(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】炎症症状で使用するための抗IL-1R3抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20241217BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20241217BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241217BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241217BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241217BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P29/00
A61P17/00
(21)【出願番号】P 2023114162
(22)【出願日】2023-07-12
(62)【分割の表示】P 2019561281の分割
【原出願日】2018-05-08
【審査請求日】2023-08-04
(32)【優先日】2017-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515337475
【氏名又は名称】サノフィ・バイオテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー、シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ベックマン、カルステン
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】特許第7315472(JP,B2)
【文献】特表2014-519480(JP,A)
【文献】特表2014-511348(JP,A)
【文献】国際公開第2016/020502(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/132602(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/207304(WO,A2)
【文献】Immunology Letters,2011年,Vol.139,p.52-57
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
Genbank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象のIL1R3媒介炎症症状及び/又は障害の治療における使用のための
組成物であって、IL-1R3に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片
を含み、
前記炎症症状及び/又は障害が、炎症性皮膚疾患であり、
前記抗体又はその抗原結合断片が、配列番号28のアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)領域と少なくとも95%同一であるVH領域、及び配列番号174のアミノ酸配列を含む軽鎖可変
(VL)領域と少なくとも95%同一であるVL領域を含み、
前記抗体又はその抗原結合断片が、
a) CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3を含む相補性決定領域、
ここで、前記CDR-H1領域が、配列番号79のアミノ酸配列を含み、
前記CDR-H2領域が、配列番号96のアミノ酸配列を含み、
前記CDR-H3領域が、配列番号113のアミノ酸配列を含む、及び
b) CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含む相補性決定領域、
ここで、前記CDR-L1領域が、配列番号130のアミノ酸配列を含み、
前記CDR-L2領域が、配列番号147のアミノ酸配列を含み、
前記CDR-L3領域が、配列番号175のアミノ酸配列を含む、
を含む、前記
組成物。
【請求項2】
前記炎症性皮膚疾患が、シュニッツラー症候群、スウィート症候群、好中球性皮膚症、好中球性脂肪織炎、ジェスナー・カノフ病、汗腺膿瘍、PAPA症候群、PASH症候群、DIRA症候群、ブラウ症候群/肉芽腫性関節炎、およびマジェード症候群からなる群から選択される、請求項1に記載の
組成物。
【請求項3】
前記抗体のエフェクター機能が低下しているか、又は前記抗体のエフェクター機能が欠如している、請求項1または2に記載の
組成物。
【請求項4】
前記抗体が免疫細胞の枯渇を誘発しない、請求項1~3のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項5】
前記抗体がADCCを誘導しない、請求項3または4に記載の
組成物。
【請求項6】
前記抗体が、少なくともヒトIgG1 Fc領域のアミノ酸置換L234A及びL235A、若しくはヒ
トIgG4 Fc領域のS228P及びL235E、又は対応する機能的変異を含む、請求項1~5のいず
れか一項に記載の
組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36、IL-RA、及び/又はIL1R3などのIL1R3シグナル伝達経路のメンバーの制御されない又は異常な発現を特徴とする医学的症状及び/又は
障害の治療方法に関する。より具体的には、本発明は、炎症症状及び/又は障害における
抗IL-1R3抗体の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン1受容体アクセサリータンパク質(IL1RAP)(IL1R3とも称される)
は、1型インターロイキン1受容体(IL1R1)の共受容体であり、IL-1シグナル伝達の伝
達に不可欠である。IL-1の結合により、IL-1R1は、IL-1RAcPと会合して機能的シグナル伝達受容体複合体を形成し、その複合体がNFκB活性を刺激する。
【0003】
IL-33、その受容体ST2、及びIL-1RAcPも、IL-1β/IL-1R1/IL-1RAcP複合体としてNFκB
活性化に関して同様の活性を持つ複合体(IL-33/ST2/IL-1RAcP)を形成する。IL-36(IL-36α(IL-1F6)、IL-36β(IL-1F8)、及びIL-36γ(IL-1F9))、それらの受容体IL-36R、並びにIL-1RAcPもまた、IL-1β/IL-1R1/IL-1RAcP複合体としてNFκB活性に関して類似
の活性を有する複合体(IL-36/Il-36R/IL-1RAcP)を形成する。
【0004】
インターロイキン-1(IL-1)経路は、哺乳類の炎症反応で重要な役割を果たす細胞内シグナル伝達経路であり、広範囲の免疫学、代謝、生理学及び造血活動に関連する。IL-1ファミリーは、3つの構造的に関連するサイトカイン:IL-1アルファ、IL-1ベータ、及びIL-1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)が含まれる。3つのうち、IL-1アルファ及びIL-1ベータは、炎症誘発性アゴニストであり、一方、IL-1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)は、IL-1アルファ及びIL-1ベータ活性をブロックするよう機能する。IL-1のすべての既知の生物学的機能は、I型IL-1Rを通じて媒介される。IL-1アルファ、IL-1ベータ及びIL-1raは、I型IL-1Rと高い親和性で結合する。対照的に、IL-1ベータは高い親和性でII型IL-1Rに結合し
、IL-1アルファ及びIL-1raは低い親和性でII型IL-1Rに結合する。II型IL-1Rは、細胞質ドメインが大幅に切断されており、IL-1に結合すると細胞にシグナルを伝達しないが、代わりにデコイ受容体として作用することによりIL-1を媒介した反応の調節に関与する。
【0005】
IL-1の産生は、感染症、微生物毒素、炎症剤、アレルギー反応によって引き起こされる。IL-1の全体の主な機能は、炎症又はアレルギー性免疫反応の部位での免疫及び炎症反応の振幅と持続時間を調節することである。過剰なIL-1が生成される又はIL-1の発現が適切に調節されない場合、疾患状態が発症し得る。したがって、IL-1は様々な炎症性及び免疫調節性の疾患並びに症状に関係する。IL-1の全身的又は局所的な過剰が、多くの医学的障害の発生の一因となることが提案されている。この提案に加えて、IL-1アルファ及びIL-1ベータ活性をブロックするIL-1raは、IL-1シグナル伝達によって媒介されると考えられるいくつかの疾患の治療において様々な程度の効力を有することが示されている。
【0006】
IL-1の抑制は、異常若しくは過剰なIL-1発現又はIL-1活性により特徴づけられる様々な障害に苦しむ患者に有益であり得ることが示唆されている。IL-1ra及びICE阻害剤は、IL-1活性に関連する疾患の治療薬として限られた程度の成功しか収めていない。そのような
疾患の効果的な治療の考案は進歩しているが、改善された薬剤及び治療法が必要である。
【0007】
不幸にも、キネレット(Kineret)、イラリス(Ilaris)又はアルカリスト(Arcalyst
)などの既存のIL-1経路阻害剤には、それらの治療薬の使用を妨げる特定の欠点がある。例えば、キネレット(IL-1Ra)は半減期が短く、それゆえ非常に頻繁な治療間隔(毎日)
が必要である。単一のサイトカイン(イラリスなど)を標的とする抗体により、他のIL-1ファミリーサイトカインの不必要なシグナル伝達/活性が発生する。さらに、IL-1ファミ
リーのサイトカインは、炎症性及びIL-1R3非依存性抗炎症シグナル伝達の両方を誘発することが知られており、いずれもサイトカイン又はそれらのアルファ鎖受容体を標的とする場合に干渉される。対照的に、本発明の抗体は、治療間隔の低減、異なるIL-1ファミリーサイトカイン媒介シグナル伝達の同時阻害、及び炎症性シグナル伝達経路のブロックに関する特異性という利点を兼ね備えている。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明は、以下に記載される好ましい特徴を有するIL1R3シグナル伝達経
路のメンバーの制御されない発現に関連する症状を治療するための新規及び改善された方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1-1】配列(一文字コードのアミノ酸) 可変領域(VR)の完全配列: 重鎖:VH完全:配列番号1~34並びに配列番号173及び176 軽鎖:VL完全:配列番号35~68並びに配列番号174及び177 相補性決定領域(CDR): 重鎖:CDRH1:配列番号69~85及び178CDRH2:配列番号86~102及び179CDRH3:配列番号103~119及び180 軽鎖:CDRL1:配列番号120~136及び181CDRL2:配列番号137~153及び182CDRL3:配列番号154~170及び175及び183 定常領域(CR): 軽鎖:CR-L:配列番号171重鎖:CR-H:配列番号172 次の図では、AF676は次のリンク:https//www.rndsystems.com/products/human-il-1-racp-il-1-r3-antibody_af676から購入した市販のポリクローナル抗体調整物である。
【
図1-2】配列(一文字コードのアミノ酸) 可変領域(VR)の完全配列: 重鎖:VH完全:配列番号1~34並びに配列番号173及び176 軽鎖:VL完全:配列番号35~68並びに配列番号174及び177 相補性決定領域(CDR): 重鎖:CDRH1:配列番号69~85及び178CDRH2:配列番号86~102及び179CDRH3:配列番号103~119及び180 軽鎖:CDRL1:配列番号120~136及び181CDRL2:配列番号137~153及び182CDRL3:配列番号154~170及び175及び183 定常領域(CR): 軽鎖:CR-L:配列番号171重鎖:CR-H:配列番号172 次の図では、AF676は次のリンク:https//www.rndsystems.com/products/human-il-1-racp-il-1-r3-antibody_af676から購入した市販のポリクローナル抗体調整物である。
【
図1-3】配列(一文字コードのアミノ酸) 可変領域(VR)の完全配列: 重鎖:VH完全:配列番号1~34並びに配列番号173及び176 軽鎖:VL完全:配列番号35~68並びに配列番号174及び177 相補性決定領域(CDR): 重鎖:CDRH1:配列番号69~85及び178CDRH2:配列番号86~102及び179CDRH3:配列番号103~119及び180 軽鎖:CDRL1:配列番号120~136及び181CDRL2:配列番号137~153及び182CDRL3:配列番号154~170及び175及び183 定常領域(CR): 軽鎖:CR-L:配列番号171重鎖:CR-H:配列番号172 次の図では、AF676は次のリンク:https//www.rndsystems.com/products/human-il-1-racp-il-1-r3-antibody_af676から購入した市販のポリクローナル抗体調整物である。
【
図1-4】配列(一文字コードのアミノ酸) 可変領域(VR)の完全配列: 重鎖:VH完全:配列番号1~34並びに配列番号173及び176 軽鎖:VL完全:配列番号35~68並びに配列番号174及び177 相補性決定領域(CDR): 重鎖:CDRH1:配列番号69~85及び178CDRH2:配列番号86~102及び179CDRH3:配列番号103~119及び180 軽鎖:CDRL1:配列番号120~136及び181CDRL2:配列番号137~153及び182CDRL3:配列番号154~170及び175及び183 定常領域(CR): 軽鎖:CR-L:配列番号171重鎖:CR-H:配列番号172 次の図では、AF676は次のリンク:https//www.rndsystems.com/products/human-il-1-racp-il-1-r3-antibody_af676から購入した市販のポリクローナル抗体調整物である。
【
図1-5】配列(一文字コードのアミノ酸) 可変領域(VR)の完全配列: 重鎖:VH完全:配列番号1~34並びに配列番号173及び176 軽鎖:VL完全:配列番号35~68並びに配列番号174及び177 相補性決定領域(CDR): 重鎖:CDRH1:配列番号69~85及び178CDRH2:配列番号86~102及び179CDRH3:配列番号103~119及び180 軽鎖:CDRL1:配列番号120~136及び181CDRL2:配列番号137~153及び182CDRL3:配列番号154~170及び175及び183 定常領域(CR): 軽鎖:CR-L:配列番号171重鎖:CR-H:配列番号172 次の図では、AF676は次のリンク:https//www.rndsystems.com/products/human-il-1-racp-il-1-r3-antibody_af676から購入した市販のポリクローナル抗体調整物である。
【
図1-6】配列(一文字コードのアミノ酸) 可変領域(VR)の完全配列: 重鎖:VH完全:配列番号1~34並びに配列番号173及び176 軽鎖:VL完全:配列番号35~68並びに配列番号174及び177 相補性決定領域(CDR): 重鎖:CDRH1:配列番号69~85及び178CDRH2:配列番号86~102及び179CDRH3:配列番号103~119及び180 軽鎖:CDRL1:配列番号120~136及び181CDRL2:配列番号137~153及び182CDRL3:配列番号154~170及び175及び183 定常領域(CR): 軽鎖:CR-L:配列番号171重鎖:CR-H:配列番号172 次の図では、AF676は次のリンク:https//www.rndsystems.com/products/human-il-1-racp-il-1-r3-antibody_af676から購入した市販のポリクローナル抗体調整物である。
【
図1-7】配列(一文字コードのアミノ酸) 可変領域(VR)の完全配列: 重鎖:VH完全:配列番号1~34並びに配列番号173及び176 軽鎖:VL完全:配列番号35~68並びに配列番号174及び177 相補性決定領域(CDR): 重鎖:CDRH1:配列番号69~85及び178CDRH2:配列番号86~102及び179CDRH3:配列番号103~119及び180 軽鎖:CDRL1:配列番号120~136及び181CDRL2:配列番号137~153及び182CDRL3:配列番号154~170及び175及び183 定常領域(CR): 軽鎖:CR-L:配列番号171重鎖:CR-H:配列番号172 次の図では、AF676は次のリンク:https//www.rndsystems.com/products/human-il-1-racp-il-1-r3-antibody_af676から購入した市販のポリクローナル抗体調整物である。
【
図1-8】配列(一文字コードのアミノ酸) 可変領域(VR)の完全配列: 重鎖:VH完全:配列番号1~34並びに配列番号173及び176 軽鎖:VL完全:配列番号35~68並びに配列番号174及び177 相補性決定領域(CDR): 重鎖:CDRH1:配列番号69~85及び178CDRH2:配列番号86~102及び179CDRH3:配列番号103~119及び180 軽鎖:CDRL1:配列番号120~136及び181CDRL2:配列番号137~153及び182CDRL3:配列番号154~170及び175及び183 定常領域(CR): 軽鎖:CR-L:配列番号171重鎖:CR-H:配列番号172 次の図では、AF676は次のリンク:https//www.rndsystems.com/products/human-il-1-racp-il-1-r3-antibody_af676から購入した市販のポリクローナル抗体調整物である。
【
