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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20241217BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20241217BHJP
   C08L 23/02 20060101ALI20241217BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20241217BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/22
C08L23/02
C08K7/02
C09K5/14 E
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2023533186
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(86)【国際出願番号】 JP2022026977
(87)【国際公開番号】W WO2023282327
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2021114570
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022044487
(32)【優先日】2022-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 奨
(72)【発明者】
【氏名】佐原 賢一
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-241390(JP,A)
【文献】特開昭60-96622(JP,A)
【文献】特開平9-137005(JP,A)
【文献】特開平9-137004(JP,A)
【文献】特開2000-143996(JP,A)
【文献】特開平9-48870(JP,A)
【文献】特開2018-145387(JP,A)
【文献】特開2013-209539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08F 6/00-246/00
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)を10~40質量部、金属酸化物(B)を60~90質量部〔但し、(A)+(B)の合計量を100質量部とする。〕、および(A)+(B)の合計量:100質量部に対し、未変性ポリオレフィン系ワックス(C)を0.1~20質量部の範囲で含み、
前記金属酸化物(B)が酸化マグネシウムを含む、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂(A)が、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、1-ブテン系重合体、4-メチル-1-ペンテン系重合体、およびABS系樹脂よりなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記金属酸化物(B)の平均粒子径が0.1~110μmの範囲にある、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記金属酸化物(B)の熱伝導率が10~300W/mKの範囲にある、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率が0.5~5W/mKの範囲にある、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂組成物の比重が、1.0~5.0の範囲にある、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂(A)を10~30質量部、および前記金属酸化物(B)を70~90質量部〔但し、(A)+(B)の合計量を100質量部とする。〕含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
JIS Z 2801:2012(フィルム密着法)に準じ、大腸菌(Escherichia coli)を用いて行った抗菌試験において、耐水性および耐光性前処理を行わない条件下において24時間経過後の抗菌活性値が2.0以上である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
JIS Z 2801:2012(フィルム密着法)に準じ、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を用いて行った抗菌試験において、耐水性および耐光性前処理を行わない条件下において24時間経過後の抗菌活性値が2.0以上である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
ISO 21702:2019に準じて実施したネコカリシウイルス(Feline calicivirus)を用いて行った抗ウイルス試験において、抗ウイルス活性値が2.0以上である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
繊維状充填剤(D)を、前記熱可塑性樹脂(A)および前記金属酸化物(B)の合計100質量部に対して0.1~20質量部の範囲で含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む成形体。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含むドアハンドル、ドアノブ、手摺またはスイッチ。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む筐体。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む服飾用アクセサリー。
【請求項16】
請求項1~11のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む容器。
【請求項17】
請求項1~11のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む文房具。
【請求項18】
請求項1~11のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む食器または酒器。
【請求項19】
請求項1~11のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含むマウスまたはキーボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属酸化物を含有する熱可塑性樹脂組成物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンや、ABS系樹脂などの熱可塑性樹脂は、種々の方法により成形され、多方面の用途に供されている。一方、ポリプロピレンなどのポリオレフィンは、ポリアミド、ポリカーボネートなどのエンジニアリングプラスチック(エンプラ)に比べて、耐熱性や、剛性、引張強度などの機械的物性が劣ることから、用途によっては、タルクなどの無機充填剤、ガラスファイバー、炭素繊維などの耐熱性繊維が補強材として配合(添加)されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、無機化合物からなる無機充填剤を20~80重量部と多量に含むポリオレフィン組成物が提案されている。
一方、金属酸化物などの無機化合物を多量に配合する場合は、ポリオレフィンとの混練性が劣ることが分り、混練性を改良するために、例えば、特許文献2には、熱可塑性樹脂10~50質量部と金属酸化物50~90質量部とからなる組成物に、変性ポリオレフィン系ワックスを0.1~20質量部配合することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭52-15542号公報
【文献】国際公開第2017/209215号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、変性ポリオレフィン系ワックスを配合して得られる熱可塑性樹脂組成物は、得られる成形体の表面の水酸基密度が相対的に高くなり親水性が上がり、しっとりとした質感になる傾向があり、また、ある条件において(酸溶液など)は無機化合物の溶出を招き、質感低下を引き起こす場合があることが分かった。
【0006】
本発明の目的は、親水性の増加を招かず(吸水性が低く)、硬質感を有し、より陶器に近い質感を有する成形体を得るのに好適な熱可塑性樹脂組成物を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、たとえば以下の〔1〕~〔20〕の事項に関する。
本明細書においては、「重合体」と記載した場合は特に断りがない限り、単独重合体と共重合体を含むものとする。
〔1〕熱可塑性樹脂(A)を10~50質量部、金属酸化物(B)を50~90質量部〔但し、(A)+(B)の合計量を100質量部とする。〕、および(A)+(B)の合計量:100質量部に対し、未変性ポリオレフィン系ワックス(C)を0.1~20質量部の範囲で含む熱可塑性樹脂組成物。
【0008】
〔2〕前記熱可塑性樹脂(A)が、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、1-ブテン系重合体、4-メチル-1-ペンテン系重合体、およびABS系樹脂よりなる群から選ばれる1種以上である、〔1〕に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔3〕前記金属酸化物(B)が、酸化マグネシウムを含む、〔1〕または〔2〕に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔4〕前記金属酸化物(B)の平均粒子径が0.1~110μmの範囲にある、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0009】
〔5〕前記金属酸化物(B)の熱伝導率が10~300W/mKの範囲にある、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔6〕前記熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率が0.5~5W/mKの範囲にある、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔7〕前記熱可塑性樹脂組成物の比重が、1.0~5.0の範囲にある、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0010】
〔8〕前記熱可塑性樹脂(A)を10~30質量部、および前記金属酸化物(B)を70~90質量部〔但し、(A)+(B)の合計量を100質量部とする。〕含む、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔9〕JIS Z 2801:2012(フィルム密着法)に準じ、大腸菌(Escherichia coli)を用いて行った抗菌試験において、耐水性および耐光性前処理を行わない条件下において24時間経過後の抗菌活性値が2.0以上である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0011】
〔10〕JIS Z 2801:2012(フィルム密着法)に準じ、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を用いて行った抗菌試験において、耐水性および耐光性前処理を行わない条件下において24時間経過後の抗菌活性値が2.0以上である、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔11〕ISO 21702:2019に準じて実施したネコカリシウイルス(Feline calicivirus)を用いて行った抗ウイルス試験において、抗ウイルス活性値が2.0以上である、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔12〕繊維状充填剤(D)を、前記熱可塑性樹脂(A)および前記金属酸化物(B)の合計100質量部に対して0.1~20質量部の範囲で含む、〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0012】
