(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】エロビキシバットの調製方法
(51)【国際特許分類】
C07K 1/14 20060101AFI20241217BHJP
C07K 5/065 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C07K1/14
C07K5/065
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023082414
(22)【出願日】2023-05-18
(62)【分割の表示】P 2020547081の分割
【原出願日】2019-03-08
【審査請求日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】201811008692
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(32)【優先日】2018-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】515294075
【氏名又は名称】エロビクス・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ガナパティ・ジー・バート
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン・エム・コウチーニョ
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル・ダールストローム
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル・ロフトハーゲン
(72)【発明者】
【氏名】多々良 明訓
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-537061(JP,A)
【文献】特表2016-522181(JP,A)
【文献】特表2004-521961(JP,A)
【文献】国際公開第2009/130706(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101155802(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CuKα1-放射線を用いて得られた、6.3±0.2及び19.4±0.2の°2θ位置における特定ピーク並びに10.2±0.2、10.5±0.2、9.4±0.2、9.5±0.2、12.5±0.2、14.6±0.2、15.6±0.2及び23.3±0.2から選択される1つ又は複数の特徴的ピークを有するX線粉末回折(XRPD)パターンを有する、エロビキシバットの結晶変態IVの調製方法であって、
(i)粗エロビキシバットを、エタノールと酢酸エチルとの混合溶
媒に溶解する工程と、
(ii)工程(i)から得られた粗エロビキシバットを溶解させたエタノールと酢酸エチルとの混合溶液から、エロビキシバットの結晶性エタノラートを得る工程と、
(iii)工程(ii)から得られたエロビキシバットの結晶性エタノラートを乾燥させて、エロビキシバットの結晶性無水物を得る工程と、
(iv)エロビキシバットの結晶性無水物を水和させて、エロビキシバットの結晶変態IVを得る工程と
を含む、方法。
【請求項2】
n-ヘプタンが、工程(ii)において、粗エロビキシバットを溶解させたエタノールと酢酸エチルとの混合溶液に添加される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある特定の1,5-ベンゾチアゼピン化合物の調製方法、詳細にはエロビキシバットの調製方法に関する。この方法は、緩やかで安全な条件下で実行することができ、エロビキシバットを工業規模で調製するために使用されうる。本発明はまた、エロビキシバットの結晶性一水和物の調製方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
エロビキシバット(1,1-ジオキソ-3,3-ジブチル-5-フェニル-7-メチルチオ-8-(N-{(R)-1'-フェニル-1'-[N'-(カルボキシメチル)カルバモイル]メチル}カルバモイルメトキシ)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,5-ベンゾチアゼピン)は、回腸胆汁酸輸送体(IBAT)阻害剤であり、脂質異常症(WO 02/50051)、便秘(WO 2004/089350)並びに胆汁うっ滞性肝疾患及び非アルコール性脂肪性肝炎等の肝疾患(WO 2012/064266)の予防又は処置に使用することができる。
【0003】
回腸胆汁酸輸送体(IBAT)は、小腸内に、詳細には回腸に位置し、腸肝循環として公知のプロセスの一部として、小腸から肝臓への胆汁酸の取り込みを媒介する役割を担う。典型的には、胆汁酸のおよそ95パーセントは、IBATを介して肝臓へと再循環され、残りの5パーセントは結腸に分泌される。小腸から肝臓への胆汁酸の再吸収を抑制することにより、増加した量の胆汁酸が結腸に分泌される。結腸中の胆汁酸のより高い濃度により、次には、電解質及び水の分泌増加がもたらされ、結果として糞便の軟化及び大腸におけるより高い運動性が生じる。したがって、回腸胆汁酸輸送体の阻害剤として、エロビキシバットは、便秘の処置に使用されうる。
【0004】
エロビキシバット及びいくつかの関連する1,5-ベンゾチアゼピン化合物の調製は、WO 02/50051に開示されている。エロビキシバットの調製は多数の連続する工程で構成され、環境的又は安全性の観点から望ましくない数種の試薬が含まれていた。最終生成物(エロビキシバット)及びいくつかの中間生成物の精製には分取クロマトグラフィーが必要とされ、これは小規模合成には良好に作動するが、工業規模の製造には好適ではない。
【0005】
エロビキシバットの結晶変態IVを含む、エロビキシバットのいくつかの安定な結晶変態がWO 2014/174066及びWO 2016/062848に開示されている。しかしながら、これらの文書に記載されている水和物及び無水物形態を得る方法は、工業規模の製造用に最適化されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO 02/50051
【文献】WO 2004/089350
【文献】WO 2012/064266
