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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】回転陽極X線管スタータ装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/54 20200101AFI20241217BHJP
   G01R 31/56 20200101ALI20241217BHJP
   G01R 31/55 20200101ALI20241217BHJP
   G01R 31/72 20200101ALI20241217BHJP
   H05G 1/66 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G01R31/54
G01R31/56
G01R31/55
G01R31/72
H05G1/66 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024131967
(22)【出願日】2024-08-08
【審査請求日】2024-10-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】木暮 克己
(72)【発明者】
【氏名】岡野 晃平
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-136924(JP,A)
【文献】特開平11-204073(JP,A)
【文献】特開2019-212536(JP,A)
【文献】特開2014-85286(JP,A)
【文献】特開平10-50495(JP,A)
【文献】特開2013-113695(JP,A)
【文献】特開平1-102779(JP,A)
【文献】特開2001-297894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/54
G01R 31/56
G01R 31/55
G01R 31/72
H05G 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインコイル、サブコイル、前記メインコイルの一端に接続するメインコイル端子、前記サブコイルの一端に接続するサブコイル端子、及び前記メインコイルの他端と前記サブコイルの他端の双方に接続するコモン端子を有する回転陽極X線管の巻線部と接続されるスタータ装置であって、
前記コモン端子、前記メインコイル端子、及び前記サブコイル端子のそれぞれと接続される第1端子、第2端子、及び第3端子を有する端子部と、
前記端子部を介して前記メインコイルと前記サブコイルに電力を供給する電源装置と、
前記メインコイルと前記サブコイルに流れる電流をそれぞれ検出する電流検出回路と、
前記電源装置に対して前記第1端子から直流電流を供給する第1動作と前記第2端子及び前記第3端子から直流電流を供給する第2動作を行わせる制御回路と、
を備えることを特徴とするスタータ装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記第1動作と前記第2動作において前記電流検出回路が検出した電流値から前記コモン端子、前記メインコイル端子、及び前記サブコイル端子と前記端子部との接続性と前記電源装置の良否判定を行うことを特徴とする請求項1に記載のスタータ装置。
【請求項3】
前記制御回路は、
前記メインコイルに流れる電流値がゼロではないこと、前記サブコイルに流れる電流値がゼロではないこと、及び前記メインコイルに流れる電流値が前記サブコイルに流れる電流値より大きいことの3条件を満たしたときに正常、前記3条件を満たさないときに異常と判断すること、及び
前記第1動作の判断結果と前記第2動作の判断結果との組み合わせで前記良否判定を行うこと
を特徴とする請求項2に記載のスタータ装置。
【請求項4】
前記制御回路は、
(1)前記第1動作及び前記第2動作ともに正常である場合に、
前記コモン端子、前記メインコイル端子、及び前記サブコイル端子と前記端子部との接続が正しい、且つ前記電源装置が故障していないと判定すること、
(2)前記第1動作又は前記第2動作が異常である場合に、
前記コモン端子、前記メインコイル端子、及び前記サブコイル端子と前記端子部との接続が正しい、且つ前記電源装置が故障していると判定すること、
(3)前記第1動作及び前記第2動作ともに異常である場合に、
前記コモン端子、前記メインコイル端子、及び前記サブコイル端子と前記端子部との接続が間違えているか配線が断線している、又は前記電源装置が故障していると判定すること
を特徴とする請求項3に記載のスタータ装置。
【請求項5】
