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特許7606012電極キャップを電極シャンクから引き外すための装置
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  • 特許-電極キャップを電極シャンクから引き外すための装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】電極キャップを電極シャンクから引き外すための装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/30 20060101AFI20241217BHJP
   B23K 11/36 20060101ALI20241217BHJP
   B23K 11/11 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
B23K11/30 350
B23K11/36
B23K11/11
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023570363
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2022061965
(87)【国際公開番号】W WO2022238195
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-11-13
(31)【優先権主張番号】102021112548.0
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】523429069
【氏名又は名称】ブロイアー ズュステームテヒニク ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Braeuer Systemtechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Gewerbering 33, 09456 Annaberg-Buchholz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イェンス ニッツ
(72)【発明者】
【氏名】ロビン キュトナー
(72)【発明者】
【氏名】イェンス シュトップ
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-262201(JP,A)
【文献】特開2001-334370(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0099348(US,A1)
【文献】中国実用新案第212330880(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/30
B23K 11/11
B23K 11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極キャップを電極シャンクから引き外すための装置であって、工具回転軸線を中心に回転可能に支持され、引き外すべき前記電極キャップを固定するためのクランプ手段(2,3)を備えた少なくとも1つの引外し装置(1)から成り、直歯歯列を有するクランプ手段(2)と斜歯歯列を有するクランプ手段(3)との組合せを有する、装置。
【請求項2】
工具回転軸線を中心に回転可能に支持され、引き外すべき電極キャップを固定するためのクランプ手段(2,3)を備えた少なくとも1つの引外し装置(1)から形成された電極キャップ引外し装置における、直歯歯列を有するクランプ手段(2)と斜歯歯列を有するクランプ手段(3)との組合せの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗スポット溶接法において電極キャップを電極シャンクから引き外すための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属薄板と帯材とを結合するために、スポット溶接が利用されることが多い。特に自動車産業では、この方法が、自動化された製造ラインでの車体製造に使用される。
【0003】
通常、ここでは、スポット溶接により車体金属薄板部材を互いに結合するために、多数の溶接ロボットが使用される。これらの溶接ロボットには溶接ガンが設けられており、この溶接ガンの電極シャンクには、それぞれ1つのスポット溶接電極、いわゆる電極キャップが備え付けられている。
【0004】
この溶接ガンは、互いに溶接されるべき位置決めされた金属薄板に近付けられる。溶接されるべき金属薄板に対する溶接ガンの正確な位置決めならびに金属薄板相互の配置は、今日、自動化されてかつコンピュータ支援されて行われる。そのような自動化された製造ラインでは、溶接過程ができるだけ迅速にタイミング制御されて中断することなく行われる。
【0005】
これにより、特に電極キャップは高い摩耗にさらされる。なぜならば、電極キャップの接触面が、それぞれ溶接されるべき車体金属薄板部材と接触するからである。この溶接過程では、電極間の電流が、溶接されるべき互いに接触した車体金属薄板部材を通って流れる。このとき、電極キャップの溶接影響領域における電極キャップの接触面において変化が生じる。
【0006】
しばしば、接触面の縁部に焼損隆起物、つまりピックアップが形成され、このピックアップは、接触面の増大によって溶接条件の変化を引き起こす。この変化に、電流強度の不経済な追従によって対処する必要がないようにするために、電極キャップは定期的に、かつ、電極キャップの負荷と、その結果として生じる摩耗とに応じて、フライス加工によって後加工される。
【0007】
このために、フライス加工装置が配置されて、溶接ロボットの溶接ガンがこのフライス加工装置に到達することができ、電極キャップが、それぞれ設置されたフライス加工装置に係合される。これらの電極キャップフライス加工装置は、通常、工具支持体から形成されており、この工具支持体は、その内部に工具回転軸線を中心に回転可能に支持された少なくとも1つのフライス加工工具と、このフライス加工工具のための駆動装置とを有している。
【0008】
多くの場合、1つの溶接ガンの互いに協働する電極は、同じまたは類似の程度で摩耗するので、これらの電極は、定期的にかつ同時にフライス加工によって後加工されなければならない。複数回の後加工が実施された後、電極キャップからの材料除去は、電極キャップを交換しなければならない程度に行われている。このために、摩耗した電極キャップは、電極シャンクから引き外される。
【0009】
電極キャップを溶接電極シャンクから引き外す際に、電極キャップはその円筒状の周面でクランプジョーを用いて堅固にクランプされる。次いで、電極キャップを、その軸線または回動不能に保持された溶接電極シャンクの軸線を中心に回転させ、溶接電極シャンクの軸線方向においてこの溶接電極シャンクから電極キャップが引き外される。
