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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】光スペクトラムアナライザ
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/18 20060101AFI20241217BHJP
   G01J 3/32 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G01J3/18
G01J3/32
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023160209
(22)【出願日】2023-09-25
【審査請求日】2023-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 真樹
(72)【発明者】
【氏名】森本 晋司
(72)【発明者】
【氏名】吉野 創
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-033585(JP,A)
【文献】特許第3986031(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2022/0049989(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00- 4/04
G01J 7/00- 9/04
G01J 1/00- 1/60
G01J 11/00
G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/61
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定光に含まれる波長をその波長に応じた方向に分光させた回折光を出射する分光部(4)と、
前記分光部(4)から出射される前記回折光を受光して電気信号に変換し光パワー信号として出力する受光部(8)と、
波長掃引された前記回折光を前記受光部(8)に受光させる掃引部(9)と、
前記光パワー信号の高周波ノイズを除去するローパスフィルタ(16)と、
前記ローパスフィルタ(16)から出力された前記光パワー信号をA/D変換するA/D変換部(18)と、
前記光パワー信号の信号レベルの低さに応じて前記ローパスフィルタ(16)の通過帯域を低く設定する通過帯域設定部(12)と、
波長掃引中に、測定間隔ごとに前記A/D変換部(18)によりサンプリングされデジタル値に変換された前記光パワー信号に基づいて前記被測定光に含まれる波長ごとの光パワーを求める制御部(12)と、を備えた光スペクトラムアナライザ(1)において、
最も低い前記通過帯域が設定されたとき、他の前記通過帯域が設定されたときよりも前記測定間隔を長く設定する測定間隔設定部(12)と、
前記A/D変換部(18)によりサンプリングされデジタル値に変換された前記光パワー信号に基づいて、前記測定間隔が長く設定されている期間において、前にサンプリングされた波長と次にサンプリングされた波長との間の波長における前記光パワー信号を補間する補間部(12)と、を有する、
光スペクトラムアナライザ(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の光スペクトラムアナライザ(1)において、
前記補間部による補間の有無を選択操作できる操作部(15)を備えた、
光スペクトラムアナライザ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光スペクトラムアナライザに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定光のスペクトラム(被測定光に含まれる波長ごとの光パワー)を測定するために、例えば特許文献1に示されたような光スペクトラムアナライザが用いられている。特許文献1の光スペクトラムアナライザは、被測定光を回折格子に入射して、被測定光を分散分光させた回折光を出射させ、回折格子を回転させて、波長掃引された回折光を受光部に受光させている。
【0003】
しかしながら、従来の光スペクトラムアナライザにおいては、スペクトラムの測定精度と掃引速度とはトレードオフの関係にあり、測定精度を高くすると、掃引速度を落とす必要があり、掃引速度を上げると測定精度が悪くなる、という課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3274035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被測定光のスペクトラムの測定精度を落とさずに掃引速度を上げることができる光スペクトラムアナライザを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る光スペクトラムアナライザは、下記[1]~[2]を特徴としている。