〔13〕〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む成形体。
〔14〕〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含むドアハンドル、ドアノブ、手摺またはスイッチ。
〔15〕〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む筐体。
〔16〕〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む服飾用アクセサリー。
【0013】
〔17〕〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む容器。
〔18〕〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む文房具。
〔19〕〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む食器または酒器。
〔20〕〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含むマウスまたはキーボード。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、吸水率が極めて低く、陶器と同等の熱伝導率があるのでひんやりとした触感があり、且つ、硬質感を有し、より陶器に近い質感を有する成形体を得るのに好適である。また一方で、配合される金属酸化物の効果により本発明品は抗菌性を有しているため、直接触れて質感を感じられる用途の成形体を得るのに好適である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について具体的に説明する。
<熱可塑性樹脂(A)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる成分の一つである熱可塑性樹脂(A)としては、例えばオレフィン系重合体、ABS系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステルなどを用いることができる。
【0016】
オレフィン系重合体は、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンなどのα-オレフィン(エチレンを含む)の単独重合体、前記α-オレフィンと他のα-オレフィンとの共重合体、および前記α-オレフィンとα-オレフィン以外のモノマーとの共重合体であって、α-オレフィンを主成分とする重合体である。
本発明に係る熱可塑性樹脂(A)としては、具体的には、以下の重合体が挙げられる。
【0017】
〈エチレン系重合体(A1)〉
本発明に係るエチレン系重合体(A1)は、エチレンの単独重合体、エチレンと炭素原子数3~20のα-オレフィンとの共重合体であり、通常、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン・α-オレフィン共重合体と呼称されているエチレンに由来する構成単位を主成分とする重合体が挙げられる。エチレンと共重合させる炭素原子数3~20のα-オレフィンの具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テ卜ラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、3,5,5-トリメチル-1-ヘキセン、等が挙げられる。中でも、炭素原子数3~10のα-オレフィンが好ましく、炭素原子数3~8のα-オレフィンがより好ましく、特にエチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン及び1-オクテンがさらに好ましい。エチレンとα-オレフィンとのモル比(エチレン/α-オレフィン)は99/1~60/40であることが好ましく、95/5~70/30であることがより好ましく、90/10~60/25であることがさらに好ましい。
【0018】
エチレン・α-オレフィン共重合体の好適な具体例としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-オクテン共重合体が挙げられる。中でもエチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体が好ましく、エチレン・1-ブテン共重合体がより好ましい。
エチレン系重合体(A1)の密度(JIS K7112にて測定)は、好ましくは850~980kg/m3、より好ましくは855~978kg/m3、さらに好ましくは860~976kg/m3、特に好ましくは862~973kg/m3である。
【0019】
本発明の熱可塑性樹脂組成物が、エチレン系重合体(A1)を含む場合、熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体は、後述するプロピレン系重合体(A2)を含む場合よりも熱伝導性が高く、温冷感に優れ、また、たたくと高い音が出る傾向がある。このような成形体は、制限なく各種用途に好適に用いることができるが、たとえば金属蒸着の表面修飾するベース素材として好適に用いることができる。
【0020】
〈プロピレン系重合体(A2)〉
本発明に係るプロピレン系重合体(A2)は、プロピレンの単独重合体(プロピレン単独重合体:ホモPP)、プロピレンとエチレンおよび/または炭素原子数4~20のα-オレフィンとの共重合体(ランダム共重合体:ランダムPP)、プロピレンの単独重合体とエチレン・プロピレン共重合体との組成物(ブロック共重合体:ブロックPP)などのプロピレンに由来する構成単位を主成分とする重合体であり、プロピレン・α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィンの具体例としては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テ卜ラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、3-メチル-1-ヘキセン、3,5,5-トリメチル-1-ヘキセン、等が挙げられる。中でも、エチレン及び炭素原子数4~10のα-オレフィンが好ましく、エチレン及び炭素原子数4~8のα-オレフィンがより好ましく、特にエチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン及び1-オクテンがさらに好ましい。プロピレンとα-オレフィンとのモル比(プロピレン/α-オレフィン)は99/1~60/40であることが好ましく、95/5~70/30であることがより好ましく、90/10~70/30であることがさらに好ましい。
【0021】
プロピレン・α-オレフィン共重合体(ランダムPP)の好適な具体例としては、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・1-ヘキセン共重合体、プロピレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、プロピレン・1-オクテン共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体が挙げられる。中でも、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体が好ましく、プロピレン・エチレン共重合体が特に好ましい。
【0022】
プロピレン単独重合体である場合、好ましい融点は155~170℃、より好ましくは158~165℃である。
プロピレン・エチレンランダム共重合体である場合、プロピレン・エチレンランダム共重合体のエチレン量は、好ましくは1.9~5.4質量%、より好ましくは2.0~4.8質量%である。また、プロピレン・エチレンランダム共重合体のJIS K7121に準じて示差走査熱量計(DSC)で測定される結晶融点は、好ましくは通常130~150℃、より好ましくは130~145℃、特に好ましくは135~145℃である。
【0023】
プロピレン系重合体(A2)の密度(JIS K7112にて測定)は、好ましくは850~910kg/m3であり、より好ましくは875~909kg/m3であり、より好ましくは890~908kg/m3である。
本発明に係るプロピレン系重合体(A2)は、後述するガラス繊維などの繊維状充填剤(D)を含有したプロピレン系重合体を使用することができ、この場合の繊維状充填剤(D)含有プロピレン系重合体の密度(JIS K7112にて測定)は、好ましくは910~1220kg/m3であり、より好ましくは940~1200kg/m3、さらに好ましくは970~1160kg/m3、特に好ましくは1000~1120kg/m3である。
【0024】
プロピレン・エチレンブロック共重合体及びプロピレン・エチレンランダム共重合体は、1種単独で使用してもよく、2種以上の共重合体を混合して使用してもよい。例えばMFR調整の為に2種以上の共重合体を混合することもできる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物が、プロピレン系重合体(A2)を含む場合、熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体は、制限なく各種用途に好適に用いることができるが、陶器と近い熱伝導率を有し比重も陶器と同等である一方、落下などの衝撃によっても陶器のように割れず安全性に優れることから、たとえば、コップ等の食器や容器、ドアハンドル等、手で触れるような用途に好適に用いることができる。
【0025】
〈1-ブテン系重合体(A3)〉
本発明に係る1-ブテン系重合体(A3)は、1-ブテンの単独重合体(ポリブテン)および1-ブテンとエチレン、プロピレンおよび炭素原子数5~20のα-オレフィンとの共重合体(1-ブテン・α-オレフィン共重合体)等の1-ブテンに由来する構成単位を主成分とする重合体である。
【0026】
〈4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4)〉
本発明に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4)は、4-メチル-1-ペンテンの単独重合体および4-メチル-1-ペンテンと炭素原子数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)との共重合体(4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体)等の4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位を主成分とする重合体である。
【0027】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、および1-エイコセンなどを含む炭素原子数2~20(好ましくは炭素原子数2~15、より好ましくは炭素原子数2~10)の直鎖状のα-オレフィン、ならびに、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-エチル-1-ヘキセン、および3-エチル-1-ヘキセンなどを含む炭素原子数5~20(好ましくは炭素原子数5~15)の分岐状のα-オレフィンが挙げられる。これらの中でもエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。α-オレフィンは、これらのうち1つの化合物から導かれてもよいし、2以上の化合物から導かれてもよい。
4-メチル-1-ペンテンとα-オレフィンとのモル比(4-メチル-1-ペンテン/α-オレフィン)は55/45~90/10であることが好ましく、60/40~86/14であることがより好ましく、68/32~85/15であることがさらに好ましい。
【0028】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4)は、一実施態様において、-40~150℃の温度範囲で、10rad/s(1.6Hz)の周波数で動的粘弾性測定して得られる損失正接(tanδ)がピーク値となる温度が、0℃以上60℃以下であり、10℃以上50℃以下であることが好ましく、20℃以上45℃以下であることがより好ましく、25℃以上44℃以下であることが特に好ましい。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4)は、上記tanδのピーク値が0.6以上5.0以下である。このtanδのピーク値は0.7以上4.5以下であることが好ましく、0.8以上3.5以下であることがより好ましい。
