(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】マット材及び保持シール材
(51)【国際特許分類】
F01N 3/28 20060101AFI20241217BHJP
B32B 5/02 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
F01N3/28 311N
B32B5/02 B
(21)【出願番号】P 2024053411
(22)【出願日】2024-03-28
【審査請求日】2024-10-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】前田 敏幸
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-080756(JP,A)
【文献】特開平07-102961(JP,A)
【文献】特開2007-127112(JP,A)
【文献】特表2009-517587(JP,A)
【文献】特開平10-061433(JP,A)
【文献】特表2013-514495(JP,A)
【文献】特開2011-236526(JP,A)
【文献】特表2008-506886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/28
B32B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維からなり前記無機繊維の配向方向が揃っている配向層と、無機繊維からなり前記無機繊維の配向方向がランダムであるランダム層と、をそれぞれ少なくとも1層含む積層マットを備え、
前記積層マットはバインダを含
み、
前記積層マットを厚さ方向に第1の表面部、中央部、第2の表面部に三等分した際に、前記第1の表面部の最外層に前記ランダム層が配置され、
前記第1の表面部における前記バインダの含有量が、前記中央部における前記バインダの含有量よりも多く、かつ、前記第2の表面部における前記バインダの含有量よりも多い、マット材。
【請求項2】
前記配向層と前記ランダム層が厚さ方向に交互に積層されており、前記積層マットの2つの最外層にはいずれも前記ランダム層が配置されている、請求項1に記載のマット材。
【請求項3】
前記バインダは、有機バインダ及び無機バインダの少なくとも1つである請求項1又は2に記載のマット材。
【請求項4】
前記バインダの含有量が以下の関係を満たす、請求項1
又は2に記載のマット材。
0.4≦(中央部/第1の表面部)
0.2≦(第2の表面部/第1の表面部)
(第2の表面部/中央部)≦0.5
【請求項5】
前記バインダの含有量がさらに以下の関係を満たす、請求項
4に記載のマット材。
0<(第2の表面部/中央部)
【請求項6】
前記配向層の無機繊維は、マット材の幅方向に対し60~90度の傾きを有する無機繊維を70%以上含む、請求項1又は2に記載のマット材。
【請求項7】
引張試験により測定した破断時引張強度が200kPa以上である、請求項1又は2に記載のマット材。
【請求項8】
引張試験により測定した破断時伸び量が3.5mm以下である、請求項
7に記載のマット材。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のマット材からなり、排ガス浄化装置内において排ガス処理体の保持に使用される保持シール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マット材及び保持シール材に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中には、パティキュレートマター(以下、PMともいう)が含まれており、近年、このPMが環境や人体に害を及ぼすことが問題となっている。また、排ガス中には、COやHC、NOx等の有害なガス成分も含まれていることから、この有害なガス成分が環境や人体に及ぼす影響についても懸念されている。
【0003】
そこで、排ガス中のPMを捕集したり、有害なガス成分を浄化したりする排ガス浄化装置として、炭化ケイ素やコージェライトなどの多孔質セラミックからなる排ガス処理体と、排ガス処理体を収容する金属ケーシングと、排ガス処理体と金属ケーシングとの間に配設される保持シール材(マット材)とから構成される排ガス浄化装置が種々提案されている。この保持シール材(マット材)は、自動車の走行等により生じる振動や衝撃により、排ガス処理体がその外周を覆う金属ケーシングと接触して破損するのを防止することや、排ガス処理体と金属ケーシングとの間から排ガスが漏れることを防止すること等を主な目的として配設されている。
【0004】
このような用途に使用されるマット材として、特許文献1には、表面が結合剤層で覆われた無機繊維を含む所定の厚さのマットからなる保持シール材であって、前記結合剤層は有機結合剤及び無機結合剤を含んでおり、前記マットを厚さ方向に第一の表面部、中央部、第二の表面部に三等分した際、前記第一の表面部における有機結合剤の添着量が前記中央部における有機結合剤の添着量よりも多く、かつ、前記第二の表面部における有機結合剤の添着量よりも多いことを特徴とする保持シール材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
