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特許7605845塗料組成物、塗膜、塗膜付き基材およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】塗料組成物、塗膜、塗膜付き基材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/00 20060101AFI20241217BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20241217BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20241217BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D183/04
C09D7/61
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022544574
(86)(22)【出願日】2021-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2021030737
(87)【国際公開番号】W WO2022045045
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2020144927
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】児玉 真尚
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0249044(US,A1)
【文献】特開2019-006982(JP,A)
【文献】国際公開第2020/128805(WO,A1)
【文献】特開平07-144171(JP,A)
【文献】特開昭61-258871(JP,A)
【文献】特開2020-084138(JP,A)
【文献】特開2000-256584(JP,A)
【文献】特開2008-038016(JP,A)
【文献】特開昭63-023975(JP,A)
【文献】特公昭47-003709(JP,B1)
【文献】特開昭64-040572(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107746653(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107513348(CN,A)
【文献】特開2018-003005(JP,A)
【文献】特開2000-239570(JP,A)
【文献】特開2020-084003(JP,A)
【文献】特開平02-132165(JP,A)
【文献】特開平10-095953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 163/00
C09D 183/04
C09D 7/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)と、シリコーン樹脂(B)と、アルミニウム(C)と、アミン系硬化剤(D)とを含有する塗料組成物であって、
前記シリコーン樹脂(B)の重量平均分子量が15,000以上であり、
前記塗料組成物のVOC(揮発性有機成分)の含有量が354~700g/Lであ
前記塗料組成物の不揮発分に対する前記シリコーン樹脂(B)の固形分の含有量が1~26質量%である、
塗料組成物。
【請求項2】
前記塗料組成物の不揮発分に対する前記エポキシ樹脂(A)の固形分の含有量が8~60質量%である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂(A)の固形分と前記シリコーン樹脂(B)の固形分の含有量の比((A):(B))が1~50:1である、請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記アミン系硬化剤(D)が、エポキシ化合物とのアミンアダクトである、請求項1~3の何れか1項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
さらに、シランカップリング剤を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の塗料組成物。
【請求項6】
耐熱塗料組成物である、請求項1~5の何れか1項に記載の塗料組成物。
【請求項7】
下記工程[1]および[2]を含む、塗膜付き基材の製造方法。
[1]基材に、請求項1~の何れか1項に記載の塗料組成物を塗装する工程
[2]基材上に塗装された塗料組成物を乾燥させて塗膜を形成する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、塗料組成物、塗膜、塗膜付き基材またはその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
防食性が要求される基材には、高温(例:200℃)下に曝され得る基材が存在する。このような基材としては、例えば、約200℃程度まで温度が上昇することのある、船舶の蒸気パイプ等が挙げられる。
このような高温下に曝され得る基材には、防食性には優れるが、耐熱温度が150℃程度であるエポキシ樹脂系塗料組成物は使用できず、これまでのところ、耐熱性に優れるシリコーン樹脂系塗料組成物、例えば、特許文献1に記載の耐熱塗料組成物が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-6982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記船舶の蒸気パイプ等の基材に塗装された塗料組成物は、加熱乾燥(焼付)させること自体が困難であることが多く、通常、塗膜を形成する際に加熱等は行わず、常温下で塗膜を形成し、その後の基材の使用による温度上昇で硬化させていたが、前記のようなシリコーン樹脂系耐熱塗料組成物は、一般的に、完全硬化に250℃以上の温度が必要であるため、200℃程度までしか温度が上昇しない船舶の蒸気パイプ等の基材では、塗装された組成物が完全硬化せず、このため、形成される塗膜には、防食性の点で改良の余地があることが分かった。
【0005】
また、長期防食性に優れる塗膜とするには、その乾燥膜厚を100μm以上とすることが要求されるが、このような厚膜の塗膜を1回の塗装で形成するのは容易ではないため、通常、塗料組成物の塗装と乾燥を1回の塗膜形成工程として、この塗膜形成工程を複数回(好ましくは2回)繰り返して(以下「複数回塗り」ともいう。)厚膜の塗膜が形成されている。
【0006】
前記のようなシリコーン樹脂系耐熱塗料組成物から形成される塗膜の防食性を向上させることを目的として、防食性に優れる有機成分を配合することも一応考えられる。しかしながら、有機成分は一般的に耐熱性に劣るため、前記高温下に曝された場合、炭化等が起り、塗膜物性の低下、塗膜の状態や塗膜の色相の変化を抑制できないことが容易に想定できる。
さらに、このように有機成分を配合した場合、シリコーン樹脂は無機系樹脂であるため、有機成分と組み合わせると、相容性が著しく不良であり、前記のように複数回塗りした場合に形成される塗膜間の密着性(以下「層間密着性」ともいう。)に問題が生じることが分かった。
【0007】
