(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】フェルールの保持構造
(51)【国際特許分類】
G02B 6/36 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
G02B6/36
(21)【出願番号】P 2023554239
(86)(22)【出願日】2022-04-18
(86)【国際出願番号】 JP2022018026
(87)【国際公開番号】W WO2023067832
(87)【国際公開日】2023-04-27
【審査請求日】2023-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2021171545
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】菅野 修平
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-160967(JP,A)
【文献】特開平11-064682(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0129032(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/36-6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバと、
前記光ファイバを後端から前端である接続端面まで挿通して前記光ファイバを保持するフェルールと、
前記フェルールを前記後端から前記接続端面に向かう前方向に付勢
し、内側に前記光ファイバが挿通されたコイルスプリングと、
前記フェルールの少なくとも一部及び前記
コイルスプリングを内部に収容するハウジングと、
前記ハウジングに係合して、前記
コイルスプリングの後端側を支持する支持部材と、
前記支持部材の一部と前記ハウジングの一部とによって構成され、前記支持部材を前記ハウジングに回転可能に取り付ける回転機構と、を備え、
前記支持部材は、前記回転機構によって前記ハウジングに対して回転することに伴って前記
コイルスプリングを前記前方向に押す押付面を有する
フェルールの保持構造。
【請求項2】
前記回転機構は、
前記ハウジングに設けられて前後方向に直交する第一直交方向に延びる第一軸支持部及び第二軸支持部と、
前記支持部材に設けられ、前記第一軸支持部が嵌まることで前記支持部材が前記第一軸支持部を中心に回転可能である第一窪みと、を有し、
前記支持部材の押付面は、前記支持部材が前記第一軸支持部を中心に第一位置から第二位置まで回転することに伴って前記
コイルスプリングを前記前方向に押し、
前記回転機構は、前記支持部材に設けられ、前記支持部材が前記第二位置に到達することで、前記第二軸支持部が嵌って前記第二位置から前記第一位置へ向かう前記支持部材の回転移動を規制する第二窪みをさらに有する請求項1に記載のフェルールの保持構造。
【請求項3】
前記支持部材が前記第二位置に配置された状態では、前記第一窪みが前記第一軸支持部の前記前方向側に位置し、かつ、前記第二窪みが前記第二軸支持部の前記前方向に位置し、
前記支持部材は、前記第二位置から前記
コイルスプリングの付勢力に抗って前記前方向に移動可能である請求項2に記載のフェルールの保持構造。
【請求項4】
前記ハウジング及び前記支持部材のうち少なくとも一方の部材は、
前記支持部材が前記第二位置に配置された状態で、前記前後方向、並びに、前記前後方向及び前記第一直交方向に直交する第二直交方向の両方に傾斜する傾斜案内面を有し、
前記傾斜案内面は、前記支持部材が前記第二位置に配置された状態で、前記前後方向において前記ハウジング及び前記支持部材のうち他方の部材に対向する請求項3に記載のフェルールの保持構造。
【請求項5】
前記回転機構は、前記支持部材に設けられ、前記第二軸支持部が嵌まることで前記支持部材が前記第二軸支持部を中心に回転可能である第三窪みをさらに有し、
前記第一軸支持部は、前記第二軸支持部に対して前記前方向と反対の後方向に位置し、
前記第一窪みは、前記第二窪みに対して前記後方向に位置し、
前記第三窪みは、前記支持部材が前記第二位置に配置された状態で、前記第二窪みに対して前記前後方向及び前記第一直交方向に直交する第二直交方向にずれて位置し、かつ、前記第二窪みに対して前記前方向に位置している請求項3又は請求項4に記載のフェルールの保持構造。
【請求項6】
前記フェルールの前記後端側に配置され、前記フェルールの後方に延びる前記光ファイバを挿通させる筒状部材を備え、
前記支持部材は、前記筒状部材の外周側において前記ハウジングに対して移動可能である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のフェルールの保持構造。
【請求項7】
前記フェルールの前記後端側に配置され、前記フェルールの後方に延びる前記光ファイバを挿通させる筒状部材を備え、
前記
コイルスプリングは、前記筒状部材の外周側に位置する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のフェルールの保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェルールの保持構造に関する。
本願は、2021年10月20日に日本に出願された特願2021-171545号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバを互いに接続する光コネクタが普及している。近年の光通信高速化に伴い、光ファイバが単心の光コネクタよりも、光ファイバが多心の光コネクタが用いられてきている。
