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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】積層成形システム及び積層成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/20 20060101AFI20241217BHJP
   B32B 37/14 20060101ALI20241217BHJP
   B29C 43/56 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B29C43/20
B32B37/14 Z
B29C43/56
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023042912
(22)【出願日】2023-03-17
(65)【公開番号】P2024132220
(43)【公開日】2024-09-30
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】植田 直樹
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-174329(JP,A)
【文献】特開2009-006499(JP,A)
【文献】特開2010-036464(JP,A)
【文献】特開2010-033727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/20
B32B 37/14
B29C 43/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被積層体を搬送するキャリアフィルムを巻き出す巻出し装置と、
前記被積層体を加圧部で加圧する積層成形工程を実施する積層成形装置と、
前記キャリアフィルムを巻き取ることで前記積層成形工程後の前記被積層体を前記積層成形装置から搬出する巻取り装置と、
前記積層成形装置と前記巻出し装置との間と前記積層成形装置と前記巻取り装置との間との少なくとも一方に配置され、前記キャリアフィルムの下面を支持する張力補助装置と、
前記被積層体が前記加圧部による加圧位置に停止した状態で前記張力補助装置に前記キャリアフィルムの張力を高める指示を与える動作制御装置と、有し、
前記張力補助装置は、前記動作制御装置からの指示に従い、前記キャリアフィルムに加わる張力を高める積層成形システム。
【請求項2】
前記張力補助装置は、前記加圧部と前記張力補助装置との間に構造物を介さない位置に配置される請求項1に記載の積層成形システム。
【請求項3】
前記加圧部は、
内部の空間を外部より減圧した減圧状態に維持できるチャンバと、
前記チャンバ内に設けられ、前記被積層体に圧力を加える加圧機構と、
を有する請求項1に記載の積層成形システム。
【請求項4】
前記張力補助装置が前記キャリアフィルムを支持する支点を生じさせる部材の少なくとも一部は、前記積層成形装置において前記加圧部の外周側に設けられるタイバのうち前記キャリアフィルムの搬送方向と直交する方向に対向して配置される2つのタイバの外周を投影した投影領域に重なる位置に設定される請求項1に記載の積層成形システム。
【請求項5】
被積層体を搬送するキャリアフィルムを巻き出す巻出し装置と、
前記被積層体を加圧部で加圧する積層成形工程を実施する積層成形装置と、
前記キャリアフィルムを巻き取ることで前記積層成形工程後の前記被積層体を前記積層成形装置から搬出する巻取り装置と、
前記積層成形装置と前記巻出し装置との間と前記積層成形装置と前記巻取り装置との間との少なくとも一方に配置され、前記キャリアフィルムの下面を支持する張力補助装置と、を有し、
前記張力補助装置は、
前記巻出し装置側に配置される第1のローラと、
前記巻取り装置側に配置される第2のローラと、
前記第1のローラから前記第2のローラに送られる前記キャリアフィルムを前記被積層体の搬送高さよりも下側に迂回させる第3のローラと、を有する積層成形システム。
【請求項6】
前記第3のローラは、前記キャリアフィルムを前記被積層体の搬送方向とは逆の方向に引っ張る側の回転方向に回転することで前記キャリアフィルムの張力を高める請求項に記載の積層成形システム。
【請求項7】
前記第3のローラは、前記被積層体を前記積層成形装置内に搬入する搬入動作時の搬送位置よりもさらに下側に前記キャリアフィルムを引っ張ることで前記キャリアフィルムの張力を高める請求項に記載の積層成形システム。
【請求項8】
前記積層成形装置と前記巻取り装置との間に、前記積層成形装置から搬出された前記被積層体にさらに加圧力を加える少なくとも1つのプレス装置が配置され、
前記張力補助装置が前記積層成形装置及び前記プレス装置の少なくともいずれかに配置される請求項1又は5に記載の積層成形システム。
【請求項9】
被積層体を搬送するキャリアフィルムを巻き出す巻出し装置と、
前記被積層体の少なくとも片面と積層フィルムとを積層するように、前記被積層体を加圧部で加圧する積層成形工程を実施する積層成形装置と、
前記キャリアフィルムを巻き取ることで前記積層成形工程後の前記被積層体を前記積層成形装置から搬出する巻取り装置と、
前記積層成形装置と前記巻出し装置との間と前記積層成形装置と前記巻取り装置との間との少なくとも一方に配置され、前記キャリアフィルムの下面を支持する張力補助装置と、