【0029】
tanδは、動的粘弾性の測定時に得られる貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)を用いて、貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)との比(G”/G’:損失正接)として算出することができる。
【0030】
ここで、本発明において、-40~150℃の範囲でtanδがピーク値(最大値)となる際の温度を、上記tanδがピーク値となる温度(以下「tanδピーク温度」)とし、その際のtanδの値を上記tanδのピーク値(以下「tanδピーク値」)とする。なお、上記ピークは、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4)のガラス転移温度に起因すると考えられる。
【0031】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4)は、他の態様において、-40~150℃の温度範囲で、10rad/s(1.6Hz)の周波数で動的粘弾性測定を行って得られる、tanδピーク温度が、15℃以上45℃以下であることが好ましい。ここで、前記tanδピーク温度の下限値について見ると、前記tanδピーク温度は、20℃以上であることがより好ましく、25℃以上であることがさらに好ましい。また、本発明の例示的な様態において、前記tanδピーク温度は40℃以下であるが、本願発明の目的が達成できる限り40℃を超えていても構わない。本発明の典型的な様態において、前記tanδピーク温度は、20℃以上45℃以下であることがより好ましく、25℃以上43℃以下であることがさらに好ましい。tanδピーク温度を上記の温度範囲にすることで、室温でのtanδの値をより高めることができる。
【0032】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4)は、-40~150℃の温度範囲で、10rad/s(1.6Hz)の周波数で動的粘弾性測定を行って得られる、tanδピーク値が、0.6以上5.0以下であることが好ましく、1.0以上4.8以下であることがより好ましく、1.3以上4.5以下であることがさらに好ましく、1.8以上4.0以下であることが特に好ましい。tanδピーク値を上記範囲にすることで、引張や変形の速度に応じて振動吸収性、材料の硬さや追従性を変化させることができる。
【0033】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4)は、示差走査熱量計(DSC)によって測定される融点(Tm)が好ましくは160℃以下または観測されず、より好ましくは140℃以下または観測されず、さらに好ましくは観測されない。このような要件を満たすことによって、本発明の樹脂組成物において無機物との混錬性がよくなり、振動吸収性や応力緩和性を向上させることが可能となる。
【0034】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4)の、デカリン中135℃で測定した極限粘度[η]は、0.1dL/g以上5.0dL/g以下であることが好ましく、0.5dL/g以上4.0dL/g以下であることがより好ましく、0.5dL/g以上3.5dL/g以下であることがさらに好ましい。上記極限粘度[η]が上記範囲である4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4)は、成形体の製造が容易である。
【0035】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4)の上記極限粘度[η]は、重合による製造中に水素を添加して分子量や重合活性を制御して、上記範囲に調整することができる。
【0036】
上記極限粘度[η]は、135℃でデカリン中に異なる量の熱可塑性樹脂組成物を溶解させたときの、それぞれのポリマーの単位濃度cあたりの粘度増加率ηsp(すなわちηsp/c)を求めて還元粘度ηredとし、ηredをポリマーの単位濃度cがゼロになるように外挿して、求めることができる。
【0037】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との割合(分子量分布:Mw/Mn)は、1.0以上3.5以下であることが好ましく、1.2以上3.0以下であることがより好ましく、1.5以上2.8以下であることがさらに好ましい。上記Mw/Mnが上記範囲である4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4)は、低分子量、低立体規則性ポリマーによる成形性の低下が生じにくく、成形が容易である。
【0038】
また、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で、500以上10,000,000以下であることが好ましく、1,000以上5,000,000以下であることがより好ましく、1,000以上2,500,000以下であることがさらに好ましい。
【0039】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4)のMw/MnおよびMwは、たとえばメタロセン触媒を使用することで、上記範囲に調整することができる。
上記MwおよびMw/Mnは、たとえば、液体クロマトグラフとしてWaters製ALC/GPC 150-C plus型(示差屈折計検出器一体型)を用い、カラムとして東ソー株式会社製GMH6-HT×2本およびGMH6-HTL×2本を直列接続し、移動相媒体としてo-ジクロロベンゼンを用い、流速1.0ml/分、140℃で測定して得られるクロマトグラムを、標準ポリスチレンサンプルを使用した検量線を用いて解析して、求めることができる。
【0040】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4)の密度(JIS K7112にて測定)は、好ましくは870~830kg/m3、より好ましくは865~830kg/m3、さらに好ましくは855~830kg/m3である。なお、測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。
密度は4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4)のコモノマー組成比によって適宜変えることができ、密度が上記範囲内にある重合体(A4)は、成形体を製造する上で有利である。
【0041】
本発明の熱可塑性樹脂組成物が、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4)を含む場合、熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体は、制限なく各種用途に好適に用いることができる。このような成形体は、プロピレン系重合体(A2)を含む場合と比較して柔軟性に優れ、熱を伝えやすい特徴を付与することで触った時に曲げやすく、室温中で形状を保持しやすいといった特性を有する。
【0042】
〈ABS樹脂(A5)〉
本発明に係るABS樹脂(A5)は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体のみならず、ブタジエンを含む単量体から作られたゴム成分に、芳香族ビニル、シアン化ビニルを含む単量体をグラフト重合して得られたグラフト共重合体、及び芳香族ビニル、シアン化ビニルと共重合可能な他の単量体から製造される共重合体を含む樹脂である。ここでゴム成分は従来公知の溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法等で製造されたものである。また、このゴムと上記グラフト重合体或いはこのゴムとの共重合体は、従来公知の溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法等のいずれの方法で製造されたものも使用可能であり、市場で容易に入手できる。
【0043】
ABS樹脂(A5)の具体例としては、日本エイアンドエル(株)製のクララスチック、テクノUMG(株)製のTECHNO ABSやUMG ABS、東レ(株)製のトヨラック、デンカ(株)製のデンカABSなどの市販品が挙げられる。
【0044】
ABS樹脂(A5)の密度(ISO 1183にて測定)は、好ましくは1000~1070kg/m3であり、より好ましくは1001~1060kg/m3であり、より好ましくは1002~1050kg/m3である。
ABS樹脂(A5)は1種単独で使用してもよく、2種以上の共重合体を混合して使用してもよい。例えばMFR調整の為に2種以上の共重合体を混合することもできる。
【0045】
本発明の熱可塑性樹脂組成物が、ABS樹脂(A5)を含む場合、熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体は、制限なく各種用途に好適に用いることができるが、プロピレン系重合体(A2)を含む場合と比較して耐衝撃性に優れ、表面硬度も高い傾向があることから、たとえば、ものが擦れることが想定されるトレイや、キッチン台の板面、机、風呂場カウンター、強度を要求されるドアハンドルなどの用途に好適に用いることができる。
【0046】
〈その他の熱可塑性樹脂(A6)〉
上述した(A1)~(A5)以外の熱可塑性樹脂(A6)としては、ポリスチレンなどのスチレン系樹脂、PETなどのポリエステル、ポリアミド、アクリル系樹脂などが挙げられる。これらのその他の熱可塑性樹脂(A6)は、公知の方法により製造することができ、また、市販品を用いてもよい。その他の熱可塑性樹脂(A6)は、1種単独で使用してもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0047】
これら熱可塑性樹脂(A)の中でも、オレフィン系重合体である(A1)~(A4)やABS樹脂(A5)が好ましく、エチレン系重合体(A1)、プロピレン系重合体(A2)4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4)およびABS樹脂(A5)がより好ましい。2種以上の熱可塑性樹脂(A)を併用しても良い。
【0048】
熱可塑性樹脂(A)のMFR(ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重)は、7~300g/10分であることが好ましい。ここで、MFRの下限側をみると、11g/10分以上であることが好ましく、13g/10分以上であることがより好ましく、15g/10分以上であることがさらに好ましく、18g/10分以上であることが特に好ましい。またMFRの上限側をみると、200g/10分以下であることが好ましく、150g/10分以下であることがより好ましく、100g/10分以下であることがさらに好ましい。
MFRが上記範囲にある熱可塑性樹脂(A)は、射出成形性など成形性が良好で、且つ、得られる成形体は機械的物性も良好である。
【0049】
熱可塑性樹脂(A)が4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4)である場合におけるMFR(ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重)の上限値は50g/10分以下であることが好ましく、30g/10分以下であることがより好ましく、15g/10分以下であることがさらに好ましく、13g/10分以下であることが特に好ましい。
【0050】
熱可塑性樹脂(A)がエチレン系重合体(A1)である場合におけるMFR(ASTM D1238、190℃、2.16kg荷重)は、6~100g/10分であることが好ましい。ここで、MFRの下限側をみると、8g/10分以上であることが好ましく、10g/10分以上であることがより好ましく、11g/10分以上であることがさらに好ましい。またMFRの上限側をみると、80g/10分以下であることが好ましく、60g/10分以下であることがより好ましく、50g/10分以下であることがさらに好ましい。
【0051】