特許文献1には、MPO(Multi-fiber Push On)コネクタと呼ばれる多心の光コネク
タが開示されている。この種の光コネクタは、複数の光ファイバを1つのフェルールに保持し、そのフェルールとフェルールを付勢する付勢部材(スプリング)とを、ハウジングと支持部材(スプリングプッシュ)とで挟み込むことによりフェルールを保持する構造を有する。付勢部材の付勢力(押圧力)は、複数の光ファイバが露出するフェルールの接続端面を互いに押し付けて、各光コネクタの機械的な接続(すなわち光ファイバと他の光ファイバとの接続)を確保するために必要である。
特許文献2には、特許文献1と同様のMPOコネクタが開示されている。また、特許文献2には、MPOコネクタを別のMPOコネクタ等に接続するために、アダプタに挿入することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特表2018-508045号公報
【文献】日本国特開2018-092125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の光コネクタなどのようにフェルールを保持する構造(フェルールの保持構造)の組立は、今までは工場で行われてきたが、近年では光ファイバを敷設する現場において作業者が行うことが増えてきている。
フェルールの保持構造の組立は、フェルール及び付勢部材を、光ファイバの延長方向において、ハウジングとハウジングに係合する支持部材とで挟み込むことで行われる。ここで、フェルールの保持構造において、必要な付勢部材の押圧力(以下、バネ圧と呼ぶ)の大きさは、フェルールに保持される光ファイバの本数(心線数)に比例して高くなる。例えば、フェルールが12心の光ファイバを保持するフェルールの保持構造(光コネクタ)において、必要なバネ圧は10Nである。また、フェルールが24心の光ファイバを保持するフェルールの保持構造(光コネクタ)において、必要なバネ圧は20Nである。
【0005】
工場においてフェルールの保持構造を組み立てる際には、バネ圧が高くなっても組立用の適切な治具や装置(大掛かりな治具や装置)を使用することで、フェルール及び付勢部材をハウジングと支持部材との間に挟み込むことができる。しかしながら、現場において上記した治具や装置を使用できない場合、バネ圧が高くなると、フェルール及び付勢部材をハウジングと支持部材との間に挟み込むことが難しくなる。すなわち、フェルールの保持構造の組立が難しくなる場合がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、特別な治具や装置が無くても、現場においても組立を容易に行うことが可能なフェルールの保持構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るフェルールの保持構造は、光ファイバと、前記光ファイバを後端から前端である接続端面まで挿通して前記光ファイバを保持するフェルールと、前記フェルールを前記後端から前記接続端面に向かう前方向に付勢する付勢部材と、前記フェルールの少なくとも一部及び前記付勢部材を内部に収容するハウジングと、前記ハウジングに係合して、前記付勢部材の後端側を支持する支持部材と、前記支持部材の一部と前記ハウジングの一部とによって構成され、前記支持部材を前記ハウジングに回転可能に取り付ける回転機構と、を備え、前記支持部材は、前記回転機構によって前記ハウジングに対して回転することに伴って前記付勢部材を前記前方向に押す押付面を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特別な治具や装置が無くても、現場においてもフェルールの保持構造の組立を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフェルールの保持構造であって、一つの支持部材が付勢部材の後端側を支持していない状態を示す斜視図である。
【
図4】
図1のフェルールの保持構造において、一つのフェルールユニットをハウジングから取り外した状態を示す斜視図である。
【
図5】
図4のフェルールユニットのうち光ファイバ、付勢部材、筒状部材及びスペーサ部材を示す分解斜視図である。
【
図6】
図1のフェルールの保持構造の要部を拡大して示す側面図である。
【
図7】
図6に示す状態から支持部材によって付勢部材の後端を支持するまでの過程を説明する側面図である。
【
図11】
図9に続く過程であり、支持部材が付勢部材の後端を支持している状態に対応する側面図である。
【
図12】
図11に対応し、支持部材が付勢部材の後端を支持している状態を示す断面図である。
【
図13】
図11に示す状態から支持部材による付勢部材の支持を解除するまでの過程を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について
図1~8を参照して説明する。
図1~3に示すように、本実施形態のフェルールの保持構造1は、フェルール12に保持された光ファイバ11を互いに接続する光コネクタを構成している。
フェルールの保持構造1は、フェルールユニット2(2A,2B)と、ハウジング3と、支持部材4(4A,4B)と、回転機構5と、を備える。フェルールユニット2は、これに含まれる光ファイバ11を別のフェルールユニット2の光ファイバ11に接続する。本実施形態のフェルールの保持構造1は、フェルールユニット2を2つ備える。ハウジング3は、これら2つのフェルールユニット2を接続するアダプタとして構成されている。以下の説明では、2つのフェルールユニット2の一方を第一フェルールユニット2Aと呼び、他方を第二フェルールユニット2Bと呼ぶことがある。
