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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】柱梁接合部の構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20241217BHJP
   E04B 1/30 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
E04B1/58 505P
E04B1/30 K
E04B1/58 508P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024084494
(22)【出願日】2024-05-24
【審査請求日】2024-05-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591205536
【氏名又は名称】JFEシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】川田 侑子
(72)【発明者】
【氏名】山岡 賢史
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-162645(JP,A)
【文献】特開2022-085256(JP,A)
【文献】特開2017-089224(JP,A)
【文献】特開平11-117388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00-1/36
E04B 1/38-1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート柱に複数の鉄骨梁が貫入するようにして接合される柱梁接合部の構造であって、
前記複数の鉄骨梁は、互いの高さ方向の位置が異なるように前記鉄筋コンクリート柱に接合され、
前記柱梁接合部の上下の前記鉄筋コンクリート柱から連続的に前記柱梁接合部内に打設されたコンクリートを取り囲むように、ふさぎ板が設けられ、
前記鉄骨梁のウェブのうち前記ふさぎ板に取り囲まれた前記柱梁接合部内に位置する部分に、ダブラープレートが設置されている、柱梁接合部の構造。
【請求項2】
前記複数の鉄骨梁のうちの少なくとも二本の鉄骨梁が同一構面内に配置され、該二本の鉄骨梁のうち梁せいの中心が高い方の鉄骨梁である上段の鉄骨梁の下端が、梁せいの中心が低い方の鉄骨梁である下段の鉄骨梁の上端よりも低く、
前記ダブラープレートは、前記上段の鉄骨梁の下端と前記下段の鉄骨梁の上端との間の高さに配置されている、請求項1に記載の柱梁接合部の構造。
【請求項3】
前記鉄筋コンクリート柱と前記鉄骨梁との柱梁接合部に、さらにブレースの端部が接合されている、請求項1に記載の柱梁接合部の構造。
【請求項4】
前記鉄筋コンクリート柱と前記鉄骨梁との柱梁接合部に、さらにブレースの端部が接合されている、請求項2に記載の柱梁接合部の構造。
【請求項5】
前記複数の鉄骨梁のうちの少なくとも二本の鉄骨梁が同一構面内に配置され、該二本の鉄骨梁のうち梁せいの中心が高い方の鉄骨梁である上段の鉄骨梁の下端が、梁せいの中心が低い方の鉄骨梁である下段の鉄骨梁の上端よりも高く、
前記上段の鉄骨梁の下フランジと前記下段の鉄骨梁の上フランジとが繋ぎ板により接合され、
前記鉄筋コンクリート柱と前記二本の鉄骨梁との柱梁接合部に、さらにブレースの端部が接合され、
前記ダブラープレートは、前記二本の鉄骨梁のうち前記ブレースと同じスパンに配置されている鉄骨梁のウェブのうち前記鉄筋コンクリート柱に貫入する部分に配置されている、請求項1に記載の柱梁接合部の構造。
【請求項6】
前記ダブラープレートは、前記二本の鉄骨梁のうち前記ブレースと同じスパンに配置されていない鉄骨梁のウェブのうち前記鉄筋コンクリート柱に貫入する部分には配置されていない、請求項5に記載の柱梁接合部の構造。
【請求項7】
前記鉄骨梁のウェブのうち前記鉄筋コンクリート柱に貫入する部分および前記ダブラープレートに、コンクリート充填用の孔が設けられている、請求項1~6のいずれかに記載の柱梁接合部の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁との柱梁接合部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の構造形式として、柱を鉄筋コンクリート造とし、梁を鉄骨造とした、RCS構造が用いられている。RCS構造は、圧縮力に強い鉄筋コンクリート部材を柱に、軽量で曲げやせん断に強い鉄骨部材を梁に用いるため、合理的な構造となる。すなわち、鉄骨梁によりロングスパン化を可能にしつつ、鉄筋コンクリート柱により経済的に建物剛性を高め、建物重量を確実に支えることができる。RCS構造は、その特長から、大スパンかつ積載荷重の大きな建築物、具体的には物流施設や店舗などに特に適している。
【0003】
RCS構造では、その柱梁接合部の構造をどのような形式にするのかが、建築物全体の構造性能を確保する上でのポイントになる。RCS構造の柱梁接合部の構造としては、鉄骨梁の端部が鉄筋コンクリート柱の一方の側面から反対側の側面に向かって貫入するようにして柱梁接合部が構成される形式(以下、梁貫通形式という)が多く用いられている。
【0004】
ここで、2階以上にトラックバースを有する物流倉庫のように床面に段差を形成する場合や、鉄筋コンクリート柱に接合される鉄骨梁の梁せいが異なる場合には、鉄筋コンクリート柱に接合される2以上の鉄骨梁の間に、高さ方向に段差が生じる。
【0005】
特許文献1には、RCS構造において、鉄筋コンクリート柱に接合される鉄骨梁同士に段差を簡単に形成することができる、柱梁接合部の構造が開示されている。具体的には、上段の鉄骨梁と下段の鉄骨梁とが鉄筋コンクリート柱に埋設される埋設部分において、上段の鉄骨梁と下段の鉄骨梁とを接合する繋ぎ部材が備えられている。繋ぎ部材は、上段の鉄骨梁のウェブと下段の鉄骨梁のウェブとの間に、繋ぎ部材の少なくとも一部が位置するように、上段の鉄骨梁と下段の鉄骨梁のフランジに接合されている。
【0006】
また、非特許文献1~非特許文献3には、RCS構造において、鉄筋コンクリート柱に接合される2以上の鉄骨梁の天端の高さが異なる場合や、2以上の鉄骨梁の天端の高さが等しいが梁せいが異なる場合の、柱梁接合部の構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-162645号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】佐川 隆之、外3名、「段差梁を有する鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁で構成される架構の構造性能に関する実験的および解析的研究 コンクリート工学年次論文集」、コンクリート工学年次論文集、Vol.37、No.2、2015年2月、pp.1045-1050
【文献】荒金 直樹、外3名、「柱RC梁S混合構造架構の構造性能:その4~6」、日本建築学会大会学術講演梗概集、一般社団法人日本建築学会、2013年7月、pp.1467-1472
【文献】原田 雅俊、外1名、「梁偏心・梁段差を有する柱RC梁S混合構造の十字形柱梁接合部の構造性能 その1~2」、日本建築学会大会学術講演梗概集、一般社団法人日本建築学会、2018年7月、pp.1457-1460
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のような梁貫通形式の柱梁接合部の構造では、その耐力を上げようとすると、次のような課題が存在する。
【0010】
まず、柱梁接合部の耐力を上げる方法として、柱梁接合部内のみコンクリートの強度を上げようとすると、柱梁接合部内とそれ以外の鉄筋コンクリート柱とで、強度が異なるコンクリートを打ち分ける必要が生じるため、施工性や構造性能において好ましくない。
【0011】
また、柱梁接合部内のコンクリートを取り囲むふさぎ板の厚さを大きくすることにより、柱梁接合部内のコンクリートを拘束する枠効果を高めようとすると、ふさぎ板の隅角部を曲げ加工する場合の曲げ半径が大きくなり、鉄筋コンクリート柱の主筋の位置に影響しやすくなる。これを避けるべく、ふさぎ板の隅角部を、二枚の鋼板を組み合わせて溶接することにより形成すると、ふさぎ板の加工手間が増える。
【0012】
また、鉄骨梁のウェブの厚さを大きくすることにより、柱梁接合部パネル内の鉄骨梁のウェブのせん断耐力を高めようとすると、鉄骨梁に要するコストが増大する。
【0013】