本発明の一実施形態は、耐熱性、防食性および層間密着性に優れる塗膜を常温硬化でも形成可能な塗料組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が、前記課題を解決する方法について鋭意検討を重ねた結果、以下の構成例によれば前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の構成例は以下の通りである。
【0009】
<1> エポキシ樹脂(A)と、シリコーン樹脂(B)と、アルミニウム(C)と、アミン系硬化剤(D)とを含有する塗料組成物。
【0010】
<2> さらに、シランカップリング剤を含む、<1>に記載の塗料組成物。
【0011】
<3> 耐熱塗料組成物である、<1>または<2>に記載の塗料組成物。
【0012】
<4> <1>~<3>の何れかに記載の塗料組成物から形成された塗膜。
<5> 基材と<4>に記載の塗膜とを含む塗膜付き基材。
【0013】
<6> 下記工程[1]および[2]を含む、塗膜付き基材の製造方法。
[1]基材に、<1>~<3>の何れかに記載の塗料組成物を塗装する工程
[2]基材上に塗装された塗料組成物を乾燥させて塗膜を形成する工程
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態によれば、耐熱性、防食性および層間密着性に優れる塗膜を常温硬化でも形成することができる。特に、本発明の一実施形態によれば、船舶の蒸気パイプ等の高温(例:200℃)下に曝され得る防食性が要求される基材に対しても、塗膜物性の低下、塗膜の状態や塗膜の色相の変化を抑制できる、耐熱性に優れ、かつ、防食性および基材への付着性に優れる塗膜を常温硬化でも形成することができる。
本発明の一実施形態によれば、複数回塗りで厚膜の塗膜を形成しても形成される塗膜間の密着性に優れるため、長期防食性に優れる塗膜を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施例の防食性試験で用いたカットを入れた試験板の概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
≪塗料組成物≫
本発明の一実施形態に係る塗料組成物(以下単に「本組成物」ともいう。)は、エポキシ樹脂(A)と、シリコーン樹脂(B)と、アルミニウム(C)と、アミン系硬化剤(D)とを含有する。
通常相容性の悪い、エポキシ樹脂(A)とシリコーン樹脂(B)とを含むと、複数回塗りで形成される塗膜層間に剥離が起こりやすいが、本組成物は、エポキシ樹脂(A)とシリコーン樹脂(B)とを含むにもかかわらず、アルミニウム(C)を含むことで、層間密着性に優れる塗膜を形成することができる。さらに、エポキシ樹脂(A)を含むにもかかわらず、高温(例:200℃)下に曝されても塗膜物性の低下、塗膜の状態や塗膜の色相の変化の起り難い塗膜を形成することができる。
このため、本組成物は、高温(例:200℃)下に曝され得る防食性が要求される基材に好適に用いられ、具体的には、船舶の蒸気パイプ、石油精製や化学プラント等に用いられる配管、工業用配管(例:保温材等で覆われた工業用配管)等に好適に用いられる。
また、本組成物は、耐熱塗料組成物および/または防食塗料組成物として好適に使用することができ、耐熱防食塗料組成物としてより好適に使用することができる。
【0017】
本組成物は、1成分型の組成物であってもよいが、通常、エポキシ化合物(A)を含有する主剤成分と、アミン系硬化剤(D)を含有する硬化剤成分とからなる2成分型の組成物である。また、必要により、本組成物は、3成分以上型の組成物であってもよい。
これら主剤成分および硬化剤成分は、通常、それぞれ別個の容器にて保存、貯蔵、運搬等され、使用直前に一緒に混合して用いられる。
【0018】
なお、本組成物は、塗装方法等に応じて、溶媒で希釈して用いられることがある。以下における各説明は、希釈に関する内容以外は、希釈される前についての説明である。
【0019】
<エポキシ樹脂(A)>
エポキシ樹脂(A)としては特に制限されず、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができる。
エポキシ樹脂(A)としては、例えば、特開平11-343454号公報や特開平10-259351号公報に記載の非タール系エポキシ樹脂が挙げられる。
本組成物中に含まれるエポキシ樹脂(A)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0020】
エポキシ樹脂(A)としては、例えば、分子内に2個以上のエポキシ基を含むポリマー、オリゴマー、およびこれらのエポキシ基の開環反応によって生成するポリマーまたはオリゴマーが挙げられる。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪酸変性エポキシ樹脂、エポキシ化油系エポキシ樹脂が挙げられる。
これらの中でも、基材に対する付着性に優れる塗膜を容易に形成できる等の点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、さらにはビスフェノールA型およびビスフェノールF型のエポキシ樹脂がより好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0021】
エポキシ樹脂(A)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル類);ビスフェノールAD型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂が挙げられ、これらの水素添加反応(以下「水添」ともいう。)物、脂肪酸変性物、樹脂中の水素原子の少なくとも1つが臭素原子で置換された臭素化物等であってもよい。
【0022】
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールA(ポリ)プロピレンオキシドジグリシジルエーテル、ビスフェノールA(ポリ)エチレンオキシドジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA(ポリ)プロピレンオキシドジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA(ポリ)エチレンオキシドジグリシジルエーテル等のビスフェノールA型ジグリシジルエーテル類の縮重合物が挙げられる。
【0023】
エポキシ樹脂(A)は、従来公知の方法で合成して得てもよく、市販品でもよい。該市販品としては、常温(15~25℃の温度、以下同様。)で液状のものとして、例えば、「E-028」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量180~190、粘度12,000~15,000mPa・s/25℃)、「jER-807」(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量160~175、粘度3,000~4,500mPa・s/25℃)、「フレップ60」(東レ・ファインケミカル(株)製、エポキシ当量約280、粘度約17,000mPa・s/25℃)が挙げられる。常温で半固形状のものとして、例えば、「jER-834」(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量230~270)等が挙げられる。常温で固形状のものとして、例えば、「jER-1001」(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量450~500)、「JER-1004」(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量875~975、粘度Q~Uガードナーホルト/25℃)、「1007」(KUKDO CHEMICAL社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量1,750~2,200、粘度Y~Z1ガードナーホルト/25℃)が挙げられる。