【文献】WO 2014/174066
【文献】WO 2016/062848
【文献】US 2017/0143738
【文献】US 2017/0143783
【非特許文献】
【0007】
【文献】Wuts、P.G.M.及びGreene、T.W.、Greene's Protective Groups in Organic Synthesis、第4版;John Wiley & Sons、Hoboken、2006年
【発明の概要】
【0008】
そのため、エロビキシバット、又は結晶変態IV等のその結晶性一水和物の調製には改善された方法が必要とされている。そのような方法は、これまでに記載された方法より、高収率且つ高純度で、工業規模においてエロビキシバットを製造することを可能とするであろう。
【0009】
本発明は、エロビキシバット及び近縁の1,5-ベンゾチアゼピン化合物の改善された調製方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の態様では、本発明は、
式(I):
【0011】
【0012】
[式中、
R1及びR2は、それぞれ独立してC1~4アルキルであり、
R3は、C1~4アルキルであり、
R4は、水素、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、シアノ及びC1~4アルキルからなる群から選択され、
R5は、水素、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、シアノ及びC1~4アルキルからなる群から選択される]
の化合物、又はその薬学的に許容される塩の調製方法であって、
式(II):
【0013】
【0014】
[式中、R1~R4は、上に定義された通りである]
の化合物と、式(III):
【0015】
【0016】
[式中、
R5は、上に定義された通りであり、
R6は、好適な保護基である]
の化合物とを反応させて、式(IV):
【0017】
【0018】
の化合物を得る工程と、
前記式(IV)の化合物を脱保護して、式(I)の化合物を得る工程と
を含む、方法に関する。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードを指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「C1~4アルキル」は、1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル基を指す。C1~4アルキルの例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル及びtert-ブチルが含まれる。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「C1~4ハロアルキル」は、上に定義されたC1~4アルキル基を指すが、少なくとも1個の水素原子がハロゲンで置き換えられている。C1~4ハロアルキルの例には、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチルが含まれる。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「保護基」は、反応する可能性のある官能基を、所望されない化学的変換から保護する一時的な置換基を指す。そのような保護基の例には、カルボン酸のエステル、例えば、カルボン酸のアルキルエステル及びシリルエステルが含まれる。保護基化学の分野は広範囲にわたり検討されており、例えば、Wuts、P.G.M.及びGreene、T.W.、Greene's Protective Groups in Organic Synthesis、第4版;John Wiley & Sons、Hoboken、2006年を参照されたい。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、その値又はパラメータ自体に関する実施形態を含む(及び記述する)、本明細書における値又はパラメータを指す。例えば、「約20」と表される記述は、「20」という記述を含む。数値範囲は、範囲を画定する数を包括する。一般的に言えば、用語「約」は、変数の表示された値、及び表示された値の実験誤差内(例えば、平均の95%信頼区間内)又は表示された値の10パーセント内のいずれか大きい方である、変数の全ての値を指す。
【0024】
好ましい実施形態では、本発明は、式(I)[式中、R1及びR2はそれぞれn-ブチルである]の化合物の調製方法に関する。別の好ましい実施形態では、本発明は、式(I)[式中、R3はメチルである]の化合物の調製方法に関する。別の好ましい実施形態では、本発明は、式(I)[式中、R4は水素である]の化合物の調製方法に関する。更に別の好ましい実施形態では、本発明は、式(I)[式中、R5は水素である]の化合物の調製方法に関する。最も好ましい実施形態では、本発明は、式(I)[式中、R1及びR2はそれぞれn-ブチルであり、R3はメチルであり、R4及びR5はそれぞれ水素である]の化合物(すなわちエロビキシバット)の調製方法に関する。
【0025】
特許請求される方法の第1の工程では、式(II)のカルボン酸は、好ましくはカップリング試薬及び好適な塩基の存在下で、式(III)のO-保護されたペプチドとの縮合反応に供される。
【0026】
式(III)の化合物は、好ましくは式(II)の化合物よりわずかに過剰で、より好ましくは式(II)の化合物に対して約1.0~約1.3当量の量で、最も好ましくは式(II)の化合物に対して約1.2当量の量で使用される。
【0027】
式(III)中のR6は好適な保護基であり、より好ましくは酸性条件下で除去されうる保護基である。好ましい実施形態では、R6は、C1~4アルキル及び三置換シリルからなる群から選択される。より好ましくは、R6は、tert-ブチル又はトリメチルシリル、最も好ましくはtert-ブチルである。
【0028】
好適なカップリング試薬の例には、カルボジイミド、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド及びジイソプロピルカルボジイミド;N,N'-カルボニルジイミダゾール;O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU);並びにO-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)が含まれる。好ましい実施形態では、カップリング試薬は、カルボジイミド又はO-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、最も好ましくはO-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレートである。
