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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】可塑剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20241217BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20241217BHJP
   C08K 5/12 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/10
C08K5/12
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023539898
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 KR2021019970
(87)【国際公開番号】W WO2022145933
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0186411
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0174063
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ソリューションズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヒ-ラ・クァク
(72)【発明者】
【氏名】ジェソン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スンミン・リュ
(72)【発明者】
【氏名】ミュン-イク・ユ
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-152932(JP,A)
【文献】特開2016-008255(JP,A)
【文献】特表2017-533305(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0145186(US,A1)
【文献】特表2018-525468(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0140084(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第104496819(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1可塑剤として再生フタレート系化合物;および
第2可塑剤として純粋なシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物および/または再生シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物;を含む可塑剤組成物であって、
前記第1可塑剤を可塑剤組成物100重量部に対して95重量部未満で含み、
酸価が0.25KOH mg/g以下である
可塑剤組成物。
【請求項2】
前記可塑剤組成物100重量部は、
前記第1可塑剤20~85重量部、および
前記第2可塑剤5~70重量部を含む、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項3】
前記第1可塑剤は、再生ジブチルフタレート、再生ジヘキシルフタレート、再生ジオクチルフタレート、再生ジ-n-オクチルフタレート、再生ジイソノニルフタレート、再生ジイソデシルフタレート、再生ジブチルイソフタレート、再生ジオクチルイソフタレート、再生ジイソノニルイソフタレート、再生ジイソデシルイソフタレート、再生ジブチルテレフタレート、再生ジオクチルテレフタレート、再生ジイソノニルテレフタレート、および再生ジイソデシルテレフタレートからなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項4】
前記第1可塑剤は、酸価が0.05KOH mg/g~0.25KOH mg/gである、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項5】
前記シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物は、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート、ジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート、ブチル(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート、およびジブチルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートからなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項6】
前記第1可塑剤は再生ジオクチルテレフタレートであり、
前記第2可塑剤は純粋なジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートおよび/または再生ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートである、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項7】
フタレート系化合物;ポリオールエステル系化合物;トリメリテート系化合物;脂肪族エステル系化合物;ホスフェート系化合物;植物性油;エポキシ化油;およびアシル化モノグリセリド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物をさらに含む、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項8】
炭素排出量低減率が5%以上である、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項9】
STM E313の規格で測定したYellow index(YI、黄色度)が120以下である、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の可塑剤組成物;および
ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーン、変性シリコーン、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリケトン、ポリビニルブチラール、アクリル、合成ゴム樹脂、および熱可塑性エラストマーからなる群より選択される1種以上の樹脂を含む、樹脂組成物。
【請求項11】
樹脂100重量部に対して可塑剤組成物を1重量部~200重量部で含む、請求項10に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
ASTM E313の規格で測定したYellow index(YI、黄色度)が10~25である、請求項10に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
ASTM G154の方法で300時間UV老化後測定したYellow index(YI、黄色度)が10~65である、請求項10に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
請求項10に記載の樹脂組成物を含む、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年12月29日付の韓国特許出願第10-2020-0186411号および2021年12月7日付の韓国特許出願第10-2021-0174063号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、再生原料を含む可塑剤組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、環境保護および資源リサイクルのために、廃合成樹脂や合成樹脂の製造工程で発生する副産物から有効な資源を回収するための研究が行われている。また、合成樹脂製品の生産時に発生する炭素排出量を減らすための研究も活発に進められている。
【0004】
廃合成樹脂をリサイクルする技術としては、特に廃ポリエステルをリサイクルする方法が多く知られている。一例として、廃ポリエステルを触媒存在下で解重合して原料であるテレフタル酸、ジメチルテレフタレート、およびエチレングリコールで再生する方法が知られている。再生されたテレフタル酸およびジメチルテレフタレートは、エステル化反応またはエステル交換反応を経て可塑剤として有用な物質であるジオクチルテレフタレートなどで再生できる。また、中国特許公開第104230714号公報および同第104496819号公報は、ポリエステル減量工程の廃水からジオクチルテレフタレートを回収する方法を開示する。
【0005】