また、柱梁接合部の断面を拡大することにより、柱梁接合部の耐力を上げようすると、拡大された柱梁接合部の断面に鉄筋コンクリート柱の断面を合わせる必要があり、鉄筋コンクリート柱の断面も大きくなる。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、複数の鉄骨梁が、互いの高さ方向の位置が異なるように、鉄筋コンクリート柱に貫入するようにして接合される柱梁接合部において、比較的簡単な構造で柱梁接合部の耐力を上げることができ、経済性、施工性、および構造性能に優れる、柱梁接合部の構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 鉄筋コンクリート柱に複数の鉄骨梁が貫入するようにして接合される柱梁接合部の構造であって、前記複数の鉄骨梁は、互いの高さ方向の位置が異なるように前記鉄筋コンクリート柱に接合され、前記鉄骨梁のウェブのうち前記鉄筋コンクリート柱に貫入する部分に、ダブラープレートが設置されている、柱梁接合部の構造。
【0016】
ここで、複数の鉄骨梁の「互いに高さ方向の位置が異なる」とは、複数の鉄骨梁の上端または下端の高さ、あるいは複数の鉄骨梁の梁せいが互いに異なることを意味するものとする。
[2] 前記複数の鉄骨梁のうちの少なくとも二本の鉄骨梁が同一構面内に配置され、該二本の鉄骨梁のうち梁せいの中心が高い方の鉄骨梁である上段の鉄骨梁の下端が、梁せいの中心が低い方の鉄骨梁である下段の鉄骨梁の上端よりも低く、前記ダブラープレートは、前記上段の鉄骨梁の下端と前記下段の鉄骨梁の上端との間の高さに配置されている、[1]に記載の柱梁接合部の構造。
[3] 前記鉄筋コンクリート柱と前記鉄骨梁との柱梁接合部に、さらにブレースの端部が接合されている、[1]に記載の柱梁接合部の構造。
[4] 前記鉄筋コンクリート柱と前記鉄骨梁との柱梁接合部に、さらにブレースの端部が接合されている、[2]に記載の柱梁接合部の構造。
[5] 前記複数の鉄骨梁のうちの少なくとも二本の鉄骨梁が同一構面内に配置され、該二本の鉄骨梁のうち梁せいの中心が高い方の鉄骨梁である上段の鉄骨梁の下端が、梁せいの中心が低い方の鉄骨梁である下段の鉄骨梁の上端よりも高く、前記上段の鉄骨梁の下フランジと前記下段の鉄骨梁の上フランジとが繋ぎ板により接合され、前記鉄筋コンクリート柱と前記二本の鉄骨梁との柱梁接合部に、さらにブレースの端部が接合され、前記ダブラープレートは、前記二本の鉄骨梁のうち前記ブレースと同じスパンに配置されている鉄骨梁のウェブのうち前記鉄筋コンクリート柱に貫入する部分に配置されている、[1]に記載の柱梁接合部の構造。
[6] 前記ダブラープレートは、前記二本の鉄骨梁のうち前記ブレースと同じスパンに配置されていない鉄骨梁のウェブのうち前記鉄筋コンクリート柱に貫入する部分には配置されていない、[5]に記載の柱梁接合部の構造。
[7] 前記鉄骨梁のウェブのうち前記鉄筋コンクリート柱に貫入する部分および前記ダブラープレートに、コンクリート充填用の孔が設けられている、[1]~[6]のいずれかに記載の柱梁接合部の構造。
【発明の効果】
【0017】
本発明の柱梁接合部の構造によれば、鉄筋コンクリート柱に複数の鉄骨梁が貫入するようにして接合される柱梁接合部の構造において、鉄骨梁のウェブのうち鉄筋コンクリート柱に貫入する部分に、ダブラープレートが設置されている。よって、比較的簡単な構造で柱梁接合部の耐力を上げることができ、鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁との柱梁接合部の設計を容易にしつつ、経済性、施工性、および構造性能に優れる柱梁接合部を実現できる。
【0018】
また、鉄骨梁のウェブのうち鉄筋コンクリート柱に貫入する部分に、ダブラープレートが設置されているので、この鉄骨梁のウェブおよびダブラープレートに、コンクリート充填用の孔を大きく開けることが可能となる。よって、柱梁接合部内におけるコンクリートの充填性が高められ、コンクリートの打設が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1(a)および図1(b)はそれぞれ、本発明の第一の実施形態に係る柱梁接合部の構造を示す縦断面図、斜視図である。また、図1(c)は、図1(a)および図1(b)に示す柱梁接合部の構造の要部を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の第一の実施形態の変形例に係る柱梁接合部の構造を示す縦断面図である。
図3図3(a)および図3(b)はそれぞれ、本発明の第二の実施形態に係る柱梁接合部の構造を示す縦断面図、斜視図である。
図4図4は、本発明の第二の実施形態の変形例に係る柱梁接合部の構造を示す縦断面図である。
図5図5(a)および図5(b)はそれぞれ、本発明の第三の実施形態に係る柱梁接合部の構造を示す縦断面図、斜視図である。また、図5(c)は、図5(a)および図5(b)に示す柱梁接合部の構造の要部を示す斜視図である。
図6図6(a)および図6(b)はそれぞれ、本発明の第四の実施形態に係る柱梁接合部の構造を示す縦断面図、斜視図である。
図7図7(a)および図7(b)はそれぞれ、本発明の第五の実施形態に係る柱梁接合部の構造を示す縦断面図、斜視図である。
図8図8(a)および図8(b)はそれぞれ、本発明の第六の実施形態に係る柱梁接合部を示す縦断面図である。また、図8(c)は、図8(a)および図8(b)に示す柱梁接合部の斜視図である。
図9図9(a)および図9(b)は、本発明の第一の実施形態の変形例に係る柱梁接合部の構造において、柱梁接合部にブレースの端部が接合された状況を示す側面図である。
図10図10は、本発明の第二の実施形態の変形例に係る柱梁接合部の構造において、柱梁接合部にブレースの端部が接合された状況を示す側面図である。
図11図11(a)および図11(b)は、本発明の第三の実施形態の変形例に係る柱梁接合部の構造において、柱梁接合部にブレースの端部が接合された状況を示す側面図である。
図12図12(a)および図12(b)は、本発明の第四の実施形態の変形例に係る柱梁接合部の構造において、柱梁接合部にブレースの端部が接合された状況を示す側面図である。
図13図13は、本発明の第五の実施形態に係る柱梁接合部の構造において、柱梁接合部にブレースの端部が接合された状況を示す側面図である。
図14図14は、本発明の柱梁接合部の構造における、コンクリートの有効断面係数cpkと、柱せいと梁せいとの比CD/BDとの関係を示すグラフである。
図15図15は、本発明の柱梁接合部の構造における、コンクリートの有効断面係数cpkと、柱幅と梁幅との比Cb/Bbとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の柱梁接合部の構造の実施形態について、具体的に説明する。
(第一の実施形態)
図1(a)および図1(b)に、本発明の第一の実施形態に係る柱梁接合部1Aの構造の縦断面図、斜視図を示す。また、図1(c)に、本発明の第一の実施形態に係る柱梁接合部1Aの構造の要部の斜視図を示す。
【0021】
図1(a)~図1(c)に示すように、第一の実施形態の柱梁接合部1Aの構造では、鉄筋コンクリート柱2に、H形鋼からなる四本の鉄骨梁3A、3C、3D、4が貫入するようにして接合されている。第一の実施形態の柱梁接合部1Aの構造は、鉄筋コンクリート柱2の四方に四本の鉄骨梁3A、3C、3D、4が十字形に取り付いた梁貫通形式ふさぎ板タイプの柱梁接合部に適用されている。図1(a)および図1(b)に示すように、十字形に交差する鉄骨梁3A、3C、3D、4はそれぞれ、鉄筋コンクリート柱2の一方の側面から反対側の側面まで完全に貫通するように設けられている。
【0022】
なお、鉄筋コンクリート柱2の三方に鉄骨梁がT字形に取り付く場合や、鉄筋コンクリート柱2の二方に鉄骨梁がL字形に取り付く場合も、T字形またはL字形に交差する鉄骨梁はいずれも、鉄筋コンクリート柱2の一方の側面から反対側の側面まで完全に貫通するように設けられるようにする。
【0023】
四本の鉄骨梁3A、3C、3D、4は、互いの高さ方向の位置が異なるように鉄筋コンクリート柱2に接合されている。具体的には、主方向では二本の鉄骨梁3A、4が同一構面内に配置されて鉄筋コンクリート柱2に接合されている。また、直交方向では二本の鉄骨梁3C、3Dが同一構面内に配置されて鉄筋コンクリート柱2に接合されている。四本の鉄骨梁3A、3C、3D、4の梁せいは互いに等しいが、鉄骨梁3A、3C、3Dの上端の高さと、鉄骨梁4の上端の高さとが異なっており、上段の三本の鉄骨梁3A、3C、3Dの下端は、下段の鉄骨梁4の上端よりも低い。すなわち、上段の鉄骨梁3A、3C、3Dのうち主方向の鉄骨梁3Aの梁せい:B1(mm)、下段の鉄骨梁4の梁せい:B2(mm)、上段の鉄骨梁3Aと下段の鉄骨梁4の中心間距離:BH(mm)とすると、鉄骨梁3A、4の段差率2BH/(B1B2)<1である。
【0024】
