(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】電子廃棄物からの金属の回収方法
(51)【国際特許分類】
C22B 15/06 20060101AFI20241217BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20241217BHJP
C22B 7/04 20060101ALI20241217BHJP
C22B 9/10 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C22B15/06
C22B7/00 A
C22B7/04 A
C22B9/10
(21)【出願番号】P 2023501566
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(86)【国際出願番号】 EP2021068313
(87)【国際公開番号】W WO2022012968
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】102020208739.3
(32)【優先日】2020-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】カウセン・フランク・マーリン
(72)【発明者】
【氏名】デーゲル・ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】ルクス・ティム
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-193147(JP,A)
【文献】特開平10-147821(JP,A)
【文献】特開2000-192164(JP,A)
【文献】特表昭62-501980(JP,A)
【文献】国際公開第2019/115540(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗銅の回収方法であって、次のステップ:
i)融解反応器内において、電子廃棄物を含む供給混合物を提供及び融解して、第一の金属相及び第一のスラグ相を有する第一の融解物を形成するステップ、
ii)融解反応器から第一のスラグ相を取り出すステップ、
iii)酸素含有ガスを用いて、場合により銅含有残渣を添加して、残った第一の金属相を精錬して、第二の銅富化スラグ相を形成するステップ、
iv)場合により、第二のスラグ相を取り出し及びステップiii)を繰り返すステップ、
v)精錬された第一の金属相を融解反応器から取り出すステップ、及び
vi)電子廃棄物を含む更なる供給混合物を、残った第二の銅富化スラグ相に加え、そしてプロセスステップi)からvi)を繰り返すステップ、
を含む、前記方法。
【請求項2】
第一のスラグ相を還元剤を用いて還元する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プロセス全体が、少なくとも1150℃の温度で実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
供給混合物が、少なくとも10重量%の量で電子廃棄物を含む、請求項1~3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
供給混合物がスラグ形成剤を含む、及び/またはスラグ形性剤がステップi)及び/またはiii)においてプロセスに添加される、請求項1~4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
供給混合物が、供給混合物中に存在する電子廃棄物の質量割合の少なくとも1/8の量でスラグ形性剤を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
スラグ形成剤が、鉄(金属)、カルシウム-、マグネシウム-、ナトリウム-、ケイ素-、鉄-酸化物、-炭酸塩及び/または-水酸化物を含む系列から選択される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
電子廃棄物が0.1~20.0重量%のアルミニウム含有率を有する、請求項1~7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
電子廃棄物が、5.0~80.0重量%の有機物含有率を有する、請求項1~8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
電子廃棄物が、20インチ未満の粒度に細断され、及び場合によっては、プレス加工物の形でステップi)に従い提供される、請求項1~9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