前記被積層体が前記加圧部による加圧位置に停止した状態で前記張力補助装置に前記キャリアフィルムの張力を高める指示を与える動作制御装置と、
を有する積層成形システムにおける被積層体の積層成形方法であって、
前記加圧部に設定される停止位置に前記被積層体が停止した状態で、前記張力補助装置からの指示に基づき前記張力補助装置により前記キャリアフィルムの張力を高めた上で、前記被積層体を加圧する積層成形方法。
【請求項10】
前記被積層体の搬送方向にかかる張力が前記搬送方向の前後で実質的に同じになるように前記キャリアフィルムの張力を高める、前記被積層体を搬送する請求項に記載の積層成形方法。
【請求項11】
被積層体を搬送するキャリアフィルムを巻き出す巻出し装置と、
前記被積層体の少なくとも片面と積層フィルムとを積層するように、前記被積層体を加圧部で加圧する積層成形工程を実施する積層成形装置と、
前記キャリアフィルムを巻き取ることで前記積層成形工程後の前記被積層体を前記積層成形装置から搬出する巻取り装置と、
前記積層成形装置と前記巻出し装置との間と前記積層成形装置と前記巻取り装置との間との少なくとも一方に配置され、前記キャリアフィルムの下面を支持する張力補助装置と、
を有する積層成形システムにおける被積層体の積層成形方法であって、
前記加圧部に設定される停止位置に前記被積層体が停止した状態で、前記キャリアフィルムの張力を高めた上で、前記被積層体を加圧し、
前記張力補助装置は、
前記巻出し装置側に配置される第1のローラと、
前記巻取り装置側に配置される第2のローラと、
前記第1のローラから前記第2のローラに送られる前記キャリアフィルムを前記被積層体の搬送高さよりも下側に迂回させる第3のローラと、を有する積層成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、表面に凹凸を有する基板材料に当該凹凸を埋めるフィルム材を積層する積層成形システム、張力補助システム及び積層成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体基板或いは電子回路基板では、配線を形成する配線層の多層化が進んでいる。このような多層配線基板では、層間に形成する層間絶縁膜をプレス加工で貼り付けて形成する方法がとられることがある。そこで、このような電子回路が形成される基板材料に層間絶縁膜となるフィルム材を積層する積層成形システムが提案されている。このような積層成形システムの一例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の積層成形システムは、積層装置を用いて積層成形体を積層成形する積層成形システムにおいて、少なくとも2 台準備された積層装置のうち、少なくとも1台の積層装置を供給装置と回収装置との間に入替可能に配置して一連の成形ラインを構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2022-15589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の積層装置では、上下に配置されたキャリアフィルムに挟んで被積層体を積層装置に搬入及び搬出を行うが、被積層体を搬送する際にキャリアフィルムがたわみ、当該たわみに起因して積層装置内で被積層体に位置ずれが生じる虞があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、キャリアフィルムのたわみに起因する被積層体の位置ずれを抑制して高精度な積層成形を行うことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態にかかる積層成形システムは、被積層体を搬送するキャリアフィルムを巻き出す巻出し装置と、前記被積層体を加圧部で加圧する積層成形工程を実施する積層成形装置と、前記キャリアフィルムを巻き取ることで前記積層成形工程後の前記被積層体を前記積層成形装置から搬出する巻取り装置と、前記積層成形装置と前記巻出し装置との間と前記積層成形装置と前記巻取り装置との間との少なくとも一方に配置され、前記キャリアフィルムの下面を支持する張力補助装置と、を有し、前記張力補助装置は、前記加圧部と前記張力補助装置との間に構造物を介さない位置に配置される。
【0008】
一実施の形態にかかる張力補助システムは、被積層体を搬送し、前記被積層体の少なくとも片面と積層フィルムとを積層するように、前記被積層体を加圧部で加圧する積層成形工程を実施する積層成形装置に組み合わせられる張力補助システムであって、前記加圧部に設定される停止位置に前記被積層体が停止した状態で、前記被積層体を載置した前記キャリアフィルムにおいて前記被積層体の搬送方向にかかる張力が前記搬送方向の前後で実質的に同じになるように前記キャリアフィルムの下側を支持する張力補助装置を有する。
【0009】
一実施の形態にかかる積層成形システムの被積層体の積層成形方法は、被積層体を搬送するキャリアフィルムを巻き出す巻出し装置と、前記被積層体の少なくとも片面と積層フィルムとを積層するように、前記被積層体を加圧部で加圧する積層成形工程を実施する積層成形装置と、前記キャリアフィルムを巻き取ることで前記積層成形工程後の前記被積層体を前記積層成形装置から搬出する巻取り装置と、を有する積層成形システムにおける被積層体の積層成形方法であって、前記加圧部に設定される停止位置に前記被積層体が停止した状態で、前記キャリアフィルムの下側を支持しながら、前記被積層体を加圧する。
【0010】
