明1065]
操作された細胞の前記用量が、1:1またはおよそ1:1である、CAR発現CD4 細胞 対 CAR発現CD8 細胞の所定の比を含む、本発明1001~1064のいずれかの方法。
[本発明1066]
操作された細胞の前記用量が、2.5×10 7 または約2.5×10 7 個の総CAR発現細胞~1.0×10 8 または約1.0×10 8 個の総CAR発現細胞を含む、本発明1001~1065のいずれかの方法。
[本発明1067]
操作された細胞の前記用量が、2.5×10 7 または約2.5×10 7 個の総CAR発現細胞を含む、本発明1001~1066のいずれかの方法。
[本発明1068]
操作された細胞の前記用量が、5×10 7 または約5×10 7 個の総細胞または総CAR発現細胞を含む、本発明1001~1066のいずれかの方法。
[本発明1069]
操作された細胞の前記用量が、1×10 8 または約1×10 8 個の総細胞または総CAR発現細胞を含む、本発明1001~1066のいずれかの方法。
[本発明1070]
細胞療法の投与が、複数の別個の組成物を投与することを含み、ここで、複数の別個の組成物は、CD4 T細胞およびCD8 T細胞のうちの一方を含む第1組成物、ならびにCD4 T細胞およびCD8 T細胞のうちの他方を含む第2組成物を含む、本発明1001~1069のいずれかの方法。
[本発明1071]
第1組成物がCD8 T細胞を含み、第2組成物がCD4 T細胞を含む、本発明1001~1070のいずれかの方法。
[本発明1072]
第1組成物の投与の開始が、第2組成物の投与の開始前に実行され、任意で、第1組成物の投与の開始と第2組成物の投与の開始は、48時間を超える間隔をあけずに実行される、本発明1071の方法。
[本発明1073]
CD4 T細胞に含まれるCARおよび/もしくはCD8 T細胞に含まれるCARが同じCARを含み、ならびに/またはCD4 T細胞および/もしくはCD8 T細胞が同じCARを発現するように遺伝子操作される、本発明1064~1072のいずれかの方法。
[本発明1074]
対象が、細胞療法の投与前に、CAR発現細胞の別の用量およびリンパ球枯渇療法の他に、CLLまたはSLLのための1つまたは複数の前治療で、任意で少なくとも2つの前治療で、処置されている、本発明1001~1073のいずれかの方法。
[本発明1075]
対象が、細胞療法の投与前に、2つ以上の前治療による処置後の寛解に続いて再発しており、または2つ以上の前治療による処置に対して抵抗性になっており、2つ以上の前治療による処置に失敗しており、および/または2つ以上の前治療による処置に対して不耐容である、本発明1001~1074のいずれかの方法。
[本発明1076]
1つまたは複数の前治療が、キナーゼ阻害剤、任意でブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤、任意でイブルチニブ;ベネトクラクス;フルダラビンとリツキシマブを含む併用治療;放射線治療;および造血幹細胞移植(HSCT)から選択される、本発明1074または本発明1075の方法。
[本発明1077]
1つまたは複数の前治療が、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤および/またはベネトクラクスを含む、本発明1074~1076のいずれかの方法。
[本発明1078]
1つまたは複数の前治療がイブルチニブおよびベネトクラクスを含む、本発明1074~1077のいずれかの方法。
[本発明1079]
対象が、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤および/もしくはベネトクラクスによる処置後の寛解に続いて再発しており、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤および/もしくはベネトクラクスによる処置に対して抵抗性になっており、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤および/もしくはベネトクラクスによる処置に失敗しており、ならびに/またはブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤および/もしくはベネトクラクスに対して不耐容である、本発明1074~1077のいずれかの方法。
[本発明1080]
対象が、イブルチニブおよびベネトクラクスによる処置後の寛解に続いて再発しており、イブルチニブおよびベネトクラクスによる処置に対して抵抗性になっており、イブルチニブおよびベネトクラクスによる処置に失敗しており、ならびに/またはイブルチニブおよびベネトクラクスに対して不耐容である、本発明1074~1079のいずれかの方法。
[本発明1081]
操作された細胞が、対象から得られた初代T細胞である、本発明1001~1080のいずれかの方法。
[本発明1082]
操作された細胞が、対象にとって自己由来である、本発明1001~1081のいずれかの方法。
[本発明1083]
CARが、CD19に特異的な細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、任意で4-1BBである、共刺激分子由来の細胞質シグナル伝達ドメインと、任意でCD3ゼータである、一次シグナル伝達ITAM含有分子由来の細胞質シグナル伝達ドメインとを含み、および/または
CARは、順に、CD19に特異的な細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、共刺激分子由来の細胞質シグナル伝達ドメインと、一次シグナル伝達ITAM含有分子由来の細胞質シグナル伝達ドメインとを含む、
本発明1001~1082のいずれかの方法。
[本発明1084]
抗原結合ドメインがscFvである、本発明1083の方法。
[本発明1085]
scFvが、RASQDISKYLN(SEQ ID NO:35)のCDRL1配列、SRLHSGV(SEQ ID NO:36)のCDRL2配列、および/もしくはGNTLPYTFG(SEQ ID NO:37)のCDRL3配列、ならびに/またはDYGVS(SEQ ID NO:38)のCDRH1配列、VIWGSETTYYNSALKS(SEQ ID NO:39)のCDRH2配列、および/もしくはYAMDYWG(SEQ ID NO:40)のCDRH3配列を含み;
scFvが、FMC63の可変重鎖領域およびFMC63の可変軽鎖領域、ならびに/またはFMC63のCDRL1配列、FMC63のCDRL2配列、FMC63のCDRL3配列、FMC63のCDRH1配列、FMC63のCDRH2配列、およびFMC63のCDRH3配列を含むか、または前記のいずれかと同じエピトープに結合するか、または前記のいずれかと結合に関して競合し;
scFvが、SEQ ID NO:41に示すV H およびSEQ ID NO:42に示すV L を含み、任意で、該V H と該V L とはフレキシブルリンカーで隔てられ、任意で、該フレキシブルリンカーはSEQ ID NO:24に示す配列であるか、もしくはSEQ ID NO:24に示す配列を含み;および/または
scFvがSEQ ID NO:43に示す配列であるか、もしくはSEQ ID NO:43に示す配列を含む、
本発明1084の方法。
[本発明1086]
共刺激シグナル伝達領域がCD28または4-1BBのシグナル伝達ドメインである、本発明1083~1085のいずれかの方法。
[本発明1087]
共刺激シグナル伝達領域が4-1BBのシグナル伝達ドメインである、本発明1083~1086のいずれかの方法。
[本発明1088]
共刺激ドメインが、SEQ ID NO:12、またはそれに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有するそのバリアントを含む、本発明1083~1087のいずれかの方法。
[本発明1089]
一次シグナル伝達ドメインがCD3ゼータシグナル伝達ドメインである、本発明1083~1088のいずれかの方法。
[本発明1090]
一次シグナル伝達ドメインが、それに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有するSEQ ID NO:13、14または15を含む、本発明1083~1089のいずれかの方法。
[本発明1091]
CARが膜貫通ドメインと抗原結合ドメインの間のスペーサーをさらに含む、本発明1083~1090のいずれかの方法。
[本発明1092]
スペーサーが、免疫グロブリンヒンジまたはその改変バージョンの、任意でIgG4ヒンジまたはその改変バージョンの、全部もしくは一部を含むかまたは全部もしくは一部からなる、ポリペプチドスペーサーである、本発明1091の方法。
[本発明1093]
スペーサーが約15アミノ酸以下であり、CD28細胞外領域もCD8細胞外領域も含まない、本発明1091または本発明1092の方法。
[本発明1094]
スペーサーが12または約12アミノ酸長である、本発明1091~1093のいずれかの方法。
[本発明1095]
スペーサーが、SEQ ID NO:1の配列、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:34によってコードされる配列、またはそれに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有する前記いずれかのバリアントを有するかまたはそれからなり、および/あるいは
式X 1 PPX 2 Pを含むかまたはそれからなり、式中、X 1 はグリシン、システインまたはアルギニンであり、X 2 はシステインまたはスレオニンである、
本発明1091~1094のいずれかの方法。
[本発明1096]
scFvが、RASQDISKYLN(SEQ ID NO:35)のアミノ酸配列、SRLHSGV(SEQ ID NO:36)のアミノ酸配列、および/もしくはGNTLPYTFG(SEQ ID NO:37)のアミノ酸配列、ならびに/またはDYGVS(SEQ ID NO:38)のアミノ酸配列、VIWGSETTYYNSALKS(SEQ ID NO:39)のアミノ酸配列、および/もしくはYAMDYWG(SEQ ID NO:40)のアミノ酸配列を含むか、あるいはscFvが、FMC63の可変重鎖領域およびFMC63の可変軽鎖領域ならびに/もしくはFMC63のCDRL1配列、FMC63のCDRL2配列、FMC63のCDRL3配列、FMC63のCDRH1配列、FMC63のCDRH2配列、およびFMC63のCDRH3配列を含むか、または前記のいずれかと同じエピトープに結合するか、または前記のいずれかと結合に関して競合し、かつ任意で、scFvは、順に、V H と、任意でSEQ ID NO:24を含む、リンカーと、V L とを含み、ならびに/またはscFvが、フレキシブルリンカーを含み、および/もしくはSEQ ID NO:43に示すアミノ酸配列を含み;
スペーサーが、
(a)免疫グロブリンヒンジもしくはその改変バージョンの全部もしくは一部を含むかもしくはそれからなり、または約15個以下のアミノ酸を含み、CD28細胞外領域もCD8細胞外領域も含まず、(b)免疫グロブリンヒンジの、任意でIgG4ヒンジの、もしくはその改変バージョンの、全部もしくは一部を含むかもしくはそれからなり、および/または約15個以下のアミノ酸を含み、CD28細胞外領域もCD8細胞外領域も含まず、あるいは(c)12もしくは約12アミノ酸長であり、および/または免疫グロブリンヒンジの、任意でIgG4の、もしくはその改変バージョンの、全部もしくは一部分を含むかもしくはそれからなり、あるいは(d)SEQ ID NO:1の配列、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:34によってコードされる配列、またはそれに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有する前記いずれかのバリアントを有するかまたはそれからなり、あるいは(e)式X 1 PPX 2 Pを含むかまたはそれからなり、ここで、X 1 はグリシン、システインまたはアルギニンであり、X 2 はシステインまたはスレオニンである、ポリペプチドスペーサー
であり;
共刺激ドメインが、SEQ ID NO:12、またはそれに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有するそのバリアントを含み;および/または
一次シグナル伝達ドメインが、それに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するSEQ ID NO:13、14または15を含む、
本発明1083~1095のいずれかの方法。
[本発明1097]
抗原結合ドメインが、FMC63の可変重鎖領域およびFMC63の可変軽鎖領域を含むscFvを含み;
CARが、SEQ ID NO:1の配列を含むポリペプチドスペーサーであるスペーサーをさらに含み;
共刺激ドメインがSEQ ID NO:12を含み;
一次シグナル伝達ドメインがSEQ ID NO:13、14または15を含む、
本発明1083~1096のいずれかの方法。
[本発明1098]
対象がヒト対象である、本発明1001~1097のいずれかの方法。
[本発明1099]
CD19に結合するCARを発現するT細胞を含む、細胞療法のための組成物、または細胞療法のための複数の組成物のうちの1つと、本発明1001~1098のいずれかの方法に従ってT細胞組成物を投与することを指定する、細胞療法を投与するための説明書とを含む、製造物品。
[本発明1100]
本発明1001~1098のいずれかの方法に従って慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象を処置する方法において使用するための、CD19に結合するCARを発現するT細胞を含む細胞療法。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1A図1Aは、DL1(5×107個のCAR発現T細胞)またはDL2(1×108個のCAR発現T細胞)の抗CD19 CAR+T細胞が投与された、R/R CLLを持つ被験者(N=22)における、最良総合効果(best overall response)の結果を表す。PD、進行(progressive disease);SD、安定(stable disease);PR、部分奏効;nPR、結節性部分奏効;CR、完全奏効;CRi、骨髄回復が不完全な完全奏効(complete response with incomplete marrow recovery)。
図1B図1Bは、R/R CLLを持つ被験者にDL1(5×107個のCAR発現T細胞)またはDL2(1×108個のCAR発現T細胞)の抗CD19 CAR発現T細胞を投与した後の任意の時点における、フローサイトメトリーによる血中の、または次世代シーケンシング(NGS)による骨髄中の、検出不能な微小残存病変(undetectable minimal residual disease:uMRD)の結果を表す。
図2図2は、DL1(5×107個のCAR発現T細胞)またはDL2(1×108個のCAR発現T細胞)の抗CD19 CAR+T細胞が投与された、R/R CLLを持つ被験者(N=22)における、経時的な奏効期間のスイマープロットを表す。b検出の深さ=10-4
図3図3は、DL1(5×107個のCAR発現T細胞)またはDL2(1×108個のCAR発現T細胞)の抗CD19 CAR+T細胞が投与された、R/R CLLを持つ被験者における、用量レベル別の経時的な中央細胞数/μlのグラフを表す。上側のエラーバーは第3四分位数を表し、下側のエラーバーは第1四分位数を表す。前記用量の抗CD19 CAR+T細胞が1日目に与えられた。a上側のエラーバーは第3四分位数を表し、下側のエラーバーは第1四分位数を表す。
図4A図4Aは、R/R CLLを持つ被験者(N=22)またはブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤(BTKi)とベネトクラクスとの両方による前処置(prior treatment)に失敗した被験者(N=9)における最良総合効果の結果を表す。
図4B図4Bは、R/R CLLを持つ被験者(N=20)またはBTKiとベネトクラクスとの両方による前処置に失敗した被験者(N=8)での投与後の任意の時点における、フローサイトメトリーによる血中の、または次世代シーケンシング(NGS)による骨髄中の、検出不能な微小残存病変(uMRD)の結果を表す。a奏効について評価可能は処置前評価と≧1のベースライン後評価とがあることと定義した;MRDについて評価可能はベースライン時に検出可能なMRDを持つ患者と定義した。被験者の1人は奏効について評価可能でなかった。b≧3ヶ月の治療後にPDまたは<PRによる中断と定義されるベネトクラクス不成功。c2人の被験者はMRDについて評価可能でなかった。d1人の被験者はMRDについて評価可能でなかった。CI、信頼区間(confidence interval);CRi、血球数回復が不完全な完全奏効(complete response with incomplete blood count recovery);NGS、次世代シーケンシング;nPR、結節性部分奏効;PD、進行;PR、部分奏効;SD、安定;uMRD、検出不能な微小残存病変。
図5図5は、BTKiとベネトクラクスとの両方による前処置に失敗したR/R CLLを持つ個々の被験者および他の処置被験者における経時的な奏効期間のスイマープロットを表す。*MRD評価不能。試験中の死亡が7例あり、5人の被験者は疾患の進行によって死亡し、1人の被験者にはCAR+T細胞療法処置とは無関係なグレード5の呼吸不全(DL1)があり、1人の被験者にはCAR+T細胞療法処置とは無関係な敗血症性ショック、急性腎損傷および肺炎(DL2)があった。最初の30日以内に発生した死亡例はなかった。ND、未実施;RT、リヒタートランスフォーメーション。
図6図6は、評価可能な処置被験者およびBTKiとベネトクラクスとの両方による前処置に失敗した被験者における、用量レベル別の経時的な中央細胞数/μLのグラフを表す。上側のエラーバーは第3四分位数を表す。下側のエラーバーは第1四分位数を表す。CAR+T細胞療法を1日目に施した。
図7A図7Aは、神経学的事象を生じなかった被験者(N=Gr0)、またはグレード1~5の神経毒性を示した対象(Y=Gr1~5)における血液腫瘍負荷量(リンパ球数(1000個/μL)によって測定されるもの)およびリンパ節腫瘍負荷量(最大観測リンパ節径(cm)によって測定されるもの)を表す(血液p=0.018;リンパ節p=0.043)。重度の神経毒性(グレード3以上)を示す被験者は黒丸で示されている。
図7B図7Bは、神経学的事象を生じなかった被験者(Gr0)またはグレード1~4の神経毒性を示した被験者(Gr1~4;グレード5のNEはなかった)におけるリンパ節腫瘍負荷量(二方向積和(SPD)によって測定されるもの)を表す(p=0.025)。aグレード5のNEなし。
図7C図7Cは、神経学的事象を生じなかった被験者(白丸)、グレード1または2の神経学的事象を示した被験者(白い正方形)および重度(グレード3以上)の神経学的事象を示した被験者(Y、黒い菱形)における、血液腫瘍負荷量とリンパ節腫瘍負荷量との間の関係を表す。枠で囲んだ領域は、重度(グレード3以上)の神経学的事象を示した被験者5人のうち5人が低い血液腫瘍負荷量を呈したことを示している。
図7D図7Dは、神経学的事象を生じなかった被験者(N=Gr0)またはグレード1~5の神経毒性を示した被験者(Y=Gr1~5)におけるリンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比を表す。(P=0.005).重度の神経毒性(グレード3以上)を示す被験者は黒丸で示されている。
図8図8は、神経学的事象を呈さなかった被験者の群(Ntx Gr=0)またはグレード1以上の神経学的事象を呈した被験者の群(Ntx Gr>0)における、CAR+T細胞投与前およびCAR+T細胞投与後30日以内のさまざまな時点におけるTNFおよびIL-16の幾何平均(±SEM)濃度を表す。
図9A図9Aは、神経学的事象を呈さなかった対象の群(Gr0)またはグレード1以上の神経学的事象を呈した対象の群、それぞれIL-16(Gr1~4;p=0.0001)およびTNF(Gr1~4;p=0.0028)における、対象から得られた試料中のIL-16およびTNFのレベルを表す。aグレード5のNEは観察されなかった。
図9B図9Bは、神経学的事象を呈さなかった被験者の群(Gr0 NE;白丸)、グレード1または2の神経学的事象を呈した被験者の群(Gr1~2 NE;白い正方形)またはグレード3もしくは4の神経学的事象を呈した被験者の群(Gr3~4 NE;黒い菱形)における、CAR+T細胞を投与した2日後の血中のIL-16およびTNFのレベルとリンパ節腫瘍負荷量(二方向積和(SPD)によって測定されるもの)との間の関係を表す。
図9C図9Cは、神経学的事象を呈さなかった被験者の群(Gr0 NE;白丸)、グレード1または2の神経学的事象を呈した被験者の群(Gr1~2 NE;白い正方形)またはグレード3もしくは4の神経学的事象を呈した被験者の群(Gr3~4 NE;黒い菱形)における、CAR+T細胞を投与した2日後の血中のIL-16およびTNFのレベルとリンパ節腫瘍負荷量(最大観測リンパ節径(cm)によって測定されるもの)との間の関係を表す。
図10図10A~10Bは、CAR+T細胞の投与後、3ヶ月時点でのレスポンダー(M3 R;投与後3ヶ月時点でCR、CRi、PRまたはnPRを達成した被験者)および3ヶ月時点でのノンレスポンダー(M3 NR;投与後3ヶ月時点またはそれ以前にSDまたはPDを呈した被験者)における、CAR+T細胞投与の直前に対象から得られた試料中の、pg/mLの単位で測定された、血管内皮増殖因子C(VEGFC;図10A)および血管内皮増殖因子受容体1(VEGFR1;図10B)のレベルを表す。
図11A図11Aは、3ヶ月時点でのレスポンダー(M3 R;投与後3ヶ月時点でCR、CRi、PRまたはnPRを達成した被験者)および3ヶ月時点でのノンレスポンダー(M3 NR;投与後3ヶ月時点またはそれ以前にSDまたはPDを呈した被験者)における、注入後1日目から3ヶ月目まで評価された、平均CD3+CAR+T細胞濃度(細胞数/μLとして測定されるもの)を表す。
図11B図11Bは、注入後1日目から3ヶ月目まで評価された、CAR+T細胞だけが投与された被験者(CAR T細胞のみ)およびCAR+T細胞とイブルチニブとが併用投与された被験者(CAR T細胞およびイブルチニブ)について評価された、平均CD3 CAR+T細胞濃度を表す。
図12図12は、抗CD19 CAR+T細胞の投与後30日目または3ヶ月の時点で、NGSベースのアッセイによって(10-4の感度で)測定された骨髄(BM)微小残存病変(MRD)状態とフローサイトメトリーによって(10-4の感度で)測定された末梢血(PB)MRD状態の間での、一致MRD状態および不一致MRD状態の数および総一致数を表す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
詳細な説明
本明細書では、細胞療法の候補である対象および/または細胞療法が投与された対象において、細胞療法と関連する毒性を発現するリスクを決定する方法、および細胞療法が奏効する見込みを決定する方法が提供される。いくつかの局面において、本方法は、対象の疾患または障害に関係する1つまたは複数のパラメータ、例えば対象における腫瘍負荷量に関係するパラメータを評価する工程を伴う。いくつかの局面において、本方法は、バイオマーカーまたは分析物(例えばサイトカインおよび増殖因子を含む血中分析物、ならびに受容体)のレベル、濃度および/または量を評価する工程を伴う。いくつかの局面において、パラメータ、バイオマーカーまたは分析物は、細胞療法に関連しうる毒性、例えば神経毒性と関連し、相関し、またはそれを示す。いくつかの局面において、パラメータ、バイオマーカーまたは分析物は、対象における細胞療法の奏効(例えば客観的奏効、部分奏効および/または完全奏効)と関連し、相関し、またはそれを示す。場合により、本方法は、細胞療法、例えば操作された細胞の投与を伴う、例えばキメラ抗原受容体(CAR)などの組換え受容体を発現する改変T細胞の投与を伴う、細胞療法、および場合によっては追加の作用物質の投与と一緒に、それらに関連して、またはそれらの一部として、使用される。
【0057】
いくつかの態様において、提供される方法および使用は、いくつかの局面において、一般にがんまたは腫瘍、例えば白血病またはリンパ腫、最も具体的には慢性リンパ性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)であるか、またはそれらを含む疾患または病態を有する対象を処置するための、操作された細胞(例えばT細胞)および/またはその組成物の使用に関係する。いくつかの局面において、本方法および使用は、特定の代替的方法と比較して、例えば処置対象の特定の群における、改良された奏効および/またはより持続的な奏効もしくは有効性および/または毒性もしくは他の副作用のリスクの低減を提供し、または達成する。いくつかの態様において、本方法は、CAR+T細胞を投与した後の、毒性(例えば神経毒性)のリスクおよび/または対象において細胞療法が奏効する見込みを決定することができるので、有利である。別の局面において、本方法は、指定された数または相対数の操作された細胞の投与、所定の比の特定タイプの細胞の投与、特定患者集団の処置、例えば特定のリスクプロファイル、病期分類および/もしくは前処置歴ならびに/またはそれらの組合せを有する患者集団の処置を伴う細胞療法も含むことができる。
【0058】
いくつかの局面では、毒性の発現と相関しうる特定パラメータ、例えば腫瘍負荷量測定値および/または特異的バイオマーカーもしくは分析物の発現を評価する工程を含む方法、ならびに毒性を防止しおよび/または改善するための処置、例えば介入治療の方法が提供される。細胞療法を投与した後のアウトカム、例えば客観的奏効(OR)、完全奏効(CR)または部分奏効(PR)などの奏効を含む治療アウトカム、または毒性、例えば神経毒性の発現などの安全性アウトカムと相関しうる、特定パラメータ、例えば腫瘍負荷量測定値、腫瘍負荷量測定値の比、および/または特異的バイオマーカーもしくは分析物の発現を評価する工程を伴う方法も、提供される。腫瘍負荷量測定値、腫瘍負荷量測定値の比、および/またはバイオマーカーもしくは分析物の発現などのパラメータの評価に基づいて、奏効の見込みおよび/または毒性のリスクの見込みを評価するための方法も提供される。細胞療法において使用するための組成物も提供される。例えば本明細書において提供される方法において使用するための、製造物品およびキットも提供される。いくつかの態様において、製造物品およびキットは、任意で、本明細書において提供される方法に従って使用するための説明書を含む。
【0059】
提供される態様には、特に、CLLまたはSLLを持つ対象において、毒性を発現するリスクおよび/または細胞療法の奏効の見込みを評価する方法が含まれる。いくつかの局面において、CLLは不治の疾患と考えられており、対象は結局は再発するか、利用可能な治療または処置に対して難治性になる。任意の態様の一部において、対象は高リスク疾患を有する。提供される方法のいくつかの態様において、対象は高リスクCLLまたは高リスクSLLを有する。場合により、高リスク対象および超高リスク対象のための既存の処置戦略は、フルダラビン、シクロホスファミドおよびリツキシマブ(FCR)、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤(例えばイブルチニブ)、ならびに/または同種異系幹細胞移植を含みうる。(Puiggros et al.,BioMed Research International,Volume 2014(2014),Article ID 435983)。既存の治療の多くは経口標的薬を含み、一部のCLL患者では、それらによって、処置アウトカムが改良されている。それでもなお、一部の患者は、治療に対して不耐容であるか抵抗性であると判明しおよび/またはMRDが検出不能(uMRD)な完全奏効を達成することができない。いくつかの局面において、利用可能な治療による処置後に疾患が進行する対象は、アウトカムが不良である。例えばいくつかの局面において、CLLの処置を受けた対象は不良な長期アウトカムを呈する。例えば場合により、難治性(R/R)高リスクCLL対象は、イブルチニブ中断後に、低い生存率を呈する(Jain et al.(2015)Blood 125(13):2062-2067)。CLLを処置するための改良された方法が必要とされており、いくつかの局面では、高リスクおよび/もしくは超高リスクCLLならびに/または再発性を有する対象もしくは複数の前治療に対して難治性になった対象を処置するのに適した方法が必要とされている。
【0060】
いくつかの局面において、養子細胞療法(関心対象の疾患または障害に特異的なキメラ受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)および他の組換え抗原受容体を発現する細胞の投与を伴うもの、ならびに養子免疫細胞療法および養子T細胞療法を含む)は、がん、例えばB細胞性悪性疾患、ならびに他の疾患および障害の処置に使用することができる。特定の状況では、利用可能な養子細胞療法のアプローチが、いつも全く申し分ないというわけではないこともある。状況により、最適な有効性が、投与された細胞の、標的、例えば標的抗原を認識してそれに結合する能力、対象内、腫瘍内およびその環境内の適当な部位に輸送され、局在し、その中にうまく進入する能力、活性化状態になって拡大増殖する能力、細胞傷害性の殺滅およびサイトカインなどのさまざまな因子の分泌を含む種々のエフェクター機能を発揮する能力、存続する能力(長期間存続する能力を含む)、特定の表現型状態(エフェクター、長寿命メモリー、低分化度、およびエフェクター状態など)に分化し、移行し、またはそれら特定の表現型状態へのリプログラミングにエンゲージする能力、クリアランスおよび標的リガンドまたは標的抗原への再曝露に続いて有効でロバストなリコール応答を与え、疲弊、アネルギー、最終分化、および/または抑制状態への分化を回避しまたは低減する能力に依存する場合もある。
【0061】
いくつかの局面において、提供される態様は、養子細胞療法の有効性が、そのような細胞の投与を受ける対象における神経毒性などの毒性の発現によって制限されるという観察、ならびに特定のパラメータおよび/またはバイオマーカーを、毒性の発現と相関させ、関連づけることができ、それらが毒性の発現の予測に役立ちうるという観察に基づく。任意の態様の一部において、そのような発見は、特定の対象について、例えば細胞療法の投与後、速い時点で、さらには細胞療法の投与前に、細胞療法を投与した後の毒性のリスクを決定するために、利用することができる。場合により、神経毒性などの毒性は重度でありうる。例えば場合により、組換え受容体、例えばCARを発現する細胞のある用量を投与した結果、毒性またはそのリスク、例えば場合により重度の神経毒性を含む神経毒性が生じうる。場合により、そのような細胞の用量を増やせば、例えば拡大増殖および/または存続を増進することによって細胞への曝露を増加させることなどにより、処置の有効性を増大させることはできるが、その結果として、毒性を発現するリスクまたはより重度の毒性を発現するリスクが高くなりうる。また、場合により、疾患負荷量が大きい対象、例えばリンパ節腫瘍負荷量が大きい対象は、毒性を発現するリスクまたはより重度の毒性を発現するリスク高くなりうる。
【0062】
毒性、例えば細胞療法に関係しうる毒性、例えば神経毒性を処置しまたは改善するために利用することができる特定の方法は、いつも全く申し分ないというわけではないこともある。そのようなアプローチの多くは、例えばサイトカイン遮断によって、および/または投与された細胞の機能を排除しもしくは損ねることもありうる高用量ステロイドなどの作用物質を送達することによって、毒性の下流効果を標的とすることなどに、的を絞っている。加えて、そのようなアプローチでは、場合により対象における重度の毒性の発現後に生じうる、毒性の身体的徴候または症状が検出された場合にのみ、そのような介入が投与されることが多い。また、これら他のアプローチの多くは、養子細胞療法と関連しうる神経毒性などの他の形態の毒性を防止しない。場合により、そのような治療は、対象が毒性の身体的徴候または症状を示すまで投与されない。場合により、その時には、そのような症状が重度になっていて、それゆえに、毒性を改善しまたは処置するには、さらに苛酷なまたはより極端な処置(例えばより高い投薬量または投与頻度の増加)が必要になりうる。CLLを処置するための、そしていくつかの局面では、毒性のリスクを早期に(例えば投与前にまたは投与後の早い時点で)決定し、潜在的毒性を緩和しまたは解消するための措置をとることによって、毒性(例えば神経毒性)のリスクを低減するための、改良された方法も必要とされている。
【0063】
特定の代替アプローチの使用は、そのような問題に対して満足できる解決を与えない。例えば、毒性を改善する作用物質が細胞の投与と同時に投与されるか、細胞の投与後であるが身体的徴候もしくは症状または重度の徴候もしくは症状の発生前の時間枠内に、少なくとも適当なレベルのリスク評価なしで投与されるアプローチは、満足できないこともある。例えば、細胞療法が投与された対象のすべてが、毒性アウトカムを将来的または現に実際に生じるわけではなく、介入を必要とするような毒性アウトカムを将来的または現に実際に生じるわけでもない。したがって、そのような代替手段は、いくつかの状況では、そのような処置が正当性を欠きうる特定の対象を、不必要に処置することになるだろう。さらに、場合により、そのような作用物質および治療(例えばステロイド)は、それ自体が毒性副作用と関連する。細胞療法に起因しうる毒性を処置しまたはその重症度を改善するために作用物質もしくは治療の投与または作用物質もしくは治療による処置をより高用量またはより高頻度で行う必要がある場合、そのような副作用は、さらに大きくなりうる。加えて、場合により、毒性を処置するための作用物質または治療は、細胞療法の有効性、例えば細胞療法の一部として提供される細胞上に発現したキメラ受容体(例えばCAR)の有効性を制限しうる(Sentman(2013)Immunotherapy,5:10)。
【0064】
提供される方法には、毒性アウトカムのリスクに対処し、それを予測し、処置もしくは防止するための利用可能なアプローチおよび代替的解決策と比べて、利点がある。特に、いくつかの態様では、提供される方法により、毒性、例えば細胞療法に関係する毒性を発現するリスクがあると予測される対象、またはそのような毒性の発現に関して特定の閾リスクレベルを上回る対象だけが同定される。したがって、提供される方法は、いくつかの態様において、毒性を発現する可能性がより高い対象のサブセットにおいてのみ、毒性アウトカムに介入することを可能にする。多くの場合、これにより、細胞療法が投与されるすべての対象における毒性の処置(これは、上述のように、対象の多くが毒性を決して発現しなかったであろうという場合には、正当化されえず、および/または不要な作用をもたらすこともある)が回避される。
【0065】
いくつかの局面において、提供される態様には、神経毒性(例えば重度の神経毒性)などの毒性を発現するリスクおよび/または奏効の見込みを、早期に、例えば細胞療法などの処置を投与する前に、またはそのような処置の投与もしくは開始後間もなく、または細胞療法の第1用量の投与もしくは開始後に、予測することができるという特徴と関連する利点もある。したがって場合により、毒性(例えば重度の神経毒性などの神経毒性)を発現するリスクがあると予測される対象および/またはそのような毒性を発現するリスクがある可能性がより高い対象は、早期に、一般的には、本来であれば介入処置につながるであろう毒性(例えば重度の神経毒性)の身体的徴候または症状が発生する前に、介入を受けることができる。場合により、毒性アウトカムの処置または毒性アウトカムの可能性の処置に早期に介入できることは、毒性を処置しまたは改善するための作用物質の投薬量を低減し、および/またはそのような作用物質または治療の投与頻度を減少させることが可能であることを意味しうる。
【0066】
いくつかの態様において、提供される方法は、処置前に得られた試料または養子細胞療法の投与後早期に得られた試料において、後に毒性を発現した対象では、特定のパラメータ、バイオマーカーまたは分析物、例えば特定のサイトカインバイオマーカーが異なるという観察に基づく。別の局面において、提供される方法は、養子細胞療法を投与した後、持続的奏効などといった奏効を後に達成した対象では、特定のパラメータ、バイオマーカーまたは分析物が異なるという観察にも基づく。したがって、本明細書に記載するそのようなバイオマーカーは、処置に先立って対象および有効量を選択することができるように、および/または処置の修正(例えば追加の治療作用物質および/またはモニタリングの変更)を処置中に早期に加えることができるように、細胞療法に対して、毒性を発現する可能性が高いまたはより高い対象および/または奏効する可能性が低い対象を同定するための予測方法において使用することができる。場合により、本明細書に記載するそのようなバイオマーカーは、処置に先立って対象および有効量を選択することができるように、および/または処置の修正(例えば追加の治療作用物質および/またはモニタリングの変更)を処置中に早期に加えることができるように、細胞療法に対して、毒性を発現する可能性が高いまたはより高い対象を同定するための予測方法において使用することができる。場合により、本明細書に記載するそのようなバイオマーカーは、処置に先立って対象および有効量を選択することができるように、および/または処置の修正(例えば追加の治療作用物質および/またはモニタリングの変更)を処置中に早期に加えることができるように、処置が奏効する可能性が高いまたはより高い対象を同定するための予測方法において使用することができる。そのような方法は、早期介入のための合理的戦略に情報を提供し、それによって、CAR-T細胞療法などの養子細胞療法の安全で効果的な臨床応用を助長することができる。
【0067】
いくつかの態様において、提供される方法および使用は、CLLの特定の予後またはリスクを有するものとして選択または同定された対象への操作された細胞の投与を含む細胞療法による処置方法との関連において、使用することができる。慢性リンパ性白血病(CLL)は一般に多様な疾患である。CLLを持つ対象の一部は処置を受けなくても生き延びうるが、他の対象は即時的介入を必要としうる。場合により、CLLを持つ対象は、疾患予後および/または推奨される処置戦略に情報を提供しうる群に分類されうる。場合により、これらの群は「低リスク」、「中リスク」、「高リスク」および/または「超高リスク」であって、患者は、限定するわけではないが遺伝子異常および/または形態学的もしくは身体的特徴を含むいくつかの因子に応じて、そのように分類されうる。いくつかの態様において、本方法に従って処置される対象は、CLLのリスクに基づいて分類または同定される。いくつかの態様において、対象は高リスクCLLを有する対象である。いくつかの態様において、提供される方法および使用は、例えば処置対象の特定の群において、例えば白血病を持つ患者において、例えばCLLもしくはSLLの患者において、特定の代替的方法と比較して改良された奏効または有効性を提供しまたは達成することもできる。
【0068】
加えて、細胞療法の奏効について特定対象の見込みを予測または評価するために使用することができる方法も提供される。特定の局面において、細胞療法に続いて対象が特定のアウトカムまたは状態、例えば奏効アウトカムまたは毒性アウトカムを含む特定の治療アウトカムに到達する見込みを決定することは、例えば対象が細胞療法に対する奏効を達成する見込みを決定した結果に基づいて処置が奏効する可能性が高い対象を選択することなどによって、処置のために対象を同定および選択し、ならびに/または処置レジメンを修正し、対象を追加の治療作用物質による処置のために選択し、または投与のための適当な用量を同定する際の一因子になりうる。いくつかの態様において、本方法は、毒性リスクの増加を伴わずに処置の奏効が改良されるように、処置前に、または処置の開始後間もなく、そのようなアウトカムまたは状態が決定される点で、有利である。
【0069】
いくつかの態様において、本方法は、追加の治療作用物質、例えば毒性を改善するための作用物質および/またはキナーゼ阻害剤などの他の追加治療作用物質を、対象に投与する工程も含む。
【0070】
本出願において言及する刊行物は、特許文書、科学論文およびデータベースを含めていずれも、あたかも個々の刊行物が参照により個別に本明細書に組み入れられた場合と同じ程度に、あらゆる目的で、その全体が本明細書に組み入れられる。本明細書において示される定義が、参照により本明細書に組み入れられる特許、特許出願、公開特許出願および他の刊行物において示される定義と相反するかまたは他の形で矛盾する場合は、本明細書において示される定義が、参照により本明細書に組み入れられる定義に優先する。
【0071】
本明細書において使用されるセクション見出しには構成上の目的しかなく、記載されている主題を限定すると解釈してはならない。
【0072】
I. パラメータおよびバイオマーカーの評価方法ならびに細胞療法による処置のために対象を同定し選択する方法
提供される方法および使用には、対象において細胞療法と関連する毒性を発現するリスクを評価する方法であって、毒性、例えば重度の神経毒性などの神経毒性と関連するバイオマーカー(例えば分析物)またはパラメータを評価または検出する工程を伴う方法が含まれる。また、提供される方法には、対象における細胞療法の奏効の見込みを評価する方法であって、奏効アウトカム、例えば完全奏効(CR)、骨髄回復が不完全なCR(CRi)、結節性部分寛解(nPR)、部分奏効(PR)を含む客観的奏効(OR)と関連するバイオマーカー(例えば分析物)またはパラメータを評価または検出する工程を伴う方法も含まれる。
【0073】
任意の態様の一部において、本方法は、1つまたは複数の疾患負荷量パラメータ、例えばリンパ節腫瘍負荷量、血液腫瘍負荷量、およびリンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比を評価する工程を伴う。任意の態様の一部において、本方法はリンパ節腫瘍負荷量を評価する工程を伴う。任意の態様の一部において、本方法は血液腫瘍負荷量を評価する工程を伴う。任意の態様の一部において、本方法はリンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比を評価する工程を伴う。任意の態様の一部において、本方法は、1つまたは複数のバイオマーカーまたは分析物、例えばインターロイキン16(IL-16)、腫瘍壊死因子(TNF)、血管内皮増殖因子C(VEGFC)または血管内皮増殖因子受容体1(VEGFR1)のレベル、濃度または量を評価する工程を伴う。任意の態様の一部において、本方法は、インターロイキン16(IL-16)のレベル、濃度または量を評価する工程を伴う。任意の態様の一部において、本方法は、腫瘍壊死因子(TNF)のレベル、濃度または量を評価する工程を伴う。任意の態様の一部において、本方法は、血管内皮増殖因子C(VEGFC)のレベル、濃度または量を評価する工程を伴う。任意の態様の一部において、本方法は、血管内皮増殖因子受容体1(VEGFR1)のレベル、濃度または量を評価する工程を伴う。
【0074】
いくつかの態様において、本方法は、パラメータの値またはバイオマーカーもしくは分析物のレベル、濃度もしくは量を、その特定パラメータ、バイオマーカーまたは分析物についての閾値と比較する工程を伴う。いくつかの態様において、比較は、毒性のリスクおよび/または細胞療法の奏効の見込みを決定するために使用することができる。
【0075】
いくつかの態様において、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含む。いくつかの態様において、パラメータ、バイオマーカーまたは分析物は、慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象から評価されるか、またはそのような対象から得られた試料において評価される。いくつかの態様において、対象は、細胞療法による処置の候補であり、および/または細胞療法による処置を受けている。いくつかの態様において、提供される方法は、毒性を発現するリスクを持ちおよび/または細胞療法が奏効する可能性が高い対象を同定しまたは選択するために、ならびに/または特定の処置、例えば追加の治療作用物質による処置、例えば任意の毒性を改善するための作用物質または処置の対象を選択するために、使用することができる。
【0076】
いくつかの局面において、本方法は、提供される態様に従って決定される、例えばパラメータもしくはバイオマーカーの評価、および/またはパラメータもしくはバイオマーカーの、その特定パラメータもしくはバイオマーカーの参照値もしくは閾値レベルとの比較などによって決定される、毒性のリスクに基づいて、対象を、考えうる毒性の症状についてさらにモニタリングする工程も伴う。いくつかの局面において、本方法は、提供される態様に従って用量を決定される、例えばパラメータもしくはバイオマーカーの評価、および/またはパラメータもしくはバイオマーカーの、その特定パラメータもしくはバイオマーカーの参照値もしくは閾値レベルとの比較などによって決定される、奏効の見込みに基づいて、対象を、考えうる奏効についてさらにモニタリングする工程も伴う。
【0077】
いくつかの態様において、本方法は、1つのバイオマーカー(例えば分析物)もしくはバイオマーカー(例えば分析物)のパネルの有無および/または1つのバイオマーカー(例えば分析物)もしくはバイオマーカー(例えば分析物)のパネルと関連するパラメータ(例えば濃度、量、レベルまたは活性)を評価または検出する工程を伴う。場合により、本方法は、1つまたは複数のパラメータ、例えば毒性(例えば神経毒性)を発現するリスクと関連するもの、または特定の奏効、例えばOR、CR、ORR、CRi、PR、nPR、SDもしくはPD、および/または持続的奏効、例えば最初の奏効後に3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月もしくはそれ以上にわたって持続的である奏効と関連するものを、閾値レベルなどの特定参照値と比較する工程を含むことができる。いくつかの態様において、本方法は、バイオマーカーの有無の評価および/またはバイオマーカーとそのバイオマーカーの参照値もしくは閾値レベルとの比較に基づいて、対象を細胞療法による処置のために選択する工程も伴う。
【0078】
いくつかの態様において、評価されるパラメータは、患者および/または疾患もしくは病態の属性、因子、特徴、および/またはバイオマーカーの発現であるか、それらを含む。いくつかの態様において、パラメータは、患者の状態および/または患者の疾患もしくは病態を示す1つまたは複数の因子であるか、またはそれらの因子を含む。いくつかの態様において、パラメータは腫瘍負荷量を示す。いくつかの態様において、パラメータは特定の器官または組織における腫瘍負荷量、例えばリンパ節腫瘍負荷量または血液腫瘍負荷量を示す。いくつかの態様において、パラメータは、患者および/または疾患もしくは病態の属性、因子、特徴であるか、それらを含む。いくつかの態様において、パラメータは、腫瘍負荷量に関係するパラメータ、例えば腫瘍負荷量の測定値である。
【0079】
いくつかの局面では、特定のアウトカムおよび/または毒性を解析、相関および/または検出する目的で、バイオマーカー(例えば分析物)の有無を検出するために、例えばバイオマーカーのパラメータ(例えば濃度、量、レベルまたは活性)を検出もしくは測定し、および/またはバイオマーカーの存在を評価するために、生物学的試料、例えば対象からの血液試料または組織試料を得ることができる。いくつかの態様では、バイオマーカーと関連する特定の生理学的または生物学的パラメータ、例えばバイオマーカーの発現ならびに/または臨床および検査パラメータを、細胞療法の投与前または投与後の対象からの生物学的試料、例えば血液から、評価することができる。いくつかの態様において、バイオマーカーもしくは分析物の発現ならびに/または臨床および検査パラメータは、細胞療法の投与前(処置前)の対象からの生物学的試料、例えば血液から評価することができる。いくつかの態様において、バイオマーカーもしくは分析物の発現ならびに/または臨床および検査パラメータは、細胞療法の投与後(処置後)の対象からの生物学的試料、例えば血液から評価することができる。いくつかの態様において、バイオマーカー(例えば分析物)ならびに/または臨床および検査パラメータの濃度、量、レベルまたは活性は、細胞療法の投与前または投与後の1つまたは複数の時点で、評価することができる。いくつかの態様において、バイオマーカー(例えば分析物)ならびに/または臨床および検査パラメータの、指定された期間中のピーク濃度、量、レベルまたは活性も、決定することができる。
【0080】
いくつかの態様において、バイオマーカーまたは分析物は、細胞を含む生物学的試料によって発現される、またはそのような生物学的試料中に発現される、客観的に測定可能な特徴または分子であって、生物学的プロセス、治療アウトカム、細胞表現型または疾患状態などの特定の状態または現象を示すことができるか、またはそれら特定の状態もしくは現象と関連づけることができるものである。いくつかの局面では、バイオマーカーもしくは分析物またはバイオマーカーもしくは分析物と関連するパラメータを、測定または検出することができる。例えば、バイオマーカーまたは分析物の発現の有無を検出することができる。いくつかの局面において、パラメータ、例えばバイオマーカーまたは分析物の濃度、量、レベルまたは活性を、測定または検出することができる。いくつかの態様において、バイオマーカーの有無、発現、濃度、量、レベルおよび/または活性は、特定の状態、例えば対象の特定の治療アウトカムまたは状態と関連し、相関し、それらを示しおよび/または予測することができる。いくつかの局面において、バイオマーカーまたは分析物、例えば本明細書に記載するいずれかの有無、発現、濃度、量、レベルおよび/または活性は、特定のアウトカムまたは状態、例えば奏効アウトカムまたは毒性アウトカムを含む特定の治療アウトカムの見込みを評価するために使用することができる。いくつかの態様において、例示的なバイオマーカーとしては、サイトカイン、細胞表面分子、ケモカイン、受容体、可溶性受容体、可溶性血清タンパク質および/または分解産物が挙げられる。いくつかの態様において、バイオマーカーまたは分析物には、患者および/または疾患もしくは病態の特定の属性、因子、特徴、または患者および/もしくは患者の疾患もしくは病態の状態を示す因子(疾患負荷量を含む)、および/または臨床もしくは検査パラメータを含めることもできる。いくつかの局面において、バイオマーカーはサイトカインである。いくつかの局面において、バイオマーカーはケモカインである。いくつかの局面において、バイオマーカーは増殖因子である。いくつかの局面において、バイオマーカーは受容体である。いくつかの局面において、バイオマーカーは可溶性受容体である。
【0081】
いくつかの態様において、バイオマーカーは、単独で、または他のバイオマーカーと組み合わせて、例えばバイオマーカーのパネルにおいて、使用することができる。いくつかの態様において、特定バイオマーカーの発現は、特定のアウトカムまたは毒性、例えば神経毒性の発現と相関しうる。いくつかの態様において、特定バイオマーカーの発現は、特定のアウトカムまたは奏効、例えば客観的奏効(OR)、完全奏効(CR)、骨髄回復が不完全なCR(CRi)、結節性部分寛解(nPR)または部分奏効(PR)と相関しうる。
【0082】
いくつかの態様において、本方法は、1つまたは複数のバイオマーカーの有無、例えば1つまたは複数のバイオマーカーと関連するパラメータ(例えば濃度、量、レベルまたは活性)を検出する工程を含み、それら1つまたは複数のバイオマーカーは、インターロイキン16(IL-16)、腫瘍壊死因子(TNF)、血管内皮増殖因子C(VEGFC)または血管内皮増殖因子受容体1(VEGFR1)から選択される。
【0083】
いくつかの態様において、パラメータならびに/または1つもしくは複数のバイオマーカー(例えば分析物)の有無および/もしくはパラメータは、生物学的試料から評価される。いくつかの局面において、生物学的試料は体液または組織である。いくつかのそのような態様において、生物学的試料、例えば体液は、全血、血清もしくは血漿であるか、または全血、血清もしくは血漿を含有する。
【0084】
いくつかの態様において、パラメータならびに/または1つもしくは複数のバイオマーカー(例えば分析物)の有無および/もしくはパラメータは、細胞療法の投与前(例えば注入前)に評価され、例えば操作された細胞の投与を開始する2日前まで、7日前まで、14日前まで、21日前まで、28日前まで、35日前まで、または40日前までに得られる。いくつかの態様において、生物学的試料は、細胞療法の投与前(例えば注入前)に対象から得られ、例えば操作された細胞の投与を開始する2日前まで、7日前まで、14日前まで、21日前まで、28日前まで、35日前まで、または40日前までに得られる。
【0085】
いくつかの態様において、生物学的試料は血液、血清または血漿試料である。いくつかの態様において、生物学的試料は血液試料である。いくつかの態様において、生物学的試料はアフェレーシス試料または白血球アフェレーシス試料である。いくつかの態様では、細胞療法の投与後に、パラメータならびに/または1つもしくは複数のバイオマーカー(例えば分析物)の有無および/もしくはパラメータが評価され、生物学的試料が得られる。いくつかの態様において、診断目的で、対象を同定するために、ならびに/または処置アウトカムおよび/もしくは毒性を評価するために、細胞療法の投与前または細胞療法の投与後に、試薬類を使用することができる。
【0086】
いくつかの態様では、遺伝子操作された細胞の投与の開始後、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日もしくは15日以内、または約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日もしくは15日以内の時点で、パラメータならびに/または1つもしくは複数のバイオマーカー(例えば分析物)の有無および/もしくはパラメータが評価され、および/または試料が対象から得られる。任意のそのような態様の一部では、遺伝子操作された細胞の投与の開始後、それぞれ両端の値を含む1~15日、1~12日、1~8日、1~5日、1~3日もしくは1~2日または約1~15日、1~12日、1~8日、1~5日、1~3日もしくは1~2日の時点で、パラメータならびに/または1つもしくは複数のバイオマーカー(例えば分析物)の有無および/もしくはパラメータが評価され、および/または試料が対象から得られる。
【0087】
いくつかの態様において、1つまたは複数のバイオマーカーの値を測定する工程は、インビトロアッセイを実施する工程を含む。いくつかの局面において、インビトロアッセイは、イムノアッセイ、アプタマーベースのアッセイ、組織学的もしくは細胞学的アッセイ、またはmRNA発現レベルアッセイである。いくつかの態様において、1つまたは複数のバイオマーカーの値は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、イムノブロッティング、免疫沈降、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫染色、フローサイトメトリーアッセイ、表面プラズモン共鳴(SPR)、ケミルミネセンスアッセイ、ラテラルフローイムノアッセイ、阻害アッセイまたはアビディティアッセイによって測定される。場合により、1つまたは複数のバイオマーカーのうちの少なくとも1つの値は、少なくとも1つのバイオマーカーに特異的に結合する結合試薬を使って決定される。いくつかの局面において、結合試薬は抗体もしくはその抗原結合性フラグメント、アプタマーまたは核酸プローブである。
【0088】
いくつかの態様において、1つまたは複数のバイオマーカー(例えば分析物)の値を測定する工程は、分析物を直接的または間接的に検出する能力を有する試薬を生物学的試料と接触させ、生物学的試料中の分析物の有無、レベル、量または濃度を決定する工程を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数のバイオマーカー(例えば分析物)は、インターロイキン-16(IL-16)、腫瘍壊死因子(TNF)、血管内皮増殖因子C(VEGFC)または血管内皮増殖因子受容体1(VEGFR1)である。いくつかの態様において、1つまたは複数のバイオマーカー(例えば分析物)はTNFであるか、またはTNFを含む。いくつかの態様において、1つまたは複数のバイオマーカー(例えば分析物)はIL-16であるか、またはIL-16を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数のバイオマーカー(例えば分析物)はVEGFCであるか、またはVEGFCを含む。いくつかの態様において、1つまたは複数のバイオマーカー(例えば分析物)はVEGFR1であるか、またはVEGFR1を含む。
【0089】
いくつかの態様において、パラメータ、例えばバイオマーカーおよび/または分析物は、そのパラメータを検出する能力を有するかまたはそのパラメータに特異的である1つまたは複数の試薬を使って検出される。
【0090】
いくつかの態様において、1つまたは複数のパラメータの値、例えばバイオマーカーの値を測定する工程は、分析物を直接的または間接的に検出する能力を有する試薬を生物学的試料と接触させ、生物学的試料中の分析物の有無、レベル、量または濃度を決定する工程を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数のパラメータ、例えばバイオマーカーは、IL-16、TNF、VEGFCまたはVEGFR1のうちの1つまたは複数であるか、またはIL-16、TNF、VEGFCもしくはVEGFR1のうちの1つもしくは複数を含む。いくつかの局面において、試薬は、バイオマーカーに特異的に結合する結合分子である。例えばいくつかの態様において、試薬は抗体またはその抗原結合性フラグメントである。いくつかの態様において、試薬は、バイオマーカーの基質もしくは結合パートナーであるか、またはバイオマーカーの基質もしくは結合パートナーを含む。
【0091】
いくつかの態様において、パラメータおよび/またはバイオマーカーは、イムノアッセイを使って評価される。患者の属性、因子および/またはバイオマーカーを検出するために、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、表面プラズモン共鳴(SPR)、ウェスタンブロット、ラテラルフローアッセイ、免疫組織化学、タンパク質アレイまたはイムノPCR(iPCR)を使用することができる。いくつかの態様において、ELISAはサンドイッチELISAである。いくつかの態様において、ELISAはビーズベースのELISAである。いくつかの態様において、製造物品を使用する工程は、腫瘍負荷量を示す患者の属性、因子および/またはバイオマーカーを検出する工程を含む。場合により、患者の属性、因子および/またはバイオマーカーをアッセイまたは評価する工程は、フローサイトメトリーを使用する工程である。場合により、試薬は、患者の属性、因子および/またはバイオマーカーに結合する可溶性タンパク質である。いくつかの局面において、パラメータおよび/または1つもしくは複数のバイオマーカーを評価するためのアッセイはイムノアッセイである。いくつかの局面において、パラメータおよび/または1つもしくは複数のバイオマーカーを評価するためのアッセイは、例えば複数種の、例えば2種以上の、バイオマーカーまたは分析物のレベル、濃度または量などといったパラメータを決定するための、マルチプレックスイムノアッセイである。
【0092】
いくつかの態様において、本方法は、試料中の分析物のレベル、量または濃度を閾値レベルと個別に比較し、それによって細胞療法の投与後に毒性を発現するリスクを決定するか、またはそれによって対象が細胞療法に対する奏効を達成する見込みを決定する工程を伴う。いくつかの局面において、例示的な閾値レベルは、対象の群であって、その群の対象のそれぞれが特定アウトカム、例えば奏効を呈することまたは奏効を呈さないことのいずれかを含む特定治療アウトカム、または毒性を発現することまたは毒性を発現しないことのいずれかを呈することになった群から、細胞療法を受ける前に得られた生物学的試料中のバイオマーカー(例えば分析物)のレベル、量または濃度の平均値または中央値、および平均値または中央値のある範囲内または標準偏差内の値に基づいて、決定することができる。いくつかの態様において、閾値を決定する工程の特定局面には、下記セクションI.A.1およびセクションI.A.2に記載するものが含まれる。
【0093】
A. 毒性アウトカムと関連する例示的なバイオマーカー、分析物またはパラメータ
いくつかの態様において、分析物またはバイオマーカーは、細胞療法、例えば遺伝子操作された細胞を含有する組成物による細胞療法が投与された対象における特定のアウトカム、例えば毒性の発現と関連し、相関し、それを示しおよび/または予測する。いくつかの態様において、細胞療法の投与前に対象から得られた生物学的試料中の1つまたは複数のバイオマーカー、例えば分析物の存在、発現、レベル、量または濃度は、特定のアウトカム、例えば毒性の発現、例えば本明細書の例えばセクションII.Dに記載する任意の毒性アウトカムと関連し、相関し、それを示しおよび/または予測することができる。いくつかの態様において、特定バイオマーカーの存在、発現、レベル、量または濃度は、特定のアウトカムまたは毒性、例えばNTの発現と相関しうる。いくつかの態様において、毒性は、細胞療法と潜在的に関連する毒性、例えば本明細書の例えばセクションII.Dに記載する任意の毒性である。いくつかの態様において、毒性は、神経毒性(neurotoxicity:NT;場合により、神経学的事象(neurological event)、神経事象(neurologic event)またはNEともいう)である。いくつかの態様において、毒性は、任意のグレードの神経毒性、例えばグレード1以上の神経毒性(NT)である。いくつかの態様において、毒性は重度のNTである。いくつかの態様において、毒性はグレード2以上のNTである。いくつかの態様において、毒性はグレード3以上のNTである。いくつかの態様において、毒性はグレード4またはグレード5のNTである。
【0094】
いくつかの態様において、パラメータは、腫瘍負荷量に関係するパラメータ、例えばリンパ節腫瘍負荷量または血液腫瘍負荷量などの腫瘍負荷量の測定値である。いくつかの態様において、パラメータは、腫瘍負荷量に関係するパラメータ、例えば血液腫瘍負荷量とリンパ節腫瘍負荷量など、2つの腫瘍負荷量測定値の比である。いくつかの態様において、バイオマーカー(例えば分析物)(そのパラメータを含む)には、IL-16およびTNFが含まれる。
【0095】
いくつかの態様において、本方法は、細胞療法を投与した後の毒性の発現のリスクを評価する工程を伴う。いくつかの態様において、本方法は、生物学的試料中の1つまたは複数のバイオマーカー、例えば分析物のレベル、量または濃度を評価する工程であって、生物学的試料が、細胞療法による処置の候補である対象からの試料であり、細胞療法が、任意で、組換え受容体(例えばCAR)を発現する遺伝子操作された細胞の前記用量または組成物を含み、生物学的試料が、細胞療法の投与前に対象から得られ、および/または該生物学的試料が組換え受容体および/または該操作された細胞を含まない工程を伴う。いくつかの局面において、本方法は、試料中の分析物のレベル、量または濃度を閾値レベルと個別に比較し、それによって細胞療法の投与後に毒性を発現するリスクを決定する工程を伴う。いくつかの局面において、前記比較は、細胞療法を投与した後の対象の奏効の見込みまたは毒性発現のリスクを決定するために使用することができる。
【0096】
いくつかの態様において、本方法は、細胞療法を投与した後の対象の奏効の見込みまたは毒性発現のリスクを評価する工程を伴う。いくつかの態様において、本方法は、生物学的試料中の1つまたは複数のバイオマーカー、例えば分析物のレベル、量または濃度を評価する工程であって、生物学的試料が、細胞療法(任意で、組換え受容体(例えばCAR)を発現する遺伝子操作された細胞の前記用量または組成物を含むもの)を受けた対象からの、例えば早い時点での、例えばピークCAR+T細胞拡大増殖前の、および/または細胞療法の投与開始後、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2もしくは1日以内、または約15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2もしくは1日以内、または前記のいずれかによって規定される範囲内の、生物学的試料である工程を伴う。いくつかの局面において、本方法は、試料中の分析物のレベル、量または濃度を閾値レベルと個別に比較し、それによって細胞療法の投与後に毒性を発現するリスクを決定する工程を伴う。いくつかの局面において、前記比較は、細胞療法を投与した後の対象の奏効の見込みまたは毒性発現のリスクを決定するために使用することができる。いくつかの態様において、本方法は、バイオマーカーの有無の評価および/またはバイオマーカーとそのバイオマーカーの参照値もしくは閾値レベルとの比較に基づいて、対象を、細胞療法による処置、例えば本明細書に記載するような特定用量の細胞療法の投与を含む、特定用量の細胞療法による処置のために選択する工程も伴う。いくつかの態様において、本方法は、バイオマーカーの有無の評価および/またはバイオマーカーとそのバイオマーカーの参照値もしくは閾値レベルとの比較に基づいて、対象を、追加作用物質による処置、例えば毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置のために選択する工程も伴う。
【0097】
いくつかの態様において、本方法は、試料中の分析物のレベル、量または濃度を閾値レベルと個別に比較し、それによって細胞療法の投与後に毒性を発現するリスクを決定する工程を含む。いくつかの態様において、本方法は、試料中の分析物のレベル、量または濃度を閾値レベルと個別に比較することによって、細胞療法の投与後に毒性を発現するリスクを有する対象を同定する工程を含む。いくつかの態様において、本方法は、評価の結果に従ってまたはそれに基づいて、細胞療法、および任意で、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置を、対象に投与する工程も含む。いくつかの態様において、本方法は、対象に細胞療法が投与され、対象が毒性を発現するリスクを有すると同定されるのであれば、対象を毒性の症状についてモニタリングする工程も伴う。
【0098】
任意の態様の一部において、閾値レベルは、細胞療法を受ける前に対象の群から得られた生物学的試料から評価されたパラメータの中央値もしくは平均値、または前記生物学的試料中の中央もしくは平均のレベル、量もしくは濃度の、またはその前後の、またはそれを上回って、25%以内、20%以内、15%以内、10%以内または5%以内であり、および/または1標準偏差以内であり、該群の対象のそれぞれは、CLLまたはSLLを処置するためのCARを発現する操作された細胞のある用量の投与後にどのグレードの神経毒性も呈さなかった。任意の態様の一部において、閾値レベルは、細胞療法を受ける前に対象の群から得られた生物学的試料から評価されたパラメータの中央値もしくは平均値、または前記生物学的試料中の中央もしくは平均のレベル、量もしくは濃度よりも、1.25倍以上高いか、1.3倍以上高いか、1.4倍以上高いか、または1.5倍以上高く、該群の対象のそれぞれは、CLLまたはSLLを処置するためのCARを発現する操作された細胞のある用量の投与後にどのグレードの神経毒性も呈さなかった。任意の態様の一部において、閾値レベルは、細胞療法による処置の候補ではない正常または健常対象の群から得られた生物学的試料中のレベル、量または濃度から評価されるパラメータよりも、1.25倍以上高いか、1.3倍以上高いか、1.4倍以上高いか、または1.5倍以上高い。
【0099】
いくつかの態様において、閾値を上回るパラメータまたはマーカーの測定値は、およそ2、3、4、5、6、7、8、9、10倍またはそれ以上増加した、NTを発現するリスクと関連する。いくつかの態様において、閾値未満のパラメータまたはマーカーの測定値は、およそ2、3、4、5、6、7、8、9、10分の1またはそれ未満に減少した、NTを発現するリスクと関連する。
【0100】
いくつかの局面において、本方法は、提供される態様に従って決定される、例えばパラメータもしくはバイオマーカーの評価、および/またはパラメータもしくはバイオマーカーの、その特定パラメータもしくはバイオマーカーの参照値もしくは閾値レベルとの比較などによって決定される、毒性のリスクに基づいて、対象を、考えうる毒性の症状についてさらにモニタリングする工程も伴う。
【0101】
いくつかの態様において、試料中のバイオマーカー(例えば分析物)のレベル、量または濃度が、その分析物の閾値レベル以上であるなら、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置が、対象に対する細胞療法の投与開始前に、投与開始の1、2、または3日以内に、投与開始と同時に、および/または投与開始後、最初の発熱時に、対象に投与される。毒性を発現するリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱するために、提供される方法に関連して使用するための例示的な作用物質または介入は、セクションIIIに記載する。
【0102】
場合により、試料中のバイオマーカーのレベル、量または濃度が閾値レベル以上であるなら、細胞療法は、低減された用量で、または細胞療法の投与後に毒性もしくは重度の毒性を発現するリスクと関連しないか、または対象の大多数において、および/もしくは対象が有するもしくは対象が有すると疑われる疾患もしくは病態を有する対象の大多数において、毒性もしくは重度の毒性を発現するリスクと関連しない用量で、対象に投与される。場合により、試料中のバイオマーカーのレベル、量または濃度が閾値レベル以上であるなら、細胞療法は、入院患者設定で、および/または1日もしくは複数日の入院を伴って、対象に投与されるが、任意で、細胞療法は、本来であれば、外来患者ベースで、または1日もしくは複数日の入院を伴うことなく、対象に投与される。
【0103】
いくつかの態様において、バイオマーカー(例えば分析物)のレベル、量または濃度がその分析物についての閾値レベル未満であるなら、細胞療法は対象に、任意で、低減されていない用量で、投与される。場合により、細胞療法は、任意で、外来患者ベースで、または1日もしくは複数日の入院を伴うことなく、投与される。いくつかの態様において、分析物のレベル、量または濃度が閾値レベル未満であるなら、細胞療法の投与は、細胞療法の投与前にもしくは細胞療法の投与と同時に、および/または発熱以外の毒性の徴候もしくは症状の発生前に、毒性の発現を処置し、防止し、遅延させまたは減弱することができる作用物質または処置を投与する工程を含まず;および/または細胞療法の投与は、外来患者設定で、および/または対象を一晩もしくは1日もしくは数日間連続して入院させることなく、投与されるか、投与することができ、および/または対象の1日または複数日の入院を伴わない。
【0104】
提供される方法のいくつかの局面において、対象は、バイオマーカー(例えば分析物)の、または複数のバイオマーカー(例えば複数の分析物)の各個別の、パラメータ(例えば濃度、量、レベルまたは活性)と、そのバイオマーカーまたは各バイオマーカーについての対応するパラメータの参照値、例えば閾値レベルとの比較によって、毒性(例えば神経毒性、例えば重度の神経毒性またはグレード3以上の神経毒性)を発現するリスクがあると決定される。いくつかの態様において、この比較は、対象に、毒性、例えば重度の神経毒性またはグレード3以上の神経毒性などといった神経毒性を発現するリスクがあるかないかを示し、および/または該毒性を発現するリスクの程度を示す。いくつかの態様において、参照値は、単独で、またはパネル中の1つもしくは複数のバイオマーカーとの組合せで、そのような毒性が発現するであろうという、または発現する可能性が高いという、良好な予測値(例えば確度、感度および/または特異度)が得られる閾値レベルまたはカットオフとなるものである。場合により、そのような参照値、例えば閾値レベルは、本方法を実施する前に、例えば細胞療法による処置を前もって受けて、バイオマーカーの、またはパネル中のバイオマーカーの各個別の、毒性アウトカムの存在(例えば重度の神経毒性またはグレード3以上の神経毒性などの神経毒性の存在)との相関について評価された複数の対象から、予め決定することができるか、予め決定されるか、または公知である。
【0105】
いくつかの態様において、対応するパラメータの参照値、例えば閾値レベルよりも高いまたは大きいバイオマーカー(例えばTNFまたはIL-16)のパラメータは(単独で、またはパネル中の他のバイオマーカーの評価と共に)毒性リスクの正の予測と関連する。いくつかの態様において、対応するパラメータの参照値、例えば閾値レベル以下であるバイオマーカーのパラメータは(単独で、またはパネル中の他のバイオマーカーの評価と共に)毒性リスクの負の予測と関連する。
【0106】
いくつかの態様において、閾値レベルは、そのバイオマーカーについて陽性である試料中のバイオマーカー(例えば分析物)のレベル、量、濃度または他の尺度に基づいて決定される。いくつかの局面において、閾値レベルは、対象の群であって、その群の対象のそれぞれが、同じ疾患または病態を処置するために組換え受容体発現治療細胞組成物を投与された後に、毒性、例えば重度の神経毒性またはグレード3以上の神経毒性などの神経毒性を発現することになった群から、組換え受容体発現治療細胞組成物が投与される前に得られた生物学的試料中の分析物またはパラメータの、平均レベル、量または濃度または尺度の25%以内、20%以内、15%以内、10%以内または5%以内であり、および/または平均のレベル、量または濃度または尺度の1標準偏差以内である。
【0107】
提供される方法のいずれかのいくつかの態様において、バイオマーカー(例えば分析物)は、重度の神経毒性、例えば重度の神経毒性またはグレード3以上の神経毒性を発現するリスクと相関し、および/またはそのリスクを予測する。いくつかの態様において、閾値レベルは、対象の群であって、その群の対象のそれぞれが、同じ疾患または病態を処置するために組換え受容体発現治療細胞組成物を投与された後に、重度の神経毒性またはグレード3以上の神経毒性を発現することになった群から、組換え受容体発現治療細胞組成物が投与される前に得られた生物学的試料中の分析物またはパラメータの、平均レベル、量または濃度または尺度の25%以内、20%以内、15%以内、10%以内または5%以内であり、および/または平均のレベル、量または濃度または尺度の1標準偏差以内である。
【0108】
いくつかの態様において、腫瘍体積測定値などのパラメータは、細胞療法の奏効および/または神経毒性(NT)などの毒性を発現するリスクと関連する。
【0109】
本明細書では、以下の工程を伴う、処置の方法が提供される:
(1)対象が、閾値レベル以上のリンパ節腫瘍負荷量ならびに/またはTNFおよび/もしくはIL-16のレベル、量もしくは濃度を有するのであるなら;ならびに/または血液腫瘍負荷量および/もしくはリンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比が閾値レベル未満であるなら、対象は、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクがあると同定され、本方法は、(i)低減された用量で細胞療法を対象に投与する工程;(ii)毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置を対象にさらに投与する工程を含み;および/または(iii)対象に対する細胞療法の投与は、入院患者設定でおよび/または1日もしくは複数日の入院を伴って、実行されるかまたは実行されるように指定され;または(2)対象が閾値レベル未満のリンパ節腫瘍負荷量ならびに/またはTNFおよび/もしくはIL-16のレベル、量または濃度を有するのであるなら;ならびに/または血液腫瘍負荷量および/もしくはリンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比が閾値レベル以上であるなら、対象は細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクはないと同定され、本方法は、
(i)任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈する時または呈した後、対象が毒性の徴候もしくは症状を呈さない限りまたは呈するまで、対象には、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質および他の処置を投与しない工程を含み、および/あるいは
(ii)任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、細胞療法の投与および任意の経過観察が実行され;ここで、パラメータは、細胞療法による処置の候補であるCLLまたはSLLを有する対象から評価され、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、該パラメータは該細胞療法を投与する前の対象から評価され、および/または対象はCARを発現するT細胞を含まない。
【0110】
1. 疾患負荷量
いくつかの態様において、パラメータまたは因子は、腫瘍負荷量などの疾患負荷量を示すパラメータである。いくつかの局面において、腫瘍負荷量を示すパラメータは、腫瘍の体積尺度である。いくつかの局面において、腫瘍負荷量を示すパラメータは血中の腫瘍負荷量である。いくつかの態様において、例示的なパラメータとして、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比が挙げられる。
【0111】
いくつかの態様において、体積尺度は、腫瘍サイズ、腫瘍径、腫瘍体積、腫瘍質量、腫瘍の量もしくは嵩、腫瘍関連浮腫、腫瘍関連壊死、および/または転移の数もしくは程度などといった、病変の尺度である。いくつかの態様において、この尺度は二次元尺度である。例えば、いくつかの態様において、病変の面積は、測定可能なすべての腫瘍の最大径と最大直交径の積として算出される。場合により、この尺度は一次元尺度である。場合により、測定可能な病原のサイズは最大径として評価される。いくつかの態様では、二方向積和(SPD)、最大腫瘍径(longest tumor diameter:LD)、最大腫瘍径和(sum of longest tumor diameters:SLD)、壊死、腫瘍体積、壊死体積、壊死-腫瘍比(necrosis-tumor ratio:NTR)、腫瘍周辺浮腫(peritumoral edema:PTE)および浮腫-腫瘍比(edema-tumor ratio:ETR)が測定される。いくつかの局面において、リンパ節腫瘍負荷量などの腫瘍負荷量を示すパラメータは、二方向積和(SPD)(最大腫瘍全径(longest overall tumor diameter)および最大全径に直交する最大径として決定される)である。
【0112】
いくつかの態様において、腫瘍負荷量を示す因子は、血中の腫瘍負荷量、例えば血液単位体積あたりのリンパ球数、例えば血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数である。
【0113】
腫瘍負荷量を測定し評価するための例示的方法としては、例えばCarceller et al.,Pediatr Blood Cancer.(2016)63(8):1400-1406およびEisenhauer et al.,Eur J Cancer.(2009)45(2):228-247に記載されているものが挙げられる。いくつかの態様において、パラメータは、測定可能なすべての腫瘍の最大直交径の積の和を決定することによって測定される二方向積和(SPD)である。CLLまたはSLLの場合は、リンパ節についてそのようなパラメータを測定することができる。いくつかの局面において、腫瘍または病変は、最大径(longest diameter:LD)により一次元で、および/または測定可能なすべての病変の最大腫瘍径の和(sum of longest tumor diameters:SLD)を決定することによって、測定される。CLLまたはSLLの場合は、リンパ節についてそのようなパラメータを測定することができる。いくつかの態様において、腫瘍負荷量を示すパラメータは、壊死体積および/または壊死-腫瘍比(NTR)などの腫瘍壊死の体積定量である。Monsky et al.,Anticancer Res.(2012)32(11):4951-4961を参照されたい。いくつかの局面において、腫瘍負荷量を示すパラメータは、腫瘍周辺浮腫(PTE)および/または浮腫-腫瘍比(ETR)などの腫瘍関連浮腫の体積定量である。いくつかの態様において、測定工程は、対象のコンピュータ断層撮影法(CT)、陽電子放射断層撮影法(PET)および/または磁気共鳴イメージング(MRI)などといったイメージング技法を使って実施することができる。
【0114】
いくつかの態様において、腫瘍負荷量を示すパラメータは、対象における病態または疾患を確認しおよび/または同定するためのルーチン評価または採血などのスクリーニングセッションで決定される。いくつかの態様において、腫瘍負荷量を示すパラメータは、対象に対するリンパ球枯渇療法の投与前に決定される。いくつかの態様において、パラメータは、対象にリンパ球枯渇療法を投与する前の対象から評価される。
【0115】
CLLまたはSLLの場合、腫瘍細胞は、血液、骨髄、リンパ節または脾臓など、宿主のさまざまな器官または区画に存在することができる。腫瘍細胞が存在する器官または区画は腫瘍細胞の生存および増殖に影響を及ぼすことができ、血液は腫瘍細胞にとっては支持能力の最も低い微小環境である。場合により、CLL腫瘍細胞またはSLL腫瘍細胞は、微小環境中で飢餓状態になると死に始めることもある。リンパ節などの二次リンパ器官内では、腫瘍細胞とT細胞の間の相互作用が、CLL腫瘍細胞またはSLL腫瘍細胞の成長を支持することができ、B細胞の活性化は、二次リンパ器官においてCLL腫瘍細胞またはSLL腫瘍細胞を保つのに重要である。いくつかの局面において、CLLおよびSLLの場合は特に、リンパ節中の腫瘍負荷量は異なる尺度であることができ、血液中の腫瘍負荷量とは必ずしも相関しない。
【0116】
いくつかの態様において、評価する工程は、(a)リンパ節腫瘍負荷量がリンパ節腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり;(b)血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり;および/または(c)リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベル未満であるなら、対象を、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクがあると同定し、または(2)(a)リンパ節腫瘍負荷量が腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり;(b)血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり;および/または(c)リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベルを上回るのであれば、対象を、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクはないと同定する工程を含む。したがって、いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比が閾値レベルを上回るのであれば、対象は、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクはないと同定される。逆に、いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比が閾値レベル未満であるなら、対象は細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクがあると同定される。
【0117】
本明細書では、以下の工程を伴う、細胞療法の投与後に毒性を発現するリスクを決定する方法も提供される:
細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象において、リンパ節腫瘍負荷量、血液腫瘍負荷量、およびリンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比の中から選択される1つまたは複数の疾患負荷量パラメータを評価する工程であって、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、該パラメータは該細胞療法を投与する前の対象から評価される、工程;ならびに、
前記1つまたは複数のパラメータの値を、各パラメータについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、(1)(a)リンパ節腫瘍負荷量がリンパ節腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり、(b)血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり、および/または(c)リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベル未満であるなら、対象を、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクがあると同定し、または(2)(a)リンパ節腫瘍負荷量が腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり、(b)血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり、および/または(c)リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベルを上回るのであれば、対象を、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクはないと同定する、工程。
【0118】
提供される態様のいずれかの一部において、神経毒性を発現するリスクがあると対象が同定された場合、本方法は、(i)対象に細胞療法を、任意で低減された用量で、投与する工程であって、任意で、ここで、(a)本方法は、神経毒性の発現もしくは神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しもしくは減弱することができる作用物質もしくは他の処置を対象に投与する工程をさらに含み、および/または(b)対象に対する細胞療法の投与は、入院患者設定でおよび/または1日もしくは複数日の入院を伴って、実行されるかまたは実行されるように指定される、工程;あるいは(ii)CLLまたはSLLを処置するための細胞療法以外の代替処置を対象に投与する工程を、さらに含む。
【0119】
提供される態様のいずれかの一部において、神経毒性を発現するリスクはないと対象が同定された場合、本方法は、(i)細胞療法を対象に投与する工程をさらに含み、任意で、ここで、
(a)任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈する時または呈した後、対象が毒性の徴候もしくは症状を呈さない限りまたは呈するまで、対象には、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質および他の処置を投与せず;ならびに/あるいは
(b)任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、細胞療法の投与および任意の経過観察が実行される。
【0120】
本明細書では、以下の工程を含む、細胞療法による処置のために対象を選択する方法も提供される:
細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象において、リンパ節腫瘍負荷量、血液腫瘍負荷量、およびリンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比の中から選択される1つまたは複数の疾患負荷量パラメータを評価する工程であって、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、該パラメータは該細胞療法を投与する前の対象から評価される、工程;ならびに、
前記1つまたは複数のパラメータの値を、各パラメータについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、
(1)(a)リンパ節腫瘍負荷量がリンパ節腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり、(b)血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり、および/または(c)リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベル未満であるなら、対象を、
(i)低減された用量での細胞療法の投与;
(ii)神経毒性の発現または神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置の投与;
(iii)入院患者設定でおよび/または1日もしくは複数日の入院を伴って、実行されるかまたは実行されるように指定される細胞療法の投与;および/または
(iv)CLLもしくはSLLを処置するための細胞療法以外の代替処置の投与
のために選択し;または
(2)(a)リンパ節腫瘍負荷量が腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり、(b)血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり、および/または(c)リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベルを上回るのであれば、対象を、
(i)細胞療法の投与のために選択し、任意で、ここで、
(a)任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈する時または呈した後、対象が毒性の徴候もしくは症状を呈さない限りまたは呈するまで、対象には、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質および他の処置を投与せず;ならびに/あるいは
(b)任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、細胞療法の投与および任意の経過観察が実行される、
工程。
【0121】
提供される態様のいずれかの一部において、本方法は、細胞療法、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置、および/または代替処置を、対象に投与する工程も含む。
【0122】
いくつかの態様において、例示的なパラメータとして血液腫瘍負荷量が挙げられる。いくつかの態様において、評価する工程は、対象の血液中のリンパ球濃度を決定する工程を含む。いくつかの態様において、濃度は血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数である。いくつかの態様において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは、両端の値を含む、800または約800リンパ球/μL~3000または約3000リンパ球/μLの値である。いくつかの態様において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは、800リンパ球/μL、900リンパ球/μL、1000リンパ球/μL、1250リンパ球/μL、1500リンパ球/μL、1750リンパ球/μL、2000リンパ球/μL、2250リンパ球/μL、2500リンパ球/μL、2750リンパ球/μLもしくは3000リンパ球/μL、または約800リンパ球/μL、900リンパ球/μL、1000リンパ球/μL、1250リンパ球/μL、1500リンパ球/μL、1750リンパ球/μL、2000リンパ球/μL、2250リンパ球/μL、2500リンパ球/μL、2750リンパ球/μLもしくは3000リンパ球/μLの値、または前記のいずれかの間の値である。いくつかの態様において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは、1250または約1250リンパ球/μL~1750または約1750リンパ球/μLの値である。いくつかの態様において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは800または約800リンパ球/μLの値である。いくつかの態様において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは900リンパ球/μLの値である。いくつかの態様において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは1000または約1000リンパ球/μLの値である。いくつかの態様において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは1250または約1250リンパ球/μLの値である。いくつかの態様において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは1500または約1500リンパ球/μLの値である。いくつかの態様において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは1750または約1750リンパ球/μLの値である。いくつかの態様において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは2000または約2000リンパ球/μLの値である。いくつかの態様において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは2250または約2250リンパ球/μLの値である。いくつかの態様において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは2500または約2500リンパ球/μLの値である。いくつかの態様において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは2750または約2750リンパ球/μLの値である。いくつかの態様において、血液腫瘍負荷量についての閾値レベルは3000または約3000リンパ球/μLの値である。