ジオクチルテレフタレートは広く使用される可塑剤であり、前記再生工程によって回収されたジオクチルテレフタレートも高分子樹脂の可塑剤として使用することができる。しかし、再生ジオクチルテレフタレートは、リサイクル過程で混入する不純物により純粋なジオクチルテレフタレートと比較して色が黄色く、臭いがきついという短所がある。そこで、再生ジオクチルテレフタレートは相対的に低品質の製品の製造時にしか活用できないという問題があった。
【0006】
したがって、ジオクチルテレフタレートなどフタレート系化合物を含む可塑剤組成物において、資源リサイクルおよび製造工程での炭素排出量の低減効果を得ることができ、かつ優れた品質を示す可塑剤組成物の開発が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】中国特許公開第104230714号
【文献】中国特許公開第104496819号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、廃ポリエステルやポリエステルの生産工程で発生する廃水から得られる再生フタレート系化合物を含み、かつ優れた物性を示す可塑剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、
第1可塑剤として再生フタレート系化合物;および
第2可塑剤として純粋なシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物および/または再生シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物;を含む可塑剤組成物であって、
前記第1可塑剤を可塑剤組成物100重量部に対して95重量部未満で含む、可塑剤組成物が提供される。
【0010】
この時、前記可塑剤100重量部は、前記第1可塑剤20~85重量部、および前記第2可塑剤5~70重量部を含むものであり得る。
【0011】
前記第1可塑剤としては、再生ジブチルフタレート、再生ジヘキシルフタレート、再生ジオクチルフタレート、再生ジ-n-オクチルフタレート、再生ジイソノニルフタレート、再生ジイソデシルフタレート、再生ジブチルイソフタレート、再生ジオクチルイソフタレート、再生ジイソノニルイソフタレート、再生ジイソデシルイソフタレート、再生ジブチルテレフタレート、再生ジオクチルテレフタレート、再生ジイソノニルテレフタレート、および再生ジイソデシルテレフタレートからなる群より選択される1種以上であり得る。
【0012】
前記第1可塑剤は、酸価が0.05KOH mg/g~0.25KOH mg/gの範囲であり得る。
【0013】
前記シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物は、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート、ジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート、ブチル(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート、およびジブチルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートからなる群より選択される1種以上であり得る。
【0014】
一例として、前記第1可塑剤は再生ジオクチルテレフタレートであり、前記第2可塑剤は純粋なジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートおよび/または再生ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートであり得る。
【0015】
前記可塑剤組成物は、フタレート系化合物;ポリオールエステル系化合物;トリメリテート系化合物;脂肪族エステル系化合物;ホスフェート系化合物;植物性油;エポキシ化油;およびアシル化モノグリセリド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物をさらに含むことができる。
【0016】
前記可塑剤組成物は、炭素排出量の低減率が5%以上であり得る。
【0017】
前記可塑剤組成物は、酸価が0.25KOH mg/g以下であり、ASTM E313の規格で測定したYellow index(YI、黄色度)が120以下であり得る。
【0018】
本発明の他の一実施形態によれば、前記可塑剤組成物;およびポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーン、変性シリコーン、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリケトン、ポリビニルブチラール、アクリル、合成ゴム樹脂、および熱可塑性エラストマーからなる群より選択される1種以上の樹脂を含む樹脂組成物が提供される。
【0019】
前記樹脂組成物は、前記樹脂100重量部に対して前記可塑剤組成物を1重量部~200重量部で含むものであり得る。
【0020】
前記樹脂組成物は、ASTM E313の規格で測定したYellow index(YI、黄色度)が10~25であり、および/またはASTM G154の方法で300時間UV老化後に測定したYellow index(YI、黄色度)が10~65であり得る。
【0021】
本発明のさらに他の一実施形態によれば、前記樹脂組成物を含む成形品が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る可塑剤組成物は、再生フタレート系化合物を含み、かつ再生原料特有の黄色が少なく、臭いが少なく、ゲル化特性、可塑化効率および耐候性に優れ、汎用可塑剤として使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書で使用される用語は単に例示的な実施形態を説明するために使用されたものであり、本発明を限定することを意図しない。単数の表現は文脈上明白に異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。
【0024】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を例示して以下で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0025】
以下、本発明の可塑剤組成物、これを含む樹脂組成物、および成形品についてより詳しく説明する。
【0026】
可塑剤組成物
【0027】
第1可塑剤
本発明の可塑剤組成物は、第1可塑剤として再生フタレート系化合物を含む。
【0028】
本発明で再生フタレート系化合物は、純粋原料から合成されたものではなく、廃棄物から再加工を経て回収したフタレート系化合物を意味する。
【0029】
この時、フタレート系化合物は、下記化学式1で表される化合物を意味する:
【化1】
前記化学式1中、
およびRはそれぞれ独立して、炭素数4~12の直鎖状または分枝状アルキル基である。
【0030】
好ましくは、RおよびRはそれぞれ独立して、n-ブチル、n-ヘキシル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、イソノニル、またはイソデシルであり得る。
【0031】
前記化学式1のフタレート系化合物は、置換基の位置によって下記化学式1-1~1-3で表される。
【0032】
【化2】
【0033】
前記化学式1-1~1-3中、RおよびRは化学式1で定義した通りである。
【0034】
前記化学式1-1はフタレート化合物であり、前記化学式1-2はイソフタレート化合物であり、前記化学式1-3はテレフタレート化合物である。
【0035】
前記化学式1-1で表されるフタレート化合物の具体的な例としては、ジブチルフタレート(DBP;dibutyl phthalate)、ジヘキシルフタレート(DHP;dihexyl phthalate)、ジオクチルフタレート(DOP;dioctyl phthalate、またはdi(2-ethylhexyl)phthalate)、ジ-n-オクチルフタレート(DnOP;di-n-octyl phthalate)、ジイソノニルフタレート(diisononyl phthalate)、またはジイソデシルフタレート(DIDP;diisodecyl phthalate)などが挙げられる。
【0036】
前記化学式1-2で表されるイソフタレート化合物の具体的な例としては、ジブチルイソフタレート(DBIP;dibutyl isophthalalate)、ジオクチルイソフタレート(DOIP;dioctyl isophthalate、またはdi(2-ethylhexyl)iso phthalate)、ジイソノニルイソフタレート(DINIP;diisononyl isophthalate)、またはジイソデシルイソフタレート(DIDIP;diisodecyl isophthalate)などが挙げられる。
【0037】