【0011】
図2~4に示すように、第一フェルールユニット2Aは、光ファイバ11と、フェルール12と、付勢部材13と、を備える。また、第一フェルールユニット2Aは、スペーサ部材14及び筒状部材15をさらに備える。フェルール12は、光ファイバ11を挿通させて光ファイバ11の先端を露出させる接続端面121を有する。
【0012】
以下の説明において、光ファイバ11がフェルール12に挿通される方向を前後方向Xと呼ぶ。また、第一フェルールユニット2Aでは、前後方向Xにおけるフェルール12の接続端面121側を前方向(+X)と呼び、その反対側を後方向(-X)と呼ぶ。前後方向Xに直交する一つの方向(第二直交方向)を上下方向Zと呼ぶ。また、上下方向Zの一方側を上方向(+Z)とし、他方側を下方向(-Z)と呼ぶ。前後方向X及び上下方向Zの両方に直交する方向(第一直交方向)を左右方向Yと呼ぶ。
【0013】
フェルール12は、光ファイバ11を後端から前端である接続端面121まで挿通して光ファイバ11を保持する。フェルール12の接続端面121には、光ファイバ11の先端が露出する。フェルール12に保持される光ファイバ11の数(接続端面121に露出する光ファイバ11の数)は、任意であってよい。
フェルール12は、接続端面121(前端)から後端まで前後方向Xに貫通するガイド孔122を有する。ガイド孔122には、ガイドピン16が挿入可能である。ガイドピン16は、第一フェルールユニット2Aのフェルール12と第二フェルールユニット2Bのフェルール12とを相互に位置決めする。本実施形態においてガイドピン16は、第一フェルールユニット2Aのフェルール12に取り付けられている。そして、ガイドピン16は、第一、第二フェルールユニット2A,2Bのフェルール12の接続端面121を突き合せる際に、第二フェルールユニット2Bのフェルール12のガイド孔122に挿入される。
【0014】
付勢部材13は、フェルール12の後端側に配置され、フェルール12をその後端から接続端面121(前端)に向かう前方向に付勢する。付勢部材13の具体的な構成は任意であってよい。本実施形態における付勢部材13は、コイルスプリングである。図示例におけるコイルスプリングは、前後方向Xから見て上下方向Zを長径とする楕円形であるが、例えば円形であってもよい。
【0015】
スペーサ部材14は、フェルール12と付勢部材13との間に設けられている。スペーサ部材14は、フェルール12側に位置する付勢部材13の前端を支持する。図示しないが、スペーサ部材14には、フェルール12の後方(後方向)に延びる光ファイバ11を後方に挿通させる挿通孔が形成されている。本実施形態のスペーサ部材14は、前述したガイドピン16を保持するピンクランプとしても機能する。
【0016】
図2~5に示すように、筒状部材15は、その軸方向が前後方向Xに延びるように、フェルール12の後端側に配置されている。筒状部材15には、フェルール12の後方に延びる光ファイバ11が挿通されている。また、筒状部材15は、コイルスプリングである付勢部材13の内側に挿通される。このような状態において、付勢部材13は筒状部材15の外周側に位置する。本実施形態において、筒状部材15は、スペーサ部材14に一体に形成されている。
【0017】
図2~3に示すように、第二フェルールユニット2Bの構成は、前述した第一フェルールユニット2Aの構成と同様である。ただし、第二フェルールユニット2Bでは、前後方向Xのうち-X方向がフェルール12の前方向に対応し、+X方向がフェルール12の後方向に対応している。すなわち、第二フェルールユニット2Bは、前後方向Xにおいて第一フェルールユニット2Aと反対側に向いている。これにより、第一、第二フェルールユニット2A,2Bのフェルール12の接続端面121が前後方向Xにおいて対向する。
【0018】
図1~4に示すように、ハウジング3は、前後方向Xに延びる筒状に形成されている。ハウジング3は、フェルール12及び付勢部材13を内部に収容する。本実施形態において、ハウジング3の内部には、スペーサ部材14及び筒状部材15も収容される。図示例においては、フェルール12、付勢部材13及びスペーサ部材14の各全体がハウジング3に収容される。また、筒状部材15の一部がハウジング3に収容され、筒状部材15の後端部(残部)は前後方向Xにおいてハウジング3の外側に位置する。ハウジング3の内部に収容されたフェルール12は、ハウジング3に対して所定位置よりも前方向に移動しないように、ハウジング3によって規制されている。
【0019】
第一フェルールユニット2Aは、+X方向を前方向としてハウジング3に挿入されることでハウジング3に収容される。第二フェルールユニット2Bは、-X方向を前方向としてハウジング3に挿入されることでハウジング3に収容される。すなわち、ハウジング3には、第一、第二フェルールユニット2A,2Bが前後方向Xにおいて互いに逆向きで挿入される。これにより、第一、第二フェルールユニット2A,2Bのフェルール12の各々の接続端面121を突き合せることができる。
【0020】
支持部材4(スプリングプッシュ)は、ハウジング3に係合することで、付勢部材13の後端側を支持する。支持部材4は、ハウジング3に係合した状態で、ハウジング3に収容されたフェルール12及び付勢部材13を、前後方向Xにおいてハウジング3との間に挟み込む。このような状態において、付勢部材13は前後方向Xにおいて弾性的に圧縮され、フェルール12を前方向に付勢する。
【0021】