前記直流電流がパルス波形であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のスタータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転陽極X線管と接続されるスタータ装置及びその点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スタータ装置と回転陽極X線管とは、3本の配線で接続されている。この配線が断線もしくは誤配線となった場合、回転陽極が正常に回転せず、X線曝射時にX線管が破損する恐れがある。通常、スタータ装置は出力電流の検出回路を設けて配線の断線を検出する機能を設けている。さらに、配線の誤配線を確認する機能を設けたスタータ装置も存在している(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-297894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のスタータ装置は、誤配線の確認のために新たに抵抗値検出回路を設けており、スタータ装置の小型化及びコスト低減が困難という課題がある。また、特許文献1のスタータ装置は、異常を検出した場合であっても、誤配線の異常かスタータ装置内部の故障かの判定を行うことが困難という課題もある。
【0005】
そこで、本発明は、前記課題を解決するために、新たな回路を追加せず、且つ不具合の存在判定が容易であるスタータ装置及び点検方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るスタータ装置は、従前から存在する断線判断用の電流検出回路を利用し、回転陽極X線管へ一方の方向へ直流電流を流した時の結果と他方の方向へ直流電流を流した時の結果とから不具合箇所の特定を行うこととした。
【0007】
具体的には、本発明に係るスタータ装置は、メインコイル、サブコイル、前記メインコイルの一端に接続するメインコイル端子、前記サブコイルの一端に接続するサブコイル端子、及び前記メインコイルの他端と前記サブコイルの他端の双方に接続するコモン端子を有する回転陽極X線管と接続されるスタータ装置であって、
前記コモン端子、前記メインコイル端子、及び前記サブコイル端子のそれぞれと接続されるための第1端子、第2端子、及び第3端子を有する端子部と、
前記端子部を介して前記メインコイルと前記サブコイルに電力を供給する電源装置と、
前記メインコイルと前記サブコイルに流れる電流をそれぞれ検出する電流検出回路と、
前記電源装置に対して前記第1端子から直流電流を供給する第1動作と前記第2端子及び前記第3端子から直流電流を供給する第2動作を行わせる制御回路と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
電流を順方向と逆方向に流して断線判断用の電流検出回路でメインコイルとサブコイルの電流値を検出し、その電流値から異常箇所の特定を行うため、本発明に係るスタータ装置はコストやサイズの増加がない。従って、本発明は、新たな回路を追加せず、且つ不具合箇所の存在判定が容易であるスタータ装置及び点検方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、新たな回路を追加せず、且つ不具合箇所の存在判定が容易であるスタータ装置及び点検方法を提供することができる。つまり、本発明によれば、従前のスタータ装置に新たな回路を設けず、断線を検出する回路を利用して誤配線をチェックする機能を実現し、誤配線によるX線管の破損を防止できる。さらに、別途の回路を設けずに配線の異常かスタータ装置の電源内部の異常かの判定を可能とすることができ、異常時の対応を速やかに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るスタータ装置を説明する図である。
図2】本発明に係るスタータ装置の動作を説明する図である。
図3】本発明に係るスタータ装置の動作を説明する図である。
図4】本発明に係るスタータ装置の動作を説明する図である。
図5】本発明に係るスタータ装置の動作を説明する図である。
図6】本発明に係るスタータ装置の動作を説明する図である。
図7】本発明に係るスタータ装置の動作を説明する図である。
図8】本発明に係るスタータ装置の動作を説明する図である。
図9】本発明に係るスタータ装置の動作を説明する図である。
図10】本発明に係るスタータ装置の動作を説明する図である。
図11】本発明に係るスタータ装置の動作を説明する図である。
図12】本発明に係るスタータ装置の動作を説明する図である。
図13】本発明に係るスタータ装置の動作を説明する図である。
図14】本発明に係る点検方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0012】
図1は、本実施形態に係るスタータ装置100を説明する図である。スタータ装置100は、メインコイル21、サブコイル22、前記メインコイルの一端に接続するメインコイル端子19、前記サブコイルの一端に接続するサブコイル端子20、及び前記メインコイルの他端と前記サブコイルの他端の双方に接続するコモン端子18を有する回転陽極X線管の巻線部200と接続される。巻線部200の各コイルは、X線管の回転陽極を駆動するためのものである。
【0013】
スタータ装置100は、
コモン端子18、メインコイル端子19、及びサブコイル端子20のそれぞれと接続されるための第1端子12、第2端子13、及び第3端子14を有する端子部と、
