(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】工具搬送システム
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/157 20060101AFI20241217BHJP
B23Q 3/155 20060101ALI20241217BHJP
B25J 5/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B23Q3/157 B
B23Q3/155 F
B25J5/00 A
(21)【出願番号】P 2023184185
(22)【出願日】2023-10-26
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000114787
【氏名又は名称】ヤマザキマザック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】丸田 和正
(72)【発明者】
【氏名】松田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】馬場 博崇
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特許第7303351(JP,B1)
【文献】特開2013-149205(JP,A)
【文献】国際公開第2019/053900(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/157
B23Q 3/155
B23Q 11/00
B23Q 17/00
B23Q 41/00
B25J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のポットを含む搬送先に工具を搬送する工具搬送システムであって、
前記工具を保持する保持部と、当該保持部
に前記工具が保持された際に、一部または全部が当該工具によって隠れる位置に施された模様と、を含む工具置き台と、
前記工具置き台から前記工具を取り出して前記搬送先に搬送可能なロボット本体と、当該ロボット本体に取り付けられたカメラと、を含むロボットと、
前記カメラが撮像した画像を受け付けるとともに前記ロボット本体の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記工具置き台から前記工具を取り出す際に、前記工具置き台を撮像する指令を前記カメラに出力するとともに、当該カメラが撮像した画像に含まれる前記模様の形状に基づいて、前記工具の大きさを判別し、
前記制御部は、大きさを判別した前記工具を搬送対象工具として前記搬送先に搬送する際に、前記工具の大きさに基づいて、前記複数のポットのうちから1つのポットを選択し、選択した当該ポットに前記搬送対象工具を取り付ける指令を前記ロボット本体に出力する
ことを特徴とする工具搬送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の工具搬送システムにおいて、
前記制御部は、前記工具の大きさとして、前記工具を工具軸線方向から見たときに前記工具の輪郭で囲まれた面積を判別する
ことを特徴とする工具搬送システム。
【請求項3】
請求項1に記載の工具搬送システムにおいて、
前記制御部は、前記カメラが撮像した画像に含まれる前記模様の形状に基づいて、前記工具の有無を判別する
ことを特徴とする工具搬送システム。
【請求項4】
請求項1に記載の工具搬送システムにおいて、
前記制御部は、前記搬送対象工具の大きさおよび前記複数のポットの使用状況に応じて、前記搬送対象工具が他の部材と干渉しないポットを、前記複数のポットのうちから選択する
ことを特徴とする工具搬送システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の工具搬送システムにおいて、
前記制御部は、前記工具がない場合の模様のパターンを予め記憶し、
撮像された前記模様の形状を前記模様のパターンと比較することで、前記工具の大きさを判別する
ことを特徴とする工具搬送システム。
【請求項6】
請求項5に記載の工具搬送システムにおいて、
前記制御部は、前記工具の大きさを複数のランクに区分し、撮像された前記模様の形状に基づいて、前記搬送対象工具が複数の前記ランクの何れに該当するか判別する
ことを特徴とする工具搬送システム。
【請求項7】
請求項6に記載の工具搬送システムにおいて、
前記制御部は、前記搬送対象工具の前記ランクおよび前記複数のポットの使用状況に応じて、前記搬送対象工具が他の部材と干渉しないポットを、前記複数のポットのうちから選択する
ことを特徴とする工具搬送システム。
【請求項8】
請求項1に記載の工具搬送システムにおいて、
前記保持部は、前記工具のシャンク部を受け入れ可能な工具保持穴であり、
前記模様は、前記工具保持穴の外周を囲むリング状の領域に施されている
ことを特徴とする工具搬送システム。
【請求項9】
請求項1に記載の工具搬送システムにおいて、
前記制御部は、前記ロボット本体に一体的に取り付けられている
ことを特徴とする工具搬送システム。
【請求項10】
請求項1に記載の工具搬送システムにおいて、
前記搬送先は、工作機械に供給される工具を一時的に保管する工具マガジンである
ことを特徴とする工具搬送システム。
【請求項11】
請求項10に記載の工具搬送システムにおいて、
前記工具マガジンは、前記工具マガジンの工具を出し入れするためのラックが内蔵されている
ことを特徴とする工具搬送システム。
【請求項12】
請求項11に記載の工具搬送システムにおいて、
前記ラックは、半円状に凹む開口部を有する前記ポットが形成されている
ことを特徴とする工具搬送システム。
【請求項13】
請求項12に記載の工具搬送システムにおいて、
前記ポットは、前記開口部に、前記工具のシャンク部を支持する係合部が設けられている
ことを特徴とする工具搬送システム。
【請求項14】
請求項13に記載の工具搬送システムにおいて、
前記係合部は、前記シャンク部のフランジに設けられたV溝に係合する
ことを特徴とする工具搬送システム。
【請求項15】
請求項13に記載の工具搬送システムにおいて、
前記係合部は、前記シャンク部のフランジに設けられたキー溝に係合する
ことを特徴とする工具搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械で使用される工具を搬送先に搬送する工具搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを加工する工作機械の一種として、例えばマシニングセンタ等の、使用する工具を取り替えながらワークに対し種々の加工を行う機械が知られている。この種の工作機械は、複数の工具を収納する工具収納装置を備えている。ワークの加工は、工作機械の加工部(工具を保持しつつ加工を行う機構部)と工具収納装置との間で適宜工具を交換しながら行われる。
【0003】