また、前述の半固形状または固形状のエポキシ樹脂を溶剤で希釈し、溶液とした「E-834-85X」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のキシレン溶液(834タイプエポキシ樹脂溶液)、エポキシ当量約300)、「E-001-75」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のキシレン溶液(1001タイプエポキシ樹脂溶液)、エポキシ当量約630)等も使用することができる。
本明細書中のエポキシ当量は、エポキシ樹脂(A)の固形分のエポキシ当量のことをいう。
【0024】
エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量は、防食性に優れる塗膜を容易に形成することができる等の点から、好ましくは150以上、より好ましくは175以上、特に好ましくは200以上であり、好ましくは5,000以下、より好ましくは3,000以下、特に好ましくは2,500以下である。
【0025】
エポキシ樹脂(A)の固形分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)で測定した重量平均分子量は、得られる組成物の塗装硬化条件(例:常温乾燥または加熱乾燥)などにもより一概に決定されないが、好ましくは350~20,000である。
【0026】
エポキシ樹脂(A)の固形分の含有量は、防食性により優れる塗膜を形成することができる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
また、前記エポキシ樹脂(A)は、本組成物が主剤成分と硬化剤成分とからなる2成分型の組成物である場合、主剤成分に含まれる。該主剤成分の固形分100質量%に対するエポキシ樹脂(A)の固形分の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0027】
<シリコーン樹脂(B)>
前記シリコーン樹脂(B)としては、シロキサン結合を有する樹脂であり、エポキシ基を含まない樹脂であれば特に制限されず、直鎖状でも、分岐状であってもよい。該シリコーン樹脂(B)は、シロキサン系バインダーやシロキサン系結合剤でもある。
本組成物中に含まれるシリコーン樹脂(B)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0028】
シリコーン樹脂(B)としては、例えば、分子中にシロキサン結合を介して反応性基を有し、該反応性基が互いに反応することで、高分子量化または三次元架橋構造を形成し、硬化する化合物が挙げられる。
なお、前記反応としては、例えば、縮合反応および付加反応が挙げられ、縮合反応としては、脱水反応、脱アルコール反応等が挙げられる。
【0029】
シリコーン樹脂(B)は、例えば、下記式(I)で示される化合物であることが好ましい。
【0030】
【化1】
[式(I)中、R1はそれぞれ独立に、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~8のアリール基または炭素数1~8のアルコキシ基を示し、R2はそれぞれ独立に、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~8のアリール基または水素原子を示す。また、nは繰り返し数を示す。]
【0031】
1およびR2における炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基が挙げられる。
1およびR2における炭素数6~8のアリール基は、芳香環上にアルキル基等の置換基を有する基であってもよく、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基が挙げられる。
1における炭素数1~8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、フェノキシ基が挙げられる。
【0032】
1は、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基またはフェニル基であり、R2は、好ましくは、メチル基、エチル基、フェニル基または水素原子である。
【0033】
シリコーン樹脂(B)は、メチルシリコーンレジン、メチルフェニルシリコーンレジン等の耐熱性を有する樹脂であることが好ましく、下記、ジメチルシロキサン単位(b1)、ジフェニルシロキサン単位(b2)、モノメチルシロキサン単位(b3)、モノプロピルシロキサン単位(b4)およびモノフェニルシロキサン単位(b5)からなる群より選択される1種以上の構成単位を含有することがより好ましい。
【0034】
【化2】
[式(b1)~(b5)中、Si-O-における、Oに結合し、Siに結合していない「-」は、結合手を示し、Si-O-は、必ずしもSi-O-CH3を示すわけではない。]
【0035】
シリコーン樹脂(B)の、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法により測定される標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(以下単に「Mw」ともいう。)は、耐熱性および防食性により優れる塗膜を容易に形成することができる等の点から、好ましくは15,000以上、より好ましくは18,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは600,000以下である。
前記繰り返し数nは、シリコーン樹脂(B)のMwが前記範囲となるように選択されることが好ましい。
【0036】
シリコーン樹脂(B)の固形分の含有量は、防食性、耐熱性および層間密着性にバランスよく優れる塗膜を容易に形成することができる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
シリコーン樹脂(B)は、本組成物が主剤成分と硬化剤成分とからなる2成分型の組成物である場合、主剤成分に含まれていても、硬化剤成分に含まれていてもよい。
【0037】
また、本組成物中におけるエポキシ樹脂(A)の固形分とシリコーン樹脂(B)の固形分の含有量の比((A):(B))は、耐熱性、防食性および層間密着性にバランスよく優れる塗膜を容易に形成することができる等の点から、好ましくは1:20~50:1、より好ましくは1:10~10:1、特に好ましくは1:5~5:1である。
【0038】
<アルミニウム(C)>
前記アルミニウム(C)としては特に制限されないが、粉末状であることが好ましく、鱗片状アルミニウム粉であってもよく、鱗片状以外の非鱗片状アルミニウム粉であってもよい。
また、本組成物を調製する際の原料として、粉末状のみならず、ペースト状のアルミニウムを用いてもよい。