【0010】
このために手動引外し要員が知られているが、こうした手動引外し要員は、労働力を危険にさらすことから、自動化された製造ラインに配置されるべきではない。
【0011】
電極キャップを引き外すための装置は、例えば独国実用新案第20209401号明細書から公知である。同明細書は、電極キャップが電極シャンクの突当りつばに対して僅かな間隔を置いて電極シャンクに被せられている、電極キャップを引き外すための装置を記載している。この場合、突当りつばと電極キャップの突当りつば側の端部との間には、周方向に延在する溝状の自由空間が生じ、この自由空間に、自由空間の幅の方向で接線方向に厚くなる楔状部が係合する。
【0012】
独国実用新案第8808586号明細書からは、レバー構造により電極キャップが電極キャップシャンクから引き外される装置が公知である。
【0013】
工具支持体に配置された引外し装置も公知である。この引外し装置は、工具回転軸線を中心に回転可能に支持された引外し工具と、この引外し工具のための駆動装置とを有する。電極キャップは、引外し工具に配置されたクランプジョーによって固定される。次いで、電極キャップを、その軸線または回動不能に保持された溶接電極シャンクの軸線を中心に回転させ、溶接電極シャンクの軸線方向において電極キャップが溶接電極シャンクから引き外される。
【0014】
別の公知の解決手段は、電極キャップが電極シャンクから引き外されるのではなく、溶接ガンの開放により、電極シャンクが、回転するキャップから引き外されることにある。この装置においても、キャップはクランプジョーを用いて固定され、この場合、キャップを、その軸線または回動不能に保持された溶接電極シャンクの軸線を中心に回転させ、ガンが開放されると、電極シャンクが電極キャップから引き外される。
【0015】
独国特許出願公開第102014209828号明細書から、スポット溶接電極のキャップ支持体から電極キャップを引き外すための引外し工具が公知であり、この引外し工具は、引外し動作中に回転軸線(A)を中心に回転可能な工具本体(24)であって、電極キャップ収容のために回転軸線(A)の方向で開かれた電極キャップ収容開口(56)を備えた工具本体(24)と、少なくとも工具本体(24)が回転軸線(A)を中心に第1の回転方向(R1)で回転する際に、電極キャップ収容開口(56)内に位置決めされた電極キャップ(20)にクランプ係合するためのクランプジョーの第1のセット(26)と、少なくとも工具本体(24)が回転軸線(A)を中心に第1の回転方向(R1)とは逆の第2の回転方向(R2)で回転する際に、電極キャップ収容開口(56)内に位置決めされた電極キャップ(22)にクランプ係合するためのクランプジョーの第2のセット(28)と、を有する。
【0016】
公知の従来技術による公知の交換ヘッドタイプでは、主に、直歯歯列を有するジョーまたは斜歯歯列を有するジョーのいずれかが備え付けられている。この場合、通常は3つのジョーが使用される。この構造様式は、固定されるべき工具またはワークピースを良好にセンタリングすることができるという利点を有している。
【0017】
しかしながら、もっぱら直歯歯列を有するジョーを備えた変化形態における欠点は、電極キャップをガンシャンクから取り外す際に、軸線方向運動に対する固定が全く行われないかまたは僅かしか行われないという点にある。したがって、引外し過程後、電極キャップの制御されない早期の紛失が生じる恐れがある。
【0018】
もっぱら斜歯歯列を有するジョーを備えた改良された交換ヘッド変化形態では、この問題は生じない。斜歯歯列では、電極キャップを取り外す際に、ガンシャンクがねじ山効果によって保護される。なぜならば、ベース材料への食い込み時にキャップが、歯列の斜めの掛かりによって軸線方向ひいては電極シャンクから離れる方向に押し退けられるからである。したがって、電極キャップは、交換ヘッド回転中、その座から迅速に離れる方向に動かされるので、電極キャップ円錐部の接触面と、対応するシャンクとの間では、より僅かな/より短い摩擦しか発生せず、したがって、軸線方向運動に対する電極キャップの固定が行われる。
【0019】
これにより、取り外される電極キャップが確実に保持される。しかしながら、これにより、電極キャップの把持までの食い込みと回転運動の開始との2つの部分から成るプロセスのために必要となる回転角が拡大し、「取り外しフェーズ」における効果的に生じる回転角が減少するという欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の根底にある課題は、前述した形態の引外し装置を改良して、従来公知の解決手段の難点をできる限り回避し、特にプロセス確実性が保証されることを達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明によれば、この課題は、請求項1記載の装置および請求項2によって解決される。以下に、本発明に係る装置を図面および以下の実施例に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る引外し装置1を組立て済みの使用可能な状態で示す斜視図および断面した平面図である。
図2】使用される、互いに組み合わされるべき、直歯歯列4を備えたクランプ手段2ならびに斜歯歯列5を備えたクランプ手段3を示す図である。
図3】引外し装置1の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る電極キャップ引外し装置は、工具回転軸線を中心に回転可能に支持され、引き外すべき電極キャップを固定するためのクランプ手段2,3を備えた少なくとも1つの引外し装置1から成る。
【0024】
本発明に係る電極キャップ引外し装置は、直歯歯列を有するクランプ手段2と斜歯歯列を有するクランプ手段3との組合せを有する。直歯歯列を有する少なくとも1つのクランプ手段2を備えた混合実装形態の本発明に係る使用では、この混合実装形態が、取り外されるべき電極キャップに対する回転運動のより早い開始を支援する。
【0025】
斜歯歯列を有する少なくとも1つのクランプ手段3の使用は、銅材料への食い込みによる十分な形状結合、ひいてはキャップの制御されない取り外し/取り外されたキャップの紛失に対する安全を保証する。
【0026】
したがって、歯列タイプの組合せにより、所望の位置における電極キャップのプロセス確実な取り外し、保持および装着が可能となる。
【0027】
本発明による解決手段の特別な構成では、これらのクランプ手段を、使用される複数のクランプ手段がクランプ手段2または選択的にクランプ手段3であるように選択することが可能である。
【0028】
本発明による解決手段の使用においては、本発明による解決手段が、既に使用されている引外し装置でも使用可能であることが特に有利であると判った。ここでは、従来使用されていた同じクランプ手段を、少なくとも1つのクランプ手段が別の実施形態のクランプ手段と交換されるように変更することができる。
図1
図2
図3