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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】積層成形システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/32 20060101AFI20241217BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20241217BHJP
   B29C 43/20 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B29C43/32
H05K7/20 H
B29C43/20
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2023057395
(22)【出願日】2023-03-31
(65)【公開番号】P2024145146
(43)【公開日】2024-10-15
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】植田 直樹
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-245523(JP,A)
【文献】特開2008-221840(JP,A)
【文献】国際公開第2015/098892(WO,A1)
【文献】中国実用新案第213081658(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/32
H05K 7/20
B29C 43/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被積層体に積層材を積層した一次成形品を上下に配置された加圧機構により加圧して成形する加圧部を有するラミネータと、
上下に配置された加圧機構により加圧しすることで前記一次成形品の前記積層材の積層面の平坦度を高めた二次成形品を成形する平坦化プレス装置と、を有し、
前記ラミネータと前記平坦化プレス装置の少なくとも一方は、筐体の天面に筐体内に下方に向かって流れる下方気流を供給するファンと
前記ラミネータの前段に配置され、前記被積層体に前記積層材を積層した積層対象物を載置して前記ラミネータに搬送するキャリアフィルムを巻出すフィルム巻出し機と、
前記平坦化プレス装置の後段に配置され、前記キャリアフィルムを巻き取ることで、前記キャリアフィルムに載置された前記二次成形品を前記平坦化プレス装置から搬出するフィルム巻取り機と、を有し、
前記フィルム巻出し機と前記フィルム巻取り機の少なくとも一方は、筐体の天面に筐体内に下方に向かって流れる下方気流を供給するファンを有する積層成形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、表面に凹凸を有する基板材料に当該凹凸を埋めるフィルム材を積層する積層成形装置及び積層成形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表面に凹凸を有する基板材料に当該凹凸を埋めるフィルム材を積層する積層成形では、基板材料の表面の凹凸が微細になってきており、高い積層精度が要求されるようになってきた。このような積層成形装置の一例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の積層成形装置は、積層材と被積層材とを加熱および加圧することにより中間積層品を積層するラミネータと、該ラミネータで積層された中間積層品を所定の温度で加圧してその表面を平坦に成形する平坦化プレスと、前記中間積層品をラミネータから平坦化プレスに搬送する搬送手段とを備えた積層成形装置であって、前記平坦化プレスが、相対向して配置され互いの対向面に平滑な加圧面を有する固定盤および可動盤と、固定盤に対して可動盤を近接・遠退可能に移動させて前記ラミネータで積層された中間積層品を加圧させる圧締手段と、固定盤に対して可動盤をその対向面と直交する方向に直線移動させるよう案内する直動手段とを備えており、該直動手段が、可動盤を直線移動させる方向に沿って延在するよう配設された複数のボールスプライン軸と、可動盤の角隅部に設けられ前記各ボールスプライン軸にそれぞれ挿通されるボールスプライン筒と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2022-15589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、積層成形装置によって、所定の積層成形品を製造する場合には、微粒子やホコリ等の異物が被積層体や積層材に付着せずに積層成形が行われる事が望まれる。