一実施の形態にかかる積層成形システム、張力補助システム及び積層成形方法では、加圧部近傍に設けた張力補助装置で、被積層体が停止位置まで搬送された後に下側キャリアフィルムの張力を増すことで下側キャリアフィルムのたわみ量を抑制する。
【発明の効果】
【0011】
一実施の形態にかかる積層成形システム、張力補助システム及び積層成形方法によれば、キャリアフィルムのたわみに起因する位置ずれを抑制して高精度な積層成形を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1にかかる積層成形システムの概要を説明する構成図である。
図2】実施の形態1にかかる張力補助装置の第1の構成及び第1の動作例を説明する図である。
図3】実施の形態1にかかる張力補助装置の第2の構成及び第2の動作例を説明する図である。
図4】実施の形態1にかかる張力補助装置の第3の構成及び第3の動作例を説明する図である。
図5】実施の形態1にかかる張力補助装置の第4の構成及び第4の動作例を説明する図である。
図6】実施の形態1にかかる積層成形システムの動作を説明するフローチャートである。
図7】実施の形態1にかかる積層成形システムの具体的な構成図である。
図8】下側キャリアフィルムのたわみを説明する図である。
図9】下側キャリアフィルムの支点の設定位置を説明する図である。
図10】実施の形態2にかかる積層成形システムの概要を説明する構成図である。
図11】実施の形態3にかかる積層成形システムの具体的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0014】
実施の形態1
実施の形態1にかかる積層成形システム1は、被積層体を1対のキャリアフィルムで挟んだ状態で搬送し、被積層体の少なくとも片面と積層フィルムとを積層するように、被積層体を加圧部で加圧する積層成形工程を実施する積層成形装置を有する。実施の形態1にかかる積層成形システム1は、積層フィルムを被積層体に載せた状態で、キャリアフィルムで挟んで搬送する。また、積層成形システム1では、キャリアフィルムの供給を行う巻出し装置とキャリアフィルムの回収を行う巻取り装置と、を積層成形装置と組み合わせて1つのシステムとする。そして、実施の形態1にかかる積層成形システム1では、積層成形装置内の加圧部に設定された停止位置に被積層体を搬送した時に、1対のキャリアフィルムのうち下側キャリアフィルムの張力を高くすることでキャリアフィルムのたわみを防止する。そこで、以下では、キャリアフィルムの張力調整機構を有する積層成形システム1について詳細に説明する。
【0015】
図1に実施の形態1にかかる積層成形システムの概要を説明する構成図を示す。図1に示す構成図は、積層成形システム1において下側キャリアフィルムの張力を一時的に増す張力補助装置11の構成を主に説明するものであり、積層成形システム1の具体的な構成については簡略化したものである。なお、以下の説明では被積層体に積層する積層フィルムに関しては図示を省略する。
【0016】
図1に示すように、積層成形システム1は、積層成形装置10に対して張力補助装置11及びクリップ装置12が組み合わされる。また、積層成形システム1では、被積層体WK1に積層フィルムを仮付けしたものを1対のキャリアフィルムで挟み込んだ状態で積層成形装置10に搬入及び搬出するためにキャリアフィルムを供給する巻出し装置及び巻取り装置が組み合わされる。図1では、巻出し装置のうち、下供給ロール21、従動ローラ22、上供給ロール23、従動ローラ24、載置ステージ25を示した。また、巻取り装置のうち、下回収ロール31、従動ローラ32、上回収ロール33、従動ローラ34、回収ステージ35を示した。なお、実施の形態1にかかる積層成形システム1では、載置ステージ25で被積層隊WK1と積層フィルムとを重ね合わせる。以下の説明では、積層フィルムに関しては説明を省略するが、実施の形態1にかかる積層成形システム1は、被積層体WK1に積層フィルムを積層するために用いられるものであることに変わりはない。
【0017】
また、図1では、積層成形装置10の構成として、上型101、上側加圧盤102、下型103、下側加圧盤104、ラム105、加圧力発生装置106を示した。積層成形装置10は、上型101及び下型103をとじ合わせることで内部の空間を外部より減圧した減圧状態に維持できるチャンバを形成する。また、上型101の下型103に対向する面には、上側加圧盤102が設けられ、下側加圧盤104の上型101に対向する面には、下側加圧盤104が配置される。下型103は、下型103の下側に設けられる油圧ユニット等の加圧力発生装置106がラム105を押し上げることで上側加圧盤102側に接近する構成となっている。つまり、上側加圧盤102及び下型103は、前記チャンバ内に設けられ、被積層体WK2に圧力を加える加圧ステージとなる。そして、積層成形装置10は、チャンバ内を真空にしながら被積層体WK2を上側加圧盤102と下側加圧盤104で加圧する真空積層成形を行う真空積層成形装置である。つまり、積層成形装置10では、上側加圧盤102、下側加圧盤104により構成し、当該加圧部にて被積層体WK2を加圧する。また、積層成形装置10では、真空積層成形を行う為に上型101と上側加圧盤102、及び、下型103及び下側加圧盤104も加圧部として考えることができる。なお、上側加圧盤102及び下側加圧盤104は、それぞれ可撓性シートとしてもよい。また、真空積層成形を行わない場合、チャンバを構成するための構造は不要となる。また、加圧力発生装置106はサーボモータ、ラム105はボールねじとしてもよい。