図2】ヒトIL-1R3 ELISA 384-マイクロタイタープレートを、IL-1R3のヒト細胞外ドメインを表すヒトIL-1R3タンパク質でコーティングした(0.5mg/ml、少なくとも1時間)。集中的な洗浄ステップとそれに続くブロッキングステップの後、抗体を加え(ウェルあたり12,5μl)及び室温で1時間インキュベートした。非結合抗体は集中的に洗い流した。結合した抗体の量は、マイクロタイタープレートでペルオキシダーゼ標識抗ヒト検出抗体とインキュベートすることにより同定した(室温で1時間)。TMBを添加によりペルオキシダーゼ反応を開始し、450nm/620nmで吸光度を測定した。
【
図3】HEK293レポーターアッセイ HEK293T/17-FR細胞にpGL4.32[luc2P/NF-κB-RE/Hygro]ベクター(Promega)を安定的にトランスフェクトし、384ウェルPDL Costar細胞培養プレートに播種し、その後抗体とともに30分間インキュベートした。次に、細胞をIL-1βで5時間刺激し、その後製造業者のプロトコルにより、Steady-Glo Luciferase アッセイキット(Promega)を使用してNF-kB活性を測定した。
【
図4】A549安定発現株を使用したNFκBルシフェラーゼレポーターアッセイ A549-NFkB-RE-Luc安定トランスフェクト細胞(Signosisから購入)を3日間培養した(1,7E+04 細胞/cm
3)。384ウェルの低フランジ白色平底ポリスチレンTC処理マイクロタイタープレート(Corning)にウェルあたり4x10
4個の細胞を充填した。10時間の培養期間の後、細胞を抗体とともに1時間インキュベートし、その後細胞を10μlのIL-1βでさらに5時間刺激した。NFkB調節は、Steady-Glo(商標) ルシフェラーゼアッセイシステム(Promega)によって測定され、非刺激細胞に関連する各ウェルの相対発光単位を決定する。
【
図5】細胞結合分析:IL-1R3発現細胞への結合 ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体は、フローサイトメトリーを使用して、異なるIL-1R3受容体密度の細胞株への結合についてテストした。ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体は、低及び高IL-1R3発現細胞株に結合する。抗体はマウスNIH-3T3細胞には結合しない。実験は、実施例4に記載の方法により実施した。
【
図6】細胞結合分析:ヒトIL-1R3高発現細胞株SK-MEL-30への細胞結合 ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体のEC50細胞結合値は、フローサイトメトリーを使用して高IL-1R3発現細胞株SK-MEL-30に結合することにより決定された。ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体MAB-16-0030及びMAB-16-0149は、それぞれ307及び306 ng/mlの細胞結合を示す。実験は、実施例4に記載の方法により実施した。
【
図7】ヒト-IL-1R3生化学的ELISA 組換えヒトIL-1R3タンパク質へのヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体の結合を生化学的ELISAでテストした。例示された抗体は、それぞれ16,3ng/ml及び29,1ng/mlのEC50結合値を示す。実験は、実施例5に記載の方法により実施した。
【
図8】A549-NFkB-RE-Luc細胞におけるNfKBシグナル伝達を媒介したヒトIL-1a及びIL-1bの阻害 IL-1a及びIL-1bの機能的中和は、それぞれ0.1ng/mlのIL-1a及びIL-1bで刺激したA549-NFkB-RE-Luc細胞を用いた細胞ベースの遺伝子レポーターアッセイでテストした。ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体は、ヤギ抗ヒトIL1-R3ポリクローナル抗体AF676(R&D Systems)よりも優れたEC50値を示す。実験は、実施例6に記載の方法によって実施した。
【
図9】IL-1α及びIL-1β機能的中和アッセイ - A-549細胞によるヒトIL-1a及びIL-1b媒介IL-6放出の阻害 ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体によるIL-6のIL-1a及びIL-1b媒介細胞放出の中和は、A-549細胞を使用してテストされた。EC50値は、ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体がヤギ抗ヒトIL1-R3ポリクローナル抗体AF676(R&D Systems)よりも優れていることを示す。実験は、実施例7に記載の方法によって実施した。
【
図10】IL-33機能的中和アッセイ - HEK-Blue-IL33
TM細胞でのヒトIL-33を媒介したNfkBシグナル伝達の阻害 ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体によるIL-33媒介細胞シグナル伝達の中和を、IL-33刺激遺伝子レポーターHEK-Blue-IL33
TM細胞(InvivoGen)を使用して、テストした。EC50値は、ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体がヤギ抗ヒトIL1-R3ポリクローナル抗体AF676(R&D Systems)よりも優れていることを示す。実験は、実施例8に記載の方法により実施した。
【
図11】IL-36機能的中和アッセイ - HEK-293/17-IF細胞におけるヒトIL-36を媒介したNfkBシグナル伝達の阻害 ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体によるIL-36媒介細胞シグナル伝達の中和を、IL-36g刺激遺伝子レポーターHEK-293/17-IF細胞を使用してテストされた。典型的なヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体は、ヤギ抗ヒトIL1-R3ポリクローナル抗体AF676(R&D Systems)よりも優れたEC50値を示す。実験は、実施例9に記載の方法により実施した。
【
図12】IL-1a、IL-33、及びIL-36aを媒介した細胞性サイトカイン放出の中和 IL-1a、IL-33、及びIL-36aを媒介した細胞性サイトカイン放出の中和は、特定のIL-1a、IL-33、及びIL-36a依存性細胞システムを使用してテストされた。本発明による代表的なヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体(MAB-16-0030)によるサイトカイン放出の阻害をテストし、及びIL-1Raと比較した。本発明による抗体は3つすべての刺激により媒介されるサイトカイン放出を阻害することができたが、IL-1RaはIL-1a媒介サイトカイン放出のみに影響した。実験は、実施例10に記載の方法により実施した。
【
図13-1】ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体で処理した非刺激PBMCの生存率とIL-6放出 免疫細胞への抗体の結合は、細胞の枯渇及び有害な影響を、例えばアポトーシスシグナル伝達経路の直接誘導、過剰なサイトカイン放出の刺激、又は抗体依存性細胞傷害(ADCC)によって、もたらし得る。ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体がPBMCの生存率に直接影響することを除外するために、3つのドナーのPBMCの生存率及びIL-6放出を、本発明による代表的なヒト化抗IL-1R3 IgG1- LALA抗体(MAB-16-0030)の異なる濃度で、1、3及び5日インキュベート後、調査した。生存率もIL-6放出も影響を受けなかった。これらの結果は、ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体が、状況に応じた細胞の枯渇及び細胞に有害な影響の誘導なしに、免疫細胞のIL-1R3機能をブロックすることを支持する。実験は、実施例11に記載の方法により実施した。
【
図13-2】ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体で処理した非刺激PBMCの生存率とIL-6放出 免疫細胞への抗体の結合は、細胞の枯渇及び有害な影響を、例えばアポトーシスシグナル伝達経路の直接誘導、過剰なサイトカイン放出の刺激、又は抗体依存性細胞傷害(ADCC)によって、もたらし得る。ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体がPBMCの生存率に直接影響することを除外するために、3つのドナーのPBMCの生存率及びIL-6放出を、本発明による代表的なヒト化抗IL-1R3 IgG1- LALA抗体(MAB-16-0030)の異なる濃度で、1、3及び5日インキュベート後、調査した。生存率もIL-6放出も影響を受けなかった。これらの結果は、ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体が、状況に応じた細胞の枯渇及び細胞に有害な影響の誘導なしに、免疫細胞のIL-1R3機能をブロックすることを支持する。実験は、実施例11に記載の方法により実施した。
【
図14-1】異なる刺激で活性化されたPBMCの機能的ブロック ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体が特定又は複合的な刺激で刺激されたPBMCの活性を阻害するかどうかをテストするために、10体のドナーのPBMCをLPS、熱不活性化カンジダアルビカンス、IL-12/IL-33又は抗CD3/CD28抗体で刺激した。本発明の代表的なヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体(MAB-16-0030)は、テストしたすべての刺激によって媒介されるサイトカイン放出を阻害することができた。実験は、実施例12に記載の方法により実施した。
【
図14-2】異なる刺激で活性化されたPBMCの機能的ブロック ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体が特定又は複合的な刺激で刺激されたPBMCの活性を阻害するかどうかをテストするために、10体のドナーのPBMCをLPS、熱不活性化カンジダアルビカンス、IL-12/IL-33又は抗CD3/CD28抗体で刺激した。本発明の代表的なヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体(MAB-16-0030)は、テストしたすべての刺激によって媒介されるサイトカイン放出を阻害することができた。実験は、実施例12に記載の方法により実施した。
【
図15】カンジダアルビカンスで活性化された全血中の免疫細胞の機能的ブロック ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体が全血中の免疫細胞の活性化を阻害するかどうかをテストするために、8体のドナーの全血を熱不活化カンジダアルビカンスで刺激した。本発明による代表的なヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体(MAB-16-0030)は、カンジダ誘発IL-6サイトカイン放出を阻害することができた。実験は、実施例13に記載の方法により実施した。
【
図16-1】混合リンパ球反応(MLR)におけるサイトカイン放出のブロック ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体が多様なサイトカインの放出をブロックする能力を、健康で一致しない(unmatched)ドナーのPBMCを使用した混合リンパ球反応(MLR)でテストした。本発明による代表的なヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体(MAB-16-0030)は、IFNg、IL-6、TNF-a、IL-13、IL-17及びIL-10の放出を阻害することができた。実験は、実施例14に記載の方法により実施した。
【
図16-2】混合リンパ球反応(MLR)におけるサイトカイン放出のブロック ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体が多様なサイトカインの放出をブロックする能力を、健康で一致しない(unmatched)ドナーのPBMCを使用した混合リンパ球反応(MLR)でテストした。本発明による代表的なヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体(MAB-16-0030)は、IFNg、IL-6、TNF-a、IL-13、IL-17及びIL-10の放出を阻害することができた。実験は、実施例14に記載の方法により実施した。
【
図16-3】混合リンパ球反応(MLR)におけるサイトカイン放出のブロック ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体が多様なサイトカインの放出をブロックする能力を、健康で一致しない(unmatched)ドナーのPBMCを使用した混合リンパ球反応(MLR)でテストした。本発明による代表的なヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体(MAB-16-0030)は、IFNg、IL-6、TNF-a、IL-13、IL-17及びIL-10の放出を阻害することができた。実験は、実施例14に記載の方法により実施した。
【
図17】ネズミ科(murine)の細胞におけるIL-1b媒介シグナル伝達の中和 本発明による抗マウスIL-1R3抗体によるIL-1bの機能的中和を、NFkBルシフェラーゼ遺伝子レポーターアッセイに基づくマウスNIH-3T3細胞を使用してテストした。本発明による代表的な抗体(MAB-16-0531)は、805ng/mlのEC50でIL-1b媒介NFkBシグナル伝達の用量依存性阻害を示した。実験は、実施例15に記載の方法により実施した。
【
図18】ネズミ科(murine)の細胞からのIL-1b媒介IL-6放出の中和 本発明による抗マウスIL-1R3抗体によるマウス細胞からのIL-6放出の阻害を、IL-1b刺激NIH-3T3細胞でテストした。本発明による代表的な抗体(MAB-16-0531)は、1560ng/mlのEC50でIL-6放出の用量依存性阻害を示した。実験は、実施例16に記載の方法により実施した。
【
図19】尿酸一ナトリウム結晶(MSU)誘発マウス腹膜炎モデル 痛風患者に抗IL-R3療法を適用する理論的根拠をテストするために、尿酸一ナトリウム結晶(MSU)誘発マウス腹膜炎モデルが使用された。MSUの投与は、腹膜腔に強い炎症反応を産生し、いくつかの炎症細胞(単球及び好中球など)の流入を誘導し、急性痛風反応の古典的な炎症プロファイルを模倣する。本発明による代表的な抗IL1R3抗体(MAB-16-0531)又はIL-1Raを、腹膜に3mg MSUを注射する1時間前にIP投与した。腹膜腔内の細胞の測定は、抗IL-1R3抗体治療がリンパ球、単球及び顆粒球のMSU誘導浸潤を有意に阻害することを示している。実験は、実施例17に記載の方法により実施した。
【
図20】MSU腹膜炎における好中球の活性及びサイトカイン産生 MSU腹膜炎における炎症の局所及び全身マーカーを含む好中球活性の衰弱。(a)IP液中の好中球プロテアーゼエラスターゼのレベル。(b)IP液からの細胞における細胞内エラスターゼの合計レベル。(c)IP液からの細胞における細胞内MPOの合計レベル。(d)局所的(IP液体)及び全身的なサイト-及びケモカイン濃度。WB; 溶解した全血、標準(norm.);脾臓中のタンパク質のmgあたりの標準化。MSU;ビヒクル+MSU。a-mIL1R3;a-mIL1R3+MSU。IL 1Ra;IL 1Ra+MSU。MSU刺激群と比較した阻害剤処理群。
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、
****p<0.0001(スチューデントt検定、平均+SEM、除く:(b)、G CSF、KC(WB)及びKC(脾臓);マン・ホイットニーU検定、IQRの中央値)。
【
図21-1】OVAアレルギー性喘息のin vivoモデル a-mIL1R3抗体は、in vivoでのOVA誘発細胞流入を減少させる。(a)BAL液からの総WBC。(b)フロー規定細胞は、(a)とは異なる。(c)H&E及びPAS染色肺組織を使用したグループ平均(WBC)の太いドットマークされたマウスの組織構造。OVA刺激+a-mIL1R3(MAB-16-0531)処理マウス及びOVA単独との比較。
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001(スチューデントt検定)。平均+SEM。
【
図21-2】OVAアレルギー性喘息のin vivoモデル a-mIL1R3抗体は、in vivoでのOVA誘発細胞流入を減少させる。(a)BAL液からの総WBC。(b)フロー規定細胞は、(a)とは異なる。(c)H&E及びPAS染色肺組織を使用したグループ平均(WBC)の太いドットマークされたマウスの組織構造。OVA刺激+a-mIL1R3(MAB-16-0531)処理マウス及びOVA単独との比較。
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001(スチューデントt検定)。平均+SEM。
【
図22-1】in vivoモデルのイミキモド乾癬 (a)皮膚におけるIL36αmRNAの誘導。(b)IMQ及びコントロールクリームの間で適用された耳の厚さの倍率変化。(c)研究終了時にn=6のブラインドによる視覚スコアリング(0;影響なし-4;最大の影響(紅斑及びスケーリング))。(d)タンパク質のmgあたりで標準化された皮膚のMPO濃度。(e)(c)及び(d)からのデータ間のスピアマン相関。(e)全血中の顆粒球濃度。阻害剤処理及びIMQ刺激群間の比較。
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、
****p<0.0001、((b、f)マン・ホイットニーU検定(d、e)スチューデント検定、平均±SEM(d)IQRの中央値を除く)。
【