前記化学式1-3で表されるテレフタレート化合物の具体的な例としては、ジブチルテレフタレート(DBTP;dibutyl terephthalate)、ジオクチルテレフタレート(DOTP;dioctyl terephthalate、またはdi(2-ethylhexyl)terephthalate)、ジイソノニルテレフタレート(DINTP;diisononyl terephthalate)、またはジイソデシルテレフタレート(DIDTP;diisodecyl terephthalate)などが挙げられる。
【0038】
本発明の再生フタレート系化合物は、上述したフタレート化合物、イソフタレート化合物、およびテレフタレート化合物を単独、または混合したものであり得る。一実施形態において、前記再生フタレート系化合物としては、再生ジブチルフタレート、再生ジヘキシルフタレート、再生ジオクチルフタレート、再生ジ-n-オクチルフタレート、再生ジイソノニルフタレート、再生ジイソデシルフタレート、再生ジブチルイソフタレート、再生ジオクチルイソフタレート、再生ジイソノニルイソフタレート、再生ジイソデシルイソフタレート、再生ジブチルテレフタレート、再生ジオクチルテレフタレート、再生ジイソノニルテレフタレート、および再生ジイソデシルテレフタレートからなる群より選択される1種以上を使用することができる。好ましくは、前記再生フタレート系化合物としては再生ジオクチルテレフタレートを使用することができる。
【0039】
本発明で使用される再生フタレート系化合物は市販品を使用するか、または公知の方法を用いて廃棄物から得ることができる。
【0040】
一例として、前記再生フタレート系化合物は、廃ポリエステルを解重合して芳香族ジカルボン酸またはそのエステルを得て、これを適切なアルコールと反応させて得られたものであり得る。
【0041】
または、ポリエステル繊維のアルカリ減量加工時に排出される廃水や純粋なテレフタレート系化合物を製造する工程で発生する廃水、ろ過後の残存物などの廃棄物質からフタル酸を抽出し、これをアルコールと反応させて再生フタレート系化合物を得ることができる。
【0042】
本発明で前記再生フタレート系化合物は、可塑剤組成物の総100重量部に対して95重量部未満で含まれる。
【0043】
再生フタレート系化合物は、廃棄物から再生される過程で混入する不純物を含み、黄色を帯び、油臭いなどの悪臭がする特性がある。また、再生フタレート系化合物は、酸価が高い場合が多い。このような問題によって再生フタレート系化合物は色や臭いなどを重要視する高品質の製品の製造時には活用が難しい問題がある。
【0044】
そこで、本発明では可塑剤組成物100重量部に対して再生フタレート系化合物の含有量を95重量部未満に制御し、再生フタレート系化合物と共に第2可塑剤として純粋なあるいは再生シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物を含むことで、再生フタレート系化合物に由来する色相問題および悪臭問題を解決した。
【0045】
好ましくは、再生フタレート系化合物は、可塑剤組成物100重量部に対して85重量部以下、または70重量部以下であり、かつ20重量部以上、30重量部以上、40重量部以上、または50重量部以上で含まれる。
【0046】
一方、上述のように再生フタレート系化合物は、純粋な可塑剤に比べて高い酸価(Acid value)を有する差異がある。具体的には、前記再生フタレート系化合物の酸価は0.05KOH mg/g以上、0.1KOH mg/g以上、または0.15KOH mg/g以上であり、かつ0.25KOH mg/g以下、0.2KOH mg/g以下、または0.18KOH mg/g以下であり得る。
【0047】
このように再生フタレート系化合物は、従来の可塑剤に比べて高い酸価を示し、色が黄色く、臭いが多少きついという短所があるが、熱安定性およびゲル化速度は、純粋なフタレート系化合物に比べて約5%さらに向上する特徴がある。本発明の可塑剤組成物は純粋なフタレート系化合物の代わりに再生フタレート系化合物を主として使用し、これと共に第2可塑剤として純粋なあるいは再生シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物を含むため、再生原料を含むことによる色相特性および臭い問題を補完し、ゲル化速度はさらに向上させることができる。
【0048】
ただし、再生フタレート系化合物の酸価が0.25KOH mg/gを超えて過度に高い場合、可塑剤組成物の色が過度に黄色くなるか、臭いがひどくなり、耐可塑剤移行性に劣るので、上記酸価の範囲を維持することが好ましい。
【0049】
この時、酸価は、試料1gに含まれている酸を中和するのに必要な水酸化カリウム(KOH)の重量(mg)であり、0.1Nアルコール性KOH溶液で試料溶液を滴定して求められる。
【0050】
第2可塑剤
本発明の可塑剤組成物は、シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物を第2可塑剤として含む。前記シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物としては、純粋原料から製造された純粋なシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物、廃棄物から再加工を経て回収した再生シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物、またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0051】
シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物は、再生フタレート系化合物と共に使用され、可塑剤組成物の可塑化効率およびゲル化速度を向上させることができる。しかも、純粋なシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物および再生シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物はいずれも再生フタレート系化合物に比べて色が薄く、臭いが良好であるので、これらを第2可塑剤として使用して第1可塑剤の色相および臭い特性を補完することができる。
【0052】
前記シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物は、下記化学式2で表される:
【化3】
前記化学式2中、
R’およびR’はそれぞれ独立して、炭素数4~12の直鎖状または分枝状アルキル基である。
【0053】
好ましくは、R’およびR’はそれぞれ独立して、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、イソノニル基、2-プロピルヘプチル基、デシル基、またはイソデシル基である。好ましくは、R’およびR’はそれぞれ独立して、ブチル基、2-エチルヘキシル基、またはイソノニル基である。
【0054】
前記化学式2で表されるシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物は、置換基の位置によって下記化学式2-1~2-3で表される。
【化4】
前記化学式2-1~2-3中、R’およびR’は化学式2で定義した通りである。
【0055】
前記化学式2-1はシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート系化合物であり、前記化学式2-2はシクロヘキサン-1,3-ジカルボキシレート系化合物であり、前記化学式2-3はシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート系化合物である。
【0056】
一実施形態で、前記シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物は、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート、ジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート、ブチル(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート、およびジブチルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートからなる群より選択される1種以上であり得る。
【0057】
好ましくは、前記シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物は、下記化学式2-4で表されるジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(di(2-ethylhexyl)cyclohexane-1,4-dicarboxylate、DEHCH)であり得る:
【化5】
【0058】
前記DEHCHは色が透明で臭いがなく、常温および低温粘度が低くて優れた作業性能を実現することができ、ゲル化速度が速く、他のシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物に比べて可塑化効率および耐可塑剤移行性に優れている。したがって、DEHCHを使用する場合、可塑剤組成物の物性をさらに向上させることができる。