しかしながら、積層成形装置の筐体内では、加熱に起因する熱によって上昇気流が生じるため、筐体の内壁などに異物が蓄積しやすく、蓄積した異物が被積層体や積層材に付着する問題が生じる虞があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、筐体内のクリーン度を高めて積層成形品の歩留まりを改善することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態にかかる積層成形装置は、筐体と、前記筐体内に設けられ、上下に配置された加圧機構により被積層体に積層材を積層した成形品を加圧する加圧部と、前記筐体の天面に設けられ、前記筐体内に下方に向かって流れる下方気流を供給するファンと、を有し、前記筐体は、前記天面を除く面の少なくとも1面に前記下方気流に起因する排気を排出する排気口を有する。
【0008】
一実施の形態にかかる積層成形システムは、被積層体に積層材を積層した一次成形品を上下に配置された加圧機構により加圧して成形する加圧部を有するラミネータと、上下に配置された加圧機構により加圧することで前記一次成形品の前記積層材の積層面の平坦度を高めた二次成形品を成形する平坦化プレス装置と、を有し、前記ラミネータと前記平坦化プレス装置の少なくとも一方は、筐体の天面に筐体内に下方に向かって流れる下方気流を供給するファンを有する。
【0009】
一実施の形態にかかる積層成形装置及び積層成形システムでは、加圧部が内蔵される筐体内に下方気流を供給するファンを設けることで、筐体内の異物が筐体内に対流或いは蓄積することを防止する。
【発明の効果】
【0010】
一実施の形態にかかる積層成形装置及び積層成形システムによれば、筐体内のクリーン度を高めることで高めて成形品の成形精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1にかかる積層成形システムの構成図である。
図2】実施の形態1にかかるラミネータの構成図である。
図3】比較例にかかるラミネータにおける気流の流れを説明する図である。
図4】実施の形態1にかかるラミネータにおける気流の流れを説明する図である。
図5】実施の形態1にかかるファンの構成例を説明する図である。
図6】実施の形態2にかかるラミネータにおける気流の流れを説明する図である。
図7】実施の形態3にかかるラミネータにおける気流の流れを説明する図である。
図8】実施の形態4にかかるラミネータの構成図である。
図9】実施の形態4にかかる除電機構の構成図である。
図10】実施の形態5にかかるクリーン度監視装置を有するラミネータの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0013】
実施の形態1
図1に実施の形態1にかかる積層成形システムの概要を説明する構成図を示す。図1に示すように、実施の形態1にかかる積層成形システムは、ラミネータ2、平坦化プレス装置3、平坦化プレス装置4を有する。ラミネータ2、平坦化プレス装置3、平坦化プレス装置4は、いずれも上下に対向して配置される2枚の加圧機構により被積層体に積層材を積層した成形品を加圧することで、成形品を成形する積層成形装置である。実施の形態1にかかる積層成形システムでは、ラミネータ2、平坦化プレス装置3、平坦化プレス装置4を順に並べて配置する。そして、実施の形態1にかかる積層成形システムでは、ラミネータ2により被積層体に積層材を積層した一次成形品を成形し、平坦化プレス装置3及び平坦化プレス装置4において一次成形品の前記積層材の積層面の平坦度を高めた二次成形品を成形する。このように段階的な成形を行うことで完成品の積層材の表面の平坦度を高めることができる。
【0014】
上記の積層成形を行うに当たり、ラミネータ2、平坦化プレス装置3、平坦化プレス装置4は、被積層体に積層材を載せた被成形品に加圧力を伝達する加圧機構を有する。この加圧機構は、被成形品に加圧力を加えるものであれば特に限定されないが、例えば加熱や冷却が可能な板状部材(熱板)であってもよいし、加熱や冷却が可能な可撓性シートであってもよい。これにより、一次成形品や二次成形品を好適に製作できる。そこで、図1に示す例では、ラミネータ2、平坦化プレス装置3、平坦化プレス装置4が加圧機構として熱板を有する例を示した。図1では、ラミネータ2が上側熱板21、下側熱板22を備え、平坦化プレス装置3が上側熱板31、下側熱板32を備え、平坦化プレス装置4が上側熱板41、下側熱板42を備える例を示した。
【0015】
また、実施の形態1にかかる積層成形システムでは、キャリアフィルムに被積層体に積層材を載せた被成形品をキャリアフィルムに載せてラミネータ2から平坦化プレス装置4の間を移動させる。そのため、実施の形態1にかかる積層成形システムでは、ラミネータ2の前段にフィルム巻出し機1を配置し、平坦化プレス装置4の後段にフィルム巻取り機5を配置する。そして、フィルム巻出し機1において巻出すキャリアフィルムに被成形品を載せ、フィルム巻取り機5でキャリアフィルムを巻き取ることで被成形品をラミネータ2から平坦化プレス装置4に移動させる。また、図1に示す例では、被成形品を上下に配置した2枚のキャリアフィルムで挟んで移動させる積層成形システムを示した。また、図1に示す例では、フィルム巻出し機1が、キャリアフィルムの供給元となる上側キャリアフィルム供給ロール11及び下側キャリアフィルム供給ロール12を備える例を示した。さらに、図1では、フィルム巻取り機5がキャリアフィルムを巻き取る上側キャリアフィルム巻取りロール51及び下側キャリアフィルム巻取りロール52を備える例を示した。
