(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】空きスペース検出システム、空きスペース検出方法、及び、エレベーターシステム
(51)【国際特許分類】
B66B 3/00 20060101AFI20241217BHJP
B66B 1/18 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B66B3/00 L
B66B1/18 Q
B66B3/00 M
(21)【出願番号】P 2024504290
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2022009305
(87)【国際公開番号】W WO2023166689
(87)【国際公開日】2023-09-07
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 貴大
(72)【発明者】
【氏名】檀上 容康
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-138853(JP,A)
【文献】特開2017-026533(JP,A)
【文献】特開2021-187587(JP,A)
【文献】特開2019-085253(JP,A)
【文献】特開2019-131395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00- 3/02
B66B 1/00- 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかご内の空きスペースを検出する空きスペース検出システムにおいて、
乗りかご内の天井側に設けられ、前記乗りかご内の積載物との距離を計測可能な距離センサと、
前記乗りかご内の有効エリアを算出する有効エリア設定部と、
前記距離センサの取付位置座標を用いて前記有効エリアに対応した前記距離センサのデータ取得範囲を算出するセンサ情報抽出部と、
前記距離センサで検知された距離データと前記データ取得範囲とを用いて前記有効エリア内における積載物が存在する占有領域を算出する占有領域算出部と、
前記占有領域の周囲の領域において、所定の条件に合致する領域である非有効領域を算出し、前記有効エリアに対する前記占有領域及び前記非有効領域の割合から有効エリア内の空きスペースを算出する空きスペース検出部と、
を備
え、
前記有効エリアは、前記乗りかごの側壁から所定の距離だけ離れた位置に設定されている
空きスペース検出システム。
【請求項2】
前記空きスペース検出部は、
前記占有領域と、前記乗りかごの側壁及び/又は別の占有領域との間の距離及び/又は面積が所定の閾値以下である場合に、前記占有領域と前記乗りかごの側壁及び/又は別の占有領域との間の領域を第1非有効領域として検出し、
前記非有効領域は前記第1非有効領域を含む
請求項1に記載の空きスペース検出システム。
【請求項3】
前記空きスペース検出部は、前記乗りかごの4つの隅部において、前記第1非有効領域で囲まれる領域の面積が、所定の閾値以下である場合には、前記第1非有効領域で囲まれる領域を第2非有効領域として検出し、
前記非有効領域は、前記第2非有効領域を含む
請求項2に記載の空きスペース検出システム。
【請求項4】
前記センサ情報抽出部は、前記距離センサの解像度を抽出し、
前記占有領域算出部は、前記有効エリアを前記解像度で分割し、前記分割された単位領域毎に、前記単位領域の距離データが所定の閾値以上であるか否かを判定し、前記距離データが所定の閾値以上である単位領域を前記占有領域とし、
前記空きスペース検出部は、前記占有領域と乗りかごの側壁との間の距離が所定の距離以下である場合に、前記占有領域と乗りかごの側壁との間の単位領域を非有効領域とする
請求項1に記載の空きスペース検出システム。
【請求項5】
前記有効エリア設定部は、設計データが格納されているデータベースと接続され、前記データベースの前記設計データから取得される、前記乗りかご内の寸法、及び、前記距離センサの取付位置座標に基づいて有効エリアを設定する
請求項1に記載の空きスペース検出システム。
【請求項6】
前記有効エリア設定部は、設計データが格納されているデータベースと接続され、前記データベースの前記設計データから取得される、前記乗りかご内に設置される障がい物を有効エリアから除くことを特徴とする
請求項1に記載の空きスペース検出システム。
【請求項7】
前記空きスペース検出部は、前記占有領域と、前記第1非有効領域と、前記乗りかごの側壁、のいずれかにて囲まれる領域の面積が、所定の閾値以下である場合には、前記占有領域と、前記第1非有効領域と、前記乗りかごの側壁、のいずれかにて囲まれる領域を第2非有効領域として検出し、
前記非有効領域は、前記第2非有効領域を含む
請求項2に記載の空きスペース検出システム。
【請求項8】
前記空きスペース検出部は、前記占有領域と、前記非有効領域と、前記空きスペースとの関係から、一人当たりのパーソナル空間を算出することを備える
請求項1に記載の空きスペース検出システム。
【請求項9】
乗りかご内における空きスペースを検出する空きスペース検出方法において、
乗りかご内の有効エリアを算出し、
乗りかご内の天井側に設けられ、前記乗りかご内の積載物との距離を計測可能な距離センサの取付位置座標を抽出し、前記取付位置座標を基準として、前記有効エリアに対応した前記距離センサのデータ取得範囲を算出し、
前記距離センサで検知された距離データと、前記データ取得範囲とに基づいて、前記有効エリア内にある積載物が検出された占有領域を算出し、
前記占有領域の周囲の領域において、所定の条件に合致する領域である非有効領域を算出し、
前記有効エリアに対する前記占有領域及び前記非有効領域の割合から有効エリア内の空きスペースを算出し、
前記有効エリアは、前記乗りかごの側壁から所定の距離だけ離れた位置に設定されている
空きスペース検出方法。
【請求項10】
エレベーターの運行を制御するエレベーターシステムにおいて、
乗りかごを昇降移動させるエレベーターと、
乗りかご内の天井側に設けられ、前記乗りかご内の積載物との距離を計測可能な距離センサと、
前記乗りかご内の有効エリアを算出する有効エリア設定部と、
前記距離センサの取付位置座標を用いて前記有効エリアに対応した前記距離センサのデータ取得範囲を算出するセンサ情報抽出部と、
前記距離センサで検知された距離データと前記データ取得範囲とを用いて前記有効エリア内における積載物が存在する占有領域を算出する占有領域算出部と、