図22-2】in vivoモデルのイミキモド乾癬 (a)皮膚におけるIL36αmRNAの誘導。(b)IMQ及びコントロールクリームの間で適用された耳の厚さの倍率変化。(c)研究終了時にn=6のブラインドによる視覚スコアリング(0;影響なし-4;最大の影響(紅斑及びスケーリング))。(d)タンパク質のmgあたりで標準化された皮膚のMPO濃度。(e)(c)及び(d)からのデータ間のスピアマン相関。(e)全血中の顆粒球濃度。阻害剤処理及びIMQ刺激群間の比較。
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、
****p<0.0001、((b、f)マン・ホイットニーU検定(d、e)スチューデント検定、平均±SEM(d)IQRの中央値を除く)。
【
図23-1】in vivoモデルのイミキモド乾癬 イミキモド処理マウスの皮膚生検におけるIL36α/β/γ、IL17F及びTNFa mRNAレベル
【
図23-2】in vivoモデルのイミキモド乾癬 イミキモド処理マウスの皮膚生検におけるIL36α/β/γ、IL17F及びTNFa mRNAレベル
【
図24】抗IL1R3 IgG1及びIgG1-LALA抗体のエフェクター細胞媒介機能 IgG1-LALA又はIgG1 Fc部分のいずれかを含む、抗IL1R3抗体MAB-16-0030を、エフェクター細胞におけるFc受容体媒介NF-kBシグナル伝達の活性についてテストした。増加する濃度のIgG1抗体のhIL1R3発現SK-MEL-30細胞への結合は、IgG1-LALA抗体とは対照的に、Jurkat遺伝子レポーターエフェクター細胞におけるFc受容体媒介シグナル伝達を誘発する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、IL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36、IL1RA及び/又はIL1R3、同様にそのバリア
ントなどのIL1R3シグナル伝達経路のメンバーの制御されない又は異常な発現によって特
徴づけられる医学的症状及び/又は障害の治療のための方法に関する。
【0011】
より具体的には、本発明は、対象におけるIL1R3媒介の炎症の症状及び/又は障害の治療に使用するための抗IL1R3抗体に関する。
【0012】
そのような症状及び障害には、炎症疾患、免疫障害、線維性障害、好酸球性障害、感染症、疼痛、中枢神経系障害、眼科障害、遺伝的全身性炎症疾患、並びに全身性及び局所性の炎症疾患及びがん関連の慢性炎症が含まれるが、これらに限定されない。
【0013】
定義
本発明による用語「ウサギ」は、分類学上ウサギ目(taxonomic order)のメンバーの
動物を意味し、それはファミリー(野ウサギ及びウサギ)並びにナキウサギ科(Ochotonidae)(ナキウサギ)、好ましくはアナウサギ属(Oryctolagus)を含む。
【0014】
用語「抗体」は、本発明による特性を示す限り、全抗体及び抗体断片を含むがそれに限定されない様々な形態の抗体構造を包含する。
【0015】
本発明による用語「ウサギモノクローナル抗体」は、ウサギを免疫することによって産生され、前記ウサギの抗原産生細胞から単離されるモノクローナル抗体、並びに本発明による特徴的な特性が保持される限り、さらに修飾されるような抗体、好ましくはヒト化抗体、キメラ抗体、その断片、又はさらに遺伝子操作及び組換え産生された抗体を意味する。好ましくは、抗体は、前記ウサギのB細胞又はウサギハイブリドーマ細胞由来である。
【0016】
本発明による用語「抗体産生細胞」は、抗体を産生するウサギB細胞、好ましくはB細胞又はウサギハイブリドーマ細胞を意味する。
【0017】
「天然の抗体」は、2つの同一の軽鎖(L)及び2つの同一の重鎖(H)で構成される通常ヘテロ四量体の糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有結合性ジスルフィド結合によって重鎖に連結され、一方でジスルフィド連結の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の間で変化する。各重鎖及び軽鎖は、規則正しく間隔を置いて配置されている鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一方の末端に可変ドメイン(VH)、続いていくつかの定常ドメインを有する。各軽鎖は、一方の末端に可変ドメイン(VL)及び他方の末端に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列され、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列される。特定のアミノ酸残基が、軽鎖と重鎖可変ドメインとの間に接点を形成すると考えられている。
【0018】
ペプチド又はポリペプチド配列に関して「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、必要に応じて最大のパーセント配列同一性を達成するためにギャップを導入した後に、配列同一性の一部としていかなる保存的置換も考慮しない、特定のペプチ
ド又はポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージと定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定するための整列化は、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの一般公開されているコンピューターソフトウェアを使用して、当業者の範囲内にある様々な方法で達成され得る。
【0019】
用語「VL(又はVH)領域」は、VL(又はVH)ドメインと同じ意味を持つ。
【0020】
本発明による用語「Fc受容体」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合するヒト受容体を指
す。FcRは、IgG抗体に結合し、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスの受容体の対立
遺伝子バリアント並びに選択的スプライシング形態を含めた受容体を含む。FcγRII受容
体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害性受容体」)を含み、その細胞質ドメインにおいて主に異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害性受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの阻害性モチーフ(ITIM)を含有する(M.in Daeron, Annu, Rev. Immunol.15:203~234(1997)の総説を参照のこと)。FcRIIIA(CD16a)は、ADCCを媒介する。FcRについては、Ravetch及びKinet、Annu.Rev.Immunol 9:457~92(1991);Capelら、Immunomethods 4:25~34(1994);及びde Haasら、J.Lab.CHn.Med.126:330~41(1995)に概説されている
。これら及び他の全てのFcRは、本明細書において用語「FcR」に包含される。この用語は、新生児受容体、FcRnも含み、そしてそれは、胎児への母体IgGの移動に関与し(Guyerら、J.Immunol.117:587(1976)及びKimら、J.Immunol.24:249(1994))、より遅い異化を媒介し、結果としてより長い半減期を媒介する。
【0021】
本明細書では用語「抗体エフェクター機能」又は「エフェクター機能」とは、IgGのFc
エフェクタードメイン(例えば、免疫グロブリンのFc領域)によって付与される機能を指す。そのような機能は、例えば、食細胞若しくは溶解活性を持つ免疫細胞のFc受容体へのFcエフェクタードメインの結合又は補体系の成分へのFcエフェクタードメインの結合によって生じ得る。典型的なエフェクター機能は、ADCC、ADCP及びCDCである。
【0022】
「抗体断片」とは、完全な抗体の一部を含み、完全な抗体が結合する抗原に結合する完全な抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、それだけには限らないがFv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子(例えばscFv);及び抗体断片から形成される多重特異性抗体がある。
【0023】
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」とは、競合アッセイにおいてその抗原への参照抗体の結合を50%以上ブロックする、逆に言えば、競合アッセイにおいて参照抗体が、その抗原への抗体の結合を50%以上ブロックする抗体を指す。例示的な競合アッセイが、本明細書に提供される。
【0024】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」及び「ADCC」とは、FcRを発現する非特異的細胞傷
害性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)が、標的細胞に結合している抗体を認識し、その後標的細胞の溶解を引き起こす細胞に媒介される反応を指す。ADCCを媒介するための初代細胞、NK細胞は、FcγRIIIだけを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。
【0025】
用語「抗体依存性細胞食作用」及び「ADCP」とは、抗体被覆細胞が、免疫グロブリンFc領域に結合する食免疫細胞(例えば、マクロファージ、好中球及び樹状細胞)によって全体又は一部のいずれかが内部移行される過程を指す。
【0026】
「C1q」は、免疫グロブリンのFc領域に対する結合部位を含むポリペプチドである。C1qは、2つのセリンプロテアーゼであるC1r及びC1sと一緒に補体依存性細胞傷害(CDC)経路の第1成分である複合体C1を形成する。ヒトC1qは、例えばQuidel、San Diego、Califから商業的に購入することができる。
【0027】
抗体の「クラス」とは、重鎖によって保有される定常ドメイン又は定常領域の型を指す。5つの主要な抗体のクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMが存在し、これらのうちいくつ
かは、サブクラス(アイソタイプ)例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2にさらに分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれa、δ、ε、γ及びμと称される。
【0028】
薬剤、例えば、医薬製剤の「有効量」とは、必要な投薬量及び期間で、所望の治療的又は予防的結果を達成するために有効な量を指す。
【0029】
用語「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端
領域を定義するために本明細書において使用される。用語は、天然配列のFc領域及びバリアントFc領域を含む。本明細書において特に明記しない限り、Fc領域又は定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991)に記載のEUインデックスとも称されるEU付番方式にしたがう。
【0030】
「バリアントFc領域」は、本明細書において定義した「アミノ酸修飾」の少なくとも1
つによって「天然」又は「野生型」配列のFc領域と異なるアミノ酸配列を含む。本明細書では用語「Fcバリアント」は、Fcドメインに修飾を含むポリペプチドを指す。本発明のFcバリアントは、それらを構成するアミノ酸修飾により定義される。したがって、例えば、P329Gは、親Fcポリペプチドと比較して329位にグリシンによるプロリンの置換があるFcバリアントであり、番号付けはEUインデックスにしたがう。野生型アミノ酸の同一性が、明らかでない可能性があり、その場合上述したバリアントは、P329Gとして称される。本発
明で述べられる全ての位置について、番号付けは、EUインデックスにしたがう。EUインデックス又はKabat若しくはEU番号付けスキームとしてのEUインデックスとは、EU抗体の番
号付けを指す(Edelmanら、Proc Natl Acad Sci USA 63(1969)78~85、参照により全体を
本明細書に組み込む)。修飾は、付加、欠失又は置換であり得る。置換は、天然に存在す
るアミノ酸及び天然に存在しないアミノ酸を含み得る。バリアントは、非天然のアミノ酸を含み得る。例には、米国特許第6,586,207号;WO98/48032;WO03/073238;US2004/0214988(Al)号;WO05/35727 A2;WO05/74524 A2;Chin,J.W.ら、Journal of the American Chemical Society 124(2002)9026~9027;Chin,J.W.、及びSchultz,P.G.、ChemBioChem 11(2002)1135~1137;Chin,J.W.ら、PICAS United States of America 99(2002)11020~11024;及びWang,L.、及びSchultz,P.G.、Chem.(2002)1~10があり、全体を参照により組み込む。
【0031】
用語「Fc領域含有ポリペプチド」とは、Fc領域を含む抗体又はイムノアドヘシン(下の定義を参照のこと)などのポリペプチドを指す。
【0032】
用語「Fc受容体」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体について記述するた
めに使用される。IgG抗体(ガンマ受容体)に結合するFcRは、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスの受容体の対立遺伝子バリアント並びに選択的スプライシング形態を含めた
受容体を含む。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害性受容体」)を含み、その細胞質ドメインにおいて主に異なる類似のアミノ酸配列を有する。
活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害性受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの阻害性モチーフ(ITIM)を含有する(Daeron,M.Annu.Rev.Immunol.15(1997)203
~234の総説を参照のこと)。FcRについては、Ravetch及びKinet、Annu.Rev.Immunol 9(1991)457~492;Capelら、Immunomethods 4(1994)25~34;及びde Haasら、J.Lab.Clin.Med.126(1995)330~41に概説されている。将来に同定されるものを含めて、他のFcRは、本明細書において用語「FcR」に包含される。用語は、胎児への母体IgGの移動に関与する新生児受容体、FcRnも含む(Guyerら、J.Immunol.117(1976)587及びKimら、J.Immunol.24(1994)249)。
【0033】
本明細書では、「IgG Fcリガンド」とは、IgG抗体のFc領域に結合して、Fc/Fcリガンド複合体を形成するあらゆる生物由来の分子、好ましくはポリペプチドを意味する。Fcリガンドには、それだけには限らないが、FcγR、FcγR、FcγR、FcRn、Clq、C3、マンナン結合レクチン、マンノース受容体、ブドウ球菌プロテインA、連鎖球菌プロテインG、及びウイルスFcγRがある。Fcリガンドは、FcγRに相同なFc受容体のファミリーであるFc受容体ホモログ(FcRH)も含む(Davisら、Immunological Reviews 190(2002)123~136、全体を参
照により組み込む)。Fcリガンドは、Fcに結合する未発見の分子を含み得る。特定のIgG Fcリガンドは、FcRn及びFcガンマ受容体である。本明細書では、「Fcリガンド」とは、抗
体のFc領域に結合して、Fc/Fcリガンド複合体を形成するあらゆる生物由来の分子、好ま
しくはポリペプチドを意味する。
【0034】
本明細書では、「Fcガンマ受容体」、「FcγR」又は「FcガンマR」とは、IgG抗体Fc領
域に結合し、FcγR遺伝子によってコードされているタンパク質ファミリーの任意のメン
バーを意味する。ヒトにおいてこのファミリーは、アイソフォームFcγRIA、FcγRIB及びFcγRICを含めたFcγRI(CD64); アイソフォームFcγRIIA(アロタイプH131及びR131を含む)、FcγRIIB(FcγRIIB-1及びFcγRIIB-2を含む)、及びFcγRIIcを含めたFcγRII(CD32);
並びにアイソフォームFcγRIIIA(アロタイプVI58及びF158を含む)及びFcγRIIIb(アロタ
イプFcγRIIB-NA1及びFcγRIIB-NA2を含む)を含めたFcγRIII(CD16)(Jefferisら、Immunol Lett 82(2002)57~65、全体を参照により組み込む)、加えて未発見のあらゆるヒトFcγR若しくはFcγRアイソフォーム又はアロタイプを含むが、これに限定されない。FcγRは
、ヒト、マウス、ラット、ウサギ及びサルを含むがこれに限定されない任意の生物由来であり得る。マウスFcγRは、それだけには限らないが、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)及びFcγRIII-2(CD16-2)、並びに未発見のあらゆるマウスFcγR若しくはFc
γRアイソフォーム又はアロタイプを含む。
【0035】
本明細書では、「FcRn」又は「新生児Fc受容体」とは、IgG抗体Fc領域に結合し、FcRn
遺伝子によって少なくとも一部コードされているタンパク質を意味する。FcRnは、ヒト、マウス、ラット、ウサギ及びサルを含むがこれに限定されない任意の生物由来であり得る。当技術分野で公知のように、機能的FcRnタンパク質は、しばしば重鎖及び軽鎖と称される2つのポリペプチドを含む。軽鎖はベータ-2-ミクログロブリンであり、重鎖はFcRn遺伝子によってコードされる。特に明記しない限り本明細書において、FcRn又はFcRnタンパク質とは、ベータ-2-ミクログロブリンとFcRn重鎖の複合体を指す。