本組成物中に含まれるアルミニウム粉(B)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0039】
前記「鱗片状」とは、形状が鱗片の形を成しているものを指し、特に規定された範囲は存在しないが、通常、そのアスペクト比は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上であり、好ましくは150以下、より好ましくは120以下である。
また、前記「非鱗片状」とは、形状が球形、涙滴形、紡錘形等の鱗片状以外の形状を有しているものを指し、特に規定された範囲は存在しないが、通常、そのアスペクト比は、好ましくは5未満であり、より好ましくは1以上であり、より好ましくは3以下である。
【0040】
前記アスペクト比は、電子顕微鏡を用いて測定することができる。走査電子顕微鏡(SEM)、例えば「XL-30」(商品名;フィリップス社製)を用いてアルミニウム粉を観察し、数10~数100個の粉末粒子の厚みと主面における最大長さ(または、長軸の長さと短軸の長さ)とを測定し、これらの比(主面における最大長さ/厚み、または、長軸の長さ/短軸の長さ)の平均値を求めることで算出できる。
なお、前記アルミニウム粉の厚みは、該粉末の主面(最も面積の大きい面)に対して水平方向から観察することで測定することができ、また、前記アルミニウム粉の主面における最大長さは、例えば、主面が四角形状であれば対角線の長さ、主面が円状であれば直径、主面が楕円状であれば長軸の長さのことを意味する。前記アルミニウム粉の長軸の長さは、具体的には、該粉末の中心付近の断面図における最も長い長さであり、前記アルミニウム粉の短軸の長さは、前記断面図において、該断面図の中心で前記長軸と直交する線の長さである。
【0041】
より防食性に優れる塗膜を容易に形成することができる等の点から、前記鱗片状アルミニウム粉のメジアン径(D50)は、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは5μm以上であり、より好ましくは70μm以下、特に好ましくは50μm以下である。
低VOC量で塗装作業性に優れる組成物を容易に得ることができる等の点から、前記非鱗片状アルミニウム粉(D)のメジアン径(D50)は、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは5μm以上であり、より好ましくは30μm以下、特に好ましくは15μm以下である。
前記D50は、レーザー散乱回折式粒度分布測定装置、例えば、「SALD 2200」((株)島津製作所製)を用いて3回測定した平均値である。
【0042】
前記鱗片状アルミニウム粉は、リーフィングタイプでもよく、ノンリーフィングタイプでもよいが、塗膜の変質や基材との付着性の低下を抑制できる等の点から、リーフィングタイプを用いることが好ましい。また、前記鱗片状アルミニウム粉を用いる場合、リーフィングタイプとノンリーフィングタイプとを併用してもよい。
前記非鱗片状アルミニウム粉は、アトマイズ法(噴霧法)により製造されるアルミニウム粉末であることが好ましい。
【0043】
本組成物中のアルミニウム粉(C)の含有量は、防食性、耐熱性および層間密着性にバランスよく優れる塗膜を容易に形成することができ、高温下に曝された場合であっても、塗膜物性の低下、塗膜の状態や塗膜の色相の変化をより抑制できる塗膜を容易に形成することができる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
本組成物中のアルミニウム粉(C)の含有量は、前記と同様の効果の点から、前記エポキシ樹脂(A)の固形分100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、好ましくは200質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。
本組成物中のアルミニウム粉(C)の含有量は、前記と同様の効果の点から、前記シリコーン樹脂(B)の固形分100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、好ましくは200質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。
本組成物中のアルミニウム粉(C)の含有量は、前記と同様の効果の点から、前記エポキシ樹脂(A)とシリコーン樹脂(B)の固形分の合計100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下である。
【0044】
<アミン系硬化剤(D)>
アミン系硬化剤(D)としてはアミン化合物であれば特に制限されないが、脂肪族系、脂環族系、芳香族系、複素環系などのアミン化合物が好ましい。なお、これらアミン化合物は、アミノ基が結合している炭素の種類により区別され、例えば、脂肪族系アミン硬化剤とは、脂肪族炭素に結合したアミノ基を少なくとも1つ有する化合物のことをいう。
本組成物中に含まれるアミン系硬化剤(D)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0045】
前記脂肪族系アミン硬化剤としては、例えば、アルキレンポリアミン、ポリアルキレンポリアミン、アルキルアミノアルキルアミンが挙げられる。
【0046】
前記アルキレンポリアミンとしては、例えば、式:「H2N-R1-NH2」(R1は、炭素数1~12の二価の炭化水素基である。)で表される化合物が挙げられ、具体例としては、メチレンジアミン、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、トリメチルヘキサメチレンジアミンが挙げられる。
【0047】
前記ポリアルキレンポリアミンとしては、例えば、式:「H2N-(Cm2mNH)nH」(mは1~10の整数である。nは2~10の整数であり、好ましくは2~6の整数である。)で表される化合物が挙げられ、具体例としては、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ノナエチレンデカミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレン-ビス(トリメチレン)ヘキサミンが挙げられる。
【0048】
前記アルキルアミノアルキルアミンとしては、例えば、式:「R2 2N-(CH2p-NH2」(R2は独立して、水素原子または炭素数1~8のアルキル基であり(但し、少なくとも1つのR2は炭素数1~8のアルキル基である。)、pは1~6の整数である。)で表される化合物が挙げられ、具体例としては、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジプロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノブチルアミンが挙げられる。
【0049】