【0123】
いくつかの態様において、例示的なパラメータとしてリンパ節腫瘍負荷量が挙げられる。いくつかの態様において、リンパ節負荷量を評価する工程は、対象における最大リンパ節径を決定する工程を含む。いくつかの態様において、リンパ節負荷量を評価する工程は、最大リンパ節径をセンチメートル(cm)の単位で決定する工程を含む。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは、4または約4cm~7または約7cmの値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは、4cm、4.25cm、4.5cm、4.75cm、5cm、5.25cm、5.5cm、5.75cm、6cm、6.25cm、6.5cm、6.75cmもしくは7cm、または約4cm、4.25cm、4.5cm、4.75cm、5cm、5.25cm、5.5cm、5.75cm、6cm、6.25cm、6.5cm、6.75cmもしくは7cmの値、または前記のいずれの間の値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量についての閾値レベルは4.5または約4.5cm~5.5または約5.5cmの値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは4または約4cmの値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは4.25または約4.25cmの値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは4.5または約4.5cmの値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは4.75または約4.75cmの値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは5または約5cmの値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは5.25または約5.25cmの値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは5.5または約5.5cmの値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは5.75または約5.75cmの値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは6または約6cmの値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは6.25または約6.25cmの値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは6.5または約6.5cmの値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは6.75または約6.75cmの値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルは7または約7cmの値である。
【0124】
いくつかの態様において、例示的なパラメータとして、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比が挙げられる。いくつかの態様において、評価する工程は、センチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比を決定する工程を含む。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、300または約300から、1000または約1000の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950もしくは1000、または約300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950もしくは1000の値、または前記のいずれかの間の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、300または約300の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、350または約350の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、400または約400の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、450または約450の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、500または約500の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、550または約550の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、600または約600の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、650または約650の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、700または約700の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、750または約750の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、800または約800の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、850または約850の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、900または約900の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、950または約950の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、1000または約1000の値である。
【0125】
いくつかの態様において、例示的なパラメータとしてリンパ節腫瘍負荷量が挙げられる。いくつかの態様において、リンパ節負荷量を評価する工程は二方向積和(SPD)を決定する工程を含む。いくつかの態様において、SPDは、平方センチメートル(cm2)の単位で測定される。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、10または約10cm2~40または約40cm2の値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、10cm2、12.5cm2、15cm2、17.5cm2、20cm2、22.5cm2、25cm2、27.5cm2、30cm2、32.5cm2、35cm2、37.5cm2もしくは40cm2、または約10cm2、12.5cm2、15cm2、17.5cm2、20cm2、22.5cm2、25cm2、27.5cm2、30cm2、32.5cm2、35cm2、37.5cm2もしくは40cm2の値、または前記のいずれかの間の値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、10または約10cm2の値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、12.5または約12.5cm2の値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、15または約15cm2の値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、17.5または約17.5cm2の値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、20または約20cm2の値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、22.5または約22.5cm2の値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、25または約25cm2の値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、27.5または約27.5cm2の値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、30または約30cm2の値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、32.5または約32.5cm2の値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、35または約35cm2の値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、37.5または約37.5cm2の値である。いくつかの態様において、リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルは、40または約40cm2の値である。
【0126】
いくつかの態様において、例示的なパラメータとして、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比が挙げられる。いくつかの態様において、評価する工程は、平方センチメートル(cm2)の単位での二方向積和(SPD)に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比を決定する工程を含む。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、25または約25から、500または約500の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450もしくは500、または約25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450もしくは500の値、または前記のいずれかの間の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、25または約25の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、50または約50の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、75または約75の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、100または約100の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、150または約150の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、200または約200の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、250または約250の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、300または約300の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、350または約350の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、400または約400の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、450または約450の値である。いくつかの態様において、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルは、500または約500の値である。
【0127】
2. 血中分析物
いくつかの態様において、評価することができる1つまたは複数のバイオマーカーまたは分析物(そのパラメータを含む)には、インターロイキン-16(IL-16)または腫瘍壊死因子(TNF)が含まれる。いくつかの態様において、そのようなバイオマーカーのうちの1つまたは複数(例えば複数のバイオマーカー)の、例えば参照値または閾値レベルと比較して上昇または増加したレベルは、神経毒性の発現と関連しうる。いくつかの態様において、そのようなバイオマーカー(例えば分析物)のうちの1つまたは複数の、例えば参照値または閾値レベルと比較して上昇または増加したレベルは、神経毒性の発現と関連しうる。いくつかの態様において、神経毒性などの毒性を示すまたは神経毒性などの毒性と関連する例示的バイオマーカー、例えば血中分析物は、TNFおよびIL-16のうちの1つまたは複数である。
【0128】
いくつかの態様において、対象が毒性を発現するリスクを有すると同定された場合は、以下の工程のうちの1つまたは複数を実施することができる:(a)(1)毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置、および(2)細胞療法を、対象に投与する工程であって、作用物質の投与が、対象に対する細胞療法の投与の(i)開始前、(ii)開始から1日、2日、または3日以内、(iii)開始と同時、および/または(iv)開始後、最初の発熱時に、投与される工程;および/または(b)細胞療法を、低減された用量で、または細胞療法の投与後に毒性もしくは重度の毒性を発現するリスクと関連しないか、または対象の大多数において、および/もしくは対象が有するもしくは対象が有すると疑われる疾患もしくは病態を有する対象の大多数において、毒性もしくは重度の毒性を発現するリスクと関連しない用量で、対象に投与する工程;および/または(c)細胞療法を、入院患者設定でおよび/またはおよび/または1日もしくは複数日の入院を伴って、対象に投与する工程であって、任意で、細胞療法は、本来であれば、外来患者ベースで、または1日もしくは複数日の入院を伴うことなく、対象に投与される工程。
【0129】
いくつかの局面において、細胞療法の投与後に毒性を発現するリスクの評価に関して評価または分析することができる例示的な分析物またはバイオマーカーとしては、IL-16または腫瘍壊死因子(TNF)から選択される1つまたは複数の分析物が挙げられる。いくつかの態様において、前記分析物またはバイオマーカーのいずれかについて、分析物のうちの1つまたは複数のレベル、量または濃度が閾値レベルを上回るのであれば、対象は毒性を発現するリスクを有し、分析物のうちの1つまたは複数のレベル、量または濃度が閾値レベル未満であるなら、対象が毒性を発現するリスクは低い。いくつかの態様において、毒性は神経毒性である。いくつかの局面において、対象から細胞療法の投与前(処置前)に得られた生物学的試料中の、上昇したIL-16または腫瘍壊死因子(TNF)のレベルは、神経毒性を発現するリスクの増大と関連しうる。
【0130】
いくつかの態様において、閾値レベルは、対象の群であって、その群の対象のそれぞれが、同じ疾患または病態を処置するために組換え受容体発現治療細胞組成物を投与された後に、いかなる毒性も発現することにならなかった群から、細胞療法を受ける前に得られた生物学的試料中のIL-16またはTNFの中央または平均のレベル、量または濃度を上回って、25%以内、20%以内、15%以内、30%以内または5%以内であり、および/または1標準偏差以内である。
【0131】
いくつかの態様において、閾値レベルは、対象の群であって、その群の対象のそれぞれが、同じ疾患または病態を処置するために組換え受容体発現治療細胞組成物を投与された後に、毒性を発現することになった群から、細胞療法を受ける前に得られた生物学的試料中のIL-16またはTNFの中央または平均のレベル、量または濃度を下回って、25%以内、20%以内、15%以内、30%以内または5%以内であり、および/または1標準偏差以内である。
【0132】
本明細書では、以下の工程を伴う、細胞療法の投与後に毒性を発現するリスクを決定する方法も提供される:
生物学的試料を、腫瘍壊死因子(TNF)および/またはインターロイキン-16(IL-16)のレベル、量または濃度についてアッセイする工程であって、生物学的試料は、細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象に由来し、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、生物学的試料が、細胞療法を投与する前に、またはピークCAR+T細胞拡大増殖前におよび/もしくは細胞療法の投与開始後11日もしくは約11日以内に、対象から得られる、工程;ならびに
TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度を、それぞれについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、TNFについての閾値レベルは7もしくは約7pg/mL~25もしくは約25pg/mLの値であり、および/またはIL-16についての閾値レベルは400もしくは約400pg/mL~1000もしくは約1000pg/mLの値であり、(1)TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクがあると同定し、または(2)TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度がそれぞれの閾値レベル未満であるなら、対象を、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクはないと同定する、工程。
【0133】
本明細書では、以下の工程を伴う、細胞療法の投与後に毒性を発現するリスクを決定する方法も提供される:
生物学的試料を、腫瘍壊死因子(TNF)および/またはインターロイキン-16(IL-16)のレベル、量または濃度についてアッセイする工程であって、生物学的試料は、細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象に由来し、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、生物学的試料が、細胞療法を投与する前に、対象から得られる、工程;ならびに
TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度を、それぞれについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、TNFについての閾値レベルは7もしくは約7pg/mL~25もしくは約25pg/mLの値であり、および/またはIL-16についての閾値レベルは400もしくは約400pg/mL~1000もしくは約1000pg/mLの値であり、(1)TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクがあると同定し、または(2)TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度がそれぞれの閾値レベル未満であるなら、対象を、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクはないと同定する、工程。
【0134】
いくつかの態様において、神経毒性を発現するリスクがあると対象が同定された場合、本方法は、(i)対象に細胞療法を、任意で低減された用量で、投与する工程であって、任意で、ここで、(a)本方法は、神経毒性の発現もしくは神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しもしくは減弱することができる作用物質もしくは他の処置を対象に投与する工程をさらに含み、および/または(b)対象に対する細胞療法の投与は、入院患者設定でおよび/または1日もしくは複数日の入院を伴って、実行されるかまたは実行されるように指定される、工程;あるいは(ii)CLLまたはSLLを処置するための細胞療法以外の代替処置を対象に投与する工程を、さらに含む。
【0135】
いくつかの態様において、神経毒性を発現するリスクはないと対象が同定された場合、本方法は、(i)細胞療法を対象に投与する工程をさらに含み、任意で、ここで、
(a)任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈する時または呈した後、対象が毒性の徴候もしくは症状を呈さない限りまたは呈するまで、対象には、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質および他の処置を投与せず;ならびに/あるいは
(b)任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、細胞療法の投与および任意の経過観察が実行される。
【0136】
本明細書では、以下の工程を含む、細胞療法による処置のために対象を選択する方法も提供される:
生物学的試料を、腫瘍壊死因子(TNF)および/またはインターロイキン-16(IL-16)のレベル、量または濃度についてアッセイする工程であって、生物学的試料は、細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象に由来し、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、生物学的試料が、細胞療法を投与する前に、対象から得られる、工程;ならびに
TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度を、それぞれについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、TNFについての閾値レベルは7もしくは約7pg/mL~25もしくは約25pg/mLの値であり、および/またはIL-16についての閾値レベルは400もしくは約400pg/mL~1000もしくは約1000pg/mLの値であり、(1)TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、(i)低減された用量での細胞療法の投与;(ii)神経毒性の発現または神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置の投与;(iii)入院患者設定でおよび/または1日もしくは複数日の入院を伴って、実行されるかまたは実行されるように指定される細胞療法の投与;および/または(iv)CLLもしくはSLLを処置するための細胞療法以外の代替処置の投与のために選択し;または(2)TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度がそれぞれの閾値レベル未満であるなら、対象を、(i)細胞療法の投与のために選択し、任意で、ここで、
(a)任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈する時または呈した後、対象が毒性の徴候もしくは症状を呈さない限りまたは呈するまで、対象には、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質および他の処置を投与せず;ならびに/あるいは
(b)任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、細胞療法の投与および任意の経過観察が実行される、工程。
【0137】
いくつかの態様において、本方法は、細胞療法、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置、および/または代替処置を、対象に投与する工程も含む。
【0138】
本明細書では、以下の工程を伴う、細胞療法の投与後に毒性を発現するリスクを決定する方法も提供される:
CLLまたはSLLを処置するためのCARを発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含む細胞療法の投与を受けた対象からの生物学的試料を、TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度についてアッセイする工程であって、生物学的試料が、ピークCAR+T細胞拡大増殖前に、および/または細胞療法の投与開始後11日もしくは約11日以内に、対象から得られる、工程;ならびに
TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度を、それぞれについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、TNFについての閾値レベルは7もしくは約7pg/mL~25もしくは約25pg/mLの値であり、および/またはIL-16についての閾値レベルは400もしくは約400pg/mL~1000もしくは約1000pg/mLの値であり、(1)TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、神経毒性を発現するリスクがあると同定し;または(2)TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度がそれぞれの閾値レベル未満であるなら、対象を、神経毒性を発現するリスクはないと同定する、工程。
【0139】
いくつかの態様において、神経毒性を発現するリスクがあると対象が同定された場合、本方法は、神経毒性の発現または神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置を、任意でピークCAR+T細胞拡大増殖前におよび/または対象に対する細胞療法の投与から11日もしくは約11日以内に、対象に投与する工程をさらに含み;および/または経過観察が、入院患者設定で、および/または1日もしくは複数日の入院を伴って、実行される。
【0140】
いくつかの態様において、神経毒性を発現するリスクはないと対象が同定された場合、経過観察は、任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、実行される。
【0141】
本明細書では、以下の工程を含む、処置の方法も提供される:
神経毒性を発現するリスクがあると同定された対象に、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置を投与する工程であって、該対象はCLLまたはSLLを処置するための細胞療法の投与を前もって受けており、作用物質の投与時または作用物質を投与する直前において、ピークCAR+T細胞拡大増殖前におよび/または細胞療法の投与開始から11日もしくは約11日以内に対象から得られた生物学的試料中のTNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度がそれぞれについての閾値レベルを上回るのであれば、神経毒性を発現するリスクがあるとして、対象が選択または同定され、ここで、TNFについての閾値レベルは7もしくは約7pg/mL~25もしくは約25pg/mLの値であり、および/またはIL-16についての閾値レベルは400もしくは約400pg/mL~1000もしくは約1000pg/mLの値である、工程。
【0142】
本明細書では、以下の工程を含む、作用物質による処置のために対象を選択する方法も提供される:
CLLまたはSLLを処置するためのCD19に結合するCARを発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含む細胞療法の投与を受けた対象からの生物学的試料をTNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度についてアッセイする工程であって、生物学的試料が、ピークCAR+T細胞拡大増殖前におよび/または細胞療法の投与開始後11日もしくは約11日以内に、対象から得られる、工程;ならびに
TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度を、それぞれについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、TNFについての閾値レベルは7もしくは約7pg/mL~25もしくは約25pg/mLの値であり、および/またはIL-16についての閾値レベルは400もしくは約400pg/mL~1000もしくは約1000pg/mLの値であり、TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、神経毒性の発現または神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置の投与のために選択する、工程。
【0143】
いくつかの態様において、本方法は、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置を対象に投与する工程も含む。
【0144】
いくつかの態様において、作用物質または他の処置を投与する工程は、対象が持続的発熱または解熱剤による処置後も下がらないか下がっていない発熱もしくは解熱剤による処置後も1℃超は下がらない発熱を呈する時に実行される。
【0145】
いくつかの態様において、細胞療法を対象に投与する工程は外来患者ベースで実行された。また、TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度が閾値レベルを上回るのであれば、本方法は、患者を1日または複数日にわたって入院させる工程を含む。
【0146】
いくつかの態様において、生物学的試料は、細胞療法を投与する前に、対象から得られる。いくつかの態様において、生物学的試料は、対象にリンパ球枯渇療法を投与する前に、対象から得られる。いくつかの態様において、生物学的試料は、ピークCAR+T細胞拡大増殖前におよび/または細胞療法の投与開始後11日もしくは約11日以内に、対象から得られる。いくつかの態様において、生物学的試料は、ピークCAR+T細胞拡大増殖前におよび/または細胞療法の投与開始から11日もしくは約11日以内に、対象から得られる。
【0147】
いくつかの態様において、閾値レベルは、対象の群であって、その群の対象のそれぞれが、同じ疾患または病態を処置するために組換え受容体発現治療細胞組成物を投与された後に、いかなる毒性も発現することにならなかった群から、細胞療法を受ける前に得られた生物学的試料中のIL-16またはTNFの中央または平均のレベル、量または濃度を上回って、25%以内、20%以内、15%以内、32%以内または5%以内であり、および/または1標準偏差以内である。
【0148】
いくつかの態様において、閾値レベルは、対象の群であって、その群の対象のそれぞれが、同じ疾患または病態を処置するために組換え受容体発現治療細胞組成物を投与された後に、毒性を発現することになった群から、細胞療法を受ける前に得られた生物学的試料中のIL-16またはTNFの中央または平均のレベル、量または濃度を下回って、25%以内、20%以内、15%以内、32%以内または5%以内であり、および/または1標準偏差以内である。
【0149】
いくつかの態様において、TNFについての閾値レベルは、7もしくは約7pg/mL~25もしくは約25pg/mLの値である。いくつかの態様において、TNFについての閾値レベルは、7pg/mL、8pg/mL、9pg/mL、10pg/mL、15pg/mL、20pg/mLもしくは25pg/mL、または約7pg/mL、8pg/mL、9pg/mL、10pg/mL、15pg/mL、20pg/mLもしくは25pg/mLの値、または前記のいずれかの間の値である。いくつかの態様において、TNFについての閾値レベルは、7または約7pg/mLの値である。いくつかの態様において、TNFについての閾値レベルは、8または約8pg/mLの値である。いくつかの態様において、TNFについての閾値レベルは、9または約9pg/mLの値である。いくつかの態様において、TNFについての閾値レベルは、10または約10pg/mLの値である。いくつかの態様において、TNFについての閾値レベルは、15または約15pg/mLの値である。いくつかの態様において、TNFについての閾値レベルは、20または約20pg/mLの値である。いくつかの態様において、TNFについての閾値レベルは、25または約25pg/mLの値である。いくつかの態様において、TNFについての閾値レベルは、8または約8pg/mL~10または約10pg/mLの値である。
【0150】
いくつかの態様において、IL-16についての閾値レベルは、400または約400pg/mL~1000または約1000pg/mLの値である。いくつかの態様において、IL-16についての閾値レベルは、400pg/mL、500pg/mL、600pg/mL、700pg/mL、800pg/mL、900pg/mLもしくは1000pg/mL、または約400pg/mL、500pg/mL、600pg/mL、700pg/mL、800pg/mL、900pg/mLもしくは1000pg/mLの値、または前記のいずれかの間の値である。いくつかの態様において、IL-16についての閾値レベルは400または約400pg/mLの値である。いくつかの態様において、IL-16についての閾値レベルは500または約500pg/mLの値である。いくつかの態様において、IL-16についての閾値レベルは600または約600pg/mLの値である。いくつかの態様において、IL-16についての閾値レベルは700または約700pg/mLの値である。いくつかの態様において、IL-16についての閾値レベルは800または約800pg/mLの値である。いくつかの態様において、IL-16についての閾値レベルは900または約900pg/mLの値である。いくつかの態様において、IL-16についての閾値レベルは1000または約1000pg/mLの値である。いくつかの態様において、IL-16についての閾値レベルは、500または約500pg/mL~700または約700pg/mLの値である。
【0151】
任意の態様の一部では、TNFとIL-16の両方のレベル、量または濃度が評価され、TNFについての閾値レベルは7pg/mL、8pg/mL、9pg/mL、10pg/mL、15pg/mL、20pg/mLもしくは25pg/mL、または約7pg/mL、8pg/mL、9pg/mL、10pg/mL、15pg/mL、20pg/mLもしくは25pg/mLの値、または前記のいずれかの間の値であり、IL-16についての閾値レベルは、400pg/mL、500pg/mL、600pg/mL、700pg/mL、800pg/mL、もしくは900pg/mL、または約400pg/mL、500pg/mL、600pg/mL、700pg/mL、800pg/mLもしくは900pg/mLの値、または前記のいずれかの間の値である。
【0152】
任意の態様の一部では、TNFとIL-16の両方のレベル、量または濃度が評価され、TNFについての閾値レベルは8または約8pg/mL~10または約10pg/mLの値であり、IL-16についての閾値レベルは500または約500pg/mL~700または約700pg/mLの値である。任意のそのような態様の一部において、閾は、本明細書において提供するTNFおよびIL-16のそれぞれについての閾の任意の組合せであることができる。
【0153】
B. 応答アウトカムと関連する例示的なバイオマーカー、分析物またはパラメータ
いくつかの態様において、分析物またはバイオマーカーは、特定のアウトカム、例えば客観的奏効(OR)、完全奏効(CR)もしくは部分奏効(PR)、または持続的奏効、例えば3、6、9ヶ月またはそれ以上にわたって持続的であるORまたはCRまたはPRなどといった特定の奏効アウトカムと関連し、相関し、それを示しおよび/または予測する。いくつかの態様において、そのようなバイオマーカー(例えば分析物)のうちの1つまたは複数の、例えば参照値または閾値レベルと比較して低下もしくは低減したレベルまたは増加したレベルは、奏効、例えばOR、CRもしくはPR、または本明細書の例えばセクションII.Cに記載する任意の奏効アウトカムと関連しうる。いくつかの態様において、有効な処置に関して評価される基準としては、全奏効率(overall response rate:ORR;場合により、奏効率としても知られる)、完全奏効(CR;場合により、完全寛解としても知られる)、骨髄回復が不完全な完全奏効(CRi)、部分奏効(PR)または結節性部分寛解(nPR)が挙げられる。いくつかの態様では、関連する奏効アウトカムとして、持続的奏効、例えば最初の奏効後、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月またはそれ以上にわたって持続的である奏効が挙げられる。
【0154】
いくつかの態様において、分析物またはバイオマーカーは、細胞療法、例えば遺伝子操作された細胞を含有する組成物による細胞療法が投与された対象における特定のアウトカム、例えば特定の奏効アウトカムまたは持続的奏効アウトカムと関連し、相関し、それを示し、および/または予測する。いくつかの態様において、細胞療法の投与前に対象から得られた生物学的試料中の1つまたは複数のバイオマーカー、例えば分析物の存在、発現、レベル、量または濃度は、特定のアウトカム、例えば特定の奏効アウトカムまたは持続的奏効アウトカムと関連し、相関し、それを示しおよび/または予測することができる。いくつかの態様において、特定バイオマーカーの存在、発現、レベル、量または濃度は、特定の奏効アウトカムまたは持続的奏効アウトカムと相関しうる。いくつかの態様において、奏効アウトカムは、本明細書の例えばセクションII.Cに記載の任意の奏効アウトカムであることができる。
【0155】
いくつかの態様において、分析物またはバイオマーカーは、細胞療法、例えば遺伝子操作された細胞を含有する組成物による細胞療法が投与された対象における特定のアウトカム、例えば特定の奏効アウトカムまたは持続的奏効アウトカムと関連し、相関し、それを示し、および/または予測する。いくつかの態様において、細胞療法の投与前に対象から得られた生物学的試料中の1つまたは複数のバイオマーカー、例えば分析物の存在、発現、レベル、量または濃度は、特定のアウトカム、例えば特定の奏効アウトカムまたは持続的奏効アウトカムと関連し、相関し、それを示しおよび/または予測することができる。いくつかの態様において、特定バイオマーカーの存在、発現、レベル、量または濃度は、特定の奏効アウトカムまたは持続的奏効アウトカムと相関しうる。いくつかの態様において、奏効アウトカムは、本明細書の例えばセクションII.Cに記載の任意の奏効アウトカムであることができる。
【0156】
いくつかの態様において、本方法は、試料中の分析物のレベル、量または濃度を閾値レベルと個別に比較し、それによって対象が細胞療法に対する奏効を達成する見込みを決定する工程を含む。いくつかの態様において、本方法は、試料中の分析物のレベル、量または濃度を閾値レベルと個別に比較することによって対象が細胞療法に対する奏効を達成する見込みを決定した結果に基づいて、処置が奏効する可能性が高い対象を選択する工程を含む。いくつかの態様において、本方法は、処置のために選択された対象に細胞療法を投与する工程も含む。いくつかの態様において、対象が奏効または持続的奏効を達成する可能性が低いと決定された場合は、追加の治療作用物質を対象に投与する工程を、さらに含む。
【0157】
いくつかの態様において、バイオマーカー(例えば分析物)には、奏効アウトカムおよび/または持続的奏効と関連するものが含まれる。いくつかの態様において、バイオマーカー(例えば分析物)(そのパラメータを含む)にはVEGFCまたはVEGFR1が含まれる。
【0158】
いくつかの局面において、細胞療法を投与した後の奏効の見込みの評価に関して評価または分析することができる例示的な分析物またはバイオマーカーには、VEGFCまたはVEGFR1から選択される1つまたは複数の分析物が含まれる。いくつかの態様において、前記分析物またはバイオマーカーのうちのいずれかについて、分析物のうちの1つまたは複数のレベル、量または濃度が閾値レベル未満であるなら、対象が奏効を達成する可能性は高く、分析物のうちの1つまたは複数のレベル、量または濃度が閾値レベルを上回るのであれば、対象が奏効を達成する可能性は低い。いくつかの態様において、奏効は客観的奏効であるか、または客観的奏効を含む。いくつかの態様において、客観的奏効は、完全奏効(CR)もしくは部分奏効(PR)であるか、完全奏効(CR)もしくは部分奏効(PR)を含む。いくつかの局面において、細胞療法の投与前(処置前)に対象から得られた生物学的試料中の、低減したVEGFCまたはVEGFR1レベルは、完全奏効(CR)または部分奏効(PR)を含む客観的奏効の達成と相関しうる。
【0159】
いくつかの態様において、奏効は客観的奏効(OR)を含む。いくつかの態様において、客観的奏効は、完全奏効(CR;場合により、完全寛解としても知られる)、骨髄回復が不完全な完全寛解(CRi)、完全寛解(CR)、骨髄回復が不完全なCR(CRi)、結節性部分寛解PR(nPR)または部分奏効(PR;場合により、部分寛解としても知られる)を含む。
【0160】
本明細書では、以下の工程を伴う、細胞療法の奏効の見込みを評価する方法も提供される:
生物学的試料中の血管内皮増殖因子C(VEGFC)および/または血管内皮増殖因子受容体1(VEGFR1)のレベル、量または濃度を評価する工程であって、生物学的試料は、細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象に由来し、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、生物学的試料が、細胞療法を投与する前に、対象から得られる、工程;ならびに
試料中のVEGFCおよび/またはVEGFR1のレベル、量または濃度を閾値レベルと個別に比較する工程であって、(1)VEGFCおよび/もしくはVEGFR1のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル未満であるなら、対象を、細胞療法に対する奏効を達成する見込みが高いと同定し、または(2)VEGFCおよび/もしくはVEGFR1のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、細胞療法に対する奏効を達成する見込みが低いと同定する、工程。
【0161】
本明細書では、以下の工程を含む、細胞療法による処置のために対象を選択する方法も提供される:
生物学的試料中の血管内皮増殖因子C(VEGFC)および/または血管内皮増殖因子受容体1(VEGFR1)のレベル、量または濃度を評価する工程であって、生物学的試料は、細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象に由来し、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、生物学的試料が、細胞療法を投与する前に、対象から得られる、工程;ならびに
試料中のVEGFCおよび/またはVEGFR1のレベル、量または濃度をそれぞれについての閾値レベルと個別に比較することによって対象が細胞療法に対する奏効を達成する見込みを決定した結果に基づいて処置が奏効する可能性が高い対象を選択する工程であって、(1)VEGFCおよび/もしくはVEGFR1のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル未満であるなら、対象を、細胞療法に対する奏効を達成する見込みが高いと同定し、または(2)VEGFCおよび/もしくはVEGFR1のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、細胞療法に対する奏効を達成する見込みが低いと同定する、工程。いくつかの態様において、本方法は、処置のために選択された対象に細胞療法を投与する工程も含む。
【0162】
本明細書では、以下の工程を含む、処置のための方法も提供される:
(a)生物学的試料中の血管内皮増殖因子C(VEGFC)および/または血管内皮増殖因子受容体1(VEGFR1)のレベル、量または濃度をそれぞれについての閾値レベルと個別に比較することによって対象が細胞療法に対する奏効を達成する見込みを決定した結果に基づいて処置が奏効する可能性が高い対象を選択する工程であって、(1)VEGFCおよび/もしくはVEGFR1のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル未満であるなら、対象を、細胞療法に対する奏効を達成する見込みが高いと同定し、または(2)VEGFCおよび/もしくはVEGFR1のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、細胞療法に対する奏効を達成する見込みが低いと同定し、ここで、生物学的試料は、細胞療法による処置の候補であるCLLまたはSLLを有する対象に由来し、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、生物学的試料が、細胞療法を投与する前に対象から得られ、および/または対象はCARを発現するT細胞を含まない、工程;ならびに
(b)処置のために選択された対象に細胞療法を投与する工程。
【0163】
いくつかの態様において、閾値レベルは、細胞療法を受ける前に対象の群から得られた生物学的試料から評価されたパラメータの中央値もしくは平均値、または前記生物学的試料中の中央もしくは平均のレベル、量もしくは濃度の、またはその前後の、またはそれを上回って、25%以内、20%以内、15%以内、10%以内または5%以内であり、および/または1標準偏差以内であり、該群の対象のそれぞれは、CLLまたはSLLを処置するためのCARを発現する操作された細胞のある用量の投与後に奏効を達成した。
【0164】
いくつかの態様において、閾値レベルは、細胞療法を受ける前に対象の群から得られた生物学的試料から評価されたパラメータの中央値もしくは平均値、または前記生物学的試料中の中央もしくは平均のレベル、量もしくは濃度よりも、1.25倍以上高いか、1.3倍以上高いか、1.4倍以上高いか、または1.5倍以上高く、該群の対象のそれぞれは、CLLまたはSLLを処置するためのCARを発現する操作された細胞のある用量の投与後に奏効を達成した。
【0165】
いくつかの態様において、閾値レベルは、細胞療法による処置の候補ではない正常または健常対象の群から得られた生物学的試料中のレベル、量または濃度から評価されるパラメータよりも、1.25倍以上高いか、1.3倍以上高いか、1.4倍以上高いか、または1.5倍以上高い。
【0166】
いくつかの態様において、閾値レベルは、対象の群であって、その群の対象のそれぞれが、同じ疾患または病態を処置するための組換え受容体発現治療細胞組成物の投与後に、奏効を達成することになった群から、細胞療法を受ける前に得られた生物学的試料中のVEGFCまたはVEGFR1の中央または平均のレベル、量または濃度を下回って、25%以内、20%以内、15%以内、10%以内または5%以内であり、および/または1標準偏差以内である。いくつかの態様において、閾値レベルは、対象の群であって、その群の対象のそれぞれが、同じ疾患または病態を処置するための組換え受容体発現治療細胞組成物の投与後に、安定(SD)および/または進行(PD)を呈することになった群から、細胞療法を受ける前に得られた生物学的試料中のVEGFCまたはVEGFR1の中央または平均のレベル、量または濃度を上回って、25%以内、20%以内、15%以内、10%以内または5%以内であり、および/または1標準偏差以内である。
【0167】
いくつかの局面において、細胞療法を投与した後の持続的奏効の見込みの評価に関して評価または分析することができる例示的な分析物またはバイオマーカーには、VEGFCまたはVEGFR1から選択される1つまたは複数の分析物が含まれる。いくつかの態様において、前記分析物またはバイオマーカーのうちのいずれかについて、分析物のうちの1つまたは複数のレベル、量または濃度が閾値レベル未満であるなら、対象は持続的奏効を達成する可能性が高く、分析物のうちの1つまたは複数のレベル、量または濃度が閾値レベルを上回るのであれば、対象は持続的奏効を達成する可能性が低い。いくつかの態様において、持続的奏効は、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月もしくは6ヶ月以上にわたって持続的である完全奏効(CR)または部分奏効(PR)であるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、持続的奏効は、少なくとも3ヶ月にわたって持続的であるCRまたはPRであるか、またはそれを含む。いくつかの局面において、細胞療法の投与前(処置前)に対象から得られた生物学的試料中の、低減したVEGFCまたはVEGFR1レベルは、少なくとも3ヶ月にわたって持続的である持続的奏効、例えばCRまたはRRの達成と関連しうる。
【0168】
いくつかの態様において、例示的バイオマーカーまたは分析物はVEGFCである。いくつかの態様において、VEGFCについての閾値レベルは60または約60pg/mL~70または約70pg/mLの値である。いくつかの態様において、VEGFCの閾値レベルは、60pg/mL、61pg/mL、62pg/mL、63pg/mL、64pg/mL、65pg/mL、66pg/mL、67pg/mL、68pg/mL、69pg/mLもしくは70pg/mL、または約60pg/mL、61pg/mL、62pg/mL、63pg/mL、64pg/mL、65pg/mL、66pg/mL、67pg/mL、68pg/mL、69pg/mLもしくは70pg/mLの値、または前記のいずれかの間の値である。いくつかの態様において、VEGFCについての閾値レベルは60または約60pg/mLである。いくつかの態様において、VEGFCについての閾値レベルは61または約61pg/mLである。いくつかの態様において、VEGFCについての閾値レベルは62または約62pg/mLである。いくつかの態様において、VEGFCについての閾値レベルは63または約63pg/mLである。いくつかの態様において、VEGFCについての閾値レベルは64または約64pg/mLである。いくつかの態様において、VEGFCについての閾値レベルは65または約65pg/mLである。いくつかの態様において、VEGFCについての閾値レベルは66または約66pg/mLである。いくつかの態様において、VEGFCについての閾値レベルは67または約67pg/mLである。いくつかの態様において、VEGFCについての閾値レベルは68または約68pg/mLである。いくつかの態様において、VEGFCについての閾値レベルは69または約69pg/mLである。いくつかの態様において、VEGFCについての閾値レベルは70または約70pg/mLである。
【0169】
いくつかの態様において、例示的バイオマーカーまたは分析物はVEGFR1である。いくつかの態様において、VEGFR1についての閾値レベルは80または約80pg/mL~120または約120pg/mLの値である。いくつかの態様において、VEGFR1についての閾値レベルは、80pg/mL、85pg/mL、90pg/mL、95pg/mL、100pg/mL、105pg/mL、110pg/mL、115pg/mLもしくは120pg/mL、または約80pg/mL、85pg/mL、90pg/mL、95pg/mL、100pg/mL、105pg/mL、110pg/mL、115pg/mLもしくは120pg/mLの値、または前記のいずれかの間の値である。いくつかの態様において、VEGFR1についての閾値レベルは、80または約80pg/mLの値である。いくつかの態様において、VEGFR1についての閾値レベルは85または約85pg/mLの値である。いくつかの態様において、VEGFR1についての閾値レベルは90または約90pg/mLの値である。いくつかの態様において、VEGFR1についての閾値レベルは95または約95pg/mLの値である。いくつかの態様において、VEGFR1についての閾値レベルは100または約100pg/mLの値である。いくつかの態様において、VEGFR1についての閾値レベルは105または約105pg/mLの値である。いくつかの態様において、VEGFR1についての閾値レベルは110または約110pg/mLの値である。いくつかの態様において、VEGFR1についての閾値レベルは115または約115pg/mLの値である。いくつかの態様において、VEGFR1についての閾値レベルは120または約120pg/mLの値である。
【0170】
いくつかの態様では、VEGFCとVEGFR1の両方のレベル、量または濃度が評価され、VEGFCについての閾値レベルは60または約60pg/mL~70または約70pg/mLの値であり、VEGFR1についての閾値レベルは80または約80pg/mL~120または約120pg/mLの値である。任意のそのような態様の一部において、閾は、本明細書において提供するVEGFCおよびVEGFR1のそれぞれについての閾の任意の組合せであることができる。
【0171】
II. 遺伝子操作された細胞による細胞療法の方法および使用
いくつかの態様において、毒性のリスクおよび/または細胞療法の奏効の見込みを決定する工程を含む本明細書において提供される方法および使用は、養子細胞療法において、白血病もしくはリンパ腫および/またはそれが由来する細胞タイプが発現し、それと関連し、および/またはそれに特異的な抗原を認識する一般的にはキメラ抗原受容体(CAR)などのキメラ受容体である遺伝子操作(組換え)細胞表面受容体を発現する細胞を対照に投与する工程を伴う治療方法に関係する。上記セクションIにおいて提供される方法および使用は、例えばセクションIIに記載する細胞療法、例えばキメラ抗原受容体(CAR)を発現する改変T細胞などの操作された細胞を投与する工程を伴う細胞療法、および場合によっては、追加の作用物質、例えばセクションIIIに記載するものの投与と一緒に、それらとの関連において、またはそれらの一部として、使用される。
【0172】
いくつかの局面において、細胞は一般に、投与用に処方された組成物として投与され、本方法は一般に、対象に細胞を1回または複数回投与する工程を伴い、その1回分は、特定の数もしくは相対数の細胞もしくは操作された細胞、および/または組成物内に所定の比もしくは組成の2種以上のサブタイプ、例えばCD4 T細胞とCD8 T細胞とを含みうる。
【0173】
いくつかの態様において、細胞、集団および組成物は、例えば養子T細胞療法などの養子細胞療法によって、治療されるべき特定の疾患または状態を有する対象に投与される。いくつかの態様において、本方法は、慢性リンパ性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)などのリンパ腫または白血病を有する対象の、抗原受容体発現細胞(例えばCAR発現細胞)の投与による処置を伴う。
【0174】
一部の局面では、提供される態様は、提供される方法が、毒性のリスクの増加なしに、細胞療法のためのある特定の利用可能な方法と比較して、高い持続性を伴う高い奏効率を達成するために用いることができるという観察、例えば、本明細書において提供される実施例に記載される観察に基づく。一部の態様では、提供される方法は、細胞療法のために養子移入される細胞の残存の延長、および/または対象における低い毒性発症率を可能にする。一部の態様では、方法は、細胞療法に反応する可能性があるかまたはより可能性が高い細胞療法による処置のための対象を選択する、および/または毒性のリスクを最小化しながら、より高い奏効率および/またはより持続的な奏効のための適切な用量または投与レジメンを決定するために用いることができる。そのような方法は、養子細胞療法、例えばCAR-T細胞療法の安全で有効な臨床適用を容易にするための合理的戦略の情報をもたらすことができる。
【0175】
一部の態様では、提供される方法は、全員がイブルチニブを含む1つもしくは複数の以前の療法を受けたことがある、高リスクCLL(またはSLL)を有する対象の多くの治療歴を有する集団において高い奏効率を達成する。一部の態様では、処置される対象には、イブルチニブによる初回寛解後に再発している対象、またはイブルチニブによる処置に対して抵抗性もしくは不耐容である対象が含まれる。特定の態様では、処置される対象には、寛解後に再発しているか、またはイブルチニブに加えて1つまたは複数のさらなる以前の療法、例えば1、2、3、4、5つもしくはそれを上回る以前の療法に対して抵抗性もしくは不耐容である、対象が含まれる。一部の態様では、対象は、再発しているか、またはイブルチニブおよびベネトクラクスの前処置の両方に対して抵抗性である。一部の態様では、そのような処置に対して抵抗性である対象は、1つもしくは複数の以前の療法後に進行している。一部の態様では、1つもしくは複数の以前の療法(例えば、イブルチニブおよび/またはベネトクラクス)により処置された対象を含む、処置される対象には、TP53変異、複雑核型(すなわち、少なくとも3つの染色体変化)、およびdel17(p)を含む、高リスクの細胞遺伝学的異常を有する対象が含まれる。一部の態様では、本明細書において提供される態様による処置のための対象には、BTK阻害剤(例えば、イブルチニブ)およびベネトクラクスの両方が不成功に終わった対象が含まれる。本明細書において明らかにされるように、現在進行中の臨床試験からの結果は、処置された対象の35%超での不完全な血球数の回復を伴う完全寛解(完全奏効としても知られる;CR)(CRi)を含む、用量レベル全体にわたり処置された対象の65%超の高い全奏効率(ORR)を示す。そのような対象のうち、全員が以前にイブルチニブにより処置されたことがあり、およそ半数が以前にイブルチニブおよびベネトクラクスにより処置されたことがある。一部の局面では、結果はMRD検出不能(uMRD)の達成と関連しており;uMRDの達成は、アウトカムの改善と相関することが報告されている(Kovacs et al. (2016) J. Clin. Oncol., 34:3758-3765; Thompson and Wierda (2016) Blood, 127:279-286)。一部の態様では、提供される方法は、1ヶ月超、3ヶ月超、6ヶ月超、またはそれを上回って進行することなく続く、持続的奏効の高いパーセンテージをもたらす。
【0176】
高リスク対象において達成されるそのような結果は、ある特定の他の代替療法と比較して優れている。特に、CLLは一般的には、治療不能であるとみなされ、患者は多くの場合、最終的に再発するかまたは利用可能な治療に対して抵抗性となる(Dighiero and Hamblin (2008) The Lancet, 371:1017-1029)。場合によっては、CRおよびuMRDは不十分であり、かつ/または対象は、ある特定の他の作用物質、例えば、単剤でのイブルチニブ、ベネトクラクス-リツキシマブ、ベンダムスチン-リツキシマブ、またはイブルチニブおよびベネトクラクスの両方による処置後に進行するか、またはそれによる処置後に不良転帰を有する。さらに、複数の報告が、他の特定のCAR T細胞療法がそのような持続性の奏効率を達成し得ないことを示唆している。
【0177】
一部の態様では、方法および使用は、養子細胞療法において遺伝子操作された(組換え)細胞表面受容体を発現する細胞を対象に投与することを含み、該受容体は概して、白血病もしくはリンパ腫および/またはそれに由来する細胞タイプによって発現されるか、それらに関連するか、および/またはそれらに特異的である抗原を認識する、キメラ抗原受容体(CAR)などのキメラ受容体である。特定の態様では、標的とされる抗原はCLLである。細胞は概して、投与用に製剤化された組成物で投与され;方法は概して、1回または複数回用量の細胞を対象に投与する段階を伴い、該用量は、組成物内に、特定数もしくは相対数の細胞もしくは操作された細胞、および/または規定された比もしくは組成の2種類以上のサブタイプ、例えばCD4 T細胞:CD8 T細胞を含んでもよい。
【0178】
特定の態様では、方法は、一律用量としておよび/または規定された比として特定の数または厳密な数でCD4+ CAR T細胞およびCD8+ CAR T細胞が投与されるCD4+ CAR T細胞組成物およびCD8+ CAR T細胞組成物の別々の投与を伴う治療用T細胞産物により実施される。場合によっては、方法は、生物学的試料からのCD4+ T細胞およびCD8+T細胞の別々の単離、選択、または濃縮を含むプロセスによりCAR T細胞組成物を作製または操作する段階を含む。場合によっては、CD4+ T細胞およびCD8+T細胞の濃縮を含むCAR-T細胞組成物を作製するための方法は、CAR-T細胞産物中にまたはCAR-T細胞産物の製造時に腫瘍細胞を含むリスクを回避する。他の疾患と比較して、CLLは、腫瘍細胞が末梢において認められるがんであり、一部の状況において、そのような細胞を含む可能性があるかまたはそのような細胞を含有する初回組成物に由来する可能性があるCAR-T産物の有効性を妨げるおよび/またはその有効性に影響を及ぼす場合がある。いくつかの局面において、本方法による処置の対象は、再発性または難治性(r/r)CLLを有する。いくつかの局面において、本方法による処置の対象は、再発性または難治性(r/r)SLLを有する。
【0179】
いくつかの態様において、提供される方法は、対象において細胞療法と関連する毒性を発現するリスクを評価する工程であって、対象の特別な群またはサブセット、例えば高リスク疾患、例えば高リスクCLLを有すると同定された対象における、毒性、例えば重度の神経毒性などの神経毒性、および/またはCRS、例えば重度のCRSと関連するバイオマーカー(例えば分析物)またはパラメータを評価または検出する工程を伴う工程を伴う。一部の局面では、方法は、高悪性度および/または予後不良のCLLのある形態、例えば、再発しているかまたは標準的治療に対して抵抗性を有し(R/R)かつ予後不良を有するCLLを有する対象を処置する。一部の態様では、対象は1つもしくは複数の以前の療法に失敗したことがある。一部の態様では、対象は他の以前の療法に対して不適格である。一部の態様では、対象は、イブルチニブなどのブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤(BTKi)による以前の療法に失敗したことがある。一部の態様では、対象はイブルチニブおよびベネトクラクスが不成功に終わったことがある。場合によっては、利用可能な治療に対する、標準治療に対する、または該疾患および/もしくは治療が適応される患者集団に対する参照治療に対する、全奏効率(ORR;一部の場合において客観的奏効率としても知られる)は40%未満であり、かつ/または完全奏効(CR;一部の場合において完全寛解としても知られる)は20%未満である。
【0180】
一部の態様では、方法、使用、および製造物品は、例えば、特定の疾患型、診断基準、以前の処置、および/または以前の処置に対する奏効に基づいて、特定の群またはサブセットの対象を伴う、選択するまたは特定する、対象において毒性、例えば神経毒性、例えば重度の神経毒性および/またはCRS、例えば重度CRSに関連するバイオマーカー(例えば、分析物)またはパラメータを評価または検出することにより対象において細胞療法に関連する毒性を発症するリスクを評価することを伴うかまたは該評価のために用いられる。一部の態様では、方法は、1つもしくは複数の以前の療法による処置後の寛解に続いて再発しているか、もしくは該処置に対して抵抗性になっている対象;または再発しているかもしくは1つもしくは複数の以前の療法、例えば1ラインまたは複数ラインの標準的治療に対して抵抗性である(R/R)対象を処置することを伴う。一部の態様では、方法は、慢性リンパ性白血病を有する対象を処置することを伴う。一部の態様では、方法は、小リンパ球性リンパ腫を有する対象を処置することを伴う。一部の態様では、方法は、0~1のEastern Cooperative Oncology Group Performance Status(ECOG)を有する対象を処置することを伴う。一部の態様では、方法は、一般的に治療または特定の参照治療に対して奏効が不十分であるCLL 患者またはその対象の予後不良集団、例えば高リスクの細胞遺伝学的異常(すなわち、Del(17p)、TP53変異、変異型IGHV、および複雑核型)を有する集団を処置する。
【0181】
一部の態様では、抗原受容体(例えば、CAR)は、疾患または状態に関連する、例えばCLLに関連する標的抗原に特異的に結合する。一部の態様では、抗原受容体は、SLLに関連する標的抗原に結合する。一部の態様では、疾患または障害に関連する抗原はCD19である。
【0182】
一部の態様では、方法は、例えば、疾患、状態または障害を有する、そのリスクがある、またはそれを有する疑いがある、対象、組織、または細胞への、細胞または細胞を含有する組成物の投与を含む。一部の態様では、対象は、成人である。一部の態様では、対象は、50、60、もしくは70歳を、または約50、60、もしくは70歳を上回る。
【0183】
一部の態様では、対象は、組換え受容体を発現する細胞の投与の前に、疾患または状態、例えばCLLまたはSLLを標的とする療法または治療剤によって以前に処置されたことがある。一部の態様では、対象は、造血幹細胞移植(HSCT)、例えば、同種異系HSCTまたは自己由来HSCTによって以前に処置されたことがある。一部の態様では、対象は、標準的治療による処置後に予後不良であった、かつ/あるいは、1ラインまたは複数ラインの以前の療法、例えば、少なくとも1、2、3、4ラインもしくはそれを上回るライン、または少なくとも約1、2、3、4ラインもしくはそれを上回るラインの以前の療法に失敗したことがある。一部の態様では、対象は、リンパ球枯渇療法および/または抗原受容体を発現するある用量の細胞以外の、CLLを治療するための少なくとも1、2、3、もしくは4つ、または少なくとも約1、2、3、もしくは4つ、または約1、2、3、もしくは4つの他の療法で処置されているか、またはそれらを以前に受けたことがある。一部の態様では、対象は、化学療法または放射線療法で以前に処置されたことがある。一部の局面では、対象は、他の療法または治療剤に対して抵抗性であるかまたは非応答性である。一部の態様では、対象は、例えば、化学療法または放射線を含む別の療法または治療介入による処置後に、持続性(persistent)または再発性の疾患を有する。一部の態様では、対象は、再発性または抵抗性(R/R)の慢性リンパ性白血病(CLL)を有し、かつブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤(BTKi)治療に失敗したことがあったかまたはそれに不適格である。
【0184】
一部の態様では、対象は、組換え抗原受容体を発現する細胞の投与の前に、疾患または状態、例えばCLLを標的とする療法または治療剤で以前に処置されたことがある。一部の態様では、治療剤は、ブルトン型チロシンキナーゼ(Btk)の阻害剤などのキナーゼ阻害剤、例えばイブルチニブである。一部の態様では、治療剤は、B細胞リンパ腫-2(Bcl-2)の阻害剤、例えばベネトクラクスである。一部の態様では、治療剤は、CLLまたはNHLの細胞によって発現される抗原、例えば、CD20、CD19、CD22、ROR1、CD45、CD21、CD5、CD33、Igκ、Igλ、CD79a、CD79b、またはCD30のいずれか1つまたは複数からの抗原に特異的に結合する抗体(例えば、モノクローナル抗体)である。一部の態様では、治療剤は抗CD20抗体、例えば、リツキシマブである。一部の態様では、治療剤は、リツキシマブを含む組み合わせ療法、例えば、フルダラビンとリツキシマブとの組み合わせ療法またはアントラサイクリンとリツキシマブとの組み合わせ療法である枯渇(depleting)化学療法である。一部の態様では、対象は、造血幹細胞移植(HSCT)、例えば、同種異系HSCTまたは自己由来HSCTにより以前に処置されたことがある。一部の態様では、対象は、リンパ球枯渇療法および/または抗原受容体を発現するある用量の細胞以外の、CLLを治療するための少なくとも1、2、3、もしくは4つ、または少なくとも約1、2、3、もしくは4つ、または約1、2、3、もしくは4つの他の療法で処置されているか、またはそれらを以前に受けたことがある。一部の態様では、対象は、化学療法または放射線療法により以前に処置されたことがある。
【0185】
一部の局面では、対象は、他の療法または治療剤に対して抵抗性または非応答性である。一部の態様では、対象は、例えば、化学療法または放射線を含む別の療法または治療介入による処置後に、持続性または再発性の疾患を有する。
【0186】
一部の態様では、対象は、移植に適格である対象、例えば、造血幹細胞移植(HSCT)、例えば同種異系HSCTに適格である対象である。一部のそのような態様では、対象は、適格であるにもかかわらず、本明細書において提供される対象への操作された細胞(例えば、CAR-T細胞)または該細胞を含む組成物の投与の前に、移植を以前に受けたことがない。
【0187】
一部の態様では、対象は、移植に適格ではない対象、例えば、造血幹細胞移植(HSCT)、例えば同種異系HSCTに適格ではない対象である。一部の態様では、そのような対象は、本明細書において提供される態様にしたがって、操作された細胞(例えば、CAR-T細胞)または該細胞を含む組成物が投与される。
【0188】
一部の態様では、方法は、高リスクCLLを有するとして選択または特定された対象への細胞の投与を含む。一部の態様では、対象は、例えば高リスクCLLに関連する、1つまたは複数の細胞遺伝学的異常を示す。一部の局面では、処置される集団は、0~1のいずれかであるEastern Cooperative Oncology Group Performance Status(ECOG)を有する対象を含む。
【0189】
いずれかの態様の一部の局面では、処置される対象は、2つ以上の以前の療法に失敗したことがある。いずれかの態様の一部の局面では、処置される対象は、3つ以上の以前の療法に失敗したことがある。一部の態様では、以前の療法には、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤、例えばイブルチニブ;ベネトクラクス; フルダラビンとリツキシマブとを含む組み合わせ療法;放射線療法;および造血幹細胞移植(HSCT)による治療のいずれかが含まれる。一部の態様では、対象または患者は、イブルチニブおよび/またはベネトクラクスによる処置を以前に受けたことがあるが寛解後に再発している、該処置に対して抵抗性である、該処置に失敗した、および/または該処置に不耐容である。一部の態様では、対象または患者は、イブルチニブおよびベネトクラクスによる処置を以前に受けたことがあるが寛解後に再発している、該処置に対して抵抗性である、該処置に失敗した、および/または該処置に不耐容である。
【0190】
一部の態様では、寛解後に再発している、またはCLLまたはSLLを処置するためのイブルチニブおよびベネトクラクスによる前処置に対して抵抗性であるとして選択または特定された対象において細胞療法に関連する毒性を発症するリスクおよび処置の奏効の見込みを評価する方法が提供される。一部の局面では、選択または特定された対象は、提供される方法にしたがって、CAR T細胞療法、例えば抗CD19 CAR-T細胞療法を投与される。
【0191】
一部の態様では、対象は、完全奏効(CR)を達成したことがなく、自家幹細胞移植(ASCT)を受けたことがなく、1つもしくは複数の二次治療に対して抵抗性であり、原発性抵抗性疾患を有し、かつ/または0~1であるECOG performance scoreを有する。
【0192】
一部の局面では、提供される態様にしたがって処置される対象には、CLLまたはSLLの診断を有する対象が含まれる。一部の態様では、CLLを有する対象には、International Workshop on Chronic Lymphocytic Leukemia(iwCLL)ガイドラインおよび臨床的測定可能疾患(> 30%リンパ球による骨髄浸潤、末梢血リンパ球増加>5×109/L、ならびに/または測定可能なリンパ節および/または肝臓もしくは脾腫)に基づく処置の適応によるCLL診断を有する対象が含まれる。一部の態様では、SLLを有する対象には、少なくとも1つの> 1.5 cmの最大横径の病変として定義される測定可能疾患による診断時にリンパ節腫脹および/または脾腫、ならびに末梢血における< 5×109 個のCD19+ CD5+クローンBリンパ球/L [< 5000/μL]に基づくSLL診断を有する対象、および生検診断でのSLLである対象が含まれる。
【0193】
一部の局面では、対象は、全用量(full-dose)の抗凝固剤の要求または治療歴または不整脈のためにブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤(BTKi、例えばイブルチニブ)による処置に不適格であるか、または最良奏効として安定(SD)もしくは進行(PD)、以前の奏効後のPD、または不耐容(例えば、管理できない毒性)を原因とする中止によって判定されるBTKiを以前に投与された後に処置に失敗していた。一部の局面では、対象が高リスク疾患(複合細胞遺伝学的異常(例えば、複雑核型)、del(17p)、TP53変異、未変異のIGVHによって判定される)を有し、かつ(例えば、少なくとも)2つ以上の以前の療法に失敗していた場合に;または対象が、標準リスク疾患を有し、かつ(例えば、少なくとも)3つ以上の以前の療法に失敗していた場合に、対象は提供される態様にしたがって処置される。一部の局面では、提供される態様にしたがって処置される対象は、未処置の活動性CNS疾患、ECOG>1、またはリヒター形質転換を有する対象を除外する。
【0194】
一部の局面では、対象において毒性に関連するバイオマーカー(例えば、分析物)またはパラメータを検出することにより対象において細胞療法に関連する毒性を発症するリスクを評価するための、ならびに、高い奏効率および/または高い奏効の持続性、ならびに低い毒性レベルおよび/または毒性の発生率と相関する、特定の用量での、規定の組成の細胞療法の投与のための組成物、方法および使用が提供される。一部の態様では、投与される組成物または用量は、細胞および/または特定の表現型を有する1つもしくは複数の細胞の一律用量および/または固定用量、例えば厳密に一律の用量、例えばそのような細胞の特定の数または目標数値と比較してばらつきもしくは分散が特定の範囲および/または程度内である数値である。一部の態様では、投与される組成物または用量は、規定された比のCD4+細胞およびCD8+細胞(例えば、CD4+ CAR+T細胞:CD8+ CAR+T細胞の比が1:1)を含む、および/またはそのような比からある特定の程度のばらつきの範囲内にある比、例えば±10%以内、例えば±8%以内、例えばばらつきまたは分散の程度が±10%以下、例えば±8%以下である比を含む。一部の態様では、CD4+およびCD8+細胞は個々に、製剤化されかつ投与される。一部の態様では、投与される細胞は、一貫性のある活性および/または機能、例えばサイトカイン産生、アポトーシスおよび/または拡大を示す。一部の態様では、提供される組成物は、高度に一貫性がありかつ規定された活性、ならびに例えば、細胞数、細胞機能、および/または細胞活性の観点で、組成物中の細胞間または調製間での低いばらつきを示す。一部の態様では、活性および/または機能における一貫性、例えば組成物の調製間での低いばらつきは、改善された有効性および/または安全性を可能にする。一部の態様では、規定された組成の投与は、高い不均一性を有する細胞組成物の投与と比較して、低い製品のばらつきおよび低い毒性、例えばCRSまたは神経毒性をもたらした。一部の態様では、規定された一貫性のある組成物は、一貫性のある細胞拡大も示す。そのような一貫性は、用量、治療域の特定、用量応答の評価、および安全性または毒性アウトカムに相関する可能性がある対象の要因の特定を容易にすることができる。
【0195】
一部の態様では、特定の用量レベルの単回注入を受けた対象のある特定のコホートにおいて、一部のコホートの対象は、3ヶ月で、80%超の全奏効率(ORR、一部の場合において客観的奏効率としても知られる)、50%超の完全奏効(CR)率を達成することができる。一部の態様では、規定された用量を受けた対象は改善された安全性アウトカムを示す。一部の局面では、重度のCRSまたは重度のNTの比率は低い。
【0196】
一部の態様では、対象の特定因子、例えば特定のバイオマーカーまたは分析物(例えばTNF、IL-16)および/またはパラメータ(例えばリンパ節腫瘍負荷量および/または血液腫瘍負荷量などの腫瘍負荷量に関係するパラメータ)を、毒性のリスクを予測するために使用することができる。一部の態様では、対象の特定因子、例えば特定のバイオマーカーまたは分析物(例えばVEGFC1またはVEGFR1)を、奏効の見込みを予想するために使用することができる。いくつかの態様において、提供される態様は、高い奏効率を低い毒性リスクと共に達成するために使用することができる。
【0197】
一部の態様では、提供される組成物、製造物品、キット、方法および使用を用いて処置された対象の25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、または5%以下は、細胞療法の投与の前にまたはそれに続いて、毒性を寛解させる、処置する、または予防する作用物質(例えば、トシリズマブおよび/またはデキサメタゾン)が投与される。一部の態様では、対象は、操作された細胞(例えば、CAR-T細胞)を受ける前にいかなる予防処置も投与されない。
【0198】
一部の態様では、提供される方法は利点もたらす、例えば、外来ベースでの細胞療法の投与を可能にする。一部の態様では、細胞療法、例えば、提供される態様によるある用量のT細胞の投与は、外来ベースで実施することができるか、または病院への対象の入院、例えば1泊滞在が必要とされる病院への入院を必要としない。一部の態様では、そのような外来での投与は、低毒性で高く持続的な奏効率を維持しながら、アクセスの増大およびコストの削減を可能にすることができる。一部の局面では、外来処置は、以前の処置によって既に他の方法で免疫低下状態になっている、例えばリンパ球枯渇後であり、かつ病院での滞在時のまたは入院施設における曝露のリスクがより高い、対象にとって有利であり得る。一部の局面では、外来処置はまた、入院、病院施設、または移植センターへのアクセスを有し得ない対象に対する処置の選択肢を増やし、それによって、該処置へのアクセスを拡大させる。
【0199】
一部の態様では、方法および使用は、より高い奏効率および/もしくはより持続的な奏効もしくは有効性、ならびに/または細胞療法に関連する可能性がある毒性もしくは他の副作用、例えば神経毒性(NT)もしくはサイトカイン放出症候群(CRS)の低下したリスクをもたらすかまたはそれを達成する。一部の局面では、提供される観察は、重症NT(sNT)または重症CRS(sCRS)の比率が低く、およびいかなる毒性、例えばNTまたはCRSも有さない患者の比率が高いことを示唆した。
【0200】
一部の態様では、提供される方法にしたがっておよび/または提供される製造物品もしくは組成物により処置される対象の少なくとも少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、または少なくとも75%以上は完全奏効(CR)を達成する。一部の態様では、提供される方法にしたがっておよび/または提供される製造物品もしくは組成物により処置される対象の少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも90%は客観的奏効(OR)を達成する。一部の態様では、提供される方法にしたがっておよび/または提供される製造物品もしくは組成物により処置される対象の少なくとも35%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、または少なくとも60%以上は、CRまたはOR を1ヶ月まで、2ヶ月まで、または3ヶ月まで達成する。一部の態様では、提供される方法にしたがっておよび/または提供される製造物品もしくは組成物によって処置されるブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤(BTKi)およびベネトクラクスによる以前の処置に失敗していた対象の少なくとも少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、または少なくとも75%以上は完全奏効(CR)を達成する。一部の態様では、提供される方法にしたがっておよび/または提供される製造物品もしくは組成物によって処置されるBTKiおよびベネトクラクスによる以前の処置に失敗していた対象の少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも90%は客観的奏効(OR)を達成する。一部の態様では、提供される方法にしたがっておよび/または提供される製造物品もしくは組成物によって処置されるBTKiおよびベネトクラクスによる以前の処置に失敗していた対象の少なくとも35%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、または少なくとも60%以上は、CRまたはORを1ヶ月まで、2ヶ月まで、または3ヶ月まで達成する。一部の態様では、本方法により処置された対象において、50%超、60%超、または70%超は、ある用量の細胞の投与後少なくとも 1ヶ月、少なくとも 2ヶ月、少なくとも 3ヶ月、または少なくとも6ヶ月にわたって微小残存病変(MRD)検出不能を有した。一部の態様では、本方法にしたがっておよび/または提供される製造物品もしくは組成物によって処置されたBTKiおよびベネトクラクスによる以前の処置に失敗していた対象において、50%超、60%超、または70%超は、ある用量の細胞の投与後少なくとも 1ヶ月、少なくとも 2ヶ月、少なくとも 3ヶ月、または少なくとも6ヶ月にわたって微小残存病変(MRD)検出不能を有した。
【0201】
一部の態様では、細胞療法の投与の開始の3ヶ月後まで、提供される方法にしたがっておよび/または提供される製造物品もしくは組成物により処置される対象の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも85%以上は、奏効状態のままであり、例えばCRもしくはORの状態のままであるおよび/またはMRD検出不能である。一部の態様では、そのような奏効、例えばCRまたはORは、少なくとも 3ヶ月にわたって持続可能である。一部の態様では、細胞療法の投与の開始後の3ヶ月まで、提供される方法にしたがっておよび/または提供される製造物品もしくは組成物によって処置されるBTKiおよびベネトクラクスによる以前の処置に失敗していた対象の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも85%以上は、奏効状態のままであり、例えばCRもしくはORの状態のままであるおよび/またはMRD検出不能である。一部の態様では、そのような奏効、例えばCRまたはORは、少なくとも 3ヶ月にわたって持続可能である。
【0202】
一部の態様では、提供される方法によるおよび/または提供される製造物品もしくは組成物による処置によりそのような対象において観察された結果として生じる奏効は、処置された対象の大部分において任意の毒性のリスクが低いことまたは重篤な毒性のリスクが低いことに関連するかまたはそれをもたらす。一部の態様では、提供される方法にしたがっておよび/または提供される製造物品もしくは組成物によって処置された対象の30%、35%、40%、50%、55%、もしくは60%以上より多くまたは約30%、35%、40%、50%、55%、もしくは60%以上より多くは、いずれかのグレードのCRSまたはいずれかのグレードの神経毒性(NT)を示さない。一部の態様では、提供される方法にしたがっておよび/または提供される製造物品もしくは組成物によって処置された対象の50%、60%、70%、もしくは80%以上より多くまたは約50%、60%、70%、もしくは80%以上より多くは、重度のCRSまたはグレード3以上 CRSを示さない。一部の態様では、提供される方法にしたがっておよび/または提供される製造物品もしくは組成物により処置された対象の50%、60%、70%、もしくは80%以上より多くまたは約50%、60%、70%、もしくは80%以上より多くは、重度の神経毒性またはグレード3以上の神経毒性、例えばグレード4または5神経毒性を示さない。
【0203】
一部の態様では、提供される方法によるおよび/または提供される製造物品もしくは組成物による処置によりBTKiおよびベネトクラクスによる以前の処置に失敗していたそのような対象において観察された結果として生じる奏効は、処置された対象の大部分において任意の毒性のリスクが低いことまたは重篤な毒性のリスクが低いことに関連するかまたはそれをもたらす。一部の態様では、提供される方法にしたがっておよび/または提供される製造物品もしくは組成物によって処置されたBTKiおよびベネトクラクスによる以前の処置に失敗していた対象の30%、35%、40%、50%、55%、もしくは60%以上より多くまたは約30%、35%、40%、50%、55%、もしくは60%以上より多くは、いずれかのグレードのCRSまたはいずれかのグレードの神経毒性(NT)を示さない。一部の態様では、提供される方法にしたがっておよび/または提供される製造物品もしくは組成物によって処置されたBTKiおよびベネトクラクスによる以前の処置に失敗していた対象の50%、60%、70%、もしくは80%以上より多くまたは約50%、60%、70%、もしくは80%以上より多くは、重度のCRSまたはグレード3以上 CRSを示さない。一部の態様では、提供される方法にしたがっておよび/または提供される製造物品もしくは組成物により処置されたBTKiおよびベネトクラクスによる以前の処置に失敗していた対象の50%、60%、70%、もしくは80%以上より多くまたは約50%、60%、70%、もしくは80%以上より多くは、重篤な神経毒性またはグレード3以上の神経毒性、例えばグレード4または5神経毒性を示さない。
【0204】
一部の態様では、本方法にしたがっておよび/または提供される製造物品もしくは組成物により処置された対象の少なくとも45%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%または約45%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%は、早期発症のCRSまたは神経毒性を示さない、および/または投与の開始後1日、2日、3日または4日より早くCRSの発症を示さない。一部の態様では、本方法にしたがっておよび/または提供される製造物品もしくは組成物により処置された対象の少なくとも45%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%または約45%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%は、投与の開始後3日、4日、5日、6日または7日より早く神経毒性の発症を示さない。一部の局面では、本方法にしたがっておよび/または提供される製造物品もしくは組成物により処置された対象間での神経毒性の発症の中央値は、本方法により処置された対象におけるCRSのピークの中央値もしくはその後、またはCRS消失までの時間の中央値もしくはその後である。場合によっては、本方法により処置された対象間での神経毒性の発症の中央値は、8、9、10、もしくは11日超または約8、9、10、もしくは11日超である。
【0205】
一部の態様では、BTKiおよびベネトクラクスによる以前の処置に失敗していた、本方法にしたがっておよび/または提供される製造物品もしくは組成物により処置された、BTKiおよびベネトクラクスによる以前の処置に失敗していた対象の少なくとも45%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%または約45%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%は、早期発症のCRSまたは神経毒性を示さない、および/または投与の開始後1日、2日、3日または4日より早くCRSの発症を示さない。一部の態様では、本方法にしたがっておよび/または提供される製造物品もしくは組成物により処置された、BTKiおよびベネトクラクスによる以前の処置に失敗していた対象の少なくとも45%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%または約45%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%は、投与の開始後3日、4日、5日、6日または7日より早く神経毒性の発症を示さない。一部の局面では、本方法にしたがっておよび/または提供される製造物品もしくは組成物により処置された、BTKiおよびベネトクラクスによる以前の処置に失敗していた対象間での神経毒性の発症の中央値は、本方法により処置された対象におけるCRSのピークの中央値もしくはその後、またはCRS消失までの時間の中央値であるかもしくはその後である。場合によっては、本方法により処置された、BTKiおよびベネトクラクスによる以前の処置に失敗していた対象間での神経毒性の発症の中央値は、8、9、10、もしくは11日超または約8、9、10、もしくは11日超である。
【0206】
一部の態様では、そのような結果は、2.5×107または約2.5×107から、1.5×108または約1.5×108個、例えば、約5×107から、1×108または約1×108個の総組換え受容体発現T細胞(例えば、CAR+T細胞)、例えば、本明細書に記載される規定された比で、例えば1:1もしくは約1:1の比で、ならびに/またはCAR+T細胞の厳密なもしくは一律のもしくは固定された数、またはCD4+CAR+T細胞および/もしくはCD8+CAR+T細胞などの特定の種類のCAR+T細胞の厳密なもしくは一律のもしくは固定された数、および/またはそのような厳密なもしくは一律のもしくは固定された数と比較して指定された分散度、例えば+または-(プラスまたはマイナス、いくつかの場合では±と表示される)5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15%以下の範囲内にあるそのような細胞のいずれかの数で投与されるCD4+およびCD8+T細胞を含む、ある用量のT細胞の投与後に観察される。一部の態様では、そのような一律のまたは固定された数は、2.5×107もしくは約2.5×107個の総CAR+T細胞またはCD8+および/もしくはCD4+ CAR+T細胞、5×107もしくは約5×107個の総CAR+T細胞またはCD8+および/もしくはCD4+ CAR+T細胞、あるいは1×108または約1×108個の総CAR+T細胞またはCD8+および/もしくはCD4+ CAR+T細胞である。一部の態様では、当該用量中の細胞の数は、2.5×107 個のCAR+T細胞(任意で1.25×107個のCD4+CAR+T細胞および1.25×107個のCD8+CAR+T細胞)を含むかまたはそれからなるかまたは本質的にそれらかなり;一部の態様では、それは、5×107個のCAR+T細胞(任意で2.5×107個のCD4+CAR+T細胞および2.5×107個のCD8+CAR+T細胞)を含むかまたはそれからなるかまたは本質的にそれらかなり;一部の態様では、それは、1×108個のCAR+T細胞(任意で0.5×108個のCD4+CAR+T細胞および0.5×108個のCD8+CAR+T細胞)を含む。一部の局面では、投与される細胞の数は、前述の態様におけるそのような数のある特定の分散度の範囲内、例えば、そのような細胞の数と比較して、プラスまたはマイナス(±)5、6、7、8、9、または10%の範囲内、例えばプラスまたはマイナス8%の範囲内にある。一部の局面では、当該用量は、そのような細胞(例えば、総CAR+T細胞またはCD8+および/もしくはCD4+ CAR+T細胞)の数と、治療の奏効もしくはその持続期間(例えば、寛解、完全寛解、および/または特定の寛解持続期間を達成する尤度)および/または前述のいずれかの持続期間を示す1つまたは複数のアウトカムとの間に相関関係(任意で線形関係)が観察される範囲内である。一部の局面では、投与される細胞の用量が高いほど、対象における毒性(例えば、CRS または神経毒性)の発生率もしくはリスクまたは毒性、例えば重度のCRSまたは重度の神経毒性の発生率もしくはリスクの程度に影響を与えるもしくは及ぼすことなく、またはそれに実質的に影響を与えるもしくは及ぼすことなく、より大きな奏効がもたらされ得ることが認められる。
【0207】