下記特許文献1には、工具収容装置としてのラック型の工具マガジンに工具を収納する際、工具マガジン内に設けられた段取ポットに工具を取り付け、取り付けられた段取ポットの工具を、工具マガジン内の工具ローダが指定の収納先まで移送する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、段取ポットへの工具の取付を作業者が手作業で行っているため、工具の取付に時間がかかる。また、段取ポットへ工具を取り付けるに当たり、段取ポットに既に取り付けられている工具と干渉しないように工具を取り付けなければならない。これに対して特許文献1では、作業者が工具の大きさを測定し、既に取り付けられている工具と干渉しないポットを作業者が選択する必要があるため、作業効率が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、複数のポットを含む搬送先に工具を搬送するに当たり、作業者にかかる負担を低減して作業効率を向上できる工具搬送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、複数のポットを含む搬送先に工具を搬送する工具搬送システムであって、前記工具を保持する保持部と、当該保持部に前記工具が保持された際に、一部または全部が当該工具によって隠れる位置に施された模様と、を含む工具置き台と、前記工具置き台から前記工具を取り出して前記搬送先に搬送可能なロボット本体と、当該ロボット本体に取り付けられたカメラと、を含むロボットと、前記カメラが撮像した画像を受け付けるとともに前記ロボット本体の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記工具置き台から前記工具を取り出す際に、前記工具置き台を撮像する指令を前記カメラに出力するとともに、当該カメラが撮像した画像に含まれる前記模様の形状に基づいて、前記工具の大きさを判別し、前記制御部は、大きさを判別した前記工具を搬送対象工具として前記搬送先に搬送する際に、前記工具の大きさに基づいて、前記複数のポットのうちから1つのポットを選択し、選択した当該ポットに前記搬送対象工具を取り付ける指令を前記ロボット本体に出力することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ロボットが、工具置き台の工具を搬送先に搬送して搬送先のポットに取り付けるため、作業者が工具を搬送する必要がなくなり作業者にかかる負担が低減される。これにより、作業者の作業時間を短縮でき、作業効率が向上する。
【0009】
また、搬送先のポットに搬送対象工具を取り付けるに当たり、ロボット本体に取り付けられたカメラが撮像した画像に含まれる模様の形状に基づいて工具の大きさを判別し、工具の大きさに基づいて複数のポットのうちから1つのポットを選択するため、作業者が搬送対象工具を取り付けるポットを選択する作業が不要になる。これにより、作業者の作業時間を短縮でき、作業効率が向上する。
【0010】
好ましくは、前記制御部は、前記工具の大きさとして、前記工具を工具軸線方向から見たときに前記工具の輪郭で囲まれた面積を判別する。
【0011】
この態様では、工具の輪郭で囲まれた面積、つまり工具のうち最も外径の大きい部位の面積を、工具の大きさとして判別することができる。
【0012】
好ましくは、前記制御部は、前記カメラが撮像した画像に含まれる前記模様の形状に基づいて、前記工具の有無を判別する。
【0013】
この態様では、カメラが撮像した模様の形状から工具の有無を容易に判別することができる。
【0014】
好ましくは、前記制御部は、前記搬送対象工具の大きさおよび前記複数のポットの使用状況に応じて、前記搬送対象工具が他の部材と干渉しないポットを、前記複数のポットのうちから選択する。
【0015】
この態様では、搬送対象工具の大きさおよび複数のポットの使用状況に基づいて、搬送対象工具が他の部材と干渉しないポットを選択することができる。
【0016】
好ましくは、前記制御部は、前記工具がない場合の模様のパターンを予め記憶し、撮像された前記模様の形状を前記模様のパターンと比較することで、前記工具の大きさを判別する。
【0017】
この態様では、撮像された模様の形状を、予め記憶された工具がない場合の模様パターンと比較することで、工具の大きさを判別することができる。
【0018】
好ましくは、前記制御部は、前記工具の大きさを複数のランクに区分し、撮像された前記模様の形状に基づいて、前記搬送対象工具が複数の前記ランクの何れに該当するか判別する。
【0019】
この態様では、撮像された模様の形状に基づいて、搬送対象工具を工具の大きさに応じてランク付けすることで、工具の寸法を厳密に測定することなく搬送対象工具の大きさを判別できる。その結果、高性能のカメラを使用する必要がなくなり、汎用のカメラでシステムを構成することができる。
【0020】
好ましくは、前記制御部は、前記搬送対象工具の前記ランクおよび前記複数のポットの使用状況に応じて、前記搬送対象工具が他の部材と干渉しないポットを、前記複数のポットのうちから選択する。
【0021】
この態様では、搬送対象工具のランクおよび複数のポットの使用状況から、搬送対象工具が他の部材と干渉しないポットを、複数のポットのうちから容易に選択することができる。
【0022】
好ましくは、前記保持部は、前記工具のシャンク部を受け入れ可能な工具保持穴であり、前記模様は、前記工具保持穴の外周を囲むリング状の領域に施されている。
【0023】
この態様では、工具のシャンク部を工具保持穴に差し入れることで工具の保持が可能になる。また、工具保持穴を中心にしてカメラで撮像すると、工具の大きさに応じて工具保持穴の外周に施された模様が隠れ、工具の大きさに応じて模様の形状が変化する。従って、模様の形状に基づいて工具の大きさを判別することができる。
【0024】
好ましくは、前記制御部は、前記ロボット本体に一体的に取り付けられている。
【0025】
この態様では、搬送対象工具の搬送をロボットのみで完結することができ、工具搬送システムをシンプルに構成することができる。
【0026】
好ましくは、前記搬送先は、工作機械に供給される工具を一時的に保管する工具マガジンである。さらに、前記工具マガジンは、前記工具マガジンの工具を出し入れするためのラックが内蔵されている。この態様では、工具を工具マガジンのラックに保持することができる。
【0027】
好ましくは、前記ラックは、半円状に凹む開口部を有する前記ポットが形成されている。この態様では、工具を半円状に凹む開口部で好適に保持することができる。
【0028】
好ましくは、前記ポットは、前記開口部に、前記工具のシャンク部を支持する係合部が設けられている。この態様では、ポットに設けられた係合部でシャンク部を支持することで、工具をポットで好適に保持することができる。
【0029】
好ましくは、前記係合部は、前記シャンク部のフランジに設けられたV溝に係合する。この態様では、前記ポットの係合部がシャンク部のV溝に係合することで、工具をポットに好適に保持することができる。