本実施形態のフェルールの保持構造1は、支持部材4を2つ備える。2つの支持部材4のうち、第一支持部材4Aが第一フェルールユニット2Aに対応しており、第二支持部材4Bが第二フェルールユニット2Bに対応している。
図1~3において、第一支持部材4Aは、第一フェルールユニット2Aの付勢部材13の後端を支持しない位置に配置されている、すなわちハウジング3に係合していない。このため、第一フェルールユニット2Aの付勢部材13は、弾性的に圧縮されておらず、第一フェルールユニット2Aのフェルール12を前方向(+X方向)に付勢していない。一方、第二支持部材4Bは、第一フェルールユニット2Aの付勢部材13の後端を支持する位置に配置され、ハウジング3に係合している。これにより、第二フェルールユニット2Bの付勢部材13は、弾性的に圧縮され、第二フェルールユニット2Bのフェルール12を前方向(-X方向)に付勢している。
【0022】
図1,4に示す回転機構5は、支持部材4をハウジング3に回転可能に取り付ける機構である。
図2,3,9~12に示すように、支持部材4は、回転機構5によってハウジング3に対して回転することに伴って付勢部材13を前方向に押す押付面471を有する。
以下、本実施形態の回転機構5について具体的に説明する。
【0023】
図1,4に示すように、回転機構5は、支持部材4の一部と、ハウジング3の一部とによって構成される。つまり、回転機構5は、ハウジング3に設けられた第一軸支持部31及び第二軸支持部32と、支持部材4に設けられた第一窪み41及び第二窪み42と、を有する。
【0024】
ハウジング3の第一軸支持部31及び第二軸支持部32は、左右方向Y(第一直交方向)に延びている。本実施形態において、第一軸支持部31及び第二軸支持部32は、前後方向Xにおけるハウジング3の端部において、左右方向Yにおけるハウジング3の両側の外面から外側に延びている。また、第一軸支持部31及び第二軸支持部32は、それぞれ第一窪み41及び第二窪み42(および後述する第三窪み43)に対する回転中心軸として機能する。
【0025】
第一軸支持部31と第二軸支持部32とは、前後方向Xに間隔をあけて位置している。本実施形態では、第一軸支持部31が第二軸支持部32に対して後方向に位置する。例えば、第一支持部材4Aに対応する第一軸支持部31は第二軸支持部32に対して-X方向に位置する。また、第一軸支持部31は第二軸支持部32に対して下方向に位置する。
ハウジング3の第一軸支持部31、第二軸支持部32には、後述する支持部材4が引っ掛けられる。支持部材4が第一軸支持部31や第二軸支持部32に引っ掛かった状態において、支持部材4はハウジング3に対して第一軸支持部31や第二軸支持部32を中心に回転可能である。
【0026】
図9,11に示すように、支持部材4の第一窪み41には、ハウジング3の第一軸支持部31が嵌まることができる。第一窪み41に第一軸支持部31が嵌まった状態では、支持部材4が第一軸支持部31を中心に回転可能である。また、
図11に示すように、ハウジング3の第二軸支持部32が、支持部材4の第二窪み42に嵌まることができる。支持部材4の第一窪み41及び第二窪み42の相対的な位置は、ハウジング3の第一軸支持部31及び第二軸支持部32の相対的な位置に対応している。すなわち、第一窪み41と第二窪み42とは所定の方向に間隔をあけて位置する。また、
図11に示すように、第一窪み41と第二窪み42とが概ね前後方向Xに並ぶように支持部材4が配置された状態(支持部材4が第二位置P3に配置された状態)では、第一窪み41が第二窪み42に対して後方向に位置する。例えば第一支持部材4Aの第一窪み41は第二窪み42に対して-X方向に位置する。また、第一窪み41は第二窪み42に対して下方向に位置する。このため、支持部材4が第二位置P3に配置された状態では、支持部材4の第一窪み41に第一軸支持部31を嵌めると同時に、第二窪み42に第二軸支持部32を嵌めることができる。
【0027】
また、第一窪み41及び第二窪み42は、互いに同じ方向に窪んでいる。例えば
図11に示すように、支持部材4が第二位置P3に配置された状態において、第一窪み41及び第二窪み42は前方向に窪んでいる。例えば、第一支持部材4Aに対応する第一窪み41及び第二窪み42は+X方向に窪んでいる。
これにより、支持部材4が第二位置P3に配置された状態においては、第一窪み41が第一軸支持部31の前方向側に位置し、第一軸支持部31が第一窪み41に対して前方向に嵌まる。同様に、第二窪み42が第二軸支持部32の前方向側に位置し、第二軸支持部32が第二窪み42に対して前方向に嵌まる。
【0028】
図9,11に示すように、第一窪み41に第一軸支持部31が嵌まった状態では、支持部材4が第一軸支持部31を中心として
図9,10に示す第一位置P2から
図11,12に示す第二位置P3まで回転することに伴って、支持部材4の押付面471が付勢部材13を前方向に押す。
図9~12においては、支持部材4が第一軸支持部31を中心として時計回り(D3方向)に回転する。そして、支持部材4が第二位置P3に到達することで第二軸支持部32が支持部材4の第二窪み42に嵌まる。このような状態では、付勢部材13の付勢力によって、支持部材4が後方向に押されるため、第一、第二軸支持部31,32が第一、第二窪み41,42に嵌まった状態に保持される。
【0029】
また、
図11,12に示す状態において、第二窪み42は、第一軸支持部31を中心として第二位置P3から第一位置P2(
