(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更した装置
(51)【国際特許分類】
A61M 16/04 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
A61M16/04 Z
(21)【出願番号】P 2024135104
(22)【出願日】2024-08-13
【審査請求日】2024-08-26
(31)【優先権主張番号】202311683228.0
(32)【優先日】2023-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524304219
【氏名又は名称】昆明医科大学第一附属医院
(74)【代理人】
【識別番号】100130993
【氏名又は名称】小原 弘揮
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼倩
(72)【発明者】
【氏名】朱琳
(72)【発明者】
【氏名】戴淑娟
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-010354(JP,A)
【文献】特開2021-029313(JP,A)
【文献】特表2017-528194(JP,A)
【文献】国際公開第2020/076784(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半環管と案内管とを含む経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更した装置であって、前記半環管の側部に案内管又は
経口気管挿管が入れられる開口が設けられており、前記案内管の直径は半環管の直径よりも小さく、前記半環管の内壁に、及び案内管の側壁における端部に近い位置に互いに組み合わせられた磁気吸引部が設けられ
、
経口気管挿管を用い、応急手当が終了後、まず、経口気管挿管中のバルーン内のガスを抜いてから、半環管を経口気管挿管の外縁に被覆して密着させ、ついでに軽く気道に送り込み、経口気管挿管があるので、半環管は経口気管挿管から案内されて気道の内部に円滑に送り込まれ得、
半環管が適当な深さまで挿入された後、経口気管挿管を取り去り、
案内管が鼻道を経由して声門位置まで送られ、この場合半環管と案内管の磁気吸引部が声門付近に互いに吸引されることで、半環管と案内管とが結合され、その後、案内管のまもなく気道内に滑り込む方向を精確に位置決めし、その後少し力を入れれば、案内管は気道内に滑り込むことが可能であり、
口腔位置から半環管を取り去り、
経鼻気管挿管を、適切な挿管の深さに達するまで案内管に沿い気道に送り込み、
再び経鼻気管挿管がうまく留置したことを確認した後、案内管を抜き、その後、経鼻気管挿管を固定し、呼吸補助設備に接続することにより、経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更する
ことを特徴とする、経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更した装置。
【請求項2】
前記開口が半環管の両端まで延伸して、半環管は外力の作用を受けることなくU字状を呈することを特徴とする、請求項1に記載の経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更した装置。
【請求項3】
前記案内管に挿入の深さを示す目盛りが設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更した装置。
【請求項4】
前記案内管の目盛りの示度は5~65cmであり、前記案内管の長さは65~75cmであることを特徴とする、請求項3に記載の経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更した装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器械の技術分野に関し、具体的には、経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更した装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気管挿管は重篤患者の気道の開通を確保し、通気を改善し、酸素化を維持する重要な措置であり、経口気管挿管と経鼻気管挿管の2種類の方法を含む。
【0003】
経口気管挿管は操作が簡単で速やかであり、治療時間が短く、挿管の成功率が高く、重症急性患者の応急手当に用いられることが多く、患者の通気を速やかに改善することができる。しかし、その後の長期治療において非常に顕著な欠点がある。
【0004】
1.患者の口腔及びその関連構造の生理的機能に悪影響を与える。一方では、長期間経口気管挿管を留置すると、患者に喉痛、嗄声、血痰、上顎粘膜破損、舌の圧迫腫れ、口腔静脈還流障害等の併発症が発生する可能性がある。他方では、長期間受動的に「口を開けて管を銜える」という姿勢で、患者の下顎関節の一過性又は永久的な脱臼を引き起こす可能性がある。
【0005】