【0030】
好ましくは、前記係合部は、前記シャンク部のフランジに設けられたキー溝に係合する。この態様では、前記ポットの係合部がシャンク部のキー溝に係合することで、工具をポットに好適に保持することができる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明によれば、ロボットが搬送先に工具を搬送し、且つ、ロボットが搬送対象工具の大きさを判別するため、作業者にかかる負担を低減して作業効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施形態に係る工具搬送システムの概略構成図である。
【
図2】
図1の工具置き台を水平面に対して鉛直上方から見た上面視図である。
【
図3】段取ポットの工具の保持構造を説明する図である。
【
図6】工具搬送時のロボットの制御作動を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[工具搬送システムの全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る工具搬送システム10の概略構成図である。工具搬送システム10は、工具置き台16に保持されている複数の工具8の何れかを取り出し、取り出した工具8を段取ポット12に搬送可能に構成されている。工具搬送システム10は、搬送先である段取ポット12と、工具8を保持する工具保持穴36(
図2参照)を有する工具置き台16と、工具置き台16から工具8を取り出して段取ポット12に搬送するロボット18と、を含んでいる。なお、工具搬送システム10は、段取ポット12に取り付けられた工具8を取り出して工具置き台16または別の場所に搬送することもできるが、段取ポット12から工具8を取り出す態様については説明を省略する。
【0034】
段取ポット12は、図示しない工作機械に使用される複数個の工具8を保管する工具マガジン20に内蔵されている。工作機械は、使用する工具8を取り替えながらワークに対し種々の加工を行うことができるマシンであり、例えばマシニングセンタ、複合加工機、ターニングセンタ、NC旋盤などである。工具マガジン20は、工作機械に供給される工具8を保管するものであり、例えば数十本またはそれ以上の工具8を収容可能に構成されている。工具マガジン20には、図示しない搬送ローダが設けられ、当該搬送ローダによって、段取ポット12と複数個の工具収容ラックとの間で工具8の受け渡しが行われる。
【0035】
段取ポット12は、工具マガジン20と工具置き台16との間で受け渡しされる複数本の工具8を一時的に保管可能に構成されている。段取ポット12は、通常は工具マガジン20の内部に収容されるが、工具置き台16の工具8を取り付ける際には、段取ポット12が筐体35よりも外側にスライドし、段取ポット12が筐体35の外側に露出した状態となる。これにより、段取ポット12とロボット18との間で工具8の受け渡しが可能になる。この段取ポット12が、請求項の「搬送先」に相当する。段取ポット12の構造については後述する。
【0036】
ロボット18は、工具置き台16から工具8を取り出して段取ポット12に搬送可能なロボット本体22と、当該ロボット本体22に取り付けられたカメラ26と、カメラ26が撮像した画像を受け取るとともにロボット本体22の動作を制御するコントローラ28と、を含む。
【0037】
ロボット本体22は、工具置き台16の工具8を取り出して段取ポット12に取り付けるためのロボットアーム30と、ロボットアーム30の先端に取り付けられている工具把持機構32と、を備えている。なお、移動用の車輪34をさらに備えていてもよい。その場合、ロボット18は、例えばカメラ26によって随時撮像された画像情報に基づいて、工具置き台16と工具マガジン20(段取ポット12)との間を移動可能に構成されていてもよい。
【0038】
ロボットアーム30は、多関節機構で構成され、工具把持機構32を任意の位置に移動可能に構成されている。工具把持機構32は、工具8を把持したり、把持した工具8を離したりして、工具8を受け渡し可能に構成されている。例えば工具置き台16の工具8を取り出す際には、ロボットアーム30を介して、工具把持機構32が工具8を把持可能な位置に当該工具把持機構32を移動させる。次いで、工具把持機構32に工具8を把持させた状態で、ロボットアーム30を使って工具8を工具置き台16から取り出す。また、段取ポット12に工具8を取り付ける際には、工具把持機構32によって把持された工具8を、段取ポット12の後述するポット40までロボットアーム30で移動させる。次いで、工具把持機構32が工具8の把持を解除する。これらの動作は、コントローラ28からの指令に基づいて実施される。なお、ロボットアーム30および工具把持機構32は、公知技術であるため構造および動作に関する詳細な説明を省略する。
【0039】
カメラ26は、工具把持機構32に一体的に取り付けられおり、コントローラ28からの指令に従って撮像を行う。コントローラ28は、ロボット本体22に一体的に取り付けられており、例えばロボット本体22内に内蔵されている。コントローラ28の制御機能については後述する。
【0040】
工具置き台16は、所定の厚みを有する板状部材から構成されている。工具置き台16には、工具8を保持するための複数個の工具保持穴36(
図2参照)が形成されている。工具保持穴36は、工具8のシャンク部9(
図3参照)を受け入れ可能な深みを有する穴であり、前後左右方向に複数個形成されている。工具保持穴36の前後方向の間隔は等しくされ、左右方向の間隔についても等しくされている。上記工具保持穴36は、請求項における「保持部」に相当する。
【0041】
図2は、工具置き台16を、当該工具置き台16の水平面14に対する鉛直上方から見た上面視図である。
図2では、工具保持穴36が前後方向に5個、左右方向に4個形成された場合が示されているが、これは一例であって工具保持穴36の数は適宜変更してもよい。また、各工具保持穴36は、工具の位相を全て同一にするためのキー39が付随している。このキー39は、後述のポット40にて工具8が保持される際に工具8を所定の位相にするために、工具置き台16の時点で前もって位相を規定しておくために設けられている。キー39は、工具8の後述するフランジ9Aに形成されたキー溝53(
図3(B)参照)に係合可能に構成されている。
【0042】
図2の一番左の列は、工具保持穴36に工具8がない状態を示している。
図2の一番左に示すように、工具保持穴36の周辺には、それぞれ模様58が施されている。模様58は、各工具保持穴36とも同じパターンで描かれ、例えばチェック模様に描かれている。チェック模様は、2色(白黒)の四角形を交互に配した市松模様であってもよい。
【0043】
