(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20241217BHJP
A01C 11/02 20060101ALI20241217BHJP
G05D 1/00 20240101ALI20241217BHJP
【FI】
A01B69/00 303A
A01B69/00 303M
A01C11/02 331D
G05D1/00
(21)【出願番号】P 2023076554
(22)【出願日】2023-05-08
(62)【分割の表示】P 2021128183の分割
【原出願日】2016-02-03
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】直本 哲
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和正
(72)【発明者】
【氏名】宮本 惇平
(72)【発明者】
【氏名】宮西 吉秀
(72)【発明者】
【氏名】永田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】石見 憲一
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-246523(JP,A)
【文献】国際公開第2015/147111(WO,A1)
【文献】特開2005-215742(JP,A)
【文献】特開2000-029520(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0076673(US,A1)
【文献】特表2010-538918(JP,A)
【文献】特開昭58-035609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
A01C 11/02
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星測位システムによる測位データに基づいて自動直進を行う自動直進モードと手動モードとの間で走行モードを切り替える走行モード切替部と、
前記測位データに関する異常を検知する異常検知部と、
表示装置と、
異常時処理部と、を備え、
前記自動直進モードでの走行中に、前記異常検知部により異常が検知された場合、表示装置は異常を報知し、
前記表示装置により異常が報知された際に、前記異常時処理部が、前記走行モードの前記手動モードへの切り替えを自動的に行う場合、
前記異常が検知された時点から所定距離または所定時間の走行後に、前記走行モードが前記手動モードへ切り替えられる作業車。
【請求項2】
衛星測位システムによる測位データに基づいて自動直進を行う自動直進モードと手動モードとの間で走行モードを切り替える走行モード切替部と、
前記測位データに関する異常を検知する異常検知部と、
表示装置と、
異常時処理部と、を備え、
前記自動直進モードでの走行中に、前記異常検知部により異常が検知された場合、表示装置は異常を報知し、
前記表示装置により異常が報知された際に、前記異常時処理部が、前記走行モードの前記手動モードへの切り替えを自動的に行う場合、
前記異常が検知された時点か
ら所定距離また
は所定時間の走行の間に、前記異常が解消されても、前記異常が検知された時点から前記所定距離または前記所定時間の走行後に、前記走行モードが前記手動モードへ切り替えられる作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動直進モードと手動モードとの間で走行モードを切り替えることが可能な作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業車として、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。この作業車は、乗用型の田植機であって、自動直進モード(自動直進操向モード)と手動モード(自動直進操向モードが解除された状態)との間で走行モードを切り替えることが可能である。この作業車は、衛星測位システムにより位置情報を取得するGPSモジュール(GPS受信機)を備えている。
【0003】
そして、自動直進モードでは、このGPSモジュールからの測位データ(信号)に基づいて、機体が直進走行するように操向制御が行われる。また、この作業車においては、車速が所定以上の場合には自動直進モードが禁止される。
【0004】
この構成によれば、自動直進モードにおける作業車の進行方向がオペレータの想定とは異なる方向であった場合に、作業車が想定外の方向へ高速走行してしまう事態が回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記作業車では、自動直進モードでの走行中、機体が建物の陰に隠れた際や、GPSモジュールが故障した際等に、GPSモジュールによる位置情報の取得が困難となる場合がある。そして、そのような場合、GPSモジュールから正確な測位データが出力されず、不正確な操向制御による自動直進が行われた結果、実際の走行ラインが目標の走行ラインから大幅にずれてしまう恐れがある。
【0007】
本発明の目的は、上述したような不正確な操向制御による自動直進の悪影響が軽減される作業車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
衛星測位システムによる測位データに基づいて自動直進を行う自動直進モードと手動モードとの間で走行モードを切り替える走行モード切替部と、
前記測位データに関する異常を検知する異常検知部と、
表示装置と、
異常時処理部と、を備え、
前記自動直進モードでの走行中に、前記異常検知部により異常が検知された場合、表示装置は異常を報知し、
前記表示装置により異常が報知された際に、前記異常時処理部が、前記走行モードの前記手動モードへの切り替え、及び、機体の停止のうち少なくとも何れか一方を行う。
また、第1の発明は、
自動直進モードと手動モードとの間で走行モードを切り替える走行モード切替部と、
前記自動直進モードでの走行に関する異常を検知する異常検知部と、
前記異常検知部により異常が検知された場合、異常を報知する報知部と、
前記自動直進モードでの走行中に、前記異常検知部により異常が検知された場合、前記異常検知部により異常が検知された時点から所定距離または所定時間の走行後に走行停止処理を実行する異常時停止処理部と、を備える。
【0009】
上記第1の発明の構成によれば、自動直進モードでの走行に関する異常が生じた場合、その異常が検知された時点から所定距離または所定時間の走行後に、走行停止処理が実行される。従って、自動直進モードでの走行に関する異常により操向制御が不正確であるままで、比較的長距離または長時間に亘って自動直進モードでの走行を継続してしまうことを回避できる。
【0010】
しかも、報知部によって異常が報知されるため、オペレータは、所定距離または所定時間の走行後に走行停止処理が実行されることを事前に知ることができる。従って、走行停止処理が突然に実行されることによってオペレータが驚いてしまうような事態を回避しやすい。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記異常時停止処理部は、前記所定距離または前記所定時間の走行中に前記走行モードが前記手動モードへ切り替えられた場合、前記走行停止処理を実行しない。
【0012】
自動直進モードでの走行に関する異常が生じた場合であっても、走行モードが手動モードであれば、走行を継続しても、その異常に起因する悪影響は生じない。即ち、手動モードであれば、不正確な操向制御による自動直進によって実際の走行ラインが目標の走行ラインからずれてしまうことはない。従って、所定距離または所定時間の走行中に走行モードが手動モードへ切り替えられた場合は、走行停止処理を実行せずとも、不正確な操向制御による自動直進の悪影響を回避できることとなる。
【0013】