【0016】
なお、本開示では、便宜上、被積層体に積層材を載せた被成形品をラミネータ2により加圧する場合であっても、被積層体に積層材を積層した被成形品を加圧すると称する場合がある。
【0017】
そして、実施の形態1にかかる積層成形システムでは、各装置の天面にファンを設けたことに特徴を有する。このファンは、各装置の筐体の天面から下方に向かって流れる下方気流を供給する。図1に示す例では、フィルム巻出し機1にファン10が備えられ、ラミネータ2にファン20が備えられ、平坦化プレス装置3にファン30が備えられ、平坦化プレス装置4にファン40が備えられ、フィルム巻取り機5にファン50が備えられる例を示した。しかし、ファンは、フィルム巻出し機1、ラミネータ2、平坦化プレス装置3、平坦化プレス装置4、フィルム巻取り機5の少なくとも1つの装置に設けられていれば良い。
【0018】
上述したように、ファンは、各機器の筐体内に下方気流を供給することで、筐体内の異物を下に排出する。そこで、図1に示した実施の形態1にかかる積層成形システムでは、各装置の下部に排気用スペースを設けた。つまり、図1に示した例では、実施の形態1にかかる積層成形システムでは、各装置の筐体の底面に排気用の穴或いは空間が設けられる。なお、異物とは、肉眼あるいは顕微鏡等での観察、パーティクルカウンタ等の測定手段で確認し得る微小なコンタミ(混入物)であり、その形状、大きさ、材質は特に限定されない。異物は、例えば樹脂や金属やセラミックスの微粒子である。また、異物は、例えば化学繊維や花粉等の微小な有機物であることもある。
【0019】
また、ファンは、例えば、熱板、モータ等の発熱体で熱せられた空気により生じる上昇気流により筐体の上方に蓄積する異物を防止することに大きな効果を奏する。そこで、以下の説明では、加圧機構として熱板を使った積層成形装置について説明する。また、積層成形装置は、ラミネータ2、平坦化プレス装置3、平坦化プレス装置4のいずれでもファンにより同様に異物に起因する共通する問題を有するが、以下の説明では、ラミネータ2を例にファンの構成及び効果について説明する。
【0020】
図2に実施の形態1にかかるラミネータ2の構成図を示す。図2に示すように、ラミネータ2は、上側熱板21と下側熱板22とにより被成形品A1を加圧する。また被成形品A1は、被積層体となる基板材料A2に積層材となる積層フィルムA3を重ね合わせたものである。
【0021】
ラミネータ2は、上側熱板21及び下側熱板22に加圧力を伝える加圧部を有する。この加圧部は、上側熱板21、下側熱板22に加え、断熱板23、24、固定盤25、可動盤26、タイバ27、ベース盤28、駆動部29を有する。駆動部29の構成は特に限定されるものではないが、駆動部29は、例えば、油圧や空圧を発生させる駆動ユニット29a、シリンダ29b、ラム29cを含む構成としても良い。また、駆動部29は、駆動ユニット29aをサーボモータ、シリンダ29bをボールナット、ラム29cをネジ軸に代えた構成としても良い。実施の形態1にかかるラミネータ2では、固定盤25の被成形体A1に対向する面に断熱板23を介して上側熱板21が取り付けられる。また、実施の形態1にかかるラミネータ2では、可動盤26の被成形体A1に対向する面に断熱板24介して下側熱板22が取り付けられる。
【0022】
そして、ラミネータ2は、ベース盤28と固定盤25とがタイバ27で連結される。可動盤26は、四隅にハウジング部26aが設けられる。そして、タイバ27に設けられたボールスプライン筒がハウジング部26aを挿通するように配置される。また、可動盤26は、下側に配置されるラム29cにより支えられる。そして、シリンダ29bは、駆動ユニット29aからの指示に基づきラム29cを押し上げる、または、押し下げることで可動盤26を昇降させる。これにより、加圧部では、固定盤25に対して可動盤26が近接及び離間可能な構成となり、固定盤25に対して可動盤26が近づくほど被成形品A1に与える加圧力を増す動作を行う。なお、駆動ユニット29aは、制御盤(不図示)からの指示に基づきシリンダ29bに対して可動盤26をどの程度の力や速度で昇降するのかを制御する。
【0023】
また、図2に示すように、実施の形態1にかかるラミネータ2では、加圧部が筐体によって囲われる。図2に示す例では、筐体として、天面HOU1、底面HOU2、側面HOU3、HOU4を示した。なお、図2では図示を省略したが、ラミネータ2は、加圧部の側方の4面が側面部材によって囲われているものとする。そして、実施の形態1にかかるラミネータ2では、底面HOU2に排気用の穴が設けられているものとする。また、実施の形態1にかかるラミネータ2では、天面HOU1の上方にファン20が搭載される。