熱可塑性樹脂(A)がABS樹脂(A5)である場合におけるMVR(ASTM D1133、220℃、10kg荷重)は、10~100cm3/10分であることが好ましい。ここで、MVRの下限側をみると、18cm3/10分以上であることが好ましく、30cm3/10分以上であることがより好ましく、40cm3/10分以上であることがさらに好ましい。またMVRの上限側をみると、95cm3/10分以下であることが好ましく、90cm3/10分以下であることがより好ましく、85cm3/10分以下であることがさらに好ましい。
【0052】
<金属酸化物(B)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる成分の一つである金属酸化物(B)は、金属の酸化物であれば、その種類は特に限定されないが、熱可塑性樹脂(A)よりも高い熱伝導性を有する金属酸化物であれば良い。例えば、酸化マグネシウム(45~60W/mK)、酸化アルミニウム(17~36.0W/mK)、酸化亜鉛(25~54W/mK)、酸化チタン(8.4W/mK)などの金属酸化物を使用できる。2種以上の金属酸化物を併用しても良い。なお、物質名の後のカッコ内の数値は、300Kにおける熱伝導率の値を示す。
【0053】
本発明に係る金属酸化物(B)は、熱伝導率が10~300W/mKの範囲である金属酸化物が好ましい。熱伝導率の下限は、15W/mKであることがより好ましく、20W/mKであることがさらに好ましく、30W/mKであることが特に好ましく、40W/mKであることが最も好ましい。
【0054】
また、熱伝導率の上限は、250W/mKであることがより好ましく、200W/mKであることがさらに好ましく、100W/mKであることが特に好ましい。
熱伝導率が上記範囲にある金属酸化物(B)を用いることにより、上記熱可塑性樹脂(A)と混合して得られる熱可塑性樹脂組成物が適度な熱伝導率を有するので、手で触った際に冷たさが感じられ、且つ、熱いものを入れると温かみを感じられる容器などの成形体が得られ得る。
【0055】
また、酸化チタンが光触媒として用いられる場合と異なり、金属酸化物(B)は、光の照射が不要、かつ、抗菌及び/又は抗ウイルス性が求められる用途においては、酸化マグネシウム、酸化亜鉛であることが好ましく、さらに色が白く着色が容易で且つ安価な点から、酸化マグネシウムがより好ましい。
【0056】
本発明に係る金属酸化物(B)の形状は、球状、立方状、板状、柱状、六角板状等を用いることができ、その中でも球状のものが好ましい。また、金属酸化物(B)は粉砕したものを用いることもできる。
【0057】
本発明に係る金属酸化物(B)は、平均粒子径が0.1~110μmの範囲にあることが好ましい。平均粒子径の下限は、0.2μmであることがより好ましく、0.5μmであることがさらに好ましく、1μmであることが特に好ましい。
【0058】
また、平均粒子径の上限は、105μmであることがより好ましく、90μmであることがさらに好ましく、85μmであることが特に好ましい。
平均粒子径が小さすぎると、凝集しやすくなりハンドリングの低下および熱可塑性樹脂(A)と均一に混ぜ合わせすることが難しくなる虞があり、一方、平均粒子径が大きすぎると得られる熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率が低くなりすぎる虞があり、また、得られる成形体の機械的物性が低下する虞がある。
【0059】
より高い熱伝導率が求められる用途においては、例えば平均粒子径の異なる0.1μm以上10μm未満である金属酸化物(b1)と10μm以上110μm以下である金属酸化物(b2)を併用することが好ましい。この場合の配合比(質量比)は、例えば(b1)/(b2)=1/99~49/51であることが好ましく、5/95~45/55であることがより好ましく、10/90~40/60であることがより好ましい。
【0060】
平均粒子径が小さい金属酸化物(b1)と平均粒子径が大きい金属酸化物(b2)を併用することにより、金属酸化物(b2)の隙間に金属酸化物(b1)が充填され、充填密度が上がるため、得られる熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率を向上させることができる。
【0061】
また、金属酸化物(B)は、熱伝導の均一性等の観点から、そのアスペクト比は小さいことが好ましい。具体的には、アスペクト比は好ましくは1.2未満、より好ましくは1.1未満である。
【0062】
本発明に係る金属酸化物(B)は耐水処理されたものであることが好ましい。金属酸化物(B)には、金属水酸化物及びその水和物や金属酸化物の水和物は実質的に含まれないことが好ましい。具体的には、金属酸化物(B)全体100質量%中の金属水酸化物及びその水和物や金属酸化物の水和物の含有率は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.3質量%以下である。
【0063】
<未変性ポリオレフィン系ワックス(C)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる成分の一つである未変性ポリオレフィン系ワックス(C)は、低分子量の重合体であり、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンからなる未変性ワックスである限り特に限定はされないが、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックスが好ましく、ポリエチレン系ワックスがより好ましい。
【0064】
なお、本発明に係る未変性ポリオレフィン系ワックス(C)は、酸化、あるいは不飽和カルボン酸などで変性されておらず、未変性である。
また、本発明に係る未変性ポリオレフィン系ワックス(C)は、JIS K0070に準じて測定した酸価が0.01mgKOH/g以下であることが好ましく、0mgKOH/gであることがより好ましい。
【0065】
〈ポリエチレン系ワックス〉
本発明に係る未変性ポリオレフィン系ワックス(C)として用いられるポリエチレン系ワックスは、エチレンの単独重合体、またはエチレンとα-オレフィンとの共重合体などからなるワックスである。α-オレフィンとしては、炭素原子数3~10のα-オレフィンが好ましく、炭素原子数3~8のα-オレフィンがより好ましく、1-ブテンがさらに好ましい。
【0066】
本発明に係るポリエチレン系ワックスは、好ましくはJIS K7112(1999)の密度勾配管法に準拠して測定した密度が、890~980kg/m3の範囲であり、より好ましくは895~975kg/m3の範囲である。ポリエチレン系ワックスの密度がこのような範囲であると熱可塑性樹脂組成物におけるポリエチレン系ワックスの分散性が向上する。
【0067】
本発明に係るポリエチレン系ワックスは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した標準ポリエチレン換算の数平均分子量は、700~4000であることが好ましく、1500~3800であることがより好ましい。
【0068】
数平均分子量(Mn)が700~4000であるポリエチレン系ワックスは、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形するときに、熱可塑性樹脂(A)により適切に分散することができ、また、金属酸化物(B)の分散性にも寄与する。また、成形押出の際の押出し負荷を低減することもできる。その結果、より成形品の生産性を向上させることができる。
【0069】
本発明に係るポリエチレン系ワックスは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した標準ポリエチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、1000~9000であることが好ましく、1500~8000であることがより好ましく、2000~7000であることがさらに好ましい。
【0070】
本発明に係るポリエチレン系ワックスは、融点が、70~130℃であることが好ましく、80~129℃であることがより好ましい。
ポリエチレン系ワックスの融点は、JIS K7121に準拠し、示差走査熱量計(DSC)により測定した。
【0071】
〈ポリプロピレン系ワックス〉
本発明に係る未変性ポリオレフィン系ワックス(C)として用いられるポリプロピレン系ワックスは、プロピレンの単独重合体、またはプロピレンとエチレンまたはα-オレフィンとの共重合体などからなるワックスである。α-オレフィンとしては、炭素原子数4~10のα-オレフィンが好ましく、炭素原子数4~8のα-オレフィンがより好ましく、1-ブテンがさらに好ましい。
【0072】
《熱可塑性樹脂組成物》
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記熱可塑性樹脂(A)を10~50質量部、上記金属酸化物(B)を50~90質量部〔但し、(A)+(B)の合計量を100質量部とする。〕、および(A)+(B)の合計量:100質量部に対し、上記未変性ポリオレフィン系ワックス(C)を0.1~20質量部の範囲で含む組成物である。
【0073】
本発明の熱可塑性樹脂組成物における熱可塑性樹脂(A)の含有量の下限は、12質量部であることが好ましく、16質量部であることがより好ましく、20質量部であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂組成物における熱可塑性樹脂(A)の含有量が一定量以上であると、射出成形などの既存の成形方法を行うことができる。
【0074】
熱可塑性樹脂(A)の含有量の上限は、45質量部であることが好ましく、40質量部であることがより好ましく、36質量部であることがさらに好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における熱可塑性樹脂(A)の含有量が一定量以下であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の熱伝導が十分に発揮され、得られる成形体が、重みおよび質感が感じられる。
【0075】
一方、金属酸化物(B)の含有量の下限は、55質量部であることが好ましく、60質量部であることがより好ましく、68質量部であることがさらに好ましい。
また、金属酸化物(B)の含有量の上限は、88質量部であることが好ましく、84質量部であることがより好ましく、80質量部であることがさらに好ましい。
【0076】
抗菌及び/又は抗ウイルス性が求められる用途においては、金属酸化物(B)の含有量の下限は70質量部であることが好ましく、72質量部であることがより好ましく、74質量部以上であることがさらに好ましい。当然ながら、熱可塑性樹脂(A)の含有量の上限側は30質量部であることが好ましく、28質量部であることがより好ましく、26質量部以下であることがさらに好ましい。
【0077】
熱可塑性樹脂(A)と金属酸化物(B)の量が上記範囲にあることにより、成形性が良好で、抗菌及び/又は抗ウイルス性を有する成形体を得ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)と金属酸化物(B)の合計が100質量部としたとき、未変性ポリオレフィン系ワックス(C)を0.1~20質量部を含有する。未変性ポリオレフィン系ワックス(C)の含有量の下限は、0.2質量部であることが好ましく、0.4質量部であることがより好ましく、0.5質量部であることがさらに好ましい。
【0078】
また、未変性ポリオレフィン系ワックス(C)の含有量の上限は、15質量部であることが好ましく、10質量部であることがより好ましく、5質量部であることがさらに好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、未変性ポリオレフィン系ワックス(C)を上記範囲で含むことにより、熱可塑性樹脂組成物を得る際、および、熱可塑性樹脂組成物を用いて、成形加工を行う際の成形時の成形トルクを低下させることによる混錬性向上させることができる。また、熱可塑性樹脂(A)よりも溶融温度が低いことで滑剤として働き、スクリューやシリンダーの摩耗を防止できる。
【0079】
一方、本発明の熱可塑性樹脂組成物は変性ポリオレフィン系ワックスを含まないので、成形加工時に異臭が発生する虞はない。
さらに、未変性ポリオレフィン系ワックス(C)を含む本発明の熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体は、変性ポリオレフィン系ワックスを含む組成物から得られる成形体に比べて、硬質感を有し、より陶器に近い質感を有すると共に、親水性の変化はないので、金属酸化物の溶出を招く虞もなく、質感低下を引き起こす虞もない。