図9,10参照)へ向かう支持部材4の回転移動を規制する。具体的に、第二窪み42は、第二窪み42に嵌まる第二軸支持部32に対して、第二位置P3から第一位置P2へ向かう支持部材4の回転方向の後側(D3方向の前側)に位置する係止部分421を有する。このような係止部分421によって第二位置P3から第一位置P2への支持部材4の回転移動が規制される。
【0030】
上記のように、支持部材4が第二位置P3に配置された状態において、支持部材4はその押付面471が付勢部材13を前方向に押した位置に保持される。このような状態では、ハウジング3と支持部材4との間に付勢部材13が圧縮した状態で挟み込まれる。すなわち、支持部材4の第二位置P3は、支持部材4がハウジング3に係合して付勢部材13の後端側を支持する係合位置である。
【0031】
支持部材4が上記した第二位置P3に配置された状態において、第一窪み41に嵌まった第一軸支持部31の後方向側、及び、第二窪み42に嵌まった第二軸支持部32の後方向側は、それぞれ開放されている。このため、支持部材4は、第二位置P3に配置された状態から、付勢部材13の付勢力に抗って前方向に移動することは可能である。なお、第二位置P3から支持部材4を前方向に移動させることで、第一窪み41及び第二窪み42をそれぞれハウジング3の第一軸支持部31及び第二軸支持部32から離すことができる。これにより、ハウジング3と支持部材4との係合状態を解除して、ハウジング3と支持部材4とによる付勢部材13の挟み込みを解除することが可能である。
【0032】
本実施形態の回転機構5は、支持部材4に設けられた第三窪み43をさらに有する。
図6,7に示すように、第三窪み43は、第三窪み43にハウジング3の第二軸支持部32が嵌まることで支持部材4がハウジング3に対して第二軸支持部32を中心に回転可能である。
第三窪み43は、
図11に示すように、支持部材4が第二位置P3に配置された状態で、第一窪み41と同様に、第二窪み42に対して下方向に位置している。また、第三窪み43は、第二窪み42に対して前方向に位置する。例えば第一支持部材4Aの第三窪み43は、第二窪み42に対して+X方向に位置する。
【0033】
このため、例えば
図7に示すように、第二軸支持部32を第三窪み43に嵌めた状態で第一窪み41及び第三窪み43が概ね前後方向Xに並ぶように配置しても、第一軸支持部31は第一窪み41よりも後方向に位置する。このため、第二軸支持部32を第三窪み43に嵌めた状態において、第一軸支持部31が第一窪み41に嵌まることはない。
【0034】
第三窪み43は、
図11に示すように、支持部材4が第二位置P3に配置された状態において、第一窪み41及び第二窪み42と同じ前方向に窪んでいる。例えば、第一支持部材4Aに対応する第三窪み43は+X方向に窪んでいる。
【0035】
さらに、支持部材4が第二位置P3に配置された状態において、第三窪み43の後方向側は、第一、第二窪み41,42と同様に開放されている。このため、例えば
図7に示すように、第二軸支持部32を第三窪み43に嵌めて第一窪み41及び第三窪み43が概ね前後方向Xに並ぶように支持部材4を配置した状態から、支持部材4を前方向(
図7では+X方向)に移動させることができる。この支持部材4の前方向への移動が可能であることで、第一軸支持部31を第一窪み41に嵌めることができる。
【0036】
なお、
図7に示した位置に支持部材4が配置された状態では、
図8に示すように支持部材4の押付面471は、付勢部材13を前方向に押していない。
図7、8に示す状態から支持部材4を前方向に移動させて、
図9に示すように第一軸支持部31が第一窪み41に嵌まることにより、
図10に示すように支持部材4の押付面471が付勢部材13を前方向に押す。
【0037】
図1,3,4に示すように、上記した支持部材4の第一窪み41、第二窪み42及び第三窪み43は、左右方向Yにおいてハウジング3の両方の外側に配置された支持部材4の側壁44に、それぞれ形成されている。これにより、左右両側に位置する第一窪み41に、左右両側に位置する第一軸支持部31を嵌めることができる。また、左右両側に位置する第二窪み42及び第三窪み43に、左右両側に位置する第一軸支持部31、第二軸支持部32を嵌めることができる。
【0038】
本実施形態において、支持部材4の第二窪み42及び第三窪み43は、支持部材4の各側壁44を左右方向Y(第二軸支持部32が延びる方向)に貫通する同一の貫通孔45の縁に形成されている。貫通孔45は、側壁44を左右方向Yから見て側壁44の外縁に開口しない。また、ハウジング3の左右方向Yの両側に位置する第二軸支持部32は、支持部材4の各側壁44の貫通孔45にそれぞれ挿通されている。これにより、支持部材4がハウジング3から外れることが抑制又は防止されている。
【0039】
図11に示すように、支持部材4に形成される貫通孔45は、支持部材4が第二位置P3に配置された状態で、第三窪み43から後方に延びる第一通路451と、第一通路451の後端から上方向に延びて、第二窪み42の後側の空間につながる第二通路452と、を有する。第二軸支持部32を第二窪み42と第三窪み43との間で移動させる際には、第二軸支持部32が貫通孔45の第一、第二通路451,452を通ればよい。
【0040】
図6,7に示すように、本実施形態の支持部材4は、摺動傾斜面46をさらに有する。摺動傾斜面46は、第二軸支持部32を第三窪み43に嵌めた状態で、支持部材4の第一窪み41がハウジング3の第一軸支持部31に近づくように第二軸支持部32を中心に支持部材4を一方側(
図6,7においてD1方向)に回転させた際に、第一軸支持部31に当たる面である。摺動傾斜面46は、D1方向において第一窪み41の前側に位置している。摺動傾斜面46は、第二軸支持部32を中心とする径方向に対して上記した支持部材4の回転方向(D1方向)の後側に傾斜している。