ここで、上記第2の発明の構成によれば、所定距離または所定時間の走行中に走行モードが手動モードへ切り替えられた場合は、手動モードへ切り替えられたために不要となった走行停止処理の実行が回避される。そのため、不要な走行停止処理の実行によって作業車の走行が必要以上に妨げられてしまう事態を回避できる。
【0014】
第3の発明は、
自動直進モードと手動モードとの間で走行モードを切り替える走行モード切替部と、
前記自動直進モードでの走行に関する異常を検知する異常検知部と、
前記異常検知部により異常が検知された場合、異常を報知する報知部と、
前記自動直進モードでの走行中に、前記異常検知部により異常が検知された場合、前記異常検知部により異常が検知された時点から所定距離または所定時間の走行後に、前記走行モードを前記手動モードへ切り替える異常時切替部と、を備える。
【0015】
上記第3の発明の構成によれば、自動直進モードでの走行に関する異常が生じた場合、その異常が検知された時点から所定距離または所定時間の走行後に、走行モードが手動モードへ切り替えられる。そのため、操向制御が不正確であるままで比較的長距離または長時間に亘って自動直進モードでの走行を継続してしまうことを回避できる。
【0016】
しかも、報知部によって異常が報知されるため、オペレータは、所定距離または所定時間の走行後に走行モードが手動モードへ切り替えられることを事前に知ることができる。
従って、走行モードが突然に手動モードへ切り替えられることによってオペレータが驚いてしまうような事態を回避しやすい。
【0017】
第4の発明は、上記第1から3の何れか一つの発明において、
前記自動直進モードでの走行中に、前記異常検知部により異常が検知された場合、走行速度を減速操作する異常時減速部を備える。
【0018】
報知部としては、視覚的な報知部(例えばランプ)や、聴覚的な報知部(例えばブザー)を採用できる。しかしながら、視覚的な報知部を採用する場合、作業車を野外で使用する際には、日光の影響により報知の視認が困難となる事態が想定される。また、聴覚的な報知部を採用する場合、作業車や周囲の環境から発生する騒音によって、報知の聞き取りが困難となる事態が想定される。
【0019】
ここで、上記第4の発明の構成によれば、オペレータは、自動直進モードにおける作業車の走行速度が減速したことに基づいて、異常の発生を知ることができる。従って、報知部による報知が認識されにくい状況であっても、異常の発生をオペレータへ確実に知らせることができる。
【0020】
第5の発明は、
自動直進モードと手動モードとの間で走行モードを切り替える走行モード切替部と、
前記自動直進モードでの走行に関する異常を検知する異常検知部と、
前記自動直進モードでの走行中に、前記異常検知部により異常が検知された場合、走行速度を減速操作する異常時減速部と、を備える。
【0021】
自動直進モードでの走行中に、自動直進モードでの走行に関する異常が生じた場合、その異常によって、操向制御が不正確となる可能性がある。そして、そのような不正確な操向制御に起因する目標の走行ラインに対する実際の走行ラインのずれは、走行時間を一定とすると、走行速度が低速であるほど小さくなりやすい。
【0022】
ここで、上記第5の発明の構成によれば、自動直進モードでの走行中に、自動直進モードでの走行に関する異常が生じた場合、走行速度が減速操作される。従って、走行時間を一定とすると、減速操作されない場合に比べて、目標の走行ラインに対する実際の走行ラインのずれが小さくなりやすい。即ち、そのような走行ラインのずれが比較的大きなずれとなってしまうまでの時間がより長く確保されることとなる。
【0023】
しかも、オペレータは、自動直進モードにおける作業車の走行速度が減速したことに基づいて、異常の発生を知ることができる。そして、異常の発生を知ったオペレータは、走行停止や手動モードへの切り替え等の対処をすることができる。従って、異常が発生してから走行ラインのずれが比較的大きなずれとなってしまうまでの間に、上述したような対処をオペレータが検討するための時間的な余裕をより多く確保することができる。
【0024】
第6の発明は、上記第1から5の何れか一つの発明において、
機体の位置を示す測位データを出力するGPSモジュールと、
前記機体の姿勢方位を示す方位データを出力するジャイロセンサと、
前記自動直進モードにおいて、前記異常検知部により前記測位データに関する異常が検知された場合、前記方位データに基づいて舵角を制御する舵角制御部と、を備える。
【0025】
上記第1から4の何れか一つの発明の構成を備えている場合、自動直進モードでの走行中に測位データに関する異常が検知されると、その異常が検知された時点から所定距離または所定時間の走行後に、走行停止処理または手動モードへの切り替えが行われる。
【0026】
この場合、所定距離または所定時間に達するまで、測位データに基づいて舵角が制御される構成であると、実際の走行ラインが目標の走行ラインからずれてしまう恐れがある。
【0027】
ここで、上記第6の発明の構成によれば、自動直進モードでの走行中に、測位データに関する異常が生じた場合は、ジャイロセンサにより出力された方位データに基づいて舵角が制御される。即ち、測位データに関する異常が生じた場合、所定距離または所定時間に達するまで、方位データに基づいて舵角が制御されることとなる。
【0028】
従って、所定距離または所定時間に達するまで、舵角を測位データに基づいて制御することに起因して実際の走行ラインが目標の走行ラインからずれてしまう事態を回避できる。
【0029】
また、上記第5の発明の構成を備えている場合、自動直進モードでの走行中に測位データに関する異常が検知されると、走行速度が減速操作される。
【0030】
この場合、測位データに関する異常が検知された後、測位データに基づいて舵角が制御される構成であると、減速走行を継続するに伴って、実際の走行ラインが目標の走行ラインからずれていってしまう恐れがある。
【0031】
ここで、上記第6の発明の構成によれば、自動直進モードでの走行中に、測位データに関する異常が生じた場合は、ジャイロセンサにより出力された方位データに基づいて舵角が制御される。即ち、測位データに関する異常が生じた後は、方位データに基づいて舵角が制御されることとなる。
【0032】
従って、測位データに関する異常が検知された後、減速走行を継続するに伴って、実際の走行ラインが目標の走行ラインからずれていってしまう事態を回避できる。
【0033】
第7の発明は、上記第1または2の発明において、
機体の位置を示す測位データを出力するGPSモジュールと、
前記機体の姿勢方位を示す方位データを出力するジャイロセンサと、
前記自動直進モードにおいて、前記異常検知部により前記測位データに関する異常が検知された場合、前記方位データに基づいて舵角を制御する舵角制御部と、を備え、
前記異常時停止処理部は、前記異常検知部により前記測位データに関する異常が検知された後、前記所定距離または前記所定時間の走行中に前記測位データに関する異常が検知されなくなった場合、前記異常検知部により異常が検知された時点から前記所定距離または前記所定時間の走行後に、前記走行停止処理を実行する。
【0034】
上記第1または2の発明において、測位データに関する異常が検知された後、その異常が検知されなくなった場合には、走行停止処理がキャンセルされる構成とすることが考えられる。
【0035】
しかしながら、測位データに関する異常が検知された場合は、その異常がたとえ一時的に検知されたものであっても、GPSモジュール等の測位データに関する装置が故障している可能性がある。従って、測位データに関する異常が検知された後、その異常が検知されなくなった場合に走行停止処理がキャンセルされる構成では、測位データに関する装置が故障しているにも拘らず、自動直進モードでの走行が比較的長距離または長時間に亘って継続されてしまう事態が生じ得る。
【0036】
