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特許7605999フコース転移酵素を発現する組換え微生物およびこれを用いた2’-フコシルラクトース製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】フコース転移酵素を発現する組換え微生物およびこれを用いた2’-フコシルラクトース製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20241217BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241217BHJP
   C12N 15/54 20060101ALI20241217BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20241217BHJP
   C12P 19/00 20060101ALI20241217BHJP
   C12R 1/07 20060101ALN20241217BHJP
   C12R 1/11 20060101ALN20241217BHJP
   C12R 1/125 20060101ALN20241217BHJP
   C12R 1/085 20060101ALN20241217BHJP
   C12R 1/10 20060101ALN20241217BHJP
   C12R 1/15 20060101ALN20241217BHJP
   C12R 1/19 20060101ALN20241217BHJP
   C12R 1/865 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
C12N1/21
C12N1/19 ZNA
C12N15/54
C12N15/31
C12P19/00
C12R1:07
C12R1:11
C12R1:125
C12R1:085
C12R1:10
C12R1:15
C12R1:19
C12R1:865
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023540466
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(86)【国際出願番号】 KR2021020001
(87)【国際公開番号】W WO2022145945
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0189490
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500578515
【氏名又は名称】サムヤン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ウンヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ブス
(72)【発明者】
【氏名】イ,サンヒ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウンス
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-515455(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111471605(CN,A)
【文献】特表2019-531752(JP,A)
【文献】特表2018-515118(JP,A)
【文献】国際公開第2019/194410(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/048927(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/072617(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/249512(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1544184(KR,B1)
【文献】特表2015-529453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00- 7/08
C12N 9/00- 9/99
C12N 15/00-15/90
C12P 1/00-41/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS (STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1~からなる群より選択された1種以上のアミノ酸配列を含むα-1,2-フコース転移酵素(α-1,2-fucosyltransferase)が発現されるように形質転換された、組換え微生物。
【請求項2】
前記組換え微生物は、GRAS(Generally Recognized As Safe)微生物である、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項3】