【0080】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、比重が、1.0~5.0の範囲にあることが好ましい。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、比重の下限が、1.2であることがより好ましく、1.4であることがさらに好ましく、1.6であることが特に好ましい。また、比重の上限は、4.0であることがより好ましく、3.0であることがさらに好ましく、2.5であることが特に好ましい。
【0081】
比重が上記範囲を満たすことにより、より質感が良好な成形体を得ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱伝導率が、0.5~5W/mKの範囲にあることが好ましい。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱伝導率の下限が0.6W/mKであることがよい好ましく、0.65W/mKであることがさらに好ましく、0.7W/mKであることが特に好ましい。また、熱伝導率の上限は、4.5W/mKであることがより好ましく、4.0W/mKであることがさらに好ましく、3.6W/mKであることが特に好ましい。
【0082】
熱伝導率が上記範囲を満たすことにより手で触った際にヒンヤリ感が感じられ、より質感が良好な容器などの成形体が得られ得る。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、大腸菌または黄色ブドウ球菌を用いた抗菌活性値が2.0以上、より好ましくは大腸菌及び黄色ブドウ球菌を用いた抗菌活性値が2.0以上である。本発明の熱可塑性樹脂組成物の抗菌活性値は、たとえば金属酸化物(B)(例:酸化マグネシウム)の含有量を増加させることにより大きくできる。なお抗菌活性値が、2.0以上であると抗菌効果があるとされる。抗菌活性値が大きいほど、抗菌効果が高いことを示すため好ましく、その上限は特に制限されるものではない。
【0083】
本発明における抗菌活性値は、JIS Z 2801:2012「フィルム密着法」における試験方法に準拠した指標値である。
【0084】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、ネコカリシウイルスを用いた抗ウイルス活性値が2.0以上である。なお抗ウイルス活性値が、2.0以上であると抗ウイルス効果があるとされる。抗ウイルス活性値が大きいほど、抗ウイルス効果が高いことを示すため好ましく、その上限は特に制限されるものではない。
本発明における抗ウイルス活性値は、ISO 21702:2019「プラスチック及びその他の非多孔質表面の抗ウイルス活性の測定」における試験方法に準拠した指標値である。
【0085】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、未変性ポリオレフィン系ワックス(C)に加え、繊維状充填剤(D)を含んでいてもよい。
【0086】
〈繊維状充填剤(D)〉
本発明に係る繊維状充填剤(D)は、繊維状の充填剤であって、具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、硫酸マグネシウム繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ケナフ繊維、竹繊維、ジュード繊維、無機結晶質ウィスカー繊維が挙げられる。これらの中でも、ガラス繊維、炭素繊維が好適である。
【0087】
本発明の熱可塑性樹脂組成物が繊維状充填剤(D)を含む場合は、得られる成形体の強度等の機械的特性を向上させる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物が繊維状充填剤(D)を含む場合は、熱可塑性樹脂(A)と金属酸化物(B)の合計量100質量部に対し、0.1~20質量部の範囲で含有する。繊維状充填剤(D)の含有量の下限は、0.2質量部であることが好ましく、0.3質量部であることがより好ましい。また、繊維状充填剤(D)の含有量の上限は、15質量部であることが好ましく、10質量部であることがより好ましく、8質量部であることがさらに好ましい。
【0088】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、繊維状充填剤(D)以外のフィラーを含んでいてもよい。そのようなフィラーとしては、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、リン酸アンモニウム塩、珪酸塩類、炭酸塩類、カーボンブラック等の無機フィラー;木粉、セルロース、米粉、澱粉、コーンスターチ等の有機フィラー;が挙げられる。
【0089】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記繊維状充填剤(D)に加え、用途に応じて種々公知の添加剤、例えば、可塑剤、滑材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、顔料、顔料マスターバッチ、染料、帯電防止剤、難燃剤、カップリング剤、及び分散剤等を、本発明の目的を損なわない範囲で含んでいてもよい。
【0090】
〈熱可塑性樹脂組成物の製造方法〉
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記各成分をドライブレンド、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ニーダーなどで混合、あるいは混合後、単軸押出機、2軸押出機、高速2軸押出機などで溶融混練することにより得られる。
【0091】
<成形体>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形性に優れているので、様々な成形法に使用できる。本発明の熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体の具体例としては、射出成形体、発泡成形体、射出発泡成形体、押出成形体、中空成形体、真空・圧空成形体、カレンダー成形体、延伸フィルム、インフレーションフィルムが挙げられる。
【0092】
より具体的には、食品等を入れる容器、フォークやナイフ、スプーン、皿、急須、湯呑等の食器、徳利又は銚子の酒器等や箸置きなどのカトラリーレスト等が挙げられる。これらは射出成形により簡便に成形でき、内容物の温冷感を感じやすく、重量感を得られる点で、陶磁器に代わる食器、酒器や容器、カトラリーとして非常に有用である。また、陶磁器を用いる他の用途、例えばランプシェードや花瓶等の日用雑貨、特定の音響スピーカー(高級スピーカー等)の筐体・構造材、洗面台や便器等の水廻り製品、草木を入れる花瓶や鉢等への展開も可能である。陶磁器を用いる用途以外でも、重量感や安定感を付与できる特徴を活かして、例えばプラモデル等に代表される模型・玩具用途、机や椅子等の家具用途、冷蔵庫や炊飯器、掃除機などの家電用途、ピアノの鍵盤等の楽器用途、タイル、人工大理石代替品、建材等の建築用途、ボタンなどの服飾用途等にも展開が可能である。また、温冷感や成形性を利用して3Dプリンターのフィラメントとしても好適である可能性がある。
【0093】
本発明の成形体は、その他にも、意匠性、安定感、抗菌性や触感などの特徴を活かした各種のボトルやジャーなどの容器、車両や船舶におけるステアリングやシフトノブ、ドアハンドルやドアノブ、各種スイッチ類、手すり、マウス、キーボード、コントローラー、装飾用アクセサリー、文房具、スマホカバー、タブレットカバー、パソコン・タブレット筐体、ブックカバーなどを挙げることができ、日常手に触れるところに用いることが出来る。
【0094】
容器において、これらの性能の商品価値への影響が高い傾向がある化粧品(化粧液、化粧クリームなど)やシャンプー(ボディーシャンプーなども含む)、リンスなどの美容関連製品の容器を好適な例とすることが出来る。より具体的には、蓋付き容器(エアレス容器などを含む)、(化粧用)コンパクト、(化粧用)パレットやボトルなどの形状の容器を挙げることが出来る。
【0095】
このような用途には、近年、軽量で耐衝撃性に優れたポリオレフィンなどのプラスチック製の容器が用いられることが殆どであるが、視覚、触覚(熱伝導性、重量感等を含む)などでの高級感の演出には不向きな材料である。高級感の演出には陶磁器などの容器が適しているが、これには意匠性や大量生産と言う観点での自由度の制限や、耐衝撃性が低いと言う大きな問題が有る。
【0096】
本発明の容器は、従来のプラスチック製品と同様の成形方法を適用することが出来るので、生産性、意匠性に優れているだけでなく、陶磁器に比して耐衝撃性に優れ、陶磁器と同様の重量感や熱伝導性を持つので、前記の用途に好適であると考えることが出来る。
【0097】
さらに本発明の熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体は、高い熱伝導性が要求される用途における放熱部材としても有用である。例えば、高い熱伝導性が要求される電子部品、ノートパソコンやモバイル機器等の各種電子機器における放熱シート等の放熱部材として非常に有用である。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物をノートパソコンやモバイル機器等の各種電子機器の筐体の一部あるいは全部に適用して、放熱シートと組み合わせて用いれば、電子機器の放熱性能を更に高めることが期待できる。さらに、ノートパソコンやモバイル機器等の各種電子機器の筐体の一部に本発明の熱可塑性樹脂組成物を使用して、それ以外の部分、例えば操作中に手が接触することが多い箇所には、金属酸化物含有率を低減した材料もしくは金属酸化物を含まない材料を使用して、長時間の操作時の低温やけど等の発症の可能性を低減できる筐体を製造することも出来る。このような筐体は、例えば、筐体を成形するための金型に複数の樹脂注入ゲートを設置し、ゲートごとに異なる組成の樹脂を注入する方法等により製造することが可能である。
【0098】
その他の用途としては、優れた熱伝導性、成形時の形状の自由度、衝撃強度の高さ等を活かして、金属製の筐体の代替材料としても有用である。例えば、時計、腕時計の筐体やベルト、家具の部品(例えば金属取手部)、洗濯機や冷蔵庫等の家電製品の外装材への展開も期待できる。
【実施例
【0099】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。実施例で使用した各材料は以下の通りである。各物性の評価方法は後述する。
【0100】
実施例および比較例で用いた熱可塑性樹脂(A)を以下に示す。
(1)熱可塑性樹脂(A)
(1-1)プロピレン系重合体(A2-1):プロピレン・エチレンブロック共重合体(プライムポリマー社製、商品名 X860、MFR(230℃、荷重2.16kg)=60g/10分、密度=900kg/m3、25℃キシレン可溶部量=24質量%、25℃キシレン可溶部の極限粘度[η]=2.5dl/g、25℃キシレン可溶部のエチレン含有量=30質量%)。
(1-2)プロピレン系重合体(A2-2):プロピレン・エチレンブロック共重合体(プライムポリマー社製、商品名 J-6083HP、MFR(230℃、荷重2.16kg)=60g/10分、密度=900kg/m3)。
(1-3)プロピレン系重合体(A2-3):短繊維ガラス強化ポリプロピレン(プライムポリマー社製、プライムポリプロ(登録商標)V7100、ガラス繊維量=20wt%、MFR(230℃、荷重2.16kg)=18g/10分、密度=1030kg/m3)。
(1-4)エチレン系重合体(A1-1):高密度ポリエチレン(プライムポリマー社製、ハイゼックス(登録商標)商品名 1300J、MFR(190℃、荷重2.16kg)=13g/10分、密度=967kg/m3)。
(1-5)エチレン系重合体(A1-2):高密度ポリエチレン(プライムポリマー社製、ハイゼックス(登録商標)商品名 1700J、MFR(190℃、荷重2.16kg)=16g/10分、MFR(230℃、荷重2.16kg)=28g/10分、密度=967kg/m3)。
(1-6)エチレン系重合体(A1-3):エチレン・1-ブテン共重合体(三井化学株式会社製、タフマー(登録商標)商品名 A-35070S、MFR(190℃、荷重2.16kg)=35g/10分、MFR(230℃、荷重2.16kg)=65g/10分、密度=870kg/m3)。
(1-7)プロピレン系重合体(A2-4):プロピレン単独重合体(プライムポリマー社製、商品名 J13B、MFR(230℃、荷重2.16kg)=200g/10分、密度=890kg/m3)。
