(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】直接添加マイクロカプセルを含有する可撓性多孔質溶解性固体シート物品及びそれを作製するための方法
(51)【国際特許分類】
C11D 17/06 20060101AFI20241217BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20241217BHJP
C11D 3/50 20060101ALI20241217BHJP
C11D 3/48 20060101ALI20241217BHJP
C11D 3/386 20060101ALI20241217BHJP
C11D 3/395 20060101ALI20241217BHJP
C11D 3/40 20060101ALI20241217BHJP
C11D 3/42 20060101ALI20241217BHJP
C11D 1/94 20060101ALI20241217BHJP
C11D 1/62 20060101ALI20241217BHJP
C11D 1/44 20060101ALI20241217BHJP
C11D 1/22 20060101ALI20241217BHJP
C11D 1/29 20060101ALI20241217BHJP
C11D 1/14 20060101ALI20241217BHJP
C11D 1/72 20060101ALI20241217BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20241217BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C11D17/06
C11D3/37
C11D3/50
C11D3/48
C11D3/386
C11D3/395
C11D3/40
C11D3/42
C11D1/94
C11D1/62
C11D1/44
C11D1/22
C11D1/29
C11D1/14
C11D1/72
C11D3/20
B32B5/18
(21)【出願番号】P 2022536544
(86)(22)【出願日】2021-04-16
(86)【国際出願番号】 CN2021087782
(87)【国際公開番号】W WO2022037093
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/109963
(32)【優先日】2020-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】シュ、ダン
(72)【発明者】
【氏名】マクナマラ、カール・デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ティアン、シャオ
(72)【発明者】
【氏名】タン、ホンシン
(72)【発明者】
【氏名】グレン、ロバート・ウェイン・ジュニア
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/147000(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/147211(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/014700(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体シート物品を調製するための方法であって、
a)水溶性ポリマー、界面活性剤、及びマイクロカプセルを含む湿潤プレミックスを提供する工程であって、前記湿潤プレミックスが、40℃及び1s-1で測定された1,000cps~25,000cpsの粘度を有し、前記マイクロカプセルの各々が、コア及び前記コアを少なくとも部分的に囲むシェルを含み、前記コアが、有益剤を含む、工程と、
b)前記湿潤プレミックスを通気して、0.05~0.5g/mLの密度を有する通気された湿潤プレミックスを形成する工程と、
c)前記通気された湿潤プレミックスをシートに形成する工程と、
d)前記形成されたシートを、70℃~200℃の温度で、1分~60分の乾燥時間にわたって乾燥させて、前記固体シート物品を形成する工程と、
を含み、
前記固体シート物品が、前記固体シート物品の総重量に基づいて、1%~20%のマイクロカプセルを含
み、
前記湿潤プレミックス中の前記界面活性剤が、ジエステル四級アンモニウム(DEQA)化合物、C
12
~C
22
モノ/ジ-アルキル四級アンモニウム化合物、C
12
~C
22
モノ-アルキルアミン化合物、約1~約20の重量平均エトキシル化度を有するC
8
~C
18
アルキルエトキシル化アルコール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオン性及び/又は非イオン性界面活性剤であり、前記マイクロカプセルの各々が、そのシェル上にカチオン性コーティングを更に含み、前記カチオン性コーティングが、ポリビニルホルムアミド、部分的にヒドロキシル化されたポリビニルホルムアミド、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、エトキシル化ポリエチレンイミン、カチオン変性多糖類、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオン性ポリマーから形成されるか、又は、
前記湿潤プレミックス中の前記界面活性剤が、C
6
~C
20
直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、0.5~10の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC
6
~C
20
直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシサルフェート(AAS)、C
6
~C
20
直鎖又は分岐鎖アルキルサルフェート(AS)、5~15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC
6
~C
20
直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシル化アルコール(AA)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるアニオン性及び/又は非イオン性界面活性剤であり、前記マイクロカプセルの各々の前記シェルが、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレン-無水マレイン酸)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるアニオン性ポリマーを含む、方法。
【請求項2】
前記マイクロカプセルの各々の前記コア中の前記有益剤が、香料、シリコーンオイル、ワックス、炭化水素、高級脂肪酸、エッセンシャルオイル、脂質、皮膚冷却剤、ビタミン、日焼け止め剤、酸化防止剤、グリセリン、触媒、漂白剤粒子、シリコーンジオキシド粒子、悪臭軽減剤、臭気制御材料、キレート剤、帯電防止剤、柔軟剤、昆虫及び蛾駆除剤、着色剤、増粘剤、ドレープ及びフォーム調整剤、平滑剤、しわ抑制剤、衛生化剤、消毒剤、細菌抑制剤、カビ抑制剤、白カビ抑制剤、抗ウィルス剤、乾燥剤、耐汚染剤、汚れ放出剤、布地リフレッシュ剤、洗いたて感維持剤、塩素漂白臭気抑制剤、染料固定剤、移染防止剤、色保持剤、蛍光増白剤、色復元/再生剤、抗退色剤、白色増強剤、抗磨耗剤、耐磨耗剤、布地一体化剤、摩耗防止剤、抑泡剤、消泡剤、紫外線保護剤、日褪せ阻害剤、抗アレルギー剤、酵素、防水剤、布地快適剤、耐収縮剤、耐伸剤、伸縮回復剤、スキンケア剤、天然活性物質、抗菌活性物質、制汗剤活性物質、カチオン性ポリマー、染料、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、前記マイクロカプセルの各々の前記コア中の前記有益剤が、香料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水溶性ポリマー、界面活性剤、及び複数のマイクロカプセルを含む、可撓性多孔質溶解性固体シート物品であって、前記固体シート物品が、対向する第1の平面表面及び第2の平面表面を有し、前記複数のマイクロカプセルの各々が、コア及び前記コアを少なくとも部分的に囲むシェルを含み、前記コアが、有益剤を含み、前記マイクロカプセルのうちの少なくとも1つが、前記対向する第1の平面表面と第2の平面表面との間に位置し、前記固体シート物品が、(i)80%~100%の連続気泡含有率、及び(ii)100μm~2000μmの全体平均孔径によって特徴付けられ、前記固体シート物品が、前記固体シート物品の総重量に基づいて、1%~20%のマイクロカプセルを含
み、
前記界面活性剤が、ジエステル四級アンモニウム(DEQA)化合物、C
12
~C
22
モノ/ジ-アルキル四級アンモニウム化合物、C
12
~C
22
モノ-アルキルアミン化合物、約1~約20の重量平均エトキシル化度を有するC
8
~C
18
アルキルエトキシル化アルコール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオン性及び/又は非イオン性界面活性剤であり、前記マイクロカプセルの各々が、そのシェル上にカチオン性コーティングを更に含み、前記カチオン性コーティングが、ポリビニルホルムアミド、部分的にヒドロキシル化されたポリビニルホルムアミド、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、エトキシル化ポリエチレンイミン、カチオン変性多糖類、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオン性ポリマーから形成されるか、又は、
前記界面活性剤が、C
6
~C
20
直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、0.5~10の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC
6
~C
20
直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシサルフェート(AAS)、C
6
~C
20
直鎖又は分岐鎖アルキルサルフェート(AS)、5~15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC
6
~C
20
直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシル化アルコール(AA)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるアニオン性及び/又は非イオン性界面活性剤であり、前記マイクロカプセルの各々の前記シェルが、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレン-無水マレイン酸)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるアニオン性ポリマーを含む、可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項4】
前記複数のマイクロカプセルの大部分が、前記固体シート物品の前記対向する第1の平面表面と第2の平面表面との間に位置している、請求項
3に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項5】
前記マイクロカプセルの各々の前記コア中の前記有益剤が、香料、シリコーンオイル、ワックス、炭化水素、高級脂肪酸、エッセンシャルオイル、脂質、皮膚冷却剤、ビタミン、日焼け止め剤、酸化防止剤、グリセリン、触媒、漂白剤粒子、シリコーンジオキシド粒子、悪臭軽減剤、臭気制御材料、キレート剤、帯電防止剤、柔軟剤、昆虫及び蛾駆除剤、着色剤、増粘剤、ドレープ及びフォーム調整剤、平滑剤、しわ抑制剤、衛生化剤、消毒剤、細菌抑制剤、カビ抑制剤、白カビ抑制剤、抗ウィルス剤、乾燥剤、耐汚染剤、汚れ放出剤、布地リフレッシュ剤、洗いたて感維持剤、塩素漂白臭気抑制剤、染料固定剤、移染防止剤、色保持剤、蛍光増白剤、色復元/再生剤、抗退色剤、白色増強剤、抗磨耗剤、耐磨耗剤、布地一体化剤、摩耗防止剤、抑泡剤、消泡剤、紫外線保護剤、日褪せ阻害剤、抗アレルギー剤、酵素、防水剤、布地快適剤、耐収縮剤、耐伸剤、伸縮回復剤、スキンケア剤、天然活性物質、抗菌活性物質、制汗剤活性物質、カチオン性ポリマー、染料、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、前記マイクロカプセルの各々の前記コア中の前記有益剤が、香料を含む、請求項
3又は
4に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項6】
・85%~99%、好ましくは90%~98%の連続気泡含有率、及び/又は
・150μm~1000μm、好ましくは200μm~600μmの全体平均孔径、及び/又は
・5μm~200μm、好ましくは10μm~100μm、より好ましくは10μm~80μmの平均気泡壁厚さ、及び/又は
・前記固体シート物品の重量に基づいて、0.5%~25%、好ましくは1%~20%、より好ましくは3%~10%の最終水分含有量、及び/又は
・0.5mm~4mm、好ましくは0.6mm~3.5mm、より好ましくは0.7mm~3mm、更により好ましくは0.8mm~2mm、最も好ましくは1mm~2mmの厚さ、及び/又は
・50グラム/m
2~500グラム/m
2、好ましくは150グラム/m
2~450グラム/m
2、より好ましくは250グラム/m
2~400グラム/m
2の坪量、及び/又は
・0.05グラム/cm
3~0.5グラム/cm
3、好ましくは0.06グラム/cm
3~0.4グラム/cm
3、より好ましくは0.07グラム/cm
3~0.2グラム/cm
3、最も好ましくは0.08グラム/cm
3~0.15グラム/cm
3の密度、及び/又は
・0.03m
2/g~0.25m
2/g、好ましくは0.04m
2/g~0.22m
2/g、より好ましくは0.05m
2/g~0.2m
2/g、最も好ましくは0.1m
2/g~0.18m
2/gの比表面積、によって特徴付けられる、請求項
3~
5のいずれか一項に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品。
【請求項7】
請求項
3~
6のいずれか一項に記載の可撓性多孔質溶解性固体シート物品の2つ以上の層を含む、多層構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有益剤を送達するための、直接添加マイクロカプセルを中に含有する可撓性多孔質溶解性固体物品と、それを作製するための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性ポリマーキャリア又はマトリックス中に界面活性剤及び/又は他の活性成分を含む可撓性及び溶解性シートは周知である。このようなシートは、水中での溶解時に界面活性剤及び/又は他の活性成分を送達するのに特に有用である。同じ製品カテゴリ内の従来の顆粒又は液体形態と比較して、そのようなシートは、より良好な構造的一体性を有し、より濃縮され、保管、輸送/運送、運搬、及び取り扱いがより容易である。同じ製品カテゴリ内の固体錠剤形態と比較して、そのようなシートは、より可撓性であり、脆性がより低く、消費者にとってより良好な感覚的魅力を有する。
【0003】
そのような可撓性及び溶解性シートを使用して、長期の洗いたて感維持(例えば、数日間続く香り)の利益又は他の感覚的若しくは機能的利益を消費者に送達することは、特に望ましい。長期の洗いたて感維持は、様々なメカニズムによって達成することができ、その中では、香料マイクロカプセル(perfume microcapsule、PMC)は、ますます一般的になっている。例えば、国際公開第2018/141096号は、そのようなシートが形成された後(そのようなシートを形成するために使用される元の出発材料中に当該破砕性マイクロカプセルを組み込む代わりに)可撓性及び溶解性シートにPMCを組み込むための方法を開示している。同様に、連続気泡発泡体(open-celled foam、OCF)構造を中に有する可撓性及び溶解性シートを形成して、その溶解を更に改善することを開示している国際公開第2011/014643号は、その実施例13及び14において、そのようなマイクロカプセルを含有するスラリーを既に形成された多孔質シート上に噴霧することによって、PMCを添加することを教示している。本質的に破砕性であるPMCは、シート形成プロセス中に適用される熱、圧力、及び/又は剪断力の下で破裂又は破損して、その中にカプセル化された香料を早期に放出し得ることが考えられた。したがって、国際公開第2018/1411096(A)号及び同第2011/014643号は、そのようなマイクロカプセルの構造的一体性を維持し、マイクロカプセルの早期の破裂/破損を最小限に抑えるのに役立ち得る、PMCのシート形成後の添加を開示している(すなわち、「後添加」PMC)。
【0004】
しかしながら、重度のゲル化問題が、特にそのようなシートがOCF構造を中に含有する場合、後添加PMCを含有する可撓性及び溶解性シートにおいて観察されている。いかなる理論にも束縛されるものではないが、PMCがスラリー形態(有意な量の水を含有している)で提供されるため、PMC含有スラリー中の過剰な水は、最初にスラリーと接触するシートの一部分を偶発的に溶解し、その結果、OCF構造の崩壊及び当該部分におけるゆっくり溶解するゲル層の形成をもたらすと考えられる。ゲル化問題は、そのような可撓性及び溶解性シートの複数の層が一緒に組み立てられて、1つの洗浄サイクル又は1つの洗浄必要性のために、必要とされる用量の界面活性剤/活性物質を送達するための多層構造を形成する場合に、更に悪化する可能性がある。結果として、そのような多層構造は、特に、ある特定のストリンジェントな洗浄条件(例えば、冷水又は非常に硬い水、又は低水洗条件)に曝露される場合には、完全には溶解しない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/141096号
【文献】国際公開第2011/014643号
【文献】国際公開第2018/1411096(A)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それに応じて、溶解プロファイルを改善し、かつPMC及び/又は他の活性物質含有マイクロカプセルと共にOCF構造を中に含有する可撓性及び溶解性シートのゲル化を減少させ、また、消費者に対する長期の洗いたて感維持の利益及び/又は他の感覚的/機能的利益の効果的な送達を可能にするニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の可撓性及び溶解性シートの溶解プロファイルを有意に改善することができ、またゲル化問題を効果的に低減することができ、その一方で、PMC及び/又は他の活性物質含有マイクロカプセル(すなわち、「直接添加」PMC又は他のマイクロカプセル)を含有するスラリーを、通気工程、シート形成工程、及び乾燥工程の前に、湿潤プレ混合物に直接添加して、可撓性及び溶解性シートを作製することによって、消費者に長期の洗いたて感維持の利益及び/又は他の感覚的/機能的利益を効果的に送達できることは、本開示の驚くべきかつ予想外の発見である。従来の知見とは異なり、本開示は、通気工程、シート形成工程、及び乾燥工程が、PMC及び/又は他の活性物質含有マイクロカプセルに対して有意な損傷を引き起こさないこと、また、そのような直接添加PMC及び/又は他の活性物質含有マイクロカプセルの大部分は、そのような処理工程を無傷で耐え、所望の長期の洗いたて感維持の利益及び/又は他の感覚的/機能的利益を送達できることを見出している。いかなる理論にも束縛されるものではないが、粘性湿潤プレミックス及び通気工程中に発生する気泡の組み合わせは、外部圧力又は力に対してPMC及び/又は他の活性物質含有マイクロカプセルを、懸濁させ、保護するように機能すると考えられる。更に、後続の乾燥工程は、PMC及び/又は他の活性物質含有マイクロカプセルを含有するスラリーによって導入された過剰な水を、十分に制御された温度で除去し、それによって、一方では、そのような水がOCF構造を溶解/損傷し、結果として生じる固体シート物品にゲル化の問題を引き起こすのを防ぎ、他方では、PMCを破裂/破損し得る過熱を回避する。
【0008】
一態様では、本開示は、固体シート物品を調製するための方法に関し、当該方法は、
a)水溶性ポリマー、界面活性剤及びマイクロカプセルを含む湿潤プレミックスを提供することであって、当該湿潤プレミックスは40℃及び1s-1で測定された1,000cps~25,000cpsの粘度を有し、当該マイクロカプセルの各々はコア及び当該コアを少なくとも部分的に囲むシェルを含み、当該コアは有益剤を含む、工程と、
b)当該湿潤プレミックスを通気して、0.05~0.5g/mLの密度を有する通気された湿潤プレミックスを形成する工程と、
c)当該通気された湿潤プレミックスをシートに形成する工程と、
d)当該形成されたシートを、70℃~200℃の温度で、1分~60分の乾燥時間にわたって乾燥させて、当該固体シート物品を形成する工程と、を含む。
【0009】
別の態様では、本開示は、水溶性ポリマー、界面活性剤、及び複数のマイクロカプセルを含む可撓性多孔質溶解性固体シート物品に関し、当該固体シート物品は、対向する第1の平面表面及び第2の平面表面を有し、当該複数のマイクロカプセルの各々は、コア及び当該コアを少なくとも部分的に囲むシェルを含み、当該コアは、有益剤を含み、当該マイクロカプセルのうちの少なくとも1つは、当該対向する第1の平面表面と第2の平面表面との間に位置し、当該固体シート物品は、(i)80%~100%の連続気泡含有パーセント、及び(ii)100μm~2000μmの全体平均孔径によって特徴付けられる。好ましくは、当該複数のマイクロカプセルの大部分は、固体シート物品の当該対向する第1の平面表面と第2の平面表面との間に位置する。
【0010】
別の態様では、本開示は、上記の可撓性多孔質溶解性固体シート物品の2つ以上の層を含む多層構造体に関する。
【0011】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下の詳細な説明を読むことにより、更に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本開示による例示的な可撓性多孔質溶解性固体シート物品の概略図である。
【
図2】本開示によるマイクロカプセルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
I.定義
本明細書で使用するとき、「可撓性」という用語は、物品が、その長手方向に垂直な中心線に沿って90°で曲げられた場合に、破損することなく、又は著しい破壊を伴わずに、応力に耐える物品の能力を意味する。好ましくは、このような物品は、顕著な弾性変形を受けることができ、5GPa以下、好ましくは1GPa以下、より好ましくは0.5GPa以下、最も好ましくは0.2GPa以下のヤング率によって特徴付けられる。
【0014】
本明細書で使用するとき、「溶解性」という用語は、20℃で、かつ大気圧下で、全く撹拌せずに8時間以内に、十分な量の脱イオン水中に完全に又は実質的に溶解して、不溶残留物の残留が5重量%未満である、物品の能力を指す。
【0015】