工具保持穴36に工具8のシャンク部9が差し入れられると、工具8が工具保持穴36の水平面14に対して垂直に突き出す状態で保持される。本実施形態では、各工具8がその大きさに応じて複数のランクに区分される。具体的には、各工具8が、その大きさに応じて、ランク「S」、「L」、「XL」の3つのランクに区分される。ここでいう、工具8の大きさとは、工具8の軸線CL方向(工具軸線方向)から見たときの、工具8の輪郭Rで囲まれた面積Uに相当する。すなわち、工具8の大きさは、工具8のうち最も外形が大きい部位の面積Uに相当する。例えば、工具8の刃部11がシャンク部9よりも大きい場合には、刃部11の面積が工具8の大きさとなり、シャンク部9が刃部11よりも大きい場合には、シャンク部9の面積が工具8の大きさとなる。また、工具8の刃部11の大部分がシャンク部9よりも小さく、一部分のみシャンク部9よりも大きい場合には、刃部11の一部分の面積とシャンク部9の面積の合計が工具8の大きさとなる。
【0044】
図2の左から2番目の列は、工具保持穴36にランク「S」に区分された工具8Sが差し入れられた状態を示している。ランク「S」は、最も小さい工具8の区分(分類)に相当する。ランク「S」の工具8Sは、
図2に示すように、前後方向で隣り合う工具保持穴36に連続して工具8Sを差し入れることができる大きさに区分されている。
【0045】
図2の左から3番目の列は、工具保持穴36にランク「L」に区分された工具8Lが差し入れられた状態を示している。ランク「L」は、ランク「S」よりも大きい工具8であって、且つ、ランク「XL」よりも小さい工具8の区分(分類)に相当する。具体的には、ランク「L」の工具8Lは、工具8の干渉を考慮すると、
図2において前後方向で隣り合う工具保持穴36に連続して工具8Lを差し入れることができない大きさに区分されている。従って、
図2に示すように、ランク「L」の工具8Lは、前後方向で工具保持穴36を1つ隔てて差し入れられている。
【0046】
図2の一番右の列は、工具保持穴36にランク「XL」に区分された工具8XLが差し入れられた状態を示している。ランク「XL」は、最も大きい工具8の区分(分類)に相当する。具体的には、ランク「XL」の工具8XLは、工具8の干渉を考慮すると、
図2において前後方向で1つ隔てた工具保持穴36でも差し入れることができない大きさに区分されている。従って、
図2に示すように、ランク「XL」の工具8XLは、前後方向で工具保持穴36を2つ隔てて差し入れられている。
【0047】
[段取ポットの構造]
次に、工具マガジン20に内蔵されている段取ポット12について説明する。
図3は、段取ポット12の概要を説明する図であり、
図3(A)は、段取ポット12の斜視図を示し、
図3(B)は、
図3(A)において切断線Zで切断した断面図、すなわちシャンク部9のフランジ9Aを軸線CLに対して垂直な面で切断した断面図である。
図3(A)に示すように、段取ポット12は、工具マガジン20からスライドして筐体35よりも外部に移動することができるスライドケース37と、スライドケース37に連動し、工具8を保持するためのラック38と、を備えている。スライドケース37およびラック38は、
図3(A)において右側が工具マガジン20に繋がっている。ラック38には、工具8を保持するための4個のポット40A~40D(区別しない場合にはポット40と記載)が形成されている。詳細には、ラック38には、半円状に凹む開口部を有する4個のポット40A~40Dが一列に並んで形成されている。各ポット40は、等間隔に形成されており、
図2に示す工具保持穴36の前後方向の間隔と同程度の間隔に設定されている。
図3(A)には、一態様として、各ポット40にランク「S」の工具8Sがそれぞれ取り付けられた状態が示されている。また、
図3(B)に示すように、ポット40A(ポット40B~ポット40Dも同様)は、開口部に沿って断面が三角形状の円弧部45が設けられており、この円弧部45に、工具8Sのシャンク部9のフランジ9Aに設けられたV溝47が係合させられる。これにより、V溝47が円弧部45で支持されることで、工具8Sが落下しないようにポット40によって保持される。なお、円弧部45は開口部全体ではなく、開口部の一部分に間隔をあけて複数箇所設けられていてもよい。少なくとも円弧部45が3箇所以上あれば、工具8の姿勢は安定する。
【0048】
さらに、
図3(B)に示すように、ポット40A(ポット40B~ポット40Dも同様)は、開口部にキー51が設けられており、このキー51に、工具8Sのシャンク部9のフランジ9Aに設けられたキー溝53が係合させられる。これにより、キー溝53がキー51で支持されることで、工具8Sが所定の位相でポット40に保持される。本明細書では、上述の円弧部45およびキー51が請求項の「係合部」に相当する。
【0049】
図4は、
図3の段取ポット12のラック38を上方から見た上面視図、すなわちラック38の上面38Pに対して垂直な方向から当該ラック38を見た上面視図である。
図4の一番左に示す態様(以下、態様A)は、各ポット40に工具8が取り付けられていない状態を示している。
【0050】
図4の左から2番目に示す態様(態様B)は、ランク「S」の工具8Sが各ポット40に取り付けられた状態を示している。工具8Sの場合、隣り合うポット40にそれぞれ工具8Sを取り付けても隣り合う工具8Sが干渉しない。このように、ランク「S」の工具8Sは、隣り合うポット40に工具8Sを取付可能な工具8の大きさに区分されている。
【0051】
図4の左から3番目に示す態様(態様C)は、ランク「L」の工具8Lが、ポット40に取り付けられた状態を示している。工具8Lの場合、隣り合うポット40に工具8Lを取り付けると互いの工具8Lが干渉するため、ポット40を少なくとも1つ隔てて取り付ける必要がある。すなわち、ランク「L」の工具8Lは、ポット40を1つ隔てて取り付ける必要がある工具8の大きさの範囲に区分されている。なお、
図4では、工具8Lが取り付けられたポット40Aに対して、ポット40を2つ隔てたポット40Dに工具8Lが取り付けられているが、例えばポット40Aに対してポット40を1つ隔てたポット40Cに工具8Lが取り付けられてもよい。
【0052】
図4の一番右に示す態様(態様D)は、ランク「XL」の工具8XLがポット40に取り付けられた状態を示している。工具8XLでは、ポット40を1つ隔てても工具8XLが干渉する。従って、ランク「XL」の工具8XLは、ポット40を2つ隔てて取り付ける必要がある。すなわち、ランク「XL」の工具8XLは、ポット40を2つ隔てて取り付ける必要がある工具8の大きさの範囲に区分されている。本実施形態では、ラック38に4個のポット40が形成されていることから、段取ポット12に2本の工具8XLを取り付けるには、ポット40Aおよびポット40Dに工具8XLを取り付ける必要がある。
【0053】