【0018】
実施の形態1にかかる積層成形システム1では、載置ステージ25において下側キャリアフィルムCFL上に被積層体WK1を載置する。その後、被積層体WK1に上側キャリアフィルムCFUを重ねることで、下側キャリアフィルムCFLと上側キャリアフィルムCFUとで被積層体WK1を挟み込んだ状態で被積層体WK1を積層成形装置10内に搬送する。また、図1では、積層成形装置10内の停止位置に搬送された被積層体を被積層体WK2として示した。そして、積層成形システム1では、下側キャリアフィルムCFLと上側キャリアフィルムCFUを移動させることで、積層成形装置10で被積層体WK2に積層フィルムを積層した積層体WK3を回収ステージ35に搬出する。なお、被積層体WK2に積層するフィルムは、上側キャリアフィルムCFUに限らず、下側キャリアフィルムCFLと上側キャリアフィルムCFUの少なくとも一方であればよい。
【0019】
また、実施の形態1では、被積層体を搬送する際には、下供給ロール21から巻出した下側キャリアフィルムCFLを従動ローラ22及び従動ローラ32で補助しながら下回収ロール31で巻取るとともに、上供給ロール23から巻出した上側キャリアフィルムCFUを従動ローラ24及び従動ローラ34で補助しながら上回収ロール33で巻取る。
【0020】
そして、積層成形装置10では、張力補助装置11及びクリップ装置12を用いて下側キャリアフィルムCFLの張力を一時的に増す制御を行う。ここで、図1では、積層成形システム1の全体を制御する動作制御部CUを示した。動作制御部CUは、キャリアフィルムの移動と、積層成形装置10における加圧タイミングと加圧力、張力補助装置11とクリップ装置12の動作を制御する。具体的な制御方法は後述する。
【0021】
図1に示す例では、張力補助装置11は、積層成形装置10と巻出し装置との間に設けられる。より具体的には、張力補助装置11は、積層成形装置10の加圧部と張力補助装置11との間に構造物を介さない位置に配置される。また、クリップ装置12は、巻取り装置と積層成形装置10との間に設けられる。より具体的には、クリップ装置12は、積層成形装置10の加圧部とクリップ装置12との間に構造物を介さない位置に配置される。ここで、図1に示す例では、積層成形装置10の加圧部は、上型101及び上側加圧盤102と下型103及び下側加圧盤104とにより構成される加圧機構を有するチャンバである。また、クリップ装置12は、積層成形装置10の加圧部を挟んで張力補助装置11の反対側に配置される。なお、クリップ装置12に代えて張力補助装置11と対になる張力補助装置を設けてもよく、クリップ装置12に代えて下回収ロール31の回転を止めることによる下側キャリアフィルムの固定を行ってもよい。
【0022】
そして、積層成形システム1では、被積層体WK2が加圧部に設定された停止位置に到達したことに応じて動作制御部CUがクリップ装置12により下側キャリアフィルムCFL及び上側キャリアフィルムCFUを挟み込むように指示をする。その後、積層成形システム1では、動作制御部CUが張力補助装置11に下側キャリアフィルムの張力を増すように指示する。これにより、積層成形システム1では、被積層体WK2に加圧する前に下側キャリアフィルムCFLの張力を増して下側キャリアフィルムCFLのたわみを抑制する。
【0023】
ここで、張力補助装置11についてより詳細に構成及び動作を説明する。なお、張力補助装置11は、動作制御部CUとともに積層成形システム1の張力補助システムとして積層成形システム1とは別に供給されるものであってもよい。また、張力補助装置11については、複数の形態が考えられるが以下の説明では2つの構成例ついて説明する。
【0024】
図2に実施の形態1にかかる張力補助装置11の第1の構成及び第1の動作例を説明する図を示す。図2に示すように、第1の例では、張力補助装置11は、第1のローラ111、第2のローラ112、第3のローラ113を有する。
【0025】
第1のローラ111は、巻出し装置側に配置される従動ローラである。第2のローラ112は、巻取り装置側に配置される従動ローラである。第3のローラ113は、第1のローラ111から第2のローラ112に送られる下側キャリアフィルムCFLを被積層体WK1の搬送高さよりも下側に迂回させるローラである。なお、実施の形態1における被積層体WK1の搬送高さは、第1のローラ111の円の最も高い位置と第2のローラ112の円の最も高い位置とを結ぶ直線として規定することができる。第1の構成例では、第3のローラ113は、被積層体WK1の搬送時は従動ローラとして動作し、下側キャリアフィルムCFLの張力を増す張力補助動作時は、下側キャリアフィルムCFLを被積層体WK1の搬送方向とは逆の方向に引っ張る側の回転方向に回転する駆動ローラとして動作する。図2に示す例では、張力補助動作時に反時計回りに駆動力を発生させることで第3のローラ113が下側キャリアフィルムCFLを搬送方向とは逆方向に引っ張ることで下側キャリアフィルムCFLの張力を高める様子を示した。なお、第3のローラ113の動作は、動作制御部CUにより制御される。
【0026】
続いて、図3に実施の形態1にかかる張力補助装置11の第2の構成及び第2の動作例を説明する図を示す。図3に示すように、第2の例においても、張力補助装置11は、第1のローラ111、第2のローラ112、第3のローラ113を有する。
【0027】