前記占有領域の周囲の領域において、所定の条件に合致する領域である非有効領域を算出し、前記有効エリアに対する前記占有領域及び前記非有効領域の割合から有効エリア内の空きスペースを算出する空きスペース検出部と、
を備え、
前記有効エリアは、前記乗りかごの側壁から所定の距離だけ離れた位置に設定されている
エレベーターシステム。
【請求項11】
前記空きスペース検出部で検出された検出結果に基づいて、割り当て可能と判定されたエレベーターを、乗場呼び要求のある乗場階に割り当てる割り当て演算処理部を有する
請求項
10に記載のエレベーターシステム。
【請求項12】
前記空きスペース検出部で検出された前記非有効領域に応じて、前記乗りかご内の乗車客に対して移動を促すアナウンスを実施するか否かを判定するアナウンス部を備える
請求項
10に記載のエレベーターシステム。
【請求項13】
エレベーターの乗場に設けられ、前記乗場に存在する積載物との距離を計測可能な乗場側距離センサを有し、
前記有効エリア設定部は、前記乗場における乗場側有効エリアを算出し、
前記センサ情報抽出部は、前記乗場側距離センサの取付位置座標を抽出し、前記取付位置座標を基準として、前記乗場側有効エリアに対応した前記乗場側距離センサの乗場側データ取得範囲を算出し、
前記占有領域算出部は、前記乗場側距離センサで検知された距離データと前記乗場側データ取得範囲とに基づいて、前記乗場側有効エリア内における積載物が検出された乗場側占有領域を算出し、
前記割り当て演算処理部は、前記占有領域と、前記乗場側占有領域とに基づいて、割り当て可能なエレベーターを判定し、前記割り当て可能と判定されたエレベーターを、乗場呼び要求のある乗場階に割り当てる
請求項
11に記載のエレベーターシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの乗りかご内における空きスペースの状況を検出する空きスペース検出システム、空きスペース検出方法、及び、エレベーターシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベーターの制御システムにおいて、かご内の積載量を乗りかごに設けた重量検出部(荷重検出装置)で検出し、その積載量に応じて乗車率を算出する構成が開示されている(特許文献1)。特許文献1では、表示装置における点灯状態を乗りかごの積載量に応じて段階的に変化させることで、乗りかごの乗車率をわかりやすく表示することができる。
【0003】
また、特許文献2では、複数のエレベーターを1つのグループとして制御し、利用者により効率的な運行サービスを提供するための群管理装置を有するエレベーターシステムに関する発明が開示されている。特許文献2では、複数のエレベーターのうち、荷重検出装置で検出された荷重値が所定の閾値以下であるエレベーターに空きスペースがあると判断し、そのエレベーターを目的階に停止させるサービスエレベーターとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-98577号公報
【文献】特開2018-167921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エレベーターシステムにおいて、荷重検出装置で乗りかごの荷重を検出し、その検出結果に基づいて、乗りかごの空きスペースがあるか否かを判断する場合、その荷重値から想定される空きスペースと、実際の空きスペースが異なる場合がある。例えば、大きくて軽い積載物が乗りかご内のスペースを占有している場合、実際には空きスペースが少ないにも関わらず、荷重値判断により、空きスペースが有ると判断される場合がある。
【0006】
この結果、例えば、エレベーターの群管理システムにおいて、荷重値判断による空きスペースの算出を行った場合、実際には空きスペースが無い乗りかごを、所定の乗場階に、停止させてしまう事例が発生する。また、乗りかごの乗車率状況を表示する構成においても、誤った情報を表示する事例が発生する。
【0007】
そこで、本発明は、乗りかご内における空きスペース又は乗客や積載物による占有スペースの状況を検出することができ空きスペース検出システム、空きスペース検出方法、及び、エレベーターシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の空きスペース検出システムは、乗りかご内の天井側に設けられ、乗りかご内の積載物との距離を計測可能な距離センサを有する。また、乗りかご内の有効エリアを算出する有効エリア設定部と、距離センサの取付位置座標を用いて有効エリアに対応した距離センサのデータ取得範囲を算出するセンサ情報抽出部とを有する。また、距離センサで検知された距離データとデータ取得範囲とを用いて有効エリア内における積載物が存在する占有領域を算出する占有領域算出部と、占有領域の周囲の領域において、所定の条件に合致する領域である非有効領域を算出し、有効エリアに対する占有領域及び非有効領域の割合から有効エリア内の空きスペースを算出する空きスペース検出部とを有する。
【0009】
本発明の空きスペース検出方法は、乗りかご内の有効エリアを算出する。乗りかご内の天井側に設けられ、乗りかご内の積載物との距離を計測可能な距離センサの取付位置座標を抽出する。取付位置座標を基準として、有効エリアに対応した前記距離センサのデータ取得範囲を算出する。距離センサで検知された距離データと、データ取得範囲とに基づいて、有効エリア内にある積載物が検出された占有領域を算出する。そして、占有領域の周囲の領域において、所定の条件に合致する領域である非有効領域を算出する。有効エリアに対する占有領域及び非有効領域の割合から有効エリア内の空きスペースを算出する。
【0010】
本発明のエレベーターシステムは、乗りかごを昇降移動させるエレベーターと、上記空きスペース検出システムとを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、乗りかご内における空きスペースの状況をより正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエレベーターシステム100の概略構成図である。
【
図2】乗りかご2を内部側から見たときの概略構成図である。
【
図3】乗りかご2を上面からみたときの概略構成図である。
【
図4】乗りかご2に設置される距離センサ3のデータ取得範囲の設定方法を示すフローである。
【
図5】
図4のステップS1における有効エリア40の抽出方法を示すフローである。
【
図6】距離センサ3のデータ取得範囲の抽出方法を示すフローである。
【
図7】センサ情報取得部24における距離センサ3の距離データ取得に係る設定方法を示すフローである。