【0041】
これにより、
図7に示すように、支持部材4の摺動傾斜面46を第一軸支持部31に当てた状態から支持部材4をさらにD1方向に回転させると、第一軸支持部31が摺動傾斜面46上を摺動することで、支持部材4が前方向(
図7においてD2方向)に移動し、第二軸支持部32が第三窪み43から後方向に離れる。これにより、
図9に示すように、第一軸支持部31を第一窪み41に嵌めることができる。
【0042】
図11,12に示すように、付勢部材13の後端に押し付けられる支持部材4の押付面471は、支持部材4が第二位置P3に配置された状態において、前方向側に向く面である。本実施形態の押付面471は、支持部材4が第二位置P3に配置された状態において、前後方向Xに直交する面である。なお、押付面471は、支持部材4が第二位置P3に配置された状態で、例えば前後方向X及び上下方向Zの両方に対して傾斜する面を含んでもよいし、傾斜する面のみによって構成されてもよい。
【0043】
図1,3に示すように、支持部材4は、ハウジング3に収容されたフェルールユニット2の筒状部材15の外周側においてハウジング3に対して移動可能である。支持部材4は、支持部材4をハウジング3に対して移動させても筒状部材15と干渉しないように構成されている。具体的には、
図1,3に示すように、支持部材4の押付面471を含む部位(押付部位47)は、支持部材4の左右両端の側壁44の間に位置する。また、押付部位47は、左右方向Yにおいて筒状部材15の両側に位置するように配置される。これにより、支持部材4をハウジング3に対して移動させても、支持部材4の押付部位47は筒状部材15に干渉しない。
【0044】
さらに、本実施形態のフェルールの保持構造1では、
図2,12に示すように、ハウジング3及び支持部材4が傾斜案内面38,48を有する。傾斜案内面38,48は、支持部材4が第二位置P3に配置された状態で、前後方向X及び上下方向Zの両方に傾斜する面である。ハウジング3の傾斜案内面38と支持部材4の傾斜案内面48とは、支持部材4が第二位置P3に配置された状態で、前後方向Xにおいて対向する。
【0045】
具体的に、ハウジング3の傾斜案内面38は、後方向及び上方向の両方に向く面であり、前方向に向かうにしたがって上方向に向かうように傾斜している。支持部材4の傾斜案内面48は、支持部材4が第二位置P3に配置された状態で、前方向及び下方向の両方に向く面であり、前方向に向かうにしたがって上方向に向かうように傾斜している。第二位置P3に配置された支持部材4の傾斜案内面48は、ハウジング3の傾斜案内面38に平行している。
これにより、
図11,12に示すように第二位置P3に配置された支持部材4を、
図13,14に示すように前方向(
図11~14においてD4方向)に移動させると、ハウジング3及び支持部材4の傾斜案内面38,48が面接触する。そして、支持部材4をさらに前方向に移動させると、ハウジング3及び支持部材4の傾斜案内面38,48が摺動して、支持部材4が上方向に案内される。すなわち、支持部材4がハウジング3に対して上方向に移動する。
【0046】
なお、上記の傾斜案内面は、例えばハウジング3及び支持部材4のうち一方の部材のみが有してもよい。この場合、一方の部材の傾斜案内面は、支持部材4が第二位置P3に配置された状態で、前後方向Xにおいて他方の部材に対向すればよい。
【0047】
次に、本実施形態のフェルールの保持構造1において、付勢部材13をハウジング3と支持部材4との間に挟み込む方法について、説明する。以下の説明では、第一フェルールユニット2Aの付勢部材13をハウジング3と第一支持部材4Aとの間に挟み込む手順について説明するが、第二フェルールユニット2Bの場合も同様である。
【0048】
この方法では、
図1~3に示すように、予め第一フェルールユニット2Aをハウジング3に挿入して収容しておく。第一フェルールユニット2Aをハウジング3に挿入する際には、第一支持部材4Aを退避位置P1に配置しておく。第一支持部材4Aの退避位置P1は、第一支持部材4Aの押付部位47(押付面471)を、ハウジング3に対する第一フェルールユニット2Aの挿抜経路から退避させた位置である。
図1,6に示すように、第一支持部材4Aが退避位置P1に配置された状態では、ハウジング3の第二軸支持部32が第一支持部材4Aの第三窪み43に嵌まっており、第一窪み41及び押付部位47が第三窪み43の上方向に位置する。
【0049】
付勢部材13をハウジング3と第一支持部材4Aとの間に挟むためには、はじめに、
図6~8に示すように、第一支持部材4Aを退避位置P1から第二軸支持部32を中心に第一支持部材4AをD1方向に回転させて、第一支持部材4Aの摺動傾斜面46を第一軸支持部31に上側から当てる。この状態において、第一支持部材4Aの押付面471は、付勢部材13の後方向に間隔をあけて位置する。また、第一支持部材4Aの第一窪み41が、第二、第三窪み42,43の後方向に位置し、第二窪み42が第三窪み43の上方に位置する。
【0050】
次いで、第一支持部材4AをさらにD1方向に回転させる。このとき、第一軸支持部31が摺動傾斜面46上を摺動することで、
図7~10に示すように、第一支持部材4Aが前方向(D2方向)に移動する。また、第二軸支持部32が第三窪み43から後方向に離れ、貫通孔45の第一通路451に位置する。これにより、第一支持部材4AがさらにD1方向に回転して、第一軸支持部31が第一窪み41に嵌まる。
【0051】
また、第一支持部材4AがD2方向に移動することで、