これら以外の脂肪族系アミン硬化剤としては、例えば、テトラ(アミノメチル)メタン、テトラキス(2-アミノエチルアミノメチル)メタン、1,3-ビス(2'-アミノエチルアミノ)プロパン、トリス(2-アミノエチル)アミン、ビス(シアノエチル)ジエチレントリアミン、ポリオキシアルキレンポリアミン(特に、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル)、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン(IPDA)、メンセンジアミン(MDA)、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン(MXDA)、p-キシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン、ビス(アミノエチル)ナフタレン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、1-(2'-アミノエチルピペラジン)、1-[2'-(2''-アミノエチルアミノ)エチル]ピペラジンが挙げられる。
【0050】
前記脂環族系アミン硬化剤の具体例としては、シクロヘキサンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン(特に、4,4'-メチレンビスシクロヘキシルアミン)、4,4'-イソプロピリデンビスシクロヘキシルアミン、ノルボルナンジアミン、2,4-ジ(4-アミノシクロヘキシルメチル)アニリンが挙げられる。
【0051】
前記芳香族系アミン硬化剤としては、例えば、ベンゼン環やナフタレン環等の芳香環に結合した2個以上の1級アミノ基を有する芳香族ポリアミン化合物が挙げられる。
この芳香族系アミン硬化剤の具体例としては、フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルフェニルメタン、2,4'-ジアミノビフェニル、2,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメトキシ-4,4'-ジアミノビフェニルが挙げられる。
【0052】
前記複素環系アミン硬化剤の具体例としては、1,4-ジアザシクロヘプタン、1,11-ジアザシクロエイコサン、1,15-ジアザシクロオクタコサンが挙げられる。
【0053】
アミン系硬化剤(D)としては、さらに、アミン化合物の変性物、例えば、ポリアミドアミン等の脂肪酸変性物、エポキシ化合物とのアミンアダクト(アミン化合物のエポキシアダクト)、マンニッヒ変性物(例:フェナルカミン、フェナルカマイド)、マイケル付加物、ケチミン、アルジミンが挙げられる。
【0054】
アミン系硬化剤(D)としては、ポリアミドアミン、エポキシ化合物とのアミンアダクトが好ましく、エポキシ化合物とのアミンアダクトが特に好ましい。このようなアミン硬化剤(D)を用いると、防食性により優れる塗膜を容易に形成することができる。
【0055】
アミン系硬化剤(D)は、従来公知の方法で合成して得てもよく、市販品を用いてもよい。該市販品としては、例えば、変性脂肪族ポリアミン(エチレンジアミンのエポキシアダクト)である「TD-961」(DIC(株)製)、変性脂肪族ポリアミン(ジエチレントリアミンのエポキシアダクト)である「AD-71」(大竹明新化学(株)製)が挙げられる。
【0056】
アミン系硬化剤(D)の活性水素当量は、防食性により優れる塗膜を容易に形成することができる等の点から、好ましくは50以上、より好ましくは100以上であり、好ましくは1,000以下、より好ましくは500以下である。
本明細書中の活性水素当量は、アミン系硬化剤(D)の固形分の活性水素当量のことをいう。
【0057】
防食性、塗膜強度および乾燥性に優れる塗膜を容易に形成することができる等の点から、アミン系硬化剤(D)は、下記式(2)で算出される反応比が、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上となるような量、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下となるような量で用いることが望ましい。
【0058】
反応比={(アミン系硬化剤(D)の固形分の配合量/アミン系硬化剤(D)の活性水素当量)+(エポキシ樹脂(A)に対して反応性を有する成分の固形分の配合量/エポキシ樹脂(A)に対して反応性を有する成分の固形分の官能基当量)}/{(エポキシ樹脂(A)の固形分の配合量/エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量)+(アミン系硬化剤(D)に対して反応性を有する成分の固形分の配合量/アミン系硬化剤(D)に対して反応性を有する成分の固形分の官能基当量)} ・・・(2)
【0059】
ここで、前記式(2)における「アミン系硬化剤(D)に対して反応性を有する成分」としては、例えば、下記その他の成分中のアミン系硬化剤(D)に対して反応性を有する成分が挙げられ、また、「エポキシ樹脂(A)に対して反応性を有する成分」としては、例えば、下記その他の成分中のエポキシ樹脂(A)に対して反応性を有する成分が挙げられる。前記各成分の「官能基当量」とは、これらの成分1molの質量からその中に含まれる官能基のmol数を除して得られた1mol官能基あたりの質量(g)を意味する。
【0060】
本組成物が主剤成分と硬化剤成分とからなる2成分型の組成物である場合、前記アミン系硬化剤(D)は硬化剤成分に含まれる。この硬化剤成分のE型粘度計で測定した25℃における粘度は、取扱い性、塗装作業性により優れる組成物となる等の点から、好ましくは100,000mPa・s以下であり、より好ましくは50mPa・s以上であり、より好ましくは10,000mPa・s以下である。
【0061】
<その他の成分>
本組成物は、成分(A)~(D)を含有すれば特に制限されず、所望により、本発明の効果を損なわない範囲で、シランカップリング剤、顔料、顔料分散剤、消泡剤、タレ止め・沈降防止剤(揺変剤)、脱水剤、硬化促進剤、硬化触媒、有機溶剤等のその他の成分を含んでいてもよい。
これらその他の成分は、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0062】
[シランカップリング剤]
シランカップリング剤を用いることで、得られる塗膜の基材への付着性をさらに向上させることができるのみならず、得られる塗膜の耐水性、耐塩水性等の防食性および耐熱性をも向上させることができる。
シランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0063】
シランカップリング剤としては特に制限されず、従来公知の化合物を用いることができるが、同一分子内に少なくとも2つの官能基を有し、基材に対する付着性の向上、本組成物の粘度の低下等に寄与できる化合物であることが好ましい。例えば、式:「X-SiMen3-n」[nは0または1、Xは有機質との反応が可能な反応性基(例:アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、ハロゲン基、炭化水素基の一部がこれらの基で置換された基、または炭化水素基の一部がエーテル結合等で置換された基の一部がこれらの基で置換された基)を示し、Meはメチル基であり、Yは加水分解性基(例:メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基)を示す。]で表される化合物であることがより好ましい。
【0064】
シランカップリング剤としては、エポキシ基含有シランカップリング剤またはアミノ基含有シランカップリング剤が好ましい。