図1(b)および図1(c)に示すように、直交方向において鉄筋コンクリート柱2の両側に接合される二本の鉄骨梁3C、3Dは、実際には、鉄筋コンクリート柱2を貫通するように配置された一本のH形鋼から構成されている。そして、主方向に配置される鉄骨梁3A、4のうち上段の鉄骨梁3Aが、直交方向の二本の鉄骨梁3C、3Dを構成するH形鋼を貫通するように配置され、このH形鋼の両側に溶接されている。
【0025】
また、図1(a)および図1(c)に示すように、主方向に配置される鉄骨梁3A、4のうち下段の鉄骨梁4が鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分の両側には、後述するふさぎ板22を保持するための定着部44が、下段の鉄骨梁4を構成するH形鋼を貫通するように配置され、このH形鋼の両側に溶接されている。定着部44は、上段の鉄骨梁3Aの下端と下段の鉄骨梁4の下端との高さの差に等しい梁せいを有するT形鋼から構成されている。
【0026】
第一の実施形態の柱梁接合部1Aの構造では、図1(a)および図1(c)に示すように、柱梁接合部1A内において、主方向の鉄骨梁3A、4のウェブ31、41が、ダブラープレート7により補強されている。具体的には、ダブラープレート7の外周の全長が鉄骨梁3A、4のウェブ31、41に、隅肉溶接等により固定されている。図示は省略するが、これと同様に、柱梁接合部1A内において、直交方向の鉄骨梁3C、3Dのウェブ31も、ダブラープレート7により補強されている。
【0027】
このように、第一の実施形態の柱梁接合部1Aの構造では、柱梁接合部1A内の鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41にダブラープレート7が設置され、補強されているので、ダブラープレート7のせん断耐力を柱梁接合部1A全体のせん断耐力に累加できる。
【0028】
また、第一の実施形態の柱梁接合部1Aの構造では、図1(a)および図1(c)に示すように、主方向の鉄骨梁3A、4のウェブ31、41のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分およびこの部分に固定されるダブラープレート7に、コンクリート充填用の孔31h、41h、7hが設けられている。図示は省略するが、これと同様に、直交方向の鉄骨梁3C、3Dのウェブ31のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分およびこの部分に固定されるダブラープレートにも、コンクリート充填用の孔が設けられている。
【0029】
第一の実施形態の柱梁接合部1Aの構造では、鉄筋コンクリート柱2と鉄骨梁3A、3C、3D、4との柱梁接合部1A内の鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41が、ダブラープレート7により補強されているため、柱梁接合部1A内の鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41およびダブラープレート7に、コンクリート充填用の孔31h、41h、7hを大きく開けることが可能となる。これにより、柱梁接合部1A内におけるコンクリートの充填性が高められ、コンクリートの打設が容易となる。
【0030】
また、第一の実施形態の柱梁接合部1Aの構造では、図1(a)~図1(c)に示すように、柱梁接合部1Aの上下の鉄筋コンクリート柱2から連続的に柱梁接合部1A内に打設されたコンクリート(図示せず)を取り囲むように、鋼板からなるふさぎ板22が設けられている。ふさぎ板22は、鉄骨梁3A、3C、3D、4の上フランジ32、42と下フランジ33、43の間の高さの範囲で、柱梁接合部1内のコンクリートを、鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41の表面位置まで完全に覆うように設けられている。ふさぎ板22の側縁は、鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41、上フランジ32、42、および下フランジ33、43、ならびに鉄骨梁4の定着部44を構成するT形鋼のウェブおよび下フランジに、溶接により固定されている。上述のとおり、鉄筋コンクリート柱2を貫通した鉄骨梁3A、3C、3D、4が、鉄筋コンクリート柱2の反対側の側面上に突出する部位においても、ふさぎ板22が、鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41、上フランジ32、42、および下フランジ33、43に溶接により固定されている。
【0031】
ふさぎ板22の幅hb(mm)および厚さht(mm)は、hb/ht≦217およびht≧6の関係を満たすようにすることが好ましい。このようにすると、ふさぎ板22の座屈を抑制でき、ふさぎ板22によってコンクリートを拘束する枠効果が十分に得られるため、柱梁接合部1Aの耐力を高めることができる。
【0032】
ここで、ふさぎ板22の幅hb(mm)とは、鉄筋コンクリート柱2に取り付く複数の鉄骨梁3A、4のうち、水平方向に隣接する鉄骨梁3A、4の間に設けられるふさぎ板22の各々の水平方向の全幅をいい、図1(b)に示すように、柱梁接合部1Aの全幅に相当する。例えば、図1(a)~図1(c)に示す柱梁接合部1Aの構造では、隣接する鉄骨梁3A、4の間でコンクリート(図示せず)を覆うように、L字状に曲げ加工された四枚のふさぎ板22が設けられているが、上述のふさぎ板22の幅hb(mm)とは、これら各ふさぎ板22を曲げ加工する前の全幅をいう。
【0033】
あるいは、図1(a)~図1(c)に示す柱梁接合部1Aの構造において、鉄骨梁3A、3C、3Dのウェブ31、上フランジ32および下フランジ33に囲まれる部位、ならびに鉄骨梁4のウェブ41、上フランジ42および下フランジ43に囲まれる部位に、柱梁接合部1A内のコンクリートを支圧する支圧板(図示せず)を設けるようにしてもよい。支圧板には、鉄骨梁3A、4のウェブ31、41の厚さ以上の厚さを有する鋼板を用いることが好ましく、鉄骨梁3A、3C、3Dのウェブ31、上フランジ32、および下フランジ33、または鉄骨梁4のウェブ41、上フランジ42および下フランジ43に、溶接により固定する。そして、柱梁接合部1Aの上下の鉄筋コンクリート柱2から連続的に柱梁接合部1A内に打設されたコンクリート(図示せず)のうち、支圧板により覆われずに残る部分を取り囲むように、ふさぎ板22を設けるようにする。支圧板およびふさぎ板22は、鉄骨梁3A、3C、3Dの上フランジ32と鉄骨梁4の下フランジ43との間の高さの範囲で、柱梁接合部1A内のコンクリートを、鉄骨梁3A、3C、3Dのウェブ31、および鉄骨梁4のウェブ41の表面位置まで完全に覆うように設ける。ふさぎ板22は、支圧板と連続するように設け、溶接またはボルト接合により支圧板に固定する。
【0034】
このようにすると、支圧板によりコンクリートの支圧効果が高められ、柱梁接合部1A内のコンクリートが負担するせん断耐力を十分に発揮させることができる。また、支圧板の枠効果により、柱梁接合部1A内の鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41およびダブラープレート7が負担するせん断耐力を大きくすることができる。
【0035】
第一の実施形態の柱梁接合部1Aの構造によれば、鉄筋コンクリート柱2と鉄骨梁3A、3C、3D、4との柱梁接合部1A内の鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41が、ダブラープレート7により補強されているので、比較的簡単な構造で柱梁接合部1Aの耐力を上げることができる。また、第一の実施形態の柱梁接合部1Aの構造では、ダブラープレート7のせん断耐力を、柱梁接合部1A全体のせん断耐力に累加できるため、柱梁接合部1Aの設計が容易になる。このように、第一の実施形態の柱梁接合部1Aの構造では、鉄筋コンクリート柱2と鉄骨梁3A、3C、3D、4との柱梁接合部1Aの設計を容易にしつつ、経済性、施工性、および構造性能に優れる柱梁接合部1Aを実現できる。
【0036】
そして、柱梁接合部の耐力を上げる方法として柱梁接合部内のみコンクリートの強度を上げる場合とは異なり、第一の実施形態の柱梁接合部1Aの構造では、柱梁接合部1A内とそれ以外の鉄筋コンクリート柱2とで、強度が同じコンクリートを一体的に打設できる。このため、第一の実施形態の柱梁接合部1Aの構造は、施工性や構造性能において優れている。
【0037】
また、柱梁接合部1A内の鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41をダブラープレート7により補強することにより、ふさぎ板22の板厚を厚くすることなく、柱梁接合部1Aの耐力を上げることができる。これにより、ふさぎ板の隅角部を曲げ加工する場合の板厚に応じた曲げ半径を大きくする必要がなく、鉄筋コンクリート柱2の主筋21の位置に影響を及ぼすことがない。