本明細書で使用するとき、「固体」という用語は、物品が制限されずかつ外力が物品に加えられていない場合に、20℃で、かつ大気圧下で、その形状を実質的に保持する(すなわち、その形状においていかなる可視変化もない)、物品の能力を指す。
【0016】
本明細書で使用するとき、「シート」という用語は、三次元形状、すなわち、厚さ、長さ、及び幅を有する非繊維状構造体を指すが、一方で、長さ対厚さのアスペクト比、及び幅対厚さのアスペクト比は、両方とも、少なくとも約5:1であり、長さ対幅の比は、少なくとも約1:1である。好ましくは、この長さ対厚さのアスペクト比、及びこの幅対厚さのアスペクト比は、両方とも、少なくとも約10:1、より好ましくは少なくとも約15:1、最も好ましくは少なくとも約20:1であり、またこの長さ対幅のアスペクト比は、好ましくは少なくとも約1.2:1、より好ましくは少なくとも約1.5:1、最も好ましくは少なくとも約1.618:1である。
【0017】
本明細書で使用するとき、「水溶性」という用語は、目に見える固体を残さずに、又は目に見える分離相を形成せずに、水に完全に溶解する又は分散する、サンプル材料の能力であって、20℃で、かつ大気圧下で、十分な撹拌を伴って、少なくとも約25グラム、好ましくは少なくとも約50グラム、より好ましくは少なくとも約100グラム、最も好ましくは少なくとも約200グラムのそのような材料を1リットル(1L)の脱イオン水中に入れた場合における、能力を指す。
【0018】
本明細書で使用するとき、「通気させる」、「通気させること」、又は「通気」という用語は、機械的及び/又は化学的手段によって液体又はペースト状組成物に気体を導入するプロセスを指す。
【0019】
本明細書で使用するとき、「連続気泡発泡体」又は「連続気泡細孔構造」という用語は、気体、典型的には気体(空気など)を含有し、乾燥プロセス中に発泡構造が崩壊せずに、それにより物理的強度及び固体の凝集性を維持する、空隙又は気泡のネットワークを画定する固体相互結合ポリマー含有マトリックスを指す。構造体の相互結合性は、以下に開示される試験3によって測定される連続気泡含有パーセントによって説明され得る。
【0020】
「本質的に含まない(essentially free of)」又は「本質的に含まない(essentially free from)」)という用語は、示される物質が極めて少量であり、組成物又は製品に意図的に添加されたものでなく、又は好ましくは、そのような組成物又は製品中に分析によって検出可能な濃度で存在しないことを意味する。示される物質がかかる組成物又は製品に意図的に添加された物質のうちの1つ以上の不純物としてのみ存在するような組成物又は製品が含まれ得る。
【0021】
本明細書で使用するとき、「底面」という用語は、通気された湿潤プレミックスのシートが乾燥工程中に配置される支持面に直に接触する、本開示の可撓性多孔質溶解性固体シートの表面を指し、一方、「上面」という用語は、底面とは反対側の当該シートの表面を指す。更に、このような固体シートは、その厚さに沿って、その上面に隣接する上部領域、その底面に隣接する底部領域、及び上部領域と底部領域との間に位置する中間領域を含む3つの領域に分割することができる。上部領域、中間領域、及び底部領域は、厚さが等しく、すなわち、各々が、シートの全厚の約1/3の厚さを有する。
【0022】
本明細書で使用するとき、「加熱方向」という用語は、熱源が物品に熱エネルギーを印加する方向であって、その結果、そのような物品の一方の側から他方の側へと減少する、そのような物品における温度勾配をもたらす方向を指す。例えば、物品の一方の側に位置する熱源が、物品に熱エネルギーを印加して、一方の側から反対側へと減少する温度勾配を発生させる場合、加熱方向は、その後、一方の側から反対側に延在するとみなされる。このような物品の両側又はこのような物品の異なる部分が、そのような物品にわたって観察可能な温度勾配を伴わずに同時に加熱され、その後、加熱は非方向的な様式で行われ、加熱方向は存在しない。
【0023】
本明細書で使用するとき、「実質的に反対側」又は「実質的にオフセットしている」という用語は、それらの間に90°以上のオフセット角度を有する2つの方向又は2本の線を指す。
【0024】
本明細書で使用するとき、「実質的に整列された」又は「実質的な整列」という用語は、それらの間に90°未満のオフセット角度を有する2つの方向又は2本の線を指す。
【0025】
本明細書で使用するとき、「一次熱源」という用語は、物体によって吸収される総熱エネルギー(例えば、本開示による通気された湿潤プレミックスのシート)の50%超、好ましくは60%超、より好ましくは70%超、最も好ましくは80%超を提供する熱源を指す。
【0026】
本明細書で使用するとき、「制御された表面温度」という用語は、比較的安定した、すなわち、+/-20%未満の変動、好ましくは+/-10%未満の変動、より好ましくは+/-5%未満の変動を有する表面温度を指す。
【0027】
II.固体シートの配合物
本開示の可撓性多孔質溶解性固体シート物品は、少なくとも水溶性ポリマー、界面活性剤、及び複数のマイクロカプセルを含む。それは、任意選択で、他の補助成分を含み得る。先行技術と比較して、後添加PMC又は他のマイクロカプセルは、それらが添加されるシート物品の一方又は両方の平面表面上にのみ留まり、本開示の直接添加PMC又は他のマイクロカプセルは、可撓性多孔質溶解性固体シート物品の内側、かつそのような固体シート物品の2つの対向する平面表面の間に位置する。
【0028】
これをより良く説明するために、
図1A及び
図1Bは、例示的な可撓性多孔質溶解性固体シート物品1の概略図及び断面図を示しており、対向する第1の平面表面2及び第2の平面表面4を有する。マイクロカプセル10の少なくとも1つは、水溶性ポリマー、界面活性剤、及び任意選択で他の補助成分(図示せず)によって形成されたマトリックス20において、当該対向する第1の表面2と第2の表面4との間に位置する。好ましくは、マイクロカプセル10の大部分、より好ましくは80%超、更により好ましくは90%超、最も好ましくは90%超が、対向する第1の表面2と第2の表面4との間に位置する。
【0029】
1.マイクロカプセル
複数のマイクロカプセルの各々は、コアと、当該コアを少なくとも部分的に囲むシェルとを含み得る。
図2に概略的に示したように、マイクロカプセル10は、コア30と、当該コア30を少なくとも部分的に囲むシェル20とを有し得る。コア30は、香料などの有益剤を含み得る。シェル20は、外表面25を有することができ、外表面は、コーティング40を有することができる。コーティングは、カチオン性、非イオン性又はアニオン性であり得る。これらの要素について下記により詳細に述べる。
【0030】
好ましくは、本開示の可撓性多孔質溶解性固体シート物品は、当該可撓性多孔質溶解性固体シート物品の総重量に基づいて、約0.1%、又は約0.2%、又は約0.5%、又は約1%、約50%、又は約40%、又は約30%、又は約20%の範囲の量で、当該複数のマイクロカプセルを含む。好ましくは、当該固体物品は、当該可撓性多孔質溶解性固体シート物品の総重量に基づいて、約0.1%~約50%、より好ましくは約0.2%~約40%、更により好ましくは約0.5%~約30%、最も好ましくは約1%~約20%のマイクロカプセルを含む。
【0031】
当該マイクロカプセルの各々のコアは、香料、シリコーンオイル、ワックス、炭化水素、高級脂肪酸、エッセンシャルオイル、脂質、皮膚冷却剤、ビタミン、日焼け止め剤、酸化防止剤、グリセリン、触媒、漂白剤粒子、シリコーンジオキシド粒子、悪臭軽減剤、臭気制御材料、キレート剤、帯電防止剤、柔軟剤、昆虫及び蛾駆除剤、着色剤、増粘剤、ドレープ及びフォーム調整剤、平滑剤、しわ抑制剤、衛生化剤、消毒剤、細菌抑制剤、カビ抑制剤、白カビ抑制剤、抗ウィルス剤、乾燥剤、耐汚染剤、汚れ放出剤、布地リフレッシュ剤、洗いたて感維持剤、塩素漂白臭気抑制剤、染料固定剤、移染防止剤、色保持剤、蛍光増白剤、色復元/再生剤、抗退色剤、白色増強剤、抗磨耗剤、耐磨耗剤、布地一体化剤、摩耗防止剤、抑泡剤、消泡剤、紫外線保護剤、日褪せ阻害剤、抗アレルギー剤、酵素、防水剤、布地快適剤、耐収縮剤、耐伸剤、伸縮回復剤、スキンケア剤、天然活性物質、抗菌活性物質、制汗剤活性物質、カチオン性ポリマー、染料、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる有益剤を含む。好ましくは、有益剤は、香料を含む。
【0032】
コアを少なくとも部分的に(好ましくは完全に)囲むシェルは、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリイソプレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、アミノプラスト、ポリビニルアミン、ポリビニルホルムアミド、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、多糖類(例えば、アルギネート及び/又はキトサン)、ゼラチン、シェラック、エポキシ樹脂、ビニルポリマー、水不溶性無機物(例えば、シリカ)、シリコーン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含み得る。これらの材料の中で、最も安定しているのは、尿素-ホルムアルデヒド及び/又はメラミン-ホルムアルデヒドを含むがこれらに限定されないポリオキシメチレン尿素(polyoxymethyleneurea、PMU)系材料である。
【0033】
一態様では、シェルは、ポリ尿素、ポリウレタン、及び/又はポリ尿素ウレタンからなる群から選択されるアミノプラストポリマーを含む。尿素好ましくは、シェルは、アミノプラストコポリマー、例えば、メラミン-ホルムアルデヒド、架橋メラミンホルムアルデヒド、尿素-ホルムアルデヒド、架橋尿素-ホルムアルデヒド、及びこれらの組み合わせを含む。より好ましくは、マイクロカプセルの各々のシェルは、メラミンホルムアルデヒド及び/又は架橋メラミンホルムアルデヒドを含む。
【0034】
本開示の好ましいが必要ではない態様では、シェルは、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレン-無水マレイン酸)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるアニオン性ポリマーを含む。より好ましくは、マイクロカプセルの各々のシェルは、ポリアクリレートを含む。
【0035】
任意選択で、マイクロカプセルの各々のシェルは、その上に形成された1つ以上のコーティングを有し得る。コーティングは、カチオン性、非イオン性、及び/又はアニオン性であることができ、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレン-無水マレイン酸)、ポリアミン、ワックス、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンコポリマー、ポリビニルピロリドン-エチルアクリレート、ポリビニルピロリドン-ビニルアクリレート、ポリビニルピロリドンメチルアクリレート、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリシロキサン、ポリ(プロピレン無水マレイン酸)、無水マレイン酸誘導体、無水マレイン酸誘導体のコポリマー、ポリビニルアルコール、スチレン-ブタジエンラテックス、ゼラチン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、他の変性セルロース、アルギン酸ナトリウム、キトサン、カゼイン、ペクチン、化工デンプン、ポリビニルメチルエーテル/無水マレイン酸、ポリ(ビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド)、ポリビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、及びポリビニルアミンのコポリマー、ポリビニルホルムアミド、並びにこれらの混合物からなる群から選択される材料を含むことができる。好ましくは、当該コーティングは、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレン-無水マレイン酸)、ポリアミン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン-エチルアクリレート、ポリビニルピロリドン-ビニルアクリレート、ポリビニルピロリドンメチルアクリレート、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリシロキサン、ポリ(プロピレン無水マレイン酸)、無水マレイン酸誘導体、無水マレイン酸誘導体のコポリマー、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルメチルエーテル/無水マレイン酸、ポリ(ビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド)、ポリビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリビニルアミン、ポリビニルホルムアミド、ポリアリルアミン、及びポリビニルアミンのコポリマー、ポリビニルホルムアミドのコポリマー、ポリアリルアミンのコポリマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択される材料を含む。最も好ましくは、当該コーティングは、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレン-無水マレイン酸)、ポリアミン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン-エチルアクリレート、ポリビニルピロリドン-ビニルアクリレート、ポリビニルピロリドンメチルアクリレート、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリシロキサン、ポリ(プロピレン無水マレイン酸)、無水マレイン酸誘導体、無水マレイン酸誘導体のコポリマー、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルメチルエーテル/無水マレイン酸、ポリビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリビニルアミン、ポリビニルホルムアミド、ポリアリルアミン、及びポリビニルアミンのコポリマー、ポリビニルホルムアミドのコポリマー、ポリアリルアミンのコポリマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択される材料を含む。
【0036】
本開示の好ましい実施形態では、マイクロカプセルの各々のシェルは、その上にカチオン性コーティングを有し、一方、当該カチオン性コーティングは、ポリビニルホルムアミド、部分的にヒドロキシル化されたポリビニルホルムアミド、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、エトキシル化ポリエチレンイミン、カチオン変性多糖類(例えば、カチオン変性デンプン、カチオン変性グアー、カチオン変性ヒドロキシルエチルセルロースなど)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオン性ポリマーによって形成される。
【0037】
別の例では、上述のマイクロカプセルの各々のシェルをコーティングするコーティングは、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを含む。
【0038】
本開示で使用されるマイクロカプセルは、好ましくは破砕性マイクロカプセルであり、すなわち、外圧又は剪断力を受けたときに破裂又は破損して開く傾向を有する。本明細書で言及されるような破砕性マイクロカプセルは、コアにカプセル化された有益剤を放出するための外部圧力又は力によって活性化され、そのため、シクロデキストリンによって殆ど形成されるものなどの水分活性化マイクロカプセルと区別される。
【0039】
本開示のマイクロカプセルは、コーティング、押出、噴霧乾燥、界面重合、その場での重合、及びマトリックス重合が挙げられるが、これらに限定されない、様々な手順によって形成することができる。
【0040】
マイクロカプセルは、Malvern Particle Sizer(Malvern Panalytical,Ltd.(Malvern,UK)から市販されている)などの当該技術分野で知られている典型的な方法によって測定すると、約5マイクロメートル~約500マイクロメートル、好ましくは約8マイクロメートル~約200マイクロメートル、より好ましくは約10マイクロメートル~約100マイクロメートルの範囲の体積加重平均粒径を有し得る。
【0041】
2.水溶性ポリマー
上述したように、本開示の可撓性多孔質溶解性固体シートは、水溶性ポリマー、界面活性剤、複数のマイクロカプセルを含む湿潤プレミックスによって形成され得る。このような水溶性ポリマーは、結果として得られる固体シートにおいて、フィルム形成剤、構造化剤、並びに他の活性成分(例えば、界面活性剤、乳化剤、ビルダー、キレート剤、香料、着色剤など)のための担体として機能し得る。
【0042】
好ましくは、湿潤プレミックスは、プレミックスの重量に基づいて、約3%~約20%の水溶性ポリマー、一実施形態では、プレミックスの重量に基づいて、約5%~約15%の水溶性ポリマー、一実施形態では、プレミックスの重量に基づいて、約7%~約10%の水溶性ポリマーを含んでもよい。
【0043】
乾燥後、水溶性ポリマーは、本開示の可撓性多孔質溶解性固体シート中に、固体シートの総重量に基づいて、約5%~約50%、好ましくは約8%~約40%、より好ましくは約10%~約30%、最も好ましくは約11%~約25%の範囲の量で存在することが好ましい。本開示の特に好ましい実施形態では、本開示の可撓性多孔質溶解性固体シート中に存在する水溶性ポリマーの総量は、そのようなシートの総重量に基づいて、25%以下である。
【0044】
本開示の実施に好適な水溶性ポリマーは、約50,000~約400,000ダルトン、好ましくは約60,000~約300,000ダルトン、より好ましくは約70,000~約200,000ダルトン、最も好ましくは約80,000~約150,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有するものが選択され得る。重量平均分子量は、各ポリマー原材料の平均分子量に、多孔質固体シート内に存在するポリマーの総重量の重さによるそれぞれの相対的重量パーセントを乗じたものを加算することによって計算される。本明細書で使用される水溶性ポリマーの重量平均分子量は、湿潤プレミックスの粘度に影響を与える場合があり、これはひいては、通気工程中の気泡の数及びサイズ、並びに乾燥工程中の細孔膨張/開口結果に影響を与え得る。更に、水溶性ポリマーの重量平均分子量は、湿潤プレミックスの全体的なフィルム形成特性、及びある界面活性剤との適合性/不適合性に影響を及ぼし得る。
【0045】
本開示の水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキシド、ポリアクリレート、カプロラクタム、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメチルアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコールモノメタアクリレート、アクリル酸とメチルアクリレートとのコポリマー、ポリウレタン、ポリカルボン酸、ポリビニルアセテート、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミン、ポリエチレンイミン、マレイン酸/(アクリレート又はメタクリレート)コポリマー、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、酢酸ビニルとクロトン酸とのコポリマー、ビニルピロリドン及び酢酸ビニルのコポリマー、ビニルピロリドン及びカプロラクタムのコポリマー、ビニルピロリドン/酢酸ビニルのコポリマー、アニオン性モノマーと、カチオン性モノマーと両性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの組み合わせを含む合成ポリマーが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0046】
本開示の水溶性ポリマーはまた、カラヤガム、トラガントガム、アラビアゴム、アセマンナン、コンニャクマンナン、アカシアガム、ガティガム、乳清タンパク質単離物、及び大豆タンパク質単離物などの例を含む植物起源のもの;グアーガム、ローカストビーンガム、マルメロ種子、及びオオバコ種子を含む種子抽出物;カラギーナン、アルギン酸、及び寒天などの海藻抽出物;果物抽出物(ペクチン);キサンタンガム、ジェランガム、プルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、及びデキストランを含む微生物由来のもの;並びにカゼイン、ゼラチン、ケラチン、ケラチン加水分解物、スルホン酸ケラチン、アルブミン、コラーゲン、グルテリン、グルカゴン、グルテン、ゼイン、及びシェラックを含む動物起源のもの、を含む、天然起源のポリマーから選択されてもよい。
【0047】
改質された天然ポリマーはまた、本開示において水溶性ポリマーとしても使用され得る。好適な改質された天然ポリマーとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ニトロセルロース及び他のセルロースエーテル/エステルのようなセルロース誘導体、並びにヒドロキシプロピルのようなグアー誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
本開示の水溶性ポリマーは、デンプンを含んでもよい。本明細書で使用するとき、「デンプン」という用語は、天然に存在するデンプン又は改質されたデンプンの両方を含む。デンプンの典型的な天然の供給源としては、穀物、塊茎、根、豆果及び果実を挙げることができる。より具体的な天然の供給源としては、トウモロコシ、豆、ポテト、バナナ、大麦、小麦、米、サゴ、アマランス、タピオカ、アロールート、カンナ、サトウモロコシ、及びそれらのろう質又は高級アミラーゼ種を挙げることができる。天然デンプンは、剪断されたデンプン又は熱抑制されたデンプンなどの物理的に改質されたデンプン、架橋、アセチル化、及び有機エステル化、ヒドロキシエチル化、並びにヒドロキシプロピル化、リン酸化、並びに無機エステル化、カチオン性、アニオン性、非イオン性、両性及び双極性、並びにこれらのスクシネート及び置換スクシネート誘導体などの化学的に改質されたデンプン、酸化、酵素変換、酸加水分解、熱若しくは酸デキストリン化、熱的及び/又は剪断された生成物によって調製される流動性又は薄い煮沸デンプン、本明細書で有用であり得る熱及び/又は剪断生成物、を含むデンプンに由来する変換生成物、並びに、当該技術分野において既知のアルファ化デンプン、を含んだ改質デンプンを形成するために当該技術分野において既知の任意の改質方法によって改質することができる。
【0049】
本開示の好ましい水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリド、ポリアルキレンオキシド、デンプン及びデンプン誘導体、プルラン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースが挙げられる。本開示のより好ましい水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。