一部の局面では、提供される態様にしたがって処置される対象は、適切な臓器機能を有する。例えば、一部の局面では、対象は、以下の1つまたは複数を示す:血清クレアチニン≦1.5 ×年齢調整基準値上限(ULN)もしくは推算クレアチニンクリアランス(Cockcroft and Gault)>30 mL/分;アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)≦5×ULNおよび総ビリルビン< 2.0 mg/dL(またはジルベール症候群または肝臓の白血病性浸潤を有する対象では< 3.0 mg/dL);≦Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)グレード1呼吸困難および室内気での飽和酸素(SaO2)≧ 92%によって定義される、適切な肺機能;ならびに/または操作された細胞組成物の投与のための対象の評価前30日以内に実施されたエコーカルジオグラム(ECHO)またはマルチゲート収集(multiple uptake gated acquisition)(MUGA)スキャンによって評価された左室駆出率(LVEF)≧ 40%として定義される適切な心機能。
【0208】
一部の局面では、提供される方法は、高いまたは特定の奏効率(例えば、投与後のある特定の期間後、例えば1ヶ月または3ヶ月後に評価される集団での奏効率なと)、例えば、75%以上、80%以上、85%以上または約75%以上、80%以上、85%以上のORR(例えば、1ヶ月ORRまたは3ヶ月ORR)、および30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上もしくはおよそ75%以上または約30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上もしくはおよそ75%以上のCR率(例えば、1ヶ月CR率または3ヶ月CR率)を達成することができる。一部の態様では、そのような奏効率および持続性は、そのような療法の単回投与または単回用量の後にのみ受けられる。提供される方法によるおよび/または提供される製造物品もしくは組成物によるそのような対象の処置はまた、一部の態様では、高い奏効率を達成するものの、より高い細胞投与量であっても神経毒性またはCRSなどのより毒性の高い発生率を示さない、対象ももたらす。
【0209】
したがって、一部の態様では、提供される方法、製造物品、および/または組成物は、処置のための、例えば養子細胞療法のための他の利用可能な方法、解決法またはアプローチを上回る利点をもたらすことができる。特に、提供される態様の中には、毒性または副作用の発生率を低下させながら高率で持続的奏効を達成することによって、高リスクCLLを有する対象に利点をもたらすものがある。
【0210】
いくつかの態様では、1種または複数種の炎症性サイトカイン、ケモカインまたは増殖因子または受容体を、CAR処置前、CAR処置中またはCAR処置後に、モニタリングする。いくつかの態様では、TNFまたはIL-16が、例えば本明細書の方法に従って、対象において評価されまたはモニタリングされる。いくつかの態様では、VEGFCまたはVEGFR1が、例えば本明細書の方法に従って、対象において評価されまたはモニタリングされる。
【0211】
いくつかの局面において、提供される方法は、養子細胞療法用の細胞、例えば CAR発現T細胞、例えば抗CD19 CAR+T細胞を含む組成物など、T細胞療法を投与する工程も伴う。いくつかの態様において、本方法は、T細胞療法に先立って、リンパ球枯渇療法、例えばシクロホスファミド、フルダラビン、またはそれらの組合せなども含む。
【0212】
A. 処置の方法
毒性に関連するバイオマーカー(例えば、分析物)またはパラメータを評価することまたは検出すること、および、操作されたT細胞などの操作された細胞または操作された細胞を含む組成物を投与することを伴う、対象において細胞療法に関連する毒性を発症するリスクを評価する方法が、本明細書において提供される。操作された細胞および/またはその組成物の投与を伴う、白血病またはリンパ腫などの疾患または状態、例えば慢性リンパ性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象の処置のための方法および使用を含む、操作された細胞(例えば、T細胞)および/またはその組成物の方法および使用もまた提供される。一部の態様では、提供される方法および使用は、ある特定の代替の方法と比較して、例えば、特定の群の処置された対象において、改善された奏効および/またはより持続的な奏効もしくは有効性および/または毒性もしくは他の副作用の低下したリスクを達成することができる。一部の局面では、対象、例えば、疾患または障害を有する対象に、操作されたT細胞などの操作された細胞または操作された細胞を含む組成物を投与する方法もまた提供される。一部の局面では、疾患または障害の処置のための操作されたT細胞などの操作された細胞または操作された細胞を含む組成物の使用もまた提供される。一部の局面では、疾患または障害の処置のための医薬の製造のための操作されたT細胞などの操作された細胞または操作された細胞を含む組成物の使用もまた提供される。一部の局面では、疾患もしくは障害の処置での使用のための、または疾患もしくは障害を有する対象への投与のための、操作されたT細胞などの操作された細胞または操作された細胞を含む組成物を投与する方法もまた提供される。一部の局面では、操作されたT細胞などの操作された細胞または操作された細胞を含む組成物の使用は、本明細書に記載される方法のいずれかに従う。
【0213】
本明細書において記載されるキメラ抗原受容体(CAR)などの組換え受容体を発現する操作された細胞またはそれと同じものを含む組成物は、さまざまな治療適用、診断適用および予防適用で有用である。例えば、操作された細胞または操作された細胞を含む組成物は、対象においてさまざまな疾患および障害を処置するのに有用である。そのような方法および使用には、例えば、腫瘍またはがんなどの疾患、状態、または障害を有する対象に、操作された細胞またはそれと同じものを含む組成物の投与を伴う、治療的方法および使用が含まれる。一部の態様では、操作された細胞またはそれと同じものを含む組成物は、疾患または障害の処置をもたらすのに有効な量で投与される。使用には、そのような方法および処置における、ならびにそのような治療方法を行うための医薬の調製における、操作された細胞または組成物の使用が含まれる。一部の態様では、操作された細胞または操作された細胞を含む組成物は、例えば、治療方法にしたがって、対象においてさまざまな疾患および障害を処置するのに使用するためのものである。一部の態様では、方法は、疾患または状態を有するかまたは有することが疑われる対象に、操作された細胞またはそれと同じものを含む組成物を投与することによって行われる。一部の態様では、方法はそれによって対象において疾患または状態または障害を処置する。
【0214】
養子細胞療法用の細胞の投与のための一般的な方法は公知であり、提供される方法および組成物に関連して使用され得る。例えば、養子T細胞療法の方法は、例えば、Gruenberg et alに対する米国特許出願公開第2003/0170238号;Rosenbergに対する米国特許第4,690,915 号;Rosenberg (2011) Nat Rev Clin Oncol. 8(10):577-85)に記載されている。例えば、Themeli et al. (2013) Nat Biotechnol. 31(10): 928-933;Tsukahara et al. (2013) Biochem Biophys Res Commun 438(1): 84-9;Davila et al. (2013) PLoS ONE 8(4): e61338を参照のこと。
【0215】
処置される疾患または状態は、抗原の発現が疾患、状態もしくは障害の病因に関連するおよび/またはそれに関与する、例えば、そのような疾患、状態、または障害を引き起こす、悪化させる、または別の方法で関与する、任意のものであり得る。例示的な疾患および状態としては、悪性腫瘍もしくは細胞の形質転換に関連する疾患もしくは状態(例えば、がん)、自己免疫疾患もしくは炎症性疾患、または例えば細菌病原体、ウイルス病原体または他の病原体によって引き起こされる、感染性疾患を挙げることができる。処置することができる種々の疾患および状態に関連する抗原を含む例示的な抗原は、前記に記載される。特定の態様では、キメラ抗原受容体または遺伝子導入TCRは、疾患または状態に関連する抗原に特異的に結合する。
【0216】
疾患、状態、および障害の中には、充実性腫瘍、血液悪性腫瘍、およびメラノーマを含む、ならびに限局性および転移性の腫瘍を含む、腫瘍、感染性疾患、例えば、ウイルス病原体または他の病原体、例えば、HIV、HCV、HBV、CMV、HPVによる感染、ならびに寄生虫症、ならびに自己免疫疾患および炎症性疾患がある。一部の態様では、疾患、障害または状態は、腫瘍、がん、悪性腫瘍、新生物、または他の増殖性の疾患もしくは障害である。本明細書において提供される方法による処置のためのそのような疾患には、これらに限定されないが、白血病、リンパ腫、例えば、慢性リンパ性白血病(CLL)および小リンパ球性リンパ腫(SLL)が含まれる。
【0217】
一部の態様では、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータス指標は、処置のための対象、例えば、以前の療法で成績不良を有していた対象を評価また選択はするために用いることができる(例えば、Oken et al. (1982) Am J Clin Oncol. 5:649-655を参照)。ECOGスケールのパフォーマンスステータスは、患者の自分の身の回りのことをする能力、日常動作、および身体能力(例えば、歩行、作業など)の観点からの患者の機能性のレベルを説明する。一部の態様では、ECOGパフォーマンスステータス0は、患者が通常の活動を行うことができることを示す。一部の局面では、ECOGパフォーマンスステータス1を有する対象は肉体的な活動は一部制限を示すが、該対象は十分に歩行可能である。一部の局面では、ECOGパフォーマンスステータス2を有する患者は、50%超歩行可能である。場合によっては、ECOGパフォーマンスステータス2を有する対象は、自分の身の回りのことも可能である;例えば、Sorensen et al., (1993) Br J Cancer 67(4) 773-775を参照。ECOGパフォーマンスステータスを反映した基準を以下の表1に記載する:
【0218】
(表1)ECOGパフォーマンスステータス基準
【0219】
一部の態様において受容体(例えば、CAR)によって標的とされる抗原としては、B細胞悪性腫瘍に関連する抗原、例えば、いくつかの公知のB細胞マーカーのいずれかが挙げられる。一部の態様では、抗原は、CD20、CD19、CD22、ROR1、CD45、CD21、CD5、CD33、Igκ、Igλ、CD79a、CD79b、もしくはCD30であるかまたはそれを含む。一部の態様では、抗原はCD19である。
【0220】
一部の態様では、細胞療法、例えば養子T細胞療法は、細胞が、細胞療法を受ける予定である対象からまたはそのような対象に由来する試料から単離されているおよび/または他の方法で調製されている、自家移入(autologous transfer)によって行われる。したがって、一部の局面では、細胞は、処置を必要とする対象、例えば患者に由来し、細胞は、単離および処理後に、同じ対象に投与される。
【0221】
一部の態様では、細胞療法、例えば養子T細胞療法は、細胞が、細胞療法を受ける予定である対象または細胞療法を最終的に受ける対象以外の対象、例えば第1の対象から単離されているおよび/または他の方法で調製されている、同種異系移入(allogeneic transfer)によって行われる。そのような態様では、細胞は次いで、同じ種の異なる対象、例えば第2の対象に投与される。一部の態様では、第1の対象および第2の対象は遺伝学的に同一である。一部の態様では、第1対象および第2の対象は遺伝学的に類似している。一部の態様では、第2の対象は、第1の対象と同じHLAクラスまたはスーパータイプを発現する。
【0222】
細胞は、任意の適切な手段によって、例えば、ボーラス注入によって、注射によって、例えば、静脈内もしくは皮下注射、眼内注射、眼周囲注射、網膜下注射、硝子体内注射、経中隔注射、強膜下注射、脈絡膜内注射、前房内注射、結膜下(subconjectval)注射、結膜下(subconjuntival)注射、テノン嚢下注射、眼球後注射、眼球周囲注射、または後強膜近傍(posterior juxtascleral)送達によって投与することができる。一部の態様では、それらは、非経口、肺内、および鼻腔内、ならびに、局所処置が望ましい場合には病巣内への投与によって投与される。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下への投与が含まれる。一部の態様では、ある特定の用量が、細胞の単回ボーラス投与によって投与される。一部の態様では、それは、例えば、3日以下の期間にわたる、細胞の複数回ボーラス投与によって、または細胞の連続注入投与によって投与される。一部の態様では、細胞用量の投与または任意の追加の療法、例えば、リンパ球枯渇療法、介入療法および/もしくは組み合わせ療法の投与は、外来での送達を介して行われる。
【0223】
疾患の予防または処置では、適切な投与量は、処置される疾患のタイプ、細胞または組換え受容体のタイプ、疾患の重症度および経過、細胞が予防目的または治療目的で投与されるかどうか、以前の治療、対象の病歴および細胞に対する応答、ならびに主治医の判断によって決定され得る。組成物および細胞は、一部の態様では、一度にまたは一連の処置にわたって対象に適切に投与される。
【0224】
一部の態様では、方法は、化学療法剤、例えばコンディショニング化学療法剤の投与を含む。
【0225】
一部の局面における免疫枯渇(例えば、リンパ球枯渇)療法による対象のプレコンディショニングは、養子細胞療法(ACT)の効果を改善することができる。
【0226】
したがって、一部の態様では、方法は、細胞療法の開始前に、プレコンディショニング剤、例えば、リンパ球枯渇または化学療法剤、例えば、シクロホスファミド、フルダラビン、またはそれらの組み合わせを、対象に投与する段階を含む。例えば、対象は、細胞療法の開始の少なくとも2日前、例えば、少なくとも3日、4日、5日、6日、または7日前に、プレコンディショニング剤を投与されてもよい。一部の態様では、対象は、細胞療法の開始前7日以内に、例えば、開始前6日、5日、4日、3日、または2日以内に、プレコンディショニング剤が投与される。
【0227】
一部の態様では、対象は、20 mg/kg~100 mg/kgまたは約20 mg/kg~100 mg/kg、例えば40 mg/kg~80 mg/kgまたは約40 mg/kg~80 mg/kgの用量でのシクロホスファミドによりプレコンディショニングされる。一部の局面では、対象は、60 mg/kgまたは約60 mg/kgのシクロホスファミドでプレコンディショニングされる。一部の態様では、シクロホスファミドは、単一用量で投与されてもよく、または複数用量で投与されてもよく、例えば、毎日、1日おきに、または3日毎に与えられてもよい。一部の態様では、シクロホスファミドは、1日または2日にわたって1日1回投与される。一部の態様では、リンパ球枯渇剤がシクロホスファミドを含む場合、対象は、100 mg/m2~500 mg/m2または約100 mg/m2~500 mg/m2、例えば、200 mg/m2~400 mg/m2もしくは約200 mg/m2~400 mg/m2、または250 mg/m2~350 mg/m2もしくは約250 mg/m2~350 mg/m2(両端の値を含む)の用量でシクロホスファミドが投与される。一部の例では、対象は、約300 mg/m2のシクロホスファミドが投与される。一部の態様では、シクロホスファミドは、単一用量で投与されてもよく、または複数用量で投与されてもよく、例えば、毎日、1日おきに、または3日毎に与えられてもよい。一部の態様では、シクロホスファミドは、例えば1~5日にわたって、例えば3~5日にわたって、毎日投与される。一部の例では、対象は、細胞療法の開始前に、3日にわたって毎日約300 mg/m2のシクロホスファミドが投与される。
【0228】
一部の態様では、リンパ球枯渇剤がフルダラビンを含む場合、対象は、1 mg/m2~100 mg/m2または約1 mg/m2~100 mg/m2、例えば、10 mg/m2~75 mg/m2もしくは約10 mg/m2~75 mg/m2、15 mg/m2~50 mg/m2もしくは約15 mg/m2~50 mg/m2、20 mg/m2~40 mg/m2もしくは約20 mg/m2~40 mg/m2、または24 mg/m2~35 mg/m2もしくは約24 mg/m2~35 mg/m2(両端の値を含む)の用量でフルダラビンが投与される。一部の例では、対象は約30 mg/m2のフルダラビンが投与される。一部の態様では、フルダラビンは、単一用量で投与されてもよく、または複数用量で投与されてもよく、例えば、毎日、1日おきに、または3日毎に与えられてもよい。一部の態様では、フルダラビンは毎日、例えば1~5日にわたって、例えば3~5日にわたって投与される。一部の例では、対象は、細胞療法の開始前に、3日にわたって毎日約30 mg/m2のフルダラビンが投与される。
【0229】
一部の態様では、リンパ球枯渇剤は、作用物質の組み合わせ、例えばシクロホスファミドとフルダラビンとの組み合わせを含む。したがって、作用物質の組み合わせは、任意の用量または投与計画でのシクロホスファミド、例えば前記のシクロホスファミドと、任意の用量または投与計画でのフルダラビン、例えば前記のフルダラビンとを含んでもよい。例えば、一部の局面では、対象は、第1の用量または後続用量の前に、60 mg/kg(~2 g/m2)のシクロホスファミドおよび25 mg/m2フルダラビンの3~5回用量が投与される。
【0230】
細胞の投与後、一部の態様における操作された細胞集団の生物学的活性が、例えば、いくつかの公知の方法のいずれかによって測定される。評価するパラメータとしては、インビボでの、例えばイメージングによる、またはエクスビボでの、例えばELISAもしくはフローサイトメトリーによる、抗原に対する操作されたもしくは天然のT細胞または他の免疫細胞の特異的結合が挙げられる。ある特定の態様では、操作された細胞が標的細胞を破壊する能力が、任意の適切な公知の方法、例えば、Kochenderfer et al., J. Immunotherapy, 32(7): 689-702 (2009)、およびHerman et al. J. Immunological Methods, 285(1): 25-40 (2004)に記載される、細胞傷害アッセイなどを用いて、測定することができる。ある特定の態様では、細胞の生物学的活性は、1つまたは複数のサイトカイン、例えば、CD107a、IFNγ、IL-2、およびTNFの発現および/または分泌をアッセイすることによって測定される。
【0231】
ある特定の態様では、操作された細胞は、その治療的有効性または予防的有効性が増大するように、任意の数の方法でさらに改変される。例えば、集団により発現される操作されたCARまたはTCRは、直接的にまたはリンカーを通じて間接的にいずれかで、ターゲティング部分にコンジュゲートすることができる。化合物、例えばCARまたはTCRをターゲティング部分にコンジュゲートさせる手法は公知である。例えば、Wadwa et al., J. Drug Targeting 3:111(1995)、および米国特許第5,087,616号を参照のこと。一部の態様では、細胞は、組み合わせ処置の一部として、例えば、別の治療介入、例えば、抗体または操作された細胞または受容体または作用物質、例えば細胞傷害剤もしくは治療剤と同時に、またはそれと任意の順序で連続的に投与される。一部の態様における細胞は、1つまたは複数の追加の治療剤と共にまたは別の治療介入に関連して、同時にもしくは任意の順序で連続的に共投与される。一部の状況では、細胞は、細胞集団が1つまたは複数の追加の治療剤の作用を増強させるように、またはその逆も同様となるように、時間的に十分に近接して別の療法と共に共投与される。一部の態様では、細胞は1つまたは複数の追加の治療剤の前に投与される。一部の態様では、細胞は、1つまたは複数の追加の治療剤後に投与される。一部の態様では、1つまたは複数の追加の作用物質としては、例えば持続性を増強させるための、サイトカイン、例えばIL-2などが挙げられる。
【0232】
B. 投与
一部の態様では、ある用量の細胞が、提供される方法にしたがっておよび/または提供される製造物品もしくは組成物により対象に投与される。一部の態様では、用量サイズまたは投与タイミングは、対象における特定の疾患または状態の関数として決定される。場合によっては、提供された説明を踏まえた特定の疾患のための用量サイズまたは投与タイミングは経験的に決定され得る。
【0233】
ある特定の態様では、細胞、または細胞のサブタイプの個々の集団は、約100万~約1000億個の細胞の範囲で、および/または体重1キログラムあたりそのような細胞の量で、例えば、100万~約500億個の細胞(例えば、約500万個の細胞、約2500万個の細胞、約5億個の細胞、約10億個の細胞、約50億個の細胞、約200億個の細胞、約300億個の細胞、約400億個の細胞、または前述の値のいずれか2つによって規定された範囲)、例えば、約1000万~約1000億個の細胞(例えば、約2000万個の細胞、約3000万個の細胞、約4000万個の細胞、約6000万個の細胞、約7000万個の細胞、約8000万個の細胞、約9000万個の細胞、約100億個の細胞、約250億個の細胞、約500億個の細胞、約750億個の細胞、約900億個の細胞、または前述の値のいずれか2つによって規定された範囲)、ならびに一部の場合において、約1億個の細胞~約500億個の細胞(例えば、約1億2000万個の細胞、約2億5000万個の細胞、約3億5000万個の細胞、約4億5000万個の細胞、約6億5000万個の細胞、約8億個の細胞、約9億個の細胞、約30億個の細胞、約300億個の細胞、約450億個の細胞)、またはこれらの範囲の間にある任意の値および/もしくは体重1キログラムあたりこれらの範囲の間にある任意の値で対象に投与される。投与量は、疾患もしくは障害および/または患者および/または他の処置に特有の性質に応じて変化する場合がある。一部の態様では、そのような値は組換え受容体発現細胞の数を指し;他の態様では、それらは、投与されるT細胞またはPBMCまたは総細胞の数を指す。一部の態様では、細胞の数は、生細胞であるそのような細胞の数である。
【0234】
いくつかの態様において、当該用量の細胞は、細胞用量が対象の体表面積もしくは体重に関係しない、または対象の体表面積もしくは体重を基準にしないような、一律用量の細胞または固定用量の細胞である。
【0235】
いくつかの態様において、当該用量の遺伝子操作された細胞は、1×105もしくは約1×105から、5×108もしくは約5×108個の総CAR発現T細胞、1×105もしくは約1×105から、2.5×108もしくは約2.5×108個の総CAR発現T細胞、1×105もしくは約1×105から、1×108もしくは約1×108個の総CAR発現T細胞、1×105もしくは約1×105から、5×107もしくは約5×107個の総CAR発現T細胞、1×105もしくは約1×105から、2.5×107もしくは約2.5×107個の総CAR発現T細胞、1×105もしくは約1×105から、1×107もしくは約1×107個の総CAR発現T細胞、1×105もしくは約1×105から、5×106もしくは約5×106個の総CAR発現T細胞、1×105もしくは約1×105から、2.5×106もしくは約2.5×106個の総CAR発現T細胞、1×105もしくは約1×105から、1×106もしくは約1×106個の総CAR発現T細胞、1×106もしくは約1×106から、5×108もしくは約5×108個の総CAR発現T細胞、1×106もしくは約1×106から、2.5×108もしくは約2.5×108個の総CAR発現T細胞、1×106もしくは約1×106から、1×108もしくは約1×108個の総CAR発現T細胞、1×106もしくは約1×106から、5×107もしくは約5×107個の総CAR発現T細胞、1×106もしくは約1×106から、2.5×107もしくは約2.5×107個の総CAR発現T細胞、1×106もしくは約1×106から、1×107もしくは約1×107個の総CAR発現T細胞、1×106もしくは約1×106から、5×106もしくは約5×106個の総CAR発現T細胞、1×106もしくは約1×106から、2.5×106もしくは約2.5×106個の総CAR発現T細胞、2.5×106もしくは約2.5×106から、5×108もしくは約5×108個の総CAR発現T細胞、2.5×106もしくは約2.5×106から、2.5×108もしくは約2.5×108個の総CAR発現T細胞、2.5×106もしくは約2.5×106から、1×108もしくは約1×108個の総CAR発現T細胞、2.5×106もしくは約2.5×106から、5×107もしくは約5×107個の総CAR発現T細胞、2.5×106もしくは約2.5×106から、2.5×107もしくは約2.5×107個の総CAR発現T細胞、2.5×106もしくは約2.5×106から、1×107もしくは約1×107個の総CAR発現T細胞、2.5×106もしくは約2.5×106から、5×106もしくは約5×106個の総CAR発現T細胞、5×106もしくは約5×106から、5×108もしくは約5×108個の総CAR発現T細胞、5×106もしくは約5×106から、2.5×108もしくは約2.5×108個の総CAR発現T細胞、5×106もしくは約5×106から、1×108もしくは約1×108個の総CAR発現T細胞、5×106もしくは約5×106から、5×107もしくは約5×107個の総CAR発現T細胞、5×106もしくは約5×106から、2.5×107もしくは約2.5×107個の総CAR発現T細胞、5×106もしくは約5×106から、1×107もしくは約1×107個の総CAR発現T細胞、1×107もしくは約1×107から、5×108もしくは約5×108個の総CAR発現T細胞、1×107もしくは約1×107から、2.5×108もしくは約2.5×108個の総CAR発現T細胞、1×107もしくは約1×107から、1×108もしくは約1×108個の総CAR発現T細胞、1×107もしくは約1×107から、5×107もしくは約5×107個の総CAR発現T細胞、1×107もしくは約1×107から、2.5×107もしくは約2.5×107個の総CAR発現T細胞、2.5×107もしくは約2.5×107から、5×108もしくは約5×108個の総CAR発現T細胞、2.5×107もしくは約2.5×107から、2.5×108もしくは約2.5×108個の総CAR発現T細胞、2.5×107もしくは約2.5×107から、1×108もしくは約1×108個の総CAR発現T細胞、2.5×107もしくは約2.5×107から、5×107もしくは約5×107個の総CAR発現T細胞、5×107もしくは約5×107から、5×108もしくは約5×108個の総CAR発現T細胞、5×107もしくは約5×107から、2.5×108もしくは約2.5×108個の総CAR発現T細胞、5×107もしくは約5×107から、1×108もしくは約1×108個の総CAR発現T細胞、1×108もしくは約1×108から、5×108もしくは約5×108個の総CAR発現T細胞、1×108もしくは約1×108から、2.5×108もしくは約2.5×108個の総CAR発現T細胞、2.5×108もしくは約2.5×108から、5×108もしくは約5×108個の総CAR発現T細胞を含む。いくつかの態様において、当該用量の遺伝子操作された細胞は、2.5×107もしくは約2.5×107から、1.5×108もしくは約1.5×108個の総CAR発現T細胞、例えば5×107もしくは約5×107から、1×108もしくは約1×108個の総CAR発現T細胞を含む。いくつかの態様において、細胞の数は、生存細胞、例えば、生存T細胞であるそのような細胞の数である。一部の態様では、細胞の数は、生細胞であるそのような細胞の数である。
【0236】
いくつかの態様において、遺伝子操作された細胞の前記用量は、2.5×107または約2.5×107~1.5×108または約1.5×108個の総CAR発現T細胞、例えば5×107~1×108個の総CAR発現T細胞を含む。いくつかの態様において、遺伝子操作された細胞の前記用量は、少なくとももしくは少なくとも約2.5×107個のCAR発現細胞、少なくとももしくは少なくとも約5×107個のCAR発現細胞または少なくとももしくは少なくとも約1×108個のCAR発現細胞を含む。いくつかの態様において、T細胞の当該用量は2.5×107または約2.5×107個のCAR発現T細胞を含む。いくつかの態様において、T細胞の当該用量は1×108または約1×108個のCAR発現T細胞を含む。いくつかの態様において、T細胞の当該用量は5×107または約5×107個のCAR発現T細胞を含む。いくつかの態様において、細胞の数は、生存細胞であるそのような細胞の数である。
【0237】
いくつかの態様において、この数は、CD3、CD8、またはCD4およびCD8であり、場合によっては組換え受容体も発現する(例えばCAR)細胞の総数に関する。いくつかの態様において、この数は、CD3組換え受容体発現(例えばCAR)細胞の総数に関する。いくつかの態様において、この数は、CD4およびCD8組換え受容体発現(例えばCAR)細胞の総数に関する。いくつかの態様において、細胞の数は、生存細胞であるそのような細胞の数である。
【0238】
いくつかの態様において、細胞療法は、それぞれ両端の値を含む、各1×105または約1×105個~5×108または約5×108個のCD3、CD8、もしくはCD4およびCD8総T細胞またはCD3、CD8、もしくはCD4およびCD8組換え受容体(例えばCAR+)発現細胞、5×105または約5×105個~1×107または約1×107個のCD3、CD8、もしくはCD4およびCD8総T細胞またはCD3、CD8、もしくはCD4およびCD8組換え受容体(例えばCAR+)発現細胞、または1×106もしくは約1×106個~1×107もしくは約1×107個のCD3、CD8、もしくはCD4およびCD8総T細胞またはCD3、CD8、もしくはCD4およびCD8組換え受容体(例えばCAR+)発現細胞の細胞数を含むある用量の投与を含む。いくつかの態様において、細胞療法は、それぞれ両端の値を含む、1×105または約1×105個~5×108または約5×108個の総CD3/CAR、CD8/CARまたはCD4/CD8/CAR細胞、5×105または約5×105個~1×107または約1×107個の総CD3/CAR、CD8/CAR、またはCD4/CD8/CAR細胞、または1×106もしくは約1×106個~1×107もしくは約1×107個の総CD3/CAR、CD8/CAR、もしくはCD4/CD8/CAR細胞の細胞数を含むある用量の投与を含む。いくつかの態様において、細胞の数は、生存細胞であるそのような細胞の数である。
【0239】
いくつかの態様において、遺伝子操作された細胞の前記用量は、2.5×107または約2.5×107個~1.5×108個の総CD3+/CAR、CD8/CAR、またはCD4/CD8/CART細胞、例えば5×107個~1×108個の総CD3+/CAR、CD8/CAR、またはCD4/CD8/CART細胞を含む。いくつかの態様において、遺伝子操作された細胞の前記用量は、少なくともまたは少なくとも約2.5×107個のCD3+/CAR、CD8/CAR、またはCD4/CD8/CART細胞、少なくともまたは少なくとも約5×107個のCD3+/CAR、CD8/CAR、またはCD4/CD8/CART細胞、または少なくとももしくは少なくとも約1×108個のCD3+/CAR、CD8/CAR、もしくはCD4/CD8/CART細胞を含む。いくつかの態様において、遺伝子操作された細胞の前記用量は、2.5×107または約2.5×107個のCD3+/CAR、CD8/CAR、またはCD4/CD8/CART細胞、5×107または約5×107個のCD3+/CAR、CD8/CAR、またはCD4/CD8/CART細胞、または1×108もしくは約1×108個のCD3+/CAR、CD8/CAR、もしくはCD4/CD8/CART細胞を含む。いくつかの態様において、細胞の数は、生存細胞であるそのような細胞の数である。
【0240】
一部の態様では、ある用量のT細胞は、5×107もしくは約5×107個の組換え受容体(例えば、CAR)発現T細胞、または2.5×107もしくは約2.5×107個の組換え受容体(例えば、CAR)発現 CD8+T細胞を含む。一部の態様では、ある用量のT細胞は、1×108もしくは約1×108個の組換え受容体(例えば、CAR)発現T細胞、または5×107もしくは約5×107個の組換え受容体(例えば、CAR)発現 CD8+T細胞を含む。一部の態様では、ある用量のT細胞は、1.5×108もしくは約1.5×108個の組換え受容体(例えば、CAR)発現T細胞、または0.75×108もしくは約0.75×108個の組換え受容体(例えば、CAR)発現 CD8+T細胞を含む。一部の態様では、細胞の数は、生細胞であるそのような細胞の数である。
【0241】
一部の態様では、ある用量のT細胞には、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはCD4+およびCD8+T細胞が含まれる。一部の態様では、例えば、対象がヒトである場合、CD4+およびCD8+T細胞を含む用量中に含む、ある用量のCD8+T細胞は、約2.5×107~1×108個の総組換え受容体(例えば、CAR)発現CD8+細胞、または例えば1:3~3:1のCD4+細胞対CD8+ T細胞の比で、任意で1:1または約1:1で存在する、その画分を含む。
【0242】
一部の態様では、患者は複数用量が投与され、当該用量の各々または全用量は、前述の値のいずれかの範囲内であり得る。一部の態様では、ある用量の細胞は、1×105もしくは約1×105から、5×108もしくは約5×108個の総組換え受容体(例えば、CAR)発現T細胞もしくは総T細胞、1×105もしくは約1×105から、1.5×108もしくは約1.5×108個の総組換え受容体(例えば、CAR)発現T細胞もしくは総T細胞、1×105もしくは約1×105から、1×108もしくは約1×108個の総組換え受容体(例えば、CAR)発現T細胞もしくは総T細胞、5×105もしくは約5×105から、1×107もしくは約1×107個の総組換え受容体(例えば、CAR)発現T細胞もしくは総T細胞、または1×106もしくは約1×106から、1×107もしくは約1×107個の総組換え受容体(例えば、CAR)発現T細胞もしくは総T細胞(各々両端の値を含む)の投与を含む。
【0243】
一部の態様では、ある用量の細胞は、細胞の用量が対象の体表面積または体重に関係しないまたはそれを基準としないような、一律用量または細胞の固定用量の細胞である。
【0244】
一部の態様では、ある用量の遺伝子操作された細胞は、1×105もしくは約1×105から5×108個の総 CAR発現T細胞、1×105もしくは約1×105から2.5×108個の総 CAR発現T細胞、1×105もしくは約1×105から1×108個の総 CAR発現T細胞、1×105もしくは約1×105から5×107個の総 CAR発現T細胞、1×105もしくは約1×105から2.5×107個の総 CAR発現T細胞、1×105もしくは約1×105から1×107個の総 CAR発現T細胞、1×105もしくは約1×105から5×106個の総 CAR発現T細胞、1×105もしくは約1×105から2.5×106個の総 CAR発現T細胞、1×105もしくは約1×105から1×106個の総 CAR発現T細胞、1×106もしくは約1×106から5×108個の総 CAR発現T細胞、1×106もしくは約1×106から2.5×108個の総 CAR発現T細胞、1×106もしくは約1×106から1×108個の総 CAR発現T細胞、1×106もしくは約1×106から5×107個の総 CAR発現T細胞、1×106もしくは約1×106から2.5×107個の総 CAR発現T細胞、1×106もしくは約1×106から1×107個の総 CAR発現T細胞、1×106もしくは約1×106から5×106個の総 CAR発現T細胞、1×106もしくは約1×106から2.5×106個の総 CAR発現T細胞、2.5×106もしくは約2.5×106から5×108個の総 CAR発現T細胞、2.5×106もしくは約2.5×106から2.5×108個の総 CAR発現T細胞、2.5×106もしくは約2.5×106から1×108個の総 CAR発現T細胞、2.5×106もしくは約2.5×106から5×107個の総 CAR発現T細胞、2.5×106もしくは約2.5×106から2.5×107個の総 CAR発現T細胞、2.5×106もしくは約2.5×106から1×107個の総 CAR発現T細胞、2.5×106もしくは約2.5×106から5×106個の総 CAR発現T細胞、5×106もしくは約5×106から5×108個の総 CAR発現T細胞、5×106もしくは約5×106から2.5×108個の総 CAR発現T細胞、5×106もしくは約5×106から1×108個の総 CAR発現T細胞、5×106もしくは約5×106から5×107個の総 CAR発現T細胞、5×106もしくは約5×106から2.5×107個の総 CAR発現T細胞、5×106もしくは約5×106から1×107個の総 CAR発現T細胞、1×107もしくは約1×107から5×108個の総 CAR発現T細胞、1×107もしくは約1×107から2.5×108個の総 CAR発現T細胞、1×107もしくは約1×107から1×108個の総 CAR発現T細胞、1×107もしくは約1×107から5×107個の総 CAR発現T細胞、1×107もしくは約1×107から2.5×107個の総 CAR発現T細胞、2.5×107もしくは約2.5×107から5×108個の総 CAR発現T細胞、2.5×107もしくは約2.5×107から2.5×108個の総 CAR発現T細胞、2.5×107もしくは約2.5×107から1×108個の総 CAR発現T細胞、2.5×107もしくは約2.5×107から5×107個の総 CAR発現T細胞、5×107もしくは約5×107から5×108個の総 CAR発現T細胞、5×107もしくは約5×107から2.5×108個の総 CAR発現T細胞、5×107もしくは約5×107から1×108個の総 CAR発現T細胞、1×108もしくは約1×108から5×108個の総 CAR発現T細胞、1×108もしくは約1×108から2.5×108個の総 CAR発現T細胞、または2.5×108もしくは約2.5×108から5×108個の総 CAR発現T細胞を含む。一部の態様では、細胞の数は、生細胞であるそのような細胞の数である。
【0245】
一部の態様では、ある用量の遺伝子操作された細胞は、2.5×107または約2.5×107から、1.5×108または約1.5×108個の総 CAR発現T細胞、例えば5×107~1×108個の総 CAR発現T細胞を含む。一部の態様では、ある用量の遺伝子操作された細胞は、少なくとも2.5×107もしくは少なくとも約2.5×107個のCAR発現細胞、少なくとも5×107もしくは少なくとも約5×107個のCAR発現細胞、または少なくとも1×108もしくは少なくとも約1×108個のCAR発現細胞を含む。一部の態様では、ある用量のT細胞は、2.5×107または約2.5×107個のCAR発現T細胞を含む。一部の態様では、ある用量のT細胞は、1×108または約1×108個のCAR発現T細胞を含む。一部の態様では、ある用量のT細胞は、5×107または約5×107個のCAR発現T細胞を含む。一部の態様では、細胞の数は、生細胞であるそのような細胞の数である。
【0246】
一部の態様では、数は、CD3+、CD8+、またはCD4+かつCD8+細胞の総数に関連し、場合によっては、組換え受容体発現(例えば、CAR+)細胞の総数にも関連する。一部の態様では、細胞の数は、生細胞であるそのような細胞の数である。
【0247】
一部の態様では、細胞療法は、1×105もしくは約1×105から、5×108もしくは約5×108個のCD3+、CD8+、もしくはCD4+およびCD8+ 総T細胞、またはCD3+、CD8+、もしくはCD4+およびCD8+組換え受容体(例えば、CAR+)発現細胞、5×105もしくは約5×105から、1×107もしくは約1×107個のCD3+、CD8+、もしくはCD4+およびCD8+ 総T細胞、またはCD3+、CD8+、もしくはCD4+およびCD8+組換え受容体(例えば、CAR+)発現細胞、または1×106もしくは約1×106から、1×107もしくは約1×107個のCD3+、CD8+、もしくはCD4+およびCD8+ 総T細胞、またはCD3+、CD8+、もしくはCD4+およびCD8+組換え受容体(例えば、CAR+)発現細胞(各々両端の値を含む)の細胞の数を含む用量の投与を含む。一部の態様では、細胞療法は、1×105もしくは約1×105から、5×108もしくは約5×108個の総 CD3+/CAR+、CD8+/CAR+、もしくはCD4+/CD8+/CAR+細胞、5×105もしくは約5×105から、1×107もしくは約1×107個の総 CD3+/CAR+、CD8+/CAR+、もしくはCD4+/CD8+/CAR+細胞、または1×106もしくは約1×106から、1×107もしくは約1×107個の総 CD3+/CAR+、CD8+/CAR+、もしくはCD4+/CD8+/CAR+細胞(各々両端の値を含む)の細胞の数を含む用量の投与を含む。一部の態様では、細胞の数は、生細胞であるそのような細胞の数である。
【0248】
一部の態様では、ある用量の遺伝子操作された細胞は、2.5×107もしくは約2.5×107から1.5×108個の総 CD3+/CAR+、CD8+/CAR+、またはCD4+/CD8+/CAR+ T細胞、例えば、5×107~1×108個の総 CD3+/CAR+、CD8+/CAR+、またはCD4+/CD8+/CAR+ T細胞を含む。一部の態様では、ある用量の遺伝子操作された細胞は、少なくとも2.5×107もしくは少なくとも約2.5×107個のCD3+/CAR+、CD8+/CAR+、もしくはCD4+/CD8+/CAR+ T細胞、少なくとも5×107もしくは少なくとも約5×107個のCD3+/CAR+、CD8+/CAR+、もしくはCD4+/CD8+/CAR+ T細胞、または少なくとも1×108もしくは少なくとも約1×108個のCD3+/CAR+、CD8+/CAR+、もしくはCD4+/CD8+/CAR+ T細胞を含む。一部の態様では、ある用量の遺伝子操作された細胞は、2.5×107もしくは約2.5×107個のCD3+/CAR+、CD8+/CAR+、もしくはCD4+/CD8+/CAR+ T細胞、5×107もしくは約5×107個のCD3+/CAR+、CD8+/CAR+、もしくはCD4+/CD8+/CAR+ T細胞、または1×108もしくは約1×108個のCD3+/CAR+、CD8+/CAR+、またはCD4+/CD8+/CAR+ T細胞を含む。一部の態様では、細胞の数は、生細胞であるそのような細胞の数である。
【0249】
一部の態様では、ある用量のT細胞は、5×107もしくは約5×107個の組換え受容体(例えば、CAR)発現T細胞、または2.5×107もしくは約2.5×107個の組換え受容体(例えば、CAR)発現 CD8+T細胞を含む。一部の態様では、ある用量のT細胞は、1×108もしくは約1×108個の組換え受容体(例えば、CAR)発現T細胞、または5×107もしくは約5×107個の組換え受容体(例えば、CAR)発現 CD8+T細胞を含む。一部の態様では、ある用量のT細胞は、1.5×108もしくは約1.5×108個の組換え受容体(例えば、CAR)発現T細胞、または0.75×108もしくは約0.75×108個の組換え受容体(例えば、CAR)発現 CD8+T細胞を含む。一部の態様では、細胞の数は、生細胞であるそのような細胞の数である。
【0250】
一部の態様では、患者は複数用量が投与され、当該用量の各々または全用量は、前述の値のいずれかの範囲内であり得る。一部の態様では、ある用量の細胞は、1×105もしくは約1×105から、5×108もしくは約5×108個の総組換え受容体(例えば、CAR)発現T細胞もしくは総T細胞、1×105もしくは約1×105から、1.5×108もしくは約1.5×108個の総組換え受容体(例えば、CAR)発現T細胞もしくは総T細胞、1×105もしくは約1×105から、1×108もしくは約1×108個の総組換え受容体(例えば、CAR)発現T細胞もしくは総T細胞、5×105もしくは約5×105から、1×107もしくは約1×107個の総組換え受容体(例えば、CAR)発現T細胞もしくは総T細胞、または1×106もしくは約1×106から、1×107もしくは約1×107個の総組換え受容体(例えば、CAR)発現T細胞もしくは総T細胞(各々両端の値を含む)の投与を含む。
【0251】
一部の態様では、当該用量のT細胞には、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはCD4+かつCD8+T細胞が含まれる。
【0252】
一部の態様では、ある用量の細胞、例えば、組換え受容体発現T細胞は、単回用量として対象に投与されるか、または2週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、または1年以上の期間内に1回だけ投与される。
【0253】
養子細胞療法の状況では、ある特定の「用量」の投与は、所与の量もしくは数の細胞の単一組成物としての投与、および/または単一の中断されない(uninterrupted)投与、例えば、単回注射または連続注入としての投与を包含し、かつ指定期間にわたる、例えば3日以下にわたる、複数の個別の組成物または注入で提供される、所与の量もしくは数の細胞の分割用量としてのまたは複数の組成物としての投与も包含する。したがって、一部の状況では、当該用量は、単一時点で与えられるかまたは開始される、指定された数の細胞の単回または連続投与である。しかしながら、一部の状況では、当該用量は、3日以下の期間にわたる複数回注射または複数回注入で、例えば、1日1回を3日間もしくは2日間または1日にわたる複数回注入によって投与される。
【0254】
したがって、一部の局面では、当該用量の細胞は単一の薬学的組成物で投与される。一部の態様では、当該用量の細胞は、当該用量の細胞を集合的に含む、複数の組成物で投与される。
【0255】
一部の態様では、当該用量の細胞は、それぞれが当該用量の細胞の一部を含む複数の組成物または溶液、例えば、第1のおよび第2の組成物または溶液、任意でそれより多くの組成物または溶液の投与によって投与されてもよい。一部の局面では、それぞれが細胞の異なる集団および/またはサブタイプを含む、複数の組成物が、任意である特定の期間内に、別々にまたは独立して投与される。例えば、細胞の集団またはサブタイプは、CD8+ T細胞およびCD4+T細胞をそれぞれ、ならびに/またはCD8+濃縮集団およびCD4+濃縮集団をそれぞれ、例えば、それぞれが個別に組換え受容体を発現するように遺伝子操作された細胞を含むCD4+ T細胞および/またはCD8+T細胞を含み得る。一部の態様では、当該用量の投与は、ある用量のCD8+T細胞またはある用量のCD4+T細胞を含む第1の組成物の投与、およびある用量のCD4+T細胞の用量およびCD8+T細胞のもう一方を含む第2の組成物の投与を含む。
【0256】
一部の態様では、当該組成物または用量の投与、例えば、複数の細胞組成物の投与は、細胞組成物の別々の投与を伴う。一部の局面では、別々の投与は、同時に、または任意の順序で連続的に行われる。特定の態様では、別々の投与は、ある用量のCD8+T細胞またはある用量のCD4+T細胞を含む第1の組成物、ならびにある用量のCD4+T細胞およびCD8+T細胞のもう一方を含む第2の組成物を任意の順序で投与することによって、連続的に行われる。一部の態様では、当該用量は第1の組成物および第2の組成物を含み、第1の組成物および第2の組成物は、相互に48時間以内に、例えば、相互に36時間以下または相互に24時間以下の範囲内で投与される。一部の態様では、第1の組成物および第2の組成物は、0もしくは約0から、12もしくは約12時間の間隔で、0もしくは約0から、6もしくは約6時間の間隔で、または0もしくは約0から、2もしくは約2時間の間隔で投与される。一部の態様では、第1の組成物の投与の開始と第2の組成物の投与の開始とは、2もしくは約2時間以下、1もしくは約1時間以下、または30もしくは約30 分以下の間隔で、15もしくは約15 分以下、10もしくは約10 分以下、または5もしくは約5 分以下の間隔で行われる。一部の態様では、第1の組成物の投与の開始および/または終了と第2の組成物の投与の終了および/または開始とは、2もしくは約2時間以下、1もしくは約1時間以下、または30もしくは約30 分以下の間隔で、15もしくは約15 分以下、10もしくは約10 分以下、または5もしくは約5 分以下の間隔で行われる。
【0257】
一部の組成物では、第1の組成物、例えば、前記用量の第1の組成物はCD4+T細胞を含む。一部の組成物では、第1の組成物、例えば、前記用量の第1の組成物はCD8+T細胞を含む。一部の態様では、第1の組成物は、第2の組成物の前に投与される。特定の態様では、CD8+T細胞は、CD4+T細胞の前に投与される。
【0258】
一部の態様では、細胞の当該用量または組成物は、規定された比もしくは目標の比の、組換え受容体(例えば、CAR)を発現するCD4+細胞 対 組換え受容体(例えば、CAR)を発現するCD8+細胞、および/または、規定された比もしくは目標の比のCD4+細胞 対 CD8+細胞を含み、該比は任意でおよそ1:1であるか、またはおよそ1:3~およそ3:1、例えばおよそ1:1である。一部の態様では、細胞の当該用量または組成物は、規定された比もしくは目標の比の、組換え受容体(例えば、CAR)を発現するCD4+細胞 対 組換え受容体(例えば、CAR)を発現するCD8+細胞、および/または、規定された比もしくは目標の比のCD4+細胞 対 CD8+細胞を含み、該比はおよそ1:1である。一部の局面では、目標の比または所望の比の異なる細胞集団(例えば、CD4+:CD8+比またはCAR+CD4+:CAR+CD8+比、例えば1:1)を有する組成物または用量の投与は、集団の一方を含む細胞組成物の投与、次に集団のもう一方を含む別の細胞組成物の投与を伴い、ここで、該投与は、目標の比もしくは所望の比または概ね目標の比もしくは所望の比での投与である。一部の局面では、ある用量または組成物の、規定された比での細胞の投与は、T細胞療法の拡大、持続および/または抗腫瘍活性の改善をもたらす。
【0259】
一部の態様では、細胞の用量または組成物は、規定された比もしくは目標の比の、組換え受容体を発現するCD4+細胞 対 組換え受容体を発現するCD8+細胞、および/または、規定された比もしくは目標の比のCD4+細胞 対 CD8+細胞を含み、該比は任意でおよそ1:1である。一部の局面では、目標の比または所望の比の異なる細胞集団(例えば、CD4+:CD8+比またはCAR+CD4+:CAR+CD8+比、例えば1:1)を有する組成物または用量の投与は、集団の一方を含む細胞組成物の投与、次に集団のもう一方を含む別の細胞組成物の投与を伴い、ここで、該投与は、目標の比もしくは所望の比または概ね目標の比もしくは所望の比での投与である。一部の局面では、ある用量または組成物の、規定された比での細胞の投与は、T細胞療法の拡大、持続および/または抗腫瘍活性の改善をもたらす。
【0260】
特定の態様では、細胞の数および/または濃度は、組換え受容体(例えば、CAR)発現細胞の数、または組換え受容体(例えば、CAR)発現T細胞、またはそのCD3+ T細胞サブセットもしくはそのCD4+および/もしくはCD8+ T細胞サブセットの数を指す。一部の態様では、細胞の数および/または濃度は、生細胞であるそのような細胞の数を指す。
【0261】
一部の態様では、ある用量の遺伝子操作された細胞は、2.5×107または約2.5 ×107個のCD4+ CAR+生細胞および2.5×107または約2.5×107個のCD8+CAR+生細胞の別個の用量を含む、5×107または約5×107個のCD3+ CAR+生細胞である。一部の態様では、ある用量の遺伝子操作された細胞は、5×107または約5×107個のCD4+ CAR+生細胞および5×107または約5×107個のCD8+CAR+生細胞の別個の用量を含む、1×108または約1×108個のCD3+ CAR+生細胞である。一部の態様では、ある用量の遺伝子操作された細胞は、0.75×108または約0.75×108個のCD4+ CAR+生細胞および0.75×108または約0.75×108個のCD8+CAR+生細胞の別個の用量を含む、1.5×108または約1.5×108個のCD3+ CAR+生細胞である。
【0262】
C. 奏効、有効性、および生存
一部の態様では、対象が別の療法に失敗したことがある、別の療法に対して抵抗性になっている、および/または別の療法に対して耐性になっているにもかかわらず、投与は、対象を有効に処置する。一部の態様では、対象が別の療法に対して抵抗性になっているにもかかわらず、投与は、対象を有効に処置する。一部の態様では、対象が別の療法に対して耐性になっているにもかかわらず、投与は、対象を有効に処置する。一部の態様では、本方法により処置された対象の少なくとも30%は完全寛解(CR)を達成し;かつ/または本方法により処置された対象の少なくとも約75%は客観的奏効(OR)を達成する。一部の態様では、本方法により処置された対象の少なくとも35%、40%、45%、50%、55%、もしくは60%以上または少なくとも約35%、40%、45%、50%、55%、もしくは60%以上はCRを達成し、かつ/または少なくとも50%、60%、70%、もしくは80%または少なくとも約50%、60%、70%、もしくは80%は客観的奏効(OR)を達成する。一部の態様では、本方法により処置された、以前のBTK阻害剤(例えば、イブルチニブ) 療法およびベネトクラクスの両方が不成功に終わった対象の少なくとも30%は完全寛解(CR)を達成し;かつ/また本方法により処置された、以前のBTK阻害剤(例えば、イブルチニブ) 療法およびベネトクラクスの両方が不成功に終わった対象の少なくとも約75%は客観的奏効(OR)を達成する。一部の態様では、本方法により処置された、以前のBTK阻害剤(例えば、イブルチニブ)療法およびベネトクラクスの両方が不成功に終わった対象の少なくとも35%、40%、45%、50%、55%、もしくは60%以上または少なくとも約35%、40%、45%、50%、55%、もしくは60%以上はCRを達成し、かつ/または少なくとも50%、60%、70%、もしくは80%または少なくとも約50%、60%、70%、もしくは80%は客観的奏効(OR)を達成する。一部の態様では、有効な処置について評価される基準としては、全奏効率(ORR;場合によっては客観的奏効率としても知られる)、完全奏効(CR;場合によっては完全寛解としても知られる)、不完全な血球数の回復を伴う完全寛解(CRi)、安定(SD)、および/または部分的疾患(partial disease)(PD)が挙げられる。
【0263】
一部の態様では、進行前の奏効の持続期間は、1ヶ月を上回る、2ヶ月を上回る、3ヶ月を上回る、または 6ヶ月以上を上回る。一部の態様では、本明細書において提供される方法により処置された対象の少なくとも35%、40%、45%、50%、55%、または60%以上は、細胞療法の投与後の3ヶ月もしくは約3ヶ月または6ヶ月もしくは約6ヶ月完全寛解(CR;場合によっては完全寛解としても知られる)を達成する。
【0264】
一部の局面では、提供される方法に従う投与、および/または提供される製造物品もしくは組成物を用いた投与は、一般的に、対象における疾患または状態の拡大または負荷量を低減または阻止する。例えば、疾患または状態が腫瘍の場合、前記方法は、一般的に、腫瘍サイズ、容積(bulk)、転移、骨髄中にある芽細胞のパーセント、もしくは分子的に検出可能ながんを低減する、および/または予後もしくは生存もしくは腫瘍負荷量に関連する他の症状を改善する。
【0265】
疾患負荷量は、対象における、または対象の臓器、組織、もしくは体液における、例えば、腫瘍または別の位置、例えば、転移を示す位置の臓器または組織における疾患の細胞の総数を包含してもよい。例えば、腫瘍細胞は、ある特定の血液腫瘍の状況では血液中または骨髄中で検出および/または定量されてもよい。疾患負荷量は、一部の態様では、腫瘍の質量、転移の数もしくは程度、および/または骨髄に存在する芽細胞のパーセントを含んでもよい。
【0266】
一部の態様では、対象は白血病を有する。疾患負荷量の程度は、血液中または骨髄中の残存する白血病を評価することによって確かめることができる。
【0267】
一部の局面では、対象、例えば、CLLがある対象の奏効率はIWCLL(International Workshop on Chronic Lymphocytic Leukemia)奏効判断基準(Hallek, et al., Blood 2008, Jun 15; 111(12): 5446-5456)に基づいている。一部の局面では、対象、例えば、CLLがある対象の奏効率はIWCLL(International Workshop on Chronic Lymphocytic Leukemia)奏効判断基準(Hallek et al., Blood 2018 131 (25): 2745-2760)に基づいている。一部の局面では、これらの判断基準は、以下:完全寛解(CR;場合によっては完全寛解としても知られる)、一部の局面では、免疫表現型検査による末梢血クローンリンパ球の非存在、リンパ節腫脹の非存在、肝腫大または巨脾腫の非存在、全身症状の非存在、および満足のいく血球数を必要とする; 骨髄回復が不完全な完全寛解(complete remission with incomplete marrow recovery)(CRi)、一部の局面では、上記のCRで表されるが、正常な血球数を伴わない; 部分寛解(PR;場合によっては部分奏効としても知られる)、一部の局面では、リンパ球数の≧50%の低下、リンパ節腫脹の≧50%の低下、または肝臓もしくは脾臓における≧50%の低下と末梢血球数の改善で表される; 進行性疾患(PD)、一部の局面では、>5x109/Lまでのリンパ球数の≧50%の上昇、リンパ節腫脹の≧50%の増大、肝臓もしくは脾臓サイズの≧50%の増大、リヒター型形質転換(Richter’s transformation)、またはCLLによる新たな血球減少で表される; および安定、一部の局面では、CR、CRi、PR、またはPDの判断基準を満たしていないと表される、のように表される。
【0268】
一部の態様では、対象は、前記用量の細胞を投与して1ヶ月以内に、対象のリンパ節のサイズが20mm未満もしくは約20mm未満、サイズが10mm未満もしくは約10mm未満、またはサイズが10mm未満もしくは約10mm未満であれば、対象はCRまたはORを示す。
【0269】
一部の態様では、CLLのインデックスクローン(index clone)が対象の骨髄中に(または前記方法に従って処置された対象の50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、もしくはそれより多くの骨髄中に)検出されない。一部の態様では、CLLのインデックスクローンはIgHディープシークエンシングによって評価される。一部の態様では、インデックスクローンは、細胞を投与して1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、4ヶ月後、5ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後、18ヶ月後、もしくは24ヶ月後、または約1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、4ヶ月後、5ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後、18ヶ月後、もしくは24ヶ月後、または少なくとも1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、4ヶ月後、5ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後、18ヶ月後、もしくは24ヶ月後、または少なくとも約1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、4ヶ月後、5ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後、18ヶ月後、もしくは24ヶ月後の時間で評価されない。
【0270】
一部の態様では、例えば、光学顕微鏡により検出された時に、骨髄中に5%を上回るか、もしくはこれに等しい芽細胞、例えば、骨髄中に10%を上回るか、もしくはこれに等しい芽細胞、骨髄中に20%を上回るか、もしくはこれに等しい芽細胞、骨髄中に30%を上回るか、もしくはこれに等しい芽細胞、骨髄中に40%を上回るか、もしくはこれに等しい芽細胞、または骨髄中に50%を上回るか、もしくはこれに等しい芽細胞があれば、対象は形態的疾患を示す。一部の態様では、骨髄中に5%を上回るか、もしくはこれに等しい芽細胞があれば、対象は形態的疾患を示す。一部の態様では、骨髄中に5%未満の芽細胞があれば、対象は完全寛解または臨床寛解を示す。
【0271】
一部の態様では、対象は白血病を有する。疾患負荷量の程度は、血液または骨髄における残存白血病を評価することによって確かめることができる。
【0272】
一部の態様では、対象は、例えば、光学顕微鏡によって検出された時に骨髄に5%超または5%の芽細胞があれば、例えば、骨髄に10%超もしくは10%の芽細胞、骨髄に20%超もしくは20%の芽細胞、骨髄に30%超もしくは30%の芽細胞、骨髄に40%超もしくは40%の芽細胞、または骨髄に50%超もしくは50%の芽細胞があれば形態学的疾患を示す。一部の態様では、骨髄中に5%を上回るか、もしくはこれに等しい芽細胞があれば、対象は形態的疾患を示す。一部の態様では、対象は、骨髄に5%未満の芽細胞があれば完全寛解または臨床寛解を示す。
【0273】
一部の態様では、対象は完全寛解を示すことがあるが、少ない割合の、(光学顕微鏡法により)形態学的に検出不可能な残存白血病細胞が存在する。骨髄に5%未満の芽細胞を示し、かつ分子的に検出可能ながんを示せば、対象は微小残存病変(MRD)を示すといわれる。一部の態様では、分子的に検出可能ながんは、少数の細胞の高感度検出を可能にする様々な任意の分子的技法を用いて評価することができる。一部の局面では、このような技法には、ユニークなIg/T細胞受容体遺伝子再編成、または染色体転座によって生じた融合転写物を確かめることができるPCRアッセイが含まれる。一部の態様では、フローサイトメトリーを用いて、白血病特異的免疫表現型に基づいてがん細胞を特定することができる。一部の態様では、がんの分子的検出によって、100,000個の正常細胞の中で1個の白血病細胞を検出することができる。一部の態様では、例えば、PCRまたはフローサイトメトリーによって、100,000個の細胞の中で1個の白血病細胞が検出されれば、対象は、分子的に検出可能なMRDを示す。一部の態様では、場合によっては、PCRまたはフローサイトメトリー法を用いて白血病細胞が対象において検出できないように、対象の疾患負荷量は、分子的に検出不可能であるか、またはMRD-である。
【0274】
一部の態様では、対象の骨髄において(または前記方法に従って処置された対象の50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、もしくはそれより多くの骨髄において)、白血病、例えばCLLの指標クローンが検出されない。一部の態様では、白血病、例えばCLLの指標クローンはIGHディープシークエンシングによって検出される。一部の態様では、指標クローンは、細胞を投与して1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、4ヶ月後、5ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後、18ヶ月後、もしくは24ヶ月後、または約1ヶ月後、約2ヶ月後、約3ヶ月後、約4ヶ月後、約5ヶ月後、約6ヶ月後、約12ヶ月後、約18ヶ月後、もしくは約24ヶ月後、または少なくとも、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、4ヶ月後、5ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後、18ヶ月後、もしくは24ヶ月後、または少なくとも、約1ヶ月後、約2ヶ月後、約3ヶ月後、約4ヶ月後、約5ヶ月後、約6ヶ月後、約12ヶ月後、約18ヶ月後、もしくは約24ヶ月後の時間で検出されない。
【0275】
一部の局面では、MRDはフローサイトメトリーによって検出される。フローサイトメトリーは、がん細胞があるかどうか骨髄および末梢血試料をモニタリングするのに使用することができる。特定の局面では、フローサイトメトリーは、骨髄におけるがん細胞の存在を検出またはモニタリングするのに用いられる。一部の局面では、フローサイトメトリーによるマルチパラメータ免疫学的検出が、がん細胞を検出するのに用いられる(例えば、Coustan-Smith et al., (1998) Lancet 351:550-554を参照されたい)。一部の局面では、マスサイトメトリーによるマルチパラメータ免疫学的検出が、がん細胞を検出するのに用いられる。一部の例では、がん細胞を検出するのに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、または50のパラメータを使用することができる。検出に用いられる抗原は、検出されているがんに基づいて選択される(Foon and Todd (1986) Blood 68:1-31)。一部の態様では、MRDは、末梢血または骨髄ではCLLのエビデンスがない対象、すなわち、CRまたは残留リンパ節腫脹もしくは脾腫に基づくPRを有する対象として説明される。一部の局面では、MRDは、末梢血のフローサイトメトリーおよび骨髄のIgHVディープシークエンシングを介して測定される。
【0276】
一部の例では、骨髄が骨髄吸引または骨髄生検によって収集され、分析のためにリンパ球が単離される。単離されたリンパ球上にあるエピトープ、例えば、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)、CD3、CD10、CD11c、CD13、CD14、CD33、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD34、CD45、CD56、CD79b、IgM、および/またはKORSA3544を検出するために、蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン、ペリジニンクロロフィルタンパク質、またはビオチン)に結合したモノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体を使用することができる。次いで、複数のエピトープを検出するためには、標識された細胞を、フローサイトメトリー、例えば、マルチパラメータフローサイトメトリー、またはマスサイトメトリーを用いて検出することができる。
【0277】
リンパ系細胞は、光散乱ドットプロットに基づいて同定およびゲーティングし、次いで2回目のゲーティングをして関心対象の免疫表現型的特徴を表している細胞集団を同定することができる。例示的なエピトープを下記の表2に示している。白血病およびリンパ腫についての他の免疫学的分類には、Foon and Todd Blood (1986) 68(1): 1-31によって提供されているいくつかの局面において、MRDのフローサイトメトリー評価は、1種または複数種のCLL免疫表現型(例えば、低レベルの前方/側方散乱;CD3陰性;CD5+;CD14陰性;CD19+;CD23+;CD45+;CD56陰性)を有する生きたリンパ球を定量することによって実現することができる。
【0278】
(表2)例示的な免疫表現型および細胞遺伝学的特徴
+: 症例の>90%で陽性
+/-: 症例の50%超で陽性
-/+: 症例の50%未満で陽性
-: 症例の<10%で陽性
汎-Bマーカー: 例えば、CD19、CD20、CD79a
sIG: 表面免疫グロブリン
cyIg: 細胞質免疫グロブリン
【0279】
一部の局面では、収集されたB細胞の免疫グロブリン重鎖(IGH)遺伝子座のディープシークエンシングを用いて微小残存病変(MRD)を検出することができる。特定のIgG再編成のクローンが存在することは、B細胞悪性腫瘍、例えば、CLLの存在、および/またはその悪性細胞の残存物の存在を検出するためのマーカーとなることができる。一部の局面では、細胞、例えば、B細胞を含む集団またはB細胞を含むと疑われる集団が血液から収集および単離される。一部の局面では、細胞は、骨髄、例えば、骨髄吸引液もしくは骨髄生検材料および/または他の生物学的試料から収集および単離される。一部の局面では、相補性決定領域3(CDR3)のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅が、前記遺伝子座のV領域内およびJ領域内にある高度に保存された配列に対するプライマーを用いて成し遂げられ、前記プライマーは、微小残存病変を評価する目的で細胞のクローン集団を特定するのに用いられ得る。特定の系列の細胞の数に関する情報を提供する、および/または特定の可変鎖、例えば、可変重鎖もしくはその結合部位を発現するもの、例えば、クローン集団を含む、クローン集団を検出するための他の方法、例えば、シングル細胞配列決定アプローチが用いられる場合がある。一部の局面では、IGH DNAは、縮重プライマー、または異なる細胞クローン間で共有される可変鎖の領域を認識するプライマー、例えば、IGH配列のコンセンサスV領域および縮重コンセンサスJ領域を認識するプライマーを用いて増幅される。V領域の例示的な配列は、
である。J領域の例示的な縮重コンセンサス配列は、
である。
【0280】
PCR産物または配列決定結果は、一部の局面では、再編成された対立遺伝子に特異的であり、MRD検出のためのクローンマーカーとして役立つ。CDR3領域のPCR増幅後に、PCR産物を配列決定して、B細胞悪性腫瘍をCAR-T細胞療法、例えば、CD19 CAR-T細胞療法で処置した後のMRDを高感度検出するための対立遺伝子特異的PCR用のプローブとして構築した患者特異的オリゴヌクレオチドを得ることができる。コンセンサスプライマーを用いてPCR産物が生成されない例では、代わりにフレームワーク領域1に対するV領域ファミリー特異的プライマーを使用することができる。
【0281】
一部の局面では、処置後の、PCRによって検出可能な腫瘍細胞、例えば、B細胞悪性腫瘍、例えば、CLLの細胞、例えば、悪性IGH配列またはクローンIGH配列に対応する検出可能なIGH配列の持続性は再発リスクの増加と関連付けられる。一部の局面では、処置後に悪性IGH配列が陰性の患者は(一部の局面では、進行を示すか、もしくは部分奏効を示す、例えば、リンパ節腫脹の持続しか示さない他の判断基準、またはある状況では、疾患もしくは完全奏効の欠如と関連付けられる可能性がある他の判断基準の状況でも)、持続性の悪性IGH配列をもつ患者と比較して、CRもしくは永続性のあるCRもしくは長期の生存期間に入る可能性が高いと考えられ得る。一部の態様では、このような予後およびステージ分類の決定は、例えば、他の臨床症状の分析、例えば、リンパ節サイズまたは他のステージ分類判断基準と比較して、療法を施した後、短期間で悪性細胞の一掃が観察される処置にとって特に関連した重要性をもつ。例えば、このような一部の局面では、他の利用可能なステージ分類または予後アプローチと比較して、骨髄などの試料中に、検出可能なIGHまたは微小残存病変が存在しないことは、応答、または応答の可能性、またはその永続性にとって好ましい読み取り値(readout)であるかもしれない。一部の局面では、MRDからの結果、例えば、IGHディープシークエンシング情報は、さらなる介入またはその欠如を特徴付ける場合がある。例えば、前記方法および他の提供される態様は、いくつかの状況では、悪性IGHが陰性であると思われる対象が、一部の局面では、提供される、ある用量の療法を用いて、これ以上処置されない場合があるか、もしくは悪性IGHが陰性であると思われる対象に、一部の局面では、提供される、ある用量の療法がこれ以上施されないか、または前記対象に、さらに少ない用量もしくは低減した用量が投与されることを提供する。逆に、IGHディープシークエンシングを介してMRDを示した対象は、例えば、同様の用量もしくはさらに多い用量の最初に施された療法を用いて、またはさらなる処置を用いて、さらに処置されることが提供または指定される場合がある。いくつかの局面において、疾患もしくは病態は、初回用量の投与後にも持続し、かつ/または初回用量の投与は、対象の疾患もしくは病態を完全に治すには十分ではない。
【0282】
いくつかの態様において、方法は、腫瘍細胞の数、腫瘍のサイズ、患者の生存期間またはイベントフリー生存期間の長さなどの疾患または病態の負荷を、同等の方法を用いた場合に観察されるであろう低減よりも、大きな程度まで、かつ/またはより長い期間、低減する。この同等の方法では、代替え投与レジメン、例えば、1種もしくは複数種の代替え治療物質を対象に投与するレジメン、ならびに/または提供される方法に従って、かつ/もしくは提供される製造物品もしくは組成物とともに細胞の用量および/もしくはリンパ球枯渇剤を対象に投与することをしないレジメンを用いる。いくつかの態様において、対象における疾患または病態の負荷は、検出、評価、または測定される。いくつかの局面において、疾患負荷は、対象中、または対象の器官、組織、もしくは体液、例えば血液もしくは血清の中の疾患細胞または疾患関連細胞、例えば腫瘍細胞の総数を検出することによって検出され得る。いくつかの局面において、対象の生存率、特定の期間内の生存率、生存の程度、イベントフリー生存もしくは無症状生存または無再発生存の存在または持続期間が評価される。いくつかの態様において、疾患または病態の任意の症状が評価される。いくつかの態様において、疾患または病態の負荷の尺度が指定される。
【0283】
いくつかの態様において、方法による処置後、他の方法と比べて再発確率が低下する。他の方法とは、例えば、1種もしくは複数種の代替え治療物質を対象に投与する方法、ならびに/または提供される方法に従って、かつ/もしくは提供される製造物品もしくは組成物とともに細胞の用量および/もしくはリンパ球枯渇剤を対象に投与することをしない方法である。
【0284】
いくつかの場合において、投与細胞、例えば養子移入された細胞の薬物動態が、投与細胞の利用能、例えば生物学的利用能を評価するために測定される。養子移入された細胞の薬物動態を測定するための方法は、操作された細胞を投与された対象から末梢血を採取する段階および末梢血中の操作された細胞の数または比率を測定する段階を含んでよい。細胞を選択および/または単離するためのアプローチは、キメラ抗原受容体(CAR)に特異的な抗体(例えば、Brentjens et al., Sci. Transl. Med. 2013 Mar; 5(177): 177ra38);タンパク質L(Zheng et al., J. Transl. Med. 2012 Feb; 10:29);CAR中の特定部位に直接導入されるStrep-Tag配列などのエピトープタグ(Strep-Tagに対する結合試薬を用いてCARを直接的に評価する)(Liu et al. (2016) Nature Biotechnology, 34:430; 国際特許出願公開WO2015095895)、およびCARポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体(国際特許出願公開WO2014190273を参照されたい)の使用を含んでよい。いくつかの場合において、外因性マーカー遺伝子が、細胞の検出または選択を可能にするため、また場合によっては細胞自殺を促進するために、操作された細胞を用いる療法とともに使用されてよい。いくつかの場合において、短縮型の上皮増殖因子受容体(EGFRt)を、形質導入された細胞において、(例えばCARまたはTCR)関心対象の導入遺伝子と同時発現させることができる(例えば米国特許第8,802,374号を参照されたい)。EGFRtは、抗体セツキシマブ(エルビタックス(登録商標))または他の治療的な抗EGFR抗体もしくは結合分子によって認識されるエピトープを含む場合があり、このことを利用して、EGFRt構築物および別の組換え受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)を用いて操作された細胞を同定もしくは選択し、かつ/または該受容体を発現する細胞を排除もしくは分離することができる。例えば、米国特許第8,802,374号およびLiu et al., Nature Biotech. 2016 April; 34(4): 430-434を参照されたい。
【0285】
いくつかの態様において、患者から得た生物試料、例えば血液中のCAR+T細胞の数は、例えば細胞の薬物動態を測定するために、細胞療法薬の投与後のある期間に測定することができる。いくつかの態様において、対象の血液中または方法によってそのように処置された対象の大半において検出可能なCAR+T細胞、任意でCAR+CD8+T細胞および/またはCAR+CD4+T細胞の数は、1細胞/μLより多い、5細胞/μLより多い、または10細胞/μLより多い。
【0286】
D. 毒性
いくつかの態様において、提供される方法は、例えば、代替えCAR+T細胞組成物などの代替え細胞療法薬の投与および/または所定の比率で投与されない細胞投与などの別の細胞投与と比べて、毒性、毒性の転帰もしくは症状、毒性を促進する特徴、因子、もしくは特性、例えばサイトカイン放出症候群(CRS)もしくは神経毒性に関連するかもしくはそれを示唆する症状もしくは転帰の比率を低くし、かつ/または程度を低くする特徴を含むようデザインされる。
【0287】
いくつかの態様において、提供される方法は、高い比率または高い可能性の毒性も毒性転帰ももたらさず、言い換えると、例えば他のいくつかの細胞療法と比べて、毒性または毒性転帰、例えば、神経毒性(NT)、サイトカイン放出症候群(CRS)の比率または可能性を低くする。いくつかの態様において、方法は、重度NT(sNT)、重度CRS(sCRS)、マクロファージ活性化症候群、腫瘍崩壊症候群、3またはそれ以上の日数の少なくとも38℃または少なくとも約38℃の熱、および少なくとも20mg/dLまたは少なくとも約20mg/dLのCRP血漿レベルをもたらしもせず、それらのリスクを高めもしない。いくつかの態様において、提供される方法に従って処置された対象の30%、35%、40%、50%、55%、60%もしくはそれ以上より多く、または約30%、35%、40%、50%、55%、60%もしくはそれ以上より多くは、いかなるグレードのCRSもいかなるグレードの神経毒性も示さない。いくつかの態様において、処置された対象の50%以下(例えば、処置された対象の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはそれ以上)が、グレード2超のサイトカイン放出症候群(CRS)および/またはグレード2超の神経毒性を示す。いくつかの態様において、方法に従って処置された対象の少なくとも50%(例えば、処置された対象の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはそれ以上)は、重度の毒性転帰(例えば、重度CRSまたは重度の神経毒性)を示さず;例えば、グレード3以上の神経毒性を示さず、かつ/または重度CRSを示さず;または処置後の一定期間内、例えば、細胞の投与から1週間、2週間、もしくは1ヶ月以内に、そのようにならない。一部の態様では、提供される方法により処置された、以前のBTK阻害剤(例えば、イブルチニブ)療法およびベネトクラクスの両方が不成功に終わった対象の30%、35%、40%、50%、55%、もしくは60%以上より多くまたは約30%、35%、40%、50%、55%、もしくは60%以上より多くは、いずれかグレードのCRSまたはいずれかのグレードの神経毒性を示さない。一部の態様では、処置された対象の50%以下(例えば、以前のBTK阻害剤(例えば、イブルチニブ)療法およびベネトクラクスの両方が不成功に終わった、処置された対象の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%以上)は、グレード2より高いサイトカイン放出症候群(CRS)および/またはグレード2より高い神経毒性を示す。一部の態様では、本方法により処置された、以前のBTK阻害剤(例えば、イブルチニブ)療法およびベネトクラクスの両方が不成功に終わった対象の少なくとも50%(例えば、処置された対象の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%以上)は、重度の毒性アウトカム(例えば、重度CRSまたは重度神経毒性)を示さない、例えば、グレード3以上の神経毒性を示さないおよび/もしくは重度CRSを示さない、または処置後のある特定の期間内、例えば、細胞の投与の1週間、2週間、または1ヶ月以内にそれを示さない。一部の態様では、ある特定の毒性を判定するために評価されるパラメータとしては、有害事象(AE)、治療下で発現した有害事象、用量制限毒性(DLT)、CRS、神経学的事象、およびNTが挙げられる。
【0288】
養子T細胞療法の実施、例えばキメラ抗原受容体を発現するT細胞を用いる治療は、サイトカイン放出症候群および神経毒性などの毒性作用または毒性転帰を引き起こす場合がある。いくつかの例において、このような作用または転帰は、高レベルの循環血中サイトカインと同時に起こり、これらは、観察される毒性の根底にある可能性がある。
【0289】
一部の局面では、毒性アウトカムはサイトカイン放出症候群(CRS)もしくは重度CRS(sCRS)であるか、サイトカイン放出症候群(CRS)もしくは重度CRS(sCRS)に関連するか、またはサイトカイン放出症候群(CRS)もしくは重度CRS(sCRS)を示す。CRS、例えば、sCRSは、場合によっては、養子T細胞療法後に、および他の生物製品が対象に投与された後に起こることがある。Davila et al., Sci Transl Med 6, 224ra25 (2014); Brentjens et al., Sci. Transl. Med. 5, 177ra38 (2013); Grupp et al., N. Engl. J. Med. 368, 1509-1518 (2013);およびKochenderfer et al., Blood 119, 2709-2720 (2012); Xu et al., Cancer Letters 343 (2014) 172-78を参照されたい。
【0290】
典型的に、CRSは、例えば、T細胞、B細胞、NK細胞、単球、および/またはマクロファージによって媒介される悪化した全身免疫応答によって引き起こされる。このような細胞は、多量の炎症メディエーター、例えば、サイトカインおよびケモカインを放出することがある。サイトカインは急性炎症応答を誘発することがある、および/または微小血管漏出、心不全、もしくは死亡の原因となり得る内皮臓器損傷を誘導することがある。重度の、命に関わるCRSは、肺浸潤および肺損傷、腎不全、または播種性血管内凝固につながる可能性がある。他の重度の、命に関わる毒性には、心毒性、呼吸窮迫、神経毒性、および/または肝不全が含まれ得る。
【0291】
CRSは、抗炎症性療法、例えば、抗IL-6療法、例えば、抗IL-6抗体、例えば、トシリズマブ、または抗生物質、または記載されるような薬剤を用いて処置されることがある。CRSのアウトカム、徴候、および症状は公知であり、本明細書に記載のものを含む。一部の態様では、特定のレジメンもしくは投与が、ある特定のCRS関連アウトカム、徴候、もしくは症状をもたらす場合、または特定のレジメンもしくは投与が、ある特定のCRS関連アウトカム、徴候、もしくは症状をもたらさない場合、特定のアウトカム、徴候、および症状、ならびに/またはその数量もしくは程度が指定されることがある。
【0292】
CAR発現細胞の投与の状況では、CRSは、典型的には、CARを発現する細胞を注入して6~20日後に起こる。Xu et al., Cancer Letters 343 (2014) 172-78を参照されたい。場合によっては、CRSは、CAR T細胞の注入後、6日未満または20日を超える時点で起こる。CRSの発生率およびタイミングは注入時のベースラインサイトカインレベルまたは腫瘍負荷量と関係する場合がある。一般的に、CRSは、インターフェロン(IFN)-γ、腫瘍壊死因子(TNF)-α、および/またはインターロイキン(IL)-2の血清レベルの上昇を伴う。CRSにおいて迅速に誘導され得る他のサイトカインは、IL-1β、IL-6、IL-8、およびIL-10である。
【0293】
例示的なCRS関連アウトカムには、発熱、硬直、悪寒、低血圧、呼吸困難、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、脳症、ALT/ASTの上昇、腎不全、心臓障害、低酸素、神経障害、および死亡が含まれる。神経学的合併症には、せん妄、発作様活動、錯乱、喚語困難(word-finding difficulty)、失語症、および/または昏迷状態が含まれる。他のCRS関連アウトカムには、疲労、悪心、頭痛、発作、頻拍、筋肉痛、発疹、急性血管漏出症候群、肝機能低下、および腎不全が含まれる。一部の局面では、CRSは、1種類または複数種の因子、例えば、血清フェリチン、d-ダイマー、アミノトランスフェラーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、およびトリグリセリドの増加に関連するか、または低フィブリノゲン血症もしくは肝脾腫に関連する。CRSに関連する他の例示的な徴候または症状には、血行動態不安定、発熱性好中球減少、血清中C反応性タンパク質(CRP)の増加、凝固パラメーター(例えば、国際標準比(INR)、プロトロンビン時間(PTI)、および/もしくはフィブリノーゲン)の変化、心臓機能および他の器官機能の変化、ならびに/または絶対好中球数(ANC)が含まれる。
【0294】
一部の態様では、CRS関連アウトカムには、持続的な発熱、例えば、2日以上、例えば、3日以上、例えば、4日以上にわたる、または少なくとも3日間連続した、指定された温度の発熱、例えば、38℃または約38℃を超える発熱;38℃または約38℃を超える発熱;サイトカインの上昇、例えば、少なくとも2種類のサイトカイン(例えば、インターフェロンγ(IFNγ)、GM-CSF、IL-6、IL-10、Flt-3L、フラクタルカイン、およびIL-5、ならびに/もしくは腫瘍壊死因子(TNFα)からなる群のうちの少なくとも2つ)の処置前レベルと比較した最大倍率変化、例えば、少なくとも75もしくは少なくとも約75の最大倍率変化、またはこのようなサイトカインの少なくとも1つの最大倍率変化、例えば、少なくとも250もしくは少なくとも約250の最大倍率変化;ならびに/あるいは毒性の少なくとも1つの臨床徴候、例えば、低血圧(例えば、少なくとも1種類の静脈内血管作動性昇圧薬(intravenous vasoactive pressor)によって測定した時);低酸素(例えば、90%未満または約90%未満の血漿酸素(PO2)レベル);ならびに/あるいは1つまたは複数の神経障害(精神状態変化、鈍麻、および発作を含む)の1つまたは複数が含まれる。
【0295】
例示的なCRS関連アウトカムには、サイトカインおよびケモカイン、ならびにCRSに関連する他の因子を含む1種類または複数種の因子の増大した、または高い血清レベルが含まれる。さらに、例示的なアウトカムには、このような因子の1つまたは複数の合成または分泌の増加が含まれる。このような合成または分泌は、T細胞、またはT細胞と相互作用する細胞、例えば、自然免疫細胞もしくはB細胞によるものでもよい。
【0296】
一部の態様では、CRS関連血清因子またはCRS関連アウトカムには、インターフェロンγ(IFN-γ)、TNF-a、IL-1β、IL-2、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、sIL-2Ra、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)-1、腫瘍壊死因子α(TNFα)、IL-6、およびIL-10、IL-1β、IL-8、IL-2、MIP-1、Flt-3L、フラクタルカイン、および/またはIL-5を含む、炎症性サイトカインおよび/またはケモカインが含まれる。一部の態様では、前記因子またはアウトカムにはC反応性タンパク質(CRP)が含まれる。CRPはCRSの早期に、かつ容易に測定可能な危険因子であることに加えて、細胞拡大増殖マーカーでもある。一部の態様では、高レベル、例えば、≧15mg/dLのCRPがあると測定された対象はCRSを有する。一部の態様では、高レベルのCRPがあると測定された対象はCRSを有さない。一部の態様では、CRSの測定は、CRPおよびCRSを示す別の因子の測定を含む。
【0297】
どの患者が、sCRSを発症するリスクがある可能性が高いかを予測するために、CRSの発症と相関するように思われるCRS判断基準が開発されている(Davilla et al. Science translational medicine. 2014;6(224):224ra25を参照されたい)。因子には、発熱、低酸素、低血圧、神経変化、炎症性サイトカイン、例えば、処置によって誘導される上昇が処置前の腫瘍負荷量およびsCRS症状とよい相関を示すことができる7種類一組のサイトカイン(IFNγ、IL-5、IL-6、IL-10、Flt-3L、フラクタルカイン、およびGM-CSF)の血清レベルの上昇が含まれる。CRSの診断および管理に関する他のガイドラインは公知である(例えば、Lee et al, Blood. 2014;124(2):188-95を参照されたい)。一部の態様では、CRSグレードを反映する判断基準は、以下の表3に詳述した判断基準である。
【0298】
(表3)CRSの例示的なグレード分類基準
【0299】
いくつかの態様において、重度CRSまたはグレード3以上のCRS、例えばグレード4以上に関連する転帰には、以下のうちの1つまたは複数が含まれる:持続的な発熱、例えば、2もしくはそれ以上、例えば3もしくはそれ以上、例えば4もしくはそれ以上の日数の、または少なくとも3日連続の、指定温度、例えば38℃超または約38℃超の発熱;38℃超または約38℃超の発熱;サイトカインの増加、例えば、少なくとも2種のサイトカイン(例えば、インターフェロンγ(IFNγ)、GM-CSF、IL-6、IL-10、Flt-3L、フラクタルカイン、およびIL-5、ならびに/もしくは腫瘍壊死因子α(TNFα)からなる群に属する少なくとも2種)の処置前レベルと比べて、例えば少なくとも75もしくは少なくとも約75の最大変化率、またはそのようなサイトカインのうちの少なくとも1種について、例えば少なくとも250もしくは少なくとも約250の最大変化率;ならびに/あるいは毒性についての少なくとも1種の臨床徴候、例えば、低血圧(例えば、少なくとも1種の静脈内血管作動性昇圧薬を用いて測定した場合);低酸素(例えば90%未満または約90%未満の血漿酸素(PO2)レベル);ならびに/あるいは1種または複数種の神経障害(精神状態の変化、鈍麻、および発作を含む)。いくつかの態様において、重度CRSには、集中治療室(ICU)での管理または看護を必要とするCRSが含まれる。
【0300】
いくつかの態様において、CRS、例えば重度CRSは、(1)持続的な発熱(少なくとも3日間の少なくとも38℃の発熱)および(2)少なくとも20mg/dLまたは少なくとも約20mg/dLのCRP血清レベルの組合せを含む。いくつかの態様において、CRSは、2種もしくはそれ以上の血管収縮薬を必要とする低血圧または機械的人工換気を必要とする呼吸不全を含む。いくつかの態様において、血管収縮薬の投与量は、2回目または後続の投与において増やされる。
【0301】
いくつかの態様において、重度CRSまたはグレード3のCRSは、アラニンアミノトランスフェラーゼの増加、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの増加、悪寒、発熱性好中球減少、頭痛、左室機能不全、脳障害、水頭症、および/または振戦を含む。
【0302】
様々なアウトカムを測定または検出するための方法を指定することができる。
【0303】
一部の局面では、毒性アウトカムは神経毒性であるか、または神経毒性に関連する。一部の態様では、神経毒性の臨床リスクに関連する症状には、錯乱、せん妄、失語症、表出性失語、鈍麻、ミオクローヌス、嗜眠、精神状態変化、痙攣、発作様活動、発作(任意で、脳波[EEG]によって確認される)、高レベルのβアミロイド(Aβ)、高レベルのグルタミン酸、および高レベルの酸素ラジカルが含まれる。一部の態様では、神経毒性は(例えば、グレード1~5スケールを用いて)重症度に基づいてグレード分類される(例えば、Guido Cavaletti & Paola Marmiroli Nature Reviews Neurology 6, 657-666 (December 2010); National Cancer Institute-Common Toxicity Criteria version 4.03 (NCI-CTCAE v4.03)を参照されたい)。
【0304】
場合によっては、神経症状はsCRSの最初期の症状でもよい。一部の態様では、神経症状は細胞療法注入の5~7日後に始まることが認められる。一部の態様では、神経変化の持続期間は3~19日でもよい。場合によっては、sCRSの他の症状が消散した後に神経変化の回復が起こる。一部の態様では、神経変化の消散の時間または程度は、抗IL-6および/またはステロイドを用いた処置によって早まらない。
【0305】
一部の態様では、対象は、投与後に、1)末梢運動神経の炎症または変性を含む末梢性運動ニューロパチーの症状;2)末梢感覚神経の炎症または変性を含む末梢性感覚ニューロパチーの症状、ジセステジア、例えば、異常な感覚および不快な感覚の原因となる感覚認知のゆがみ、神経痛、例えば、神経もしくは神経群に沿った激しく痛い感覚、ならびに/またはパレステジア、例えば、刺激の非存在下での刺痛、しびれ、圧力、冷感、および温感の異常な皮膚感覚の原因となる感覚ニューロンの機能障害の中から、セルフケア(例えば、入浴、衣服の着脱、食事、トイレの使用、服薬)を制限する症状を示すのであれば、細胞療法またはその用量の細胞の投与に応答または付随して「重度の神経毒性」を発症しているとみなされる。一部の態様では、重度の神経毒性は、グレードが3以上の神経毒性、例えば、表4に示した神経毒性を含む。