【
図8】ステップS33及びステップS34によって取得された情報を、距離センサ3で検知した距離データに反映させたときの概略図である。
【
図9】空きスペース検出部25における空きスペース算出方法を示したフローである。
【
図10】距離センサ3で取得される距離データの様子を示した概略構成図である。
【
図12】本発明の一実施形態におけるエレベーターの割り当て演算処理方法を示すフローである。
【
図13】割り当てしたエレベーターが満員状態か判定し、サービス不可であれば、通過指令を行うフローである。
【
図14】アナウンス部27におけるアナウンス制御方法を示すフローである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る空きスペース検出システム、空きスペース検出方法、及び、エレベーターシステムの一例を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。以下で説明する各図において、共通の部材には同一の符号を付している。
【0014】
<1.エレベーターシステムの構成>
まず、本発明の一実施形態に係るエレベーターシステムについて、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態(以下、本実施形態とする)に係るエレベーターシステム100の概略構成図である。なお、本実施形態のエレベーターシステム100は、本発明の空きスペース検出システムを含むものであり、
図1に示すエレベーターシステム100が空きスペース検出システムであってもよく、また、
図1に示すエレベーターシステム100の一部において、空きスペース検出システムが構成されてもよい。
【0015】
図1に示すように、本実施形態のエレベーターシステム100は、エレベーター1と、エレベーター運行管理部11と、エレベーター制御部10と、かご内カメラ制御部18と、距離センサ制御部19とを有する。さらに、エレベーターシステム100は、通信中継部17及び通信網16を介して接続されるホストコンピューター14と、統計データベース(DB)12と、保全データベース(DB)13とで構成されている。
【0016】
[エレベーター]
エレベーター1は、建物建造物内に形成された昇降路(図示を省略する)内を昇降動作する。エレベーター1は、人や荷物(以下、積載物)を乗せる乗りかご2と、主ロープ35と、釣合い錘33と、巻上機34と、を備える。巻上機34は、主ロープ35に巻き掛けられており、後述するエレベーター制御部10の昇降制御部21の制御の下、乗りかご2を昇降させる。また、乗りかご2は、主ロープ35を介して釣合い錘33と連結され、昇降路内を昇降する。
【0017】
図2に、乗りかご2を内部側から見たときの概略構成図を示す。また、
図3に、乗りかご2を上面からみたときの概略構成図を示す。
図3では、積載物の一例として、乗客P1、P2、P3と、荷物Bを図示している。また、乗りかご2において、乗りかご2の奥行方向をY方向とし、乗りかご2の高さ方向をZ方向とし、Y方向及びZ方向に垂直な方向をX方向として示す。
【0018】
図2に示すように、乗りかご2は、かご床2aと、かご床2aの周囲に立設する側壁2bと、かご床2aに対してかご室を介して対向する位置に設けられる天井2cとを備える。そして、かご床2a、側壁2b、天井2cに囲まれる空間が積載物を収容できるかご室となる。また、側壁2bのうち乗場側の側壁2bに設けられたかご側三方枠内には、かごドア31が設けられている。かごドア31は、乗りかご2が各階のフロアに停止した際に、フロア側に設けられた乗場ドア(図示を省略する)に対応する位置に設けられている。かごドア31及び乗場ドアは、後述する戸開閉制御部22の制御の下、開閉動作が為される。
【0019】
かごドア31付近の側壁2bには、利用者が行先階を登録するための行先階登録ボタンや、登録された行先階や乗りかご2の現在位置の情報を表示する入出力装置28が設けられている。
【0020】
また、乗りかご2の側壁2bには、乗客の移動を補助する手すり30が設けられている。手すり30は棒状の部材で構成されており、乗客が捕まることができる程度に側壁2bから離した位置に取り付けられている。
【0021】
さらに、エレベーター1の乗りかごの天井2c側には、かご内カメラ4(
図1)、及び、距離センサ3が設けられている。かご内カメラ4は、例えば監視の用途に用いられるものであり、乗りかご2内を撮像可能な画像センサで構成されている。かご内カメラ4は後述するかご内カメラ制御部18の制御の下、乗りかご2内を適宜撮像する。
【0022】
距離センサ3は、
図2に示すように、天井2c側において、側壁2bから所定の距離だけ離れた位置に設けられており、天井2cに設けられる照明器具(図示を省略する)よりも、上下方向における上方に設置される。距離センサ3は、乗りかご2内の積載物P1、P2、P3、Bまでの距離を検知するセンサである。距離センサ3としては、例えば、ToF(Time of Flight)センサや、ミリ波センサで構成されている。ToFセンサは、特定波長の光に変調をかけて放射し、該放射光が積載物で反射した光を受信して処理することで、該積載物までの距離を計測できるセンサである。距離センサとして、ToFセンサを用いる場合には、特定波長の光を照射するために、別途ライトが必要である。
【0023】
ミリ波センサは、特定周波数の電波に変調をかけて送信し、該送信が積載物に衝突して生じる反射波を受信して処理することで、該積載物までの距離を計測できるセンサである。本実施形態では、距離センサ3は、かご内の意匠性を考慮し、レンズを外部にむき出しにする構成よりも、動作原理からカバーで加工できるミリ波センサで構成されることが好ましい。
【0024】
上述したエレベーター1を構成する各部は、適宜、エレベーター運行管理部11、エレベーター制御部10、かご内カメラ制御部18、距離センサ制御部19に接続され、それぞれ制御されている。なお、
図1では、1機のエレベーター1のみを図示しているが、本実施形態のエレベーターシステム100では、1号機からN号機までの複数のエレベーターを備え、それらのエレベーター1が、エレベーター運行管理部11によって群管理制御されている。この場合、エレベーター制御部10、かご内カメラ制御部18、距離センサ制御部19は、エレベーター1毎に設けられると共に、各エレベーター1を制御する。一方、エレベーター運行管理部11は、全ての号機のエレベーター1を群管理する。
【0025】
[エレベーター制御部]
エレベーター制御部10は、例えば、昇降制御部21、戸開閉制御部22、及び、距離センサ設定部23、アナウンス部27を有する。