【0029】
カップリング試薬は、式(II)の化合物よりわずかに過剰で、最も好ましくは式(II)の化合物に対して約1.0~約1.3当量の量で使用されうる。
【0030】
好適な塩基の例には、第3級アルキルアミン,例えば、トリエチルアミン;並びに芳香族アミン、例えば、ピリジン及び2,6-ルチジンが含まれる。好ましい実施形態では、塩基は、2,6-ルチジンである。
【0031】
塩基は、好ましくは式(II)の化合物より過剰で、式(II)の化合物に対して好ましくは約1.5~約4.0当量の量で、より好ましくは約2.5~約3.5当量の量で使用される。
【0032】
縮合反応に好適な溶媒には、エーテル、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル及び1,2-ジメトキシエタン;エステル、例えば、酢酸エチル及び酢酸イソプロピル;炭化水素、例えば、ヘキサン及びヘプタン;芳香族炭化水素、例えば、トルエン及びキシレン;ケトン、例えば、アセトン及び2-ブタノン;、例えば、ジクロロメタン及びクロロホルム;ハロゲン化芳香族炭化水素、例えば、クロロベンゼン;ニトリル、例えば、アセトニトリル及びプロピオニトリル;アミド、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド及びN-メチルピロリドン;並びに任意のこれらの溶媒の混合物が含まれる。好ましい実施形態では、溶媒は、ハロゲン化炭化水素又はニトリル、より好ましくはハロゲン化炭化水素、例えば、ジクロロメタン又はクロロホルム、最も好ましくはジクロロメタンである。
【0033】
反応は、約0℃と反応溶媒の沸点との間の温度で実施しうる。反応は、好ましくは約10℃以上の温度で、最も好ましくは約15℃~約35℃の温度で実施される。
【0034】
いったん反応が完了したら、混合物を、酸の水溶液(例えば、塩酸の水溶液)、水、塩基の水溶液(例えば、炭酸水素ナトリウムの水溶液)及び水で連続して洗浄することができ、溶媒を蒸発させることができる。その後、生成物を、結晶化等により更に精製してよい。式(IV)の化合物を、好ましくはアセトニトリル又はヘプタンから、最も好ましくはアセトニトリルから結晶化させる。最も好ましい実施形態では、式(IV)の化合物を、アセトニトリルから2回再結晶させる。
【0035】
第2の工程では、式(IV)の化合物を、C(O)OR6基の加水分解により、好ましくは前記基の酸加水分解により脱保護する。加水分解を、好適な酸の存在下で実施することができ、対応する式(I)のカルボン酸が得られる。
【0036】
好適な酸の例には、塩酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ショウノウスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ギ酸、酢酸及びトリフルオロ酢酸が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、酸はトリフルオロ酢酸である。
【0037】
加水分解反応に好適な溶媒には、エーテル、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル及び1,2-ジメトキシエタン;エステル、例えば、酢酸エチル及び酢酸イソプロピル;炭化水素、例えば、ヘキサン及びヘプタン;芳香族炭化水素、例えば、トルエン及びキシレン;ハロゲン化炭化水素、例えば、ジクロロメタン及びクロロホルム;ハロゲン化芳香族炭化水素、例えば、クロロベンゼン;ニトリル、例えば、アセトニトリル及びプロピオニトリル;アミド、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド及びN-メチルピロリドン;並びに任意のこれらの溶媒の混合物が含まれる。好ましい実施形態では、溶媒は、芳香族炭化水素、より好ましくは芳香族炭化水素、例えば、トルエン又はキシレン、最も好ましくはトルエンである。
【0038】
反応は、約0℃と反応溶媒の沸点との間の温度で実施しうる。反応は、好ましくは約15℃~約35℃の温度で実施される。
【0039】
いったん加水分解が完了したら、酸を水で洗浄することにより除去することができ、有機溶媒を蒸発させることができる。その後、生成物を、結晶化又は沈殿等により更に精製してよい。式(I)の化合物を、好ましくはエタノールから結晶化させるか、又はヘプタン、詳細にはn-ヘプタンの添加により溶液から沈殿させる。
【0040】
本発明の更なる実施形態では、式(II)の化合物は、
式(V):
【0041】
【0042】
[式中、R1~R4は、上に定義された通りである]
の化合物と、式(VI):
【0043】
【0044】
[式中、
R7は、好適な保護基であり、
Xは、好適な脱離基である]
の化合物とを反応させて、式(VII):
【0045】
【0046】
の中間体化合物を得る工程と、
続いて、エステルR7O-C(O)-の加水分解により、式(II)の化合物を得る工程と
を含む、アルキル化反応により調製される。
【0047】
式(VI)のアルキル化剤では、R7は、好ましくはC1~4アルキル及びC1~4ハロアルキルからなる群から選択される。より好ましくは、R7は、メチル、エチル又はtert-ブチル等のC1~4アルキルであり、最も好ましくはR7はエチルである。Xは、好ましくはハロ、トリフルオロメタンスルホネート、メタンスルホニル及びp-トルエンスルホニルからなる群から選択される。より好ましくは、Xは、ハロゲンであり、より好ましくはクロリド、ブロミド及びヨージドから選択されるハロゲンである。最も好ましい実施形態では、式(VI)の化合物は、ブロモ酢酸エチルである。
【0048】
式(VI)の化合物は、式(V)の化合物に対してわずかに過剰で使用されうる。最高収率は、式(VI)の化合物を、式(V)の化合物に対して約1.1~約1.4当量で使用した場合に得ることができる。
【0049】
