(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】インダクタ
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
H01F37/00 C
H01F37/00 N
H01F37/00 A
H01F37/00 S
H01F37/00 R
(21)【出願番号】P 2023055881
(22)【出願日】2023-03-30
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】進藤 勇佑
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特許第6706729(JP,B2)
【文献】特開2021-141227(JP,A)
【文献】特開2022-114994(JP,A)
【文献】特開2018-041773(JP,A)
【文献】特開2021-019103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のY方向に延在するコイル取付部を前記Y方向に直交するX方向に並べて有するコアと、前記コイル取付部ごとに1つずつ外嵌されているコイルと、を備えるインダクタであって、
前記コアは、複数のコア分割体に分割形成されると共に、前記コア分割体どうしの間にギャップを設けないで前記コア分割体どうしを当接させ合った状態で設置されており、
各前記コイル取付部における、前記X方向および前記Y方向に直交するZ方向の一方側としてのZ-方向側の端面の位置が、互いに前記Z方向に揃っており、
少なくとも所定の前記コイル取付部における、前記Z-方向の反対側としてのZ+方向側の端面の位置と、別の前記コイル取付部における前記Z+方向側の端面の位置とが、互いに前記Z方向に異なっており、
前記Y方向に見て、前記所定のコイル取付部の断面積と、前記別のコイル取付部の断面積とが、互いに異なっている、
インダクタ。
【請求項2】
前記コアは、前記コイル取付部として、第1コイル取付部と第2コイル取付部と第3コイル取付部とを有し、
前記コアは、前記第1コイル取付部から前記第2コイル取付部を通過して前記第1コイル取付部に戻る経路と、前記第1コイル取付部から前記第3コイル取付部を通過して前記第1コイル取付部に戻る経路と、前記第2コイル取付部から前記第3コイル取付部を通過して前記第2コイル取付部に戻る経路と、の磁気抵抗がそれぞれ等しくなるように、各前記コイル取付部における前記Z+方向側の端面の位置が設定されている、
請求項1に記載のインダクタ。
【請求項3】
前記コアおよび各前記コイルよりも前記Z-方向側に、各前記コイルを冷却するための冷却部が設けられている、請求項1又は2に記載のインダクタ。
【請求項4】
前記コイルは、前記第1コイル取付部に外嵌されてる第1コイルと、前記第2コイル取付部に外嵌されてる第2コイルと、前記第3コイル取付部に外嵌されてる第3コイルと、を含み、
前記第1コイルは、供給される電圧を昇圧させる第1チョッパ回路の一部であり、
前記第2コイルは、供給される電圧を昇圧させる第2チョッパ回路の一部であり、
前記第3コイルは、供給される電圧を昇圧させる第3チョッパ回路の一部であり、
前記第1コイルと前記第2コイルと前記第3コイルとは、互いに電気的に並列に接続されている、
請求項2に記載のインダクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル取付部を所定方向に並べて有するコアと、コイル取付部ごとに1つずつ外嵌されているコイルと、を備えるインダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