排ガス処理体への巻き付けの際に、マット材に対して引張荷重を加えながら巻き付け作業を行うことがある。このような作業においてマット材の引張強度が低いと、引張荷重によってマット材が破断してしまうことがあり、問題となっていた。
特許文献1に記載のマット材も引張強度が不足しており、マット材の引張強度を向上させることが望まれていた。
【0007】
本発明は、上記のような問題を鑑みてなされたものであり、高い引張強度を有するマット材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のマット材は、無機繊維からなり前記無機繊維の配向方向が揃っている配向層と、無機繊維からなり前記無機繊維の配向方向がランダムであるランダム層と、をそれぞれ少なくとも1層含む積層マットを備え、
前記積層マットはバインダを含む、マット材である。
【0009】
本発明のマット材を構成する積層マットは配向層とランダム層を備える。配向層が存在することで伸びにくく高い引張強度を有するマット材とすることができる。
また、ランダム層にはバインダが含浸されやすい。マット材にバインダを含ませることでマット材の表面の摩擦力を高めることができる。
【0010】
本発明のマット材は、前記配向層と前記ランダム層が厚さ方向に交互に積層されており、前記積層マットの2つの最外層にはいずれも前記ランダム層が配置されていることが好ましい。
【0011】
積層マットにバインダを含浸させる際に、積層マットの最外層に配置しランダム層からバインダを積層マットの厚さ方向に浸透させる。ランダム層はバインダが浸透しやすく、配向層にはバインダが浸透しにくいため、積層マットの厚さ方向においてバインダは配向層でせき止められる。
その結果、積層マットの最外層でバインダ含浸用のバインダ液が接触する最外層においてバインダ含有量が多くなる。バインダ含有量が多いと摩擦力が高くなるので、バインダ含有量が多い最外層を巻き付けにおいて摩擦力が要求される排ガス処理体に接する面として使用すると、排ガス処理体とマット材のずれが防止され、好ましく使用することができる。
【0012】
本発明のマット材において、積層マットは、有機バインダ及び無機バインダのうち少なくとも一方のバインダを含むことが好ましい。
【0013】
本発明のマット材においては、前記積層マットを厚さ方向に第1の表面部、中央部、第2の表面部に三等分した際に、前記第1の表面部の最外層に前記ランダム層が配置され、
前記第1の表面部における前記バインダの含有量が、前記中央部における前記バインダの含有量よりも多く、かつ、前記第2の表面部における前記バインダの含有量よりも多いことが好ましい。
【0014】
上記マット材では、第1の表面部におけるバインダの含有量が多いため、第1の表面部を排ガス処理体に接する部分として使用すると、排ガス処理体とマット材のずれが防止され、好ましく使用することができる。
また、マット材は排ガス浄化装置内で使用されるものであるが、排ガス浄化装置が使用される環境が高温環境であるので、バインダ(特に有機バインダ)が揮発することがある。そのため、排ガス浄化装置内で使用することが想定されるマット材についてはバインダの含有量を多くしないことが要求されている。
上記マット材ではバインダの含有量を第1の表面部では多くしているが、マット材の全体でマット材の含有量を多くしているものではない。そのため、マット材全体としてのバインダの含有量に関する要求を満たすことができる。
【0015】
本発明のマット材においては、前記バインダの含有量が以下の関係を満たすことが好ましい。
0.4≦(中央部/第1の表面部)
0.2≦(第2の表面部/第1の表面部)
(第2の表面部/中央部)≦0.5
また、前記バインダの含有量がさらに以下の関係を満たすことが好ましい。
0<(第2の表面部/中央部)
【0016】
第1の表面部、中央部、第2の表面部におけるバインダの含有量が上記の関係を満たしていると、第1の表面部を排ガス処理体に接触させて巻き付けた際に、マット材と排ガス処理体の間の摩擦力が向上し、ケーシングへの組付けの際にマット材と排ガス処理体の間で界面滑りが起きにくくなる。
【0017】
本発明のマット材において、前記配向層の無機繊維は、マット材の幅方向に対し60~90度の傾きを有する無機繊維を70%以上含むことが好ましい。
【0018】
本発明のマット材においては、引張試験により測定した破断時引張強度が200kPa以上であることが好ましい。
また、引張試験により測定した破断時伸び量が3.5mm以下であることが好ましい。
【0019】
引張試験により測定した破断時引張強度及び破断時伸び量が上記の範囲であると、排ガス処理体等への巻き付け作業時のマット材の破断がより確実に防止される。
また、破断時引張強度が高く破断時伸び量が小さいと巻き付け時の作業性のばらつきが小さくなる。
【0020】
本発明の保持シール材は、本発明のマット材からなり、排ガス浄化装置内において排ガス処理体の保持に使用される保持シール材である。
【0021】