ステップi)が、酸素含有ガスの選択的吹き込みによって支援される、請求項1~10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
金属相が、融解反応器の底及び/または側壁に配置されたタップ口を介して抜き出される、請求項1~11のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子廃棄物から第8族から第14族の金属を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような方法は、従来技術において原則的には知られている。例えば、インターネットではhttps://www.totalmateria.comのアドレスに、“Ausmelt/Isasmelt Matte Smelting: Part One”という論文があり、これは、銅含有残渣をリサイクルする方法を記載している。具体的には、この方法は、このような残渣を、円筒状の炉容器に上方から導入し、そしてこの炉容器の内部において、トップランスの助けを借りて上方から炉内に導入された酸素富化空気に曝すことを企図している。導入された残渣はこのようにして融解され、そして浮遊するスラグ相を有する金属相が炉内に生じる。これらのヘテロ相は、どちらも一緒に容器から定期的にタップされる。高銅割合を有する金属相は、円筒状炉容器の外で初めてスラグ相から分離される。
【0003】
更に、中国特許出願公開CN108224433A(特許文献1)は、特に銅の回収の目的で電子廃棄物をリサイクルする開示している。この方法は、先ず原料としての電子廃棄物を秤量、混合及び細断し、その後、予熱された回転炉中に導入することを企図している。そこでは、電子廃棄物は、酸素及びガス状燃料に曝される。その後、原料は融解して金属相及びスラグ相となる。酸素に曝した後、金属相とスラグ相とを別々にタップする。
【0004】
欧州特許出願公開第EP1609877A1(特許文献2)は、特に電子廃棄物などの金属含有残渣を回転式反応器中でバッチ式に処理する方法を開示している。供給原料、すなわち特に電子廃棄物は、本質的に、操業中の連続的な充填を可能とするようなサイズの断片からなる。反応器内では、材料は融解され、その結果、供給原料の元の有機部分が融解中に燃焼されるので本質的に有機物質を含まない、選別された材料が生じる。
【0005】
このような背景から、電子廃棄物から金属を回収するための改善された方法への要望がなおも存在することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】中国特許出願CN108224433A
【文献】欧州特許出願公開第EP1609877A1
【非特許文献】
【0007】
【文献】https://www.totalmateria.com、“Ausmelt/Isasmelt Matte Smelting: Part One”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それ故、本発明は、第8族から第14族の金属を回収するための、従来技術より改善された方法を提供するという課題、特に、第8族から第14族の金属の少なくとも一つが、使用した電子廃棄物から定量的に回収される方法を提供するという課題に基づく。
【0009】
本発明によれば、前記の課題は、請求項1に記載の特徴を備えた方法によって解消される。
【0010】
本発明の更に別の有利な形態は、引用形式の請求項に記載されている。引用形式の請求項に個別に記載された特徴は、科学技術的に意味のあるように互いに組み合わせることができ、そして本発明の更に別の形態を定義付けすることができる。更に、請求項に記載の特徴は、発明の詳細な説明中により詳しく規定、説明され、そこでは、本発明の更に別の好ましい形態が記載されている。
【0011】
第8族から第14族、好ましくは第8族から第11族及び第14族の金属、特に粗銅を回収するための本発明による方法は、次のステップ:
i)融解反応器内において、電子廃棄物を含む供給混合物を提供及び融解して、第一の金属相及び第一のスラグ相を有する第一の融解物を形成するステップ、
ii)融解反応器から第一のスラグ相を取り出すステップ、
iii)酸素含有ガスを用いて、場合により銅含有残渣を添加して、残った第一の金属相を精錬して、第二の銅富化スラグ相を形成するステップ、
iv)場合により、第二のスラグ相を取り出し及びステップiii)を繰り返すステップ、
v)精錬された第一の金属相を融解反応器から取り出すステップ、及び
vi)電子廃棄物を含む更なる供給混合物を、残った第二の銅富化スラグ相に加え、そしてプロセスステップi)からvi)を繰り返すステップ、
を含む。
【0012】