【0306】
(表4)神経毒性の例示的なグレード分類基準
【0307】
いくつかの態様において、方法は、他の方法と比べて、CRSまたは神経毒性に関連する症状を減らす。いくつかの局面において、提供される方法は、他の方法と比べて、重度CRSまたはグレード3以上のCRSに関連する症状、転帰、または因子を含む、CRSに関連する症状、転帰、または因子を減らす。例えば、本発明の方法に従って処置された対象は、説明した、例えば表3で説明したいずれかのようなCRS、例えば重度CRSまたはグレード3以上のCRSについての検出可能な症状、転帰、もしくは因子を持たない場合があるか、かつ/または症状、転帰、もしくは因子が減少している場合がある。いくつかの態様において、本発明の方法に従って処置された対象は、他の方法によって処置された対象と比べて、神経毒性の症状が減少している場合があり、該症状は、例えば、四肢の衰弱または麻痺;記憶、視力、および/または知力の低下;制御できない強迫行動および/または強制行動;妄想;頭痛;運動制御の低下、認知衰退、および自律神経系機能障害を含む認知および行動に関する問題;ならびに性機能不全である。いくつかの態様において、本発明の方法に従って処置された対象は、末梢性運動ニューロパチー、末梢性感覚ニューロパチー、異常感覚、神経痛、または知覚異常に関連する症状が減少している場合がある。
【0308】
いくつかの態様において、方法は、神経系および/または脳に対する損傷、例えばニューロン死を含む、神経毒性に関連する転帰を減らす。いくつかの局面において、方法は、神経毒性に関連する因子、例えば、βアミロイド(Aβ)、グルタミン酸、および酸素ラジカルのレベルを低下させる。
【0309】
いくつかの態様において、毒性転帰は、用量制限毒性(DLT)である。いくつかの態様において、毒性転帰は、用量制限毒性である。いくつかの態様において、毒性転帰は、用量制限毒性が存在しないことである。いくつかの態様において、用量制限毒性(DLT)は、特定の毒性を評価するための任意の公知または公開された指針によって評価した場合の、グレード3以上の任意の毒性と定義される。このような指針は、例えば前述のいずれかであり、国立がん研究所(NCI)有害事象共通用語規準(CTCAE)バージョン4.0を含む。
【0310】
一部の局面では、DLTは、下記の例外に挙げたもの以外の、任意の治療下で発現したグレード4もしくは5のAE;下記の例外に挙げたもの以外の、7日以内にグレード≦2まで回復しない任意の治療下で発現したグレード3のAE;3日以内にグレード≦2まで回復しない任意の治療下で発現したグレード3の発作;および(操作された細胞の投与に関連する予測されるリスクである)B細胞形成不全を除く、任意の治療下で発現したグレード ≧3の自己免疫毒性として説明され得る;下記に挙げた例外はDLTとみなされない:操作された細胞の投与と明らかに関連しない(例えば、自動車事故)、任意の治療下で発現したAE;8時間でグレード≦2に戻る、グレード4の注入による毒性;≦2週間にわたるグレード3または4の発熱または発熱性好中球減少症;CRSの症状と見なされるグレード4の高トランスアミナーゼ血症;≦2週間にわたるグレード3の高トランスアミナーゼ血症;≦2週間にわたる骨髄区画でのT細胞拡大によるグレード3の骨痛;≦7日間にわたるグレード3または4のTLS;≦72時間でグレード<3に回復すみなポートのための単回昇圧剤を必要とするグレード3または4の低血圧(他の CRS症状なし);≦72時間でグレード<3に回復するサポートのための単回昇圧剤(挿管を必要としない)を必要とする低血圧だけを伴うグレード3または4のCRS、もしくはグレード4の高トランスアミナーゼ血症に基づく重症度を伴うグレード3のCRS;グレード≧3の事象の始まりから≦14日でベースラインまで回復する≦7日間にわたるグレード3または4の脳症;グレード3の悪寒;グレード3または 4のリンパ球減少;グレード3 または4の白血球減少;補充によって回復するグレード3または4の無症候性電解質異常;グレード3または4の血小板減少;グレード3または4の貧血;ならびにグレード3または4のB細胞形成不全および低ガンマグロブリン血症。
【0311】
いくつかの態様において、提供される方法に従って、かつ/または提供される製造物品もしくは組成物によって、T細胞のある用量を投与した際に観察される、毒性、例えばCRSもしくは神経毒性または重度のCRSもしくは神経毒性、例えばグレード3以上のCRSもしくは神経毒性を発症する比率、リスク、または可能性が低いことから、外来患者扱いで細胞療法薬を投与することが可能になる。いくつかの態様において、提供される方法に従い、かつ/または提供される製造物品もしくは組成物を用いる、細胞療法薬、例えば、T細胞(例えばCAR+T細胞)の当該用量の投与は、外来患者扱いで実施されるか、または対象の入院、例えば一晩の滞在を要する入院を必要としない。
【0312】
いくつかの局面において、外来患者扱いで処置される対象を含む、提供される方法に従って、かつ/または提供される製造物品もしくは組成物によって、細胞療法薬、例えば、T細胞(例えばCAR+T細胞)の当該用量を投与される対象は、該対象が毒性、例えば神経毒性もしくはCRSの徴候もしくは症状を示さない限りまたは示すまで、該細胞用量の投与の前または投与とともに、任意の毒性を処置するための介入を受けない。毒性を処置、遅延、減弱、または改善するための例示的な作用物質は、セクションIIIにおいて説明する。
【0313】
いくつかの態様において、外来患者扱いで処置される対象を含む、細胞療法薬、例えば、T細胞(例えばCAR+T細胞)のある用量を投与される対象が発熱を示す場合、該対象は、熱を下げるための治療剤を与えられるか、または摂取もしくは投与するよう指示される。いくつかの態様において、対象の発熱は、特定の閾値温度もしくは閾値レベルまたはそれより高い(またはそう測定される)該対象の体温と特徴付けられる。いくつかの局面において、閾値温度は、少なくとも低度の発熱、少なくとも中度の発熱、および/または少なくとも高度の発熱に関連しているものである。いくつかの態様において、閾値温度は、特定の温度または範囲である。例えば、閾値温度は、38、39、40、41、もしくは42℃または約38、39、40、41、もしくは42℃、あるいは少なくとも38、39、40、41、もしくは42℃または少なくとも約38、39、40、41、もしくは42℃であってよく、かつ/あるいは38℃もしくは約38℃から、39℃もしくは約39℃の範囲、39℃もしくは約39℃から、40℃もしくは約40℃の範囲、40℃もしくは約40℃から、41℃もしくは約41℃の範囲、または41℃もしくは約41℃から、42℃もしくは約42℃の範囲であってよい。
【0314】
いくつかの態様において、熱を下げるように設計された治療は、解熱剤を用いる治療を含む。解熱剤は、熱を下げる任意の作用物質、例えば、化合物、組成物、または成分、例として、NSAID(イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、およびニメスリドなど)、サリチル酸類、例えば、アスピリン、サリチル酸コリン、サリチル酸マグネシウム、およびサリチル酸ナトリウム、パラセタモール、アセトアミノフェン、メタミゾール、ナブメトン、フェナキソン、アンチピリン、解熱薬など解熱効果を有することが公知である任意の数の作用物質のうちの1つを含んでよい。いくつかの態様において、解熱剤はアセトアミノフェンである。いくつかの態様において、アセトアミノフェンは、4時間ごとを上限として、12.5mg/kgの用量で経口または静脈内投与することができる。いくつかの態様において、解熱剤は、イブプロフェンもしくはアスピリンであるか、またはイブプロフェンもしくはアスピリンを含む。
【0315】
いくつかの態様において、発熱が持続性の発熱である場合、以下のセクションIIIにおいて説明するいずれかのような、毒性を処置するための代替え治療剤が対象に投与される。外来患者扱いで処置される対象について、持続性の発熱を有し、かつ/または有すると判定される場合、該対象は病院に戻るように指示される。いくつかの態様において、対象は、次の場合に、持続性の発熱を有し、かつ/または有すると判定されるかもしくはみなされる:解熱剤、例えば、NSAIDまたはサリチル酸類、例えば、イブプロフェン、アセトアミノフェン、またはアスピリンを用いる治療のような、熱を下げるように設計された治療などの指定治療の後に、対象が、妥当な閾値温度またはそれ以上の熱を示し、かつその際、該対象の熱もしくは体温が下がらないか、または指定の量もしくは指定の量より多くは下がらない(例えば、1℃より多くは下がらない。一般に、約0.5℃、0.4℃、0.3℃、もしくは0.2℃、または約0.5℃、0.4℃、0.3℃、もしくは0.2℃より多くは変動しない)、場合。例えば、対象は、対象が、少なくとも38もしくは39℃または少なくとも約38または39℃の熱を示すか、または示すと判定され、この熱が、アセトアミノフェンなどの解熱剤を用いる治療後でさえ、6時間にわたって、8時間にわたって、もしくは12時間にわたって、または24時間にわたって、0.5℃、0.4℃、0.3℃、もしくは0.2℃、または約0.5℃、0.4℃、0.3℃、もしくは0.2℃下がらないか;あるいは0.5℃、0.4℃、0.3℃、もしくは0.2℃より多く、または約0.5℃、0.4℃、0.3℃、もしくは0.2℃より多く下がらないか、あるいは1%、2%、3%、4%、もしくは5%、または約1%、2%、3%、4%、もしくは5%下がらない場合、持続性の発熱を有するとみなされる。いくつかの態様において、解熱剤の投与量は、対象が、熱または特定のタイプの熱、例えば細菌感染もしくはウイルス感染、例えば限局性感染もしくは全身感染に付随する熱を下げる際などに通常有効な投与量である。
【0316】
いくつかの態様において、対象は、対象が妥当な閾値温度またはそれ以上の熱を示し、かつその際、該対象の熱または体温が、約1℃または約1℃より多くは変動せず、一般に、約0.5℃、0.4℃、0.3℃、もしくは0.2℃、または約0.5℃、0.4℃、0.3℃、もしくは0.2℃より多くは変動しない場合、持続性の発熱を有し、かつ/または有すると判定されるかもしくはみなされる。通常、このように特定の量より多い変動または特定の量の変動がないことは、所定の期間にわたって測定される(例えば、24時間、12時間、8時間、6時間、3時間、または1時間の期間にわたる。発熱の最初の徴候から、または指定された閾値を体温が最初に上回ってから測定されてよい)。例えば、いくつかの態様において、対象は、対象が、少なくとも38もしくは39℃または少なくとも約38または39℃あるいは少なくとも38もしくは39℃または少なくとも約38または39℃の熱を示し、体温が、6時間にわたって、8時間にわたって、もしくは12時間にわたって、または24時間にわたって、0.5℃、0.4℃、0.3℃、もしくは0.2℃より多く、または約0.5℃、0.4℃、0.3℃、もしくは0.2℃より多くは変動しない場合、持続性の発熱を示すとみなされるか、または判定される。
【0317】
いくつかの態様において、発熱は、持続性の発熱である;いくつかの局面において、対象は、持続性の発熱を有すると判定された時点に、例えば、そのような判定から、または毒性を誘発する可能性がある初期療法、例えば細胞療法、例えば、CAR+T細胞などのT細胞の投与後の最初のそのような判定から、1、2、3、4、5、6、またはそれ以下の時間内に、処置される。
【0318】
いくつかの態様において、毒性を処置するための1種または複数種の介入または作用物質、例えば毒性を標的とする治療薬は、対象が、例えば、前述の態様のいずれかに従って測定した場合に持続性の発熱を示すと判定または確認(例えば、最初に判定または確認)される時点またはその直後に、施される。いくつかの態様において、1種または複数種の毒性標的治療薬は、そのような確認または判定から一定期間内に、例えば、それから30分、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、または8時間以内に投与される。
【0319】
III. 毒性症状の処置または軽快のための介入または作用物質および併用療法
いくつかの態様において、提供される方法および製造物品は、毒性の発現の処置、予防、遅延または減弱のための1つもしくは複数の作用物質または処置と関連して使用され得るか、あるいは該作用物質または処置を伴い得るか、あるいは含み得る。いくつかの例では、毒性の発現を、処置する、予防する、遅延させる、もしくは減弱させることができる作用物質または他の処置が、遺伝子操作された細胞を含む治療用細胞組成物の投与の前に、および/または該投与と並行して投与される。
【0320】
いくつかの態様において、毒性の発現を、処置する、予防する、遅延させる、もしくは減弱させることができる作用物質(例えば毒性ターゲティング剤)または処置は、ステロイドであるか、サイトカイン受容体(例えば、IL-6受容体、CD122受容体(IL-2Rベータ受容体)、もしくはCCR2)の拮抗薬もしくは阻害剤であるか、またはサイトカイン(例えば、IL-6、MCP-1、IL-10、IFN-γ、IL-8、もしくはIL-18)の阻害剤である。いくつかの態様において、作用物質は、サイトカイン受容体および/またはサイトカイン、例えばTGF-βの作動薬である。いくつかの態様において、作用物質、例えば作動薬、拮抗薬、または阻害剤は、抗体もしくは抗原結合断片、低分子、タンパク質もしくはペプチド、または核酸である。
【0321】
いくつかの態様において、輸液ボーラスが介入として、例えばCRSと関連する低血圧を処置するために使用され得る。いくつかの態様において、目標ヘマトクリットレベルは>24%である。いくつかの態様において、介入は、血液または血漿を濾過する吸収性樹脂技術の使用を含む。いくつかの場合において、介入は、透析、プラズマフェレシス、または同様の技術を含む。いくつかの態様において、昇圧薬またはアセトアミノフェンが使用され得る。
【0322】
いくつかの態様において、作用物質は、当該療法(例えば、養子細胞療法用の細胞)と逐次、間欠的、もしくは同時に、または同じ組成物で、投与され得る。例えば、作用物質は、免疫療法および/または細胞療法の投与前、投与中、投与と同時、または投与後に投与され得る。
【0323】
いくつかの態様において、作用物質は、本明細書に記載される時点で、提供される方法に従って、および/または提供される製造物品もしくは組成物で投与される。いくつかの態様において、毒性ターゲティング剤は、例えば免疫療法および/または細胞療法の開始後3、4、5、6、7、8、9、もしくは10日未満または3、4、5、6、7、8、9、もしくは10日以下の範囲内の時点で投与される。いくつかの態様において、毒性ターゲティング剤は、免疫療法および/または細胞療法の投与の開始後、1もしくは約1日以内、2もしくは約2日以内、または3もしくは約3日以内に投与される。
【0324】
いくつかの態様において、作用物質(例えば毒性ターゲティング剤)は、免疫療法および/または細胞療法の投与の開始後、対象がグレード2以上のCRSまたはグレード2以上の神経毒性を示していない時点で、対象に投与される。いくつかの局面において、毒性ターゲティング剤は、免疫療法および/または細胞療法の投与の開始後、対象が重度のCRSまたは重度の神経毒性を示していない時点で投与される。したがって、免疫療法および/または細胞療法の投与の開始と毒性ターゲティング剤の投与の開始の間において、対象は、グレード2以上のCRS、例えば重度のCRSを示しておらず、かつ/またはグレード2以上の神経毒性、例えば重度の神経毒性を示していない対象である。
【0325】
毒性、例えば重度のCRS(sCRS)、または重度の神経毒性の処置または軽快のための介入の非限定的な例を表5に示す。いくつかの態様において、介入は、トシリズマブまたは記載の他の毒性ターゲティング剤を含み、38℃超もしくは約38℃、または39℃超もしくは約39℃超の持続性の発熱または持続的な発熱が対象にみられる時点であり得る。いくつかの態様において、発熱は、対象において介入前、10時間より長く、12時間より長く、16時間より長く、または24時間より長く持続している。
【0326】
(表5)例示的な介入
【0327】
いくつかの場合において、作用物質または療法または介入(例えば毒性ターゲティング剤)は、単独で投与されるか、または組成物または製剤(例えば、本明細書に記載される薬学的組成物または製剤)の一部として投与される。したがって、単独でまたは薬学的組成物の一部としての作用物質は、静脈内もしくは経口投与され得るか、またはいずれかの他の許容される公知の投与経路によって、または本明細書に記載されるとおりに投与され得る。
【0328】
いくつかの態様において、投与レジメンにおける作用物質の投与量または投与頻度は、グレード2以上のCRSもしくは神経毒性、例えば重度のもの、例えばグレード3以上のCRS、または重度のもの、例えばグレード3以上の神経毒性、を発現したか、あるいは診断された後(例えば、グレード3以上のCRSまたは神経毒性の身体的徴候または症状が現れた後)に対象が該作用物質で処置される方法における該作用物質の投与量またはその頻度と比べて少ない。いくつかの態様において、投与レジメンにおける作用物質の投与量または投与頻度は、免疫療法および/または細胞療法の投与後、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間またはそれ以上より長く、対象がCRSまたは神経毒性について処置される方法における作用物質の投与量またはその頻度と比べて少ない。いくつかの態様において、1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍もしくはそれ以上より大きく、または約1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍もしくはそれ以上より大きく、投与量を少なくする。いくつかの態様において、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%もしくはそれ以上より大きく、または約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%もしくはそれ以上投与量を少なくする。いくつかの態様において、投与頻度を少なくする、例えば1日の投与回数を少なくするか、または投与日数を少なくする。
【0329】
A. ステロイド
いくつかの態様において、免疫療法および/または細胞療法に対する毒性の発現またはそのリスクを処置する、および/もしくは予防する、遅延させる、または減弱させる作用物質(例えば毒性ターゲティング剤)は、ステロイド、例えばコルチコステロイドである。いくつかの態様において、免疫療法に対する毒性の発現またはそのリスクを処置する、および/もしくは予防する、遅延させる、または減弱させる作用物質は、ステロイドである。いくつかの態様において、ステロイドはコルチコステロイドである。コルチコステロイドとしては典型的には、グルココルチコイドおよび鉱質コルチコイドが挙げられる。
【0330】
いずれかのコルチコステロイド(例えばグルココルチコイド)が、本明細書で提供する方法において使用され得る。いくつかの態様において、グルココルチコイドは、合成グルココルチコイドおよび非合成グルココルチコイドを含む。例示的なグルココルチコイドとしては、限定するわけではないが、アルクロメタゾン、アルゲストン、ベクロメタゾン(例えば、二プロピオン酸ベクロメタゾン)、ベタメタゾン(例えば、17-吉草酸ベタメタゾン、ベタメタゾン酢酸ナトリウム、ベタメタゾンリン酸ナトリウム、吉草酸ベタメタゾン)、ブデソニド、クロベタゾール(例えば、プロピオン酸クロベタゾール)、クロベタゾン、クロコルトロン(例えば、ピバル酸クロコルトロン)、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾンおよびヒドロコルチゾン(例えば、酢酸ヒドロコルチゾン)、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン(例えば、21-リン酸デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸ナトリウム)、ジフロラゾン(例えば、二酢酸ジフロラゾン)、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、エノキソロン、フルアザコルト(fluazacort)、フルクロロニド(flucloronide)、フルドロコルチゾン(例えば、酢酸フルドロコルチゾン)、フルメタゾン(例えば、ピバリン酸フルメタゾン)、フルニソリド、フルオシノロン(例えば、フルオシノロンアセトニド)、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルトロン、フルオロメトロン(例えば、酢酸フルオロメトロン)、フルペロロン(例えば、酢酸フルペロロン)、フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルランドレノリド、フルチカゾン(例えば、プロピオン酸フルチカゾン)、ホルモコルタール、ハルシノニド、ハロベタソール、ハロメタゾン、ハロプレドン、ハイドロコルタメート、ヒドロコルチゾン(例えば、21-酪酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプラート、酪酸ヒドロコルチゾン、シピオン酸ヒドロコルチゾン、ヘミコハク酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンプロブタート(probutate)、ヒドロコルチゾンリン酸ナトリウム、ヒドロコルチゾンコハク酸ナトリウム、吉草酸ヒドロコルチゾン)、エタボン酸ロテプレドノール、マジプレドン(mazipredone)、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン(アセポン酸メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、ヘミコハク酸メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンコハク酸ナトリウム)、モメタゾン(例えば、フランカルボン酸モメタゾン)、パラメタゾン(例えば、酢酸パラメタゾン)、プレドニカルバート、プレドニゾロン(例えば、25-ジエチルアミノ酢酸プレドニゾロン、プレドニゾロンリン酸ナトリウム、21-ヘミコハク酸プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン;ファルネシル酸プレドニゾロン、ヘミコハク酸プレドニゾロン、プレドニゾロン-21(ベータ-D-グルクロニド)、メタスルホ安息香酸プレドニゾロン、プレドニゾロンステアグラート、テブト酸プレドニゾロン、テトラヒドロフタル酸プレドニゾロン)、プレドニゾン、プレドニバール、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコロトール(tixocortol)、トリアムシノロン(例えば、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド(benetonide)、トリアムシノロンヘキサアセトニド、トリアムシノロンアセトニド21-パルミタート、二酢酸トリアムシノロン)が挙げられる。このようなグルココルチコイドおよびその塩は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, A.Osol, ed., Mack Pub.Co., Easton, Pa.(16th ed.1980)に詳細に記述されている。
【0331】
いくつかの例では、グルココルチコイドは、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、およびプレドニゾンの中から選択される。特定の例では、グルココルチコイドはデキサメタゾンである。
【0332】
いくつかの態様において、作用物質は、コルチコステロイドであり、免疫療法および/または細胞療法に対する毒性(例えばCRSまたは神経毒性)の1つまたは複数の症状が、処置される、軽快する、または軽減されるのに治療上有効な量で投与される。いくつかの態様において、改善または成功裡の処置の指標としては、毒性のグレード分類スケール(例えば、CRSまたは神経毒性のグレード分類スケール)において該当するスコアが示されない(例えば3より下のスコア)という判定、あるいは本明細書に記述したグレード分類スケールにおけるグレード分類もしくは重症度の変化、例えばスコア4からスコア3への変化、またはスコア4からスコア2、1、もしくは0への変化が挙げられる。
【0333】
いくつかの局面において、コルチコステロイドは治療上有効な用量で提供される。治療上有効な濃度は、公知のインビトロまたはインビボ(例えば、動物モデル)の系で試験することにより経験的に決定され得る。例えば、免疫療法および/または細胞療法に対する毒性(例えばCRSまたは神経毒性)の症状または有害効果を軽快させるために投与される選択されたコルチコステロイドの量は、標準的な臨床手法によって決定され得る。加えて、至適投与量範囲の確認を補助するために動物モデルが使用され得る。経験的に決定され得る厳密な投与量は、具体的な治療用調製物、レジメン、および投与スケジュール、投与経路、ならびに疾患の重篤性に依存し得る。
【0334】
コルチコステロイドは、毒性(例えばCRSまたは神経毒性)と関連する1つまたは複数の症状を軽快させるのに有効な任意の量で投与され得る。コルチコステロイド(例えばグルココルチコイド)は、例えば、70 kgの成人ヒト対象に対して、用量あたり0.1もしくは約0.1から100 mg、0.1~80 mg、0.1~60 mg、0.1~40 mg、0.1~30 mg、0.1~20 mg、0.1~15 mg、0.1~10 mg、0.1~5 mg、0.2~40 mg、0.2~30 mg、0.2~20 mg、0.2~15 mg、0.2~10 mg、0.2~5 mg、0.4~40 mg、0.4~30 mg、0.4~20 mg、0.4~15 mg、0.4~10 mg、0.4~5 mg、0.4~4 mg、1~20 mg、1~15 mg、または1~10 mgの量で投与され得る。典型的には、コルチコステロイド(例えばグルココルチコイド)は、平均的な成人ヒト対象に対して、用量あたり、0.4もしくは約0.4から20 mg、例えば、0.4 mg、0.5 mg、0.6 mg、0.7 mg、0.75 mg、0.8 mg、0.9 mg、1 mg、2 mg、3 mg、4 mg、5 mg、6 mg、7 mg、8 mg、9 mg、10 mg、11 mg、12 mg、13 mg、14 mg、15 mg、16 mg、17 mg、18 mg、19 mgもしくは20 mgまたは約0.4 mg、0.5 mg、0.6 mg、0.7 mg、0.75 mg、0.8 mg、0.9 mg、1 mg、2 mg、3 mg、4 mg、5 mg、6 mg、7 mg、8 mg、9 mg、10 mg、11 mg、12 mg、13 mg、14 mg、15 mg、16 mg、17 mg、18 mg、19 mgもしくは20 mgの量で投与される。
【0335】
いくつかの態様において、コルチコステロイドは、例えば、典型的には体重が約70 kg~75 kgである平均的な成人ヒト対象に対して、(対象の)0.001 mg/kg、0.002 mg/kg、0.003 mg/kg、0.004 mg/kg、0.005 mg/kg、0.006 mg/kg、0.007 mg/kg、0.008 mg/kg、0.009 mg/kg、0.01 mg/kg、0.015 mg/kg、0.02 mg/kg、0.025 mg/kg、0.03 mg/kg、0.035 mg/kg、0.04 mg/kg、0.045 mg/kg、0.05 mg/kg、0.055 mg/kg、0.06 mg/kg、0.065 mg/kg、0.07 mg/kg、0.075 mg/kg、0.08 mg/kg、0.085 mg/kg、0.09 mg/kg、0.095 mg/kg、0.1 mg/kg、0.15 mg/kg、0.2 mg/kg、0.25 mg/kg、0.30 mg/kg、0.35 mg/kg、0.40 mg/kg、0.45 mg/kg、0.50 mg/kg、0.55 mg/kg、0.60 mg/kg、0.65 mg/kg、0.70 mg/kg、0.75 mg/kg、0.80 mg/kg、0.85 mg/kg、0.90 mg/kg、0.95 mg/kg、1 mg/kg、1.05 mg/kg、1.1 mg/kg、1.15 mg/kg、1.20 mg/kg、1.25 mg/kg、1.3 mg/kg、1.35 mg/kgもしくは1.4 mg/kgまたは約0.001 mg/kg、0.002 mg/kg、0.003 mg/kg、0.004 mg/kg、0.005 mg/kg、0.006 mg/kg、0.007 mg/kg、0.008 mg/kg、0.009 mg/kg、0.01 mg/kg、0.015 mg/kg、0.02 mg/kg、0.025 mg/kg、0.03 mg/kg、0.035 mg/kg、0.04 mg/kg、0.045 mg/kg、0.05 mg/kg、0.055 mg/kg、0.06 mg/kg、0.065 mg/kg、0.07 mg/kg、0.075 mg/kg、0.08 mg/kg、0.085 mg/kg、0.09 mg/kg、0.095 mg/kg、0.1 mg/kg、0.15 mg/kg、0.2 mg/kg、0.25 mg/kg、0.30 mg/kg、0.35 mg/kg、0.40 mg/kg、0.45 mg/kg、0.50 mg/kg、0.55 mg/kg、0.60 mg/kg、0.65 mg/kg、0.70 mg/kg、0.75 mg/kg、0.80 mg/kg、0.85 mg/kg、0.90 mg/kg、0.95 mg/kg、1 mg/kg、1.05 mg/kg、1.1 mg/kg、1.15 mg/kg、1.20 mg/kg、1.25 mg/kg、1.3 mg/kg、1.35 mg/kgもしくは1.4 mg/kgの投与量で投与され得る。
【0336】
コルチコステロイドまたはグルココルチコイド(例えばデキサメタゾン)は、経口(錠剤、液状剤もしくは濃縮液状剤)、PO、静脈内(IV)、筋肉内で、またはいずれかの他の公知の経路もしくは本明細書に(例えば、薬学的製剤に関して)記載される経路によって、投与され得る。いくつかの局面において、コルチコステロイドは、ボーラスとして投与され、他の局面ではある期間にわたって投与され得る。
【0337】
いくつかの局面において、グルココルチコイドは、1日より長い期間にわたって、例えば2日間にわたって、3日間にわたって、もしくは4日間にわたって、またはそれより長くにわたって投与され得る。いくつかの態様において、コルチコステロイドは、1日1回、1日2回、もしくは1日3回、またはそれより多くで投与され得る。例えば、コルチコステロイド(例えばデキサメタゾン)は、いくつかの例では、10 mg(または等価量)をIVで1日2回、3日間にわたって投与され得る。
【0338】
いくつかの態様において、コルチコステロイド(例えばグルココルチコイド)の投与量は、処置ごとに連続的に低くする投与量で投与される。したがって、いくつかのそのような処置レジメンにおいて、コルチコステロイドの用量は漸減される。例えば、コルチコステロイドは、4 mgの初期用量(または等価用量、例えばデキサメタゾンに関して)で投与され得、各後続投与時は、用量が次の投与では3 mg、次の投与では2 mg、次の投与では1 mgとなるように用量が低減され得る。
【0339】
通常、投与されるコルチコステロイドの用量は、異なるコルチコステロイド間で効力に差があるため、具体的なコルチコステロイドに依存する。典型的に、薬物は効力がさまざまであること、したがって、等価な効果を得るための用量もさまざまであり得ることが理解されよう。表6は、種々のグルココルチコイドおよび投与経路での効力に関する等価性を示す。臨床投与における等価効力は周知である。等価なステロイド投与(非時間治療学的方法での)に関する情報は、British National Formulary(BNF)37, March 1999をみるとよい。
【0340】
(表6)グルココルチコイドの投与
【0341】
したがって、いくつかの態様において、ステロイドは、各両端の値を含め、1.0 mgもしくは約1.0 mgから20 mgのデキサメタゾン/日、例えば1.0 mg~15 mgのデキサメタゾン/日、1.0 mg~10 mgのデキサメタゾン/日、2.0 mg~8 mgのデキサメタゾン/日、または2.0 mg~6.0 mgのデキサメタゾン/日の等価投与量で投与される。いくつかの場合において、ステロイドは、4 mgもしくは約4 mgまたは8 mgもしくは約8 mgのデキサメタゾン/日の等価用量で投与される。
【0342】
いくつかの態様において、ステロイドは、トシリズマブでの処置後に熱が持続する場合に投与される。例えば、いくつかの態様において、デキサメタゾンは、熱が継続している状態で6~12時間毎まで5~10 mgの投与量で経口投与または静脈内投与される。いくつかの態様において、トシリズマブは、酸素補給と並行して、または酸素補給後に投与される。
【0343】
B. ミクログリア細胞阻害剤
いくつかの態様において、併用療法における阻害剤はミクログリア細胞の活性の阻害剤である。いくつかの態様において、当該阻害剤の投与によりミクログリアの活性が調節される。いくつかの態様において、阻害剤は、ミクログリアにおけるシグナル伝達経路の活性を阻害する拮抗薬である。いくつかの態様において、ミクログリア阻害剤は、ミクログリアの恒常性、生存および/または増殖に影響を及ぼす。いくつかの態様において、阻害剤はCSF1Rシグナル伝達経路を標的とする。いくつかの態様において、阻害剤はCSF1Rの阻害剤である。いくつかの態様において、阻害剤は低分子である。いくつかの場合において、阻害剤は抗体である。
【0344】
いくつかの局面において、阻害剤の投与により、ミクログリアの恒常性および生存性における改変、ミクログリア細胞の増殖の減少もしくはブロック、ミクログリア細胞の低減もしくは消去、ミクログリア活性化の低減、ミクログリアによる一酸化窒素生成の低減、ミクログリアの一酸化窒素合成酵素活性の低下、またはミクログリアの活性化の影響を受ける運動神経細胞の保護から選択される、1つまたは複数の効果がもたらされる。いくつかの態様において、作用物質は、CSF1R阻害のバイオマーカーの血清中または血中レベルを改変させる、または阻害剤投与の開始直前の時点と比べて尿中1型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTX)レベルを減少させる。いくつかの態様において、作用物質の投与により、ミクログリア活性の活性が一過的に阻害される、および/またはこのとき、ミクログリア活性の阻害は永続的でない。いくつかの態様において、作用物質の投与により、CSF1Rの活性が一過的に阻害される、および/またはこのときCSF1R活性の阻害は永続的でない。
【0345】
いくつかの態様において、ミクログリア細胞の活性を低下させる作用物質は、低分子、ペプチド、タンパク質、抗体もしくはその抗原結合断片、抗体模倣物、アプタマー、または核酸分子である。いくつかの態様において、方法は、ミクログリア活性の阻害剤の投与を伴う。いくつかの態様において、作用物質は、ミクログリアにおけるシグナル伝達経路の活性を阻害する拮抗薬である。いくつかの態様において、ミクログリア細胞の活性を低下させる作用物質は、ミクログリアの恒常性、生存、および/または増殖に影響を及ぼす。
【0346】
いくつかの態様において、ミクログリア細胞の活性化を低下させる作用物質は、抗炎症性剤、NADPHオキシダーゼ(NOX2)の阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬、ナトリウムチャネル遮断薬から選択される、GM-CSFを阻害する、CSF1Rを阻害する、CSF-1に特異的に結合する、IL-34に特異的に結合する、核内因子カッパB(NF-κB)の活性化を阻害する、CB2受容体を活性化させる、および/またはCB2作動薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤である、マイクロRNA-155(miR-155)を阻害する、マイクロRNA-124(miR-124)を上方調節する、ミクログリアにおける一酸化窒素生成を阻害する、一酸化窒素合成酵素を阻害する、あるいは転写因子NRF2(核内因子(赤血球系由来2)様2またはNFE2L2とも称される)を活性化する。
【0347】
いくつかの態様において、ミクログリア細胞の活性を低下させる作用物質はCSF1(マクロファージコロニー刺激因子 MCSFとも称される)を標的とする。いくつかの態様において、ミクログリア細胞の活性を低下させる作用物質は、M-CSF受容体のMCSF刺激型リン酸化に影響を及ぼす(Pryer et al.Proc Am Assoc Cancer Res, AACR Abstract nr DDT02-2(2009))。いくつかの場合において、ミクログリア細胞の活性を低下させる作用物質はMCS110である(国際特許出願公開公報第2014001802号;臨床試験記録番号(Clinical Trial Study Record No.):A1 NCT00757757;NCT02807844;NCT02435680;NCT01643850)。
【0348】
いくつかの態様において、ミクログリア細胞の活性を低下させる作用物質は、CSF1経路を標的とする低分子である。いくつかの態様において、作用物質は、CSF1Rに結合する低分子である。いくつかの態様において、作用物質は、CSF1Rキナーゼに対するATPの結合と競合することによりCSF1Rキナーゼ活性を阻害する低分子である。いくつかの態様において、作用物質は、CFS1R受容体の活性化を阻害する低分子である。いくつかの場合において、CSF-1リガンドのCSF1Rに対する結合が阻害される。いくつかの態様において、ミクログリア細胞の活性を低下させる作用物質は、米国特許出願公開第20160032248号に記載の阻害剤のいずれかである。
【0349】
いくつかの態様において、作用物質は、PLX-3397、PLX7486、JNJ-40346527、JNJ28312141、ARRY-382、PLX73086(AC-708)、DCC-3014、AZD6495、GW2580、Ki20227、BLZ945、PLX647、およびPLX5622から選択される低分子阻害剤である。いくつかの態様において、作用物質は、Conway et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 102(44):16078-83(2005);Dagher et al., Journal of Neuroinflammation, 12:139(2015);Ohno et al., Mol Cancer Ther.5(11):2634-43(2006);von Tresckow et al.Clin Cancer Res.,21(8)(2015);Manthey et al.Mol Cancer Ther.(8(11):3151-61(2009);Pyonteck et al., Nat Med.19(10):1264-1272(2013);Haegel et al., Cancer Res AACR Abstract nr 288(2015);Smith et al., Cancer Res AACR Abstract nr 4889(2016);臨床試験記録番号:NCT01525602;NCT02734433;NCT02777710;NCT01804530;NCT01597739;NCT01572519;NCT01054014;NCT01316822;NCT02880371;NCT02673736;国際特許出願公開公報第2008063888A2号、同第2006009755A2号、米国特許出願公開第20110044998号、同第2014/0065141号および同第2015/0119267号に記載の阻害剤のいずれかである。
【0350】
いくつかの態様において、ミクログリア細胞の活性を低下させる作用物質は4-((2-(((1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル)アミノ)ベンゾ[d]チアゾル-6-イル)オキシ)-N-メチルピコリンアミド(BLZ945)もしくはその薬学的に許容される塩またはその誘導体である。いくつかの態様において、作用物質は以下の化合物:
またはその薬学的に許容される塩であり、式中、R1はアルキルピラゾールまたはアルキルカルボキサミドであり、R2はヒドロキシシクロアルキルである。
【0351】
いくつかの態様において、ミクログリア細胞の活性を低下させる作用物質は5-((5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)メチル)-N-((6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メチル)ピリジン-2-アミン、N-[5-[(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)メチル]-2-ピリジニル]-6-(トリフルオロメチル)-3-ピリジンメタンアミン)(PLX 3397)もしくはその薬学的に許容される塩またはその誘導体である。いくつかの態様において、作用物質は5-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イルメチル)-N-[[4-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]-2-ピリジンアミン二塩酸塩(PLX647)もしくはその薬学的に許容される塩またはその誘導体である。いくつかの態様において、ミクログリア細胞の活性を低下させる作用物質は以下の化合物:
またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの態様において、ミクログリア細胞の活性を低下させる作用物質は以下の化合物:
またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの態様において、作用物質は、米国特許第7893075号に記載の阻害剤のいずれかである。
【0352】
いくつかの態様において、ミクログリア細胞の活性を低下させる作用物質は4-シアノ-N-[2-(1-シクロヘキセン-1-イル)-4-[1-[(ジメチルアミノ)アセチル]-4-ピペリジニル]フェニル]-1H-イミダゾール-2-カルボキサミド一塩酸塩(JNJ28312141)もしくはその薬学的に許容される塩またはその誘導体である。いくつかの態様において、作用物質は以下の化合物:
またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの態様において、作用物質は、米国特許第7645755号に記載の阻害剤のいずれかである。
【0353】
いくつかの態様において、ミクログリア細胞の活性を低下させる作用物質は1H-イミダゾール-2-カルボキサミド、5-シアノ-N-(2-(4,4-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-6-(テトラヒドロ-2,2,6,6-テトラメチル-2H-ピラン-4-イル)-3-ピリジニル)-、4-シアノ-1H-イミダゾール-2-カルボン酸 N-(2-(4,4-ジメチルシクロヘキス-1-エニル)-6-(2,2,6,6-テトラメチルテトラヒドロピラン-4-イル)ピリジン-3-イル)アミド、4-シアノ-N-(2-(4,4-ジメチルシクロヘキス-1-エン-1-イル)-6-(2,2,6,6-テトラメチル-テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)ピリジン-3-イル)-1H-イミダゾール-2-カルボキサミド(JNJ-40346527)もしくはその薬学的に許容される塩またはその誘導体である。いくつかの態様において、作用物質は以下の化合物:
またはその薬学的に許容される塩である。
【0354】
別の態様において、ミクログリア細胞の活性を低下させる作用物質は5-(3-メトキシ-4-((4-メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)ピリミジン-2,4-ジアミン(GW2580)もしくはその薬学的に許容される塩またはその誘導体である。いくつかの態様において、作用物質は以下の化合物:
またはその薬学的に許容される塩である(国際特許出願公開公報第2009099553号)。
【0355】
いくつかの態様において、ミクログリア細胞の活性を低下させる作用物質は4-(2,4-ジフルオロアニリノ)-7-エトキシ-6-(4-メチルピペラジン-1-イル)キノリン-3-カルボキサミド(AZD6495)もしくはその薬学的に許容される塩またはその誘導体である。いくつかの態様において、作用物質は以下の化合物:
またはその薬学的に許容される塩である。
【0356】
いくつかの態様において、ミクログリア細胞の活性を低下させる作用物質はN-{4-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリル)オキシ]-2-メトキシフェニル}-N0-[1-(1,3-チアゾール-2-イル)エチル]尿素(Ki20227)もしくはその薬学的に許容される塩またはその誘導体である。いくつかの態様において、作用物質は以下の化合物:
またはその薬学的に許容される塩である。
【0357】
いくつかの態様において、ミクログリア細胞の活性化を低下させる作用物質はCSF1経路を標的とする抗体である。いくつかの態様において、作用物質はCSF1Rに結合する抗体である。いくつかの態様において、抗CSF1R抗体はCSF1Rの二量体化をブロックする。いくつかの態様において、抗CSF1R抗体は、ドメインD4とD5によって形成されるCSF1Rの二量体化界面をブロックする(Ries et al.Cancer Cell 25(6):846-59(2014))。いくつかの場合において、作用物質は、エマクツヅマブ(RG7155;RO5509554)、カビラリズマブ(FPA-008)、LY-3022855(IMC-CS4)、AMG-820、TG-3003、MCS110、H27K15、12-2D6、2-4A5(Rovida and Sbarba, J Clin Cell Immunol.6:6(2015);臨床試験記録番号:NCT02760797;NCT01494688;NCT02323191;NCT01962337;NCT02471716;NCT02526017;NCT01346358;NCT02265536;NCT01444404;NCT02713529、NCT00757757;NCT02807844;NCT02435680;NCT01643850)から選択される。
【0358】
いくつかの態様において、ミクログリア細胞の活性化を低下させる作用物質はテトラサイクリン系抗生物質である。例えば、作用物質は、ミクログリア細胞内のIL-1b、IL-6、TNF-αまたはiNOS濃度に影響を及ぼす(Yrjaenheikki et al.PNAS 95(26):15769-15774(1998);臨床試験記録番号:NCT01120899)。いくつかの態様において、作用物質はオピオイド拮抗薬である(Younger et al.Pain Med.10(4):663-672(2009)。いくつかの態様において、作用物質はグルタミン酸作動性神経伝達を低減させる(米国特許第5,527,814号)。いくつかの態様において、作用物質はNFkBシグナル伝達を調節する(Valera et al J.Neuroinflammation 12:93(2015);臨床試験記録番号:NCT00231140)。いくつかの態様において、作用物質はカンナビノイド受容体を標的とする(Ramirez et al.J.Neurosci 25(8):1904-13(2005))。いくつかの態様において、作用物質は、ミノサイクリン、ナロキソン、リルゾール、レナリドミドおよびカンナビノイド(任意でWIN55または212-2)から選択される。
【0359】
ミクログリアによる一酸化窒素生成は、いくつかの場合では、神経毒性をもたらす、または神経毒性を増大させると考えられている。いくつかの態様において、作用物質はミクログリアによる一酸化窒素生成を調節または阻害する。いくつかの態様において、作用物質は一酸化窒素合成酵素(NOS)を阻害する。いくつかの態様において、NOS阻害剤は、4-アミノ-テトラヒドロビオプテリン(4-ABH4)としても知られるロノプテリン(Ronopterin)(VAS-203)である。いくつかの態様において、NOS阻害剤はシンデュニスタット(cindunistat)、A-84643、ONO-1714、L-NOARG、NCX-456、VAS-2381、GW-273629、NXN-462、CKD-712、KD-7040またはグアニジノエチルジスルフィドである。いくつかの態様において、作用物質は、Hoeing et al., Cell Stem Cell.2012 Nov 2;11(5):620-32に記載の阻害剤のいずれかである。
【0360】
いくつかの態様において、作用物質は、例えば中枢神経系へのT細胞輸送をブロックする。いくつかの態様において、T細胞輸送のブロックにより、免疫細胞が中枢神経系内へと血管壁を通過すること、例えば血液脳関門を通過することが低減または抑制され得る。いくつかの場合において、活性化された抗原特異的T細胞は炎症促進性サイトカイン、例えばIFN-γおよびTNFを産生し、CNS内で再活性化されると、レジデント細胞、例えばミクログリアおよび星状細胞の活性化をもたらす。Kivisakk et al., Neurology.2009 Jun 2;72(22):1922-1930を参照のこと。したがって、いくつかの態様において、活性化されたT細胞をミクログリア細胞から、例えば血液脳関門を通過するそのような細胞の輸送をブロックすること、および/または血液脳関門を通過するそのような細胞の能力を阻害することによって隔離すると、ミクログリアの活性化が低減または消去され得る。いくつかの態様において、作用物質は、免疫細胞、例えばT細胞上の接着分子を阻害する。いくつかの態様において、作用物質はインテグリンを阻害する。いくつかの態様において、インテグリンはアルファ-4インテグリンである。いくつかの態様において、作用物質はナタリズマブ(タイサブリ(登録商標))である。いくつかの態様において、作用物質は細胞表面受容体を調節する。いくつかの態様において、作用物質は、スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)受容体、例えばS1PR1またはS1PR5を調節する。いくつかの態様において、作用物質は、細胞受容体、例えばスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)受容体、例えばS1PR1またはS1PR5の内在化を引き起こす。いくつかの態様において、作用物質はフィンゴリモド(Gilenya(登録商標))またはオザニモド(RPC-1063)である。
【0361】
転写因子NRF2は、例えば、プロモーター領域内にシス作用性エレメントを含む遺伝子をオンにすることによって抗酸化応答を調節すると考えられている。そのようなエレメントの一例としては抗酸化剤応答エレメント(ARE)が挙げられる。いくつかの態様において、作用物質はNRF2を活性化させる。いくつかの態様において、ミクログリア細胞内でNRF2が活性化されるとミクログリア細胞のIFNおよびLPSに対する応答性が低下する。いくつかの態様において、NRF2が活性化されると、脱髄、軸索消失、神経細胞死および/または希突起膠細胞死が阻害、遅滞または低減される。いくつかの態様において、作用物質は、NRF2によって調節される細胞の細胞保護経路を上方調節する。いくつかの態様において、NRF2を活性化させる作用物質はフマル酸ジメチル(テクフィデラ(登録商標))である。いくつかの態様において、作用物質は、米国特許第8,399,514号に記載の阻害剤のいずれかである。いくつかの態様において、作用物質は、Hoeing et al., Cell Stem Cell.2012 Nov 2;11(5):620-32に記載の阻害剤のいずれかである。
【0362】
いくつかの態様において、ミクログリア細胞の活性化を低下させる作用物質は(4S,4aS,5aR,12aS)-4,7-ビス(ジメチルアミノ)-3,10,12,12a-テトラヒドロキシ-1,11-ジオキソ-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒドロテトラセン-2-カルボキサミド(ミノサイクリン)もしくはその薬学的に許容される塩またはその誘導体である。いくつかの態様において、作用物質は、米国特許出願公開第20100190755号に記載の化合物のいずれかである。いくつかの態様において、作用物質は以下の化合物:
またはその薬学的に許容される塩である。
【0363】
いくつかの態様において、ミクログリア細胞の活性化を低下させる作用物質は3-(7-アミノ-3-オキソ-1H-イソインドル-2-イル)ピペリジン-2,6-ジオン(レナリドミド)もしくはその薬学的に許容される塩またはその誘導体である。いくつかの態様において、作用物質は以下の化合物:
またはその薬学的に許容される塩である。
【0364】
いくつかの態様において、ミクログリア細胞の活性化を低下させる作用物質は4R,4aS,7aR,12bS)-4a,9-ジヒドロキシ-3-プロプ-2-エニル-2,4,5,6,7a,13-ヘキサヒドロ-1H-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-7-オン(ナロキソン)もしくはその薬学的に許容される塩またはその誘導体である。いくつかの態様において、作用物質は、米国特許第8247425号に記載の化合物のいずれかである。いくつかの態様において、作用物質は以下の化合物:
またはその薬学的に許容される塩である。
【0365】
いくつかの態様において、ミクログリア細胞の活性化を低下させる作用物質は、米国特許第5527814号に記載の2-アミノ-6-(トリフルオロメトキシ)ベンゾチアゾール、6-(トリフルオロメトキシ)ベンゾ[d]チアゾル-2-アミンまたは6-(トリフルオロメトキシ)-1,3-ベンゾチアゾル-2-アミン(リルゾール)もしくはその薬学的に許容される塩またはその誘導体である。いくつかの態様において、作用物質は以下の化合物:
またはその薬学的に許容される塩である。
【0366】
いくつかの態様において、ミクログリア細胞の活性化を低下させる作用物質は、ミクログリアにおけるシグナル伝達経路のモジュレーターである。いくつかの場合において、作用物質はミクログリアのシグナル伝達を低減させる。いくつかの態様において、作用物質はGM-CSF(CSF2)阻害剤である。他の態様において、ミクログリア細胞の活性化を低下させる作用物質はイオンチャネル遮断薬である。いくつかの具体的な態様において、作用物質はカルシウムチャネル遮断薬である。例えば、いくつかの具体的な例において、作用物質はジヒドロピリジン系カルシウムチャネル遮断薬である。いくつかの態様において、作用物質はマイクロRNA阻害剤である。例えば、作用物質はmiR-155を標的とする。いくつかの態様において、ミクログリア細胞の活性化を低下させる作用物質は、MOR103、ニモジピン、IVIgおよびLNA-抗miR-155(Butoxsky et al.Ann Neurol., 77(1):75-99(2015)and Sanz et al., Br J Pharmacol.167(8):1702-1711(2012);Winter et al., Ann Clin and Transl Neurol.2328-9503(2016);臨床試験記録番号:NCT01517282、NCT00750867)から選択される。
【0367】
いくつかの態様において、ミクログリア細胞の活性化を低下させる作用物質は3-(2-メトキシエチル)5-プロパン-2-イル2,6-ジメチル-4-(3-ニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジン-3,5-ジカルボキシレート(ニモジピン)もしくはその薬学的に許容される塩またはその誘導体である。いくつかの態様において、作用物質は、米国特許第3799934号に記載の阻害剤のいずれかである。いくつかの態様において、作用物質は以下の化合物:
またはその薬学的に許容される塩である。
【0368】
いくつかの場合において、ミクログリア細胞の活性化を低下させる作用物質は、中枢神経系のみに影響を及ぼす形態および/または腫瘍関連マクロファージに影響を及ぼさない形態で投与される。いくつかの態様において、作用物質は、ミクログリアの休眠状態を促進するがミクログリアを消去しない、または数を減らさない。いくつかの態様において、方法は、例えばPonomarev et al., Nature Medicine、(1):64-70(2011)に記載のように、ミクログリア活性を脳内で特異的に阻害することを伴う。
【0369】
ミクログリア細胞の活性化を低減させる例示的な作用物質およびそのような作用物質を投与するための例示的投与レジメンを以下の表7に示す。
【0370】
(表7)例示的なミクログリア阻害剤および投与レジメン
【0371】
C. 他の作用物質(例えば、サイトカインを標的とする作用物質)
いくつかの態様において、免疫療法および/または細胞療法の毒性、例えばCRSまたは神経毒性の症状を処置するかまたは軽快させる作用物質(例えば毒性ターゲティング剤)は、サイトカインを標的とするものである。いくつかの局面において、作用物質は、例えば、サイトカイン(例えば、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-ベータ)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン10(IL-10)、IL-2、MIP1β(CCL4)、TNFアルファ、IL-1、インターフェロンガンマ(IFN-ガンマ)、または単球走化性タンパク質-1(MCP-1))の拮抗薬または阻害剤である。いくつかの態様において、免疫療法および/または細胞療法の毒性、例えばCRSまたは神経毒性の症状を処置するかまたは軽快させる作用物質は、サイトカイン受容体(例えば、IL-6受容体(IL-6R)、IL-2受容体(IL-2R/CD25)、MCP-1(CCL2)受容体(CCR2もしくはCCR4)、TGF-ベータ受容体(TGF-ベータI、IIもしくはIII)、IFN-ガンマ受容体(IFNGR)、MIP1β受容体(例えば、CCR5)、TNFアルファ受容体(例えば、TNFR1)、IL-1受容体(IL1-Rα/IL-1Rβ)、またはIL-10受容体(IL-10R))を標的とする(例えば、阻害するか、またはその拮抗薬である)ものである。
【0372】
免疫療法および/または細胞療法に対する毒性、例えばCRSまたは神経毒性の症状または有害効果を軽快させるために投与される選択された免疫療法および/または細胞療法の毒性、例えばCRSまたは神経毒性の症状を処置するか、または軽快させる作用物質の量は標準的な臨床手法によって決定され得る。例示的な有害事象としては、限定するわけではないが、アラニンアミノトランスフェラーゼの増加、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの増加、悪寒、発熱性好中球減少症、頭痛、低血圧、左心室機能障害、脳障害、水頭、発作、および/または振戦が挙げられる。
【0373】
いくつかの態様において、作用物質は、30 mgもしくは約30 mgから5000 mg、例えば50 mg~1000 mg、50 mg~500 mg、50 mg~200 mg、50 mg~100 mg、100 mg~1000 mg、100 mg~500 mg、100 mg~200 mg、200 mg~1000 mg、200 mg~500 mg、または500 mg~1000 mgの投与量で投与される。
【0374】
いくつかの態様において、作用物質は、0.5 mg/kgもしくは約0.5 mg/kgから100 mg/kg、例えば1 mg/kgもしくは約1 mg/kgから50 mg/kg、1 mg/kg~25 mg/kg、1 mg/kg~10 mg/kg、1 mg/kg~5 mg/kg、5 mg/kg~100 mg/kg、5 mg/kg~50 mg/kg、5 mg/kg~25 mg/kg、5 mg/kg~10 mg/kg、10 mg/kg~100 mg/kg、10 mg/kg~50 mg/kg、10 mg/kg~25 mg/kg、25 mg/kg~100 mg/kg、25 mg/kg~50 mg/kg~50 mg/kg~100 mg/kgで投与される。いくつかの態様において、作用物質は、各両端の値を含め、1 mg/kgもしくは約1 mg/kgから10 mg/kg、2 mg/kg~8 mg/kg、2 mg/kg~6 mg/kg、2 mg/kg~4 mg/kg、または6 mg/kg~8 mg/kgの投与量で投与される。いくつかの局面において、作用物質は、少なくとも1 mg/kg、2 mg/kg、4 mg/kg、6 mg/kg、8 mg/kg、10 mg/kgもしくはそれ以上、または少なくとも約1 mg/kg、2 mg/kg、4 mg/kg、6 mg/kg、8 mg/kg、10 mg/kgもしくはそれ以上、または約1 mg/kg、2 mg/kg、4 mg/kg、6 mg/kg、8 mg/kg、10 mg/kgもしくはそれ以上の投与量で投与される。いくつかの態様において、作用物質は4 mg/kgまたは8 mg/kgの用量で投与される。
【0375】
いくつかの態様において、作用物質は、注射、例えば静脈内もしくは皮下注射、眼内注射、眼周囲注射、網膜下注射、硝子体内注射、経中隔注射、強膜下注射、脈絡膜内注射、前房内注射、結膜下(subconjectval)注射、結膜下(subconjuntival)注射、テノン嚢下注射、眼球後注射、眼球周囲注射または後強膜近傍送達によって投与される。いくつかの態様において、細胞は、非経口、肺内および鼻腔内ならびに、局所処置が所望される場合は病巣内投与によって投与される。非経口輸注としては、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内または皮下投与が挙げられる。
【0376】
いくつかの態様において、作用物質の該量は、約もしくはおよそ1日2回、毎日、1日おき、週3回、毎週、隔週または月1回で投与される。
【0377】
いくつかの態様において、作用物質は、組成物または製剤、例えば後述するような薬学的組成物または製剤の一部として投与される。したがって、いくつかの場合では、作用物質を含む組成物が、後述するようにして投与される。他の局面において、作用物質は単独で投与され、いずれかの公知の許容される投与経路によって、または本明細書に例えば組成物および薬学的製剤に関して記載されるものによって投与され得る。
【0378】
いくつかの態様において、免疫療法および/または細胞療法の毒性、例えばCRSまたは神経毒性の症状を処置するか、または軽快させる作用物質は抗体または抗原結合断片である。いくつかの態様において、作用物質はトシリズマブ、シルツキシマブ、サリルマブ、オロキズマブ(CDP6038)、エルシリモマブ、ALD518/BMS-945429、シルクマブ(CNTO 136)、CPSI-2634、ARGX-109、FE301またはFM101である。
【0379】
いくつかの態様において、作用物質は、IL-6またはIL-6受容体(IL-6R)の拮抗薬または阻害剤である。いくつかの局面において、作用物質は、IL-6の活性を中和する抗体、例えばIL-6またはIL-6Rに結合する抗体または抗原結合断片である。例えば、いくつかの態様において、作用物質は抗IL-6R抗体のトシリズマブ(アトリズマブ)もしくはサリルマブであるか、または抗IL-6R抗体のトシリズマブ(アトリズマブ)もしくはサリルマブを含む。いくつかの態様において、作用物質は、米国特許第8,562,991号に記載の抗IL-6R抗体である。いくつかの場合において、IL-6を標的とする作用物質は、抗IL-6抗体、例えばシルツキシマブ、エルシリモマブ、ALD518/BMS-945429、シルクマブ(CNTO 136)、CPSI-2634、ARGX-109、FE301、FM101またはオロキズマブ(CDP6038)である。いくつかの局面において、作用物質はIL-6の活性を、リガンド-受容体間相互作用を阻害することによって中和し得る。この一般的な型のアプローチの実現可能性は、インターロイキン-1に対する天然の受容体拮抗薬で実証されている。Harmurn, C.H.et al., Nature(1990)343:336-340を参照のこと。いくつかの局面において、IL-6/IL-6R拮抗薬または阻害剤はIL-6ムテイン、例えば米国特許第5591827号に記載のものである。いくつかの態様において、IL-6/IL-6Rの拮抗薬または阻害剤である作用物質は、低分子、タンパク質もしくはペプチド、または核酸である。
【0380】
いくつかの態様において、作用物質はトシリズマブである。いくつかの態様において、トシリズマブは、提供される方法に従う、および/または提供される製造物品もしくは組成物での早期介入として、1 mg/kgもしくは約1 mg/kgから、12 mg/kgもしくは約12 mg/kg、例えば4 mg/kgもしくは約4 mg/kg、8 mg/kgもしくは約8 mg/kg、または10 mg/kgもしくは約10 mg/kgの投与量で投与される。いくつかの態様において、トシリズマブは静脈内輸注によって投与される。いくつかの態様において、トシリズマブは、アセトアミノフェンが効かない10時間持続している39℃を超える持続的な発熱に対して投与される。いくつかの態様において、初期用量の48時間後に症状がぶり返した場合、トシリズマブの2回目の投与が行われる。
【0381】
いくつかの態様において、作用物質は、TGF-βまたはTGF-β受容体(例えば、TGF-β受容体I、IIもしくはIII)の作動薬または刺激薬である。いくつかの局面において、作用物質は、TGF-βの活性を高める抗体、例えばTGF-βまたはその受容体のうちの1つに結合する抗体または抗原結合断片である。いくつかの態様において、TGF-βおよび/またはその受容体の作動薬または刺激薬である作用物質は、低分子、タンパク質もしくはペプチド、または核酸である。
【0382】
いくつかの態様において、作用物質は、MCP-1(CCL2)またはMCP-1受容体(例えば、MCP-1受容体CCR2もしくはCCR4)の拮抗薬または阻害剤である。いくつかの局面において、作用物質は、MCP-1の活性を中和する抗体、例えばMCP-1またはその受容体のうちの1つ(CCR2もしくはCCR4)に結合する抗体または抗原結合断片である。いくつかの態様において、MCP-1の拮抗薬または阻害剤は、Gong et al.J Exp Med.1997 Jul 7;186(1):131-137またはShahrara et al.J Immunol 2008;180:3447-3456に記載のいずれかのものである。いくつかの態様において、MCP-1および/またはその受容体(CCR2もしくはCCR4)の拮抗薬または阻害剤である作用物質は、低分子、タンパク質、もしくはペプチド、または核酸である。
【0383】
いくつかの態様において、作用物質は、IFN-γまたはIFN-γ受容体(IFNGR)の拮抗薬または阻害剤である。いくつかの局面において、作用物質は、IFN-γの活性を中和する抗体、例えばIFN-γまたはその受容体(IFNGR)に結合する抗体または抗原結合断片である。いくつかの局面において、IFN-ガンマ中和抗体は、Dobber et al.Cell Immunol.1995 Feb;160(2):185-92またはOzmen et al.J Immunol.1993 Apr 1;150(7):2698-705に記載のいずれかのものである。いくつかの態様において、IFN-γ/IFNGRの拮抗薬または阻害剤である作用物質は、低分子、タンパク質もしくはペプチド、または核酸である。
【0384】
いくつかの態様において、作用物質は、IL-10またはIL-10受容体(IL-10R)の拮抗薬または阻害剤である。いくつかの局面において、作用物質は、IL-10 活性を中和する抗体、例えばIL-10またはIL-10Rに結合する抗体または抗原結合断片である。いくつかの局面において、IL-10中和抗体は、Dobber et al.Cell Immunol.1995 Feb;160(2):185-92またはHunter et al.J Immunol.2005 Jun 1;174(11):7368-75に記載のいずれかのものである。いくつかの態様において、IL-10/IL-10Rの拮抗薬または阻害剤である作用物質は、低分子、タンパク質もしくはペプチド、または核酸である。
【0385】
いくつかの態様において、作用物質は、IL-1またはIL-1受容体(IL-1R)の拮抗薬または阻害剤である。いくつかの局面において、作用物質は、IL-1Rの修飾形態であるIL-1受容体拮抗薬、例えばアナキンラである(例えば、Fleischmann et al., (2006)Annals of the rheumatic diseases.65(8):1006-12参照)。いくつかの局面において、作用物質は、IL-1の活性を中和する抗体、例えばIL-1またはIL-1Rに結合する抗体または抗原結合断片、例えばカナキヌマブである(EP 2277543もまた参照のこと)。いくつかの態様において、IL-1/IL-1Rの拮抗薬または阻害剤である作用物質は、低分子、タンパク質もしくはペプチド、または核酸である。
【0386】
いくつかの態様において、作用物質は、腫瘍壊死因子(TNF)または腫瘍壊死因子受容体(TNFR)の拮抗薬または阻害剤である。いくつかの局面において、作用物質は、TNFの活性をブロックする抗体、例えばTNF、例えばTNFαまたはその受容体(TNFR、例えば、TNFRp55もしくはTNFRp75)に結合する抗体または抗原結合断片である。いくつかの局面において、作用物質は、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、ゴリムマブおよびエタネルセプトの中から選択される。いくつかの態様において、TNF/TNFRの拮抗薬または阻害剤である作用物質は、低分子、タンパク質もしくはペプチド、または核酸である。いくつかの態様において、作用物質は、TNFに影響を及ぼす低分子、例えばレナリドミドである(例えば、Muller et al.(1999)Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters.9(11):1625参照)。
【0387】
いくつかの態様において、作用物質は、ヤヌスキナーゼ(JAK)および2つのシグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)シグナル伝達カスケードを介するシグナル伝達の拮抗薬または阻害剤である。JAK/STATタンパク質は、サイトカインとサイトカイン受容体シグナル伝達の共通の構成成分である。いくつかの態様において、JAK/STATの拮抗薬または阻害剤である作用物質、例えばルキソリチニブ(例えば、Mesa et al.(2012)Nature Reviews Drug Discovery.11(2):103-104参照)、トファシチニブ(ゼルヤンツ、JakvinusタソシチニブおよびCP-690550としても知られる)、バリシチニブ(LY-3009104、INCB-28050としても知られる)、フィルゴチニブ(G-146034、GLPG-0634)、ガンドチニブ(LY-2784544)、レスタウルチニブ(CEP-701)、モメロチニブ(GS-0387、CYT-387)、パクリチニブ(SB1518)、およびウパダシチニブ(ABT-494)。いくつかの態様において、作用物質は、低分子、タンパク質もしくはペプチド、または核酸である。
【0388】
いくつかの態様において、デバイス、例えば血液または血漿を濾過する吸収性樹脂技術が、サイトカインレベルを下げるために使用され得る。いくつかの態様において、サイトカインレベルを下げるために使用されるデバイスは物理的サイトカイン吸収材、例えば体外サイトカイン吸収材である。いくつかの態様において、物理的サイトカイン吸収材は、サイトカインを血流から体外的エキソビボ法で除くために使用され得る。いくつかの態様において、作用物質は多孔質高分子である。いくつかの態様において、作用物質はCytoSorbである(例えば、Basu et al.Indian J Crit Care Med.(2014)18(12):822-824参照)。
【0389】
D. 追加の治療作用物質
いくつかの態様では、細胞療法の投与と追加の治療作用物質の投与とを伴う併用治療も提供される。いくつかの態様において、追加の治療作用物質は、本明細書記載の他の治療作用物質のいずれかであり、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置を含む。いくつかの局面において、追加の治療作用物質は、場合によっては細胞療法の改良された奏効につながりうる、細胞の拡大増殖および/または存続を強化または増進することができる作用物質である。
【0390】
いくつかの態様において、そのような方法は、細胞療法(例えばCAR発現T細胞)の投与(例えば投与の開始)の前に、それと同時に、その間に、その過程中に(例えばその過程中に1回および/または周期的に)、追加の治療作用物質の投与を含むことができる。いくつかの態様において、投与は、追加の治療作用物質および細胞療法の逐次的または断続的な投与であることができる。
【0391】
いくつかの態様において、作用物質はキナーゼ阻害剤である。いくつかの態様において、TECキナーゼファミリーの阻害剤は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)、IL2誘導性T細胞キナーゼ(ITK)、tecタンパク質チロシンキナーゼ(TEC)、BMX非受容体チロシンキナーゼ(Etk)およびTXKチロシンキナーゼ(TXK)を含むTECファミリーの1種または複数種のキナーゼを阻害する。いくつかの態様において、阻害剤はブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤(BTKi)である。いくつかの態様において、阻害剤は、イブルチニブもしくはアカラブルチニブであるか、またはそれを含む(例えばBarrett et al.,ASH 58th Annual Meeting(カリフォルニア州サンディエゴ、2016年12月3~6日),Abstract 654、Ruella et al.,ASH 58th Annual Meeting(カリフォルニア州サンディエゴ、2016年12月3~6日),Abstract 2159参照)。いくつかの態様において、作用物質は、米国特許第7,514,444号、同第8,008,309号、同第8,476,284号、同第8,497,277号、同第8,697,711号、同第8,703,780号、同第8,735,403号、同第8,754,090号、同第8,754,091号、同第8.957,079号、同第8,999,999号、同第9,125,889号、同第9,181,257号または同第9,296,753号記載の阻害剤である。
【0392】
いくつかの局面において、BTKi、例えばイブルチニブの投与は、対象から試料を得る5日または少なくとも約5日~7日または約7日前、例えば5日、6日もしくは7日または約5日、6日または7日前に開始され、その投与は、少なくとも試料が対象から得られるまでの、そして継続される、BTKi、例えばイブルチニブの投与、および/または細胞療法の投与開始後3ヶ月、約3ヶ月またはそれ以上に及ぶBTKi、例えばイブルチニブのさらなる投与を含む投与レジメンで、実行される。いくつかの態様において、BTKi、例えばイブルチニブは、140または約140mg~560または約560mgの量で、その投与レジメン中に投与が行われる各日に、1日1回投与される。いくつかの態様では、BTKi、例えばイブルチニブの投与を開始した後、細胞療法の投与に先立って、対象はリンパ球枯渇療法によりプレコンディショニングされている。いくつかの態様において、本方法は、BTKi、例えばイブルチニブの投与後に、細胞療法の投与に先立って、リンパ球枯渇療法を対象に投与する工程を、さらに含む。いくつかの態様において、リンパ球枯渇療法の投与は、細胞療法の投与前、7日以内に完了する。いくつかの態様において、リンパ球枯渇療法の投与は、細胞療法の投与を開始する2または約2日~7または約7日前、例えば7または約7日前に完了する。いくつかの態様において、投与レジメンは、リンパ球枯渇療法中にBTKi、例えばイブルチニブの投与を中断または一時中止する工程を含む。いくつかの態様において、投与レジメンは、リンパ球枯渇療法の完了後にBTKi、例えばイブルチニブを再開またはさらに投与する工程を含む。
【0393】
いくつかの態様において、本方法または使用は、がんを有する対象にBTKi、例えばイブルチニブまたは薬学的に許容されるその塩を投与する工程、および対象にリンパ球枯渇療法を投与する工程、およびリンパ球枯渇療法の完了後、2~7日以内に細胞療法を対象に投与する工程を伴う。
【0394】
いくつかの局面において、BTKi、例えばイブルチニブの投与は、対象から試料を得る5~7日前または少なくとも約5~7日前、例えば7日前に開始され、リンパ球枯渇療法の開始までのBTKi、例えばイブルチニブの投与、リンパ球枯渇療法中のBTKi、例えばイブルチニブの投与の中断または一時中止、および細胞療法の投与開始後3ヶ月以上に及ぶ期間にわたるBTKi、例えばイブルチニブの再開またはさらなる投与を含む投与レジメンで実行され、ここでは、BTKi、例えばイブルチニブが、その投与レジメン中に投与が行われる各日に、1日1回、140または約140mg~560または約560mgの量で投与される。いくつかの態様において、投与が行われる日の1日あたりのBTKi、例えばイブルチニブの投与は、280または約280mg~560または約560mgである。いくつかの態様において、BTKi、例えばイブルチニブの投与は、対象から試料を得る7日前または少なくとも約7日前に開始される。
【0395】
いくつかの態様において、BTKi、例えばイブルチニブの投与は、細胞療法の投与を開始する30または約30日~約40日前に開始され、試料は細胞療法の投与を開始する23または約23日~約38日前に対象から得られ、および/またはリンパ球枯渇療法は、細胞療法の投与を開始する5~7日または約5~7日前、例えば7日前に完了させる。
【0396】
いくつかの態様において、BTKi、例えばイブルチニブの投与は、細胞療法の投与を開始する35または約35日前に開始され、試料は細胞療法の投与を開始する28または約28日~約32日前に対象から得られ、および/またはリンパ球枯渇療法は、細胞療法の投与を開始する約5~約7日前、例えば7日前に完了させる。
【0397】
BTKiの阻害剤、例えばイブルチニブが細胞療法の投与開始前に投与されるそのような態様のいくつかにおいて、BTKiの投与は、細胞療法の開始まで、および/または細胞療法の開始後、しばらくの間は、規則的間隔で継続される。
【0398】
任意のそのような上記態様のいくつかにおいて、BTKi、例えばイブルチニブは、細胞療法の投与の開始前または開始後に投与される。いくつかの態様において、BTKi、例えばイブルチニブ、例えばイブルチニブは、細胞療法の投与後に、投与され、または継続され、および/またはさらに投与される。いくつかの態様において、BTKi、例えばイブルチニブは、細胞療法の投与の開始と同時に投与されるか、または細胞療法の投与開始後、1時間、2時間、6時間、12時間、24時間、48時間、96時間、4日、5日、6日もしくは7日、14日、15日、21日、24日、28日、30日、36日、42日、60日、72日、90日、120日、180日、210日、240日、270日、300日、330日、360日もしくは720日以内、または約1時間、2時間、6時間、12時間、24時間、48時間、96時間、4日、5日、6日もしくは7日、14日、15日、21日、24日、28日、30日、36日、42日、60日、72日、90日、120日、180日、210日、240日、270日、300日、330日、360日もしくは720日以内に投与される。いくつかの態様において、提供される方法は、細胞療法の投与開始後に、例えば、細胞療法の開始後、前記の期間のいずれかの継続期間にわたる、BTKi、例えばイブルチニブの、例えば規則的間隔での、継続投与および/またはさらなる投与を伴う。
【0399】
いくつかの態様において、BTKi、例えばイブルチニブは、細胞療法の投与後1日もしくは約1日まで、2日もしくは約2日まで、3日もしくは約3日まで、4日もしくは約4日まで、5日もしくは約5日まで、6日もしくは約6日まで、7日もしくは約7日まで、12日もしくは約12日まで、14日もしくは約14日まで、21日もしくは約21日まで、24日もしくは約24日まで、28日もしくは約28日まで、30日もしくは約30日まで、35日もしくは約35日まで、42日もしくは約42日まで、60日もしくは約60日まで、または90日もしくは約90日まで、120日もしくは約120日まで、180日もしくは約180日まで、240日もしくは約240日まで、360日もしくは約360日まで、または720日もしくは約720日まで、またはそれ以上にわたって、継続され、および/またはさらに投与され、例えば、毎日投与される。いくつかの態様において、BTKi、例えばイブルチニブは、細胞の投与後1週、2週、3週、4週、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、1年もしくは2年まで、または約1週、2週、3週、4週、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、1年もしくは2年まで、またはそれ以上にわたって、継続され、および/またはさらに投与され、例えば、毎日投与される。いくつかの態様において、例えばBTKi、例えばイブルチニブの継続的投与および/またはさらなる投与の期間は、細胞療法の投与開始後、4ヶ月または約4ヶ月または4ヶ月超に及ぶ。いくつかの態様において、例えばBTKi、例えばイブルチニブの継続的投与の期間は、細胞療法の投与開始後、5ヶ月または約5ヶ月または5ヶ月超に及ぶ。いくつかの態様において、例えばBTKi、例えばイブルチニブの継続的投与の期間は、細胞療法の投与開始後、6ヶ月または約6ヶ月または6ヶ月超に及ぶ。
【0400】
いくつかの態様において、BTKi、例えばイブルチニブの投与は、少なくとも3ヶ月間に及ぶ。いくつかの態様において、BTKi、例えばイブルチニブの投与は、細胞療法の投与開始後、90日もしくは約90日、100日もしくは約100日、105日もしくは約105日、110日もしくは約110日、115日もしくは約115日、120日もしくは約120日、125日もしくは約125日、130日もしくは約130日、135日もしくは約135日、140日もしくは約140日、145日もしくは約145日、150日もしくは約150日、155日もしくは約155日、160日もしくは約160日、165日もしくは約165日、170日もしくは約170日、175日もしくは約175日、180日もしくは約180日、185日もしくは約185日、190日もしくは約190日、195日もしくは約195日、200日もしくは約200日の期間またはそれ以上に及ぶ。
【0401】
いくつかの態様において、BTKi、例えばイブルチニブは、それぞれ両端の値を含む、50mg~420mg、50mg~400mg、50mg~380mg、50mg~360mg、50mg~340mg、50mg~320mg、50mg~300mg、50mg~280mg、100mg~400mg、100mg~380mg、100mg~360mg、100mg~340mg、100mg~320mg、100mg~300mg、100mg~280mg、100mg~200mg、140mg~400mg、140mg~380mg、140mg~360mg、140mg~340mg、140mg~320mg、140mg~300mg、140mg~280mg、140mg~200mg、180mg~400mg、180mg~380mg、180mg~360mg、180mg~340mg、180mg~320mg、180mg~300mg、180mg~280mg、200mg~400mg、200mg~380mg、200mg~360mg、200mg~340mg、200mg~320mg、200mg~300mg、200mg~280mg、220mg~400mg、220mg~380mg、220mg~360mg、220mg~340mg、220mg~320mg、220mg~300mg、220mg~280mg、240mg~400mg、240mg~380mg、240mg~360mg、240mg~340mg、240mg~320mg、240mg~300mg、240mg~280mg、280mg~420mgもしくは300mg~400mg、または約50mg~420mg、50mg~400mg、50mg~380mg、50mg~360mg、50mg~340mg、50mg~320mg、50mg~300mg、50mg~280mg、100mg~400mg、100mg~380mg、100mg~360mg、100mg~340mg、100mg~320mg、100mg~300mg、100mg~280mg、100mg~200mg、140mg~400mg、140mg~380mg、140mg~360mg、140mg~340mg、140mg~320mg、140mg~300mg、140mg~280mg、140mg~200mg、180mg~400mg、180mg~380mg、180mg~360mg、180mg~340mg、180mg~320mg、180mg~300mg、180mg~280mg、200mg~400mg、200mg~380mg、200mg~360mg、200mg~340mg、200mg~320mg、200mg~300mg、200mg~280mg、220mg~400mg、220mg~380mg、220mg~360mg、220mg~340mg、220mg~320mg、220mg~300mg、220mg~280mg、240mg~400mg、240mg~380mg、240mg~360mg、240mg~340mg、240mg~320mg、240mg~300mg、240mg~280mg、280mg~420mgもしくは300mg~400mgの投薬量で投与される。
【0402】
いくつかの態様において、BTKi、例えばイブルチニブは、少なくとも50mg/日、100mg/日、140mg/日、150mg/日、175mg/日、200mg/日、250mg/日、280mg/日、300mg/日、350mg/日、400mg/日、420mg/日、440mg/日、460mg/日、480mg/日、500mg/日、520mg/日、540mg/日、560mg/日、580mg/日、600mg/日、700mg/日、750mg/日、800mg/日、850mg/日もしくは960mg/日、または少なくとも約50mg/日、100mg/日、140mg/日、150mg/日、175mg/日、200mg/日、250mg/日、280mg/日、300mg/日、350mg/日、400mg/日、420mg/日、440mg/日、460mg/日、480mg/日、500mg/日、520mg/日、540mg/日、560mg/日、580mg/日、600mg/日、700mg/日、750mg/日、800mg/日、850mg/日もしくは960mg/日の総1日投薬量で投与される。いくつかの態様において、阻害剤は420または約420mg/日の量で投与される。いくつかの態様において、阻害剤は、560mg/日未満または約560mg/日未満かつ少なくとも約140mg/日または少なくとも140mg/日の量で投与される。いくつかの態様において、阻害剤は、420mg/日未満または約420mg/日未満かつ少なくとも約280mg/日または少なくとも280mg/日の量で投与される。いくつかの態様において、阻害剤は、140mg/日、280mg/日、420mg/日もしくは560mg/日、または約140mg/日、280mg/日、420mg/日もしくは560mg/日、または少なくとも140mg/日、280mg/日、420mg/日もしくは560mg/日、または少なくとも約140mg/日、280mg/日、420mg/日もしくは560mg/日の量で投与される。いくつかの態様において、阻害剤は、420mg/日もしくは560mg/日、または約420mg/日もしくは560mg/日、または少なくとも420mg/日もしくは560mg/日、または少なくとも約420mg/日もしくは560mg/日の量で投与される。いくつかの態様において、阻害剤は、140mg/日、280mg/日、420mg/日または560mg/日以下の量で投与される。いくつかの態様において、阻害剤は、420mg/日または560mg/日以下の量で投与される。いくつかの態様において、この量には、BTKi、例えばイブルチニブが投与される各日につき、140または約140mg~840または約840mgが含まれる。いくつかの態様において、この量には、BTKi、例えばイブルチニブが投与される各日につき、140または約140mg~560または約560mgが含まれる。いくつかの局面において、BTKi、例えばイブルチニブは、毎日420mgもしくは約420mgの用量、または毒性を管理するために事前の用量低減が必要であれば、それより低い用量で投与される。
【0403】
いくつかの態様において、阻害剤は毎日1回投与される。いくつかの態様において、阻害剤は毎日2回投与される。
【0404】
上述の態様のうちのいずれかにおいて、イブルチニブは経口投与されうる。
【0405】
いくつかの態様において、投薬量、例えば1日量は、1つまたは複数の分割用量で、例えば2、3もしくは4回用量に分割して、または単一の製剤で投与される。阻害剤は、薬学的に許容される担体の存在下、単独で投与されるか、または他の治療作用物質の存在下で投与される。
【0406】
いくつかの局面において、BTKi、例えばイブルチニブは、細胞療法、例えばCAR T細胞療法による処置について対象を評価する時に、投与される。いくつかの態様において、BTKi、例えばイブルチニブの投与は、細胞療法、例えばCAR T細胞療法の投与開始後まで継続される。いくつかの態様において、BTKi、例えばイブルチニブは、対象を細胞療法、例えばCAR T細胞療法による処置について評価する時には投与されず、BTKi、例えばイブルチニブは、細胞療法、例えばCAR T細胞療法の開始前に投与される。
【0407】
IV. 細胞によって発現される組換え抗原受容体
いくつかの態様において、提供される方法における使用のための、または提供される方法と関連して投与される細胞は、操作された受容体、例えば操作された抗原受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)、またはT細胞受容体(TCR)を含むか、あるいは操作された受容体、例えば操作された抗原受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)、またはT細胞受容体(TCR)を含むように操作される。また、そのような細胞の集団、そのような細胞を含む組成物および/またはそのような細胞が濃縮されている組成物、例えば、特定の型の細胞、例えばT細胞またはCD8もしくはCD4細胞が濃縮または選択された組成物が提供される。当該組成物の中でも、投与用、例えば養子細胞療法用の薬学的組成物および製剤がある。また、細胞および組成物を対象に、例えば患者に、提供される方法に従って、および/または提供される製造物品もしくは組成物で投与するための治療方法が提供される。
【0408】
いくつかの態様において、細胞は、遺伝子操作によって導入された1つまたは複数の核酸を含み、それにより、そのような核酸の組換え産物または遺伝子操作産物を発現する。いくつかの態様において、遺伝子導入は、まず細胞を、例えば該細胞を、例えばサイトカインまたは活性化マーカーの発現による測定時に応答、例えば増殖、生存、および/または活性化を誘導する刺激と合わせることによって刺激した後、活性化された該細胞の形質導入、および臨床応用に充分な数までの培養での拡大増殖を行うことによって行われる。
【0409】
細胞は一般的に、組換え受容体、例えば抗原受容体、例えば機能性の非TCR抗原受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)、および他の抗原結合受容体、例えば遺伝子導入T細胞受容体(TCR)を発現する。当該受容体には、他のキメラ受容体もある。
【0410】
A. キメラ抗原受容体(CAR)
提供される方法および使用のいくつかの態様において、キメラ受容体、例えばキメラ抗原受容体は、所望の抗原(例えば、腫瘍抗原)に対する特異性をもたらすリガンド結合ドメイン(例えば、抗体または抗体断片)と細胞内シグナル伝達ドメインとを結び付ける1つまたは複数のドメインを含有する。いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、刺激性または活性化型の細胞内ドメイン部分、例えばT細胞刺激性ドメインまたはT細胞活性化ドメインであり、一次活性化シグナルまたは一次シグナルをもたらす。いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、エフェクター機能を促進するための共刺激シグナル伝達ドメインを含有または追加で含有する。いくつかの態様において、キメラ受容体は、免疫細胞において遺伝子操作されると、T細胞の活性を調節し得、いくつかの場合ではT細胞の分化または恒常性を調節し得、それにより、例えば養子細胞療法の方法における使用のための改善されたインビボでの長寿命、生存性、および/または持続性を有する遺伝子操作された細胞がもたらされ得る。
【0411】