本発明のマット材は、伸びにくく高い引張強度を有するマット材であるので、排ガス処理体に巻き付けた際に破断が生じにくく、保持シール材として使用することに適している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、マット材の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、配向層の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、無機繊維を含む顕微鏡写真の一例である。
【
図5】
図5は、ランダム層の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図6は、リベット部を含むニードルマットを模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、排ガス浄化装置の一例を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図9】
図9は、排ガス浄化装置の製造方法の一例を模式的に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のマット材及び保持シール材の一例について、図面を用いて詳述する。
図1は、マット材の一例を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示すマット材のA-A線断面図である。
図1に示すマット材10は、配向層30とランダム層40とを含む積層マット20である。
積層マット20の厚さ方向(
図1及び
図2中、両矢印Tで示す方向)に沿って、ランダム層40a、配向層30、ランダム層40bの3層が積層されている。ランダム層40aとランダム層40bは同じ仕様の層である。
【0024】
積層マット20はその長手方向(
図1中、両矢印Lで示す方向)の長さが長いマットである。
積層マット20は2つの主面としての第1の主面23と第2の主面24を有している。第1の主面23がランダム層40aの表面であり、第2の主面24がランダム層40bの表面である。
【0025】
積層マット20は4つの側面を有しており、積層マット20の長手方向に沿った側面が第1の長側面25及び第2の長側面26である。また、積層マット20の幅方向(
図1中、両矢印Wで示す方向)に沿った側面が第1の短側面27及び第2の短側面28である。
積層マット20の上面視形状は略矩形状であり、第1の短側面27には凹部、第2の短側面28には凸部がそれぞれ形成されている。凹部と凸部は、外周が円柱状の排ガス浄化装置、排ガス処理体や排気管にマット材を巻きつける際に、ちょうど互いに嵌合するような形状となっている。
なお、本実施形態のマット材では、嵌合する部分の形状を凹部と凸部としているが、嵌合する部分の形状をL字型の組合せとしてもよい。
【0026】
図3は、配向層の一例を模式的に示す斜視図である。
図3には、配向層30を示しており、配向層30を構成する無機繊維31をその配向方向と共に模式的に示している。
配向層30は無機繊維からなり無機繊維の配向方向が揃っている層である。
図3に示す配向層では、マット材の長手方向に沿った向きに無機繊維が配向している。
【0027】
本明細書において「無機繊維の配向方向が揃っている」とは、無機繊維を含む顕微鏡写真において撮影領域の一方の方向(通常は撮影領域の横方向)に対して無機繊維の角度を測定した結果、75~90度の範囲に本数で50%以上の繊維が存在することを意味する。
【0028】
図4は、無機繊維を含む顕微鏡写真の一例である。
図4に示す写真には無機繊維31が映っている。
図4では、撮影領域の縦方向(90°の方向)に配向している無機繊維が多いことが視認できる。そして、撮影領域の横方向(0°の方向)に対して測定した無機繊維の角度θが75~90度の範囲となっている無機繊維が52%存在している。
すなわち、
図4に示す写真を撮影した層は配向層である。
【0029】
また、配向層の無機繊維は、マット材の幅方向に対して60~90度の傾きを有する無機繊維を70%以上含むことが好ましい。
配向層が上記の条件を満たすと、マット材の巻き付け時に引張応力が加わる向きと無機繊維の配向が揃うので、マット材の引張強度が強くなりやすいために好ましい。
図4に示す写真の横方向がマット材の幅方向であり、無機繊維の角度θが60~90度の範囲となっている無機繊維が78%存在している。
すなわち、
図4に示す写真を撮影した配向層では、無機繊維は、マット材の幅方向に対して60~90度の傾きを有する無機繊維を70%以上含んでいる。
マット材の幅方向に対して60~90度の傾きとなる方向は、マット材の長手方向に沿った方向といえるので、配向層の無機繊維はマット材の長手方向に沿って配向しているといえる。
【0030】
配向層では、撮影領域の横方向(0°の方向)に対して測定した無機繊維の角度θが75~90度の範囲となっている無機繊維の割合が60%以上であってもよく、70%以上であってもよい。また、角度θが75~90度の範囲となっている無機繊維の割合が90%以下であってもよく、80%以下であってもよい。
【0031】