前記組換え微生物は、バチルス属(Bacillus sp.)微生物、コリネバクテリウム属(Corynebacterium sp.)微生物、大腸菌属(Escherichia sp.)微生物、または酵母(yeast)である、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項4】
前記バチルス属(Bacillus sp.)微生物は、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、またはバチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)であり、
前記コリネバクテリウム属(Corynebacterium sp.)微生物は、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)であり、
前記大腸菌属(Escherichia sp.)微生物は、大腸菌(Escherichia coli)であり、
前記酵母(yeast)は、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)、またはカンジダ・ユチリス(Candida utilis)である、請求項3に記載の組換え微生物。
【請求項5】
前記微生物は、組換え前に2’-フコシルラクトース生産能を有せず、組換えによって2’-フコシルラクトース生産能を有するものである、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項6】
前記組換え微生物は、フコース合成遺伝子を発現するものである、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項7】
前記フコース合成遺伝子は、GDP-D-マンノース-4,6-デヒドラターゼ(GDP-D-mannose-4,6-dehydratase)、GDP-L-フコースシンターゼ(GDP-L-fucose synthase)、ホスホマンノムターゼ(phosphomannomutase)、およびGTPマンノース-1-ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼ(GTP-mannose-1-phosphateguanylyltransferase)からなる群より選択された1種以上を発現するものである、請求項6に記載の組換え微生物。
【請求項8】
前記組換え微生物は、ラクトース膜輸送タンパク質を発現するものである、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項9】
前記ラクトース膜輸送タンパク質は、Lac12およびLacYからなる群より選択された1種以上である、請求項8に記載の組換え微生物。
【請求項10】
前記組換え微生物は、elicobactr pyori由来のα-1,2-フコース転移酵素を含む対照群に対比して、2倍以上の2’-フコシルラクトース生産性を有するものである、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項11】
ラクトース(lactose)を含む培地で請求項1~10のうちのいずれか一項による組換え微生物を培養する工程を含む、2’-フコシルラクトース(2’-fucolsylactose)の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フコース転移酵素が発現されるように形質転換された組換え微生物、およびこれを用いた2’-フコシルラクトース製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
母乳中含量が最も高いオリゴ糖三つを含む137種がフコシル化されており、その比率が約77%であり、残りのオリゴ糖は大部分シアル化されたもの(39個)で約28%に該当する。このうち、特に2’-フコシルラクトースと3’-フコシルラクトースは、プレバイオティク(prebiotic)効果、病原菌腸内付着抑制効果、そして免疫調節システム調節効果などを有する。Prebiotic効果は、今まで最も多くの研究が行われ、母乳の母乳オリゴ糖は、乳児の腸で初期に優占種として育つBifidobacterium bifidumの生育を選択的に増進させる反面、有害菌によっては用いられない。また、母乳オリゴ糖は、病原菌の腸内付着を抑制すると知られており、これは腸内レクチン(lectin)と結合する病原菌の細胞壁多糖体構造が時々母乳オリゴ糖の一部構造と類似しているためである。したがって、母乳オリゴ糖が水溶性リガンド類似体を提供して、母乳授乳乳児が病原菌による感染に耐性を有すると見られる。しかし、女性の約20%は2’-フコシルラクトースを合成するフコース転移酵素の変異によって体内でこれらを十分に合成できないと知られている。これによって、2’-フコシルラクトースの産業的生産が必要であるのが実情である。
【0003】