【0038】
また、第一の実施形態の柱梁接合部1Aの構造では、鉄骨梁3A、3C、3D、4全体のウェブ31、41の厚さを厚くするのではなく、柱梁接合部1A内のみにおいて、鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41が、ダブラープレート7により補強されている。よって、鉄骨梁3A、4に要するコストが増大することがない。
【0039】
図2に、本発明の第一の実施形態の変形例に係る柱梁接合部1A´の構造の縦断面図を、鉄筋コンクリート柱2に水平方向に発生するせん断力分布とともに示す。
【0040】
図2の右側に示すせん断力分布のとおり、第一の実施形態の柱梁接合部1Aの構造では、主方向に配置される二本の鉄骨梁3A、4のウェブ31、41が高さ方向で重複する領域、すなわち、上段の鉄骨梁3Aの下端と下段の鉄骨梁4の上端との間の高さの範囲で、大きなせん断力が発生する。そこで、第一の実施形態の変形例の柱梁接合部1A´の構造では、応力が集中する箇所のみにダブラープレート7を設けている。すなわち、第一の実施形態の変形例の柱梁接合部1A´の構造では、図2に示すように、ダブラープレート7は、上段の鉄骨梁3Aの下端と下段の鉄骨梁4の上端との間の高さの範囲のみに配置されている。その他の点については、第一の実施形態の変形例の柱梁接合部1A´の構造は、第一の実施形態の柱梁接合部1Aの構造と同様に構成されている。
【0041】
第一の実施形態の変形例の柱梁接合部1A´の構造では、応力が集中する箇所のみにダブラープレート7が設けられているので、より合理的な構造となり、柱梁接合部の設計がさらに容易になる。
【0042】
第一の実施形態の柱梁接合部1Aの構造、および第一の実施形態の変形例の柱梁接合部1A´の構造は、主方向の鉄骨梁3A、4の梁せい比B2B1B1B2)が0.5~1.0の範囲内である場合に適用することが好ましい。また、上段の鉄骨梁3A、3C、3Dのうち直交方向の鉄骨梁3C、3Dの梁せい:B3(mm)とすると、主方向の鉄骨梁3Aと直交方向の鉄骨梁3C、3Dの梁せい比B3B1が0.5~1.0の範囲内である場合に適用することが好ましい。
(第二の実施形態)
図3(a)および図3(b)に、本発明の第二の実施形態に係る柱梁接合部1Bの構造の縦断面図、斜視図を示す。
【0043】
図3(a)および図3(b)に示すように、第二の実施形態の柱梁接合部1Bの構造では、鉄筋コンクリート柱2に、H形鋼からなる四本の鉄骨梁3B~3D、5Aが貫入するようにして接合されている。四本の鉄骨梁3B~3D、5Aは、互いの高さ方向の位置が異なるように鉄筋コンクリート柱2に接合されている。具体的には、主方向では二本の鉄骨梁3B、5Aが同一構面内に配置されて鉄筋コンクリート柱2に接合され、直交方向では二本の鉄骨梁3C、3Dが同一構面内に配置されて鉄筋コンクリート柱2に接合されている。四本の鉄骨梁3B~3D、5Aの上端の高さは互いに等しいが、鉄骨梁5Aの梁せいは鉄骨梁3B~3Dの梁せいよりも小さく、鉄骨梁3B~3Dの下端の高さは、鉄骨梁5Aの下端の高さよりも低い。すなわち、主方向の鉄骨梁3Bの梁せい:B1(mm)、鉄骨梁5Aの梁せい:B2(mm)とすると、B1B2である。
【0044】
図3(b)に示すように、直交方向において鉄筋コンクリート柱2の両側に接合される二本の鉄骨梁3C、3Dは、実際には、鉄筋コンクリート柱2を貫通するように配置された一本のH形鋼から構成されている。そして、主方向に配置される鉄骨梁3B、5Aが、直交方向の二本の鉄骨梁3C、3Dを構成するH形鋼の両側に溶接されている。
【0045】
第二の実施形態の柱梁接合部1Bの構造では、図3(a)に示すように、柱梁接合部1B内において、主方向の鉄骨梁3B、5Aのウェブ31、51が、ダブラープレート7により補強されている。具体的には、ダブラープレート7の外周の全長が鉄骨梁3B、5Aのウェブ31、51に、隅肉溶接等により固定されている。図示は省略するが、これと同様に、柱梁接合部1B内において、直交方向の鉄骨梁3C、3Dのウェブ31も、ダブラープレートにより補強されている。
【0046】
このように、第二の実施形態の柱梁接合部1Bの構造では、柱梁接合部1B内の鉄骨梁3B~3D、5Aのウェブ31、51にダブラープレート7が設置され、補強されているので、ダブラープレート7のせん断耐力を柱梁接合部1B全体のせん断耐力に累加できる。
【0047】
また、第二の実施形態の柱梁接合部1Bの構造では、図3(a)に示すように、主方向の鉄骨梁3B、5Aのウェブ31、51のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分およびこの部分に固定されるダブラープレート7に、コンクリート充填用の孔31h、51h、7hが設けられている。図示は省略するが、これと同様に、直交方向の鉄骨梁3C、3Dのウェブ31のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分およびこの部分に固定されるダブラープレートにも、コンクリート充填用の孔が設けられている。
【0048】
第二の実施形態の柱梁接合部1Bの構造では、鉄筋コンクリート柱2と鉄骨梁3B~3D、5Aとの柱梁接合部1B内の鉄骨梁3B~3D、5Aのウェブ31、51が、ダブラープレート7により補強されているため、柱梁接合部1B内の鉄骨梁3B~3D、5Aのウェブ31、51およびダブラープレート7に、コンクリート充填用の孔31h、51h、7hを大きく開けることが可能となる。これにより、柱梁接合部1B内におけるコンクリートの充填性が高められ、コンクリートの打設が容易となる。
【0049】
その他の点については、第二の実施形態の柱梁接合部1Bの構造は、第一の実施形態の柱梁接合部1Aの構造と同様に構成されている。
【0050】
第二の実施形態の柱梁接合部1Bの構造によれば、第一の実施形態の柱梁接合部1Aの構造と同様の効果が得られる。
【0051】
図4に、本発明の第二の実施形態の変形例に係る柱梁接合部1B´の構造の縦断面図を、鉄筋コンクリート柱2に水平方向に発生するせん断力分布とともに示す。
【0052】
図4の右側に示すせん断力分布のとおり、第二の実施形態の柱梁接合部1Bの構造では、主方向に配置される二本の鉄骨梁3B、5Aのウェブ31、51が高さ方向で重複する領域、すなわち、鉄骨梁5Aの上端と下端との間の高さの範囲で、大きなせん断力が発生する。そこで、第二の実施形態の変形例の柱梁接合部1B´の構造では、応力が集中する箇所のみにダブラープレート7を設けている。すなわち、第二の実施形態の変形例の柱梁接合部1B´の構造では、図4に示すように、ダブラープレート7は、鉄骨梁5Aの上端と下端との間の高さの範囲のみに配置されている。その他の点については、第二の実施形態の変形例の柱梁接合部1B´の構造は、第二の実施形態の柱梁接合部1Bの構造と同様に構成されている。
【0053】
第二の実施形態の変形例の柱梁接合部1B´の構造では、応力が集中する箇所のみにダブラープレート7が設けられているので、より合理的な構造となり、柱梁接合部の設計がさらに容易になる。
(第三の実施形態)
図5(a)および図5(b)に、本発明の第三の実施形態に係る柱梁接合部1Cの構造の縦断面図、斜視図を示す。また、図5(c)に、本発明の第三の実施形態に係る柱梁接合部1Cの構造の要部の斜視図を示す。図5(a)には、鉄筋コンクリート柱2に水平方向に発生するせん断力分布を併せて示している。
【0054】
図5(a)および図5(b)に示すように、第三の実施形態の柱梁接合部1Cの構造では、鉄筋コンクリート柱2に、H形鋼からなる四本の鉄骨梁3A、3C、3D、4が貫入するようにして接合されている。四本の鉄骨梁3A、3C、3D、4は、互いの高さ方向の位置が異なるように鉄筋コンクリート柱2に接合されている。具体的には、主方向では二本の鉄骨梁3A、4が同一構面内に配置されて鉄筋コンクリート柱2に接合され、直交方向では二本の鉄骨梁3C、3Dが同一構面内に配置されて鉄筋コンクリート柱2に接合されている。四本の鉄骨梁3A、3C、3D、4の梁せいは互いに等しいが、鉄骨梁3A、3C、3Dの上端の高さと、鉄骨梁4の上端の高さとが異なっており、上段の三本の鉄骨梁3A、3C、3Dの下端は、下段の鉄骨梁4の上端よりも高い。すなわち、上段の鉄骨梁3A、3C、3Dのうち主方向の鉄骨梁3Aの梁せい:B1(mm)、下段の鉄骨梁4の梁せい:B2(mm)、上段の鉄骨梁3Aと下段の鉄骨梁4の中心間距離:BH(mm)とすると、鉄骨梁3A、4の段差率2BH/(B1B2)>1である。
【0055】