配向層では、マット材の幅方向に対して60~90度の傾きを有する無機繊維を75%以上含んでいてもよく、85%以上含んでいてもよい。またマット材の幅方向に対して60~90度の傾きを有する無機繊維を95%以下含んでいてもよく、90%以下含んでいてもよい。
【0032】
図5は、ランダム層の一例を模式的に示す斜視図である。
図5には、ランダム層40を示しており、ランダム層40を構成する無機繊維41を模式的に示している。
ランダム層40は無機繊維からなり無機繊維の配向方向がランダムである層である。
【0033】
本明細書において「無機繊維の配向方向がランダムである」とは、無機繊維を含む顕微鏡写真において撮影領域の特定の方向に無機繊維が配向していないことが視認できることを意味する。無機繊維の配向が上述した配向層の定義にあてはまらないものをランダム層としてもよい。
【0034】
積層マットにおける配向層とランダム層は厚さ方向に交互に配置されていることが好ましい。
図1及び
図2ではランダム層40a/配向層30/ランダム層40bの順で交互に配置されており、積層マットの2つの最外層にはいずれもランダム層が配置されている。
積層マットにおいてマットが積層される枚数は、配向層とランダム層とをそれぞれ少なくとも1層含んでいれば特に限定されるものではない。ランダム層が最外層に配置されてランダム層と配向層が交互に配置されていることが好ましいことから、3枚又は5枚であることが好ましい。ランダム層/配向層/ランダム層の3層、ランダム層/配向層/ランダム層/配向層/ランダム層の5層といった例が挙げられる。
【0035】
積層マットを構成するマットは無機繊維を含む。無機繊維は、特に限定されず、アルミナ繊維、シリカ繊維等であってもよい。また、ガラス繊維や生体溶解性繊維であってもよい。耐熱性や耐風蝕性等、マット材に要求される特性等に応じて変更すればよく、各国の環境規制に適合できるような太径繊維や繊維長のものを使用するのが好ましい。
【0036】
この中でも、低結晶性アルミナ質の無機繊維が好ましく、ムライト組成の低結晶性アルミナ質の無機繊維がより好ましい。加えて、スピネル型化合物を含む無機繊維がさらに好ましい。
【0037】
本発明のマット材では、積層マットはバインダを含む。
マット材にバインダを含ませることでマット材の表面の摩擦力を高めることができる。ランダム層にはバインダが含浸されやすいので、ランダム層にバインダを含浸させることが好ましい。
【0038】
積層マットは有機バインダ及び無機バインダのうち少なくとも一方のバインダを含むことが好ましい。
積層マットにバインダを含ませることでマット材の摩擦力を高めることができる。
【0039】
有機バインダとしては、例えば、ゴム系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0040】
無機バインダとしては、無機ゾル分散液(アルミナゾル、シリカゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル等)が挙げられる。
【0041】
積層マットに含ませるバインダの含有量(有機バインダと無機バインダの合計量)は、積層マットの重量に対して0.2重量%以上、30重量%以下であることが好ましい。また、有機バインダを含む場合の有機バインダの含有量が0.1重量%以上、20重量%以下であることが好ましく、無機バインダを含む場合の無機バインダの含有量が0.1重量%以上、10重量%以下であることが好ましい。
【0042】
積層マットがバインダを含む場合に、積層マットの最外層がランダム層であり、ランダム層の内側に配向層が配置されていることが好ましい。
積層マットにバインダを含浸させる際に、積層マットの最外層に配置しランダム層からバインダを積層マットの厚さ方向に浸透させる。ランダム層はバインダが浸透しやすく、配向層にはバインダが浸透しにくいため、積層マットの厚さ方向においてバインダは配向層でせき止められる。
その結果、積層マットの最外層でバインダ含浸用のバインダ液が接触する最外層においてバインダ含有量が多くなる。バインダ含有量が多いと摩擦力が高くなるので、バインダ含有量が多い最外層を巻き付けにおいて摩擦力が要求される排ガス処理体に接する面として使用すると、排ガス処理体とマット材のずれが防止され、好ましく使用することができる。
【0043】
また、積層マットの最外層がランダム層であり、ランダム層の内側に配向層が配置されている構成の具体例として、配向層と前記ランダム層が厚さ方向に交互に積層されており、積層マットの2つの最外層にはいずれもランダム層が配置されていることが好ましい。
【0044】
また、積層マットを厚さ方向に第1の表面部、中央部、第2の表面部に三等分した際に、第1の表面部の最外層にランダム層が配置され、第1の表面部におけるバインダの含有量が、中央部におけるバインダの含有量よりも多く、かつ、第2の表面部におけるバインダの含有量よりも多いことが好ましい。
【0045】
図2の断面図に示す積層マット20では、ランダム層40a、配向層30、ランダム層40bをそれぞれ同じ厚さとしているので、ランダム層40aを第1の表面部、配向層30を中央部、ランダム層40bを第2の表面部とみなすことができる。この場合に、ランダム層40aにおけるバインダの含有量を配向層30におけるバインダの含有量よりも多く、ランダム層40bにおけるバインダの含有量よりも多くすることが好ましい。