母乳オリゴ糖の一部は、大部分哺乳動物(霊長類、牛、豚、ヤギ、羊、象)の乳でも少量発見される。このうち、ヤギの乳が母乳オリゴ糖組成と最も類似しており、これによって、ヤギ乳チーズ生産工程の乳清副産物から大規模膜利用分離技術が提示された。また、最近開発された固相化学合成法(solid-phase synthesis)を用いると、一日内にLewis X-Lewis Y糖を生産することができ、crystalline intermediate technologyを用いると、2’-フコシルラクトースの速い合成が可能になった。しかし、前記分離法や化学的合成法の開発にもかかわらず、母乳オリゴ糖の産業化のための大量生産にはいくつかの障害物が残っており、これは、本技術の低い立体選択性、低い総収率と毒性試薬の使用などが食品または薬品産業に適しないためである。従って、より環境にやさしく収率の高い生産法が必要になり、最近、微生物による高濃度の2’-FL生産方法が報告される傾向にある。しかし、2’-フコシルラクトース生合成遺伝子は、Bio Safety Level 2菌株Helicobacter pyloriから確保された2’-フコシルラクトースを使用して主に母乳授乳代替用粉乳および乳児用食品に適用時消費者の認識に否定的な要素として作用することがあり、国内生産販売許可に適しない。したがって、食品添加物としてより安定性の高い遺伝子を適用して、Bio Safety Level 1菌株の遺伝子導入による2’-フコシルラクトース生産が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、食品、化粧品、および医薬品素材であるフコシルラクトースを生産する転移酵素を有している微生物であって、Biosafety level 1菌株、例えばバチルス・メガテリウム(bacillus megaterium)またはアッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)に由来した2’-フコース転移酵素を挿入した組換え微生物を提供し、これを用いて効果的な2’-フコシルラクトースを生産する方法を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一例は、α-1,2-フコース転移酵素(α-1,2-fucosyltransferase)が発現されるように形質転換された、組換え微生物に関するものである。前記α-1,2-フコース転移酵素は、配列番号1~5からなる群より選択された1種以上を含むものであってもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、バイオセーフティーレベル1(biosafety level 1)菌株に由来したフコース転移酵素が導入されて、安定性側面から消費者の憂慮がない組換え微生物、およびこれを用いた2’-フコシルラクトースの生産方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施例によって選別された酵素のタンパク質発現SDS-PAGE結果および予想タンパク質大きさを示した図である。
図2】本発明の実施例によるフラスコ反応(上段)および試験管反応(下段)の2FL生産傾向性を示した図である。
図3】本発明の一例によるα-1,2-フコース転移酵素のE.coli hostを用いた2FL生産活性比較結果を示した図である。
図4】B.megaterium 14581 hostを用いた多様な2FL生産性比較結果を示した図である。
図5】本発明の実施例によるGDP-fucose cassetteを示した図である。
図6】本発明の実施例によるGDP-fucose cassetteを導入した菌株を用いて2FL生産性を確認した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で、2-フコース転移酵素活性を有するポリペプチドは、配列番号1~5のアミノ酸配列に制限されず、配列番号1~5のアミノ酸配列中の一部アミノ酸残基の置換、挿入または欠乏によって形成したアミノ酸配列を含み、このようなアミノ酸が修飾されたタンパク質またはポリペプチドが2-フコース転移酵素活性を有していれば、ラクトースとGDP-fucoseを基質にしてフコシルラクトースに転換できる。
【0009】
前記α-1,2-フコース転移酵素をコードする核酸配列は、例えば、配列番号14~18からなる群より選択された1種以上の核酸配列を含むものであってもよい。
【0010】
前記組換え微生物は、GRAS(Generally Recognized As Safe)微生物であり得る。現在まで2’-フコシルラクトース生産に使用される遺伝子は、Helicobacter pyloriから確保された2’-フコシルラクトースを使用するので安定性が良くなく、このような問題点を解決するために、本発明による組換え微生物は、Bio Safety Level 1微生物であり得る。ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)に由来したフコース転移酵素(fucosyltransferase)は、バイオセーフティーレベル2(biosafety Level 2)であるため食品素材の生産のための酵素に適しないが、本発明によるフコース転移酵素は、バイオセーフティーレベル1(biosafety level 1)であるため安定性側面に対する消費者の憂慮が全くない長所を有する。
【0011】
本発明による組換え微生物は、helicobactor pyori由来のα-1,2-フコース転移酵素を含む対照群に対比して、2’-フコシルラクトース生産性が顕著に上昇して、安定性向上および生産性向上が可能である。