【0050】
本開示の最も好ましい水溶性ポリマーは、約40%~約100%、好ましくは約50%~約95%、より好ましくは約65%~約92%、最も好ましくは約70%~約90%の範囲の加水分解度によって特徴付けられるポリビニルアルコールである。市販のポリビニルアルコールとしては、Celanese Corporation(Texas,USA)からの商品名CELVOLのもの、限定するものではないが、CELVOL 523、CELVOL 530、CELVOL 540、CELVOL 518、CELVOL 513、CELVOL 508、CELVOL 504、Kuraray Europe GmbH(Frankfurt,Germany)からの商品名Mowiol(登録商標)及びPOVAL(商標)、Lubon Vinylon Co.(Nanjing,China)を含む様々な供給元から市販されているPVA 1788(PVA BP17とも称される)もの、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。本開示の特に好ましい実施形態では、可撓性多孔質溶解性固体シートは、80,000~約150,000ダルトンの範囲の重量平均分子量及び約80%~約90%の範囲の加水分解度を有するポリビニルアルコールを、かかるシートの総重量に基づいて、約10%~約25%、より好ましくは約15%~約23%含む。
【0051】
上述したようなポリビニルアルコールに加えて、本明細書に記載されたような必須の構造と物理的/化学的特性を備える固体シートを提供するのに役立つ限り、単一のデンプン又はデンプンの組み合わせを、必要とされる水溶性ポリマーの全体の濃度を低減させるような量の充填材料として使用してもよい。しかしながら、デンプンが多すぎると、シートの溶解度及び構造的一体性を含む場合がある。したがって、本開示の好ましい実施形態では、固体シートは、当該固体シートの重量に基づいて、20%以下、好ましくは0%~10%、より好ましくは0%~5%、最も好ましくは0%~1%のデンプンを含むことが望ましい。
【0052】
3.界面活性剤
上述の水溶性ポリマーに加えて、本開示の固体シートは、少なくとも1つの界面活性剤を含む。界面活性剤は、本開示の所望のOCF構造を形成するのに十分な量の安定した気泡を生成するために、通気プロセス中に乳化剤として機能し得る。また、界面活性剤は、所望の洗浄効果を実現するための活性成分として機能し得る。
【0053】
本開示の好ましい実施形態では、固体シートは、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、双極性界面活性剤、両性界面活性剤、ポリマー界面活性剤及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される界面活性剤を含む。このような固体シートの所望の用途及び達成すべき所望の消費者利益に応じて、異なる界面活性剤を選択することができる。本開示の1つの利点は、固体シートのOCF構造が、高速溶解を依然として提供しながら、高い界面活性剤含有量を組み込むことを可能にすることである。結果的に、高濃度の洗浄組成物を本開示の固体シートに配合して、消費者に新たなかつ優れた洗浄体験を提供することができる。
【0054】
本明細書で使用する界面活性剤は、慣例的な観念(すなわち、消費者の目を引く泡立ち効果を提供する界面活性剤)及び乳化剤(すなわち、任意の泡立ち性能を提供しないが、主に安定した発泡構造体を作製する際の加工助剤として意図されるもの)の両方の界面活性剤を含んでもよい。本明細書で界面活性剤成分として使用される乳化剤の例としては、モノ-及びジ-グリセリド、脂肪族アルコール、ポリグリセロールエステル、プロピレングリコールエステル、ソルビタンエステル及び既知の又は別の方法で空気界面を安定化するのに一般的に使われる他の乳化剤が挙げられる。
【0055】
本開示の固体シート中に存在する界面活性剤の総量は、固体シートの総重量に基づいて、約5%~約90%、好ましくは約10%~約80%、より好ましくは約30%~約70%の広い範囲に及んでもよい。結果的に、湿潤プレミックスは、湿潤プレミックスの重量に基づいて、約1%~約40%の界面活性剤、一実施形態では湿潤プレミックスの重量に基づいて、約2%~約35%の界面活性剤、一実施形態では湿潤プレミックスの重量に基づいて、約5%~約30%の界面活性剤を含んでもよい。
【0056】
本開示の好ましい実施形態では、本開示の固体シートは、固体シートの総重量に基づいて、約30%~約90%、好ましくは約40%~約80%、より好ましくは約50%~約70%の1つ以上の界面活性剤を含む。このようなケースでは、湿潤プレミックスは、湿潤プレミックスの重量に基づいて、約10%~約40%の界面活性剤、一実施形態では湿潤プレミックスの重量に基づいて、約12%~約35%の界面活性剤、一実施形態では湿潤プレミックスの重量に基づいて、約15%~約30%の界面活性剤を含んでもよい。
【0057】
本明細書で使用されるのに好適なアニオン性界面活性剤の非限定的な例としては、アルキル及びアルキルエーテルスルフェート、硫酸化モノグリセリド、スルホン化オレフィン、アルキルアリールスルホネート、一級又は二級アルカンスルホネート、アルキルスルホスクシネート、アシルタウレート、アシルイセチオネート、アルキルグリセリルエーテルスルホネート、スルホン化メチルエステル、スルホン化脂肪酸、アルキルホスフェート、アシルグルタメート、アシルサルコシネート、アルキルスルホアセテート、アシル化ペプチド、アルキルエーテルカルボキシレート、アシルラクチレート、アニオン性フルオロ界面活性剤、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0058】
本開示の実施に特に好適なアニオン性界面活性剤の1つのカテゴリとしては、C6~C20直鎖アルキルベンゼンスルホネート(linear alkylbenzene sulphonate、LAS)界面活性剤が挙げられる。LAS界面活性剤は、当該技術分野において周知であり、市販の直鎖アルキルベンゼンをスルホン化することによって容易に入手することができる。本開示で使用することができる例示的なC10~C20直鎖アルキルベンゼンスルホネートとしては、C10~C20直鎖アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、又はアンモニウム塩、好ましくは、C11~C18若しくはC11~C14直鎖アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、及び/又はアンモニウム塩が挙げられる。より好ましいものは、C12及び/又はC14直鎖アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム又はカリウム塩であり、最も好ましいものは、C12及び/又はC14直鎖アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩、すなわち、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム又はテトラデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。
【0059】
LASは優れた洗浄効果をもたらし、洗濯洗剤用途での使用に特に好適である。より高い重量平均分子量(例えば、約50,000~約400,000ダルトン、好ましくは約60,000~約300,000ダルトン、より好ましくは約70,000~約200,000ダルトン、最も好ましくは約80,000~約150,000ダルトン)を有するポリビニルアルコールがフィルム形成剤及び担体として使用されるとき、LASは、主界面活性剤、すなわち、全体的な組成物のフィルム形成性能及び安定性に悪影響を及ぼすことなく、固体シート中の総界面活性剤含有量の重量に基づいて、50%超の量で存在し得るものとして使用され得ることは、本開示の驚くべきかつ予想外の発見であった。それに対応して、本開示の特定の実施形態では、LASは、固体シート中の主界面活性剤として使用される。LASが本開示の固体シートに存在する場合、その量は、固体シートの総重量に基づいて、約10%~約70%、好ましくは約20%~約65%、より好ましくは約40%~約60%の範囲であり得る。
【0060】
本開示の実施に好適なアニオン性界面活性剤の別のカテゴリとしては、約0.5~約5、好ましくは約0.8~約4、より好ましくは約1~約3、最も好ましくは約1.5~約2.5の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するトリデセス硫酸ナトリウム(sodium trideceth sulfates、STS)が挙げられる。トリデセスは、一実施形態では、1分子当たり平均して少なくとも1つのメチル分岐を含む、炭素13個の分岐鎖アルコキシル化炭化水素である。本開示で使用されるSTSとしては、ST(EOxPOy)Sを挙げることができ、EOxは、0~5、好ましくは1~4、より好ましくは1~3の繰り返し数xを有する繰り返しエチレンオキシド単位を表し、POyは、0~5、好ましくは0~4、より好ましくは0~2の範囲の繰り返し数yを有する繰り返しプロピレンオキシド単位を表す。例えば、約2の重量平均エトキシル化度を有するST2Sなどの材料は、エトキシレートなし、1モルのエトキシレート、3モルのエトキシレートなどを有する有意な量の分子を含んでもよく、エトキシル化の分布は、広い、狭い、又は切断されたものとなり得、それでもなお約2の総重量平均エトキシル化度をもたらすことができることが理解される。STSは、パーソナルクレンジング用途に特に好適であり、より高い重量平均分子量(例えば、約50,000~約400,000ダルトン、好ましくは約60,000~約300,000ダルトン、より好ましくは約70,000~約200,000ダルトン、最も好ましくは約80,000~約150,000ダルトン)を有するポリビニルアルコールがフィルム形成剤及び担体として使用されるとき、STSは主界面活性剤、すなわち、全体的な組成物のフィルム形成性能及び安定性に悪影響を及ぼすことなく、固体シート中の総界面活性剤含有量の重量に基づいて、50%超の量で存在し得るものとして使用され得ることは、本開示の驚くべきかつ予想外の発見であった。それに対応して、本開示の特定の実施形態では、STSは、固体シート中の主界面活性剤として使用される。STSが本開示の固体シートに存在する場合、その量は、固体シートの総重量に基づいて、約10%~約70%、好ましくは約20%~約65%、より好ましくは約40%~約60%の範囲であり得る。
【0061】
本開示の実施に好適なアニオン性界面活性剤の別のカテゴリとしては、アルキルサルフェートが挙げられる。これら物質は、対応する式:ROSO3Mを有し、式中、Rは、約6~約20個の炭素原子のアルキル又はアルケニルであり、xは1~10であり、Mは、アンモニウム、ナトリウム、カリウム及びトリエタノールアミンなどの水溶性カチオンである。好ましくは、Rは、約6~約18個、好ましくは約8~約16個、より好ましくは約10~約14個の炭素原子を有する。前述したように、非アルコキシル化C6~C20直鎖又は分岐鎖アルキルサルフェート(alkyl sulfates、AS)は、フィルム形成性能及び安定性において、低分子量ポリビニルアルコール(例えば、50,000ダルトン以下の重量平均分子量を有するもの)との適合性のために、可溶性固体シートにおいて、特にその中の主な界面活性剤として、好ましい界面活性剤と考えられている。しかしながら、より高い重量平均分子量(例えば、約50,000~約400,000ダルトン、好ましくは約60,000~約300,000ダルトン、より好ましくは約70,000~約200,000ダルトン、最も好ましくは約80,000~約150,000ダルトン)を有するポリビニルアルコールがフィルム形成剤及び担体として使用されるとき、他の界面活性剤(例えばLAS及び/又はSTS)が、全体的な組成物のフィルム形成性能及び安定性に悪影響を及ぼすことなく、固体シート中の主な界面活性剤として使用され得ることは、本開示の驚くべき予期せぬ発見であった。したがって、本開示の特に好ましい実施形態では、固体シートの重量に基づいて、約20%以下、好ましくは0%~約10%、より好ましくは0%~約5%、最も好ましくは0%~約1%のASを有する固体シートを提供することが望ましい。
【0062】
本開示の実施に好適なアニオン性界面活性剤の別のカテゴリとしては、C6~C20直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシサルフェート(alkylalkoxy sulfates、AAS)が挙げられる。このカテゴリの中でも、対応する式RO(C2H4O)xSO3Mを有する直鎖又は分岐鎖アルキルエトキシサルフェート(alkylethoxy sulfates、AES)が特に好ましく、式中、Rは、約6~約20個の炭素原子のアルキル又はアルケニルであり、xは、1~10であり、Mは、アンモニウム、ナトリウム、カリウム及びトリエタノールアミンなどの水溶性カチオンである。好ましくは、Rは、約6~約18個、好ましくは約8~約16個、より好ましくは約10~約14個の炭素原子を有する。AES界面活性剤は、典型的には、エチレンオキシドと約6~約20個の炭素原子を有する一価アルコールとの縮合生成物として作製される。有用なアルコールは、脂肪、例えば、ココナツ油若しくはタローから誘導され得るか、又は合成であり得る。本明細書では、ココナツ油から誘導されるラウリルアルコール及び直鎖アルコールが好ましい。このようなアルコールは、約1~約10、好ましくは約3~約5、特に約3の、モル割合のエチレンオキシドと反応され、例えば、アルコール1モル当たり平均3モルのエチレンオキシドを有する得られた分子種の混合物は、スルフェート化され、中和される。非常に好ましいAESは、個々の化合物の混合物を含むものであり、混合物は、約10~約16個の炭素原子の平均アルキル鎖長、及び約1~約4モルのエチレンオキシドの平均エトキシル化度を有する。AASが本開示の固体シートに存在する場合、その量は、固体シートの総重量に基づいて、約2%~約40%、好ましくは約5%~約30%、より好ましくは約8%~約12%の範囲であり得る。
【0063】
他の好適なアニオン性界面活性剤には、一般式[R1-SO3-M]の有機硫酸反応生成物の水溶性塩が挙げられ、式中、R1は、約6~約20個、好ましくは約10~約18個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族炭化水素ラジカルからなる群から選択され、Mは、カチオンである。アルカリ金属及びアンモニウムスルホン化C10~18n-パラフィンが好ましい。他の好適なアニオン性界面活性剤としては、約12~約24個の炭素原子を有するオレフィンスルホネートが挙げられる。オレフィンスルホネートが誘導されるα-オレフィンは、約12~約24個の炭素原子、好ましくは約14~約16個の炭素原子を有するモノ-オレフィンである。好ましくは、それらは直鎖オレフィンである。
【0064】
布地及びホームケア組成物に使用するのに好適なアニオン性界面活性剤の別の部類は、β-アルキルオキシアルカンスルホネートである。これらの化合物は、以下の式を有し、
【0065】
【化1】
式中、R
1は、約6~約20個の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり、R
2は、約1(好ましい)~約3個の炭素原子を有する低アルキル基であり、Mは、上述の水溶性カチオンである。
【0066】
好適なアニオン性界面活性剤の更なる例は、イセチオン酸でエステル化され、水酸化ナトリウムで中和された脂肪酸の反応生成物(例えば、脂肪酸はココナツ油に由来する)、例えば、脂肪酸がココナツ油に由来するメチルタウリドの脂肪酸アミドのナトリウム又はカリウム塩である。更に他の好適なアニオン性界面活性剤は、スクシネートであり、その例としては、二ナトリウムN-オクタデシルスルホスクシネート、ジアンモニオウムラウリルスルホスクシネート、四ナトリウムN-(1,2-ジカルボキシエチル)-N-オクタデシルスルホスクシナメート、スルホコハク酸ナトリウムのジアミルエステル、スルホコハク酸ナトリウムのジヘキシルエステル、及びスルホコハク酸ナトリウムのジオクチルエステルが挙げられる。
【0067】
本開示の固体シートに含まれ得る非イオン性界面活性剤としては、アルキルアルコキシル化アルコール、アルキルアルコキシル化フェノール、アルキル多糖類(特にアルキルグルコシド及びアルキルポリグルコシド)、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、アルコキシル化脂肪酸エステル、スクロースエステル、ソルビタンエステル及びソルビタンエステルのアルコキシル化誘導体、アミンオキシドなどが挙げられるが、これらに限定されない、任意の従来の非イオン性界面活性剤であり得る。好ましい非イオン性界面活性剤は、式R1(OC2H4)nOHのものであり、式中、R1は、C8~C18アルキル基又はアルキルフェニル基であり、nは、約1~約80である。特に好ましいのは、Shellから市販されているNEODOL(登録商標)非イオン性界面活性剤などの、約1~約20、好ましくは約5~約15、より好ましくは約7~約10の重量平均エトキシル化度を有するC8~C18アルキルエトキシル化アルコールである。本明細書で有用な非イオン性界面活性剤の他の非限定例としては、アルコキシレート単位がエチレンオキシ単位、プロピレンオキシ単位、又はこれらの混合物であり得るC6~C12アルキルフェノールアルコキシレート;C12~C18アルコール及びエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックポリマーとのC6~C12アルキルフェノール縮合物(Pluronic(登録商標)(BASF)など);C14~C22中鎖分岐鎖アルコール(branched alcohol、BA);C14~C22中鎖分岐鎖アルキルアルコキシレート、BAEx(式中、xは、1~30である);アルキル多糖類、具体的にはアルキルポリグリコシド;ポリヒドロキシ脂肪酸アミド;並びにエーテル末端処理ポリ(オキシアルキル化)アルコール界面活性剤が挙げられる。好適な非イオン性界面活性剤としては、商標名Lutensol(登録商標)としてBASFから販売されているものも挙げられる。
【0068】
好ましい実施形態では、ソルビタンエステル及びソルビタンエステルのアルコキシル化誘導体から選択される非イオン性界面活性剤としては、モノラウリン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)20)、モノパルミチン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)40)、モノステアリン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)60)、トリステアリン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)65)、モノオレイン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)80)、トリオレイン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)85)、イソステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(Tween(登録商標)20)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(Tween(登録商標)40)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(Tween(登録商標)60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(Tween(登録商標)80)、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(4)ソルビタン(Tween(登録商標)21)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(4)ソルビタン(Tween(登録商標)61)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(5)ソルビタン(Tween(登録商標)81)(これらは全てUniqemaから入手可能)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0069】
本開示の実施に最も好ましい非イオン性界面活性剤としては、5~15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC6~C20直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシル化アルコール(alkylalkoxylated alcohols、AA)、より好ましくは7~9の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC12~C14直鎖エトキシル化アルコールが挙げられる。AAタイプの非イオン性界面活性剤が本開示の固体シートに存在する場合、その量は、固体シートの総重量に基づいて、約2%~約40%、好ましくは約5%~約30%、より好ましくは約8%~約12%の範囲であり得る。
【0070】
本開示の特に好ましい実施形態では、可撓性多孔質溶解性固体シート物品中の界面活性剤の大部分が、C6~C20直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、0.5~10の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC6~C20直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシサルフェート(AAS)、C6~C20直鎖又は分岐鎖アルキルスルフェート(AS)、5~15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC6~C20直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシル化アルコール(AA)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるアニオン性及び/又は非イオン性界面活性剤である場合、上述のマイクロカプセルの各々のシェルは、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレン-無水マレイン酸)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるアニオン性ポリマーを含むことが好ましい。いかなる理論にも束縛されるものではないが、マイクロカプセルの表面電荷を固体シート物品において使用される界面活性剤のタイプとマッチングさせることは、マイクロカプセルの早期の破裂/破損のリスクを低減し、かかるマイクロカプセルの構造的一体性を保つのに更に役立ち得ると考えられる。
【0071】
カチオン性界面活性剤はまた、本開示において、特に布地柔軟剤及びヘアコンディショナー製品において利用することができる。カチオン性界面活性剤を主界面活性剤として含有する製品を作製する際に使用される場合、このようなカチオン性界面活性剤は、固体シートの総重量に基づいて、約2%~約30%、好ましくは約3%~約20%、より好ましくは約5%~約15%の範囲の量で存在することが好ましい。