【0024】
このファン20は、単に筐体外から筐体内に下降気流を供給するものでも良いが、より好ましくは、異物を除去するフィルタを介して外部から取り込んだ気流を下方気流として筐体内に供給するものである。また、フィルタの種類は特に限定されないが、1μm以下の異物を除去するために、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタまたはULPA(Ultra Low Penetration Air)フィルタであるであることが好ましい。ここで、HEPAフィルタは粒径0.3μm以上の微粒子を99.97%以上捕集可能なフィルタと定義されてもよく、ULPAフィルタは粒径0.15μm以上の微粒子を99.9995%以上捕集可能なフィルタと定義されてもよい。また、フィルタの微粒子捕集性能は、例えばJIS B 9908やISO16890により評価されてもよい。このように、微細な粒子を除去するフィルタを備えることで筐体内に筐体外の異物が侵入することを防止することができる。
【0025】
続いて、ファン20によって供給する下方気流の筐体内での流れ方について説明する。ここでは、ファン20の有無による気流の流れの違いを図面を用いて説明する。そこで、図3にファン20を持たない比較例にかかるラミネータにおける気流の流れを説明する図を示す。図3に示すように、ファン20がないと、上側熱板21、下側熱板22及び駆動ユニット29a等の熱源により温められた空気が上昇気流のとなって筐体の上方に流れる。そのため、異物DSTが筐体の天面付近に蓄積する。このように蓄積した異物DSTは、塊が大きくなり落下して被成形品A1或いは上側キャリアフィルムに付着し、成形品の平坦度を低下させる原因となる。
【0026】
次に、図4に実施の形態1にかかるラミネータ2における気流の流れを説明する図を示す。図4に示すように、実施の形態1にかかるラミネータ2では、上側熱板21、下側熱板22及び駆動ユニット29a等の熱源により温められた空気は、ファン20から供給される給気気流が下降気流となるためこの下降気流に押し流されて底面HOU2から排出される。これにより、ラミネータ2の筐体内の異物は、結果的に筐体外に排出されるため、図3の比較例にかかるラミネータのように異物DSTが成形品の平坦度を損ねるおそれが少なくなる。
【0027】
ここで、上述したファン20の構成例について説明する。そこで、図5に実施の形態1にかかるファン20の構成例を説明する図を示す。図5に示すように、ファン20は、ファン収納部61、吸入口62、送出口63、第1のフィルタ64、第2のフィルタ65、モータ66、フィン67、シール部68を有する。ファン20は、ファン収納部61内にモータ66及びフィン67が収納される。ファン収納部61の下部(例えば、ラミネータ2の筐体内側)には、第2のフィルタ65を介して送出口63が設けられる。一方、ファン収納部61の上部には、第1のフィルタ64を介して吸入口62が設けられる。ファン20では、図示しない制御部から与えられる制御信号に基づきモータ66がフィン67を回転させることで、吸入口62から吸い込んだ空気を送出口63側に送り出す。
【0028】
図5に示す例では、吸入口62側と送出口63側にはそれぞれフィルタを設けたが、フィルタを配置する箇所や個数は特に制限されないが、好ましくは、送出口側と吸入口側のそれぞれに配置されることが望ましい。また、第1のフィルタ64と第2のフィルタ65は同じであってもよいし、異なっていてもよい。モータ66をより小型化するため、第1のフィルタ64は目の開きが比較的に荒く、第2のフィルタ65は目の開きが比較的に細かくすることが望ましい。
【0029】
また、図5に示すように、フィン67の回転半径(例えば、回転軸からフィン37の先端までの長さ)は、フィン67の先端の回転軌跡となる円の外周と固定盤25の上面端部の角を結ぶ線Xtと垂直線Xvのなす角θが0度から75度の範囲となるように設定することが好ましく、5度から55度に設定するとより好ましい。なす角θが大きすぎる場合、ファン20から送出される下降気流の大部分が固定盤によって遮られるため、筐体内のクリーン度を高める効率が下がるおそれがある。一方、なす角θを小さすぎる場合、ファン20のサイズが必要以上に増大したり、ファンの個数が必要以上に多くなる問題がある。しかしながら、なす角θを適切に設定することで、筐体内のクリーン度の向上させることができ、かつ、ファン20が過剰な大きさになることを防止することができる。
【0030】
上記説明より、実施の形態1にかかる積層成形システムでは、各装置の天面にファンを設けて、各機器の筐体内の異物を外に排出する構成を有する。これにより、実施の形態1にかかる積層成形システムでは、平坦度の高い成形品の成形を効率的に行うことができる。