(1-8)4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4-1):4-メチル-1-ペンテン・プロピレン共重合体は、以下に記載の方法により製造したものを使用した。
(1-9)ABS樹脂(A5-1):ABS樹脂(日本エイアンドエル株式会社製、商品名 GA-704、MVR(220℃、荷重10kg)=62cm3/10分、MFR(230℃、荷重5kg)=39.8g/10分、MFR(230℃、荷重2.16kg)=13g/10分、密度1040kg/m3
【0101】
〔4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4-1)の製造方法〕
充分に窒素置換した容量1.5Lの攪拌翼付のSUS製オートクレーブに、300mlのn-ヘキサン(乾燥窒素雰囲気下、活性アルミナ上で乾燥したもの)、及び450mlの4-メチル-1-ペンテンを23℃で装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、攪拌機を回した。
【0102】
次に、オートクレーブを内温が60℃になるまで加熱し、全圧(ゲージ圧)が0.40MPaとなるようにプロピレンで加圧した。
続いて、予め調製しておいた、Al換算で1mmolのメチルアルミノキサン、及び0.01mmolのジフェニルメチレン(1-エチル-3-t-ブチル-シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを含むトルエン溶液0.34mlを、オートクレーブに窒素で圧入し、重合反応を開始させた。重合反応中は、オートクレーブの内温が60℃になるように温度調整した。
【0103】
重合開始から60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し、重合反応を停止させた後、オートクレーブ内を大気圧まで脱圧した。脱圧後、反応溶液に、該反応溶液を攪拌しながらアセトンを添加し、溶媒を含む重合反応生成物を得た。
【0104】
次いで、得られた溶媒を含む重合反応生成物を減圧下、100℃で12時間乾燥させて、36.9gの粉末状の4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4-1)を得た。
【0105】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4-1)の4-メチル-1-ペンテンの含有率は72.5モル%であり、プロピレンの含有率は27.5モル%であった。また、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4-1)の物性は以下の通りである。
密度は839kg/m3、極限粘度[η]は1.5dl/gであり、重量平均分子量(Mw)は337,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であり、メルトフローレート(MFR;230℃、2.16kg荷重)は11g/10分であり、融点(Tm)は観測されなかった。また、tanδのピーク温度は30℃、ピーク値は2.78であった。
【0106】
上記の各熱可塑性樹脂(A)のMFR、密度は、以下の方法で測定した。
〔メルトフローレート(MFR)(g/10分)〕
ASTM D1238に準じて、温度190℃、荷重2.16kgの条件、温度230℃、荷重2.16kgの条件または、温度230℃、荷重5kgの条件で測定した。
〔密度〕
JIS K 7112に準じて測定した。
【0107】
〔4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4-1)の組成〕
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4-1)中の各構成単位(4-メチル-1-ペンテン及びα-オレフィン)の含有率(モル%)は、13C-NMRにより測定した。
・測定装置:核磁気共鳴装置(ECP500型、日本電子(株)製)
・観測核:13C(125MHz)
・シーケンス:シングルパルスプロトンデカップリング
・パルス幅:4.7μ秒(45°パルス)
・繰り返し時間:5.5秒
・積算回数:1万回以上
・溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン(容量比:80/20)混合溶媒
・試料濃度:55mg/0.6mL
・測定温度:120℃
・ケミカルシフトの基準値:27.50ppm
【0108】
〔4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4-1)の極限粘度[η]〕
極限粘度[η]は、測定装置としてウベローデ粘度計を用い、デカリン溶媒中、135℃で測定した。
約20mgの特定4-メチル-1-ペンテン系共重合体をデカリン25mlに溶解させた後、ウベローデ粘度計を用い、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリンを5ml加えて希釈した後、上記と同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作を更に2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η](単位:dl/g)として求める(下記の式1参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)・・・式1
【0109】
〔4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4-1)の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)〕
重量平均分子量(Mw)、及び重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。
-条件-
測定装置:GPC(ALC/GPC 150-C plus型、示差屈折計検出器一体型、Waters製)
カラム:GMH6-HT(東ソー(株)製)2本、及びGMH6-HTL(東ソー(株)製)2本を直列に接続
溶離液:o-ジクロロベンゼン
カラム温度:140℃
流量:1.0mL/min
【0110】
〔4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4-1)の融点(Tm)〕
融点(Tm)は、測定装置として示差走査熱量計(DSC220C型、セイコーインスツル(株)製)を用いて測定した。約5mgの重合体を、測定用アルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/minで200℃まで加熱した。重合体を完全融解させるために、200℃で5分間保持し、次いで、10℃/minで-50℃まで冷却した。-50℃で5分間置いた後、10℃/minで200℃まで2度目の加熱を行ない、この2度目の加熱でのピーク温度(℃)を重合体の融点(Tm)としたなお、複数のピークが検出される場合には、最も高温側で検出されるピークを採用した。
【0111】
〔4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4-1)の動的粘弾性〕
動的粘弾性の測定では、測定対象とする樹脂からなる厚さ3mmのプレスシートを測定試料として用い、さらに動的粘弾性測定に必要な45mm×10mm×3mmの短冊片を切り出した。ANTONPaar社製MCR301を用いて、10rad/s(1.6Hz)の周波数で-40~150℃までの動的粘弾性の温度依存性を測定し、0~40℃の範囲でガラス転移温度に起因する損失正接(tanδ)がピーク値(最大値)となる際の温度(以下「ピーク値温度」ともいう。)、およびその際の損失正接(tanδ)の値を測定した。
【0112】
実施例および比較例で用いた金属酸化物(B)を以下に示す。
(2)金属酸化物(B)
(2-1)酸化マグネシウム(B-1):MgO(協和化学工業社製、パイロキスマ5301、平均粒子径=2μm)。
(2-2)酸化マグネシウム(B-2):MgO(協和化学工業社製、パイロキスマ3320、平均粒子径=20μm)。
(2-3)酸化マグネシウム(B-3):下記に示す処理を行った酸化マグネシウムを用いた。
MgO(タテホ化学工業社製DENMAG KMAO-H(平均粒子径=45~355μm))を、180-250meshの篩でふることで平均粒子径=約60~80μmの酸化マグネシウム(B-3)を得た。
【0113】
実施例および比較例で用いた未変性ポリオレフィン系ワックス(C)を以下に示す。
(3)未変性ポリオレフィン系ワックス(C)
(3-1)未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1):エチレン・1-ブテン共重合体(三井化学株式会社製、商品名エクセレックス30050B、密度=907kg/m3、酸価=0mgKOH/g、融点=91℃、重量平均分子量=5100、分子量分布Mw/Mn=2.6)。
【0114】
(4)変性ポリオレフィン系ワックス
(4-1)変性ポリオレフィン系ワックス:変性ポリオレフィン重合体(三井化学株式会社製、商品名 エクセレックス15341PA、密度=930kg/m3、酸価=14mgKOH/g、融点=89℃)。
【0115】
実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物の物性は、以下の方法で測定した。
〔比重〕
水中置換法にて4℃の水の密度との相対比較で比重を測定した。
〔メルトフローレート(MFR)(g/10分)〕
ASTM D1238に準じて、温度230℃、荷重2.16kgの条件または、温度230℃、荷重5kgの条件で測定した。
【0116】
〔鉛筆硬度〕
750gの試験荷重で鉛筆硬度を測定した。
〔熱伝導率(W/m・K)
熱伝導率は、定情報熱流量計法で測定した。具体的にはアルバック理工社製測定器GH-1を用い、ASTM E1530に準じて、温度30℃で測定した。
【0117】
〔荷重たわみ温度測定(℃)〕
ISO75-2のA法に準じて、試験片(2mm×10mm×80mm)を用いて昇温速度120℃/時、試験開始温度:35℃、曲げ応力1.8MPaGの条件下で測定した。HDT測定は、全自動HDT試験機6Aー2型(東洋精機株式会社製)を使用した。
【0118】
〔吸水率(重量%)〕
23℃で24時間での吸水率測定を実施した。
【0119】
〔抗菌活性値(-)〕
JIS Z 2801:2012「フィルム密着法」における試験方法に準じて、実施し、以下の式より抗菌活性値を算出した。
「抗菌活性値」=「大腸菌または黄色ぶどう球菌を接種してから24時間後のブランクサンプルの生菌数の常用対数値」-「大腸菌または黄色ぶどう球菌を接種してから24時間後の試験片の生菌数の常用対数値」
当該試験で使用した試験菌株を以下に示す。
抗菌活性値(大腸菌):Escherichia coli NBRC 3972
抗菌活性値(黄色ぶどう球菌):Staphylococcus aureus NBRC 12732
【0120】
〔抗ウイルス活性値(-)〕
ISO 21702:2019における試験方法に準拠し、熱可塑性樹脂組成物の抗ウイルス活性値を求めた。
具体的には、50mm四方の試料を滅菌シャーレ内に置き、0.4mLのウイルス液を試料上に接種した。その後、試料上に被覆フィルムを被せた。シャーレに蓋をした後、温度25℃・湿度90%以上の条件で、24時間、試料とウイルスを接種させた。試料上からウイルスを回収し、プラーク法にてウイルス感染価を測定し、以下の式により抗ウイルス活性値を算出した。
「抗ウイルス活性値」=「ウイルスを接種してから24時間後のブランクサンプルのウイルス感染価の常用対数値[Ut]」-「ウイルスを接種してから24時間後の試験片の常用対数値[At]」
当該試験で使用したウイルスを以下に示す。
ネコカリシウイルス(Feline calicivirus):ATCC VR-782
【0121】
(1)抗菌性(耐水性区分0及び耐光性区分0:耐光性および耐水性前処理を行わない条件)
耐水性区分0及び耐光性区分0は、「抗菌製品技術協議会 試験法 持続性試験法(2020年度版)(1)耐水性試験」及び「抗菌製品技術協議会 試験法 持続性試験法(2020年度版)(2)耐光性試験」に記載の耐水性および耐光性前処理を未実施のサンプルにて、前記「フィルム密着法」による試験を実施し、抗菌活性値を算出した。
なお、前処理では抗菌または抗ウイルス性を有する製品が水等との接触や光への曝露によりその性能が低下することを想定し、各区分で定めた試験条件(水温、浸漬時間、又は光源の照射時間)でサンプルを処理する。
【0122】
(2)抗菌性持続性(耐水性区分1及び耐水性区分2)