【0072】
例えば、カチオン性界面活性剤は、四級アンモニウム化合物及び/又はアミン化合物であり得る。代表的な第四級アンモニウム化合物としては、アルキル化第四級アンモニウム化合物、環状又は環式第四級アンモニウム化合物、芳香族第四級アンモニウム化合物、ジ第四級アンモニウム化合物、アルコキシル化第四級アンモニウム化合物、アミドアミン第四級アンモニウム化合物、エステル第四級アンモニウム化合物、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
本開示の好ましいカチオン性界面活性剤としては、ジエステル四級アンモニウム(diester quaternary ammonium、DEQA)化合物、C12~C22モノ/ジ-アルキル四級アンモニウム化合物、C12~C22モノ-アルキルアミン化合物、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。更により具体的には、カチオン性界面活性剤は、アルキルトリメチルアンモニウム化合物又はそのアミン前駆体、ジアルキルジメチルアンモニウム化合物又はそのアミン前駆体、メチル-ジエタノールアミン系(methyl-diethanolamine-based、MDEA系)四級アンモニウム化合物又はそれらのアミン前駆体、メチル-ジイソプロパノールアミン系(methyl-diisopropanolamine-based、MDIPA系)四級アンモニウム化合物又はそれらのアミン前駆体、トリエタノールアミン系(tri-ethanolamine-based、TEA系)四級アンモニウム化合物又はそれらのアミン前駆体、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。最も具体的には、カチオン性界面活性剤は、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド;ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド;セチルトリメチルアンモニウムクロリド;ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド;水素化タローアルキルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルヒドロキシエチルラウリルアンモニウムクロリド、ジアルキル(14~18)ジメチルアンモニウムクロリド、ジタローアルキルジメチルアンモニウムクロリド、二水素化タローアルキルジメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジセチルジメチルアンモニウムクロリド、N,N-ジ(アシル-オキシエチル)-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド、N,N-ジ(アシル-オキシイソプロピル)-N,N-ジメチルアンモニウムメチルサルフェート、N,N-ジ(アシル-オキシエチル)-N,N-メチルヒドロキシエチルアンモニウムメチルサルフェート、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。例示的なカチオン性界面活性剤としては、ジエチルエステルジメチルアンモニウムクロリド(diethyl ester dimethyl ammonium chloride、DEEDMAC)、ジパルメチルヒドロキシエチルアンモニウムメトサルフェート、ココナツトリメチルアンモニウムクロリド、及びラウリルトリメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
【0074】
本開示の特に好ましい実施形態では、可撓性多孔質溶解性固体シート物品は、大部分の界面活性剤としてDEQA化合物を含む(すなわち、当該固体シート物品中の総界面活性剤含有量の重量に基づいて、50%超の量で存在する)。DEQA化合物は、ジアミド活性物質と、アミド結合及びエステル結合の混合を有する活性物質とを包含する。好ましいDEQA化合物は、典型的には、MDEA(メチルジエタノールアミン)及びTEA(トリエタノールアミン)などのアルカノールアミンを脂肪酸と反応させることによって作製される。このような反応から典型的に得られるいくつかの物質としては、N,N-ジ(アシル-オキシエチル)-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド又はN,N-ジ(アシル-オキシエチル)-N,N-メチルヒドロキシエチルアンモニウムメチルサルフェートが挙げられ、式中、アシル基は、動物脂、不飽和及び多価不飽和脂肪酸から誘導される。
【0075】
好ましくは、カチオン性界面活性剤は、以下の式のDEQA化合物を含み得、
{R(4-m)-N+-[Z-Y-R1]m}X-
式中、各Rは、水素、短鎖C1~C6、一態様において、C1~C3アルキル又はヒドロキシアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ヒドロキシエチルなど)、ポリ(C2-3-アルコキシ)、ポリエトキシ、ベンジル、又はこれらの混合物のいずれかを含み、各Zは、独立して、(CH2)n、CH2-CH(CH3)-又はCH-(CH3)-CH2-であり、各Yは、-O-(O)C-、-C(O)-O-、-NR-C(O)-、又は-C(O)-NR-を含み得、各mは、2であり、各R1中の炭素の合計(Yが-O-(O)C-又は-NR-C(O)-であるときには1を加える)は、C12~C22又はC14~C20であり得、各R1は、ヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビル基であり得、X-は、任意の相溶性アニオンを含み得る。一態様では、相溶性アニオンは、塩化物イオン、臭化物イオン、メチルサルフェート、エチルサルフェート、硫酸イオン、及び硝酸イオンを含み得る。別の態様では、相溶性アニオンは、塩化物イオン又はメチルサルフェートを含み得る。本明細書で使用するとき、ジエステルが指定されている場合、それは、存在するモノエステルを含み得る。
【0076】
カチオン性界面活性剤として使用するための活性物質として好適なDEQA化合物の第2のタイプ(「DEQA(2)」)は、以下の一般式を有し、
[R3N+CH2CH(YR1)(CH2YR1)]X-
式中、各Y、R、R1、及びX-は、上記と同じ意味を有する。好ましいDEQA(2)の例は、式1,2-ジ(アシルオキシ)-3-トリメチルアンモニオプロパンクロリドを有する「プロピル」エステル四級アンモニウム布地柔軟剤活性物質である。
【0077】
別の実施形態では、カチオン性界面活性剤は、1つ以上の柔軟剤四級アンモニウム化合物、例えば、C12~C22モノ-アルキル四級アンモニウム化合物、C12~C22ジ-アルキル四級アンモニウム化合物、C12~C22モノ-アルキルアミン化合物、モノエステル四級アンモニウム化合物、ジアミド四級化合物、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
カチオン性界面活性剤としての使用に好適な他の活性成分としては、例えば、分子比約2:1での、脂肪酸とジアルキレントリアミンとの反応生成物が挙げられ、反応生成物は、次式の化合物を含有し、
R1-C(O)-NH-R2-NH-R3-NH-C(O)-R1
式中、R1、R2は、上記に定義したとおりであり、各R3は、C1~6アルキレン基、好ましくはエチレン基である。これらの活性成分の例は、約2:1の分子比でのタロー酸、キャノーラ酸又はオレイン酸とジエチレントリアミンとの反応生成物であり、反応生成物混合物は、それぞれ、次式のN,N’’-ジタローオイルジエチレントリアミン、N,N’’-ジキャノーラ-オイルジエチレントリアミン、又はN,N’’-ジオレオイルジエチレントリアミンを含有し、
R1-C(O)-NH-CH2CH2-NH-CH2CH2-NH-C(O)-R1
式中、R2及びR3は、二価エチレン基であり、R1は、上記に定義したとおりであり、R1が植物若しくは動物供給源から誘導される市販のオレイン酸のオレオイル基である場合、この構造の許容可能な例としては、Henkel Corporationから入手可能なEMERSOL(登録商標)223LL又はEMERSOL(登録商標)7021が挙げられる。
【0079】
カチオン性界面活性剤として使用される別の活性成分は、次式を有し、
[R1-C(O)-NR-R2-N(R)2-R3-NR-C(O)-R1]+X-
式中、R、R1、R2、R3及びX-は、上記のように定義される。この活性成分の例は、次式を有するジ脂肪アミドアミン系柔軟剤であり、
[R1-C(O)-NH-CH2CH2-N(CH3)(CH2CH2OH)-CH2CH2-NH-C(O)-R1]+CH3SO4
-
式中、R1-C(O)は、オレオイル基、軟質タロー基、又は硬化タロー基であり、DegussaからそれぞれVARISOFT(登録商標)222LT、VARISOFT(登録商標)222、及びVARISOFT(登録商標)110の商品名で市販されている。
【0080】
本開示の特に好ましい実施形態では、可撓性多孔質溶解性固体シート物品中の界面活性剤の大部分は、ジエステル四級アンモニウム(DEQA)化合物、C12~C22モノ/ジ-アルキル四級アンモニウム化合物、C12~C22モノ-アルキルアミン化合物、約1~約20の重量平均エトキシル化度を有するC8~C18アルキルエトキシル化アルコール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオン性及び/又は非イオン性界面活性剤であり、当該マイクロカプセルの各々は、そのシェル上にカチオン性コーティングを更に含むことが好ましく、当該カチオン性コーティングは、ポリビニルホルムアミド、部分的にヒドロキシル化されたポリビニルホルムアミド、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、エトキシル化ポリエチレンイミン、カチオン変性多糖類、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオン性ポリマーから形成される。いかなる理論にも束縛されるものではないが、マイクロカプセルの表面電荷を固体シート物品において使用される界面活性剤のタイプとマッチングさせることは、マイクロカプセルの早期の破裂/破損のリスクを低減し、かかるマイクロカプセルの構造的一体性を保つのに更に役立ち得ると考えられる。
【0081】
本開示の固体シートでの使用に好適な両性界面活性剤としては、脂肪族二級及び三級アミンの誘導体として広く記載されるものが挙げられ、脂肪族ラジカルは、直鎖又は分岐鎖であってもよく、脂肪族置換基のうちの1つは、約8~約18個の炭素原子を含有し、1つは、アニオン性水溶性基、例えば、カルボキシ、スルホネート、サルフェート、ホスフェート、又はホスホネートを含有する。この定義に該当する化合物の例は、3-ドデシルアミノプロピオン酸ナトリウム、3-ドデシルアミノプロパンスルホン酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ドデシルアミンをイセチオン酸ナトリウムと反応させることで調製されるもののようなN-アルキルタウリン、及びN-高級アルキルアスパラギン酸である。
【0082】
パーソナルケア用途(例えば、シャンプー、顔又は身体洗浄剤など)を有する固体シートへの組み込みに特に好適な両性界面活性剤の1つのカテゴリとしては、ラウロアンホアセテート及びココアンホアセテートなどのアルキルアンホアセテートが挙げられる。アルキルアンホアセテートは、モノアセテート及びジアセテートで構成され得る。アルキルアンホアセテートのいくつかのタイプでは、ジアセテートは、不純物又は意図しない反応生成物である。本開示の固体シート中のアルキルアンホアセテートの量は、固体シートの総重量に基づいて、約2%~約40%、好ましくは約5%~約30%、より好ましくは約10%~約20%の範囲であり得る。
【0083】
好適な双極性界面活性剤としては、脂肪族四級アンモニウム、ホスホニウム及びスルホニウム化合物の誘導体として広く記述されるものが挙げられ、その脂肪族ラジカルは直鎖又は分岐鎖であることができ、脂肪族置換基のうちの1つが約8~約18個の炭素原子を含有し、1つがアニオン性基、例えば、カルボキシ、スルホネート、サルフェート、ホスフェート又はホスホネートを含有。そのような好適な双極性界面活性剤は、次式で表すことができ、
【0084】
【化2】
式中、R
2は、約8~約18個の炭素原子のアルキル、アルケニル、又はヒドロキシアルキルラジカル、0~約10個のエチレンオキシド部分、及び0~約1個のグリセリル部分を含有し、Yは、窒素、リン、及び硫黄原子からなる群から選択され、R
3は、約1~約3個の炭素原子を含有するアルキル又はモノヒドロキシアルキル基であり、Xは、Yが硫黄原子であるとき、1であり、Yが窒素又はリン原子であるとき、2であり、R
4は、約1~約4個の炭素原子のアルキレン又はヒドロキシアルキレンであり、Zは、カルボキシレート、スルホネート、サルフェート、ホスホネート、及びホスフェート基からなる群から選択されるラジカルである。
【0085】
本明細書での使用に好適な他の双極性界面活性剤としては、ココジメチルカルボキシメチルベタイン、ココアミドプロピルベタイン、ココベタイン、ラウリルアミドプロピルベタイン、オレイルベタイン、ラウリルジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルジメチルαカルボキシエチルベタイン、セチルジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルビス-(2-ヒドロキシエチル)カルボキシメチルベタイン、ステアリルビス-(2-ヒドロキシプロピル)カルボキシメチルベタイン、オレイルジメチルγ-カルボキシプロピルベタイン、及びラウリルビス-(2-ヒドロキシプロピル)α-カルボキシエチルベタインのような高級アルキルベタインを含むベタインが挙げられる。スルホベタインは、ココジメチルスルホプロピルベタイン、ステアリルジメチルスルホプロピルベタイン、ラウリルジメチルスルホエチルベタイン、ラウリルビス-(2-ヒドロキシエチル)スルホプロピルベタインなどで表すことができ、RCONH(CH2)3ラジカル(式中、Rは、C11~C17アルキルである)がベタインの窒素原子に付着する、アミドベタイン及びアミドスルホベタインも本発明においてやはり有用である。
【0086】
本開示の固体シート物品組成物での使用に好適な高分子界面活性剤としては、限定するものではないが、エチレンオキシドと脂肪族アルキル残基(fatty alkyl residue)とのブロックコポリマー、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー、疎水変性ポリアクリレート、疎水変性セルロース、シリコーンポリエーテル、シリコーンコポリオールエステル、ジ四級ポリジメチルシロキサン、及び共修飾されたアミノ/ポリエーテルシリコーンが挙げられる。
【0087】
好ましい実施形態では、界面活性剤は、グループIの界面活性剤とグループIIの界面活性剤とのブレンドを含む。本発明の界面活性剤のブレンドは、グループIからの1つ以上の界面活性剤と、グループIIからの1つ以上の界面活性剤とを含む。グループIの界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤が挙げられ、グループIIの界面活性剤としては、両性界面活性剤、双極性界面活性剤、及びこれらの組み合わせが挙げられる。本発明の一実施形態では、グループIの界面活性剤とグループIIの界面活性剤との比は、約95:5~約30:70である。本発明の別の実施形態では、グループIの界面活性剤とグループIIの界面活性剤との比は、約85:15~約40:60である。本発明の更に別の実施形態では、グループIの界面活性剤とグループIIの界面活性剤との比は、約70:30~約55:45である。
【0088】
グループIの界面活性剤
本発明のグループIの界面活性剤としては、1つ以上のアニオン性界面活性剤が挙げられる。本明細書の溶解可能な物品において使用するのに好適なアニオン性界面活性剤成分としては、ヘアケア又は他のパーソナルケアシャンプー組成物における使用について知られているものが挙げられる。組成物中のアニオン性界面活性剤成分の濃度は、所望の洗浄及び泡立ち性能を提供するのに十分であるべきであり、グループIの界面活性剤の乾燥固体の約6.5重量%~約71重量%の範囲である。
【0089】
本組成物中での使用に好適なアニオン性界面活性剤としては、アルキルサルフェート及びアルキルエーテルサルフェートが挙げられる。これらの材料は、それぞれ式ROSO3M及びRO(C2H4O)xSO3Mを有し、式中、Rは、約8~約18個の炭素原子のアルキル又はアルケニルであり、xは、1~10の値を有する整数であり、Mは、カチオン、例えば、アンモニウム、アルカノールアミン、例えば、トリエタノールアミン、多価金属、例えば、ナトリウム及びカリウム、及び多価金属カチオン、例えば、マグネシウム、及びカルシウムである。好ましくは、Rは、アルキル及びアルキルエーテルサルフェートの両方において、約8~約18個の炭素原子、より好ましくは約10~約16個の炭素原子、更により好ましくは約11~約14個の炭素原子を有する。アルキルエーテルサルフェートは、典型的には、エチレンオキシド及び約8~約24個の炭素原子を有する一価アルコールの縮合生成物として作製される。アルコールは合成であることができ、又はアルコールは、脂肪、例えば、ココナツ油、パーム核油、タローから誘導することができる。合成アルコールとしては、Shell ChemicalCo.からNEODOLという商標で市販されているグレード、すなわち、NEODOL91(C9~11アルコール)、NEODOL 23(C12~13アルコール)、NEODOL 25(C12~15アルコール)、NEODOL 45(C14~15アルコール)、及びNEODOL 135(C11~C13~C15アルコール)を挙げることができる。ココナツ油又はパーム核油から誘導されるラウリルアルコール及び直鎖アルコールが好ましい。そのようなアルコールは、約0~約10、一実施形態では約2~約5、別の実施形態では約3のモル割合のエチレンオキシドと反応され、例えば、アルコール1モル当たり平均3モルのエチレンオキシドを有する得られた分子種の混合物は、スルフェート化され、中和される。
【0090】
他の好適なアニオン性界面活性剤は、式[R1-SO3-M]に一致する有機硫酸反応生成物の水溶性塩であり、式中、R1は、約8~約24個、好ましくは約10~約18個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族炭化水素ラジカルであり、Mは、前述のカチオンである。
【0091】
更に他の好適なアニオン性界面活性剤は、イセチオン酸でエステル化され、水酸化ナトリウムで中和された当該脂肪酸の反応生成物であり、例えば、当該脂肪酸は、ココナツ油又はパーム核油から誘導され、例えば、当該脂肪酸は、ココナツ油から誘導されるメチルタウリドの脂肪酸アミドのナトリウム塩又はカリウム塩である。他の同様のアニオン性界面活性剤は、米国特許第2,486,921号、同第2,486,922号、及び同第2,396,278号に記載されている。
【0092】
組成物において使用するのに好適な他のアニオン性界面活性剤は、スクシネートであり、その例としては、N-オクタデシルスルホコハク酸二ナトリウム、二ナトリウムラウリルスルホスクシネート、ジアンモニウムラウリルスルホスクシネート、四ナトリウムN-(1,2-ジカルボキシエチル)-N-オクタデシルスルホスクシネート、スルホコハク酸ナトリウムのジアミルエステル、スルホコハク酸ナトリウムのジヘキシルエステル、及びスルホコハク酸ナトリウムのジオクチルエステルが挙げられる。
【0093】
他の好適なアニオン性界面活性剤としては、約10~約24個の炭素原子を有するオレフィンスルホネートが挙げられる。真の(true)アルケンスルホネート及び一定のヒドロキシアルカンスルホネートに加えて、オレフィンスルホネートは、反応条件、反応物の割合、オレフィン原料中の出発オレフィン及び不純物の性質、及びスルホン化プロセス中の副反応に応じて、アルケンジスルホネートなどの少量の他の材料を含有することができる。そのようなアルファ-オレフィンスルホネート混合物の非限定的な例は、米国特許第3,332,880号に記載されている。
【0094】
当該組成物における使用に好適なアニオン性界面活性剤の別のクラスは、ベータ-アルキルオキシアルカンスルホネートである。これらの界面活性剤は、次式に一致するものであり、
【0095】
【化3】
式中、R1は、約6~約20個の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり、R2は、約1~約3個の炭素原子、好ましくは1個の炭素原子を有する低級アルキル基であり、Mは、前述したとおりの水溶性カチオンである。
【0096】
組成物での使用に好適な追加のアニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸アンモニウム、ラウレス-1硫酸アンモニウム、ラウレス-2硫酸アンモニウム、ラウレス-3硫酸アンモニウム、トリエタノールアミンラウリルサルフェート、トリエタノールアミンラウレスサルフェート、トリエタノールアミンラウレス-1サルフェート、トリエタノールアミンラウレス-2サルフェート、トリエタノールアミンラウレス-3サルフェート、モノエタノールアミンラウリルサルフェート、モノエタノールアミンラウレスサルフェート、ジエタノールアミンラウリルサルフェート、ジエタノールアミンラウレスサルフェート、ラウリックモノグリセリド硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウレス硫酸カリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、ラウリルサルコシン、ココイルサルコシン、アンモニウムココイルサルフェート、アンモニウムラウロイルサルフェート、ココイル硫酸ナトリウム、ラウロイル硫酸ナトリウム、ココイル硫酸カリウム、ラウリル硫酸カリウム、モノエタノールアミンココイルサルフェート、モノエタノールアミンラウリルサルフェート、トリデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ココイルイセチオン酸ナトリウム、デシル硫酸アンモニウム、デシル硫酸ナトリウム、ウンデシル硫酸アンモニウム、及びウンデシル硫酸アンモニウム、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0097】
本発明の一実施形態では、界面活性剤のうちの1つ以上は、硫酸アルキルである。一実施形態では、1つ以上のアルキルスルフェートは約0.0~約1.9のエトキシル化の平均モル数を有し、別の実施形態では、1つ以上のアルキルスルフェートは約0.0~約1.5のエトキシル化の平均モル数を有し、更に別の実施形態では、1つ以上のアルキルスルフェートは約0.0~約1.0のエトキシル化の平均モル数を有する。一実施形態では、1つ以上のアルキルスルフェートは、アンモニウム対イオンを含む。アンモニウム対イオンを有するそのような界面活性剤の好適な例としては、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス-1硫酸アンモニウム、ラウレス-2硫酸アンモニウム、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