図3に示す第2の構成例では、第1のローラ111は、積層成形装置10の巻出し装置側(例えば、前段)に配置される従動ローラである。第2のローラ112は、積層成形装置10の巻取り装置側(例えば、後段)に配置される従動ローラである。第3のローラ113は、第1のローラ111から第2のローラ112に送られる下側キャリアフィルムCFLを被積層体WK1の搬送高さよりも下側に迂回させるローラである。第2の構成例では、第3のローラ113は、被積層体WK1の搬送時は従動ローラとして動作し、下側キャリアフィルムCFLの張力を増す張力補助動作時は、被積層体WK1を積層成形装置10内に搬入する搬入動作時の搬送位置よりもさらに下側に下側キャリアフィルムCFLを引っ張ることで下側キャリアフィルムCFLの張力を高める。なお、第3のローラ113の動作は、動作制御部CUにより制御される。
【0028】
続いて、図4に実施の形態1にかかる張力補助装置11の第3の構成及び第3の動作例を説明する図を示す。図4に示すように、第3の構成例においても、張力補助装置11は、第1のローラ111、第2のローラ112、第3のローラ113を有する。
【0029】
そして、第3の構成例では、第1のローラ111は、積層成形装置10の巻出し装置側(例えば、前段)に配置される従動ローラである。第2のローラ112は、積層成形装置10の巻取り装置側(例えば、後段)に配置される従動ローラである。第3のローラ113は、ローラ旋回中心点を中心とする円弧に沿って移動する従動ローラである。第3の構成例では、第3のローラ113は、下側キャリアフィルムCFLの張力を増す張力補助動作時にローラ旋回中心点を中心とした円弧にそって被積層体搬送方向とは逆方向に移動する。このような第3のローラ113の移動により、第3の構成例では、下側キャリアフィルムCFLを引っ張ることで下側キャリアフィルムCFLの張力を高める。なお、第3のローラ113の動作は、動作制御部CUにより制御される。
【0030】
続いて、図5に実施の形態1にかかる張力補助装置11の第4の構成及び第4の動作例を説明する図を示す。図5に示すように、第4の構成例においても、張力補助装置11は、第1のローラ111、第2のローラ112、第3のローラ113を有する。
【0031】
そして、第4の構成例では、第1のローラ111は、積層成形装置10の巻出し装置側(例えば、前段)に配置される従動ローラである。第2のローラ112は、積層成形装置10の巻取り装置側(例えば、後段)に配置される従動ローラである。第3のローラ113は、鉛直軸VXと角度θを有する方向に直線的に移動する従動ローラである。ここで、角度θは、下側キャリアフィルムCFLの張力を高めるためには90°≦θ≦270°の範囲であることが好ましい。第4の構成例では、第3のローラ113は、下側キャリアフィルムCFLの張力を増す張力補助動作時に鉛直軸VXと角度θを有する方向に直線的に移動する。このような第3のローラ113の移動により、第4の構成例では、下側キャリアフィルムCFLを引っ張ることで下側キャリアフィルムCFLの張力を高める。なお、第3のローラ113の動作は、動作制御部CUにより制御される。
【0032】
なお、図2及び図3では、3本のローラを用いた張力補助装置11を説明したが、張力補助装置11では、下側キャリアフィルムCFLにかかる張力を増強するためのローラは少なくとも1本あれば良い。また、ローラの支持形態は、片側支持でも両端支持でも良く上部から吊して支持してもよく、横梁に通すように支持されてもよい。つまり、ローラの支持形態は特に限定されない。また、図2で示した張力補助装置11の構成においては、駆動力を発揮するローラは、第1のローラ111、第2のローラ112の少なくとも1つであっても良い。
【0033】
また、張力補助装置11を構成する3本のローラの直径は、全て同じ直径でも良く、少なくとも1本が異なっていても良い。3本のローラの直径の一例としては、第1のローラ111と第2のローラ112が同じ直径であり、第3のローラ113が他のローラ以下の直径を有するものである。さらに好ましくは、第1のローラ111と第2のローラ112との直径を第3のローラ113の直径の0.2倍~1.9倍とする。このような構成とすることで省スペース性を高める事ができる。
【0034】
また、張力補助装置11を構成する3本のローラの素材には、特に制限はなく、金属、樹脂、ゴム等が考えられる。また、張力補助装置11を構成する3本のローラの少なくとも1つには、表面に滑り止め材を塗布または貼付してあっても良い。さらに、張力補助装置11を構成する3本のローラには、温調機能を付加されていても良い。温調機能は、ローラを加熱または冷却するものが好ましいが、より好ましくは冷却である。
【0035】
ここで、実施の形態1にかかる積層成形システム1では、下側キャリアフィルムCFLの張力補助動作を行う際に、動作制御部CUが以下のような動作を行う。クリップ装置12がない場合、動作制御部CUは、被積層体WK2が加圧部による加圧位置に停止した状態で張力補助装置11に下側キャリアフィルムCFLの張力を高める指示を与える。また、クリップ装置12がある場合、動作制御部CUは、被積層体WK1が加圧部による加圧位置に停止し、かつ、クリップ装置12により1対のキャリアフィルムが固定された状態で張力補助装置11に下側キャリアフィルムCFLの張力を高める指示を与える。以下の説明では、クリップ装置12がある状態の積層成形システム1の動作について説明する。
【0036】
図6に実施の形態1にかかる積層成形システム1の動作を説明するフローチャートを示す。なお、以下で説明する積層成形システム1の動作は、動作制御部CUの指示に基づき行われるものとする。