【0012】
具体的に、本発明の一例による組換え微生物は、helicobactor pyori由来のα-1,2-フコース転移酵素を含む対照群に対比して、2倍以上、2.1倍以上、2.5倍以上、3倍以上、3.5倍以上、4倍以上、4.5倍以上、5倍以上、5.5倍以上、6倍以上、6.5倍以上、7倍以上、または7.5倍以上の2’-フコシルラクトース生産性を有するものであり得る。したがって、前記組換え微生物は、α-1,2-フコース製造に有用に使用することができ、α-1,2-フコース生産収率を向上させることができる。
【0013】
本発明の一例による組換え微生物は、組換え前に2’-フコシルラクトース生産能を有せず、組換えによって2’-フコシルラクトース生産能を有するものであり得る。
【0014】
前記組換え微生物を形質切換する方法は、当業界に公知された全ての形質転換方法を特別な制限なく選択して使用することができ、例えば、細菌原形質体の融合、電気穿孔法、遺伝子銃法(projectile bombardment)、およびウイルスベクターを使用した感染などから選択されたものであってもよい。
【0015】
本発明による組換え微生物は、バチルス属(Bacillus sp.)微生物、コリネバクテリウム属(Corynebacterium sp.)微生物、大腸菌属(Escherichia sp.)微生物、または酵母(yeast)であってもよい。
【0016】
具体的に、前記バチルス属(Bacillus sp.)微生物は、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、またはバチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)であってもい。
【0017】
具体的に、前記コリネバクテリウム属(Corynebacterium sp.)微生物は、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutatamicum)であってもよい。
【0018】
具体的に、前記大腸菌属(Escherichia sp.)微生物は、大腸菌(Escherichia coli)であってもよい。
【0019】
具体的に、前記酵母(yeast)は、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)、またはカンジダ・ユチリス(Candida utilis)であってもよい。
【0020】
本発明の一例による組換え微生物は、フコース合成能を有するか、フコース合成能が改善されたものであり得る。2’-フコシルラクトースを生産するためにどんな微生物でも基本的に外来のα-1,2-フコース転移酵素を導入しなければならないのは同一であるが、各微生物の菌株自体の遺伝的特性が異なるため、大腸菌やバチルス・メガテリウムは、α-1,2-フコース転移酵素のみ挿入しても2’-フコシルラクトース生産が可能であるが、バチルス・サブチリス、コリネバクテリウム、酵母微生物などは、追加的にフコース合成酵素を導入することができる。
【0021】
具体的に、本発明の一例による組換え微生物は、GDP-D-マンノース-4,6-デヒドラターゼ(GDP-D-mannose-4,6-dehydratase)、GDP-L-フコースシンターゼ(GDP-L-fucose synthase、WcaG)、ホスホマンノムターゼ(phosphomannomurase)、およびGTPマンノース-1-ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼ(GTP-mannose-1-phosphate guanylyltransferase)からなる群より選択された1種以上を保有するか、過発現することを特徴とすることができる。よって、本発明の一例による組換え微生物は、α-1,2-フコース転移酵素発現特性と共に、フコース合成能が改善されてα-1,2-フコース生産収率がさらに向上できる。
【0022】
例えば、前記フコース合成酵素は、配列番号19~22からなる群より選択された1種以上のアミノ酸配列を含むものであってもよい。
【0023】
例えば、前記GTPマンノース-1-ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼは、配列番号19のアミノ酸配列を含むものであるか、配列番号23の核酸配列によってコードされるものであってもよい。
【0024】
例えば、前記ホスホマンノムターゼは、配列番号20のアミノ酸配列を含むものであるか、配列番号24の核酸配列によってコードされるものであってもよい。
例えば、GDP-L-フコースシンターゼ(WcaG)は、配列番号21のアミノ酸配列を含むものであるか、配列番号25の核酸配列によってコードされるものであってもよい。
【0025】
例えば、前記GDP-D-マンノース-4,6-デヒドラターゼ(GDP-D-mannose-4,6-dehydratase)は、配列番号22のアミノ酸配列を含むものであるか、配列番号26の核酸配列によってコードされるものであってもよい。
【0026】