そして、上段の三本の鉄骨梁3A、3C、3Dのうちの一本の鉄骨梁3Aの下フランジ33と、下段の鉄骨梁4の上フランジ42とが、繋ぎ板6により接合されている。繋ぎ板6は、この繋ぎ板6により接合される上段の鉄骨梁3Aおよび下段の鉄骨梁4のウェブ31、41と同一面内に配置されている。
【0056】
図5(b)および図5(c)に示すように、直交方向において鉄筋コンクリート柱2の両側に接合される二本の鉄骨梁3C、3Dは、実際には、鉄筋コンクリート柱2を貫通するように配置された一本のH形鋼から構成されている。そして、主方向に配置される鉄骨梁3A、4のうち上段の鉄骨梁3Aが、直交方向の二本の鉄骨梁3C、3Dを構成するH形鋼を貫通するように配置され、このH形鋼の両側に溶接されている。
【0057】
また、図5(a)および図5(c)に示すように、主方向に配置される鉄骨梁3A、4のうち下段の鉄骨梁4が鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分の両側には、ふさぎ板22を保持するための定着部44が、下段の鉄骨梁4を構成するH形鋼を貫通するように配置され、このH形鋼の両側、および鉄骨梁3C、3Dのウェブと同一面内に配置される繋ぎ板6(後述する)に溶接されている。定着部44は、鉄骨梁4と同じ梁せいを有するH形鋼から構成されている。
【0058】
そして、上段の三本の鉄骨梁3A、3C、3Dのうち直交方向に配置される二本の鉄骨梁3C、3Dの下フランジ33と、定着部44を構成するH形鋼の上フランジとが、繋ぎ板6により接合されている。繋ぎ板6は、この繋ぎ板6により接合される鉄骨梁3C、3Dのウェブ31および定着部44を構成する鉄骨梁のウェブと同一面内に配置されている。
【0059】
第三の実施形態の柱梁接合部1Cの構造では、図5(a)および図5(c)に示すように、柱梁接合部1Cにおいて、主方向の鉄骨梁3A、4のウェブ31、41が、ダブラープレート7により補強されている。具体的には、ダブラープレート7の外周の全長が鉄骨梁3A、4のウェブ31、41に、隅肉溶接等により固定されている。図示は省略するが、これと同様に、柱梁接合部1C内において、直交方向の鉄骨梁3C、3Dのウェブ31も、ダブラープレートにより補強されている。
【0060】
このように、第三の実施形態の柱梁接合部1Cの構造では、柱梁接合部1C内の鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41にダブラープレート7が設置され、補強されているので、ダブラープレート7のせん断耐力を柱梁接合部1C全体のせん断耐力に累加できる。
【0061】
また、第三の実施形態の柱梁接合部1Cの構造では、図5(a)に示すように、主方向の鉄骨梁3A、4のウェブ31、41のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分およびこの部分に固定されるダブラープレート7に、コンクリート充填用の孔31h、41h、7hが設けられている。図示は省略するが、これと同様に、直交方向の鉄骨梁3C、3Dのウェブ31のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分およびこの部分に固定されるダブラープレートにも、コンクリート充填用の孔が設けられている。
【0062】
第三の実施形態の柱梁接合部1Cの構造では、鉄筋コンクリート柱2と鉄骨梁3A、3C、3D、4との柱梁接合部1C内の鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41が、ダブラープレート7により補強されているため、柱梁接合部1C内の鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41およびダブラープレート7に、コンクリート充填用の孔31h、41h、7hを大きく開けることが可能となる。これにより、柱梁接合部1C内におけるコンクリートの充填性が高められ、コンクリートの打設が容易となる。
【0063】
また、第三の実施形態の柱梁接合部1Cの構造では、図5(a)に示すように、上段の三本の鉄骨梁3A、3C、3Dのうちの主方向の鉄骨梁3Aと下段の鉄骨梁4とを接合する繋ぎ板6にも、コンクリート充填用の孔6hが設けられている。図5(a)の右側に示すせん断力分布のとおり、第三の実施形態の柱梁接合部1Cの構造では、繋ぎ板6に作用するせん断力は、鉄骨梁3A、4のウェブ31、41に作用するせん断力よりも小さい。よって、繋ぎ板6に設ける孔6hの孔径は、鉄骨梁3A、4のウェブ31、41に設けられる孔31h、41hの孔径よりも大きくすることができる。これにより、柱梁接合部1C内におけるコンクリートの充填性がさらに高められ、コンクリートの打設が容易となる。
【0064】
その他の点については、第三の実施形態の柱梁接合部1Cの構造は、第一の実施形態の柱梁接合部1Aの構造と同様に構成されている。
【0065】
第三の実施形態の柱梁接合部1Cの構造は、鉄骨梁3A、3C、3D、4の段差率2BH/(B1B2)≦1.25である場合に適用することが好ましい。
【0066】
第三の実施形態の柱梁接合部1Cの構造によれば、第一の実施形態の柱梁接合部1Aの構造と同様の効果が得られる。
(第四の実施形態)
図6(a)および図6(b)に、本発明の第四の実施形態に係る柱梁接合部1Dの構造の縦断面図、斜視図を示す。
【0067】
図6(a)および図6(b)に示すように、第四の実施形態の柱梁接合部1Dの構造では、鉄筋コンクリート柱2に、H形鋼からなる四本の鉄骨梁3A、3C、3D、4が貫入するようにして接合されている。四本の鉄骨梁3A、3C、3D、4は、互いの高さ方向の位置が異なるように鉄筋コンクリート柱2に接合されている。具体的には、主方向では二本の鉄骨梁3A、4が同一構面内に配置されて鉄筋コンクリート柱2に接合され、直交方向では二本の鉄骨梁3C、3Dが同一構面内に配置されて鉄筋コンクリート柱2に接合されている。四本の鉄骨梁3A、3C、3D、4の梁せいは互いに等しいが、鉄骨梁3A、3C、3Dの上端の高さと、鉄骨梁4の上端の高さとが異なっており、上段の三本の鉄骨梁3A、3C、3Dの下フランジ33が、下段の鉄骨梁4の上フランジ42と同じ高さである。すなわち、上段の鉄骨梁3A、3C、3Dのうち主方向の鉄骨梁3Aの梁せい:B1(mm)、下段の鉄骨梁4の梁せい:B2(mm)、上段の鉄骨梁3Aと下段の鉄骨梁4の中心間距離:BH(mm)とすると、鉄骨梁3A、4の段差率2BH/(B1B2)=1である。
【0068】
図6(b)に示すように、直交方向において鉄筋コンクリート柱2の両側に接合される二本の鉄骨梁3C、3Dは、実際には、鉄筋コンクリート柱2を貫通するうに配置された一本のH形鋼から構成されている。そして、主方向に配置される鉄骨梁3A、4のうち上段の鉄骨梁3Aが、直交方向の二本の鉄骨梁3C、3Dを構成するH形鋼を貫通するように配置され、このH形鋼の両側に溶接されている。
【0069】
また、主方向に配置される鉄骨梁3A、4のうち下段の鉄骨梁4が鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分の両側には、ふさぎ板22を保持するための定着部44が、下段の鉄骨梁4を構成するH形鋼を貫通するように配置され、このH形鋼の両側に溶接されている。定着部44は、鉄骨梁4と同じ梁せいを有するT形鋼から構成されている。
【0070】
第四の実施形態の柱梁接合部1Dの構造では、図6(a)に示すように、柱梁接合部1D内において、主方向の鉄骨梁3A、4のウェブ31、41が、ダブラープレート7により補強されている。具体的には、ダブラープレート7の外周の全長が鉄骨梁3A、4のウェブ31、41に、隅肉溶接等により固定されている。図示は省略するが、これと同様に、柱梁接合部1D内において、直交方向の鉄骨梁3C、3Dのウェブ31も、ダブラープレートにより補強されている。
【0071】
このように、第四の実施形態の柱梁接合部1Dの構造では、柱梁接合部1D内の鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41にダブラープレート7が設置され、補強されているので、ダブラープレート7のせん断耐力を柱梁接合部1D全体のせん断耐力に累加できる。
【0072】
また、第四の実施形態の柱梁接合部1Dの構造では、図6(a)に示すように、主方向の鉄骨梁3A、4のウェブ31、41のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分およびこの部分に固定されるダブラープレート7に、コンクリート充填用の孔31h、41h、7hが設けられている。図示は省略するが、これと同様に、直交方向の鉄骨梁3C、3Dのウェブ31のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分およびこの部分に固定されるダブラープレートにも、コンクリート充填用の孔が設けられている。