【0046】
第1の表面部の最外層にランダム層を配置したマット材では、第1の表面部におけるバインダの含有量が多いため、第1の表面部を排ガス処理体に接する部分として使用すると、排ガス処理体とマット材のずれが防止され、好ましく使用することができる。
また、マット材は排ガス浄化装置内で使用されるものであるが、排ガス浄化装置が使用される環境が高温環境であるので、バインダ(特に有機バインダ)が揮発することがある。そのため、排ガス浄化装置内で使用することが想定されるマット材についてはバインダの含有量を多くしないことが要求されている。
上記の構成のマット材ではバインダの含有量を第1の表面部では多くしているが、マット材の全体でマット材の含有量を多くしているものではない。そのため、マット材全体としてのバインダの含有量に関する要求を満たすことができる。
【0047】
また、バインダの含有量は以下の関係を満たすことが好ましい。
0.4≦(中央部/第1の表面部)
0.2≦(第2の表面部/第1の表面部)
(第2の表面部/中央部)≦0.5
さらに、バインダの含有量は以下の関係を満たすことが好ましい。
0<(第2の表面部/中央部)
【0048】
第1の表面部、中央部、第2の表面部におけるバインダの含有量が上記の関係を満たしていると、第1の表面部を排ガス処理体に接触させて巻き付けた際に、マット材と排ガス処理体の間の摩擦力が向上し、ケーシングへの組付けの際にマット材と排ガス処理体の間で界面滑りが起きにくくなる。
【0049】
また、第1の表面部のバインダ含有量が0.1重量%以上、29.0重量%以下であることが好ましく、中央部のバインダ含有量が0.2重量%以上、15.0重量%以下であることが好ましく、第2の表面部のバインダ含有量が0.05重量%以上、5.0重量%以下であることが好ましい。
【0050】
本発明のマット材においては、引張試験により測定した破断時引張強度が200kPa以上であることが好ましい。
また、引張試験により測定した破断時伸び量が3.5mm以下であることが好ましい。
【0051】
破断時引張強度及び破断時伸び量は、マット材を、マット材の長手方向に沿った長さ200mm、マット材の幅方向に沿った幅50mmに切断したサンプルを作製して測定する。
サンプルの厚さを3か所測定し、引張試験用のチャック(つかみ治具)を備える万能材料試験機を用いて、チャック距離を片側40mmとし、マット材を100mm/minの速度で、サンプルの長手方向に沿って引っ張った際の、破断時の荷重及び引張距離を求める。
破断時引張強度=破断時の荷重/(サンプル厚み×幅) で算出する。
破断時の引張距離を破断時伸び量とする。
【0052】
引張試験により測定した破断時引張強度及び破断時伸び量が上記の範囲であると、排ガス処理体等への巻き付け作業時のマット材の破断がより確実に防止される。
また、破断時引張強度が高く破断時伸び量が小さいと巻き付け時の作業性のばらつきが小さくなる。
【0053】
積層マットを構成する配向層及びランダム層は抄造法で得られた抄造マットでもよく、ニードリング法で得られたニードルマットでもよい。
【0054】
抄造法の場合、例えば、アルミナ繊維、シリカ繊維等の無機繊維と、無機バインダと、水とを原料液中の無機繊維の含有量が所定の値となるように混合し、攪拌機で攪拌することで無機繊維を含むスラリーを調製する。スラリーには、必要に応じて、高分子化合物や樹脂からなるコロイド溶液が含まれていてもよい。続いて、底面にろ過用のメッシュが形成された成形器に混合液を流し込んだ後に、混合液中の水を、メッシュを介して脱水することにより原料シートを作製する。その後、原料シートを所定の条件で加熱圧縮することにより抄造マットを得ることができる。
【0055】
ニードリング法の場合、例えば、塩基性塩化アルミニウム水溶液とシリカゾル等とを原料とする紡糸用混合物をブローイング法により紡糸して3~10μmの平均繊維径を有する無機繊維前駆体を作製する。続いて、上記無機繊維前駆体を圧縮して所定の大きさの連続したシート状物を作製し、これにニードリング処理(ニードルパンチング処理)を施し、その後、焼成処理を施すことによりニードルマットを得ることができる。
【0056】
配向層とランダム層の製造方法は特に限定されないが例えば以下の方法が挙げられる。
配向層を抄造法で製造する場合、無機繊維を含むスラリーを抄き上げて一方向に流動させると、繊維の配向が流動方向に生じ、配向層とすることができる。
ランダム層を抄造法で製造する場合、無機繊維を含むスラリーを型枠の上から型枠に流し込むようにする。スラリーの流動がないので繊維が特定の方向に配向することがなく、ランダム層となる。
無機繊維を含むスラリーには有機バインダ及び無機バインダのうち少なくとも一方のバインダを含有させてもよい。
【0057】
また、積層マットが、配向層及びランダム層を積層したのちにまとめてニードリング処理された抄造マットでもよい。
【0058】
積層マットに対してはバインダの付与を行ってもよい。積層マットに対してバインダの付与を行う場合、積層マットの一方の主面(第1の主面とする)からバインダを含むバインダ液を積層マットの厚さ方向に浸透させる。