【0026】
昇降制御部21は、乗りかご2の運行を担う巻上機34(主機)等を制御する。上述したように、巻上機34には、一端に、人や物を乗せる乗りかご2が接続され、他端に釣合いおもり33が接続された主ロープ35が巻き掛けられている。本実施形態では、昇降制御部21の制御の下、巻上機34が動作し、乗りかご2が昇降路を昇降移動する。これにより、エレベーターシステム100では、乗りかご2に乗った人や物に対して、エレベーター1の昇降移動に係るサービスを提供する。
【0027】
戸開閉制御部22は、所定の乗場階のフロアに乗りかご2が到着した場合には、各乗りかご2のかごドア31を駆動制御するドア駆動制御部(図示せず)に、かごドア31及び乗場ドア(図示せず)の開閉動作の指示を出力する。
【0028】
距離センサ設定部23は、距離センサ3で距離データを取得するタイミングを設定し、その情報を、距離センサ制御部19のセンサ情報取得部24に送信する。距離センサ設定部23は、かごドア31の戸閉時や、乗りかご2の昇降開始時のタイミング等、予め設定された情報を基に、距離センサ3の距離データの取得タイミングを生成する。そして、距離センサ設定部23は、生成した距離データの取得タイミングに関する情報を、センサ情報取得部24に送信する。また、距離センサ設定部23には、距離センサ3における距離データのデータ取得範囲及び解像度の初期設定値が保持されている。これらの初期設定値は、後述する有効エリア設定部15にて設定されるものである。また前述した取得タイミング等も予め初期値として設定され、当該初期値を利用する形式でも良い。
【0029】
アナウンス部27は、空きスペース検出部25、昇降制御部21、及び、戸開閉制御部22からの情報に基づいて、乗りかご2内に発信するアナウンスの制御を行う。本実施形態においては、アナウンス部27は、所定のタイミングにおいて、乗りかご2内の乗車客に対して壁側への移動を促すアナウンスを発信する。アナウンス部27の制御方法については後で詳述する。
【0030】
[エレベーター運行管理部]
エレベーター運行管理部11は、割り当て演算処理部20を有する。割り当て演算処理部20は、後述する空きスペース検出部25で算出された乗りかご2の空きスペースの情報に基づいて、割り当て可能なエレベーターを判定し、乗場呼び要求のあった乗場階に停止させるエレベーター1の号機を決定する。割り当て演算処理部20における割り当て方法については後で詳述する。
【0031】
[かご内カメラ制御部]
かご内カメラ制御部18は、エレベーター制御部10の制御の下、かご内カメラ4を駆動制御する。かご内カメラ4で取得された画像は、例えば、かご内カメラ制御部18に設けられた記憶部(図示を省略する)に記憶される。その他、かご内カメラ4で取得された画像は、通信路190、通信中継部17、通信網16、及びホストコンピューター14を介して、統計DB12又は/及び保全DB13に記憶される構成としてもよい。なお、かご内カメラ4における撮像は、常時行われるものであってもよく、また、積載物を感知した際に撮像するものであってよい。かご内カメラ4の撮像タイミングについては、種々の変更が可能である。
【0032】
[距離センサ制御部]
距離センサ制御部19は、センサ情報取得部24と、占有領域算出部29と、空きスペース検出部25とを備える。センサ情報取得部24は、後述する距離センサ設定部23から送信されてくる所定のタイミング(以下、距離データ取得タイミング)で、距離センサ3で検知される距離データを取得する。この所定の距離データ取得タイミングとは、例えば、かごドア31が戸閉したタイミングや、乗りかご2が昇降動作を始めるタイミング等である。センサ情報取得部24は、エレベーター制御部10からその距離データ取得タイミングに関する信号を受信することで、距離データ取得タイミングに応じた距離情報を取得する。なお、
図3の構成の場合、距離センサ3で取得された距離データについて通信路190を介して距離センサ制御部19にて、データ加工をする構成とするが、構成については、これに限らない。例えば、距離センサ制御部19の機能を距離センサ3に入れ込み、加工されたデータをエレベーター制御部10と通信路190を介してやり取りする構成でもよい。
【0033】
占有領域算出部29は、距離センサ3で取得された距離データと、後述するセンサ情報取得部24において取得したセンサ情報に基づいて、乗りかご2内の積載物が占有する占有領域を算出する。空きスペース検出部25は、積載物と壁との間のスペースに基づいて、かご内の空きスペースを算出する。占有領域算出部29における占有領域算出方法、及び、空きスペース検出部25における空きスペースの算出方法については、後で詳述する。
【0034】
[ホストコンピューター]
ホストコンピューター14は、エレベーター1、かご内カメラ制御部18、距離センサ制御部19、エレベーター制御部10、及びエレベーター運行管理部11を繋ぐ通信路190と、通信中継部17及び通信網16を介して接続されるコンピューターである。ホストコンピューター14は、有効エリア設定部15と、センサ情報抽出部26とを備える。
【0035】
有効エリア設定部15は、乗りかご2内において、人や荷物等の積載物を乗せることができる空間において、距離センサ3で検知する測定範囲(以下、有効エリア40)を設定する。有効エリア設定部15では、保全DB13に記憶されている乗りかご2の情報を抽出し、その情報から、有効エリア40を設定している。有効エリア設定部15における有効エリア40の設定方法については、後で詳述する。
【0036】
センサ情報抽出部26は、保全DB13に記憶されている距離センサ3の情報から、距離センサ3の解像度を抽出する。また、センサ情報抽出部26は、距離センサ3の取付位置座標の情報や、有効エリア設定部15で設定された有効エリア40の情報から、距離センサ3におけるデータ取得範囲を抽出する。距離センサ3におけるデータ取得範囲の抽出方法については、後で詳述する。
【0037】
[保全DB]
保全DB13は、保全対象の全エレベーター1の識別番号、機種、構成機器の仕様に関する情報が蓄積されたデータベースである。本実施形態では、保全DB13に蓄積された情報のうち、乗りかご2の図面及びその3D情報と、乗りかご2に設置された距離センサ3の解像度、及び、距離センサ3の取付位置座標の情報とを用いる。
【0038】
[統計DB]
統計DB12は、保全対象の全エレベーター1における乗車人数に関する統計、停止階に関する統計、故障内容に関する統計等、様々な統計に関する情報を蓄積している。本実施形態では、空きスペース検出部25で算出され空きスペースに関する統計が随時更新されて記憶されている。