エポキシ基含有シランカップリング剤を用いることは、得られる塗膜の基材への付着性、および防食性向上の点等から好ましく、アミノ基含有シランカップリング剤を用いることは、得られる塗膜の基材への付着性、防食性向上、および耐熱性向上の点等から好ましい。また、アミノ基含有シランカップリング剤を用いると、得られる塗膜の変色も抑制することができる。
【0065】
シランカップリング剤の市販品としては、具体的には、「KBM-403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製)、「サイラエースS-510」(JNC(株)製)、「KBM-603」(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0066】
本組成物がシランカップリング剤を含有する場合、該シランカップリング剤の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
シランカップリング剤の含有量が前記範囲にあると、本組成物の粘度を低減できるため、塗装作業性が向上するだけでなく、得られる塗膜の基材に対する付着性および防食性が向上する。
【0067】
本組成物がエポキシ基含有シランカップリング剤を含有する場合、前記と同様の効果の点から、該エポキシ基含有シランカップリング剤の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
また、本組成物がアミノ基含有シランカップリング剤を含有する場合、前記と同様の効果の点から、該アミノ基含有シランカップリング剤の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0068】
また、本組成物がアミノ基含有シランカップリング剤を含有する場合、前記と同様の効果の点から、該アミノ基含有シランカップリング剤の含有量は、シリコーン樹脂(B)の固形分100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0069】
[顔料]
本組成物は、顔料を含有していてもよく、顔料を含有していることが好ましい。
該顔料としては、例えば、体質顔料、着色顔料、防錆顔料が挙げられ、有機系、無機系のいずれであってもよい。
顔料は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0070】
前記体質顔料としては、例えば、タルク、マイカ、(沈降性)硫酸バリウム、(カリ)長石、カオリン、アルミナホワイト、ベントナイト、ウォラストナイト、クレー、ガラスフレーク、アルミフレーク、鱗片状酸化鉄、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、ドロマイト、シリカが挙げられる。特に、タルク、マイカ、シリカ、(沈降性)硫酸バリウム、(カリ)長石が好ましい。
【0071】
本組成物が体質顔料を含有する場合、該体質顔料の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
【0072】
前記着色顔料としては、例えば、カーボンブラック、二酸化チタン(チタン白)、酸化鉄(弁柄)、黄色酸化鉄、群青等の無機顔料、シアニンブルー、シアニングリーン等の有機顔料が挙げられる。特に、チタン白、カーボンブラック、弁柄が好ましい。
【0073】
本組成物が着色顔料を含有する場合、該着色顔料の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0074】
前記防錆顔料としては、例えば、亜鉛粉末、亜鉛合金粉末、リン酸亜鉛系化合物、リン酸カルシウム系化合物、リン酸アルミニウム系化合物、リン酸マグネシウム系化合物、亜リン酸亜鉛系化合物、亜リン酸カルシウム系化合物、亜リン酸アルミニウム系化合物、亜リン酸ストロンチウム系化合物、トリポリリン酸アルミニウム系化合物、モリブデン酸塩系化合物、シアナミド亜鉛系化合物、ホウ酸塩化合物、ニトロ化合物、複合酸化物が挙げられる。
【0075】
本組成物が顔料を含有する場合、本組成物中の顔料体積濃度(PVC)は、塗装作業性に優れる組成物を容易に得ることができ、応力緩和による基材との付着性および防食性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上であり、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下である。
【0076】
前記PVCは、本組成物中の不揮発分の体積に対する、顔料の合計の体積濃度のことをいう。なお、PVCを算出する場合の顔料には、アルミニウム(C)およびその他の成分における顔料が含まれる。PVCは、具体的には下記式より求めることができる。
PVC[%]=本組成物中の全ての顔料の体積合計×100/本組成物中の不揮発分の体積
【0077】
なお、本明細書において、本組成物の不揮発分は、JIS K 5601-1-2(加熱温度:125℃、加熱時間:60分)に従って得られる加熱残分を意味する。また、本組成物の不揮発分は、用いる原料における溶媒および前記有機溶剤を除いた量として算出することもできる。
また、本組成物、主剤成分または硬化剤成分を構成する原料となる各成分中(エポキシ樹脂(A)など)、主剤成分中、硬化剤成分中の溶媒以外の成分を「固形分」という。
【0078】
前記本組成物中の不揮発分の体積は、本組成物の不揮発分の質量および真密度から算出することができる。前記不揮発分の質量および真密度は、測定値でも、用いる原料から算出した値でも構わない。
前記顔料の体積は、用いた顔料の質量および真密度から算出することができる。前記顔料の質量および真密度は、測定値でも、用いる原料から算出した値でも構わない。例えば、本組成物の不揮発分より顔料と他の成分とを分離し、分離された顔料の質量および真密度を測定することで算出することができる。
【0079】
[タレ止め剤・沈降防止剤(揺変剤)]
前記タレ止め・沈降防止剤(揺変剤)は特に制限されないが、本組成物中の顔料等の沈降を抑制し、その貯蔵安定性を向上させることができる材料、または、塗装時や塗装後の本組成物のタレ止め性を向上させることができる材料であることが好ましい。
前記タレ止め剤・沈降防止剤としては、Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの有機粘土系ワックス、ポリエチレンワックス、アマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス、水添ヒマシ油ワックスおよびアマイドワックスの混合物、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス等、従来公知のものを使用できるが、中でも、アマイドワックス、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックスおよび有機粘土系ワックスが好ましい。
【0080】
このようなタレ止め剤・沈降防止剤は、市販品でもよい。該市販品としては、例えば、楠本化成(株)製の「Disparlon 305」、「Disparlon 4200-20」、「Disparlon 6650」;伊藤精油(株)製の「A-S-A T-250F」;共栄社化学(株)製の「フローノンRCM-300」;Elementis Specialties, Inc社製の「ベントンSD-2」、シリカ系揺変剤である「Aerosil R972」(日本アエロジル(株)製)が挙げられる。
【0081】