例示的な抗原受容体、例えばCAR、ならびにそのような受容体を改変して細胞内に導入するための方法としては、例えば、国際特許出願公開公報第200014257号、同第2013126726号、同第2012/129514号、同第2014031687号、同第2013/166321号、同第2013/071154、同第2013/123061号 米国特許出願公開第2002131960号、同第2013287748号、同第20130149337号、米国特許第6,451,995号、同第7,446,190号、同第8,252,592号、同第8,339,645号、同第8,398,282号、同第7,446,179号、同第6,410,319号、同第7,070,995号、同第7,265,209号、同第7,354,762号、同第7,446,191号、同第8,324,353号および同第8,479,118号ならびに欧州特許第2537416号に記載のものおよび/またはSadelain et al., Cancer Discov.2013 April;3(4):388-398;Davila et al.(2013)PLoS ONE 8(4):e61338;Turtle et al., Curr.Opin.Immunol., 2012 October;24(5):633-39;Wu et al., Cancer, 2012 March 18(2):160-75に記載のものが挙げられる。いくつかの局面において、抗原受容体としては、米国特許第7,446,190号に記載のCARおよび国際特許出願公開公報第2014055668 A1号に記載のものが挙げられる。CARの例としては、前述のいずれかの刊行物、例えばWO2014031687、US 8,339,645、US 7,446,179、US 2013/0149337、米国特許第7,446,190号、米国特許第8,389,282号、Kochenderfer et al., 2013, Nature Reviews Clinical Oncology, 10, 267-276(2013);Wang et al.(2012)J.Immunother.35(9):689-701;およびBrentjens et al., Sci Transl Med.2013 5(177)に開示されたCARが挙げられる。また、WO2014031687、US 8,339,645、US 7,446,179、US 2013/0149337、米国特許第7,446,190号および米国特許第8,389,282号も参照のこと。
【0412】
キメラ受容体(例えばCAR)は概して、細胞外抗原結合ドメイン、例えば抗体分子の一部分、概して、抗体の可変重(VH)鎖領域および/または可変軽(VL)鎖領域、例えばscFv抗体断片を含む。
【0413】
いくつかの態様において、当該受容体によって標的とされる抗原はポリペプチドである。いくつかの態様において、抗原は糖鎖または他の分子である。いくつかの態様において、抗原は、正常な細胞もしくは組織または標的とされない細胞もしくは組織と比べて、当該疾患または病態の細胞(例えば腫瘍細胞または病原体細胞)上に選択的に発現または過剰発現する。他の態様において、抗原は正常細胞上に発現し、かつ/または操作された細胞上に発現する。
【0414】
いくつかの態様において、当該受容体によって標的とされる抗原は、αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9、CAIXもしくはG250としても知られる)、がん精巣抗原、がん/精巣抗原1B(CTAG、NY-ESO-1およびLAGE-2としても知られる)、がん胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフ型ケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、III型上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;Fc受容体ホモログ5もしくはFCRH5としても知られる)、胎児型アセチルコリン受容体(胎児型AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、グリピカン-3(GPC3)、Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5メンバーD(GPCR5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量メラノーマ関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Rα)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Rα2)、キナーゼインサートドメイン受容体(kdr)、カッパ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)、ルイスY、メラノーマ関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソテリン(MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メランA(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、腫瘍胎児性抗原、メラノーマ優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体型チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、栄養芽層糖タンパク質(TPBG 5T4としても知られる)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1、TYRP1もしくはgp75としても知られる)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2、ドパクロムトートメラーゼ、ドパクロムデルタ-イソメラーゼもしくはDCTとしても知られる)、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、病原体特異的抗原もしくは病原体発現抗原、またはユニバーサルタグに関連する抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBVもしくは他の病原体によって発現される分子の中から選択される。いくつかの態様における該受容体によって標的とされる抗原は、B細胞悪性腫瘍に関連する抗原、例えばいくつかの公知のB細胞マーカーのいずれかを含む。いくつかの態様において、当該受容体によって標的とされる抗原はCD20、CD19、CD22、ROR1、CD45、CD21、CD5、CD33、Igカッパ、Igラムダ、CD79a、CD79bもしくはCD30である。一部の態様では、抗原は、病原体特異的抗原もしくは病原体発現抗原であるか、またはそれを含む。一部の態様では、抗原は、ウイルス抗原(例えば、HIV、HCV、HBVなどに由来するウイルス抗原)、細菌性抗原、および/または寄生虫抗原である。
【0415】
一部の態様では、抗原はCD19である。一部の態様では、scFvは、CD19に特異的な抗体または抗体断片に由来するVHおよびVLを含む。一部の態様では、CD19に結合する抗体または抗体断片は、マウスに由来する抗体、例えばFMC63およびSJ25C1である。一部の態様では、抗体または抗体断片は、例えば、米国特許公開第US 2016/0152723号に記載されるような、ヒト抗体である。
【0416】
一部の態様では、scFvおよび/またはVHドメインはFMC63に由来する。FMC63は一般に、ヒト起源のCD19を発現するNalm-1および-16細胞に対して作製されたマウスモノクローナルIgG1抗体を指す(Ling, N. R., et al. (1987). Leucocyte typing III. 302)。一部の態様では、FMC63抗体は、それぞれSEQ ID NO: 38および39に示したCDR-H1およびCDR-H2、およびSEQ ID NO: 40または54に示したCDR-H3;ならびにSEQ ID NO: 35に示したCDR-L1およびSEQ ID NO: 36または55に示したCDR-L2およびSEQ ID NO: 37または56に示したCDR-L3を含む。一部の態様では、FMC63抗体は、SEQ ID NO: 41のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO: 42のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0417】
一部の態様では、scFvは、SEQ ID NO:35のCDR-L1配列、SEQ ID NO:36のCDR-L2配列、およびSEQ ID NO:37のCDR-L3配列を含む可変軽鎖、ならびに/またはSEQ ID NO:38のCDR-H1配列、SEQ ID NO:39のCDR-H2配列、およびSEQ ID NO:40のCDR-H3配列を含む可変重鎖を含む。一部の態様では、scFvは、SEQ ID NO:41に示した可変重鎖領域およびSEQ ID NO:42に示した可変軽鎖領域を含む。一部の態様では、可変重鎖および可変軽鎖はリンカーによって連結される。一部の態様では、リンカーはSEQ ID NO:24に示される。一部の態様では、scFvは、順に、VH、リンカー、およびVLを含む。一部の態様では、scFvは、順に、VL、リンカー、およびVHを含む。一部の態様では、scFvは、SEQ ID NO:25に示したヌクレオチドの配列、またはSEQ ID NO:25に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示す配列によってコードされる。一部の態様では、scFvは、SEQ ID NO:43に示したアミノ酸の配列、またはSEQ ID NO:43に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示す配列を含む。
【0418】
一部の態様では、scFvはSJ25C1に由来する。SJ25C1は、ヒト起源のCD19を発現するNalm-1および-16細胞に対して作製されたマウスモノクローナルIgG1抗体である(Ling, N. R., et al. (1987). Leucocyte typing III. 302)。一部の態様では、SJ25C1抗体は、それぞれSEQ ID NO: 47~49に示したCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3配列、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 44~46に示したCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3配列を含む。一部の態様では、SJ25C1抗体は、SEQ ID NO: 50のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO: 51のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0419】
一部の態様では、scFvは、SEQ ID NO:44のCDR-L1配列、SEQ ID NO: 45のCDR-L2配列、およびSEQ ID NO:46のCDR-L3配列を含む可変軽鎖ならびに/またはSEQ ID NO:47のCDR-H1配列、SEQ ID NO:48のCDR-H2配列、およびSEQ ID NO:49のCDR-H3配列を含む可変重鎖を含む。一部の態様では、scFvは、SEQ ID NO:50に示した可変重鎖領域およびSEQ ID NO:51に示した可変軽鎖領域を含む。一部の態様では、可変重鎖および可変軽鎖はリンカーによって連結される。一部の態様では、リンカーはSEQ ID NO:52に示される。一部の態様では、scFvは、順に、VH、リンカー、およびVLを含む。一部の態様では、scFvは、順に、VL、リンカー、およびVHを含む。一部の態様では、scFvは、SEQ ID NO:53に示したアミノ酸の配列、またはSEQ ID NO:53に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示す配列を含む。
【0420】
一部の態様では、キメラ抗原受容体は、抗体または抗体断片を含む細胞外部分を含む。一部の局面では、キメラ抗原受容体は、抗体または断片を含む細胞外部分および細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一部の態様では、抗体または断片はscFvを含む。
【0421】
用語「抗体」は本明細書において、最も広い意味で用いられ、インタクトな抗体および機能的(抗原結合)抗体断片を含む、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含み、該断片は、抗原結合性フラグメント(Fab)断片、F(ab’)2断片、Fab’断片、Fv断片、組換え IgG(rIgG)断片、抗原に特異的に結合できる重鎖可変(VH)領域、単鎖可変断片(scFv)を含む単鎖抗体断片、および単一ドメイン抗体(例えば、sdAb、sdFv、ナノボディ)断片を含む。この用語は、遺伝子操作されたおよび/または他の方法で改変された形態の免疫グロブリン、例えば、イントラボディ、ペプチボディ、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、およびヘテロコンジュゲート抗体、多重特異性、例えば二重特異性または三重特異性の抗体、ダイアボディ、トリアボディ、およびテトラボディ、タンデムdi-scFv、タンデムtri-scFvを包含する。特に明記されない限り、用語「抗体」は、本明細書において「抗原結合断片」とも呼ばれるその機能的抗体断片を包含すると理解されるべきである。この用語はまた、IgGおよびそのサブクラス、IgM、IgE、IgA、およびIgDを含む、任意のクラスまたはサブクラスの抗体を含む、インタクトなまたは全長の抗体も包含する。
【0422】
用語「相補性決定領域」および「CDR」は、「超可変領域」または「HVR」と同義であり、いくつかの場合には、抗原特異性および/または結合親和性を与える、抗体可変領域内のアミノ酸の非連続的配列を指すことが公知である。一般に、各重鎖可変領域には3つのCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)があり、各軽鎖領域には3つのCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)がある。「フレームワーク領域」および「FR」は、いくつかの場合には、重鎖および軽鎖の可変領域の非CDR部分を指すことが公知である。一般に、各完全長重鎖可変領域には4つのFR(FR-H1、FR-H2、FR-H3、およびFR-H4)があり、各完全長軽鎖可変領域には4つのFR(FR-L1、FR-L2、FR-L3、およびFR-L4)がある。
【0423】
所与のCDRまたはFRの正確なアミノ酸配列境界は、いくつかの周知の方式のいずれかを用いて容易に特定することができる。これらの方式には、Kabat et al. (1991), “Sequences of Proteins of Immunological Interest,” 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (「Kabat」番号付与方式); Al-Lazikani et al., (1997) JMB 273,927-948 (「Chothia」番号付与方式); MacCallum et al., J. Mol. Biol. 262:732-745 (1996), “Antibody-antigen interactions: Contact analysis and binding site topography,” J. Mol. Biol. 262, 732-745.” (「Contact」番号付与方式);Lefranc MP et al., “IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains,” Dev Comp Immunol, 2003 Jan;27(1):55-77 (「IMGT」番号付与方式); Honegger A and Pluckthun A, “Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains: an automatic modeling and analysis tool,” J Mol Biol, 2001 Jun 8;309(3):657-70(「Aho」番号付与方式);およびMartin et al., “Modeling antibody hypervariable loops: a combined algorithm,” PNAS, 1989, 86(23):9268-9272(「AbM」番号付与方式)によって説明されているものが含まれる。
【0424】
所与のCDRまたはFRの境界は、特定のために使用される方式に応じて変動し得る。例えば、Kabat方式は、構造アライメントに基づいているのに対し、Chothia方式は、構造情報に基づいている。Kabat方式とChothia方式のどちらの番号付与も、最も一般的な抗体領域配列長に基づいており、挿入には挿入文字、例えば「30a」によって対応し、一部の抗体には欠失が現れる。これら2つの方式は、ある種の挿入および欠失(「インデル」)を異なる位置に配置するため、異なる番号が付与される。Contact方式は、複合体結晶構造の解析に基づいており、Chothia番号付与方式と多くの点で類似している。AbM方式は、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用されているものに基づく、Kabat定義とChothia定義の折衷案である。
【0425】
下記の表8は、Kabat、Chothia、AbM、およびContact方式によってそれぞれ特定された、CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3およびCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3の例示的な位置境界を一覧にしている。CDR-H1について、残基の番号付与は、Kabat番号付与方式およびChothia番号付与方式の両方を用いて記載されている。FRはCDRの間に位置しており、例えば、FR-L1はCDR-L1の前方に位置し、FR-L2はCDR-L1とCDR-L2の間に位置し、FR-L3はCDR-L2とCDR-L3の間に位置し、以下同様である。示されているKabatの番号付与方式ではH35AおよびH35Bに挿入を配置するため、Chothia CDR-H1ループの末端は、示されているKabatの番号付与方式の慣例を用いて番号付与すると、ループの長さに応じてH32とH34の間で変動することに留意されたい。
【0426】
(表8)様々な番号付与方式に基づく、CDRの境界
1 - Kabat et al. (1991), “Sequences of Proteins of Immunological Interest,” 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD
2 - Al-Lazikani et al., (1997) JMB 273,927-948
【0427】
したがって、別段の指定が無い限り、所与の抗体またはその領域、例えばその可変領域の「CDR」もしくは「相補性決定領域」、または個々の指定されたCDR(例えば、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)は、前述の方式のいずれかまたは他の公知の方式によって定められた、ある(または具体的な)相補性決定領域を包含すると理解されるべきである。例えば、特定のCDR(例えばCDR-H3)が、所与のVH領域またはVL領域のアミノ酸配列中に対応するCDRのアミノ酸配列を含むと記載されている場合、そのようなCDRは、前述の方式のいずれかまたは他の公知の方式によって定めた場合に、対応するCDR(例えばCDR-H3)の配列を可変領域内に有していると理解される。いくつかの態様において、具体的なCDR配列が指定される。提供される抗体の例示的なCDR配列は、様々な番号付与方式を用いて説明されるが、提供される抗体は、他の前述の番号付与方式のいずれかまたは当業者に公知の他の番号付与方式に従って説明されるようなCDRを含むことができると理解される。
【0428】
同様に、別段の指定が無い限り、所与の抗体またはその領域、例えばその可変領域のFRまたは個々の指定されたFR(例えば、FR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4)は、公知の方式のいずれかによって定められる、ある(または具体的な)フレームワーク領域を包含すると理解されるべきである。場合によっては、個々のCDR、FR、または複数のFRもしくはCDRを特定するための方式は指定される。例えば、CDRは、Kabat、Chothia、AbM、もしくはContactの方法、または他の公知の方式によって定められる。他の場合において、CDRまたはFRの特定のアミノ酸配列が与えられる。
【0429】
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の抗原への結合に関与する抗体重鎖または軽鎖のドメインを指す。ネイティブな抗体の重鎖および軽鎖の可変領域(それぞれVHおよびVL)は一般に、各ドメインが4つの保存されたフレームワーク領域(FR)および3つのCDRを含む、類似の構造を有する(例えば、Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007)を参照)。単一VHまたはVLドメインが、抗原結合特異性を付与するのに十分である場合がある。さらに、特定の抗原に結合する抗体が、それぞれ相補的VLまたはVHドメインのライブラリーをスクリーニングするために、抗原に結合する抗体に由来するVHまたはVLドメインを用いて単離される場合がある。例えば、Portolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993);Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991)を参照。
【0430】
提供されるCAR中に含まれる抗体の中には、抗体断片がある。「抗体断片」または「抗原結合断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体の例としては、これらに限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2ダイアボディ;直線状抗体;重鎖可変(VH)領域、単鎖抗体分子、例えばscFv、およびVH領域のみを含む単一ドメイン抗体;ならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。一部の態様では、提供されるCARにおける抗原結合ドメインは、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)領域を含む抗体断片であるか、またはそれを含む。特定の態様では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および/または軽鎖可変(VL)領域を含む単鎖抗体断片、例えばscFvである。
【0431】
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体を抗原に結合させるのに関与している抗体重鎖または抗体軽鎖のドメインを意味する。一般に、天然抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は、類似した構造を有しており、各ドメインは、4つの保存されているフレームワーク領域(FR)および3つのCDRを含む。(例えば、Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007)を参照されたい)。単一のVHドメインまたはVLドメインが、抗原結合特異性を与えるのに十分である場合がある。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、その抗原に結合する抗体に由来するVHドメインまたはVLドメインを用いて、相補的なVLドメインまたはVHドメインのライブラリーをそれぞれスクリーニングして、単離することもできる。例えば、Portolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991)を参照されたい。
【0432】
シングルドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部を含む抗体断片である。ある特定の態様において、シングルドメイン抗体はヒトシングルドメイン抗体である。いくつかの態様において、CARは、抗原、例えば、がんマーカー、または標的化しようとする細胞もしくは疾患、例えば、腫瘍細胞もしくはがん細胞の細胞表面抗原、例えば、本明細書に記載の、または公知の任意の標的抗原に特異的に結合する抗体重鎖ドメインを含む。
【0433】
抗体断片は、インタクトな抗体のタンパク質分解消化ならびに組換え宿主細胞による生成を含むが、これに限定されない様々な技法によって作ることができる。いくつかの態様において、抗体は、組換えにより生成された断片、例えば、天然では生じない配置を含む断片、例えば、2つもしくはそれ以上の抗体領域もしくは鎖が合成リンカー、例えば、ペプチドリンカーでつながっている断片、および/または天然のインタクトな抗体の酵素消化では生成されないことがある断片である。いくつかの態様において、抗体断片はscFvである。
【0434】
「ヒト化」抗体とは、すべての、または実質的にすべてのCDRアミノ酸残基が非ヒトCDRに由来し、すべての、または実質的にすべてのFRアミノ酸残基がヒトFRに由来する抗体である。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでもよい。「ヒト化型」の非ヒト抗体とは、典型的には、親非ヒト抗体の特異性および親和性を保持しながらヒトに対する免疫原性を小さくするためにヒト化されている、非ヒト抗体のバリアントを指す。いくつかの態様において、ヒト化抗体にある、いくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を回復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、CDR残基が得られた抗体)に由来する対応する残基で置換される。
【0435】
一部の態様では、前記組換え受容体、例えば、CARの抗体部分は、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部、例えば、ヒンジ領域、例えば、IgG4ヒンジ領域、および/またはCH1/CLおよび/またはFc領域をさらに含む。一部の態様では、定常領域または定常部分はヒトIgG、例えば、IgG4またはIgG1の定常領域または定常部分である。一部の局面では、定常領域の一部は、抗原認識成分、例えば、scFvと膜貫通ドメインとの間にあるスペーサー領域として役立つ。スペーサーは、スペーサーが存在しない場合と比較して抗原結合後の前記細胞の応答性を高める長さのものでよい。例示的なスペーサーには、Hudecek et al. (2013) Clin. Cancer Res., 19:3153、国際特許出願公開番号 WO2014031687、米国特許第8,822,647号、または米国特許出願公開第US2014/0271635号に記載のスペーサーが含まれるが、これに限定されない。
【0436】
一部の態様では、定常領域または定常部分は、ヒトIgG、例えば、IgG4またはIgG1の定常領域または定常部分である。一部の態様では、スペーサーは、配列ESKYGPPCPPCP(SEQ ID NO: 1に示す)を有し、SEQ ID NO:2に示した配列によってコードされる。一部の態様では、スペーサーは、SEQ ID NO:3に示した配列を有する。一部の態様では、スペーサーは、SEQ ID NO:4に示した配列を有する。一部の態様では、定常領域または定常部分はIgDの定常領域または定常部分である。一部の態様では、スペーサーは、SEQ ID NO:5に示した配列を有する。一部の態様では、スペーサーは、SEQ ID NO:1、3、4、または5のいずれかに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはこれより多い配列同一性を示すアミノ酸配列を有する。一部の態様では、スペーサーは、SEQ ID NO:26~34に示した配列を有する。一部の態様では、スペーサーは、SEQ ID NO:26~34のいずれかと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、もしくはそれより大きい配列同一性を示すアミノ酸配列を有する。
【0437】
一部の態様では、前記抗原受容体は、細胞外ドメインに直接的または間接的に連結された細胞内ドメインを含む。一部の態様では、キメラ抗原受容体は、細胞外ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインを連結する膜貫通ドメインを含む。一部の態様では、細胞内シグナル伝達ドメインはITAMを含む。例えば、一部の局面では、抗原認識ドメイン(例えば、細胞外ドメイン)は、一般的に、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達成分、例えば、抗原受容体複合体、例えば、CARの場合はTCR複合体を介した活性化、および/または別の細胞表面受容体を介したシグナルを模倣するシグナル伝達成分に連結される。一部の態様では、キメラ受容体は、細胞外ドメイン(例えば、scFv)と細胞内シグナル伝達ドメインとの間で連結または融合された膜貫通ドメインを含む。従って、一部の態様では、抗原結合成分(例えば、抗体)は1つまたは複数の膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインに連結される。
【0438】
一態様では、前記受容体、例えば、CARにおいて前記ドメインの1つと天然で結合している膜貫通ドメインが用いられる。場合によっては、膜貫通ドメインは、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小にするために、このようなドメインと、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインとの結合を避けるように選択されるか、またはアミノ酸置換によって改変される。
【0439】
膜貫通ドメインは一部の態様では天然供給源または合成供給源のいずれかに由来する。供給源が天然の場合、前記ドメインは、一部の局面では、任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来する。膜貫通領域は、T細胞受容体のα鎖、β鎖、もしくはζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154に由来する膜貫通領域を含む(すなわち、少なくとも、これらの膜貫通領域を含む)。または、膜貫通ドメインは一部の態様では合成である。一部の局面では、合成膜貫通ドメインは、主に、疎水性残基、例えば、ロイシンおよびバリンを含む。一部の局面では、フェニルアラニン、トリプトファン、およびバリンのトリプレットが合成膜貫通ドメインの各末端に見られる。一部の態様では、連結は、リンカー、スペーサー、および/または膜貫通ドメインによるものである。一部の局面では、膜貫通ドメインはCD28の膜貫通部分を含有する。
【0440】
一部の態様では、細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインは直接的または間接的に連結することができる。一部の態様では、細胞外ドメインおよび膜貫通は、スペーサー、例えば、本明細書に記載の任意のスペーサーによって連結される。一部の態様では、前記受容体は、膜貫通ドメインが得られた分子の細胞外部分、例えば、CD28細胞外部分を含有する。
【0441】
細胞内シグナル伝達ドメインの中には、天然抗原受容体を介したシグナル、このような受容体と共刺激受容体の組み合わせを介したシグナル、および/または共刺激受容体のみを介したシグナルを模倣するか、またはこれに似せる細胞内シグナル伝達ドメインがある。一部の態様では、短いオリゴペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカー、例えば、2~10アミノ酸長のリンカー、例えば、グリシンおよびセリン、例えば、グリシン-セリンダブレット(doublet)を含有するリンカーがCARの膜貫通ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインとの間に存在し、その間に連結を形成する。
【0442】
T細胞活性化は、一部の局面では、2種類の細胞質シグナル伝達配列:TCRを介して抗原依存的一次活性化を開始する細胞質シグナル伝達配列(一次細胞質シグナル伝達配列)、および抗原非依存的に二次シグナルまたは共刺激シグナルを供給するように働く細胞質シグナル伝達配列(二次細胞質シグナル伝達配列)によって媒介されると説明される。一部の局面では、CARは、このようなシグナル伝達成分の一方または両方を含む。
【0443】
前記受容体、例えば、CARは、一般的には、少なくとも1種類の細胞内シグナル伝達成分を含む。一部の局面では、CARは、TCR複合体の一次活性化を調節する一次細胞質シグナル伝達配列を含む。刺激するように働く一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容活性化チロシンモチーフ、すなわちITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含有してもよい。ITAMを含有する一次細胞質シグナル伝達配列の例には、CD3ζ鎖、FcRγ、CD3γ、CD3δ、およびCD3εに由来する一次細胞質シグナル伝達配列が含まれる。一部の態様では、CARにある細胞質シグナル伝達分子は、CD3ζに由来する細胞質シグナル伝達ドメイン、その一部、またはCD3ζに由来する配列を含有する。
【0444】
一部の態様では、前記受容体は、TCR複合体の細胞内成分、例えば、T細胞活性化および細胞傷害性を媒介するTCR CD3鎖、例えば、CD3ζ鎖を含む。従って、一部の局面では、抗原結合部分は1つまたは複数の細胞シグナル伝達モジュールに連結される。一部の態様では、細胞シグナル伝達モジュールは、CD3膜貫通ドメイン、CD3細胞内シグナル伝達ドメイン、および/または他のCD膜貫通ドメインを含む。一部の態様では、前記受容体、例えば、CARは、1種類または複数種のさらなる分子、例えば、Fc受容体γ、CD8、CD4、CD25、またはCD16の一部をさらに含む。例えば、一部の局面では、CARまたは他のキメラ受容体には、CD3-ゼータ(CD3-ζ)またはFc受容体γと、CD8、CD4、CD25、またはCD16とのキメラ分子が含まれる。
【0445】
一部の態様では、CARまたは他のキメラ受容体が連結されると、前記受容体の細胞質ドメインまたは細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫細胞、例えば、CARを発現するように操作されたT細胞の正常なエフェクター機能または応答の少なくとも1つを活性化する。例えば、ある状況では、CARは、T細胞の機能、例えば、細胞溶解活性またはTヘルパー活性、例えば、サイトカインまたは他の因子の分泌を誘導する。一部の態様では、抗原受容体成分または共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインの切断された部分が、例えば、エフェクター機能シグナルを伝達するのであれば、インタクトな免疫賦活性鎖の代わりに用いられる。一部の態様では、細胞内シグナル伝達ドメインはT細胞受容体(TCR)の細胞質配列を含み、一部の局面では、天然の状況では、このような受容体と協調して、抗原受容体結合後にシグナル伝達を開始するように働く補助受容体の細胞質配列も含む。
【0446】
天然TCRの状況では、完全活性化には、一般的に、TCRを介したシグナル伝達だけでなく共刺激シグナルも必要とされる。従って、一部の態様では、完全活性化を促進するには、二次シグナルまたは共刺激シグナルを発生させるための成分もCARに含まれる。他の態様では、CARは、共刺激シグナルを発生させるための成分を含まない。一部の局面では、さらなるCARが同じ細胞において発現され、二次シグナルまたは共刺激シグナルを発生させるための成分を提供する。
【0447】
一部の態様では、キメラ抗原受容体はT細胞共刺激分子の細胞内ドメインを含む。一部の態様では、CARは、共刺激受容体、例えば、CD28、4-1BB、OX40、DAP10、およびICOSのシグナル伝達ドメインおよび/または膜貫通部分を含む。一部の局面では、同じCARが活性化成分と共刺激成分を両方とも含む。一部の態様では、キメラ抗原受容体は、T細胞共刺激分子に由来する細胞内ドメインまたはその機能的バリアントを、例えば、膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとの間に含む。一部の局面では、T細胞共刺激分子はCD28または41BBである。
【0448】
一部の態様では、あるCARには活性化ドメインが含まれるのに対して、別の抗原を認識する別のCARによって共刺激成分が提供される。一部の態様では、CARは活性化CARまたは刺激CAR、共刺激CARを含み、両方とも同じ細胞上に発現される(WO2014/055668を参照されたい)。一部の局面では、前記細胞は1種類または複数種の刺激CARもしくは活性化CARおよび/または共刺激CARを含む。一部の態様では、前記細胞は、阻害性CAR(iCAR。Fedorov et al., Sci. Transl. Medicine, 5(215)(December, 2013)を参照されたい。例えば、前記疾患もしくは状態に関連する、および/または前記疾患もしくは状態に特異的な抗原以外の抗原を認識するCAR。例えば、オフターゲット効果を小さくするために、疾患標的指向CARを通じて送達された活性化シグナルは、阻害性CARとそのリガンドが結合することによって減弱または阻害される)をさらに含む。
【0449】
ある特定の態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3(例えば、CD3-ζ)細胞内ドメインと連結したCD28膜貫通およびシグナル伝達ドメインを含む。一部の態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ細胞内ドメインと連結したキメラCD28およびCD137(4-1BB、TNFRSF9)共刺激ドメインを含む。
【0450】
一部の態様では、CARは、細胞質部分に、1つまたは複数の、例えば、2つ以上の、共刺激ドメインおよび活性化ドメイン、例えば、一次活性化ドメインを含む。例示的なCARは、CD3ζ、CD28、および4-1BBの細胞内成分を含む。
【0451】
一部の態様では、抗原受容体をコードするベクター、および/またはCARもしくは他の抗原受容体を発現する細胞は、1つまたは複数のマーカーをコードする核酸配列をさらに含む。一部の態様では、1つまたは複数のマーカーは、形質導入マーカー、サロゲートマーカー、および/または選択マーカーである。一部の態様では、マーカーは、サロゲートマーカー、例えば細胞表面マーカーであり、受容体を発現するような細胞の形質導入または操作を確認するために用いられ得る。
【0452】
一部の態様では、マーカーは形質導入マーカーまたはサロゲートマーカーである。形質導入マーカーまたはサロゲートマーカーは、ポリヌクレオチド、例えば組換え受容体をコードするポリヌクレオチドが導入されている細胞を検出するために用いることができる。一部の態様では、形質導入マーカーは、細胞の改変を示すまたは確認することができる。一部の態様では、サロゲートマーカーは、組換え受容体、例えばCARと共に細胞表面上に共発現するように作製されるタンパク質である。特定の態様では、そのようなサロゲートマーカーは、活性をほとんどまたは全く有さないように改変されている表面タンパク質である。ある特定の態様では、サロゲートマーカーは、組換え受容体をコードする同じポリヌクレオチド上にコードされる。一部の態様では、組換え受容体をコードする核酸配列は、任意で配列内リボソーム進入部位(IRES)によって分けられる、マーカーをコードする核酸配列、または自己切断ペプチドもしくはリボソームスキッピングをもたらすペプチド、例えば、T2A、P2A、E2A、もしくはF2Aなどの2A配列をコードする核酸に機能的に連結される。外因性マーカー遺伝子が、一部の場合において、細胞の検出または選択を可能にし、場合によっては、細胞自殺も促進するように操作された細胞に関連して利用され得る。
【0453】
例示的なサロゲートマーカーとしては、細胞表面ポリペプチドの切断型、例えば、非機能性であり、かつシグナルもしくは細胞表面ポリペプチドの全長型により通常伝達されるシグナルを伝達しないかまたは伝達できない、かつ/または内部移行しないかまたは内部移行できない、切断型が挙げることができる。例示的な切断型細胞表面ポリペプチドとしては、成長因子または他の受容体の切断型、例えば、切断型ヒト上皮成長因子受容体2(tHER2)、切断型上皮増殖因子受容体(tEGFR、SEQ ID NO:11または76に示される例示的なtEGFR配列)、もしくは前立腺特異的膜抗原(PSMA)、またはその改変型が挙げられる。tEGFRは、tEGFR構築物により操作されている細胞およびコードされる外因性タンパク質を特定もしくは選択する、かつ/またはコードされる外因性タンパク質を発現する細胞を除去もしくは分離するために用いることができる、抗体セツキシマブ(Erbitux(登録商標))または他の治療用抗EGFR抗体もしくは結合分子によって認識されるエピトープを含み得る。米国特許第8,802,374号およびLiu et al., Nature Biotech. 2016 April; 34(4): 430-434)を参照。一部の局面では、マーカー、例えばサロゲートマーカーには、CD34、NGFR、CD19、もしくは切断型CD19、例えば、切断型非ヒトCD19、または上皮増殖因子受容体(例えば、tEGFR)の全部または一部(例えば、切断型)が含まれる。一部の態様では、マーカーは、蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)、例えばスーパーフォールド(super-fold)GFP(sfGFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、例えばtdTomato、mCherry、mStrawberry、AsRed2、DsRedまたはDsRed2、シアン蛍光タンパク質(CFP)、青緑色蛍光タンパク質(BFP)、強化青色蛍光タンパク質(EBFP)、および黄色蛍光タンパク質(YFP)、ならびにこれらの蛍光タンパク質の種バリアント、単量体バリアント、およびコドン最適化および/または強化バリアントを含むそれらのバリアントであるか、またはそれらを含む。一部の態様では、マーカーは、酵素、例えばルシフェラーゼ、大腸菌(E. coli)由来のLacZ遺伝子、アルカリホスファターゼ、分泌型胚性アルカリホスファターゼ(secreted embryonic alkaline phosphatase)(SEAP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)であるかまたはそれを含む。例示的な発光レポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ(luc)、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-グルクロニダーゼ(GUS)、またはそのバリアントが挙げられる。
【0454】
一部の態様では、マーカーは選択マーカーである。一部の態様では、選択マーカーは、外因性の作用物質または薬物に対する耐性を付与するポリペプチドであるかまたはそれを含む。一部の態様では、選択マーカーは抗生物質耐性遺伝子である。一部の態様では、選択マーカーは、哺乳類細胞に対して抗生物質耐性を付与する抗生物質耐性遺伝子である。一部の態様では、選択マーカーは、ピューロマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ジェネテシン耐性遺伝子、もしくはゼオシン耐性遺伝子、またはその改変型であるかまたはそれを含む。
【0455】
一部の態様では、分子は非自己分子、例えば、非自己タンパク質、すなわち、細胞が養子移入される宿主の免疫系によって「自己」として認識されないものである。
【0456】
一部の態様では、マーカーは、治療機能を果たさない、および/または遺伝子操作するための、例えば、成功裏に操作された細胞を選択するためのマーカーとして用いられる以外の作用を生じない。他の態様では、マーカーは、治療用分子または何らかの望ましい作用を他の方法で発揮する分子、例えば、細胞がインビボで遭遇するリガンド、例えば、養子移入時に細胞の応答を増強するおよび/または弱めるならびにリガンドに遭遇するための共刺激分子または免疫チェックポイント分子であってもよい。
【0457】
一部の態様では、マーカーをコードする核酸は、リンカー配列、例えば切断可能なリンカー配列、例えばT2Aをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結される。例えば、マーカーおよび任意でリンカー配列は、PCT公開第WO2014031687号に開示されるいずれかであり得る。例えば、マーカーは、任意でリンカー配列、例えばT2A切断可能リンカー配列に連結される、切断型EGFR(tEGFR)であり得る。
【0458】
切断型EGFR(例えば、tEGFR)の例示的なポリペプチドは、SEQ ID NO: 7もしくは16に示したアミノ酸の配列、またはSEQ ID NO: 7もしくは16に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれを上回る配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む。例示的なT2Aリンカー配列は、SEQ ID NO: 6もしくは17に示したアミノ酸の配列、またはSEQ ID NO: 6もしくは17に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれを上回る配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む。
【0459】
一部の態様では、マーカーは、T細胞上に天然で見出されないか、もしくはT細胞の表面に天然で見出されない分子、例えば、細胞表面タンパク質、またはその一部である。
【0460】
場合によっては、CARは、第一世代CAR、第二世代CAR、および/または第三世代CARと呼ばれる。一部の局面では、第一世代CARは、抗原が結合した時に、CD3鎖によって誘導されるシグナルしか生じないCARである。一部の局面では、第二世代CARは、このようなシグナルと共刺激シグナルを生じるCAR、例えば、CD28またはCD137などの共刺激受容体に由来する細胞内シグナル伝達ドメインを含むCARである。一部の局面では、第三世代CARは、異なる共刺激受容体の複数の共刺激ドメインを含むCARである。
【0461】
例えば、一部の態様では、CARは、抗体、例えば、抗体断片と、CD28の膜貫通部分もしくはその機能的バリアントであるか、またはそれを含む膜貫通ドメインと、CD28のシグナル伝達部分もしくはその機能的バリアントおよびCD3ζのシグナル伝達部分もしくはその機能的バリアントを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一部の態様では、CARは、抗体、例えば、抗体断片と、CD28の膜貫通部分もしくはその機能的バリアントであるか、またはそれを含む膜貫通ドメインと、4-1BBのシグナル伝達部分もしくはその機能的バリアントおよびCD3ζのシグナル伝達部分もしくはその機能的バリアントを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一部のこのような態様では、前記受容体は、Ig分子の一部、例えば、ヒトIg分子の一部、例えば、Igヒンジ、例えば、IgG4ヒンジを含むスペーサー、例えば、ヒンジのみのスペーサーをさらに含む。
【0462】
一部の態様では、前記組換え受容体、例えば、CARの膜貫通ドメインはヒトCD28の膜貫通ドメイン(例えば、アクセッション番号P01747.1)もしくはそのバリアント、例えば、SEQ ID NO:8に示したアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:8と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、もしくはそれより大きい配列同一性を示すアミノ酸配列を含む膜貫通ドメインであるか、あるいはこれを含む。一部の態様では、組換え受容体の膜貫通ドメイン含有部分は、SEQ ID NO:9に示したアミノ酸配列、あるいはSEQ ID NO:9と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、もしくはそれより大きい配列同一性、またはSEQ ID NO:9と少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、もしくはそれより大きい配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0463】
一部の態様では、前記組換え受容体、例えば、CARの細胞内シグナル伝達成分は、ヒトCD28の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインまたはその機能的バリアントもしくは部分、例えば、天然CD28タンパク質の位置186-187においてLL→GG置換のあるドメインを含む。例えば、細胞内シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:10もしくは11に示したアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:10もしくは11と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、もしくはこれより多い配列同一性を示すアミノ酸配列を含んでもよい。一部の態様では、細胞内ドメインは、4-1BBの細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン(例えば、(アクセッション番号Q07011.1))またはその機能的バリアントもしくは部分、例えば、SEQ ID NO:12に示したアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:12と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、もしくはこれより多い配列同一性を示すアミノ酸配列を含む。
【0464】
一部の態様では、組換え受容体、例えば、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ζ刺激シグナル伝達ドメインまたはその機能的バリアント、例えば、ヒトCD3ζのアイソフォーム3の112 AA細胞質ドメイン(アクセッション番号:P20963.2)、または米国特許第7,446,190号もしくは米国特許第8,911,993号に記載のCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。例えば、一部の態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:13、14、もしくは15に示したアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:13、14、もしくは15と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、もしくはこれより多い配列同一性を示すアミノ酸配列を含む。
【0465】
一部の局面では、スペーサーは、IgGのヒンジ領域しか含まず、例えば、IgG4またはIgG1のヒンジ領域しか含まず、例えば、SEQ ID NO:1に示した、ヒンジのみのスペーサーを含む。他の態様では、スペーサーは、任意で、CH2ドメインおよび/またはCH3ドメインに連結された、Igヒンジ、例えば、IgG4由来ヒンジであるか、これを含有する。一部の態様では、スペーサーは、例えば、SEQ ID NO:4に示した、CH2ドメインおよびCH3ドメインに連結されたIgヒンジ、例えば、IgG4ヒンジである。一部の態様では、スペーサーは、例えば、SEQ ID NO:3に示した、CH3ドメインだけに連結されたIgヒンジ、例えば、IgG4ヒンジである。一部の態様では、スペーサーは、グリシン-セリンリッチ配列もしくは他のフレキシブルリンカー、例えば、公知のフレキシブルリンカーであるか、またはこれを含む。
【0466】
例えば、一部の態様では、CARは、抗体、例えば、scFvを含む抗体断片と、スペーサー、例えば、免疫グロブリン分子の一部、例えば、ヒンジ領域および/または重鎖分子の1つもしくは複数の定常領域を含むスペーサー、例えば、Ig-ヒンジ含有スペーサーと、CD28由来膜貫通ドメインの全てまたは一部を含む膜貫通ドメインと、CD28由来細胞内シグナル伝達ドメインと、CD3ζシグナル伝達ドメインを含む。一部の態様では、CARは、抗体または断片、例えば、scFvと、スペーサー、例えば、任意のIg-ヒンジ含有スペーサーと、CD28由来膜貫通ドメインと、4-1BB由来細胞内シグナル伝達ドメインと、CD3ζ由来シグナル伝達ドメインを含む。
【0467】
特定の態様において、CARは、FMC63由来のscFv抗原結合ドメイン; 免疫グロブリンヒンジスペーサー、膜貫通ドメイン、ならびに4-1BBのシグナル伝達ドメインおよびCD3-ゼータ(CD3ζ)鎖のシグナル伝達ドメインである共刺激シグナル伝達領域を含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むCD19指向性CARである。いくつかの態様において、scFvは、SEQ ID NO:43に記載される配列を含む。いくつかの態様において、scFvは、アミノ酸配列RASQDISKYLN (SEQ ID NO: 35)、SRLHSGV (SEQ ID NO: 36)のアミノ酸配列、およびGNTLPYTFG (SEQ ID NO: 37)のアミノ酸配列を有するCDRを有するVL; ならびにDYGVS (SEQ ID NO: 38)のアミノ酸配列、VIWGSETTYYNSALKS (SEQ ID NO: 39)のアミノ酸配列およびYAMDYWG (SEQ ID NO: 40))を有するCDRを有するVHを有する。いくつかの態様において、膜貫通ドメインは、SQ ID NO:8に記載される配列を有する。いくつかの態様において、膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:8と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有する配列を有する。いくつかの態様において、4-1BB共刺激シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:12に記載される配列を有する。いくつかの態様において、4-1BB共刺激シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:12と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性の配列を有する。いくつかの態様において、CD3ゼータドメインは、SEQ ID NO: 13に記載される配列を有する。いくつかの態様において、CD3ゼータシグナル伝達ドメインは、それと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有する配列を有する。いくつかの態様において、CD19指向性CARは、CD19に結合し、T細胞において発現され、例えばCD19への結合により、CARを介して刺激されると、CD19+標的細胞に対するサイトカイン産生および/または細胞毒性活性を媒介する。
【0468】
一部の態様では、このようなCAR構築物をコードする核酸分子は、T2Aリボソームスキップエレメントおよび/もしくはtEGFR配列をコードする配列を、例えば、CARをコードする配列の下流にさらに含む。一部の態様では、前記配列は、SEQ ID NO:6もしくは17に示したT2Aリボソームスキップエレメント、またはSEQ ID NO:6もしくは17と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、もしくはそれより大きい配列同一性を示すアミノ酸配列をコードする。一部の態様では、抗原受容体(例えば、CAR)を発現するT細胞はまた、(例えば、同じ構築物から2種類のタンパク質を発現するように、T2Aリボソームスイッチによって分けられたCARおよびEGFRtをコードする構築物を導入することによって)非免疫原性選択エピトープとして切断型EGFR(EGFRt)を発現させ、次いで、このような細胞を検出するためのマーカーとして使用できるように作製することもできる(例えば、米国特許第8,802,374号を参照されたい)。一部の態様では、前記配列は、SEQ ID NO:7もしくは16に示したtEGFR配列、またはSEQ ID NO:7もしくは16と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の、もしくはそれより大きい配列同一性を示すアミノ酸配列をコードする。
【0469】
一部の態様では、1つのプロモーターは、1つのオープンリーディングフレーム(ORF)中に、自己切断ペプチド(例えば、2A配列)またはプロテアーゼ認識部位(例えば、フリン)をコードする配列によって相互に分けられる2つまたは3つの遺伝子(例えば、代謝経路の調節に関与する分子をコードする遺伝子および組換え受容体をコードする遺伝子)を含む、RNAの発現を方向付け得る。したがって、ORFは、翻訳時(2Aの場合)または翻訳後のいずれかに、個々のタンパク質へとプロセシングされる、1つのポリペプチドをコードする。いくつかの場合において、T2Aなどのペプチドは、2AエレメントのC末端におけるペプチド結合の合成をリボソームに読み飛ばさせて(リボソームスキッピング)、2A配列の末端と次の下流ペプチドの間で分離させることができる(例えば、de Felipe. Genetic Vaccines and Ther. 2:13 (2004)およびde Felipe et al. Traffic 5:616-626 (2004)を参照されたい)。多くの2Aエレメントは、公知である。本明細書において開示される方法および核酸において使用できる2A配列の例には、非限定的に、米国特許出願公開第20070116690号に記載されている口蹄疫ウイルス由来の2A配列(F2A、例えばSEQ ID NO: 21)、ウマ鼻炎Aウイルス由来の2A配列(E2A、例えばSEQ ID NO: 20)、ゾーシーアシグナウイルス由来の2A配列(T2A、例えばSEQ ID NO: 6または17)、およびブタテッショウウイルス-1由来の2A配列(P2A、例えばSEQ ID NO: 18または19)である。
【0470】
対象に投与された細胞によって発現される、CARなどの組換え受容体は、処置される疾患もしくは病態またはその細胞において発現されるか、それに関連するか、かつ/またはそれに特異的である分子を認識するか、または特異的に結合するのが通常である。分子、例えば抗原に特異的に結合すると、受容体は、通常、ITAM形質導入シグナルなどの免疫刺激シグナルを細胞中に送達し、それによって疾患または病態を標的とする免疫応答を促進する。例えば、いくつかの態様において、細胞は、疾患もしくは病態の細胞もしくは組織によって発現されるかまたは疾患もしくは病態に関連する抗原に特異的に結合するCARを、発現する。
【0471】
B. T細胞受容体(TCR)
いくつかの態様において、提供される方法、使用、製造物品、または組成物とともに使用される操作された細胞、例えばT細胞は、標的ポリペプチド、例えば、腫瘍タンパク質、ウイルスタンパク質、または自己免疫タンパク質といった抗原のペプチドエピトープまたはT細胞エピトープを認識するT細胞受容体(TCR)またはその抗原結合部分を発現する細胞である。
【0472】
いくつかの態様において、「T細胞受容体」または「TCR」は、可変α鎖およびβ鎖(それぞれTCRαおよびTCRβとしても公知である)もしくは可変γ鎖およびδ鎖(それぞれTCRαおよびTCRβとしても公知である)またはそれらの抗原結合部分を含み、かつMHC分子に結合したペプチドに特異的に結合することができる、分子である。いくつかの態様において、TCRはαβ型である。典型的には、αβ型およびγδ型で存在するTCRは全般的に構造が類似しているが、それらを発現するT細胞は、解剖学的位置または機能が独特であり得る。TCRは、細胞の表面に、または可溶型で、存在することができる。通常、TCRは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合した抗原を認識することに一般に関与している場合、T細胞(またはTリンパ球)の表面に見出される。
【0473】
別段の定めが無い限り、用語「TCR」は、完全なTCRおよびその抗原結合部分または抗原結合断片を包含すると理解されるべきである。いくつかの態様において、TCRは、αβ型またはγδ型のTCRを含む、インタクトTCRまたは完全長TCRである。いくつかの態様において、TCRは、完全長より短いTCRであるが、MHC分子に結合した特定のペプチドに結合する、例えばMHC-ペプチド複合体に結合する、抗原結合部分である。いくつかの場合において、TCRの抗原結合部分または断片は、完全長TCRまたはインタクトTCRの構造ドメインの一部のみを含む場合があるが、それでもなお、完全なTCRが結合するペプチドエピトープ、例えばMHC-ペプチド複合体に結合する能力を有する。いくつかの場合において、抗原結合部分は、特定のMHC-ペプチド複合体に結合するための結合部位を形成するのに十分なTCRの可変ドメイン、例えばTCRの可変α鎖および可変β鎖を含む。一般に、TCRの可変鎖は、ペプチド、MHC、および/またはMHC-ペプチド複合体の認識に関与する相補性決定領域を含む。
【0474】
いくつかの態様において、TCRの可変ドメインは、一般に抗原認識ならびに結合能力および特異性に対する主な寄与因子である、超可変ループまたは相補性決定領域(CDR)を含む。いくつかの態様において、TCRのCDRまたはそれらの組合せは、所与のTCR分子の抗原結合部位の全部または実質的に全部を形成する。TCR鎖の可変領域内の様々なCDRは、一般に、CDRと比較してTCR分子間で一般にばらつきがより少ないフレームワーク領域(FR)によって隔てられている(例えばJores et al.,Proc.Nat'l Acad.Sci.U.S.A.87:9138,1990;Chothia et al.,EMBO J.7:3745,1988参照;またLefranc et al.,Dev.Comp.Immunol.27:55,2003も参照のこと)。いくつかの態様において、CDR3は、抗原結合もしくは特異性に関与する主なCDRであるか、または抗原認識および/もしくはペプチド-MHC複合体のプロセシングされたペプチド部分との相互作用のために、所与のTCR可変領域上の3つのCDRのうちで最も重要である。いくつかの状況では、α鎖のCDR1は特定の抗原ペプチドのN末端部分と相互作用することができる。いくつかの状況では、β鎖のCDR1はペプチドのC末端部分と相互作用することができる。いくつかの状況では、CDR2は、MHC-ペプチド複合体のMHC部分との相互作用またはMHC部分の認識に最も強く寄与するか、またはそれに関与する主要なCDRである。いくつかの態様において、β鎖の可変領域は、一般にスーパー抗原結合に関与し、抗原認識には関与しないさらなる超可変領域(CDR4またはHVR4)を含み得る(Kotb(1995)Clinical Microbiology Reviews,8:411-426)。
【0475】
いくつかの態様において、TCRはまた、定常ドメイン、膜貫通ドメインおよび/または短い細胞質尾部を含み得る(例えばJaneway et al.,Immunobiology:The Immune System in Health and Disease,3rd Ed.,Current Biology Publications,p.4:33,1997参照)。いくつかの局面では、TCRの各々の鎖は、1つのN末端免疫グロブリン可変ドメイン、1つの免疫グロブリン定常ドメイン、膜貫通領域、およびC末端に短い細胞質尾部を有し得る。いくつかの態様において、TCRは、シグナル伝達の媒介に関与するCD3複合体のインバリアントタンパク質と会合している。
【0476】
いくつかの態様において、TCR鎖は1つまたは複数の定常ドメインを含む。例えば、所与のTCR鎖(例えばα鎖またはβ鎖)の細胞外部分は、2つの免疫グロブリン様ドメイン、例えば可変ドメイン(例えばVαまたはVβ;典型的にはKabat番号付与に基づき鎖のアミノ酸1~116位、Kabat et al.,“Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept. Health and Human Services,Public Health Service National Institutes of Health,1991,5th ed.)、および細胞膜に隣接する定常ドメイン(例えばα鎖定常ドメインもしくはCα、典型的にはKabat番号付与に基づき鎖の117~259位またはβ鎖定常ドメインもしくはCβ、典型的にはKabatに基づき鎖の117~295位)を含み得る。例えば、いくつかの場合には、2本の鎖によって形成されるTCRの細胞外部分は、2つの膜近位定常ドメイン、および2つの膜遠位可変ドメインを含み、これらの可変ドメインはそれぞれCDRを含む。TCRの定常ドメインは、システイン残基がジスルフィド結合を形成し、それによってTCRの2本の鎖を連結する短い連結配列を含み得る。いくつかの態様において、TCRが定常ドメイン内に2つのジスルフィド結合を含むように、TCRは、α鎖およびβ鎖のそれぞれにさらなるシステイン残基を有し得る。
【0477】
いくつかの態様において、TCR鎖は膜貫通ドメインを含む。いくつかの態様において、膜貫通ドメインは正に荷電している。いくつかの場合には、TCR鎖は細胞質尾部を含む。いくつかの場合には、その構造は、TCRがCD3およびそのサブユニットのような他の分子と会合することを可能にする。例えば、膜貫通領域を有する定常ドメインを含むTCRは、タンパク質を細胞膜に固定し、CD3シグナル伝達装置または複合体のインバリアントサブユニットと会合し得る。CD3シグナル伝達サブユニット(例えばCD3γ、CD3δ、CD3εおよびCD3ζ鎖)の細胞内尾部は、TCR複合体のシグナル伝達能力に関与する1つまたは複数の免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフまたはITAMを含む。
【0478】
いくつかの態様において、TCRは、2本の鎖αおよびβ(または任意でγおよびδ)のヘテロ二量体であり得るか、または一本鎖TCR構築物であり得る。いくつかの態様において、TCRは、1つまたは複数のジスルフィド結合などによって連結されている2本の別々の鎖(α鎖とβ鎖またはγ鎖とδ鎖)を含むヘテロ二量体である。
【0479】
いくつかの態様において、TCRは、実質的に完全長のコード配列が容易に利用可能であるVα,β鎖の配列などの公知のTCR配列から生成することができる。細胞供給源から、V鎖配列を含む完全長TCR配列を得るための方法は周知である。いくつかの態様において、TCRをコードする核酸は、所与の1つまたは複数の細胞内のもしくは細胞から単離されたTCRコード核酸のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、または公的に入手可能なTCR DNA配列の合成などの様々な供給源から得ることができる。
【0480】
いくつかの態様において、TCRは、T細胞(例えば細胞傷害性T細胞)などの細胞、T細胞ハイブリドーマまたは他の公的に入手可能な供給源などの生物学的供給源から得られる。いくつかの態様において、T細胞は、インビボで単離された細胞から得ることができる。いくつかの態様において、TCRは胸腺的に選択されたTCRである。いくつかの態様において、TCRはネオエピトープ拘束性TCRである。いくつかの態様において、T細胞は、培養されたT細胞ハイブリドーマまたはクローンであり得る。いくつかの態様において、TCRまたはその抗原結合部分もしくはその抗原結合断片は、TCRの配列の知識から合成的に生成することができる。
【0481】
いくつかの態様において、TCRは、標的ポリペプチド抗原またはその標的T細胞エピトープに対して候補TCRのライブラリーをスクリーニングすることから同定または選択されたTCRから生成される。TCRライブラリーは、PBMC、脾臓または他のリンパ系器官に存在する細胞を含む、対象から単離されたT細胞からのVαおよびVβのレパートリの増幅によって作製することができる。いくつかの場合には、T細胞は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)から増幅することができる。いくつかの態様において、TCRライブラリーはCD4+またはCD8+細胞から作製することができる。いくつかの態様において、TCRは、正常なまたは健康な対象のT細胞供給源、すなわち正常なTCRライブラリーから増幅することができる。いくつかの態様において、TCRは、罹患対象のT細胞供給源、すなわち罹患TCRライブラリーから増幅することができる。いくつかの態様において、縮重プライマーを使用して、ヒトから得られたT細胞などの試料におけるRT-PCRなどによって、VαおよびVβの遺伝子レパートリを増幅する。いくつかの態様において、scTvライブラリーは、増幅産物がクローニングされるかまたはリンカーによって隔てられるように構築されるナイーブVαおよびVβライブラリーから構築することができる。対象および細胞の供給源に依存して、ライブラリーはHLA対立遺伝子特異的であり得る。あるいは、いくつかの態様において、TCRライブラリーは、親または骨格TCR分子の突然変異誘発または多様化によって作製することができる。いくつかの局面では、TCRは、例えばα鎖またはβ鎖の突然変異誘発などによる指向性進化に供される。いくつかの局面では、TCRのCDR内の特定の残基が変更されている。いくつかの態様において、選択されたTCRを親和性成熟によって改変することができる。いくつかの態様において、ペプチドに対するCTL活性を評価するためのスクリーニングなどによって、抗原特異的T細胞を選択し得る。いくつかの局面では、TCR、例えば抗原特異的T細胞上に存在するTCRは、結合活性、例えば抗原に対する特定の親和性またはアビディティなどによって選択し得る。
【0482】
いくつかの態様において、TCRまたはその抗原結合部分は、改変または操作されたものである。いくつかの態様において、指向性進化法を使用して、特定のMHC-ペプチド複合体に対するより高い親和性などの変更された特性を有するTCRを生成する。いくつかの態様において、指向性進化は、酵母ディスプレイ(Holler et al.,(2003)Nat Immunol,4,55-62;Holler et al.,(2000)Proc Natl Acad Sci U S A,97,5387-92)、ファージディスプレイ(Li et al.,(2005)Nat Biotechnol,23,349-54)、またはT細胞ディスプレイ(Chervin et al.,(2008)J Immunol Methods,339,175-84)を含むがこれらに限定されるわけではないディスプレイ法によって達成される。いくつかの態様において、ディスプレイアプローチは、公知のTCR、親TCR、または参照TCRを操作または改変することを含む。例えば、いくつかの場合には、野生型TCRを、CDRの1つまたは複数の残基が変異している変異誘発されたTCRを生成するための鋳型として使用することができ、所望の標的抗原に対するより高い親和性などの所望の変更された特性を有する変異体を選択する。
【0483】
いくつかの態様において、関心対象のTCRを作製または生成する際に使用するための標的ポリペプチドのペプチドは、公知であるかまたは容易に同定され得る。いくつかの態様において、TCRまたは抗原結合部分を生成する際に使用するのに適したペプチドは、関心対象の標的ポリペプチド、例えば下記の標的ポリペプチド中のHLA拘束性モチーフの存在に基づいて決定することができる。いくつかの態様において、ペプチドは、利用可能なコンピュータ予測モデルを用いて同定される。いくつかの態様において、MHCクラスI結合部位を予測するために、そのようなモデルとしては、ProPred1(Singh and Raghava(2001)Bioinformatics 17(12):1236-1237)およびSYFPEITHI(Schuler et al.,(2007)Immunoinformatics Methods in Molecular Biology,409(1):75-93 2007)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、MHC拘束性エピトープは、全白人の約39~46%で発現されるHLA-A0201であり、したがって、TCRまたは他のMHC-ペプチド結合分子を調製するのに使用するためのMHC抗原の適切な選択である。
【0484】
コンピュータ予測モデルを用いたHLA-A0201結合モチーフならびにプロテアソームおよび免疫プロテアソームの切断部位は公知である。MHCクラスI結合部位を予測するために、そのようなモデルとしては、ProPred1(Singh and Raghava,ProPred:prediction of HLA-DR binding sites. Bioinformatics 17(12):1236-1237 2001により詳細に記載されている)、およびSYFPEITHI(Schuler et al., SYFPEITHI, Database for Searching and T-Cell Epitope Prediction.in Immunoinformatics Methods in Molecular Biology, vol 409(1) :75-93 2007参照)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0485】
いくつかの態様において、TCRまたはその抗原結合部分は、結合特性などの1つまたは複数の特性が変更されている、組換え生産された天然タンパク質またはその変異型であり得る。いくつかの態様において、TCRは、ヒト、マウス、ラット、または他の哺乳動物などの様々な動物種の1つに由来し得る。TCRは細胞結合型でも可溶型でもよい。いくつかの態様において、提供される方法の目的のために、TCRは細胞の表面に発現される細胞結合型である。
【0486】
いくつかの態様において、TCRは完全長TCRである。いくつかの態様において、TCRは抗原結合部分である。いくつかの態様において、TCRは二量体TCR(dTCR)である。いくつかの態様において、TCRは一本鎖TCR(sc-TCR)である。いくつかの態様において、dTCRまたはscTCRは、国際公開公報第03/020763号、同第04/033685号、同第2011/044186号に記載されている構造を有する。
【0487】
いくつかの態様において、TCRは膜貫通配列に対応する配列を含む。いくつかの態様において、TCRは細胞質配列に対応する配列を含む。いくつかの態様において、TCRはCD3とTCR複合体を形成することができる。いくつかの態様において、dTCRまたはscTCRを含む任意のTCRは、T細胞の表面上に活性TCRを生じるシグナル伝達ドメインに連結され得る。いくつかの態様において、TCRは細胞の表面上に発現される。
【0488】
いくつかの態様において、dTCRは、TCRα鎖可変領域配列に対応する配列がTCRα鎖定常領域細胞外配列に対応する配列のN末端に融合している第一のポリペプチド、およびTCRβ鎖可変領域配列に対応する配列がTCRβ鎖定常領域細胞外配列に対応する配列のN末端に融合している第二のポリペプチドを含み、第一のポリペプチドと第二のポリペプチドはジスルフィド結合によって連結されている。いくつかの態様において、結合は、天然の二量体αβTCR中に存在する天然の鎖間ジスルフィド結合に対応し得る。いくつかの態様において、鎖間ジスルフィド結合は天然のTCR中には存在しない。例えば、いくつかの態様において、1つまたは複数のシステインをdTCRポリペプチド対の定常領域細胞外配列に組み込むことができる。いくつかの場合には、天然および非天然の両方のジスルフィド結合が望ましいことがあり得る。いくつかの態様において、TCRは、膜に固定するための膜貫通配列を含む。
【0489】
いくつかの態様において、dTCRは、可変αドメイン、定常αドメインおよび定常αドメインのC末端に結合した第一の二量体化モチーフを含むTCRα鎖、ならびに可変βドメイン、定常βドメインおよび定常βドメインのC末端に結合した第一の二量体化モチーフを含むTCRβ鎖を含み、ここで、第一と第二の二量体化モチーフは容易に相互作用して、第一の二量体化モチーフ中のアミノ酸と第二の二量体化モチーフ中のアミノ酸との間に共有結合を形成し、TCRα鎖とTCRβ鎖を一緒に連結する。
【0490】
いくつかの態様において、TCRはscTCRである。典型的には、scTCRは公知の方法を用いて生成することができる。例えばSoo Hoo,W.F.et al.,PNAS(USA)89,4759(1992);Wulfing,C.and Pluckthun,A.,J.Mol.Biol.242,655(1994);Kurucz,I.et al.,PNAS(USA)90 3830(1993);国際公開公報第96/13593号、同第96/18105号、同第99/60120号、同第99/18129号、同第03/020763号、同第2011/044186号;およびSchlueter,C.J.et al.,J.Mol.Biol.256,859(1996)参照。いくつかの態様において、scTCRは、TCR鎖の会合を容易にするために導入された非天然ジスルフィド鎖間結合を含む(例えば国際公開公報第03/020763号参照)。いくつかの態様において、scTCRは、そのC末端に融合した異種ロイシンジッパーが鎖の会合を促進する、非ジスルフィド結合短縮型TCRである(例えば国際公開公報第99/60120号参照)。いくつかの態様において、scTCRは、ペプチドリンカーを介してTCRβ可変ドメインに共有結合したTCRα可変ドメインを含む(例えば国際公開公報第99/18129号参照)。
【0491】
いくつかの態様において、scTCRは、TCRα鎖可変領域に対応するアミノ酸配列によって構成される第一のセグメント、TCRβ鎖定常ドメイン細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合したTCRβ鎖可変領域配列に対応するアミノ酸配列によって構成される第二のセグメント、および第一のセグメントのC末端を第二のセグメントのN末端に連結するリンカー配列を含む。
【0492】
いくつかの態様において、scTCRは、α鎖細胞外定常ドメイン配列のN末端に融合したα鎖可変領域配列によって構成される第一のセグメント、ならびにβ鎖細胞外定常配列と膜貫通配列との配列のN末端に融合したβ鎖可変領域配列によって構成される第二のセグメント、ならびに任意で、第一のセグメントのC末端を第二のセグメントのN末端に連結するリンカー配列を含む。
【0493】
いくつかの態様において、scTCRは、β鎖細胞外定常ドメイン配列のN末端に融合したTCRβ鎖可変領域配列によって構成される第一のセグメント、ならびにα鎖細胞外定常配列と膜貫通配列との配列のN末端に融合したα鎖可変領域配列によって構成される第二のセグメント、ならびに任意で、第一のセグメントのC末端を第二のセグメントのN末端に連結するリンカー配列を含む。
【0494】
いくつかの態様において、第一および第二のTCRセグメントを連結するscTCRのリンカーは、TCRの結合特異性を保持しながら、単一のポリペプチド鎖を形成することができる任意のリンカーであり得る。いくつかの態様において、リンカー配列は、例えば式-P-AA-P-を有してよく、式中、Pはプロリンであり、AAはアミノ酸配列を表し、アミノ酸はグリシンおよびセリンである。いくつかの態様において、第一および第二のセグメントは、その可変領域配列がそのような結合のために配向されるように対合される。したがって、いくつかの場合には、リンカーは、第一のセグメントのC末端と第二のセグメントのN末端との間、またはその逆の間の距離を橋渡しするのに十分な長さを有するが、scTCRの標的リガンドへの結合を遮断または低減するほどには長くない。いくつかの態様において、リンカーは、10または約10から、45個のアミノ酸、例えば10~30個のアミノ酸もしくは26~41個のアミノ酸残基、例えば29、30、31もしくは32個のアミノ酸、またはおよそ前記個数のアミノ酸を含み得る。いくつかの態様において、リンカーは、式-PGGG-(SGGGG)5-P-(SEQ ID NO:28)を有し、式中、Pはプロリンであり、Gはグリシンであり、かつSはセリンである。いくつかの態様において、リンカーは、配列GSADDAKKDAAKKDGKS (SEQ ID NO:29)を有する。
【0495】
いくつかの態様において、scTCRは、α鎖の定常ドメインの免疫グロブリン領域の残基をβ鎖の定常ドメインの免疫グロブリン領域の残基に連結する共有ジスルフィド結合を含む。いくつかの態様において、天然TCR中の鎖間ジスルフィド結合は存在しない。例えば、いくつかの態様において、1つまたは複数のシステインを、scTCRポリペプチドの第一および第二のセグメントの定常領域細胞外配列に組み込むことができる。いくつかの場合には、天然および非天然の両方のジスルフィド結合が望ましいことがあり得る。
【0496】
導入された鎖間ジスルフィド結合を含むdTCRまたはscTCRのいくつかの態様において、天然のジスルフィド結合は存在しない。いくつかの態様において、天然の鎖間ジスルフィド結合を形成する天然のシステインの1つまたは複数は、セリンまたはアラニンなどの別の残基に置換されている。いくつかの態様において、導入されるジスルフィド結合は、第一および第二のセグメント上の非システイン残基をシステインに変異させることによって形成することができる。TCRの例示的な非天然ジスルフィド結合は、国際公開公報第2006/000830号に記載されている。
【0497】
いくつかの態様において、TCRまたはその抗原結合断片は、10-5~10-12Mまたは約10-5~10-12Mならびにその中のすべての個々の値および範囲の標的抗原に対する平衡結合定数で親和性を示す。いくつかの態様において、標的抗原はMHC-ペプチド複合体またはリガンドである。
【0498】
いくつかの態様において、α鎖およびβ鎖などのTCRをコードする1つまたは複数の核酸は、PCR、クローニングまたは他の適切な手段によって増幅し、適切な1つまたは複数の発現ベクターにクローニングすることができる。発現ベクターは、任意の適切な組換え発現ベクターであり得、任意の適切な宿主を形質転換またはトランスフェクトするために使用することができる。適切なベクターには、プラスミドおよびウイルスなどの、増殖および拡大増殖のため、または発現のため、またはその両方のために設計されたものが含まれる。
【0499】
いくつかの態様において、ベクターは、pUCシリーズ(Fermentas Life Sciences)、pBluescriptシリーズ(Stratagene, LaJolla, Calif.)、pETシリーズ(Novagen, Madison, Wis.)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden)、またはpEXシリーズ(Clontech, Palo Alto, Calif.)のベクターであり得る。いくつかの場合には、λG10、λGT11、λZapII(Stratagene)、λEMBL4、およびλNM1149などのバクテリオファージベクターも使用することができる。いくつかの態様において、植物発現ベクターを使用することができ、これには、pBI01、pBI101.2、pBI101.3、pBI121およびpBIN19(Clontech)が含まれる。いくつかの態様において、動物発現ベクターには、pEUK-Cl、pMAMおよびpMAMneo(Clontech)が含まれる。いくつかの態様において、レトロウイルスベクターなどのウイルスベクターが使用される。
【0500】
いくつかの態様において、組換え発現ベクターは、標準的な組換えDNA技術を用いて調製することができる。いくつかの態様において、ベクターは、適宜におよびベクターがDNAベースであるかRNAベースであるかを考慮に入れて、ベクターが導入される宿主の種類(例えば細菌、真菌、植物、または動物)に特異的な転写および翻訳開始および終止コドンなどの調節配列を含み得る。いくつかの態様において、ベクターは、TCRまたは抗原結合部分(または他のMHC-ペプチド結合分子)をコードするヌクレオチド配列に機能的に連結された非天然プロモーターを含み得る。いくつかの態様において、プロモーターは、非ウイルスプロモーターまたはウイルスプロモーター、例えばサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター、およびマウス幹細胞ウイルスの長い末端反復配列中に見られるプロモーターであり得る。他の公知のプロモーターも企図される。
【0501】
いくつかの態様において、TCRをコードするベクターを生成するために、関心対象のTCRを発現するT細胞クローンから単離された全cDNAからα鎖およびβ鎖をPCR増幅し、発現ベクターにクローニングする。いくつかの態様において、α鎖とβ鎖は同じベクターにクローニングされる。いくつかの態様において、α鎖とβ鎖は異なるベクターにクローニングされる。いくつかの態様において、生成されたα鎖およびβ鎖は、レトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターに組み込まれる。
【0502】
C. キメラ自己抗体受容体(CAAR)
いくつかの態様において、提供される方法、使用、製造物品、および組成物と関連して使用される操作された細胞によって発現される組換え受容体の中でも、キメラ自己抗体受容体(CAAR)がある。いくつかの態様において、CAARは自己抗体に特異的である。いくつかの態様において、CAARを発現する細胞、例えばCAARを発現するように操作T細胞は、自己抗体発現細胞に特異的に結合して死滅させるが正常な抗体発現細胞にはそうしないように使用され得る。いくつかの態様において、CAAR発現細胞は、自己抗原の発現と関連する自己免疫疾患、例えば自己免疫疾患を処置するために使用され得る。いくつかの態様において、CAAR発現細胞は、最終的に自己抗体を産生し、自身の細胞表面上に該自己抗体をディスプレイするB細胞を標的とし得、このようなB細胞を治療介入のための疾患特異的標的としてマーキングする。いくつかの態様において、CAAR発現細胞は、抗原特異的キメラ自己抗体受容体を用いて疾患原因B細胞を標的とすることによって自己免疫疾患の病原性B細胞を効率的に標的化して死滅させるために使用され得る。いくつかの態様において、組換え受容体はCAAR、例えば米国特許出願公開第2017/0051035号に記載のいずれかである。
【0503】
いくつかの態様において、CAARは、自己抗体結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達領域を含む。いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達領域は細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、一次シグナル伝達ドメイン、T細胞において一次活性化シグナルを誘導することができるシグナル伝達ドメイン、T細胞受容体(TCR)構成成分であるシグナル伝達ドメインおよび/または免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含むシグナル伝達ドメインであるか、あるいは一次シグナル伝達ドメイン、T細胞において一次活性化シグナルを誘導することができるシグナル伝達ドメイン、T細胞受容体(TCR)構成成分であるシグナル伝達ドメインおよび/または免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含むシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達領域は、副刺激または共刺激シグナル伝達領域(副細胞内シグナル伝達領域)を含む。
【0504】
いくつかの態様において、自己抗体結合ドメインは、自己抗原またはその断片を含む。自己抗原の選択は、標的とされる自己抗体のタイプに応じて変わり得る。例えば、自己抗原は、特定の疾患状態、例えば、自己抗体媒介性自己免疫疾患などの自己免疫疾患に関連する、B細胞などの標的細胞上の自己抗体をそれが認識することを理由として、選択してよい。いくつかの態様において、自己免疫疾患には尋常性天疱瘡(PV)が含まれる。例示的な自己抗原には、デスモグレイン1(Dsg1)およびDsg3が含まれる。
【0505】
D. マルチターゲティング
いくつかの態様において、提供される方法、使用、製造物品、および組成物とともに使用される細胞には、マルチターゲティング戦略を使用する細胞が含まれる。マルチターゲティング戦略は、例えば、同じまたは異なる抗原を各々が認識し、かつ典型的には、異なる細胞内シグナル伝達構成要素を各々が含む、2種またはそれ以上の遺伝子操作された受容体を細胞上で発現させることである。このようなマルチターゲティング戦略は、例えば、国際特許出願公開番号WO 2014055668 A1(例えば、標的ではない、例えば正常細胞上では個別に存在するが、処置されるべき疾患または病態の細胞上でのみ一緒に存在する2つの異なる抗原を標的とする、活性化CARと共刺激CARとの組合せを記載している)ならびにFedorov et al., Sci. Transl. Medicine, 5(215) (2013)(活性化CARおよび阻害性CARを発現する細胞、例えば、活性化CARが、正常または非罹患細胞と処置されるべき疾患または病態の細胞との両方で発現される1つの抗原に結合し、阻害性CARが、正常細胞または処置されることが望まれない細胞でのみ発現される別の抗原に結合する、細胞を記載している)に記載されている。
【0506】
例えば、いくつかの態様において、細胞は、第1の遺伝子操作された抗原受容体(例えばCARまたはTCR)を発現する受容体を含み、該第1の受容体は、通常、該受容体によって認識される抗原、例えば第1の抗原に特異的に結合すると、細胞に活性化シグナルまたは刺激シグナルを誘導することができる。いくつかの態様において、細胞は、第2の遺伝子操作された抗原受容体(例えばCARまたはTCR)、例えばキメラ共刺激受容体をさらに含み、該第2の受容体は、通常、該受容体によって認識される第2の抗原に特異的に結合すると、免疫細胞に共刺激シグナルを誘導することができる。いくつかの態様において、第1の抗原および第2の抗原は、同じである。いくつかの態様において、第1の抗原および第2の抗原は、異なる。
【0507】
いくつかの態様において、第1および/または第2の遺伝子操作された抗原受容体(例えばCARまたはTCR)は、細胞に活性化シグナルを誘導することができる。いくつかの態様において、受容体は、ITAMモチーフまたはITAM様モチーフを含む細胞内シグナル伝達構成要素を含む。いくつかの態様において、第1の受容体によって誘導される活性化は、細胞におけるシグナル伝達またはタンパク質発現の変化を含み、その結果として、ITAMリン酸化および/もしくはITAM媒介性シグナル伝達カスケードの開始などの免疫応答の開始、免疫シナプスの形成および/もしくは結合された受容体付近の分子(例えば、CD4もしくはCD8など)のクラスター化、NF-κBおよび/もしくはAP-1などの1種もしくは複数種の転写因子の活性化、ならびに/またはサイトカインなどの因子の遺伝子発現、増殖、および/もしくは生存の誘導が起こる。
【0508】
いくつかの態様において、第1および/または第2の受容体は、CD28、CD137(4-1BB)、OX40、および/またはICOSなどの共刺激受容体の細胞内シグナル伝達ドメインまたは領域を含む。いくつかの態様において、第1の受容体および第2の受容体は、異なる共刺激受容体の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。1つの態様において、第1の受容体はCD28共刺激シグナル伝達領域を含み、第2の受容体は4-1BB共刺激シグナル伝達領域を含み、またはその逆である。
【0509】
いくつかの態様において、第1および/または第2の受容体は、ITAMモチーフまたはITAM様モチーフを含む細胞内シグナル伝達ドメインと共刺激受容体の細胞内シグナル伝達ドメインを両方とも含む。
【0510】
いくつかの態様において、第1の受容体は、ITAMモチーフまたはITAM様モチーフを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含み、第2の受容体は、共刺激受容体の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。同じ細胞において誘導される活性化シグナルと組み合わさった共刺激シグナルは、免疫応答、例えば、強固かつ持続的な免疫応答、例えば、遺伝子発現の増大、サイトカインおよび他の因子の分泌、ならびに細胞死滅などのT細胞媒介性エフェクター機能を結果としてもたらすものである。
【0511】