耐水性区分1及び耐水性区分2は「抗菌製品技術協議会 試験法 持続性試験法(2020年度版)(1)耐水性試験」に準じ、前処理を行ったサンプルを用いて前記「フィルム密着法」による試験を実施し、抗菌活性値を算出した。
【0123】
(3)抗菌性持続性(耐光性区分1及び耐光性区分2)
耐光性区分1及び耐光性区分2は「抗菌製品技術協議会 試験法 持続性試験法(2020年度版)(2)耐光性試験」に準じ、前処理を行ったサンプルを用いて前記「フィルム密着法」による試験を実施し、抗菌活性値を算出した。
【0124】
〔実施例1〕
プロピレン系重合体(A2-1)30質量部、酸化マグネシウム(B-1)70質量部および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を混錬装置(卓上型ニーダー(入江商会製))を用いて200℃、15~35rpmの条件で混錬し、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、手動油圧加熱プレス装置(井元製作所製)を用いて、200℃でプレスシートを作製し物性試験用サンプルを得た。得られたシート等を用いて上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0125】
〔実施例2〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、プロピレン系重合体(A2-2)23質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、酸化マグネシウム(B-2)75質量部及び未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。また、耐水性区分0及び耐光性区分0における抗菌性持続性試験を上記に記載の方法で実施した。
結果を表1に示す。
【0126】
さらに、耐水性区分1、耐水性区分2、耐光性区分1及び耐光性区分2における抗菌・抗ウイルス性持続性試験を上記に記載の方法で実施した。
耐水性区分1および2並びに耐光性区分1および2における抗菌性持続性試験の結果を表2に、耐水性区分1および2並びに耐光性区分1および2における抗ウイルス性持続性試験の表3に示す。
【0127】
〔実施例3〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、プロピレン系重合体(A2-2)23質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、酸化マグネシウム(B-1)15質量部、酸化マグネシウム(B-2)60質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0128】
〔実施例4〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、プロピレン系重合体(A2-2)23質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、酸化マグネシウム(B-1)22.5質量部、酸化マグネシウム(B-2)52.5質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0129】
〔実施例5〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、プロピレン系重合体(A2-2)24.5質量部、エチレン系重合体(A1-3)0.5質量部、酸化マグネシウム(B-2)75質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0130】
〔実施例6〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、プロピレン系重合体(A2-2)29.5質量部、エチレン系重合体(A1-3)0.5質量部、酸化マグネシウム(B-2)70質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0131】
〔実施例7〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、プロピレン系重合体(A2-2)34.5質量部、エチレン系重合体(A1-3)0.5質量部、酸化マグネシウム(B-2)65質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。また、耐水性区分0及び耐光性区分0における抗菌性持続性試験を上記に記載の方法で実施した。
結果を表1に示す。
【0132】
〔実施例8〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、プロピレン系重合体(A2-3)23質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、酸化マグネシウム(B-2)75質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0133】
なお、プロピレン系重合体(A2-3)は前述の通りガラス繊維20質量%配合している。プロピレン系重合体(A2-3)のうちガラス繊維を除いた部分(PP部分)および酸化マグネシウム(B-2)の合計量を100質量部として計算した時の配合比は以下の通りである。プロピレン系重合体(A2-3)のPP部分19.3質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.1質量部、酸化マグネシウム(B-2)78.6質量部、未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部、プロピレン系重合体(A2-3)のガラス繊維部分4.8質量部。
【0134】
〔実施例9〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、プロピレン系重合体(A2-2)11.5質量部、プロピレン系重合体(A2-3)11.5質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、酸化マグネシウム(B-2)75質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0135】
なお、プロピレン系重合体(A2-3)は前述の通りガラス繊維20質量%配合している。プロピレン系重合体(A2-3)のうちガラス繊維を除いた部分(PP部分)、プロピレン系重合体(A2-2)および酸化マグネシウム(B-2)の合計量を100質量部として計算した時の配合比は以下の通りである。プロピレン系重合体(A2-2)11.8質量部、プロピレン系重合体(A2-3)のPP部分9.4質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、酸化マグネシウム(B-2)76.8質量部、未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部、プロピレン系重合体(A2-3)のガラス繊維部分2.4質量部。
【0136】
〔実施例10〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、プロピレン系重合体(A2-2)15.3質量部、プロピレン系重合体(A2-3)7.7質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、酸化マグネシウム(B-2)75質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0137】
なお、プロピレン系重合体(A2-3)は前述の通りガラス繊維20質量%配合している。プロピレン系重合体(A2-3)のうちガラス繊維を除いた部分(PP部分)、プロピレン系重合体(A2-2)および酸化マグネシウム(B-2)の合計量を100質量部として計算した時の配合比は以下の通りである。プロピレン系重合体(A2-2)15.5質量部、プロピレン系重合体(A2-3)のPP部分6.3質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、酸化マグネシウム(B-2)76.2質量部、未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部、プロピレン系重合体(A2-3)のガラス繊維部分1.6質量部。
【0138】
〔実施例11〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、エチレン系重合体(A1-1)25質量部、酸化マグネシウム(B-1)22.5質量部、酸化マグネシウム(B-2)52.5質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0139】
〔実施例12〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、エチレン系重合体(A1-1)25質量部、酸化マグネシウム(B-2)75質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0140】
〔実施例13〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、エチレン系重合体(A1-1)33質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、酸化マグネシウム(B-2)65質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0141】
〔実施例14〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、エチレン系重合体(A1-1)18質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、酸化マグネシウム(B-2)80質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0142】
〔実施例15〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、エチレン系重合体(A1-2)25質量部、酸化マグネシウム(B-2)75質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0143】
〔実施例16〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、エチレン系重合体(A1-2)23質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、酸化マグネシウム(B-2)75質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。また、耐水性区分0及び耐光性区分0における抗菌性持続性試験を上記に記載の方法で実施した。
結果を表1に示す。
【0144】
〔実施例17〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、エチレン系重合体(A1-2)23質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、酸化マグネシウム(B-2)75質量部、未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部、およびカーボンブラック1.0質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0145】
〔実施例18〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、プロピレン系重合体(A2-2)28質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、酸化マグネシウム(B-3)70質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0146】
〔実施例19〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、プロピレン系重合体(A2-2)28質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、酸化マグネシウム(B-3)70質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)1質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0147】