このように、ポット40には、工具8の大きさを考慮して取り付ける必要が生じる。これまでは、作業者が工具8のうち最も外形の大きい部位の寸法を測定し、段取ポット12に既に取り付けられている工具8と干渉しないポット40を選択して工具8を取り付けていた。その結果、作業者の負担が大きくなり作業効率が低下していた。これに対して、本実施形態では、ロボット18は、工具8の大きさを判別するとともに段取ポット12に既に取り付けられている工具8と干渉しないポット40を選択し、さらに、選択したポット40に工具8を取り付けるように構成されている。なお、上記段取ポット12に既に取り付けられている工具8は、請求項の「他の部材」に相当する。
【0054】
[ロボットの作動について]
以下、工具搬送システム10を構成するロボット18の制御機能について詳細に説明する。
図5は、ロボット18の構成を説明する図である。
図5の左側に示すコントローラ28は、実際にはロボット本体22に内蔵されている。コントローラ28は、予め記憶された制御プログラムに基づいて、ロボット本体22およびカメラ26の動作を制御する。上記コントローラ28は、請求項の「制御部」に相当する。
【0055】
コントローラ28は、ロボット本体22やカメラ26を包括的に制御する制御器であり、プロセッサ42とメモリ44とを含んでいる。プロセッサ42は、各種演算処理を行うCPUを含む演算装置である。メモリ44は、各種情報を記憶する記憶装置であり、例えばRAM、ROM、HDD等を含む。
【0056】
プロセッサ42は、工具置き台16から工具8を取り出す際に実行される、各種制御プログラムに相当する制御部を備えている。具体的には、プロセッサ42は、工具置き台16に施された模様58をカメラ26で撮像する撮像制御部46、撮像した画像データ54から工具8の有無および工具8の大きさを判別する工具判別制御部48、大きさを判別した当該工具8を段取ポット12に取り付けるに当たり、段取ポット12の既に取り付けられた工具8と干渉しないポット40を、複数のポット40のうちから1つ選択するポット選択制御部50、および、選択した当該ポット40に搬送対象の工具8を取り付ける工具取付制御部52を含む、各種制御部を機能的に備えている。プロセッサ42は、上記各種制御部を順次実行して各種演算処理を行う。また、メモリ44には、カメラ26によって撮像された画像データ54が随時記憶されるとともに、工具8の有無および工具8の大きさを判別するときに使用される模様パターン56が予め記憶されている。
【0057】
撮像制御部46は、ロボット18が段取ポット12に工具8を搬送するに当たり、最初に実行される。撮像制御部46は、工具置き台16の各工具保持穴36の外周を囲む、リング状の領域に施された模様58を撮像する指令をカメラ26に出力する。これを受けて、ロボット本体22を工具置き台16に移動させ、工具置き台16の水平面14に対して垂直な方向から工具置き台16の工具保持穴36の外周に施された模様58を撮像する。工具保持穴36の撮像に当たり、工具置き台16全体を撮像してもよく、
図2の前後方向の列毎にまとめて撮像してもよく、各工具保持穴36毎に1回ずつ撮像してもよい。カメラ26の解像度等を考慮し、各工具保持穴36に施された模様58を識別できる範囲であれば、上記の何れを採用しても構わない。カメラ26が撮像した模様58は、コントローラ28にて受け付けられ、画像データ54としてメモリ44に随時記憶される。
【0058】
工具判別制御部48は、カメラ26が撮像した画像(画像データ54)に含まれる模様58の形状に基づいて、工具8の有無を判別する。具体的には、工具判別制御部48は、撮像した画像に含まれる模様58の形状(画像データ54)を、予めメモリ44に記憶されている模様パターン56と比較することで、工具8の有無および工具8の大きさを判別する。模様パターン56として、例えば工具保持穴36に工具8がない場合の模様58の形状が予め記憶されている。例えば、工具保持穴36に工具8がない場合、その工具保持穴36の周囲で撮像された模様58の形状が、メモリ44に記憶されている模様パターン56と一致または略一致する。このとき、工具判別制御部48は、当該工具保持穴36に工具8がないものと判別する。
【0059】
一方、撮像した工具保持穴36に工具8がある場合、模様58が工具8の輪郭Rで囲まれた面積U分だけ模様58が隠れるため、撮像した模様58の形状が模様パターン56とは異なる。このとき、工具判別制御部48は、工具保持穴36に工具8があるものと判断する。
【0060】
次いで、工具判別制御部48は、模様58の形状に基づいて、工具8の輪郭Rで囲まれた面積Uに相当する工具8の大きさを判別する。工具8の大きさは、工具8を軸線方向から見たときの当該工具8の輪郭Rで囲まれた面積Uに相当するが、面積Uを撮像した画像から測定する場合、高性能のカメラが必要になる。また、工具8の大きさは、当該工具8を段取ポット12に搬送するに当たり、段取ポット12の工具8と干渉しないポット40を選択するために用いられるだけであり、正確な面積Uまで必要としない。
【0061】
そこで、汎用のカメラ26であっても工具8の大きさを判別する手段として、工具判別制御部48は、工具8の大きさを複数のランクに区分し、撮像された模様58の形状に基づいて、当該工具8が複数のランクの何れに該当するか判別する。
【0062】
上述したように本実施形態では、工具8の大きさに応じて、各工具8が、「S」、「L」、「XL」の3つのランクに区分される。例えば、工具保持穴36にランク「S」の工具8Sが差し入れられている場合、撮像された当該工具保持穴36周辺の模様58の形状が、
図2の左から二番目に示すような形状(以下、S形状)になる。具体的には、S形状は、工具保持穴36の外周に施された模様58の一部または全部が工具8Sによって隠れる一方で、その工具保持穴36に隣り合う工具保持穴36の外周に施された模様58までは隠れない形状となる。工具判別制御部48は、撮像した模様58の形状がS形状に該当した場合、工具8をランク「S」と判別する。
【0063】
また、工具保持穴36にランク「L」の工具8Lが差し入れられている場合、撮像された当該工具保持穴36周辺の模様58の形状が、
図2の左から3番目に示すような形状(以下、L形状)になる。具体的には、L形状は、工具保持穴36の外周に施された模様58が工具8Lによって全て隠れるとともに、隣り合う工具保持穴36の外周に施された模様58の一部が工具8Lによって隠れた形状となる。工具判別制御部48は、撮像した模様58の形状がL形状に該当した場合、工具8をランク「L」と判別する。なお、L形状では、隣り合う工具保持穴36の中心Cまでは工具8Lによって隠されない。
【0064】
また、工具保持穴36にランク「XL」の工具8XLが差し入れられている場合、撮像された当該工具保持穴36周辺の模様58の形状が、
図2の一番右に示すような形状(以下、XL形状)になる。具体的には、XL形状は、工具保持穴36に施された模様58が工具8XLによって全て隠れるとともに、隣り合う工具保持穴36の模様58についても半分程度が隠れた形状となる。工具判別制御部48は、撮像した模様58の形状がXL形状に該当した場合、工具8をランク「XL」と判別する。なお、XL形状では、隣り合う工具保持穴36の中心Cについても工具8XLによって隠される。
【0065】