【0031】
また、積層成形システムでは、積層成形装置において熱板を加圧機構として利用する事があり、このような熱板等の熱源に起因して発生する上昇気流は、筐体内に異物を蓄積させることがある。しかし、実施の形態1にかかる積層成形システムでは、天面に設けたファンにより温められた空気を排気口のある下側に排出するため、特に熱源を内蔵する筐体を有する各装置へのファンの取り付けは、異物に起因する平坦度の低下を防止する効果が高い。
【0032】
また、積層成形システムは、クリーンルームに設置されることがある。このクリーンルームでは、一般的に天井側から床面側に向かう下方気流により室内の異物の排出を常に行っている。そのため、実施の形態1にかかる積層成形システムのようにクリーンルーム内の気流の流れに逆らわない方向で、筐体内への下方気流への供給を行うことで、ファンの出力を抑えながら効率的に筐体内の異物の排出を促すことができる。
【0033】
また、積層成形システムでは、各機器にファンを設けて外部から筐体内に空気を供給することで筐体内の気圧を、筐体内の気圧が筐体外の気圧よりも高くなる正圧の状態に保つようにしてもよい。このように筐体内を正圧とすることで、異物を筐体外に排出しつつ、筐体外からの異物の流入をさらに抑制する事ができる。
【0034】
実施の形態2
実施の形態2では、実施の形態1にかかるラミネータ2の加圧部の別の形態を有するラミネータ2aについて説明する。なお、実施の形態2の説明において、実施の形態1とおなじ構成要素に関しては、実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0035】
図6に実施の形態2にかかるラミネータ2aにおける気流の流れを説明する図を示す。図6に示すように、ラミネータ2aでは、固定盤25が端部が天面よりも下がるテーパ形状を有する傾斜端面25aを有する。このように、加圧部において、ファン20に対向する面の端部に傾斜端面25aを設けることでファン20から供給される下方気流の流速を低下させることなく底面HOU2側に流すことができる。
【0036】
上記説明より、実施の形態2にかかるラミネータ2aでは、端部が天面よりも下がるテーパ形状を有する傾斜端面25aを固定盤25に設ける。テーパ形状の角度は特に限定されないが、水平面に対して5度~75度の範囲とすることが好ましい。このようにすることで、ファン20から供給される下方気流の流速を低下させることなく底面HOU2側に流すことができる。これにより、筐体内の異物をより好適に筐体外に排出することができる。
【0037】
実施の形態3
実施の形態3では、実施の形態1にかかるラミネータ2の側面HOU3、HOU4の別の形態を有するラミネータ2bについて説明する。なお、実施の形態3の説明において、実施の形態1とおなじ構成要素に関しては、実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0038】
図7に実施の形態3にかかるラミネータ2bにおける気流の流れを説明する図を示す。図7に示すように、実施の形態3では、ラミネータ2bの側面HOU3、HOU4に筐体内の空気を排出する排気口となるルーバLOUを有する。そして、図7に示すように、実施の形態3にかかるラミネータ2bでは、ファン20から供給する下降気流の流れを調整し、上側熱板21等の熱源に起因して発生する排気気流を側面に設けたルーバLOUから排出する。
【0039】
上記説明より、実施の形態3にかかるラミネータ2bでは、側面HOU3、HOU4にルーバLOUを設けることでファン20から供給する下降気流の流れを調整することができる。これにより、筐体内の異物をより好適に筐体外に排出することができる。
【0040】
実施の形態4
実施の形態4では、実施の形態1にかかるラミネータ2の別の形態となるラミネータ2cについて説明する。図8に実施の形態4にかかるラミネータ2cの構成図を示す。被成形品はキャリアフィルムにより搬送されるが、キャリアフィルムはポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルムであるため、静電気が発生しやすく、筐体内のゴミをキャリアフィルムや被積層体に吸着しやすい。それにより、被積層体の成形時のクリーン度が低下するおそれがある。
【0041】
そこで、図8に示すように、実施の形態4にかかる積層成形システムでは、ファン20に加えて除電機構70を備える点が上述の実施の形態とは異なる。なお、実施の形態4の説明において、実施の形態1で説明した構成要素と同じ構成要素については実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0042】
図9を参照して除電機構70の主な構成を説明する。除電機構70は、ファン20から送出される清浄な気流を受け入れる吸入口71、除電のためのイオン72を発生させるイオン発生装置73、イオン72を気流と共に筐体内に送出する送出口74、ファン20側及び筐体側をそれぞれ気密に接続するシール部75を含む。