[1]
被測定光に含まれる波長をその波長に応じた方向に分光させた回折光を出射する分光部(4)と、
前記分光部(4)から出射される前記回折光を受光して電気信号に変換し光パワー信号として出力する受光部(8)と、
波長掃引された前記回折光を前記受光部(8)に受光させる掃引部(9)と、
前記光パワー信号の高周波ノイズを除去するローパスフィルタ(16)と、
前記ローパスフィルタ(16)から出力された前記光パワー信号をA/D変換するA/D変換部(18)と、
前記光パワー信号の信号レベルの低さに応じて前記ローパスフィルタ(16)の通過帯域を低く設定する通過帯域設定部(12)と、
波長掃引中に、測定間隔ごとに前記A/D変換部(18)によりサンプリングされデジタル値に変換された前記光パワー信号に基づいて前記被測定光に含まれる波長ごとの光パワーを求める制御部(12)と、を備えた光スペクトラムアナライザ(1)において、
最も低い前記通過帯域が設定されたとき、他の前記通過帯域が設定されたときよりも前記測定間隔を長く設定する測定間隔設定部(12)と、
前記A/D変換部(18)によりサンプリングされデジタル値に変換された前記光パワー信号に基づいて、前記測定間隔が長く設定されている期間において、前にサンプリングされた波長と次にサンプリングされた波長との間の波長における前記光パワー信号を補間する補間部(12)と、を有する、
光スペクトラムアナライザ(1)であること。
[2]
[1]に記載の光スペクトラムアナライザ(1)において、
前記補間部による補間の有無を選択操作できる操作部(15)を備えた、
光スペクトラムアナライザ(1)であること。
【0007】
上記[1]の構成の光スペクトラムアナライザによれば、最も低い通過帯域が設定されたとき測定間隔を長くし、かつ、電気信号の補間も行われる。このため、被測定光のスペクトラムの測定精度を落とさずに掃引速度を上げることができる。
上記[2]の構成の光スペクトラムアナライザによれば、補間を行うか否かをユーザが選択することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被測定光のスペクトラムの測定精度を落とさずに掃引速度を上げることができる光スペクトラムアナライザを提供することができる。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の光スペクトラムアナライザの一実施形態を示す構成図である。
図2図2は、図1に示す測定部の詳細を示す回路図である。
図3図3は、図1に示す表示部に表示されるグラフの一例である。
図4図4は、図1に示す光スペクトラムアナライザの光パワー信号のサンプリングについて説明するためのタイムチャートである。
図5図4は、図1に示す制御部の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0012】
図1に示すように、光スペクトラムアナライザ1は、被測定光としてのパルス光に含まれる波長ごとの光パワーを測定し、表示する装置である。
【0013】
光スペクトラムアナライザ1は、入射部2と、コリメータ3と、回折格子4(=分光部)と、集光器5と、スリット6と、集光器7と、受光部8と、モータ9(=掃引部)と、を備えている。入射部2は、例えば光ファイバから構成され、パルス光を出射する。パルス光はコリメータ3に入射される。コリメータ3は、入射部2からのパルス光を平行光に変換する。コリメータ3から出射された平行光は、回折格子4に入射される。
【0014】
回折格子4は、コリメータ3から出射された平行光を分散分光する。本実施形態では、回折格子4は、モータ9により紙面に垂直な回動軸10回りに回動自在に設けられている。回折格子4の表面には、回動軸10と直交する方向に沿った微細な溝部(図示せず)が回動軸方向に沿って複数並べて形成されている。回折格子4は、コリメータ3からの平行光が入射されると、分散分光した回折光を出射する。回折光は、回折現象によってパルス光に含まれる波長をその波長に応じた方向に分光させた光である。回折光は、集光器5に入射される。モータ9は、回折格子4を回転させて、波長掃引された回折光を受光部8に受光させる。すなわち、回折格子4の回転に伴って連続的に波長が変化する回折光が、受光部8に受光される。
【0015】
集光器5は、回折光を後述するスリット6が配置された位置に集光する。スリット6を通った回折光は、集光器7に入射される。集光器7は、入射された回折光を受光部8が配置された位置に集光する。受光部8は、フォトダイオードから構成され、入射された回折光の光パワーに応じた電流が流れる。
【0016】