インダクタの中には、コアを複数のコア分割体に分割形成すると共に、各コイル取付部において、コア分割体どうしの間にギャップを設けることによって、各コイル取付部での磁気抵抗を所望の大きさに調整しているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らは、以下の点に着目した。上記のようにして磁気抵抗を所望の大きさに調整しようとした場合、インダクタの組み立て時において、ギャップを形成する部材を挿入し接着する工程が必要であり、工程と手間が多くなってしまう。また、管理するギャップの厚みが薄い場合、精度良く所望の大きさに調整することは、困難である。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、コア分割体どうしの間にギャップを設けることなしに、各コイル取付部での磁気抵抗を所望の大きさに調整することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、各コイル取付部において、断面視における一端の位置を基準に他端の位置を調整して、各コイル取付部の断面積を所望の大きさに調整すれば、上記目的を達成できることを見出して、本発明に至った。本発明は、以下の(1)~(4)のインダクタである。
【0007】
(1)所定のY方向に延在するコイル取付部を前記Y方向に直交するX方向に並べて有するコアと、前記コイル取付部ごとに1つずつ外嵌されているコイルと、を備えるインダクタであって、
前記コアは、複数のコア分割体に分割形成されると共に、前記コア分割体どうしの間にギャップを設けないで前記コア分割体どうしを当接させ合った状態で設置されており、
各前記コイル取付部における、前記X方向および前記Y方向に直交するZ方向の一方側としてのZ-方向側の端面の位置が、互いに前記Z方向に揃っており、
少なくとも所定の前記コイル取付部における、前記Z-方向の反対側としてのZ+方向側の端面の位置と、別の前記コイル取付部における前記Z+方向側の端面の位置とが、互いに前記Z方向に異なっており、
前記Y方向に見て、前記所定のコイル取付部の断面積と、前記別のコイル取付部の断面積とが、互いに異なっている、
インダクタ。
【0008】
本構成のように、各コイル取付部におけるZ-方向側の端面の位置を基準に、各コイル取付部におけるZ+方向側の端面の位置を調整すれば、各コイル取付部の断面積を所望の大きさに調整できる。それによって、コア分割体どうしの間にギャップを設けることなしに、各コイル取付部での磁気抵抗を所望の大きさに調整できる。
【0009】
(2)前記コアは、前記コイル取付部として、第1コイル取付部と第2コイル取付部と第3コイル取付部とを有し、
前記コアは、前記第1コイル取付部から前記第2コイル取付部を通過して前記第1コイル取付部に戻る経路と、前記第1コイル取付部から前記第3コイル取付部を通過して前記第1コイル取付部に戻る経路と、前記第2コイル取付部から前記第3コイル取付部を通過して前記第2コイル取付部に戻る経路と、の磁気抵抗がそれぞれ等しくなるように、各前記コイル取付部における前記Z+方向側の端面の位置が設定されている、
前記(1)に記載のインダクタ。
【0010】
本構成によれば、3つの経路の磁気抵抗を揃えることによって、各経路を通過する磁束の直流成分を相殺し易くできる。それによって、コア内での磁気飽和を効率的に抑制できる。
【0011】
(3)前記コアおよび各前記コイルよりも前記Z-方向側に、各前記コイルを冷却するための冷却部が設けられている、前記(1)又は(2)に記載のインダクタ。
【0012】
本構成によれば、各コイル取付部における、Z方向に揃っているZ-方向側の端面よりもZ-方向側に、冷却部が設けられる。それにより、各コイルを冷却できる。また、以下の効果も得られる。仮に各コイル取付部におけるZ-方向側の端面ではなく、各コイル取付部におけるZ方向の中央がZ方向に揃っている場合、以下に示す問題が起こる。すなわち、最もZ方向に大きく幅を持つコイル取付部におけるZ-方向の端面に比べて、他のコイル取付部におけるZ-方向の端面が冷却部から離間してしまう。そのことから、前者のコイル取付部に外嵌されるコイルにおけるZ-方向の端に比べて、後者のコイル取付部に外嵌されるコイルにおけるZ-方向の端の方が、冷却部から離間してしまう。その点、本構成によれば、各コイル取付部が、最も冷却部に近接するコイル取付部となる。そのため、各コイルを効率的に冷却できる。
【0013】
(4)前記コイルは、前記第1コイル取付部に外嵌されてる第1コイルと、前記第2コイル取付部に外嵌されてる第2コイルと、前記第3コイル取付部に外嵌されてる第3コイルと、を含み、
前記第1コイルは、供給される電圧を昇圧させる第1チョッパ回路の一部であり、
前記第2コイルは、供給される電圧を昇圧させる第2チョッパ回路の一部であり、
前記第3コイルは、供給される電圧を昇圧させる第3チョッパ回路の一部であり、