【0059】
前記純粋なシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物は市販の物質を使用するか、または純粋原料から公知の合成法を用いて製造することができる。
【0060】
第2可塑剤として純粋なシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物を使用すると第1可塑剤である再生フタレート系化合物の色相および臭い問題をさらに効果的に補完することができる。したがって、純粋なシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物を第2可塑剤として使用した可塑剤組成物は高品質の製品の製造により好適に使用することができる。
【0061】
前記再生シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物は市販の物質を使用するか、または公知の方法を用いて廃棄物から得ることができる。一例として、上述した方法で第1可塑剤である再生フタレート系化合物を得た後、これを水素添加反応で再生シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物を得ることができる。このような過程で純粋なフタレート系化合物の製造で消耗するエネルギーおよび排出される温室ガス量を低減させるので、第2可塑剤として再生シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物を使用する場合、可塑剤組成物の炭素排出量を顕著に低減させることができる。また、前記水素添加反応および続く精製工程で不純物が一部除去されるので、再生シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物は、再生フタレート系化合物に比べて色度に優れ、臭いが少ない特性を示し、したがって、第1可塑剤の特性を補完することができる。
【0062】
前記再生シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物は、純粋なシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物と同様にゲル化速度が速く、可塑化効率が高い特性を示すが、不純物によって純粋なシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物に比べて比較的黄色を帯び、酸価がさらに高い差異がある。
【0063】
具体的には、前記再生シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物の酸価は0.05KOH mg/g超0.3KOH mg/g以下であり得る。前記純粋なシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物は、酸価が0.1KOH mg/g以下、または0.05KOH mg/g以下であり、酸価は低いほど優れたもので、理論的に0KOH mg/gであり得る。
【0064】
前記酸価は、試料1gに含まれている酸を中和するのに必要な水酸化カリウム(KOH)の重量(mg)であり、0.1Nアルコール性KOH溶液で試料溶液を滴定して求められる。
【0065】
前記第2可塑剤は、可塑剤組成物100重量部に対して5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、または30重量部以上であり、かつ70重量部以下、60重量部以下、50重量部以下で含まれることが好ましい。
【0066】
前記第2可塑剤の含有量が可塑剤組成物100重量部に対して5重量部未満であれば再生フタレート系化合物の物性を補完するのに不足しうる。また、可塑剤組成物100重量部に対して前記第2可塑剤が70重量部を超える場合、再生フタレート系化合物の含有量が相対的に少なくなり、フタレート系化合物を含む可塑剤としての物性を確保できず、再生フタレート系化合物を使用することによる炭素発生量の低減効果を期待しにくい。
【0067】
本発明の一実施形態で、前記第1可塑剤は再生ジオクチルテレフタレートであり、前記第2可塑剤はジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートであり得る。この時、前記ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートは、純粋なジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート、再生ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0068】
一方、本発明の可塑剤組成物は、前記第1可塑剤および第2可塑剤以外に、他の可塑剤をさらに含まない。具体的には、前記可塑剤組成物は、第1可塑剤20~85重量部および第2可塑剤5~70重量部を含むものであり得る。または、前記可塑剤組成物は、第1可塑剤50~70重量部および第2可塑剤30~50重量部を含むものであり得る。
【0069】
好ましくは、前記可塑剤組成物は、第1可塑剤として再生ジオクチルテレフタレートを20~85重量部および第2可塑剤としてジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートを5~70重量部で含むものであり得る。より好ましくは、前記可塑剤組成物は、第1可塑剤として再生ジオクチルテレフタレートを50~70重量部および第2可塑剤としてジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートを30~50重量部で含むものであり得る。この時、前記ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートは、純粋なジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート、再生ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0070】
追加の可塑剤
本発明の可塑剤組成物は、前記第1可塑剤および第2可塑剤に加えて、追加の可塑剤をさらに含むことができる。
【0071】
前記追加の可塑剤は、通常高分子樹脂の可塑剤として使用される物質を制限なく使用することができ、例えば、フタレート系化合物;ポリオールエステル系化合物;トリメリテート系化合物;脂肪族エステル系化合物;ホスフェート系化合物;植物性油;エポキシ化油;およびアシル化モノグリセリド化合物;からなる群より選択される1種以上であり得る。
【0072】
前記フタレート系化合物は前記化学式1で表される化合物で、具体的には、ジブチルフタレート、ジノーマルヘキシルフタレート、ジイソヘプチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2-エチルヘキシル)フタレート、ジヘプチルノニルフタレート、ジノーマルオクチルデシルフタレート、ジヘプチルノニルウンデシルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジノニルフタレート、ジノーマルノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジノーマルノニルデシルウンデシルフタレート、ジノニルウンデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジイソウンデシルドデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジブチルテレフタレート、ブチルオクチルテレフタレート、ジ(2-エチルヘキシル)テレフタレート、およびブチルベンジルフタレートからなる群より選択される1種以上であり得る。
【0073】
前記ポリオールエステル系化合物は、ポリオールとカルボン酸のエステル化によって得られる化合物である。
【0074】
前記ポリオールは炭素数3~8のポリオールであって、例えば、プロパン-1,3-ジオール、プロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ソルビトール、イソソルビド、エリトリトール、トレイトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、フシトール、マンニトール、ガラクチトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、またはグルコースを使用することができる。
【0075】
前記カルボン酸の例としては、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、または吉草酸などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
具体的には、前記ポリオールエステル系化合物としては、ペンタエリスリトールテトラバレレート(Pevalen(登録商標))を使用することができる。
【0077】