【0039】
<2.エレベーターシステムの制御方法>
以下に、本実施形態における空きスペース検出方法を含むエレベーターシステムの制御方法について説明する。
【0040】
[データ取得範囲設定方法]
まず、乗りかご2内における空きスペースを検出するにあたって、乗りかご2に設置される距離センサ3の検出範囲(以下、データ取得範囲)を設定する。
図4は、乗りかご2に設置される距離センサ3のデータ取得範囲の設定方法を示すフローである。
【0041】
まず、ホストコンピューター14において、有効エリア設定部15に、保全DB13に蓄積された乗りかご2の図面及びその3D情報が入力される(ステップS1)。有効エリア設定部15は、入力された3Dの図面情報を用いて、乗りかご2の有効エリア40、及び有効エリア40の面積(以下、有効面積)を抽出する(ステップS2)。有効エリア40は、
図3に示すように、側壁2b及びかごドア31から所定の距離だけ離れた範囲であって、手すり30等の乗りかご2内に予め設置されている障害物を除いた範囲に設定されている。すなわち、有効エリア40は、乗りかご2内において、積載物が実際に積載されると予想される範囲に設定されている。有効エリア40及び有効面積の設定方法に関する詳細は後述する。なお、本実施形態では、図面及びその3D情報を入力情報としているが、これに限らず、設計情報をデジタル化したデータと連携して、得られる設定情報を入力情報とする構成としてもよい。
【0042】
次に、センサ情報抽出部26は、有効エリア設定部15で設定された有効エリア40と、保全DB13から受信した距離センサ3の取付位置座標との情報から、有効エリア40に対応するデータ取得範囲を抽出する(ステップS3)。データ取得範囲とは、距離センサ3の取付位置座標を基準として設定される有効エリア40に対応した距離センサ3のデータ取得範囲である。データ取得範囲を抽出することで、距離センサ3によるデータ取得範囲を有効エリア40に紐づけることができる。データ取得範囲の抽出方法については、後で詳述する。
【0043】
また、ステップS3では、センサ情報抽出部26は、保全DB13から、距離センサ3の解像度に関する情報についても抽出する。
【0044】
そして、ステップS2及びステップS3の処理で抽出された有効エリア40、データ取得範囲、及び解像度の情報は、保全DB13にフィードバックされ、保全DB13内において、距離センサ3の設定情報が更新される。
【0045】
図4のフローで示した有効エリア40、距離センサ3におけるデータ取得範囲及び解像度の抽出は、保全DB13に蓄積された情報に基づいてホストコンピューター14内で行うことができる。このため、エレベーター1の出荷前に、これらの情報を予め抽出しておくことができる。有効エリア40、データ取得範囲、及び解像度の抽出は、乗りかご2の情報が保全DB13に蓄積された時点で自動的に行われる仕様としてもよい。また、本実施形態では、保全DBを活用する構成としたが、図面類を格納する設計DBと連携する構成でも良い。
【0046】
また、有効エリア40、データ取得範囲、及び解像度に関する情報は、エレベーター1の乗りかご2の仕様が変更になった場合や、距離センサ3の取付位置座標の変更があった場合等は、随時更新される。
【0047】
[有効エリアの抽出方法]
図5は、
図4のステップS1における有効エリア40の抽出方法を示すフローである。まず、有効エリア設定部15は、乗りかご2の水平方向であるX方向、及び、Y方向において、かごドア31を含む側壁2bから距離センサ3における距離データの取得開始位置までの閾値を設定する。側壁2bから距離データの取得開始位置までの閾値は、距離センサ3において、側壁2bを積載物として検出しないために設けられる値であり、実際に積載物が積載される位置を想定して決定されている。これらの閾値は、予め定められ、保全DB13に蓄積されている。有効エリア設定部15では、X方向及びY方向における閾値の情報を保全DB13から抽出する。
【0048】
次に、有効エリア設定部15は、保全DB13に蓄積された図面情報から手すりなど、側壁2bよりも内側に存在する障害物30を抽出する(ステップS12)。
【0049】
そして、有効エリア設定部15は、ステップS11で設定された側壁2bから距離データの取得開始位置までの閾値及び、ステップS12で抽出された障害物の情報から、X方向の有効寸法Xed、Y方向の有効寸法Yed、及び有効エリア40を抽出する(ステップS13)。ステップS13では、有効寸法Xed及びYedの値から有効エリア40における有効面積も算出される。以上のようにして、有効エリア40及び有効エリア40の有効面積が抽出される。
【0050】
[データ取得範囲の抽出方法]
次に、
図6を用いて、距離センサ3のデータ取得範囲の抽出(
図4のステップS3に相当)について説明する。
図6は、距離センサ3のデータ取得範囲の抽出方法を示すフローである。
【0051】
まず、センサ情報抽出部26は、保全DB13に蓄積された情報から、距離センサ3のXY平面における取付位置座標(Xs,Ys)を抽出する(ステップS21)。距離センサ3の取付位置座標とは、乗りかご2の天井2cに取付られる距離センサ3の中心位置をXY平面において座標表示したものである。
【0052】
次に、センサ情報抽出部26は、距離センサ3の取付位置座標(Xs,Ys)と、有効エリア40とを照らし合わせ、距離センサ3の取付座標位置(Xs,Ys)を基準として、距離センサ3で取得する距離データのデータ取得範囲を抽出する(ステップS22)。距離センサ3の取付座標位置(Xs,Ys)=(0,0)としたとき、X方向におけるデータ取得範囲は、
図3に示す-X1(mm)から+X2(mm)の範囲に設定される。また、Y方向におけるデータ取得範囲は、
図3に示す-Y1(mm)から+Y2(mm)の範囲に設定される。
【0053】
次に、センサ情報抽出部26は、保全DB13に蓄積された情報から、距離センサ3のZ方向における取付位置高さZsを抽出する(ステップS23)。距離センサ3のZ方向における取付位置高さZsは、乗りかご2の床から距離センサ3の取付位置までの高さである。
【0054】
次に、センサ情報抽出部26は、保全DB13に蓄積された情報から、Z方向における高さ方向の閾値を設定する。Z方向における閾値は、Z方向における有効寸法を決定するために設けられる値であり、Z方向において、天井2c側と床2a側に設けられている。天井2c側に設定される閾値は、距離センサ3よりも上下方向における下方に設けられた照明板を距離センサ3が検知しないために設けられる値である。また、床2a側に設定される閾値は、乗客が上がれるように設置された低い台など、占有度に影響しない積載物を距離センサ3が検知してしまうことを防ぐために設けられる値である。閾値が設定されることにより、床2aから閾値分だけ離れた位置から、照明板から閾値分だけ離れた位置までの寸法がZ方向におけるZ方向の有効寸法Zedとなる。