本組成物がタレ止め剤・沈降防止剤を含有する場合、該タレ止め剤(沈降防止剤)の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.1~10質量%である。
【0082】
[有機溶剤]
有機溶剤としては特に限定されないが、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン系溶剤、ブチルセロソルブ等のエーテル系溶剤、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、イソプロパノール、イソブチルアルコール、n-ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)等のアルコール系溶剤、ミネラルスピリット、n-ヘキサン、n-オクタン、2,2,2-トリメチルペンタン、イソオクタン、n-ノナン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0083】
本組成物が有機溶剤を含有する場合、本組成物中の不揮発分の含有量に対し、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下となる量で有機溶剤を用いることが望ましい。
【0084】
本組成物のVOC(揮発性有機成分)の含有量は、環境や人体への影響が少ない組成物となる等の点から、好ましくは700g/L以下、より好ましくは600g/L以下、特に好ましくは500g/L以下である。
【0085】
本組成物のVOC含有量は、下記塗料比重および本組成物の不揮発分を用い、下記式(1)から算出することができる。
VOC含量(g/L)=塗料比重×1000×(100-本組成物の不揮発分)/100 ・・・(1)
【0086】
塗料比重(g/cm3):23℃の温度条件下で、本組成物(例:主剤成分と硬化剤成分とを混合した直後の組成物)を内容積100mlの比重カップに充満し、該組成物の質量を計量することで算出される値
【0087】
≪塗膜および塗膜付き基材≫
本発明の一実施形態に係る塗膜(以下「本塗膜」ともいう。)は、前述した本組成物より形成され、本発明の一実施形態に係る塗膜付き基材は、本塗膜と基材とを含む積層体である。本塗膜の好適例は、耐熱塗膜である。
【0088】
前記基材としては特に制限されず、例えば、鉄鋼(鉄、鋼、合金鉄、炭素鋼、合金鋼等)、非鉄金属(ステンレス、アルミニウム、亜鉛メッキ、真鍮、黄銅等)からなる金属基材、および表面がショッププライマー等で被覆された金属基材が挙げられる。また、前記基材としては、プラント構造物、陸上構造物、海洋構造物、船舶等が挙げられるが、本発明の効果がより発揮される等の点から、好ましくは、船舶の蒸気パイプ、石油精製や化学プラント等に用いられる配管、工業用配管(例:保温材等で覆われた工業用配管)であり、中でも船舶の蒸気パイプがより好ましい。
【0089】
本塗膜の膜厚は特に制限されないが、好ましくは30~400μm、より好ましくは30~300μmであり、この膜厚は1回の塗装で形成された単層膜であっても、複数回塗りにより形成された複層膜であってもよい。特に、基材が、鉄鋼(鉄、鋼、合金鉄、炭素鋼、合金鋼等)製である場合は、長期防食性の観点から、本塗膜の膜厚は、100μm以上であることが好ましい。
本組成物を用いるため、このような膜厚の塗膜を基材上に形成しても、該塗膜に膨れやクラックが発生し難く、特に、200℃程度の高温に曝された場合でも、膨れやクラックが発生し難いため、長期にわたって基材を防食することができる。
【0090】
本塗膜は、前述した本組成物より形成され、具体的には、下記工程[1]および[2]を含む工程を経ることで、製造することができる。
[1]基材に、本組成物を塗装する工程
[2]基材上に塗装された本組成物を乾燥させて塗膜を形成する工程
【0091】
<工程[1]>
本組成物を基材上に塗装する方法としては特に制限されず、従来公知の方法を制限なく使用可能であり、通常用いられるエアレススプレー塗装、エアスプレー塗装、刷毛塗り、ローラー塗装等が好ましい。作業性や生産性等に優れ、大面積の基材に対して容易に塗装でき、本発明の効果をより発揮できる等の点から、スプレー塗装が好ましい。
なお、本組成物が2成分型の組成物である場合、塗装直前に主剤成分と硬化剤成分とを混合し、スプレー塗装などを行うことが好ましい。
【0092】
前記スプレー塗装の条件は、形成したい塗膜の厚さに応じて適宜調整すればよいが、例えばエアレススプレーの場合、1次(空気)圧:0.4~0.8MPa程度、2次(塗料)圧:10~26MPa程度、ガン移動速度:50~120cm/秒程度に塗装条件を設定すればよい。
この際に使用される本組成物の粘度は、B型粘度計(「TVB-10M」、東機産業(株)製)で測定した場合、23℃で1.8~2.5Pa・s程度であることが好ましい。このような粘度の本組成物とするために、シンナー等を用いて、本組成物の粘度を調整してもよい。
前記シンナーとしては、本組成物中の成分を溶解または分散可能な有機溶剤であることが好ましく、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、n-ブタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤が挙げられる。用いるシンナーは、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0093】
本組成物を基材上に塗装するに際し、基材上の錆、油脂、水分、塵埃、塩分等を除去するため、また、得られる塗膜の基材との付着性を向上させるために、必要により前記基材表面を処理(例えば、ブラスト処理(ISO8501-1 Sa2 1/2)、脱脂による油分、粉塵を除去する処理)等することが好ましい。また、前記基材には、1次防錆を目的として、ショッププライマー等を塗装してもよい。
【0094】
<工程[2]>
本組成物は、常温で乾燥・硬化可能であり、このように、常温で乾燥・硬化させても、耐熱性および防食性に優れる塗膜を得ることができる。また、所望により、乾燥時間の短縮のため、加熱下で乾燥させてもよい。
前記乾燥条件としては特に制限されず、本組成物、基材、塗装場所等に応じて、適宜設定すればよいが、乾燥温度が、好ましくは5~40℃、より好ましくは10~30℃であり、乾燥時間が、好ましくは18時間~14日、より好ましくは24時間~7日である。
【0095】
前記膜厚の塗膜を形成する方法としては、1回の塗装で前記所望膜厚の塗膜を形成してもよいし、2回以上の塗装(複数回塗り)で前記所望膜厚の塗膜を形成してもよい。膜厚管理の観点、および、塗膜中の残留溶剤を考慮すると、2回以上の塗装で所望膜厚の塗膜を形成することが好ましい。
なお、2回の塗装(2回塗り)とは、工程[1]および[2]を行った後、得られた塗膜上に、工程[1]および[2]を行う方法のことをいい、3回以上の塗装は、さらに、一連の工程を繰り返す方法のことをいう。
【0096】
2回以上の塗装による塗膜形成を行う場合、例えば1回目に塗装を行う塗料・塗膜の色相と、次に塗装を行う塗料・塗膜の色相は異なることが好ましい。これは、塗装作業において、塗り忘れや膜厚不足などの判断を容易にするための措置である。また最終的な外面の色相を指定の色相に仕上げるために上塗り塗装を行ってもよい。
【実施例
【0097】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって制限されない。
【0098】