ポット選択制御部50は、判別した工具8(以下、搬送対象工具8X)を段取ポット12に搬送するに当たり、搬送対象工具8Xのランクおよび段取ポット12の使用状況に応じて、搬送対象工具8Xが段取ポット12のポット40に既に取り付けられた工具8と干渉しないポット40を、複数のポット40のうちから選択する。
【0066】
先ず、ポット選択制御部50は、段取ポット12に既に取り付けられている工具8に関する工具情報を取得する。上記工具情報は、各ポット40の工具8の有無、および、各ポット40に取り付けられている工具8のランクを含む。この工具情報は、工具マガジン20に備えられるメモリ(図略)に記憶されている。上記工具情報は、例えば工具マガジン20を管理する図示しない制御装置から無線等を介して随時取得される。上記工具情報は、請求項の「複数のポットの使用状況」に相当する。
【0067】
次いで、ポット選択制御部50は、取得した工具情報および搬送対象工具8Xのランクに基づいて、工具判別制御部48が判別した搬送対象工具8Xを取付可能なポット40(以下、取付ポット40X)を複数のポット40のうちから選択する。取付ポット40Xは、搬送対象工具8Xが段取ポット12に既に取り付けられている工具8と干渉しないポット40に相当する。なお、後述すように、取付ポット40Xは、工具8のランクおよびポット40の空き状態に応じて、ポット40A~40Dの各々がなり得る。
【0068】
本実施形態では、段取ポット12への工具8の取付に当たり、同じランクの工具8毎にまとめて取り付けられる。例えば、最初にランク「S」の工具8Sがまとめて取り付けられ、ランク「S」の工具8Sの取付が完了すると、次いでランク「L」の工具8Lがまとめて取り付けられ、最後にランク「XL」の工具8XLがまとめて取り付けられる。従って、例えばランク「S」の工具8Sを取り付ける際には、段取ポット12に既に取り付けられている工具8も基本的にはランク「S」の工具8Sとなる。ランク「L」の工具8Lおよびランク「XL」の工具8XLについても同様である。
【0069】
例えば、ランク「S」の工具8Sを取り付ける場合、ポット選択制御部50は、判別した搬送対象工具8Xがランク「S」であって、且つ、段取ポット12に空きのポット40がある場合、段取ポット12に搬送対象工具8X(8S)を取付可能と判定する。また、ポット選択制御部50は、当該空きのポット40を、搬送対象工具8Xを取付可能なポット40(以下、取付ポット40X)として複数のポット40のうちから選択する。ランク「S」の工具8Sの場合、隣り合うポット40に工具8Sが取り付けられていても互いの工具8Sが干渉しない。従って、段取ポット12に空きのポット40がある場合、その空きのポット40の工具8Sを取り付けることができる。
【0070】
ランク「L」の工具8を取り付ける場合、ポット選択制御部50は、判別した搬送対象工具8Xがランク「L」であり、且つ、段取ポット12において空きのあるポット40が3つ連続している場合(端に位置するポット(40A、40D)を含む場合は2つ)、段取ポット12に搬送対象工具8X(8L)を取付可能と判定する。また、ポット選択制御部50は、空きのあるポット40が3つ連続している場合、中央に位置するポット40を取付ポット40Xとして選択し、端に位置するポット40A(または40D)を含む2つのポット40が連続して空いている場合、当該端に位置するポット40A(または40D)を取付ポット40Xとして選択する。
【0071】
ランク「L」の工具8Lを取り付ける場合、段取ポット12のポット40に空きがあっても、隣り合うポット40に同じランク「L」の工具8Lが取り付けられていると、互いの工具8Lが干渉するためにそのポット40に取り付けることができない。一方、空きのポット40が3つ連続している場合、中央に位置するポット40に工具8Lを取り付ければ工具8Lが干渉しない。同じく、端に位置するポット40A(または40D)およびそれと隣り合うポット40B(または40C)が空いている場合、端に位置するポット40A(または40D)に工具8Lを取り付ければ工具8Lが干渉しない。従って、空きのポット40が3個連続する場合、3個のポット40のうち中央に位置するポット40が、取付ポット40Xに選択される。また、端のポット40A(または40D)を含む2つのポット40が連続して空いている場合、当該端のポット40A(または40D)が、取付ポット40Xに選択される。
【0072】
ランク「XL」の工具8を取り付ける場合、ポット選択制御部50は、判別した工具8がランク「XL」であり、且つ、全てのポット40が空いている場合または端に位置するポット40A(または40D)を含む3つのポット40が連続して空いている場合、段取ポット12に工具8XLを取付可能と判定する。また、ポット選択制御部50は、全てのポット40が空いている場合、例えば端に位置するポット40A(または40D)を取付ポット40Xに選択する。また、ポット選択制御部50は、端に位置するポット40A(または40D)を含む3つのポット40が連続して空いている場合、当該端に位置するポット40A(または40D)を取付ポット40Xに選択する。
【0073】
ランク「XL」の工具8XLを取り付ける場合、隣り合うポット40が空いていても、その隣り合うポット40を隔てたポット40にランク「XL」の工具8XLが取り付けられていると、工具8XLが干渉するために取り付けることができない。一方、全てのポット40が空いていれば、何れのポット40にも工具8XLを取り付けることができるが、この場合には、段取ポット12に少しでも多くの工具8XL(本実施形態では2本)を取り付けるため、端に位置するポット40A(または40D)が取付ポット40Xに選択される。また、端に位置するポット40A(または40D)を含む3個のポット40が連続して空いている場合、端のポット40A(または40D)に工具8XLを取り付ければ工具8XLが干渉しない。この場合には、当該端に位置するポット40A(または40D)が取付ポット40Xに選択される。
【0074】
ポット選択制御部50によって、判別した搬送対象工具8Xを取付可能な取付ポット40Xが選択されると、工具取付制御部52は、選択した取付ポット40Xに搬送対象工具8Xを取り付ける指令をロボット本体22に出力する。上記指令を受けて、ロボット本体22は、判別した搬送対象工具8Xを工具置き台16から取り出した後に段取ポット12に移動し、選択した取付ポット40Xに搬送対象工具8Xを取り付ける。なお、段取ポット12は、工具マガジン20内に内蔵されているため、工具搬送時には、段取ポット12が工具マガジン20からスライドして筐体35の外部に移動し、段取ポット12とロボット18との間で工具8の受け渡しが可能になる。例えば、段取ポット12は、ロボット18が工具マガジン20前に到着すると、筐体35の外部に移動するように構成される。または、ロボット18からの無線を介した指令によって、段取ポット12が筐体35の外部に移動するように構成される。または、工具搬送時に、作業者が段取ポット12を筐体35の外部に移動することもできる。