ここで、上記第7の発明の構成によれば、測位データに関する異常が検知された場合、その異常がたとえ一時的に検知されたものであっても、異常が検知された時点から所定距離または所定時間の走行後に、走行停止処理が実行される。そのため、測位データに関する装置が故障しているにも拘らず、自動直進モードでの走行が比較的長距離または長時間に亘って継続されてしまう事態を回避しやすい。
【0037】
第8の発明は、上記第3の発明において、
機体の位置を示す測位データを出力するGPSモジュールと、
前記機体の姿勢方位を示す方位データを出力するジャイロセンサと、
前記自動直進モードにおいて、前記異常検知部により前記測位データに関する異常が検知された場合、前記方位データに基づいて舵角を制御する舵角制御部と、を備え、
前記異常時切替部は、前記異常検知部により前記測位データに関する異常が検知された後、前記所定距離または前記所定時間の走行中に前記測位データに関する異常が検知されなくなった場合、前記異常検知部により異常が検知された時点から前記所定距離または前記所定時間の走行後に、前記走行モードを前記手動モードへ切り替える。
【0038】
上記第3の発明において、測位データに関する異常が検知された後、その異常が検知されなくなった場合には、手動モードへの切り替えがキャンセルされる構成とすることが考えられる。
【0039】
しかしながら、測位データに関する異常が検知された場合は、その異常がたとえ一時的に検知されたものであっても、GPSモジュール等の測位データに関する装置が故障している可能性がある。従って、測位データに関する異常が検知された後、その異常が検知されなくなった場合に手動モードへの切り替えがキャンセルされる構成では、測位データに関する装置が故障しているにも拘らず、自動直進モードでの走行が比較的長距離または長時間に亘って継続されてしまう事態が生じ得る。
【0040】
ここで、上記第8の発明の構成によれば、測位データに関する異常が検知された場合、その異常がたとえ一時的に検知されたものであっても、異常が検知された時点から所定距離または所定時間の走行後に、走行モードが手動モードへ切り替えられる。そのため、測位データに関する装置が故障しているにも拘らず、自動直進モードでの走行が比較的長距離または長時間に亘って継続されてしまう事態を回避しやすい。
【0041】
第9の発明は、上記第1から8の何れか一つの発明において、
前記走行モード切替部は、前記異常検知部により異常が検知された場合、前記走行モードが前記自動直進モードへ切り替わることを阻止する。
【0042】
上記第9の発明の構成によれば、自動直進モードでの走行に関する異常が生じている場合は、自動直進モードへの切り替えが阻止される。従って、自動直進モードでの走行に関する異常が生じているにも拘らず走行モードが自動直進モードへ切り替わり、その異常に起因する不正確な操向制御によって、実際の走行ラインが目標の走行ラインからずれてしまう事態を回避できる。
【0043】
第10の発明は、上記第1から9の何れか一つの発明において、
前記走行モード切替部は、操作されることによって前記走行モードが切り替わる切替スイッチを有しており、
前記自動直進モードでの走行中に、前記異常検知部により異常が検知された場合、前記走行モードを前記手動モードへ切り替えるよう促す警告を発する警告部を備える。
【0044】
上記第10の発明の構成によれば、自動直進モードでの走行中に、自動直進モードでの走行に関する異常が生じた場合、オペレータは、発せられた警告により、手動モードへ切り替えるべき状況であると認識しやすい。そして、そのように認識したオペレータが切替スイッチを操作すれば、走行モードが手動モードへ切り替わるため、不正確な操向制御による自動直進モードでの走行の継続を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図3】自動直進モードでの走行に関する制御構成を示すブロック図である。
【
図5】自動直進モードでの走行と手動モードでの走行とを含む作業における田植機の動作を説明する上面視の説明図である。
【
図6】目標ラインの生成等について説明する上面視の説明図である。
【
図7】異常時制御ルーチンのフローチャートである。
【
図8】第1別実施形態における自動直進モードでの走行に関する制御構成を示すブロック図である。
【
図9】第1別実施形態における異常時制御ルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特段の説明がない限り、前後左右の方向について以下のように記載している。即ち、機体の作業走行時における前進側の進行方向が「前」であり、後進側の進行方向が「後」である。そして、前後方向での前向き姿勢を基準として右側に相当する方向が「右」であり、左側に相当する方向が「左」である。
【0047】
〔田植機の全体構成〕
図1及び
図2に示すように、乗用型の田植機A(本発明に係る「作業車」に相当)には、左右一対の前車輪1と、左右一対の後車輪2と、が設けられている。そして、左右一対の前車輪1及び左右一対の後車輪2により、走行機体3が支持されている。走行機体3の後部には、リンク機構4を介して、苗植付装置5が支持されている。また、走行機体3の前後方向における中央部には、オペレータにより各種の運転操作が行われる運転部6が備えられている。運転部6は運転座席11及び操向ユニットUを備えている。操向ユニットUには、操向ハンドル18が設けられている。左右一対の前車輪1は、操向ユニットUによって操向可能となっている。運転部6の前方には、ボンネット7が設けられている。ボンネット7の内側には、エンジン8が備えられている。また、ボンネット7の左右側部には、予備苗を載置可能な予備苗台9が設けられている。さらに、ボンネット7の先端位置には、棒状のセンターマスコット45が備えられている。
【0048】
〔リンク機構及び苗植付装置の構成〕
図1及び
図2に示すように、リンク機構4は油圧シリンダ12を備えている。油圧シリンダ12の伸縮作動によって、リンク機構4は昇降作動する。そして、リンク機構4の昇降作動に伴い、苗植付装置5も昇降作動する。即ち、苗植付装置5は、昇降自在な状態で走行機体3の後部に支持されている。
【0049】
苗植付装置5は、4個の伝動ケース13、伝動ケース13の後部の左右に回転駆動自在に支持された回転ケース14、回転ケース14の両端に備えられた一対の植付アーム15、圃場の田面を整地する複数の接地フロート16、苗載せ台17を備えている。即ち、苗植付装置5は、8条植型式に構成されている。
【0050】
このように構成された苗植付装置5は、苗載せ台17を左右に往復横送り駆動しながら、伝動ケース13から伝達される動力により回転ケース14を回転駆動して、苗載せ台17の下部から植付アーム15により交互に苗を取り出して圃場の田面に植え付けるようになっている。
【0051】
〔マーカ装置の構成〕
図1に示すように、苗植付装置5の左右側部には、マーカ装置10が備えられている。
マーカ装置10は、マーカアーム10a及び回転体10bを備えている。マーカアーム10aは、上下に揺動自在な状態で苗植付装置5に支持されている。回転体10bは、マーカアーム10aの先端部に回転自在な状態で支持されており、周方向に複数の凸部体を有している。また、マーカ装置10は、マーカ用電動モータ(図示せず)を備えている。このマーカ用電動モータによって、マーカ装置10の姿勢は、作用姿勢と格納姿勢との間で切り替えられる。マーカ装置10は、作用姿勢では圃場の田面に接地しており、格納姿勢では圃場の田面から上方に離れている。
【0052】
〔GPSモジュール及びジャイロセンサに関する構成〕
図1及び
図2に示すように、田植機Aの側面視における予備苗台9の上方には、GPSモジュール19が設置されている。GPSモジュール19は、衛星測位システムによって田植機Aの機体の位置を計測する。また、走行機体3における後部には、ジャイロセンサ20が設置されている。ジャイロセンサ20は、田植機Aのヨー角度、即ち、田植機Aの旋回角度の角速度(本発明に係る「方位データ」に相当)を検出する。そして、