2.患者の口腔衛生に悪影響を与える。経口気管挿管の固定性は、歯の完全性、噛合機能、咳反射、意識状態等を含む多くの要素から影響される。例えば高齢患者は、その生理的に歯牙が欠損し、歯茎がぐらつき、噛合力が弱まることで、経口気管挿管は相対的に安定した固定支点を失い、非常に脱出しやすい。また、若者患者は、その咳反射が強く、噛合力が強いが、挿管に対する耐性が悪く、落ち着かなくて気管挿管を喀出することが多く、送気が中止となる。又はチューブを噛んで気管挿管が崩れて、送気が難しくなる。
【0006】
3.経口気管挿管は移動度が大きく、耐性が悪い。経口気管挿管は口腔を介して送り込まれ、口腔内に左右に移動することができるし、嚥下動作とともに上下に移動することもできるので、咽頭、咽頭後壁に対する刺激が大きく、むかつき、吐き気等の不調を引き起こすので、耐性が悪い。
【0007】
このため、臨床業務において、経口気管挿管の留置時間は3~7日間であることが多く、最長で14日間を超えない。疾患の治療コースで長い期間気道通路に留置する必要のあると予測されている患者では、非侵襲的な経鼻気管挿管に変更するか、又は侵襲的な一時的気管切開術を施行することを早急に考えなければならない。
【0008】
経鼻気管挿管は耐えやすく、固定しやすく、ケアしやすく、留置時間が長い等の優位性を有する。1.経口気管挿管とは異なり、経鼻気管挿管は鼻腔から入るので、移動性が相対的に小さく、固定しやすく、脱管リスクを低減すると同時に、患者のオーラルケア及び経口摂食が一層便利になる。2.経鼻気管挿管は喉への刺激が小さく、嘔吐反射の発生率が低く、患者はより耐えやすく、臨床での鎮静・鎮痛薬の使用の減少に有利であり、臨床の実践において、一部の患者は経鼻気管挿管を使用する期間に鎮静・鎮痛薬を使用する必要がない。3.早期経鼻気管挿管がされる患者は、その機械的通気に頼る時間が明らかに経口気管挿管がされる患者よりも短く、その上、一部の患者は気管切開術の施行を回避した。そして、患者の家族及び一部の意識清明である患者は経鼻気管挿管に対する受容性もより高くなる。
【0009】
このため、緊急の場合、経口気管挿管を用いて気道を開放させる重篤患者は医者から評価された後、経鼻気管挿管に変更する必要がある。口腔と鼻腔の経路は通じないので、現在臨床操作において、まず、経口気管挿管を徹底的に抜かなければならず、その後ブラインド挿管、喉頭鏡補助、気管支ファイバースコープ補助、LEDライト補助、超音波補助等の方法により改めて経鼻でチューブを入れる。この過程は高い難度及びリスクを有する。1.生理的観点から、一回経口気管挿管された気道粘膜にはある程度の充血、水腫があることが多く、可視喉頭鏡の補助下でも解剖構造は明瞭でない可能性がある。2.重篤患者は経口気管挿管が抜き取られる場合、声門下喀痰又は気道分泌物は多く溢れ出、さらに声門付近の視野の可視度が低減される。3.経口気管挿管を抜き取る場合、暫く完全に呼吸補助サポートを切断すると同様であり、患者は酸素飽和度又は酸素化が速やかに下がることを経験する可能性がある。4.十分な量の麻酔薬又は筋弛緩剤を使用する場合、一方では、患者の自発呼吸を阻害し、他方では、体温と血圧を低減して、生命徴候を維持できず、命を脅かす可能性がある。
【0010】
このため、気管挿管患者はチューブ交換を補助し、チューブ交換過程で全コースで「ぴったりと繋がことを実現でき、る」いつでも呼吸補助設備をアクセスでき、挿管を繰り返すことを防止して気道の損傷を減少し、操作が便利であり素早い補助道具を必要とし、チューブ交換の成功率を向上し、チューブ交換過程でのリスクを低減し、最終的に患者の予後を改善する目的を達成させる。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、上記問題を克服し、経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更した装置を提供することである。上記目的を実現するために、本発明は以下の技術的手段を用いる。
【0012】
半環管と案内管とを含む経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更した装置であって、前記半環管の側部に案内管又は気管挿管が入れられる開口が設けられており、前記案内管の直径は半環管の直径よりも小さく、前記半環管の内壁に、及び案内管の側壁における端部に近い位置に互いに組み合わせられた磁気吸引部が設けられている、経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更した装置。
【0013】
改善としては、前記開口が半環管の両端まで延伸して、半環管は外力の作用を受けることなくU字状を呈する。
【0014】
改善としては、前記案内管に挿入の深さを示す目盛りが設けられている。
【0015】
改善としては、前記案内管の目盛りの示度は5~65cmであり、前記案内管の長さは65~75cmである。
【0016】
改善としては、前記磁気吸引部が半環管の内壁における中間部に近い位置に設けられる。
【0017】
本発明のメリットは以下の通りである。
【0018】
本発明は、半環管を案内管に合わせる方法を用いて気管挿管を補助案内し、チューブ交換の難度を効果的に低減し、チューブ交換の成功率を向上することができる。
