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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】神経学的障害を診断または予測する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20241217BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20241217BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20241217BHJP
【FI】
G01N33/53 D
G01N33/50 P
C12Q1/6851 ZNA
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023172563
(22)【出願日】2023-10-04
(62)【分割の表示】P 2020561746の分割
【原出願日】2019-05-01
(65)【公開番号】P2024009871
(43)【公開日】2024-01-23
【審査請求日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】1807178.7
(32)【優先日】2018-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】524194403
【氏名又は名称】イノベーション アルスター リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INNOVATION ULSTER LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ドゥグエズ,ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】ダディー,ウィリアム
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-525211(JP,A)
【文献】PLoS ONE,2011年,Vol.6, No.10,e25545
【文献】Gene,2015年,Vol.566, No.2,p.158-165
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
G01N 33/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における神経学的障害を同定するインビトロの方法であって以下のステップ:
(a)前記対象からの生物学的サンプル中のバイオマーカーの定量的または定性的レベルを決定することと;
(b)前記対象からの前記生物学的サンプル中の前記バイオマーカーの定量的または定性的レベルを、正常サンプル中の個別のバイオマーカーの定量的または定性的レベルと比較すること;を含み、
正常サンプル中の前記個別のバイオマーカーの前記定量的または定性的レベルよりも大きい前記対象からの前記生物学的サンプル中の前記バイオマーカーの定量的または定性的レベルが、神経学的障害の定量的または定性的な存在を示し、かつ
記バイオマーカーが、DAG1である、方法。
【請求項2】
前記バイオマーカーが、遺伝子である、請求項1に記載のインビトロの方法。
【請求項3】
前記バイオマーカーが、DAG1遺伝子によりコードされるタンパク質である、請求項1に記載のインビトロの方法。
【請求項4】
前記バイオマーカーが、UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号Q14118を有するタンパク質である、請求項に記載のインビトロの方法。
【請求項5】
前記神経学的障害が、神経変性障害である、請求項1~のいずれか一項に記載のインビトロの方法。
【請求項6】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化症(ALS;ルーゲーリック病;運動ニューロン疾患;MND)、遺伝性痙性対麻痺(HSP)、原発性側索硬化症(PLS)、進行性筋萎縮症(PMA)、進行性球麻痺(PBP)、偽球麻痺、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、および脊髄性筋萎縮症から選択される、請求項に記載のインビトロの方法。
【請求項7】
前記生物学的サンプルが、全血、血清、血漿、尿、間質液、腹水、頸部スワブ、涙、唾液、頬スワブ、皮膚、脳組織、および脳脊髄液から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載のインビトロの方法。
【請求項8】
前記生物学的サンプルが、全血である、請求項1~のいずれか一項に記載のインビトロの方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象における神経学的障害を診断または予測する方法に関する。この方法は、対象の生物学的サンプル中の1つ以上のバイオマーカーの定量的または定性的レベルを決定することと、生物学的サンプル中のバイオマーカーまたは各バイオマーカーの定量的または定性的レベルに基づいて、対象の神経学的障害を診断または予測すること、を含む。
【背景技術】
【0002】
運動ニューロン疾患(MND)としても公知である筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位運動ニューロンおよび下位運動ニューロンの進行性変性および死、タンパク質の凝集、重度の筋萎縮、ならびに呼吸不全を引き起こす致命的な運動ニューロン障害である。生存期間の中央値は、症状の発症から2~5年である。ALSは、家族性ALS(FALS;-症例の10%)または散発性ALS(SALS;-症例の90%)のいずれかとして現れる。ALSの発生率は、10万人あたり0.3~2.6例と推定されている(欧州では、10万人あたり2.16/年、アイルランドでは10万人あたり2.0/年)。
【0003】
動物モデルおよびALS患者における研究は、運動ニューロンの変性が神経筋接合部から始まり、シナプス後の筋肉の変化が積極的な役割を果たし得ることを示している。研究は、骨格筋には機能的な分泌活性があることを示している。筋肉のセクレトームは、機能性タンパク質、mRNA、およびmiRNAの細胞間輸送を行う小胞であるエクソソームを含む。エクソソームは、筋肉細胞または他のタイプの細胞にオートクリン/パラクリン様式で作用し、筋肉の成長および再生、全身における代謝、および他の機能に寄与し得る。
【0004】
影響を受けたニューロンおよび隣接するグリアにおけるSOD1、TDP-43、またはFUSタンパク質などのミスフォールドタンパク質の病理学的凝集は、ALSの特徴と見なされ得る。いくつかの近年の研究は、これらの細胞内タンパク質が小胞媒介エキソサイトーシスを介して放出され、次いで隣接する細胞によって貪食され、これが隣接する運動ニューロンへの自己永続的な伝達を可能にすることを示した。さらに、家族性ALSでは、オートファジー経路および多小胞生合成に関与する遺伝子(ALSIN、VAPB、CHMP2B、およびVCPなど)の変異が確認されている。総合すると、これらのデータは、散発性および家族性ALS患者におけるエンドソームおよびリソソーム経路の破壊を強く示唆し、-これらの経路は双方とも、エクソソームの発生に関与している。