驚くべきことに、精錬/転換の際に酸化銅として第二のスラグ相中で富化された、第二の銅富化スラグ相中に存在する粗銅が、次のバッチまたは更なる供給混合物の融解の際の融解反応器中の支配的な還元条件の結果、次の新しい第一の金属相に変換され、そしてそれから直接回収できることが判明した。それ故、該方法を連続的に続行することによって、殆ど銅が枯渇したスラグ相のみが得られる。それ故、酸化された銅のこのインサイチュー回収によって、得られた金属相は高められた粗銅含有率を有する。加えて、驚くべきことに、以前として液状の残留スラグまたは第二の銅富化スラグ相の再利用によって、プロセス全体が向上したエネルギーバランスを有し、そして残留スラグの酸化銅の化学的に結合した酸素によって、各々の追加の供給混合物と進行する燃焼反応が支持されることが判明した。
【0013】
可能な限り溶融したかつそれ故あまり粘度が高すぎないスラグを得るために、プロセス全体は、少なくとも1150℃の温度で、より好ましくは少なくとも1200℃の温度で、更により好ましくは少なくとも1225℃の温度で、最も好ましくは1250℃の温度で行われる。しかし、当該プロセスの温度は、プラント技術的な理由から最高温度を超えてはならない。それ故、当該プロセスの最高温度は、1400℃、好ましくは1375℃の最高温度、より好ましくは1350℃の最高温度、最も好ましくは1325℃の最高温度である。
【0014】
本発明による方法は、電子廃棄物の高温冶金的加工のために企図される。そのため、原則的に、100重量%までの電子廃棄物を供給混合物中に使用できる。
「電子廃棄物」という用語は、本発明の意味では、一方では、EU指令2002/96/EGに従って定義される電子廃棄機器のことと解される。この指令の対象となる機器カテゴリは、大型家電製品;小型家電製品;IT-及び電気通信機器;娯楽家電機器;照明器具;電気及び電子工具(定置型工業用大型工具は除く);電気玩具並びにスポーツ及びレジャー用品;医療機器(移植及び感染製品は除く);監視用及び制御用機器;並びに自動ディスペンサーの範囲からの完全及び/または(部分)解体部品に関する。対応する機器カテゴリに分類される個々の製品に関しては、指令の付録IBを参照されたい。
【0015】
更に、「電子廃棄物」という用語は、電子廃棄物処理からの残渣及び/または副産物のこととも解される。
【0016】
電子廃棄物は、供給混合物内において、個々の断片の形で及び/または各々の部品の混合物の形で存在することができる。
【0017】
場合によっては、冷却目的で、銅含有残渣をステップiii)において該プロセスに加えることができる。本発明の意味において、「銅含有残渣」という用語は、かなりの質量割合で銅を含みかつ上記のEU指令2002/96/EGの対象ではない全ての銅含有残渣、例えば金属銅廃棄物、銅製樋及び/または乾燥銅含有スラッジ、及び/または銅-及び/もしくは銅合金製造及び/もしくは加工からのダストのことと解される。
【0018】
電子廃棄物は、本質的に、例えば特にプラスチックなどの炭化水素含有成分の形の有機含有物と、例えば特に、鉄、ルテニウム、オスニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、カドニウム、水銀、アルミニウム、ガリウム、インジウム、鉛及び/または錫並びに場合よりアンチモン、チタン及び/またはイットリウムを含む群から選択される元素などの金属成分を含む。
【0019】
しかし、炭化水素含有成分の形の有機含有物は、供給混合物中で少なすぎてはならない、というのも、さもなくば、十分な燃焼反応が起こらないからである。それ故、電子廃棄物または供給混合物中の炭化水素含有成分の割合は、好ましくは少なくとも5.0重量%、より好ましくは少なくとも10.0重量%である。電子廃棄物または供給混合物は最大含有率に関して制限され、それ故、これは、好ましくは最大80.0重量%、より好ましくは最大70.0重量%、更により好ましくは最大60.0重量%、最も好ましくは最大50.0重量%である。
【0020】
入手可能な電子廃棄物が、有機含有物を所望の割合で含まず、それ故、必要な燃焼価を持たない場合には、適量の慣用の燃料を供給混合物に加えることができる。この場合、慣用の燃料としては、例えば石炭、コークス、並びに燃料性ガス、例えば天然ガス、プロパン、水素、または他の当業者には既知のガスなどが挙げられる。
【0021】
固形及び/またはガス状の燃料の供給は、融解反応器中に延びるランスや、一つ以上のノズルなどの供給装置を介して行うことができる。
【0022】
ステップi)による供給混合物の融解は、一般的に大気酸素の存在下で行われる。融解工程の間に連続的に融解反応器中に導入される、場合により酸素富化空気の形または酸素含有ガスの形の、大気酸素の添加によって、供給された供給混合物からの炭化水素が燃焼される。この際、燃焼及びそれ故、発熱は、添加される酸素量によって的確に制御できる。原則的には、供給混合物中の炭化水素の割合が多いほど、添加される燃焼用空気の酸素含有率は少なくすることができる。しかし、空気の組成の故に、これは常に少なくとも20.5体積%である。