【0037】
図6に示すように、積層成形システム1は、載置ステージ25に被積層体WK1が載置されたことに応じてその後の動作が開始される(ステップS1)。ステップS1で載置ステージ25に被積層体WK1が載置されたことに応じて、動作制御部CUが下供給ロール21及び上供給ロール23が1対のキャリアフィルムを巻出すとともに、下回収ロール31及び上回収ロール33が1対のキャリアフィルムを巻取ることをそれぞれのロールに指示し、これにより被積層体WK1が積層成形装置10に搬入される(ステップS2)。そして、キャリアフィルムの巻出し量が規定量に達するまでステップS2の搬入動作を継続し、キャリアフィルムの巻出し量が規定量に達したことに応じて、キャリアフィルムの巻出しの停止を下供給ロール21、上供給ロール23、下回収ロール31及び上回収ロール33に指示することで、被積層体WK1の搬送動作を停止する(ステップS3、S4)。これにより、被積層体WK1は、停止位置に置かれた被積層体WK2となる。
【0038】
その後、動作制御部CUは、クリップ装置12にキャリアフィルムをクリップすることを指示する(ステップS5)。その後、動作制御部CUは、張力補助装置11に下側キャリアフィルムCFLを巻き戻す張力補助動作を指示する(ステップS6)。また、動作制御部CUは、張力補助装置11による下側キャリアフィルムCFLの巻き戻し量が規定量に達するまでステップS6の張力補助動作を継続する(ステップS7)。そして、下側キャリアフィルムCFLの巻き戻し量が規定量に達したことで、動作制御部CUは、積層成形装置10に真空積層成形加工の実施を指示する(ステップS8)。
【0039】
ステップS8の真空積層形成加工では、上型101と下型103とを閉じるチャンバ閉鎖と、閉じられたチャンバ内を真空にする真空引きと、被積層体WK2を加圧する積層成形加工と、チャンバ内の真空を解除する真空解除と、上型101と下型103とを開くチャンバ開放と、が行われる。その後、動作制御部CUは、S1で載置ステージ25に被積層体WK1が載置されたことに応じて、動作制御部CUが下供給ロール21及び上供給ロール23が1対のキャリアフィルムを巻出すとともに、下回収ロール31及び上回収ロール33が1対のキャリアフィルムを巻取ることをそれぞれのロールに指示し、これにより被積層体WK2を積層成形装置10から搬出する(ステップS9)。
【0040】
続いて、張力補助装置11の詳細な配置について説明する。そこで、図7に実施の形態1にかかる積層成形システムの具体的な構成図を示す。図7に示すように、実施の形態1にかかる積層成形システム1は、積層成形装置10、巻出し装置20、巻取り装置30を有する。積層成形装置10には、上型101、上側加圧盤102、下型103、下側加圧盤104が組み込まれる。また、図7に示す例では、張力補助装置11及びクリップ装置12が積層成形装置10に組み込まれる。巻出し装置20には、下供給ロール21、従動ローラ22、上供給ロール23、従動ローラ24、載置ステージ25が組み込まれる。巻取り装置30には、下回収ロール31、従動ローラ32、上回収ロール33、従動ローラ34、回収ステージ35が組み込まれる。なお、各装置に組み込まれる構成は、実際に組み込まれる構造の一部である。また、図7では、動作制御部CUについては明示していないが、動作制御部CUは、積層成形装置10内に組み込まれていてもよく、積層成形装置10、巻出し装置20、巻取り装置30とは別の筐体に組み込まれていてもよい。
【0041】
そして、図7に示すように、積層成形システム1では、搬送に用いるキャリアフィルムの長さをできるだけ短くするために、積層成形装置10、巻出し装置20、巻取り装置30を密接して配置する。そのため、張力補助装置11及びクリップ装置12は、積層成形装置10の上型101及び下型103の間の狭い空間に組み込まれる。このうち、上型101は固定型であり、下型103は可動型である。そのため、上型101と下型103の間のスペースを考慮すると、張力補助装置11は上型101にボルト等により締結されることが望ましい。図7では、張力補助装置11及びクリップ装置12が組み込まれる部分の拡大図を示した。
【0042】
積層成形装置10では、下型103に付属してシャッタ107が設けられ、シャッタ107を備えた下型103を上昇させることでチャンバを構成する。そして、チャンバが構成された時には、1対のキャリアフィルムが上型101とシャッタ107とで挟み込まれる状態となる。その後、積層成形装置10では、下型103を上昇させることで被積層体WK2を加圧する。このような加圧動作が行われるため、張力補助装置11は、最大上昇後の下型103に接触しない高さであって、かつ、キャリアフィルムにより構成される被積層体の搬送位置よりも低い位置に収める必要がある。このような場合、張力補助装置11を図2で示した第1の構成例とすることで、張力補助装置11の上下方向の高さを抑えることができる。つまり、張力補助装置11の第1の構成例では、狭い位置に設置が可能になるメリットがある。一方、張力補助装置11を第2の構成例とした場合は、第3のローラ113を上下動させる空間が必要となるものの、回転方向の駆動力が不要になるため張力補助装置11の構成を簡易にすることができるメリットがある。
【0043】
また、クリップ装置12についても下側キャリアフィルムCFLの下側に設置したテーブルに対して上側キャリアフィルムCFUの上側からキャリアフィルムを押え付ける構成のクリップ装置12とすることで、クリップ装置12を上型101と上型キャリアフィルムCFUとの間の狭い空間に設置することが可能になる。