図10に示すように、第一支持部材4Aの押付面471が付勢部材13の後端に押し付けられ、付勢部材13を前方向に押す。この際、押付面471が付勢部材13を前方向に押す長さは短い。このため、押付面471が付勢部材13を押すことに伴って第一支持部材4Aに作用する付勢部材13の付勢力は小さい。なお、本実施形態の構造では、てこの原理を利用して、第一支持部材4AをD1方向に回転させる力が、付勢部材13を前方向に押す力に変換される。このため、第一支持部材4AをD1方向に回転させる力が小さく、また、押付面471が付勢部材13を押すことに伴って第一支持部材4Aに作用する付勢部材13の付勢力が大きくても、押付面471によって付勢部材13を前方向に押すことができる。
【0052】
図9,10に示す状態では、付勢部材13は、第一軸支持部31が第一窪み41に嵌まるように第一支持部材4Aを後方向に付勢する。すなわち、付勢部材13の付勢力が、第一軸支持部31が第一窪み41から抜け出ることを防止又は抑制している。
図9,10に示す第一支持部材4Aの位置は、前述した「第一位置P2」である。
【0053】
その後、
図9~12に示すように、第一支持部材4Aの第二窪み42がハウジング3の第二窪み42に近づくように(すなわち、第一支持部材4Aの前端部が下方向に移動するように)、第一軸支持部31を中心に第一支持部材4Aを一方側(D3方向)に回転させる。第一支持部材4AのD3方向への回転に伴い、第二軸支持部32が貫通孔45の第二通路452を上方に移動して、第一支持部材4Aが第二位置P3に到達する。第一支持部材4Aが第二位置P3に到達することで、第二軸支持部32は、第二通路452の上端において前方向側に位置する第二窪み42に嵌まる。
【0054】
また、第一支持部材4AがD3方向に回転することで、
図12に示すように、第一支持部材4Aの押付面471が付勢部材13の後端にさらに押し付けられ、付勢部材13をさらに前方向に押す。このため、第一支持部材4Aの押付面471が付勢部材13を押すことに伴って第一支持部材4Aに作用する付勢部材13の付勢力は大きい。ただし、ここでは、てこの原理を利用して、第一支持部材4AをD3方向に回転させる力が、付勢部材13を前方向に押す力に変換される。このため、第一支持部材4AをD3方向に回転させる力が小さくても、押付面471によって付勢部材13を前方向に押すことができる。
【0055】
図11,12に示すように、第一支持部材4Aが第二位置P3に配置された状態では、付勢部材13の付勢力によって、第一支持部材4Aが後方向に押されるため、第一、第二軸支持部31,32が第一、第二窪み41,42に嵌まった状態に保持される。また、この状態において、第二窪み42は、その係止部分421によって、第一支持部材4Aが第一軸支持部31を中心にD1方向と逆方向に回転することを規制する。
これにより、第一支持部材4Aがハウジング3に係合され、第一支持部材4Aが付勢部材13の後端側を支持した状態に保持される。すなわち、付勢部材13がハウジング3と第一支持部材4Aとの間に挟み込まれた状態に保持される。以上により、第一フェルールユニット2Aの付勢部材13をハウジング3と第一支持部材4Aとの間に挟み込む方法が完了する。なお、
図2~3には、第二フェルールユニット2Bの付勢部材13がハウジング3と第二支持部材4Bとの間に挟み込まれた状態に保持されている様子が示されている。
【0056】
次に、本実施形態のフェルールの保持構造1において、ハウジング3と支持部材4とによる付勢部材13の挟み込みを解除する方法(解除方法)について説明する。以下の説明では、第一フェルールユニット2Aの付勢部材13の挟み込みを解除する手順について説明するが、第二フェルールユニット2Bの場合も同様である。
【0057】
付勢部材13の挟み込みを解除するためには、
図11,12に示すように第一支持部材4Aが第二位置P3に配置された状態から、
図13,14に示すように第一支持部材4Aを前方向(D4方向)に移動させる。これにより、第一支持部材4Aの第一、第二窪み41,42がそれぞれハウジング3の第一、第二軸支持部31,32から前方向に離れる。これにより、ハウジング3に対する第一支持部材4Aの上下方向Z(特に上方向)への移動が許容される。例えば、第一支持部材4Aをハウジング3に対して上方向に移動させると、付勢部材13の付勢力によって第一支持部材4Aが後方向に移動しても、
図15に例示するように、第一支持部材4Aの第一窪み41にはハウジング3の第一軸支持部31が嵌まらない。すなわち、付勢部材13の挟み込みを解除することができる。
【0058】
本実施形態の解除方法では、
図13,14に示す状態から第一支持部材4Aをさらに前方向に移動させることで、第一支持部材4Aをハウジング3に対して自動的に上方向に移動させることができる。以下、この点について説明する。
第一支持部材4Aをさらに前方向に移動させた際には、
図14に示すように、ハウジング3及び第一支持部材4Aの傾斜案内面38,48が面接触する。そして、第一支持部材4Aをさらに前方向に移動させると、ハウジング3及び第一支持部材4Aの傾斜案内面38,48が摺動して、第一支持部材4Aが上方向に案内される。すなわち、第一支持部材4Aがハウジング3に対して自動的に上方向に移動する。
【0059】
以上説明したように、本実施形態のフェルールの保持構造1によれば、回転機構5による支持部材4の回転運動を活用して、付勢部材13を前方向(第一フェルールユニット2Aの場合、+X方向)に押す。すなわち、てこの原理を利用して付勢部材13を前方向に押すことができる。これにより、作業者が支持部材4を押す力(回転させる力)が小さくても、大きな力で付勢部材13を前方向に押すことが可能である。これにより、小さな力であってもバネ圧が高い付勢部材13をハウジング3と支持部材4との間に挟み込むことができる。したがって、特別な治具や装置が無くても、現場においてもフェルールの保持構造1を容易に組み立てることが可能である。