【0023】
供給混合物中の炭化水素の割合が少ない場合、融解プロセスは、燃焼用空気の酸素含有率を最大100体積%までとして実施することができる。
【0024】
有利には、本発明による方法のステップi)は、融解物の表面に還元性雰囲気を常に形成するために、酸素含有ガスを選択的に吹き込むことによって支援される。従って、反応は、炭化水素からのCO2及びH2Oへの完全な燃焼は起こらず、CO、H2の含分もプロセスガス中に形成されるように調節される。
【0025】
供給混合物が融解されると、粗銅並びに他の重金属、特に鉛(Pb)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)並びに貴金属の金(Au)及び銀(Ag)を含有する金属相が形成する。供給混合物の電子廃棄物の鉱物性成分は、酸素親和性元素、例えば特に鉛(Pb)、錫(Sn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)などの酸化物と一緒に、より軽いスラグ相を形成する。
【0026】
融解物表面での燃焼の完全さを介して、融解物表面での熱入力及び付随元素の酸化度の程度が同時に制御される。このようにして、元素アルミニウムまたはケイ素などの望ましくない成分が選択的に酸化され、的確にスラグ相に移される。それ故、得られる金属相は、それぞれ<0.1重量%の両元素の残留含有率を特徴とする。
【0027】
ステップi)におけるプロセスへの酸素供給量が多すぎる場合、第一のスラグ相を、還元剤を用いて有利に還元することができる。それによって、第一のスラグ相は精製及び後還元され、その結果、場合により存在する重金属酸化物、例えばSnO、Cu2O、NiO、PbO及び/またはZnOはそれらの金属形態に、それ故、金属相に転換することができる。
【0028】
融解反応器としては好ましくは冶金用容器が企図され、例えば、傾斜可能な回転式転炉、特にいわゆる上吹回転式転炉(Top Blowing Rotary Converter)(TBRC)、または傾斜可能なスタンドコンバータ(Standkonverter)が企図される。有利な実施形態の一つでは、該冶金用容器は、金属相をタップするための第一のタップ口及び/またはスラグ相をタップするための第二のタップ口を含む。この際、金属相をタップするためのタップ口は、有利には、然るべき融解反応器の底に及び/または側壁に配置され、その結果、金属相を、タップ口を介して取り出すことできる。
【0029】
有利な実施形態の一つでは、供給混合物、特に各々の供給混合物は、全供給混合物をベースにして、少なくとも10.0重量%の量で、より好ましくは少なくとも15.0重量%の量で、さらにより好ましくは少なくとも20.0重量%の量、更に好ましくは少なくとも25.0重量%の量で、更に好ましくは少なくとも30.0重量%の量で、更に好ましくは少なくとも35.0重量%の量で、更に好ましくは少なくとも40.0重量%の量で、更に好ましくは少なくとも45.0重量%の量で、更に好ましくは少なくとも50.0重量%の量で、更に好ましくは少なくとも55.0重量%の量で、更に好ましくは少なくとも60.0重量%の量で、更に好ましくは少なくとも65.0重量%の量で、更に好ましくは少なくとも70.0重量%の量で、更に好ましくは少なくとも80.0重量%の量で、更に好ましくは少なくとも90.0重量%の量で、最も好ましくは少なくとも95.0重量%の量で電子廃棄物を含む。
【0030】
更に別の有利な実施形態の一つでは、供給混合物がスラグ形成剤を含む、及び/またはこれは、ステップi)及び/またはiii)においてプロセスに添加される。これに関連して、供給混合物が、供給混合物中に存在する電子廃棄物の質量割合の少なくとも1/8の量で、より好ましくは少なくとも1/5の量で、更により好ましくは少なくとも1/3の量でスラグ形性剤を含むことが特に好ましく企図される。スラグ形性剤は、有利には、鉄、酸化カルシウム類、酸化鉄類、酸化ケイ素類、酸化マグネシウム類、酸化ナトリウム類、炭酸カルシウム類、炭酸マグネシウム類、炭酸ナトリウム類及び/または水酸化カルシウム類、水酸化鉄類、水酸化マグネシウム類、水酸化ナトリウム類及び/またはこれらの混合物を含む系列から選択される。
【0031】
有利には、電子廃棄物または供給混合物は、好ましくは0.1重量%のアルミニウム含有率(元素状)、より好ましくは少なくとも0.5重量%のアルミニウム含有率、更により好ましくは少なくとも1.0重量%のアルミニウム含有率、最も好ましくは少なくとも3.0重量%のアルミニウム含有率を含む。電子廃棄物または供給混合物は元素アルミニウムの最大含有率に関して制限される、なぜならば、あまりに多いアルミニウム含有率は、スラグ相の粘度に、それ故流動性に不利に作用し、更には、金属相とスラグ相との間の分離挙動にも不利に作用するからである。それ故、電子廃棄物または供給混合物は、好ましくは最大で20.0重量%のアルミニウム、更に好ましくは最大で15.0重量%のアルミニウム、更により好ましくは最大で11.0重量%のアルミニウム、最も好ましくは最大で8.0重量%のアルミニウムを含む。