【0005】
診断には時間を要し、多くの場合、患者は数ヶ月の期間にわたって複数の専門家に診てもらう必要があり、症状の発症から診断の確認までの平均時間は13~18ヶ月である。したがって、問題/必要性は、ALSをより迅速に診断することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、対象における神経学的障害を診断または予測する方法が提供され、この方法は、以下のステップ:
(a)対象からの生物学的サンプル中の1つ以上のバイオマーカーの定量的または定性的レベルを決定することと;
(b)生物学的サンプル中のバイオマーカーまたは各バイオマーカーの定量的または定性的レベルに基づいて、対象における神経学的障害を診断または予測すること、を含み、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、PDIA3;CCDC80;HSPA8;SERPINE2;PLEC;HSPA5;NCL;TPM1;TNC;IGFBP3;COL5A1;CLEC11A;MAP1B;NACA;PSMA2;RPL5;MYL6;CTSB;HSPD1;PTRF;NUCB1;PDIA4;P4HB;ACTN4;EEF1D;TPI1;SSBP1;PSMB8;PSAP;PSMB7;CAPZA1;PRDX1;PODN;MMP1;NUCB2;HMGB1;AHNAK;FNDC1;DENR;PENK;S100A11;RPL29;RPL27;RPL8;SRSF2;SF3B4;SBSN;LYAR;NUDC;CRLF1;TGFB1;CAT;CTSD;DLD;EPB41L2;PSMB9;RPS14;RPL7A;COLEC12;SMARCC2;TAGLN2;CCT4;ASPH;GPS1;CDK13;SH3GL2;HBA1;APEX1;PSMB5;TXN;AXL;RPS8;SET;RPS18;CFL1;DMKN;RPL22;RPL6;FKBP10;PAFAH1B1;S100A13;PSMA6;SERPINE1;CAPRIN1;SEPT7;VTN;ENPP2;NEO1;DKC1;CHI3L1;SKOR1;SSRP1;COL4A2;NME1;CFB;EIF2S3;DPYSL2;NUMA1;KTN1;CHID1;EFEMP1;YWHAZ;LDHB;SDCBP;TLN1;DES;APP;およびDAG1から選択される。
【0007】
好ましくは、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、PDIA3;CCDC80;HSPA8;SERPINE2;PLEC;HSPA5;NCL;TPM1;TNC;IGFBP3;COL5A1;CLEC11A;MAP1B;NACA;PSMA2;RPL5;MYL6;CTSB;HSPD1;PTRF;NUCB1;PDIA4;P4HB;ACTN4;およびCAPRIN1から選択される。
【0008】
さらに好ましくは、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、PDIA3;CCDC80;HSPA8;SERPINE2;PLEC;HSPA5;NCL;TPM1;TNC;IGFBP3;COL5A1;CLEC11A;MAP1B;NACA;PSMA2;RPL5;MYL6;CTSB;HSPD1;PTRF;NUCB1;PDIA4;P4HB;ACTN4;CAPRIN1;DES;APP;およびDAG1から選択される。
【0009】
さらに好ましくは、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、PDIA3;CCDC80;HSPA8;SERPINE2;PLEC;DES;APP;およびDAG1から選択される。
【0010】
任意により、決定するステップ(a)は、対象からの生物学的サンプル中の2つ以上のバイオマーカーの定量的または定性的レベルを決定することを含む。
【0011】
さらに任意により、決定するステップ(a)は、対象からの生物学的サンプル中の3、4、5、8、10、20、25、28、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれより多いバイオマーカーの定量的または定性的レベルを決定することを含む。
【0012】
任意により、決定するステップ(a)は、対象からの生物学的サンプル中のバイオマーカーのすべての定量的または定性的レベルを決定することを含む。
【0013】
任意により、または追加として、決定するステップ(a)は、対象からの生物学的サンプル中のバイオマーカーの各々の定量的または定性的レベルを決定することを含む。
【0014】
任意により、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、遺伝子である。さらに任意により、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、核酸である。さらに任意により、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、デオキシリボ核酸である。
【0015】
任意により、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、遺伝子の翻訳産物である。
【0016】
任意により、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、PDIA3;CCDC80;HSPA8;SERPINE2;PLEC;HSPA5;NCL;TPM1;TNC;IGFBP3;COL5A1;CLEC11A;MAP1B;NACA;PSMA2;RPL5;MYL6;CTSB;HSPD1;PTRF;NUCB1;PDIA4;P4HB;ACTN4;EEF1D;TPI1;SSBP1;PSMB8;PSAP;PSMB7;CAPZA1;PRDX1;PODN;MMP1;NUCB2;HMGB1;AHNAK;FNDC1;DENR;PENK;S100A11;RPL29;RPL27;RPL8;SRSF2;SF3B4;SBSN;LYAR;NUDC;CRLF1;TGFB1;CAT;CTSD;DLD;EPB41L2;PSMB9;RPS14;RPL7A;COLEC12;SMARCC2;TAGLN2;CCT4;ASPH;GPS1;CDK13;SH3GL2;HBA1;APEX1;PSMB5;TXN;AXL;RPS8;SET;RPS18;CFL1;DMKN;RPL22;RPL6;FKBP10;PAFAH1B1;S100A13;PSMA6;SERPINE1;CAPRIN1;SEPT7;VTN;ENPP2;NEO1;DKC1;CHI3L1;SKOR1;SSRP1;COL4A2;NME1;CFB;EIF2S3;DPYSL2;NUMA1;KTN1;CHID1;EFEMP1;YWHAZ;LDHB;SDCBP;TLN1;DES;APP;およびDAG1から選択される遺伝子の翻訳産物である。
【0017】
好ましくは、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、PDIA3;CCDC80;HSPA8;SERPINE2;PLEC;HSPA5;NCL;TPM1;TNC;IGFBP3;COL5A1;CLEC11A;MAP1B;NACA;PSMA2;RPL5;MYL6;CTSB;HSPD1;PTRF;NUCB1;PDIA4;P4HB;ACTN4;およびCAPRIN1から選択される遺伝子の翻訳産物である。
【0018】