前記端子部を介してメインコイル21とサブコイル22に電力を供給する電源装置50と、
メインコイル21とサブコイル22に流れる電流をそれぞれ検出する電流検出回路(10、11)と、
電源装置50に対して第1端子12から直流電流を供給する第1動作と第2端子13及び第3端子14から直流電流を供給する第2動作を行わせる制御回路30と、
を備える。
【0014】
本実施形態では、電源装置50を、6つのスイッチング素子(4~9)が三相ブリッジ接続されたインバータで説明するが、電源装置の構成は当該構成に限定されない。
スタータ装置100と回転陽極X線管の巻線部200とは、3本のケーブル(15、16、17)で構成された配線60で接続される。
スタータ装置100は、スイッチング素子(4~9)を用いてメインコイル21、サブコイル22に電力を供給し、回転陽極を回転させる。スタータ装置100は、電流をモニタしており、ケーブル(15~17)の断線を検出するためのメイン電流検出回路10とサブ電流検出回路11を備える。
【0015】
制御回路30は、配線60の断線又は誤配線の判定および電源装置50の故障の判定を行うために下記の2段階の動作を行う。
〔第1動作〕コモン上アームスイッチング素子4、メイン下アームスイッチング素子7、サブ下アームスイッチング素子9を同時に導通(ON)させる。他のスイッチング素子はOFFとする。本動作では、直流電源3から第1端子12を介して回転陽極X線管の巻線部200へ直流電流を供給する。
〔第2動作〕コモン下アームスイッチング素子5、メイン上アームスイッチング素子6、サブ上アームスイッチング素子8を同時に導通(ON)させる。他のスイッチング素子はOFFとする。本動作では、直流電源3から第2端子13及び第3端子14を介して回転陽極X線管の巻線部200へ直流電流を供給する。
【0016】
なお、スイッチング素子(4又は5)をオンオフし、前記直流電流をパルス波形とすることが好ましい。直流電流が長時間流れることでコイル(21、22)が破損することを回避することができる。なお、本明細書において「パルス波形」とは、方形波、三角波、正弦波など、短時間での急峻な変化が連続的に発生する波形を意味する。
【0017】
制御回路30は、前記第1動作と前記第2動作において電流検出回路(10、11)が検出した電流値からコモン端子18、メインコイル端子19、及びサブコイル端子20と端子部(第1端子12、第2端子13、第3端子14)との接続性と電源装置50の良否判定を行う。なお、本明細書において「接続性」とは、上記端子間における配線の接続の正否、あるいは断線の有無を意味する。また、本明細書において「電源装置の良否判定」とは、電源装置のスイッチング素子の正常/故障を判定することを意味する。
【0018】
配線60の接続が正しく、電源装置50が故障していなければ、第1動作では図2のように電流が流れる。なお、図2以下の図において、“+”のマークは直流電源3のプラス側の電位と同電位であることを意味し、“-”のマークは直流電源3のマイナス側の電位(グランド)と同電位であることを意味する。
電流経路『3→4→12→15→18→21→19→16→13→10→7→3』でメインコイル21に電流が流れる。当該電流はメイン電流検出回路10にて検出される。
また、電流経路『3→4→12→15→18→22→20→17→14→11→9→3』でサブコイル22に電流が流れる。当該電流はサブ電流検出回路11にて検出される。
【0019】
配線60の接続が正しく、電源装置50が故障していなければ、第2動作では図3のように電流が流れる。
電流経路『3→6→10→13→16→19→21→18→15→12→5→3』でメインコイル21に電流が流れる。当該電流はメイン電流検出回路10にて検出される。
また、電流経路『3→8→11→14→17→20→22→18→15→12→5→3』でサブコイル22に電流が流れる。当該電流はサブ電流検出回路11にて検出される。
【0020】
第1動作と第2動作のいずれでも、メインコイル21のインピーダンスはサブコイル22のインピーダンスより小さいため、メインコイル21に流れる電流はサブコイル22に流れる電流より大きくなる。よって、メイン電流検出回路10が検出する電流値はサブ電流検出回路11が検出する電流値より大きい。
【0021】
従って、制御回路30は、
(a)メインコイル21に流れる電流値がゼロではないこと、
(b)サブコイル22に流れる電流値がゼロではないこと、及び
(c)メインコイル21に流れる電流値がサブコイル22に流れる電流値より大きいこと
の3条件を満たしたときに正常、前記3条件を満たさないときに異常と判断する。
そして、制御回路30は、第1動作の判断結果と第2動作の判断結果との組み合わせで配線60の接続性と電源装置50の良否判定を行う。
【0022】
なお、コモン配線15、メイン配線16、サブ配線17のいずれかが断線している場合、メイン電流検出回路10、サブ電流検出回路11での検出値のいずれか、もしくは双方がゼロとなる。
また、スイッチング素子(4、7、9)又はスイッチング素子(5、6、8)が導通しない異常があった場合、配線60の断線と同様の動作となるため、電源装置50の故障も検出することができる。
【0023】