式(V)の化合物と式(VI)の化合物の間のアルキル化反応は、好ましくは相間移動触媒及び塩基の存在下で実施される。好適な相間移動触媒の例には、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAB)、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化メチルトリカプリルアンモニウム、塩化メチルトリブチルアンモニウム、及び塩化メチルトリオクチルアンモニウムが含まれる。臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムが最も好ましい。好適な塩基の例には、金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウム;金属炭酸塩、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸リチウム等;並びに金属炭酸水素塩、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム及び炭酸水素リチウムが含まれる。好ましい実施形態では、塩基は、金属炭酸塩、最も好ましくは炭酸ナトリウムである。塩基は、式(VI)の化合物より過剰で、式(VI)の化合物に対して好ましくは約3.0~約6.0当量の量で、より好ましくは約3.5~約4.0当量の量で使用されうる。
【0050】
アルキル化反応に好適な溶媒には、エーテル、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル及び1,2-ジメトキシエタン;エステル、例えば、酢酸エチル及び酢酸イソプロピル;炭化水素、例えば、ヘキサン及びヘプタン;芳香族炭化水素、例えば、トルエン及びキシレン;ケトン、例えば、アセトン及び2-ブタノン;ハロゲン化炭化水素、例えば、ジクロロメタン及びクロロホルム;ハロゲン化芳香族炭化水素、例えば、クロロベンゼン;ニトリル、例えば、アセトニトリル及びプロピオニトリル;、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド及びN-メチルピロリドン;並びに任意のこれらの溶媒の混合物が含まれる。好ましい実施形態では、溶媒は、芳香族炭化水素又はハロゲン化炭化水素、より好ましくはトルエン又はキシレン、最も好ましくはトルエンである。
【0051】
反応は、約0℃と反応溶媒の沸点との間の温度で実施しうる。反応は、特に溶媒として芳香族炭化水素を使用する場合に、好ましくは約20℃以上の温度で、最も好ましくは約75℃~約85℃の温度で実施される。
【0052】
いったんアルキル化反応が完了したら、水を添加し、相間移動触媒及び塩基を水性層に抽出することができる。次に、式(VII)の中間体化合物は、単離され、更に精製されうる。少なくとも溶媒として芳香族炭化水素を使用した場合に、式(VII)の化合物が高収率で且つ高純度で得られることが判明した。そのような場合、式(VII)の中間体化合物を、更なる単離及び精製をすることなく、次の工程で直ちに使用しうる。したがって、好ましい実施形態では、式(VII)の中間体化合物は、単離されず、次の工程で直ちに使用される。
【0053】
前記次の工程では、式(VII)の化合物を、好ましくは塩基性条件下で加水分解し、式(II)の化合物を得る。加水分解は、有機溶媒中で実施することができ、そこに塩基の水溶液を添加する。
【0054】
好適な塩基の例には、金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウム;金属炭酸塩、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸リチウム;並びに金属炭酸水素塩、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム及び炭酸水素リチウムが含まれる。好ましい実施形態では、塩基は、金属水酸化物、最も好ましくは水酸化ナトリウムである。塩基は、好ましくは式(VII)の化合物より過剰で、式(VII)の化合物に対して好ましくは約2.0~約6.0当量の量で、より好ましくは約3.0~約5.0当量の量で、より好ましくは約3.5~約4.5当量の量で使用される。
【0055】
加水分解反応に好適な溶媒には、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール及びt-ブタノール;エーテル、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル及び1,2-ジメトキシエタン;炭化水素、例えば、ヘキサン及びヘプタン;芳香族炭化水素、例えば、トルエン及びキシレン;ケトン、例えば、アセトン及び2-ブタノン;ハロゲン化炭化水素、例えば、ジクロロメタン及びクロロホルム;ハロゲン化芳香族炭化水素、例えば、クロロベンゼン;並びに任意のこれらの溶媒の混合物が含まれる。好ましい実施形態では、溶媒は、アルコール又は芳香族炭化水素、より好ましくは芳香族炭化水素、例えば、トルエン又はキシレン、最も好ましくはトルエンである。
【0056】
アルキル化及びそれに続く加水分解反応中に、同一の溶媒が使用された場合に特に有利である。
【0057】
反応は、約0℃と反応溶媒の沸点との間の温度で実施されうる。反応は、芳香族炭化水素を溶媒として使用した場合に好ましくは約20℃以上の温度で、最も好ましくは約45℃~約55℃の温度で、又はアルコールを溶媒として使用する場合に約20℃~約30℃の温度で実施される。
【0058】
いったん加水分解反応が完了したら、反応混合物を、ギ酸等の酸の添加により酸性化することができ、有機層を洗浄し濃縮することができる。その後、反応生成物を更に精製してよい。式(II)の化合物及び対応するナトリウム塩の両方を、有機溶媒から沈殿させるか又は結晶化させうる。したがって、本発明の好ましい実施形態では、式(II)の化合物を、最初に、対応するナトリウム塩として結晶化させ、その後、プロトン化し、親化合物として結晶化させる。一部の実施形態では、対応するナトリウム塩として式(II)の化合物を結晶化させることにより、任意の非塩有機不純物を除去する。式(II)の化合物のナトリウム塩を、好ましくは酢酸エチルと水酸化ナトリウム水溶液との混合物から結晶化させ、式(II)の化合物を、好ましくは酢酸エチルとn-ヘプタンとの混合物から結晶化させる。
【0059】
本発明の更なる実施形態では、この方法はまた、式(I)の化合物を、式(I)の安定な結晶性水和物に変換する工程も含む。これは、式(I)の化合物を、エタノールから、又はエタノール及び1種又は複数の他の好適な溶媒を含む溶媒混合物から再結晶化させることにより達成することができる。好ましい実施形態では、式(I)の化合物はエロビキシバットであり、式(I)の安定な結晶性水和物は、エロビキシバットの結晶性一水和物であり、最も好ましくはエロビキシバットの結晶変態IV(エロビキシバットの結晶形IVとも表される)である。