図3に示すように、GPSモジュール19は、機体の位置を示す測位データを制御装置21へ出力するよう構成されている。また、ジャイロセンサ20は、検出した角速度を制御装置21へ出力するよう構成されている。尚、制御装置21は田植機Aに備えられている。
【0053】
〔運転部の構成〕
図1及び
図2に示すように、運転部6には、主変速レバー22及び登録スイッチ24が備えられている。主変速レバー22の遊端部には、押圧操作式の切替スイッチ23が設けられている。また、登録スイッチ24には、押圧操作式の第一登録ボタン24Aと、押圧操作式の第二登録ボタン24Bと、が備えられている。
【0054】
図3に示すように、切替スイッチ23は、切替信号送信部25aと電気的に接続している。そして、切替スイッチ23は、切替信号送信部25a、異常時信号受信部25bと共に、走行モード切替部26を構成している。切替スイッチ23が押圧操作されると、切替信号送信部25aから制御装置21へ所定の信号が出力され、田植機Aの走行モードが切り替わる。また、第一登録ボタン24Aまたは第二登録ボタン24Bが押圧操作されると、登録スイッチ24から制御装置21へ所定の信号が出力される。
【0055】
また、
図2に示すように、運転部6には、ブレーキペダル46が備えられている。ブレーキペダル46は、田植機Aに備わる制動装置36(
図3参照)に連係している。オペレータがブレーキペダル46を踏み込んだ場合、制動装置36は、田植機Aの制動を行い、田植機Aの走行を停止させる。
【0056】
また、運転部6には、ディスプレイ39が備えられている。ディスプレイ39は、田植機Aの状態に関する種々の情報を表示するよう構成されている。
【0057】
〔動力伝動系の構成〕
図4に示すように、田植機Aには、伝動ベルト48、静油圧式無段変速装置37、ミッションケース47が備えられている。エンジン8の動力は伝動ベルト48を介して静油圧式無段変速装置37及びミッションケース47に伝達される。そして、ミッションケース47から左右一対の前車輪1へ動力が伝達される。また、ここでは図示を省くが、左右一対の後車輪2についても同様に、ミッションケース47から動力が伝達される。
【0058】
静油圧式無段変速装置37は、中立位置Nから前進側F及び後進側Rに無段階に変速自在に構成されている。そして、静油圧式無段変速装置37は、運転部6に備わる主変速レバー22(
図1及び
図2参照)の操作によって変速比が変化するよう構成されている。
【0059】
〔制御装置の構成〕
図3に示すように、制御装置21には、舵角制御部27、異常検知部28、異常時停止処理部29、異常時減速部30、情報記憶部31、ティーチング記憶部32、生成部33、ルーチン記憶部34が備えられている。また、制御装置21には、GPSモジュール19、ジャイロセンサ20、走行モード切替部26、登録スイッチ24、操向角センサ44から各種の信号が入力される。そして、制御装置21は、入力された各種の信号に基づいて、異常時信号受信部25b、ステアリングモータ35、制動装置36、静油圧式無段変速装置37、ブザー38(本発明に係る「報知部」に相当)、ディスプレイ39(本発明に係る「警告部」に相当)へ所定の信号を出力する。
【0060】
情報記憶部31は、GPSモジュール19から入力された測位データを、時間毎に記憶していくように構成されている。また、ティーチング記憶部32は、情報記憶部31に記憶されている測位データのうち、第一登録ボタン24Aが押圧操作された地点と、第二登録ボタン24Bが押圧操作された地点と、におけるそれぞれの測位データに基づいて、その2地点を結ぶ方向であるティーチング方向TAを算出するように構成されている。
【0061】
〔操向ユニットの構成〕
図4に示すように、操向ユニットUには、操向ハンドル18、ステアリング操作軸40、ピットマンアーム41、左右一対の連係機構42、ステアリングモータ35、ギヤ機構43が備えられている。操向ハンドル18は、ステアリング操作軸40を介して、ピットマンアーム41に連結されている。ピットマンアーム41は、左右一対の連係機構42を介して、左右一対の前車輪1に連結されている。
【0062】
操向ハンドル18を回動させると、その回動に伴い、ステアリング操作軸40が回動する。また、ステアリング操作軸40には、ギヤ機構43を介して、ステアリングモータ35の駆動力が伝達される。ステアリング操作軸40が回動すると、ピットマンアーム41が揺動する。ピットマンアーム41が揺動すると、左右一対の連係機構42が変位し、左右一対の前車輪1の舵角が変化する。また、ステアリング操作軸40の下端部には、ロータリエンコーダからなる操向角センサ44(
図3参照)が備えられている。ステアリング操作軸40の回転量は、操向角センサ44により検出される。
【0063】
〔機体の姿勢方位の算出について〕
田植機Aは、機体の姿勢方位NAを算出できるよう構成されている。機体の姿勢方位NAの算出は、次のように行われる。
【0064】
まず、田植機Aの走行中に、現在位置における測位データ及び直前に走行していた地点における測位データに基づいて、初期姿勢方位が姿勢方位NAとして算出される。次に、初期姿勢方位が算出されてから田植機Aが一定時間走行すると、その一定時間の走行の間にジャイロセンサ20により検出された角速度が積分処理されることにより、姿勢方位NAの変化量が算出される。
【0065】
そして、このように算出された姿勢方位NAの変化量が初期姿勢方位に足し合わされることによって、姿勢方位NAの算出結果が更新される。その後、一定時間毎に、姿勢方位NAの変化量が同様に算出されると共に、順次、姿勢方位NAの算出結果が更新されていく。
【0066】
尚、角速度の積分結果は田植機Aの姿勢方位NAの変化量に等しい。即ち、ジャイロセンサ20により検出される角速度は、田植機Aの機体の姿勢方位NAを示すパラメータ(以下、「方位データ」とも呼称する)として扱うことができる。そして、上述した姿勢方位NAの算出方法は、角速度のそのような性質を利用したものである。
【0067】
ところで、ジャイロセンサ20により検出される角速度には、計測誤差(ドリフト)が含まれている。この計測誤差は時間経過と共に増大していくため、姿勢方位NAの変化量を算出する度に、算出された姿勢方位NAの変化量に含まれる誤差が大きくなっていく。
そこで、田植機Aは、上記のように姿勢方位NAを算出する際、ジャイロセンサ20により検出された角速度を、測位データを用いて補正するよう構成されている。これにより、姿勢方位NAをより正確に算出することができる。
【0068】
〔自動直進モード及び手動モードについて〕
田植機Aは、自動直進モードでの走行、及び、手動モードでの走行を行うことができるよう構成されている。自動直進モードでは、田植機Aの舵角は、田植機Aが直進するように自動的に制御される。また、手動モードでは、田植機Aの舵角は自動的には制御されず、オペレータは、操向ハンドル18を回動させることによって舵角を操作する必要がある。
【0069】
これらの走行モードの切り替えは、走行モード切替部26に備わる切替スイッチ23の押圧操作によって行われる。換言すれば、走行モード切替部26は、操作されることによって田植機Aの走行モードが切り替わる切替スイッチ23を有している。
【0070】
例えば、走行モードが自動直進モードであるとき、オペレータが切替スイッチ23を押圧操作すると、切替信号送信部25aから制御装置21へ所定の信号が出力され、走行モードが手動モードへ切り替わる。また、走行モードが手動モードであるとき、オペレータが切替スイッチ23を押圧操作すると、切替信号送信部25aから制御装置21へ所定の信号が出力され、走行モードが自動直進モードへ切り替わる。このようにして、田植機Aの走行モードは、走行モード切替部26によって、自動直進モードと手動モードとの間で切り替えられる。
【0071】
以下では、自動直進モードでの走行、及び、手動モードでの走行を含む作業の一例として、上面視で四角形の水田において苗の植え付け作業を行う場合について説明する。