[実施例1~16および比較例1~10]
容器に、表1~3の主剤成分の欄に記載の各材料を各欄に記載の数値(質量部)で配合し、ハイスピードディスパーを用いて室温で均一になるまで撹拌し、さらに50℃になるまで分散させた。その後、30℃以下まで冷却することで、塗料組成物の主剤成分を調製した。
また、容器に、表1~3の硬化剤成分の欄に記載の各材料を各欄に記載の数値(質量部)で配合し、ハイスピードディスパーを用い、常温、常圧下でこれらの成分を混合することで、硬化剤成分を調製した。
これらの主剤成分と硬化剤成分とを、表1~3に記載の混合比で塗装前に混合することで塗料組成物を調製した。
表1~3に記載の各成分の説明を表4に示す。なお、表4中の各成分の固形分(質量%)は、メーカーカタログ値である。
【0099】
[試験板の作製]
前述のようにして調製した各塗料組成物をエポキシ用シンナーA(中国塗料(株)製)を用いて10質量%希釈(塗料組成物100gに対してシンナーを10g)した。
寸法が150mm×70mm×2.3mm(厚)のSS400のサンドブラスト鋼板(算術平均粗さ(Ra):30~75μm)の表面に、希釈後の組成物を隙間500μmのフィルムアプリケーターを用いて乾燥膜厚が150μmとなるように塗装した(1回目の塗装)。その後、鋼板上に塗装した塗料組成物を室温(23℃)で24時間乾燥させた。
次いで、乾燥後の塗膜(1層目の塗膜)上に、前記希釈後の組成物を隙間500μmのフィルムアプリケーターを用いて乾燥膜厚が150μmとなるように塗装(2回目の塗装)し、室温(23℃)で3日間乾燥させることで、鋼板上に、1層目の塗膜および2層目の塗膜がこの順で積層された試験板(塗膜付き基材)を作製した。
作製した試験板を用いて以下の層間密着性、耐熱性(高温暴露後の塗膜状態)および耐熱性(耐変色性)の試験を行った。結果を表1~3に示す。
【0100】
<層間密着性>
JIS K 5600-5-6:1999で規定されているクロスカット法に準拠して、前記1層目の塗膜と2層目の塗膜との層間密着性を評価した。
なお、切込みを入れる際には、試験板の2層目の塗膜側から1層目の塗膜に達する切込みを入れた。
【0101】
<耐熱性(高温暴露後の塗膜状態)>
前記のように作製した試験板を200℃で6時間加熱し、その後室温に戻した。室温に戻した後の塗膜表面の状態をASTM D714-87に基づいて評価した。
評価は、「フクレの大きさ」を表す数値と、「フクレの発生密度」を表す記号の組み合わせにより示す。「フクレの大きさ」は、フクレが大きい順に2、4、6、8の数値で表し、10は全くフクレが無い状態である。「フクレの発生密度」は、密度が高い順に、D、MD、M、Fの記号で表す。
【0102】
<耐熱性(耐変色性)>
JIS K 5600-4-5:1999に準拠し、分光色彩計(型式CM-3700A、コニカミノルタジャパン(株)製)を用いて、前記のように作製した試験板上の塗膜表面のL*、a*およびb*を測定し、また、前記のように作製した試験板を200℃で6時間加熱し、次いで、室温に戻した後の試験板上の塗膜表面のL*、a*およびb*を測定し、JIS K 5600-4-6:1999に準拠して、高温暴露前後の塗膜表面の色差ΔEを算出した。
なお、表2~3における変色低減率は、それぞれ対応する比較例のΔEに対する実施例のΔEの比の百分率である。例えば、実施例5および6の変色低減率は、比較例3のΔEに対する実施例5または6のΔEの比の百分率であり、実施例7および8の変色低減率は、比較例4のΔEに対する実施例7または8のΔEの比の百分率である。
【0103】
<ガラス転移温度(Tg)測定>
前述のようにして調製した各塗料組成物をエポキシ用シンナーA(中国塗料(株)製)を用いて10質量%希釈(塗料組成物100gに対してシンナーを10g)した。希釈後の組成物を隙間500μmのフィルムアプリケーターを用いて乾燥膜厚が150μmとなるように、離型紙上に塗装した。その後、塗装した塗料組成物を室温で7日間乾燥させ、離型紙から離した塗膜を直径3.5mmの円形に切り抜いた。該切り抜いた塗膜を用い、DSC Q2000(TA Instruments Japan Inc.製)を用いて、-50℃から毎分20℃ずつ昇温し、150℃まで昇温した。その後、-50℃まで冷却し、さらに前記と同様に、-50℃から毎分20℃ずつ昇温し、150℃まで昇温した際のDSC曲線からTgを求めた。結果を表1に示す。
一般的にTgが高いほど耐熱性に優れることが知られている。
【0104】
<質量減少率測定>
前述のようにして調製した各塗料組成物をエポキシ用シンナーA(中国塗料(株)製)を用いて10質量%希釈(塗料組成物100gに対してシンナーを10g)した。希釈後の組成物を隙間500μmのフィルムアプリケーターを用いて乾燥膜厚が150μmとなるように、離型紙上に塗装した。その後、塗装した塗料組成物を室温で7日間乾燥させ、離型紙から離した塗膜を直径3.5mmに切り抜いた。該切り抜いた塗膜を用い、STA7300((株)日立ハイテクサイエンス製)を用いて、30℃から毎分10℃ずつ昇温し、1,000℃まで昇温した際の、250℃時点での塗膜の質量減少率[(昇温前の塗膜の質量-250℃時点での塗膜の質量)×100/昇温前の塗膜の質量]を測定した。結果を表1に示す。
一般的に塗膜質量減少率が低いほど耐熱性に優れることが知られている。
【0105】
<防食性試験>
[試験板の作製]
前述のようにして調製した各塗料組成物をエポキシ用シンナーA(中国塗料(株)製)を用いて10質量%希釈(塗料組成物100gに対してシンナーを10g)した。寸法が150mm×70mm×0.8mm(厚)のSSPC-SBの冷間圧延鋼板(JIS G 3141)の表面に、前記希釈後の組成物をエアスプレーを用いて乾燥膜厚が100μmとなるように塗装した(1回目の塗装)。その後、鋼板上に塗装した塗料組成物を室温(23℃)で24時間乾燥させた。次いで、乾燥後の塗膜上に、前記希釈後の組成物をエアスプレーを用いて乾燥膜厚が100μmとなるように塗装した(2回目の塗装)。その後、室温(23℃)で7日間乾燥させて防食性評価用の各試験板を作製した。
【0106】
図1に示すように、得られた防食性評価用の各試験板1の長辺の両端から10mmずつ、短辺の両端のどちらかの一方から20mmの位置に、長さが50mmになるように基材鋼板の表面に届くまでカット2を入れた。
前記のようにカットを入れた試験板を200℃で6時間加熱し、その後室温で18時間静置し、その後塩水噴霧機(JIS K 5600-7-1準拠)に144時間入れる条件を1サイクルとした。このサイクルを合計8サイクル(1,344時間)行った後、前記切れ込みから、塗膜が鋼板から剥離した部分までの最大の長さが20mm以内の場合を合格(AA)、該最大の長さが20mmを超える場合を不合格(DD)とした。結果を表1に示す。
【0107】
実施例1~3および5~16で得られた塗料組成物から形成された塗膜は、実施例4と同様の防食性を示すと考えられる。また、実施例4と比較例2との対比と同様に、これら実施例は、対応する比較例に対して、ガラス転移温度(Tg)が高く、かつ、質量減少率が小さいと考えられる。
比較例1および3~10で得られた塗料組成物から形成された塗膜は、比較例2と同様の防食性を示すと考えられる。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】
【0111】
【表4】
【符号の説明】
【0112】
1:試験板(防食性評価用の試験板)
2:カット
図1