〔実施例20〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、プロピレン系重合体(A2-2)28質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、酸化マグネシウム(B-3)70質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)2質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0148】
〔実施例21〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、プロピレン系重合体(A2-2)23質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、酸化マグネシウム(B-3)75質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0149】
〔実施例22〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、プロピレン系重合体(A2-2)14質量部、プロピレン系重合体(A2-4)14質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、酸化マグネシウム(B-2)70質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0150】
〔実施例23〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、プロピレン系重合体(A2-2)18.7質量部、プロピレン系重合体(A2-3)9.3質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、酸化マグネシウム(B-2)70質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0151】
なお、プロピレン系重合体(A2-3)は前述の通りガラス繊維20質量%配合している。プロピレン系重合体(A2-3)のうちガラス繊維を除いた部分(PP部分)、プロピレン系重合体(A2-2)および酸化マグネシウム(B-2)の合計量を100質量部として計算した時の配合比は以下の通りである。プロピレン系重合体(A2-2)19.1質量部、プロピレン系重合体(A2-3)のPP部分7.6質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、酸化マグネシウム(B-2)71.3質量部、未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部、プロピレン系重合体(A2-3)のガラス繊維部分1.9質量部。
【0152】
〔実施例24〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、プロピレン系重合体(A2-3)11.5質量部、プロピレン系重合体(A2-4)11.5質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、酸化マグネシウム(B-2)75質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0153】
なお、プロピレン系重合体(A2-3)は前述の通りガラス繊維20質量%配合している。プロピレン系重合体(A2-3)のうちガラス繊維を除いた部分(PP部分)、プロピレン系重合体(A2-4)および酸化マグネシウム(B-2)の合計量を100質量部として計算した時の配合比は以下の通りである。プロピレン系重合体(A2-3)のPP部分9.4質量部、プロピレン系重合体(A2-4)11.8質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、酸化マグネシウム(B-2)76.8質量部、未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部、プロピレン系重合体(A2-3)のガラス繊維部分2.4質量部。
【0154】
〔実施例25〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、プロピレン系重合体(A2-3)14質量部、プロピレン系重合体(A2-4)14質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、酸化マグネシウム(B-2)70質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0155】
なお、プロピレン系重合体(A2-3)は前述の通りガラス繊維20質量%配合している。プロピレン系重合体(A2-3)のうちガラス繊維を除いた部分(PP部分)、プロピレン系重合体(A2-4)および酸化マグネシウム(B-2)の合計量を100質量部として計算した時の配合比は以下の通りである。プロピレン系重合体(A2-3)のPP部分11.5質量部、プロピレン系重合体(A2-4)14.4質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.1質量部、酸化マグネシウム(B-2)72質量部、未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部、プロピレン系重合体(A2-3)のガラス繊維部分2.9質量部。
【0156】
〔実施例26〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、プロピレン系重合体(A2-3)14質量部、プロピレン系重合体(A2-4)14質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、酸化マグネシウム(B-2)70質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)1.0質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0157】
なお、プロピレン系重合体(A2-3)は前述の通りガラス繊維20質量%配合している。プロピレン系重合体(A2-3)のうちガラス繊維を除いた部分(PP部分)、プロピレン系重合体(A2-4)および酸化マグネシウム(B-2)の合計量を100質量部として計算した時の配合比は以下の通りである。プロピレン系重合体(A2-3)のPP部分11.5質量部、プロピレン系重合体(A2-4)14.4質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.1質量部、酸化マグネシウム(B-2)72質量部、未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)1.0質量部、プロピレン系重合体(A2-3)のガラス繊維部分2.9質量部。
【0158】
〔実施例27〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、エチレン系重合体(A1-2)33質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、酸化マグネシウム(B-2)65質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0159】
〔実施例28〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4-1)35.0質量部、酸化マグネシウム(B-2)65質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0160】
〔実施例29〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4-1)30質量部、酸化マグネシウム(B-2)70質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製した。また、耐水性区分0及び耐光性区分0における抗菌性持続性試験を上記に記載の方法で実施した。
結果を表1に示す。
【0161】
〔実施例30〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A4-1)25質量部、酸化マグネシウム(B-2)75質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0162】
〔実施例31〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、ABS樹脂(A5-1)35質量部、酸化マグネシウム(B-2)65質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。
【0163】
〔実施例32〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、ABS樹脂(A5-1)30質量部、酸化マグネシウム(B-2)70質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。また、耐水性区分0及び耐光性区分0における抗菌性持続性試験を上記に記載の方法で実施した。
【0164】
〔実施例33〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、ABS樹脂(A5-1)25質量部、酸化マグネシウム(B-2)75質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製した。
結果を表1に示す。
【0165】
〔比較例1〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、プロピレン系重合体(A2-2)68質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、酸化マグネシウム(B-2)30質量部、および未変性ポリオレフィン系ワックス(C-1)0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。比較例1により得られた組成物は、熱伝導率が低いことに起因する熱が伝わりにくいため、陶器のような高級感が得られない。
【0166】
〔比較例2〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、プロピレン系重合体(A2-2)23質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、酸化マグネシウム(B-2)75質量部、および変性ポリオレフィン系ワックス0.6質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。比較例2により得られた組成物は、荷重たわみ温度が低下し物性低下した。これは、変性ポリオレフィン系ワックスの酸価が低いため、金属酸化物(以下、フィラーともいう。)との水素結合が弱く、フィラーが樹脂中に均一に分散しないためだと考えられる。一方、実施例で用いた未変性ポリオレフィン系ワックス(C)は酸価が0であるためフィラーとの水素結合は弱くなるが、バインダーとして働いている少量の樹脂中での相互作用が強くなるため、得られる組成物の荷重たわみ温度や物性は良好である、と考えられる。
【0167】
〔比較例3〕
熱可塑性樹脂組成物の原料を実施例1で用いた原料に替えて、プロピレン系重合体(A2-2)23質量部、エチレン系重合体(A1-3)2.0質量部、および酸化マグネシウム(B-2)75質量部を用いる以外は、実施例1と同様に行い物性試験用サンプルを作製し、上記、記載の方法で物性を測定した。
結果を表1に示す。比較例3により得られた組成物は、未変性ポリオレフィン系ワックス(C)を未配合のため、フィラーが凝集しやすくなり、均一に分散させにくくなるため、製造しにくくムラができやすくなり混錬性および樹脂流動性(MFR)で劣るものとなった。
【0168】
【表1-1】
【0169】
【表1-2】
【0170】
【表1-3】
【0171】
なお、表1(実施例21)における「※1」は、熱可塑性樹脂組成物が流れすぎて測定できなかったことを表す。
【0172】
【表2】
【0173】
【表3】