【0060】
結晶変態IVは、粗エロビキシバットをエタノールから又はエタノールと水との混合物から結晶化させることにより得ることができることがこれまでに開示されている。そのような条件下で、エロビキシバットの結晶性エタノラートが最初に形成され、これは単離され乾燥されうる。結晶性エタノラートの乾燥により、無水物が得られ、これは空気中から水分を迅速に吸収し、それによりエロビキシバットの結晶変態IVとなる。粗エロビキシバットをエタノールと酢酸エチルとの混合物に溶解させると、改善された結果が得られることがここで判明した。エロビキシバットはこの溶媒混合物に十分に溶解するため、任意の異物粒子又は微生物を除去するために、得られた溶液の付加的な濾過工程を実施しうる。改善された結果はまた、n-ヘプタンが、エタノールと酢酸エチルとの混合物中の式(I)の化合物の溶液に添加された場合も得ることができる。
【0061】
第2の態様では、本発明は、エロビキシバットの結晶変態IVの調製方法であって、
(i)粗エロビキシバットを、エタノールと酢酸エチルとの混合物に溶解する工程と、
(ii)工程(i)から得られたエタノールと酢酸エチルとの混合物中の粗エロビキシバットの溶液から、エロビキシバットの結晶性エタノラートを結晶化させる工程と、
(iii)エロビキシバットの結晶性エタノラートを乾燥させて、エロビキシバットの結晶性無水物を得る工程と、
(iv)エロビキシバットの結晶性無水物を水和させて、エロビキシバットの結晶変態IVを得る工程と
を含む、方法に関する。
【0062】
エロビキシバットの結晶変態IVは、CuKα1-放射線を用いて得られた、6.3±0.2及び/又は19.4±0.2の°2θ位置における特定のピークを少なくとも有するX線粉末回折(XRPD)パターンを有しうる。
【0063】
一実施形態では、エロビキシバットの結晶変態IVは、CuKα1-放射線を用いて得られた、6.3±0.2及び19.4±0.2の°2θ位置における特定ピーク並びに10.2±0.2、10.5±0.2、9.4±0.2、9.5±0.2、12.5±0.2、14.6±0.2、15.6±0.2及び23.3±0.2から選択される1つ又は複数の特徴的ピークを有するX線粉末回折(XRPD)パターンを有しうる。
【0064】
別の実施形態では、エロビキシバットの結晶変態IVは、CuKα1-放射線を用いて得られた、6.3±0.2、19.4±0.2、10.2±0.2、10.5±0.2、9.4±0.2及び9.5±0.2の°2θ位置における特定ピークを有するX線粉末回折(XRPD)パターンを有しうる。
【0065】
別の実施形態では、エロビキシバットの結晶変態IVは、CuKα1-放射線を用いて得られた、6.3±0.2、19.4±0.2、10.2±0.2、10.5±0.2、9.4±0.2、9.5±0.2、12.5±0.2、14.6±0.2、15.6±0.2及び23.3±0.2の°2θ位置における特徴的ピーク、並びに1つ又は複数の8.3±0.2、11.3±0.2、13.4±0.2、13.9±0.2、16.3±0.2、16.6±0.2、18.2±0.2、18.8±0.2、19.1±0.2、19.3±0.2、19.7±0.2、19.8±0.2、20.5±0.2、21.0±0.2、21.3±0.2、21.4±0.2、22.6±0.2、22.9±0.2、23.1±0.2、23.9±0.2、24.5±0.2、24.7±0.2、25.0±0.2、25.2±0.2、25.4±0.2、25.7±0.2、26.7±0.2、26.9±0.2、28.3±0.2及び28.9±0.2から選択される特徴的ピークを有するX線粉末回折(XRPD)パターンを有しうる。
【0066】
別の実施形態では、エロビキシバットの結晶変態IVは、CuKα1-放射線を用いて得られた、6.3±0.2、8.3±0.2、9.4±0.2、9.5±0.2、10.2±0.2、10.5±0.2、11.3±0.2、12.5±0.2、13.4±0.2、13.9±0.2、14.6±0.2、15.6±0.2、16.3±0.2、16.6±0.2、18.2±0.2、18.8±0.2、19.1±0.2、19.3±0.2、19.4±0.2、19.7±0.2、19.8±0.2、20.5±0.2、21.0±0.2、21.3±0.2、21.4±0.2、22.6±0.2、22.9±0.2、23.1±0.2、23.3±0.2、23.9±0.2、24.5±0.2、24.7±0.2、25.0±0.2、25.2±0.2、25.4±0.2、25.7±0.2、26.7±0.2、26.9±0.2、28.3±0.2及び28.9±0.2の°2θ位置における特徴的ピークを有するX線粉末回折(XRPD)パターンを有しうる。
【0067】
粗エロビキシバットが溶解されるエタノールと酢酸エチルとの混合物は、エタノールと酢酸エチルとの10:1~0.5:1混合物(w/w)であることができる。好ましい実施形態では、粗エロビキシバットは、エタノールと酢酸エチルとの約1.85:1(w/w)混合物に溶解される。
【0068】
一実施形態では、工程(ii)における結晶化は、エタノールと酢酸エチルとの混合物中の粗エロビキシバットの溶液に、エロビキシバットの結晶変態IVの種結晶を添加することにより開始される。
【0069】
別の実施形態では、工程(ii)において、n-ヘプタンが、エタノールと酢酸エチルとの混合物中の粗エロビキシバットの溶液に添加される。
【0070】
本明細書に開示される発明はいくつかの利点を有する。特許請求されたエロビキシバットの調製方法は、これまでに開示された方法より含まれる工程数が少なく、したがって、より効率的で且つコスト効率が良い。エロビキシバットは、より高収率で且つより低い不純物レベルを伴い単離されることも可能である。この方法は、改善された精製工程を含み、大規模合成における使用に好適ではないいくつかのクロマトグラフィー工程の必要性をとり除く。この方法は、エロビキシバットの結晶変態IVの調製に更に改善をもたらす。全般に、この方法は、エロビキシバット(又はその安定な結晶性一水和物)を、工業規模で調製することを可能にする。
【0071】
式(I)の化合物は、回腸胆汁酸輸送体(IBAT)阻害剤である。したがって、それらは、胆汁酸循環の阻害が望ましい状態、障害及び疾患、例えば、脂肪酸代謝及びグルコース利用の障害、胃腸疾患及び障害並びに肝疾患及び障害の処置又は予防に有用である。