本発明の一例による組換え微生物は、ラクトース膜輸送タンパク質を発現または過発現するものであってもよい。前記ラクトース膜輸送タンパク質は、2’-フコシルラクトースの基質であるラクトースを細胞内に導入して、2’-フコシルラクトース生産能を改善するものであり得る。
【0027】
具体的に、前記ラクトース膜輸送タンパク質は、Lac12および/またはLacYであってもよい。
【0028】
例えば、前記Lac12は、配列番号27のアミノ酸配列を有するものであってもよい。例えば、前記Lac12をコードする核酸は、配列番号29の核酸配列を含むものであってもよい。一例として、前記Lac12は、配列番号29の核酸配列によってコードされるものであってもよい。
【0029】
例えば、前記LacYは、配列番号28のアミノ酸配列を有するものであってもよい。例えば、前記LacYをコードする核酸配列は、配列番号30の核酸配列を含むものであってもよい。一例として、前記LacYは、配列番号30の核酸配列によってコードされるものであってもよい。
【0030】
本発明のまた他の一例は、本発明による組換え微生物を用いて得られたα-1,2-フコース転移酵素、前記微生物の菌体、前記微生物の培養物、前記微生物の破砕物、および前記破砕物または培養物の抽出物からなる群より選択された1種以上を含む、2’-フコシルラクトース生産用組成物に関するものである。前記組換え微生物、前記α-1,2-フコース転移酵素、前記2’-フコシルラクトースなどは、前述の通りである。
【0031】
前記培養物は、前記組換え微生物から生産された酵素を含むものであって、前記組換え微生物を含むか、前記組換え微生物を含まない無細胞(cell-free)形態であってもよい。前記破砕物は、前記組換え微生物を破砕した破砕物または前記破砕物を遠心分離して得られた上清液を意味するものであって、前記組換え微生物から生産された酵素を含むものである。本明細書において、別途の言及がない限り、2’-フコシルラクトース製造に使用される組換え微生物は、前記微生物の菌体、前記微生物の培養物および前記微生物の破砕物からなる群より選択された1種以上を意味するものとして使用される。
【0032】
本発明のまた他の一例は、ラクトース(lactose)を含む培地で本発明による組換え微生物を培養する工程を含む、2’-フコシルラクトース(2’-fucolsylactose)の生産方法に関するものである。
【0033】
前記製造方法は、培養物から得られたα-1,2-フコース転移酵素、前記微生物の菌体、前記微生物の培養物、前記微生物の破砕物、および前記破砕物または培養物の抽出物からなる群より選択された1種以上をラクトース含有原料と反応して2’-フコシルラクトースを生産することであってもよい。
【実施例
【0034】
以下、本発明を下記の実施例によってさらに詳しく説明する。しかし、これら実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれら実施例によって限定されるのではない。
【0035】
実施例1.生物情報学ツールを用いたa-1,2-フコース転移酵素スクリーニング
生物情報学ツールを用いてBiosafety level 1由来a-1,2-fucosyltransferase酵素(以下、2FT)候補を選別した。具体的に、ncbi(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/)でa-1,2-フコース転移酵素機能を有すると予想される酵素のうちBacteria由来およびGRAS bacteria由来を基準にして>90%相同性sequenceを除去し、タンパク質形態可視化プログラム(http://wlab.ethz.ch/protter)を用いて膜タンパク質の有無を把握した。
コンピュータ生物情報学ツールを使用して32個の候補群を選別した(表1)。また、タンパク質発現において問題になる膜タンパク質の存在有無をプログラムを通じて予測した際に、32個候補群のうち、Lactococcus lactis由来を除いた残り31個の酵素で著しい膜タンパク質は予測されなかった。
【0036】
【表1】
【0037】
候補群のうち、Biosafety level 1 Bm2FTが、反応性が以後確認されて、Bm2FTタンパク質配列相同性に基づいて追加候補群をBacillus megaterium由来酵素を探索した。Bm2FTの配列情報に基づいて、BLASTプログラム(https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を用いて酵素を探索した。選別された酵素候補群目録を表2に示した。
【0038】
【表2-1】
【0039】
【表2-2】
【0040】
比較例1.従来のα-1,2-フコース転移酵素の準備
helicobactor pyori由来の2FT(FutC)は2FT酵素のうち、活性が最も高くて様々な文献で2FL生産のために使用しているので、対照群に選定した。
Microbiol Res.2019 May;222:35-42論文Search for bacterial α1,2-fucosyltransferases for whole-cell biosynthesis of 2’-fucosyllactose in recombinant Escherichia coli.で、大腸菌を用いてThermosynechococcus elongates由来の2FT反応性を確認し、これを対照群に選定した。