【0019】
本発明は、「経口気管挿管から経鼻気管挿管に変更する」というチューブ交換過程で暫く呼吸補助から離れざるを得ず、麻酔薬、筋弛緩薬等を使用することによる患者の生命徴候の急変、命を脅かすリスクを最大限に低減することができるとともに、チューブ交換の一回の成功率を大きく向上し、挿管を繰り返して気道の損傷が悪化することを回避することができる。同時に、この装置は操作が簡単であり学びやすく、基幹病院まで普及させて、その重要な臨床応用価値を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】実施例1における半環管、案内管及び経口気管挿管の直径の比較図である。
【
図5】実施例1において経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更する操作のフローチャートである。
【
図6】実施例1において経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更する操作のフローチャートである。
【
図7】実施例1において経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更する操作のフローチャートである。
【
図8】実施例1において経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更する操作のフローチャートである。
【
図9】実施例1において経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更する操作のフローチャートである。
【
図10】実施例1において経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更する操作のフローチャートである。
【
図11】実施例1において経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更する操作のフローチャートである。
【
図12】実施例1において経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更する操作のフローチャートである。
【
図13】実施例1において経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更する操作のフローチャートである。
【
図14】実施例1において経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更する操作のフローチャートである。
【
図15】実施例1において経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更する操作のフローチャートである。
【
図16】半環管と経口気管挿管が嵌挿される場合の概略的構成図である。
【
図17】案内管と経鼻気管挿管が嵌挿される場合の概略的構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施例の目的、技術的手段及びメリットをより明らかにするために、以下、本発明の実施例中の図面を参照しながら、本発明の実施例中の技術的手段を明確で完全に説明する。明らかに、説明される実施例は本発明の一部の実施例であり、全ての実施例ではない。通常、ここで、図面に説明表示される本発明の実施例のアセンブリは、種々の異なる配置で配列と設計を行うことができる。
【0022】
なお、本発明の実施例の説明において、用語「中心」、「上」、「下」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「内」、「外」等で示される方位又は位置関係は、図面に示す方位又は位置関係に基づくものであり、又は該発明の製品が使用時に通常置かれる方位又は位置関係である。本発明を容易に説明し、及び説明を簡単にするものに過ぎず、示される装置又は素子が特定の方位を有し、特定の方位で構成、操作しなければならないことを指示又は暗示するものではない。従って、本発明を制限するものと理解されるべきではない。また、用語「第1」、「第2」、「第3」等は区別説明するためのものに過ぎず、相対的な重要性を指示又は暗示するものと理解されるべきではない。
【0023】
また、「水平」、「垂直」、「懸垂」等の用語は、部材が絶対水平又は懸垂となることが要求されることを示さず、やや傾斜してもよい。例えば、「水平」とは、その方向が「垂直」に対してより水平となることのみを意味し、該構造が必ず完全に水平であることを示さず、やや傾斜してもよい。
【0024】
本発明の実施例の説明において、「複数」とは少なくとも2つを意味する。
【0025】
なお、本発明の実施例の説明において、別途明確な規定や限定がない限り、用語「設置」「取付」、「連結」、「接続」が現れる場合、広く理解されるべきである。例えば、固定接続されてもよく、着脱可能に接続されてもよく、又は一体的に接続されてもよい。機械的に接続されてもよく、電気的に接続されてもよい。直接連結されてもよく、仲介部材によって間接的に連結されてもよく、2つの素子内部が連通してもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて、本発明における上記用語の具体的な意味を理解することができる。