【0073】
第四の実施形態の柱梁接合部1Dの構造では、鉄筋コンクリート柱2と鉄骨梁3A、3C、3D、4との柱梁接合部1C内の鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41が、ダブラープレート7により補強されているため、柱梁接合部1D内の鉄骨梁3A、3C、3D、4のウェブ31、41およびダブラープレート7に、コンクリート充填用の孔31h、41h、7hを大きく開けることが可能となる。これにより、柱梁接合部1D内におけるコンクリートの充填性が高められ、コンクリートの打設が容易となる。
【0074】
第四の実施形態の柱梁接合部1Dの構造によれば、第一の実施形態の柱梁接合部1Aの構造と同様の効果が得られる。
(第五の実施形態)
図7(a)および図7(b)に、本発明の第五の実施形態に係る柱梁接合部1Eの構造の縦断面図、斜視図を示す。
【0075】
図7(a)および図7(b)に示すように、第五の実施形態の柱梁接合部1Eの構造では、鉄筋コンクリート柱2に、H形鋼からなる四本の鉄骨梁3A、3B、5C、5Dが貫入するようにして接合されている。四本の鉄骨梁3A、3B、5C、5Dは、互いの高さ方向の位置が異なるように鉄筋コンクリート柱2に接合されている。具体的には、主方向では二本の鉄骨梁3A、3Bが同一構面内に配置されて鉄筋コンクリート柱2に接合され、直交方向では二本の鉄骨梁5C、5Dが同一構面内に配置されて鉄筋コンクリート柱2に接合されている。四本の鉄骨梁3A、3B、5C、5Dの上端の高さは互いに等しいが、鉄骨梁5C、5Dの梁せいは鉄骨梁3A、3Bの梁せいよりも小さく、鉄骨梁3Aの下端の高さは、鉄骨梁5C、5Dの下端の高さよりも低い。すなわち、主方向の鉄骨梁3A、3Bの梁せい:B1(mm)、直交方向の鉄骨梁5C、5Dの梁せい:B3(mm)とすると、B1B3である。
【0076】
図7(b)に示すように、直交方向において鉄筋コンクリート柱2の両側に接合される二本の鉄骨梁5C、5Dは、実際には、鉄筋コンクリート柱2を貫通するように配置された一本のH形鋼から構成されている。そして、主方向に配置される鉄骨梁3A、3Bが、二本の鉄骨梁5C、5Dを構成するH形鋼の両側に溶接されている。
【0077】
また、主方向に配置される鉄骨梁3A、3Bが鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分の両側には、ふさぎ板22を保持するための定着部34が、主方向の鉄骨梁3A、3Bを構成するH形鋼を貫通するように配置され、このH形鋼の両側および直交方向の鉄骨梁5C、5Dの下フランジ53に溶接されている。定着部34は、主方向の鉄骨梁3A、3Bの梁せいと直交方向の鉄骨梁5C、5Dの梁せいとの差の高さを有する鋼板から構成されている。
【0078】
第五の実施形態の柱梁接合部1Eの構造では、図7(a)に示すように、柱梁接合部1E内において、主方向の鉄骨梁3A、3Bのウェブ31が、ダブラープレート7により補強されている。具体的には、ダブラープレート7の外周の全長が鉄骨梁3A、3Bのウェブ31に、隅肉溶接等により固定されている。図示は省略するが、これと同様に、柱梁接合部1E内において、直交方向の鉄骨梁5C、5Dのウェブ51も、ダブラープレートにより補強されている。
【0079】
このように、第五の実施形態の柱梁接合部1Eの構造では、柱梁接合部1E内の鉄骨梁3A、3B、5C、5Dのウェブ31、51にダブラープレート7が設置され、補強されているので、ダブラープレート7のせん断耐力を柱梁接合部1E全体のせん断耐力に累加できる。
【0080】
また、第五の実施形態の柱梁接合部1Eの構造では、図7(a)に示すように、主方向の鉄骨梁3A、3Bのウェブ31のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分およびこの部分に固定されるダブラープレート7に、コンクリート充填用の孔31h、7hが設けられている。図示は省略するが、これと同様に、直交方向の鉄骨梁5C、5Dのウェブ51のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分およびこの部分に固定されるダブラープレートにも、コンクリート充填用の孔が設けられている。
【0081】
第五の実施形態の柱梁接合部1Eの構造では、鉄筋コンクリート柱2と鉄骨梁3A、3B、5C、5Dとの柱梁接合部1E内の鉄骨梁3A、3B、5C、5Dのウェブ31、51が、ダブラープレート7により補強されているため、柱梁接合部1E内の鉄骨梁3A、3B、5C、5Dのウェブ31、51およびダブラープレート7に、コンクリート充填用の孔31h、7hを大きく開けることが可能となる。これにより、柱梁接合部1E内におけるコンクリートの充填性が高められ、コンクリートの打設が容易となる。
【0082】
その他の点については、第五の実施形態の柱梁接合部1Eの構造は、第一の実施形態の柱梁接合部1Aの構造と同様に構成されている。
【0083】
第五の実施形態の柱梁接合部1Eの構造によれば、第一の実施形態の柱梁接合部1Aの構造と同様の効果が得られる。
(第六の実施形態)
図8(a)および図8(b)に、本発明の第六の実施形態に係る柱梁接合部1Fの縦断面図を示す。また、図8(c)に、本発明の第六の実施形態に係る柱梁接合部1Fの斜視図を示す。図8(a)には、鉄筋コンクリート柱2に水平方向に発生するせん断力分布を併せて示している。
【0084】
図8(a)~図8(c)に示すように、第六の実施形態の柱梁接合部1Fは、鉄筋コンクリート柱2に、H形鋼からなる五本の鉄骨梁3A、4、5A、5C、5Dが貫入するようにして接合される柱梁接合部である。五本の鉄骨梁3A、4、5A、5C、5Dは、互いの高さ方向の位置が異なるように鉄筋コンクリート柱2に接合されている。主方向では、鉄筋コンクリート柱2の一方の側面に鉄骨梁3A、5Aが上下に並ぶようにして接合され、鉄筋コンクリート柱2の他方の側面に鉄骨梁4が接合されている。直交方向では、二本の鉄骨梁5C、5Dが鉄筋コンクリート柱2に接合されている。鉄骨梁3A、4の梁せいは互いに等しく、鉄骨梁5Aの梁せいは鉄骨梁3A、4の梁せいよりも小さい。鉄骨梁5C、5Dの梁せいは、鉄骨梁3A、4の梁せいよりも小さく、鉄骨梁5Aの梁せいよりも大きい。
【0085】
また、鉄骨梁3Aの上端の高さと、鉄骨梁4、5A、5C、5Dの上端の高さとが異なっており、上段の鉄骨梁3Aの下端は、下段の鉄骨梁4、5A、5C、5Dの上端よりも高い。すなわち、主方向に配置される鉄骨梁3A、4、5Aのうち上段の鉄骨梁3Aの梁せい:B1(mm)、下段の鉄骨梁4の梁せい:B2(mm)、上段の鉄骨梁3Aと下段の鉄骨梁4の中心間距離:BH(mm)とすると、鉄骨梁3A、4の段差率2BH/(B1B2)>1である。
【0086】
そして、主方向に配置される鉄骨梁3A、4、5Aのうち上段の鉄骨梁3Aの下フランジ33と、下段の鉄骨梁4の上フランジ42とが、繋ぎ板6により接合されている。繋ぎ板6は、この繋ぎ板6により接合される上段の鉄骨梁3Aおよび下段の鉄骨梁4のウェブ31、41と同一面内に配置されている。
【0087】
図8(a)~図8(c)に示すように、直交方向において鉄筋コンクリート柱2の両側に接合される二本の鉄骨梁5C、5Dは、主方向に配置される鉄骨梁3A、4、5Aのうち下段の鉄骨梁4が鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分の両側に接合されている。具体的には、直交方向に配置される二本の鉄骨梁5C、5Dが、主方向に配置される鉄骨梁4を貫通するように配置され、鉄骨梁4の両側に溶接されている。
【0088】
また、図8(a)~図8(c)に示すように、主方向に配置される鉄骨梁3A、4、5Aのうち上段の鉄骨梁3Aが鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分の両側には、ふさぎ板22を保持するための定着部34が、鉄骨梁3Aを貫通するように配置され、鉄骨梁3Aの両側に溶接されている。定着部34は、鉄骨梁3Aと同じ梁せいを有するH形鋼から構成されている。
【0089】
そして、定着部34を構成するH形鋼の下フランジと、直交方向に配置される鉄骨梁5C、5Dの上フランジ52とが、繋ぎ板6により接合されている。繋ぎ板6は、この繋ぎ板6により接合される定着部34を構成するH形鋼のウェブ、および鉄骨梁5C、5Dのウェブ51と同一面内に配置されている。
【0090】
さらに、図8(a)に示すように、主方向に配置される鉄骨梁3A、4、5Aのうち下段の鉄骨梁4が鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分の両側のうち、直交方向の鉄骨梁5C、5Dよりも下側の位置には、ふさぎ板22を保持するための定着部45が、鉄骨梁4を貫通するように配置され、鉄骨梁4の両側および直交方向の鉄骨梁5C、5Dの下フランジ53に溶接されている。定着部45は、主方向の鉄骨梁4の梁せいと直交方向の鉄骨梁5C、5Dの梁せいとの差の高さを有する鋼板から構成されている。