【0072】
脂肪酸代謝及びグルコース利用の障害には、高コレステロール血症、脂質異常症、代謝症候群、肥満、脂肪酸代謝の障害、グルコース利用障害、インスリン抵抗性が関連する障害、並びに1型及び2型糖尿病が含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
胃腸疾患及び障害には、便秘(慢性便秘、機能性便秘、慢性特発性便秘(CIC)及び便秘型過敏腸症候群(IBS-C)を含む);クローン病;原発性胆汁酸吸収不良;過敏腸症候群(IBS);炎症性腸疾患(IBD);回腸炎症;及び逆流症並びにこれらの合併症が含まれる。
【0074】
本明細書で定義される肝疾患は、肝臓、並びに肝臓と連結している器官、例えば、膵臓、門脈、肝実質、肝内胆樹、肝外胆樹、及び胆嚢における任意の胆汁酸-依存性疾患である。肝疾患及び障害には、肝臓の遺伝性代謝障害;胆汁酸合成の先天性異常;先天的胆管奇形;胆道閉鎖症;Kasai手術後の胆道閉鎖症;肝移植後の胆道閉鎖症;新生児肝炎;新生児胆汁うっ滞;遺伝形式の胆汁うっ滞;脳腱黄色腫症;BA合成の二次異常;ツェルウェガー症候群;嚢胞性線維症(肝臓における症状発現);α1アンチトリプシン欠損症;アラジール症候群(ALGS);バイラー症候群;胆汁酸(BA)合成の一次異常;進行性家族性肝内胆汁うっ滞(PFIC)で、PFIC-1、PFIC-2、PFIC-3及び非特定PFIC、胆汁変向後のPFIC及び肝移植後のPFICを含む;良性再発性肝内胆汁うっ滞(BRIC)で、BRIC1、BRIC2及び非特定BRIC、胆汁変向後のBRIC及び肝移植後のBRICを含む;自己免疫性肝炎;原発性胆汁性肝硬変(PBC);肝線維症;非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD);非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);門脈圧亢進症;全身性胆汁うっ滞;妊娠中の黄疸;薬物に起因する黄疸;肝内胆汁うっ滞;肝外胆汁うっ滞;原発性硬化性胆管炎(PSC);胆石及び総胆管結石;悪性の閉塞を起こす胆樹;胆汁うっ滞又は黄疸に起因するそう痒;膵炎;進行性胆汁うっ滞に至る慢性自己免疫性肝疾患;脂肪肝;アルコール性肝炎;急性脂肪肝;妊娠期間の脂肪肝;薬物性肝炎;鉄過剰障害;肝線維症;肝硬変;アミロイド症;ウイルス肝炎(A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎及びE型肝炎を含む);肝細胞癌(肝細胞腫);並びに肝臓、胆道及び膵臓の腫瘍及び新生物に起因する胆汁うっ滞に関連する問題が含まれるが、これらに限定されない。
【0075】
更なる態様では、本発明は、本明細書に開示される方法により、1種又は複数の薬学的に許容される賦形剤と関連して調製される式(I)の化合物を含む医薬組成物に関する。賦形剤には、充填剤、結合剤、崩壊剤、流動促進剤及び滑沢剤が含まれてよい。好ましい実施形態では、本明細書に開示される方法により調製される式(I)の化合物はエロビキシバットである。
【0076】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される」は、ヒトへの医薬的使用に好適で、且つ一般に安全で、無毒性且つ生物学的にもまた他の点でも望ましくないものではないこれらの化合物及び材料を指す。
【0077】
医薬組成物は、経口投与に、非経口的な注射(静脈内、皮下、筋肉内及び血管内の注射を含む)に、局所投与に又は直腸内投与に好適な形態でありうる。好ましい実施形態では、医薬組成物は、経口投与に好適な形態、例えば、錠剤又はカプセル剤である。
【0078】
好適な充填剤の例には、リン酸二カルシウム二水和物、硫酸カルシウム、ラクトース(ラクトース一水和物等)、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、微結晶性セルロース、乾燥デンプン、加水分解されたデンプン及びアルファ化デンプンが含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、充填剤は、マンニトール及び/又は微結晶性セルロースである。
【0079】
好適な結合剤の例には、デンプン、アルファ化デンプン、ゼラチン、糖(スクロース、グルコース、デキストロース、ラクトース及びソルビトール等)、ポリエチレングリコール、ワックス、天然及び合成のガム(アカシアガム及びトラガカントガム等)、アルギン酸ナトリウム、セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルメチルセルロース(又はヒプロメロース)、ヒドロキシプロピルセルロース及びエチルセルロース等)並びに合成ポリマー(アクリル酸及びメタクリル酸のコポリマー、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸アミノアルキルコポリマー、ポリアクリル酸/ポリメタクリル酸のコポリマー及びポリビニルピロリドン(ポビドン)等)が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、結合剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)である。
【0080】
好適な崩壊剤の例には、乾燥デンプン、加工デンプン((部分的)アルファ化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム及びカルボキシメチルデンプンナトリウム等)、アルギン酸、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及び低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)等)並びに架橋ポリマー(カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム及び架橋PVP(クロスポビドン)等)が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウムである。
【0081】