前記第1コイルと前記第2コイルと前記第3コイルとは、互いに電気的に並列に接続されている、
前記(2)に記載のインダクタ。
【0014】
本構成によれば、例えば、昇圧チョッパの一部を構成する3相磁気結合インダクタにおいて、前記(1)~(3)の構成の効果をえることができる。また、本構成は3相構成に限定せず、4相以上の複数の磁気回路を共有するインダクタにおいても同様に成り立つ。
【発明の効果】
【0015】
以上の通り、前記(1)の構成によれば、コア分割体どうしの間にギャップを設けることなしに、各コイル取付部での磁気抵抗を所望の大きさに調整することができる。さらに、前記(1)を引用する前記(2)~(4)の構成によれば、それぞれの追加の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】各コイルに流れる電流の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【0018】
[第1実施形態]
図1に示すように、本実施形態のインダクタ60は、3相昇圧チョッパ100の一部を構成している。3相昇圧チョッパ100は、入力端子iTp,iTnと、入力側コンデンサCpiと、コア40と、3相のチョッパ回路Bu,Bv,Bwと、出力側コンデンサCpoと、出力端子oTp,oTnと、を備える。
【0019】
入力端子iTp,iTnは、プラス側の入力端子iTpと、マイナス側の入力端子iTnとを含む。プラス側の入力端子iTpには、バッテリBtのプラス端子が電気的に接続され、マイナス側の入力端子iTnには、バッテリBtのマイナス端子が電気的に接続される。以下、バッテリBtから入力端子iTp,iTnに供給される電圧を「入力電圧」という。
【0020】
3相のチョッパ回路Bu,Bv,Bwは、第1チョッパ回路Buと第2チョッパ回路Bvと第3チョッパ回路Bwと、を含む。第1チョッパ回路Buは、第1コイルCLuと第1スイッチSuと第1ダイオードDuとを有する。第2チョッパ回路Bvは、第2コイルCLvと第2スイッチSvと第2ダイオードDvとを有する。第3チョッパ回路Bwは、第3コイルCLwと第3スイッチSwと第3ダイオードDwとを有する。
【0021】
以下、第1コイルCLuと第2コイルCLvと第3コイルCLwとを、まとめて「コイルCLu,CLv,CLw」という。インダクタ60は、コア40と、コア40に外嵌されたコイルCLu,CLv,CLwとを含む。
【0022】
以下、第1コイルCLuに流れる電流を「第1コイル電流Iu」といい、第2コイルCLvに流れる電流を「第2コイル電流Iv」といい、第3コイルCLwに流れる電流を「第3コイル電流Iw」という。また、第1コイル電流Iuと第2コイル電流Ivと第3コイル電流Iwとを、まとめて「コイル電流Iu,Iv,Iw」という。
【0023】
以下、コア40に沿って流れる磁束をコア磁束という。また、第1コイル電流Iuによって発生するコア磁束を「第1コイル磁束φu」といい、第2コイル電流Ivによって発生するコア磁束を「第2コイル磁束φv」といい、第3コイル電流Iwによって発生するコア磁束を「第3コイル磁束φw」という。また、第1コイル磁束φuと第2コイル磁束φvと第3コイル磁束φwを、まとめて「コイル磁束φu,φv,φw」という。
【0024】
次に、第1チョッパ回路Buの詳細について説明する。第1コイルCLuの一端は、3相昇圧チョッパ100全体のプラス側の入力端子iTpと、入力側コンデンサCpiのプラス端子と、に電気的に接続されている。第1コイルCLuの他端は、第1スイッチSuのプラス端子と、第1ダイオードDuのアノード端子と、に電気的に接続されている。第1スイッチSuのマイナス端子は、3相昇圧チョッパ100全体のマイナス側の入力端子iTnと、入力側コンデンサCpiのマイナス端子と、出力側コンデンサCpoのマイナス端子と、3相昇圧チョッパ100全体のマイナス側の出力端子oTnと、に電気的に接続されている。第1ダイオードDuのカソード端子は、出力側コンデンサCpoのプラス端子と、3相昇圧チョッパ100全体のプラス側の出力端子oTpと、に電気的に接続されている。第1スイッチSuは、トランジスタ、MOSFET、IGBTなどの半導体スイッチである。
【0025】