【0055】
次に、センサ情報抽出部26は、距離センサ3のZ方向における取付位置座標Zsと、有効寸法Zedとを照らし合わせて、距離センサ3の高さ方向の取付座標位置Zsを基準として、Z方向におけるデータ取得範囲を抽出する。距離センサ3の高さ方向の取付位置座標Zs=0としたとき、距離センサ3におけるZ方向のデータ取得範囲は、
図3に示すMAX+Z1(mm)から、MIN+Z2(mm)までの範囲である。
【0056】
以上のようにして、距離センサ3における有効エリア40に対応するデータ取得範囲がX、Y、Z方向で抽出される。なお、当該有効エリア40については、製品出荷時に、保全DB13と接続し設定しても、現地にセンサを設置した際に設定されるような構成でも良い。更に、保全DB13と連携することで、仮に取付位置が修正になった場合も、出荷元の設計データを反映すると自動的に有効エリアも設定可能となる。前述したToFセンサや、ミリ波センサでは、不要な箇所へのビームや、電磁波の放出を抑えることや、反射を考慮したエリアの閾値設定が重要である。さらに、センサから得られたデータを活用したエリアの設定でなく、事前に有効エリアを設定して、当該エリアに応じた処理を行うことが重要である。
【0057】
[センサ情報設定方法]
次に、距離センサ制御部19のセンサ情報取得部24におけるセンサ情報設定方法について説明する。
図7は、センサ情報取得部24における距離センサ3の距離データ取得に係る設定方法を示すフローである。
【0058】
まず、センサ情報取得部24は、センサ情報抽出部26から距離センサ3の設定に関する情報(データ)を正常に受信できたか否かを判定する(ステップS31)。ここで、センサ情報抽出部26から、センサ情報取得部24に送信されるデータは、X方向、Y方向、及びZ方向におけるデータ取得範囲と、距離センサ3のXY平面における解像度である。
【0059】
ステップS31において、「NO」と判定された場合、すなわち、データを正常に受信できていないと判定された場合、エレベーター制御部10の距離センサ設定部23に予め記憶されている距離センサ3に関する初期設定値を抽出する(ステップS32)。この初期設定値は、
図6と同様にして得られた距離センサ3のデータ取得範囲の初期値と、解像度の初期値である。
【0060】
一方、ステップS31において、「YES」と判定された場合、すなわち、データを正常に受信できたと判断された場合、センサ情報取得部24は、距離センサ3で検知される距離データのデータ取得範囲(X方向、Y方向、Z方向)を設定する。距離データのデータ取得範囲は、X方向において、-X1(mm)~+X2(mm)、Y方向において、-Y1(mm)~+Y2(mm)、Z方向において、MIN+Z1(mm)~MAX+Z2(mm)である。
【0061】
次に、センサ情報取得部24は、センサ情報抽出部26で抽出された距離センサ3の解像度を取得する(ステップS34)。
図8に、ステップS33及びステップS34によって取得された情報を、距離センサ3で検知した距離データに反映させたときの概略図を示す。
図8において、
図3に対応する部分には同一符号を付し重複説明を省略する。
【0062】
図8に示すように、センサ情報取得部24で取得した距離センサ3のデータ取得範囲は、有効エリア40と同一の範囲となる。また、解像度の設定により、XY平面における有効エリア40内の距離データは、所定の単位領域41に区分される。そして、本実施形態では、有効エリア40内において区分された単位領域41毎に、積載物の有無を判定し、空きスペースを算出する。以下に、空きスペースの算出方法について説明する。
【0063】
[占有領域算出方法、空きスペース検出方法]
図9は、占有領域算出部29における占有領域算出方法、及び、空きスペース検出部25における空きスペース検出方法を示したフローである。所定のタイミングで距離センサ3が距離データを取得した後、占有領域算出部29では、有効エリア40を距離センサ3の解像度で分割した単位領域41毎に積載物の有無判定を行う「解像度ループ」を開始する(ステップS41)。まず、距離センサ3で検出された距離データから、所定の単位領域41における距離データを抽出する(ステップS42)。
【0064】
次に、占有領域算出部29は、単位領域41における距離データが、閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS43)。ステップS43の閾値は、例えば距離センサ3で検知される反射光の強度によって決められた値であり、反射光の強度が閾値よりも大きい場合には、積載物があると判定され、閾値よりも小さい場合には、積載物はないと判定される。
【0065】
図10は、距離センサ3で取得される距離データの様子を示した概略構成図である。距離センサ3では、X、Y、Z軸におけるデータがそれぞれ取得される。X軸及びY軸方向で検出される値からは、積載物の有無が判定され、Z軸方向で検出される値からは積載物の高さが検出される。
【0066】
図10に示すように、それぞれの単位領域41に、積載物P1、P2、P3、Bの一部又は全部が存在している部分は、占有領域D1、D2、D3で示される。なお、以下の説明において、積載物が検出された単位領域41を「占有領域」、積載物が検出されなかった単位領域41を「非占有領域」と記す。また、占有領域D1、D2、D3について区別しない場合には、単に、占有領域Dとして示す。
【0067】
この占有領域D1、D2、D3が、ステップS43の処理において積載物があると判定される単位領域41となる。また、本実施形態では、取得される距離データが所定の閾値よりも大きいか否かを判定することにより、距離センサ3の誤検知を防ぐことができる。
【0068】
ステップS43において、「YES」と判定された場合、すなわち、単位領域41に積載物があると判定された場合には、検出点が+1加算される(ステップS45)。ステップS45では、占有領域算出部29は、積載物が有ると判定された単位領域41(占有領域)の和を「検出点」として算出する。すなわち、ステップS45では、積載物があると判定され単位領域41の数が積算される。
【0069】
ステップS43において、「NO」と判定された場合、すなわち、単位領域41に積載物が無いと判定された場合には、検出点は積算されない。ステップS42~ステップS44の処理は、有効エリア40の全ての単位領域41に対して行われ、有効エリア40の全ての単位領域41における積載物の有無の判定が終了した場合に、解像度ループを終了する(ステップS45)。