好適な流動促進剤及び滑沢剤の例には、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル、コロイド状シリカ、水性二酸化ケイ素、合成ケイ酸マグネシウム、細粒化酸化ケイ素、デンプン、硫酸ラウリルナトリウム、ホウ酸、酸化マグネシウム、ワックス(カルナウバロウ等)、硬化油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、及びミネラルオイルが含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、流動促進剤又は滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム又はコロイド状シリカである。
【0082】
医薬組成物は、従来的に1つ又は複数のコーティング層でコーティングされてよい。式(I)の化合物の腸溶コーティング層又は遅延放出若しくは標的放出用のコーティング層もまた企図される。コーティング層は、1種又は複数のコーティング剤を含んでよく、可塑剤及び/又は顔料(若しくは着色剤)を任意選択で含んでよい。
【0083】
好適なコーティング剤の例には、セルロース-ベースのポリマー(エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(又はヒプロメロース)、ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、ビニル-ベースのポリマー(ポリビニルアルコール等)並びにアクリル酸及びその誘導体をベースとしたポリマー(アクリル酸及びメタクリル酸のコポリマー、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸アミノアルキルコポリマー、ポリアクリル酸/ポリメタクリル酸コポリマー等)が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、コーティング剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。他の実施形態では、コーティング剤は、ポリビニルアルコールである。
【0084】
好適な可塑剤の例には、クエン酸トリエチル、三酢酸グリセリル、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、アセチルクエン酸トリブチル、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジブチル及びポリエチレングリコールが含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、可塑剤は、ポリエチレングリコールである。
【0085】
好適な顔料の例には、二酸化チタン、酸化鉄(黄色、褐色、赤色又は黒色酸化鉄等)及び硫酸バリウムが含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
式(I)の化合物、詳細にはエロビキシバットを含む医薬組成物の例は、例えば、WO 2014/174066、US 2017/0143738及びUS 2017/0143783に開示されており、これらはその全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0087】
本明細書に記載される状態の処置又は予防に必要とされる投与量は、投与経路、疾患の重症度、患者の年齢及び体重、並びに特定の患者のために適切なレジメン及び投与量レベルを決定する際に担当医師により通常考慮される他の要因に依存する。
【0088】
投与される化合物の量は、処置される患者に関して異なり、1日当たり約1μg/体重1kg~約50mg/体重1kgで変化しうる。単位用量形態、例えば、錠剤又はカプセル剤は、通例、約1~約250mgの有効成分、例えば、約1~約100mg等、又は約1~約50mg等、又は約1~約20mg等、例えば約2.5mg、又は約5mg、又は約10mg、又は約15mgを含有する。1日用量は、単回用量として又は1回、2回、3回以上の単位用量に分割して投与することができる。経口的に投与されるIBAT阻害剤の1日用量は、好ましくは約0.1~約250mg内、より好ましくは約1~約100mg内、例えば、約1~約5mg内等、約1~約10mg内等、約1~約15mg内等、又は約1~約20mg内等である。
【0089】
更なる態様では、本発明は、ヒト等の対象における、本明細書に記載される任意の疾患を処置又は予防する方法であって、そのような処置又は予防を必要とする対象に、本明細書に開示される方法により調製される式(I)の化合物を含む治療有効量の医薬組成物を投与することを含む、方法に関する。本発明はまた、本明細書に記載される任意の疾患の処置又は予防における使用のための、本明細書に開示される方法により調製される式(I)の化合物を含む医薬組成物にも関する。本発明はまた、本明細書に記載される任意の疾患の処置又は予防のための医薬の製造における、本明細書に開示される方法により調製される式(I)の化合物の使用にも関する。本態様の好ましい実施形態では、本明細書に開示される方法により調製される式(I)の化合物は、エロビキシバットである。
【実施例】
【0090】
本発明は、以下の実施例により更に例証され、これはいかなる点においても本発明を制限することはない。
【0091】
実験方法
一般的方法
以下の実施例のための試薬及び出発原料は、市販のもの又は当技術分野で公知の標準的方法により調製されうるもののいずれかである。出発原料3,3-ジブチル-7-(メチルスルファニル)-1,1-ジオキソ-5-フェニル-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-1,5-ベンゾチアゼピン-8-オール及び1,1-ジメチルエチル2-[(2R)-2-ベンジルオキシカルバミド-2-フェニルアセトアミド]アセテートは、WO 02/50051に記載されるように調製されうる(方法26及び85をそれぞれ参照されたい)。
【0092】
高分解能質量分析(HRMS)を、Waters社 Acquity H Class UPLC/Xevo G2-XS QTofで実施した。
【0093】
(実施例1)
{[3,3-ジブチル-7-(メチルスルファニル)-1,1-ジオキシド-5-フェニル-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,5-ベンゾチアゼピン-8-イル]オキシ}酢酸の調製
【0094】
【0095】