さらに好ましくは、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、PDIA3;CCDC80;HSPA8;SERPINE2;PLEC;HSPA5;NCL;TPM1;TNC;IGFBP3;COL5A1;CLEC11A;MAP1B;NACA;PSMA2;RPL5;MYL6;CTSB;HSPD1;PTRF;NUCB1;PDIA4;P4HB;ACTN4;CAPRIN1;DES;APP;およびDAG1から選択される遺伝子の翻訳産物である。
【0019】
さらに好ましくは、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、PDIA3;CCDC80;HSPA8;SERPINE2;PLEC;DES;APP;およびDAG1から選択される遺伝子の翻訳産物である。
【0020】
任意により、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、リボ核酸である。
【0021】
任意により、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、MIMAT0000244;ENSG00000239126;MIMAT0016865;MIMAT0002813;MIMAT0004697;MIMAT0000245;MIMAT0000737;MIMAT0000088;MIMAT0000414;MIMAT0004955;MIMAT0000076;MIMAT0000067;MIMAT0018084;およびMIMAT0004813から選択されるmiRBaseアクセッション番号を有するリボ核酸である。
【0022】
任意により、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、配列番号109~122のいずれか1つ以上から選択される核酸配列を有するリボ核酸である。
【0023】
任意により、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、タンパク質である。さらに任意により、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、ペプチドである。さらに任意により、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、ポリペプチドである。
【0024】
任意により、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、PDIA3;CCDC80;HSPA8;SERPINE2;PLEC;HSPA5;NCL;TPM1;TNC;IGFBP3;COL5A1;CLEC11A;MAP1B;NACA;PSMA2;RPL5;MYL6;CTSB;HSPD1;PTRF;NUCB1;PDIA4;P4HB;ACTN4;EEF1D;TPI1;SSBP1;PSMB8;PSAP;PSMB7;CAPZA1;PRDX1;PODN;MMP1;NUCB2;HMGB1;AHNAK;FNDC1;DENR;PENK;S100A11;RPL29;RPL27;RPL8;SRSF2;SF3B4;SBSN;LYAR;NUDC;CRLF1;TGFB1;CAT;CTSD;DLD;EPB41L2;PSMB9;RPS14;RPL7A;COLEC12;SMARCC2;TAGLN2;CCT4;ASPH;GPS1;CDK13;SH3GL2;HBA1;APEX1;PSMB5;TXN;AXL;RPS8;SET;RPS18;CFL1;DMKN;RPL22;RPL6;FKBP10;PAFAH1B1;S100A13;PSMA6;SERPINE1;CAPRIN1;SEPT7;VTN;ENPP2;NEO1;DKC1;CHI3L1;SKOR1;SSRP1;COL4A2;NME1;CFB;EIF2S3;DPYSL2;NUMA1;KTN1;CHID1;EFEMP1;YWHAZ;LDHB;SDCBP;TLN1;DES;APP;およびDAG1から選択される遺伝子によってコードされるタンパク質である。
【0025】
好ましくは、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、PDIA3;CCDC80;HSPA8;SERPINE2;PLEC;HSPA5;NCL;TPM1;TNC;IGFBP3;COL5A1;CLEC11A;MAP1B;NACA;PSMA2;RPL5;MYL6;CTSB;HSPD1;PTRF;NUCB1;PDIA4;P4HB;ACTN4;およびCAPRIN1から選択される遺伝子によってコードされるタンパク質である。
【0026】
さらに好ましくは、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、PDIA3;CCDC80;HSPA8;SERPINE2;PLEC;HSPA5;NCL;TPM1;TNC;IGFBP3;COL5A1;CLEC11A;MAP1B;NACA;PSMA2;RPL5;MYL6;CTSB;HSPD1;PTRF;NUCB1;PDIA4;P4HB;ACTN4;CAPRIN1;DES;APP;およびDAG1から選択される遺伝子によってコードされるタンパク質である。
【0027】
さらに好ましくは、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、PDIA3;CCDC80;HSPA8;SERPINE2;PLEC;DES;APP;およびDAG1から選択される遺伝子によってコードされるタンパク質である。
【0028】
任意により、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、P30101;Q76M96;P11142;P07093;Q15149;P11021;P19338;P09493;P24821;P17936;P20908;Q9Y240;P46821;Q13765;P25787;P46777;P60660;P07858;P10809;Q6NZI2;Q02818;P13667;P07237;O43707;P29692;P60174;Q04837;P28062;P07602;Q99436;P52907;Q06830;Q7Z5L7;P03956;P80303;P09429;Q09666;Q4ZHG4;O43583;P01210;P31949;P47914;P61353;P62917;Q01130;Q15427;Q6UWP8;Q9NX58;Q9Y266;O75462;P01137;P04040;P07339;P09622;O43491;P28065;P62263;P62424;Q5KU26;Q8TAQ2;P37802;P50991;Q12797;Q13098;Q14004;Q99962;P69905;P27695;P28074;P10599;P30530;P62241;Q01105;P62269;P23528;Q6E0U4;P35268;Q02878;Q96AY3;P43034;Q99584;P60900;P05121;Q14444;Q16181;P04004;Q13822;Q92859;O60832;P36222;P84550;Q08945;P08572;P15531;P00751;P41091;Q16555;Q14980;Q86UP2;Q9BWS9;Q12805;P63104;P07195;O00560;Q9Y490;P17661;P05067;およびQ14118から選択される、UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号を有するタンパク質である。