【0072】
図5に示すように、まず、オペレータは、圃場の角における第一位置Q1に田植機Aを位置させ、登録スイッチ24の第一登録ボタン24Aを押圧操作する。そして、苗植付装置5を下降させ、且つ、マーカ装置10及び接地フロート16を接地させた状態で、第一位置Q1から、進行方向左手の畦際の直線形状に沿って、田植機Aを直進走行させる。このとき、田植機Aの走行は手動モードにて行う。
【0073】
尚、走行モードが手動モードである場合、オペレータが操向ハンドル18を回動させると、その回動を補助する方向にステアリングモータ35が駆動する。これにより、オペレータが操向ハンドル18を回動させる操作力と、ステアリングモータ35による補助力と、によって、ステアリング操作軸40が回動させられることとなる。
【0074】
そして、田植機Aが正面の畦際の位置である第二位置Q2に到達したとき、オペレータは、登録スイッチ24の第二登録ボタン24Bを押圧操作する。これに伴い、ティーチング記憶部32では、第一位置Q1及び第二位置Q2のそれぞれにおいてGPSモジュール19により計測された測位データに基づいて、第一位置Q1と第二位置Q2とを結ぶ方向であるティーチング方向TAが算出される。また、第一位置Q1から第二位置Q2までの走行に伴い、マーカ装置10によって指標ラインLNが形成される。
【0075】
次に、
図5に二点鎖線で示すように、オペレータは、操向ハンドル18を操作して、田植機Aを手動で旋回させる。田植機Aの旋回開始が操向角センサ44によって検出されると、苗植付装置5、接地フロート16、マーカ装置10が、圃場の田面から自動的に上昇される。そして、田植機Aの旋回終了が操向角センサ44によって検出されると、旋回の終了した地点である第三位置Q3における測位データが情報記憶部31に記憶される。
【0076】
田植機Aの旋回終了が操向角センサ44によって検出されてから一定時間が経過するまで、且つ、姿勢方位NAとティーチング方向TAとのズレ角度が所定範囲内となるまで、切替スイッチ23の操作入力を受け付けない不感帯が設定されている。つまり、田植機Aの状態が不感帯にある間は、切替スイッチ23が押圧操作されても、手動モードから自動直進モードへの走行モードの切り替えは行われない。
【0077】
田植機Aの状態が不感帯にある間に、オペレータは、センターマスコット45の先端部を見る目線の先に、指標ラインLNが合致するように、操向ハンドル18を操作して、田植機Aの位置合わせを行うことができる。
【0078】
田植機Aの状態が不感帯を抜けると、切替スイッチ23の操作入力が受け付けられるようになる。このとき、切替スイッチ23が押圧操作されると、田植機Aの走行モードは手動モードから自動直進モードへ切り替わる。そして、
図6に示すように、GPSモジュール19が設置されている位置から姿勢方位NAの方向に所定距離だけ離れた地点である第四位置Q4を始点として、ティーチング方向TAと平行な直線状の目標ラインLMが生成部33(
図3参照)により生成される。
【0079】
尚、
図5では、図示の都合上、マーカ装置10により形成された指標ラインLNと、目標ラインLMとを少しずらしてあるが、実際は、オペレータの目線が、センターマスコット45の先端部と指標ラインLNとが一致するように、手動の位置合わせが行われるので、指標ラインLNと略一致するように目標ラインLMが生成されることとなる。
【0080】
また、
図6では、図示の都合上、姿勢方位NAとティーチング方向TAとのズレ角度を誇張して大きく描いており、指標ラインLNと目標ラインLMとがずれている。しかしながら、実際は、上述した通り、姿勢方位NAとティーチング方向TAとのズレ角度が所定範囲内となるまでは自動直進モードへ切り替わることはない。そのため、姿勢方位NAとティーチング方向TAとのズレ角度は比較的小さく、目標ラインLMは指標ラインLNと略一致するように生成されることとなる。
【0081】
目標ラインLMが生成された後は、GPSモジュール19により計測される機体の位置が目標ラインLMに沿って移動するように、且つ、姿勢方位NAがティーチング方向TAと合致するように、操向ユニットUが制御される。具体的には、操向ユニットUは、以下のように制御される。
【0082】
自動直進モードにおいて、姿勢方位NAとティーチング方向TAとの角度偏差(以下、「ズレ角度」と呼称する)がなく、GPSモジュール19により計測される測位データが示す機体の位置と目標ラインLMとの距離偏差(以下、「ズレ距離」と呼称する)がない場合、操向ユニットUはそのままの状態で保持される。
【0083】
また、自動直進モードにおいて、ズレ角度があり、ズレ距離がない場合、操向ユニットUは、ズレ角度を減少させる方向に制御される。
【0084】
また、自動直進モードにおいて、ズレ角度があり、ズレ距離がある場合には、操向ユニットUは、ズレ角度を減少させる方向に制御される。
【0085】
また、自動直進モードにおいて、ズレ角度がなく、ズレ距離がある場合、操向ユニットUは、ズレ距離を減少させる方向に制御される。
【0086】
自動直進モードでは、以上のように操向ユニットUが制御されることにより、田植機Aが目標ラインLMに沿って正確に走行する。それに伴い、苗植付装置5による苗の植え付けが、目標ラインLMに沿って正確に行われる。
【0087】
以上のような操向ユニットUの制御は、制御装置21に備わる舵角制御部27(
図3参照)によってステアリングモータ35の駆動が制御されることにより行われる。そして、操向ユニットUに備わるステアリングモータ35が制御されることによって、田植機Aの舵角が制御される。即ち、舵角制御部27は、ズレ角度及びズレ距離に基づいて、田植機Aの舵角を制御するよう構成されている。
【0088】
目標ラインLMが生成された後、田植機Aが目標ラインLMに沿って走行し、正面の畦際に到達したとき、オペレータは、切替スイッチ23を押圧操作する。これにより、走行モードが自動直進モードから手動モードへ切り替わる。そして、
図5に二点鎖線で示すように、オペレータは、上記と同様に操向ハンドル18を操作して、田植機Aを手動で旋回させる。
【0089】
その後、上記で説明した操作を繰り返すことにより、圃場への苗の植え付けを上記と同様に行うことができる。これにより、オペレータは、自動直進モードでは操向ハンドル18の操作を行うことなく、苗の植え付け作業を、より正確に、より簡単に行うことができる。
【0090】
〔異常時の制御について〕
制御装置21に備わる異常検知部28(
図3参照)は、自動直進モードでの走行に関する異常を検知するよう構成されている。そして、自動直進モードでの走行に関する異常として、測位データに関する異常が異常検知部28により検知された場合、
図7に示す異常時制御ルーチンが実行される。尚、この異常時制御ルーチンは、制御装置21に備わるルーチン記憶部34に格納されている。
【0091】
以下、
図7の異常時制御ルーチンについて説明する。まずは、自動直進モードでの走行中に、測位データに関する異常が異常検知部28により検知された後、オペレータが手動モードへの切り替えを行わない場合について、ケースC1として説明する。尚、以下で説明する全てのケースでは、測位データに関する異常の具体例として、GPSモジュール19に電波障害が発生したと仮定して説明している。
【0092】
〔ケースC1〕
GPSモジュール19に電波障害が発生した場合、その電波障害は測位データに関する異常として異常検知部28によって検知され、異常時制御ルーチンが実行される。異常時制御ルーチンが実行されると、まず、ステップS1の処理が実行される。ステップS1では、制御装置21からブザー38へ所定の信号が出力される。そして、この信号が入力されたブザー38は、報知音を鳴らすことにより、異常を報知する。その後、処理はステップS2へ移行する。
【0093】
尚、このように、ブザー38は、異常検知部28により異常が検知された場合、異常を報知するよう構成されている。
【0094】