【0036】
「免疫複合体」は、化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素、別の抗体又は放射性同位元素など、1以上の細胞傷害性薬剤に結合した抗体を意味する。
【0037】
「抗体断片」は、完全長抗体の一部、好ましくはその可変領域又は少なくともその抗原結合部位を含む。抗体断片の例には、ダイアボディ、Fab断片及び一本鎖抗体分子がある
。scFv抗体は、例えば、Huston,J.S.、Methods in Enzymol.203(1991)46~88 に記述されている。
【0038】
本明細書では用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」とは、単一のアミノ酸組成物の抗体分子の調製物を指す。
【0039】
用語「ヒト化抗体」又は「抗体のヒト化バージョン」は、抗体工学の結果として重鎖及び軽鎖の両方がヒト化されている抗体も指す。ヒト化された鎖は典型的には、V領域のア
ミノ酸配列が変更された鎖であり、全体として分析すると、起源種の生殖系列配列よりもヒト生殖系列配列に相同性がより近い。ヒト化の評価は、方法論それ自体ではなく、結果のアミノ酸配列に基づいている。
【0040】
本明細書では用語「標的に対して特異的に結合する、又は抗標的抗体」とは、ELISAに
よって測定されるそれぞれの抗原(標的)への抗体の結合を指し、前記ELISAは、固体支
持体にそれぞれの抗原をコーティングすること、それぞれの抗原又はタンパク質と免疫複合体を形成できる条件下で前記抗体を添加すること、本発明による抗体に結合する二次抗体及びペルオキシダーゼに媒介される発色を使用して光学密度値(OD)を測定することにより前記免疫複合体を検出することとを好ましくは含む。
【0041】
本発明による用語「抗原」とは、免疫化に使用される抗原又はそのタンパク質配列の一部として前記抗原を含むタンパク質のことを指す。例えば、免疫化の場合、タンパク質の細胞外ドメインの断片(例えば最初の20アミノ酸)を使用することができ、検出/アッセイなどの場合、タンパク質又は完全長タンパク質の細胞外ドメインを使用することができる。
【0042】
本明細書において用語「特異的に結合する」又は「特異的に認識される」は、抗体が、抗原にかなりの親和性を呈し、好ましくは、有意な交差反応性を呈しないことを意味する。
【0043】
「かなりの(appreciable)」結合親和性には、少なくとも10-7M、具体的には少なくとも10-8M、より具体的には少なくとも10-9M、又はさらに具体的には少なくとも10-10Mの親和性での結合が含まれる。
【0044】
「有意な交差反応性を呈しない」抗体は、望ましくない他のタンパク質に感知できるほど結合することがない抗体である。本発明によるエピトープに特異的な抗体は、例えば、IL-1R3上の他のエピトープと有意に交差反応することがない。特異的結合は、そのような結合を決定するための当該技術分野で認識されている任意の手段、例えば競合結合アッセイ(例えばELISA)により決定することができる。
【0045】
本明細書では全てのタンパク質用語は、ヒトタンパク質を指す。別の種由来のタンパク質を意味する場合、これは明確に言及される。
【0046】
本明細書では用語「IL-1アルファ」とは、ヒトIL-1を指す(UniProtKB P01583)。本明細書では用語「IL-1ベータ」とは、ヒトIL-1ベータを指す(UniProtKB P01584)。IL-1は、IL-2放出、B細胞成熟及び増殖並びに線維芽細胞増殖因子活性を誘導することによって胸腺
細胞増殖を刺激する。IL-1タンパク質は、炎症応答に関係し、内因性発熱物質として同定されている(UniProtKB)。
【0047】
本明細書では用語「IL-33」とは、ヒトIL-33(UniProtKB O95760)、IL1RL1/ST2受容体に結合し、それを通して、標的細胞においてNFカッパB及びMAPKシグナル伝達経路を次々
に活性化するシグナル伝達するサイトカインのことを指す(UniProtKB)。
【0048】
本明細書では用語「IL-36」とは、ヒトIL-36アルファ(UniProtKB Q9UHA7、IL-36ベー
タ(UniProtKB Q9NZH7)及び/又はIL-36ガンマ(UniProtKB Q9NZH8)を指す。IL-36は、IL1RL2/IL-36R受容体に結合し、それを通して、炎症誘発性応答に関係する標的細胞にお
いてNFカッパB及びMAPKシグナル伝達経路を次々に活性化するシグナル伝達するサイトカ
インである。IL-36は、ケラチノサイト、樹状細胞並びに間接的にT細胞に作用することによって皮膚炎症応答に関係して、組織浸潤、細胞成熟及び細胞増殖を駆動すると思われる(UniProtKB)。
【0049】
本明細書では用語「NFkB」とは、ヒト核因子NFカッパBのことを指し、それは、p105サ
ブユニット(P19838)及びp100サブユニット(Q00653)からなる。
【0050】
「NFkBの阻害」は、ヒト細胞においてNFkB依存的ルシフェラーゼ遺伝子発現の阻害として本発明によって測定される。そのような方法は、例えばWindheim M.ら、Mol.Cell.Biol.28(2008)1783~1791;Huang J.らPNAS USA 94(1997)12829~12832;Xiaoxia L.ら、Mol.Cell、Biol.19(1999)4643~4652に記述されている。本明細書においてネズミ科(murine)のNFkBを意味する場合、そのことは明確に言及される。
【0051】
本明細書では「本発明による抗体の可変領域(又はドメイン)」(軽鎖の可変領域(VL)、重鎖の可変領域(VH))は、抗体が抗原に結合するのに直接関係する軽鎖及び重鎖領域の対の各々を意味する。可変軽鎖及び重鎖領域は同じ全体構造を有し、各領域は、配列が広く保存され、3つの相補性決定領域、CDRによって接続されている4つのフレームワー
ク(FR)領域を含む。本発明による抗体は、VH領域及びVL領域又はそれらの部分を含み、それらは、両方合わせてそれぞれの抗原への特異的結合に十分である。
【0052】
用語「抗体の抗原結合部分」は、本明細書で使用される場合、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。抗体の抗原結合部分は、好ましくは「相補性決定領域」又は「CDR」由来のアミノ酸残基を含む。CDR配列が定義され、及びKabatら, Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版 Public Health Service, National Institutes of
Health, Bethesda, Md. (1991).に従って、それらの残基に番号が付けられる。この番号付けシステムを使用し、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変領域のFR又はCDRの短縮又は
挿入に対応するより少ない又は付加的なアミノ酸を含み得る。残基のカバット番号付けは、「標準」カバット番号付けされた配列を伴う抗体の配列の相同な領域でのアラインメントにより、特定抗体について決定され得る。
【0053】
本明細書では語句「非経口投与」及び「非経口的に投与される」は、腸内及び局所投与以外の投与の様式を意味し、通常注射により、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、真皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊椎内、硬膜外及び胸骨内注射並びに注入を含むが、これに限定されない。
【0054】
本明細書で使用される用語「がん」は、例えば、肺がん、非小細胞肺(NSCL)がん、細気管支肺胞上皮がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部のがん、皮膚又は眼内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門部がん、胃がん(stomach cancer)、胃がん(gastric cancer)、結腸がん、乳がん、子宮がん、卵管がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膣がん、外陰がん、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部肉腫組織、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、膀胱がん、腎臓又は尿管のがん、腎細胞がん、腎盂がん、中皮腫、肝細胞がん、胆管がん、中枢神経系(CNS)の腫瘍、脊髄軸腫瘍、脳幹グリオーマ、多形性膠芽腫、星状細胞腫、神経鞘腫、上
衣腫、髄芽腫、髄膜腫、扁平上皮がん、下垂体腺腫、リンパ腫、リンパ球性白血病、上記がんの任意の難治性バージョンを含み、又は上記がんの1以上の組み合わせであり得る。
【0055】
発明の詳細な説明
本願の序論で概説したように、IL1R3経路のメンバーの制御されていない発現を介して
媒介する炎症の症状を治療する適切な方法を提供するためにはいくつかの困難がある。本発明は、この必要性に応えており、及び免疫障害、線維性障害、好酸球性障害、感染症、
疼痛、中枢神経系障害、眼科障害、遺伝的全身性炎症疾患、並びに全身性及び局所性の炎症疾患を含む、炎症症状及び/又は障害を治療、阻害、又は改善する方法を提供する。
【0056】
本発明は、アンタゴニストIL1R3抗体の治療的有効量を対象に投与することを含む方法
であり、それを必要とする対象の炎症症状及び/又は障害を治療、阻害又は改善する方法
に関する。
【0057】
特に、本発明は、対象のIL1R3媒介の炎症症状及び/又は障害の治療に使用するための抗IL1R3抗体を包含する。
そのような炎症症状及び/又は障害は、炎症症状、免疫障害、線維性障害、好酸球性障
害、感染症、疼痛、中枢神経系障害、眼科障害、遺伝的全身性炎症疾患並びに全身性及び局所性の炎症疾患からなる群から選択され得る。
【0058】
本発明の一態様では、治療される炎症性障害は、IL-1依存性疾患である。この疾患は、シュニッツラー症候群、ベーチェット病、続発性アミロイドーシス、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、特発性再発性心膜炎、全身性発症若年性特発性関節炎、成人発症スティル病、マクロファージ活性化症候群、スウィート症候群/好中球性皮膚症、好中球性脂肪織
炎、エルドハイム・チェスター/組織球増殖症、SAPHO、PFAPA、多中心性キャッスルマン
病、ジェスナー・カノフ病、原発性シェーグレン疲労症候群、川崎病、慢性肉芽腫性疾患における大腸炎、汗腺膿瘍、自己免疫性内耳疾患、重大な外傷性脳損傷)、又は家族性地中海熱(FMF)、CAPS、TRAPSa、HIDS、PAPA、PASH、DIRA、ブラウ症候群/肉芽腫性関節炎、メバロン酸キナーゼ欠乏症、マジェード症候群、NLRP12自己炎症性症候群などの遺伝的全身性炎症の疾患、などの全身性及び局所性の炎症疾患であり得る。
【0059】
本発明の好ましい態様では、炎症症状は、COPD、炎症性皮膚疾患、乾癬、汎発性膿疱性乾癬(GPP)、炎症性腸疾患(IBD)、喘息、アトピー性皮膚炎、特発性肺線維症、腹膜炎、関節リウマチ(RA)、又は高尿酸血症に関連する代謝性リウマチの障害の群から選択される。
【0060】
好ましい一実施形態では、炎症症状は、高尿酸血症に関連する代謝性リウマチ障害である。代謝性リウマチ障害は、痛風、偽痛風、薬物誘発性痛風及び慢性活動性(難治性)痛風の群から選択され得る。
【0061】
本発明の一の態様による前記代謝性リウマチ障害の治療のために、IL1R3アンタゴニス
ト抗体が投与される。前記IL1R3アンタゴニスト抗体は、痛風の治療のための治療薬と組
み合わせて投与され得る。
【0062】
痛風の治療のための治療薬と同時に投与され得る。しかし、痛風の治療のために治療薬と連続して投与することもできる。
【0063】
本発明の別の態様は、炎症症状及び/又は障害の治療方法を包含し、ここで、炎症症状
は、がん関連の慢性炎症である。
【0064】
本発明はまた、炎症症状及び/又は障害の治療のための抗IL1R3抗体に関するもので、ここで、炎症症状は慢性炎症に関連するがんである。
【0065】
本明細書では用語「がん」は、例えば、肺がん、非小細胞肺(NSCL)がん、細気管支肺胞細胞肺がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部のがん、皮膚もしくは眼内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門部のがん、胃がん(stomach cancer)、胃部がん(gastric cancer)、大腸がん、乳がん、子宮がん、卵管のがん、子宮内膜のがん、頸部のがん
、膣のがん、外陰部のがん、ホジキン病、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、上皮小体のがん、副腎のがん、軟部組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、前立腺がん、膀胱のがん、腎臓もしくは尿管のがん、腎細胞がん、腎盂のがん、中皮腫、肝細胞がん、胆道がん、中枢神経系(CNS)の新生物、脊髄軸腫瘍、脳幹グリオーマ、多
形性神経膠芽細胞腫、星状細胞腫、神経鞘腫、上衣細胞腫、髄芽細胞腫、髄膜腫、扁平上皮細胞がん、下垂体腺腫、リンパ腫、リンパ性白血病、上記がんのいずれかの難治性バージョン、又は上記がんの1つ又は複数の組合せを含むものであり得る。
【0066】
好ましくは、本発明による抗体は、膵臓がん、肝臓がん、肺がん(アスベスト、感染症、喫煙、シリカによる炎症に関連する)、非小細胞肺がん、直腸がん/大腸関連がん(炎
症性腸疾患に関連する)、胃がん(stomach cancer)、胃がん(gastric cancer)、胃がんに関連した慢性胃炎、エストロゲン受容体陽性乳がん、頭頸部扁平上皮がん、中皮腫、胆嚢がん(慢性胆嚢炎関連)、卵巣がん、膀胱がん、前立腺がん、大腸菌感染に関連した前立腺がん、甲状腺がん、ホジキン病、MALTリンパ腫、唾液腺がん、メラノーマ、子宮内膜症に関連した子宮内膜がん、バレット食道炎に関連した食道がん、からなる群から選択されるがんで、がんに関連する慢性炎症の治療に使用される。
【0067】
好ましくは、がんは、乳がん、結腸がん、肺がん、膵臓がん、肝臓がん、非小細胞肺がん、直腸がん、胃がん(stomach cancer)、胃がん(gastric cancer)、エストロゲン受容体陽性乳がん、頭頸部扁平上皮がん、中皮腫、胆嚢がん、卵巣がん、膀胱がん、前立腺がん、甲状腺がん、ホジキン病、MALTリンパ腫、唾液腺がん、又はメラノーマである。
【0068】
本発明の抗体は、いくつかの腫瘍がIL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36などの炎症性サイトカインを分泌する腫瘍微小環境細胞によって引き起こされる又は促進されるため、がんに関連する慢性炎症の治療に使用され得る。いくつかの例では、そのようなサイトカインの発現は、腫瘍抵抗性の形成をもたらす。
【0069】
したがって、本発明の一態様では、抗体は、対象の治療に使用され、対象は固形腫瘍などの腫瘍を含み、及び細胞傷害性、細胞増殖抑制性又は標的化/免疫療法に対する腫瘍耐
性又は不十分な反応を示す。好ましくは、対象はヒト対象であり、例えば、がん患者である。
【0070】
サイトカイン阻害剤及び抗がん化合物の同時又は連続の使用は、そのような治療の反応率を有意に改善するか、又は腫瘍抵抗性を破壊できる。
【0071】
したがって、本発明は、対象の治療方法も包含し、ここで、対象は、1以上の細胞傷害
性抗がん剤、細胞増殖抑制性抗がん剤、又は標的化抗がん剤による治療に対して耐性又は不十分な反応を示すことを特徴とする。
【0072】
本発明の一態様では、前記IL1R3抗体は、1以上の細胞傷害性、細胞増殖抑制性又は標
的化抗がん剤と組み合わせて投与される。
【0073】
本発明の一態様では、前記IL1R3アンタゴニスト抗体は、1以上の細胞傷害性、細胞増
殖抑制性又は標的化抗がん剤と同時に投与される。別の態様において、IL1R3アンタゴニ
スト抗体は、1以上の細胞傷害性、細胞増殖抑制性又は標的化抗がん剤とともに連続的に
投与される。
【0074】
後者の場合、抗体は、1以上の細胞傷害性、細胞増殖抑制性又は標的化抗がん剤による
治療後に投与されることが好ましい。
【0075】
本発明による細胞障害性又は細胞増殖抑制性の抗がん剤は、タキサン、アントラサイクリン、アルキル化剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、ヌクレオチド類似体、ペプチド抗生物質、及び白金ベースの剤であり得る。
【0076】
好ましくは、標的化抗がん剤は、標的化治療において使用され、及び以下:セツキシマブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、パニツムマブなどの抗EGFR化合物、及びトラスツズマブ、ado-トラスツズマブ、エムタンシン、ペルツズマブなどの抗HER2化合物の1つ又はそれらの組み合わせから選択される。
【0077】
標的化抗がん剤が標的化チェックポイント阻害剤であることがさらに好ましい。これらは、ペンブロリズマブ、及びニボルマブなどの抗PD1化合物、アテゾリズマブ、アベルマ
ブ、デュルバルマブなどの抗PDL1化合物、並びにイピリムマブ及びトレメリムマブなどの抗CTLA-4化合物であり得るが、これらに限定されない。
【0078】
本発明は、サイトカイン誘発性シグナル伝達の広範囲の阻害が達成されるため、標的化がん療法に対する有意に改善された応答率を提供する。がんの症状におけるそのような活性は、がん細胞の直接的な除去活性(先行技術のいくつかの化合物によって行われる)ではなく、IL1R3シグナル伝達経路の調節によるがん関連炎症の阻害を介して達成される。
【0079】