【0029】
好ましくは、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、P30101;Q76M96;P11142;P07093;Q15149;P11021;P19338;P09493;P24821;P17936;P20908;Q9Y240;P46821;Q13765;P25787;P46777;P60660;P07858;P10809;Q6NZI2;Q02818;P13667;P07237;O43707;およびQ14444から選択される、UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号を有するタンパク質である。
【0030】
さらに好ましくは、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、P30101;Q76M96;P11142;P07093;Q15149;P11021;P19338;P09493;P24821;P17936;P20908;Q9Y240;P46821;Q13765;P25787;P46777;P60660;P07858;P10809;Q6NZI2;Q02818;P13667;P07237;O43707;Q14444;P17661;P05067;およびQ14118から選択される、UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号を有するタンパク質である。
【0031】
さらに好ましくは、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、P30101;Q76M96;P11142;P07093;Q15149;P17661;P05067;およびQ14118から選択される、UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号を有するタンパク質である。
【0032】
任意により、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、配列番号1~108のいずれか1つ以上から選択されるアミノ酸配列を有するタンパク質である。
【0033】
任意により、神経学的障害は神経変性障害である。
【0034】
任意により、神経変性疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS;ルーゲーリック病;運動ニューロン疾患;MND)、遺伝性痙性対麻痺(HSP)、原発性側索硬化症(PLS)、進行性筋萎縮症(PMA)、進行性球麻痺(PBP)、偽球麻痺、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、および脊髄性筋萎縮症から選択される。
【0035】
任意により、診断または予測するステップ(b)は、対象からの生物学的サンプル中のバイオマーカーまたは各バイオマーカーの定量的または定性的レベルを、正常サンプル中のバイオマーカーまたは各個別のバイオマーカーの定量的または定性的レベルと比較することを含む。
【0036】
任意により、正常サンプルは、神経学的障害、任意により神経変性障害、さらに任意により筋萎縮性側索硬化症(ALS;ルーゲーリック病;運動ニューロン疾患;MND)、遺伝性痙性対麻痺(HSP)、原発性側索硬化症(PLS)、進行性筋萎縮症(PMA)、進行性球麻痺(PBP)、偽球麻痺、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、および脊髄性筋萎縮症から選択される神経変性障害を患っていない対象からの生物学的サンプルである。
【0037】
任意により、正常サンプル中のバイオマーカーまたは各個別のバイオマーカーの定量的または定性的レベルよりも大きい対象からの生物学的サンプル中のバイオマーカーまたは各バイオマーカーの定量的または定性的レベルは、神経学的障害、任意により神経変性障害、さらに任意により筋萎縮性側索硬化症(ALS;ルーゲーリック病;運動ニューロン疾患;MND)、遺伝性痙性対麻痺(HSP)、原発性側索硬化症(PLS)、進行性筋萎縮症(PMA)、進行性球麻痺(PBP)、偽球麻痺、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、および脊髄性筋萎縮症から選択される神経変性障害の定量的または定性的なレベルを示す。
【0038】
任意により、正常サンプル中のバイオマーカーまたは各個別のバイオマーカーの定量的または定性的レベルよりも大きい対象からの生物学的サンプル中のバイオマーカーまたは各バイオマーカーの定量的または定性的レベルは、神経学的障害、任意により神経変性障害、さらに任意により筋萎縮性側索硬化症(ALS;ルーゲーリック病;運動ニューロン疾患;MND)、遺伝性痙性対麻痺(HSP)、原発性側索硬化症(PLS)、進行性筋萎縮症(PMA)、進行性球麻痺(PBP)、偽球麻痺、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、および脊髄性筋萎縮症から選択される神経変性障害の定量的または定性的な存在を示す。
【0039】
任意により、決定するステップ(a)は、対象からの生物学的サンプル中の1つ以上のバイオマーカーの1つ以上のサブセットの定量的または定性的レベルを決定することを含む。
【0040】
任意により、決定するステップ(a)は、対象からの生物学的サンプル中の1つ以上のバイオマーカーの2つ以上のサブセットの定量的または定性的レベルを決定することを含む。
【0041】
任意により、決定するステップ(a)は、生物学的サンプル中の1つ以上のバイオマーカーの3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14のサブセットの定量的または定性的レベルを決定することを含む。
【0042】
任意により、決定するステップ(a)は、対象からの生物学的サンプル中の1つ以上のバイオマーカーの1番目、2番目、3番目、4番目、5番目、6番目、7番目、8番目、9番目、10番目、11番目、12番目、13番目、または14番目のサブセットの1つ以上の定量的または定性的レベルを決定することを含む。
【0043】
任意により、1番目のサブセットは、PDIA3;およびCCDC80から選択される1つ以上のバイオマーカーを含む。
【0044】
任意により、2番目のサブセットは、HSPA8を含む。
【0045】
任意により、3番目のサブセットは、SERPINE2;およびPLECから選択される1つ以上のバイオマーカーを含む。
【0046】
任意により、4番目のサブセットは、HSPA5;およびNCLから選択される1つ以上のバイオマーカーを含む。
【0047】
任意により、5番目のサブセットは、TPM1;およびTNCから選択される1つ以上のバイオマーカーを含む。
【0048】
任意により、6番目のサブセットは、IGFBP3を含む。
【0049】
任意により、7番目のサブセットは、COL5A1;CLEC11A;MAP1B;NACA;およびPSMA2から選択される1つ以上のバイオマーカーを含む。
【0050】
任意により、8番目のサブセットは、RPL5;MYL6;CTSB;HSPD1;PTRF;NUCB1;PDIA4;P4HB;およびACTN4から選択される1つ以上のバイオマーカーを含む。