ステップS2では、現在の走行モードが自動直進モードであるかどうかが判定される。
このケースC1では自動直進モードでの走行中であるため(YES)、処理はステップS3へ移行する。
【0095】
ステップS3では、制御装置21に備わる異常時減速部30(
図3参照)から静油圧式無段変速装置37へ所定の信号が出力される。そして、この信号が入力された静油圧式無段変速装置37は、変速比を減速側に変更する。これにより、田植機Aの走行速度が減速する。その後、処理はステップS4へ移行する。
【0096】
尚、このように、異常時減速部30は、自動直進モードでの走行中に、異常検知部28により異常が検知された場合、走行速度を減速操作するよう構成されている。
【0097】
ステップS4では、角速度に基づいた舵角の制御である異常時舵角制御が開始される。
【0098】
上述した通り、田植機Aは、通常、姿勢方位NAを算出する際、ジャイロセンサ20により検出された角速度を、測位データを用いて補正するよう構成されている。しかしながら、異常時舵角制御においては、測位データを用いた角速度の補正が行われない。即ち、姿勢方位NAは、測位データ及び角速度のうち、測位データを用いることなく、角速度のみに基づいて算出されることとなる。
【0099】
また、上述した通り、田植機Aは、通常、自動直進モードにおける舵角の制御がズレ角度及びズレ距離に基づいて行われるよう構成されている。そして、このズレ距離の算出には測位データが用いられている。しかしながら、異常時舵角制御においては、舵角の制御に際してズレ距離が用いられない。そのため、異常時舵角制御においては、舵角制御部27によって、ズレ角度のみに基づいて舵角が制御されることとなる。
【0100】
従って、異常時舵角制御においては、角速度のみに基づいて姿勢方位NAが算出され、且つ、その姿勢方位NAがティーチング方向TAと合致するように、舵角制御部27によって舵角が制御されることとなる。即ち、この場合は、角速度に基づいて舵角が制御される。
【0101】
尚、このように、舵角制御部27は、自動直進モードにおいて、異常検知部28により測位データに関する異常が検知された場合、方位データに基づいて舵角を制御するよう構成されている。
【0102】
ステップS4で異常時舵角制御が開始された後、処理はステップS5へ移行する。ステップS5では、制御装置21からディスプレイ39へ所定の信号が出力される。そして、この信号が入力されたディスプレイ39は、走行モードを手動モードへ切り替えるよう促す警告を表示する。その後、処理はステップS6へ移行する。
【0103】
尚、このように、ディスプレイ39は、自動直進モードでの走行中に、異常検知部28により異常が検知された場合、走行モードを手動モードへ切り替えるよう促す警告を発するよう構成されている。
【0104】
ステップS6では、異常検知部28により異常が検知された時点から所定距離または所定時間の走行が行われたかどうかが判定される。本実施形態では、所定距離または所定時間の走行が行われる時点よりも十分早い時点で、処理がステップS6へ初めて移行するよう構成されている。従って、処理がステップS5からステップS6へ移行した後、ステップS6ではNOと判定され、処理はステップS7へ移行する。
【0105】
尚、ステップS6における判定基準である所定距離としては任意の距離を設定できる。
同様に、ステップS6における判定基準である所定時間としては任意の時間を設定できる。
【0106】
ステップS7では、走行モードが手動モードへ切り替えられたかどうかが判定される。
このケースC1では手動モードへの切り替えが行われないため(NO)、処理はステップS6へ戻る。このケースC1では、その後、異常検知部28により異常が検知された時点から所定距離または所定時間の走行が行われるまで、処理はステップS6及びステップS7を往復することとなる。
【0107】
そして、異常検知部28により異常が検知された時点から所定距離または所定時間の走行が行われた後は、ステップS6でYESと判定され、処理はステップS8へ移行する。
【0108】
ステップS8では、制御装置21に備わる異常時停止処理部29(
図3参照)から制動装置36へ所定の信号が出力される。そして、この信号が入力された制動装置36は、田植機Aの制動を行い、田植機Aの走行を停止させる(本発明に係る「走行停止処理」に相当)。その後、この異常時制御ルーチンは一旦終了する。
【0109】
尚、このように、異常時停止処理部29は、自動直進モードでの走行中に、異常検知部28により異常が検知された場合、異常検知部28により異常が検知された時点から所定距離または所定時間の走行後に走行停止処理を実行するよう構成されている。
【0110】
〔ケースC2〕
次に、ケースC2として、自動直進モードでの走行中に、測位データに関する異常が異常検知部28により検知された後、オペレータが手動モードへの切り替えを行わず、且つ、所定距離または所定時間の走行中に測位データに関する異常が検知されなくなった場合について説明する。
【0111】
ケースC2における制御の流れは、ステップS5まではケースC1と同様である。そのため、ステップS5からステップS6へ処理が移行した時点から説明する。
【0112】
ステップS6では、異常検知部28により異常が検知された時点から所定距離または所定時間の走行が行われたかどうかが判定される。ここでは、処理がステップS6へ初めて移行した時点であるため、ケースC1と同様に、所定距離または所定時間の走行が行われていない(NO)と判定され、処理はステップS7へ移行する。
【0113】
ステップS7では、走行モードが手動モードへ切り替えられたかどうかが判定される。
このケースC2では手動モードへの切り替えが行われないため(NO)、処理はステップS6へ戻る。
【0114】
このケースC2では、異常検知部28により異常が検知された時点から所定距離または所定時間の走行中に測位データに関する異常が検知されなくなる。
【0115】
しかしながら、この異常時制御ルーチンにおいては、測位データに関する異常が検知され続けているかどうかを判定し、異常が検知されなくなった場合に異常時制御ルーチンを一旦終了させるようなステップは存在しない。従って、測位データに関する異常が検知されなくなっているものの、ケースC1と同様、異常検知部28により異常が検知された時点から所定距離または所定時間の走行が行われるまで、処理はステップS6及びステップS7を往復することとなる。そして、異常検知部28により異常が検知された時点から所定距離または所定時間の走行が行われた後の処理も、ケースC1と同様に実行される。
【0116】
即ち、自動直進モードでの走行中に、測位データに関する異常が異常検知部28により検知された後、手動モードへの切り替えが行われないという条件下では、測位データに関する異常が検知され続けた場合であっても、測位データに関する異常が検知されなくなった場合であっても、走行停止処理が実行される。
【0117】
尚、このように、異常時停止処理部29は、異常検知部28により測位データに関する異常が検知された後、所定距離または所定時間の走行中に測位データに関する異常が検知されなくなった場合、異常検知部28により異常が検知された時点から所定距離または所定時間の走行後に、走行停止処理を実行するよう構成されている。
【0118】
〔ケースC3〕
次に、ケースC3として、自動直進モードでの走行中に、測位データに関する異常が異常検知部28により検知された後、所定距離または所定時間の走行中にオペレータが手動モードへの切り替えを行った場合について説明する。
【0119】
ケースC3における制御の流れは、ステップS5まではケースC1と同様である。そのため、ステップS5からステップS6へ処理が移行した時点から説明する。
【0120】
ステップS6では、異常検知部28により異常が検知された時点から所定距離または所定時間の走行が行われたかどうかが判定される。ここでは、処理がステップS6へ初めて移行した時点であるため、ケースC1と同様に、所定距離または所定時間の走行が行われていない(NO)と判定され、処理はステップS7へ移行する。