【0075】
また、コントローラ28は、全ての工具保持穴36に関して、工具8の有無や工具8を取付可能なポット40を判別したかを判定する機能を備えている。コントローラ28は、全ての工具保持穴36に関して上記判別が完了していない場合、判別の完了していない工具保持穴36に関して、上記判別を実施する。また、コントローラ28は、全ての工具保持穴36に関して判別が完了した場合、作業者が確認できる表示モニタに工具搬送不可メッセージを出力し、工具搬送作業を終了する。
【0076】
次に、工具置き台16の工具8を段取ポット12に取り付けるに当たり、ロボット18のコントローラ28が行う工具搬送の手順を、
図6のフローチャートを用いて説明する。このフローチャートは、工具搬送時において、例えば取り付ける工具8のランク毎に実行される。
【0077】
図6のフローが開始されると、先ず撮像制御部46は、ロボット本体22を工具置き台16に移動させた状態で、工具保持穴36に施された模様58の形状をカメラ26で撮像し、画像データ54としてメモリ44に一時的に記憶する(ステップS1)。次いで、工具判別制御部48は、対象となる工具保持穴36の周辺で撮像された模様58の形状を、予め記憶されている工具8がない場合の模様58のパターンと比較する(ステップS2)。次いで、工具判別制御部48は、撮像された模様58の形状と工具8がない場合の模様58のパターンとの差異に基づいて、対象となる工具保持穴36に工具8があるか否かを判定する(ステップS3)。
【0078】
上記ステップS3が否定(NO)されて工具8がないと判定された場合、コントローラ28は、全ての工具保持穴36について判定が完了したかを判定する(ステップS8)。上記ステップS8の判定が否定(NO)された場合、コントローラ28は、ステップS2に戻り、別の工具保持穴36(例えば前に撮像した工具保持穴36と隣り合う工具保持穴36)について、ステップS2以下のフローを実行する。上記ステップS8の判定が肯定(YES)された場合、すなわち全ての工具保持穴36について判定が完了した場合、コントローラ28は、作業者が確認できる表示モニタに工具搬送不可メッセージを出力し(ステップS9)、工具搬送作業を終了する。
【0079】
上記ステップS3が肯定(YES)されて工具8があると判定された場合、工具判別制御部48は、撮像された模様58の形状に基づいて工具8の大きさに応じたランクを判別する(ステップS4)。
【0080】
次いで、ポット選択制御部50は、工具8の搬送先である段取ポット12の使用状況に関する工具情報を取得し(ステップS5)、ランクを判別した搬送対象工具8Xを取付可能な取付ポット40Xがあるか否かを、段取ポット12の工具情報を参照して判定する(ステップS6)。
【0081】
上記ステップS6が否定(NO)された場合、すなわち判別した工具8を段取ポット12に取付可能な空きのポット40がないと判定された場合、コントローラ28は、全ての工具保持穴36について判定が完了したかを判定する(ステップS8)。上記ステップS8の判定が否定(NO)された場合、ステップS2に戻り、別の工具保持穴36について、ステップS2以下のフローを実行する。上記ステップS8の判定が肯定(YES)された場合、すなわち全ての工具保持穴36について判別が完了した場合、コントローラ28は、作業者が確認できる表示モニタに工具搬送不可メッセージを出力し(ステップS9)、工具搬送作業を終了する。
【0082】
上記ステップS6が肯定(YES)された場合、すなわち判別した搬送対象工具8Xを取付可能な取付ポット40Xがあると判定された場合、工具取付制御部52は、ロボット本体22に対して段取ポット12の取付ポット40Xに搬送対象工具8Xを取り付ける指示を出力する(ステップS7)。この指示を受けてロボット本体22が作動し、判別した搬送対象工具8Xを工具置き台16の工具保持穴36から取り出し、段取ポット12に向かって搬送対象工具8Xを搬送し、搬送対象工具8Xを取付可能な取付ポット40Xに取り付ける。その後は、ステップS8に進み、全ての工具保持穴36について、上述した制御が繰り返し実行される。
【0083】
[作用効果]
以上説明したとおり、本実施形態では、工具置き台16から搬送対象工具8Xを取り出し搬送先である段取ポット12に搬送する作業、および、搬送対象工具8Xの段取ポット12への取付をロボット18が実行するため、作業者の作業時間を短縮でき、作業効率が向上する。
【0084】
また、本実施形態では、段取ポット12に搬送対象工具8Xを取り付けるに当たり、ロボット本体22に取り付けられたカメラ26が撮像した画像に含まれる模様58の形状から工具8の有無および工具8の大きさを判別し、工具8の大きさに基づいて段取ポット12の既に取り付けられている工具8に干渉しない取付ポット40Xを選択するため、作業者が搬送対象工具8Xを取付可能な取付ポット40Xを選択する作業が不要になる。これにより、作業者の作業時間を一層短縮でき、作業効率が向上する。
【0085】
また、本実施形態では、工具8がない場合の模様58のパターンを画像データ54として予めメモリ44に記憶し、撮像された模様58の形状を模様58のパターンと比較することで、工具8の有無および工具8の大きさを容易に判別することができる。
【0086】
また、本実施形態では、工具8の輪郭Rで囲まれた面積Uに基づいて工具8の大きさが判別されることで、工具8のうち最も外径の大きい部位から工具8の大きさが判別される。特に、本実施形態では、模様58の形状に基づき、工具8をその大きさに応じた複数のランクに区分することで、工具8の寸法を厳密に測定することなく工具8の大きさを判別できる。その結果、高性能のカメラを使用する必要がなくなり、汎用のカメラ26で工具搬送システム10を構成することができる。また、判別した搬送対象工具8Xのランクに基づいて、段取ポット12に既に取り付けられている工具8と干渉しない取付ポット40Xを容易に選択することができる。
【0087】
また、本実施形態では、工具保持穴36の外周を囲むリング状の領域に模様58が施されることで、工具保持穴36をカメラ26で撮像すると、工具8の有無や工具8の大きさに応じて模様58の形状が変化する。この模様58の形状から工具8の有無や工具8の大きさを容易に判別することができる。
【0088】
また、本実施形態では、コントローラ28がロボット本体22に一体的に取り付けられるため、ロボット本体22単体で工具8を搬送させることができ、工具搬送システム10をシンプルに構成できる。
【0089】
また、本実施形態では、工作機械に供給される工具8を保管する工具マガジン20に内蔵されて工具マガジン20の工具8を出し入れするための段取ポット12の工具8を、ロボット18が搬送するため、作業者が段取ポット12に工具8を搬送する行程が不要になる。
【0090】
また、本実施形態では、搬送先である工具マガジン20に工具8を出し入れするためのラック38が内蔵されることで、工具8をラック38を用いて保持することができる。
【0091】