WO2015/175801文献でAkkermansia muciniphila由来の2FT反応性を確認できなかったが、生産性を再検討するために対照群に選定した。
選別された対照群酵素目録および情報を表3に示した。
【0041】
【表3】
【0042】
実施例2.大腸菌用発現プラスミドクローニング
実施例1で選別された酵素と比較例1の対照群酵素の大腸菌での活性を確認するために、酵素発現プラスミドにクローニングを行った。
具体的に、実施例1で選別された酵素配列のコドンを大腸菌に最適化しようとコドン最適化プログラム(http://genomes.urv.es/OPTIMIZER/)に配列入力後、Escherichia_coliを選択して、guided randomコドン最適化検索を行った。確認された酵素配列を合成し、条件に合わせて表5の提示されたプライマーを通じてPCRを行って合成遺伝子を増幅した。pET24maのプラスミド増幅の場合、合成遺伝子のstop codonの配列がTAGあるいはTAAなのかに合わせて、TAG_PET24ma_FあるいはTAA_PET24ma_F PCRプライマーを場合によって使用した。各酵素によるプライマー配列情報および名称を表4に示した。
【0043】
【表4】
【0044】
Te2FT、Bt2FT、Bm2FT、Lg2FT、Ls2FT、およびLl2FT合成遺伝子の場合、遺伝子精製後、それぞれ1μL NEB制限酵素(Nde1/Xho1)を処理して37℃で3時間保管した。その後、制限酵素とバッファーを除去するために再び遺伝子精製後、16℃で同一制限酵素を処理したpET24maと共に4時間ligationを行った。前記Te2FT、Bt2FT、Bm2FT、Lg2FT、Ls2FT、およびLl2FT合成遺伝子を除いた残り合成遺伝子は全て、Gibson assembly方法でcloningを行うためにgel prepを行った。
Prep後、nano dropでそれぞれの遺伝子濃度を確認し、vectorとinsertの比が1:2になり総反応体積が8μLになるように、2X NEBuilder(登録商標) HiFi DNA Assembly Master Mixを入れた。その後、50℃で1時間反応した。cloning遺伝子をDH10b E.coli competent cellにtransformationした後、Km抗生剤が入っているplateに塗抹して、overnightで育てた。
それぞれのplateに育ったcolonyのうち5つずつを選別して、遺伝子に該当する表5のプライマーを用いてcolony PCRを行った。DNA gel上に大きさに該当するbandを確認したcolonyをKm抗生剤が含まれている3ml LB培地に接種後、overnight育てた。翌日、cellを集めてDNAを抽出しシークエンシングした。
【0045】
実施例3.酵素タンパク質発現確認
大腸菌内でcloningしたそれぞれの遺伝子がタンパク質発現しているか確認した。E.coli BL21(DE3)△fucl△fucK::AprR lacZ△m15::PlacUV5 competent cellに、実験するそれぞれの2FTベクターとGDP-fucを生産する酵素を有するpCDFm::PT7manC-manBとPT7-gmd-wcaGを共にtransformationした。KmとAmp抗生剤が入っているplateに塗抹してselectionした。
colonyをKmとAmp抗生剤が含まれている3mL培地に接種後、seedをovernight育てた。4mL LBに200μL seedと0.1mM IPTGを添加後、30℃で16時間育てた。4mLで育った細胞を遠心分離機で全て回収した後、上清液を捨てた。500μLのバッファーを添加後、bead beaterで破砕後、13000rpmで20分間遠心分離してsolubleタンパク質を回収した。size markerと共にSDS-PAGEゲルをおろした。選別酵素のtotalおよびsolubleタンパク質発現SDS-PAGE結果(図1の左側)、および予想タンパク質大きさ(図1の右側)を図1に示した。図1で、ManB、ManC、Gmd、およびWcaGは追加的に入れたpCDFm::PT7manC-manB+PT7-gmd-wcaGプラスミドで発現されたタンパク質である。
図1に示されているように、SDS-PAGEを通じて比較したタンパク質のうち8個の酵素Bm2FT、Te2FT、Hp2FT、Am2FT_2、Fp2FT、Ri2FT、Bm2FT_2、およびBm2FT_3で過発現を確認した。
【0046】
実施例4.試験管を用いた反応分析最適化
250mLフラスコで総50mL cultureを通じて2FL生産性を確認した。酵素候補群が多い場合、確実な比較分析のために3繰り返し以上の実験の再現が必須であるが、既存の50mL培養条件の場合、分析時必要量(1mL)以上の労力がかかる短所がある。多様な候補群の速い反応傾向性把握のために、10mL試験管で4mL培養を通じて酵素反応確認方法を確立しようとする。
Hp2FT、Bm2FT、Bt2FTがクローニングされたplasmidをそれぞれpCDFm::PT7manC-manB+PT7-gmd-wcaG plasmidと共にE.coli菌株にtransformationした。それぞれのplateで3つのcolonyを接種して、overnight seed cultureを行った。