光スペクトラムアナライザ1はさらに、測定部11と、制御部12と、メモリ13と、表示部14と、操作部15と、を備えている。測定部11は、図2に示すように、電流電圧変換部16と、増幅部17と、A/D変換部18と、を有している。電流電圧変換部16は、受光部8に流れる電流を電圧に変換して光パワー信号(=電気信号)として出力する。電流電圧変換部16は、光パワー信号の高周波ノイズを除去するローパスフィルタとしても機能する。電流電圧変換部16は、ローパスフィルタの通過帯域幅(VBW:Video Band Width)及びゲインが変更可能に設けられ、後述する制御部12によりVBW及びゲインが制御される。
【0017】
次に、電流電圧変換部16の詳細な構成について説明する。電流電圧変換部16は、アンプAmp1と、アンプAmp1の入力と出力との間に接続された複数の素子161~16n(nは整数)と、複数の素子161~16nとアンプAmp1との接続をオンオフするスイッチSW1~SWnと、を有している。素子161~16nは、コンデンサ及び抵抗から構成されている。スイッチSW1~SWnのオンオフを制御して、アンプAmp1に接続する素子161~16nを切り替えることにより、電流電圧変換部16のVBW及びゲインを変更することができる。
【0018】
増幅部17は、電流電圧変換部16から出力された光パワー信号を増幅する。本実施形態において、増幅部17は、それぞれ異なるゲインの複数のアンプAmp21~Amp2m(mは整数)を有する。複数のアンプAmp21~Amp2mは各々、出力がA/D変換部18に接続されている。電流電圧変換部16によって高周波ノイズが除去され、増幅部17によって増幅されたアナログの光パワー信号は、A/D変換部18に入力される。
【0019】
A/D変換部18は、複数のA/D変換器を備え、それぞれのA/D変換器への入力を有する。複数のA/D変換器のそれぞれの入力には、複数のアンプAmp21~Amp2mの出力が接続されている。A/D変換部18は、複数のA/D変換器の入力に各々入力されたアナログの光パワー信号をサンプリングしてA/D変換し、光パワー信号の信号レベルのデジタル値を制御部12に出力する。
【0020】
制御部12は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)またはDSP(Digital Signal Processor)から構成され、光スペクトラムアナライザ1全体の制御を司る。制御部12は、モータ9を等速度で回転させて、波長掃引された回折光を受光部8に受光させる。制御部12は、離散的な波長ごとに光パワー信号を取得する。そして、制御部12は、離散的な波長ごとに取得した光パワー信号を繋ぎ合わせて、図3に示すような連続的な波長ごとの光パワー信号の信号レベル(dB)を表示部14に表示させる。メモリ13は、光パワー信号のデジタル値などが記憶される。
【0021】
制御部12は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)から構成され、光スペクトラムアナライザ1全体の制御を司る。制御部12は、モータ9を等速度で回転させて、波長掃引された折光を受光部8に受光させる。制御部12は、離散的な波長ごとに光パワー信号を取得する。そして、制御部12は、離散的な波長ごとに取得した光パワー信号を繋ぎ合わせて、図3に示すような連続的な波長ごとの光パワー(dB)を表示部14に表示させる。メモリ13は、光パワー信号のデジタル値などが記憶される。
【0022】
操作部15は、ユーザが後述するVBWの最低値を入力するためのものである。
【0023】
次に、図3を参照してVBWの設定の一例について説明する。その前に光パワー信号の信号レベルとVBWとの関係について説明する。光パワー信号の信号レベルは、低くなるほど信号対ノイズ比(SN比)が小さくなり、ノイズに弱くなる。一方、VBWは、低い(狭い)帯域ほど高周波ノイズをカットできる帯域が広くなるため、高周波ノイズの影響を抑えることができる。しかしながら、光パワー信号がパルス信号である場合、VBWが低い帯域ほど電流電圧変換部16から出力されるパルスの立ち上がり時間、立ち下がり時間が長くなる。このため、光パワー信号の信号レベルが高いときにVBWを低くすると、電流電圧変換部16の出力が高い信号レベルに達するまでに時間がかかり、結果、信号のピークを捉えるまでの掃引時間が長くなってしまう。逆に、光パワー信号の信号レベルが低いときにVBWを高くしてしまうと掃引時間は短くなるが、高周波ノイズの影響を抑えることができなくなってしまう。
【0024】
そこで、制御部12は、光パワー信号の信号レベルの低さに応じて、低いVBWに設定する。これにより、高周波ノイズの影響を抑えつつ掃引時間が長くなるのを抑制することができる。VBWが設定されると、ゲインも設定される。本実施形態では、ユーザが操作部15を操作してVBWの最低値を設定できる。制御部12は、光パワー信号の信号レベルが最も低い範囲であるときに、VBWをユーザが設定したVBWの最低値に設定する。
【0025】