いくつかの態様において、第1の受容体のみの連結も、第2の受容体のみの連結も、強固な免疫応答を誘導しない。いくつかの局面において、1種類の受容体のみが連結されている場合、細胞は、抗原に対して寛容化されるもしくは非応答性になるか、または阻害され、かつ/あるいは増殖するようにも因子を分泌するようにもエフェクター機能を果たすようにも誘導されない。しかし、いくつかのそのような態様において、複数種の受容体が連結される場合、例えば、第1および第2の抗原を発現する細胞に遭遇すると、例えば、1種もしくは複数種のサイトカインの分泌、増殖、存続性、および/または標的細胞の細胞障害性死滅などの免疫エフェクター機能の実行によって示されるような所望の応答、例えば最大限の免疫活性化または刺激が達成される。
【0512】
いくつかの態様において、2種の受容体は、それぞれ、細胞に活性化シグナルおよび阻害性シグナルを誘導し、その結果、受容体のうちの一方によるその抗原への結合は、細胞を活性化するかまたは応答を誘導するが、第2の阻害性受容体によるその抗原への結合は、その応答を抑制するかまたは弱めるシグナルを誘導する。例は、活性化CARと阻害性CARすなわちiCARとの組合せである。このような戦略、例えば、活性化CARが、疾患または病態において発現されるが正常細胞でも発現される抗原に結合し、阻害性受容体が、正常細胞で発現されるが疾患または病態の細胞では発現されない別の抗原に結合する戦略が、使用され得る。
【0513】
いくつかの態様において、マルチターゲティング戦略は、特定の疾患または病態に関連する抗原が、一過性に(例えば、遺伝子操作に関連する刺激時に)または恒久的に、非罹患細胞で発現され、かつ/または操作された細胞それ自体において発現される場合に使用される。そのような場合には、2つの異なる、個々に特異的な抗原受容体の連結を必要とすることにより、特異性、選択性、および/または有効性が改善され得る。
【0514】
いくつかの態様において、複数種の抗原、例えば、第1および第2の抗原は、標的とされる細胞、組織、または疾患もしくは病態において、例えばがん細胞において発現される。いくつかの局面において、細胞、組織、疾患、または病態は、多発性骨髄腫または多発性骨髄腫細胞である。いくつかの態様において、通常、複数種の抗原のうちの1種または複数種は、細胞療法によって標的とすることが望ましくない細胞、例えば、正常もしくは罹患していない細胞もしくは組織および/または操作された細胞自体でも発現される。そのような態様において、細胞の応答を達成するために多種の受容体の連結を必要とすることにより、特異性および/または有効性が実現される。
【0515】
V. 遺伝子操作された細胞および細胞の製造方法
いくつかの態様において、提供される方法は、疾患または病態を有する対象に、組換え抗原受容体を発現する細胞投与することを伴う。遺伝子操作された構成成分、例えば組換え受容体、例えばCARまたはTCRの導入のための種々の方法が周知であり、提供される方法および組成物で使用され得る。例示的な方法は、受容体をコードする核酸の移入のためのもの、例えば、ウイルス、例えば、レトロウイルスまたはレンチウイルスによる形質導入、トランスポゾンおよびエレクトロポレーションによるものを含む。
【0516】
当該受容体を発現し、提供される方法によって投与される細胞の中には、操作された細胞がある。遺伝子操作は一般的に、組換え構成成分または操作された構成成分をコードする核酸の、例えばレトロウイルスによる形質導入、トランスフェクションまたは形質転換による該細胞を含む組成物内への導入を伴う。
【0517】
特定の態様において、操作された細胞は、1種もしくは複数種のインプット組成物および/または単一の生物試料から、濃縮T細胞のアウトプット組成物を生成するプロセスによって作製される。特定の態様において、アウトプット組成物は、組換え受容体、例えば、抗CD19 CARなどのCARを発現する細胞を含む。特定の態様において、アウトプット組成物の細胞は、自己細胞療法などの、治療薬として対象に投与するのに適している。いくつかの態様において、アウトプット組成物は、濃縮CD4+T細胞または濃縮CD8+T細胞の組成物である。
【0518】
いくつかの態様において、操作された細胞を生成または作製するためのプロセスは、以下の段階のうちのいくつかまたはすべてを含む工程による:生物試料を採取もしくは入手する段階;該生物試料からインプット細胞を単離、選択、もしくは濃縮する段階;該インプット細胞を凍結保存し保管する段階;該インプット細胞を刺激条件下で解凍および/もしくはインキュベーションする段階;組換えポリヌクレオチド、例えば、CARなどの組換え受容体をコードするポリヌクレオチドを発現するかもしくは含むように、該刺激された細胞を操作する段階;該操作された細胞を、例えば、量、密度、もしくは拡大増殖の閾値まで培養する段階;該培養された細胞をアウトプット組成物として製剤化する段階;ならびに/または該細胞を輸注のために遊離させ、かつ/もしくは対象に投与するのに適する時まで、該製剤化アウトプット細胞を凍結保存させ保管する段階。特定の態様において、このプロセスは、濃縮T細胞の2種またはそれ以上のインプット組成物、例えば、別個のCD4+組成物および別個のCD8+組成物を用いて実施され、これらの組成物は、同じ出発生物試料または初期生物試料から別々に処理および操作され、所定の比、例えばCD4+T細胞とCD8+T細胞の比1:1で再注入して対象に戻される。いくつかの態様において、濃縮T細胞は、操作されたT細胞、例えば、組換え受容体を発現するように形質導入されたT細胞であるか、またはそれを含む。
【0519】
特定の態様において、組換え受容体(例えば抗CD19 CAR)を発現する操作された細胞のアウトプット組成物は、細胞の初期および/またはインプット組成物から作製される。いくつかの態様において、インプット組成物は、濃縮T細胞、濃縮CD4+T細胞、および/または濃縮CD8+T細胞の組成物(以下、それぞれ濃縮T細胞組成物、濃縮CD4+T細胞組成物、および濃縮CD8+T細胞組成物とも呼ばれる)である。一部の態様では、対象への投与のために、本明細書において提供される態様で利用されるある用量の操作されたT細胞は、CD4+またはCD8+T細胞について濃縮される。一部の局面では、濃縮は、インプット組成物および/または単一の生物学的試料、例えば対象から取得した試料中に存在するCD4+またはCD8+細胞の量またはパーセンテージと比較される。いくつかの態様において、CD4+T細胞が濃縮された組成物は、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または99.9%のCD4+T細胞を含む。特定の態様において、濃縮CD4+T細胞の組成物は、100%のCD4+T細胞を含むか、または約100%のCD4+T細胞を含む。特定の態様において、濃縮T細胞組成物は、20%未満、10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満、もしくは0.01%未満のCD8+T細胞を含むかもしくは含有し、かつ/またはCD8+T細胞を含有せず、かつ/またはCD8+T細胞を含まないもしくは実質的に含まない。いくつかの態様において、細胞の集団は、本質的にCD4+T細胞からなる。いくつかの態様において、CD8+T細胞が濃縮された組成物は、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは99.9%のCD8+T細胞を含有するか、または約100%のCD8+のCD8+T細胞を含有もしくは含有する。特定の態様において、濃縮CD8+T細胞の組成物は、20%未満、10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満、もしくは0.01%未満のCD4+T細胞を含むかもしくは含有し、かつ/またはCD4+T細胞を含有せず、かつ/またはCD4+T細胞を含まないもしくは実質的に含まない。いくつかの態様において、細胞の集団は、本質的にCD8+T細胞からなる。
【0520】
特定の態様において、操作された細胞を作製するためのプロセスは、次のうちの1つまたは複数をさらに含むことができる:細胞、例えばインプット組成物の細胞を活性化および/もしくは刺激する段階;例えば、形質導入もしくはトランスフェクションによって組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドを導入するために、該活性化および/もしくは刺激された細胞の遺伝子を操作する段階;ならびに/または例えば増殖および/もしくは拡大増殖を促進する条件下で、該操作された細胞を培養する段階。特定の態様において、提供される方法は、細胞をインキュベーション、活性化、刺激、操作、形質導入、トランスフェクション、および/または培養した後に得られたアウトプット組成物を回収、採取、および/または製剤化する段階とともに使用されてよい。
【0521】
いくつかの態様において、提供される方法に沿って使用される操作された細胞、例えば、前述の抗CD19 CARを発現するものは、細胞を選択、単離、活性化、刺激、拡大増殖、培養、および/または製剤化するためのプロセスによって作製または生成される。いくつかの態様において、このような方法には、前述のいずれかが含まれる。
【0522】
いくつかの態様において、提供される方法および使用に沿って使用される操作された細胞、例えば、前述の抗CD19 CARを発現するものは、細胞を選択、単離、活性化、刺激、拡大増殖、培養、および/または製剤化するためのプロセスによって作製または生成される。いくつかの態様において、このような方法には、前述のいずれかが含まれる。
【0523】
いくつかの態様において、提供される方法および使用に沿って使用される操作された細胞、例えば、前述の抗CD19 CARを発現するものは、例えば、WO 2019/089855およびWO 2015/164675に記載されている例示的なプロセスによって作製または生成される。
【0524】
任意の態様のうちのいくつかにおいて、操作された細胞、例えば前述の抗CD19 CARを発現するもの、またはそのような細胞を含む組成物、例えば、同じ抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)をそれぞれ発現する操作されたCD4+T細胞および操作されたCD8+T細胞を含む組成物を生成、作製、または製造するための例示的なプロセスは、プロセスの段階に濃縮CD4+細胞集団および濃縮CD8+細胞集団を別々に供する段階を含む。操作された細胞を生成または製造するための例示的なプロセスのいくつかの局面において、CD4+細胞およびCD8+細胞は、例えば白血球搬出によって得られるヒト末梢血単核細胞(PBMC)より別々に選択されて、別々の濃縮CD4+細胞組成物および濃縮CD8+細胞組成物を生成する。いくつかの局面において、このような細胞は、凍結保存することができる。いくつかの局面において、CD4+組成物およびCD8+組成物は、後で解凍し、刺激、形質導入、および拡大増殖のための段階に別々に供することができる。
【0525】
操作された細胞を生成または製造するための例示的なプロセスのいくつかの局面において、解凍されたCD4+細胞およびCD8+細胞は、例えば、抗CD3抗体および抗CD28抗体に結合させた、ポリスチレンでコーティングされた常磁性ビーズの存在下で(例えば、ビーズと細胞の比が1:1で)、別々に刺激される。いくつかの局面において、刺激は、ヒト組換えIL-2、ヒト組換えIL-15、およびN-アセチルシステイン(NAC)を含む培地において行われる。いくつかの局面において、CD4+細胞用の細胞培地は、ヒト組換えIL-7も含むことができる。
【0526】
操作された細胞を生成または製造するための例示的なプロセスのいくつかの局面において、ビーズの導入後、同じCAR、例えば同じ抗CD19 CARをコードするレンチウイルスベクターを用いて、CD4+細胞およびCD8+細胞に別々に形質導入する。いくつかの局面において、CARは、マウス抗体に由来する抗CD19 scFv、免疫グロブリンスペーサー、CD28に由来する膜貫通ドメイン、4-1BBに由来する共刺激領域、およびCD3-ζ細胞内シグナル伝達ドメインを含むことができる。いくつかの局面において、ベクターは、T2A配列によってCAR構築物に結合されている、CAR発現に関するサロゲートマーカーとして役立つ短縮型受容体をコードすることができる。例示的なプロセスのいくつかの局面において、これらの細胞は、10μg/ml硫酸プロタミンの存在下で形質導入される。
【0527】
操作された細胞を生成または製造するための例示的なプロセスのいくつかの局面において、形質導入後、磁場に曝露することにより、細胞組成物からビーズを取り出す。いくつかの局面において、CD4+細胞組成物およびCD8+細胞組成物は、連続的に混ぜ、バイオリアクター(例えばXuri W25バイオリアクター)によって酸素を送りながら、別々に培養して拡大増殖させる。いくつかの場合において、ポロキサマーが培地に添加される。いくつかの局面において、CD4+細胞組成物およびCD8+細胞組成物のどちらも、IL-2およびIL-15の存在下で培養される。いくつかの局面において、CD4+細胞培地はまた、IL-7も含んだ。いくつかの場合において、CD4+細胞およびCD8+細胞は、回収前に、4倍に拡大増殖するまでそれぞれ培養される。いくつかの局面において、閾値に到達後1日目に、各組成物に由来する細胞を別々に回収、製剤化、および凍結保存することができる。いくつかの局面において、操作された細胞、例えば前述の抗CD19 CARを発現するもの、またはそのような細胞を含む組成物、例えば、同じ抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)をそれぞれ発現する操作されたCD4+T細胞および操作されたCD8+T細胞を含む組成物を生成、作製、または製造するための例示的なプロセスは、下記の表11に説明することを含む。
【0528】
(表11)CD4+ CAR-T細胞およびCD8+ CAR-T細胞を作製するための例示的プロセス
*概数
【0529】
他の局面において、操作された細胞またはそのような細胞を含む組成物を生成、作製、または製造するための別の例示的なプロセスには、上記の例示的なプロセスとは次の点で異なるプロセスが含まれる:刺激時にNACは培地に添加されないこと;CD4+細胞培地がIL-2を含まないこと;細胞が、ビーズと細胞の比が3:1で刺激されること;細胞が、より高濃度の硫酸プロタミンを用いて形質導入されること;ビーズの取り出しが7日目頃に行われること;ならびに拡大増殖が、静的環境で、すなわち、連続的混合も灌流(例えば半連続灌流および/もしくは段階的灌流)もせず、かつポロキサマーなしで行われること。
【0530】
いくつかの態様において、少なくとも1種の別個の濃縮CD4+T細胞組成物および少なくとも1種の別個の濃縮CD8+T細胞組成物は、単一の生物試料、例えば、患者または健常個体などの同一ドナーに由来するPBMCまたは他の白血球の試料から、単離、選択、濃縮、または入手される。いくつかの態様において、別個の濃縮CD4+T細胞組成物および別個の濃縮CD8+T細胞組成物は、同じ生物試料、例えば、1名の対象から入手、採取、および/または収集された単一の生物試料に由来し、例えば、最初に単離され、選択され、かつ/または濃縮された。いくつかの態様において、生物試料は、CD4+T細胞の選択に最初に供され、その際、陰性画分と陽性画分の両方が確保され、陰性画分はCD8+T細胞の選択にさらに供される。他の態様において、生物試料は、CD8+T細胞の選択に最初に供され、その際、陰性画分と陽性画分の両方が確保され、陰性画分はCD4+T細胞の選択にさらに供される。いくつかの態様において、選択の方法は、国際PCT公開公報第2015/164675号に記載されているように実施する。いくつかの態様において、選択の方法は、国際PCT公開公報第2019/089855号に記載されているように実施する。いくつかの局面において、少なくとも1種の濃縮CD8+T細胞組成物と少なくとも1種の濃縮CD4+T細胞組成物とが、同じ生物試料、例えば、同じドナー患者または健常個体に由来する別個の組成物となるように、生物試料をまずCD8+T細胞について陽性選択して、少なくとも1種の濃縮CD8+T細胞組成物を生成し、次に陰性画分をCD4+T細胞について陽性選択して、少なくとも1種の濃縮CD4+T細胞組成物を生成する。いくつかの局面において、例えば、少なくとも1種は濃縮CD4+T細胞組成物であり、少なくとも1種は同じドナーに由来する別の濃縮CD8+T細胞組成物である、2種またはそれ以上の別個の濃縮T細胞組成物は、別々に凍結、例えば、凍結保存媒体中で凍結保護または凍結保存される。
【0531】
いくつかの局面において、例えば、少なくとも1種は濃縮CD4+T細胞組成物であり、少なくとも1種は同じ生物試料に由来する別の濃縮CD8+T細胞組成物である、2種またはそれ以上の別個の濃縮T細胞組成物は、刺激性試薬と接触させることによって(例えば、T細胞活性化のための抗CD3/抗CD28とコンジュゲートされた磁性ビーズとともにインキュベーションすることによって)、活性化および/または刺激される。いくつかの局面において、活性化/刺激された各細胞組成物は、例えば、組換えタンパク質(例えばCAR)をコードするウイルスベクターを用いて操作、形質導入、および/またはトランスフェクトされて、各細胞組成物のCD4+T細胞およびCD8+T細胞において同じ組換えタンパク質を発現するようになる。いくつかの局面において、方法は、刺激性試薬、例えば磁性ビーズを細胞組成物から取り出す段階を含む。いくつかの局面において、操作されたCD4+T細胞を含む細胞組成物および操作されたCD8+T細胞を含む細胞組成物は、例えば、その中のCD4+T細胞集団およびCD8+T細胞集団を別々に拡大増殖させるために、別々に培養される。特定の態様において、培養に由来する細胞組成物は、例えば、細胞組成物を製剤緩衝液中で洗浄することにより、回収および/もしくは採取ならびに/または製剤化される。特定の態様において、CD4+T細胞を含む製剤化細胞組成物およびCD8+T細胞を含む製剤化細胞組成物は、凍結、例えば、凍結保存媒体中で凍結保護または凍結保存される。いくつかの局面において、各製剤中の操作されたCD4+T細胞およびCD8+T細胞は、同じドナーまたは生物試料に由来し、同じ組換えタンパク質(例えば抗CD19 CARなどのCAR)を発現する。いくつかの局面において、別個の操作されたCD4+製剤および別個の操作されたCD8+製剤は、所定の比、例えば1:1で、それを必要とする対象、例えば同じドナーに投与される。
【0532】
A. 遺伝子操作のための細胞および細胞の調製
いくつかの態様において、提供される方法、使用、製造物品、または組成物とともに使用される細胞、例えばT細胞は、組換え受容体、例えば本明細書に記載のCARまたはTCRを発現するように遺伝子操作された細胞である。いくつかの態様において、操作された細胞は、細胞療法、例えば養子細胞療法において使用される。いくつかの態様において、操作された細胞は免疫細胞である。いくつかの態様において、操作された細胞は、T細胞、例えばCD4+T細胞またはCD8+T細胞である。
【0533】
一部の態様では、前記核酸、例えば組換え受容体をコードする核酸は異種である、すなわち、細胞または細胞から得られた試料、例えば、別の生物または細胞から得られた試料に通常は存在せず、例えば、操作されている細胞および/またはこのような細胞が得られた生物に普通は見出されない。一部の態様では、前記核酸は天然に存在せず、例えば、複数の異なる細胞タイプに由来する様々なドメインをコードする核酸のキメラ組み合わせを含む核酸を含む、自然界で見出されない核酸である。
【0534】
細胞は一般的に、真核細胞、典型的には、哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞である。一部の態様において、前記細胞は血液、骨髄、リンパ、またはリンパ系臓器に由来し、免疫系の細胞、例えば、自然免疫もしくは適応免疫の細胞、例えば、リンパ球、典型的にはT細胞および/またはNK細胞を含む骨髄系細胞またはリンパ系細胞である。他の例示的な細胞には、幹細胞、例えば、人工多能性幹細胞(iPSC)を含む多分化能性幹細胞および多能性幹細胞が含まれる。前記細胞は、典型的には、初代細胞、例えば、対象から直接単離された、および/または対象から単離され、凍結された細胞である。一部の態様において、前記細胞には、T細胞または他の細胞タイプの1つまたは複数のサブセット、例えば、全T細胞集団、CD4+細胞、CD8+細胞、およびその部分母集団、例えば、機能、活性化状態、成熟度、分化能、拡大増殖、再循環、局在化、および/もしくは持続の能力、抗原特異性、抗原受容体のタイプ、特定の臓器もしくは区画における存在、マーカーもしくはサイトカイン分泌プロファイル、ならびに/または分化の程度によって規定されるT細胞または他の細胞タイプの1つまたは複数のサブセットが含まれる。処置しようとする対象に関して、前記細胞は同種異系および/または自己由来でもよい。前記方法の中には既製の方法が含まれる。一部の局面において、例えば、既製の技術の場合、前記細胞は多能性および/または多分化能性であり、例えば、幹細胞、例えば、人工多能性幹細胞(iPSC)である。一部の態様において、前記方法は、対象から細胞を単離する段階、細胞を調製、処理、培養、および/または操作する段階、ならびに凍結保存前または凍結保存後に細胞を同じ対象に再導入する段階を含む。
【0535】
T細胞ならびに/またはCD4+T細胞および/もしくはCD8+T細胞のサブタイプおよび部分母集団の中には、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリーT細胞およびそのサブタイプ、例えば、幹細胞メモリーT(TSCM)、セントラルメモリーT(TCM)、エフェクターメモリーT(TEM)、または高度に分化したエフェクターメモリーT細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアント(mucosa-associated invariant)T(MAIT)細胞、天然および適応性の調節性T(TREG)細胞、ヘルパーT細胞、例えば、TH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞ヘルパーT細胞、α/βT細胞、ならびにδ/γT細胞がある。
【0536】
一部の態様において、前記細胞はナチュラルキラー(NK)細胞である。一部の態様において、前記細胞は、単球または顆粒球、例えば、骨髄系細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、マスト細胞、好酸球、および/または好塩基球である。
【0537】
一部の態様では、前記細胞は、遺伝子工学を介して導入された1つまたは複数の核酸を含み、それによって、このような核酸の組換え産物または遺伝子操作された産物を発現する。一部の態様では、前記核酸は異種である、すなわち、細胞または細胞から得られた試料、例えば、別の生物または細胞から得られた試料に通常は存在せず、例えば、操作された細胞および/またはこのような細胞が得られた生物に普通は見出されない。一部の態様では、前記核酸は天然に存在せず、例えば、複数の異なる細胞タイプに由来する様々なドメインをコードする核酸のキメラ組み合わせを含む核酸を含む、自然界で見出されない核酸である。
【0538】
一部の態様では、操作された細胞の調製は1つまたは複数の培養段階および/または調製段階を含む。トランスジェニック受容体、例えば、CARをコードする核酸を導入するための細胞は、試料、例えば、生物学的試料、例えば、対象から得られた試料または対象に由来する試料から単離されてもよい。一部の態様では、細胞が単離される対象は、前記疾患もしくは状態を有するか、細胞療法を必要とするか、または細胞療法が施される対象である。対象は、一部の態様では、特定の治療介入、例えば、養子細胞療法を必要とし、このために細胞が単離、処理、および/または処理されているヒトである。
【0539】
従って、前記細胞は、一部の態様では、初代細胞、例えば、初代ヒト細胞である。前記試料には、対象から直接採取した組織、液体、および他の試料、ならびに1つまたは複数の処理段階、例えば、分離、遠心分離、遺伝子操作(例えば、ウイルスベクターを用いた形質導入)、洗浄、および/またはインキュベーションに起因する試料が含まれる。生物学的試料は、生物学的供給源から直接得られた試料でもよく、処理された試料でもよい。生物学的試料には、体液、例えば、血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿および汗、組織および臓器試料が、これらから得られた処理済み試料を含めて含まれるが、これに限定されない。
【0540】
一部の局面において、前記細胞が得られる、または単離される試料は血液もしくは血液由来試料であるか、アフェレーシスもしくは白血球搬出法による生成物であるか、またはこれから得られる。例示的な試料には、全血、末梢血単核球(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検材料、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、消化管に関連するリンパ系組織、粘膜に関連するリンパ系組織、脾臓、他のリンパ系組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、子宮頸部、精巣、卵巣、扁桃腺、もしくは他の臓器、および/またはこれらに由来する細胞が含まれる。試料には、細胞療法、例えば、養子細胞療法の状況では、自己供給源および同種異系供給源に由来する試料が含まれる。
【0541】
一部の態様において、前記細胞は細胞株、例えば、T細胞株に由来する。前記細胞は、一部の態様では、異種供給源から、例えば、マウス、ラット、非ヒト霊長類、およびブタから得られる。
【0542】
一部の態様において、前記細胞の単離には、1つまたは複数の調製段階および/または親和性に基づかない細胞分離段階が含まれる。一部の例では、例えば、望ましくない成分を除去するために、望ましい成分を濃縮するために、細胞を溶解するか、または特定の試薬に対して感受性のある細胞を除去するために、1種類または複数種の試薬の存在下で細胞が洗浄、遠心分離、および/またはインキュベートされる。一部の例では、細胞は、密度、粘着性、サイズ、特定の成分に対する感受性および/または耐性などの1つまたは複数の特性に基づいて分離される。
【0543】
一部の例では、対象の循環血に由来する細胞は、例えば、アフェレーシスまたは白血球搬出法によって得られる。試料は、一部の局面では、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球を含むリンパ球、赤血球、および/または血小板を含有し、一部の局面では、赤血球および血小板以外の細胞を含有する。
【0544】
一部の態様において、例えば、血漿画分を除去するために、および後の処理段階のために前記細胞を適切な緩衝液または培地に入れるために、対象から収集した血球は洗浄される。一部の態様において、前記細胞はリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄される。一部の態様において、洗浄溶液には、カルシウムおよび/もしくはマグネシウムならびに/または多くの、もしくは全ての二価カチオンが無い。一部の局面において、洗浄段階は半自動「フロースルー」遠心機(例えば、Cobe 2991 cell processor, Baxter)によって製造業者の説明書に従って成し遂げられる。一部の局面において、洗浄段階はタンジェンシャルフロー濾過(TFF)によって製造業者の説明書に従って成し遂げられる。一部の態様において、洗浄後に、前記細胞は、様々な生体適合性緩衝液、例えば、Ca++/Mg++を含まないPBSで再懸濁される。ある特定の態様において、血球試料の成分は除去され、前記細胞は培養培地に直接、再懸濁される。
【0545】
一部の態様において、前記方法には、密度に基づく細胞分離方法、例えば、赤血球溶解による末梢血からの白血球の調製、およびPercoll勾配またはFicoll勾配による遠心分離が含まれる。
【0546】
いくつかの態様において、選択段階の少なくとも一部は、選択試薬とともに細胞をインキュベーションすることを含む。例えば、選択方法の一環としての、1種または複数種の選択試薬とのインキュベーションは、1種または複数種の特殊な分子、例えば表面マーカー、例えば表面タンパク質、細胞内マーカー、または核酸の細胞中または細胞表面での発現または存在に基づいて1種または複数種の異なる細胞型を選択するための1種または複数種の選択試薬を用いて、実施されてよい。いくつかの態様において、そのようなマーカーに基づく分離のために1種または複数種の選択試薬を用いる任意の公知の方法が使用されてよい。いくつかの態様において、1種または複数種の選択試薬は、親和性またはイムノアフィニティーに基づく分離である分離をもたらす。例えば、いくつかの局面における選択は、1種または複数種のマーカー、典型的には細胞表面マーカーの細胞発現または発現レベルに基づいて細胞および細胞集団を分離するための1種または複数種の試薬とともにインキュベーションすることを含み、これは、例えば、そのようなマーカーに特異的に結合する抗体または結合相手とともにインキュベーションすることにより、通常はその後に、洗浄段階と、該抗体または該結合相手に結合していない細胞からの該抗体または該結合相手に結合している細胞の分離が続く。
【0547】
このようなプロセスのいくつかの局面において、ある体積量の細胞が、ある量の親和性に基づく所望の選択試薬と混合される。イムノアフィニティーに基づく選択は、分離される細胞と、細胞上のマーカーに特異的に結合する分子、例えば、粒子などの固形表面上の抗体または他の結合相手との好ましいエネルギー相互作用をもたらす任意の方式または方法を用いて実施することができる。いくつかの態様において、方法は、細胞のマーカーに特異的な選択試薬(例えば抗体)でコーティングされている粒子、例えば磁性ビーズなどのビーズを用いて実施される。これらの粒子(例えばビーズ)は、エネルギー的に好ましい相互作用を促進するのに役立つ一定の細胞密度対粒子(例えばビーズ)比率で、振盪または混合しつつ、チューブまたはバッグなどの容器中で細胞とインキュベーションまたは混合することができる。他の場合では、方法は、選択の全部または一部分が、例えば遠心回転の状態にある遠心チャンバーの内部キャビティにおいて行われる細胞選択を含む。いくつかの態様において、イムノアフィニティーに基づく選択試薬などの選択試薬との細胞のインキュベーションは、遠心チャンバー中で実施される。特定の態様において、単離または分離は、国際特許出願公開番号WO2009/072003またはUS20110003380A1に記載されている系、器具、または装置を用いて行われる。一例を挙げれば、系は、国際公開公報第2016/073602号に記載されている系である。
【0548】
いくつかの態様において、遠心チャンバーのキャビティでそのような選択段階またはその一部分(例えば、抗体でコーティングされた粒子、例えば磁性ビーズとのインキュベーション)を行うことにより、使用者は、いくつかのパラメーター、例えば、様々な溶液の体積、加工処理中の溶液の添加およびそのタイミングを制御することができる。このことにより、他の利用可能な方法と比べて利点をもたらすことができる。例えば、インキュベーション時にキャビティ中の液体体積を減らせることにより、選択において使用される粒子(例えばビーズ試薬)の濃度、およびしたがって溶液の化学的能力を、キャビティ中の細胞総数に影響を与えることなく、増大させることができる。この結果として、加工処理される細胞と選択のために使用される粒子とのペア相互作用を強めることができる。いくつかの態様において、例えば、本明細書において説明する系、回路、および制御に関連する場合に、チャンバー中でインキュベーション段階を行うことにより、使用者はインキュベーション中に所望の回数の溶液撹拌を実行することが可能になり、これによっても相互作用を向上させることができる。
【0549】
いくつかの態様において、選択段階の少なくとも一部は、遠心チャンバー中で実施され、選択試薬とともに細胞をインキュベーションすることを含む。このようなプロセスのいくつかの局面において、ある体積量の細胞が、ある量の親和性に基づく所望の選択試薬と混合され、その際、該選択試薬の量は、製造業者の取扱い説明書に従って同じ数の細胞および/または同じ体積の細胞を選択するためにチューブまたは容器中で同様の選択を実施する際に通常使用されるよりはるかに少ない量である。いくつかの態様において、製造業者の取扱い説明書に従って同じ数の細胞および/または同じ体積の細胞を得るためにチューブまたは容器を用いるインキュベーションにおいて細胞を選択するために使用される同じ選択試薬の量の5%以下、10%以下、15%以下、20%以下、25%以下、50%以下、60%以下、70%以下、または80%以下である、1種または複数種の選択試薬の量が、使用される。
【0550】
いくつかの態様において、選択、例えば、イムノアフィニティーに基づく細胞選択のために、細胞は、選択試薬とともに選択緩衝液も含む混合物中で、チャンバーのキャビティにおいてインキュベーションされる。該選択試薬は、例えば、濃縮および/または枯渇することが望まれる細胞上の表面マーカーには特異的に結合するが、その混合物中の他の細胞上のものには結合しない分子、例として抗体である。抗体は、ポリマーまたは表面などの足場、例えば、磁性ビーズなどのビーズに結合されていてもよく、例えば、CD4およびCD8に特異的なモノクローナル抗体に結合された磁性ビーズである。いくつかの態様において、前述したように、選択試薬は、振盪または回転しながらチューブ中で選択が実施される場合に同じ数の細胞または同じ体積の細胞の選択についてほぼ同じまたは同様の効率を実現するために典型的に使用されるかまたは必要であると思われる選択試薬の量と比較して、実質的に少ない(例えば、その量の5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%以下である)量で、チャンバーのキャビティ中の細胞に添加される。いくつかの態様において、インキュベーションは、例えば10mL~200mL、例えば、少なくとも10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、150mL、もしくは200mL、または少なくとも約10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、150mL、もしくは200mLである、試薬のインキュベーションに伴う目標体積を実現するために、細胞および選択試薬に選択緩衝液を添加して、実施される。いくつかの態様において、選択緩衝液および選択試薬は、細胞に添加する前に予備混合される。いくつかの態様において、選択緩衝液および選択試薬は、細胞に別々に添加される。いくつかの態様において、選択インキュベーションは、定期的に穏やかに混合する条件下で実施され、この条件は、エネルギー的に好ましい相互作用を促進するのに役立ち、それによって、選択試薬の総使用量を少なくし、同時に高い選択効率を実現することを可能にし得る。
【0551】
いくつかの態様において、選択試薬とのインキュベーションの合計期間は、5分~6時間、例えば30分~3時間または約5分~6時間、例えば約30分~3時間、例えば、少なくとも30分、60分、120分、もしくは180分、または少なくとも約30分、60分、120分、もしくは180分である。
【0552】
いくつかの態様において、インキュベーションは、通常、混合条件下で行われ、例えば、通常は比較的低い力または速度、例えば細胞をペレット化するために使用される速度よりも低い速度で、例えば600rpm~1700rpmまたは約600rpm~1700rpm(例えば、600rpm、1000rpm、もしくは1500rpm、もしくは1700rpm、または約600rpm、1000rpm、もしくは1500rpm、もしくは1700rpm、または少なくとも600rpm、1000rpm、もしくは1500rpm、もしくは1700rpm)で、例えば、チャンバーまたは他の容器の試料または壁に対して80g~100gまたは約80g~100g(例えば、80g、85g、90g、95g、もしくは100g、または約80g、85g、90g、95g、もしくは100g、または少なくとも80g、85g、90g、95g、もしくは100g)のRCFでの回転の存在下で行われる。いくつかの態様において、回転は、このような低速度での回転とそれに続く静止期間、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10秒間の回転および/または静止、例えば、約1または2秒の回転とそれに続く約5、6、7、または8秒間の静止という時間間隔の繰り返しを用いて行われる。
【0553】
いくつかの態様において、このようなプロセスは、チャンバーが内蔵されている完全閉鎖系内で行われる。いくつかの態様において、このプロセス(およびいくつかの局面において、1つまたは複数の付加的な段階、例えば、アフェレーシス試料など細胞を含む試料を洗浄する事前洗浄段階も)は、自動化された様式で行われる。この様式では、自動化プログラムを用いて単一の閉鎖系において洗浄および結合段階を完了するように、細胞、試薬、および他の構成成分が適切な時点にチャンバーに引き入れられ、押し出され、遠心分離が実施される。
【0554】
いくつかの態様において、細胞ならびに1種および/または複数種の選択試薬のインキュベーションおよび/または混合後、インキュベーションした細胞を分離に供して、特定の1種または複数種の試薬の存在または不在に基づいて細胞を選択する。いくつかの態様において、分離は、細胞と選択試薬とのインキュベーションが実施されたのと同じ閉鎖系で実施される。いくつかの態様において、選択試薬とのインキュベーション後、選択試薬が結合した細胞を含むインキュベーションされた細胞を、イムノアフィニティーに基づく細胞分離のための系に移す。いくつかの態様において、イムノアフィニティーに基づく分離のための系は、磁気分離カラムであるか、またはそれを含む。
【0555】
一部の態様において、単離方法には、細胞における、1種類または複数種の特定の分子、例えば、表面マーカー、例えば、表面タンパク質、細胞内マーカー、または核酸の発現または存在に基づく様々な細胞タイプの分離が含まれる。一部の態様において、このようなマーカーに基づいて分離するための任意の公知の方法を使用することができる。一部の態様において、分離は親和性または免疫親和性に基づく分離である。例えば、単離は、一部の局面では、例えば、このようなマーカーに特異的に結合する抗体または結合パートナーとインキュベートし、その後に、一般的に洗浄段階を行い、抗体または結合パートナーに結合している細胞を、抗体または結合パートナーに結合していない細胞から分離することによって、1種類または複数種のマーカー、典型的には細胞表面マーカーの細胞発現または発現レベルに基づいて細胞および細胞集団を分離することを含む。
【0556】
このような分離段階は、さらに使用するために、試薬に結合した細胞が保持される正の選択に基づいてもよく、および/または抗体または結合パートナーに結合していない細胞が保持される負の選択に基づいてもよい。一部の例では、さらに使用するために両画分とも保持される。一部の局面において、不均質な集団の中にある細胞タイプを特異的に特定する抗体が利用できない場合、望ましい集団以外の細胞によって発現されるマーカーに基づいて分離が最も良く行われるように、負の選択が特に有用な場合がある。
【0557】
分離によって、特定のマーカーを発現する特定の細胞集団または細胞が100%濃縮または取り出される必要はない。例えば、特定のタイプの細胞、例えば、マーカーを発現する細胞の正の選択または濃縮とは、このような細胞の数またはパーセントが増加することを指すが、このマーカーを発現しない細胞が完全に無くなる必要はない。同様に、特定のタイプの細胞、例えば、マーカーを発現する細胞の負の選択、除去、または枯渇とは、このような細胞の数またはパーセントが減少することを指すが、このような細胞が全て完全に取り除かれる必要はない。
【0558】
一部の例では、複数回の分離段階が行われ、この場合、ある段階に由来する正に選択された画分または負に選択された画分は別の分離段階、例えば、後の正の選択または負の選択に供される。一部の例では、1回の分離段階で、例えば、それぞれが負の選択のために標的とされるマーカーに特異的な複数種の抗体または結合パートナーと細胞をインキュベートすることによって、同時に、複数種のマーカーを発現する細胞を枯渇することができる。同様に、様々な細胞タイプの表面に発現している複数種の抗体または結合パートナーと細胞をインキュベートすることによって、複数の細胞タイプを同時に正に選択することができる。
【0559】
例えば、一部の局面において、特定のT細胞部分母集団、例えば、1種類もしくは複数種の表面マーカーが陽性の細胞または高レベルの1種類もしくは複数種の表面マーカーを発現する細胞、例えば、CD28+、CD62L+、CCR7+、CD27+、CD127+、CD4+、CD8+、CD45RA+、および/またはCD45RO+T細胞が正の選択法または負の選択法によって単離される。
【0560】
例えば、CD3+、CD28+T細胞は、抗CD3/抗CD28結合磁気ビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T Cell Expander)を用いて正に選択することができる。
【0561】
一部の態様において、単離は、特定の細胞集団を正の選択によって濃縮することによって、または特定の細胞集団を負の選択によって枯渇させることによって行われる。一部の態様において、正の選択または負の選択は、それぞれ、正に選択された細胞または負に選択された細胞の表面に発現している1種類もしくは複数種の表面マーカー(マーカー+)または比較的高いレベルで発現している1種類もしくは複数種の表面マーカー(マーカーhigh)に特異的に結合する1種類または複数種の抗体または他の結合剤と細胞をインキュベートすることによって成し遂げられる。
【0562】
特定の態様において、生物試料、例えばPBMCまたは他の白血球の試料は、CD4+T細胞の選択に供され、その際、陰性画分と陽性画分の両方が確保される。特定の態様において、CD8+T細胞は、陰性画分より選択される。いくつかの態様において、生物試料は、CD8+T細胞の選択に供され、その際、陰性画分と陽性画分の両方が確保される。特定の態様において、CD4+T細胞は、陰性画分より選択される。
【0563】
一部の態様において、T細胞は、非T細胞、例えば、B細胞、単球、または他の白血球の表面に発現しているマーカー、例えば、CD14の負の選択によってPBMC試料から分離される。一部の局面において、CD4+ヘルパーおよびCD8+細胞傷害性T細胞を分離するために、CD4+選択段階またはCD8+選択段階が用いられる。このようなCD4+集団およびCD8+集団は、1つまたは複数のナイーブ、メモリー、および/またはエフェクターT細胞部分母集団の表面で発現しているか、または比較的多量に発現しているマーカーを対象にした正の選択または負の選択によって部分母集団にさらに選別することができる。
【0564】
一部の態様において、さらに、CD8+細胞は、ナイーブ、セントラルメモリー、エフェクターメモリー、および/またはセントラルメモリー幹細胞について、例えば、それぞれの部分母集団に関連する表面抗原に基づいた正の選択または負の選択によって濃縮または枯渇される。一部の態様において、有効性を高めるために、例えば、長期生存、拡大増殖、および/または投与後の生着を改善するために、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮が行われる。一部の局面において、この有効性は、このような部分母集団において特にロバストである。Terakura et al.(2012) Blood.1:72-82; Wang et al.(2012) J Immunother. 35(9):689-701を参照されたい。一部の態様において、TCMが濃縮されたCD8+T細胞およびCD4+T細胞を組み合わせると有効性がさらに高まる。
【0565】
態様において、メモリーT細胞は、CD8+末梢血リンパ球のCD62L+サブセットおよびCD62L-サブセットの両方に存在する。PBMCは、例えば、抗CD8抗体および抗CD62L抗体を用いて、CD62L-CD8+画分および/またはCD62L+CD8+画分について濃縮または枯渇することができる。
【0566】
一部の態様において、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮は、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3、および/またはCD127の正の、または多量の表面発現に基づいている。一部の局面において、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮は、CD45RAおよび/またはグランザイムBを発現するか、または多量に発現する細胞を対象にした負の選択に基づいている。一部の局面において、TCM細胞が濃縮されたCD8+集団の単離は、CD4、CD14、CD45RAを発現する細胞の枯渇と、CD62Lを発現する細胞を対象にした正の選択または濃縮によって行われる。一局面において、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮は、CD4発現に基づいて選択された細胞の負の画分から開始して行われ、この画分は、CD14およびCD45RAの発現に基づく負の選択と、CD62Lに基づく正の選択に供される。このような選択は一部の局面では同時に行われ、他の局面では連続して、どちらの順序でも行われる。一部の局面において、CD4に基づく分離から正の画分および負の画分が両方とも保持され、この方法の後の段階において、任意で、1つまたは複数のさらなる正の選択段階または負の選択段階の後に用いられるように、CD8+細胞集団または部分母集団の調製において用いられた同じCD4発現に基づく選択段階が、CD4+細胞集団または部分母集団を作製するのにも用いられる。
【0567】
特定の例では、PBMC試料または他の白血球試料はCD4+細胞の選択に供される。この場合、負の画分および正の画分が両方とも保持される。次いで、負の画分は、CD14およびCD45RAまたはCD19の発現に基づく負の選択と、セントラルメモリーT細胞に特徴的なマーカー、例えば、CD62LまたはCCR7に基づく正の選択に供される。この場合、正の選択および負の選択はどちらの順序でも行われる。
【0568】
CD4+Tヘルパー細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を特定することによってナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、およびエフェクター細胞に選別される。CD4+リンパ球は標準的な方法によって得ることができる。一部の態様において、ナイーブCD4+Tリンパ球は、CD45RO-、CD45RA+、CD62L+、CD4+T細胞である。一部の態様において、セントラルメモリーCD4+細胞はCD62L+およびCD45RO+である。一部の態様において、エフェクターCD4+細胞はCD62L-およびCD45RO-である。
【0569】
一例では、負の選択によってCD4+細胞を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含む。一部の態様において、正の選択および/または負の選択のために細胞の分離を可能にするために、抗体または結合パートナーは固体支持体またはマトリックス、例えば、磁気ビーズまたは常磁性ビーズに結合される。例えば、一部の態様において、前記細胞および細胞集団は、免疫磁気(または親和性磁気(affinitymagnetic))分離法を用いて分離または単離される(Methods in Molecular Medicine, vol. 58: Metastasis Research Protocols, Vol.2: Cell Behavior In Vitro and In Vivo, p 17-25 Edited by: S. A. Brooks and U. Schumacher(著作権)Humana Press Inc., Totowa, NJにおいて概説される)。
【0570】
一部の局面において、分離しようとする細胞の試料または組成物は、小さな、磁化可能な、または磁気に反応する材料、例えば、磁気に反応する粒子または微粒子、例えば、常磁性ビーズ(例えば、DynalbeadsまたはMACSビーズ)とインキュベートされる。磁気に反応する材料、例えば、粒子は、一般的に、分離することが望ましい細胞または細胞集団、例えば、負に選択する、または正に選択することが望ましい細胞または細胞集団の表面に存在する分子、例えば、表面マーカーに特異的に結合する結合パートナー、例えば、抗体に直接的または間接的に取り付けられる。
【0571】
一部の態様において、磁性粒子または磁気ビーズは、抗体または他の結合パートナーなどの特異的結合メンバーに結合される、磁気に反応する材料を含む。磁気分離方法において用いられる多くの周知の磁気に反応する材料がある。適切な磁性粒子には、参照により本明細書に組み入れられる、Molday,米国特許第4,452,773号、および欧州特許明細書EP452342Bに記載の磁性粒子が含まれる。コロイドサイズの粒子、例えば、Owen 米国特許第4,795,698号およびLiberti et al.,米国特許第5,200,084号に記載のコロイドサイズの粒子が他の例である。
【0572】
インキュベーションは、一般的に、磁性粒子または磁気ビーズに取り付けられている、抗体または結合パートナーまたはこのような抗体もしくは結合パートナーに特異的に結合する分子、例えば、二次抗体もしくは他の試薬が、もし細胞表面分子が試料中の細胞の表面に存在すれば細胞表面分子に特異的に結合する条件下で行われる。
【0573】
一部の局面において、試料は磁場の中に置かれ、磁気に反応する粒子または磁化可能な粒子が取り付けられている細胞は磁石に引き付けられるか、非標識細胞から分離される。正の選択の場合、磁石に引き付けられた細胞が保持される。負の選択の場合、引き付けられなかった細胞(非標識細胞)が保持される。一部の局面において、同じ選択段階の間に正の選択と負の選択の組み合わせが行われ、正の画分および負の画分が保持され、さらに処理されるか、またはさらなる分離段階を受ける。
【0574】
ある特定の態様において、磁気に反応する粒子は一次抗体または他の結合パートナー、二次抗体、レクチン、酵素、もしくはストレプトアビジンでコーティングされる。ある特定の態様において、磁性粒子は、1種類または複数種のマーカーに特異的な一次抗体のコーティングを介して細胞に取り付けられる。ある特定の態様において、前記細胞はビーズではなく、一次抗体または結合パートナーで標識され、次いで、細胞タイプ特異的な二次抗体または他の結合パートナー(例えば、ストレプトアビジン)でコーティングされた磁性粒子が添加される。ある特定の態様において、ストレプトアビジンでコーティングされた磁性粒子が、ビオチン化した一次抗体または二次抗体と一緒に用いられる。
【0575】
一部の態様において、後でインキュベート、培養、および/または操作される細胞に、磁気に反応する粒子を取り付けたままにしておく。一部の局面において、患者に投与するために、前記粒子を細胞に取り付けたままにしておく。一部の態様において、磁化可能な粒子または磁気に反応する粒子は細胞から取り除かれる。磁化可能な粒子を細胞から取り除くための方法は公知であり、例えば、競合する非標識競合抗体、および磁化可能な粒子、または切断可能なリンカーと結合体化した抗体などの使用を含む。一部の態様において、磁化可能な粒子は生分解性である。
【0576】
一部の態様において、親和性に基づく選択は、磁気活性化細胞選別(MACS)(Miltenyi Biotec, Auburn, CA)を介した選択である。磁気活性化細胞選別(MACS)システムは、磁化粒子が取り付けられている細胞を高純度で選択することができる。ある特定の態様において、MACSは、外部磁場が印加された後に、非標的種および標的種が連続して溶出されるモードで動作する。すなわち、取り付けられなかった種が溶出される間に、磁化粒子に取り付けられた細胞は所定の位置に保たれる。次いで、この第1の溶出段階が完了した後に、磁場に閉じ込められ、溶出しないようにされていた種は、このような種が溶出および回収が可能なように何らかのやり方で遊離される。ある特定の態様において、非標的細胞は標識され、不均質な集団細胞から枯渇される。
【0577】
ある特定の態様において、単離または分離は、前記方法の単離段階、細胞調製段階、分離段階、処理段階、インキュベーション段階、培養段階、および/または製剤化段階の1つまたは複数を行うシステム、装置、または器具を用いて行われる。一部の局面において、前記システムは、例えば、誤り、使用者の操作、および/または汚染を最小限にするために、これらの各段階を閉じた、または無菌の環境において行うのに用いられる。一例では、システムは、国際特許出願公開番号 WO2009/072003またはUS20110003380 A1に記載のシステムである。
【0578】
一部の態様において、システムまたは器具は、統合システム型もしくは自立型システムにおいて、および/または自動的に、もしくはプログラム可能なやり方で、単離段階、処理段階、操作段階、および製剤化段階の1つまたは複数、例えば、全てを行う。一部の局面において、システムまたは器具は、使用者が、処理段階、単離段階、操作段階、および製剤化段階の様々な局面をプログラムする、制御する、そのアウトカムを評価する、および/または調整するのを可能にする、システムまたは器具と通信するコンピュータおよび/またはコンピュータプログラムを備える。
【0579】
一部の局面において、例えば、閉じた無菌のシステムにおいて細胞を臨床規模レベルで自動分離するために、分離段階および/または他の段階はCliniMACSシステム(Miltenyi Biotec)を用いて行われる。構成要素には、内蔵型マイクロコンピュータ、磁気分離ユニット、蠕動ポンプ、および様々なピンチ弁が含まれる場合がある。内蔵型コンピュータは一部の局面では機器の全構成要素を制御し、反復手順を統一された順序で行うようにシステムを命令する。磁気分離ユニットは、一部の局面では、可動性の永久磁石および選択カラム用のホルダを備える。蠕動ポンプはチューブセット全体にわたる流速を制御し、ピンチ弁と一緒に、緩衝液がシステムを制御されて流れ、細胞が絶え間なく懸濁されるのを確かなものにする。
【0580】
CliniMACSシステムは、一部の局面では、滅菌した非発熱性の溶液に溶解して供給される、抗体に結合した磁化可能な粒子を使用する。一部の態様において、細胞は磁性粒子で標識された後に、余分な粒子を除去するために洗浄される。次いで、細胞調製バッグがチューブセットに接続され、そして次にチューブセットは緩衝液含有バックおよび細胞収集バッグに接続される。チューブセットは、プレカラムおよび分離カラムを含む予め組み立てられた滅菌チューブからなり、使い捨て専用である。分離プログラムが開始した後に、システムは分離カラムに細胞試料を自動的にアプライする。標識された細胞はカラム内に保持されるのに対して、標識されなかった細胞は一連の洗浄段階によって除去される。一部の態様において、本明細書に記載の方法と共に使用するための細胞集団は標識されず、カラム内に保持されない。一部の態様において、本明細書に記載の方法と共に使用するための細胞集団は標識され、カラム内に保持される。一部の態様において、磁場が取り除かれた後に、本明細書に記載の方法と共に使用するための細胞集団はカラムから溶出され、細胞収集バッグ内に収集される。
【0581】
ある特定の態様において、分離段階および/または他の段階はCliniMACS Prodigyシステム(Miltenyi Biotec)を用いて行われる。CliniMACS Prodigyシステムには、一部の局面では、細胞を自動洗浄し、遠心分離によって分画する細胞処理ユニット(cell processing unity)が付いている。CliniMACS Prodigyシステムはまた、内蔵カメラと、供給源の細胞産物の巨視的な層を識別することによって最適な細胞分画エンドポイントを決定する画像認識ソフトウェアも備えている場合がある。例えば、末梢血は赤血球、白血球、および血漿の層に自動的に分離される。CliniMACS Prodigyシステムはまた、細胞培養プロトコール、例えば、細胞分化および拡大増殖、抗原添加、ならびに長期細胞培養を行う内蔵型細胞発育チャンバーも備えている場合がある。インプットポートを用いると、培地を無菌的に取り出し、補充することができる。細胞は、内蔵型顕微鏡を用いてモニタリングすることができる。例えば、Klebanoff et al.(2012) J Immunother. 35(9): 651-660, Terakuraet al.(2012) Blood.1:72-82、およびWang et al.(2012) J Immunother. 35(9):689-701を参照されたい。
【0582】
一部の態様において、本明細書に記載の細胞集団はフローサイトメトリーを介して収集および濃縮(または枯渇)される。フローサイトメトリーでは、複数種の細胞表面マーカーについて染色された細胞は流体の流れに入って運ばれる。一部の態様において、本明細書に記載の細胞集団は、分取スケール(preparative scale)(FACS)選別を介して収集および濃縮(または枯渇)される。ある特定の態様において、本明細書に記載の細胞集団は、FACSに基づく検出系と組み合わせて微小電気機械システム(MEMS)チップを用いることによって収集および濃縮(または枯渇)される(例えば、WO2010/033140, Cho et al.(2010) Lab Chip 10, 1567-1573;および Godin et al.(2008) J Biophoton. 1(5):355-376を参照されたい)。どちらの場合でも、細胞は複数種のマーカーで標識することができ、それによって、詳細に明らかにされたT細胞サブセットを高純度で単離することが可能になる。
【0583】
一部の態様において、正の選択および/または負の選択のために分離を容易にするために、抗体または結合パートナーは1種類または複数種の検出可能なマーカーで標識される。例えば、分離は蛍光標識抗体との結合に基づいてもよい。一部の例では、1種類または複数種の細胞表面マーカーに特異的な抗体または他の結合パートナーの結合に基づく細胞の分離は、流体の流れの中で、例えば、分取スケール(FACS)および/または微小電気機械システム(MEMS)チップを備える蛍光標識細胞分取(FACS)によって、例えば、フローサイトメトリー検出系と組み合わせて行われる。このような方法を用いると、複数種のマーカーに基づいて正の選択および負の選択を同時に行うことができる。
【0584】
一部の態様において、調製方法は、単離、インキュベーション、および/または操作の前または後に細胞を凍結、例えば、凍結保存するための段階を含む。一部の態様において、凍結段階およびその後の解凍段階によって、細胞集団の中にある顆粒球が取り除かれ、単球がある程度まで取り除かれる。一部の態様において、例えば、血漿および血小板を取り除く洗浄段階の後に、前記細胞は凍結溶液に懸濁される。様々な任意の公知の凍結溶液およびパラメータを一部の局面で使用することができる。一例は、20%DMSOおよび8%ヒト血清アルブミン(HSA)を含有するPBS、または他の適切な細胞凍結培地を使用することを伴う。次いで、DMSOおよびHSAの最終濃度がそれぞれ10%および4%になるように、これを培地で1:1に希釈する。次いで、細胞は一般的に1分につき1℃の速度で-80℃まで凍結され、液体窒素貯蔵タンクの気相の中で保管される。
【0585】
一部の態様において、単離および/または選択によって、濃縮T細胞、例えばCD3+T細胞、CD4+T細胞、および/またはCD8+T細胞の、1種または複数種のインプット組成物がもたらされる。いくつかの態様において、2種またはそれ以上の別個のインプット組成物は、単一の生物試料から単離、選択、濃縮、または取得される。いくつかの態様において、別個のインプット組成物は、同じ対象から採取、収集、および/または取得された別個の生物試料から単離、選択、濃縮、および/または取得される。
【0586】
特定の態様において、1種または複数種のインプット組成物は、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、または100%もしくは約100%のCD3+T細胞を含む濃縮T細胞の組成物であるか、あるいはそれを含む。特定の態様において、濃縮T細胞のインプット組成物は、本質的にCD3+T細胞からなる。
【0587】
特定の態様において、1種または複数種のインプット組成物は、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、または100%もしくは約100%のCD4+T細胞を含む濃縮CD4+T細胞の組成物であるか、あるいはそれを含む。特定の態様において、CD4+T細胞のインプット組成物は、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満、もしくは0.01%未満のCD8+T細胞を含み、かつ/またはCD8+T細胞を含有せず、かつ/またはCD8+T細胞を含まないもしくは実質的に含まない。いくつかの態様において、濃縮T細胞の組成物は、本質的にCD4+T細胞からなる。
【0588】
特定の態様において、1種または複数種の組成物は、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、または100%もしくは約100%のCD8+T細胞であるかまたはそれを含むCD8+T細胞の組成物であるか、あるいはそれを含む。特定の態様において、CD8+T細胞の組成物は、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満、もしくは0.01%未満のCD4+T細胞を含有し、かつ/またはCD4+T細胞を含有せず、かつ/またはCD4+T細胞を含まないもしくは実質的に含まない。いくつかの態様において、濃縮T細胞の組成物は、本質的にCD8+T細胞からなる。
【0589】
B. 活性化および刺激
いくつかの態様において、細胞は、遺伝子操作の前にまたは遺伝子操作とともに、インキュベーションおよび/または培養される。インキュベーション段階は、培養、カルチベーション、刺激、活性化、および/または増殖を含むことができる。インキュベーションおよび/または操作は、培養容器、例えば、培養または細胞培養のための装置、チャンバー、ウェル、カラム、チューブ、チュービングセット、バルブ、バイアル、培養皿、バッグ、または他の容器中で実施されてよい。いくつかの態様において、組成物または細胞は、刺激条件または刺激物質の存在下でインキュベーションされる。このような条件には、集団における細胞の増殖、拡大増殖、活性化、および/もしくは生存を誘導する、抗原曝露を模倣する、ならびに/または遺伝子操作、例えば組換え抗原受容体の導入のために細胞を予備刺激するように設計されたものが含まれる。
【0590】
これらの条件には、特定の培地、温度、酸素含有量、二酸化炭素含有量、時間、作用物質、例えば、栄養素、アミノ酸、抗生物質、イオン、および/または刺激因子、例えば、サイトカイン、ケモカイン、抗原、結合相手、融合タンパク質、可溶性組換え受容体、ならびに細胞を活性化するように設計された他の任意の作用物質のうちの1つまたは複数が含まれ得る。
【0591】
いくつかの態様において、刺激条件または刺激物質には、TCR複合体の細胞内シグナル伝達領域を刺激または活性化することができる1種または複数種の作用物質、例えばリガンドが含まれる。いくつかの局面において、作用物質は、T細胞においてTCR/CD3細胞内シグナル伝達カスケードを作動させるかまたは開始する。このような作用物質には、抗体、例えばTCRに特異的なもの、例えば抗CD3が含まれ得る。いくつかの態様において、刺激条件には、共刺激受容体を刺激することができる1種または複数種の作用物質、例えばリガンド、例えば抗CD28が含まれる。いくつかの態様において、このような作用物質および/またはリガンドは、ビーズなどの固体支持体および/または1つもしくは複数のサイトカインに結合していてもよい。任意で、拡大増殖方法は、抗CD3抗体および/または抗CD28抗体を培地に(例えば、少なくとも約0.5ng/mlの濃度で)添加する段階をさらに含んでもよい。いくつかの態様において、刺激物質には、IL-2、IL-15、および/またはIL-7が含まれる。いくつかの局面において、IL-2の濃度は、少なくとも約10単位/mLである。
【0592】
いくつかの局面において、インキュベーションは、Riddellらの米国特許第6,040,177号、Klebanoff et al.(2012) J Immunother. 35(9): 651-660、Terakura et al. (2012) Blood.1:72-82、および/またはWang et al. (2012) J Immunother. 35(9):689-701に記載されているもののような技術に従って行われる。
【0593】
いくつかの態様において、(例えば、結果として生じる細胞集団が、拡大増殖させようとする初期集団中の各Tリンパ球に対して少なくとも約5、10、20、もしくは40個またはそれ以上のPBMCフィーダー細胞を含むように)非分裂末梢血単核細胞(PBMC)などのフィーダー細胞を培養開始組成物に添加し;かつ(例えば、T細胞の数を増大させるのに十分な時間)培養物をインキュベーションすることによって、T細胞を拡大増殖させる。いくつかの局面において、非分裂フィーダー細胞は、ガンマ線照射PBMCフィーダー細胞を含むことができる。いくつかの態様において、PBMCは、細胞分裂を防ぐために、約3000~3600ラドの範囲のガンマ線を照射される。いくつかの局面において、フィーダー細胞は、T細胞集団の添加の前に、培地に添加される。
【0594】
いくつかの態様において、刺激条件には、ヒトTリンパ球の増殖に適している温度、例えば、少なくとも約25℃、通常は少なくとも約30℃、および通常は37℃または約37℃が含まれる。任意で、インキュベーションは、非分裂EBV形質転換リンパ芽球様細胞(LCL)をフィーダー細胞として添加することをさらに含んでもよい。LCLは、約6000~10,000ラドの範囲のガンマ線で照射することができる。いくつかの局面におけるLCLフィーダー細胞は、任意の適切な量で、例えばLCLフィーダー細胞と初期Tリンパ球の比が少なくとも約10:1である量で、提供される。
【0595】
態様において、抗原特異的T細胞、例えば抗原特異的なCD4+T細胞および/またはCD8+T細胞は、ナイーブTリンパ球または抗原特異的Tリンパ球を抗原で刺激することによって得られる。例えば、抗原特異的なT細胞株またはクローンは、サイトメガロウイルス抗原に対して、感染した対象からT細胞を単離し、同じ抗原を用いて細胞をインビトロで刺激することにより、作製することができる。
【0596】
いくつかの態様において、1種または複数種の刺激条件または刺激物質の存在下でのインキュベーションの少なくとも一部は、例えば、国際公開公報第2016/073602号に記載されているような遠心回転下で、遠心チャンバーの内部キャビティ内で行われる。いくつかの態様において、遠心チャンバー内で行われるインキュベーションの少なくとも一部は、刺激および/または活性化を誘導するための1種または複数種の試薬と混合することを含む。いくつかの態様において、細胞、例えば選択された細胞は、遠心チャンバー内で刺激条件または刺激物質と混合される。このようなプロセスのいくつかの局面において、ある体積量の細胞が、細胞培養プレートまたは他の系において同様の刺激を与える場合に通常使用されるよりもはるかに少ない量の、1種または複数種の刺激条件または刺激物質と混合される。
【0597】
いくつかの態様において、刺激物質は、遠心チャンバー内で混合せずに、例えば、定期的に振盪または回転しながらチューブまたはバッグ中で選択が実施される場合に、同じ数の細胞または同じ体積の細胞の選択についてほぼ同じまたは同様の効率を実現するために典型的に使用されるかまたは必要であると思われる刺激物質の量と比較して、実質的に少ない(例えば、その量の5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%以下である)量で、チャンバーのキャビティ中の細胞に添加される。いくつかの態様において、インキュベーションは、例えば10mL~200mL、例えば、少なくとも10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、150mL、もしくは200mL、または少なくとも約10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、150mL、もしくは200mL、または約10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、150mL、もしくは200mL、または10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、150mL、もしくは200mLである、試薬のインキュベーションに伴う目標体積を実現するために、細胞および刺激物質にインキュベーション緩衝液を添加して、実施される。いくつかの態様において、インキュベーション緩衝液および刺激物質は、細胞に添加する前に予備混合される。いくつかの態様において、インキュベーション緩衝液および刺激物質は、細胞に別々に添加される。いくつかの態様において、刺激インキュベーションは、定期的に穏やかに混合する条件下で実施され、この条件は、エネルギー的に好ましい相互作用を促進するのに役立ち、それによって、刺激物質の総使用量を少なくし、同時に細胞の刺激および活性化を実現することを可能にし得る。
【0598】
いくつかの態様において、インキュベーションは、通常、混合条件下で行われ、例えば、通常は比較的低い力または速度、例えば細胞をペレット化するために使用される速度よりも低い速度で、例えば600rpm~1700rpmまたは約600rpm~1700rpm(例えば、600rpm、1000rpm、もしくは1500rpm、もしくは1700rpm、または約600rpm、1000rpm、もしくは1500rpm、もしくは1700rpm、または少なくとも600rpm、1000rpm、もしくは1500rpm、もしくは1700rpm)で、例えば、チャンバーまたは他の容器の試料または壁に対して80g~100gまたは約80g~100g(例えば、80g、85g、90g、95g、もしくは100g、または約80g、85g、90g、95g、もしくは100g、または少なくとも80g、85g、90g、95g、もしくは100g)のRCFでの回転の存在下で行われる。いくつかの態様において、回転は、このような低速度での回転とそれに続く静止期間、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10秒間の回転および/または静止、例えば、約1または2秒の回転とそれに続く約5、6、7、または8秒間の静止という時間間隔の繰り返しを用いて行われる。
【0599】
いくつかの態様において、例えば刺激物質とのインキュベーションの合計持続時間は、1時間~96時間、1時間~72時間、1時間~48時間、4時間~36時間、8時間~30時間、もしくは12時間~24時間、または約1時間~96時間、約1時間~72時間、約1時間~48時間、約4時間~36時間、約8時間~30時間、もしくは約12時間~24時間、例えば、少なくとも6時間、12時間、18時間、24時間、36時間、もしくは72時間、または少なくとも約6時間、12時間、18時間、24時間、36時間、もしくは72時間である。いくつかの態様において、さらなるインキュベーションが、1時間~48時間、4時間~36時間、8時間~30時間、もしくは12時間~24時間、または約1時間~48時間、約4時間~36時間、約8時間~30時間、もしくは約12時間~24時間(両端の値を含む)、行われる。
【0600】
特定の態様において、刺激条件には、1種もしくは複数種のサイトカインとともに、かつ/または1種もしくは複数種のサイトカインの存在下で、濃縮T細胞の組成物をインキュベーション、培養、および/またはカルチベーションすることが含まれる。特定の態様において、1種または複数種のサイトカインは、組換えサイトカインである。いくつかの態様において、1種または複数種のサイトカインは、ヒト組換えサイトカインである。特定の態様において、1種または複数種のサイトカインは、T細胞によって発現され、かつ/またはT細胞に内在する受容体に、結合し、かつ/または結合することができる。特定の態様において、1種または複数種のサイトカインは、サイトカインの4α-ヘリックスバンドルファミリーのメンバーであるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、サイトカインの4α-ヘリックスバンドルファミリーのメンバーには、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-9(IL-9)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン15(IL-15)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、および顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)がが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0601】
いくつかの態様において、刺激は、例えば形質導入より前に、細胞の活性化および/または増殖をもたらす。
【0602】
C. 遺伝子操作のためのベクターおよび方法
いくつかの態様において、提供される方法、使用、製造物品、または組成物とともに使用される操作された細胞、例えばT細胞は、組換え受容体、例えば本明細書に記載のCARを発現するように遺伝子操作された細胞である。いくつかの態様において、これらの細胞は、組換え受容体および/または他の分子をコードする核酸配列の導入、送達、または移入によって操作される。
【0603】
いくつかの態様において、操作された細胞を作製するための方法は、組換え受容体(例えば抗CD19 CAR)をコードするポリヌクレオチドを細胞、例えば刺激または活性化された細胞に導入することを含む。特定の態様において、組換えタンパク質は、説明したいずれかのような組換え受容体である。組換え受容体などの組換えタンパク質をコードする核酸分子の細胞への導入は、いくつかの公知のベクターのいずれかを用いて行われてよい。このようなベクターには、レンチウイルス系およびガンマレトロウイルス系、およびトランスポゾンベースの系、例えばPiggyBacまたはSleeping Beautyベースの遺伝子移入系を含む、ウイルス系および非ウイルス系が含まれる。例示的な方法には、ウイルス、例えばレトロウイルスまたはレンチウイルス、形質導入、トランスポゾン、およびエレクトロポレーションを介するものを含む、受容体をコードする核酸を移入するための方法が含まれる。いくつかの態様において、操作により、1種または複数種の操作された濃縮T細胞組成物が作製される。
【0604】
特定の態様において、1種または複数種の、刺激されたT細胞の組成物は、2種の別個の刺激された濃縮T細胞組成物であるか、またはそれらを含む。特定の態様において、濃縮T細胞の2種の別個の組成物、例えば、同じ生物試料から選択、単離、および/または濃縮された濃縮T細胞の2種の別個の組成物は、別々に操作される。特定の態様において、2種の別個の組成物には、濃縮CD4+T細胞の組成物が含まれる。特定の態様において、2種の別個の組成物には、濃縮CD8+T細胞の組成物が含まれる。いくつかの態様において、濃縮CD4+T細胞および濃縮CD8+T細胞の2種の別個の組成物は、別々に遺伝子操作される。
【0605】
いくつかの態様において、遺伝子移入は、例えば細胞を刺激物質と混合することによって、まず細胞を刺激し、続いて、活性化された細胞に形質導入し、臨床応用に十分な数まで培養によって拡大増殖させることにより、遂行される。ここで、刺激物質は、例えば、サイトカインまたは活性化マーカーの発現に基づいて測定される、応答、例えば、増殖、生存、およびまたは活性化を誘導するものである。特定の態様において、遺伝子移入は、例えば説明した方法のいずれかによって、刺激条件下で細胞をまずインキュベーションすることにより、遂行される。
【0606】
いくつかの態様において、遺伝子操作のための方法は、組成物の1つまたは複数の細胞を、組換えタンパク質、例えば組換え受容体をコードする核酸分子と接触させることによって行われる。いくつかの態様において、接触は、スピノキュレーション(例えば遠心接種)など、遠心を用いて実施することができる。このような方法には、国際公開公報第2016/073602号に記載されているもののいずれかが含まれる。例示的な遠心チャンバーには、Biosafe SAによって製造および販売されるものが含まれ、これにはSepax(登録商標)およびSepax(登録商標)2システムとともに使用するためのものが含まれ、A-200/FおよびA-200遠心チャンバーおよびそのようなシステムで使用するための様々なキットが含まれる。例示的なチャンバー、システム、ならびに加工処理用の機器およびキャビネットは、例えば、米国特許第6,123,655号、米国特許第6,733,433号、および米国特許出願公開US 2008/0171951、ならびに公開された国際特許出願、公開番号WO 00/38762に記載されており、各文献の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。このようなシステムで使用するための例示的なキットには、BioSafe SAからCS-430.1、CS-490.1、CS-600.1またはCS-900.2の製品名で販売されている単回使用キットが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0607】
いくつかの態様において、接触は、スピノキュレーション(例えば遠心接種)など、遠心を用いて実施することができる。いくつかの態様において、細胞を含む組成物、ウイルス粒子、および試薬を、通常は比較的低い力または速度、例えば細胞をペレット化するために使用される速度よりも低い速度で、例えば600rpm~1700rpmまたは約600rpm~1700rpm(例えば、600rpm、1000rpm、もしくは1500rpm、もしくは1700rpm、または約600rpm、1000rpm、もしくは1500rpm、もしくは1700rpm、または少なくとも600rpm、1000rpm、もしくは1500rpm、もしくは1700rpm)で、回転させることができる。いくつかの態様において、この回転は、例えばチャンバーまたはキャビティの内壁または外壁に対して測定した場合に、ある力で、例えば、100g~3200gまたは約100g~3200g(例えば、100g、200g、300g、400g、500g、1000g、1500g、2000g、2500g、3000g、もしくは3200g、または約100g、200g、300g、400g、500g、1000g、1500g、2000g、2500g、3000g、もしくは3200g、または少なくとも100g、200g、300g、400g、500g、1000g、1500g、2000g、2500g、3000g、もしくは3200g、または少なくとも約100g、200g、300g、400g、500g、1000g、1500g、2000g、2500g、3000g、もしくは3200g)の相対遠心力で、行われる。通常、用語「相対遠心力」またはRCFは、回転軸と比較して空間内の特定の点における、地球の重力と比べた、ある物体または物質(例えば、細胞、試料、もしくはペレット、および/または回転されているチャンバーもしくは他の容器内の一箇所)に加えられる有効力であると理解されている。その値は、重力、回転速度、および回転半径(回転軸からの距離、およびRCFが測定されている物体、物質、または粒子)を考慮に入れて、周知の式を用いて求めることができる。
【0608】
いくつかの態様では、導入は、組成物の1つまたは複数の細胞を、組換えタンパク質、例えば組換え受容体をコードする核酸分子と接触させることによって行われる。一部の態様では、接触は、遠心分離、例えばスピノキュレーション(spinoculation)(例えば、遠心接種(centrifugal inoculation))によりもたらすことができる。そのような方法としては、国際公開第WO2016/073602号に記載されるもののいずれかが挙げられる。例示的な遠心分離チャンバーとしては、Sepax(登録商標)およびSepax(登録商標) 2システムと共に使用するためのものを含む、Biosafe SAによって製造されかつ販売されているものが挙げられ、A-200/FおよびA-200遠心分離チャンバーならびにそのようなシステムと共に使用するための種々のキットが含まれる。例示的なチャンバー、システム、ならびに処理機器およびキャビネットは、例えば、そのそれぞれの内容が参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第6,123,655号、米国特許第6,733,433号、および公開米国特許出願公報第US 2008/0171951号、ならびに公開国際特許出願公報第WO 00/38762号に記載される。そのようなシステムと共に使用するための例示的なキットには、これらに限定されないが、商品名CS-430.1、CS-490.1、CS-600.1、または CS-900.2でBioSafe SAによって販売される使い捨てキットが含まれる。
【0609】
いくつかの態様において、システムは、他の機器とともに含まれ、かつ/または他の機器と連係するように配置される。該他の機器には、該システムにおいて実施される形質導入段階および1つまたは複数の他の様々な加工処理段階、例えば、本明細書においてまたは国際公開公報第2016/073602号において説明される遠心チャンバーシステムを用いてまたはそれに関連して行うことができる1つまたは複数の加工処理段階の局面を作動、自動化、制御、および/またはモニターするための機器が含まれる。いくつかの態様において、この機器はキャビネット内に含まれる。いくつかの態様において、機器はキャビネットを含み、キャビネットは、制御回路網、遠心分離機、カバー、モーター、ポンプ、センサー、ディスプレイ、およびユーザーインターフェースを収容する筐体を含む。例示的な装置は、米国特許第6,123,655号、米国特許第6,733,433号、およびUS 2008/0171951に記載されている。
【0610】
いくつかの態様において、システムは、一連の容器、例えば、バッグ、チュービング、活栓、クランプ、コネクター、および遠心チャンバーを含む。いくつかの態様において、バッグなどの容器は、同じ容器または別々の容器、例えば同じバッグまたは別々のバッグの中に、形質導入しようとする細胞およびウイルスベクター粒子を含む、1つまたは複数の容器、例えばバッグを含む。いくつかの態様において、システムは、チャンバーに引き込まれる希釈剤および/もしくは洗浄溶液などの媒体、ならびに/または方法の実施中に構成要素および/もしくは組成物を希釈、再懸濁、および/もしくは洗浄するための他の構成要素を含む、1つまたは複数の容器、例えばバッグをさらに含む。これらの容器は、システム内の1つまたは複数の位置、例えばインプットライン、希釈剤ライン、洗浄ライン、廃棄物ライン、および/またはアウトプットラインに対応する位置で連結することができる。
【0611】
いくつかの態様において、チャンバーは、例えばその回転軸を中心にしてチャンバーの回転をもたらすことができる遠心分離機と結合されている。回転は、細胞の形質導入に関連するインキュベーションの前、間、および/もしくは後に、ならびに/または他の加工処理段階のうちの1つもしくは複数において、行われてよい。したがって、いくつかの態様において、様々な加工処理段階のうちの1つまたは複数は、例えば特定の力での回転下で行われる。チャンバーは、遠心分離時にチャンバーが垂直に位置し、かつ側壁と軸が垂直またはおおむね垂直であり、端壁が水平またはおおむね水平であるように、典型的には垂直またはおおむね垂直な回転が可能である。
【0612】
いくつかの態様では、細胞、ベクター、例えばウイルス粒子、および試薬を含む組成物は、概して相対的に低い力または速度、例えば、細胞をペレット化するのに用いられるものより低い速度、例えば、600または約600 rpmから1700 rpm(例えば、600 rpm、1000 rpm、もしくは1500 rpm、もしくは 1700 rpm、または約600 rpm、1000 rpm、もしくは1500 rpm、もしくは 1700 rpm、または少なくとも600 rpm、1000 rpm、もしくは1500 rpm、もしくは 1700 rpm)で回転させることができる。一部の態様では、回転は、例えばチャンバーまたはキャビティの内壁または外壁で測定した、100または約100 gから3200 g(例えば、100 g、200 g、300 g、400 g、500 g、1000 g、1500 g、2000 g、2500 g、3000 g、もしくは3200 g、または約100 g、200 g、300 g、400 g、500 g、1000 g、1500 g、2000 g、2500 g、3000 g、もしくは3200 g、または少なくとも100 g、200 g、300 g、400 g、500 g、1000 g、1500 g、2000 g、2500 g、3000 g、もしくは3200 g、または少なくとも約100 g、200 g、300 g、400 g、500 g、1000 g、1500 g、2000 g、2500 g、3000 g、もしくは3200 g)の力、例えば相対遠心力で行われる。用語「相対遠心力」またはRCFは、回転軸と比較した空間中のある特定の点での、地球の重力を基準とした物体または物質(例えば、細胞、試料、もしくはペレット、および/またはチャンバーまたは回転させる他の容器中の点)に対して付与される有効力であると一般に理解される。値は、重力、回転速度、および回転半径(RCFを測定する物体、物質、または粒子の回転軸からの距離)を考慮して、周知の式を用いて決定され得る。
【0613】
いくつかの態様において、遺伝子操作の少なくとも一部、例えば形質導入の間に、かつ/または遺伝子操作の後に、細胞は、遺伝子操作された細胞の培養のため、例えば細胞のカルチベーションまたは拡大増殖のためのバイオリアクターバッグアセンブリに移される。
【0614】
いくつかの態様において、組換え核酸は、例えば、サルウイルス40(SV40)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するベクターなどの組換え感染性ウイルス粒子を用いて、細胞中に移入される。いくつかの態様において、組換え核酸は、組換えレンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクター、例えばガンマレトロウイルスベクターを用いてT細胞中に移入される(例えば、Koste et al. (2014) Gene Therapy 2014 Apr 3. doi: 10.1038/gt.2014.25; Carlens et al. (2000) Exp Hematol 28(10): 1137-46; Alonso-Camino et al. (2013) Mol Ther Nucl Acids 2, e93; Park et al., Trends Biotechnol. 2011 November 29(11): 550-557)。
【0615】
いくつかの態様において、レトロウイルスベクター、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、骨髄増殖性肉腫ウイルス(MPSV)、マウス胚性幹細胞ウイルス(MESV)、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、または脾フォーカス形成ウイルス(SFFV)に由来するレトロウイルスベクターは、長い末端反復配列(LTR)を有する。ほとんどのレトロウイルスベクターは、マウスレトロウイルスに由来する。いくつかの態様において、レトロウイルスには、任意の鳥類または哺乳類の細胞供給源に由来するものが含まれる。レトロウイルスは、典型的にはアンホトロピックであり、これは、ヒトを含むいくつかの種の宿主細胞に感染できることを意味する。1つの態様において、発現させようとする遺伝子で、レトロウイルスのgag、pol、および/またはenv配列を置き換える。いくつかの例示的なレトロウイルス系が説明されている(例えば、米国特許第5,219,740号、同第6,207,453号、同第5,219,740号; Miller and Rosman (1989) BioTechniques 7:980-990; Miller, A. D. (1990) Human Gene Therapy 1:5-14; Scarpa et al. (1991) Virology 180:849-852; Burns et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:8033-8037;およびBoris-Lawrie and Temin (1993) Cur. Opin. Genet. Develop. 3:102-109を参照されたい)。
【0616】
レンチウイルス形質導入の方法は公知である。例示的な方法は、例えば、Wang et al. (2012) J. Immunother. 35(9): 689-701; Cooper et al. (2003) Blood. 101:1637-1644; Verhoeyen et al. (2009) Methods Mol Biol. 506: 97-114;およびCavalieri et al. (2003) Blood. 102(2): 497-505に記載されている。
【0617】
いくつかの態様において、ウイルスベクター粒子は、レトロウイルスゲノムに基づくベクターに由来する、例えばレンチウイルスゲノムに基づくベクターに由来する、ゲノムを含む。提供されるウイルスベクターのいくつかの局面において、組換え受容体、例えばCARなどの抗原受容体をコードする異種核酸は、ベクターゲノムの5’LTR配列と3’LTR配列の間に含まれ、かつ/または位置する。
【0618】
いくつかの態様において、ウイルスベクターゲノムは、HIV-1ゲノムまたはSIVゲノムなどのレンチウイルスゲノムである。例えば、レンチウイルスベクターは、病原性遺伝子を複数回弱毒化することによって作製されており、例えば、遺伝子env、vif、vpu、およびnefを欠失させて、治療目的のためにベクターの安全性を高めることができる。レンチウイルスベクターは公知である。Naldini et al.,(1996 and 1998); Zufferey et al.,(1997); Dull et al.,1998、米国特許第6,013,516号;および同第5,994,136号を参照されたい。いくつかの態様において、これらのウイルスベクターは、プラスミドベースまたはウイルスベースであり、外来核酸の組入れのため、選択のため、および宿主細胞への核酸の移入のために必須な配列を有するように構成されている。公知のレンチウイルスは、American Type Culture Collection(「ATCC」; 10801 University Blvd., Manassas, Va. 20110-2209)などの寄託機関またはコレクションから容易に入手できるか、または一般に利用可能な技術を用いて公知の供給源から単離することができる。
【0619】
レンチウイルスベクターの非限定的な例には、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)、HIV-2、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒトTリンパ球向性ウイルス1(HTLV-1)、HTLV-2、またはウマ伝染性貧血ウイルス(E1AV)などのレンチウイルスに由来するものが含まれる。例えば、レンチウイルスベクターは、HIV病原性遺伝子を複数回弱毒化することによって作製されており、例えば、遺伝子env、vif、vpr、vpu、およびnefを欠失させて、治療目的のためにベクターの安全性を高める。レンチウイルスベクターは当技術分野において公知であり、Naldini et al., (1996 and 1998); Zufferey et al., (1997); Dull et al., 1998、米国特許第6,013,516号;および同第5,994,136号を参照されたい。いくつかの態様において、これらのウイルスベクターは、プラスミドベースまたはウイルスベースであり、外来核酸の組入れのため、選択のため、および宿主細胞への核酸の移入のために必須な配列を有するように構成されている。公知のレンチウイルスは、American Type Culture Collection(「ATCC」;10801 University Blvd., Manassas, Va. 20110-2209)などの寄託機関またはコレクションから容易に入手できるか、または一般に利用可能な技術を用いて公知の供給源から単離することができる。
【0620】
いくつかの態様において、ウイルスゲノムベクターは、レンチウイルスなどのレトロウイルスの5′LTRおよび3′LTRの配列を含むことができる。いくつかの局面において、ウイルスゲノム構築物は、レンチウイルスの5’LTRおよび3’LTR由来の配列を含んでよく、特に、レンチウイルスの5’LTR由来のR配列およびU5配列ならびにレンチウイルス由来の不活性3’LTRまたは自己不活性化3’LTRを含むことができる。LTR配列は、任意の種に起源を持つ任意のレンチウイルス由来のLTR配列であることができる。例えば、それらは、HIV、SIV、FIV、またはBIVに由来するLTR配列であってよい。典型的には、LTR配列はHIV LTR配列である。
【0621】