【0032】
電子廃棄物または供給混合物が、5.0重量%未満のアルミニウム含有率を有する場合には、供給混合物中に含まれる電子廃棄物の量を基準にして、スラグ形性剤を最大で25.0重量%の量で当該プロセスに、好ましくはステップi)において添加されることが有利に企図される。電子廃棄物または供給混合物が、より多いアルミニウム含有率、特に5.0~10.0重量%のアルミニウム含有率を含む場合は、当該プロセスに好ましくはステップi)において添加されるスラグ形性剤の量は有利には10.0~45.0重量%である。電子廃棄物または供給混合物が、更により多いアルミニウム含有率、特に>10.0重量%のアルミニウム含有率を含む場合は、当該プロセスに好ましくはステップi)において添加されるスラグ形性剤の量は有利には20.0~60.0重量%である。
【0033】
有率には、供給混合物は、融解した状態、すなわち液状凝集状態でのそれの粘度が、0.01~10.0Pa*sの範囲、より好ましくは0.05~10.0Pa*sの範囲、更により好ましくは0.1~10.0Pa*sの範囲、最も好ましくは0.1~5.0Pa*sの範囲にあるように設計される。
【0034】
融解反応器中への仕込み、それ故、エネルギー入力は、異なる粒度、特に大きすぎる粒度によって不均一となり、その結果、融解過程中に望ましくない状態が発生する虞がある。それ故、電子廃棄物は細断された形態で提供され、この場合、細断プロセスを原因として、例えばダスト及び/または小麦様画分などの、より小さな不可避画分が常に含まれる。
【0035】
有利には、電子廃棄物は、20.0インチ未満の粒度、より好ましくは15.0インチ未満の粒度、更により好ましくは12.0インチ未満の粒度、更に好ましくは10.0インチ未満の粒度、更に好ましくは5.0インチ未満の粒度、特に好ましくは2.0インチ未満の粒度に細断される。しかし、0.1インチの粒度、好ましくは0.5インチの粒度、更に好ましくは1.5インチの粒度を超えるべきではない。これに関連して、電子廃棄物が、加えて、ステップi)に従いプレス加工物の形で提供される場合に特に有利であることが判明した。それによって、一方では、融解反応器の反応器空間が最適に利用され、他方では融解プロセスが加速される。
【0036】
「プレス加工物」という用語は、本発明の意味では、細断された電子廃棄物から圧縮及び成形された断片のことと解される。この点において、プレス加工物は、ブリケット、ペレット及び/または集塊したパッケージを形成することができる。
【0037】
本発明並びに技術的環境を以下に例に基づいてより詳しく説明する。本発明は、記載の実施例に限定されるものではない点を指摘しておく。特に、明示的に他に記載がなければ、記載した状況の部分的な観点を抽出すること、及び本明細書からの他の構成要素及び知見と組み合わせることも可能である。
【実施例】
【0038】
当該方法は、原則的に、周期律表の第8族から第14族の非鉄金属の回収のために企図される。本実施形態においては、これは、特に、電子廃棄物からの粗銅の回収のために企図されており、この際、同様に、かなりの割合の銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)も同様に得られる。
【0039】
先ず、第一のプロセスステップにおいて、68重量%の電気廃棄物と、25重量%の酸化鉄添加物及び7重量%のSiO2添加物の形の残部のスラグ形性剤とを含む供給混合物を使用した。
【0040】
用意した電子廃棄物は、細断された電子廃棄物から圧縮された、1.5~2.5インチのサイズのプレス加工品からなるものであった。電子廃棄物の組成は、Cu18重量%;炭化水素25重量%;Al7重量%、Si12重量%、Pb、Sn、Ni、Cr及びZnを含む系列からの重金属7重量%、Ca3重量%、ハロゲン2重量%、及びFe5重量%、並びに残部としての化学的に結合した酸素、及び不可避不純物であった。
【0041】
供給混合物は、大気酸素の存在下に、回転式融解反応器内で、この例の場合では回転式TBRC中で融解した。この目的のために、前記混合物を融解反応器中でバーナーを用いて点火し、そして熱分解反応を開始した。供給混合物は、約9800kJ/kgの燃焼価を有した。
【0042】
燃焼反応及びそれ故、発熱は、添加される酸素量によって的確に制御できた。大気酸素の体積流は、融解物の表面において常に還元性雰囲気が行き渡っており、そして有機含有物からのCO2及びH2Oへの完全な燃焼が行われず、特定の含有率のCO及びH2がプロセスガス中に存在するように適合された。これらは、融解反応器の上部でまたは融解反応器の外側のいずれかで燃焼させた。