本発明の抗体は、がん関連慢性炎症の効果的な阻害を可能にするため、非常に有利な活性プロファイルを提供し、及び同時に、IL-1R3を発現する標的細胞の生存率に影響を与えないため、望ましくない副作用を避ける。
【0080】
したがって、本発明は、他のIL-1ファミリー標的化療法を超えるいくつかの利点を提供する。市販の化合物キネレット(IL-1Ra)は、半減期が短く、治療間隔が非常に頻繁である(毎日)。単一のサイトカイン(イラリスなど)を標的とする抗体により、他のIL-1ファミリーサイトカインの不必要なシグナル伝達/活性が発生する。さらに、IL-1ファミリ
ーのサイトカインは、炎症誘発性及びIL-1R3非依存性の両方の抗炎症性シグナル伝達を誘発することが知られており、どちらもサイトカイン又はそのアルファ鎖受容体を標的化とする場合に干渉される。対照的に、本発明の抗体は、治療間隔の低減、異なるIL-1ファミリーサイトカイン媒介性シグナル伝達の同時阻害、及び炎症誘発性シグナル伝達経路のブロックに関する特異性という利点を兼ね備えている。
本明細書に記載の抗体は、好ましくは、IL-1R3に対する高親和性、高特異性、及び強力な中和活性を伴うモノクローナル抗体である。したがって、本発明はまた、強力なIL-1R3中和活性及び改善された安定性を有し、IL-1R3に対する高い親和性及び特異性を有するIL-1R3抗体を包含する。
【0081】
本発明の好ましい一実施形態では、抗体は、低減されたエフェクター機能を有する。好ましくは、本発明の抗体は、低減されたFcγ受容体シグナル伝達を示すか、又はFcγ受容体シグナル伝達を示さない。さらに好ましくは、抗体は、ADCCを誘導しない。
【0082】
本発明の別の態様は、抗IL1R3抗体が、少なくともヒトIgG1 Fc領域のアミノ酸置換L234A及びL235A、若しくはヒトIgG4 Fc領域のS228P及びL235E、又は別の生物における対応す
る機能的変異を含むことである。
【0083】
本発明の一実施形態では、抗IL1R3抗体は、以下、
a)CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3を含む相補性決定領域を含む重鎖可変領域(VH)、
ここで、前記CDR-H1領域は、配列番号69~85、及び178の群から選択されるアミノ酸配
列を含み、
前記CDR-H2領域は、配列番号86~102、及び179の群から選択されるアミノ酸配列を含み
、及び
前記CDR-H3領域は、配列番号103~119、及び180の群から選択されるアミノ酸配列を含
む、並びに
b)CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含む相補性決定領域を含む軽鎖可変領域(VL)、
ここで、前記CDR-L1領域は、配列番号120~136、及び181の群から選択されるアミノ酸
配列を含み、
前記CDR-L2領域は、配列番号137~153、及び182の群から選択されるアミノ酸配列を含
み、及び
前記CDR-L3領域は、配列番号154~170、配列番号175及び183の群から選択されるアミノ酸配列を含む、
を含む。
【0084】
一実施形態では、本発明の前記抗体は、CDR-L3の2位に置換を含む。前記置換は、シス
テインからセリンへの置換であり得る。
【0085】
本発明の一態様では、対象は、ヒト対象であり、及び抗体は以下、
a)CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3を含む相補性決定領域を含む重鎖可変領域(VH)、
ここで、前記CDR-H1領域は、配列番号69~85の群から選択されるアミノ酸配列を含み、
前記CDR-H2領域は、配列番号86~102の群から選択されるアミノ酸配列を含み、及び
前記CDR-H3領域は、配列番号103~119の群から選択されるアミノ酸配列を含む、並びにb)CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含む相補性決定領域を含む軽鎖可変領域(VL)、
ここで、前記CDR-L1領域は、配列番号120~136の群から選択されるアミノ酸配列を含み、
前記CDR-L2領域は、配列番号137~153の群から選択されるアミノ酸配列を含み、及び
前記CDR-L3領域は、配列番号154~170、及び配列番号175の群から選択されるアミノ酸
配列を含む、
を含む。
【0086】
本発明の別の態様では、対象はマウスであり、及び抗体は以下、
a)CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3を含む相補性決定領域を含む重鎖可変領域(VH)、
ここで、前記CDR-H1領域は、配列番号178のアミノ酸配列を含み、
前記CDR-H2領域は、配列番号179のアミノ酸配列を含み、及び
前記CDR-H3領域は、配列番号180のアミノ酸配列を含む、並びに
b)CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含む相補性決定領域を含む軽鎖可変領域(VL)、
ここで、前記CDR-L1領域は、配列番号181のアミノ酸配列を含み、
前記CDR-L2領域は、配列番号182のアミノ酸配列を含み、及び
前記CDR-L3領域は、配列番号183のアミノ酸配列を含む、
を含む。
【0087】
本発明の他の実施形態では、抗体は、配列番号1~34、173及び176のVH領域からなる群
から選択される重鎖可変(V)H領域と少なくとも90%同一であるVH領域を含み、並びに配列番号35~68、174及び177の軽鎖可変(VL)領域からなる群から選択されるVL領域と少なくとも90%同一であるVL領域を含む。
【0088】
本発明の一実施形態では、抗体はヒト化抗体である。
そのような実施形態では、対象はヒト対象であり、及び抗体は、配列番号1~34、及び173のVH領域からなる群から選択される重鎖可変(VH)領域と少なくとも90%同一であるVH領域を含み、並びに配列番号35~68、及び174のVL領域からなる群から選択される軽鎖可
変(VL)領域と少なくとも90%同一であるVL領域を含む。
【0089】
別の実施形態では、対象はマウスであり、及び抗体は、配列番号176の重鎖可変(VH)
領域と少なくとも90%同一であるVH領域、及び配列番号177の軽鎖可変(VL)領域と少な
くとも90%同一であるVL領域を含む。
【0090】
本発明の抗体は、一実施形態において、IL-1R3に特異的に結合する抗体、又はIL-1R3特異的結合を付与するのに十分である前記抗体の少なくとも一部を含む、該抗体の断片若しくは誘導体であり、そして配列番号1~34、173及び176のVH領域からなる群から選択され
るVH領域と、少なくとも60%同一、好ましくは少なくとも70%同一、より好ましくは少なくとも80%同一、より好ましくは少なくとも90%同一である重鎖可変(VH)領域を含み得る。
【0091】
一実施形態では、前記抗体は、本発明によるVH配列の群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%
の配列同一性を有する重鎖可変領域(VH)配列を含む。
【0092】
特定の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性有するVHは、該参照配列に関連する置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を有し、これにより、抗体は、本発明に従ってそれぞれの抗原に特異的に結合する能力を保持する。
【0093】
本発明はまた、IL-1R3に特異的に結合する本発明の抗体、又はIL-1R3特異的結合を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含む、該抗体の断片若しくは誘導体であり、そして配列番号35~68、174、及び177のVL領域からなる群から選択されるVL領域と少なくとも60%同一、好ましくは少なくとも70%同一、より好ましくは少なくとも80%同一、より好ましくは少なくとも90%同一である軽鎖可変(VL)領域を含む抗体に関する。
【0094】
前記抗体は、本発明による軽鎖可変領域(VL)配列のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有
するVLを含み得る。
【0095】
ある特定の実施形態において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一性を有するVH配列は、該参照配列に関連する置換(例えば、保存的置換)、挿入又は欠失を有し、これにより、抗体は、本発明により、それぞれの抗原に特異的に結合する能力を保持する。
【0096】
ある特定の実施形態において、合計1~10アミノ酸が、前記VL配列において置換、挿入
及び/又は欠失されている。ある特定の実施形態において、置換、挿入又は欠失は、CDR
の外側の領域(即ち、FR)において起こる。本発明は、当業者に公知の方法によって産生され得る親和性成熟された抗体も含む。Marksら、Bio/Technology 10:779~783(1992)は
、VH及びVLドメインシャッフリングによる親和性成熟について記述している。CDR及び/
又はフレームワーク残基のランダムな突然変異誘発については:Barbasら、Proc Nat.Acad.Sci、USA 91:3809~3813(1994);Schierら、Gene 169:147~155(1995);Yeltonら、J.Immunol.1 55:1994~2004(1995);Jacksonら、J.Immunol.1 54(7):3310~9(1995);並びにHawkinsら、J.Mol.Biol.226:889~896(1992)、及びWO2010108127に記述されている。
【0097】
特定の実施形態では、前記各VH又はVL配列において、合計1~10個のアミノ酸が置換、
挿入及び/又は欠失されている。一実施形態では、本発明の抗体は、VH又はVL配列の90位
に置換を含む。90位のアミノ酸がセリンで置換されていることが好ましい。この置換は、好ましくは軽鎖可変領域(VL)の90位にある。好ましい実施形態では、配列番号62の90位のシステインは、セリンに置き換えられる。しかしながら、本発明の抗体は、90位のアミ
ノ酸置換に限定されず、本発明の抗体の特性を有する機能的抗体をもたらす任意の置換、欠失、又は挿入を含み得る。したがって、本発明の抗体のVL及びVH配列は、異なるポジションにさらなる突然変異を含んでもよい。
特定の実施形態において、置換、挿入、又は欠失は、CDRの外側の領域(すなわち、FR
)で発生する。
【0098】
他の実施形態において、置換、挿入、又は欠失は、CDR内部の領域で発生する。好まし
い一実施形態では、本発明の抗体は、CDR-L3の2位に置換を含む。この置換は、システイ
ンからセリンであることが好ましい。一実施形態では、前記置換は配列番号164にある。
【0099】
本発明はまた、IL-1R3に特異的に結合する本発明の抗体、又はIL-1R3特異的結合を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含む、該抗体の断片若しくは誘導体であり、ここで配列番号1~34、173及び176の群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域
(VH)を含む抗体をも包含する。
【0100】
好ましくは、重鎖可変領域(VH)配列は、配列番号1、あるいは配列番号2、又は配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列
番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、又は配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、又はあるいは配列番号34、又は173及び176である。
【0101】
さらに、本発明は、方法に関するものであって、その中で前記抗体は、IL-1R3に特異的に結合する本発明の抗体、又はIL-1R3特異的結合を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含む、該抗体の断片若しくは誘導体であり、配列番号35~68、174及び177の群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含むものである。
【0102】
さらにより好ましくは、軽鎖可変領域(VL)配列は、配列番号35、又は配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、又はあるいは配列番号68、又は174又は177。
【0103】
IL-1R3に特異的に結合する本発明の抗体、又はIL-1R3特異的結合を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含む、該抗体の断片若しくは誘導体は、また、MAB-15-0139
、MAB-15-0106MAB-15-0108、MAB-15-0110、MAB-15-0117、MAB-15-0121、MAB-15-0140、MAB-15-0115、MAB-15-0125、MAB-15-0119、MAB-15-0109、MAB-15-0097、MAB-15-0135、MAB-15-0133、MAB-15-0107、MAB-15-0128、MAB-15-0116、MAB-16-0004、MAB-16-0009、MAB-16-0028、MAB-16-0031、MAB-16-0043、MAB-16-0049、MAB-16-0045、MAB-16-0040、MAB-16-0036、MAB-16-0046、MAB-16-0030、MAB-16-0021、MAB-16-0019、MAB-16-0015、MAB-16-0027、MAB-16-0048、MAB-16-0041、MAB-16-0149、MAB-16-0150、MAB-16-0531からなる群から選択される抗体のCDR1、CDR2及びCDR3領域のそれぞれを含むVH領域及びVL領域も含む。
【0104】
一実施形態において、IL-1R3に特異的に結合する本発明の抗体、又はIL-1R3特異的結合を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含む、該抗体の断片若しくは誘導体は、配列番号1及び35、又は配列番号2及び36を含む。本発明による抗体はまた、配列番号3
及び37、又は配列番号4及び38、又は配列番号5及び39、又は配列番号6及び40、又は配列
番号7及び41、又は配列番号8及び42、又は配列番号9及び43、又は配列番号10及び44、又
は配列番号11及び45、又は配列番号12及び46を含み得る。あるいは、本発明による抗体は、配列番号13及び47、又は配列番号14及び48、又は配列番号15及び49、又は配列番号16及び50、配列番号17及び51、又は配列番号18及び52、又は配列番号19及び53、又は配列番号20及び54、又は配列番号21及び55、又は配列番号22及び56、又は配列番号23及び57、又は配列番号24及び58、又は配列番号25及び59、又は配列番号26及び60、又は配列番号27及び61を含む。
【0105】
あるいは、本発明による抗体は、配列番号28及び62、又は配列番号29及び63、又は配列番号30及び64、又は配列番号31及び65、配列番号32及び66、又は配列番号33及び67、又は配列番号34及び68、又は配列番号173及び54、又は配列番号28及び174、又は配列番号176
及び177を含む。
【0106】
最も好ましくは、IL-1R3に特異的に結合する本発明の抗体、又はIL-1R3特異的結合を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含む、該抗体の断片若しくは誘導体は、定常領域配列CR-H(配列番号172)及びCR-L(配列番号171)、並びに配列番号1~34と173と176の群から選択されるVH領域、及び配列番号35~68と174と177の群から選択されるVL領
域を含む。
【0107】
IL-1R3に特異的に結合する本発明の抗体、又はIL-1R3特異的結合を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含む、該抗体の断片若しくは誘導体は、定常領域配列CR-H(配列番号172)及びCR-L(配列番号171)、並びにMAB-15-0139、MAB-15-0106、MAB-15-0108、MAB-15-0110、MAB-15-0117、MAB-15-0121、MAB-15-0140、MAB-15-0115、MAB-15-0125
、MAB-15-0119、MAB-15-0109、MAB-15-0097、MAB-15-0135、MAB-15-0133、MAB-15-0107、MAB-15-0128、MAB-15-0116、MAB-16-0004、MAB-16-0009、MAB-16-0028、MAB-16-0031、MAB-16-0043、MAB-16-0049、MAB-16-0045、MAB-16-0040、MAB-16-0036、MAB-16-0046、MAB-16-0030、MAB-16-0021、MAB-16-0019、MAB-16-0015、MAB-16-0027、MAB-16-0048、MAB-16-0041、MAB-16-0149及びMAB-16-150、及びMAB-16-0531からなる群から選択される抗体の
それぞれのCDR1、CDR2及びCDR3領域を含むVH領域及びVL領域も含む。
【0108】
本発明の抗体の好ましい治療への応用によれば、本発明の抗体のエフェクター機能(ADCCなど)は低減されているか、又は欠如している。CAN04(例えば、WO 2015/132602 A1)などの先行技術の他の抗体とは対照的に、本発明の抗体は、免疫細胞の望ましくない枯渇を回避する。
【0109】
好ましくは、本発明による抗体は、低減されたFcγ受容体シグナル伝達を示すか、又はFcγ受容体シグナル伝達を示さない。
【0110】
したがって、本発明はまた、少なくともヒトIgG1 Fc領域のL234A及びL235A、若しくは
ヒトIgG4 Fc領域のS228P及びL235E、又は機能的に同等の突然変異のアミノ酸置換を含む
前記抗体に関する。