【0060】
本実施形態のフェルールの保持構造1では、支持部材4が第二位置P3に配置された状態において、支持部材4の押付面471が付勢部材13の後端に押し付けられる。これにより、付勢部材13がハウジング3と支持部材4との間に挟み込まれる。また、このような状態では、ハウジング3の第二軸支持部32が支持部材4の第二窪み42が、支持部材4の第二位置P3から第一位置P2への回転移動を規制する。したがって、付勢部材13の付勢力に抗って、支持部材4を第二位置P3に配置した状態に保持することができる。
【0061】
本実施形態のフェルールの保持構造1では、支持部材4を第二位置P3から付勢部材13の付勢力に抗って前方向に移動させることで、支持部材4の第一、第二窪み41,42をそれぞれハウジング3の第一、第二軸支持部31,32から離すことができる。これにより、ハウジング3と支持部材4とによる付勢部材13の挟み込みを解除することができる。したがって、本実施形態のフェルールの保持構造1では、フェルール12及び付勢部材13(フェルールユニット2)をハウジング3に対して着脱することができる。
【0062】
本実施形態のフェルールの保持構造1では、ハウジング3及び支持部材4が傾斜案内面38,48を有する。傾斜案内面38,48は、支持部材4を第二位置P3から前方向に移動させることに伴って、支持部材4をハウジング3に対して上下方向Z(本実施形態では上方向)に移動させる。これにより、支持部材4を第二位置P3から前方向に移動させるだけで、支持部材4の第一、第二窪み41,42を、それぞれハウジング3の第一、第二軸支持部31,32に対して上下方向Zにずれて位置させることができる。このような状態では、支持部材4が付勢部材13の付勢力によってハウジング3に対して後方向(第一フェルールユニット2Aの場合、-X方向)に移動しても、ハウジング3の第一、第二軸支持部31,32が支持部材4の第一、第二窪み41,42には嵌まることはない。したがって、ハウジング3と支持部材4とによる付勢部材13の挟み込みを簡単に解除することができる。
【0063】
本実施形態のフェルールの保持構造1では、回転機構5が、支持部材4に設けられ、第二軸支持部32が嵌まることで支持部材4が第二軸支持部32を中心に回転可能である、第三窪み43をさらに有する。第三窪み43は、支持部材4が第二位置P3に配置された状態で、第二窪み42に対して上下方向Z(本実施形態では下方向)かつ前方向に位置している。このため、支持部材4を第二位置P3から付勢部材13の付勢力に抗って前方向に移動させた後に、さらに、支持部材4をハウジング3に対して上下方向Z(上方向)に移動させる。このような状態では、支持部材4を付勢部材13の付勢力によって支持部材4を後方に移動させ、ハウジング3の第二軸支持部32を支持部材4の第三窪み43に嵌めることができる。第二軸支持部32が第三窪み43に嵌まることで、第二軸支持部32を中心として支持部材4をハウジング3に対して回転させることができる。これにより、支持部材4の押付面471を付勢部材13の後端側から上方向にずらした位置に退避させることができる。したがって、支持部材4がハウジング3から取り外されなくても、支持部材4によって阻害されることなく、フェルール12及び付勢部材13(フェルールユニット2)をハウジング3に対して容易に挿抜することが可能である。
【0064】
本実施形態のフェルールの保持構造1では、フェルール12の後方側に位置する光ファイバ11が筒状部材15によって保護されている。そして、支持部材4は、筒状部材15の外周側においてハウジング3に対して移動可能である。このため、支持部材4をフェルール12の後方側においてハウジング3に対して移動させる際に、支持部材4が光ファイバ11に接触することを防止できる。すなわち、筒状部材15によって光ファイバ11を支持部材4から保護することができる。
【0065】
本実施形態のフェルールの保持構造1では、付勢部材13が筒状部材15の外周側に位置する。これにより、付勢部材13がフェルール12の後方側において光ファイバ11に接触することを防止できる。すなわち、筒状部材15によって光ファイバ11を付勢部材13から保護することができる。
【0066】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0067】
本発明において、ハウジング3は、2つのフェルールユニット2及び支持部材4が取り付けられるアダプタとして構成されることに限らず、例えば1つのフェルールユニット2及び支持部材4だけが取り付けられるように構成されてもよい。この場合、ハウジング3は1つのフェルールユニット2及び支持部材4と共に光コネクタを構成する。光コネクタを構成するフェルールの保持構造1において、接続端面121を含むフェルール12の前端部は、例えばハウジング3の外側に配置されてもよい。すなわち、ハウジング3は、フェルール12の少なくとも一部を収容するように構成されてよい。
【符号の説明】
【0068】
1…フェルールの保持構造、3…ハウジング、4…支持部材、5…回転機構、11…光ファイバ、12…フェルール、13…付勢部材、15…筒状部材、31…第一軸支持部、32…第二軸支持部、38,48…傾斜案内面、41…第一窪み、42…第二窪み、43…第三窪み、121…接続端面、471…押付面、P2…第一位置、P3…第二位置、X…前後方向、Y…左右方向(第一直交方向)、Z…上下方向(第二直交方向)