前記トリメリテート系化合物の例としては、トリ-(2-エチルヘキシル)トリメリテート、トリメチルトリメリテート、トリヘキシルトリメリテート、トリヘプチルトリメリテート、トリ-(n-オクチル、n-デシル)トリメリテート、およびトリ-(ヘプチル、ノニル)トリメリテートからなる群より選択される1種以上が挙げられる。
【0078】
前記脂肪族エステル系化合物は、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸などの脂肪族カルボン酸化合物に由来するエステル化合物であり得る。前記脂肪族エステル系化合物の例としては、ジメチルアジペート、モノメチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジヘプチルノニルアジペート、ジ(2-エチルヘキシル)アジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ(2-エチルヘキシル)セバケート、ジブチルセバケート、ジ(2-エチルヘキシル)アゼレート、ジブチルマレエート、およびジイソブチルマレエートからなる群より選択される1種以上が挙げられる。
【0079】
前記ホスフェート系化合物は、トリエチルホスフェート、トリクレシルホスフェート、トリ-2-エチルヘキシルホスフェート、トリトリルホスフェート、およびトリキシリルホスフェートからなる群より選択される1種以上であり得る。
【0080】
前記植物性油の例としては、大豆油、ヒマシ油、亜麻仁油、パーム油、カノーラ油および亜麻仁油からなる群より選択される1種以上が挙げられる。
【0081】
前記エポキシ化油は、脂肪酸アルキルエステルをエポキシ化して製造されたエポキシ化された脂肪酸アルキルエステルであって、例えば、エポキシ化大豆油(epoxidized soybean oil)、エポキシ化ヒマシ油(epoxidized castor oil)、エポキシ化亜麻仁油(epoxidized linseed oil)、エポキシ化パーム油(epoxidized palm oil)、エポキシ化ステアリン酸(epoxidized stearate)、エポキシ化オレイン酸(epoxidized oleate)、エポキシ化トール油(epoxidized tall oil)、およびエポキシ化リノール酸(epoxidized linoleate)からなる群より選択される1種以上を使用することができる。
【0082】
前記アシル化モノグリセリド化合物は、グリセロールと脂肪酸が反応して製造されたモノグリセリドにアシル化反応を行って製造することができ、この時、脂肪酸としては、上述した脂肪族カルボン酸、植物性油などを使用することができる。
【0083】
前記追加の可塑剤は1種を単独で使用するか、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0084】
前記追加の可塑剤を含む場合、追加の可塑剤の含有量は、可塑剤組成物100重量部に対して1重量部以上、または5重量部以上であり、かつ30重量部以下、20重量部以下、または10重量部以下であり得る。追加の可塑剤の含有量が過度に高いと相対的に前記第1可塑剤および第2可塑剤の含有量が減少し、上述した炭素排出量の低減効果、熱安定性およびゲル化速度の向上効果を十分に得られないので、上記の範囲を満たすことが好ましい。
【0085】
前記本発明の可塑剤組成物は、再生フタレート系化合物を使用して炭素排出量を低減することができ、再生フタレート系化合物と共にシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物を含み、再生原料として使用しても色に優れ、悪臭が少なく、酸価が比較的低い。
【0086】
具体的には、前記可塑剤組成物は、酸価が0.25KOH mg/g以下、0.22KOH mg/g以下、または0.2KOH mg/g以下であり得る。酸価は低いほど品質に優れたもので、下限は限定されず、理論的には0KOH mg/gであり得る。特に、前記可塑剤組成物の酸価が高いことは可塑剤以外に不純物が多いという意味であり、不純物が多いと可塑剤の色が無色透明から黄色または茶色に変わるか、臭いがひどくなるか、または酸価が高い可塑剤を使用した完成品の耐移行性が悪くなる。したがって、前記可塑剤組成物は上記の酸価範囲を維持することが好ましい。
【0087】
また、前記可塑剤組成物は、ASTM標準D1209およびE313により測定した黄色度(Yellow Index)が120以下、100以下、または92以下であり得る。
【0088】
また、前記可塑剤組成物は、炭素排出量低減率が5%以上、または5%以上~40%以下であり得る。前記可塑剤組成物の炭素排出量低減率は、前記再生フタレート系化合物および/または再生シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物の代わりに純粋なフタレート系化合物および/または純粋なシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物を含む可塑剤組成物に対して算出した値で、純粋原料の代わりに再生原料を使用することによる炭素排出量低減率に相当する。
【0089】
具体的には、前記可塑剤組成物の炭素排出量低減率(%)は、下記式1のように計算することができる。
【0090】
[式1]
炭素排出量低減率(%)=100-[(A1/A2)×100]
上記式1中、
A1は、前記可塑剤組成物の炭素排出量(tCOeq/MT)を示し、
A2は、対照群の可塑剤組成物の炭素排出量(tCOeq/MT)を示す。
【0091】
具体的には、上記式1中、A1は炭素排出量低減率の測定対象である可塑剤組成物に含まれている各成分の組成比に応じた炭素排出量(tCOeq/MT)の総合に相当するものであり、A2はA1で算出した可塑剤組成物と同じ組成であり、再生原料(再生フタレート系化合物および/または再生シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物)の代わりに純粋原料(純粋なフタレート系化合物および/または純粋なシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物)を使用した対照群の可塑剤組成物の各成分の組成比に応じた炭素排出量(tCOeq/MT)の総合に相当するものである。ここで、前記炭素排出量の単位は、メートルトン(metric ton)当たりの総CO排出量の重量当量(eq)で表したものである。
【0092】
一例として、R-DOTPおよびDEHCHが50:50で含まれている可塑剤組成物の炭素排出量A1は、このような組成比に応じた各成分の炭素排出量の総合、つまり、R-DOTPの炭素排出量*0.5+DEHCHの炭素排出量*0.5と計算して0.568tCOeq/MTである。前記可塑剤組成物に対する対照群の可塑剤組成物は、DOTPおよびDEHCHが50:50で含まれている可塑剤組成物であり、その炭素排出量A2は、DOTPの炭素排出量*0.5+DEHCHの炭素排出量*0.5と計算して0.611tCOeq/MTである。したがって、上記式1によると、R-DOTPおよびDEHCHが50:50で含まれている可塑剤組成物の炭素排出量低減率は7.04%である。上記で可塑剤組成物に使用される各成分の炭素排出量は以下の値で計算した:
-再生ジオクチルテレフタレート(R-DOTP):0.485tCOeq/MT
-純粋なジオクチルテレフタレート(DOTP、またはPure-DOTP):0.571tCOeq/MT
-純粋なジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(DEHCH、またはPure-DEHCH):0.651tCOeq/MT
【0093】
前記可塑剤組成物に使用される各成分の炭素排出量は、製造会社から提供された値を参照するか、または各成分の製造工程と化学反応に基づいて算出して計算することができる。このような炭素排出量低減率の具体的な算出方法は、後述する実験例を参照することができる。
【0094】
好ましくは、前記可塑剤組成物の炭素排出量低減率は5%以上、5.5%以上、6%以上、6.5%以上、または7%以上であり、かつ40%以下、30%以下、または20%以下であり得る。
【0095】
上述した可塑剤組成物は樹脂に添加して使用するとゲル化特性、可塑化効率、および耐候性など物性に優れる。したがって、本発明の可塑剤組成物は様々な高分子樹脂に可塑剤として適用することができる。
【0096】
樹脂組成物
したがって、本発明の他の一実施形態によれば、前記可塑剤組成物;およびポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーン、変性シリコーン、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリケトン、ポリビニルブチラール、アクリル、合成ゴム樹脂、および熱可塑性エラストマーからなる群より選択される1種以上の樹脂;を含む樹脂組成物が提供される。
【0097】
前記樹脂組成物で樹脂および可塑剤の含有量は限定されず、使用される樹脂と所望の物性によって適切に調節することができるが、一例として、前記樹脂組成物は、樹脂100重量部に対して上述した可塑剤組成物を1~200重量部、または30~200重量部、または50~150重量部で含み得る。