【0111】
本発明による一実施形態では、抗体はヒト化IgG1LALA抗体である。
別の実施形態では、抗体はマウスIgG2aLALA抗体である。
【0112】
本発明による一実施形態では、抗体はIL-1R3誘導NFkB活性を阻害する。
【0113】
別の実施形態では、IL-1R3に特異的に結合する本発明の抗体、又はIL-1R3特異的結合を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含む、該抗体の断片若しくは誘導体は、抗体MAB-15-0139、MAB-15-0106、MAB-15-0108、MAB-15-0110、MAB-15-0117、MAB-15-0121
、MAB-15-0140、MAB-15-0115、MAB-15-0125、MAB-15-0119、MAB-15-0109、MAB-15-0097、MAB-15-0135、MAB-15-0133、MAB-15-0107、MAB-15-0128、MAB-15-0116、MAB-16-0004、MAB-16-0009、MAB-16-0028、MAB-16-0031、MAB-16-0043、MAB-16-0049、MAB-16-0045、MAB-16-0040、MAB-16-0036、MAB-16-0046、MAB-16-0030、MAB-16-0021、MAB-16-0019、MAB-16-0015、MAB-16-0027、MAB-16-0048、MAB-16-0041、MAB-16-0149、MAB-16-150及びMAB-16-0531の群から選択される抗体と同じエピトープに結合する。
【0114】
本発明による抗体は、それらの標的への結合に関して非常に強力であるという利点を有する。それらは、抗原であるIL1R3に対して強い結合能力を示すが、他の受容体に対して
はそうではない。抗体の結合特性は、酵素結合免疫測定法(ELISA)及び細胞結合分析(
フローサイトメトリー)で研究され、並びに
図2、6、及び7に例示される。
【0115】
本発明による好ましい抗体は、30 ng/ml未満、好ましくは20 ng/ml未満の半数最大有効濃度(EC50)を示す。他の実施形態において、それらは、15 ng/ml未満、10 ng/ml又は5 ng/ml未満のEC50を示す。本発明による好ましい抗体は、生化学的ELISA実験において16.3ng/mlのEC50を示す(
図7参照)。
【0116】
本発明による抗体はまた、ヒトIL1R3が異なる細胞株で発現される実験において、それ
らの抗原に対する非常に強い結合を示すが、抗体はヒトIL1R3を発現しない細胞株に結合
しない(例えばNIH-3T3、
図5参照)。
【0117】
IL1R3高発現細胞株SK-MEL-30(
図6、実施例4参照)では、抗体は好ましくは400ng/ml未満、より好ましくは350ng/ml未満、又は310ng/ml未満のEC50を示す。
【0118】
本発明に包含される好ましい一実施形態では、本発明による抗体は、IL-1アルファ及び/又はIL-1ベータで刺激されたNFkB活性を阻害する。
図3、4及び8は、本発明による抗体の強力な阻害活性を例示している。
【0119】
一実施形態では、IL-1R3に特異的に結合する本発明の抗体、又はIL-1R3特異的結合を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含む、該抗体の断片若しくは誘導体は、IL-1アルファ刺激によるNFkB活性を阻害する。
【0120】
別の実施形態では、IL-1R3に特異的に結合する本発明の抗体、又はIL-1R3特異的結合を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含む、該抗体の断片若しくは誘導体は、IL-1ベータ刺激によるNFkB活性を阻害する。
【0121】
本発明による抗体は、100ng/ml未満、好ましくは95ng/ml、85ng/ml、75ng/ml、65ng/ml、55ng/ml、45ng/ml、35ng/ml、25ng/ml、20ng/ml未満、及び最も好ましくは15ng/ml未満のEC50でHEK293T/17-FR細胞におけるIL-1ベータ刺激によるNFkB活性を阻害することが好
ましい(例、
図3参照)。
【0122】
本発明の抗体は、A549-NFkB-RE-Luc細胞で、1000ng/ml未満、好ましくは500ng/ml、300ng/ml、200ng/ml未満、及び最も好ましくは100ng/ml未満のEC50でIL-1アルファ刺激によ
るNFkB活性を阻害する(例、
図8参照)。
【0123】
本発明の抗体は、A549-NFkB-RE-Luc細胞で、700ng/ml未満、好ましくは600ng/ml、300ng/ml、200ng/ml、100ng/ml未満、及び最も好ましくは50ng/ml未満のEC50でIL-1ベータ刺
激によるNFkB活性を阻害する(例、
図8参照)。
【0124】
本発明はまた、IL-1β/IL-1R1/IL-1RAcP、IL-1α/IL-1R1/IL-1RAcP IL-33/ST2/IL-1RAc
P、及び/又はIL-36/Il-36R/IL-1RAcPからなる群から選択される複合体によって刺激され
るNFkB活性を阻害する前記抗体を包含する。
【0125】
さらに、A549-NFkB-RE-Luc細胞ライセートにおいて、本発明による抗体は、10μg/ml(ウサギIgGアイソタイプは、分子量150KDを有する)の濃度で、0.1ng/mlヒトIL-1アルファ、ヒトIL-1ベータ、IL-33及び/若しくはIL-36(分子量は、UniProtKB/Swiss-Protを参照のこと)で刺激したNFkB発現を、本発明による前記抗体を含まない同じアッセイに対して50%以上、好ましくは70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上阻害する(Steady-Glo(商標)Luciferase Assay System;Promega;カ
タログ番号E2510)。
【0126】
一実施形態では、本発明による抗体は、HEK 293T/17細胞(NF-kBレポーター遺伝子の制御下でルシフェラーゼがトランスフェクトされたHEK293T/17-FR細胞)、HEK-Blue-IL33TM細胞(Invivogen)又はHEK-293/17-IF細胞のルシフェラーゼ活性を刺激した、IL-1アルファ、IL-1ベータ、IL-33、及び/又はIL-36のそれぞれを阻害する。
【0127】
好ましくは、前記IL-1アルファ刺激のルシフェラーゼ活性は、50%以上、好ましくは70%以上、好ましくは80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上阻害される。好ましくは、前記IL-1アルファ刺激のルシフェラーゼ活性は95%阻害される。
【0128】
好ましくは、前記IL-1ベータ刺激のルシフェラーゼ活性は、50%以上、好ましくは70%以上、好ましくは80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上阻害される。好ましくは、前記IL-1ベータ刺激のルシフェラーゼ活性は95%阻害される。
【0129】
好ましくは、前記IL-33刺激のルシフェラーゼ活性は、50%以上、好ましくは70%以上
、好ましくは80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上阻害される。好ましくは、前記IL-33刺激のルシフェラーゼ活性は95%阻害される。
【0130】
好ましくは、前記IL-36刺激のルシフェラーゼ活性は、50%以上、好ましくは70%以上
、好ましくは80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上阻害される。好ましくは、前記IL-36刺激のルシフェラーゼ活性は95%阻害される。
【0131】
さらに、本発明による抗体は、ヒトIL-1a及びIL-1bを媒介したIL-6放出を阻害し、そしてポリクローナル抗体よりも優れている。この強力な阻害活性は
図9に示され、例示され
ている。これらの実験では、EC50値は、ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体が、ヤギ抗ヒトIL1-R3ポリクローナル抗体AF676(R&D Systems)よりも優れていることを示す。本発明の
好ましい実施形態では、抗体は、ヒトIL-a媒介IL-6放出を阻害し、EC50は2500ng/ml未満
、好ましくは1500ng/ml未満、1000ng/ml未満、600ng/ml未満、400ng/ml未満、又は300ng/ml未満である。本発明の抗体は、ヒトIL-b媒介IL-6放出を阻害し、EC50は500ng/ml未満、好ましくは400ng/ml未満、300ng/ml未満、200ng/ml未満、又は150ng/ml未満であることも好ましい。
【0132】
本発明の別の実施形態では、抗体は、ヒトIL-33媒介NfkBシグナル伝達を阻害する。
図10は、HEK-Blue-IL33(商標)細胞における本発明で選択された抗体の阻害活性を例示し、及びポリクローナル抗体を上回る優位性を実証している。本発明の好ましい実施形態では、抗体は、ヒトIL-33媒介NfkBシグナル伝達を阻害し、EC50は20000ng/ml未満、好ましく
は18000ng/ml未満、3000ng/ml未満、1000ng/ml、500ng/ml未満、又は400ng/ml未満である。
【0133】
本発明の抗体はまた、ヒトIL-36媒介NfkBシグナル伝達を阻害し得る(
図11)。好まし
くは、それらはヒトIL-36媒介NfkBシグナル伝達を阻害し、EC50は100ng/ml未満、好まし
くは50ng/ml未満、40ng/ml未満、30ng/ml未満、20ng/ml、又は15ng/ml未満である。
驚くべきことに、本発明者らは、本発明による抗体が様々な異なる刺激によって媒介されるサイトカイン放出を阻害することを見出した。例えば、抗体はIL-1a、IL-33及びIL-36aによって媒介されるサイトカイン放出を阻害する。選択した抗体の結果を
図12に示す。例えば、抗体MAB-16-0030は3つすべての刺激によって媒介されるサイトカイン放出を阻害するが、IL-1RaはIL-1aによって媒介されるサイトカイン放出のみに影響する。
【0134】
急性又は慢性炎症に関連する疾患は、同時に又は連続して複数のサイトカインの作用により維持又は確立される。IL-1a及びIL-33などの初期の「アラーミン」は、IL-1b及びIL-36を含む他のサイトカインを誘発して、強い炎症環境を確立し得る。したがって、複数のサイトカインによって媒介されるシグナル伝達の同時阻害は、炎症プロセスの効果的な制御を発揮する。IL1R3受容体のブロックを介したマルチサイトカインシグナル伝達を阻害
することは、本発明の抗体の重要な態様である。
【0135】
免疫細胞への抗体の結合は、細胞の枯渇及び有害な影響をもたらし得、例えば、アポトーシスシグナル伝達経路の直接誘導、過剰なサイトカイン放出の刺激、又は抗体依存性細胞傷害(ADCC)によるものである。
【0136】
重要なことに、本発明による抗体は、免疫細胞の生存率に影響を与えない。例えば、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)の生存率に影響を与えず、及びPBMCでIL-6の放出を誘発しない(
図13参照)。
【0137】
本発明による抗体は、上記の異なる細胞株におけるサイトカイン放出の機能的活性を阻害するだけでなく、ドナーからのPMBCs又は全血細胞においても阻害する。それらは、異
なる特定の又は複合の刺激によって媒介されるサイトカイン放出を阻害する。例えば、LPS、熱不活化カンジダアルビカンス、IL-12/IL-33又は抗CD3/CD28抗体で刺激されたPBMCの活性を阻害する(
図14及び15参照)。
【0138】
また、一実施形態において、本発明による抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体は、混合されたリンパ球の反応におけるIFNg、IL-6、TNF-a、IL-13、IL-17及びIL-10の放出を阻害することができる。(
図16参照)。
【0139】
本発明の方法はまた、医薬組成物の形態で本発明による抗体、又はその誘導体若しくは断片の薬学的有効量を患者に投与することを包含する。
そのような医学的組成物は、本発明に従って、薬学的に許容される担体及び、IL-1R3に特異的に結合する本発明の抗体、又はIL-1R3特異的結合を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含む、該抗体の断片若しくは誘導体の治療的有効量を含み得る。
【0140】
本明細書では、「医薬担体」は、ありとあらゆる生理的に適合性がある溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、等を含む。好ましくは、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は表皮投与(例えば注射又は注入による)に適している。
【0141】
本発明の組成物は、当該分野で公知の様々な方法によって投与され得る。当業者に認識されるように、投与の経路及び/又は様式は、所望の結果に応じて変化する。特定の投与経路によって本発明の化合物を投与するために、化合物を、不活化を防止する材料でコーティングする必要があるか、又は該材料と併用投与する必要がある場合がある。例えば、化合物は、適当な担体、例えば、リポソーム又は希釈剤中で対象に投与され得る。薬学的に許容される希釈剤には、生理食塩水及び水性緩衝液がある。医薬担体は、無菌の注射可
能な溶液又は分散液の即時調製用の滅菌水溶液若しくは分散液及び無菌粉末を含む。薬学的に活性な物質に対するそのような媒質及び薬剤の使用は、当技術分野において公知である。
【0142】
本明細書では語句「非経口投与」及び「非経口的に投与される」は、経腸及び局所投与以外の投与の様式を意味し、通常注射によるもので、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、真皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊椎内、硬膜外及び胸骨内注射並びに注入が挙げられるが、これに限定されない。
【0143】
これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などのアジュバントを含有することもできる。微生物の存在の防止は、上記殺菌手順と様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含めることの両方によって保証され得る。組成物に例えば、糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含めることが望ましい場合もある。加えて、注射可能な医薬品形態の持続的吸収は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなど吸収を遅延させる薬剤を含めることによってもたらすことができる。選択される投与経路に関係なく、適切な水和形態で使用され得る本発明の化合物及び/又は本発明の医薬組成物は、当業者に公知の従来の方法によって薬学的に許容される剤形に製剤化される。本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルは、患者にとって有毒であることなく、特定の患者、組成物及び投与の様式に関して所望の治療応答を達成するのに有効な活性成分の量を得るために変化させることができる。選択される投薬量レベルは、用いられる本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与の時間、用いられる特定の化合物の排出率、処置期間、用いられる特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物及び/又は材料、年齢、性別、体重、症状、全体的な健康及び処置される患者の以前の病歴、並びに医学の分野において周知の因子などを含めた様々な薬物動態学的因子に依存することになる。
【0144】
別の態様において、本発明は、マウスIL-1R3受容体に特異的に結合する本発明の抗体、又は該抗体の断片若しくは誘導体に関するもので、抗体は、配列番号176のVH領域と少な
くとも90%同一である重鎖可変(VH)領域、及び配列番号177のVL領域と少なくとも90%
同一である軽鎖可変(VL)領域を含む。
【0145】
好ましくは、前記抗体は、本発明の重鎖可変領域(VH)配列の群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%配列同一性を有するVH配列を含む。
【0146】
特定の実施形態において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVH配列は、本明細書の配列に関連した、置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含み、これにより抗体は、それぞれの抗原に対する本発明による特異的な結合の能力を保持する。
【0147】
本発明の別の態様において、前記抗体は、本発明による軽鎖可変領域(VL)配列の群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するVL配列を含む。
【0148】
特定の実施形態において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVL配列は、本明細書の配列に関連した、置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含み、これにより抗体は、それぞれの抗原に対する本発明による特異的な結合の能力を保持する。
【0149】
マウスIL-1R3受容体に特異的に結合する本発明の抗体、又は該抗体の断片若しくは誘導体は、そのエフェクター機能が低減されているか、又はそのエフェクター機能が欠如していることが好ましい。
【0150】
好ましくは、本発明による抗体は、Fcγ受容体シグナル伝達の低減を示すか、又はFcγ受容体シグナル伝達を示さない。それらがADCCを誘発しないことがさらに好ましい。