いくつかの態様において、HIVウイルスベクターなどのウイルスベクターの核酸は、付加的な転写単位を欠く。ベクターゲノムは、不活性3’LTRまたは自己不活性化3’LTRを含むことができる(Zufferey et al. J Virol 72:9873,1998;Miyoshi et al., J Virol 72:8150,1998)。例えば、ウイルスベクターRNAを産生するのに使用される核酸の3’LTRのU3領域における欠失を利用して、自己不活性化(SIN)ベクターを作製することができる。次いで、この欠失を、逆転写の進行中にプロウイルスDNAの5’LTRに移入することができる。通常、自己不活性化ベクターは、3’の長い末端反復配列(LTR)に由来するエンハンサー配列およびプロモーター配列の欠失を有し、この欠失はベクターの組込み時に5’LTRにコピーされる。いくつかの態様において、TATAボックスの除去を含む十分な配列の排除によって、LTRの転写活性を無効にすることができる。これにより、形質導入された細胞における完全長ベクターRNAの産生を防止することができる。いくつかの局面において、3’LTRのU3エレメントは、そのエンハンサー配列、TATAボックス、Sp1、およびNF-κB部位の欠失を含む。自己不活性化3’LTRの結果として、侵入および逆転写の後に生成されるプロウイルスは、不活性5’LTRを含む。これにより、ベクターゲノムの起動リスク、および近傍の細胞プロモーターへのLTRの影響を低減することによって安全性を高めることができる。自己不活性化3’LTRは、当技術分野において公知である任意の方法によって構築することができる。いくつかの態様において、これは、ベクター力価にもベクターのインビトロ特性およびインビボ特性にも影響を及ぼさない。
【0622】
任意で、レンチウイルス5’LTR由来のU3配列は、ウイルス構築物中のプロモーター配列、例えば異種プロモーター配列で置き換えることができる。これにより、パッケージング細胞株から回収されるウイルスの力価を高めることができる。エンハンサー配列もまた、含めることができる。パッケージング細胞株におけるウイルスRNAゲノムの発現を増加させる任意のエンハンサー/プロモーター組合せが、使用されてよい。一例では、CMVエンハンサー/プロモーター配列が使用される(米国特許第5,385,839号および米国特許第5,168,062号)。
【0623】
特定の態様において、レンチウイルスベクターゲノムなどのレトロウイルスベクターゲノムを組込み欠陥になるように構築することによって、挿入変異のリスクを最小限に抑えることができる。非組込みベクターゲノムを作製するために、様々なアプローチを遂行することができる。いくつかの態様において、不活性インテグラーゼを有するタンパク質をpol遺伝子がコードするように、pol遺伝子のインテグラーゼ酵素構成要素に変異を人工的に作り出すことができる。いくつかの態様において、例えば、一方もしくは両方の付着部位を変異もしくは欠失させることにより、または欠失もしくは改変によって3’LTR近位ポリプリン領域(PPT)を非機能性にすることにより、ベクターゲノム自体を改変して、組込みを防ぐことができる。いくつかの態様において、非遺伝学的アプローチが利用可能であり、これらには、インテグラーゼの1つまたは複数の機能を阻害する薬理学的物質が含まれる。これらのアプローチは相互排他的ではなく、すなわちそれらの複数を同時に使用することができる。例えば、インテグラーゼと付着部位の両方が非機能性であることができるか、またはインテグラーゼおよびPPT部位が非機能性であることができるか、または付着部位およびPPT部位が非機能性であることができるか、またはそれらのすべてが非機能性であることができる。このような方法およびウイルスベクターゲノムは公知であり、利用可能である(Philpott and Thrasher, Human Gene Therapy 18:483, 2007; Engelman et al. J Virol 69:2729, 1995; Brown et al J Virol 73:9011 (1999); WO 2009/076524; McWilliams et al., J Virol 77:11150, 2003; Powell and Levin J Virol 70:5288, 1996を参照されたい)。
【0624】
いくつかの態様において、ベクターは、原核生物宿主細胞などの宿主細胞における増殖のための配列を含む。いくつかの態様において、ウイルスベクターの核酸は、細菌細胞などの原核細胞における増殖のための1つまたは複数の複製起点を含む。いくつかの態様において、原核生物の複製起点を含むベクターはまた、その発現によって薬剤耐性などの検出可能または選択可能なマーカーが与えられる遺伝子を含んでもよい。
【0625】
典型的には、ウイルスベクターゲノムは、パッケージング細胞株またはプロデューサー細胞株にトランスフェクトすることができるプラスミド形態で構築される。様々な公知の方法のいずれかを用いて、ゲノムがウイルスベクターゲノムのRNAコピーを含むレトロウイルス粒子を作製することができる。いくつかの態様において、少なくとも2つの構成材料が、ウイルスに基づく遺伝子送達系の作製に関与している。1つ目は、構造タンパク質およびウイルスベクター粒子を生成するために必要な酵素を包含するパッケージングプラスミドであり、2つ目は、ウイルスベクター自体、すなわち移入される遺伝物質である。バイオセーフティ保護を、これらの構成材料の一方または両方の設計に導入することができる。
【0626】
いくつかの態様において、パッケージングプラスミドは、エンベロープタンパク質以外のすべてのレトロウイルスタンパク質、例えばHIV-1タンパク質を含むことができる(Naldini et al., 1998)。他の態様において、ウイルスベクターは、ビルレンスに関連するもの、例えばvpr、vif、vpu、およびnef、ならびに/またはHIVの主要なトランス活性化因子であるTatなどの付加的なウイルス遺伝子を欠いていてもよい。いくつかの態様において、HIVベースのレンチウイルスベクターなどのレンチウイルスベクターは、親ウイルスの3つの遺伝子:gag、pol、およびrevのみを含み、これによって、組換えにより野生型ウイルスが再構成する可能性が低くなるかまたは無くなる。
【0627】
いくつかの態様において、ウイルスベクターゲノムは、該ウイルスベクターゲノムから転写されたウイルスゲノムRNAをウイルス粒子中にパッケージングするために必要なすべての構成要素を含むパッケージング細胞株中に導入される。あるいは、ウイルスベクターゲノムは、関心対象の1つまたは複数の配列、例えば組換え核酸に加えて、ウイルス構成要素をコードする1つまたは複数の遺伝子を含んでもよい。しかし、いくつかの局面において、標的細胞におけるゲノムの複製を防ぐために、複製に必要な内因性ウイルス遺伝子が除去され、パッケージング細胞株中で別途提供される。
【0628】
いくつかの態様において、パッケージング細胞株は、粒子を生成するために必要な構成要素を含む1つまたは複数のプラスミドベクターでトランスフェクトされる。いくつかの態様において、パッケージング細胞株は、LTR、シス作用性パッケージング配列、および関心対象の配列、すなわちCARなどの抗原受容体をコードする核酸を含むウイルスベクターゲノムを含むプラスミド、ならびにGag、pol、および/またはrevなどのウイルスの酵素成分および/または構造成分をコードする1つまたは複数のヘルパープラスミドでトランスフェクトされる。いくつかの態様において、レトロウイルスベクター粒子を生成する様々な遺伝子成分を別々にするために、複数のベクターを利用する。いくつかのそのような態様において、パッケージング細胞に別個のベクターを提供することにより、さもなければ複製能を有するウイルスをもたらし得る組換え事象の可能性が低くなる。いくつかの態様において、レトロウイルス構成要素のすべてを有する単一のプラスミドベクターを使用することができる。
【0629】
いくつかの態様において、レンチウイルスベクター粒子などのレトロウイルスベクター粒子は、宿主細胞の形質導入効率を高めるために偽型化される。例えば、いくつかの態様において、レンチウイルスベクター粒子などのレトロウイルスベクター粒子は、VSV-G糖タンパク質を用いて偽型化され、これにより、幅広い細胞宿主範囲が提供されて、形質導入できる細胞型の範囲が広がる。いくつかの態様において、パッケージング細胞株は、例えば、シンドビスウイルスエンベロープ、GALV、またはVSV-Gなどのゼノトロピック、ポリトロピック、またはアンホトロピックなエンベロープを含むように、非天然エンベロープ糖タンパク質をコードするプラスミドまたはポリヌクレオチドでトランスフェクトされる。
【0630】
いくつかの態様において、パッケージング細胞株は、ウイルスの調節タンパク質および構造タンパク質を含む、ウイルスゲノムRNAをレンチウイルスベクター粒子中にパッケージングするためにトランスで必要とされる構成要素を提供する。いくつかの態様において、パッケージング細胞株は、レンチウイルスタンパク質を発現し、かつ機能性レンチウイルスベクター粒子を産生することができる、任意の細胞株であってよい。いくつかの局面において、適切なパッケージング細胞株には、293(ATCC CCL X)、293T、HeLA(ATCC CCL 2)、D17(ATCC CCL 183)、MDCK(ATCC CCL 34)、BHK(ATCC CCL-10)、およびCf2Th(ATCC CRL 1430)細胞が含まれる。
【0631】
いくつかの態様において、パッケージング細胞株は、ウイルスタンパク質を安定に発現する。例えば、いくつかの局面において、gag、pol、rev、および/または他の構造遺伝子を含むがLTRおよびパッケージング構成要素を含まないパッケージング細胞株を、構築することができる。いくつかの態様において、パッケージング細胞株は、異種タンパク質をコードする核酸分子および/またはエンベロープ糖タンパク質をコードする核酸を含むウイルスベクターゲノムとともに、1つまたは複数のウイルスタンパク質をコードする核酸分子で一過性にトランスフェクトされ得る。
【0632】
いくつかの態様において、ウイルスベクターならびにパッケージングプラスミドおよび/またはヘルパープラスミドは、トランスフェクションまたは感染によってパッケージング細胞株中に導入される。パッケージング細胞株は、ウイルスベクターゲノムを含むウイルスベクター粒子を産生する。トランスフェクションまたは感染のための方法は周知である。非限定的な例には、リン酸カルシウム法、DEAE-デキストラン法、およびリポフェクション法、エレクトロポレーション、およびマイクロインジェクションが含まれる。
【0633】
組換えプラスミドならびにレトロウイルスのLTRおよびパッケージング配列が(例えばリン酸カルシウム沈殿などによって)特殊な細胞株中に導入された場合、パッケージング配列は、組換えプラスミドのRNA転写物がウイルス粒子中にパッケージングされることを可能にすることができ、該ウイルス粒子はその後、培地に分泌され得る。いくつかの態様において、次に、組換えレトロウイルスを含む培地を採取し、任意で濃縮し、遺伝子移入に使用する。例えば、いくつかの局面において、パッケージングプラスミドおよび移入ベクターをパッケージング細胞株に同時トランスフェクションした後、ウイルスベクター粒子を培地から回収し、当業者によって使用される標準的な方法によって力価測定する。
【0634】
いくつかの態様において、レンチウイルスベクターなどのレトロウイルスベクターは、レンチウイルス粒子の生成を可能にするプラスミドの導入により、例示的なHEK 293T細胞株などのパッケージング細胞株において作製することができる。いくつかの態様において、パッケージング細胞は、gagおよびpolをコードするポリヌクレオチド、ならびに抗原受容体、例えばCARなどの組換え受容体をコードするポリヌクレオチドでトランスフェクトされ、かつ/またはそれを含む。いくつかの態様において、パッケージング細胞株は、任意でおよび/またはさらに、revタンパク質をコードするポリヌクレオチドでトランスフェクトされ、かつ/またはそれを含む。いくつかの態様において、パッケージング細胞株は、任意でおよび/またはさらに、VSV-Gなどの非天然エンベロープ糖タンパク質をコードするポリヌクレオチドでトランスフェクトされ、かつ/またはそれを含む。いくつかのこのような態様において、細胞、例えばHEK 293T細胞のトランスフェクション後約2日目に、細胞上清は組換えレンチウイルスベクターを含み、これを回収し、力価測定することができる。
【0635】
回収および/または作製されたレトロウイルスベクター粒子は、説明される方法を用いて標的細胞に形質導入するために使用することができる。標的細胞に入ると、ウイルスRNAは逆転写され、核内に運ばれ、宿主ゲノムに安定に組み込まれる。ウイルスRNAの組込み後1日目または2日目に、組換えタンパク質、例えばCARなどの抗原受容体の発現を検出することができる。
【0636】
いくつかの態様において、提供される方法は、複数の細胞を含む細胞組成物をウイルス粒子と接触させる、例えばインキュベーションすることによって細胞に形質導入する方法を含む。いくつかの態様において、トランスフェクトまたは形質導入される細胞は、対象から得られた初代細胞、例えば対象から濃縮および/もしくは選択された細胞であるか、またはそれを含む。
【0637】
いくつかの態様において、組成物中の形質導入される細胞の濃度は、1.0×105細胞/mL~1.0×108細胞/mLまたは約1.0×105細胞/mL~1.0×108細胞/mL、例えば、少なくとも1.0×105細胞/mL、5×105細胞/mL、1×106細胞/mL、5×106細胞/mL、1×107細胞/mL、5×107細胞/mL、もしくは1×108細胞/mL、または少なくとも約1.0×105細胞/mL、5×105細胞/mL、1×106細胞/mL、5×106細胞/mL、1×107細胞/mL、5×107細胞/mL、もしくは1×108細胞/mL、または約1.0×105細胞/mL、5×105細胞/mL、1×106細胞/mL、5×106細胞/mL、1×107細胞/mL、5×107細胞/mL、もしくは1×108細胞/mLである。
【0638】
いくつかの態様において、ウイルス粒子は、特定の比率の、形質導入される細胞の総数当たりのウイルスベクター粒子のコピー数またはその感染単位(IU)(IU/細胞)で、提供される。例えば、いくつかの態様において、ウイルス粒子は、接触期間中、細胞1個当たりのウイルスベクター粒子が0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、もしくは60IU、または約0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、もしくは60IU、または少なくとも0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、もしくは60IU、または少なくとも約0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、もしくは60IUで、存在する。
【0639】
いくつかの態様において、ウイルスベクター粒子の力価は、1×106IU/mL~1×108IU/mLおまたは約1×106IU/mL~1×108IU/mL、例えば5×106IU/mL~5×107IU/mLまたは約5×106IU/mL~5×107IU/mL、例えば、少なくとも6×106IU/mL、7×106IU/mL、8×106IU/mL、9×106IU/mL、1×107IU/mL、2×107IU/mL、3×107IU/mL、4×107IU/mL、または5×107IU/mLである。
【0640】
いくつかの態様において、形質導入は、100未満、例えば通常60、50、40、30、20、10、5またはそれ以下より低い感染多重度(MOI)で達成することができる。
【0641】
いくつかの態様において、方法は、細胞をウイルス粒子と接触させるかまたはウイルス粒子とともにインキュベーションすることを含む。いくつかの態様において、接触の長さは、30分~72時間、例えば、30分~48時間、30分~24時間、または1時間~24時間、例えば、少なくとも30分、1時間、2時間、6時間、12時間、24時間、36時間もしくはそれ以上、または少なくとも約30分、1時間、2時間、6時間、12時間、24時間、36時間もしくはそれ以上である。
【0642】
いくつかの態様において、接触は溶液中で実施される。いくつかの態様において、細胞およびウイルス粒子は、0.5mL~500mLまたは約0.5mL~500mL、例えば、0.5mL~200mL、0.5mL~100mL、0.5mL~50mL、0.5mL~10mL、0.5mL~5mL、5mL~500mL、5mL~200mL、5mL~100mL、5mL~50mL、5mL~10mL、10mL~500mL、10mL~200mL、10mL~100mL、10mL~50mL、50mL~500mL、50mL~200mL、50mL~100mL、100mL~500mL、100mL~200mL、もしくは200mL~500mL、または約0.5mL~200mL、約0.5mL~100mL、約0.5mL~50mL、約0.5mL~10mL、約0.5mL~5mL、約5mL~500mL、約5mL~200mL、約5mL~100mL、約5mL~50mL、約5mL~10mL、約10mL~500mL、約10mL~200mL、約10mL~100mL、約10mL~50mL、約50mL~500mL、約50mL~200mL、約50mL~100mL、約100mL~500mL、約100mL~200mL、もしくは約200mL~500mLの体積中で接触させられる。
【0643】
特定の態様において、インプット細胞は、ウイルスDNAによってコードされる組換え受容体に結合するまたはそれを認識する結合分子を含む粒子で処理されるか、該粒子とともにインキュベーションされるか、または該粒子と接触させられる。
【0644】
いくつかの態様において、ウイルスベクター粒子との細胞のインキュベーションは、ウイルスベクター粒子で形質導入された細胞を含むアウトプット組成物をもたらすか、または生じる。
【0645】
いくつかの態様において、組換え核酸は、エレクトロポレーションによってT細胞に移入される(例えば、Chicaybam et al, (2013) PLoS ONE 8(3): e60298およびVan Tedeloo et al. (2000) Gene Therapy 7(16): 1431-1437を参照されたい)。いくつかの態様において、組換え核酸は、トランスポジションを介してT細胞に移入される(例えば、Manuri et al. (2010) Hum Gene Ther 21(4): 427-437; Sharma et al. (2013) Molec Ther Nucl Acids 2, e74、およびHuang et al. (2009) Methods Mol Biol 506: 115-126を参照されたい)。免疫細胞に遺伝物質を導入し発現させる他の方法には、リン酸カルシウムトランスフェクション(例えばCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York. N.Y.に記載されている)、プロトプラスト融合、カチオン性リポソームを介したトランスフェクション、タングステン粒子促進微粒子銃(Johnston,Nature,346:776-777(1990))、およびリン酸ストロンチウムDNA共沈(Brash et al., Mol. Cell Biol., 7: 2031-2034 (1987))が含まれる。
【0646】
組換え産物をコードする核酸を移入するための他のアプローチおよびベクターは、例えば、国際特許出願公開WO2014055668および米国特許第7,446,190号に記載されているものである。
【0647】
いくつかの態様において、細胞、例えばT細胞は、拡大増殖中または拡大増殖後のいずれかに、例えばT細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)で、トランスフェクトされてよい。所望の受容体の遺伝子を導入するためのこのトランスフェクションは、例えば、任意の適切なレトロウイルスベクターを用いて行うことができる。次いで、遺伝子改変された細胞集団を、最初の刺激(例えば、抗CD3/抗CD28刺激)から解放し、続いて、第二のタイプの刺激で、例えば、新規に導入された受容体を介して、刺激することができる。この第二のタイプの刺激には、ペプチド/MHC分子の形態での抗原性刺激、遺伝子導入された受容体の同族(架橋結合する)リガンド(例えば、CARの天然のリガンド)、または(例えば、受容体内の定常領域を認識することによって)該新たな受容体のフレームワーク内に直接結合する任意のリガンド(例えば抗体)が含まれ得る。例えば、Cheadle et al, “Chimeric antigen receptors for T-cell based therapy” Methods Mol Biol. 2012; 907:645-66またはBarrett et al., Chimeric Antigen Receptor Therapy for Cancer Annual Review of Medicine Vol. 65: 333-347 (2014)を参照されたい。
【0648】
いくつかの場合において、細胞、例えばT細胞が活性化されることを必要としないベクターが使用され得る。いくつかのこのような事例では、細胞は、活性化の前に選択され、かつ/または形質導入されてよい。したがって、細胞は、細胞培養の前または後に、いくつかの場合においては、培養の少なくとも一部と同時にまたはその最中に、操作されてよい。
【0649】
付加的な核酸、例えば、導入のための遺伝子としては、例えば、移入された細胞の生存力および/または機能を促進することによって、療法の有効性を高めるもの;例えば、インビボでの生存また局在化を評価するために、細胞の選択および/または評価のための遺伝子マーカーを提供するための遺伝子; Lupton S. D. et al., Mol. and Cell Biol., 11:6 (1991)およびRiddell et al., Human Gene Therapy 3:319-338 (1992)によって記載されているように、例えば、細胞をインビボでネガティブ選択を受けやすくすることによって、安全性を高めるための遺伝子が挙げられる。ドミナントポジティブな選択マーカーをネガティブ選択マーカーと融合することによって得られる二機能性の選択可能融合遺伝子の使用を記載しているLuptonらによる公報PCT/US91/08442およびPCT/US94/05601も参照されたい。例えば、Riddellらの米国特許第6,040,177号のカラム14-17を参照されたい。
【0650】
D. 操作された細胞の培養、拡大増殖、および製剤化
いくつかの態様において、例えば、提供される方法、使用、製造物品、または組成物のいずれかに従って、例えば細胞療法のための操作された細胞を作製するための方法は、細胞を培養するため、例えば、増殖および/または拡大増殖を促進する条件下で細胞を培養するための1つまたは複数の段階を含む。いくつかの態様において、細胞は、遺伝子操作する、例えば、形質導入またはトランスフェクションによって細胞に組換えポリペプチドを導入する段階の後に、増殖および/または拡大増殖を促進する条件下で培養される。特定の態様において、細胞は、刺激条件下で該細胞をインキュベーションし、かつ組換えポリヌクレオチド、例えば、組換え受容体をコードするポリヌクレオチドで形質導入またはトランスフェクトした後に、培養される。したがって、いくつかの態様において、CARをコードする組換えポリヌクレオチドによる形質導入またはトランスフェクションによって操作されたCAR陽性T細胞の組成物は、増殖および/または拡大増殖を促進する条件下で培養される。
【0651】
特定の態様において、操作されたT細胞の1種または複数種の組成物は、濃縮T細胞の2種の別個の組成物、例えば、CARなどの組換え受容体をコードするポリヌクレオチドを用いて操作された濃縮T細胞の2種の別個の組成物であるか、またはそれらを含む。特定の態様において、濃縮T細胞の2種の別個の組成物、例えば、同じ生物試料から選択、単離、および/または濃縮された濃縮T細胞の2種の別個の組成物は、遺伝子操作する、例えば、形質導入またはトランスフェクションによって細胞に組換えポリペプチドを導入する段階の後などに、刺激条件下で別々に培養される。特定の態様において、2種の別個の組成物には、濃縮CD4+T細胞の組成物、例えば、CARなどの組換え受容体をコードするポリヌクレオチドを用いて操作された濃縮CD4+T細胞の組成物が含まれる。特定の態様において、2種の別個の組成物には、濃縮CD8+T細胞の組成物、例えば、CARなどの組換え受容体をコードするポリヌクレオチドを用いて操作された濃縮CD4+T細胞の組成物が含まれる。いくつかの態様において、濃縮CD4+T細胞および濃縮CD8+T細胞の2種の別個の組成物、例えば、CARなどの組換え受容体をコードするポリヌクレオチドを用いてそれぞれが別々に操作された、濃縮CD4+T細胞の組成物および濃縮CD8+T細胞の組成物は、例えば、増殖および/または拡大増殖を促進する条件下で、別々に培養される。
【0652】
いくつかの態様において、培養は、増殖および/または拡大増殖を促進する条件下で行われる。いくつかの態様において、このような条件は、集団における細胞の増殖、拡大増殖、活性化、および/または生存を誘導するように設計されてよい。特定の態様において、刺激条件には、特定の培地、温度、酸素含有量、二酸化炭素含有量、時間、作用物質、例えば、栄養素、アミノ酸、抗生物質、イオン、および/または刺激因子、例えば、サイトカイン、ケモカイン、抗原、結合相手、融合タンパク質、可溶性組換え受容体、ならびに細胞の増殖、分割、および/または拡大増殖を促進するように設計された他の任意の作用物質のうちの1つまたは複数が含まれ得る。
【0653】
特定の態様において、細胞は、1種または複数種のサイトカインの存在下で培養される。特定の態様において、1種または複数種のサイトカインは、組換えサイトカインである。いくつかの態様において、1種または複数種のサイトカインは、ヒト組換えサイトカインである。特定の態様において、1種または複数種のサイトカインは、T細胞によって発現され、かつ/またはT細胞に内在する受容体に、結合し、かつ/または結合することができる。特定の態様において、1種または複数種のサイトカイン、例えば組換えサイトカインは、サイトカインの4α-ヘリックスバンドルファミリーのメンバーであるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、サイトカインの4α-ヘリックスバンドルファミリーのメンバーには、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-9(IL-9)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン15(IL-15)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、および顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)がが含まれるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、1種または複数種の組換えサイトカインには、IL-2、IL-7、および/またはIL-15が含まれる。いくつかの態様において、細胞、例えば操作された細胞は、濃度1IU/mL~2,000IU/mL、10IU/mL~100IU/mL、50IU/mL~200IU/mL、100IU/mL~500IU/mL、100IU/mL~1,000IU/mL、500IU/mL~2,000IU/mL、または100IU/mL~1,500IU/mLのサイトカイン、例えば組換えヒトサイトカインの存在下で培養される。
【0654】
いくつかの態様において、培養は、ヒトTリンパ球などの一次免疫細胞の増殖に適した温度、例えば少なくとも約25℃、一般に少なくとも約30℃、および一般に37℃または約37℃を含むのが通常である条件下で培養される。いくつかの態様において、濃縮T細胞の組成物は、25~38℃、例えば30~37℃、例えば37℃±2℃または約37℃±2℃の温度でインキュベーションされる。いくつかの態様において、インキュベーションは、培養、例えばカルチベーションまたは拡大増殖によって所望または閾値の細胞密度、細胞数、または細胞用量がもたらされるまでの期間、行われる。いくつかの態様において、インキュベーションは、24時間、48時間、72時間、96時間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間もしくはそれ以上より長い、または約24時間、48時間、72時間、96時間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間もしくはそれ以上より長いか、あるいは約24時間、48時間、72時間、96時間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間またはそれ以上の間である。
【0655】
特定の態様において、培養は閉鎖系で実施される。特定の態様において、培養は、無菌条件下の閉鎖系で実施される。特定の態様において、培養は、提供される系の1つまたは複数の段階と同じ閉鎖系で実施される。いくつかの態様において、濃縮T細胞の組成物は、閉鎖系から取り出され、培養のためにバイオリアクターに配置および/または連結される。培養用の適切なバイオリアクターの例には、GE Xuri (商標) W25、GE Xuri (商標) W5、Sartorius BioSTAT (登録商標) RM 20/50、Finesse SmartRocker (商標) Bioreactor Systems、およびPall XRS Bioreactor Systemsが含まれるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、バイオリアクターは、培養段階の少なくとも一部の間に細胞を灌流し、かつ/または混合するために使用される。
【0656】
いくつかの態様において、混合は、揺り動かすことおよび/もしくは動かすことであるか、またはそれを含む。いくつかの場合において、バイオリアクターは、動かすか、または揺り動かすことができ、これにより、いくつかの局面では、酸素移動容量を増やすことができる。バイオリアクターを動かすことには、水平軸に沿って回転させること、垂直軸に沿って回転させること、バイオリアクターの傾いたもしくは傾斜した水平軸に沿った揺動運動、またはそれらの任意の組合せが含まれ得るが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、インキュベーションの少なくとも一部は、揺り動かしながら行われる。揺動速度および揺動角度は、所望の撹拌を実現するように調整され得る。いくつかの態様において、揺動角度は、20°、19°、18°、17°、16°、15°、14°、13°、12°、11°、10°、9°、8°、7°、6°、5°、4°、3°、2°、または1°である。特定の態様において、揺動角度は6~16°である。他の態様において、揺動角度は7~16°である。他の態様において、揺動角度は8~12°である。いくつかの態様において、揺動速度は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40rpmである。いくつかの態様において、揺動速度は、4~12rpm、例えば4~6rpm(両端の値を含む)である。
【0657】
いくつかの態様において、バイオリアクターは、0.01L/分、0.05L/分、0.1L/分、0.2L/分、0.3L/分、0.4L/分、0.5L/分、1.0L/分、1.5L/分、もしくは2.0L/分、または約0.01L/分、0.05L/分、0.1L/分、0.2L/分、0.3L/分、0.4L/分、0.5L/分、1.0L/分、1.5L/分、もしくは2.0L/分、または少なくとも0.01L/分、0.05L/分、0.1L/分、0.2L/分、0.3L/分、0.4L/分、0.5L/分、1.0L/分、1.5L/分、もしくは2.0L/分、あるいは2.0L/分超の定常空気流で、37℃または37℃に近い温度および5%または5%に近いCO2レベルを維持する。特定の態様において、培養の少なくとも一部は、例えば培養の開始に関するタイミングおよび/または培養細胞の密度に応じて、例えば、290ml/日、580ml/日、および/または1160ml/日の速度で灌流しながら実施される。いくつかの態様において、細胞培養による拡大増殖の少なくとも一部は、例えば5°~10°、例えば6°の角度にて、一定の揺動速度、例えば5~15RPM、例えば6RMPまたは10RPMの速度で揺動運動しながら実施される。
【0658】
いくつかの態様において、提供される方法、使用、または製造物品に従って細胞療法薬および/または操作された細胞を製造、生成、または作製するための方法は、インキュベーション、操作、および培養、ならびに/または記載される1つもしくは複数の他の加工処理段階の前または後に、細胞の製剤化、例えば該加工処理段階によって生じる遺伝子操作された細胞の製剤化を含んでよい。いくつかの態様において、細胞の製剤化を含む加工処理段階のうちの1つもしくは複数は、閉鎖系で行うことができる。いくつかの場合において、細胞は、細胞療法薬を製造、生成、または作製するための(例えば、遠心チャンバーおよび/または閉鎖系で行われる)1つまたは複数の段階で加工処理され、かつ/あるいは操作された細胞は、カルチベーションおよび拡大などの培養ならびに/または記載される1つもしくは複数の他の加工処理段階の前または後に、細胞の製剤化、例えば、形質導入処理段階によって生じる遺伝子操作された細胞の製剤化を含んでよい。いくつかの場合において、遺伝子操作された細胞は、所与の用量またはその分割量で投与するための細胞数を含む、単位用量形態の組成物として製剤化される。
【0659】
いくつかの態様において、組換え抗原受容体、例えばCARまたはTCRによって操作された細胞を含む細胞の当該用量は、組成物または製剤、例えば薬学的組成物または薬学的製剤として提供される。このような組成物は、提供される方法に従って、例えば、疾患、病態、および障害の処置において、または検出、診断、および予後判定の方法ならびに使用および製造物品において使用することができる。いくつかの場合において、細胞は、投与量投与のため、例えば、単一の単位投与量の投与または複数投与量の投与のための量で、製剤化され得る。
【0660】
いくつかの態様において、細胞は、バッグまたはバイアルなどの容器に入れられた製剤にすることができる。いくつかの態様において、バイアルは注入バイアルであってよい。いくつかの場合において、バイアルは、所与の用量またはその分割量で投与するための細胞数を含むなど、操作された細胞の単一の単位用量を有する製剤にされる。
【0661】
いくつかの態様において、細胞は、薬学的に許容される緩衝液中で製剤化され、該緩衝液は、いくつかの局面において、薬学的に許容される担体または賦形剤を含み得る。いくつかの態様において、加工処理は、薬学的に許容されるかまたは対象への投与にとって望ましい媒体または製剤緩衝液に媒体を交換することを含む。いくつかの態様において、加工処理段階は、形質導入および/または拡大増殖された細胞を洗浄して、1種または複数種の任意の薬学的に許容される担体または賦形剤を含み得る薬学的に許容される緩衝液において細胞を置き換えることを含むことができる。薬学的に許容される担体または賦形剤を含むこのような薬学的形態の例は、細胞および組成物を対象に投与するために許容される形態に関連して後述する任意のものであることができる。いくつかの態様における薬学的組成物は、治療的有効量または予防的有効量などの、疾患または病態を処置または予防するために有効な量の細胞を含む。
【0662】
いくつかの態様において、製剤緩衝液は、凍結保存剤を含む。いくつかの態様において、細胞は、1.0%~30%のDMSO溶液、例えば5%~20%のDMSO溶液または5%~10%のDMSO溶液を含む凍結保存溶液を用いて製剤化される。いくつかの態様において、凍結保存溶液は、例えば、20%DMSOおよび8%ヒト血清アルブミン(HSA)を含むPBS、もしくは他の適切な細胞凍結媒体であるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、凍結保存溶液は、例えば少なくとも7.5%もしくは約7.5%のDMSOであるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、加工処理段階は、形質導入および/または拡大増殖された細胞を洗浄して、凍結保存溶液において細胞を置き換えることを含むことができる。いくつかの態様において、細胞は、最終濃度が12.5%、12.0%、11.5%、11.0%、10.5%、10.0%、9.5%、9.0%、8.5%、8.0%、7.5%、7.0%、6.5%、6.0%、5.5%、もしくは5.0%DMSO、または約12.5%、12.0%、11.5%、11.0%、10.5%、10.0%、9.5%、9.0%、8.5%、8.0%、7.5%、7.0%、6.5%、6.0%、5.5%、もしくは5.0%DMSO、または1%~15%、6%~12%、5%~10%、もしくは6%~8%DMSOである媒体および/または溶液中で凍結、例えば、凍結保護または凍結保存される。特定の態様において、細胞は、最終濃度が5.0%、4.5%、4.0%、3.5%、3.0%、2.5%、2.0%、1.5%、1.25%、1.0%、0.75%、0.5%、もしくは0.25%HSA、または約5.0%、4.5%、4.0%、3.5%、3.0%、2.5%、2.0%、1.5%、1.25%、1.0%、0.75%、0.5%、もしくは0.25%HSA、あるいは0.1%~0.5%、0.25%~4%、0.5%~2%、または1%~2%HSAである媒体および/または溶液中で凍結、例えば、凍結保護または凍結保存される。
【0663】
いくつかの態様において、製剤化は、培養または拡大増殖された細胞などの細胞の洗浄、希釈、または濃縮を含む1つまたは複数の加工処理段階を用いて行われる。いくつかの場合において、加工処理は、所与の用量またはその分割量で投与するための細胞数を含む単位用量形態の組成物など、所望の濃度または数に細胞を希釈または濃縮することを含み得る。いくつかの態様において、加工処理段階は、体積を減らし、それによって所望に応じて細胞濃度を上昇させることを含み得る。いくつかの態様において、加工処理段階は、体積を増やし、それによって所望に応じて細胞濃度を低下させることを含み得る。いくつかの態様において、加工処理は、ある体積量の製剤緩衝液を形質導入および/または拡大増殖された細胞に添加することを含む。いくつかの態様において、製剤緩衝液の体積は、10mL~100mLまたは約10mL~100mL、例えば、少なくとも50mL、100mL、200mL、300mL、400mL、500mL、600mL、700mL、800mL、900mL、もしくは1000mL、または少なくとも約50mL、100mL、200mL、300mL、400mL、500mL、600mL、700mL、800mL、900mL、もしくは1000mL、または約50mL、100mL、200mL、300mL、400mL、500mL、600mL、700mL、800mL、900mL、もしくは1000mL、または50mL、100mL、200mL、300mL、400mL、500mL、600mL、700mL、800mL、900mL、もしくは1000mLである。
【0664】
いくつかの態様において、細胞組成物を製剤化するためのこのような加工処理段階は、閉鎖系で行われる。このような加工処理段階の例は、細胞処理システムに関連する1つまたは複数のシステムまたはキットとともに遠心チャンバーを用いて、例えば、Sepax(登録商標)またはSepax 2(登録商標)細胞処理システムを用いて使用するためのものを含む、Biosafe SAによって製造および販売されている遠心チャンバーを用いて、実施され得る。例示的なシステムおよびプロセスは、国際公開公報第2016/073602号に記載されている。いくつかの態様において、方法は、遠心チャンバーの内部キャビティからの製剤化された組成物の圧出を行うことを含み、該製剤化された組成物は、説明した上記の態様のいずれかにおいて、薬学的に許容される緩衝液などの製剤緩衝液中で製剤化された結果として得られる細胞組成物である。いくつかの態様において、製剤化された組成物の圧出は、閉鎖系の一部として遠心チャンバーと機能的に連結された容器、例えば、本明細書に記載の生物医用材料容器のバイアルに向けて行われる。いくつかの態様において、生物医用材料容器は、1つもしくは複数の加工処理段階を行う閉鎖系もしくは装置への組込みおよび/もしくは機能的な接続用に構成されており、かつ/または該閉鎖系もしくは装置に組み込まれるかもしくは機能的に接続されている。いくつかの態様において、生物医用材料容器は、アウトプットラインまたはアウトプット位置においてシステムに接続されている。いくつかの場合において、閉鎖系は、入口管の位置で生物医用材料容器のバイアルに接続されている。本明細書に記載の生物医用材料容器とともに使用するための例示的な閉鎖系には、Sepax(登録商標)システムおよびSepax(登録商標)2システムが含まれる。
【0665】
いくつかの態様において、遠心チャンバーまたは細胞処理システムに結合されたものなどの閉鎖系は、製剤化された組成物の圧出のために1つまたは複数の容器を接続できるポートを有するチューブラインの各端部に結合された多方向チューブマニホールドを含む、マルチポートアウトプットキットを含む。いくつかの局面において、所望の数または複数のバイアルを、マルチポートアウトプットのポートのうちの1つまたは複数、通常2つまたはそれ以上、例えば、少なくとも3、4、5、6、7、8またはそれ以上に無菌的に接続することができる。例えば、いくつかの態様において、1つまたは複数の容器、例えば生物医用材料容器をそれらのポートに、または全部よりは少ない数のポートに取り付けることができる。したがって、いくつかの態様において、系は、生物医用材料容器の複数のバイアル中へのアウトプット組成物の圧出を行うことができる。
【0666】
いくつかの局面において、細胞は、複数のアウトプット容器のうちの1つまたは複数、例えばバイアルに、投与量投与のため、例えば、単一の単位投与量の投与または複数投与量の投与のための量で、圧出され得る。例えば、いくつかの態様において、バイアルはそれぞれ、所与の用量またはその分割量で投与するための細胞数を含んでよい。したがって、各バイアルは、いくつかの局面において、投与のための単一の単位用量を含み得るか、または複数のバイアルのうちの1つより多く、例えばバイアルのうちの2つまたはバイアルのうちの3つが合わさって投与用量を構成するように、所望の用量の分割量を含んでもよい。いくつかの態様において、4つのバイアルが合わさって、投与用量を構成する。
【0667】
したがって、容器、例えばバッグまたはバイアルは、通常、投与細胞、例えばその1つまたは複数の単位用量を含む。単位用量は、対象に投与される細胞の量もしくは数、または投与される細胞の数の2倍(もしくはそれより多く)であってよい。単位用量は、対象に投与される細胞についての最低用量または可能な限り低用量であってよい。いくつかの局面において、提供される製造物品は、複数のアウトプット容器のうちの1つまたは複数を含む。
【0668】
いくつかの態様において、バッグまたはバイアルなどの容器のそれぞれは、単位用量の細胞を個別に含む。したがって、いくつかの態様において、各容器は、同じまたはおおよそまたは実質的に同じ数の細胞を含む。いくつかの態様において、各単位用量は、1×106、2×106、5×106、1×107、5×107個、もしくは1×108、または約1×106、2×106、5×106、1×107、5×107、もしくは1×108個、または少なくとも1×106、2×106、5×106、1×107、5×107、もしくは1×108個、または少なくとも約1×106、2×106、5×106、1×107、5×107、もしくは1×108個の操作された細胞、全細胞、T細胞、またはPBMCを含む。いくつかの態様において、各単位用量は、1×106、2×106、5×106、1×107、5×107個、もしくは1×108個、または約1×106、2×106、5×106、1×107、5×107、もしくは1×108個、または少なくとも1×106、2×106、5×106、1×107、5×107、もしくは1×108個、または少なくとも約1×106、2×106、5×106、1×107、5×107、もしくは1×108個の、CD3+、例えばCD4+もしくはCD8+であるCAR+T細胞、または生存能力があるそのサブセットを含む。
【0669】
いくつかの態様において、各容器、例えばバッグまたはバイアル中の製剤化された細胞組成物の体積は、10mLまたは約10mLから、100mLまたは約100mL、例えば、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、もしくは100mL、または約20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、もしくは100mL、または少なくとも20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、もしくは100mL、または少なくとも約20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、もしくは100mLである。いくつかの態様において、各容器、例えばバッグまたはバイアル中の製剤化された細胞組成物の体積は、1mLまたは約1mLから、10mLまたは約10mL、例えば、1mLまたは約1mLから、5mLまたは約5mLである。いくつかの態様において、各容器、例えばバッグまたはバイアル中の製剤化された細胞組成物の体積は、4mLまたは約4mLから、5mLまたは約5mLである。いくつかの態様において、各容器、例えばバッグまたはバイアル中の製剤化された細胞組成物の体積は、4.4mLであるか、または約4.4mLである。いくつかの態様において、各容器、例えばバッグまたはバイアル中の製剤化された細胞組成物の体積は、4.5mLであるか、または約4.5mLである。いくつかの態様において、各容器、例えばバッグまたはバイアル中の製剤化された細胞組成物の体積は、4.6mLであるか、または約4.6mLである。いくつかの態様において、各容器、例えばバッグまたはバイアル中の製剤化された細胞組成物の体積は、4.7mLであるか、または約4.7mLである。いくつかの態様において、各容器、例えばバッグまたはバイアル中の製剤化された細胞組成物の体積は、4.8mLであるか、または約4.8mLである。いくつかの態様において、各容器、例えばバッグまたはバイアル中の製剤化された細胞組成物の体積は、4.9mLであるか、または約4.9mLである。いくつかの態様において、各容器、例えばバッグまたはバイアル中の製剤化された細胞組成物の体積は、5.0mLであるか、または約5.0mLである。
【0670】
いくつかの態様において、製剤化された細胞組成物の濃度は、0.5×106個/mL超もしくは約0.5×106個/mL超の組換え受容体発現(例えばCAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生存細胞、1.0×106個/mL超もしくは約1.0×106個/mL超の組換え受容体発現(例えばCAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生存細胞、1.5×106個/mL超もしくは約1.5×106個/mL超の組換え受容体発現(例えばCAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生存細胞、2.0×106個/mL超もしくは約2.0×106個/mL超の組換え受容体発現(例えばCAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生存細胞、2.5×106個/mL超もしくは約2.5×106個/mL超の組換え受容体発現(例えばCAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生存細胞、2.6×106個/mL超もしくは約2.6×106個/mL超の組換え受容体発現(例えばCAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生存細胞、2.7×106個/mL超もしくは約2.7×106個/mL超の組換え受容体発現(例えばCAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生存細胞、2.8×106個/mL超もしくは約2.8×106個/mL超の組換え受容体発現(例えばCAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生存細胞、2.9×106個/mL超もしくは約2.9×106個/mL超の組換え受容体発現(例えばCAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生存細胞、3.0×106個/mL超もしくは約3.0×106個/mL超の組換え受容体発現(例えばCAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生存細胞、3.5×106個/mL超もしくは約3.5×106個/mL超の組換え受容体発現(例えばCAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生存細胞、4.0×106個/mL超もしくは約4.0×106個/mL超の組換え受容体発現(例えばCAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生存細胞、4.5×106個/mL超もしくは約4.5×106個/mL超の組換え受容体発現(例えばCAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生存細胞、または5×106個/mL超もしくは約5×106個/mL超の組換え受容体発現(例えばCAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生存細胞、である。いくつかの態様において、CD3+細胞は、CD4+T細胞である。いくつかの態様において、CD3+細胞は、CD8+T細胞である。いくつかの態様において、CD3+T細胞は、CD4+T細胞およびCD8+T細胞である。
【0671】
いくつかの態様において、バッグまたはバイアルなどの容器中の細胞は、凍結保存することができる。いくつかの態様において、バイアルなどの容器は、後で使用するまで液体窒素中で保存することができる。
【0672】
いくつかの態様において、方法によって作製されるそのような細胞、またはそのような細胞を含む組成物は、例えば、本明細書において説明する方法、使用、および製造物品に合わせて、疾患または病態を処置するために対象に投与される。
【0673】
VI. 組成物および製剤
いくつかの態様において、組換え抗原受容体、例えばCARまたはTCRによって操作された細胞を含む細胞の当該用量は、組成物または製剤、例えば薬学的組成物または薬学的製剤として提供される。例示的な組成物および製剤が上述され、前記細胞を操作する方法と関連して産生されたものである。このような組成物は、提供される方法もしくは使用に従って、かつ/または提供される製造物品もしくは組成物とともに、疾患、病態、および障害の予防もしくは処置において、または検出、診断、および予後判定の方法において使用することができる。
【0674】
用語「薬学的製剤」は、「薬学的製剤」に含まれる活性成分の生物学的活性が有効になるような形をとり、製剤が投与される対象に対して容認できないほどの毒性がある、さらなる成分を含有しない調製物を指す。
【0675】
「薬学的に許容される担体」とは、対象に無毒な、活性成分以外の、薬学的製剤中にある成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝液、賦形剤、安定剤、または防腐剤が含まれるが、これに限定されない。
【0676】
一部の局面では、担体の選択は、一つには、特定の細胞もしくは薬剤によって、および/または投与方法によって決定される。従って、様々な適切な製剤がある。例えば、薬学的組成物は防腐剤を含有してもよい。適切な防腐剤には、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、および塩化ベンザルコニウムが含まれ得る。一部の局面では、2種類以上の防腐剤の混合物が用いられる。防腐剤またはその混合物は典型的には全組成物の重量に対して約0.0001%~約2%の量で存在する。担体は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に記載されている。薬学的に許容される担体は、一般的に、使用される投与量および濃度でレシピエントに無毒であり、緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸、および他の有機酸;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化物質;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルパラベンもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジン;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む、単糖、二糖、および他の糖質;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトール;塩を形成する対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/または非イオン界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)を含むが、これに限定されない。
【0677】
一部の局面では、緩衝剤が前記組成物に含まれる。適切な緩衝剤には、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウム、ならびに様々な他の酸および塩が含まれる。一部の局面では、2種類以上の緩衝剤の混合物が用いられる。緩衝剤またはその混合物は典型的には全組成物の重量に対して約0.001%~約4重量%の量で存在する。投与可能な薬学的組成物を調製するための方法は公知である。例示的な方法は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins; 21st ed. (May 1, 2005)において、さらに詳細に説明されている。
【0678】
前記製剤または組成物はまた、前記細胞または薬剤で予防または処置されている特定の適応症、疾患、または状態に有用な複数種の活性成分も含有してよく、この場合、それぞれの活性は互いに悪影響を及ぼさない。このような活性成分は、所期の目的に有効な量で組み合わせられて適切に存在する。従って、一部の態様では、薬学的組成物は、他の薬学的に活性な薬剤または薬物、例えば、化学療法剤、例えば、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキセート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチンなどをさらに含む。一部の態様では、薬剤または細胞は、塩、例えば、薬学的に許容される塩の形で投与される。適切な薬学的に許容される酸添加塩には、鉱酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、および硫酸に由来する塩、ならびに有機酸、例えば、酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、およびアリールスルホン酸、例えば、p-トルエンスルホン酸に由来する塩が含まれる。
【0679】
薬学的組成物は、一部の態様では、薬剤または細胞を、前記疾患または状態を処置または予防するのに有効な量、例えば、治療的有効量または予防的有効量で含む。治療有効性または予防有効性は、一部の態様では、処置される対象を定期的に評価することによってモニタリングされる。状態に応じて数日またはそれより長期間にわたって反復投与するために、疾患症状の望ましい抑止が起こるまで処置は繰り返される。しかしながら、他のレジメンが有用な場合があり、確かめることができる。望ましい投与量は組成物の単回ボーラス投与によって送達されてもよく、組成物の複数回ボーラス投与によって送達されてもよく、組成物の連続注入投与によって送達されてもよい。
【0680】
前記の薬剤または細胞は、任意の適切な手段によって、例えば、ボーラス注入によって、注射、例えば、静脈内注射または皮下注射、眼内注射、眼周囲注射、網膜下注射、硝子体内注射、経中隔注射、強膜下注射、脈絡膜内注射、前房内注射、結膜下(subconjectval)注射、結膜下(subconjuntival)注射、テノン嚢下注射、眼球後注射、眼球周囲注射、または後強膜近傍送達によって投与することができる。一部の態様では、前記の薬剤または細胞は、非経口投与、肺内投与、および鼻腔内投与によって、所望であれば、局所処置の場合、病巣内投与によって投与される。非経口注入には、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、または皮下投与が含まれる。一部の態様では、ある特定の用量が前記の細胞または薬剤の単回ボーラス投与によって投与される。一部の態様では、ある特定の用量が、前記細胞または薬剤の複数回ボーラス投与によって、例えば、3日以下の期間にわたって投与されるか、または前記細胞または薬剤の連続注入投与によって投与される。
【0681】
疾患の予防または処置のために、適切な投与量は、治療される疾患のタイプ、薬剤のタイプ、細胞または組換え受容体のタイプ、疾患の重症度および経過、薬剤または細胞が予防目的または治療目的で投与されるかどうか、以前の療法、対象の病歴、ならびに薬剤または細胞に対応する応答、ならびに主治医の判断に左右されることがある。前記組成物は、一部の態様では、一度に、または一連の処置にわたって対象に適切に投与される。
【0682】
前記の細胞または薬剤は、標準的な投与技法、製剤、および/または装置を用いて投与され得る。前記組成物を保管および投与するための製剤および装置、例えば、注射器およびバイアルが提供される。細胞について、投与は自家投与でもよく、または異種投与でもよい。例えば、ある対象から免疫応答性細胞または前駆細胞を入手し、同じ対象または異なる適合性の対象に投与することができる。末梢血に由来する免疫応答性細胞またはその子孫(例えば、インビボ、エクスビボ、またはインビトロで得られる)を、カテーテル投与を含む局所注射、全身注射、局所注射、静脈内注射、または非経口投与を介して投与することができる。治療用組成物(例えば、遺伝子組換えされた免疫応答性細胞、または神経毒性の症状を処置するか、もしくは回復させる薬剤を含有する薬学的組成物)が投与される時に、一般的に、注射用単位剤形(溶液、懸濁液、エマルジョン)の形で製剤化される。
【0683】
製剤には、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、肺投与、経皮投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、頬投与、舌下投与、または坐剤投与のための製剤が含まれる。一部の態様では、前記の薬剤または細胞集団は非経口投与される。本明細書で使用する用語「非経口」は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、直腸投与、腟投与、および腹腔内投与を含む。一部の態様では、前記の薬剤または細胞集団は、静脈内注射、腹腔内注射、または皮下注射による末梢全身送達を用いて対象に投与される。
【0684】
組成物は、一部の態様では、滅菌した液体調製物、例えば、等張性水溶液、懸濁液、エマルジョン、分散液として提供されるか、または粘性のある組成物として提供され、これらは、一部の局面では、選択されたpHまで緩衝化されてもよい。液体調製物は、通常、ゲル、他の粘性のある組成物、および固体組成物より調製しやすい。さらに、液体組成物の方が、投与するのに、特に、注射によって投与するのに若干便利である。他方で、粘性のある組成物は、特定の組織との長い接触期間をもたらすように適切な粘性の範囲内で製剤化することができる。液体組成物または粘性のある組成物は、例えば、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、およびその適切な混合物を含有する、溶媒または分散媒でもよい担体を含んでもよい。
【0685】
滅菌注射液は、前記の薬剤または細胞を溶媒の中に取り入れて、例えば、適切な担体、希釈剤、または賦形剤、例えば、滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどと混合して調製することができる。
【0686】
インビボ投与のために使用しようとする製剤は一般的に無菌である。無菌性は、容易に、例えば、滅菌濾過膜で濾過することによって成し遂げられ得る。
【0687】
VII. 製造物品およびキット
また、組換え受容体を発現する操作された細胞またはその組成物、ならびに任意で、使用の説明書、例えば、提供される方法に従って投与するための説明書を備える、製造物品およびキットが提供される。
【0688】
一部の態様において、治療上有効な量の本明細書に記載される操作された細胞のいずれかを含む組成物、および疾患または病態を処置するために対象に投与するための説明書を備える、製造物品および/またはキットが提供される。いくつかの態様において、説明書は、本明細書において提供される方法の要素のいくつかまたは全部を指定し得る。いくつかの態様において、説明書は、細胞療法用の細胞を投与するための具体的な指示、例えば、用量、タイミング、投与する対象および投与のための病態の選択および/または特定を指定する。いくつかの態様において、製造物品および/またはキットは、治療(例えばリンパ球除去療法および/または併用療法)用の1つまたは複数の追加の作用物質、例えば本明細書に記載されるいずれかのものをさらに備え、治療用の該追加の作用物質を投与するための説明書を任意でさらに備える。いくつかの態様において、製造物品および/またはキットは、リンパ球除去療法用の作用物質をさらに備え、リンパ球除去療法を投与するための説明書を任意でさらに備える。いくつかの態様において、説明書は、投与用組成物に付随するラベル表示または添付文書として備え得る。
【0689】
一部の態様では、そのような基準には、再発性/抵抗性CLLおよび/もしくは高リスクのCLL、またはSLLを有する対象が含まれる。一部の局面では、処置される集団には、例えば、0~1の範囲にあるEastern Cooperative Oncology Groupパフォーマンスステータス(ECOG)を有する対象が含まれる。態様のいずれかの一部の態様では、処置される対象は2つ以上の以前の療法に失敗したことがある。
【0690】
一部の態様では、説明書は投与される細胞の用量を指定する。例えば、一部の態様では、説明書で特定された用量には、総組換え受容体(例えば、CAR)発現細胞、例えば2.5×107、5×107、または1×108個のそのような総細胞が含まれる。
【0691】
一部の態様では、製造物品またはキットは、容器、任意で組換え受容体(例えば、CAR)を発現する複数のCD4+T細胞を含むバイアル、および容器、任意で組換え受容体(例えば、CAR)を発現する複数のCD8+T細胞を含むバイアルを含む。一部の態様では、製造物品またはキットは、容器、任意で組換え受容体を発現する複数のCD4+T細胞を含むバイアルを含み、かつ同じ容器中に組換え受容体(例えば、CAR)を発現する複数のCD8+T細胞をさらに含む。一部の態様では、凍結防止剤が細胞と共に含まれる。一部の局面では、容器はバッグである。一部の局面では、容器はバイアルである。
【0692】
一部の態様では、容器、例えばバイアルは、1 mL当たり0.5×106個を上回るもしくは約0.5×106個を上回る組換え受容体発現(例えば、CAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生細胞、1 mL当たり1.0×106個を上回るもしくは約1.0×106個を上回る組換え受容体発現(例えば、CAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生細胞、1 mL当たり1.5×106個を上回るもしくは約1.5×106個を上回る組換え受容体発現(例えば、CAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生細胞、1 mL当たり2.0×106個を上回るもしくは約2.0×106個を上回る組換え受容体発現(例えば、CAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生細胞、1 mL当たり2.5×106個を上回るもしくは約2.5×106個を上回る組換え受容体発現(例えば、CAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生細胞、1 mL当たり2.6×106個を上回るもしくは約2.6×106個を上回る組換え受容体発現(例えば、CAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生細胞、1 mL当たり2.7×106個を上回るもしくは約2.7×106個を上回る組換え受容体発現(例えば、CAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生細胞、1 mL当たり2.8×106個を上回るもしくは約2.8×106個を上回る組換え受容体発現(例えば、CAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生細胞、1 mL当たり2.9×106個を上回るもしくは約2.9×106個を上回る組換え受容体発現(例えば、CAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生細胞 、1 mL当たり3.0×106個を上回るもしくは約3.0×106個を上回る組換え受容体発現(例えば、CAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生細胞、1 mL当たり3.5×106個を上回るもしくは約3.5×106個を上回る組換え受容体発現(例えば、CAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生細胞、1 mL当たり4.0×106個を上回るもしくは約4.0×106個を上回る組換え受容体発現(例えば、CAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生細胞、1 mL当たり4.5×106個を上回るもしくは約4.5×106個を上回る組換え受容体発現(例えば、CAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生細胞、または1 mL当たり5×106個を上回るもしくは約5×106個を上回る組換え受容体発現(例えば、CAR+)/CD3+細胞もしくはそのような生細胞を含む。一部の態様では、CD3+細胞はCD4+T細胞である。一部の態様では、CD3+細胞はCD8+T細胞である。一部の態様では、CD3+T細胞はCD4+かつCD8+T細胞である。
【0693】
一部の態様では、投与用に指定された複数のバイアルまたは複数の細胞または細胞の単位用量は、集合的に、2.5×107もしくは約2.5×107から5×107個の総組換え受容体発現T細胞もしくは総T細胞、または5×107もしくは約5×107から1×108個の総組換え受容体発現T細胞もしくは総T細胞を含む細胞の用量を含む。いくつかの態様において、T細胞はCD3+細胞である。いくつかの態様において、CD3+細胞はCD8+ T細胞である。いくつかの態様において、CD3+ T細胞はCD4+およびCD8+ T 細胞である。いくつかの態様において、投与のための指定された該複数のバイアルまたは該複数の細胞もしくは単位用量の細胞は、1つまたは複数の単位用量の組換え受容体(例えばCAR)発現CD3+ CD4+ T細胞および1つまたは複数の単位用量の組換え受容体(例えばCAR)発現CD3+ CD8+ T細胞を含む。いくつかの態様において、各単位用量の細胞の数は生存細胞である。
【0694】
いくつかの局面において、当該物品は、1つまたは複数の単位用量のCD4およびCD8細胞またはCD4受容体(例えばCAR+)細胞およびCD8受容体(例えばCAR+)細胞を備え、ここで、当該単位用量は、1×107もしくは約1×107から、2×108もしくは約2×108個の組換え受容体(例えばCAR)発現T細胞、5×107もしくは約5×107から、1.5×108もしくは約1.5×108個の組換え受容体(例えばCAR)発現T細胞、5×107もしくは約5×107個の組換え受容体(例えばCAR)発現T細胞、1×108もしくは約1×108個の組換え受容体(例えばCAR)発現T細胞、または1.5×108もしくは約1.5×108個の組換え受容体(例えばCAR)発現T細胞を含み、ここで任意で、当該物品の該情報には、1つもしくは複数の単位用量および/またはそのような1つもしくは複数の単位用量に相当する体積の投与が指定されている。いくつかの場合において、当該物品は1つまたは複数の単位用量のCD8細胞を備え、当該用量が、5×106もしくは約5×106から、1×108もしくは約1×108個の組換え受容体(例えばCAR)発現CD8T細胞を含むか、当該用量が、1×107もしくは約1×107から、0.75×108もしくは約0.75×108個の組換え受容体(例えばCAR)発現CD8T細胞を含むか、当該用量が、2.5×107もしくは約2.5×107個の組換え受容体(例えばCAR)発現CD8T細胞を含むか、または該用量が、5×107もしくは約5×107個の組換え受容体(例えば)発現CD8T細胞を含むか、または該用量が、0.75×108もしくは約0.75×108個の組換え受容体(例えばCAR)発現CD8T細胞を含み、ここで任意で、当該物品の該情報には、1つもしくは複数の単位用量および/またはそのような1つもしくは複数の単位用量に相当する体積の投与が指定されている。いくつかの場合において、当該物品は1つまたは複数の単位用量のCD4細胞を備え、当該用量が、5×106もしくは約5×106から、1×108もしくは約1×108個の組換え受容体(例えばCAR)発現CD4T細胞を含むか、当該用量が、1×107もしくは約1×107から、0.75×108もしくは約0.75×108個の組換え受容体(例えばCAR)発現CD4T細胞を含むか、当該用量が、2.5×107もしくは約2.5×107個の組換え受容体(例えばCAR)発現CD4T細胞を含むか、または該用量が、5×107もしくは約5×107個の組換え受容体(例えば)発現CD4T細胞を含むか、または該用量が、0.75×108もしくは約0.75×108個の組換え受容体(例えばCAR)発現CD4T細胞を含み、ここで任意で、当該物品の該情報には、1つもしくは複数の単位用量および/またはそのような1つもしくは複数の単位用量に相当する体積の投与が指定されている。いくつかの態様において、当該物品内の細胞が、合わせて、1×108もしくは約1×108個以下の総組換え受容体(例えばCAR)発現T細胞もしくは総T細胞もしくはCD3+細胞、1×107もしくは約1×107個以下の総組換え受容体(例えばCAR)発現T細胞もしくは総T細胞もしくはCD3+細胞、0.5×107もしくは約0.5×107個以下の総組換え受容体(例えばCAR)発現T細胞もしくは総T細胞もしくはCD3+細胞、1×106もしくは約1×106個以下の総組換え受容体(例えばCAR)発現T細胞もしくは総T細胞もしくはCD3+、0.5×106もしくは約0.5×106個以下の総組換え受容体(例えばCAR)発現T細胞もしくは総T細胞もしくはCD3+細胞を含む、ある用量の細胞を含む。いくつかの態様において、各単位用量の細胞の数は生存細胞である。
【0695】
いくつかの態様において、投与のための指定された各バイアルもしくは該複数のバイアルまたは該複数の細胞もしくは単位用量の細胞には合わせて、細胞用量が対象の体表面積もしくは体重に関係しない、または対象の体表面積もしくは体重を基準にしないような一律用量の細胞または固定用量の細胞が含まれる。
【0696】
いくつかの態様において、細胞の単位用量は、対象もしくは患者に単回用量で投与され得る細胞、例えば改変T細胞の数もしくは量であるか、または対象もしくは患者に単回用量で投与され得る細胞、例えば改変T細胞の数もしくは量を含む。いくつかの態様において、単位用量は、所与の用量での投与のための細胞数の一部である。
【0697】
一部の態様では、ある用量の投与のための説明書は、少なくとも2.5×107もしくは少なくとも約2.5×107個のCD3+/CAR+、CD8+/CAR+、もしくはCD4+/CD8+/CAR+ T細胞、少なくとも5×107もしくは少なくとも約5×107個のCD3+/CAR+、CD8+/CAR+、もしくはCD4+/CD8+/CAR+ T細胞、または少なくとも1×108もしくは少なくとも約1×108個のCD3+/CAR+、CD8+/CAR+、もしくはCD4+/CD8+/CAR+ T細胞を含むある数の細胞を投与することを指定する。一部の態様では、ある用量の投与のための説明書は、2.5×107もしくは約2.5×107個のCD3+/CAR+、CD8+/CAR+、もしくはCD4+/CD8+/CAR+ T細胞、5×107もしくは約5×107個のCD3+/CAR+、CD8+/CAR+、もしくはCD4+/CD8+/CAR+ T細胞、または1×108もしくは約1×108個のCD3+/CAR+、CD8+/CAR+、もしくはCD4+/CD8+/CAR+ T細胞を含むある数の細胞を投与することを指定する。一部の態様では、細胞の数は、生細胞であるそのような細胞の数である。
【0698】
いくつかの態様において、製造物品またはキットは、組換え受容体を発現する複数のCD4T細胞、および疾患または病態を有する対象に該複数のCD4T細胞の全部または一部を投与し、組換え受容体を発現するCD8T細胞をさらに投与するための説明書を備える。いくつかの態様において、説明書に、CD4T細胞を、CD8細胞を投与する前に投与することが指定されている。いくつかの場合において、当該説明書に、CD8T細胞を、CD4細胞を投与する前に投与することが指定されている。いくつかの態様において、製造物品またはキットは、組換え受容体を発現する複数のCD8T細胞、および疾患または病態を有する対象に該複数のCD8T細胞の全部または一部と組換え受容体を発現するCD4T細胞とを投与するための説明書を備える。いくつかの態様において、説明書に、細胞投与の投与レジメンおよびタイミングが指定されている。
【0699】
いくつかの態様において、ある用量の投与のための説明書に、2.5×107または約2.5×107個のCD4+ CAR+生存細胞および2.5×107または約2.5×107個のCD8+CAR+生存細胞の別々の用量を含む、5×107または約5×107個のCD3+ CAR+生存細胞である細胞数を投与することが指定されている。いくつかの態様において、ある用量の投与のための説明書に、5×107または約5×107個のCD4+CAR+生存細胞および5×107または約5×107個のCD8+CAR+生存細胞の別々の用量を含む、1×108または約1×108個のCD3+CAR+生存細胞である細胞数を投与することが指定されている。いくつかの態様において、ある用量の投与のための説明書に、0.75×108または約0.75×108個のCD4+CAR+生存細胞および0.75×108または約0.75×108個のCD8+CAR+生存細胞の別々の用量を含む、1.5×108または約1.5×108個のCD3+CAR+生存細胞である細胞数を投与することが指定されている。
【0700】
いくつかの局面において、当該説明書に、CD4 T細胞の全部または一部とCD8 T細胞の全部または一部を、48時間の間隔で、例えば36時間以下の間隔で、24時間以下の間隔で、12時間以下の間隔で、例えば0~12時間の間隔で、0~6時間の間隔で、または0~2時間の間隔で投与することが指定されている。いくつかの場合において、当該説明書に、CD4T細胞とCD8T細胞を、2時間以下、1時間以下、30分以下、15分以下、10分以下、または5分以下の間隔で投与することが指定されている。いくつかの態様において、当該説明書に、CD4+ T細胞の前にCD8+ T細胞を投与することが指定されている。
【0701】
いくつかの態様において、製造物品および/またはキットは、本明細書に記載されるような、治療、例えばリンパ球除去療法用の1つまたは複数の追加の作用物質、ならびに任意で該追加の作用物質を投与するための説明書をさらに含む。
【0702】
いくつかの態様において、製造物品および/またはキットは、毒性の発現もしくはそのリスクを処置するため、予防するため、遅延させるため、低減させるため、もしくは減弱させるための1つもしくは複数の作用物質もしくは処置および/または対象における毒性の発現もしくはそのリスクを処置するため、予防するため、遅延させるため、低減させるため、もしくは減弱させるための1つもしくは複数の作用物質もしくは処置の投与のための説明書をさらに含む。いくつかの態様において、作用物質は、抗IL-6抗体もしくは抗IL-6受容体抗体であるか、またはそれを含む。例えば、いくつかの態様において、作用物質または処置は、トシリズマブ、シルツキシマブ、クラザキズマブ、サリルマブ、オロキズマブ(CDP6038)、エルシリモマブ、ALD518/BMS-945429、シルクマブ(CNTO 136)、CPSI-2634、ARGX-109、FE301、およびFM101の中から選択される作用物質であるか、またはそれを含む。例えば、いくつかの態様において、作用物質または処置は、ステロイド;IL-10、IL-10R、IL-6、IL-6受容体、IFNγ、IFNGR、IL-2、IL-2R/CD25、MCP-1、CCR2、CCR4、MIP1β、CCR5、TNFアルファ、TNFR1、IL-1およびIL-1Rアルファ/IL-1ベータの中から選択されるサイトカイン受容体もしくはサイトカインの拮抗薬もしくは阻害剤;またはミクログリア細胞の活性もしくは機能を抑制する、ブロックする、もしくは低減させることができる作用物質のうちの1つまたは複数であるか、あるいはそれを含む。
【0703】
いくつかの態様において、ミクログリア細胞の活性もしくは機能を抑制する、ブロックする、もしくは低減させることができる作用物質は、抗炎症性剤、NADPHオキシダーゼ(NOX2)の阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬、ナトリウムチャネル遮断薬から選択される、GM-CSFを阻害する、CSF1Rを阻害する、CSF-1に特異的に結合する、IL-34に特異的に結合する、核内因子カッパB(NF-κB)の活性化を阻害する、CB2受容体を活性化させる、および/またはCB2作動薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤である、マイクロRNA-155(miR-155)を阻害する、もしくはマイクロRNA-124(miR-124)を上方調節する。いくつかの場合において、作用物質は、ミノサイクリン、ナロキソン、ニモジピン、リルゾール、MOR103、レナリドミド、カンナビノイド(任意でWIN55または212-2)、静注用免疫グロブリン(IVIg)、イブジラスト、抗miR-155ロックド核酸(LNA)、MCS110、PLX-3397、PLX647、PLX108-D1、PLX7486、JNJ-40346527、JNJ28312141、ARRY-382、AC-708、DCC-3014、5-(3-メトキシ-4-((4-メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)ピリミジン-2,4-ジアミン(GW2580)、AZD6495、Ki20227、BLZ945、エマクツヅマブ、IMC-CS4、FPA008、LY-3022855、AMG-820およびTG-3003から選択される。いくつかの態様において、作用物質はコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)の阻害剤である。例えば、作用物質 PLX-3397、PLX647、PLX108-D1、PLX7486、JNJ-40346527、JNJ28312141、ARRY-382、AC-708、DCC-3014、5-(3-メトキシ-4-((4-メトキシベンジル)オキシ)ベンジル)ピリミジン-2,4-ジアミン(GW2580)、AZD6495、Ki20227、BLZ945またはその薬学的塩もしくはプロドラッグ;エマクツヅマブ、IMC-CS4、FPA008、LY-3022855、AMG-820およびTG-3003あるいはその抗原結合断片、または前記のもののいずれかの組合せである。
【0704】
いくつかの態様において、製造物品および/またはキットは、生物学的試料(例えば、療法の投与候補の対象または療法が投与されている対象に由来する生物学的試料)をアッセイするための1つまたは複数の試薬、ならびに任意で該試薬またはアッセイを使用するための説明書をさらに含む。いくつかの態様において、生物学的試料は、血液試料、血漿試料、もしくは血清試料であるか、またはそれから得られる。いくつかの態様において、試薬は、細胞療法の投与前または投与後に、診断目的で、対象を特定するため、ならびに/または処置転帰および/もしくは毒性を評価するために使用され得る。例えば、いくつかの態様において、製造物品および/またはキットは、毒性と関連する特定のバイオマーカー、例えばサイトカイン、分析物、または受容体のレベルを測定するための試薬、および測定のための説明書をさらに含む。いくつかの態様において、試薬としては、バイオマーカー(例えば、分析物)を測定するためのインビトロアッセイ、例えばイムノアッセイ、アプタマーベースのアッセイ、組織学的もしくは細胞学的アッセイまたはmRNA発現レベルアッセイを行うための構成成分が挙げられる。いくつかの態様において、インビトロアッセイは、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、イムノブロッティング、免疫沈降、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫染色、フローサイトメトリーアッセイ、表面プラズモン共鳴(SPR)、化学発光アッセイ、ラテラルフローイムノアッセイ、阻害アッセイ、およびアビディティアッセイの中から選択される。いくつかの局面において、試薬は、バイオマーカー(例えば、分析物)に特異的に結合する結合試薬である。いくつかの場合において、結合試薬は、抗体もしくはその抗原結合断片、アプタマー、または核酸プローブである。
【0705】
一部の態様では、製造物品および/またはキットは、1種または複数種のバイオマーカー、分析物、または受容体を検出することができる1種または複数種の試薬、および処置の候補である対象からの生物学的試料をアッセイするための試薬を用いるための説明書を含み、ここで、該1種または複数種のバイオマーカー、分析物、または受容体はTNF、IL-16、VEGFC、またはVEGFR1であり得る。一部の態様では、分析物または受容体の閾値レベルと比較して対象における分析物または受容体の有無、レベル、量、または濃度をアッセイするための説明書もまた含まれる。一部の態様では、説明書は、提供される方法のいずれかによるそのようなバイオマーカー、分析物、または受容体、例えば、TNF、IL-16、VEGFC、またはVEGFR1の評価またはモニタリングを行うための方法を指定する。
【0706】
いくつかの態様において、試料中の分析物または受容体のレベル、量、または濃度が該分析物または受容体の閾値レベル以上である場合は、毒性の発現またはそのリスクを、処置する、予防する、遅延させる、低減させる、または減弱させることができる作用物質または他の処置を、(i)対象に対する細胞療法の投与の開始の前、(ii)対象に対する細胞療法の投与の開始の1、2、もしくは3日以内、(iii)対象に対する細胞療法の投与の開始と並行して、および/または(iv)対象に対する細胞療法の投与の開始後の最初の発熱時に、対象に施すこと、を指定する説明書が含められる。いくつかの場合において、試料中の分析物または受容体のレベル、量、または濃度が該分析物または受容体の閾値レベル以上である場合は、低用量で、あるいは細胞療法の投与後に、毒性または重度の毒性を発現するリスクを伴わないか、あるいは対象の大部分において、および/または疾患もしくは病態(当該対象が有するかもしくは有する疑いがあるもの)を有する対象の大部分において、毒性または重度の毒性を発現するリスクを伴わない用量で、細胞療法が対象に投与されることが、当該説明書に指定されている。いくつかの場合において、説明書には、試料中の分析物または受容体のレベル、量、または濃度が該分析物または受容体の閾値レベル以上である場合は、入院患者の環境で、かつ/または病院への1日もしくは複数日の入院を伴って、対象に細胞療法を投与し、任意で、それ以外の場合は、外来患者ベースで、または病院への1日もしくは複数日の入院なしで、対象に細胞療法を投与することが、指定されている。
【0707】
いくつかの態様において、細胞療法を投与するための説明書には、試料中の分析物または受容体のレベル、量、または濃度が閾値レベル未満である場合、任意で非低用量で、任意で外来患者ベースで、または病院への1日もしくは複数日の入院なしで、対象に細胞療法を投与することが、指定されている。いくつかの態様において、細胞療法を投与するための説明書には、試料中の分析物または受容体のレベル、量、または濃度が閾値レベル未満である場合、当該細胞療法の投与の前に、もしくは該細胞療法の投与と並行して、および/または熱以外の毒性の徴候もしくは症状の発現の前に、毒性の発現を、処置する、予防する、遅延させる、もしくは減弱させることができる作用物質もしくは処置を対象に施さないことが、指定されている。いくつかの局面において、細胞療法を投与するための説明書に、試料中の分析物または受容体のレベル、量、または濃度が閾値レベル未満である場合に細胞療法の投与は、外来患者の状況で、かつ/または対象が病院に一晩または1日もしくは複数の連続日入院することなく、かつ/または対象が病院に1日もしくは複数日入院することなく、対象に行われるべきであるか、または行われ得ることが指定されている。
【0708】
製造物品および/またはキットは、細胞療法をさらに含み得、かつ/または該細胞療法での処置とともに、当該細胞療法での処置の前に、および/または該細胞療法での処置と関連して使用するための説明書をさらに含み得る。いくつかの態様において、作用物質を投与するための説明書を含め、当該説明書に、試料中の分析物または受容体のレベル、量、または濃度が閾値レベル以上である場合は、対象に該作用物質を投与することが指定されている。いくつかの局面において、説明書に、細胞療法を対象に投与すること、ここで、作用物質の投与は(i)対象に対する細胞療法の投与の開始の前、(ii)対象に対する細胞療法の投与の開始の1、2、もしくは3日以内、(iii)対象に対する細胞療法の投与の開始と並行して、および/または(iv)対象に対する細胞療法の投与の開始後の最初の発熱時に行われるべきであることがさらに指定されている。
【0709】
製造物品および/またはキットは、容器、および容器表面または容器に伴うラベルまたは添付文書を含んでよい。適切な容器には、例えば、瓶、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグなどが含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成されてよい。いくつかの態様における容器には、単独であるか、または病態を処置、予防、および/もしくは診断するのに有効な別の組成物と組み合わせられた、組成物が保管される。いくつかの態様において、容器は、無菌取出口を有する。例示的な容器には、注射用の針によって突き刺すことができる栓の付いたものを含む、静注液バッグ、バイアル、または経口投与される作用物質のための瓶もしくはバイアルが含まれる。ラベルまたは添付文書は、その組成物が、疾患または病態を処置するのに使用されることを示してよい。製造物品は、(a)組換え受容体を発現する操作された細胞を含む組成物がその中に含まれる第1の容器;および(b)第2の作用物質を含む組成物がその中に含まれる第2の容器を含んでよい。いくつかの態様において、製造物品は、(a)組換え受容体を発現する操作された細胞のサブタイプを含む第1の組成物がその中に含まれる第1の容器;および(b)組換え受容体を発現する操作された細胞の別のサブタイプを含む組成物がその中に含まれる第2の容器を含んでよい。製造物品は、それらの組成物を用いて特定の病態を処置できることを示す添付文書をさらに含んでよい。あるいはまたはさらに、製造物品は、薬学的に許容される緩衝液を含む別のまたは同じ容器をさらに含んでもよい。これは、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、および/またはシリンジなどの他の材料もさらに含んでよい。
【0710】
VIII. 例示的な態様
提供される態様には、以下がある。
1. 以下の工程を含む、細胞療法の投与後に毒性を発現するリスクを決定する方法:
細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象において、リンパ節腫瘍負荷量、血液腫瘍負荷量、およびリンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比の中から選択される1つまたは複数の疾患負荷量パラメータを評価する工程であって、該細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、該パラメータは該細胞療法を投与する前の対象から評価される、工程;ならびに、
前記1つまたは複数のパラメータの値を、各パラメータについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、
(1)(a)リンパ節腫瘍負荷量がリンパ節腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり、(b)血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり、および/または(c)リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベル未満であるなら、対象を、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクがあると同定し、または
(2)(a)リンパ節腫瘍負荷量が腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり、(b)血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり、および/または(c)リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベルを上回るのであれば、対象を、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクはないと同定する、
工程。
2. 神経毒性を発現するリスクがあると対象が同定された場合に、
(i)対象に細胞療法を、任意で低減された用量で、投与する工程であって、任意で、ここで、
(a)前記方法は、神経毒性の発現もしくは神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しもしくは減弱することができる作用物質もしくは他の処置を対象に投与する工程をさらに含み、および/または
(b)対象に対する細胞療法の投与は、入院患者設定でおよび/または1日もしくは複数日の入院を伴って、実行されるかまたは実行されるように指定される、
工程;あるいは
(ii)CLLまたはSLLを処置するための細胞療法以外の代替処置を対象に投与する工程
をさらに含む、態様1の方法。
3. 神経毒性を発現するリスクはないと対象が同定された場合に、
(i)細胞療法を対象に投与する工程であって、任意で、ここで、
(a)任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈する時または呈した後、対象が毒性の徴候もしくは症状を呈さない限りまたは呈するまで、対象には、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質および他の処置を投与せず;ならびに/あるいは
(b)任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、細胞療法の投与および任意の経過観察が実行される、
工程
をさらに含む、態様1の方法。
4. 以下の工程を含む、細胞療法による処置のために対象を選択する方法:
細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象において、リンパ節腫瘍負荷量、血液腫瘍負荷量、およびリンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比の中から選択される1つまたは複数の疾患負荷量パラメータを評価する工程であって、該細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、該パラメータは該細胞療法を投与する前の対象から評価される、工程;ならびに、
前記1つまたは複数のパラメータの値を、各パラメータについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、
(1)(a)リンパ節腫瘍負荷量がリンパ節腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり、(b)血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり、および/または(c)リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベル未満であるなら、対象を、
(i)低減された用量での細胞療法の投与;
(ii)神経毒性の発現または神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置の投与;