反応器中で、3,3-ジブチル-7-(メチルスルファニル)-1,1-ジオキソ-5-フェニル-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-1,5-ベンゾチアゼピン-8-オール(70.00kg)、炭酸ナトリウム(69.30kg)、臭化テトラブチルアンモニウム(4.55kg)、トルエン(606.20kg)、及びブロモ酢酸エチル(30.10kg)を混合し、80℃で4時間撹拌した。冷却した後、反応物を水(1680kg)で洗浄し、水性層を廃棄した。
水酸化ナトリウム溶液(25.04kgの水酸化ナトリウムと225.4kgの水との混合物)を、上記のトルエン層に添加した。この混合物を47℃で3.5時間撹拌した。冷却した後、酢酸エチル(374.74kg)をこの反応溶液に添加し、その後、撹拌しながら、ギ酸をpHが3.6になるまで添加した。水性層を廃棄し、有機層を水(333.84kgで2回)で洗浄した。
有機層を真空下で濃縮し、酢酸エチル(599.24kg)を濃縮残留物に添加した。冷却した後、水酸化ナトリウム溶液(125.19kgの水酸化ナトリウムと709.41kgの水との混合物)を、撹拌しながらゆっくりと添加した。ナトリウム塩の結晶を沈殿させ、その後、遠心分離により単離した。
前記ナトリウム塩、酢酸エチル(599.24kg)及び水(333.8kg)を混合した。ギ酸を、撹拌しながらpHが3.5になるまで添加した。有機層を水(333.8kgで2回)で洗浄し、真空下で濃縮した。n-ヘプタン(228.68kg)を濃縮残留物に添加し、この混合物を撹拌した。沈殿させた結晶を濾過し、真空下で乾燥して、標題化合物の乾燥結晶を灰色がかった白色の固体として得た(65.38kg)。
HRMS(ESI、m/z) C26H34NO5S2[M-H]-に関する計算値:504.1880。実測値:504.1832。
【0096】
(実施例2)
tert-ブチル-N-[(2R)-2-アミノ-2-フェニルアセチル]グリシネートの調製
【0097】
【0098】
反応器中で、無水アルコール(266.30kg)、tert-ブチル2-[(2R)-2-ベンジルオキシカルバミド-2-フェニルアセトアミド]アセテート(33.75kg)、10%の炭素上のパラジウム(50%の水を含有する)(4.05kg)、及びトルエン(87.75kg)を混合した。この混合物を、18℃で、水素下で3.5kg/cm2の加圧下において3時間撹拌した。
反応物を濾過し、濾過床を無水エタノール(106.65kg)で洗浄した。濾液を真空下で濃縮し、標題化合物を無色で粘性のある液体として得た(21.70kg)。
HRMS(ESI、m/z)C14H21N2O3[M+H]+に関する計算値:265.1553。実測値:265.1452。
【0099】
(実施例3)
tert-ブチル-N-{(2R)-2-[({[3,3-ジブチル-7-(メチルチオ)-1,1-ジオキシド-5-フェニル-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,5-ベンゾチアゼピン-8-イル]オキシ}アセチル)アミノ]-2-フェニルエタノイル}グリシネートの調製
【0100】
【0101】
反応器中で、実施例1の化合物(65.00kg)、実施例2の化合物(40.95kg)、及びジクロロメタン(864.50kg)を混合した。2,6-ルチジン(37.05kg)を添加し、次にO-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(46.15kg)を5℃で添加した。この混合物を25℃で15時間撹拌した。ジクロロメタン(1037.40kg)を添加し、有機層を以下の液体で連続的に洗浄した:(1)希塩酸(74.10kgの塩酸と667.55kgの水との混合物);(2)水(260.00kg);(3)重炭酸ナトリウム溶液(26.00kgの炭酸水素ナトリウムと260.00kgの水との混合物);及び(4)水(260.00kg)。
有機層を真空下で濃縮した。アセトニトリル(306.80kg)を添加した後、この混合物を溶解するまで加熱し、次に13℃まで冷却した。結晶を沈殿させ、次にこれを遠心分離にかけ、アセトニトリル(51.35kg)で洗浄した。
アセトニトリル(606.45kg)を、得られた粗結晶の全量に添加した。この混合物を溶解するまで加熱し、次に0℃まで冷却した。結晶を沈殿させ、これを遠心分離にかけ、アセトニトリル(51.35kg)で洗浄した。湿った結晶を真空乾燥し、標題化合物を白色粉末として得た(81.20kg)。
HRMS(ESI、m/z)C40H52N3O7S2[M-H]-に関する計算値:750.3250。実測値:750.3164。
【0102】
(実施例4)
粗エロビキシバットの調製
【0103】
【0104】
反応器中で、トルエン(1331.10kg)及び実施例3の化合物(76.50kg)を混合した。トリフルオロ酢酸(341.95kg)を3℃で添加し、この混合物を25℃で29時間撹拌した。反応混合物を、水性層のpHが3.4になるまで水(306.00kg)で繰り返し洗浄した。
有機層を濾過した後、濾液を真空下で濃縮した。n-ヘプタン(520.20kg)を濃縮した残留物に添加し、この混合物を撹拌した。沈殿した結晶を遠心分離にかけ、n-ヘプタン(104.04kg)で洗浄した。結晶を真空乾燥し、粗エロビキシバットを灰色がかった白色の固体として得た(64.34kg)。
HRMS(ESI、m/z)C36H44N3O7S2[M-H]-に関する計算値:694.2623。実測値:694.2553。
【0105】
(実施例5)
エロビキシバットの結晶変態IVの調製
【0106】
【0107】
粗エロビキシバット(64.00kg)、酢酸エチル(154.88kg)、及び無水アルコール(288.00kg)を反応器中で混合し、この混合物を、溶解するまで40℃で撹拌した。この溶液を濾過した後、濾液を、酢酸エチル(17.28kg)と無水アルコール(15.36kg)との混合物で洗浄した。
濾過した溶液を冷却した後、エロビキシバットの結晶変態IVの種結晶(0.032kg)を25℃で添加し、この混合物を2時間撹拌した。n-ヘプタン(832.00kg)を添加し、この混合物を23℃で撹拌し続けた。結晶を沈殿させ、これを遠心分離にかけ、n-ヘプタン(43.52kg)で洗浄した。湿った結晶を真空下で乾燥して、乾燥結晶を得た。
その後、乾燥結晶を、多湿条件(40±25%RH)に25℃で、2.4%~3.4%の水分含量(カール・フィッシャー滴定により決定)が達成されるまで曝露することにより、水和させた(加湿した)。エロビキシバットの結晶変態IVを、白色粉末として得た(50.64kg)。