【0151】
一実施形態では、マウスIL-1R3受容体に特異的に結合する本発明の抗体、又は該抗体の断片若しくは誘導体は、FC部分に変異L234A及びL235Aの突然変異を伴うマウスIgG2aであ
る(EU番号付けインデックスによるアミノ酸ポジション)。
【0152】
本発明の別の態様は、マウスIL-1R3受容体に特異的に結合する本発明の抗体、又は該抗体の断片若しくは誘導体、前臨床研究で使用するための抗体に関する。そのような研究は、動物モデル、好ましくはネズミ科(murine)の疾患モデルで実施することができる。そのようなモデル系には、尿酸一ナトリウム結晶(MSU)誘発性マウス腹膜炎モデル、血清
移行誘発性関節リウマチ、コラーゲン誘発性関節炎、抗体誘発性関節炎、コラーゲン抗体誘発性関節炎、K/BxN抗体移行関節炎、イミキモド誘発性炎症性皮膚疾患/乾癬、後天性表皮水疱症モデル、チオグリコレート誘発性腹膜炎、免疫複合体誘発性腹膜炎、ブレオマイシン誘発性肺線維症、異種移植乾癬、タバコ煙誘発性肺炎症COPD、エラスターゼCOPDの気管注入、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)誘発肺損傷/線維症、放射線誘発線
維症、シリカ誘発肺線維症、アスベスト繊維誘発性肺線維症、DSS誘発性大腸炎、トリニ
トロベンゼンスルホン酸誘発性大腸炎、オキサゾロン誘発性大腸炎、養子免疫伝達大腸炎、ハウスダストダニ(HDM)、ゴキブリ、又はアルテルナリア代替誘発喘息、卵白アルブ
ミン誘発性喘息、パパイン誘発性肺の炎症、皮膚感作性アトピー性皮膚炎モデル(卵白アルブミン、ハウスダストダニ(HDM)、ハプテン、黄色ブドウ球菌)、免疫不全又はヒト
化マウスを使用した異種移植片又は患者由来の異種移植片腫瘍成長モデル、同系腫瘍の移植、化学物質誘発性皮膚腫瘍モデル、DSS誘発性直腸腫瘍モデルが挙げられるが、これら
に限定されない。
【0153】
好ましくは、抗体は尿酸一ナトリウム結晶(MSU)誘発性マウス腹膜炎モデルに使用さ
れる。
【実施例】
【0154】
以下の実施例は、本発明を説明するために図及び表とともに使用される。
【0155】
実施例1:Human-IL-1R3生化学的ELISA
アッセイ原理:
NUNCマキシソープ384ウェルマイクロタイタープレートを、Fcタグ付きヒトIL-1R3でコー
トする。ブロッキングプロセスの後、B細胞上清からの特定の抗体が抗原に結合し、及び
その後POD標識抗体によって検出される。サンプルは1:2希釈でテストする。
材料:
プレート:384ウェル NUNCマキシソーププレート;カタログ番号 464718
タンパク質:Fcタグ付きヒトIL-1R3(濃度 1.5mg/ml;アッセイ濃度 0.5μg/ml)
標準Ab:P013-02 (濃度 1mg/ml;スタートアッセイ濃度 2μg/ml)
検出Ab: 抗ウサギ IgG、ペルオキシダーゼ結合 種特異的全抗体(ロバ由来)(ECL); GE; カタログ番号 NA9340; アッセイ希釈: 1:5000
PBS:箱入りバッファー、プレミックス PBSバッファー、10x; ロシュアプライドサイエン
ス;カタログ番号11666789001
BSA:ウシ血清由来のウシ血清アルブミン画分V;ロシュアプライドサイエンス;カタログ番
号 10735086001
Tween 20:Tween 20; Carl Roth;カタログ番号 9127.2
TMB:TMB溶液;ライフテクノロジーズ;カタログ番号 SB02
HCl:1M Titripur塩酸;メルク;カタログ番号1090571000
ELISAバッファー:PBS、0.5% BSA、0.05% Tween
洗浄バッファー:PBS、0.1% Tween
ブロックバッファー:PBS、2% BSA、0.05% Tween
手順:
1. 12.5μLのFcタグ付きヒトIL-1R3(0.5μg/ml)を含むPBSを、384 ウェル NUNC マキシソープ プレートに添加し、室温で1時間インキュベートする。
2. 90μLの洗浄バッファーで3回洗浄する。
3. 90μLのブロッキングバッファーを各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートす
る。
4. 洗浄バッファーで3回洗浄する。
5. 抗体を含むElisaバッファー12.5μLを添加し、室温で1時間インキュベートする。
6. 洗浄バッファーで3回洗浄する。
7. 1:5000 POD抗体を含むElisaバッファー12.5μLを添加し、室温で1時間インキュベー
トする。
8. 洗浄バッファーで6回洗浄する。
9. 15μL TMBを添加する。
10. 十分に進行した後、15μL HClを添加する。
11. 450nm/620nmで吸光度を読み取る。
【0156】
実施例2:ルシフェラーゼレポーター実験によるhIL-1R3-受容体を阻害するh-IL-1R3特
異的抗体の特性評価
アッセイ原理:
NF-kB-REホタルルシフェラーゼレポーターを発現する293T/17-FR細胞をPoly-D-Lysin-細
胞培養プレートに播種する。IL-1bでの刺激後、293T/17-FRライセートは、Steady-Glo Luciferase Assay Kitキットを使用して、活性化NF-kBをテストする。上清における機能的
抗体は、hIL-1R3に結合し、及びNF-kB活性を阻害し、これは低シグナルで示される。
材料:
プレート:細胞プレート:384ウェルPDL Costar細胞培養プレート;カタログ番号 3844
アッセイプレート:384ウェルlumitracホワイトプレート;コーニング;カタログ番号 3572細胞:293T/17-FR;アッセイ濃度 250.000細胞/ml
タンパク質:IL-1b(濃度0.03mg/ml;アッセイ濃度115pg/ml;ワーキング濃度230pg/ml)
標準Ab:P013_06(濃度0.2mg/ml;スタートワーキング濃度6μg/ml)
キット:Steady-Glo Luciferase Assay System;プロメガ;カタログ番号 E2510
細胞培地:DMEM培地; PAN Biotech;カタログ番号 P04-04510
FCS:ウシ胎児血清、HyClone; サーモ; カタログ番号 St30070.03
293T/17-FR培地:DMEM培地、10%FCS、(+20μg/mlハイグロマイシン-B)
手順:
1. 細胞培養手順:
トリプシン/EDTA(室温で30秒間だけインキュベート)を使用して、毎週月曜日(播種:5x106細胞/T175フラスコ)及び金曜日(播種:3x106細胞/T175フラスコ)にコンフルエン
ト293T/17-FR細胞を分ける。
2. 384ウェルPDLプレート(Corning cat#3844)に、25μl DMEM+10%FCSの細胞(0.25x106細胞/ml)を播種し、37℃、5%CO2で一晩インキュベートする。
3. 培地を吸引し、抗体を含む馴化培地又は単なる馴化培地12.5μLを添加し、37℃、5%CO2で30分間インキュベートする(プログラム:3回の吸引及びサンプル移動)
4. IL-1bを含むDMEM+10%FCS12.5μlを加え、37℃、5%CO2で5時間インキュベートする。5. 10分間、室温で培養細胞を平衡化する。
6. 25μLのSteady-Glo試薬を加え、ピペットで数回混合する。
7. 5分間放置し、45μLの上清を384ウェルのlumitrac白色プレート(Corning Cat#3572
)に移行する。
8. Tecan Readerリーダーで発光を測定する:積分時間:0.5秒
【0157】
実施例3:IL-1(α/β)刺激後のA549-NFκB-RE-Luc安定トランスフェクト細胞のNFκB発現の阻害
アッセイ原理:
A549-NFκB-RE-Luc安定トランスフェクト細胞(Signosis)を384ウェルプレートにピペットで移し、一晩インキュベートする。2日目に、抗IL1R3抗体をA549-NFkB-RE-Luc安定トランスフェクト細胞に結合させ、IL-1(α又はβ)の添加により刺激する。これは、NFκBシグナル伝達経路の活性化によるルシフェラーゼ遺伝子の転写をもたらし、及び細胞溶
解とルシフェリンの添加により測定できる。
抗体がNFkB経路の活性化を阻害し、その結果、発光シグナルを低下させることができるかどうかをテストする。
材料:
プレート:384ウェル低フランジ白色平底ポリスチレンTC処理マイクロプレート滅菌済み
;Corning;カタログ番号 3570
タンパク質:IL-1α(P026_09);組換えヒトIL-1アルファ/IL-1F1; 10μg/mL; R&D Systems;カタログ番号 200-LA-002
IL-1β(P026_10); 組換えヒトIL-1ベータ/IL-1F2; 25μg/mL; R&D Systems;カタログ番号 200-LB-005
標準Ab:MAB-15-0115; MAB Discovery GmbH; 2.51mg/ml;ワーキング濃度 10μg/ml
細胞:A549-NFκB-RE-Luc安定トランスフェクト細胞; Signosis;カタログ番号SL-0014
培地:DMEM; PAN; カタログ番号P04-04510
FCS:ウシ胎児血清南アフリカ低IgG; PAN; カタログ番号1552-P120909
ペニシリン/ストレプトマイシン:10,000 Uペニシリン/ ml; 10mgストレプトマイシン/ml; PAN Biotech;カタログ番号 P06-07100
剥離剤:トリプシン-EDTA 1x; PAN;カタログ番号 P10-023100(T175の場合は4mL/T75の場合は2mL;~8分37℃)
細胞培地:DMEM、10%FCS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン
検出キット:Steady-GloTMLuciferase Assay System; プロメガ;カタログ番号 E2510
手順:
1. 細胞培地でA549-NFκB-RE-Luc安定トランスフェクト細胞(3日間で1.7E+04細胞/cm2;2日間で2.28E+04細胞/cm2)を培養する。10継代を超えないようにする。
2. ウェルあたり25 μLの培地に40,000個のA549-NFκB-RE-Luc安定トランスフェクト細胞を(濃度=1.6x106細胞/mL)、白色細胞培養平底384ウェルプレートに、プレートアウトする。
37℃/5%CO2で一晩インキュベートする。
3. プレートから培地を吸引し、CyBioピペッティングロボットを使用して、10μLのサン
プル又は培地中の標準品をプレートに添加する(プログラム:フォルダーP026/NFκBの「培地除去及びサンプル移行」)。37℃/5%CO2で1時間インキュベートする。
4. CyBioピペッティングロボットを使用して、IL-1(α又はβ)を含む培地10μLをプレ
ートに添加し(プログラム:フォルダーP026/NFκBの「リザーバーからの移行」)(ワーキング濃度:0.2ng/mL;アッセイ濃度:0.1ng/mL)、37℃/5%CO2で5時間インキュベートする。
ステップ4を実行する前に、Steady-Gloプロトコルに従ってSteady-Glo基質をSteady-Gloバッファーに溶解し、この溶液とアッセイプレートを室温に平衡化する。
5. 20μLのSteady-Gloミックスを添加し、適切な細胞溶解を保証するために完全に混合する。室温で10分間インキュベートする。
6. 積分時間500 msに設定されたマイクロプレートリーダーを使用して、各ウェルの相対
発光単位を決定する(プログラム:Lumineszenz-384)。
【0158】
実施例4:細胞結合分析
A549及びNIH-3T3細胞を、DMEM+10%FCSで培養した。HEK-293細胞を、DMEM+15%FCS、及びSK-MEL-30を、RPMI+10%FBSで培養した。Accumax(Sigma)を使用して細胞を回収し、PBSで洗浄し、及び染色バッファー(BD Pharmingen)に再懸濁した。抗IL-1R3抗体を、染
色バッファー中の細胞とともに、4℃で30分間、10μg/mlの濃度でインキュベートした。EC50 SK-MEL-30細胞結合分析のために、細胞を20μg/mlから始まる1:2希釈系列でインキ
ュベートした。細胞を染色バッファーで洗浄し、Alexa-488標識ヤギ抗ヒト二次抗体(Dianova)と4℃で30分間インキュベートした。細胞を染色バッファーで洗浄し、1:100希釈DRAQ7(Abcam)死細胞染色含有バッファーに再懸濁した。BD Accuri C6 Samplerフローサ
イトメーターを使用して細胞を分析した。フィット曲線及びEC50の計算を、Excel(Microsoft)及びXLfit(IDBS)を使用して行った。
【0159】
実施例5:生化学的ヒトIL-1R3 ELISA
Nunc 384ウェルマキシソーププレートを、室温で60分間、PBS中の0.25μg/mlの濃度の
組換えFcタグ付きhIL-1R3(Ser21-Glu359)でコーティングした。プレートを洗浄バッフ
ァー(PBS 0.1%Tween)で3回洗浄し、PBS、0.2%BSA、0.05%Tweenで室温、60分間ブロ
ックした。洗浄バッファーで3回洗浄した後、抗体を6~0.03μg/ml(1:3希釈系列)の範囲の濃度でELISAバッファー(PBS、0.5%BSA、0.05%Tween)に添加し、室温で60分間イ
ンキュベートした。プレートを洗浄バッファーで3回洗浄した後、ペルオキシダーゼ結合
抗ヒトIgGで種特異的F(ab)2 断片(ヤギ、AbDセロテック)をELISAバッファーで1:5000に希釈し、室温で60分間インキュベートした。TMB基質溶液(Invitrogen、15μl/ウェル)を加える前に、プレートを洗浄バッファーで6回洗浄した。5分間のインキュベーション後、停止液(1M HCl、15μl/ウェル)を加え、Tecan M1000プレートリーダーを使用して
吸光度(450nm/620nm)を測定した。フィット曲線及びEC50の計算を、Excel(Microsoft
)とXLfit(IDBS)を使用して行った。
【0160】
実施例6:IL-1α及びIL-1β機能的中和アッセイ
A-549-NFκB-RE-Luc(Signosis)をDMEM、10%FCS、1%Pen/Strepで5日間培養した後、384ウェルの白い平底ポリスチレン組織培養処理マイクロプレート(Corning)に、25μL
培地で40,000細胞/ウェルの細胞密度で播種した。細胞を37℃/5%CO2で一晩インキュベートした。吸引により培地を除去し、モノクローナル又はポリクローナル(ヤギ抗ヒトIL-1R3、AF676、R&D Systems)抗体をさまざまな濃度で10μLの培地に加え、37℃/5%CO2で60分間インキュベートした。組換えヒトIL-1α又はIL-1β(R&D Systems)タンパク質を10μlの培地に0.1ng/mlの最終濃度で添加し、プレートを37℃/5%CO2で5時間インキュベートした。20μl Steady-GloTM(Promega)溶液を各ウェルに添加し、完全に混合し、プレ
ートを室温で10分間インキュベートした後、Tecan M1000プレートリーダーを使用して発
光を測定した。フィット曲線及びEC50の計算を、Excel(Microsoft)とXLfit(IDBS)を
使用して行った。
【0161】
実施例7:IL-1α及びIL-1β機能的中和アッセイ- A-549 IL6-放出アッセイ
A549細胞を、384ウェル透明細胞培養処理プレート(Corning)に、DMEM、10%FCS、1%Pen/Strepの25μl培地に6,000細胞/ウェルの密度で播種した。細胞を37℃/5%CO2で一晩
インキュベートした。吸引により培地を除去し、モノクローナル又はポリクローナル(ヤギ抗ヒトIL-1R3、AF676、R&D Systems)抗体を12.5μlの培地にさまざまな濃度で添加し、37℃/5%CO2で3時間インキュベートした。組換えヒトIL-1α又はIL-1β(R&D Systems)タンパク質を12.5μlの培地に0.1ng/mlの最終濃度で添加し、プレートを37℃/5%CO2で48時間インキュベートした。細胞上清中の分泌されたヒトIL-6レベルを、製造業者の指示
により、DuoSetヒトIL-6 ELISAキット(R&D Systems、カタログ番号DY206-05)を使用して測定した。フィット曲線及びEC50の計算を、Excel(Microsoft)及びXLfit(IDBS)を
使用して行った。
【0162】
実施例8:IL-33機能的中和アッセイ
HEK-BlueTMIL-33細胞(InvivoGen)をDMEM、10%FCSで5日間培養した後、15μLの培地
で25,000細胞/ウェルの細胞密度で、384ウェル透明、平底、細胞培養処理マイクロプレート(Corning)に播種した。様々な濃度のモノクローナル又はポリクローナル(ヤギ抗ヒ
トIL-1R3、AF676、R&D Systems)抗体を5μLの培地量に添加し、プレートを37℃/5%CO2で60分間インキュベートした。組換えヒトIL-33(R&D Systems)タンパク質を5μL培地
に5ng/mlの最終濃度で加え、プレートを37℃/5%CO2で一晩インキュベートした。5μLの
細胞上清を、20μLの2xQUANTI-Blue試薬(InvivoGen)を含有する透明な平底ポリスチレ
ンNBSTMマイクロプレート(Corning)に移した。プレートを37℃で45分間インキュベートし、Tecan M1000プレートリーダーを使用して655nmで光学密度を測定した。フィット曲線及びEC50の計算を、Excel(Microsoft)及びXLfit(IDBS)を使用して行った。
【0163】
実施例9:IL-36機能的中和アッセイ
HEK293/17-IF細胞(MAB Discovery GmbH)をDMEM、10%FCS、20μg/mlハイグロマイシ
ンで5日間培養した後、20μLの培地で30,000細胞/ウェルの細胞密度で、384ウェルの白色平底の、細胞培養処理プレート(Corning)に播種した。細胞を37℃/5%CO2で一晩インキュベートした。吸引により培地を除去し、様々な濃度のモノクローナル又はポリクローナル(ヤギ抗ヒトIL-1R3、AF676、R&D Systems)抗体を10μLの培地に添加した。プレートを37℃/5%CO2で60分間インキュベートした。組換えヒトIL-36g(R&D Systems)タンパ