【0043】
イオン発生装置73により生成されるイオンの数は、時間が経過すればするほど少なくなるという性質がある。そのため、ファン20の送出風速は、速い方が好ましい。しかし、風速が過剰に速い場合、筐体内の気流が乱れやすくなり、積層成形システムの動作を妨げるおそれがある。そのため、ファン20より送出される気流は、風速が0.1~1.5メートル毎秒(m/sec)、風量が0.5~25立米毎分(m/min)の範囲であることが好ましく、風速が0.3~1.0メートル毎秒(m/sec)、風量が5~20立米毎分(m/min)の範囲であることがさらに好ましい。なお、風量と風速は、10分間の計測における平均値を用いることが好ましい。
【0044】
イオン発生装置73がイオンを生成する方法は特に限定されず、例えば電極針に電流を印加する方法(コロナ放電法)やX線等の電磁波を空気中に照射する方法が用いられ得る。これにより、空気中にイオンを発生させ、微粒子やキャリアフィルム等を効率よく除電することができる。なお、電極針に電流を印加する場合は、直流であっても交流であってもよいが、交流パルス電流とする事が好ましい。
【0045】
シール部75は、ファン20と吸入口71、送出口74と筐体とを気密に接続するために設けられる。接続を気密にする手段は特に限定されないが、樹脂やゴム等の弾性を有しかつ密着性を有するパッキンを用いることが好ましい。なお、シール部75は、ファン20や筐体に設けられていてもよい。
【0046】
上記説明より実施の形態4にかかる積層成形システムでは、ファン20に加えて除電機構70を備えることで、筐体内のクリーン度をより高めることができる。
【0047】
実施の形態5
実施の形態5では、実施の形態1にかかるラミネータ2の別の形態となるラミネータについて説明する。被積層体の成形時のクリーン度は、積層成形システムのメンテナンスやフィルタの劣化等により、経時的に変化し得る。それにより、被積層体の成形時のクリーン度が一時的に低下し、清浄な環境での積層成形を妨げるおそれがある。そこで、実施の形態5にかかる積層成形システムでは、ラミネータ2にクリーン度監視装置80を備える点が上述の実施の形態とは異なる。
【0048】
図10を参照してクリーン度監視装置80の主な構成を説明する。クリーン度監視装置80は、ラミネータ2の筐体内の空気を取り込む吸入部81、取り込んだ空気中の微粒子の量や大きさを計測する計測部82、計測後の空気を排出する排出部83、計測部での計測結果を送信する通信部84、通信された計測結果を表示する出力部85を含む。
【0049】
次に、クリーン度監視装置80の原理を説明する。ラミネータ2の筐体内の空気は、吸入部81より取り込まれ、計測部82に送られる。計測部82は、空気にレーザ光を照射することで光の散乱を発生させる。そのような散乱光は、計測部82に設けられた受光素子によって検出され、電気信号に変換される。この電気信号は通信部84を介して出力部85に送られ、出力部85は電気信号(電圧)の大きさを空気中の微粒子の大きさ、電気信号の数を空気中の微粒子の数として集計し、例えば経時的な波形として表示する。計測後の空気は排出部83から排出される。なお、筐体内の空気の取り込みや排出はポンプを用いて行ってもよい。
【0050】
出力部85は、所定の閾値を超える大きさもしくは量の微粒子が確認された場合には、アラームや回転灯の点灯等の方法により警報を発出してもよい。警報が発出された場合、フィルタの交換等を行う。
【0051】
上記説明より実施の形態5にかかる積層成形システムでは、クリーン度監視装置80を備えることで、筐体内のクリーン度をより高めることができる。
【0052】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 フィルム巻出し機
2 ラミネータ
3 平坦化プレス装置
4 平坦化プレス装置
5 フィルム巻取り機
10 ファン
11 上側キャリアフィルム供給ロール
12 下側キャリアフィルム供給ロール
20 ファン
21 上側熱板
22 下側熱板
23 断熱板
24 断熱板
25 固定盤
26 可動盤
26a ハウジング部
27 タイバ
28 ベース盤
29 駆動部
29a 駆動ユニット
29b シリンダ
29c ラム
30 ファン
31 上側熱板
32 下側熱板
40 ファン
41 上側熱板
42 下側熱板
50 ファン
51 上側キャリアフィルム巻取りロール
52 下側キャリアフィルム巻取りロール
70 除電機構
71 吸入口
72 イオン
73 イオン発生装置
74 送出口
75 シール部
80 クリーン度監視装置
81 吸入部
82 計測部
83 排出部
84 通信部
85 出力部
HOU1 天面
HOU2 底面
HOU3 側面
HOU4 側面
LOU ルーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10