【0091】
第六の実施形態の柱梁接合部1Fの構造では、図8(a)に示すように、柱梁接合部1Fにおいて、主方向の鉄骨梁3A、4のウェブ31、41が、ダブラープレート7により補強されている。具体的には、ダブラープレート7の外周の全長が鉄骨梁3A、4のウェブ31、41に、隅肉溶接等により固定されている。これと同様に、図8(b)に示すように、柱梁接合部1F内において、直交方向の鉄骨梁5C、5Dのウェブ51も、ダブラープレート7により補強されている。
【0092】
このように、第六の実施形態の柱梁接合部1Fの構造では、柱梁接合部1F内の鉄骨梁3A、4、5C、5Dのウェブ31、41、51にダブラープレート7が設置され、補強されているので、ダブラープレート7のせん断耐力を柱梁接合部1F全体のせん断耐力に累加できる。
【0093】
また、第六の実施形態の柱梁接合部1Fの構造では、図8(a)に示すように、主方向の鉄骨梁3A、4のウェブ31、41のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分およびこの部分に固定されるダブラープレート7に、コンクリート充填用の孔31h、41h、7hが設けられている。これと同様に、図8(b)に示すように、直交方向の鉄骨梁5C、5Dのウェブ51のうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分およびこの部分に固定されるダブラープレート7にも、コンクリート充填用の孔51h、7hが設けられている。
【0094】
第六の実施形態の柱梁接合部1Fの構造では、鉄筋コンクリート柱2と鉄骨梁3A、4、5A、5C、5Dとの柱梁接合部1F内の鉄骨梁3A、4、5C、5Dのウェブ31、41、51が、ダブラープレート7により補強されているため、柱梁接合部1F内の鉄骨梁3A、4、5C、5Dのウェブ31、41、51およびダブラープレート7に、コンクリート充填用の孔31h、41h、51h、7hを大きく開けることが可能となる。これにより、柱梁接合部1F内におけるコンクリートの充填性が高められ、コンクリートの打設が容易となる。
【0095】
また、第六の実施形態の柱梁接合部1Fの構造では、図8(a)に示すように、主方向に配置される鉄骨梁3A、4、5Aのうち上段の鉄骨梁3Aと下段の鉄骨梁4とを接合する繋ぎ板6にも、コンクリート充填用の孔6hが設けられている。図8(a)の右側に示すせん断力分布のとおり、第六の実施形態の柱梁接合部1Fの構造では、繋ぎ板6に作用するせん断力は、鉄骨梁3A、4のウェブ31、41に作用するせん断力よりも小さい。よって、繋ぎ板6に設ける孔6hの孔径は、鉄骨梁3A、4のウェブ31、41に設けられる孔31h、41hの孔径よりも大きくすることができる。これにより、柱梁接合部1F内におけるコンクリートの充填性がさらに高められ、コンクリートの打設が容易となる。
【0096】
その他の点については、第六の実施形態の柱梁接合部1Fは、第三の実施形態の柱梁接合部1Cと同様に構成されている。
【0097】
第六の実施形態の柱梁接合部1Fでは、第三の実施形態の柱梁接合部1Cと同様の効果が得られる。
(柱梁接合部にブレースの端部が接合される場合)
図9(a)および図9(b)に、本発明の第一の実施形態の変形例に係る柱梁接合部1A´の構造において、柱梁接合部1A´にブレース8の端部が接合された状況の側面図を示す。図9(a)には、柱梁接合部1A´に接合されるブレース8が、上段側の鉄骨梁3Aと同じスパンに配置されている場合を示している。また、図9(b)には、柱梁接合部1A´に接合されるブレース8が、下段側の鉄骨梁4と同じスパンに配置されている場合を示している。
【0098】
また、図10に、本発明の第二の実施形態の変形例に係る柱梁接合部1B´の構造において、柱梁接合部1B´にブレース8の端部が接合された状況の側面図を示す。図10には、柱梁接合部1B´に接合されるブレース8が、主方向に配置される鉄骨梁3A、5のうち梁せいが大きい方の鉄骨梁3Aと同じスパンに配置されている場合を示している。
【0099】
また、図11(a)および図11(b)に、本発明の第三の実施形態の変形例に係る柱梁接合部1C´の構造において、柱梁接合部1C´にブレース8の端部が接合された状況の側面図を示す。図11(a)には、柱梁接合部1C´に接合されるブレース8が、上段側の鉄骨梁3Aと同じスパンに配置されている場合を示している。また、図11(b)には、柱梁接合部1C´に接合されるブレース8が、下段側の鉄骨梁4と同じスパンに配置されている場合を示している。第三の実施形態の変形例の柱梁接合部1C´の構造では、ブレース8が設けられるスパンに配置される鉄骨梁のウェブのうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分のみにダブラープレート7を設けている。すなわち、ブレース8が設けられないスパンに配置される鉄骨梁のウェブのうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分には、ダブラープレート7を設けていない。その他の点については、第三の実施形態の変形例の柱梁接合部1C´の構造は、図5(a)~図5(c)に示す第三の実施形態の柱梁接合部1Cの構造と同様に構成されている。
【0100】
また、図12(a)および図12(b)に、本発明の第四の実施形態の変形例に係る柱梁接合部1D´の構造において、柱梁接合部1D´にブレース8の端部が接合された状況の側面図を示す。図12(a)には、柱梁接合部1D´に接合されるブレース8が、上段側の鉄骨梁3Aと同じスパンに配置されている場合を示している。また、図12(b)には、柱梁接合部1D´に接合されるブレース8が、下段側の鉄骨梁4と同じスパンに配置されている場合を示している。第四の実施形態の変形例の柱梁接合部1D´の構造では、ブレース8が設けられるスパンに配置される鉄骨梁のウェブのうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分のみにダブラープレート7を設けている。すなわち、ブレース8が設けられないスパンに配置される鉄骨梁のウェブのうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分には、ダブラープレート7を設けていない。その他の点については、第三の実施形態の変形例の柱梁接合部1D´の構造は、図6(a)および図6(b)に示す第三の実施形態の柱梁接合部1Dの構造と同様に構成されている。
【0101】
また、図13に、本発明の第五の実施形態に係る柱梁接合部1Eの構造において、柱梁接合部1Eにブレース8の端部が接合された状況の側面図を示す。図13には、柱梁接合部1Eに接合されるブレース8が、主方向に配置される二本の鉄骨梁3A、3Bのうち一方の鉄骨梁3Bと同じスパンに配置されている場合を示している。
【0102】
図9(a)、図9(b)、図10図11(a)、図11(b)、図12(a)、図12(b)、図13に示す各例では、ブレース8と同じスパンに配置される鉄骨梁の梁せいの中心と鉄筋コンクリート柱2の材軸中心との交点に対してブレース8の中心軸が距離eだけ偏心するように、ブレース8が柱梁接合部1A´~1D´、1Eに接合されている。そして、ブレース8と同じスパンに配置される鉄骨梁のウェブのうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分が、ダブラープレート7により補強されている。
【0103】
図9(a)、図9(b)、図10図11(a)、図11(b)、図12(a)、図12(b)、図13に示す各例のように、ブレース8の中心軸が偏心して柱梁接合部1A´~1D´、1Eに接合される場合には、ブレース8から柱梁接合部1A´~1D´、1Eに付加曲げモーメントが作用する。この結果、柱梁接合部1A´~1D´、1Eに作用するせん断力も大きくなる。そこで、図9(a)、図9(b)、図10図11(a)、図11(b)、図12(a)、図12(b)、図13に示すように、ブレース8と同じスパンに配置される鉄骨梁のウェブのうち鉄筋コンクリート柱2に貫入する部分を、ダブラープレート7により補強することで、比較的簡単な構造で柱梁接合部1A´~1D´、1Eの耐力を十分に確保できる。
【0104】
なお、上述の実施形態では、本発明の柱梁接合部の構造が、梁貫通形式ふさぎ板タイプの柱梁接合部に適用されている例について説明したが、本発明の柱梁接合部の構造は、梁貫通形式せん断補強筋タイプの柱梁接合部にも適用可能である。この場合、鉄骨梁の端部は、鉄筋コンクリート柱の一方の側面から反対側の側面まで完全に貫通する必要は無く、鉄骨梁の端部が柱梁接合部内に十分に定着される長さだけ、鉄骨梁3の端部が鉄筋コンクリート柱2の一方の側面から反対側の側面に向かって貫入していればよい。