【0043】
数分後、約1200~1300℃の温度で、第一の金属相と、金属相上に浮遊する第一のスラグ相とを有する第一の融解物が生じた。これらを次いで、融解反応器の側壁に配置されたタップ口を介して、第二のプロセスステップに従い分離した。スラグ相を分析したところ、これは、0.3~2.0重量%の銅含有率及び約0.3Pa*sの粘度を有した。
【0044】
約97重量%の銅含有率を有する、融解反応器中に残った第一の金属相は、更なるプロセスステップにおいて、酸素含有ガスを用いて精錬または転換した。この目的のためには、ランスを介して、酸素富化空気を金属第一相中に吹き込み、そうして、金属相中に存在する酸素親和性元素、例えば鉛(Pb)、錫(Sn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)などを金属相から酸化した。このプロセスステップは、場合によりスラグ形性剤の添加によって支援でき、そして冷却廃棄物としての銅含有残渣の添加によって熱的に調節することができる。形成したこの第二のスラグ相も、金属相と比較してより低い密度を有した。転換のこのプロセスステップは、本例では二度繰り返し、この際、各々転換段階の後に、生じたスラグ相の表面を抜き取り、そしてその組成に関して分析した。最後の転換段階の時に、銅富化スラグ相が生じ、これは、酸化銅(Cu2O)の形で約20重量%の銅含有率を有した。
【0045】
融解反応器の底に配置された更に別のタップ口を通して、精錬/転換された第一の金属相を融解反応器から排出し、他方で、最後の転換段階の銅富化スラグ相は融解反応器中に残した。
【0046】
次いで、電子廃棄物を含む新しい供給混合物を銅富化スラグ相上に加えそして融解させることによって、新たなバッチを用いた当該プロセスをステップi)に従い開始した。この際、この第二の供給混合物は、第一の供給混合物と同じ組成を有したが、これは必ずしも必要なことではない。融解時に優勢の還元性条件によって、スラグ相の粗銅含有分及び重金属含有分を直接回収することができた。このようにして、スラグ相の再融解を避けることができるので、融解反応器中に残るスラグ1トン当たり、約350kWhのエネルギーを節約することができた。
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1. 第8族から第14族の金属、特に粗銅の回収方法であって、次のステップ:
i)融解反応器内において、電子廃棄物を含む供給混合物を提供及び融解して、第一の金属相及び第一のスラグ相を有する第一の融解物を形成するステップ、
ii)融解反応器から第一のスラグ相を取り出すステップ、
iii)酸素含有ガスを用いて、場合により銅含有残渣を添加して、残った第一の金属相を精錬して、第二の銅富化スラグ相を形成するステップ、
iv)場合により、第二のスラグ相を取り出し及びステップiii)を繰り返すステップ、
v)精錬された第一の金属相を融解反応器から取り出すステップ、及び
vi)電子廃棄物を含む更なる供給混合物を、残った第二の銅富化スラグ相に加え、そしてプロセスステップi)からvi)を繰り返すステップ、
を含む、前記方法。
2. 第一のスラグ相を還元剤を用いて還元する、前記1.に記載の方法。
3. プロセス全体が、少なくとも1150℃の温度で実施される、前記1.または2.に記載の方法。
4. 供給混合物が、少なくとも10重量%の量で電子廃棄物を含む、前記1.~3.のいずれか一つに記載の方法。
5. 供給混合物がスラグ形成剤を含む、及び/またはスラグ形性剤がステップi)及び/またはiii)においてプロセスに添加される、前記1.~4.のいずれか一つに記載の方法。
6. 供給混合物が、供給混合物中に存在する電子廃棄物の質量割合の少なくとも1/8の量でスラグ形性剤を含む、前記5.に記載の方法。
7. スラグ形成剤が、鉄(金属)、カルシウム-、マグネシウム-、ナトリウム-、ケイ素-、鉄-酸化物、-炭酸塩及び/または-水酸化物を含む系列から選択される、前記5.または6.に記載の方法。
8. 電子廃棄物が0.1~20.0重量%のアルミニウム含有率を有する、前記1.~7.のいずれか一つに記載の方法。
9. 電子廃棄物が、5.0~80.0重量%の有機物含有率を有する、前記1.~8.のいずれか一つに記載の方法。
10. 電子廃棄物が、20インチ未満の粒度に細断され、及び場合によっては、プレス加工物の形でステップi)に従い提供される、前記1.~9.のいずれか一つに記載の方法。
11. ステップi)が、酸素含有ガスの選択的吹き込みによって支援される、前記1.~10.のいずれか一つに記載の方法。
12. 金属相が、融解反応器の底及び/または側壁に配置されたタップ口を介して抜き出される、前記1.~11.のいずれか一つに記載の方法。