【0051】
任意により、9番目のサブセットは、EEF1D;TP11;SSBP1;PSMB8;PSAP;PSMB7;CAPZA1;PRDX1;PODN;MMP1;NUCB2;HMGB1;AHNAK;およびFNDC1から選択される1つ以上のバイオマーカーを含む。
【0052】
任意により、10番目のサブセットは、DENR;PENK;S100A11;RPL29;RPL27;RPL8;SRSF2;SF3B4;SBSN;LYAR;NUDC;CRLF1;TGFB1;CAT;CTSD;DLD;EPB41L2;PSMB9;RPS14;RPL7A;COLEC12;SMARCC2;TAGLN2;CCT4;ASPH;GPS1;CDK13;SH3GL2;HBA1;APEX1;PSMB5;TXN;AXL;RPS8;SET;RPS18;CFL1;DMKN;RPL22;RPL6;FKBP10;PAFAH1B1;S100A13;PSMA6;SERPINE1;CAPRIN1;SEPT7;VTN;ENPP2;NEO1;DKC1;CHI3L1;SKOR1;SSRP1;COL4A2;NME1;CFB;EIF2S3;DPYSL2;NUMA1;KTN1;CHID1;EFEMP1;YWHAZ;LDHB;SDCBP;およびTLN1から選択される1つ以上のバイオマーカーを含む。
【0053】
任意により、11番目のサブセットは、DES;APP;およびDAG1から選択される1つ以上のバイオマーカーを含む。
【0054】
任意により、12番目のサブセットは、PDIA3;CCDC80;HSPA8;SERPINE2;PLEC;HSPA5;NCL;TPM1;TNC;IGFBP3;COL5A1;CLEC11A;MAP1B;NACA;PSMA2;RPL5;MYL6;CTSB;HSPD1;PTRF;NUCB1;PDIA4;P4HB;ACTN4;およびCAPRIN1から選択される1つ以上のバイオマーカーを含む。
【0055】
任意により、13番目のサブセットは、PDIA3;CCDC80;HSPA8;SERPINE2;PLEC;HSPA5;NCL;TPM1;TNC;IGFBP3;COL5A1;CLEC11A;MAP1B;NACA;PSMA2;RPL5;MYL6;CTSB;HSPD1;PTRF;NUCB1;PDIA4;P4HB;ACTN4;CAPRIN1;DES;APP;およびDAG1から選択される1つ以上のバイオマーカーを含む。
【0056】
任意により、14番目のサブセットは、PDIA3;CCDC80;HSPA8;SERPINE2;PLEC;DES;APP;およびDAG1から選択される1つ以上のバイオマーカーを含む。
【0057】
任意により、決定するステップ(a)は、1つ以上の1番目、2番目、3番目、4番目、5番目、6番目、7番目、8番目、9番目、10番目、11番目、12番目、13番目、または14番目のサブセットの1つ以上におけるバイオマーカーのすべての定量的または定性的レベルを決定することを含む。
【0058】
任意により、決定するステップ(a)は、1番目、2番目、3番目、4番目、5番目、6番目、7番目、8番目、9番目、10番目、11番目、12番目、13番目、または14番目のサブセットの1つ以上におけるバイオマーカーの各々の定量的または定性的レベルを決定することを含む。
【0059】
任意により、診断または予測するステップ(b)は、対象からの生物学的サンプル中のサブセットまたは各サブセット中のバイオマーカーまたは各バイオマーカーの定量的または定性的レベルを、正常サンプル中のバイオマーカーまたは各個別のバイオマーカーの定量的または定性的レベルと比較することを含む。
【0060】
任意により、正常サンプルは、神経学的障害、任意により神経変性障害、さらに任意により筋萎縮性側索硬化症(ALS;ルーゲーリック病;運動ニューロン疾患;MND)、遺伝性痙性対麻痺(HSP)、原発性側索硬化症(PLS)、進行性筋萎縮症(PMA)、進行性球麻痺(PBP)、偽球麻痺、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、および脊髄性筋萎縮症から選択される神経変性障害を患っていない対象からの生物学的サンプルである。
【0061】
任意により、正常サンプル中のバイオマーカーまたは各個別のバイオマーカーの定量的または定性的レベルよりも大きい対象からの生物学的サンプル中のサブセットまたは各サブセット中のバイオマーカーまたは各バイオマーカーの定量的または定性的レベルは、神経学的障害、任意により神経変性障害、さらに任意により筋萎縮性側索硬化症(ALS;ルーゲーリック病;運動ニューロン疾患;MND)、遺伝性痙性対麻痺(HSP)、原発性側索硬化症(PLS)、進行性筋萎縮症(PMA)、進行性球麻痺(PBP)、偽球麻痺、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、および脊髄性筋萎縮症から選択される神経変性障害の定量的または定性的レベルを示す。
【0062】
任意により、正常サンプル中のバイオマーカーまたは各個別のバイオマーカーの定量的または定性的レベルよりも大きい対象からの生物学的サンプル中のサブセットまたは各サブセット中のバイオマーカーまたは各バイオマーカーの定量的または定性的レベルは、神経学的障害、任意により神経変性障害、さらに任意により筋萎縮性側索硬化症(ALS;ルーゲーリック病;運動ニューロン疾患;MND)、遺伝性痙性対麻痺(HSP)、原発性側索硬化症(PLS)、進行性筋萎縮症(PMA)、進行性球麻痺(PBP)、偽球麻痺、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、および脊髄性筋萎縮症から選択される神経変性障害の定量的または定性的な存在を示す。
【0063】
任意によりまたは追加的に、決定するステップ(a)は、対象からの生物学的サンプル中の1つ以上のバイオマーカーの定量的または定性的レベルを決定する追加のステップをさらに含み、バイオマーカーまたは各バイオマーカーは、MIMAT0000244;ENSG00000239126;MIMAT0016865;MIMAT0002813;MIMAT0004697;MIMAT0000245;MIMAT0000737;MIMAT0000088;MIMAT0000414;MIMAT0004955;MIMAT0000076;MIMAT0000067;MIMAT0018084;およびMIMAT0004813から選択されるmiRBaseアクセッション番号を有するリボ核酸である。
【0064】
任意により、生物学的サンプルは、全血、血清、血漿、尿、間質液、腹水、頸部スワブ、涙、唾液、頬スワブ、皮膚、脳組織、および脳脊髄液から選択される。
【0065】
さらに任意により、生物学的サンプルは、全血、血清、および血漿から選択される。
【0066】
さらに任意により、生物学的サンプルは、全血である。
【0067】
PDIA3は、Erp57と同義である。
次に、本発明の実施形態を、以下の非限定的な例および添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】筋幹細胞におけるALSシグネチャーの概略図である。
図2】(A)分化した筋幹細胞のエクソソームマーカーの免疫染色を示す。(B)筋肉細胞によるエクソソームの分泌を示す。(C)ALS筋細胞の多小胞体は、対照よりも多くのエクソソームを含むことを示す。
図3】ALSまたは対照エクソソームにより処置された健康な筋管の代表的な画像を示す。ここでALSエクソソームは、細胞ストレスを誘発する。