一実施形態では、1つ以上のグループIの界面活性剤は、以下の構造を有するアルキルスルフェートから選択され、
【0099】
【化4】
式中、R
1は、平均9.0~11.9個の炭素原子を含む置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖アルキル又は不飽和アルキル系からなる群から選択されるC結合一価置換基から選択され、R
2は、2~3個の炭素原子を含むC結合二価の直鎖又は分岐鎖アルキル系からなる群から選択され、M
+は、ナトリウム、アンモニウム、又はプロトン化トリエタノールアミンから選択される一価の対イオンであり、xは0.0~3.0である。一実施形態では、上記構造によるアルキルサルフェート界面活性剤のうちの1つ以上は、約0.0~約1.9のエトキシル化の平均モル数を含み、別の実施形態では、上記構造によるアルキルサルフェート界面活性剤は、約0.0~約1.5のエトキシル化の平均モル数を含み、更に別の実施形態では、上記構造によるアルキルサルフェート界面活性剤は、約0.0~約1.0のエトキシル化の平均モル数を含む。好適な例としては、デシル硫酸アンモニウム、デシル硫酸ナトリウム、ウンデシル硫酸アンモニウム、ウンデシル硫酸ナトリウム、トリエタノールアミンデシルサルフェート、又はトリエタノールアミンウンデシルサルフェートが挙げられる。一実施形態では、本発明のアニオン性界面活性剤は、ウンデシル硫酸アンモニウムを含む。
【0100】
グループIIの界面活性剤
本発明のグループIIの界面活性剤は、1つ以上の両性界面活性剤、双極性界面活性剤、及び/又はこれらの組み合わせを含む。本明細書における組成物での利用に好適な両性界面活性剤又は双極性界面活性剤としては、ヘアケア又は他のパーソナルケアクレンジングにおける利用で知られているものが挙げられる。そのような両性界面活性剤、双極性界面活性剤、及び/又はこれらの組み合わせの濃度は、乾燥固形分の約1.0重量%~約52.5重量%の範囲である。好適な双極性界面活性剤又は両性界面活性剤の非限定的な例は、米国特許第5,104,646号(Bolich Jr.ら)、同第5,106,609号(Bolich Jr.ら)に記載されている。
【0101】
本組成物で用いるのに好適な両性界面活性剤は、当該技術分野において周知であり、脂肪族第二級及び第三級アミンの誘導体として広く説明されている界面活性剤が挙げられ、その脂肪族基は、直鎖又は分岐鎖であることができ、脂肪族置換基のうちの1つは、約8~約18個の炭素原子を含み、1つは、カルボキシ、スルホネート、サルフェート、ホスフェート、又はホスホネートなどのアニオン性基を含む。そのような両性界面活性剤の好適な例としては、コカミノプロピオン酸ナトリウム、コカミノジプロピオン酸ナトリウム、ココアンホ酢酸ナトリウム、ココアンホヒドロキシプロピルスルホン酸ナトリウム、ココアンホプロピオン酸ナトリウム、コルナンホプロピオン酸ナトリウム(sodium cornamphopropionate)、ラウラミノプロピオン酸ナトリウム、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ラウロアンホヒドロキシプロピルスルホン酸ナトリウム、ラウロアンホプロピオン酸ナトリウム、コルナンホプロピオン酸ナトリウム(sodium cornamphopropionate)、ラウリミノジプロピオン酸ナトリウム、コカミノプロピオン酸アンモニウム、コカミノジプロピオン酸アンモニウム、ココアンホ酢酸アンモニウム、ココアンホヒドロキシプロピルスルホン酸アンモニウム、ココアンホプロピオン酸アンモニウム、コーンアンホプロピオン酸アンモニウム、ラウラミノプロピオン酸アンモニウム、ラウロアンホ酢酸アンモニウム、ラウロアンホヒドロキシプロピルスルホン酸アンモニウム、ラウロアンホプロピオン酸アンモニウム、コーンアンホプロピオン酸アンモニウム、ラウリミノジプロピオン酸アンモニウム、コカミノプロピオン酸トリエタノールアミン、コカミノジプロピオン酸トリエタノールアミン、ココアンホ酢酸トリエタノールアミン、ココアンホヒドロキシプロピルスルホン酸トリエタノールアミン、ココアンホプロピオン酸トリエタノールアミン、コムアンホプロピオン酸トリエタノールアミン、ラウラミノプロピオン酸トリエタノールアミン、ラウロアンホ酢酸トリエタノールアミン、ラウロアンホヒドロキシプロピルスルホン酸トリエタノールアミン、ラウロアンホプロピオン酸トリエタノールアミン、コーンアンホプロピオン酸トリエタノールアミン、ラウリミノジプロピオン酸トリエタノールアミン、ココアンホジプロピオン酸、カプロアンホ二酢酸二ナトリウム、カプロアンホジプロピオン酸二ナトリウム、カプリロアンホ二酢酸二ナトリウム、カプリロアンホジプロピオン酸二ナトリウム(disodium capryloamphodipriopionate)、ココアンホカルボキシエチルヒドロキシプロピルスルホン酸二ナトリウム、ココアンホ二酢酸二ナトリウム、ココアンホジプロピオン酸二ナトリウム、ジカルボキシエチルココプロピレンジアミン二ナトリウム、ラウレス-5カルボキシアンホ二酢酸二ナトリウム、ラウリミノジプロピオン酸二ナトリウム、ラウロアンホ二酢酸二ナトリウム、ラウロアンホジプロピオン酸二ナトリウム、オレオアンホジプロピオン酸二ナトリウム、PPG-2-イソデセチ-7カルボキシアンフォジアセテート、ラウラミノプロピオン酸、ラウロアンホジプロピオン酸、ラウリルアミノプロピルグリシン、ラウリルジエチレンジアミノグリシン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0102】
一実施形態では、両性界面活性剤は、以下の構造による界面活性剤である:
【0103】
【化5】
式中、R1は、9~15個の炭素原子を含む置換アルキル系、9~15個の炭素原子を含む非置換アルキル系、9~15個の炭素原子を含む直鎖アルキル系、9~15個の炭素原子を含む分枝鎖アルキル系、及び9~15個の炭素原子を含む不飽和アルキル系からなる群から選択されるC連鎖一価置換基であり、R2、R3、及びR4は、1~3個の炭素原子を含むC連鎖二価直鎖アルキル系、及び1~3個の炭素原子を含むC連鎖二価分枝鎖アルキル系からなる群からそれぞれ独立して選択され、M+は、ナトリウム、アンモニウム、及びプロトン化トリエタノールアミンからなる群から選択される一価対イオンである。好適な界面活性剤の具体例としては、ココアンホ酢酸ナトリウム、ココアンホ二酢酸ナトリウム、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ラウロアンホ二酢酸ナトリウム、ラウロアンホ酢酸アンモニウム、ココアンホ酢酸アンモニウム、ラウロアンホ酢酸トリエタノールアミン、及びココアンホ酢酸トリエタノールアミンが挙げられる。
【0104】
組成物に使用するのに好適な双極性界面活性剤は、当該技術分野において周知であり、脂肪族四級アンモニウム、ホスホニウム、及びスルホニウム化合物の誘導体として広く記載されている界面活性剤が挙げられ、ここで脂肪族ラジカルは直鎖又は分枝鎖であってもよく、脂肪族置換基のうちの1つは約8~約18個の炭素原子を含有し、1つは、アニオン性基、例えばカルボキシ、スルホネート、サルフェート、ホスフェート、又はホスホネートを含有する。好適な双極性界面活性剤としては、コカミドエチルベタイン、コカミドプロピルアミンオキシド、コカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルジメチルアミノヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン、コカミドプロピルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、ココベタインアミドアンホプロピオネート、ココ-ベタイン、ココ-ヒドロキシスルタイン、ココ/オレアミドプロピルベタイン、ココ-スルタイン、ラウラミドプロピルベタイン、ラウリルベタイン、ラウリルヒドロキシスルタイン、ラウリルスルタイン、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
4.可塑剤
本開示の可撓性多孔質溶解性固体シート物品はまた、好ましくは、固体シート物品の総重量に基づいて、約1%~約65%の範囲の量で、好ましくは約10%~約60%、より好ましくは約15%~約55%、更により好ましくは約20%~約50%、最も好ましくは約22%~約40%の範囲の量で可塑剤も含み得る。それに応じて、そのような固体シート物品を形成するために使用される湿潤プレミックスは、湿潤プレミックスの重量に基づいて、約0.1%~約50%、好ましくは約1%~約40%、より好ましくは約5%~約30%、更により好ましくは約8%~約25%、最も好ましくは約10%~約20%の可塑剤を含み得る。
【0106】
本開示で使用されるのに好適な可塑剤としては、例えば、ポリオール、コポリオール、ポリカルボン酸、ポリエステル、ジメチコンコポリオールなどが挙げられる。
【0107】
有用なポリオールの例としては、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール(特に200~600)、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、グリセロール誘導体(プロポキシル化グリセロールなど)、グリシドール、シクロヘキサンジメタノール、ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオール、ペンタエリスリトール、尿素、糖アルコール(ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、キシリトール、マルチトール、及び他のモノ-及び多価アルコールなど)、モノ-、ジ-及びオリゴ-糖(フルクトース、グルコース、スクロース、マルトース、ラクトース、高フルクトースコーンシロップ固形物、及びデキストリンなど)、アスコルビン酸、ソルベート、エチレンビスホルムアミド、アミノ酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
ポリカルボン酸の例としては、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、ポリアクリル酸、及びポリマレイン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
好適なポリエステルの例としては、グリセロールトリアセテート、アセチル化モノグリセリド、ジエチルフタレート、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
好適なジメチコンコポリオールの例としては、PEG-12ジメチコン、PEG/PPG-18/18ジメチコン、及びPPG-12ジメチコンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
他の好適な可塑剤としては、アルキル及びアリルフタレート;ナフタレート;ラクテート(例えば、ナトリウム塩、アンモニウム塩、及びカリウム塩);ソルベス-30;尿素;乳酸;ピロリドンカルボン酸ナトリウム(pyrrolidone carboxylic acid、PCA);ヒアルロン酸ナトリウム又はヒアルロン酸;可溶性コラーゲン;変性タンパク質;L-グルタミン酸モノナトリウム;グリコール酸、乳酸、クエン酸、マレイン酸及びサリチル酸などの、α及びβヒドロキシル酸;ポリメタクリル酸グリセリル;ポリマー可塑剤、例えば、ポリクオタニウム;タンパク質、並びに、グルタミン酸、アスパラギン酸、及びリシンなどのアミノ酸;水素デンプン加水分解産物;その他低分子量エステル(例えば、C2~C10アルコールと酸とのエステル);及び、食品及びプラスチック業界の当業者に既知である任意の他の水溶性可塑剤;並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
可塑剤の特に好ましい例としては、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びこれらの混合物が挙げられる。最も好ましい可塑剤はグリセリンである。固体シート中の好ましい可塑剤の存在、例えば、グリセリンの存在は、しわ防止利益を更にもたらし得る。特に、固体シート物品が、好ましい量のグリセリン(例えば、固体シートの総重量に基づいて、22%~40%)を含む場合、しわ防止効果は、更により有意であり得る。
【0113】
5.他の配合成分
上述の配合成分、例えば、マイクロカプセル、水溶性ポリマー、界面活性剤、及び可塑剤に加えて、本開示の可撓性多孔質溶解性固体シート物品は、その意図される用途に応じて、1つ以上の追加の配合成分を含み得る。このような1つ以上の追加成分は、布地ケア活性物質、食器洗浄活性物質、硬質表面洗浄活性物質、美容及び/又はスキンケア活性物質、パーソナルクレンジング活性物質、ヘアケア活性物質、口腔ケア活性物質、女性ケア活性物質、ベビーケア活性物質、苦味剤並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。好ましい実施形態では、本開示の固体シートは、苦味剤を含み得る。
【0114】
好適な布地ケア活性物質としては、有機溶媒(直鎖又は分岐鎖の低級C1~C8アルコール、ジオール、グリセロール、又はグリコール;C1~C4アルカノールアミンなどのより低級のアミン溶媒、及びこれらの混合物;より具体的には、1,2-プロパンジオール、エタノール、グリセロール、モノエタノールアミン及びトリエタノールアミン)、担体、ヒドロトロープ、ビルダー、キレート剤、分散剤、酵素及び酵素安定剤、触媒材料、漂白剤(光漂白剤を含む)及び漂白活性化剤、香料(カプセル化香料又は香料マイクロカプセルを含む)、着色剤(色相染料を含む、顔料及び染料など)、増白剤、移染防止剤、粘土汚れ除去/再付着防止剤、構造化剤、レオロジー調整剤、抑泡剤、加工助剤、布地柔軟剤、抗菌剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
好適なヘアケア活性物質としては、縮れ減少のためのクラスIIの水分調整物質(サリチル酸及び誘導体、有機アルコール、及びエステル)、カチオン性界面活性剤(特に、25℃の水への溶解度が、好ましくは0.5g/水100g未満、より好ましくは0.3g/水100g未満)、高融点脂肪族化合物(例えば、25℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、更により好ましくは50℃以上の融点を有する脂肪族アルコール、脂肪酸、及びこれらの混合物)、シリコーン化合物、コンディショニング剤(Hormelから入手可能な商標名Peptein 2000を有する加水分解コラーゲン、Eisaiから入手可能な商標名Emix-dのビタミンE、Rocheから入手可能なパンテノール、Rocheから入手可能なパンテニルエチルエーテル、加水分解ケラチン、タンパク質、植物抽出物、及び栄養素)、防腐剤(ベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、及びイミダゾリジニル尿素など)、pH調整剤(クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、リン酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなど)、塩(酢酸カリウム及び塩化ナトリウムなど)、着色剤、香料又は芳香剤、金属イオン封鎖剤(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムなど)、紫外線及び赤外線スクリーニング及び吸収剤(サリチル酸オクチルなど)、毛髪脱色剤、毛髪パーマ剤、毛髪固定剤、抗ふけ剤、抗菌剤、育毛剤又は補充剤、共溶媒又は他の追加の溶媒などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
好適な美容及び/又はスキンケア活性物質としては、化粧品での使用が認可され、CTFA Cosmetic Ingredient Handbook,Second Edition,The Cosmetic,Toiletries,and Fragrance Association,Inc.1988,1992などの参考文献に記載されている物質が挙げられる。好適な美容及び/又はスキンケア活性物質の更なる非限定的な例としては、防腐剤、香料又は芳香剤、着色剤又は染料、増粘剤、保湿剤、皮膚軟化剤、医薬活性物質、ビタミン又は栄養素、日焼け止め剤、脱臭剤、感覚剤、植物抽出物、栄養素、収れん剤、化粧品粒子、吸収性粒子、繊維、抗炎症剤、美白剤、皮膚色調剤(皮膚色調全体を改善するように機能し、ビタミンB3化合物、糖アミン、ヘキサミジン化合物、サリチル酸、ヘキシルレゾルシノール及びレチノイドなどの1,3-ジヒドロキシ-4-アルキルベンゼンを含み得る)、皮膚日焼け剤、剥離剤、保湿剤、酵素、酸化防止剤、フリーラジカル捕捉剤、抗しわ活性物質、抗にきび剤、酸、塩基、ミネラル、懸濁剤、pH調整剤、顔料粒子、抗菌剤、防虫剤、シェービングローション剤、共溶媒又は他の追加の溶媒などが挙げられる。
【0117】
好適な苦味剤は、デナトニウム塩又はその誘導体を含む。一態様では、苦味剤は、塩化デナトニウム、クエン酸デナトニウム、デナトニウムサッカリド、炭酸デナトニウム、酢酸デナトニウム、デナトニウムベンゾエート、及びこれらの混合物からなる群から選択されるデナトニウム塩である。一態様では、固体シートは第1のデナトニウム塩を含み、コーティング組成物は、第1のデナトニウム塩とは異なる第2のデナトニウム塩を含む。
【0118】
特に好ましい苦味剤は、フェニルメチル-[2-[(2,6-ジメチルフェニル)アミノ]-2-オキソエチル]-ジエチルアンモニウムベンゾエート(CAS番号3734-33-6)としても知られている、デナトニウムベンゾエートである。デナトニウムベンゾエートは、BITREX(登録商標)として市販されており、Macfarlan Smith(Edinburgh,Scotland,UK)から入手可能である。
【0119】
いくつかの態様では、苦味剤は天然の苦味物質である。いくつかの態様では、苦味剤は約1000~約200000の苦味値を有する。いくつかの態様では、苦味剤は約1000~約200000の苦味値を有する天然の苦味物質であり、この天然の苦味物質は、グリコシド、イソプレノイド、アルカノイド、アミノ酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される。例えば、好適な苦味剤としては、クエルセチン(3,3’,4’,5,7-ペンタヒドロキシフラボン)、ナリンギン(4’,5,7-トリヒドロキシフラバノン-7-ラムノグルコシド)、アウクビン、アマロゲンチン、ジヒドロフォリアメンチン、ゲンチオピクロシド、ゲンチオピクリン、スウェルチアマリン、スウエロシド、ゲンチオフラボシド、センタウロシド、メチアフォリン、ハルパゴシド、センタピクリン、サイリシン、コンジュランジン、アブシンチン、アルタブシン、クニシン、ラクチュシン、ラクチュコピクリン、サロニテノリド、a-ツジョン、β-ツジョン、デソキシリモネン、リモニン、イチャンギン、イソオバクン酸、オバクノン、オバクン酸、ノミリン、イチャンギン、ノミリン酸、マルビン、プラマルビン、カルノソール、カルノシン酸、クァシン、塩酸キニーネ、硫酸キニーネ、二塩酸キニーネ、コロンバイン、カフェイン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、アルギニン、ヒスチジン、バリン、アスパラギン酸、スクロースオクタアセタート、及びこれらの混合物も挙げられる。他の好適な苦味剤としては、二硫酸キニーネ及びホップ抽出物(例えば、humulone)が挙げられる。
【0120】
本開示の固体シート物品は、固体シートの重量に基づいて、約0.00001%~約1%、又は約0.0001%~約0.5%、又は約0.001%~約0.25%、又は約0.01%~約0.1%の苦味剤を含み得る。いくつかの態様では、固体シート物品は、苦味を提供するのに十分な量の苦味剤を含む。
【0121】
本開示の固体シート物品は、組成物での使用が既知であるか、あるいは有用であるような他の任意選択的な成分を更に含んでもよく、かかる任意選択的な材料は本明細書に記載の選択された不可欠な材料と互換性があるか、あるいは過度に製品性能を損なわないという条件で含まれる。
【0122】
本開示の固体シート物品によって形成され得る製品タイプの実施形態の非限定的な例としては、洗濯洗剤製品、布地柔軟製品、手洗浄製品、毛髪シャンプー又は他の毛髪処理製品、ボディクレンジング製品、シェービング調製製品、食器洗浄製品、医薬又は他のスキンケア活性物質を含有するパーソナルケア基材、保湿製品、日焼け止め製品、美容製品又はスキンケア製品、脱臭製品、口腔ケア製品、女性用洗浄製品、ベビーケア製品、芳香剤含有製品などが挙げられる。
【0123】
III.固体シートを作製するための方法
本開示は、OCF構造を有し、かつ、直接添加PMC又は他の活性物質含有マイクロカプセルを中に含有する可撓性多孔質溶解性固体シートを作製するための新しい改善された方法を提供し、当該方法は、(a)水又は好適な溶媒中に溶解又は分散された原材料(例えば、マイクロカプセル、水溶性ポリマー、界面活性剤、及び任意選択で可塑剤、並びに他の活性配合成分)を含有する湿潤プレミックスを提供する工程であって、約40℃及び1s-1で測定した約1,000cps~約25,000cpsの粘度によって特徴付けられる、湿潤プレミックスを提供する工程と、(b)当該湿潤プレミックスに(例えば、ガスを湿潤スラリーに導入することによって)通気して、約0.05~約0.5g/mLの低密度によって特徴付けられる通気された湿潤プレミックスを形成する工程と、(c)当該通気された湿潤プレミックスをシートに形成する工程と、(d)当該形成されたシートを、70℃~200℃の温度で1分~60分の乾燥時間で乾燥させて、本開示の固体シート物品を形成する工程と、を含む。好ましくは、通気された湿潤プレミックスによって形成されたシートは、対向する第1及び第2の側面を有し、そのように形成されたシートの乾燥は、当該形成されたシートの第1の側面から第2の側面へと減少する温度勾配を形成する加熱方向に沿って行われ、その加熱方向は、乾燥時間の半分を超える時間にわたって重力方向から実質的にオフセットされており、すなわち、当該乾燥工程は、大部分が「反重力の」加熱方向に沿って加熱下で行われる。このような主に「反重力」加熱方向は、これらに限定されないが、底部伝導式加熱/乾燥構成及び回転ドラム式加熱/乾燥構成を含む、様々な手段によって達成することができる。
【0124】
本開示の可撓性多孔質溶解性固体シート物品、すなわち、OCF構造を有し、かつ、PMC及び/又は他の活性物質含有マイクロカプセルを中に含有する可撓性多孔質溶解性固体シート物品を形成するための処理工程及び条件を、以下に詳細に説明する。
【0125】
工程(A):湿潤プレミックスの調製
本開示の湿潤プレミックスは、一般に、マイクロカプセル、水溶性ポリマー、界面活性剤、可塑剤、及び/又は他の配合成分を含む対象の原材料を、プレミックスタンクにおいて十分な量の水又は別の溶媒と混合することによって調製される。湿潤プレミックスは、メカニカルミキサーを使用して形成することができる。本明細書で有用なメカニカルミキサーには、ピッチ翼を有するタービン、又はMAXBLENDミキサー(Sumitomo Heavy Industries)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