【0105】
上記各実施形態に係る柱梁接合部1A~1F、1A´~1D´の構造における鉄筋コンクリート柱2および鉄骨梁3A~3D、4、5A、5C、5Dは、下記(1)式を満たす寸法および材料強度を有するようにすることが好ましい。このようにすると、柱梁接合部1A~1F、1A´~1D´のせん断耐力を十分に確保できる。
【0106】
JdUwQ+hQ+cQ ……(1)
ただし、上記(1)式において、
JdU:柱梁接合部の終局時に柱梁接合部に作用するせん断力(N)
wQ:柱梁接合部パネル内における、ダブラープレートにより補強された鉄骨梁のウェブのせん断耐力(N)であり、
wQ=wτU×we ……(2)
hQ:ふさぎ板のせん断耐力(N)、
cQ:コンクリートのせん断耐力(N)であり、
cQ=cpk・Cb・CD ……(3)
上記(2)式において、
wτU:柱梁接合部パネル内における、ダブラープレートにより補強された鉄骨梁のウェブのせん断強度(N/mm2
we:柱梁接合部パネル内における、ダブラープレートにより補強された鉄骨梁のウェブの有効断面積(mm2)であり、
we=0.9×(wt+0.8dt)×CD ……(4)
上記(4)式において、
wt:柱梁接合部内の鉄骨梁のウェブの厚さ(mm)、
dt:ダブラープレートの厚さ(mm)、
CD:鉄筋コンクリート柱の柱せい(mm)であり、
上記(3)式において、
cpk:柱梁接合部パネル内における、コンクリートの有効断面係数であり、
cpk=0.32CD/BD-0.028Cb/Bb+0.204 ……(5)
Cb:鉄筋コンクリート柱の柱幅(mm)
CD:鉄筋コンクリート柱の柱せい(mm)であり、
上記(5)式において、
Bb:鉄骨梁の梁幅(mm)
BD:鉄骨梁の梁せい(mm)
である。
【0107】
ここで、第一の実施形態の場合は、四本の鉄骨梁3A、3C、3D、4の梁せいは互いに等しく、鉄骨梁3A、3C、3Dの上端の高さと、鉄骨梁4の上端の高さとが異なるように配置されている。そこで、これら鉄骨梁3A、3C、3D、4のうち上段の鉄骨梁3A、3C、3Dの上フランジ32の上面と、下段の鉄骨梁4の下フランジ43の下面との間の距離を、BDとする。
【0108】
第二の実施形態の場合は、上端の高さが互いに等しくなるように配置された四本の鉄骨梁3B~3D、5Aのうち、梁せいが最大となる鉄骨梁3B~3Dの梁せいを、BDとする。
【0109】
第三の実施形態および第四の実施形態の場合は、四本の鉄骨梁3A、3C、3D、4のうち、鉄骨梁3A、3C、3Dの上端の高さと、鉄骨梁4の上端の高さとが異なるように配置されているが、これら四本の鉄骨梁3A、3C、3D、4の梁せいは互いに等しい。そこで、これら鉄骨梁3A、3C、3D、4の梁せいを、BDとする。
【0110】
第五の実施形態の場合は、上端の高さが互いに等しくなるように配置された四本の鉄骨梁3A、3B、5C、5Dのうち、梁せいが最大となる主方向の鉄骨梁3A、3Bの梁せいを、BDとする。
【0111】
第六の実施形態の場合は、五本の鉄骨梁3A、4、5A、5C、5Dのうち、鉄骨梁3Aの上端の高さと、鉄骨梁4、5A、5C、5Dの上端の高さとが異なるように配置されている。そして、主方向では、鉄筋コンクリート柱2の一方の側面に鉄骨梁3A、5Aが上下に並ぶようにして接合され、鉄筋コンクリート柱2の他方の側面に鉄骨梁4が接合されている。また、直交方向では、二本の鉄骨梁5C、5Dが鉄筋コンクリート柱2に接合されている。そこで、主方向に配置される鉄骨梁3A、4、5Aのうち、梁せいが最大となる主方向の鉄骨梁3A、4の梁せいを、BDとする。
【0112】
3A~3D、4、5A、5C、5Dから柱梁接合部1A~1F、1A´~1D´に入力するせん断力JQは、柱梁接合部1A~1F、1A´~1D´内では、3A~3D、4、5A、5C、5Dのウェブ31、41、51、ダブラープレート7、ふさぎ板22およびコンクリートにより分担して負担される。すなわち、3A~3D、4、5A、5C、5Dのウェブ31、41、51およびダブラープレート7が負担するせん断力の合計をwQ、ふさぎ板22が負担するせん断力をhQ、コンクリートが負担するせん断力をcpQとすると、JQ=wQ+hQ+cpQとなる。
【0113】
同様に、柱梁接合部1A~1F、1A´~1D´の終局時のせん断耐力J sU は、3A~3D、4、5A、5C、5Dのウェブ31、41、51およびダブラープレート7のせん断耐力の合計をw sU 、ふさぎ板22のせん断耐力をh sU 、コンクリートのせん断耐力をcp sU とすると、J sU w sU h sU cp sU となる。
【0114】
柱梁接合部のせん断耐力J sU は、柱梁接合部1A~1F、1A´~1D´の終局時(地震時)に柱梁接合部1A~1F、1A´~1D´に作用するせん断力JdUを上回るようにする、すなわちJ sU JdUとする。上記(1)式は、これに基づいている。
【0115】
このように、上記各実施形態の柱梁接合部の構造では、柱梁接合部1A~1F、1A´~1D´内の3A~3D、4、5A、5C、5Dのウェブ31、41、51がダブラープレート7により補強されているので、ダブラープレート7のせん断耐力を柱梁接合部1A~1F、1A´~1D´全体のせん断耐力に累加できる。ただし、ダブラープレート7を設けることによる各抵抗要素の負担割合の変化や、ダブラープレート7の全断面積のうちどの程度の割合がせん断耐力に有効に寄与するかついては、これまで確立されていなかった。上記各実施形態の柱梁接合部の構造では、後述のとおり、ダブラープレート7の全断面積の80%以上がせん断耐力に有効に寄与しているという発明者らによる新たな知見に基づき、この寄与率を上記(4)式に反映している。また、柱梁接合部1A~1F、1A´~1D´に支圧板が設けられず、これよりも薄いふさぎ板22のみが設けられる場合には、後述のとおり、ダブラープレートにより補強されたウェブ31、41、51の断面積の90%程度がせん断耐力に有効に寄与しているという発明者らによる新たな知見に基づき、この寄与率も上記(4)式に反映している。
【0116】
なお、上記(4)式において、dt(ダブラープレートの厚さ)にかかる係数0.8を、より小さい値、例えば、0.7、0.6等に変更してもよい。同様に、上記(4)式の右辺全体にかかる係数0.9を、より小さい値、例えば、0.8、0.7等に変更してもよい。このようにすれば、JdU(柱梁接合部の終局時に柱梁接合部に作用するせん断力)に対して柱梁接合部が有する安全率を大きくすることができる。
【0117】
図14に、本発明の柱梁接合部の構造における、コンクリートの有効断面係数cpkと、柱せいと梁せいとの比CD/BDとの関係を示す。また、図15に、本発明の柱梁接合部の構造における、コンクリートパネルの有効断面係数cpkと、柱幅と梁幅との比Cb/Bbとの関係を示す。
【0118】
図14および図15に示すように、柱せいと梁せいとの比CD/BDが大きくなるにつれて、コンクリートの有効断面係数cpkが大きくなる傾向が見られる。また、柱幅と梁幅との比Cb/Bbが大きくなるにつれて、コンクリートの有効断面係数cpkが小さくなる傾向がみられる。上述の(5)式は、柱せいと梁せいとの比CD/BD、および柱幅と梁幅との比Cb/Bbが、コンクリートの有効断面係数cpkに与える効果を、図14および図15中で破線で示すような比例的な関係で評価し、この力学的モデルによりコンクリートの有効断面係数cpkを定めたものである。
【符号の説明】
【0119】
1A~1F、1A´~1D´ 柱梁接合部
2 鉄筋コンクリート柱
21 主筋
22 ふさぎ板
3A~3D、4、5A、5C、5D 鉄骨梁
31、41、51 ウェブ
32、42、52 上フランジ
33、43、53 下フランジ
34、44、45 定着部
6 繋ぎ板
7 ダブラープレート
31h、41h、51h、6h、7h 孔
8 ブレース
【要約】
【課題】複数の鉄骨梁が、互いの高さ方向の位置が異なるように、鉄筋コンクリート柱に貫入するようにして接合される柱梁接合部において、比較的簡単な構造で柱梁接合部の耐力を上げることができ、経済性、施工性、および構造性能に優れる、柱梁接合部の構造を提供する。
【解決手段】鉄筋コンクリート柱に複数の鉄骨梁が貫入するようにして接合される柱梁接合部の構造であって、前記複数の鉄骨梁は、互いの高さ方向の位置が異なるように前記鉄筋コンクリート柱に接合され、前記鉄骨梁のウェブのうち前記鉄筋コンクリート柱に貫入する部分に、ダブラープレートが設置されている、柱梁接合部の構造。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15