【0098】
前記樹脂組成物は添加剤、例えば安定剤、充填剤および顔料からなる群より選択されるいずれか1つ以上をさらに含み得る。前記添加剤は、樹脂組成物で向上させたい物性によって好適に選択することができる。
【0099】
前記安定剤は、樹脂の物性変化を防止するために添加するもので、Ca-Zn系化合物、K-Zn系化合物、Ba-Zn系化合物、有機Tin系化合物;マタリック石鹸系化合物、フェノール系化合物、リン酸エステル系化合物、および亜リン酸エステル系化合物からなる群より選択されるいずれか1つ以上であるものを含む。
【0100】
本発明で用いられる安定剤としてより具体的には、Ca-Zn系化合物;K-Zn系化合物;Ba-Zn系化合物;メルカプチド(Mercaptide)系化合物、マレイン酸系化合物またはカルボン酸系化合物などの有機Tin系化合物;Mg-ステアレート、Ca-ステアレート、Pb-ステアレート、Cd-ステアレート、またはBa-ステアレートなどのマタリック石鹸系化合物;フェノール系化合物;リン酸エステル系化合物;または亜リン酸エステル系化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
前記充填剤は、樹脂組成物の生産性、乾燥状態の感触(Dry touch)、難燃性などを向上させる目的として用いられ、炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、カオリン、シリカ、アルミナ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、リン系化合物、メラミン系化合物、リン-メラミン複合化合物、ホウ素系難燃処理剤、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、nano-clay、または粘土からなる群より選択されるいずれか1つ以上であることを含む。
【0102】
前記顔料は、二酸化チタン、カーボンブラック、カドミウム系顔料などであり得る。
【0103】
本発明に係る樹脂組成物は、樹脂、可塑剤組成物および選択的に添加剤を使用して当業界で公知の方法によって製造することができ、その方法は特に限定されない。
【0104】
一実施形態で、前記樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂を含む塩化ビニル樹脂組成物であり得る。前記塩化ビニル樹脂組成物は、本発明に係る可塑剤組成物を含み、優れた色、ゲル化特性および耐候性を示すことができる。
【0105】
前記塩化ビニル樹脂は、塩化ビニル単量体が単独で重合したホモ重合体であるか、または塩化ビニル単量体およびこれと共重合可能な共単量体が重合した共重合体であり、これらのうちのいずれか1つまたは2つの混合物を塩化ビニル樹脂組成物の製造に使用することができる。
【0106】
前記塩化ビニル単量体と共重合可能な共単量体は、具体的には、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニルなどのビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテルなどのアルキル基を有するビニルエーテル(viny ether)類;塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸およびこれらの酸無水物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ブチルベンジルなどの不飽和カルボン酸エステル(ester)類;スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物;アクリロニトリルまたはメタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;エチレンまたはプロピレンなどのオレフィン類;またはジアリルフタレートなどの架橋性単量体などが挙げられ、これらのうちのいずれか1つまたは2つ以上の混合物を使用することができる。その中でも、塩化ビニル単量体との相溶性に優れ、また、重合後樹脂組成物を構成する可塑剤に対する相溶性を向上させることができることから、前記共単量体は酢酸ビニルなどを含むことがより好ましい。
【0107】
上述した通り、前記塩化ビニル樹脂は塩化ビニル単量体単独、または塩化ビニル単量体およびこれと共重合可能な共単量体を重合反応させて製造することができる。この時、重合方法は特に限定されず、懸濁重合、塊状重合、乳化重合、またはシード乳化重合など、本発明の属する技術分野で知られている通常の重合方法によって行うことができる。
【0108】
前記塩化ビニル樹脂の平均粒子の大きさおよび均一度は、重合時の条件を調節することで制御することができる。具体的には、懸濁重合または塊状重合によって製造されるストレート塩化ビニル樹脂は、平均粒子の大きさD50が50~400μmの範囲であり、乳化重合または微細懸濁重合によって製造されるペースト塩化ビニル樹脂は、平均粒子の大きさD50が100μm未満、好ましくは0.1~40μmであり得る。前記塩化ビニル樹脂の平均粒子の大きさD50は光学顕微鏡観察法、光散乱測定法などの通常の粒度分布測定方法により測定することができる。
【0109】
前記塩化ビニル樹脂のASTM D1895により測定されたかさ密度(Bulk Density)は0.30~0.70g/cm、または0.40~0.60g/cmの範囲であり得る。上記のかさ密度の範囲で可塑化効果および機械的物性にさらに優れる。
【0110】
前記塩化ビニル樹脂の重合度および重量平均分子量は、塩化ビニル樹脂組成物を構成する成分、特に、可塑剤との相溶性および塩化ビニル樹脂組成物の加工性に影響を及ぼすことができるが、重合時の重合条件の制御によって適切に調節することができる。
【0111】
具体的には、前記塩化ビニル樹脂は重合度が500~3、000であるか、または重量平均分子量(Mw)が25、000~300、000g/molであり得る。このような範囲の重合度および重量平均分子量を有する場合分散性に優れ、可塑剤との相溶性が良好で、塩化ビニル樹脂組成物の加工性を改善することができる。
【0112】
塩化ビニル樹脂の重合度が500未満であるか、重量平均分子量が25,000g/mol未満の場合、物性が不足して加工性および加工後の製品の耐久性が低下する恐れがあり、重合度が3、000を超えるか、重量平均分子量が300,000g/molを超える場合、分子量が高すぎて成形または加工が難しくなる。より具体的には、前記塩化ビニル樹脂は、重合度が700以上1,700未満であるか、または重量平均分子量(Mw)が45,000~250,000g/molであり得る。
【0113】
前記塩化ビニル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算値である。また、塩化ビニル樹脂の重合度はJIS K 6720-2によって測定することができる。
【0114】
一実施形態で、前記塩化ビニル樹脂はストレート塩化ビニル樹脂であり得る。
【0115】
また、一実施形態で、前記塩化ビニル樹脂としてPVCスクラップを使用することができる。PVCスクラップは、床材、ターポリン、カレンダーなどの廃PVC製品を粉砕などの加工によりパウダー形態で製造したもので、純粋なPVCの使用時と比較して炭素排出量をさらに低減することができる。前記PVCスクラップは市販品を使用するか、あるいは廃PVCから粉砕加工を経て製造して使用することができる。この時、前記PVCスクラップは、重金属および有毒物質を含まないものが環境にやさしい製品の製造に好適で、具体的には、廃シャーシやデコタイルを粉砕して得られたPVCスクラップを使用することが好ましい。一例として、前記PVCスクラップは、4種の重金属(Pb、Cd、Hg、六価クロム)の含有量が90mg/kg以下、50mg/kg以下、または25mg/kg以下であり、好ましくは0mg/kgであり得る。
【0116】
前記樹脂組成物はASTM E313の規格で測定したYellow index(YI、黄色度)が10~25であり、または22以下、または20以下であり、かつ15以上、または18以上であり得る。
【0117】
また、前記樹脂組成物はASTM G154の方法で300時間UV老化後測定したYellow index(YI、黄色度)が10~65であり、好ましくは64以下、63以下、または62.5以下であり、かつ20以上、30以上、40以上であり得る。
【0118】
また、前記樹脂組成物は、炭素排出量低減率が1.5%以上または1.5%以上~60%以下であり得る。前記樹脂組成物の炭素排出量低減率は、前記再生フタレート系化合物および/または再生シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物の代わりに純粋なフタレート系化合物および/または純粋なシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物を含む可塑剤組成物を使用した塩化ビニル樹脂組成物に対して算出した値で、純粋原料の代わりに再生原料を使用することによる炭素排出量低減率に相当する。
【0119】