seedのうち500μLは50mL flask cultureにinductionした。OD600が~0.8程度になるとき、0.1mM IPTGと10mM lactoseを入れた後、20h後HPLCで分析した。
test tube反応の場合、seed200μLを0.1mM IPTGと10mM lactoseが添加された4mL培地に添加した。test tube反応は、flaskのODを確認するstepを省略することができる。
20h後、HPLCで分析してフラスコ反応(図2の上段)および試験管反応(図2の下段)の2FL生産傾向性を図2に示した。図2に示されているように、定立した試験管反応条件がフラスコ条件よりは2FLの生産性が1/3水準であるが、その反応傾向性は同一で多様な酵素を一度に比較分析することに適するのを確認した。
【0047】
実施例5.HPLC分析を通じた2FL生産性比較
実施例1で選別された酵素および対照群酵素3種の反応性を比較した。
比較するプラスミドをそれぞれE.coliにtransformation後、37℃で育てた。それぞれのplateで3つのcolonyを接種してovernight seed cultureを行った。seed 200μLを0.1mM IPTGと10mM lactoseが添加された4mL培地に添加した。20h後、HPLCで分析した。E.coli hostを用いた多様な2FTの2FL生産活性比較結果を図3に示した。
図3に示されているように、FutCに対比して同等または高い活性酵素3つを含んで、2FL生産酵素合計5つを確保した:Am2FT_2、Bm2FT、Bm2FT_2、Bm2FT_3、およびBs2FTの場合、FutCに対比してそれぞれ122%、207%、84%、100%、21%2FL生産様相をHPLC分析を通じて確認した。2FL生産酵素5種の配列を表5に示した。
【0048】
【表5】
【0049】
実施例6.Corynebacterium菌株内フコース転移酵素を用いた2’-FL生産性比較
プラスミド製作および2’-フコシルラクトース(fucosyllactose、2’-FL)の生産のために、コリネバクテリウム・グルタミクム(C.glutamicum)ATCC13032を用いた。pMBCプラスミドを構築するためにコリネバクテリウム・グルタミクムATCC13032のgenomic DNAから二つのDNA primerを用いたPCR反応を通じてmanB遺伝子を増幅した後、pCES208プラスミドにこれを挿入させた。構築された前記プラスミドに再びコリネバクテリウム・グルタミクムATCC13032のgenomic DNAから二つのDNA primerを用いたPCR反応を通じてmanC遺伝子を増幅し、プラスミドにこれを後挿入させることによってpMBCを構築した。また、pEGWプラスミドを構築するために大腸菌であるK-12のgenomic DNAから二つのDNA primerを用いたPCR反応を通じてgmd-wcaG遺伝子クラスターを増幅した後、プラスミドに挿入させることによってpEGWを構築した。また、配列番号2のフコシル転移酵素を導入した。
C.glutamicum hostを用いる際、Bm2FTとGDP-fucose cassetteを導入した菌株を10mM lactoseが添加された4mL培地に添加して2FLを生産し、培養60時間が経過すると約120mg/Lの2FLが生産された。pMBCとpEGW空ベクターを入れた菌株の場合、2FLを生産しなかった。
【0050】
実施例8.Bacillus megaterium菌株内フコシル転移酵素を通じた2’-FL生産性比較
E.coli host使用時、FutCに対比して最もさらに多くの活性が増大されたAm2FT_2、Bm2FT酵素をそれぞれB.megaterium14581(韓国微生物保存センター(KCCM)寄託番号40441)host内に形質転換して、それぞれの2FL生産性を比較した。反応性の正確な確認のために、対照群としては2FT遺伝子が入っていない空ベクターp1525が挿入されたb.megaterium14581を使用した。図4は、B.megaterium14581 hostを用いた多様な2FL生産性比較結果を示した図である。
図4に示されているように、B.megaterium hostを用いる際、p1525空ベクタ-を入れた菌株の場合、2FLを生産せず、Bm2FTとFutCの場合、反応64時間が経過するとそれぞれ平均40.3mg/Lおよび18.8mg/Lの2FLが生産された。これによって、Bm2FT酵素がFutCに対比して2.1倍以上の生産性増大を示すのを確認した。
B.megaterium菌株を使用して母乳オリゴ糖を生産した研究が現在まで報告されたことがなく、B.megaterium14581 hostはbiosafety level 1菌株であって人体に無害なので、本発明で確立されたBm2FTをGRAS菌株に導入して既存酵素(FucT)に対比して2倍以上の生産性を確立した。
【0051】
実施例9.Bacillus subtilis菌株内フコシル転移酵素を通じた2’-FL生産性比較