第1スイッチSuがONになると、第1コイル電流Iuが増加することで、第1コイルCLuに磁気エネルギーが蓄えられ、第1スイッチSuがOFFになると、その磁気エネルギーが開放されることで、第1コイルCLuの他端から入力電圧よりも高い電圧が出力される。以上のことから、第1チョッパ回路Buは、入力電圧を昇圧させる。
【0026】
第2チョッパ回路Bvの詳細についての説明は、以上に示した第1チョッパ回路Buの詳細についての説明と、「第1」を「第2」に読み替えると共に、符号を該当するものに読み替えて同様である。第3チョッパ回路Bwの詳細についての説明は、以上に示した第1チョッパ回路Buの詳細についての説明と、「第1」を「第3」に読み替えると共に、符号を該当するものに読み替えて同様である。
【0027】
以上の通り、第1~第3の各コイルCLu,CLv,CLwは、互いに電気的に並列に接続されており、第1~第3の各チョッパ回路Bu,Bv,Bwは、互いに並列に入力電圧を昇圧させる。
【0028】
次に
図2を参照しつつ、3相の各チョッパ回路Bu,Bv,Bwの制御について説明する。以下、スイッチをターンONしてからターンOFFして再びターンONするまでの期間を「1周期」という。3相の各チョッパ回路Bu,Bv,Bwは、互いに3分の1周期ずつ位相をずらして制御される。つまり、各相の間で、スイッチSu,Sv,SwがターンONされるタイミングは、3分の1周期ずつ互いにずれる。同様に、ターンOFFされるタイミングについても、3分の1周期ずつ互いにずれる。
【0029】
各相において、スイッチSu,Sv,SuがターンONされると、当該相のコイル電流Iu,Iv,Iwが増加する。他方、各相において、スイッチSu,Sv,SuがターンOFFされると、当該相のコイル電流Iu,Iv,Iwが減少する。以上のことから、各相のコイル電流Iu,Iv,Iwは、それぞれ直流成分IuD,IvD,IwDと、交流成分IuA,IvA,IwAと、を含む。各相のコイル電流の直流成分IuD,IvD,IwDの大きさは、互いに等しくなるように制御される。
【0030】
次に、
図3を参照しつつ、インダクタ60について説明する。以下、互い直交し合う3方向を「X方向」「Y方向」「Z方向」という。また、X方向の一方を「X-方向」といい、その反対方向を「X+方向」という。また、Y方向の一方を「Y-方向」といい、その反対方向を「Y+方向」という。また、
図4に示すように、Z方向の一方を「Z-方向」といい、その反対方向を「Z+方向」という。なお、本実施形態では、Z+方向が上方向である。ただし、Z+方向を、上方向に対して斜めをなす方向や、水平方向や、下方向などにして、実施してもよい。
【0031】
コア40は、3つのコイル取付部45u,45v,45wと、それらを互いに接続する第1接続部41および第2接続部49と、を有する。3つのコイル取付部45u,45v,45wは、第1コイル取付部45uと第2コイル取付部45vと第3コイル取付部45wとを含む。3つのコイル取付部45u,45v,45wは、それぞれY方向に延在しており、X方向に並んでいる。第1接続部41は、3つのコイル取付部45u,45v,45wにおけるY+方向側の端部どうしを接続している。第2接続部49は、3つのコイル取付部45u,45v,45wにおけるY-方向側の端部どうしを接続している。
【0032】
具体的には、コア40は、第1のコア分割体40aと第2のコア分割体40bとに分割形成されている。第1のコア分割体40aは、第1接続部41と、3つのコイル取付部45u,45v,45wにおけるそれぞれのY+方向側の半分と、を含む。第2のコア分割体40bは、第2接続部49と、3つのコイル取付部45u,45v,45wにおけるそれぞれのY-方向側の半分と、を含む。
【0033】
3本のコイルCLu,CLv,CLwの各内側で、第1のコア分割体40aにおけるY-方向側の端面と、第2のコア分割体40bにおけるY+方向側の端面とが、当接し合っている。つまり、コア分割体40a,40bどうしの間にギャップを設けないでコア分割体40a,40bどうしが当接し合っている。以上によって、第1コイルCLuが第1コイル取付部45uに外嵌され、第2コイルCLvが第2コイル取付部45vに外嵌され、第3コイルCLwが第3コイル取付部45wに外嵌されている。
【0034】