【0070】
次に、空きスペース検出部25は、積載物が無いと判断された単位領域41(非占有領域)のうち、人を乗せることができない単位領域41を非有効領域として検出し、その非有効領域の数から、非有効点を算出する(ステップS46)。空きスペース検出部25における非有効領域、及び不有効点の算出方法については、後で詳述する。
【0071】
次に、空きスペース検出部25は、積算された検出点と、非有効点とから、占有度を求める(ステップS47)。空きスペース検出部25は、有効エリア40内の総数点、すなわち、有効エリア40内の単位領域41の総数に対する、検出点及び非有効点の割合を算出することで、占有度(%)を算出する。
【0072】
次に、空きスペース検出部25は、空きスペースを算出する(ステップS48)。空きスペース検出部25は、100(%)-占有度(%)を計算することで、空きスペース(%)を算出することができる。
【0073】
なお、本実施形態では、空きスペースを、割合として求めたが、面積として求めてもよい。この場合には、有効エリア40の面積に対する空きスペースの割合から、空きスペースの面積を算出することができる。
【0074】
以上、
図9を用いて説明した空きスペース検出方法により、エレベーター運行管理部11が群管理するすべての号機のエレベーター1における乗りかごの空きスペースが随時検出される。
【0075】
[非有効点、及び、非有効度算出方法]
ここで、
図9のステップS46における非有効点、及び、非有効度の算出方法について説明する。
図11は、非有効度の算出方法を示すフローである。本実施形態では、
図10に示すように、占有領域D1~D4と側壁2b(2b―1、2b―2、2b-3、2b-4)との関係から、第1非有効領域Nw1、Nw2、Nw3、Nw4や、第2非有効領域Nc1、Nc2、Nc4を算出する。以下の説明において、第1非有効領域Nw1、Nw2、Nw3、Nw4を区別しない場合には、第1非有効領域Nwと示す。また、第2非有効領域Nc1、Nc2、Nc4を区別しない場合には、第2非有効領域Ncと示す。
【0076】
空きスペース検出部25は、
図9に示すフローにおいて占有領域Dと判定された単位領域41毎に、その占有領域Dに基づいた第1非有効領域Nwの有無判定を行う「解像度ループ」を開始する(ステップS461)。
【0077】
まず、空きスペース検出部25は、占有領域DのX座標と、X方向における一方の側壁2b-1、又は他方の側壁2b-2との距離が閾値Xwよりも大きいか否かを判定する。なお、本実施形態では、他方の側壁2b-2には、手すり30が設けられている。ここでは、占有領域X座標と側壁2b-2との距離を算出する例とするが、実際に手すり30が設けられた部分には乗車が不可能であるから、手すり30が設けられている位置を側壁とみなして、手すり30が設けられている位置と、占有領域DのX座標との距離を算出するようとしてもよい。
【0078】
ステップS462で用いられる閾値Xwは、平均的なパーソナルモデルから導き出される値である。例えば、X方向幅が800mm、Y方向幅が400mmのパーソナルモデルを基準とした場合、閾値Xwは800mmに設定される。すなわち、この場合、ステップS462では、占有領域DのX座標とX方向における側壁2b-1、2b-2との距離が800mmよりも大きいか否かが判定される。
【0079】
ステップS462において、「YES」と判定された場合、すなわち、占有領域DのX座標と、X方向における側壁2b-1、又は、側壁2b-2との距離が閾値Xwよりも大きいと判定された場合には、後述するステップS465に進む。
【0080】
一方、ステップS462において、「NO」と判定された場合、すなわち、占有領域DのX座標と、X方向における側壁2b-1、又は側壁2b-2との距離が閾値Xw以下であると判定された場合にはステップS463に進む。
【0081】
ステップS463では、空きスペース検出部25は、占有領域Dと、その占有領域Dとの距離が閾値Xw以下となった側壁2bとの間の単位領域41のうち、非占有領域である単位領域41を第1非有効領域Nwとする。なお、他の占有領域Dと側壁2bとの関係において、既に第1非有効領域Nwとされた単位領域41については、ここで再度新たに第1非有効領域Nwと判断されない。
【0082】
このように、ステップS463では、占有領域Dと、そのX方向における側壁2bとの間における非占有領域において、乗客が乗るスペースが無い場合に、その非占有領域が第1非有効領域Nwとされる。例えば、
図10の例では、荷物Bと側壁2b-1との間の単位領域41が第1非有効領域Nw1として検出される。また、乗客P2と側壁2b-1との間の単位領域41が第1非有効領域Nw2として検出される。また、乗客P3と側壁2b-2との間の単位領域41が第1非有効領域Nw3として検出される。また、乗客P2と側壁2b-2との間の単位領域41が第1非有効領域Nw4として検出される。
【0083】
その後、ステップS463において第1非有効領域Nwであると判定された単位領域41の数(ポイント)分を非有効点に加算する(ステップS464)。
【0084】
次に、空きスペース検出部25は、占有領域のY座標と、Y方向における一方側に位置する側壁2b-3、又は他方側に位置する側壁2b-4との距離が閾値Ywよりも大きいか否かを判定する(ステップS465)。なお、本実施形態では、他方の側壁2b-4には、かごドア31が設けられているが、ここでは、かごドア31も側壁2b-4としてみなし、Y座標との距離を算出する。
【0085】
ステップS465で用いられる閾値Ywは、平均的なパーソナルモデルから導き出される値である。例えば、X方向幅が800mm、Y方向幅が400mmのパーソナルモデルを基準とした場合、閾値Ywは800mmに設定される、すなわち、この場合、ステップS465では、占有領域DのY座標とY方向における側壁2b-3又は2b-4との距離が400mmよりも大きいか否かが判定される。
【0086】
ステップS465において、「YES」と判定された場合、すなわち、占有領域のY座標と、Y方向における側壁2b-3、又は、2b-4との距離が閾値Ywよりも大きいと判定された場合には、後述するステップS468に進む。
【0087】
一方、ステップS465おいて、「NO」と判定された場合、すなわち、占有領域のY座標と、Y方向における側壁2b-3、又は、2b-4との距離が閾値Yw以下であると判定された場合にはステップS466に進む。
【0088】