【0121】
ステップS7では、走行モードが手動モードへ切り替えられたかどうかが判定される。
このケースC3では、測位データに関する異常が異常検知部28により検知された後、所定距離または所定時間の走行中に手動モードへの切り替えが行われる。即ち、走行モードが手動モードへ切り替えられるまでは、ケースC1と同様、処理はステップS6及びステップS7を往復することとなる。
【0122】
そして、手動モードへの切り替えが行われた後は、ステップS7でYESと判定され、この異常時制御ルーチンは一旦終了する。従って、この場合、走行停止処理は実行されない。
【0123】
尚、このように、異常時停止処理部29は、所定距離または所定時間の走行中に走行モードが手動モードへ切り替えられた場合、走行停止処理を実行しないよう構成されている。
【0124】
〔ケースC4〕
次に、ケースC4として、手動モードでの走行中に、測位データに関する異常が異常検知部28により検知された場合について説明する。
【0125】
ケースC4における制御の流れは、ステップS1まではケースC1と同様である。そのため、ステップS1からステップS2へ処理が移行した時点から説明する。
【0126】
ステップS2では、現在の走行モードが自動直進モードであるかどうかが判定される。
このケースC4では手動モードでの走行中であるため(NO)、処理はステップS9へ移行する。
【0127】
ステップS9では、制御装置21から走行モード切替部26に備わる異常時信号受信部25bへ所定の信号が出力される。走行モード切替部26は、この信号が入力された場合、切替信号送信部25aから制御装置21への信号の送信を禁止するよう構成されている。即ち、異常時信号受信部25bに所定の信号が入力された後は、切替スイッチ23が押圧操作されても、走行モードが自動直進モードへ切り替わることはない。その後、この異常時制御ルーチンは一旦終了する。
【0128】
尚、このように、走行モード切替部26は、異常検知部28により異常が検知された場合、走行モードが自動直進モードへ切り替わることを阻止するよう構成されている。
【0129】
以上で説明された構成によれば、自動直進モードでの走行に関する異常が生じた場合、その異常が検知された時点から所定距離または所定時間の走行後に、走行停止処理が実行される。従って、自動直進モードでの走行に関する異常により操向制御が不正確であるままで、比較的長距離または長時間に亘って自動直進モードでの走行を継続してしまうことを回避できる。
【0130】
しかも、ブザー38によって異常が報知されるため、オペレータは、所定距離または所定時間の走行後に走行停止処理が実行されることを事前に知ることができる。従って、走行停止処理が突然に実行されることによってオペレータが驚いてしまうような事態を回避しやすい。
【0131】
また、自動直進モードでの走行中に、自動直進モードでの走行に関する異常が生じた場合、その異常によって、操向制御が不正確となる可能性がある。そして、そのような不正確な操向制御に起因する目標の走行ライン(目標ラインLM)に対する実際の走行ラインのずれは、走行時間を一定とすると、走行速度が低速であるほど小さくなりやすい。
【0132】
ここで、以上で説明された構成によれば、自動直進モードでの走行中に、自動直進モードでの走行に関する異常が生じた場合、走行速度が減速操作される。従って、走行時間を一定とすると、減速操作されない場合に比べて、目標の走行ラインに対する実際の走行ラインのずれが小さくなりやすい。即ち、そのような走行ラインのずれが比較的大きなずれとなってしまうまでの時間がより長く確保されることとなる。
【0133】
しかも、オペレータは、自動直進モードにおける田植機Aの走行速度が減速したことに基づいて、異常の発生を知ることができる。そして、異常の発生を知ったオペレータは、走行停止や手動モードへの切り替え等の対処をすることができる。従って、異常が発生してから走行ラインのずれが比較的大きなずれとなってしまうまでの間に、上述したような対処をオペレータが検討するための時間的な余裕をより多く確保することができる。
【0134】
〔第1別実施形態〕
上記実施形態における制御装置21には、異常時停止処理部29が備えられている。そして、異常時制御ルーチンは、ステップS8で走行停止処理が実行されるよう構成されている。
【0135】
しかしながら、本発明はこれに限定されない。以下では、本発明に係る第1別実施形態について、上記実施形態とは異なる点を中心に説明する。以下で説明している部分以外の構成は、上記実施形態と同様である。また、上記実施形態と同様の構成については、同じ符号を付している。
【0136】
図8及び
図9は、本発明に係る第1別実施形態における機能ブロック図及び異常時制御ルーチンを示す図である。
図8に示すように、制御装置21は、異常時停止処理部29を備えておらず、代わりに、異常時切替部49を備えている。また、
図9に示すように、異常時制御ルーチンにおけるステップS6でYESと判定された場合、処理はステップS10へ移行する。そして、ステップS10では、走行停止処理が実行されるのではなく、走行モードが手動モードへ切り替えられる。
【0137】
以下、
図9の異常時制御ルーチンについて説明する。まずは、自動直進モードでの走行中に、測位データに関する異常が異常検知部28により検知された後、オペレータが手動モードへの切り替えを行わない場合について、ケースC5として説明する。
【0138】
〔ケースC5〕
ケースC5における制御の流れは、ステップS1でブザー38により異常が報知されてから、ステップS6でYESと判定されるまでは、上記実施形態におけるケースC1と同様である。そのため、ステップS6からステップS10へ処理が移行した時点から説明する。
【0139】
ステップS10では、異常時切替部49(
図8参照)により、走行モードが手動モードへ切り替えられる。その後、この異常時制御ルーチンは一旦終了する。
【0140】
尚、このように、異常時切替部49は、自動直進モードでの走行中に、異常検知部28により異常が検知された場合、異常検知部28により異常が検知された時点から所定距離または所定時間の走行後に、走行モードを手動モードへ切り替えるよう構成されている。
【0141】
〔ケースC6〕
次に、ケースC6として、自動直進モードでの走行中に、測位データに関する異常が異常検知部28により検知された後、オペレータが手動モードへの切り替えを行わず、且つ、所定距離または所定時間の走行中に測位データに関する異常が検知されなくなった場合について説明する。
【0142】
ケースC6における制御の流れは、ステップS5まではケースC1と同様である。そのため、ステップS5からステップS6へ処理が移行した時点から説明する。
【0143】
ステップS6では、異常検知部28により異常が検知された時点から所定距離または所定時間の走行が行われたかどうかが判定される。ここでは、処理がステップS6へ初めて移行した時点であるため、ケースC1と同様に、所定距離または所定時間の走行が行われていない(NO)と判定され、処理はステップS7へ移行する。
【0144】
ステップS7では、走行モードが手動モードへ切り替えられたかどうかが判定される。
このケースC6では手動モードへの切り替えが行われないため(NO)、処理はステップS6へ戻る。
【0145】
このケースC6では、異常検知部28により異常が検知された時点から所定距離または所定時間の走行中に測位データに関する異常が検知されなくなる。
【0146】
しかしながら、この異常時制御ルーチンにおいては、測位データに関する異常が検知され続けているかどうかを判定し、異常が検知されなくなった場合に異常時制御ルーチンを一旦終了させるようなステップは存在しない。従って、測位データに関する異常が検知されなくなっているものの、ケースC1と同様、異常検知部28により異常が検知された時点から所定距離または所定時間の走行が行われるまで、処理はステップS6及びステップS7を往復することとなる。そして、異常検知部28により異常が検知された時点から所定距離または所定時間の走行が行われた後、処理はステップS10へ移行し、ステップS10での処理がケースC5と同様に実行される。