以下、コア40内において、第1コイル取付部45uから第2コイル取付部45vを通過して第1コイル取付部45uに戻る経路を「第1第2経路45u-45v」という。また、コア40内において、第1コイル取付部45uから第3コイル取付部45wを通過して第1コイル取付部45uに戻る経路を「第1第3経路45u-45w」という。また、コア40内において、第2コイル取付部45vから第3コイル取付部45wを通過して第2コイル取付部45vに戻る経路を「第2第3経路45v-45w」という。また、これら第1第2経路45u-45vと、第1第3経路45u-45wと、第2第3経路45v-45wと、をまとめて、「3つの経路45u-45v,45u-45w,45v-45w」という。
【0035】
図4に示すように、3つのコイル取付部45u,45v,45wのX方向の長さは、互いに等しい。3つのコイル取付部45u,45v,45wにおけるZ-方向側の端面の位置は、Z方向に揃っている。
【0036】
第1コイル取付部45uと第3コイル取付部45wとのZ+方向側の端面の位置は、互いに等しい。他方、第2コイル取付部45vにおけるZ+方向側の端面の位置は、それら第1コイル取付部45uおよび第3コイル取付部45wのZ+方向側の端面の位置よりも、Z-方向側に位置している。そのことから、この
図4に示すように、Y方向に見て、第1コイル取付部45uの断面積や第3コイル取付部45wの断面積に比べて、第2コイル取付部45vの断面積は小さい。
【0037】
以上によって、
図3に示すコア40は、第1第2経路45u-45vの磁気抵抗と、第1第3経路45u-45wの磁気抵抗と、第2第3経路45v-45wの磁気抵抗とが、それぞれ等しくなっている。そのことから、各経路45u-45v,45u-45w,45v-45wにおいて、コア磁束の直流成分は相殺される。その理由については、後述する。
【0038】
図4に示すように、コア40および3本のコイルCLu,CLv,CLwよりもZ-方向側には、冷却部50が設けられている。冷却部50は、これらコア40および3本のコイルCLu,CLv,CLwを冷却する。冷却部50には、例えば流路54が設けられており、その流路に冷却水などの冷媒55が流される。
【0039】
次に、
図3を参照しつつ、各経路45u-45v,45u-45w,45v-45wにおいて、コア磁束の直流成分が相殺される理由について、説明する。
【0040】
第1コイル取付部45uには、第1コイル磁束φuの全てが流れると共に、その反対方向に、第2コイル磁束φvの一部と第3コイル磁束φwの一部とが流れる。このとき、前述の通り、第1第2経路45u-45vと第2第3経路45v-45wとの磁気抵抗が互いに等しいから、第2コイル磁束φvは、第1第2経路45u-45vと第2第3経路45v-45wとに綺麗に2分される。また、第1第3経路45u-45wと第2第3経路45v-45wとの磁気抵抗が互いに等しいから、第3コイル磁束φwは、第1第3経路45u-45wと第2第3経路45v-45wとに綺麗に2分される。
【0041】
以上のことから、第1コイル取付部45uには、第1コイル磁束φuの全てが流れると共に、その反対方向に第2コイル磁束φvの丁度半分と、第3コイル磁束φwの丁度半分とが流れる。そのため、第1コイル磁束φuと第2コイル磁束φvと第3コイル磁束φwとの大きさが互いに等しければ、これらは過不足なく綺麗に相殺される。
【0042】
その点、前述の通り、
図2に示すように、各コイル電流の直流成分IuD,IvD,IwDは、互いに等しい。そのことから、それらによって発生する各コイル磁束φu,φv,φwの直流成分も、互いに等しい。そのことから、
図3に示す第1コイル取付部45uに流れるコア磁束の直流成分は、過不足なく綺麗に相殺される。同様に、第2コイル取付部45vおよび第3コイル取付部45wに流れるコア磁束wの直流成分についても、過不足なく綺麗に相殺される。
【0043】
以下、
図4に示す本実施形態の状態から、
図6に示すように変更したものを、比較形態という。すなわち、この比較形態では、第2コイル取付部45vにおけるY+方向側の端面の位置が、第1コイル取付部45uおよび第3コイル取付部45wにおけるY+方向側の端面の位置に揃えられている。そのことから、この
図6に示すように、Y方向に見て、3つのコイル取付部45u,45v,45wの断面積は、互いに等しい。
【0044】