具体的には、前記樹脂組成物の炭素排出量低減率(%)は、下記式2のように計算することができる。
[式2]
炭素排出量低減率(%)=100-[(A3/A4)×100]
上記式2中、
A3は、前記樹脂組成物の炭素排出量(tCOeq/MT)を示し、
A4は、対照群の樹脂組成物の炭素排出量(tCOeq/MT)を示す。
【0120】
具体的には、上記式2中、A3は炭素排出量低減率の測定対象である樹脂組成物に含まれている各成分の組成比に応じた炭素排出量(tCOeq/MT)の総合に相当するものであり、A4はA3で算出した樹脂組成物と同じ組成であり、再生原料(再生フタレート系化合物および/または再生シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物)の代わりに純粋原料(純粋なフタレート系化合物および/または純粋なシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物)を使用した樹脂組成物の各成分の組成比に応じた炭素排出量(tCOeq/MT)の総合に相当するものである。ここで、前記炭素排出量の単位は、メートルトン(metric ton)当たりの総CO排出量の重量当量(eq)で表したものである。
【0121】
一例として、前記樹脂組成物がポリ塩化ビニル(PVC、ハンファ・ソリューションズP-1000)100重量部、R-DOTPおよびDEHCHが50:50で含まれている可塑剤30重量部、および熱安定剤2重量部で構成された塩化ビニル樹脂組成物の場合、塩化ビニル樹脂組成物に含まれている各成分PVC、R-DOTP、DEHCH、およびBa/Zn系熱安定剤は、それぞれ0.758、0.114、0.114、および0.015の重量比を有する。この時、組成物中の含有量が微小な熱安定剤の炭素排出量を排除し、PVC、R-DOTP、およびDEHCHの炭素排出量のみを考慮すると、前記樹脂組成物の炭素排出量A3は、樹脂組成物に含まれている各成分PVC、R-DOTP、およびDEHCHの重量比0.758、0.114、および0.114に基づいて、このような組成比に応じた各成分の炭素排出量の総合(つまり、PVCの炭素排出量0.758+R-DOTPの炭素排出量0.114+DEHCHの炭素排出量0.114)を計算して0.267tCOeq/MTとなる。前記塩化ビニル樹脂組成物に対する対照群の樹脂組成物はPVC、DOTP、およびDEHCHがそれぞれ0.758、0.114、および0.114の重量比で混合した組成物であり、その炭素排出量(A4、つまり、PVCの炭素排出量0.758+DOTPの炭素排出量0.114+DEHCHの炭素排出量0.114)は0.277tCOeq/MTである。したがって、上記式2によると、上記の塩化ビニル樹脂組成物の炭素排出量低減率は3.53%である。上記で樹脂組成物に使用される各成分の炭素排出量は下記値で計算した:
-ポリ塩化ビニル(PVC、ハンファ・ソリューションズP-1000):0.182tCOeq/MT
-再生ジオクチルテレフタレート(R-DOTP):0.485tCOeq/MT
-純粋なジオクチルテレフタレート(DOTP、またはPure-DOTP):0.571tCOeq/MT
-純粋なジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(DEHCH、またはPure-DEHCH):0.651tCOeq/MT
【0122】
前記樹脂組成物に使用される各成分の炭素排出量は、製造会社から提供された値を参照するか、または各成分の製造工程と化学反応に基づいて算出して計算することができる。
【0123】
このような炭素排出量低減率の具体的な算出方法は、後述する実験例を参照することができる。
【0124】
前記炭素排出量低減率は、可塑剤組成物の組成および使用される樹脂の種類によって変わる。一例として、前記樹脂組成物の炭素排出量低減率は1.8%以上、または2%以上、または3%以上、または3.5%以上、または4.2%以上、または5%以上であり得る。もし、純粋原料から製造された樹脂を使用する場合、樹脂組成物の炭素排出量低減率は28%以下、または25%以下、または22%以下、または20%以下、または18%以下、または16%以下、または11%以下であり得る。もし、PVCスクラップなど再生樹脂を使用する場合、炭素排出量低減率は60%以下、または55%以下であり得る。
【0125】
前記樹脂組成物は、上述のような優れた色と臭い特性を有し、かつ、優れた熱安定性と共に速いゲル化速度を有する。
【0126】
一方、本発明の他の一側面によれば、前記樹脂組成物を含む成形品が提供される。
【0127】
前記成形品は、食品包装用フィルム(例えば、ラップ)、工業用フィルム、コンパウンド、デコシート、デコタイル、軟質シート、硬質シート、電線およびケーブル、壁紙、発泡マット、レザー、床材、ターポリン、手袋、シーラント、冷蔵庫などのガスケット、ホース、医療機器、ジオグリード(geogrid)、メッシュターポリン、玩具用品、文具用品、絶縁テープ、衣類コーティング剤、衣類または文具用などで使用されるラベル、ボトルキャップライナー、工業用またはその他用途の栓、人工エサ、電子機器内部品(例えば、sleeve)、自動車内装材、接着剤、コーティング剤などの製造に使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0128】
以下、下記の実施例によって本発明をさらに詳しく説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、発明の権利範囲がこれによって定まるものではない。
【0129】
[実施例]
実施例1
中国Runzenengyuan社の再生ジオクチルテレフタレート(R-DOTP、酸価0.175KOH mg/g)と、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(DEHCH、ハンファ・ソリューションズ、Eco-DEHCH)を50:50の重量比で混合して可塑剤組成物を製造した。
【0130】
ポリ塩化ビニル(ハンファ・ソリューションズ、P-1000F、重合度1000±50、Bulk Density0.55±0.04g/cm)100重量部に対して、前記可塑剤組成物を30重量部、Ba/Zn系熱安定剤2重量部を添加した後、ロールミルで混練して塩化ビニル樹脂組成物を製造した。
【0131】
実施例2
中国Runzenengyuan社の再生ジオクチルテレフタレート(R-DOTP)と、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(DEHCH)を60:40の重量比で混合して可塑剤組成物を製造した。
【0132】
ポリ塩化ビニル(ハンファ・ソリューションズ、P-1000F)100重量部に対して、前記可塑剤組成物を30重量部、Ba/Zn系熱安定剤2重量部を添加した後、ロールミルで混練して塩化ビニル樹脂組成物を製造した。
【0133】
実施例3
中国Runzenengyuan社の再生ジオクチルテレフタレート(R-DOTP)と、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(DEHCH)を70:30の重量比で混合して可塑剤組成物を製造した。
【0134】
ポリ塩化ビニル(ハンファ・ソリューションズ、P-1000F)100重量部に対して、前記可塑剤組成物を30重量部、Ba/Zn系熱安定剤2重量部を添加した後、ロールミルで混練して塩化ビニル樹脂組成物を製造した。
【0135】
実施例4
中国Runzenengyuan社の再生ジオクチルテレフタレート(R-DOTP、酸価0.175KOH mg/g)と、前記R-DOTPを水素化して製造した再生ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(R-DEHCH、酸価0.250KOH mg/g)を50:50の重量比で混合して可塑剤組成物を製造した。
【0136】
ポリ塩化ビニル(ハンファ・ソリューションズ、P-1000F、重合度1000±50、Bulk Density0.55±0.04g/cm)100重量部に対して、前記可塑剤組成物を60重量部、Ba/Zn系熱安定剤3重量部を添加した後、ロールミルで混練して塩化ビニル樹脂組成物を製造した。
【0137】
実施例5
再生ポリ塩化ビニル(PVCスクラップ:廃PVC床材、ターポリン、カレンダー製品を粉砕などの加工によりPowder形態に加工したもの)100重量部に対して、前記実施例4の可塑剤組成物を60重量部、Ba/Zn系熱安定剤3重量部を添加した後、ロールミルで混練して塩化ビニル樹脂組成物を製造した。
【0138】
実施例6
R-DOTPおよびR-DEHCHの重量比を70:30にしたことを除いて、実施例4と同様の方法で可塑剤組成物を製造した。その後、前記可塑剤組成物を使用して実施例4と同様の方法で塩化ビニル樹脂組成物を製造した。
【0139】
比較例1
中国Runzenengyuan社の再生ジオクチルテレフタレート(R-DOTP)を可塑剤として、実施例1と同様の方法で塩化ビニル樹脂組成物を製造した。
【0140】
比較例2
中国Runzenengyuan社の再生ジオクチルテレフタレート(R-DOTP)と、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(DEHCH)を95:5の重量比で混合して可塑剤組成物を製造した。