【0044】
なお、図7では、巻出し装置20に1対のキャリアフィルムを抑えるテーブル及びクリップ装置26を設ける例を示したが、テーブル及びクリップ装置26を設けることで張力補助装置11による張力補助動作を行う際の第3のローラ113の駆動力の低減を実現することができる。
【0045】
上記説明より、実施の形態1にかかる積層成形システム1では、張力補助装置11を用いる事で下側キャリアフィルムCFLのたわみを抑制することができる。このとき、張力補助装置11を加圧部との間に他の構造物を介さない位置(例えば、加圧部の直前位置)に配置することで下側キャリアフィルムCFLへの張力の付加を効率的に行う事が可能になる。
【0046】
ここで、キャリアフィルムは、PET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)等の樹脂フィルムである事が多い。このような樹脂フィルムでは、張力により伸びが発生するため、上記したように、加圧部にできるだけ近い位置に張力補助装置11を設けることで下側キャリアフィルムCFLへの張力の付加を効率的に行う事が可能になる。ここで、張力補助装置11を構成するローラのうち最も加圧部に近いローラの表面と加圧部の張力補助装置側の端部との距離は、500mm以内であることが好ましく、100mm以内であればより好ましい。
【0047】
また、加圧部を挟んで張力補助装置11に対向する位置にクリップ装置12を設けることで、張力の起点となる点を下回収ロール31或いは従動ローラ32よりも加圧部側に近づけることができるため、下側キャリアフィルムCFLへの張力の付加の効率がさらに高まる。
【0048】
そのため、積層成形システム1のように張力補助装置11によって下側キャリアフィルムCFLのたわみを抑制することで、被積層体WK2の位置精度が高まり、積層成形の精度を高めることが可能になる。
【0049】
ここで、図8に下側キャリアフィルムCFLのたわみを説明する図を示し、下側キャリアフィルムCFLのたわみについて詳細に説明する。図8では、上図に張力補助装置11を用いない比較例における下側キャリアフィルムCFLのたわみを説明する図を示し、下図に張力補助装置11を有する実施の形態1にかかる積層成形システム1における下側キャリアフィルムCFLのたわみを説明する図を示した。また、図8では、実施の形態1にかかる積層成形システム1及び比較例にかかる積層成形システムの両方が巻出し装置20側に設けたクリップ装置26を有する例を示した。
【0050】
図8の上図に示すように、比較例にかかる積層成形システムでは、予め設定された停止位置に到達した被積層体WK2の中心位置CENTとフィルム搬送元側の支点となるテーブルの端部との距離L1が、中心位置CENTとフィルム搬送先側の支点となるテーブルの端部との距離L0よりもかなり長くなる。つまり、比較例にかかる積層成形システムでは、L0<L1となる。そのため、比較例にかかる積層成形システムでは、停止位置に到達した被積層体WK2の中心位置と距離L0、L1とのバランスにより被積層体WK2が大きく傾いてしまい被積層体WK2の位置ずれが生じる。また、図8では、比較例にかかる積層成形システムにおける最大たわみ量をDL0と示した。
【0051】
一方、図8の下図に示す実施の形態1にかかる積層成形システム1では、張力補助装置11をチャンバの近くに配置することで、被積層体WK2の中心位置CENTとフィルム搬送元側の支点となる張力補助装置11の最もチャンバに近い位置になる第2のローラ112の端部との距離L2が、中心位置CENTとフィルム搬送先側の支点となるテーブルの端部との距離L0とほぼ同じ距離になる。これにより、被積層体WK2の中心位置CENTが中心位置CENTとフィルム搬送元側の支点と中心位置CENTとフィルム搬送先側の支点との中心にくるため、被積層体WK2の傾きが抑制される。そして、被積層体WK2を載せた下側キャリアフィルムCFLの最大たわみ量もDL0よりも小さいDL1となる。
【0052】
このように、張力補助装置11をチャンバ近傍に配置することで被積層体WK2の傾きを抑制して、下側キャリアフィルムCFLのたわみを効果的に抑制することが可能になる。また、図8の下図に示すように、張力補助装置11は、第2のローラ112が1本しかなく、かつ、なんらの駆動力も有さない場合であっても、被積層体WK2の傾きを抑制することができる。そして、図2及び図3のように駆動力を有する第3のローラ113を張力補助装置11が有することでたわみ抑制効果をさらに高めることができる。
【0053】
また、上記したような距離L2と距離L0との差を小さくするための張力補助装置11の配置は、巻取り装置30から巻出し装置20の方向に向かって見た時に、シャッタ107の端部から上型101の端部の間に配置されることが好ましい。すなわち、張力補助装置11はシャッタ107の端部から100mm以内に配置されるのが好ましく、50mm以内に配置されるのがより好ましい。ここでは、張力補助装置11の配置のより好ましい配置を図9に示す。図9は、張力補助装置11とクリップ装置12の配置例を説明する図である。
【0054】