本開示の好ましいが必要ではない実施形態では、マイクロカプセルは、実質的な量の水(例えば、20%超、好ましくは30%超、より好ましくは50%超)を有するスラリー形態で提供される。マイクロカプセルスラリーは、以下の方法によって形成することができる。
a)第1の乳化剤及び第1の樹脂の総溶液重量に基づいて、20%~90%、40%~80%、又は更には60%~80%の水を含み得る、第1の溶液を調製する工程であって、当該第1の乳化剤と当該第1の樹脂との比が、0.1:0~10:0、約0.1:1~10:1、0.5:1~3:1、又は更には0.8:1~1.1:1である、工程と、
b)第2の乳化剤及び第2の樹脂の総溶液重量に基づいて、約20%~約95%の水を含み得る、第2の溶液を調製する工程であって、当該第2の乳化剤と当該第2の樹脂との比が、0:1~約3:1、0.04:1~0.2:1、又は更には0.05:1~0.15:1である、工程と、
c)有益剤(例えば、香料)と当該第1の溶液とを組み合わせて第1の組成物を形成する工程と、
d)当該第1組成物を乳化させる工程と、
e)当該第1の組成物と当該第2の溶液とを組み合わせて、第2の組成物を形成し、所望により任意の加工助剤と当該第2の組成物とを組み合わせる工程であって、当該第1の組成物と当該第2の溶液とを任意の順序で組み合わせることができるが、一態様では、当該第2の溶液を当該第1の組成物に添加するか、又は当該第2の溶液と当該第1の組成物とを同時に組み合わせる、工程と、
f)当該第2の組成物を、少なくとも15分間、少なくとも1時間、又は更には4時間~100時間にわたって、25℃~100℃、45℃~90℃、又は更には50℃~80℃の熱の温度で混合し、所望により任意の加工助剤を当該第2の組成物に組み合わせる工程と、
g)工程f)中又はそれ以降で、所望により任意のスカベンジャー材料、構造化剤、及び/又は抗凝集剤を、当該第2の組成物と組み合わせる工程であって、かかる材料は任意の順序で組み合わされてもよいが、一態様では、スカベンジャー材料を最初に、任意の構造化剤を2番目に組み合わせ、続いて抗凝集剤を組み合わせる、工程と、
h)所望により、当該第2の組成物を噴霧乾燥する工程。
【0127】
マイクロカプセル作製方法の1つ以上の態様では、当該第1及び第2の樹脂は、アルデヒドとアミンとの反応生成物を含んでよく、好適なアルデヒドとしてはホルムアルデヒドが挙げられる。好適なアミンとしては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、グリコールウリル、及びこれらの混合物が挙げられる。好適なメラミンとしては、メチロールメラミン、メチル化メチロールメラミン、イミノメラミン、及びこれらの混合物が挙げられる。好適な尿素としては、ジメチロール尿素、メチル化ジメチロール尿素、尿素-レゾルシノール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0128】
本方法の1つ以上の態様では、当該第1及び第2の乳化剤は、カルボキシ、ヒドロキシル、チオール、アミン、アミド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される部分を含んでよい。一態様では、当該乳化剤のpKaは、5未満、好ましくは0よりも大きく5未満であってよい。乳化剤としては、アクリル酸-アルキルアクリレートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリアルキレン-co-カルボキシ無水物、ポリアルキレン-co-無水マレイン酸、ポリ(メチルビニルエーテル-co-無水マレイン酸)、ポリ(プロピレン-co-無水マレイン酸)、ポリ(ブタジエン)-co-無水マレイン酸)、及びポリ(ビニルアセテート-co-無水マレイン酸)、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0129】
本方法の1つ以上の態様では、第1及び第2の溶液のpHは、当該第1及び第2の溶液のpHが約3.0~7.0となるように制御されてよい。
【0130】
本方法の1つ以上の態様では、工程f.)中に、第2の組成物の総重量に基づいて0%~10%、1%~5%、又は更には2%~4%の塩がアニオン及びカチオンを含み、当該アニオンが、クロリド、スルフェート、ホスフェート、ニトレート、ポリホスフェート、シトレート、マレエート、フマレート、及びこれらの混合物からなる群から選択され、当該カチオンが、周期表のIA族元素、周期表のIIA族元素、アンモニウムカチオン、及びこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは硫酸ナトリウムが、当該第2の組成物と組み合わされ得る。
【0131】
本方法の1つ以上の態様では、上述の加工パラメータのいずれかが組み合わされてよい。
【0132】
本明細書で開示される方法における使用に好適な装置としては、連続撹拌タンク反応器、ホモジナイザ、タービン撹拌機、再循環ポンプ、パドルミキサー、プラウ剪断ミキサー、リボンブレンダ、いずれもバッチ式の垂直軸造粒機及びドラムミキサー、及び、利用可能な場合、連続プロセス構成における、噴霧乾燥機、及び押出機を挙げることができる。かかる装置は、Lodige GmbH(Paderborn,Germany)、Littleford Day,Inc.(Florence,Kentucky,U.S.A.)、Forberg AS(Larvik,Norway)、Glatt Ingenieurtechnik GmbH(Weimar,Germany)、Niro(Soeborg,Denmark)、Hosokawa Bepex Corp.(Minneapolis,Minnesota,U.S.A.)、Arde Barinco(New Jersey,U.S.A.)から入手可能である。
【0133】
そのようなマイクロカプセル含有スラリーを、他の原材料(例えば、水溶性ポリマー、界面活性剤、可塑剤、及び/又は他の配合成分)と、十分な量の水又は別の溶媒と、プレミックスタンクにおいて混合して、上述の湿潤プレミックスを形成する。
【0134】
本開示において、40℃及び1s-1で測定したときに約1,000cps~約25,000cpsの所定の範囲内にあるように、湿潤プレミックスの粘度を調節することが特に重要である。湿潤プレミックスの粘度は、後続の乾燥工程中に通気されたプレミックスの細孔膨張及び細孔開口に著しい影響を及ぼし、異なる粘度を有する湿潤プレミックスは、非常に異なる発泡構造体の可撓性多孔質溶解性固体シートを形成し得る。一方、湿潤プレミックスが厚すぎる/粘性が高すぎる(例えば、40℃及び1s-1で測定されるときに約25,000cps超の粘度を有する)場合、このような湿潤プレミックスの通気はより困難になり得る。より重要なことに、後続の乾燥工程中の薄膜気泡表面から三次元発泡体のプラトー境界内への介在液体排出は、悪影響を受け得るか、又は著しく制限され得る。乾燥中の介在液体排出は、後続の乾燥工程中に通気された湿潤プレミックス中の細孔膨張及び細孔開口を可能にするために重要であると考えられる。その結果、そのように形成された可撓性多孔質溶解性固体シートは、著しく小さい細孔及び細孔間のより低い相互結合性(すなわち、開いた細孔よりも「閉じた」細孔の方が多い)を有してもよく、これにより、水がそのようなシートの中へ進入し、そこから退出することを困難にする。一方、湿潤プレミックスが薄すぎる/延びすぎる(例えば、40℃及び1s-1で測定されるときに約1,000cps未満の粘度を有する)場合、通気された湿潤プレミックスは十分に安定でない場合があり、すなわち、気泡は、通気後及び乾燥前に湿潤プレミックス中で迅速に破裂、崩壊、又は合体し得る。結果として、得られる固体シートは、所望のものに比べて、はるかに多孔性が低く、より高密度であり得る。
【0135】
一実施形態では、湿潤プレミックスの粘度は、40℃及び1秒-1で測定したときに約3,000cps~約24,000cps、好ましくは約5,000cps~約23,000cps、より好ましくは約10,000cps~約20,000cpsの範囲である。プレミックスの粘度値を、コーン及びプレート形状を有するMalvern Kinexus Lab+レオメータ(CP1/50 SR3468 SS)を使用して、ギャップ幅0.054mm、温度40℃、及び剪断速度1.0レシプロカル秒で360秒間測定する。
【0136】
好ましいが必須ではない実施形態では、対象の固体は、湿潤プレミックスの総重量に基づいて、約15%~約70%、好ましくは約20%~約50%、より好ましくは約25%~約45%の濃度で湿潤プレミックス中に存在する。固体含有パーセントは、水及び低沸騰アルコールのような明らかに揮発性のあらゆる物質を除いた、固体成分、半固体成分、及び液体成分の全ての総加工混合物の重量に基づく重量パーセントの合計である。一方、湿潤プレミックス中の固体含有量が高すぎる場合、湿潤プレミックスの粘度は、介在液体排出を禁止又はその介在液体排出に悪影響を及ぼすレベルまで増加し、本明細書に記載されるような所望の主に連続気泡の多孔質固体構造の形成を防止するレベルまで増加し得る。他方、湿潤プレミックス中の固体含有量が低すぎる場合、湿潤プレミックスの粘度は、乾燥中に気泡の破裂/崩壊/合体及び細孔構造の収縮率(%)の増加を引き起こすレベルまで低下し得、これにより、多孔性及び密度が著しく小さい固体シートをもたらす。
【0137】
本開示の湿潤プレミックス中の対象の固体のうち、固体の総重量に基づいて、約0.1%~約12%のマイクロカプセル、1%~約75%の界面活性剤、約0.1%~約25%水の溶性ポリマー、及び任意選択で約0.1%~約25%の可塑剤が存在し得る。他の活性剤又は有益剤をプレミックスに添加することもできる。
【0138】
任意選択的に、湿潤プレミックスを、通気プロセスに先立って及び/又は通気プロセス中に、周囲温度よりも高い温度であるが、内部で成分の分解を引き起こすいかなる温度よりも低い温度で、迅速に予熱する。一実施形態では、湿潤プレミックスを、約40℃~約100℃、好ましくは約50℃~約95℃、より好ましくは約60℃~約90℃、最も好ましくは約75℃~約85℃の範囲の高温に維持する。一実施形態では、任意選択的な連続加熱を、通気工程の前に利用する。更に、このような高温で湿潤プレミックスを試し、維持するために、通気プロセス中に追加の熱を加えることができる。これは、1つ以上の表面からの伝導性加熱、蒸気の注入、又は他の処理手段により達成することができる。混合物への気泡の導入及び所望の固体シートの形成を改善するために、通気工程前に及び/又は通気工程中に湿潤プレミックスを予熱する行為により、固体をより高い含有パーセントで含む湿潤プレミックスの粘度を低下させる手段が提供され得ると考えられる。固体のより高い含有パーセントを実現することは、乾燥の全体的なエネルギー要件を低減し得るために望ましい。したがって、固体パーセントの増加は逆に、水濃度含有量の減少及び粘度の増加をもたらし得る。上述したように、粘度が高すぎる湿潤プレミックスは、本開示の実施には望ましくない。予熱することは、そのような粘度を効果的に妨害し、これにより、高い固体含有量のプレミックスを使用した場合であっても、高速溶解性シートの製造を可能にする。
【0139】
工程(B):湿潤プレミックスの通気
湿潤プレミックスの通気は、引き続き乾燥時に内部にOCF構造を形成するために十分な量の気泡を湿潤プレミックスに導入するために実施される。十分に通気された後、湿潤プレミックスは、非通気の湿潤プレミックス(不注意に閉じ込められた気泡をわずかに含んでもよい)又は不十分に通気された湿潤プレミックス(気泡をいくらか含有し得るが、非常に低い体積割合で及びかなり大きい気泡サイズのものを含んでもよい)の密度より著しく低い密度によって特徴付けられる。好ましくは、通気された湿潤プレミックスは、約0.05g/mL~約0.5g/mL、好ましくは約0.08g/mL~約0.4g/mL、より好ましくは約0.1g/mL~約0.35g/mL、更により好ましくは約0.15g/mL~約0.3g/mL、最も好ましくは約0.2g/mL~約0.25g/mLの範囲の密度を有する。
【0140】
通気は、本開示における物理的又は化学的手段のいずれかによって達成することができる。一実施形態では、それは、例えば、ロータステータミキサー、プラネタリミキサー、加圧ミキサー、非加圧ミキサー、バッチミキサー、連続ミキサー、半連続ミキサー、高剪断ミキサー、低剪断ミキサー、水中スバージャ、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない任意の好適な機械的処理手段を使用することによって、機械的撹拌を通して湿潤プレミックスにガスを導入することにより達成することができる。別の実施形態では、それは、化学的手段を通して、例えば、発泡系による二酸化炭素(CO2ガス)の形成を含む1つ以上の成分の化学反応を介してインサイチュでガス形成を提供するために化学的発泡剤を使用して達成することができる。
【0141】
特に好ましい実施形態では、湿潤プレミックスの通気は、マシュマロの製造において食品業界で従来利用されている連続加圧エアレータ又はミキサーを使用することによって、コスト効果的に達成され得ることがわかっている。連続加圧ミキサーは、湿潤プレミックスを均質化する又は通気するように働き、均一な気泡サイズを有する、高度に均一かつ安定した発泡構造体を生じさせ得る。高剪断ロータ/ステータの撹拌ヘッドの固有の設計は、連続気泡発泡体の層において均一な気泡サイズをもたらすことができる。好適な連続加圧エアレータ又はミキサーとしては、Morton泡立て器(Morton Machine Co.,Motherwell,Scotland)、Oakes連続自動ミキサー(E.T.Oakes Corporation,Hauppauge,New York)、Fedco連続ミキサー(Peerless Group,Sidney,Ohio)、Mondo(Haas-Mondomix B.V.,Netherlands)、Aeros(Aeros Industrial Equipment Co.,Ltd.,Guangdong Province,China)、及びPreswhip(Hosokawa Micron Group,Osaka,Japan)が挙げられる。例えば、Aeros A20連続エアレータは、約300~800(好ましくは約400~600)の混合ヘッド速度設定を伴う約300~800(好ましくは約500~700)の供給ポンプ速度設定で、それぞれ約50~150(好ましくは60~130、より好ましくは80~120)の空気流量で動作させることができる。別の例では、Oakes連続自動ミキサーは、約10~30rpm(好ましくは約15~25rpm、より好ましくは約20rpm)の混合ヘッド速度設定で、約10~30リットル/時間(好ましくは約15~25L/時、より好ましくは約19~20L/時間)の空気流量で動作させることができる。
【0142】
別の特定の実施形態では、湿潤プレミックスの通気は、回転ドラム乾燥機の一部である回転バー、より具体的には、湿潤プレミックスがドラム乾燥機の加熱された外面上にコーティングされて乾燥される前に貯蔵される供給トラフの構成要素を使用することによって達成することができる。回転バーは、典型的には、ドラム乾燥機の加熱された回転ドラム上にコーティングされる前の待機時間中に、湿潤プレミックスを撹拌して、供給トラフ内の相分離又は沈降を防止するために使用される。本開示では、このような回転バーを、約150~約500rpm、好ましくは約200~約400rpm、より好ましくは約250~約350rpmの範囲の回転速度で動作させて、湿潤プレミックスを空気界面で混合し、湿潤プレミックスの所望の通気を達成するのに必要な十分な機械的撹拌を提供することが可能である。
【0143】
上述したように、湿潤プレミックスは、通気プロセス中に高温に維持されて、乾燥中の最適化された通気及び制御された排水のために湿潤プレミックスの粘度を調整することができる。例えば、通気が回転ドラムの回転バーを使用することによって達成されるとき、供給トラフ内の通気された湿潤プレミックスは、典型的には、回転バーによる初期通気中(回転ドラムが静止している間)、約60℃に維持され、次いで、回転ドラムが加熱されて回転を開始するときに約70℃まで加熱される。
【0144】
通気された湿潤プレミックスの気泡サイズは、得られる固体シートのOCF構造内で均一な層を達成するのを助ける。一実施形態では、通気された湿潤プレミックスの気泡サイズは、約5~約100マイクロメートルであり、別の実施形態では、気泡サイズは、約20マイクロメートル~約80マイクロメートルである。気泡サイズの均一性により、得られる固体シートは、一貫した密度を有する。
【0145】
工程(C):シート形成
十分な通気後、通気された湿潤プレミックスは、対向する第1の面及び第2の面を有する1つ以上のシートを形成する。シート形成工程は、例えば、押出成形、鋳造、成型、真空成形、プレス、印刷、コーティングなどによって、任意の好適な様式で実施することができる。より具体的には、通気された湿潤プレミックスは、(i)それを浅いキャビティ若しくはトレー又は特別に設計されたシート型に鋳造することと、(ii)それを乾燥機の連続ベルト又はスクリーン上に押出成形することと、(iii)それを回転ドラム乾燥機の外面上にコーティングすることと、を行うことによってシートに形成することができる。好ましくは、シートが形成される支持面は、金属(例えば、鋼、クロムなど)、TEFLON(登録商標)、ポリカーボネート、NEOPRENE(登録商標)、HDPE、LDPE、ゴム、ガラスなどの、防食で非相互作用及び/又は非粘着性の材料によって形成されるか、又はコーティングされる。
【0146】
好ましくは、通気された湿潤プレミックスの形成されたシートは、0.5mm~4mm、好ましくは0.6mm~3.5mm、より好ましくは0.7mm~3mm、更により好ましくは0.8mm~2mm、最も好ましくは0.9mm~1.5mmの範囲の厚さを有する。通気された湿潤プレミックスのそのような形成されたシートの厚さを制御することは、得られる固体シートが所望のOCF構造を有することを確実にするために重要となり得る。形成されたシートが薄すぎる(例えば、厚さが0.5mm未満)場合、通気された湿潤プレミックス中に閉じ込められた気泡の多くが後続の乾燥工程中に膨張して、得られる固体シートの厚さ全体を通って延在する貫通孔を形成する。このような貫通孔は、多すぎる場合、シートの全体的な構造的一体性及び美的外観の両方を著しく損なう場合がある。形成されたシートが厚すぎる場合には、乾燥のためにより長い時間がかかるだけでなく、その厚さに沿って異なる領域(例えば、上部領域、中間領域、及び底部領域)間のより大きな孔径の変動を有する固体シートをもたらすことになる。なぜならば、乾燥時間が長いほど、気泡の破裂/崩壊/合体、液体排出、細孔膨張、細孔開口、水蒸発などによって、より不均衡な力が生じる場合があるからである。更に、比較的薄いシートの多数の層を、所望の洗浄効果又は他の効果をもたらすために、より大きな厚さの三次元構造に組み立てることができ、一方で、迅速に溶解するために十分な細孔構造を提供すると共に、比較的短い乾燥時間内で効率的な乾燥を確実にすることができる。
【0147】
工程(D):反重力加熱下での乾燥
本開示によるシート作製方法の乾燥工程中に、OCF構造は、水蒸発、気泡崩壊、薄膜気泡表面から気泡間のプラトー境界内への介在液体排出(気泡間の開口部を生成して連続気泡を形成する)、及びプレミックスの固化といった同時的な機構の下で形成される。様々な処理条件が、例えば、湿潤プレミックス中の固体含有量、湿潤プレミックスの粘度、重力、及び乾燥温度などのこれらの機構、並びに制御された排液を達成して所望のOCF構造を形成するようにかかる処理条件を均衡化させる必要性に影響し得る。
【0148】
上述の処理条件に加えて、乾燥工程中に使用される熱エネルギーの方向(すなわち、加熱方向)も、得られるOCF構造に顕著な影響を及ぼし得るということが、本開示の驚くべきかつ予想外の発見であった。例えば、乾燥工程中に熱エネルギーが非方向性物質(すなわち、はっきりとした加熱方向がない)に適用される場合、又は乾燥工程の大部分にわたって加熱方向が重力方向と実質的に整列している場合(すなわち、それらの間のオフセット角度が90°未満である場合)、得られる可撓性多孔質溶解性固体シートは、より小さい細孔開口を有しかつその厚さにわたる方向に沿った異なる領域においてより大きな孔径変動を有する上面を有する傾向がある。対照的に、乾燥工程の大部分にわたって、加熱方向が重力方向からオフセットしているとき(すなわち、それらの間に90°以上のオフセット角度で)、得られる固体シートは、より大きい細孔開口を有しかつそのようなシートの厚さにわたる方向に沿った異なる領域において減少した孔径変動を有する上面を有し得る。それに対応して、後者のシートは、そこを流れる水に対して受容性が高く、したがって、前者のシートよりも溶解性が高い。いかなる理論にも束縛されるものではないが、乾燥工程中の加熱方向と重力方向との間の整列又は誤整列、及びその持続時間は、気泡間の介在液体排出にかなり影響し、これに対応して、固化プレミックス中の細孔膨張及び細孔開口に影響を及ぼし、非常に異なるOCF構造を有する固体シートをもたらし得ると考えられる。
【0149】
したがって、本開示の重要な特徴は、乾燥時間全体にわたって、又は少なくとも乾燥時間の半分超にわたって、乾燥工程中に反重力加熱方向を使用することである。いかなる理論にも束縛されるものではないが、このような反重力加熱方向は、乾燥工程中に形成されたシートの底部領域に向かう過度の介在液体排出を低減又は妨害することができると考えられる。更に、上面が最後に乾燥されるので、形成されたシートの上面付近の気泡を膨張させ、上面に細孔開口を形成するのにより長い時間を可能にする(湿潤マトリックスが乾燥されると、気泡はもはや膨張しないか、又は表面開口を形成することができないため)。その結果、このような反重力加熱による乾燥によって形成される固体シートは、より迅速な溶解、及び他の驚くべきかつ予想外の利益を可能にする、改善されたOCF構造によって特徴付けられる。
【0150】
特定の実施形態では、反重力加熱方向を、伝導式加熱/乾燥構成によって提供する。例えば、通気された湿潤プレミックスは、2つの対向する面を有するシートを形成するために、金型へと鋳造されることができる。次いで、金型を、約80℃~約170℃、好ましくは約90℃~約150℃、より好ましくは約100℃~約140℃の制御された表面温度によって特徴付けられる平面状の加熱された表面を有する、ホットプレート又は加熱された移動ベルト又は任意の他の好適な加熱装置上に置くことができる。平面状の加熱された表面から、通気された湿潤プレミックスのシートの底面へと伝導によって熱エネルギーが伝達されることによって、シートの固化は底部領域から始まり、最後に上部領域に到達するように上向きに徐々に移動する。このプロセス中に加熱方向が主に反重力(すなわち、重力方向から実質的にオフセットしている)であることを確実にするために、加熱された表面は、乾燥中のシートの一次熱源であることが好ましい。任意の他の加熱源が存在する場合、全体的な加熱方向は適宜変化してもよい。より好ましくは、加熱された表面は、乾燥中のシートの唯一の熱源である。
【0151】
別の特定の実施形態では、反重力加熱方向を、ドラム乾燥又はローラ乾燥とも称される回転ドラム式加熱/乾燥構成によって提供する。ドラム乾燥は、比較的低温で、加熱された回転可能なドラム(ローラ又はシリンダとも称される)の外面上の原材料の粘性プレミックスから液体を乾燥させてシート状物品を形成するために使用される接触乾燥法の一種である。これは、大量の乾燥に特に好適な連続乾燥プロセスである。乾燥は、接触加熱/乾燥を介して比較的低温で実施されるため、通常は高いエネルギー効率を有し、原材料の組成的一体性に悪影響を及ぼさない。