図4】非コーディングRNAマイクロアレイの発現値を示す箱ひげ図である(生:左パネル;バックグラウンド補正:中央パネル;バックグラウンド補正および正規化:右パネル)。
図5】非コーディングRNAマイクロアレイのRLE値を示す箱ひげ図である(0パス品質対照に近い平均値)。
図6】非コーディングRNAマイクロアレイのNUSE値を示す箱ひげ図である(<1.05パス品質対照の平均値)。
図7】抗DAG抗体を使用した、循環血清エクソソームにおけるDAG1発現レベルを示す。値は平均±SDである。8名のALS患者(診断後1ヶ月)、11名の健康な対象および9名のパーキンソン患者からの血清。ANOVA1因子およびその後にTukey事後検定を実行した。**、健康な値と有意に異なる、P<0.01;
図8】循環血清エクソソームにおけるHSPA8発現レベルを示す。値は平均±SDである。5名のALS患者(診断後1ヶ月)、9名の健康な対象および7名のパーキンソン患者からの血清。ANOVA1因子およびその後にTukey事後検定を実行した。*、**、ALS値と有意に異なる、それぞれP<0.05およびP<0.01、
図9】総血清エクソソーム(CD63)の量に対して正規化し、病理の進行速度に対しプロットした、ALS患者の血清から単離したエクソソーム中の各バイオマーカーのレベルを示す(デルタALSFRS-R)。実施例材料&方法登録者および倫理的承認
【0069】
開放生検を、Motor Neuron Diseases center(Pitie Salpetriere, Paris)に通院した18名のALS患者の三角筋で実施した。年齢および性別が一致する健康な対象からの21の三角筋生検を、欧州の推奨事項およびフランスの法律に従って、BTR(Bank of Tissues for Research、U network EuroBioBankのパートナー)から得た。プロトコル(NCT01984957)は、地域の倫理委員会によって承認され、すべての対象は、施設のガイドラインに従ってインフォームドコンセントを完了した。
筋幹細胞の抽出および培養
【0070】
筋肉生検体を機械的に分離し、前述のとおり増殖培地にプレーティングした(Mamchaouiら、Skeletal muscle,2011,PMID:22040608)。CD56磁気ビーズソーティングシステム(MACS、Miltenyi Biotech)を使用して、製造業者の指示に従い筋原性細胞集団を選別した。細胞培養物の筋原性を、抗デスミン抗体を使用する免疫標識により細胞を選別する前後に確認し、細胞をダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)中で3日間分化させた。細胞集団の最低80%が、デスミン陽性であった。
培養培地からのエクソソーム抽出
【0071】
簡潔に説明すると、1,000万個の筋幹細胞(ALSおよび健康な多少、n=3/群)をDMEM中で3日間分化させた。3日後、馴化培地を回収し、300xgで5分間、室温(RT)で遠心分離し、4000gで20分間、4℃で遠心分離して、あらゆる死細胞および細胞破片を除去した。上清を0.22μmフィルターで濾過して微粒子を除去した。サンプルを、タンパク質およびmiRNAの抽出に使用し、-80℃で保存した。
エクソソームからのタンパク質抽出
【0072】
ある容量の細胞培養培地を、細胞培養培地(lifeTechnologies(登録商標))からの0.5容量のTotal Exosome Isolation Reagentと混合し、4℃で一晩インキュベートした。サンプルを次に、10,000xgで1時間4℃で遠心分離した。エクソソームペレットを25μlの8M尿素、50mM重炭酸アンモニウム、pH8.5に再懸濁し、ジチオスレイトール(DTT)で、4℃で1時間還元した。タンパク質濃度を次に、Pierce BCAタンパク質アッセイキット(ThermoFisher(登録商標))を使用して定量した。エクソソームタンパク質を、-80℃で維持した。
質量分析により決定されたプロテオームプロファイル
【0073】
約20μgのエクソソームタンパク質を、製造業者の指示に従い70℃および1400rpmで2時間SmartDigestカラム(Thermo)を使用してトリプシン消化した。ペプチドを次に、製造業者の指示に従い高pH逆相スピンカラム(Thermo)を使用して8つの分画に分画した。分画したペプチドを真空乾燥し、再懸濁し、以下のパラメーターでQ Exactive HF(Thermo)でのデータ依存型質量分析により分析した:正極性、m/z400~2000MS分解能70,000、AGC3e6、100msIT、MS/MS分解能17,500、AGC5e5、50msIT、分離幅3m/z、およびNCE30、サイクル数15。
データベースの検索および定量化
【0074】
得られた質量スペクトルファイルを、セミトリプシンペプチドのUniprotヒトデータベースに対しProteomeDiscoverer(Thermo)を使用してタンパク質同定のために検索し、1%未満の誤検出率に基づいてフィルタリングした。
プロテオームプロファイル分析
【0075】
タンパク質を、3つのALS複製の観察された存在量の範囲が3つの健康な対照複製の範囲と重複しなかった場合、候補として選択した。これらの候補を、3つのALS複製の中央値と健複製の中央値の差に基づいてランク付けした。
エクソソームからのmiRNA抽出
【0076】
ある容量の細胞培養培地を、細胞培養培地(lifeTechnologies(登録商標))からの0.5容量のTotal Exosome Isolation Reagentと混合し、4℃で一晩インキュベートした。次に、サンプルを10,000xgで1時間4℃で遠心分離した。エクソソームペレットを1mlのトリゾールで再懸濁した。0.2mLのクロロホルムを添加後、サンプルを室温で3分間インキュベートし、次に4℃で12,000xgで15分間遠心分離した。水性上相を次に、1/3容量の100%エタノールと混合し、完全に混合した。サンプルを次に、Invitrogen(商標)(LifeTechnologies(商標))の全RNAおよびタンパク質分離キットの収集チューブへのフィルターカートリッジに入れた。miRNA抽出を、製造業者の指示に従い実行した。RNAの品質を、Eukaryote Total RNA Nano2.6(Agilent)および2100バイオアナライザーを使用して決定した。RNA量を、それぞれ製造業者の指示に従い、nanodropを使用して決定した。
miRNAプロファイルおよび分析
【0077】
全RNA(150ng)をポリ(A)テール化し、FlashTag Biotin HSR RNAラベリングキットを使用してビオチン標識し、製造業者の指示(ThermoFisher Scientific、Waltham)に従って、Affymetrix GeneChip miRNA4.0アレイに16時間(48℃)ハイブリダイズさせた。次に、ハイブリダイゼーションカクテルを除去し、アレイを洗浄し、miRNA4.0アレイ用のフルイディクススクリプトを使用してFluidicsStation450で染色した。最後に、アレイをAffymetrix GCS3000 7Gスキャナーでスキャンし、初期品質管理データを、Affymetrix Expression Consoleソフトウェア(両方ともThermoFisher Scientific製)を使用して評価した。
miRNomeプロファイル分析