バインダ液の浸透は、カーテンコート法等の方法で結合剤溶液をマット上に落下させることにより、マット中の無機繊維に結合剤溶液を付与する方法でもよく、スプレーコーティングのように結合剤溶液を噴霧してマットに吹きつける方法でもよい。
【0059】
積層マットの最外層にランダム層を配置し、その内側に配向層を配置すると、ランダム層はバインダが浸透しやすく、配向層にはバインダが浸透しにくいため、積層マットの厚さ方向においてバインダは配向層でせき止められる。
その結果、積層マットの最外層でバインダ含浸用のバインダ液が接触する最外層においてバインダ含有量が多くなる。バインダ含有量が多いと摩擦力が高くなるので、バインダ含有量が多い最外層を巻き付けにおいて摩擦力が要求される排ガス処理体に接する面として使用すると、排ガス処理体とマット材のずれが防止され、好ましく使用することができる。
【0060】
また、ニードルマットがバインダを含んでいて、積層マットの第1の主面からニードル痕に沿って厚さ方向に伸び、他の部位よりバインダ濃度が高いリベット部を有することが好ましい。
【0061】
図6は、リベット部を含むニードルマットを模式的に示す断面図である。
図6には、積層マット20の第1の主面23からニードリング処理されて生じたニードル痕50にバインダが含浸されて生じたリベット部51を示している。
ニードルマットがリベット部を有すると、マット材の厚み方向にバインダの浸透が進むことで、無機繊維間の拘束が生じ、マット材の構造強化に繋がるために好ましい。
リベット部は、マット材を加熱してバインダ(有機バインダ)を焦がすと積層マットの断面において焦げたバインダがリベットのように見える部分である。
また、リベット部の深さは特に限定されるものではない。
また、
図6には、積層マット20の第2の主面24にはニードル痕50は存在しているが第2の主面24からはバインダが浸透していないためリベット部は存在していない様子を示している。
【0062】
本発明のマット材は、排ガス浄化装置内において排ガス処理体の保持に使用される保持シール材として使用することができる。
本発明の保持シール材は、本発明のマット材からなり、排ガス浄化装置内において排ガス処理体の保持に使用される保持シール材として使用される。
【0063】
図7は、排ガス浄化装置の一例を模式的に示す断面図である。
図7に示すように、排ガス浄化装置100は、金属ケーシング130と、金属ケーシング130に収容された排ガス処理体120と、排ガス処理体120及び金属ケーシング130の間に配設された保持シール材であるマット材10とを備えている。
排ガス処理体120は、多数のセル125がセル壁126を隔てて長手方向に並設された柱状のものである。なお、金属ケーシング130の端部には、必要に応じて、内燃機関から排出された排ガスを導入する導入管と、排ガス浄化装置を通過した排ガスが外部に排出される排出管とが接続されることとなる。
【0064】
上述した構成を有する排ガス浄化装置100を排ガスが通過する場合について、
図7を参照して以下に説明する。
図7に示すように、内燃機関から排出され、排ガス浄化装置100に流入した排ガス(
図7中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、排ガス処理体(ハニカムフィルタ)120の排ガス流入側端面120aに開口した一のセル125に流入し、セル125を隔てるセル壁126を通過する。この際、排ガス中のPMがセル壁126で捕集され、排ガスが浄化されることとなる。浄化された排ガスは、排ガス流出側端面120bに開口した他のセル125から流出し、外部に排出される。
【0065】
図7に示す排ガス浄化装置100では、保持シール材は本発明のマット材10であり、マット材10を構成する積層マットの第1の主面23が排ガス処理体120の側に配置され、第2の主面24が金属ケーシング130の側に配置されている。
【0066】
排ガス浄化装置を構成する金属ケーシングの材質は、耐熱性を有する金属であれば特に限定されず、具体的には、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属類が挙げられる。
【0067】
また、ケーシングの形状は、略円筒型形状の他、クラムシェル型形状、ケーシング断面において略楕円型形状、略多角形型形状等を好適に用いることができる。
【0068】
図8は、排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示す斜視図である。
【0069】
図8に示す排ガス処理体120は、多数のセル125がセル壁126を隔てて長手方向に並設される柱状のセラミック質からなるハニカム構造体である。また、セル125のいずれかの端部は、封止材128で封止されている。また、ハニカム構造体の外周には、ハニカム構造体の外周部を補強したり、形状を整えたり、ハニカム構造体の断熱性を向上させたりする目的で、外周コート層127が設けられている。
【0070】
セル125のいずれかの端部が封止されている場合、排ガス処理体120の一方の端部からみたときに、端部が封止されたセルと封止されていないセルとが交互に配置されていることが好ましい。
【0071】