【0152】
ドラム乾燥に使用される加熱された回転可能なシリンダは、例えば蒸気又は電気によって内部で加熱され、所定の回転速度でベースブラケットに取り付けられた電動駆動装置によって回転される。加熱された回転可能なシリンダ又はドラムは、約0.5メートル~約10メートル、好ましくは約1メートル~約5メートル、より好ましくは約1.5メートル~約2メートルの範囲の外径を有することが好ましい。それは、約80℃~約170℃、好ましくは約90℃~約150℃、より好ましくは約100℃~約140℃の制御された表面温度を有してもよい。更に、このような加熱された回転可能なシリンダは、約0.005rpm~約0.25rpm、好ましくは約0.05rpm~約0.2rpm、より好ましくは約0.1rpm~約0.18rpmの速度で回転する。
【0153】
この加熱された回転可能なシリンダは、好ましくは、その外面上が非粘着性コーティングでコーティングされている。非粘着性コーティングは、加熱された回転可能なドラムの外面上に重なってもよく、又は加熱された回転可能なドラムの外面の媒体に固定されてもよい。媒体としては、耐熱不織布、耐熱性炭素繊維、耐熱金属又は非金属メッシュなどが挙げられるが、これらに限定されない。非粘着性コーティングは、シート形成プロセス中の損傷からシート状物品の構造的一体性を効果的に維持することができる。
【0154】
また、上述したような原材料の通気された湿潤プレミックスを加熱された回転可能なドラム上に加えるための供給機構をベースブラケット上に提供し、それによって、加熱された回転可能なドラムの外面上に粘性プレミックスの薄層を形成する。したがって、プレミックスのこのような薄層は、加熱された回転可能なドラムによって接触加熱/乾燥を介して乾燥される。供給機構は、ベースブラケットに設置された供給トラフを含む一方、供給トラフは、その上に、少なくとも1つの(好ましくは2つの)供給ホッパ、供給の動的観察のための撮像装置、並びに供給ホッパの位置及び傾斜角度を調節するための調整装置が設置されている。調整装置を使用して、供給ホッパと加熱された回転可能なドラムの外面との間の距離を調整することによって、形成されたシート状物品の異なる厚さの必要性を満たすことができる。調整装置はまた、速度及び品質の材料要件を満たすように、供給ホッパを異なる傾斜角度に調整するために使用することができる。供給トラフはまた、湿潤プレミックスが加熱された回転可能なドラムの外面上にコーティングされる前に相分離及び沈降を回避するために、湿潤プレミックスをその中で撹拌するための回転バーを含んでもよい。このような回転バーは、上述したように、必要に応じて湿潤プレミックスを通気するために使用することもできる。
【0155】
また、急速な熱損失を防止するために、ベースブラケットに取り付けられた加熱シールドが存在してもよい。加熱シールドはまた、加熱された回転可能なドラムによって必要とされるエネルギーを効果的に節約することができ、それにより、エネルギー消費の低減を実現し、コスト削減を提供することができる。加熱シールドは、モジュール式組立構造体、又は統合型構造体であり、ベースブラケットから自由に取り外すことができる。熱蒸気を吸引するための加熱シールドには、何らかの水凝縮物が、形成されているシート状物品上に落下するのを回避するために、吸引装置が設置されている。
【0156】
加熱された回転可能なドラムによって既に形成されたシート状物品を掻き取るか又は掬い付けるための、ベースブラケットに取り付けられた任意選択的な静的掻き取り機構が存在してもよい。静的掻き取り機構は、更なる処理のために既に形成されたシート状物品を下流に搬送するために、ベースブラケット上又はその片側上に設置することができる。静的掻き取り機構は、加熱された回転可能なドラムに、自動的に又は手動で接近し及びそこから離れるように移動することができる。
【0157】
本開示の可撓性多孔質溶解性固体シートの作製方法は、以下のとおりである。まず、ベースブラケット上の非粘着性コーティングを有する加熱された回転可能なドラムを、電動駆動装置によって駆動する。次に、調整装置が、供給ホッパと加熱された回転可能なドラムの外面との間の距離が予め設定された値になるように供給機構を調整する。一方、供給ホッパは、可撓性多孔質溶解性固体シートを作製するための、全て又はいくつかの原材料を含有する通気された湿潤プレミックスを、加熱された回転可能なドラムの外面上に加えて、その上に、前のセクションで上述したように所望の厚さを有する通気された湿潤プレミックスの薄層を形成する。任意選択的に、加熱シールドの吸引装置は、加熱された回転可能なドラムによって生成された熱蒸気を吸引する。次に、静的掻き取り機構が、加熱された回転可能なドラムによって比較的低温(例えば、130℃)で乾燥された後に、通気された湿潤プレミックスの薄層によって形成された乾燥/固化したシートを掻き取る/掬い上げる。乾燥/固化したシートはまた、このような静的掻き取り機構を用いずに、手動で又は自動的に剥離され、次いでローラバーによって巻き上げることもできる。
【0158】
本開示における総乾燥時間は、湿潤プレミックス中の配合物量及び固体含有量、乾燥温度、熱エネルギー流量、及び乾燥されるシート材料の厚さに依存する。好ましくは、乾燥時間は、約1分~約60分、好ましくは約2分~約30分、より好ましくは約2~約15分、更により好ましくは約2~約10分、最も好ましくは約2~約5分である。
【0159】
このような乾燥時間中、加熱方向は、乾燥時間の半分超、好ましくは乾燥時間の55%又は60%超(例えば、上述の回転ドラム式加熱/乾燥構成におけるもののように)、より好ましくは乾燥時間の75%超又は更には100%(例えば、上述の底部伝導式加熱/乾燥構成におけるもののように)にわたって重力方向とは実質的に反対となるように配置される。更に、通気された湿潤プレミックスのシートは、第1の加熱方向の下で第1の持続時間にわたって乾燥され、次いで第2の反対側の加熱方向の下で第2の持続時間にわたって乾燥させることができ、第1の加熱方向は、重力方向とは実質的に反対であり、第1の持続時間は、全乾燥時間の51%~99%(例えば、55%、60%、65%、70%~80%、85%、90%、又は95%)のいずれかにある。このような加熱方向の変化は、例えば、長手方向中心軸に沿って回転することができる蛇行形状の細長い加熱ベルトによって、本明細書に図示されていない様々な他の構成によって容易に達成することができる。
【0160】
IV.固体シートの物理的特性
上述の処理工程によって形成された可撓性多孔質溶解性固体シートは、シートへのより容易な水の進入、及び水中におけるシートのより速い溶解を可能にする、改善された孔構造によって特徴付けられる。このような改善された細孔構造は、主に上述のような様々な処理条件を調節することによって達成され、それらは、比較的独立しているか、又は化学的配合物又はそのようなシートの作製に使用される特定の成分によって影響を受けない。
【0161】
一般に、このような固体シートは、(i)以下の試験3によって測定される、約80%~100%、好ましくは約85%~99%、より好ましくは約90%~98%の連続気泡含有パーセント、及び(ii)以下の試験2に記載のMicro-CT法によって測定される、約100μm~約2000μm、好ましくは約150μm~約1000μm、より好ましくは約200μm~約600μmの全体平均孔径によって特徴付けられ得る。全体平均孔径は、本開示のOCF構造の多孔度を定義する。連続気泡含有パーセントは、本開示のOCF構造中の細孔間の相互結合性を定義する。OCF構造の相互結合性はまた、国際公開第2010/077627号及び同第2012/138820号に開示されている星形体積又は構造モデル指数(Structure Model Index、SMI)によっても説明され得る。
【0162】
本開示のこのような固体シートは、対向する上面及び底面を有し、その上面は、以下の試験1に記載のSEM法によって測定される、約100μm超、好ましくは約110μm超、好ましくは約120μm超、より好ましくは約130μm超、最も好ましくは約150μm超の表面平均孔径によって特徴付けられ得る。
【0163】
また更に、本開示の改善された加熱/乾燥(例えば、回転ドラム式加熱/乾燥)構成によって形成される固体シートは、他の加熱/乾燥構成(例えば、衝突オーブン式)によって形成されたシートと比較して、その厚さ方向に沿った異なる領域間のより均一な孔径分布によって特徴付けられる。具体的には、本開示の固体シートは、上面に隣接する上部領域と、底面に隣接する底部領域と、それらの間の中間領域とを含み、上部領域、中間領域、及び底部領域は全て同じ厚さを有する。このような固体シートの上部領域、中間領域、及び底部領域の各々は、平均孔径によって特徴付けられるが、上部領域における平均孔径に対する底部領域における平均孔径の比(すなわち、底部対上部平均孔径比)は、約0.6~約1.5、好ましくは約0.7~約1.4、好ましくは約0.8~約1.3、より好ましくは約1~約1.2である。比較すると、衝突オーブン式加熱/乾燥構成によって形成された固体シートは、(以下の実施例1に示すように)1.5超、典型的には約1.7~2.2の底部対上部平均孔径比を有し得る。また、本開示の固体シートは、約0.5~約1.5、好ましくは約0.6~約1.3、より好ましくは約0.8~約1.2、最も好ましくは約0.9~約1.1の底部対中間平均孔径比、並びに約1~約1.5、好ましくは約1~約1.4、より好ましくは約1~約1.2の中間対上部平均孔径比によって特徴付けられ得る。
【0164】
また更に、本開示の固体シートの上部領域、中間領域、及び底部領域における平均孔径間の相対標準偏差(relative standard deviation、RSTD)は、20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下である。対照的に、衝突オーブン式加熱/乾燥構成によって形成された固体シートは、20%超、恐らく25%超、又は更には35%超の上部/中間/底部の平均孔径間の相対標準偏差(RSTD)を有し得る。
【0165】
好ましくは、本開示の固体シートは、以下の試験2によって測定される、約5μm~約200μm、好ましくは約10μm~約100μm、より好ましくは約10μm~約80μmの平均気泡壁厚さによって更に特徴付けられる。
【0166】
本開示の固体シートは、少量の水を含み得る。好ましくは、それは、以下の試験4によって測定される、固体シートの重量に基づいて、0.5%~25%、好ましくは1%~20%、より好ましくは3%~10%の最終水分含量によって特徴付けられる。結果として得られる固体シートにおける適切な最終水分含量は、シートの所望の可撓性/変形性を確保し、並びに消費者に柔らかな/滑らかな感触を提供することができる。最終水分含量が低すぎる場合、シートは、脆すぎる、又は剛性が高すぎる場合がある。最終水分含量が高すぎる場合、シートはべたつきが多すぎる場合があり、その全体的な構造的一体性が損なわれる場合がある。
【0167】
本開示の固体シートは、約0.6mm~約3.5mm、好ましくは約0.7mm~約3mm、より好ましくは約0.8mm~約2mm、最も好ましくは約1mm~約2mmの範囲の厚さを有し得る。固体シートの厚さは、以下に説明される試験5を使用して測定することができる。乾燥後の固体シートは、全体的な体積膨張を招く細孔膨張に起因して、通気された湿潤プレミックスのシートよりもわずかに厚くてもよい。
【0168】
本開示の固体シートは、以下に説明される試験6によって測定される、約50グラム/m2~約500グラム/m2、好ましくは約150グラム/m2~約450グラム/m2、より好ましくは約250グラム/m2~約400グラム/m2の坪量によって更に特徴付けられ得る。
【0169】
また更に、本開示の固体シートは、以下の試験7によって測定される、約0.05グラム/cm3~約0.5グラム/cm3、好ましくは約0.06グラム/cm3~約0.4グラム/cm3、より好ましくは約0.07グラム/cm3~約0.2グラム/cm3、最も好ましくは約0.08グラム/cm3~約0.15グラム/cm3の範囲の密度を有し得る。本開示の固体シートの密度は、全体的な体積膨張を招く細孔膨張にも起因して、通気された湿潤プレミックスのシートの密度よりも低い。いくつかの実施形態では、本開示の固体シートは、約0.06グラム/cm3~約0.16グラム/cm3、好ましくは約0.07グラム/cm3~約0.15グラム/cm3、より好ましくは約0.08グラム/cm3~約0.145グラム/cm3の密度を有し得る。そのような比較的密度の低いシートを含有する固体物品は、更により改善された漏れ性能を達成し得る。
【0170】
更に、本開示の固体シートは、以下に記載される試験8によって測定される、約0.03m2/g~約0.25m2/g、好ましくは約0.04m2/g~約0.22m2/g、より好ましくは0.05m2/g~0.2m2/g、最も好ましくは0.1m2/g~0.18m2/gの比表面積によって特徴付けることができる。本開示の固体シートの比表面積は、その多孔度を示し得、例えば、比表面積が大きいほど、シートがより多孔質であり、その溶解速度が速くなるといった、その溶解速度に影響を与え得る。
【0171】
好ましい実施形態では、本開示による固体シート及び/又は本開示による溶解性固体物品は、
・85%~99%、好ましくは90%~98%の連続気泡含有パーセント、及び/又は
・150μm~1000μm、好ましくは200μm~600μmの全体平均孔径、及び/又は
・5μm~200μm、好ましくは10μm~100μm、より好ましくは10μm~80μmの平均気泡壁厚さ、及び/又は
・固体シート物品の重量に基づいて、0.5%~25%、好ましくは1%~20%、より好ましくは3%~10%の最終水分含量、及び/又は
・0.6mm~3.5mm、好ましくは0.7mm~3mm、より好ましくは0.8mm~2mm、最も好ましくは1mm~2mmの厚さ、及び/又は
・約50グラム/m2~約500グラム/m2、好ましくは約150グラム/m2~約450グラム/m2、より好ましくは約250グラム/m2~約400グラム/m2の坪量、及び/又は
・0.05グラム/cm3~0.5グラム/cm3、好ましくは0.06グラム/cm3~0.4グラム/cm3、より好ましくは0.07グラム/cm3~0.2グラム/cm3、最も好ましくは0.08グラム/cm3~0.15グラム/cm3の密度、及び/又は
・0.03m2/g~0.25m2/g、好ましくは0.04m2/g~0.22m2/g、より好ましくは0.05m2/g~0.2m2/g、最も好ましくは0.1m2/g~0.18m2/gの比表面積、によって特徴付けられる。
【0172】
V:変換率
本開示の可撓性溶解性多孔質固体シート物品が形成されると、上述したように、そのようなシートの2つ以上を更に組み合わせて及び/又は処理して、球状、立方体、長方形、楕円形、円筒形、ロッド、シート、花形、扇型、星形、ディスク形状などが挙げられるが、これらに限定されない任意の望ましい三次元形状の溶解性固体物品を形成することができる。シートは、その例として化学的手段、機械的手段、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない当該技術分野において既知の任意の手段によって、組み合わされて及び/又は処理してもよい。このような組み合わせ工程及び/又は処理工程は、本明細書において集合的に「変換」プロセスと称され、すなわち、これは、本開示の2つ以上の可撓性溶解性多孔質シートを、所望の三次元形状を有する溶解性固体物品に変換するように機能する。
【0173】
更に、本開示の多層溶解性固体物品は、最大寸法D及び最小寸法z(最大寸法に対して垂直である)によって特徴付けられ得、D/z比(以下、「アスペクト比」とも称される)は、1~約10、好ましくは約1.4~約9、好ましくは約1.5~約8、より好ましくは約2~約7の範囲である。アスペクト比が1である場合、溶解性固体物品は球状の形状を有することに留意されたい。アスペクト比が約1.4である場合、溶解性固体物品は立方体形状を有する。本開示の多層溶解性固体物品は、約3mm超であるが約20cm未満、好ましくは約4mm~約10cm、より好ましくは約5mm~約30mmの最小寸法zを有し得る。
【0174】
上述の多層溶解性固体物品は、このような可撓性溶解性多孔質シートを2つ以上含んでもよい。例えば、それは、約4~約50、好ましくは約5~約40、更に好ましくは約6~約30の可撓性溶解性多孔質シートを含んでもよい。本開示によって作製された可撓性溶解性多孔質シート内の改善されたOCF構造は、多くのシート(例えば、15~40)を一緒に積み重ねることを可能にする一方で、積層体に十分な全体的溶解速度を依然として提供する。
【0175】
本開示の特に好ましい実施形態では、多層溶解性固体物品は、上述の可撓性溶解性多孔質シートの15~40層を含み、約2~約7の範囲のアスペクト比を有する。
【0176】
本開示の多層溶解性固体物品は、そのような物品の外面(例えば、1つ以上の側面)から見える、異なる色の個々のシートを含んでもよい。異なる色のこのような可視シートは、消費者にとって審美的に心地良いものである。更に、個々のシートの異なる色は、個々のシートに含まれる異なる有益剤を示す視覚的手がかりを提供することができる。例えば、多層溶解性固体物品は、第1の色を有しかつ第1の有益剤を含有する第1のシートと、第2の色を有しかつ第2の有益剤を含有する第2のシートとを含んでもよく、第1の色は、第1の有益剤を示す視覚的手がかりを提供し、第2の色は、第2の有益剤を示す視覚的手がかりを提供する。
【0177】
また、1つ以上の機能性成分は、例えば、噴霧、散布、散粉、コーティング、拡散、浸漬、注入、又は更には蒸着によって、上述のような多層溶解性固体物品の個々のシートの間に「挟持」することができる。個々のシートの周辺近くの切断密封又はエッジ密封とのそのような機能性配合成分の干渉を回避するために、そのような機能性配合成分は、2つの隣接するシート間の中央領域内に位置し、その中央領域は最大寸法Dの少なくとも10%の距離だけ離間している領域として画定されることが好ましい。好適な機能性配合成分は、洗浄活性物質(界面活性剤、遊離香料、カプセル化香料、香料マイクロカプセル、シリコーン、軟化剤、酵素、漂白剤、着色剤、ビルダー、レオロジー調整剤、pH調整剤、及びこれらの組み合わせ)及びパーソナルケア活性物質(例えば、皮膚軟化剤、保湿剤、コンディショニング剤、及びこれらの組み合わせ)からなる群から選択することができる。
【0178】
本開示の特に好ましい実施形態では、コーティング組成物は、上述の2つ以上の可撓性溶解性多孔質シートのうちの少なくとも1つの表面に適用され、次いで、当該2つ以上のシートを一緒に積み重ねて、三次元多層形状を形成する。当該コーティング組成物は、任意の適切な手段によって、例えば、噴霧、散布、散粉、コーティング、拡散、浸漬、注入、圧延(rolling)、又は更には蒸着によって、多層溶解性固体物品の個々のシート間に適用され得る。コーティング組成物は、界面活性剤、香料、溶媒(例えば、グリセロール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エタノール、水など)、レオロジー調整剤(例えば、セルロース;グアー;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及びPOE-PPOコポリマー;ポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルピロリドン;ポリビニルアルコール;ポリエチレンイミン;二酸化ケイ素;水膨潤性粘土;ガム、及びこれらの誘導体)、及び/又は他の配合成分を含み得る。当該固体コーティング組成物は、20℃及び1s-1で測定されるとき、約1cps~約25,000cps、好ましくは約2cps~約10,000cps、より好ましくは約3cps~約5,000cps、最も好ましくは約1,000cps~約5,000cpsの粘度によって特徴付けられる。コーティング組成物の粘度は、コーン及びプレート形状を有するMalvern Kinexus Lab+レオメータ(CP1/50 SR3468 SS)を使用して、0.054mmのギャップ幅、20℃の温度及び360秒にわたる1.0レシプロカル秒の剪断速度で測定することができる。
【0179】
好ましくは、2つ以上のシートは、コーティング組成物がスタックの外面のいずれにも存在しないように一緒に積み重ねられる。本開示の驚くべきかつ予期せぬ発見は、コーティング組成物を含有する三次元多層固体物品が、同じ総量の界面活性剤を有するがコーティング組成物を含まない多層固体物品よりも著しく改善された溶解プロファイルを有することである。
【0180】
試験法
試験1:シート物品の表面平均孔径を決定する走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopic、SEM)法
Hitachi TM3000 Tabletop Microscope(S/N:123104-04)を使用して、サンプルのSEM顕微鏡写真を取得する。本開示の固体シート物品のサンプルは、面積約1cm×1cmであり、より大きなシートから切断される。画像を倍率50Xで収集し、ユニットを15kVで動作させる。最低5つの顕微鏡画像を、各サンプルにわたってランダムに選択された位置から収集し、平均孔径が推定される約43.0mm2の総分析面積を得る。
【0181】
次いで、SEM顕微鏡写真を、まず、Matlab(登録商標)内の画像解析ツールボックスを使用して処理する。必要に応じて、画像をグレースケールに変換する。所与の画像について、Matlab(登録商標)の「imhist」関数を使用して、単一画素ごとの強度値のヒストグラムを生成する。典型的には、このようなヒストグラムから、細孔内のより明るいシート表面の画素及びより暗い領域の画素に対応する2つの別個の分布が明らかとなる。これら2つの分布のピーク値間の強度値に対応する閾値を選択する。次いで、この閾値よりも低い強度値を有する全ての画素を、0の強度値に設定し、それよりも強度値が高い画素を1に設定し、これによって、2値の白黒画像を生成する。次いで、その2値画像を、ImageJ(https://imagej.nih.gov、バージョン1.52a)を使用して分析し、細孔面積比及び孔径分布の両方を調べる。各画像のスケールバーを使用して、画素/mmスケーリング係数を提供する。分析のために、自動閾値化機能及び分析粒子機能を使用して、各細孔を分離する。分析関数からの出力は、画像全体と細孔面積とに対する面積比及び検出された細孔ごとの細孔周長を含む。
【0182】
平均孔径は、DA50として定義され、すなわち、総細孔面積の50%は、DA50平均直径以下の水力直径を有する細孔から構成される。
【0183】
水力直径=‘4*細孔面積(m2)/細孔周長(m)’。
【0184】
これは、全て円形ではない細孔を考慮するために計算された等価直径である。
【0185】
試験2:連続気泡発泡体(OCF)の全体又は領域の平均孔径及び平均気泡壁厚さを決定するためのマイクロコンピュータ断層撮影(Micro-Computed Tomographic、μCT)法
多孔度は、OCFによって占有される全空間に対する空隙空間の比率である。多孔度は、空隙空間を閾値化によって区画化し、全ボクセルに対する空隙ボクセルの比率を決定することによって、μCTスキャンから計算することができる。同様に、固体体積分率(solid volume fraction、SVF)は、全空間に対する固体空間の比率であり、SVFは、全ボクセルに対する占有されたボクセルの比率として計算することができる。多孔度及びSVFの両方とも、OCFの高さ方向における孔径分布、又はOCFストラットの平均気泡壁厚などの構造情報を提供しない平均スカラー値である。
【0186】