(iii)入院患者設定で、および/または1日もしくは複数日の入院を伴って、実行されるかまたは実行されるように指定される細胞療法の投与;および/または
(iv)CLLもしくはSLLを処置するための細胞療法以外の代替処置の投与
のために選択し;または
(2)(a)リンパ節腫瘍負荷量が腫瘍負荷量についての閾値レベル未満であり、(b)血液腫瘍負荷量が血液腫瘍負荷量についての閾値レベル以上であり、および/または(c)リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比がその比についての閾値レベルを上回るのであれば、対象を、
(i)細胞療法の投与のために選択し、任意で、ここで、
(a)任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈する時または呈した後、対象が毒性の徴候もしくは症状を呈さない限りまたは呈するまで、対象には、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質および他の処置を投与せず;ならびに/あるいは
(b)任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、細胞療法の投与および任意の経過観察が実行される、
工程。
5. 細胞療法、毒性の発現もしくは毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しもしくは減弱することができる作用物質もしくは他の処置、および/または代替処置を、対象に投与する工程をさらに含む、態様4の方法。
6. 血液腫瘍負荷量を評価する工程が、対象の血液中のリンパ球濃度を決定する工程を含む、態様1~5のいずれか一つの方法。
7. 濃度が血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数である、態様6の方法。
8. 血液腫瘍負荷量についての閾値レベルが、800または約800リンパ球/μL~3000または約3000リンパ球/μLの値である、態様1~7のいずれか一つの方法。
9. 血液腫瘍負荷量についての閾値レベルが、800リンパ球/μL、900リンパ球/μL、1000リンパ球/μL、1250リンパ球/μL、1500リンパ球/μL、1750リンパ球/μL、2000リンパ球/μL、2250リンパ球/μL、2500リンパ球/μL、2750リンパ球/μLもしくは3000リンパ球/μL、または約800リンパ球/μL、900リンパ球/μL、1000リンパ球/μL、1250リンパ球/μL、1500リンパ球/μL、1750リンパ球/μL、2000リンパ球/μL、2250リンパ球/μL、2500リンパ球/μL、2750リンパ球/μLもしくは3000リンパ球/μLの値、または前記のいずれかの間の値である、態様8の方法。
10. リンパ節負荷量を評価する工程が、最大リンパ節径を決定する工程を含む、態様1~9のいずれか一つの方法。
11. 最大リンパ節径がセンチメートル(cm)の単位で測定される、態様10の方法。
12. リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルが4または約4cm~7または約7cmの値である、態様10または態様11の方法。
13. リンパ節負荷量としての最大リンパ節径についての閾値レベルが、4cm、4.25cm、4.5cm、4.75cm、5cm、5.25cm、5.5cm、5.75cm、6cm、6.25cm、6.5cm、6.75cmもしくは7cm、または約4cm、4.25cm、4.5cm、4.75cm、5cm、5.25cm、5.5cm、5.75cm、6cm、6.25cm、6.5cm、6.75cmもしくは7cmの値、または前記のいずれの間の値である、態様10~12のいずれか一つの方法。
14. リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比を評価する工程が、センチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比を決定する工程を含む、態様1~19のいずれか一つの方法。
15. リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルが、300または約300から、1000または約1000の値である、態様14の方法。
16. リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのセンチメートル(cm)の単位での最大リンパ節径に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルが、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950もしくは1000、または約300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950もしくは1000の値、または前記のいずれかの間の値である、態様14または態様15の方法。
17. リンパ節負荷量を評価する工程が二方向積和(SPD)を決定する工程を含む、態様1~9のいずれか一つの方法。
18. SPDが平方センチメートル(cm2)の単位で測定される、態様17の方法。
19. リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルが10または約10cm2~40または約40cm2の値である、態様17または態様18の方法。
20. リンパ節負荷量としてのSPDについての閾値レベルが、10cm2、12.5cm2、15cm2、17.5cm2、20cm2、22.5cm2、25cm2、27.5cm2、30cm2、32.5cm2、35cm2、37.5cm2もしくは40cm2、または約10cm2、12.5cm2、15cm2、17.5cm2、20cm2、22.5cm2、25cm2、27.5cm2、30cm2、32.5cm2、35cm2、37.5cm2もしくは40cm2の値、または前記のいずれかの間の値である、態様17~19のいずれか一つの方法。
21. リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比を評価する工程が、平方センチメートル(cm2)の単位での二方向積和(SPD)に対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比を決定する工程を含む、態様1~9および態様17~20のいずれか一つの方法。
22. リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルが、25または約25から、500または約500の値である、態様21の方法。
23. リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比としてのSPDに対する血液1マイクロリットル(μL)あたりのリンパ球数の比についての閾値レベルが、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450もしくは500、または約25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450もしくは500の値、または前記のいずれかの間の値である、態様21または態様22の方法。
24. 以下の工程を含む、細胞療法の投与後に毒性を発現するリスクを決定する方法:
生物学的試料を、腫瘍壊死因子(TNF)および/またはインターロイキン-16(IL-16)のレベル、量または濃度についてアッセイする工程であって、生物学的試料は、細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象に由来し、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、生物学的試料が、細胞療法を投与する前に、またはピークCAR+T細胞拡大増殖前におよび/もしくは細胞療法の投与開始後11もしくは約11日以内に、対象から得られる、工程;ならびに
TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度を、それぞれについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、
TNFについての閾値レベルは7および約7pg/mL~25もしくは約25pg/mLの値であり、ならびに/または
IL-16についての閾値レベルは400もしくは約400pg/mL~1000もしくは約1000pg/mLの値であり、
(1)TNFおよび/もしくはIL-16のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクがあると同定し、または
(2)TNFおよび/もしくはIL-16のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル未満であるなら、対象を、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクはないと同定する、
工程。
25. 以下の工程を含む、細胞療法の投与後に毒性を発現するリスクを決定する方法:
生物学的試料を、腫瘍壊死因子(TNF)および/またはインターロイキン-16(IL-16)のレベル、量または濃度についてアッセイする工程であって、生物学的試料は、細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象に由来し、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、生物学的試料が、細胞療法を投与する前に、対象から得られる、工程;ならびに
TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度を、それぞれについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、
TNFについての閾値レベルは7もしくは約7pg/mL~25もしくは約25pg/mLの値であり、および/または
IL-16についての閾値レベルは400もしくは約400pg/mL~1000もしくは約1000pg/mLの値であり、
(1)TNFおよび/もしくはIL-16のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクがあると同定し、または
(2)TNFおよび/もしくはIL-16のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル未満であるなら、対象を、細胞療法の投与後に神経毒性を発現するリスクはないと同定する、
工程。
26. 神経毒性を発現するリスクがあると対象が同定された場合に、
(i)対象に細胞療法を、任意で低減された用量で、投与する工程であって、任意で、ここで、
(a)本方法は、神経毒性の発現もしくは神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しもしくは減弱することができる作用物質もしくは他の処置を対象に投与する工程をさらに含み、および/または
(b)対象に対する細胞療法の投与は、入院患者設定でおよび/または1日もしくは複数日の入院を伴って、実行されるかまたは実行されるように指定される、
工程;あるいは
(ii)CLLまたはSLLを処置するための細胞療法以外の代替処置を対象に投与する工程
をさらに含む、態様24または態様25の方法。
27. 神経毒性を発現するリスクはないと対象が同定された場合に、
(i)細胞療法を対象に投与する工程であって、任意で、ここで、
(a)任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈する時または呈した後、対象が毒性の徴候もしくは症状を呈さない限りまたは呈するまで、対象には、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質および他の処置を投与せず;ならびに/あるいは
(b)任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、細胞療法の投与および任意の経過観察が実行される、
工程
を、さらに含む、態様24または態様25の方法。
28. 以下の工程を含む、細胞療法による処置のために対象を選択する方法:
生物学的試料を、腫瘍壊死因子(TNF)および/またはインターロイキン-16(IL-16)のレベル、量または濃度についてアッセイする工程であって、生物学的試料は、細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象に由来し、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、生物学的試料が、細胞療法を投与する前に、対象から得られる、工程;ならびに
TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度を、それぞれについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、
TNFについての閾値レベルは7もしくは約7pg/mL~25もしくは約25pg/mLの値であり、および/または
IL-16についての閾値レベルは400もしくは約400pg/mL~1000もしくは約1000pg/mLの値であり、
(1)TNFおよび/もしくはIL-16のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、
(i)低減された用量での細胞療法の投与;
(ii)神経毒性の発現または神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置の投与;
(iii)入院患者設定でおよび/または1日もしくは複数日の入院を伴って、実行されるかまたは実行されるように指定される細胞療法の投与;および/または
(iv)CLLもしくはSLLを処置するための細胞療法以外の代替処置の投与のために選択し;または
(2)TNFおよび/もしくはIL-16のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル未満であるなら、対象を、
(i)細胞療法の投与のために選択し、任意で、ここで、
(a)任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈する時または呈した後、対象が毒性の徴候もしくは症状を呈さない限りまたは呈するまで、対象には、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質および他の処置を投与せず;ならびに/あるいは
(b)任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、細胞療法の投与および任意の経過観察が実行される、
工程。
29. 細胞療法、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置、および/または代替処置を、対象に投与する工程をさらに含む、態様28の方法。
30. 以下の工程を含む、細胞療法の投与後に毒性を発現するリスクを決定する方法:
CLLまたはSLLを処置するためのCARを発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含む細胞療法の投与を受けた対象からの生物学的試料を、TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度についてアッセイする工程であって、生物学的試料が、ピークCAR+T細胞拡大増殖前に、および/または細胞療法の投与開始後11日もしくは約11日以内に、対象から得られる、工程;ならびに
TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度を、それぞれについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、
TNFについての閾値レベルは7もしくは約7pg/mL~25もしくは約25pg/mLの値であり、および/またはIL-16についての閾値レベルは400もしくは約400pg/mL~1000もしくは約1000pg/mLの値であり、
(1)TNFおよび/もしくはIL-16のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、神経毒性を発現するリスクがあると同定し;または
(2)TNFおよび/もしくはIL-16のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル未満であるなら、対象を、神経毒性を発現するリスクはないと同定する、
工程。
31. 神経毒性を発現するリスクがあると対象が同定された場合、神経毒性の発現または神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置を、任意でピークCAR+T細胞拡大増殖前におよび/または対象に対する細胞療法の投与から11日もしくは約11日以内に、対象に投与する工程をさらに含み;および/または経過観察が、入院患者設定で、および/または1日もしくは複数日の入院を伴って、実行される、態様24または態様30の方法。
32. 神経毒性を発現するリスクはないと対象が同定された場合、任意で、持続的発熱または解熱剤による処置後に1℃超は下がらないか下がっていないか下がらなかった発熱を対象が呈さない限りまたは呈するまで、外来患者ベースで、および/または対象を入院させることなく、および/または病院に一泊させることなく、および/または入院もしくは病院への一泊を要求することなく、経過観察が実行される、態様24または態様30の方法。
33. 以下の工程を含む、処置の方法:
神経毒性を発現するリスクがあると同定された対象に、毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置を投与する工程であって、該対象はCLLまたはSLLを処置するための細胞療法の投与を前もって受けており、作用物質の投与時または作用物質を投与する直前において、ピークCAR+T細胞拡大増殖前におよび/または細胞療法の投与開始から11日もしくは約11日以内に対象から得られた生物学的試料中のTNFおよび/またはIL-16のレベルまたは量または濃度がそれぞれについての閾値レベルを上回るのであれば、神経毒性を発現するリスクがあるとして、対象が選択または同定され、ここで、
TNFについての閾値レベルは7もしくは約7pg/mL~25もしくは約25pg/mLの値であり、および/または
IL-16についての閾値レベルは400もしくは約400pg/mL~1000もしくは約1000pg/mLの値である、
工程。
34. 以下の工程を含む、作用物質による処置のために対象を選択する方法:
CLLまたはSLLを処置するためのCD19に結合するCARを発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含む細胞療法の投与を受けた対象からの生物学的試料をTNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度についてアッセイする工程であって、生物学的試料が、ピークCAR+T細胞拡大増殖前におよび/または細胞療法の投与開始後11日もしくは約11日以内に、対象から得られる、工程;ならびに
TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度を、それぞれについての閾値レベルと個別に比較する工程であって、
TNFについての閾値レベルは7もしくは約7pg/mL~25もしくは約25pg/mLの値であり、および/または
IL-16についての閾値レベルは400もしくは約400pg/mL~1000もしくは約1000pg/mLの値であり、
TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、神経毒性の発現または神経毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置の投与のために選択する、
工程。
35. 毒性の発現または毒性の発現のリスクを処置し、防止し、遅延させ、低減しまたは減弱することができる作用物質または他の処置を対象に投与する工程をさらに含む、態様34の方法。
36. 作用物質または他の処置を投与する工程は、対象が持続的発熱または解熱剤による処置後も下がらないか下がっていない発熱もしくは解熱剤による処置後も1℃超は下がらない発熱を呈する時に実行される、態様35の方法。
37. 細胞療法を対象に投与する工程が外来患者ベースで実行され、TNFおよび/またはIL-16のレベル、量または濃度が閾値レベルを上回るのであれば、患者を1日または複数日にわたって入院させる工程を含む、態様24~36のいずれか一つの方法。
38. TNFについての閾値レベルが、7pg/mL、8pg/mL、9pg/mL、10pg/mL、15pg/mL、20pg/mLもしくは25pg/mL、または約7pg/mL、8pg/mL、9pg/mL、10pg/mL、15pg/mL、20pg/mLもしくは25pg/mLの値、または前記のいずれかの間の値である、態様24~37のいずれか一つの方法。
39. TNFについての閾値レベルが、8または約8pg/mL~10または約10pg/mLの値である、態様24~38のいずれか一つの方法。
40. IL-16についての閾値レベルが、400pg/mL、500pg/mL、600pg/mL、700pg/mL、800pg/mL、900pg/mLもしくは1000pg/mL、または約400pg/mL、500pg/mL、600pg/mL、700pg/mL、800pg/mL、900pg/mLもしくは1000pg/mLの値、または前記のいずれかの間の値である、態様24~39のいずれか一つの方法。
41. IL-16についての閾値レベルが、500または約500pg/mL~700または約700pg/mLの値である、態様24~40のいずれか一つの方法。
42. TNFとIL-16の両方のレベル、量または濃度が評価され、
TNFについての閾値レベルが7pg/mL、8pg/mL、9pg/mL、10pg/mL、15pg/mL、20pg/mLもしくは25pg/mL、または約7pg/mL、8pg/mL、9pg/mL、10pg/mL、15pg/mL、20pg/mLもしくは25pg/mLの値、または前記のいずれかの間の値であり、
IL-16についての閾値レベルが、400pg/mL、500pg/mL、600pg/mL、700pg/mL、800pg/mL、900pg/mLもしくは1000pg/mL、または約400pg/mL、500pg/mL、600pg/mL、700pg/mL、800pg/mL、900pg/mLもしくは1000pg/mLの値、または前記のいずれかの間の値である、
態様24~41のいずれか一つの方法。
43. TNFとIL-16の両方のレベル、量または濃度が評価され、
TNFについての閾値レベルが8または約8pg/mL~10または約10pg/mLの値であり、
IL-16についての閾値レベルが500または約500pg/mL~700または約700pg/mLの値である、
態様24~42のいずれか一つの方法。
44. 生物学的試料が、血液、血漿もしくは血清試料であるか、または血液、血漿もしくは血清試料から得られる、態様24~43のいずれか一つの方法。
45. 評価する工程が、
(a)生物学的試料を、TNFおよび/またはIL-16を検出することができるかまたはTNFおよび/もしくはIL-16に特異的である1つまたは複数の試薬と接触させる工程を含み、任意で、1つまたは複数の試薬が、TNFおよび/またはIL-16を特異的に認識する抗体を含む工程;および
(b)前記1つまたは複数の試薬とTNFおよび/またはIL-16とを含む複合体の有無を検出する工程
を含む、態様24~44のいずれか一つの方法。
46. 評価する工程がイムノアッセイを含む、態様24~45のいずれか一つの方法。
47. 作用物質または他の処置が、抗IL-6抗体、抗IL-6R抗体もしくはステロイドであるか、または抗IL-6抗体、抗IL-6R抗体もしくはステロイドを含む、態様2~19および態様26~46のいずれか一つの方法。
48. 作用物質が、トシリズマブ、シルツキシマブもしくはデキサメタゾンであるか、またはトシリズマブ、シルツキシマブもしくはデキサメタゾンを含む、態様2~19および態様26~47のいずれか一つの方法。
49. 神経毒性が重度の神経毒性である、態様1~48のいずれか一つの方法。
50. 神経毒性がグレード3以上の神経毒性である、態様1~49のいずれか一つの方法。
51. 以下の工程を含む、細胞療法の奏効の見込みを評価する方法:
生物学的試料中の血管内皮増殖因子C(VEGFC)および/または血管内皮増殖因子受容体1(VEGFR1)のレベル、量または濃度を評価する工程であって、生物学的試料は、細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象に由来し、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、生物学的試料が、細胞療法を投与する前に、対象から得られる、工程;ならびに
試料中のVEGFCおよび/またはVEGFR1のレベル、量または濃度を閾値レベルと個別に比較する工程であって、
(1)VEGFCおよび/もしくはVEGFR1のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル未満であるなら、対象を、細胞療法に対する奏効を達成する見込みが高いと同定し、または
(2)VEGFCおよび/もしくはVEGFR1のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、細胞療法に対する奏効を達成する見込みが低いと同定する、
工程。
52. 以下の工程を含む、細胞療法による処置のために対象を選択する方法:
生物学的試料中の血管内皮増殖因子C(VEGFC)および/または血管内皮増殖因子受容体1(VEGFR1)のレベル、量または濃度を評価する工程であって、生物学的試料は、細胞療法による処置の候補である慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象に由来し、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、生物学的試料が、細胞療法を投与する前に、対象から得られる、工程;ならびに
試料中のVEGFCおよび/またはVEGFR1のレベル、量または濃度をそれぞれについての閾値レベルと個別に比較することによって対象が細胞療法に対する奏効を達成する見込みを決定した結果に基づいて処置が奏効する可能性が高い対象を選択する工程であって、
(1)VEGFCおよび/もしくはVEGFR1のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル未満であるなら、対象を、細胞療法に対する奏効を達成する見込みが高いと同定し、または
(2)VEGFCおよび/もしくはVEGFR1のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、細胞療法に対する奏効を達成する見込みが低いと同定する、
工程。
53. 処置のために選択された対象に細胞療法を投与する工程をさらに含む、態様51または態様52の方法。
54. 以下の工程を含む、処置のための方法:
(a)生物学的試料中の血管内皮増殖因子C(VEGFC)および/または血管内皮増殖因子受容体1(VEGFR1)のレベル、量または濃度をそれぞれについての閾値レベルと個別に比較することによって対象が細胞療法に対する奏効を達成する見込みを決定した結果に基づいて処置が奏効する可能性が高い対象を選択する工程であって、
(1)VEGFCおよび/もしくはVEGFR1のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル未満であるなら、対象を、細胞療法に対する奏効を達成する見込みが高いと同定し、または
(2)VEGFCおよび/もしくはVEGFR1のレベル、量もしくは濃度がそれぞれの閾値レベル以上であるなら、対象を、細胞療法に対する奏効を達成する見込みが低いと同定し、
ここで、生物学的試料は、細胞療法による処置の候補であるCLLまたはSLLを有する対象に由来し、細胞療法は、分化抗原群19(CD19)に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含む操作された細胞のある用量を含み、生物学的試料が、細胞療法を投与する前に対象から得られ、および/または対象はCARを発現するT細胞を含まない、工程;ならびに
(b)処置のために選択された対象に細胞療法を投与する工程。
55. 閾値レベルは、細胞療法を受ける前に対象の群から得られた生物学的試料中のVEGFCおよび/またはVEGFR1の中央または平均のレベル、量もしくは濃度の、またはその前後の、またはそれを上回って、25%以内、20%以内、15%以内、10%以内または5%以内であり、および/または1標準偏差以内であり、該群の対象のそれぞれは、CLLまたはSLLを処置するためのCARを発現する操作された細胞のある用量の投与後に奏効を達成し;
閾値レベルは、細胞療法を受ける前に対象の群から得られた生物学的試料中のVEGFCおよび/またはVEGFR1の中央または平均のレベル、量または濃度よりも、1.25倍以上高いか、1.3倍以上高いか、1.4倍以上高いか、または1.5倍以上高く、該群の対象のそれぞれは、CLLまたはSLLを処置するためのCARを発現する操作された細胞のある用量の投与後に奏効を達成し;
閾値レベルは、細胞療法による処置の候補ではない正常または健常対象の群から得られた生物学的試料中のVEGFCおよび/またはVEGFR1のレベル、量または濃度よりも、1.25倍以上高いか、1.3倍以上高いか、1.4倍以上高いか、または1.5倍以上高い、
態様51~54のいずれか一つの方法。
56. VEGFCについての閾値レベルが60または約60pg/mL~70または約70pg/mLの値である、態様51~55のいずれか一つの方法。
57. VEGFR1についての閾値レベルが80または約80pg/mL~120または約120pg/mLの値である、態様51~56のいずれか一つの方法。
58. VEGFCとVEGFR1の両方のレベル、量または濃度が評価され、
VEGFCについての閾値レベルが60または約60pg/mL~70または約70pg/mLの値であり、
VEGFR1についての閾値レベルが80または約80pg/mL~120または約120pg/mLの値である、
態様51~57のいずれか一つの方法。
59. 生物学的試料が、血液、血漿もしくは血清試料であるか、または血液、血漿もしくは血清試料から得られる、態様51~58のいずれか一つの方法。
60. 評価する工程が、
(a)生物学的試料を、VEGFCおよび/もしくはVEGFR1を検出することができるかまたはVEGFCおよび/もしくはVEGFR1に特異的である1つまたは複数の試薬と接触させる工程であって、任意で、1つまたは複数の試薬が、VEGFCおよび/またはVEGFR1を特異的に認識する抗体を含む、工程;ならびに
(b)前記1つまたは複数の試薬とVEGFCおよび/またはVEGFR1とを含む複合体の有無を検出する工程
を含む、態様51~59のいずれか一つの方法。
61. 評価する工程がイムノアッセイを含む、態様51~60のいずれか一つの方法。
62. 奏効が客観的奏効を含む、態様51~61のいずれか一つの方法。
63. 客観的奏効が、完全奏効(CR;場合により、完全奏効としても知られる)、血球数回復が不完全な完全寛解(CRi)、完全寛解(CR)、骨髄回復が不完全なCR(CRi)、結節性部分寛解PR(nPR)、部分寛解(PR)を含む、態様62の方法。
64. 奏効が、細胞療法の投与開始の1、2もしくは3ヶ月後または約1、2もしくは3ヶ月後またはそれ以上後に評価される奏効である、態様51~63のいずれか一つの方法。
65. 奏効が、細胞療法の投与開始の3または約3ヶ月後に評価される、態様51~64のいずれか一つの方法。
66. 細胞療法の投与前に対象にリンパ球枯渇療法を投与する工程をさらに含む、態様1~65のいずれか一つの方法。
67. 対象がリンパ球枯渇療法によりプレコンディショニングされている、態様1~66のいずれか一つの方法。
68. リンパ球枯渇療法がフルダラビンおよび/またはシクロホスファミドの投与を含む、態様66または態様67の方法。
69. リンパ球枯渇療法が、両端の値を含む約200~400mg/m2、任意で300もしくは約300mg/m2のシクロホスファミド、および/または約20~40mg/m2、任意で30mg/m2のフルダラビンの、2~4日間、任意で3日間にわたる毎日の投与を含む、態様66~68のいずれか一つの方法。
70. リンパ球枯渇療法が、300または約300mg/m2のシクロホスファミドおよび約30mg/m2のフルダラビンの、3日間にわたる毎日の投与を含み、任意で、細胞の当該用量は、リンパ球枯渇療法の少なくとも2~7日後もしくは少なくとも約2~7日後またはリンパ球枯渇療法開始の少なくとも2~7日後もしくは少なくとも約2~7日後に投与される、態様66~69のいずれか一つの方法。
71. 対象にブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤(BTKi)を投与する工程をさらに含む、態様1~70のいずれか一つの方法。
72. BTKiがイブルチニブである、態様71の方法。
73. BTKi投与が細胞療法の投与開始前に開始される、態様71または態様72の方法。
74. BTKi投与が細胞療法の投与開始後まで継続される、態様73の方法。
75. BTKi投与が、細胞療法の投与開始後、少なくとも90日または少なくとも約90日にわたって継続される、態様73または態様74の方法。
76. イブルチニブが1日あたり140または約140mg~840または約840mgの用量で投与される、態様72~75のいずれか一つの方法。
77. イブルチニブが1日あたり280または約280mg~560または約560mgの用量で投与される、態様72~76のいずれか一つの方法。
78. イブルチニブが1日あたり420または約420mgの用量で投与される、態様72~77のいずれか一つの方法。
79. 疾患または病態が再発性または難治性(r/r)CLLである、態様1~78のいずれか一つの方法。
80. 疾患または病態が再発性または難治性(r/r)SLLである、態様1~79のいずれか一つの方法。
81. 操作された細胞の前記用量が、CAR発現CD4細胞 対 CAR発現CD8細胞の所定の比を含み、任意で、該比はおよそ1:3~およそ3:1である、態様1~80のいずれか一つの方法。
82. 操作された細胞の前記用量が、1:1またはおよそ1:1である、CAR発現CD4細胞 対 CAR発現CD8細胞の所定の比を含む、態様1~81のいずれか一つの方法。
83. 操作された細胞の前記用量が、2.5×107または約2.5×107個の総CAR発現細胞~1.0×108または約1.0×108個の総CAR発現細胞を含む、態様1~82のいずれか一つの方法。
84. 操作された細胞の前記用量が、2.5×107または約2.5×107個の総CAR発現細胞を含む、態様1~83のいずれか一つの方法。
85. 操作された細胞の前記用量が、5×107または約5×107個の総細胞または総CAR発現細胞を含む、態様1~83のいずれか一つの方法。
86. 操作された細胞の前記用量が、1×108または約1×108個の総細胞または総CAR発現細胞を含む、態様1~83のいずれか一つの方法。
87. 細胞療法の投与が、複数の別個の組成物を投与することを含み、ここで、複数の別個の組成物は、CD4T細胞およびCD8T細胞のうちの一方を含む第1組成物、ならびにCD4T細胞およびCD8T細胞のうちの他方を含む第2組成物を含む、態様1~86のいずれか一つの方法。
88. 第1組成物がCD8T細胞を含み、第2組成物がCD4T細胞を含む、態様1~87のいずれか一つの方法。
89. 第1組成物の投与の開始が、第2組成物の投与の開始前に実行され、任意で、48時間を超える間隔をあけずに実行される、態様88の方法。
90. CD4T細胞に含まれるCARおよび/もしくはCD8T細胞に含まれるCARが同じCARを含み、ならびに/またはCD4T細胞および/もしくはCD8T細胞が同じCARを発現するように遺伝子操作される、態様81~89のいずれか一つの方法。
91. 対象が、細胞療法の投与前に、CAR発現細胞の別の用量およびリンパ球枯渇療法の他に、CLLまたはSLLのための1つまたは複数の前治療で、任意で少なくとも2つの前治療で、処置されている、態様1~90のいずれか一つの方法。
92. 対象が、細胞療法の投与前に、2つ以上の前治療による処置後の寛解に続いて再発しており、2つ以上の前治療による処置に対して抵抗性になっており、2つ以上の前治療による処置に失敗しており、および/または2つ以上の前治療による処置に対して不耐容である、態様1~91のいずれか一つの方法。
93. 1つまたは複数の前治療が、キナーゼ阻害剤、任意でブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤、任意でイブルチニブ;ベネトクラクス;フルダラビンとリツキシマブを含む併用治療;放射線治療;および造血幹細胞移植(HSCT)から選択される、態様91または態様92の方法。
94. 1つまたは複数の前治療がブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤および/またはベネトクラクスを含む、態様91~93のいずれか一つの方法。
95. 1つまたは複数の前治療がイブルチニブおよびベネトクラクスを含む、態様91~94のいずれか一つの方法。
96. 対象が、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤および/もしくはベネトクラクスによる処置後の寛解に続いて再発しており、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤および/もしくはベネトクラクスによる処置に対して抵抗性になっており、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤および/もしくはベネトクラクスによる処置に失敗しており、ならびに/またはブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤および/もしくはベネトクラクスに対して不耐容である、態様91~94のいずれか一つの方法。
97. 対象が、イブルチニブおよびベネトクラクスによる処置後の寛解に続いて再発しており、イブルチニブおよびベネトクラクスによる処置に対して抵抗性になっており、イブルチニブおよびベネトクラクスによる処置に失敗しており、ならびに/またはイブルチニブおよびベネトクラクスに対して不耐容である、態様91~96のいずれか一つの方法。
98. 操作された細胞が、対象から得られた初代T細胞である、態様1~97のいずれか一つの方法。
99. 操作された細胞が、対象にとって自己由来である、態様1~98のいずれか一つの方法。
100. CARが、CD19に特異的な細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、共刺激分子(任意で4-1BB)由来の細胞質シグナル伝達ドメインと、一次シグナル伝達ITAM含有分子(任意でCD3ゼータ)由来の細胞質シグナル伝達ドメインとを含み、
CARが、順に、CD19に特異的な細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、共刺激分子由来の細胞質シグナル伝達ドメインと、一次シグナル伝達ITAM含有分子由来の細胞質シグナル伝達ドメインとを含む、
態様1~99のいずれか一つの方法。
101. 抗原結合ドメインがscFvである、態様100の方法。
102. scFvが、RASQDISKYLN(SEQ ID NO:35)のCDRL1配列、SRLHSGV(SEQ ID NO:36)のCDRL2配列、および/もしくはGNTLPYTFG(SEQ ID NO:37)のCDRL3配列、ならびに/またはDYGVS(SEQ ID NO:38)のCDRH1配列、VIWGSETTYYNSALKS(SEQ ID NO:39)のCDRH2配列、および/もしくはYAMDYWG(SEQ ID NO:40)のCDRH3配列を含み;
scFvが、FMC63の可変重鎖領域およびFMC63の可変軽鎖領域、ならびに/またはFMC63のCDRL1配列、FMC63のCDRL2配列、FMC63のCDRL3配列、FMC63のCDRH1配列、FMC63のCDRH2配列およびFMC63のCDRH3配列を含むか、または前記のいずれかと同じエピトープに結合するか、または前記のいずれかと結合に関して競合し;
scFvが、SEQ ID NO:41に示すVHおよびSEQ ID NO:42に示すVLを含み、任意で、該VHと該VLとはフレキシブルリンカーで隔てられ、任意で、該フレキシブルリンカーはSEQ ID NO:24に示す配列であるか、もしくはSEQ ID NO:24に示す配列を含み;および/または
scFvがSEQ ID NO:43に示す配列であるか、もしくはSEQ ID NO:43に示す配列を含む、
態様101の方法。
103.共刺激シグナル伝達領域がCD28または4-1BBのシグナル伝達ドメインである、態様100~102のいずれか一つの方法。
104. 共刺激シグナル伝達領域が4-1BBのシグナル伝達ドメインである、態様100~103のいずれか一つの方法。
105. 共刺激ドメインが、SEQ ID NO:12、またはそれに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有するそのバリアントを含む、態様100~104のいずれか一つの方法。
106. 一次シグナル伝達ドメインがCD3ゼータシグナル伝達ドメインである、態様100~105のいずれか一つの方法。
107. 一次シグナル伝達ドメインが、それに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するSEQ ID NO:13または14または15を含む、態様100~106のいずれか一つの方法。
108. CARが膜貫通ドメインとscFvの間にスペーサーをさらに含む、態様100~107のいずれか一つの方法。
109.スペーサーが、免疫グロブリンヒンジまたはその改変バージョンの、任意でIgG4ヒンジまたはその改変バージョンの、全部もしくは一部を含むかまたは全部もしくは一部からなる、態様108の方法。
110. スペーサーが約15アミノ酸以下であり、CD28細胞外領域もCD8細胞外領域も含まない、態様108または態様109の方法。
111. スペーサーが12または約12アミノ酸長である、態様108~110のいずれか一つの方法。
112. スペーサーが、SEQ ID NO:1の配列、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:34によってコードされる配列、またはそれに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有する前記いずれかのバリアントを有するかまたはそれからなり、および/あるいは
式X1PPX2Pを含むかまたはそれからなり、式中、X1はグリシン、システインまたはアルギニンであり、X2はシステインまたはスレオニンである、
態様108~111のいずれか一つの方法。
113. scFvが、RASQDISKYLN(SEQ ID NO:35)のアミノ酸配列、SRLHSGV(SEQ ID NO:36)のアミノ酸配列、および/もしくはGNTLPYTFG(SEQ ID NO:37)のアミノ酸配列、ならびに/またはDYGVS(SEQ ID NO:38)のアミノ酸配列、VIWGSETTYYNSALKS(SEQ ID NO:39)のアミノ酸配列、および/もしくはYAMDYWG(SEQ ID NO:40)のアミノ酸配列を含むか、あるいはscFvが、FMC63の可変重鎖領域およびFMC63の可変軽鎖領域ならびに/もしくはFMC63のCDRL1配列、FMC63のCDRL2配列、FMC63のCDRL3配列、FMC63のCDRH1配列、FMC63のCDRH2配列、およびFMC63のCDRH3配列を含むか、または前記のいずれかと同じエピトープに結合するか、または前記のいずれかと結合に関して競合し、かつ任意で、scFvは、順に、VHと、任意でSEQ ID NO:24を含む、リンカーと、VLとを含み、ならびに/またはscFvが、フレキシブルリンカーを含み、および/もしくはSEQ ID NO:43に示すアミノ酸配列を含み;および/または
スペーサーが、
(a)免疫グロブリンヒンジもしくはその改変バージョンの全部もしくは一部を含むかもしくはそれからなり、または約15個以下のアミノ酸を含み、CD28細胞外領域もCD8細胞外領域も含まず、(b)免疫グロブリンヒンジの、任意でIgG4ヒンジの、もしくはその改変バージョンの、全部もしくは一部を含むかもしくはそれからなり、および/または約15個以下のアミノ酸を含み、CD28細胞外領域もCD8細胞外領域も含まず、あるいは(c)12もしくは約12アミノ酸長であり、および/または免疫グロブリンヒンジの、任意でIgG4の、もしくはその改変バージョンの、全部もしくは一部分を含むかもしくはそれからなり、あるいは(d)SEQ ID NO:1の配列、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:34によってコードされる配列、またはそれに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有する前記いずれかのバリアントを有するかまたはそれからなり、あるいは(e)式X1PPX2Pを含むかまたはそれからなり、ここで、X1はグリシン、システインまたはアルギニンであり、X2はシステインまたはスレオニンである、ポリペプチドスペーサー
であり;および/または
共刺激ドメインが、SEQ ID NO:12、またはそれに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有するそのバリアントを含み;および/または
一次シグナル伝達ドメインが、それに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するSEQ ID NO:13、14または15を含む、
態様100~112のいずれか一つの方法。
114. 抗原結合ドメインが、FMC63の可変重鎖領域およびFMC63の可変軽鎖領域を含むscFvを含み;
スペーサーがSEQ ID NO:1の配列を含むポリペプチドスペーサーであり;
共刺激ドメインがSEQ ID NO:12を含み;
一次シグナル伝達ドメインがSEQ ID NO:13、14または15を含む、
態様100~113のいずれか一つの方法。
115. 対象がヒト対象である、態様1~114のいずれか一つの方法。
116. 評価する工程が、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、イムノブロッティング、免疫沈降、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫染色、フローサイトメトリーアッセイ、表面プラズモン共鳴(SPR)、ケミルミネセンスアッセイ、ラテラルフローイムノアッセイ、阻害アッセイまたはアビディティアッセイを含む、態様51~115のいずれか一つの方法。
117. 評価する工程が、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、任意でビーズベースのELISAを含む、態様51~116のいずれか一つの方法。
118. 1つまたは複数の疾患負荷量パラメータの値が、対象にリンパ球枯渇療法を投与する前の前記1つまたは複数の疾患負荷量パラメータの値である、態様1~23および態様65~117のいずれか一つの方法。
119. 1つまたは複数の疾患負荷量パラメータが、対象へのリンパ球枯渇療法の投与の前に評価される、態様1~23および態様65~118のいずれか一つの方法。
120. 生物学的試料が、対象へのリンパ球枯渇療法の投与の前に対象から得られる、態様24~117のいずれか一つの方法。
121. 態様1~120のいずれか一つの方法に従って慢性リンパ芽球性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する対象を処置する方法において使用するための、CD19に結合するCARを発現するT細胞を含む細胞療法。
122. CD19に結合するCARを発現するT細胞を含む、細胞療法のための組成物、または細胞療法のための複数の組成物のうちの1つと、態様1~120のいずれか一つの方法に従ってT細胞組成物を投与することを指定する、細胞療法を投与するための説明書とを含む、製造物品。
【0711】
IX. 定義
別段の定義のない限り、本明細書において用いられる全ての専門用語、表記、ならびに他の技術および科学用語または術語は、特許請求の範囲に記載の対象が属する技術分野における当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有することを意図する。場合によっては、通常理解される意味を有する用語が、本明細書において、明確化および/または即時参照のために定義され、本明細書でのそのような定義の包含は必ずしも、当技術分野において一般に理解されるものとの実質的な相違を意味すると解釈されるべきではない。
【0712】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指すために同義に用いられ、最小の長さに限定されない。提供される受容体を含むポリペプチドと、他のポリペプチド、例えば、リンカーまたはペプチドは、天然アミノ酸残基および/または非天然アミノ酸残基を含むアミノ酸残基を含んでもよい。これらの用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、シアリル化、アセチル化、およびリン酸化も含む。一部の局面では、ポリペプチドは、タンパク質が望ましい活性を維持する限り、自然または天然の配列に対して改変を含有してもよい。これらの改変は、部位特異的変異誘発を介した改変のように意図的なものでもよく、タンパク質を産生する宿主の変異またはPCR増幅によるエラーを介した改変のように偶発的なものでもよい。
【0713】
本明細書で使用する、「対象」とは、哺乳動物、例えば、ヒトまたは他の動物であり、典型的にはヒトである。一部の態様では、前記の薬剤、細胞、細胞集団、または組成物が投与される対象、例えば、患者は哺乳動物、典型的には霊長類、例えば、ヒトである。一部の態様では、霊長類はサルまたは類人猿である。対象は男性または女性でもよく、乳児、年少者、青年、成人、および老人の対象を含む任意の適切な年齢でよい。一部の態様では、対象は非霊長類哺乳動物、例えば、げっ歯類である。
【0714】
本明細書で使用する「処置(treatment)」(およびその文法上の語尾変化、例えば、「処置する(treat)」または「処置する(treating)」)とは、疾患もしくは状態もしくは障害、あるいはこれらに関連する症状、副作用もしくはアウトカム、または表現型の完全または部分的な回復または低減を指す。処置の望ましい効果には、疾患の発生または再発の阻止、症状の緩和、疾患のあらゆる直接的または間接的な病理学的結果の減少、転移の阻止、疾患進行速度の減少、疾患状態の回復または軽減、および寛解または予後の改善が含まれるが、これに限定されない。これらの用語は、疾患の完治、あるいはあらゆる症状、または全ての症状もしくはアウトカムに及ぼす影響の完全な除去を意味しない。
【0715】
本明細書で使用する「疾患の発症を遅らせる」とは、疾患(例えば、がん)の発症を延ばす、邪魔する、遅くする、減速する、安定化する、抑制する、および/または延期することを意味する。この遅れは、病歴および/または処置されている個体に応じて様々な長さの時間になることがある。一部の態様では、十分な、または大きな遅れは、実際には、個体が疾患を発症しない点では予防を含む。例えば、転移の発症などの末期がんを遅らせることができる。
【0716】
本明細書で使用する「予防する」は、疾患の素因がある可能性があるが、まだ疾患と診断されていない対象において、疾患の発生または再発に関する予防を提供することを含む。一部の態様では、提供される細胞および組成物は、疾患の発症を遅らせるのに、または疾患の進行を遅くするのに用いられる。
【0717】
本明細書で使用する、機能または活性を「抑制する」ということは、関心対象の条件もしくはパラメータ以外は同じ条件と比較した時に、または別の条件と比較した時に機能または活性を低減することである。例えば、腫瘍成長を抑制する細胞は、前記細胞の非存在下での腫瘍成長の速度と比較して腫瘍成長の速度を低減する。
【0718】
投与の文脈において、薬剤、例えば、薬学的製剤、細胞、または組成物の「有効量」とは、望ましい結果、例えば、治療結果または予防結果を成し遂げるのに、必要な投与量/量で、かつ期間にわたって、有効な量を指す。
【0719】
薬剤、例えば、薬学的製剤または細胞の「治療的有効量」とは、望ましい治療結果、例えば、疾患、状態、もしくは障害を処置するための望ましい治療結果、および/または処置の薬物動態学的効果もしくは薬力学的効果を成し遂げるのに、必要な投与量で、かつ期間にわたって、有効な量を指す。治療的有効量は、対象の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに投与される細胞集団などの要因に応じて変化する場合がある。一部の態様では、提供される方法は、有効量、例えば、治療的有効量の前記細胞および/または組成物を投与する段階を伴う。
【0720】
「予防的有効量」とは、望ましい予防結果を成し遂げるのに、必要な投与量で、かつ期間にわたって、有効な量を指す。典型的には、疾患の前に、または疾患の初期段階に対象において予防用量が用いられるので予防的有効量は治療的有効量より少ないが、必ず治療的有効量より少ないとは限らない。少ない腫瘍負荷量の状況では、予防的有効量は一部の局面では治療的有効量より多い。
【0721】
本明細書で使用する用語「約」は、この技術分野の当業者に容易に分かる、それぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」のついた値またはパラメータについての言及は、その値またはパラメータそのものに向けられた態様を含む(およびその態様について説明している)。
【0722】
本明細書で使用する単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、特に文脈によってはっきり示されていない限り複数の指示物を含む。例えば、「1つの(a)」または「1つの(an)」は「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」を意味する。
【0723】
本開示全体を通じて、クレームされた対象の様々な局面が範囲の形で示される。範囲の形での説明は単なる便宜および簡略のためであり、クレームされた対象の範囲に対する融通の利かない限定として解釈してはならないと理解されるはずである。従って、範囲の説明は、可能性のある全ての部分範囲ならびにその範囲内にある個々の数値を具体的に開示したとみなされるはずである。例えば、値の範囲が示された場合、その範囲の上限と下限との間の、間にあるそれぞれの値と、その述べられた範囲内にある他の任意の述べられた値または間にある値が、クレームされた対象に包含されると理解される。これらのさらに小さな範囲の上限および下限は、独立して、その小さな範囲に含まれてもよく、その述べられた範囲内にある、明確に除外されるあらゆる限界を条件としてクレームされた対象に包含される。述べられた範囲が限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれかまたは両方を除外する範囲もまた、クレームされた対象に含まれる。このことは範囲の幅に関係なく適用される。
【0724】
本明細書で使用する組成物とは、細胞を含む、2種類以上の産物、物質、または化合物の任意の混合物を指す。組成物は、溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水性、非水性、またはその任意の組み合わせでもよい。
【0725】
本明細書で使用する「濃縮する」とは、1つまたは複数の特定の細胞タイプまたは細胞集団について言及している時には、細胞タイプまたは集団の数またはパーセントを、例えば、組成物中にある、もしくは組成物の体積中にある細胞の総数と比較して、または他の細胞タイプと比べて増やすこと、例えば、前記集団もしくは細胞によって発現されたマーカーに基づく正の選択によって、または枯渇させようとする、前記細胞集団または細胞に存在しないマーカーに基づく負の選択によって増やすことを指す。この用語は、組成物から他の細胞、細胞タイプ、または集団を完全に除去することを必要とせず、このように濃縮された細胞が、濃縮された組成物中に100%もしくは100%近くで存在することを必要としない。
【0726】
本明細書で使用する、細胞または細胞集団が特定のマーカーについて「陽性」であるという記載は、特定のマーカー、典型的には表面マーカーが細胞の表面に、または細胞の中に検出可能に存在することを指す。表面マーカーを指している場合、この用語は、フローサイトメトリーによって、例えば、マーカーに特異的に結合する抗体で染色し、この抗体を検出することによって検出される時に表面発現が存在することを指す。ここで、染色は、フローサイトメトリーによって、他の点では同一の条件下で、アイソタイプが一致する対照またはFMO(Fluorescence minus one)ゲーティング対照を用いた同じ手順を行って検出される染色をかなり上回るレベルで、および/またはマーカーが陽性であることが分かっている細胞のレベルと実質的に類似するレベルで、および/またはマーカーが陰性であることが分かっている細胞のレベルよりかなり高いレベルで検出することができる。
【0727】
本明細書で使用する、細胞または細胞集団が特定のマーカーについて「陰性」であるという記載は、特定のマーカー、典型的には表面マーカーが細胞の表面に、または細胞の中に実質的に検出可能に存在することが無いことを指す。表面マーカーを指している場合、この用語は、フローサイトメトリーによって、例えば、マーカーに特異的に結合する抗体で染色し、この抗体を検出することによって検出される時に表面発現が存在しないことを指す。ここで、染色は、フローサイトメトリーによって、他の点では同一の条件下で、アイソタイプが一致する対照またはFMO(Fluorescence minus one)ゲーティング対照を用いた同じ手順を行って検出される染色をかなり上回るレベルで、および/またはマーカーが陽性であることが分かっている細胞のレベルよりかなり低いレベルで、および/またはマーカーが陰性であることが分かっている細胞のレベルと比較して実質的に類似するレベルで検出されない。
【0728】
本明細書で使用する用語「ベクター」は、連結されている別の核酸を増やすことができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造であるベクター、ならびにベクターが導入されている宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターを含む。ある特定のベクターは、機能的に連結されている核酸の発現を起こすことができる。このようなベクターは本明細書において「発現ベクター」と呼ばれる。
【0729】
別途定義されない限り、本明細書において用いられるすべての専門用語、表記法、ならびに他の技術用語および科学用語または用語法は、請求項に記載された主題が属する、一般的に理解されているのと同じ意味を有することが意図される。場合によっては、明瞭さのためおよび/または迅速な参照のために、一般的に理解されている意味を有する用語が、本明細書において定義され、本明細書にこのような定義が含まれることは、必ずしも、一般に理解されているものを超える実質的な違いを表すと解釈されるべきではない。
【0730】
本願において参照される、特許文書、科学文献、およびデータベースを含むすべての刊行物は、各個々の刊行物が参照により個々に組み入れられるのと同じ程度に、すべての目的でその全体が参照により組み入れられる。本明細書において示される定義が、参照により本明細書に組み入れられる特許、出願、公開された出願、および他の刊行物において示される定義に反するか、または別のように一致しない場合は、本明細書において示される定義が、参照により本明細書に組み入れられる定義よりも優先される。
【0731】
本明細書において用いられるセクションの見出しは、系統化だけを目的とし、記載される主題を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例
【0732】
X. 実施例
以下の実施例は、例証の目的だけで含まれ、本発明の範囲を限定するようには意図されない。
【0733】
実施例1:
再発性および抵抗性の慢性リンパ性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有する被験者への抗CD19 CAR発現細胞の投与
CD19に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現する自己由来T細胞を含む治療用CAR+ T細胞組成物を、慢性リンパ性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)を有するヒト被験者に投与した。
【0734】
被験者は18歳以上であり、CLLまたはSLLの診断を有した。CLL診断は、International Workshop on Chronic Lymphocytic Leukemia(iwCLL)ガイドラインおよび臨床的測定可能疾患(> 30%リンパ球による骨髄浸潤、末梢血リンパ球増加>5×109/L、ならびに/または測定可能なリンパ節 および/または肝臓もしくは脾腫)に基づく処置の適応によるものであった。SLL診断は、少なくとも1つの> 1.5 cmの最大横径の病変として定義される測定可能疾患による診断時にリンパ節腫脹および/または脾腫、ならびに末梢血における< 5×109 CD19+ CD5+クローンBリンパ球/L [< 5000/μL]、ならびに生検診断でのSLLに基づいた。
【0735】
被験者は、過去にブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤(BTKi、例えばイブルチニブ)の投与を受けた後に処置に失敗しているか(これは、最良効果としての安定(SD)または進行(PD)、事前の奏効後のPD、または不耐容(例えば管理不能な毒性)による中断で決定される)、または最大用量の抗凝固の必要もしくは不整脈歴ゆえに、BTKiによる処置には不適格であった。より具体的には、被験者は、高リスク疾患(複合染色体異常(例えば複合核型)、del(17p)、TP53変異、未変異IGVHによって決定されるもの)を有し、(例えば少なくとも)2以上の前治療(医学的に禁忌でない限り、BTKi、例えばイブルチニブによる処置を含む)が失敗に終わっているなら、または標準リスク疾患を有し、(例えば少なくとも)3以上の前治療(医学的に禁忌でない限り、BTKi、例えばイブルチニブによる処置を含む)が失敗に終わっており、米国東海岸がん臨床試験グループ全身状態(Eastern Cooperative Oncology Group performance status:ECOG PS)が1以下であるなら、適格とした。活動性未処置CNS疾患、ECOG>1、またはリヒタートランスフォーメーションを持つ被験者は除外した。
【0736】
A. 処置
適格被験者に、抗CD19 CARを発現する操作された細胞を含有する治療T細胞組成物を投与した。投与された治療T細胞組成物は、処置される個々の被験者からの白血球アフェレーシス試料から、イムノアフィニティに基づく(例えば免疫磁気選択法による)CD4+およびCD8+細胞の濃縮を含むプロセスによって作製された。単離されたCD4+およびCD8+T細胞を個別に活性化し、抗CD19 CARをコードするウイルスベクター(例えばレンチウイルスベクター)で別々に形質導入した後、個別に拡大増殖させて、操作された細胞集団を小さな体積で凍結保存した。CARは、マウス抗体由来の抗CD19 scFv(FMC63由来の可変領域、VL-リンカー-VH配置)、免疫グロブリン由来のスペーサー、CD28由来の膜貫通ドメイン、4-1BB由来の共刺激領域、およびCD3-ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインを含有した。ウイルスベクターは、CAR発現の代用マーカーとして役立つ切断型受容体をコードする配列をさらに含有した。これは、T2Aリボソームスキップ配列によってCAR配列から分離される。
【0737】
凍結保存された細胞組成物を静脈内投与前に融解した。治療T細胞用量を、およそ1:1の標的比で投与される製剤化CD4+CAR+細胞集団と製剤化CD8+CAR+集団とを投与することにより、所定の細胞組成物として投与した。
【0738】
被験者には、CAR発現T細胞を、以下のように単回投与した(それぞれCD4+CAR発現T細胞とCD8+CAR発現T細胞の個別の注入による各単回の投与):5×107個の総CAR発現T細胞を含有する用量レベル1(DL-1)の単回投与、または1×108個の総CAR発現T細胞を含有する用量レベル2(DL-2)の単回投与。必要と判断した場合は、用量レベルを2.5×107個のCAR+T細胞に減らした。用量漸増は、修正毒性反応確率区間(modified toxicity probability-interval)2(mTIPI-2)アルゴリズムに従った(Guo et al.(2017)Contemp Clin Trials,2017;58:23-33)。用量制限毒性(DLT)を投与後28日にわたって評価した。
【0739】
CAR+T細胞注入に先立って、被験者は、フルダラビン(flu、30mg/m2)およびシクロホスファミド(Cy、300mg/m2)によるリンパ球枯渇化学治療を、3日間受けた。被験者はリンパ球枯渇後にCAR発現T細胞を投与された。
【0740】
B. 奏効の評価
被験者を、CAR+T細胞投与後のさまざまな時点で、処置の奏効についてモニタリングした。奏効は、初回有効性評価を30日目に実行した点以外は、iwCLL基準(2008年基準:Hallek et al.Blood 2008;111(12):5446-5456;2018年基準Hallek et al.,Blood 2018 131(25):2745-2760)によって評価した。奏効は、iwCLLガイドラインに基づいて、完全寛解(CR)、骨髄回復が不完全なCR(CRi)、結節性部分寛解(nPR)、部分奏効(PR)、安定(SD)、または進行(PD)として評価した。nPRおよびPRは、少なくとも8週後の反復評価で確認された。イベントスケジュールに示すように、ベースライン時およびCAR発現T細胞による処置後に、予備的に、PETでも疾患を評価した。
【0741】
奏効評価は、処置後30日、2ヶ月(血液学的検査のみ)、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月および24ヶ月(+14日)の時点、またはPD、臨床的進行の証拠、試験の中止、または代替治療の必要となるまで行った。被験者はCAR+T細胞の投与後24ヶ月まで奏効についてモニタリングした。有効性評価には、血液学的検査(鑑別を伴うCBC血液像)、CT(診断品質)、PET、骨髄穿刺液(BMA)/骨髄生検(BMB)(ベースライン時および30日目の評価時、その後は、他の結果が新たにCRと合致した場合、および末梢血にも骨髄にもCLLの証拠はなかったが、残存するリンパ節腫脹または脾腫に基づいてPRであった被験者においてのみ)、微小残存病変(MRD;末梢血にも骨髄にもCLLの証拠がない被験者、すなわち残存するリンパ節腫脹または脾腫に基づいてCRまたはPRである被験者において)の評価を、適宜、含めた。
【0742】
微小残存病変(MRD)は、6色フローサイトメトリーにより、末梢血を使って、1×10-4の感度で評価した。また、フロー(flow)では検出できなかった被験者については、骨髄(BM)穿刺液のclonoSEQ(登録商標)(Adaptive)ディープシーケンシングによる次世代シーケンシング(NGS)を使って、骨髄において、1×10-6の感度で評価した。
【0743】
この実施例で提示する特定時点における分析は、上述の臨床試験に関する適格性に応じて抗CD19 CAR発現細胞(5×107個の総CAR発現T細胞を含有する用量レベル1(DL-1)の単回投与(n=6)または1×108個の総CAR発現T細胞を含有する用量レベル2(DL-2)の単回投与(n=10))を投与された合計23人の被験者に基づく。2人の被験者(9%)はイブルチニブに不耐容であった。処置された被験者のベースライン特性を表E1に示す。1人の被験者については抗CD19治療T細胞組成物の製造が不成功に終わった。中央試験経過観察期間は9ヶ月で、最短の経過観察期間は1ヶ月だった。
【0744】
(表E1)ベースライン特性
a 巨大腫瘤病変は少なくとも1つの病変最大径が>5cmと定義される。
b 少なくとも3つの染色体異常。
c 12人の被験者はベネトクラクスで進行し、1人の被験者は3ヶ月の処置後に安定が最良効果だった。
【0745】
奏効率を図1A~1Bおよび図2に示す。22人の被験者が、処置前評価および少なくとも1回のベースライン後評価ありとの定義で、奏効について評価可能だった。1人の被験者は奏効について評価可能でなかった。最良総合効果を図1Aに示す。図1Aに示すとおり、評価可能被験者の総数のうち、4.5%は進行を示し、13.6%は安定を示し、36.4%は部分奏効または結節性部分奏効を示し、45.5%は完全奏効または血球数回復が不完全な完全奏効を示した。DL1(5×107個のCAR発現T細胞)を投与された9人の評価可能被験者のうち、22.2%は安定を示し、11.1%は部分奏効または結節性部分奏効を示し、66.7%は完全奏効または血球数回復が不完全な完全奏効を示した。DL2(1×108個のCAR発現T細胞)を投与された13人の被験者のうち、7.7%は進行を示し、7.7%は安定を示し、53.8%は部分奏効または結節性部分奏効を示し、30.8%は完全奏効または血球数回復が不完全な完全奏効を示した。最良総合効果率(ORR)は82%(95%信頼区間:59.7~94.8)であり、CR/CRi率は46%(MRDが評価不能な1人の被験者はCRを達成したが、後に進行した)。評価時点で、被験者のうちの68パーセント(15/22)が、注入後30日目に、客観的奏効を達成した。注入後経過観察期間が9ヶ月超であるレスポンダーのうちの78%(7/9)が、無増悪のままだった。
【0746】
20人の被験者は、ベースライン時に検出可能な微小残存病変を有するとの定義で、微小残存病変について評価可能だった(図1B)。図1Bに示すとおり、検出不能な微小残存病変(uMRD)が、被験者の75%の末梢血および65%の骨髄で達成された(血液/BMにおいてuMRDを達成した1人の被験者は後に検出可能なMRDを示した)。DL1(5×107個のCAR発現T細胞)を投与された8人の被験者では、75%の末梢血および骨髄において、uMRDが達成された。DL2(1×108個のCAR発現T細胞)を投与された12人の被験者では、75%の末梢血および58%の骨髄において、uMRDが達成された。
【0747】
無増悪期間による奏効期間は経時的に改善し続けた(図2)。22人の被験者のうち、27%(6/22)が30日目を過ぎて奏効の深化を示した。すなわち、部分奏効(PR)を呈した3人の被験者は後にCRを達成し、2人の被験者は安定(SD)からPRになり、1人の被験者はSDからCRになった。6ヶ月時点でCRであった6人の被験者のうち5人(83%)はCRに留まり、そのうちの3人は12ヶ月を過ぎても完全奏効を維持した。
【0748】
20人の評価可能被験者のうちの12人(60%)は30日目に次世代シーケンシングでMRDが検出不能だった。被験者の60%に見られた初期uMRDは、12ヶ月時およびそれ以降の評価時点において、継続中だった。
【0749】
C. 安全性の評価
有害事象(AE)、重篤有害事象(SAE)および検査異常(タイプ、頻度および重症度)を収集した。特に注目すべき有害事象(adverse events of special interest:AESI)には、輸注反応、サイトカイン放出症候群(cytokine release syndrome:CRS)、神経学的毒性、マクロファージ活性化症候群(macrophage activation syndrome:MAS)および腫瘍溶解症候群(tumor lysis syndrome:TLS)を含めた。
【0750】
CAR-T細胞療法の投与後に、治療下で発現した有害事象(treatment-emergent adverse event:TEAE)の有無を評価した。アメリカ国立がん研究所共通毒性基準(National Cancer Institute-Common Toxicity Criteria:CTCAE)スケール、バージョン4.03(NCI-CTCAE v4.03)に従い、1~5のスケールで段階分けされる神経毒性(NT;錯乱、失語症、脳症、ミオクローヌス発作、痙攣、嗜眠および/または変容した精神状態を含む神経学的合併症;神経学的事象(NE)ともいう)について、被験者を評価し、モニタリングした。有害事象の共通用語基準(Common Terminology for Adverse Events:CTCAE)バージョン4、米国保険社会福祉省、2009年5月28日発行(v4.03:2010年6月14日)およびGuido Cavaletti&Paola Marmiroli Nature Reviews Neurology 6,657-666(December 2010)を参照されたい。サイトカイン放出症候群(CRS)を決定、モニタリングし、重症度に基づいて段階分けした。Lee et al,Blood.2014;124(2):188-95参照。用量制限毒性(dose-limiting toxicity:DLT)は、CAR発現T細胞の注入後28日以内に決定した。
【0751】
TEAEはすべての用量レベルにおいて≧25%で報告された(表E2)。評価の一時点において、グレード3またはグレード4の貧血が被験者の96%に観察された。一部の被験者で重篤なTEAEが起こった(表E3)。表E4に、サイトカイン放出症候群(CRS)および神経学的事象(NE)を含む特定の有害事象の発生を報告する。グレード5のCRSまたはNEは起こらなかった。神経学的事象は相互排他的ではなかった。脳症は3人の被験者に見られた。失語症、混乱状態、筋力低下および傾眠はそれぞれ1人の被験者に見られた。DL2(1×108個のCAR発現T細胞)を投与された2人の被験者で、用量制限毒性が発生した。1人の被験者はグレード4の高血圧を経験し、一方、1人の被験者はグレード3の脳症、グレード3の筋力低下およびグレード4の腫瘍溶解症候群を経験した。グレード5の呼吸不全である1例のTEAEがDL1(5×107個のCAR発現T細胞)を投与された被験者に観察された。CRSおよび/またはNEの管理のために、被験者の61%(n=14)にトシリズマブが投与され、48%(n=11)にコルチコステロイドが投与された。有害事象はどちらの用量レベルでも管理可能であり、グレード3のCRSの率(8.7%)とグレード3またはグレード4のNEの率(21.7%)は低かった。グレード1~2のCRSの比率の方が高いことは、この被験者群での抗CD19 CAR+T細胞組成物の良好な安全性プロファイルと合致する。リンパ節腫瘍負荷量はNEと相関することが示された(P=0.025)。
【0752】
(表E2)TEAEの有無の評価
【0753】
(表E3)>1人の被験者で報告された重篤なTEAE
【0754】
(表E4)特に注目すべきTEAE
a NEは処置関連事象である。
b NEは相互排他的でない。
【0755】
D. 薬物動態および薬力学
細胞の投与後さまざまな時点(例えば1、4、8、11、15、22、30日目、2ヶ月目および3ヶ月目)において、末梢血中のCD3+CAR+T細胞濃度を評価するために、フローサイトメトリーを使って抗CD19 CAR発現T細胞の血中薬物動態を決定した。各時点におけるCD19+発現細胞の濃度も評価した。
【0756】
結果を図3に示す。この場合、抗CD19 CAR+T細胞は第1試験日に与えられた。図3では、上側のエラーバーは第3四分位数を表し、下側のエラーバーは第1四分位数を表す。血液における細胞の最大濃度(Cmax)、最大(ピーク)濃度に達するまでの時間(Tmax)および0日目から29日目までの曲線下面積(AUC0~29)を含むPK/PDパラメータの要約を表E5に示す。
【0757】
(表E5)薬物動態(PK)および薬力学(PD)プロファイル
Q、四分位数。
【0758】
E. BTKiおよびベネトクラクスによる前処置に失敗した被験者における奏効、安全性および薬物動態の評価
全23人の被験者のうち、ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤(BTKi)とベネトクラクスとの両方による前処置に失敗した被験者9人の群における奏効、安全性および薬物動態を、異なる分析時点で評価した。表E6は、上述のように評価した23人の被験者のベースライン特性と、BTKiとベネトクラクスが不成功に終わった被験者のベースライン特性とを示している。
【0759】
(表E6)ベースライン特性
a 巨大腫瘤病変は、最大径が>5cmである≧1個の病変と定義される。b ≧3個の染色体異常。c ベネトクラクス不成功は、≧3ヶ月の治療後にPDまたは<PRによる中断と定義される。LDH、乳酸デヒドロゲナーゼ;SPD、直交径の積の和(sum of the product of perpendicular diameters)。
1 .Soumerai JD et al.Lancet Haematol.2019;6(7):e366-e374。
【0760】
表E7は、23人の全被験者またはBTKiとベネトクラクスの両方が不成功であった9人の被験者における、治療下で発現した有害事象(TEAE)を示している。DL2の操作された細胞を与えられた2人の被験者で用量制限毒性(DLT)が観察された。すなわち、1人の被験者がグレード4の高血圧を呈し、BTKiおよびベネトクラクス不成功群の被験者1人が、グレード3の脳症、グレード3の筋力低下およびグレード4の腫瘍溶解症候群を呈した。
【0761】
(表E7)安全性プロファイル
【0762】
表E8は、23人の全被験者またはBTKiとベネトクラクスの両方が不成功であった9人の被験者における、特に注目すべき治療下で発現した有害事象(TEAE)を示している。
【0763】
(表E8)特に注目すべきTEAE
a 用量レベル間でTEAEプロファイルの相違はなかった。b NEは、研究者によって定義される処置関連事象である。c NEは相互排他的でない;脳症(n=3);失語症(n=1);錯乱状態(n=1);筋力低下(n=1);傾眠(n=1)。
【0764】
図4Aおよび図4Bは、最良総合効果(図4A)、およびフローサイトメトリーによる血中の、または次世代シーケンシング(NGS)による骨髄中の、検出不能な微小残存病変(uMRD)を表している(図4B)。中央試験経過観察期間は11ヶ月だった。図示するとおり、CRを含む高い比率の持続的奏効が観察され、最良ORRは全評価可能被験者では81.5%、BTKiとベネトクラクスが不成功に終わった被験者では89%と高かった。
【0765】
図5は、BTKiとベネトクラクスの両方が不成功であった処置被験者および他の評価可能被験者の、個々の奏効評価を示している。これらの結果は、BTKiとベネトクラクスの両方が不成功であった6人の被験者(67%)を含めて、大半の被験者が、30日目までの早期客観的奏効(68%;n=15/22)およびuMRD(75%;n=15/20)を達成することを示した。これらの結果は、被験者全体の27%(n=6/22)およびBTKiとベネトクラクスの両方が不成功であった被験者のうちの33%(n=3/9)において、奏効が経時的に深化することを示した。これらの結果は、全被験者の87%(n=13/15)およびBTKiとベネトクラクスの両方が不成功であった被験者の83%(n=5/6)大半の被験者では、投与後6ヶ月時点において持続的奏効が維持されることも示した。6ヶ月時点でCRだった被験者の83%(n=5/6)は9ヶ月時点でもCRに留まり、そのうちの3人の被験者は12ヶ月を過ぎてもCRだった。BTKiとベネトクラクスの両方が不成功であった2人の被験者は12ヶ月を過ぎても奏効を維持した。
【0766】
抗CD19 CAR+T細胞投与後の経時的な被験者からのCD3+CAR+細胞およびCD19+細胞の中央濃度を図6に示す。これらの結果は、BTKiとベネトクラクスの両方が不成功であった被験者のサブセットが、全被験者集団と類似するPK/PDプロファイルを有することを示した。この分析の時点で、全被験者(n=23)では、中央(Q1、Q3)CD3+細胞Cmax(細胞/μL)は124.81(3.25、326.47)であり、Tmax(試験日)は14(14、21)であり、AUC1~29(日・細胞/μL)は1108.35(26.19、2329.97)であった。被験者はCD19発現細胞の迅速な排除と、6ヶ月時点でのCD19発現細胞の長期抑制を呈した(6ヶ月時点で被験者の80%(12/15)がCAR T細胞を維持しており、87%(13/15)がCD19発現細胞の抑制を呈した)。
【0767】
F. 結論
これらの結果から、臨床試験では、多くの前治療歴を有する再発性/難治性CLL/SLLを持つ被験者(例えば、イブルチニブによる前治療を受けた被験者、およびベネトクラクスとイブルチニブとの両方による前治療に失敗した被験者を含む)について、抗CD19 CAR発現T細胞注入に続いて、客観的奏効、完全奏効およびuMRDが迅速に達成され、6ヶ月を過ぎても持続的奏効が観察されることが実証された。多くの前治療歴を有する高リスクCLL/SLL被験者であって、その全員でイブルチニブによる前治療に失敗し、過半数がベネトクラクスによる前処置も不成功であった被験者への、抗CD19 CAR発現細胞の投与は、管理可能な毒性と良好な臨床的奏効をもたらした。抗CD19 CAR発現T細胞投与と関連する有害事象は、サイトカイン放出症候群(CRS)および神経学的事象(NE)を含めて、試験したどちらの用量レベルでも、BTKiとベネトクラクスの両方が不成功であった被験者のサブセットを含めて、管理可能であることが観察された。グレード3のCRSの率(9%)およびグレード3またはグレード4のNEの率(22%)は低いことが観察された。
【0768】
11ヶ月の中央経過観察期間において、抗CD19 CAR発現細胞の投与は、前BTKiおよびベネトクラクスがどちらも不成功に終わった被験者の場合を含めて、CRを含む高い比率の持続的奏効をもたらした。臨床的奏効は、迅速であり、経時的に改善されることが観察され、深く、しかも持続的であった。例えば、評価した被験者の27%ならびに前BTKiおよびベネトクラクスがどちらも不成功に終わった被験者の33%において、最初の奏効は大部分が30日目までに達成され、奏効は経時的に深化した。持続的な客観的奏効は投与の6ヶ月後も維持された(評価された被験者の87%、前BTKiおよびベネトクラクスがどちらも不成功に終わった被験者の83%)。6ヶ月時点でCRだった被験者の83%は9ヶ月時点でもCRに留まり、そのうちの3人の被験者は12ヶ月を過ぎてもCRだった。大半の被験者が、循環抗CD19 CAR T細胞の存続を伴う、CD19発現細胞の迅速な排除と長期疾患抑制を示した。前BTKiおよびベネトクラクスがどちらも不成功であった被験者は、全被験者集団と類似するPK/PDプロファイルを呈した。これらの結果は、高リスクCLL/SLLを持つ被験者ならびに前BTKi治療およびベネトクラクスなどの複数の前治療に失敗した被験者を含め、CLL/SLLを持つ被験者について、抗CD19 CAR+細胞の投与を支持している。
【0769】
実施例2: 血清中分析物、腫瘍負荷量および神経学的事象(NE)の評価
上記実施例1で述べたように処置された被験者において、抗CD19 CAR発現細胞の投与前および投与後に血清中分析物および腫瘍負荷量を評価した。腫瘍負荷量レベルまたは血清中分析物レベルと神経学的事象(NE;神経毒性、NTまたはNTxともいう)の発生率および重症度との間の関連を、事後に決定した。
【0770】
A. 腫瘍負荷量
実施例1に記載の被験者へのリンパ球枯渇化学治療およびCAR+T細胞の投与に先立って、リンパ節中(最大観測リンパ節径(cm)または二方向積和(SPD;cm2)によって測定されるもの)および血中(リンパ球数(1000個/μL)によって測定されるもの)の腫瘍負荷量を測定した。
【0771】
図7Aに示すように、低い血液腫瘍負荷量(p=0.018)および最大観測リンパ節径による測定で高いリンパ節腫瘍負荷量(p=0.043)が、グレード1以上の神経学的事象(Y=Gr1~5)と関連することが観察された。図7Bに示すように、SPDによる測定で高いリンパ節腫瘍負荷量(p=0.025)は、グレード1以上の神経学的事象(Gr1~4;グレード5の事象は観察されなかった)と関連することが観察された。図7Cに示すように、グレード1以上の神経学的事象を持つ被験者(白い正方形および黒い菱形)は一般に、低い血液腫瘍負荷量および高いリンパ節腫瘍負荷量を有し、重篤な(グレード3以上;黒い菱形)神経学的事象を持つ被験者は5人中5人が低い血液腫瘍負荷量を呈した(図7Cの枠で囲んだ領域。図7Dに示すように、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比は、グレード1以上の神経学的事象を持つ被験者(任意のNT、Y=Gr1~5)では、有意に低い(p=0.005)ことが観察された。グレード1以上の神経毒性を持つ被験者14人のうち、13人がリンパ節腫脹を示した。これらの結果は、治療CAR+T細胞組成物の候補でありおよび/またはそれを投与された被験者における神経学的事象のリスクと関連するパラメータとして、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の比を測定することを支持している。
【0772】
B. 血清中分析物
腫瘍壊死因子(TNF)およびインターロイキン16(IL-16)を含む分析物のレベルを、実施例1で述べた被験者において評価した。分析物は、CAR+T細胞の投与前と、投与から最初の30日以内の数時点において、測定した。
【0773】
図8は、神経学的事象を呈さなかった被験者の群(Ntx Gr=0)またはグレード1以上の神経学的事象を呈した被験者の群(Ntx Gr>0)における、処置前(PT;CAR+T細胞投与前)およびCAR+T細胞投与後30日以内のさまざまな時点におけるTNFおよびIL-16の幾何平均(±SEM)濃度を表す。これらの結果は、グレード1以上の神経学的事象を生じることになる被験者の群では、処置前および注入後早い時点において、被験者の血中のTNFレベルとIL-16レベルが高いことを示した。
【0774】
図9Aに示すとおり、初期段階(例えば投与後2日目)のIL-16レベル(p=0.0001)とTNFレベル(p=0.0028)は、グレード1以上の神経学的事象と有意に関連した。
【0775】
図9Bに示すように、血中のIL-16レベル(p=0.0135)とTNFレベル(p=0.0032)は、二方向積和(SPD;cm2)によって測定されるリンパ節腫瘍負荷量と直接的に関連することも観察された。任意のグレードのNE(白い正方形および黒い菱形)を持つすべての被験者(9/9)が、15を上回るSPD値を有した。図9Cに示すとおり、抗CD19 CAR T細胞の注入後2日目における血中のIL-16レベル(p=0.0209)とTNFレベル(p=0.0091)は、最大観測リンパ節径(cm)によって測定されるリンパ節腫瘍負荷量と直接関連することも観察された。これらの結果は、IL-16レベルとTNFレベルがリンパ節腫瘍負荷量と直接相関することを示した。
【0776】
全体として、これらの結果は、大きなリンパ節腫瘍負荷量および上昇したIL-16またはTNFのレベルが、神経学的事象と関連することを示した。さらに、これらの結果は、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の高い比が神経学的事象と関連しないのに対し、リンパ節腫瘍負荷量に対する血液腫瘍負荷量の低い比は神経学的事象と関連することを示唆している。これらの結果は、治療CAR+T細胞組成物の候補でありおよび/またはそれを投与された被験者における神経学的事象のリスクと関連するパラメータとして、リンパ節腫瘍負荷量、血液腫瘍負荷量、処置前および初期段階のIL-16レベルおよび/またはTNFレベルを測定することの有用性を裏付けている。
【0777】
実施例3: バイオマーカーおよび奏効の評価
実施例1記載の被験者から抗CD19-CAR発現細胞を投与する直前に得られた試料中の血管内皮増殖因子C(VEGFC)および血管内皮増殖因子受容体1(VEGFR1)のレベルを決定し、VEGFCおよびVEGFR1のレベルと被験者におけるCAR+T細胞投与の奏効との間の関連を、事後に調べた。
【0778】
図10A~10Bに示すように、被験者からCAR+T細胞投与の直前に得られた試料中の血管内皮増殖因子C(VEGFC;図10A)と血管内皮増殖因子受容体1(VEGFR1;図10B)のレベルは、3ヶ月時点の奏効と関連することが観察された。具体的に述べると、処置前のVEGFCレベルとVEGFR1レベルは、3ヶ月時点でのレスポンダー(M3 R;投与後3ヶ月時点でCR、CRi、PRまたはnPRを達成した被験者)では、3ヶ月時点でのノンレスポンダー(M3 NR;投与の3ヶ月後またはそれ以前にSDまたはPDを呈した被験者)と比較して低かった。
【0779】
これらの結果は、治療CAR+T細胞組成物の候補である被験者における奏効と関連するパラメータとしてVEGFCおよびVEGFR1を評価することの有用性と合致した。
【0780】
実施例4: 薬物動態および奏効
実施例1記載の被験者および同じ試験からのさらなる被験者において、投与された抗CD19 CAR発現細胞の薬物動態を評価した。投与後の経時的な血中CD3 CAR+T細胞濃度は、実施例1.Dに概説したように、フローサイトメトリーによって評価した。血中のCAR+T細胞のレベルと奏効との間の関連を決定した。
【0781】
図11Aは、3ヶ月時点でのレスポンダー(M3 R;投与後3ヶ月時点でCR、CRi、PRまたはnPRを達成した被験者)において注入後1日目から3ヶ月目まで評価したCD3+CAR+T細胞の薬物動態プロファイルを、3ヶ月時点でのノンレスポンダー(M3 NR;投与後3ヶ月時点またはそれ以前にSDまたはPDを呈した被験者)と比較して示している。図示するように、3ヶ月目に奏効を達成した被験者は、3ヶ月目のノンレスポンダーと比比べて高いCD3+CAR+T細胞濃度を呈した。
【0782】
抗CD19 CAR発現T細胞を投与された被験者の群(n=48)におけるCAR+T細胞のレベルを、抗CD19 CAR発現T細胞をイブルチニブと併用投与された被験者のさらなるコホート(n=16)と比較した。イブルチニブとの併用治療のために、被験者はスクリーニング時にイブルチニブを投与され、イブルチニブの投与を受け続けているか、または以前にイブルチニブを中断した被験者の場合は、登録時にイブルチニブを毎日420mgの用量(または毒性を管理するために事前の用量低減が必要であれば、それ以下の用量)で開始した。イブルチニブの投与は、CAR+T細胞の注入後、最大90日まで継続するか、イブルチニブ併用処置の利益を呈した被験者についてはさらに長く継続した。分析の時点で、CAR+T細胞との併用治療としてイブルチニブを投与された被験者15人を評価した。図11Bは、CAR+T細胞だけが投与された被験者(「CAR T細胞のみ」)およびCAR+T細胞とイブルチニブとが併用投与された被験者(「CAR T細胞およびイブルチニブ」)について評価された、CD3 CAR+T細胞の薬物動態プロファイルを表す。これらの結果は、イブルチニブをCAR+T細胞と併用投与された被験者が、3ヶ月にわたって、CAR+T細胞だけを投与された被験者と比較して、高いCD3+CAR+T細胞濃度を一般に示すことを示した。
【0783】
実施例5: 骨髄および末梢血における微小残存病変(MRD)
実施例1に概説した被験者において、骨髄(BM)微小残存病変(MRD)をNGSベースのアッセイ(感度10-4)で、また末梢血(PB)MRDはフローサイトメトリー(感度10-4)で、それぞれ測定した。
【0784】
抗CD19 CAR+T細胞の投与後、30日目または3ヶ月時点で、BMまたはPBの評価によって決定されたMRD陽性(MRD+)またはMRD陰性(MRD-)被験者の数を表E9に示す。表E9および図12は、30日目および3ヶ月目に評価された被験者だけでなく、評価されたすべての被験者における、BM MRD状態とPB MRD状態との総一致数も示している。これらの結果は、BMまたはPBから決定されたMRD状態間の高い一致を示している。これらの時点および被験者での観察は、経時的に増加した一致度の増加と合致する。
【0785】
(表E9)骨髄(BM)と末梢血(PB)における微小残存病変(MRD)状態間の一致
【0786】
開示した特定態様は、例えば本発明のさまざまな局面を例示するなどの目的で提供されているのであって、本発明の範囲は、それらの特定態様に限定されるものではない。記載の組成物および方法のさまざまな変更態様は、本明細書における記載および教示から、明らかになるであろう。そのような変形は、本開示の真の範囲および要旨から逸脱することなく実施することができ、本発明の範囲に包含されるものとする。
【0787】
開示した特定態様は、例えば本発明のさまざまな局面を例示するなどの目的で提供されているのであって、本発明の範囲は、それらの特定態様に限定されるものではない。記載の組成物および方法のさまざまな変更態様は、本明細書における記載および教示から、明らかになるであろう。そのような変形は、本開示の真の範囲および要旨から逸脱することなく実施することができ、本発明の範囲に包含されるものとする。
【0788】
配列
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B
図12
【配列表】
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