配線60の接続間違いがある誤配線は、以下の5種類であり、第1動作にてスイッチング素子(4、7、9)を同時に導通(ON)させ、他のスイッチング素子をOFFとすることで全て検出できる。しかし、第1動作ではスイッチング素子(4、7、9)しか使用しておらず、スイッチング素子(5、6、8)に故障があることを検知ができない。そこで、第1動作に引き続き、第2動作にてスイッチング素子(5、6、8)を同時に導通(ON)させ、他のスイッチング素子をOFFし、スイッチング素子(5、6、8)の点検を行う。
第1動作と第2動作において、誤配線があった場合、次のような結果となる。
【0024】
(誤配線1)
図4図5は、コモン配線15とメイン配線16の接続が誤っている場合の電流の状態を説明する図である。図4は第1動作、図5は第2動作である。
図4の第1動作の場合、電流経路『3→4→12→15→19→21→18→16→13→10→7→3』でメインコイル21に電流が流れる。当該電流は、メイン電流検出回路10にて検出される。しかし、サブコイル22の両端が同電位(マイナス電位)になるため、サブコイル22には電流が流れない。このため、サブ電流検出回路11にも電流が流れず、電流値はゼロである。この結果を見て作業者は異常と判定する。なお、自動判定させる場合、制御回路30が異常と判定する。
【0025】
図5の第2動作の場合、電流経路『3→6→10→13→16→18→21→19→15→12→5→3』でメインコイル21に電流が流れる。当該電流は、メイン電流検出回路10にて検出される。しかし、サブコイル22の両端が同電位(プラス電位)になるため、サブコイル22には電流が流れない。このため、サブ電流検出回路11にも電流が流れず、電流値はゼロである。この結果を見て作業者は異常と判定する。なお、自動判定させる場合、制御回路30が異常と判定する。
【0026】
(誤配線2)
図6図7は、コモン配線15とサブ配線17の接続が誤っている場合の電流の状態を説明する図である。図6は第1動作、図7は第2動作である。
図6の第1動作の場合、電流経路『3→4→12→15→20→22→18→17→14→11→9→3』でサブコイル22に電流が流れる。当該電流はサブ電流検出回路11にて検出される。しかし、メインコイル21の両端が同電位(マイナス電位)になるため、メインコイル21には電流が流れない。このため、メイン電流検出回路10にも電流が流れず、電流値はゼロである。この結果を見て作業者は異常と判定する。なお、自動判定させる場合、制御回路30が異常と判定する。
【0027】
図7の第2動作の場合、電流経路『3→8→11→14→17→18→22→20→15→12→5→3』でサブコイル22に電流が流れる。当該電流はサブ電流検出回路11にて検出される。しかし、メインコイル21の両端が同電位(プラス電位)になるため、メインコイル21には電流が流れない。このため、メイン電流検出回路10にも電流が流れず、電流値はゼロである。この結果を見て作業者は異常と判定する。なお、自動判定させる場合、制御回路30が異常と判定する。
【0028】
(誤配線3)
図8図9は、メイン配線16とサブ配線17の接続が誤っている場合の電流の状態を説明する図である。図8は第1動作、図9は第2動作である。
図8の第1動作の場合、電流経路『3→4→12→15→18→21→19→17→14→11→9→3』でメインコイル21に電流が流れる。当該電流はサブ電流検出回路11にて検出される。また、電流経路『3→4→12→15→18→22→20→16→13→10→7→3』でサブコイル22に電流が流れる。当該電流はメイン電流検出回路10にて検出される。
【0029】
図9の第2動作の場合、電流経路『3→8→11→14→17→19→21→18→15→12→5→3』でメインコイル21に電流が流れる。当該電流はサブ電流検出回路11にて検出される。また、電流経路『3→6→10→13→16→20→22→18→15→12→5→3』でサブコイル22に電流が流れる。当該電流はメイン電流検出回路10にて検出される。
【0030】
前述のように、メインコイル21のインピーダンスはサブコイル22のインピーダンスより小さいため、メインコイル21に流れる電流はサブコイル22に流れる電流より大きい。本誤配線の場合、メインコイル21に流れる電流がサブ電流検出回路11で検出され、サブコイル22に流れる電流がメイン電流検出回路10で検出されており、サブ電流検出回路11が検出した電流値がメイン電流検出回路10で検出した電流値より大きくなるという誤配線がない場合とは逆の状態となる。このため、この結果を見て作業者は異常と判定する。なお、自動判定させる場合、制御回路30が異常と判定する。
【0031】
(誤配線4)
図10図11は、配線60の全ての接続が誤っている場合(その1)の電流の状態を説明する図である。図10は第1動作、図11は第2動作である。
図10の第1動作の場合、電流経路『3→4→12→15→19→21→18→17→14→11→9→3』でメインコイル21に電流が流れる。当該電流はサブ電流検出回路11にて検出される。しかし、サブコイル22の両端が同電位(マイナス電位)になるため、サブコイル22には電流が流れない。このため、メイン電流検出回路10にも電流が流れず、電流値がゼロである。この結果を見て作業者は異常と判定する。なお、自動判定させる場合、制御回路30が異常と判定する。