E.coli host使用時、FutCに対比して最も多く活性が増大したBm2FT酵素をBacillus subtilis host内に形質転換して、それぞれの2’-FL生産性を比較した。反応性の正確な確認のために、対照群として2’-FT遺伝子がクローニングされていない空ベクターpBE-Sが形質転換されたB.subtilis168(寄託番号:(ATCC(登録商標) 23857TM))を使用した。使用したベクターはB.subtilis secretion用のpBE-Sであり、常時発現が可能なaprE promoterが挿入されている。cloning時にはsecretion機能が必要ないため、2’-FTクローニングを行う時、aprE signal peptideは除去した。
B.subtilis168はGDP-fucoseを生産する4種の酵素を有していないため、一つのvectorに4種の酵素をencodingする遺伝子を一度にクローニングした。4種遺伝子(manB、manC、gmd、wcaG)は、E.coli由来でPCRを通じて遺伝子増幅して確保した。4種の遺伝子を一度にクローニングするために使用したvectorは、p3STOP1623-2RBShpであってE.coli-Bacillus shuttle vectorである。本vectorは、B.megateriumだけでなくB.subtilisでも使用することができる。本Vectorの特徴としては、2つのRBSを有していて多重遺伝子のクローニングが非常に容易である。本vectorのpromoterは、xylose inducible promoterのPxylAである。GDP-fucose cassetteは図5のような遺伝子順序で製作した。
Vectorと4種の遺伝子は、前述のBm2FT cloning時と同様にGibson assembly方法を適用して行った。但し、Vectorの大きさが約6.6Kbであって、一度にPCRするにはシークエンスエラーが発生することがあるので、Vector中間にprimerを製作して半分に分けてPCRを行った。総6つのPCR fragmentsを精製するために、PCR mixture全部を電気泳動してgel extractionした。精製して確保したPCR fragmentsは、DNA濃度を測定し、濃度とサイズに合わせて含量を調節してGibson assemblyを行った。その後、同様にE.coliに形質転換してsingle colonyを確保した後、コロニーPCRを通じてplasmidの挿入を確認した。PCR確認されたコロニーは、LBに培養してplasmid抽出後、シークエンス分析を通じて4種の遺伝子が十分にcloningされたことを確認した。シークエンスまで確認されたplasmidは、生産性確認のためにB.subtilis168に形質転換した。E.coliに形質転換して確認した方法と同様にコロニーPCRでplasmidの挿入を確認した後、2’-FL生産性比較のために培養を行った。
図6に示されているように、B.subtilis hostを用いる時、pBE-Sとp3STOP1623-2RBShp空ベクターを入れた菌株の場合、2FLを生産しなく、Bm2FTとGDP-fucose cassetteを導入した菌株の場合、反応63時間が経過すると約150mg/Lの2FLが生産された。これは従来のFutCの平均2FL生産量18.8mg/Lに対比して約7倍以上に生産性が向上した結果である。
【0052】
実施例10.Saccaromyces Cerevisiae菌株内フコシル転移酵素を通じた2’-FL生産性比較
プラスミド製作および2’-フコシルラクトース(fucosyllactose、2’-FL)の生産のために、サッカロミセス・セレビシアエ(S.cerevisiae)CEN.PK2-1cを用いた。サッカロミセス・セレビシアエにないGDP-L-Fucose遺伝子を大腸菌であるK-12からクローニングして使用した。pRSK426プラスミドを構築するために、大腸菌であるK-12のgenomic DNAから二つのDNA primerを用いたPCR反応を通じてgmd-wcaG遺伝子クラスターを増幅した後、プラスミドに挿入させることによってpRSK426を構築した。E.coli host使用時、FutCに対比して最もさらに多くの活性が増大されたAm2FT_2、Bm2FT酵素をそれぞれS.cerevisiae host内に形質転換して、それぞれの2FL生産性を比較した。3種の組換えプラスミドは、サッカロミセス・セレビシアエ(S.cerevisiae)CEN.PK2-1c菌株で形質転換後、G418抗生剤が含まれているYPD固体培地で選別した。選別された菌株は、G418抗生剤が含まれている50mL液体生産培地で2日培養した後、2FL生産性をHPLC分析して測定した。S.cerevisiae CEN.PK2-1c hostを用いる際、pRSK426空ベクターを入れた菌株の場合、2FLを生産せず、Bm2FT、Am2FT_2とGDP-fucose cassetteを導入した菌株の場合、培養48時間が経過するとそれぞれ80mg/L、40mg/Lの2FLが生産された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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