【0026】
実施例1
本実施例では、半環管1と案内管2とを含む経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更した装置が開示されている。半環管1の側部に案内管2又は気管挿管が入れられる開口11が設けられており、開口11が半環管1の両端まで延伸して、半環管1は外力の作用を受けることなくU字状を呈する。
【0027】
案内管2の直径は半環管1の直径よりも小さく、半環管1の内壁に、及び案内管2の側壁における端部に近い位置に互いに組み合わせられた磁気吸引部3が設けられている。磁気吸引部3が半環管1の内壁における中間部に近い位置に設けられる。
【0028】
案内管2に挿入の深さを示す目盛り4が設けられている。目盛り4の示度は5~65cmであり、案内管2の長さは65~75cmである。
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明の使用方法を説明する。
【0030】
図5に示すように、患者は緊急に応急手当を受けた後、一般的に経口気管挿管を用い、応急手当が終了後しばらくしてから、経口気管挿管を経鼻気管挿管に変換する必要があると医者から評価される。
【0031】
具体的な操作ステップは以下の通りである。
【0032】
S1.まず、経口気管挿管A中のバルーン内のガスを抜いてから、
図6及び
図7に示すように、半環管1を経口気管挿管Aの外縁に被覆して密着させ、ついでに軽く気道に送り込んだ。経口気管挿管Aがあるので、半環管1は経口気管挿管から案内されて気道の内部に円滑に送り込まれ得る。
【0033】
S2.半環管1が適当な深さ(約20~22cm)まで挿入された後、
図8に示すように、経口気管挿管Aを取り去った。この場合、半環管1は気道に置かれているので、病状に必要であれば、半環管1を用いて呼吸補助設備に接続して、患者の酸素化を維持することができる。
【0034】
S3.
図9及び
図10に示すように、案内管2が鼻道を経由して声門位置まで送られ、この場合半環管1と案内管2の磁気吸引部3が声門付近に互いに吸引されることで、半環管1と案内管2とが結合され、その後、案内管2のまもなく気道内に滑り込む方向を精確に位置決めし、その後少し力を入れれば、案内管2は気道内に滑り込むことが可能であった。目盛り4により案内管は適切な解剖の深さに達するかを確定する。通常大人は約25cmであり、なかでも、女性は24cmであり、男性は26cmであることが多い。
【0035】
S4.
図11に示すように、口腔位置から半環管1を取り去った。開口11の作用により、半環管1を取り去る場合、案内管2の位置に影響せず、案内管2を引っ張り、さらに患者の気道を刺激することもない。
【0036】
S5.
図12~
図14に示すように、経鼻気管挿管Bを、適切な挿管の深さに達するまでガイド管1に沿い気道に送り込んだ。
【0037】
S6.従来の聴診又は呼吸終期二酸化炭素等の検出方法により、再び経鼻気管挿管Bがうまく留置したことを確認した後、ガイド管2を抜いた(
図15)。その後の通常のステップに従い経鼻気管挿管Bを固定し、呼吸補助設備に接続した。ここに至って、経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更することを完成した。
【0038】
本発明は経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更することを効果的に補助し、気管交換過程で存在し得る複数のリスクを減少し、患者の呼吸サポート方法を改善し、予後を向上することができる。
【0039】
以上、本発明の具体的な実施例を詳しく説明したが、それは例に過ぎず、本発明は以上に説明された具体的な実施例と同様ではない。当業者にとって、本発明に対して行われた同様な変形及び置換は何れも本発明の範囲にある。従って、本発明の趣旨と原則を逸脱することなく為された均等な変形及び修正は、全て本発明の保護範囲に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0040】
1 半環管
11 開口
2 案内管
3 磁気吸引部
4 目盛り
A 経口気管挿管
B 経鼻気管挿管
C 口腔
D 鼻腔
E 声門
F 気道
G 食道
【要約】 (修正有)
【課題】経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更した装置を提供する。
【解決手段】半環管1と案内管2とを含む経口気管挿管Aを経鼻気管挿管に変更した装置であって、半環管の側部に案内管又は気管挿管が入れられる開口が設けられており、案内管の直径は半環管の直径よりも小さく、半環管の内壁に、及び案内管の側壁における端部に近い位置に互いに組み合わせられた磁気吸引部が設けられている。経口気管挿管を経鼻気管挿管に変更することを効果的に補助し、気管交換過程で存在し得る複数のリスクを減少し、患者の呼吸サポート方法を改善し、予後を向上することができる。
【選択図】
図3