ク質を10μlの培地に加えて最終濃度15ng/mlにし、プレートを37℃/5%CO2で5時間インキュベートした。20 μLのSteady-GloTM(Promega)溶液を各ウェルに添加し、完全に混合
し、プレートを室温で10分間インキュベートした後、Tecan M1000プレートリーダーを使
用して発光を読み取った。フィット曲線及びEC50の計算を、Excel(Microsoft)及びXLfit(IDBS)を使用して行った。
【0164】
実施例10:IL-1α、IL-33、及びIL-36αの中和
抗IL-1R3抗体の機能を、IL-1α、IL-33又はIL-36αのいずれかを有する3つの異なる細
胞株で試験し、シグナル伝達のためにIL-1R3に依存する3つのIL-1受容体(IL-1R1、-R4又は-R6)が関与するシグナル伝達経路への影響を決定した
ヒト上皮肺細胞株A549を、自己炎症性疾患などのIL-1依存性疾患のモデルとしてIL-1αで刺激した。細胞株を完全なF-12K培地(10%FCS、1%Pen/Strep)のT75フラスコ(37℃
、5%CO2)で培養し、アッセイの前に15継代を超えないで、平均2回/週で分けた。A549細胞を96平底プレートに播種(50.000/ウェル)し、3時間静置後、MAB-16-0030(20μg/mL-1μg/mL)又はIL-1Ra(10μg/mL)で1時間プレインキュベートした。次に細胞を組換えヒトIL-1α(50pg/mL、Peprotech)で24時間刺激した後、上清を回収してIL-6産生をアッセイした(Duoset ELISA、RnD Systems)。
IL-8産生のIL-33依存性誘導について、ヒトマスト細胞株(HMC-1)を調査した。細胞株は、T75フラスコ(37℃、5%CO2)で完全Iscoveの改変Dulbeccos培地(IMDM、10%FCS、1%Pen/Strep)で培養し、週に平均3回分け、細胞密度が、2*106/mLを超えないようにし、アッセイ前に15継代を超えないようにした。HMC-1細胞を96平底プレートに播種(30.000/ウェル)し、3時間静置後、MAB-16-0030(20μg/mL-1μg/mL)又はIL-1Ra(10μg/mL)で1時間プレインキュベートした。次に細胞を組換えヒトIL-33(20ng/mL、RnD Systems)で24時間刺激した後、上清を回収し、IL-8産生のアッセイ(Duoset ELISA、RnD Systems)
をした。
IL-36シグナル伝達への影響を、ヒト角化細胞株(HaCaT)を使用して調査した。細胞株を、完全DMEM(10%FCS、1%Pen/Strep)のT75フラスコ(37℃、5%CO2)で培養し、アッ
セイ前に15継代を超えないようにし、平均3回/週で分けた。HaCaT細胞を96平底プレート
に播種(50.000/ウェル)し、3時間静置後、MAB-16-0030(20μg/mL-1μg/mL)又はIL-1Ra(10μg/mL)で1時間プレインキュベートした。次に細胞を組換えヒトIL-36α(50ng/mL、RnD Systems)で24時間刺激した後、上清を採取してIL-8産生のアッセイ(Duoset ELISA、RnD Systems)をした。
【0165】
実施例11:PBMCの生存率及びIL-6放出
3人の健康なドナー由来の非刺激PBMC(500.000/ウェル)の生存率に対する抗hIL-1R3抗体MAB-16-0030の影響を、従来のMTT低下アッセイを使用してテストした。簡潔には、PBMC(200μL)を培地のみ又はMAB-16-0030(20μg/mL)とともにインキュベートした。24時
間後、3日後、及び5日後、PBMCをMTT(20μL)と2時間インキュベートし、その後ELISAリーダーで570nMの吸光度を測定した。吸光度及びMTTを変換する生細胞間の既知の直線性を使用して、生細胞数を、100%に設定したコントロールとして培地のみを使用して計算し
た。MTT分析の同じ日に、同じ条件下で及び同じドナーでインキュベートしたPBMCの上清
を回収し、並びにその後、IL-6産生についてアッセイして(Duoset ELISA、RnD Systems
)、MAB-16-0030単独の任意の可能性のある刺激効果を評価した。
【0166】
実施例12:PBMCの機能的ブロック
健康なドナーから新たに単離されたPBMCを使用して、多様な抗原で刺激されたヒト細胞におけるMAB-16-0030の影響を評価した。すべての刺激について、500.000PBMC/ウェルを
使用して実験を実施し、総容量200μLで刺激した。細胞を播種し、刺激前に1時間、培地
のみ、MAB-16-0030(20-0.1μg/mL)又はIL-1Ra(10μg/mL)のいずれかとインキュベー
トした。以下の刺激が使用された;LPS(10ng/mL、24時間、FCSなしRPMI)、抗ヒトCD3/CD28(1.25μg/mL;0.5μg/mL(eBioscience)3日間、RPMI 10%FCS)、IL-12/-33(2ng/mL;20ng/mL(Peprotech;RnD Systems))、3日、RPMI10%FCS)又は熱不活性化カンジダア
ルビカンス(0.5*106/mL、5日、RPMI10%FCS)。刺激後、上清を回収し、製造業者のプロトコルによりDuoset ELISA(RnD Systems)を使用してサイトカイン産生をアッセイした
。
【0167】
実施例13:全血中の免疫細胞の機能的ブロック
熱不活化カンジダアルビカンスを、全血を刺激するために使用した。健康なドナーから新たに回収した血液(EDTAチューブ)をマイクロ遠心チューブ(250μL/チューブ)に分
配し、培地のみ(RPMI、FCSなし)、MAB-16-0030(20-0.1μg/mL)、又はIL-1Ra(10μg/mL)で1時間プレインキュベートし、その後カンジダアルビカンス(0.5*106/mL)、最終
容量1 mLで刺激した。24時間のインキュベーション(37℃、5%CO2)後、上清を回収し、ELISAによりサイトカイン産生についてアッセイした(Duoset、RnD Systems)。
【0168】
実施例14:混合リンパ球反応(MLR)
健康で、一致しないドナーのPBMCを1:1の比率(250.000/ドナー)で混合し、培地のみ、MAB-16-0030(20-1μg/mL)又はIL-1Ra(10μg/mL)のいずれかで5日間(RPMI、10%FCS)インキュベートした。サイトカイン産生を、Quansysマルチプレックスプラットフォームを使用して、製造業者のプロトコルに従ってアッセイした。
【0169】
実施例15:NFkBルシフェラーゼ遺伝子レポーターアッセイ
NFkBルシフェラーゼレポーターNIH3T3細胞(Signosis)を、白色細胞培養処理済み平底384ウェルプレートで、ウェルあたり25μL DMEM、10%FCS、1%Pen/Strep培地で20,000細胞(濃度=0.8x106細胞/mL)を播種した。細胞を37℃/5%CO2で一晩インキュベートした。培地を吸引し、MAB-16-0531を含む抗体溶液12.5μLを様々な濃度で細胞に添加した。37℃/5%CO2で1時間インキュベートした後、12.5μLのマウスIL-1βを培地に添加し、最終濃
度50 pg/mlにした。細胞を37℃/5%CO2で5時間インキュベートした。25μLのSteady-GloT
M(Promega)溶液を各ウェルに加え、完全に混合し、プレートを室温で10分間インキュベートした後、Tecan M1000プレートリーダーを使用して発光を測定した。フィット曲線とEC50計算を、Excel(Microsoft)及びXLfit(IDBS)を使用して取得した。
【0170】
実施例16:NIH-3T3 IL6放出アッセイ
NIH 3T3細胞を、細胞培養処理された、平底384ウェルプレートに、ウェルあたり15μLDMEM+1%FCS培地で12,500細胞(濃度=0.83 x 106細胞/mL)を播種した。細胞を37℃/5%CO2で2時間インキュベートした。10μLの抗体MAB-16-0531を培地に様々な濃度で細胞に添加した。37℃/5%CO2で1.5時間インキュベートした後、培地に25μLのヒトIL-1βを添加し
、最終濃度50pg/mlにした。細胞を37℃/5%CO2で一晩インキュベートした。培養上清中の分泌されたマウスIL6は、製造業者の指示により、ELISA(DuoSet ELISA; R&D Systems;
カタログ番号 840171)によって定量化された。フィット曲線とEC50の計算を、Excel(Microsoft)とXLfit(IDBS)を使用して行った。
【0171】
実施例17:尿酸一ナトリウム結晶(MSU)誘発マウス腹膜炎モデル
マウスあたり3 mgのMSU(Invitrogen)を刺激剤として腹腔内注射(I.P)に使用し、阻害には抗IL-1R3(MAB-16-0531、500μg/マウス)又はIL-1Ra(10mg/kg)を使用した。生
理食塩水を、刺激及び阻害の両方のコントロールとして使用した。4つのグループは、刺
激のコントロールとして4匹のマウス(生理食塩水(阻害)+生理食塩水(刺激))、MSU
のみの8匹のマウス(生理食塩水+ MSU)、MAB-16-0531の8匹のマウス(500μg/マウス+MSU)及びIL-1Ra(10mg/kg+MSU)の8匹のマウスが含まれる。MAB-16-0531及びIL-1RaをI.P.に注射1時間後、MSU刺激をした。MSU又は生理食塩水の注射の6時間後に、マウスを安楽
死させた。血液をEDTAを含む微量遠心管に採取し、腹水を10 mLの氷冷PBSを使用して洗浄により採取した。骨髄細胞を単離し、及び臓器を液体窒素で直ちに凍結した。腹水中の細胞数をカウントした(HESKA HemaTrue)。
【0172】
実施例18:MSU腹膜炎における好中球の活性及びサイトカイン産生
好中球は痛風で最も豊富な細胞タイプであり、及び活性はエラスターゼ産生と関連する。実施例17でのIP液及びIP細胞ライセートを、好中球エラスターゼマーカーのレベル及びMPOレベルについて分析した。IPライセートを、TritonX 0.5%で調製した。サイトカインを、IP液とIP細胞ライセートの両方で測定した。IP液中のサイトカインの量が少ない場合、8mLの液を、4℃の吸湿性溶液としてのポリエチレングリコール(MN6-8000、Sigma Aldrich)に浸した事前に煮沸した(15分)透析膜(MWCO 3.5kDa、Spectra/Por3透析膜、Spectrumlabs)で濃縮した(最終範囲:4.7-10.9x濃縮)。初期濃度を、透析濃縮係数で割る
ことによって計算した。脾臓及び全血のライセートのサイトカインレベルについてアッセイし、ライセートのタンパク質濃度に対して標準化した。サイトカイン濃度を、Duoset ELISA(R&D Systems)又はマルチプレックスアッセイ(Quansys Biosciences)を使用し
たプロトコルに従って測定した。脾臓ライセート及びIP液中のタンパク質レベルを、タンパク質アッセイ染色試薬(BioRad)及びBSAを標準として使用し、標準的なブラッドフォ
ードアッセイでアッセイした。
図20a-cに示すように、a-mIL1R3抗体MAB-16-0531で処理すると、MSU誘発細胞内エラスターゼ及びIP液中のエラスターゼが有意に低下する。IL-6、G-CSF、KC及びCCL-2のレベルは、MAB-16-0531マウスのIP液中で強く低下している。全身的に、脾臓ライセートではMPO及びKCも減少し、血漿ではIL-6及びG-CSFが低下する(
図20d
)。
【0173】
実施例19:OVAアレルギー性喘息in vivoモデル
OVA誘発アレルギー性喘息モデルは、IL-33依存性のin vivoモデルとして適用される。
野生型6週齢のC57BL/6雄マウス(Jackson Laboratories)を、Imject Alum アジュバント(100μL、ThermoFischer)と1:1で混合したOVA(15μg/100μL、Sigma-Aldrich)を使
用してIP感作した。1、14、及び21日目にマウスに注射した。25~28日目に、マウスにMAB
-16-0531(500μg/マウス、MAB Discovery)又はマウスIgG2a-LALAコントロール(500μg/マウス、MAB Discovery、グループ「ビヒクル」及び「OVA」)をIP注射した。OVAの気管内注入(50μg/マウス、50μL)を、短期間の二酸化炭素麻酔で26~28日目に注入後30分
で行った。気管支肺胞洗浄(BAL)は、気管にカテーテルを挿入し、3 x 1 mlの洗浄液で
気道を洗浄することにより実施した。その後、フローサイトメトリーを使用した細胞表現型分類を行った。マウスFcブロック(BD Biosciences)に続くフローサイトメトリーには、マウス標的に対する以下のモノクローナル抗体(mAbs)を使用した:PE-Cy7 CD11c(N418)、PerCP-Cy5.5 CD11b(M1/70)、FITC-Ly6G(1A8-Ly6G)(すべてeBioscienceから);PE-Siglec-F(E250-4440)(BD Biosciencesから)(10mg/ml BSA、0.1mg/ml NaN
3含有DPBSで染色)。FlowJoソフトウェア(Treestar)を使用して、Canto IIフローサイトメー
ターで細胞を分析した。BAL細胞をトリパンブルー排除により数えた。BALに続いて、DPBS中の予熱された3%低融点アガロースで肺を膨らませ、冷却してから一晩リン酸緩衝ホル
マリンに移した。肺をパラフィンに包埋し、切片にし、H&E及びPASで染色した。ライカDM2000 LED顕微鏡及びLAS V4.12ソフトウェアを使用して、組織構造を評価した。
図21a-b
は、MAB-16-0531処理により、総BAL白血球数(WBC)、好酸球、及び好中球が有意に減少
したことを示す。
図21cでは、肺切片のHE染色によりMAB-16-0531処理による病理の低下が確認され、PAS染色により気道内の粘液産生杯細胞の量が減少していることが示される(PAS)。
【0174】
実施例20:イミキモド誘発乾癬in vivoモデル
IL-36は皮膚の炎症に顕著な役割を果たし、及びIL-36Raの突然変異はヒトの膿疱性乾癬に関連している。したがって、皮膚炎症疾患への抗IL1R3療法の適用は、イミキモド誘発
乾癬in vivoモデルを使用してテストした。WT12週齢C57BL/6マウス(Jackson Laboratories)の背中の毛を剃り、及び脱毛クリーム(Nair)で処理した。75mg IMQ(Aldara 5%IMQ)又はコントロールクリーム(ワセリンクリーム)の塗布を、バックスキン(IMQ;IMQ(n=10)及びa-mIL1R3(n=9)群、コントロールクリーム;ビヒクル群(n=3))並びに1日
おき(1、3、及び5日目)のIP注射で毎日(1-5日)行った。ビヒクル及びIMQ群はマウスIgGコントロール(20mg/kg、MABディスカバリー)を受け、治療グループはMAB-16-0531(20mg/kg、MABディスカバリー)を受けた。耳には、左耳にコントロールクリーム(すべて
のマウス;5mgワセリンクリーム)並びに右耳に適切な刺激クリーム(ビヒクル; 5mgワセ
リンクリーム、IMQ及びa-mIL1R3; 5mg IMQクリーム)を同時に塗布した。
体重を、毎日モニターした。マウスを6日目に安楽死させ、ゲージを使用して左右の耳
の厚さを測定した。HemaTrueアナライザー(HESKA)を使用して、全血細胞数を評価した
。背部皮膚の写真は、ブラインドの6人によって視覚的に採点(紅斑及びスケーリング、
スコア0(無反応)から4(最大の影響を受けた))された。RNAを皮膚穿刺生検から単離
した。ライセートからRNAを抽出し、0.8μg RNA(NanoDrop)(高容量cDNA逆転写キット
(Applied Biosystems))からcDNAを産生した。SYBR Greenマスターミックス(Applied Biosystems)及び0.1μMのサイトカイン特異的プライマーを使用して、50 ng cDNAをリアルタイムqPCR反応に使用した。GAPDHを参照遺伝子として使用し、及び比率を分析された
プライマー効率を含むPfaffl法を使用して計算した。
ミエロペルオキシダーゼ(MPO)レベルを、ELISAにより新たに得られた皮膚生検で測定した。MPOレベルを、総タンパク質測定(ブラッドフォード法で決定)に対して標準化し
た。
図22及び23は、MAB-16-0531での治療がイミキモド誘発皮膚炎症を有意に低下させるこ
とを示しており、これは皮膚顆粒球浸潤、MPOレベル及びIL17F mRNA発現の低下とも関連
している。
【0175】
実施例21:IgG1及びIgG1-LALA抗IL1R3抗体によるFc受容体媒介エフェクター機能の活性化
ADCCなどのFc媒介エフェクター細胞機能の誘発におけるヒト化抗IL1R3抗体のIgG-1及び
IgG1-LALAバージョンの活性をテストするために、MAB-16-0030をIgG1又はIgG1-LALA抗体
として産生した。hIL1R3発現標的細胞SK-MEL-30細胞を、384ウェル組織培養処理プレートに、10%FCS含有 25μl RPMI培地で、2500細胞/ウェルの密度で播種した。播種の24時間
後、4%の低IgG-FCS含有RPMI培地に4000エフェクター細胞/ウェル(ADCC Bioassayエフェクター細胞、Jurkat、Promega Cat.#G701A)を添加した。次に、抗体を10000~0.002 ng/mlの範囲の最終濃度まで添加し、プレートを37℃、5%CO
2で6時間インキュベートした。ルシフェラーゼ遺伝子レポーターJurkat細胞におけるNF-kBシグナル伝達の活性を、製造
業者の指示(Bio-Gloルシフェラーゼアッセイ)に従って、Tecan M1000マイクロプレートリーダーを使用して測定した。「誘導比率(Fold of induction)」値は、RLU(抗体処理-バックグラウンド)/RLU(抗体コントロールなし-バックグラウンド)を表す。フィット曲線及びEC50計算を、Excel(Microsoft)及びXLfit(IDBS)を使用して取得した。
図24
に示すように、MAB-16-0030のIgG1バージョンのみがエフェクターJurkatレポーター細胞
でNF-kBシグナル伝達を誘導するが、IgG1-LALAバージョンでのエフェクター細胞活性化は消失した。
【配列表】