また、本実施形態では、ラック38は、半円状に凹む開口部を有するポット40が形成されることで、工具8をポット40の開口部で好適に保持することができる。さらに、ポット40に設けられた円弧部45がシャンク部9のフランジ9Aに形成されたV溝47に係合させられるとともに、ポット40に設けられたキー51がフランジ9Aに形成されたキー溝53に係合させられることで、工具8がポット40とシャンク部9との間に設けられた係合機構によって支持された状態となる。その結果、工具8をポット40によって好適に保持することができる。
【0092】
[変形例]
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0093】
例えば、上記実施形態では、搬送先として、工具マガジン20に内蔵されている段取ポット12のポット40に工具8を搬送するものであったが、本発明は必ずしもこの形態に制限されない。例えば、工具マガジン20に保管される各種工具8がそれぞれポット40によって保持され、各々のポット40にロボット18が直接工具8を搬送するものであってもよい。または、例えば工作機械の前面などにおいて、工具マガジン20とは別個に、複数のポット40を有する工具段取ステーションを設け、その工具段取ステーションに工具8を搬送するものであってもよい。このように、複数のポット40を含んで構成され、工具8をポット40に取り付け可能な構成であれば、搬送先については段取ポット12に制限されない。
【0094】
また、上記実施形態では、共通のランク毎に工具8を搬送するものであったが、段取ポット12に取り付ける工具8のランクが混在する態様でも構わない。例えば、段取ポット12の既に工具8が取り付けられているポット40、および、その工具8のランクに応じて、空いているポット40に取付可能な工具8のランクが決まる。そこで、空いているポット40に取付可能な工具8のランクを、段取ポット12の工具8の使用状況毎にマップとして予め作成し、メモリ44に記憶しておく。ポット選択制御部50は、搬送対象工具8Xのランクを判別すると、段取ポット12の工具8の使用状況に応じた前記マップを参照することで、搬送対象工具8Xを取付可能か否かを判断するとともに、取付可能な取付ポット40Xを選択する。上述したようなマップを用いることで、段取ポット12に異なるランクの工具8が混在する場合であっても、搬送対象工具8Xが干渉しない取付ポット40Xを選択することができる。
【0095】
また、本実施形態では、
図2に示す工具置き台16において前後方向で同じランクの工具8が差し入れられていたが、工具8が干渉しない範囲であれば、前後方向で異なるランクの工具8が差し入れられてもよい。
【0096】
また、本実施形態では、最初に全ての工具保持穴36について撮像を行い、
図6のステップS2以下の制御作動が実行されるものであったが、1つの工具保持穴36を撮像する毎に、
図6のフローチャートで示す制御作動が実行されてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、ロボット本体22を制御するコントローラ28がロボット本体22に一体的に取り付けられていたが、コントローラ28がロボット本体22から分離され、コントローラ28からの指令が無線等を介してロボット本体22に伝達されても構わない。例えば、工具マガジン20に内蔵されて工具マガジン20の工具8を管理する制御装置が、コントローラ28の機能を備えていてもよい。または、工具搬送システム10全体を管理する制御装置が、コントローラ28の機能を備えていてもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、段取ポット12のラック38に4個のポット40が形成されていたが、ポット40の数は4個に限定されない。例えば、3個のポット40が形成されるものでもよく、5個以上のポット40が形成されても構わない。
【0099】
また、上記実施形態では、メモリ44には、模様58のパターンとして工具8がない場合の模様58が記憶されていたが、工具8のランク毎の模様58の形状についても模様58のパターンとして記憶し、それらランク毎の模様58のパターンを比較することで工具8のランクを区分することもできる。
【0100】
また、上記実施形態では、模様58がチェック模様に描かれていたが、必ずしもチェック模様に限定されない。模様58の形状は、工具8の有無および工具8の大きさを判別できるものであればよい。
【0101】
また、上記実施形態では、各工具8が大きさに応じてランク「S」、「L」、「XL」の3つに区分されるものであったが、必ずしもこれに限定されない。例えば、工具8が大きさに応じて、2つまたは4つ以上のランクに区分されてもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、段取ポット12には、工具8のみが取り付けられるものであったが、例えばワーク計測用のタッチプローブなど、工作機械の主軸に取り付けられる器具が取り付けられていてもよい。このとき、前記器具についても、工具8と同様に予めランク付けされることで、前記機器を工具8とみなし、工具8および前記機器と干渉しない取付ポット40Xを選択することができる。この場合には、ポット40に既に取り付けられた工具8および前記機器が、請求項の「他の部材」に相当する。
【0103】
また、上記実施形態では、工具置き台16において隣り合う工具保持穴36の間隔が、段取ポット12のポット40の間隔と同程度に設定され、各工具保持穴36の外周に施された模様58が隣接するように形成されていたが、必ずしもこれに制限されない。例えば、隣り合う工具保持穴36の間隔が十分に長く設定され、各工具保持穴36に施される模様58が隣接しなくてもよい。この場合には、例えば模様58が広範囲に施され、ランク「XL」の工具8XLであっても、模様58が撮像されることで工具8のランクを判別可能に構成される。そうすることで、工具8のランクを判別可能になり、段取ポット12に取付可能な取付ポット40Xを選択可能になる。
【符号の説明】
【0104】
8:工具
8X:搬送対象工具
9:シャンク部
9A:フランジ
10:工具搬送システム
12:段取ポット(搬送先)
16:工具置き台
18:ロボット
20:工具マガジン
22:ロボット本体
26:カメラ
28:コントローラ(制御部)
36:工具保持穴(保持部)
40:複数のポット
40X:取付ポット(他の部材と干渉しないポット)
45:円弧部(係合部)
47:V溝
51:キー(係合部)
53:キー溝
58:模様
【要約】
【課題】搬送先に工具を搬送する作業にかかる時間を短縮し、作業効率を向上できる工具搬送システムを提供する。
【解決手段】工具置き台から工具を取り出す際に、ロボット本体に取り付けられたカメラが工具置き台を撮像し、ロボットの制御部が、当該カメラが撮像した画像に含まれる模様の形状に基づいて、工具の有無および工具の大きさを判別し、工具の大きさに基づいて、複数のポットのうちから1つのポットを選択する。
【選択図】
図6