図5に示すように、比較形態では、第1のコア分割体40aと第2のコア分割体40bとの間に、ギャップGpが設けられている。第2コイル取付部45vにおけるギャップGpは、第1コイル取付部45uや第3コイル取付部45wにおけるギャップGpよりも大きい。そのことから、3つの経路45u-45v,45u-45w,45v-45wにおける磁気抵抗が揃えられている。
【0045】
以上に示した比較形態と比較しつつ、本実施形態の構成および効果を以下にまとめる。
【0046】
図5に示す比較形態では、3つのギャップGpの大きさを調整することによって、各経路45u-45v,45u-45w,45v-45wにおける磁気抵抗を所望の大きさに調整できる。しかしながら、インダクタ60の組み立て時においては、ギャップGpを形成する部材を挿入し接着する工程が必要であり、工程や手間が多くなってしまう。また、管理するギャップGpの厚みが薄い場合、精度良く所望の大きさに調整することは、困難である。
【0047】
その点、本実施形態では、
図4に示すように、各コイル取付部45u,45v,45wにおけるZ-方向の端部の位置を基準に、各コイル取付部45u,45v,45wにおけるZ+方向の端部の位置を調整している。それによって、各コイル取付部45u,45v,45wの断面積を、所望の大きさに調整している。それによって、
図3に示すように、コア分割体40a,40bどうしの間にギャップを設けることなしに、各コイル取付部45u,45v,45wでの磁気抵抗を所望の大きさに調整できる。
【0048】
また、ギャップを設けないことから、各コイル取付部45u,45v,45wについて、ギャップがある場合と磁気抵抗が同じでよいなら、周方向への1周の長さを抑えることができる。特に、第2コイル取付部45vについては、顕著に当該周方向への1周の長さを抑えることができる。以上ことから、各コイルCLu,CLv,CLwの総延長を抑えることができ、中でも特に顕著に、第2コイルCLvの総延長を抑えることができる。
【0049】
また、
図3に示すコア40において、第1第2経路45u-45vの磁気抵抗と、第1第3経路45u-45wの磁気抵抗と、第2第3経路45v-45wの磁気抵抗とが、それぞれ互いに等しい。そのことから、上記の通り、各経路45u-45v,45u-45w,45v-45wにおいて、各コイル磁束φu,φv,φwの直流成分を相殺し易くなる。それによって、コア40内での磁気飽和や発熱を効率的に抑制できる。
【0050】
また、
図4に示すように、各コイル取付部45u,45v,45wにおける、Z方向に揃っているZ-方向側の端面よりもZ-方向側に、冷却部50が設けられる。そのため、3つのコイルCLu,CLv,CLwを均等に冷却できる。また、以下の効果も得られる。仮に各コイル取付部45u,45v,45wにおけるZ-方向側の端面ではなく、各コイル取付部におけるZ方向の中央がZ方向に揃っている場合、以下に示す問題が起こる。すなわち、最もZ方向に大きく幅を持つ第1,第3コイル取付部45u,45wにおけるZ-方向の端面に比べて、第2コイル取付部45vにおけるZ-方向の端面が冷却部50から離間してしまう。そのことから、第1,第3コイルCLu,CLwにおけるZ-方向の端に比べて、第2コイルCLvにおけるZ-方向の端の方が、冷却部50から離間してしまう。その点、本実施形態では、全てのコイル取付部45u,45v,45wが、最も冷却部50に近接するコイル取付部となる。そのため、全てのコイルCLu,CLv,CLwを効率的に冷却できる。
【0051】
また、
図1に示すように、インダクタ60は、3相昇圧チョッパ100の一部を構成している。そのため、3相昇圧チョッパ100のインダクタ60において、以上の効果が得られる。
【0052】
[第2実施形態]
次に第2実施形態について説明する。以下の実施形態については、第1実施形態をベースにこれと異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同一又は類似の点については、説明を適宜省略する。
【0053】
図7に示すように、本実施形態のインダクタ60は、ノイズフィルタ200の一部を構成している。ノイズフィルタ200は、3相交流インバータ190とモータ210との間に介装されている。
【0054】
ノイズフィルタ200は、入力端子iTu,iTv,iTwと、コア40と、3相の各コイルCLu,CLv,CLwと、6つの各コンデンサCpと、出力端子oTu,oTv,oTwと、を備える。入力端子iTu,iTv,iTwは、第1入力端子iTuと、第2入力端子iTvと、第3入力端子iTwとを含む。出力端子oTu,oTv,oTwは、第1出力端子oTuと、第2出力端子oTvと、第3出力端子oTwとを含む。