【0078】
生データのさらなる品質管理を、R/Bioconductorパッケージoligoおよびpd.mirna.4.0を使用して実行した。これらのパッケージを使用して、発現値、相対対数発現量(RLE)値、および正規化しスケール化されていない標準誤差(NUSE)の各サンプルの分布を評価した。これらはすべて、高品質と一致していた。発現マトリックスを次に、Affymetrix Expression Console v1.4.1.46を使用して、分位数の正規化およびバックグラウンドを超える検出により正規化した。差次的に発現するmiRNA(ALS対健康)を次に、絶対倍率変化が2を超え、一元配置の対応のないANOVAp値が0.05未満であると特定した。
患者からの血清サンプル
【0079】
血液サンプルを、シリカバキュテイナーを使用して収集し、8~10回穏やかに逆さにした。氷上で2時間インキュベートして凝固させた後、サンプルを1,500gで15分間遠心分離した。100μlの血清のアリコートをクライオバイアルに移し、-80℃で保存した。年齢と性別が一致する8名のALS患者、11名の健康な対象、および9名のパーキンソン患者を対象とした(NCT01302600およびNCT02305147)。
血清からのエクソソーム抽出
【0080】
エクソソームを、6μlのTotal Exosome Isolation Reagentを添加し、ボルテックスし、氷上で30分間インキュベートすることにより沈殿させた。次に、サンプルを室温で10,000gにて10分間遠心分離した。ペレットを13.5μlの尿素4M/RIPAに再懸濁し、氷上で保持した。並行して、6.3μlのTotal Exosome Isolation Reagentを残りの上清に加え、ボルテックスし、氷上で30分間インキュベートした。次に、これらの2番目の混合物をRT、10,000gで10分間遠心分離した。2番目のエクソソームペレットを13.5μlの尿素4M/RIPAに再懸濁した。次に、2つのエクソソームタンパク質抽出物を共に混合し、ドットブロット分析に使用した。エクソソームタンパク質抽出物を、-80℃で保存した。
ドットブロット用のサンプルの調製
【0081】
5μlのエクソソームタンパク質抽出物に1xNuPAGE(Invitrogen(商標))を添加した。これらの非還元サンプルを、CD63分析に使用した。エクソソームタンパク質抽出物の残りの22μlに、1x還元試薬(Invitrogen(商標))を補充した1xNuPAGE(Invitrogen(商標))を添加した。次に、すべてのサンプルを70℃で10分間加熱した。
ドットブロット分析
【0082】
1μlの還元または非還元サンプルを、メタノールで事前に活性化した0.2μm PVDF(Immobilon(登録商標)、Sigma-Aldrich(登録商標))に添加した。室温で5分間乾燥させた後、メンブレンをメタノールで迅速に再活性化し、Ponceau S(Sigma-Aldrich(登録商標))で染色して、添加を制御した。メンブレンを次に、5%ミルクを補充したTBS-0.01%tween(TBS-T)中で4℃にて一晩ブロックした。
【0083】
CD63(TS63、Invitrogen(商標))、ベータジストログリカン(MANDAG2、7D11、DSHB)、およびHSPA8(Millipore(登録商標))に対する一次抗体を、製造業者の指示に従いZenon(商標)BiotinXXマウスlgG1ラベリングキットを使用して、ビオチンと即座に結合させた。簡単に説明すると、1μgの抗体に最初に5μlの複合体を加え、次に5μlのブロッキングバッファーを加えた。抗CD63、抗ベータジストログリカン、および抗HSPA8を、TBS-T-5%ミルクでそれぞれ1/1000、1/133、および1/500に希釈した。
【0084】
Serpin E2(TS63、Invitrogen(商標))、ERP57(PDIA3、Merck-Millipore(登録商標))、デスミン(Y66、Invitrogen(商標))、アミロイド前駆体タンパク質(abeam)、CCDC80(Invitrogen(商標))、およびPlectin(invitrogen(商標))に対する一次抗体を、製造業者の指示に従いZenon(商標)BiotinXXウサギIgGラベリングキットを使用して、即座にビオチンと結合させた。簡単に説明すると、1μgの抗体に最初に5μlの複合体を加え、次に5μlのブロッキングバッファーを加えた。抗SerpinE2抗ERP57、抗デスミン、抗アミロイド前駆体タンパク質、抗CCDC80、および抗Plectinを、TBS-T-5%ミルクで1/1000に希釈した。
【0085】
メンブレンを、希釈した一次ビオチン結合抗体と共にRTで45分間インキュベートした。
メンブレンを次に、TBS-Tで5分間3回すすいだ。メンブレンを次に、TBS-T-5%ミルクで1/250に希釈したストレプトアビジン-HRP(Invitrogen(商標))と共にRTで45分間インキュベートした。メンブレンを次に、TBS-Tで5分間3回すすいだ。メンブレンを、SuperSignal(商標)West Pico PLUS化学発光基質(ThermoScientific(商標))を使用して明らかにした。画像を、UVP/ChemiDoc-lt(登録商標)2Imagerを使用して15分間、15秒ごとに得た。画像を次に、FIJIソフトウェアを使用して分析した。
統計分析
【0086】
値は平均±SDである。ANOVA1因子およびその後にTukey事後検定を実行して、ALS、健康な対象者、およびパーキンソン対象の間のバイオマーカーレベルの差を評価した。バイオマーカーレベルとALSFRSの進行との相関を、ピアソン相関分析を使用して検査した。有意差のカットオフをP<0.05に設定した。
実施例1-筋幹細胞におけるALSシグネチャーの同定
【0087】
筋幹細胞を、患者および健康対照(すべて男性、30~67歳、一群あたりn=5/6)の筋生検から抽出し、精製し(>80%筋形成細胞)、3日間筋管に分化させた。サンプルを、GeneChip Human Exon 1.0ST array(Affymetrix,Inc.,Cleveland,OH)を使用して分析した;(A)は、2番目のコンポーネント(y軸)でALS患者の明確な分離を示すPCAプロットを示す。ALS:青、SBMA:ピンク、SMA-III/IV:赤、対照:緑。(B)は、CellWhereツールによる分析による、多くがエキソソームに関連する細胞内局在において観察される、ALSに最も強く特異的な発現シグネチャーを有する30の遺伝子を示す。
実施例2-ALS筋幹細胞は、対照よりも多くのエクソソームを蓄積し分泌する
【0088】
図2(A)を参照して、分化した筋幹細胞のエクソソームマーカーの免疫染色が示されている。左パネル:エクソソームマーカー(TSG101、CD63)で標識されたALSおよびSMA-III/IV患者、ならびに健康な対照または除神経された対象の培養筋幹細胞の代表的な画像。右パネル:筋核ごとに正規化されたCD63蛍光シグナルの定量化。(異なるALS、SMA-III/IV、多発性神経炎および対照者のn=8、4、2、5の細胞培養)。***、P<0.001。
【0089】