OCFの3D構造によって特徴付けるために、高い等方性空間分解能でデータセットを取得することができるμCT X線走査機器を使用してサンプルを撮像する。好適な計測器の一例は、以下の設定で作動するSCANCO Systemモデル50μCTスキャナ(Scanco Medical AG,Bruttisellen,Switzerland)である。エネルギーレベル:133μAで45kVp、投影:3000、視野:15mm、積分時間:750ms、平均:5回、及びボクセルサイズ:1画素当たり3μm。走査及びその後のデータ再構成が完了した後、スキャナシステムは、ISQファイルと称される16ビットデータセットを作成し、そこでは、グレーレベルは、X線減衰の変化を反映し、ひいては材料密度に関連する。次いで、ISQファイルを、スケーリング係数を使用して8ビットに変換する。
【0187】
走査されたOCFサンプルを、通常、直径およそ14mmのコアを穿孔することによって調製する。OCFパンチを、低減衰発泡体上に平らに置き、次いで、走査用の直径15mmのプラスチック円筒管に取り付ける。取り付けられた切断サンプル全ての体積全体がデータセットに含まれるように、サンプルの走査を取得する。このより大きなデータセットから、サンプルデータセットのより小さいサブボリュームを、走査されたOCFの総断面から抽出して3Dのデータスラブを作成し、ここで、細孔は、エッジ/境界効果なしに定性的に評価することができる。
【0188】
高さ方向における孔径分布を特徴付けるために、ストラットサイズ、局所厚さマップアルゴリズム、又はLTMを、サブボリュームデータセット上に実装する。LTM法は、ユークリッド距離マッピング(Euclidean Distance Mapping、EDM)で開始し、各空隙ボクセルのその最も近い境界からの距離に等しいグレーレベル値を割り当てる。EDMデータに基づいて、細孔を表す3D空隙空間(又は、ストラットを表す3D固体空間)を、EDM値に一致するようにサイズ決めされた球体でモザイク化する。球体によって囲まれたボクセルに、最大球面の半径値を割り当てる。換言すれば、各空隙ボクセル(又はストラットの固体ボクセル)には、両方が空隙空間境界(又はストラットの固体空間境界)内に適合しかつ割り当てられたボクセルを含む、最大球面の径方向値が割り当てられる。
【0189】
LTMデータ走査から出力された3D標識された球面分布は、高さ方向(又はZ方向)における二次元画像のスタックとして処理され、スライスからスライスへの球面直径の変化をOCF深度の関数として推定するために使用することができる。ストラットの厚さを、3Dデータセットとして処理し、平均値は、サブボリュームの全体又は一部について評価することができる。計算及び測定は、Thermo Fisher ScientificのAVIZO Lite(9.2.0)及びMathworksのMATLAB(登録商標)(R2017a)を使用して行った。
【0190】
試験3:シート物品の連続気泡含有パーセント
連続気泡含有パーセントを、ガス比重瓶法を通して測定する。ガス比重瓶法は、体積を正確に測定するガス置換法を使用する一般的な分析技術である。置換媒体としてヘリウム又は窒素のような不活性ガスが使用される。本開示の固体シート物品のサンプルを既知の体積の計器コンパートメント内に密閉し、適切な不活性ガスを入れ、次に別の精密な内部体積に膨張させる。膨張前及び膨張後の圧力を測定し、これを使用してサンプル物品の体積を計算する。
【0191】
ASTM標準試験方法D2856は、気体比重瓶(air comparison pycnometer)のより古いモデルを使用して開放気泡の割合を決定するための手順を提供する。この装置はもはや製造されていない。しかしながら、MicromeriticsのAccuPyc比重瓶を使用する試験を実施することにより、便利にかつ精密に開放気泡パーセントを決定することができる。ASTM手順書D2856は、発泡材料の連続気泡のパーセントを決定するための5つの方法(A、B、C、D及びE)について述べている。これらの実験のために、窒素ガスを使用して、Accupyc 1340を使用して、ASTM foampycソフトウェアにより、サンプルを分析することができる。ASTM手順書の方法Cは、連続気泡パーセントを計算するために使用されるべきである。この方法は、以下の等式に従って、キャリパー及び標準体積計算を使用して決定される幾何学的体積を、Accupycによって測定される連続気泡体積と単純に比較する。
連続気泡パーセント=サンプルの連続気泡体積/サンプルの幾何学的体積*100
【0192】
これらの測定は、Micromeretics Analytical Services,Inc.(One Micromeritics Dr,Suite 200,Norcross,GA 30093)により行うことが推奨される。この技術に関するより多くの情報は、Micromeretics Analytical Servicesのウェブサイト(www.particletesting.com若しくはwww.micromeritics.com)上で入手可能であり、又はClyde Orr及びPaul Webb著「Analytical Methods in Fine particle Technology」において公開されている。
【0193】
試験4:シート物品の最終水分含量
本開示の固体シート物品の最終水分含量を、Mettler Toledo HX204 Moisture Analyzer(S/N B706673091)を使用することによって得る。乾燥したシート物品の最低1gを測定トレー上に置く。次いで、標準プログラムを、10分の分析時間及び110℃の温度の追加のプログラム設定で実行する。
【0194】
試験5:シート物品の厚さ
本開示の可撓性多孔質固体シート物品の厚さを、Mitutoyo Corporation Digital Disk Stand Micrometer Model Number IDS-1012E(Mitutoyo Corporation,965 Corporate Blvd,Aurora,IL,USA 60504)などのマイクロメータ又は隙間ゲージを使用して得る。そのマイクロメータは、直径1インチ、重さ約32グラムのプラテンを有し、約0.09psi(6.32gm/cm2)の印加圧力において厚さを測定する。
【0195】
可撓性多孔質溶解性固体シート物品の厚さは、プラテンを上げて、シート物品の一部分をプラテンの真下のスタンド上に置き、注意深くプラテンを下げてシート物品に接触させ、プラテンを離し、シート物品の厚さをミリメートル単位で数値表示装置上で測定することにより、測定する。平らでないより堅い基材の場合を除いて、厚さを可能な限り小さい表面圧力において測定するのを確実にするために、シート物品をプラテンの全てのエッジまで十分に延ばすべきである。
【0196】
試験6:シート物品の坪量
本開示の可撓性多孔質溶解性固体シート物品の坪量を、その面積当たりのシート物品の重量(グラム/m2)として計算する。その面積は、シート物品の外側エッジに直角の平坦表面上の投影面積として計算される。本開示の固体シート物品は、10cm×10cmの正方形サンプルに切断されているため、その面積は既知である。次いで、このような正方形サンプルの各々を秤量し、次に、得られた重量を100cm2の既知の面積で割って、対応する坪量を決定する。
【0197】
不規則な形状の物品に対しては、それが平らな物体である場合、その面積は、したがってそのような物体の外周内で取り囲まれている面積に基づいて計算される。したがって、球状物体に関しては、面積は、平均直径に基づいて3.14×(直径/2)2として計算される。したがって、円筒状物体に対しては、面積は、平均直径及び平均長さに基づいて直径×長さとして計算される。不規則な形状の三次元物体に対しては、その面積は、この側部に直角に方向付けられた平坦表面上に投影される最大外側寸法を備える側部に基づいて計算される。このことは、物体の外側寸法を1枚のグラフ用紙に鉛筆で注意深くトレーシングし、次に正方形を近似的に計数し、その正方形の既知の面積を乗算することによるか、又はスケールを含むトレーシングした領域(コントラストのために陰影が付けられている)の写真を撮り、画像分析技術を用いることにより、その面積を算定することによって達成することができる。
【0198】
試験7:シート物品の密度
本開示の可撓性多孔質溶解性固体シート物品の密度は、次の等式によって決定される:計算密度=多孔質固体物の坪量/(多孔質固体物の厚さ×1,000)。可撓性多孔質固体物の坪量及び厚みは、本明細書に記載の方法論に従って決定される。
【0199】
試験8:シート物品の比表面積
可撓性多孔質溶解性固体シート物品の比表面積を、ガス吸着技術を介して測定する。表面積は、分子規模の固体サンプルの露出した表面の測定値である。BET(Brunauer、Emmet、及びTeller)理論は、表面積を決定するのに使用される最もよく知られているモデルであり、ガス吸着等温線に基づいている。ガス吸着は、物理的な吸着及び毛管凝縮を使用してガス吸着等温線を測定するものである。この技術は、以下の工程によって要約される。サンプルをサンプル管に入れ、真空下又はガス流下で熱してサンプルの表面上の汚染物を除去する。サンプル重量は、脱ガスされたサンプル及びサンプル管の混合重量から空のサンプル管重量を差し引いて得られる。次にサンプル管を分析ポート上に置き、分析を開始する。この分析プロセスの最初の工程は、サンプル管を排気し、次に液体窒素温度でヘリウムガスを使用してサンプル管内の自由空間体積を測定する。次にサンプルを再度排気し、ヘリウムガスを除去する。計器は次に、要求される圧力測定値が達成されるまで、ユーザが特定する間隔でクリプトンガスを投与することによって吸着等温線を収集し始める。次にサンプルを、クリプトンガス吸着を備えるASAP2420を使用して分析してもよい。これらの測定は、Micromeretics Analytical Services,Inc.(One Micromeritics Dr,Suite 200,Norcross,GA 30093)により行うことが推奨される。この技術に関するより多くの情報は、Micromeretics Analytical Servicesのウェブサイト(www.particletesting.com若しくはwww.micromeritics.com)上で入手可能であり、又はClyde Orr及びPaul Webb著「Analytical Methods in Fine particle Technology」という書籍において公開されている。
【0200】
試験9:手溶解法
約30mm×30mm×3~5mmの寸法を有する1つの試料物品を、ニトリルの手袋をしている試験機の手のひらに配置する。約20℃~25℃の温度の約10cm3の水道水を、注射器によって試料物品に迅速に適用する。円形運動によって、溶解が起こるまで、試験機の手のひらを一度に2ストローク(最大30ストローク)で一緒に摩擦する。手の溶解速度は、試料物品が完全に溶解するのにかかるストローク数(30ストロークを上限とする)として報告する。ストローク数が多いほど、手溶解速度は遅い。ストローク数が少ないほど、手溶解速度は速い。
【0201】
試験10:長期の洗いたて感維持試験(Long-Lasting Freshness Test)
洗面器に、約28℃の温度の13リットルの逆浸透(「RO」)水を入れる。試料物品を、そのような水に5秒間浸漬し、溶解させて洗浄液を形成させる。洗浄液を手で30秒間撹拌して、試料物品の完全な溶解を確実に行う。試験布(0.2kgのハンドタオルを含有している)を洗浄液中に配置し、5分間浸漬する。次いで、試験布を洗浄液から取り出し、手で絞って過剰な水を除去する。その後、試験布を吊るし、一晩乾燥させる。乾燥した布を、4人の訓練されたパネリストからなる感覚パネルによって試臭試験に供する。各パネリストは、摩擦(rubbing)前後に乾燥布を嗅ぎ、それにより彼/彼女の評価を提供する。次いで、個々の評価を平均して、総合的な長期の洗いたて感維持スコアを提供する。
【実施例】
【0202】
実施例1:直接添加PMCを含有する固体シート物品の比較溶解プロファイル及び後添加PMCを含有する固体シート物品
1)直接添加PMCを有する固体シート物品の調製
直接添加PMCを含有する可撓性で多孔質かつ溶解性の固体シート物品は、以下のように調製される。
【0203】
最初に、2.44%のPMCスラリー(32.25%のPMC及び67.75%の水を含有している)、9.61%のPVA、9.86%のDEEDMAC、13.44%のグリセリン、1.29%のデンプン、及び総固形分を約35重量%とする残部水(すなわち、スラリー中の総含水量は約65重量%である)を含有する湿潤プレミックスを準備する。具体的には、PVAは、88%の加水分解レベル及び約1700の重合度を有するポリビニルアルコールであり、Sigma Aldrichから市販されている。DEEDMACは、Evonik Industriesから商標名Rewoquatで市販されている。PMCスラリーは、ホルムアルデヒドと架橋されたメラミンのシェルと、その上に形成されたポリビニルホルムアミドのカチオン性コーティング(「HEPMC」)とを有する第1のタイプのPMCを含むことができ、これは、Encapsys(Appleton,WI)から市販されている。あるいは、PMCスラリーは、コーティングのないポリアクリレートのシェルを有する第2のタイプのPMC(「PAC PMC」)含有することができて、これも、Encapsys(Appleton,WI)から市販されている。
【0204】
湿潤プレミックスの調製方法は、以下のとおりである。
1.まず、水及びグリセリンを一緒にガラスビーカーに加え、オーバーヘッド撹拌機を用いて200rpmで撹拌する。
2.撹拌を継続しながら、PVAを、次いで、水及びグリセリンの入ったビーカーにゆっくりと添加し、溶液の発泡又はPVAの凝集が起こらないようにする。
3.次いでビーカーを水浴に入れ、撹拌を続けながら80℃に加熱する。ビーカーは、水の蒸発を軽減するためにクリングリフィルム又は錫箔で被覆し、混合を少なくとも1.0時間継続させる。
4.残りの成分(例えば、PMCスラリー、DEEDMAC、デンプンなど)を秤量し、別個のガラスビーカーに一緒に加える。スラリー中の65%の総含水量を達成するために必要とされる水の残部もまた、このビーカーに添加される。
5.このビーカーを80℃の水浴に入れ、その内容物をオーバーヘッド撹拌機を用いて500rpmで少なくとも30分間撹拌する。
6.両方のビーカーで、予め定義された混合時間に到達したら、両方の内容物を一緒に単一のガラスビーカーに加え、続いて500rpmで継続的に撹拌し、温度を少なくとも更に30分間80℃に維持する。
【0205】
このように形成された湿潤プレミックスは、約19254.6cpsの粘度を有する。次いで、以下のように通気される。
1.ジャケット付きホッパ(モデルJCABT10)及びA20混合ヘッドからなるAeros A20連続エアレータを、水浴及びポンプを使用して80℃に予熱する。
2.次に、前に調製したスラリーをホッパに添加する。次いで、エアレータ装置をオンにし、混合ヘッド速度、供給ポンプ速度、及び空気流量をそれぞれ600、500及び100に設定した。
3.通気されたスラリーは、エアレータ出口から回収され、その密度は、既知の体積の密度カップを充填し、通気されたスラリーの質量を計量することによって測定される。上記エアレータ設定では、約0.225g/cm3の通気されたスラリー密度が達成される。
【0206】
厚さが約0.8~1.5mmの可撓性及び多孔質固体シートは、以下のように回転ドラム乾燥機プロセスを使用して生成される。
1.回転ドラム乾燥機(ドラム直径約1.5mを有する)を約100℃に予熱する。
2.Aeros A20の出口から回収された通気されたスラリーを、ドラム乾燥機の供給トラフに入れる。
3.入れたらドラム乾燥機の回転を開始し、加熱されたドラム上のスラリー滞留時間が約15分となるように回転速度が設定される。
4.乾燥したら、そのように形成された可撓性及び多孔質シートは、ドラム表面から剥離され、プラスチック袋に入れられる。
【0207】
次いで、直接添加HEPMC又はPAC PMCを有する当該固体シートを、50±2%の周囲相対湿度及び23±1℃の温度で24時間保管する(すなわち、馴化工程)。シート1全体の平均厚さは1.2107mmであり、標準偏差は0.0464である。
【0208】
2)後添加PMCを有する固体シート物品の調製
後添加PMCを含有する可撓性で多孔質かつ溶解性の固体シート物品は、以下のようにして調製する。
【0209】
具体的には、9.85%のPVA、10.1%のDEEDMAC、13.77%のグリセリン、1.33%のデンプン、及び総固形分を約35重量%とする残部水(すなわち、スラリー中の総含水量は約65重量%である)を含有する湿潤プレミックスを準備する。
【0210】
湿潤プレミックスの調製方法は、以下のとおりである。
1.まず、水及びグリセリンを一緒にガラスビーカーに加え、オーバーヘッド撹拌機を用いて200rpmで撹拌する。
2.撹拌を継続しながら、ポリビニルアルコールを、次いで、水及びグリセリンの入ったビーカーにゆっくりと添加し、溶液の発泡又はポリビニルアルコールの凝集が起こらないようにする。
3.次いでビーカーを水浴に入れ、撹拌を続けながら80℃に加熱する。ビーカーは、水の蒸発を軽減するためにクリングリフィルム又は錫箔で被覆し、混合を少なくとも1.0時間継続させる。
4.残りの成分(例えば、DEEDMAC、デンプンなど)を秤量し、別個のガラスビーカーに一緒に加える。スラリー中の65%の総含水量を達成するために必要とされる水の残部もまた、このビーカーに添加される。
5.このビーカーを80℃の水浴に入れ、その内容物をオーバーヘッド撹拌機を用いて500rpmで少なくとも30分間撹拌する。
6.両方のビーカーで、予め定義された混合時間に到達したら、両方の内容物を一緒に単一のガラスビーカーに加え、続いて500rpmで継続的に撹拌し、温度を少なくとも更に30分間80℃に維持する。
【0211】
このように形成された湿潤プレミックスは、約19254.6cpsの粘度を有する。次いで、以下のように通気される。
4.ジャケット付きホッパ(モデルJCABT10)及びA20混合ヘッドからなるAeros A20連続エアレータを、水浴及びポンプを使用して80℃に予熱する。
5.次に、前に調製したスラリーをホッパに添加する。次いで、エアレータ装置をオンにし、混合ヘッド速度、供給ポンプ速度、及び空気流量をそれぞれ600、500及び100に設定した。
6.通気されたスラリーは、エアレータ出口から回収され、その密度は、既知の体積の密度カップを充填し、通気されたスラリーの質量を計量することによって測定される。上記エアレータ設定では、約0.225g/cm3の通気されたスラリー密度が達成される。
【0212】
厚さが約0.8~1.5mmの可撓性及び多孔質固体シートは、以下のように回転ドラム乾燥機プロセスを使用して生成される。
5.回転ドラム乾燥機(ドラム直径約1.5mを有する)を約130℃に予熱する。
6.Aeros A20の出口から回収された通気されたスラリーを、ドラム乾燥機の供給トラフに入れる。
7.入れたらドラム乾燥機の回転を開始し、加熱されたドラム上のスラリー滞留時間が約15分となるように回転速度が設定される。
8.乾燥したら、そのように形成された可撓性及び多孔質シートは、ドラム表面から剥離され、プラスチック袋に入れられる。
【0213】
次いで、固体シートを、50±2%周囲相対湿度及び23±1℃の温度で24時間保管する(すなわち、馴化工程)。シート1全体の平均厚さは1.2107mmであり、標準偏差は0.0464である。
【0214】
続いて、32.25%のHEPMC又はPAC PMC及び67.75%の水を含有する0.352グラムのPMCスラリーを、固体シートの間に適用する。次いで、そのような後添加HEPMC又はPAC PMCを有する固体シートを、同じ湿度及び温度条件(50±2%及び23±1℃)で更に24時間保存する。
【0215】
次いで、直接添加又は後添加HEPMC又はPAC PMCのいずれかを有する、上記方法によって作製された可撓性多孔質溶解性固体シートを、試験9で上記した手溶解法を使用して試験する。シート配合物及びそれぞれの手溶解試験結果を、以下に示す。
【0216】
【0217】
上記のデータは、直接添加PMC(HEPMC又はPAC PMCのいずれか)を含有する可撓性多孔質溶解性固体シートが、後添加PMCを含有する同様の固体シートと比較して、有意に改善された溶解プロファイルを有することを示している。
【0218】
実施例2:直接添加PMCを含有する固体シート物品及び後添加PMCを含有する固体シート物品の長期の洗いたて感維持の比較
直接添加PAC PMC又は後添加PAC PMCのいずれかを含有する可撓性多孔質溶解性固体シートを、実施例1と同様の処理工程によって作製する。次いで、そのような固体シートを、試験10において上記した長期の洗いたて感維持法を使用して試験する。シート配合物及びそれぞれの洗いたて感維持試験結果を、以下に示す。
【0219】
【0220】
【表3】
aスコアは、次のように各パネリストによって付与され、「0」は「シートC及び3が同じである」ことを意味し、「1」は「シートCがシート3より良好であると思われるが、確実ではない」ことを意味し、「2」は「シートCがシート3よりわずかに良好である」ことを意味し、「3」は「シートCがシート3より有意に優れている」ことを意味している。
【0221】
上記のデータは、より低い添加量の直接添加PMCを含有する可撓性多孔質溶解性固体シートは、試験布が摩擦されないとき、より高い添加量の後添加PMCを含有する同様の固体シートと同等の長期の洗いたて感維持の利益を示すが、試験布が摩擦されると、更により良好な長期の洗いたて感維持の利益を示す。この結果は、驚くべきことであって、かつ予想外であり、特に慣例的な知識に反している。
【0222】
実施例4:直接添加マイクロカプセルを有する例示的な固体シート物品
以下は、実施例1と同様な処理工程によって作製される、直接添加マイクロカプセルを含有する可撓性多孔質溶解性固体シート物品の例である。シートのいくつかは、香料、非イオン性界面活性剤、及び/又はその表面上に溶媒(例えば、ジプロピレングリコール)を含有するコーティング組成物を更に含有し得る。
【0223】
【0224】
【0225】
【0226】
【0227】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0228】
相互参照される又は関連するあらゆる特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本明細書に引用される全ての文書は、除外又は限定することを明言しない限りにおいて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求されるいかなる発明に対する先行技術であるとはみなされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのようないかなる発明も教示、示唆又は開示するとはみなされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照により組み込まれた文書内の同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0229】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な他の変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にある全てのそのような変更及び修正を添付の特許請求の範囲に網羅することが意図される。