【0055】
第1入力端子iTuは、第1コイルCLuを介して第1出力端子oTuに電気的に接続されている。第2入力端子iTvは、第2コイルCLvを介して第2出力端子oTvに電気的に接続されている。第3入力端子iTwは、第3コイルCLwを介して第3出力端子oTwに電気的に接続されている。
【0056】
ノイズフィルタ200内において、各2つの入力端子iTu-iTv,iTv-iTw,iTw-iTuは、それぞれコンデンサCpを介して互いに電気的に接続されている。ノイズフィルタ200内において、各2つの出力端子oTu-oTv,oTv-oTw,oTw-oTuは、それぞれコンデンサCpを介して互いに電気的に接続されている。
【0057】
本実施形態によれば、ノイズフィルタ200のインダクタ60において、コア分割体40a,40bどうしの間にギャップを設けることなしに、各コイル取付部45u,45v,45wでの磁気抵抗を所望の大きさに調整できる。
【0058】
[第3実施形態]
次に第3実施形態について説明する。
図8に示すように、本実施形態のインダクタ70は、変圧器300の一部を構成している。変圧器300は、入力側フルブリッジ回路330と、出力側フルブリッジ回路380とを備える。第1コイルCLuは、入力側フルブリッジ回路330に電気的に接続され、第2コイルCLvは、出力側フルブリッジ回路380に電気的に接続されている。第2コイルCLvの巻き数は、第1コイルCLuの巻き数よりも多い。
【0059】
図9に示すように、コア40は、
図1実施形態でいう第3コイル取付部45wを有しない。第1接続部41は、第1コイル取付部45uと第2コイル取付部45vとのY+方向側の端部どうしを互いに接続し、第2接続部49は、第1コイル取付部45uと第2コイル取付部45vとのY-方向側の端部どうしを互いに接続している。
【0060】
図10に示すように、Y方向に見て、第1コイル取付部45uの断面積よりも第2コイル取付部45vの断面積の方が小さい。このことは第1実施形態と同様である。
【0061】
本実施形態によれば、第1コイル取付部45uおよび第2コイル取付部45vが、それぞれの優先事項を満たすことができる。すなわち、
図9に示す第1コイル取付部45uについては、第1コイルCLuの巻き数が比較的少ないため、断面積を抑えて第1コイルCLuの総延長を抑えることよりも、断面積を大きくしてコア40全体での磁気抵抗を抑えることを優先したい。他方、第2コイル取付部45vについては、第2コイルCLvの巻き数が比較的多いため、断面積を抑えて第2コイルCLvの総延長を抑えることを優先したい。
【0062】
その点、本実施形態によれば、
図10に示すように、第1コイル取付部45uにおいては、Z+方向側の端面を相対的にZ+方向側にして、断面積を相対的に大きくしている。他方、第2コイル取付部45vにおいては、Z+方向側の端面を相対的にZ-方向側にして、断面積を相対的に小さくしている。以上によって、第1コイル取付部45uおよび第2コイル取付部45vは、それぞれの優先事項を満たすことができる。
【0063】
以上の通り、本実施形態によれば、
図9に示すように、変圧器300のインダクタ60において、コア分割体40a,40bどうしの間にギャップを設けることなしに、各コイル取付部45u,45vでの磁気抵抗を所望の大きさに調整できる。
【0064】
[他の実施形態]
以上に示した実施形態は、例えば次のように変更できる。コア40を、3つ以上に分割してもよい。コア40を、第1実施形態などの場合とは異なる位置で分割するようにしてもよい。コイル取付部の数を4つ以上にして、コイルの数を4本以上にしてもよい。第1実施形態において、3相の各チョッパ回路Bu,Bv,Bwを、互いに同じ位相で制御してもよい。
【符号の説明】
【0065】
40 コア
40a 第1のコア分割体
40b 第2のコア分割体
45u 第1コイル取付部
45v 第2コイル取付部
45w 第3コイル取付部
50 冷却部
60 インダクタ
70 インダクタ
100 3相昇圧チョッパ
Bu 第1チョッパ回路
Bv 第2チョッパ回路
Bw 第3チョッパ回路
CLu 第1コイル
CLv 第2コイル
CLw 第3コイル
Gp ギャップ