排ガス処理体120を長手方向に垂直な方向に切断した断面形状は、特に限定されず、略円形、略楕円形でもよく、略三角形、略四角形、略五角形、略六角形等の略多角形であってもよい。
【0072】
排ガス処理体120を構成するセル125の断面形状は、略三角形、略四角形、略五角形、略六角形等の略多角形でもよく、また、略円形、略楕円形であってもよい。また、排ガス処理体120は、複数の断面形状のセルが組み合わされたものであってもよい。
【0073】
排ガス処理体120を構成する素材は特に限定されないが、炭化ケイ素質及び窒化ケイ素質等の非酸化物、並びに、コージェライト及びチタン酸アルミニウム等の酸化物を用いることができる。これらのうち、特に、炭化ケイ素質又は窒化ケイ素質等の非酸化物多孔質焼成体であることが望ましい。
これら多孔質焼成体は、脆性材料であるので、機械的な衝撃等により破壊されやすい。しかし、排ガス処理体120の側面の周囲にマット材10(保持シール材)が介在していると、衝撃を吸収するので、機械的な衝撃や熱衝撃により排ガス処理体120にクラック等が発生するのを防止することができる。
【0074】
排ガス処理体には、排ガスを浄化するための触媒を担持させてもよく、担持させる触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属が望ましく、この中では、白金がより望ましい。また、その他の触媒として、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、バリウム等のアルカリ土類金属を用いる事もできる。これらの触媒は、単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。これら触媒が担持されていると、PMを燃焼除去しやすくなり、有毒な排ガスの浄化も可能になる。
【0075】
排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体としては、コージェライト等からなり、一体的に形成された一体型ハニカム構造体であってもよく、あるいは、炭化ケイ素等からなり、多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体を主にセラミックを含むペーストを介して複数個結束してなる集合型ハニカム構造体であってもよい。
【0076】
排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体は、セルに封止材が設けられずに、セルの端部が封止されていなくてもよい。この場合、排ガス処理体は、白金等の触媒を担持させることによって、排ガス中に含まれるCO、HC又はNOx等の有害なガス成分を浄化する触媒担体として機能する。
【0077】
本発明のマット材からなる本発明の保持シール材は、排ガス処理体に巻き付けられて使用される。排ガス処理体に保持シール材を巻き付けた巻付体を排ガス浄化装置に配置する例について説明する。
【0078】
図9は、排ガス浄化装置の製造方法の一例を模式的に示した斜視図である。
図9に示すように排ガス処理体120の周囲に沿ってマット材10からなる保持シール材を巻き付け、巻付体140とする。次に、この巻付体140を金属ケーシング130に収容することで、排ガス浄化装置を製造する。
【0079】
巻付体140を作製する際に、マット材10を構成する積層マット20の第1の主面23を排ガス処理体120に向けて巻きつける。その結果、第1の主面23が排ガス処理体120側の面になり、第2の主面24が金属ケーシング130側の面になる。
【0080】
次に、巻付体140を金属ケーシング130に収容する方法としては、例えば、金属ケーシング130内部の所定の位置まで周囲にマット材10からなる保持シール材が配設された排ガス処理体120(巻付体140)を圧入する圧入方式(スタッフィング方式)、金属ケーシング130の内径を縮めるように外周側から圧縮するサイジング方式(スウェージング形式)、並びに、金属ケーシングを第1のケーシングおよび第2のケーシングの部品に分離可能な形状としておき、巻付体140を第1のケーシング上に載置した後に第2のケーシングをかぶせて密封するクラムシェル方式等が挙げられる。
圧入方式(スタッフィング方式)によって巻付体を金属ケーシングに収容する場合、金属ケーシングの内径(排ガス処理体を収容する部分の内径)は、上記巻付体の外径より若干小さくなっていることが望ましい。
これらの工程を経て、排ガス処理体に保持シール材を巻き付けた巻付体を排ガス浄化装置に配置することができる。
【0081】
本明細書には以下の事項が開示されている。
【0082】
本開示(1)は、無機繊維からなり前記無機繊維の配向方向が揃っている配向層と、無機繊維からなり前記無機繊維の配向方向がランダムであるランダム層と、をそれぞれ少なくとも1層含む積層マットを備え、前記積層マットはバインダを含む、マット材である。
【0083】
本開示(2)は、前記配向層と前記ランダム層が厚さ方向に交互に積層されており、前記積層マットの2つの最外層にはいずれも前記ランダム層が配置されている、本開示(1)に記載のマット材である。
【0084】