【0147】
即ち、自動直進モードでの走行中に、測位データに関する異常が異常検知部28により検知された後、手動モードへの切り替えが行われないという条件下では、測位データに関する異常が検知され続けた場合であっても、測位データに関する異常が検知されなくなった場合であっても、異常時切替部49により、手動モードへの切り替えが行われる。
【0148】
尚、このように、異常時切替部49は、異常検知部28により測位データに関する異常が検知された後、所定距離または所定時間の走行中に測位データに関する異常が検知されなくなった場合、異常検知部28により異常が検知された時点から所定距離または所定時間の走行後に、走行モードを手動モードへ切り替えるよう構成されている。
【0149】
以上で説明した第1別実施形態の構成によれば、自動直進モードでの走行に関する異常が生じた場合、その異常が検知された時点から所定距離または所定時間の走行後に、走行モードが手動モードへ切り替えられる。そのため、操向制御が不正確であるままで比較的長距離または長時間に亘って自動直進モードでの走行を継続してしまうことを回避できる。
【0150】
しかも、ブザー38によって異常が報知されるため、オペレータは、所定距離または所定時間の走行後に走行モードが手動モードへ切り替えられることを事前に知ることができる。従って、走行モードが突然に手動モードへ切り替えられることによってオペレータが驚いてしまうような事態を回避しやすい。
【0151】
〔その他の実施形態〕
(1)上記実施形態及び第1別実施形態では、走行モード切替部26には切替スイッチ23が備えられている。そして、自動直進モードと手動モードとの間での走行モードの切り替えは、オペレータが切替スイッチ23を押圧操作することによって行われる。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、走行モード切替部26が切替スイッチ23を備えておらず、走行モード切替部26が走行モードの切り替えを自動的に行うよう構成されていてもよい。
【0152】
(2)上記実施形態及び第1別実施形態では、測位データに関する異常の具体例として、GPSモジュール19に電波障害が発生したと仮定して説明している。しかしながら、本発明に係る測位データに関する異常は電波障害に限定されない。例えば、GPSモジュール19における測位データの計測機能の不具合や、GPSモジュール19と制御装置21との間における測位データの入出力系統の不具合も、測位データに関する異常に含まれる。従って、異常検知部28は、これらの不具合を検知するよう構成されていてもよい。
【0153】
(3)上記実施形態及び第1別実施形態では、測位データに関する異常が異常検知部28により検知された場合、異常時制御ルーチンが実行される。しかしながら、本発明はこれに限定されない。異常時制御ルーチンは、測位データに関する異常が検知された場合に限らず、自動直進モードでの走行に関する異常が検知された場合に実行されるよう構成されていてもよい。尚、測位データに関する異常は、自動直進モードでの走行に関する異常に含まれる。また、例えば、舵角制御部27の不具合や、ステアリングモータ35の不具合も、自動直進モードでの走行に関する異常に含まれる。従って、異常検知部28は、これらの不具合を検知するよう構成されていてもよい。
【0154】
(4)上記実施形態及び第1別実施形態では、ジャイロセンサ20が、本発明に係る方位データに相当するものとして、田植機Aの旋回角度の角速度を出力するよう構成されている。しかしながら、本発明はこれに限定されない。ジャイロセンサ20は、本発明に係る方位データに相当するものとして、角速度の積分値や、機体の姿勢方位NAを出力するよう構成されていてもよい。
【0155】
(5)上記実施形態及び第1別実施形態における異常時制御ルーチンでは、ステップS2にてNOと判定された後、処理がステップS9に移行する。そして、ステップS9で、切替信号送信部25aから制御装置21への信号の送信が禁止されることにより、走行モードが自動直進モードへ切り替わることが阻止される。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、制御装置21が、ステップS9において走行モード切替部26へ所定の信号を出力するよう構成されており、且つ、走行モード切替部26が、その信号が入力された場合に手動モードへの切り替えを許可すると共に自動直進モードへの切り替えを禁止するように構成されていてもよい。また、その上で、ステップS9の位置を、ステップS2の上流側や、ステップS2とステップS3との間や、ステップS3の下流側の位置に変更してもよい。
【0156】
(6)上記実施形態及び第1別実施形態では、異常時制御ルーチンにおけるステップS3において、異常時減速部30によって静油圧式無段変速装置37の変速比が減速側に変更され、これにより、田植機Aの走行速度が減速する。しかしながら、本発明はこれに限定されない。異常時減速部30は、ステップS3で制動装置36を作動させ、これによって田植機Aの走行速度を減速させるよう構成されていてもよい。
【0157】
(7)上記実施形態では、異常時制御ルーチンのステップS8における走行停止処理として、異常時停止処理部29が、制動装置36を作動させることによって田植機Aの走行を停止させる。しかしながら、本発明はこれに限定されない。異常時停止処理部29は、走行停止処理として、エンジン8の駆動を停止させることによって田植機Aの走行を停止させるよう構成されていてもよい。
【0158】
(8)上記実施形態及び第1別実施形態では、報知部として、ブザー38が備えられている。しかしながら、本発明はこれに限定されない。報知部としては、例えばランプが備えられていてもよい。また、警告部として備えられているディスプレイ39が、報知部としての機能を兼ね備えるよう構成されていてもよい。
【0159】
(9)上記実施形態及び第1別実施形態では、警告部として、ディスプレイ39が備えられている。しかしながら、本発明はこれに限定されない。警告部としては、例えばランプが備えられていてもよい。また、報知部として備えられているブザー38が、警告部としての機能を兼ね備えるよう構成されていてもよい。
【0160】
(10)上記実施形態及び第1別実施形態では、上面視で四角形の水田において苗の植え付け作業を行う場合、最初の直進走行は手動モードで行うと共に、第一登録ボタン24A及び第二登録ボタン24Bを用いて、ティーチング方向TAを定める必要がある。また、畦際において手動モードでの旋回を終え、自動直進モードでの走行を開始する度に、目標ラインLMが田植機Aの前方に1本のみ生成される。しかしながら、本発明はこれに限定されない。水田の形状が制御装置21に記憶されており、作業を開始する際に、水田の形状に適した複数の目標ラインLMが、水田の全体に亘って生成されるよう構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明は、作業装置として苗植付装置を備える上記乗用型の田植機以外にも、例えば、作業装置として播種装置を備える植播系水田作業車である乗用型の直播機、作業装置としてプラウ等を備えるトラクタ、若しくは、作業装置として刈取部等を備えるコンバイン等の農作業車、または、作業装置としてバケット等を備える建設作業車等の種々の作業車に利用できる。
【符号の説明】
【0162】
19 GPSモジュール
20 ジャイロセンサ
23 切替スイッチ
26 走行モード切替部
27 舵角制御部
28 異常検知部
29 異常時停止処理部
30 異常時減速部
38 ブザー(報知部)
39 ディスプレイ(警告部)
49 異常時切替部
NA 姿勢方位