図2(B)は、エクソソームがALS筋細胞によって過剰分泌されることを示す。左パネル:培養培地からのエクソソームペレットの代表的な画像。エクソソームを、ALSおよび対照者からの800,000個の細胞の培養培地から抽出した。実験を、ALS患者および対照者からの筋肉細胞の異なる培養物で8回繰り返した。右パネル:ペレット中のエクソソーム(カップ型ベシクル)の存在を確認する電子顕微鏡検査。エクソソームは、ALSペレット中により多く存在した。注目すべきことに、これらの小胞に対して行った免疫染色は、それらがCD63およびCD82に対して陽性であるため、それらがエクソソームであることを確認した。
【0090】
図2(C)は、ALS筋細胞の多小胞体が対照よりも多くのエクソソームを含むことを示す。左パネル:対照と比較した、ALS筋細胞の多小胞体(MVB、緑およびオレンジで強調表示)におけるエクソソームの蓄積を示す代表的な電子顕微鏡画像。スケールバー=1μm。右パネル:MVB中のエクソソーム様小胞の数の定量化。2つのサンプルのコルモゴロフ-スミルノフ検定は、ALS筋細胞のMVBが対照と比較して、より多くのエクソソーム様小胞を含むという視覚的印象を確認した(P<0.05)。
実施例3-ALS筋細胞からのエクソソームは、健康な筋管および運動ニューロンに対し毒性である
【0091】
図3(A)を参照して、ALSエクソソームが筋細胞の萎縮を誘発することが示されている。左パネル:ALSまたは対照エクソソームにより処置された健康な筋管の代表的な画像。筋管は、ミオシン重鎖(緑色)で染色される。右パネル:筋核ドメインサイズの定量化(核の数で割ったミオシン重鎖染色の面積)。ALS-エクソソームにより処置された筋管は、より小さい筋核ドメインを有する(*P<0.05;n=6/群)。
【0092】
図3(B)は、ALSエクソソームが細胞ストレスを誘発することを示す。ALSまたは対照エクソソームにより処置された健康な筋管あたりのブレブ数の経時的な定量化(n=6/群)。ANOVA 2因子交互作用、時間および処置P<0.001。
【0093】
図3(C)は、ALSエクソソームが細胞死を誘導することを示す。左パネル:ALSまたは対照エクソソームにより処置された健康な筋管のH2-Ax免疫染色の代表的な免疫染色。中央パネル:核あたりのH2-Axシグナルの定量化。右パネル:培養中の運動ニューロン核の喪失の定量化。
実施例4-ALSのバイオマーカーとしての特定のエクソソーム内容物の同定
【0094】
エクソソームの内容物は、様々な種類の生体分子を含み、そのうちシグナル伝達の役割に関与する可能性のあるものとしては、タンパク質およびそのペプチド、ならびに非コードRNAが挙げられる。筋幹細胞(一次筋芽細胞)を、ALS患者と健康な対照の三角筋から得て、分化した筋管を形成させるために培養した。エクソソームを、total exosome isolation reagent(Invitrogen(商標)Lifetechnologies(商標))を使用して、3日間の培養後に1,000万個の筋肉細胞の培養培地から精製した。エクソソームの内容物を特定するために、精製されたエクソソームのプロテオミクスおよび非コードRNAプロファイリングを実行した。
タンパク質バイオマーカー
【0095】
プロテオミクス質量分析データは、健康な対照筋肉エクソソーム(n=3)と比較してALS筋肉エクソソーム(n=3)で一貫して増加したレベルを有する105のタンパク質(表1)のペプチドを同定した。
【0096】
プロテオミクスサンプルはタンパク質濃度に対して正規化されたため、ALSおよび健康な筋肉のエクソソームの両方において一貫して高レベルのタンパク質は優れたバイオマーカーでもあり得ることも留意され、なぜならこれらは、筋肉のエクソソームが健康な対照よりもALS筋管から大量に分泌されるという本発明者らの観察により、体積あたりのALS血液中で依然として上昇され得るからである。このようにして、ALSと健康な筋肉のエクソソームの両方で一貫して高レベルであり、かつ機械的に興味深い他の特徴を有した、さらなる3つの候補を特定した。すなわち、これらはDES、APP、およびDAG1であった。APPは、アルツハイマー病におけるアミロイド斑の主要な構成要素である。DESは、すべての筋肉組織タイプにおいて高レベルで観察されたが、他の組織にはまったく存在しない。DAG1は、ジストログリカン複合体の主要な構成要素であり、複数の筋ジストロフィーに関係している。
【表1】



【表2】
非コーディングRNAバイオマーカー
【0097】
非コードRNA種のプロファイリングを、健康な対照(n=5)と比較した、ALSエクソソーム(n=5)でのマイクロアレイ(AffymetrixGeneChip(登録商標)miRNA4.0アレイを使用する)により実行した。品質管理および正規化(図4~6を参照)の後、一元配置の対応のないANOVAは、14個の非コードRNAがALS対健康な対照において有意に調節不全であることを特定した(表3:12個がALSにおいて上方制御され、2個がALSにおいて下方制御される)。これらのうち、13個はマイクロRNA(miRBase ID hsa-***およびアクセッション番号MIMAT***で示される)であり、1個は核小体低分子RNA snoU13(ENSG00000239126)である。
【表3】
実施例6-様々な疾患群に対する様々なバイオマーカーの比較
【0098】
血液サンプルを、8名のALS患者、11名の健康な対照、および9名のパーキンソン病患者から収集した。選択した患者の患者特性を表4に示す。エクソソームを、血清から抽出し、ドットブロット分析に使用した。ALS病、パーキンソン病(疾患対照)の患者の血清から、または健康な対象から単離したエクソソーム中のDAG1のレベルを図7に示し、ALS疾患の患者、パーキンソン病(疾患対照)の患者、または健康な対象の血清から単離したエクソソーム中のHSPA8のレベルを図8に示す。全血清エクソソーム(CD63)の量に対して正規化した、ALS患者の血清から単離したエクソソーム中の各バイオマーカーのレベルを、病状の進行速度(デルタALSFRS-R)に対してプロットし、図9に示す。
【表4】
【0099】
本発明は、強力なALS遺伝子発現シグネチャー、ならびにALS患者における筋肉細胞および筋肉-運動ニューロン相互作用における毒性の新しい駆動体をもたらす。散発性ALS患者の筋肉生検からの分化した筋肉(筋管)細胞を研究することにより、本発明は以下を示す:
(1)ALS患者から単離した筋管の遺伝子発現プロファイルは、健康な対照者のみでなく、SBMAおよびSMA-III/IV疾患対照からも完全に分離してクラスター化する(図1Aを参照)。このALS特異的シグネチャーに最も強く寄与する30の遺伝子としては、エクソソームに分泌されるかまたは局在化するタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる(図1Bを参照)。(2)細胞内エクソソーム生合成および細胞外エクソソーム分泌の両方は、ALS筋管において劇的に増加され(図2AおよびBを参照)、エクソソームに富む多小胞体が、ALS患者の筋生検体内電子顕微鏡検査により観察される(図2C);(3)エクソソームの生合成および分泌の増加は、筋肉が除神経されたヒト対象(健康、SBMA、SMA-III/IVのいずれでもない)または筋肉が除神経された健康なマウス筋肉の筋管では観察されず(図1、2Aおよび図示されていない他のデータを参照)、エクソソーム分泌が疾患の単純な下流の結果ではないことを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図9-4】
【配列表】
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