図3に示す例では、VBWの最低値が1kHz帯(1kHZ以下が通過帯域)に設定されている。光パワー信号の信号レベルが最も低い範囲である-70dB~-50dBであるときに、最低値の1kHz帯が設定される。光パワー信号の信号レベルが-50dB~-35dBであるときに、2kHz帯が設定される。光パワー信号の信号レベルが-35dB~-20dBであるときに、3kHz帯が設定される。光パワー信号の信号レベルがが-20dB~0dBであるときに、4kHz帯が設定される。
【0026】
次に、光スペクトラムアナライザ1の測定間隔について説明する。制御部12は、A/D変換部18を制御して、波長掃引中に測定間隔ごとに光パワー信号をサンプリングする。上述したようにVBWが低いほど光パワー信号の立ち上がり時間、立下り時間が長くなるため、精度よくスペクトルを測定するためには、VBWが低いほど測定間隔を空ける必要がある。例えば、VBWが1kHz帯の場合、測定間隔を400μs以上にする必要があり、VBWが2kHz帯の場合、測定間隔を200μs以上にする必要がある。
【0027】
従来の光スペクトラムアナライザでは、VBWの最低値である1kHz帯に合わせて、測定間隔が400μsに設定される。このため、測定開始点から測定終了点までの間にM個(Mは整数)の波長における光パワー信号をサンプリングする必要がある場合、測定開始点から測定終了点までの掃引時間が400μs×Mとなる。
【0028】
これに対して、本実施形態の光スペクトラムアナライザ1は、VBW=2kHz帯に合わせて、測定間隔が200μsに設定される。このため、測定開始点から測定終了点までの掃引時間を200μs×Mと従来のスペクトルアナライザの半分の時間にすることができる。しかしながら、VBWが1kHzに設定されている期間に測定間隔を200μsとすると、精度よくスペクトルを測定することができない。
【0029】
そこで、図4に示すように、VBWが1kHz帯に設定されている期間は、光パワー信号のサンプリングを一つとばして測定間隔400μsに設定してサンプリングする。しかしながら、それだとサンプリングする波長が足りない。そこで、A/D変換部18によりサンプリングされた光パワー信号に基づいて、測定間隔が400μsに設定されている期間において、前にサンプリングされた波長と次にサンプリングされた波長との間の波長における電気パワー信号を補間する。補間としては、最小二乗法など周知の補間方法を用いることができる。
【0030】
これにより、VBWが1kHz帯に設定され測定間隔が400μsに設定された場合であっても、測定間隔を200μsに設定した場合と同じサンプリング数の光パワー信号を得ることができ、精度よくスペクトルを測定することができる。
【0031】
次に、上述した光スペクトラムアナライザ1の動作について図5のフローチャートを参照して以下説明する。ここでは、説明を簡単にするためにVBWの最低値が1kHz帯に設定された場合について説明する。制御部12は、操作部15の操作に応じて掃引を開始する。このとき、回折格子4は、測定開始点にあるものとする。制御部12は、モータ9を制御して、回折格子4を測定終了点に向けて等速度で回転させる(S1)。モータ9の回転速度は、掃引時間200μs×Mかけて測定開始点から測定終了点に達するように設定される。
【0032】
次に、制御部12は、モータ9に取り付けられた図示しないエンコーダの出力から回折格子4が測定終了点に到達したか否かを判定する(S2)。測定終了点に到達していなければ(S2でN)、制御部12は、スイッチSW1~SWnのオンオフを制御して、光パワー信号の信号レベルに応じて電流電圧変換部16のVBWを設定する(S3)。光パワー信号の信号レベルは、A/D変換部18によりA/D変換された光パワー信号から判定する。
【0033】
次に、制御部12は、S3で設定されたVBWが1kHz帯であれば(S4でY)、測定間隔を400μsに設定する(S5)。一方、制御部12は、S3で設定されたVBWが1kHz帯でなければ(S4でN)、測定間隔を200μsに設定する(S6)。
【0034】
次に、制御部12は、全てのアンプAmp21~Amp2mにより増幅された光パワー信号をA/D変換したデジタル値を読み出して、読み出したデジタル値に基づいて出力が飽和していないアンプAmp21~Amp2mの1つを選択するアンプ選択処理を行う(S7)。次に、制御部12は、S5またはS6で設定した測定間隔が経過して、次の波長に到達したか否かを判定する(S8)。次の波長に到達すると(S8でY)、制御部12は、A/D変換部18にサンプリングさせ、A/D変換させた光パワー信号のデジタル値を読み出して、メモリ13に格納するA/D読み出し処理を行う(S9)。
【0035】
次に、制御部12は、エンコーダの出力に応じた波長をS8で到達した次の波長として設定し、S9で読み出した光パワー信号のデジタル値を次の波長の光パワー信号として、メモリ13に格納した後(S10)、S2に戻る。
【0036】