【0141】
その後、前記可塑剤組成物を使用して実施例1と同様の方法で塩化ビニル樹脂組成物を製造した。
【0142】
比較例3
再生ジオクチルテレフタレートの代わりに純粋なジオクチルテレフタレート(DOTP、ハンファ・ソリューションズ、SP-390)を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で可塑剤組成物および塩化ビニル樹脂組成物を製造した。
【0143】
[実験例]
前記実施例および比較例の各可塑剤組成物および塩化ビニル樹脂組成物を下記の方法で評価し、その結果を表1に記載した。
【0144】
(1)炭素排出量低減率(%)
前記実施例および比較例の可塑剤組成物に対して下記式1により炭素排出量低減率(%)を計算した。
[式1]
炭素排出量低減率(%)=100-[(A1/A2)×100]
上記式1中、
A1は、前記可塑剤組成物の炭素排出量(tCOeq/MT)を示し、
A2は、対照群の可塑剤組成物の炭素排出量(tCOeq/MT)を示す。
【0145】
具体的には、上記式1中、A1は炭素排出量低減率の測定対象である可塑剤組成物に含まれている各成分の組成比に応じた炭素排出量(tCOeq/MT)の総合に相当するものであり、A2はA1で算出した可塑剤組成物と同じ組成であり、再生原料(再生フタレート系化合物および/または再生シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物)の代わりに純粋原料(純粋なフタレート系化合物および/または純粋なシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物)を使用した対照群の可塑剤組成物の各成分の組成比に応じた炭素排出量(tCOeq/MT)の総合に相当するものである。ここで、前記炭素排出量の単位は、メートルトン(metric ton)当たりの総CO排出量の重量当量(eq)で表したものである。
【0146】
また、前記実施例および比較例の塩化ビニル樹脂組成物に対して下記式2により炭素排出量低減率(%)を計算した。
[式2]
炭素排出量低減率(%)=100-[(A3/A4)×100]
上記式2中、
A3は、前記樹脂組成物の炭素排出量(tCOeq/MT)を示し、
A4は、対照群の樹脂組成物の炭素排出量(tCOeq/MT)を示す。
【0147】
具体的には、上記式2中、A3は炭素排出量低減率の測定対象である樹脂組成物に含まれている各成分の組成比に応じた炭素排出量(tCOeq/MT)の総合に相当するものであり、A4はA3で算出した樹脂組成物と同じ組成であり、再生原料(再生フタレート系化合物および/または再生シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物)の代わりに純粋原料(純粋なフタレート系化合物および/または純粋なシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物)を使用した樹脂組成物の各成分の組成比に応じた炭素排出量(tCOeq/MT)の総合に相当するものである。ここで、前記炭素排出量の単位は、メートルトン(metric ton)当たりの総CO排出量の重量当量(eq)で表したものである。
【0148】
一例として、実施例1の可塑剤組成物は、R-DOTPおよびDEHCHが50:50で含まれたもので、このような組成比に応じた各成分の炭素排出量総合(A1、つまり、R-DOTPの炭素排出量0.5+DEHCHの炭素排出量0.5)は0.568tCOeq/MTである。これに対する対照群は比較例3の可塑剤であり、その炭素排出量A2は0.611tCOeq/MTである。したがって、上記式1によると、実施例1の可塑剤組成物の炭素排出量低減率は7.04%である。実施例4の可塑剤組成物も比較例3の可塑剤組成物を対照群として、前記と同様の方法で炭素排出量および炭素排出量低減率を求めることができる。
【0149】
また、実施例1の塩化ビニル樹脂組成物は、ポリ塩化ビニル(PVC)100重量部にR-DOTPおよびDEHCHが50:50で含まれている可塑剤30重量部を使用したもので、塩化ビニル樹脂組成物に含まれている各成分PVC、R-DOTP、DEHCH、およびBa/Zn系熱安定剤は、それぞれ0.758、0.114、0.114、および0.015の重量比を有する。この時、組成物中の含有量が相対的に少ない熱安定剤の炭素排出量を排除し、PVC、R-DOTP、およびDEHCHの炭素排出量のみを考慮すると、前記組成比に応じた各成分の炭素排出量の総合A3は0.267tCOeq/MTである。これに対する対照群である比較例3の塩化ビニル樹脂組成物の炭素排出量A4は0.277tCOeq/MTであるので、式2によると、実施例1の塩化ビニル樹脂組成物の炭素排出量低減率は3.53%である。
【0150】
ここで、実施例および比較例の可塑剤組成物および塩化ビニル樹脂組成物に使用される各成分の炭素排出量は次の通りである:
-ポリ塩化ビニル(PVC、ハンファ・ソリューションズ、P-1000):0.182tCOeq/MT
-再生ポリ塩化ビニル(PVCスクラップ):0tCOeq/MT
-再生ジオクチルテレフタレート(R-DOTP):0.485tCOeq/MT
-純粋なジオクチルテレフタレート(DOTP、またはPure-DOTP):0.571tCOeq/MT
-再生ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(R-DEHCH):0.520tCOeq/MT
-純粋なジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(DEHCH、またはPure-DEHCH):0.651tCOeq/MT
【0151】
その中で、ポリ塩化ビニル(PVC)および純粋なジオクチルテレフタレート(DOTP、またはPure-DOTP)の炭素排出量は製造会社から提供された値を参照した。また、再生ジオクチルテレフタレート(R-DOTP)の炭素排出量は、R-DOTPに使用された再生PTA(Pured terephthalic acid)の炭素排出量を純粋なPTAの70%で、PTAと2-EH(2-ethylhexanol)の炭素排出量は同様にして計算した値である。PTAと2-EHはDOTPを製造する原料である。
【0152】
(2)可塑剤組成物の色相(APHA Color)
可塑剤組成物の色相はASTM D1209およびE313によりAPHA測定装置を用いて測定した。
【0153】
(3)可塑剤組成物の酸価
可塑剤組成物の酸価は0.1N KOH水溶液と指示薬を用いて次の数式で計算した。
[式3]
酸価(Acid Value)=(滴定量×5.6×factor)/試料量
上記式2中、「滴定量」は、可塑剤の滴定に使用された0.1N KOH水溶液の消費量(ml)であり、「factor」は、KOH水溶液の補正係数(0.1N KOH水溶液の場合、前記factorは1である)であり、「試料量」は可塑剤試料の重量(g)を示す。
【0154】
(4)ゲル化速度
塩化ビニル樹脂組成物54gを95℃のBrabender Mixerに投入、30rpmで10分間混合した。ミキサーでの加工時間中のトルクの変化によって樹脂のゲル化時間を分析した。
【0155】
(5)硬度(可塑化効率)
塩化ビニル樹脂組成物をRoll mill加工(170℃、3分)とPress加工(180℃、8分)を順次進行して厚さ6mmの平板を製造した。
ASTM D2240方法に基づいて、硬度試験機(Shore D Type)の針を試験片の1箇所に完全に下げて5秒後の硬度値を読み、それぞれの試験片に対して3箇所を試験した後、その平均値を取り、可塑化効率を示す指標として使用した。
【0156】
(6)塩化ビニル樹脂組成物の色相
塩化ビニル樹脂組成物をRoll mill加工(170℃、3分)とPress加工(180℃、8分)を順次進行して厚さ6mmの平板を製造した。
【0157】
このように製造された試験片に対して、ASTM E313の規格でYellow index(YI、黄色度)を測定した。その後、前記試験片を促進耐候試験機(QUV、Q-Lab社)に入れ、ASTM G154の方法(1Cycle:温度60℃でUVB313nmランプを用いて照度0.8W/m/nmで8時間UV照射、温度50℃でCondensation4時間)で300時間露出させた後、再びYIを測定した。
【0158】
最終樹脂製品の製造時、優れた色相を実現できる側面から塩化ビニル樹脂組成物の初期着色性(色、YI)は低いほど良い。
【0159】
【表1】
【0160】
【表2】
【0161】
上記表1を参照すると、本発明の可塑剤組成物は再生原料を含み、炭素排出量を低減でき、かつ、純粋なシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物および/または再生シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物を共に使用することによって、臭いが良好で、色相および酸価に優れ、従来の可塑剤と同等以上のゲル化速度、硬度および色相特性を示すことを確認することができた。