図9に示すように、積層成形装置10は、には、上型101および下型103を貫通するタイバ108が設けられる。このタイバ108は、例えば、チャンバの四隅に配置される。そこで、キャリアフィルム搬送方向と直交する方向に対向して配置されるタイバ108の外周を結ぶ領域A(タイバ108の投影領域)に、張力補助装置11の第2のローラ112の少なくとも一部が重なるように第2のローラ112を配置する。つまり、張力補助装置11が下側キャリアフィルムCFLを支持する支点は、積層成形装置10において加圧部の外周側に設けられるタイバ108のうち下側キャリアフィルムCFLの搬送方向と直交する方向に対向して配置される2つのタイバ108の外周を結ぶ領域A(タイバ108の投影領域)に重なる位置に設定される。また、領域Aに対して線対称に対向する領域Bについても、張力補助装置11の第1のローラ111の少なくとも一部が領域Bに重なるように、第1のローラ111をさらに配置してもよい。つまり、2以上の張力補助装置11によって下側キャリアフィルムCFLを支持する支点は、積層成形装置10の加圧部を境に線対称に位置する領域Aと領域Bのそれぞれに重なる位置に設定されてもよい。張力補助装置11をこのように配置することで、距離L2と距離L0との差がより小さくなり、下側キャリアフィルムCFLのたわみ量をより抑制することができる。
【0055】
実施の形態2
実施の形態2では、実施の形態1にかかる積層成形システム1の変形例となる積層成形システム2について説明する。なお、実施の形態2の説明では、実施の形態1と同一の構成要素については実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0056】
図10に実施の形態2にかかる積層成形システム2の概要を説明する構成図を示す。図10に示すように、実施の形態2にかかる積層成形システム2は、張力補助装置11とクリップ装置12の配置を実施の形態1にかかる積層成形システム1とは逆にしたものである。
【0057】
このように、張力補助装置11とクリップ装置12とを逆にしても、実施の形態1にかかる積層成形システム1と同様に下側キャリアフィルムCFLに張力を付加することが可能である。
【0058】
つまり、本明細書で説明した積層成形システムでは、張力補助装置11は、積層成形装置10の加圧部の巻出し装置20側と巻取り装置30側との少なくとも一方に配置されていればよい。また、実施の形態2にかかる積層成形システム2においても、張力補助装置11は、積層成形装置10の加圧部の端部から好ましくは500mm以内に、さらに好ましくは100mm以内に配置することで下側キャリアフィルムCFLのたわみ量を抑制することができる。
【0059】
実施の形態3
実施の形態3では、実施の形態1にかかる積層成形システム1の変形例となる積層成形システム3について説明する。なお、実施の形態3の説明では、実施の形態1と同一の構成要素については実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0060】
図11に実施の形態3にかかる積層成形システムの構成図を示す。図11に示すように、積層成形システム3は、積層成形装置10と巻取り装置30との間に少なくとも1つのプレス装置が配置される。プレス装置は、積層成形装置10から搬出された被積層体にさらに加圧力を加える。図11に示す例では、積層成形装置10と巻取り装置30との間にプレス装置40、プレス装置50を設けた例を示した。
【0061】
プレス装置40は、上型401に設けられた上側加圧盤402と、下型403に設けられた下側加圧盤404とにより被積層体に加圧する。プレス装置50は、上型501に設けられた上側加圧盤502と、下型503に設けられた下側加圧盤504とにより被積層体に加圧する。このように積層成形装置10の後段にプレス装置を1以上設けることで、積層成形面の平坦度を段階的に向上させることができる。
【0062】
一方、積層成形装置10と巻取り装置30との間にプレス装置40、50を設けると巻出し装置20から巻取り装置30までの距離がさらに遠くなり、下側キャリアフィルムCFLのたわみ量が大きくなる。しかしながら、積層成形装置10、プレス装置40、50に張力補助装置11を設けることで、下側キャリアフィルムCFLのたわみ量を抑制することができる。なお、このとき、駆動力を発生する張力補助装置11を設けることで下側キャリアフィルムCFLのたわみ量をより抑制することができる。
【0063】
また、図11に示すように、プレス装置40、プレス装置50のそれぞれに対してクリップ装置42、52を設けることでプレス装置におけるたわみ量の増加を抑えることができる。
【0064】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1~3 積層成形システム
10 積層成形装置
101、401、501 上型
102、402、502 上側加圧盤
103、403、503 下型
104、404、504 下側加圧盤
105 ラム
106 加圧力発生装置
107 シャッタ
108 タイバ
11 張力補助装置
111 第1のローラ
112 第2のローラ
113 第3のローラ
12、26、42、52 クリップ装置
20 巻出し装置
21 下供給ロール
22、24、32、34 従動ローラ
23 上供給ロール
25 載置ステージ
26 クリップ装置
30 巻取り装置
31 下回収ロール
33 上回収ロール
35 回収ステージ
40、50 プレス装置
WK1、WK2 被積層体
WK3 積層体
CFU 上側キャリアフィルム
CFL 下側キャリアフィルム
CU 動作制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11