S2に戻って回折格子4が測定終了点に到達すると(S2でY)、測定開始点から測定終了点の間で離散的な波長ごとの光パワー信号がメモリ13に格納されている。即ち、図4の黒丸で示した時間でサンプリングした光パワー信号がメモリ13に格納されている。次に、制御部12は、サンプリングした光パワー信号に基づいて、測定間隔が400μsに設定されている期間において、前にサンプリングされた波長と次にサンプリングされた波長との間の波長における電気パワー信号を補間する(S11)。即ち、図4の白丸で示した光パワー信号が補間され、メモリ13に格納される。
【0037】
次に、制御部12は、この離散的な波長ごとにサンプリングまたは補間された光パワー信号を繋ぎ合わせて、図3に示すような連続的な波長ごとの光パワーを示す表示波形を生成して表示部14に表示させ(S12,S13)、処理を終了する。
【0038】
上述した実施形態によれば、最も低いVBWが設定されたとき測定間隔を長くし、かつ、電気信号の補間も行われる。このため、被測定光のスペクトラムの測定精度を落とさずに掃引速度を上げることができる。
【0039】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0040】
上述した実施形態では、制御部12は、掃引終了後に補間処理を行っていたが、これに限ったものではない。掃引中に補完処理を行うようにしてもよい。
【0041】
上述した実施形態では、制御部12は、常に補間処理を行っていたが、これに限ったものではない。ユーザが補間処理の有無を操作部15の操作により選択できるようにしてもよい。
【0042】
上述した実施形態では、被測定光としてはパルス光を用いていたが、これに限ったものではない。被測定光としては連続的に点灯する連続光であってもよい。
【0043】
上述した実施形態では、A/D変換部18は複数のアンプAmp21~Amp2mの出力が接続された複数の入力を有していたが、これに限ったものではない。例えば、A/D変換部18の入力を一つにして、スイッチによりA/D変換部18の入力に接続するアンプAmp21~Amp2mを切り替えるよういしてもよい。また、アンプを一つにしてアンプに接続される抵抗を切り替えることにより、一つのアンプのゲインを切り替えるようにしてもよい。
【0044】
ここで、上述した本発明に係る光スペクトラムアナライザの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[2]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
被測定光に含まれる波長をその波長に応じた方向に分光させた回折光を出射する分光部(4)と、
前記分光部(4)から出射される前記回折光を受光して電気信号に変換し光パワー信号として出力する受光部(8)と、
波長掃引された前記回折光を前記受光部(8)に受光させる掃引部(9)と、
前記光パワー信号の高周波ノイズを除去するローパスフィルタ(16)と、
前記ローパスフィルタ(16)から出力された前記光パワー信号をA/D変換するA/D変換部(18)と、
前記光パワー信号の信号レベルに応じて前記ローパスフィルタ(16)の通過帯域を設定する通過帯域設定部(12)と、
波長掃引中に、測定間隔ごとに前記A/D変換部(18)によりサンプリングされデジタル値に変換された前記光パワー信号に基づいて前記被測定光に含まれる波長ごとの光パワーを求める制御部(12)と、を備えた光スペクトラムアナライザ(1)において、
最も低い前記通過帯域が設定されたとき、他の前記通過帯域が設定されたときよりも前記測定間隔を長く設定する測定間隔設定部(12)と、
前記A/D変換部(18)によりサンプリングされデジタル値に変換された前記光パワー信号に基づいて、前記測定間隔が長く設定されている期間において、前にサンプリングされた波長と次にサンプリングされた波長との間の波長における前記光パワー信号を補間する補間部(12)と、を有する、
光スペクトラムアナライザ(1)。
[2]
[1]に記載の光スペクトラムアナライザ(1)において、
前記補間部による補間の有無を選択操作できる操作部(15)を備えた、
光スペクトラムアナライザ(1)。
【符号の説明】
【0045】
1 光スペクトラムアナライザ
4 回折格子(分光部)
8 受光部
9 モータ
12 制御部(通過帯域設定部、測定間隔設定部、補間部)
15 操作部
16 電流電圧変換部(ローパスフィルタ)
18 A/D変換部
【要約】
【課題】被測定光のスペクトラムの測定精度を落とさずに掃引速度を上げることができる光スペクトラムアナライザを提供する。
【解決手段】制御部12は、最も低い1kHz帯のVBWが設定されたときの測定間隔を400μs、他のVBWが設定されたときよりも測定間隔を200μsに設定する。制御部12は、1kHz帯のVBWが設定されている期間において、A/D変換部18によりサンプリングされた光パワー信号に基づいて、前にサンプリングされた波長と次にサンプリングされた波長との間の波長における光パワー信号を補間する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5