【0032】
図11の第2動作の場合、電流経路『3→8→11→14→17→18→21→19→15→12→5→3』でメインコイル21に電流が流れる。当該電流はサブ電流検出回路11にて検出される。しかし、サブコイル22の両端が同電位(プラス電位)になるため、サブコイル22には電流が流れない。このため、メイン電流検出回路10にも電流が流れず、電流値がゼロである。この結果を見て作業者は異常と判定する。なお、自動判定させる場合、制御回路30が異常と判定する。
【0033】
(誤配線5)
図12図13は、配線60の全ての接続が誤っている場合(その2)の電流の状態を説明する図である。図12は第1動作、図13は第2動作である。
図12の第1動作の場合、電流経路『3→4→12→15→20→22→18→16→13→10→7→3』でサブコイル22に電流が流れる。当該電流はメイン電流検出回路10にて検出される。しかし、メインコイル21の両端が同電位(マイナス電位)になるため、メインコイル21には電流が流れない。このため、サブ電流検出回路11にも電流が流れず電流値はゼロである。この結果を見て作業者は異常と判定する。なお、自動判定させる場合、制御回路30が異常と判定する。
【0034】
図13の第2動作の場合、電流経路『3→6→10→13→16→18→22→20→15→12→5→3』でサブコイル22に電流が流れる。当該電流はメイン電流検出回路10にて検出される。しかし、メインコイル21の両端が同電位(プラス電位)になるため、メインコイル21には電流が流れない。このため、サブ電流検出回路11にも電流が流れず電流値はゼロである。この結果を見て作業者は異常と判定する。なお、自動判定させる場合、制御回路30が異常と判定する。
【0035】
図14は、本実施形態の点検方法を説明する図である。上述した第1動作と第2動作の結果を組み合わせることで図14のように不具合箇所の特定が可能である。第1動作と第2動作のいずれの結果も正常であれば、配線60の誤配線ないし断線及び電源装置50の故障(スイッチング素子の故障)はないという判定になる(判定1)。第1動作もしくは第2動作の結果が異常であれば、配線60の誤配線ないし断線は無く、電源装置50の故障と判定できる(判定2)。また、第1動作と第2動作のいずれの結果も異常であれば、配線60の誤配線ないし断線及び電源装置50の故障の判定は困難であり、作業者による詳細な確認が必要という判定になる(判定3)。これらの判定は、作業者が行ってもよいし、制御回路30が行ってもよい。
【0036】
本点検方法は、スタータ装置100の詳細な不具合箇所を特定する方法ではなく、作業現場において簡易的にチェックするための方法である。本点検方法で「判定1」となった場合、電源装置50の故障は無く、誤配線も無いことから、X線曝射を行ってもよいという結果となる。本点検方法で「判定2」となった場合、電源装置50の交換(6個のスイッチング素子のアセンブリ交換)や作業現場から電源装置50の持ち帰り修理などの作業となる。本点検方法で「判定3」となった場合、不具合箇所の詳細確認作業を行うことになる。
【符号の説明】
【0037】
3:直流電源
4:コモン上アームスイッチング素子
5:コモン下アームスイッチング素子
6:メイン上アームスイッチング素子
7:メイン下アームスイッチング素子
8:サブ上アームスイッチング素子
9:サブ下アームスイッチング素子
10:メイン電流検出回路
11:サブ電流検出回路
12:第1端子(回転陽極X線管の巻線部のコモン端子と接続するための端子)
13:第2端子(回転陽極X線管の巻線部のメインコイル端子と接続するための端子)
14:第3端子(回転陽極X線管の巻線部のサブコイル端子と接続するための端子)
15:コモン配線
16:メイン配線
17:サブ配線
18:コモン端子
19:メインコイル端子
20:サブコイル端子
21:メインコイル
22:サブコイル
30:制御回路
50:電源装置
60:配線
100:スタータ装置
200:回転陽極X線管の巻線部
【要約】
【課題】新たな回路を追加せず、且つ不具合の存在判定が容易であるスタータ装置及び点検方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るスタータ装置は、メインコイル端子19、サブコイル端子20、及びコモン端子18を有する回転陽極X線管の巻線部200と接続されるスタータ装置であって、コモン端子18、メインコイル端子19、及びサブコイル端子20のそれぞれと接続される第1端子12、第2端子13、及び第3端子14を有する端子部と、前記端子部を介してメインコイル21とサブコイル22に電力を供給する電源装置50と、メインコイル21とサブコイル22に流れる電流をそれぞれ検出する電流検出回路(10、11)と、電源装置50に対して第1端子12から直流電流を供給する第1動作と第2端子13及び第3端子14から直流電流を供給する第2動作を行わせる制御回路30と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14