本開示(3)は、前記積層マットは、有機バインダ及び無機バインダのうち少なくとも一方のバインダを含む本開示(1)又は(2)に記載のマット材である。
【0085】
本開示(4)は、前記積層マットを厚さ方向に第1の表面部、中央部、第2の表面部に三等分した際に、前記第1の表面部の最外層に前記ランダム層が配置され、
前記第1の表面部における前記バインダの含有量が、前記中央部における前記バインダの含有量よりも多く、かつ、前記第2の表面部における前記バインダの含有量よりも多い、本開示(1)~(3)のいずれかに記載のマット材である。
【0086】
本開示(5)は、前記バインダの含有量が以下の関係を満たす、本開示(4)に記載のマット材である。
0.4≦(中央部/第1の表面部)
0.2≦(第2の表面部/第1の表面部)
(第2の表面部/中央部)≦0.5
【0087】
本開示(6)は、前記バインダの含有量がさらに以下の関係を満たす、本開示(5)に記載のマット材である。
0<(第2の表面部/中央部)
【0088】
本開示(7)は、前記配向層の無機繊維は、マット材の幅方向に対し60~90度の傾きを有する無機繊維を70%以上含む、本開示(1)~(6)のいずれかに記載のマット材である。
【0089】
本開示(8)は、引張試験により測定した破断時引張強度が200kPa以上である、本開示(1)~(7)のいずれかに記載のマット材である。
【0090】
本開示(9)は、引張試験により測定した破断時伸び量が3.5mm以下である、本開示(1)~(8)のいずれかに記載のマット材である。
【0091】
本開示(10)は、本開示(1)~(9)のいずれかに記載のマット材からなり、排ガス浄化装置内において排ガス処理体の保持に使用される保持シール材である。
【実施例】
【0092】
(実施例1)
抄造法により、無機繊維からなり配向層及びランダム層となる抄造マットを作製し、ランダム層/配向層/ランダム層/配向層/ランダム層の順に積層して、まとめてニードリング処理して積層マットを作製した。
【0093】
積層マットの一方の主面(ランダム層)から、有機バインダを含むバインダ液を付与し、乾燥してマット材を作製した。
積層マットを厚さ方向に三等分して、バインダ液を付与した側のランダム層を含む部分を第1の表面部とし、バインダ液を付与した側と反対側のランダム層を含む部分を第2の表面部とした。第1の表面部と第2の表面部の間の部分を中央部とした。
バインダ液付与前後の重量変化からバインダ含有量を求めた。
第1の表面部、中央部及び第2の表面部のうちの2つのバインダ含有量の比であるバインダ含有量割合を表1に示した。
【0094】
配向層の写真は
図4に示す写真であり、無機繊維の角度θが75~90度の範囲となっている無機繊維が52%存在していた。また、マット材の幅方向に対して60~90度の傾きを有する無機繊維が78%存在していた。
図4に示す写真と同様に撮影したランダム層については、無機繊維の角度θが75~90度の範囲となっている無機繊維が14%存在していた。また、マット材の幅方向に対して60~90度の傾きを有する無機繊維が27%存在していた。
【0095】
(比較例1)
特許文献1の実施例1のマット材(保持シール材)を準備した。
特許文献1の実施例1のマット材は、積層マットではなくその内部に配向層とランダム層の両方を有するものではない。
【0096】
(引張試験)
マット材を、マット材の長手方向に沿った長さ200mm、マット材の幅方向に沿った幅50mmに切断したサンプルを作製した。
サンプルの厚さを3か所測定し、引張試験用のチャック(つかみ治具)を備える万能材料試験機を用いて、チャック距離を片側40mmとし、マット材を100mm/minの速度で、サンプルの長手方向に沿って引っ張った際の、破断時の荷重及び引張距離を求めた。
破断時引張強度=破断時の荷重/(サンプル厚み×幅) で算出した。
破断時の引張距離を破断時伸び量とした。
結果を表1に示した。
【0097】
【0098】
表1に示す結果から、実施例1のマット材は高い引張強度を有していることがわかった。
【符号の説明】
【0099】
10 マット材
20 積層マット
23 積層マットの第1の主面
24 積層マットの第2の主面
25 積層マットの第1の長側面
26 積層マットの第2の長側面
27 積層マットの第1の短側面
28 積層マットの第2の短側面
30 配向層
31 配向層を構成する無機繊維
40、40a、40b ランダム層
41 ランダム層を構成する無機繊維
50 ニードル痕
51 リベット部
100 排ガス浄化装置
120 排ガス処理体
120a、120b 排ガス流入側端面
125 セル
126 セル壁
127 外周コート層
128 封止材
130 金属ケーシング
140 巻付体
【要約】 (修正有)
【課題】排ガス処理体への巻き付けの際に、マット材が破断してしまう問題に対し、高い引張強度を有するマット材を提供する。
【解決手段】無機繊維からなり前記無機繊維の配向方向が揃っている配向層30と、無機繊維からなり前記無機繊維の配向方向がランダムであるランダム層40と、をそれぞれ少なくとも1層含む積層マット20を備える。また、前記積層マットは、排ガス処理体への巻き付けにおいて、摩擦力を高くするためのバインダを含む、マット材10である。
【選択図】
図1