ステップS466では、空きスペース検出部25は、占有領域Dと、その占有領域Dとの距離が閾値Yw以下となった側壁2bとの間の単位領域41のうち、非占有領域である単位領域41を第1非有効領域Nwとする。なお、他の占有領域Dと側壁2bとの関係において、既に第1非有効領域Nwとされた単位領域41については、ここで再度新たに非有効領域Nwと判断されない。
【0089】
このように、ステップS463では、占有領域Dと、そのY方向における側壁2bとの間における非占有領域において、乗客が乗るスペースが無い場合に、その非占有領域が第1非有効領域Nwとされる。例えば、
図10の例では、乗客P1と側壁2b-3との間の単位領域41が第1非有効領域Nw1として検出される。また、乗客P2と側壁2b-4との間の単位領域41が第1非有効領域Nw2として検出される。また、乗客P2と側壁2b-23との間の単位領域41が第1非有効領域Nw4として検出される。
【0090】
その後、ステップS466において第1非有効領域Nwであると判定された単位領域41の数(ポイント)分を非有効点に加算する(ステップS467)。
【0091】
全ての占有領域DについてステップS462~ステップS467のフローが完了したら、解像度ループを終了する(S468)。
【0092】
次に、空きスペース検出部25は、乗りかご2における4つの隅部(4隅)の少なくとも1つは第1非有効領域Nwに囲われているか否かを判定する(ステップS469)。ここでは、例えば、有効エリア40の単位領域41において、4つの角に配置されたそれぞれの単位領域41a、41b、41c、41dが、第1非有効領域Nwに囲われているか否かで判断することができる。
【0093】
ステップS469において、「NO」と判定された場合、すなわち、4つの隅部にある単位領域41a、41b、41c、41dがいずれも第1非有効領域Nwに囲われていないと判定された場合には、ステップS472に進む。
【0094】
一方、ステップS469において、「YES」と判定された場合、すなわち、4つの隅部にある単位領域41a、41b、41c、41dのいずれかが第1非有効領域Nwに囲われていると判定された場合には、ステップS470に進む。
【0095】
ステップS470では、側壁2bと、第1非有効領域Nwとの関係から第2非有効領域Ncを決定する。ここでは、まず、ステップS470では、空きスペース検出部25が、第1非有効領域Nwに囲われた隅部に、所定の面積の隅側空きスペースが有るか否かを判定する。ここで、所定の面積は、ステップS462やステップS465と同様、例えば、X方向幅が800mm、Y方向幅が400mmのパーソナルモデルを基準として設定される。隅側空きスペースが所定の面積以上である場合には、第1非有効領域Nwで囲われた単位領域41は第2非有効領域Ncと判定されない。すなわち、
図10に示すように、例えば、第1非有効領域Nw1に囲われた隅部の単位領域41は、第2非有効領域Ncと判定されない。
【0096】
一方、隅側空きスペースが所定の面積よりも小さいと判定された場合は、第1非有効領域Nwで囲われた単位領域41は第2非有効領域Ncと判定される。すなわち、
図10に示すように、例えば第1非有効領域Nw2で囲われた隅部の単位領域41と、第1非有効領域Nw4で囲われた隅部の単位領域41は、それぞれ、第2非有効領域Nc2、Nc4と判定される。
【0097】
その後、第2非有有効領域Ncのポイント(単位領域41の数)分、非有効点に加算する(ステップS471)。ステップS462~ステップS471のフローにより、
図10に示す第1非有効領域Nw1、Nw2、Nw3、Nw4、及び、第2非有効領域Nc1、Nc2、Nc4となった単位領域41の数(ポイント)分が非有効点となる。このようにして、本実施形態では、積載物は検出されていないが、パーソナルモデルを基準とした大きさの積載物が乗車できない領域を非有効領域とする。
【0098】
次に、空きスペース検出部25は、有効エリア40内の総点数に対するステップS471で算出された非有効点の割合から、非有効度(%)を算出する(ステップS472)。なお、ここで算出された非有効度(%)の情報は、アナウンス部27に送信され、アナウンス部27におけるアナウンス制御に用いられる。
【0099】
以上のようにして、本実施形態では、空きスペース検出部25において、非有効点並びに非有効度(%)の算出がなされる。非有効点並びに非有効度(%)の算出は、
図9のステップS46のタイミングで実施されるものである。
【0100】
[エレベーターの割り当て演算処理方法]
本実施形態のエレベーターシステムでは、上述のように算出された空きスペースに基づいて、割り当て演算処理を行う。本実施形態では、割り当て演算処理部20において、
図9で求められた空きスペースに基づいて、複数の号機のエレベーター1のうち、どの号機のエレベーター1を乗場呼び要求のある乗場階に停止させるか(割り当てるか)について演算処理する。
図12は、本実施形態におけるエレベーターの割り当て演算処理方法を示すフローである。
【0101】
まず、乗場階において、割り当て演算処理部20は、乗場呼び要求があるか否かを判定する(ステップS51)。乗場呼び要求とは、乗場階にいる乗客が、乗場階に設置された操作部(図示を省略する)を操作することによって発生する要求である。
【0102】
ステップS51において、「NO」と判定された場合、すなわち、乗場呼び要求が無いと判定された場合には、割り当て演算処理部20における処理は終了する。
【0103】
一方、ステップSにおいて「YES」と判定された場合、すなわち、乗場呼び要求が有ると判定された場合には、割り当て演算処理部20は、エレベーター1の号機毎に割り当て判定を行う「エレベーター号機数ループ」を開始する(ステップS52)。
【0104】
割り当て演算処理部20は、判定対象となるエレベーター1において、空きスペース検出部25で算出された空きスペースに基づいて、割り当て可能か否かを判定する。ステップS53における判定方法は、例えば、エレベーターが故障中や、保守点検中であった場合は、割り当て不可となり、「NO」判定となる。その他にも、エレベーターが当該乗場要求階を通過予定であり、途中で降車が予測されないエレベーターにて満員と判定されているエレベーターについては、「NO」判定となる。具体的には、乗場要求階が3階のUP方向で合った場合、1階から、かご内の行先階登録が5階登録済のエレベーターがいた場合、途中階の2階で降車することは予測されない。このため、当該エレベーターにおいて、満員状態を判定されるほど利用者が乗車していた場合、3階到着時も満員が継続と判定する。なお、当該満員判定は、後述する占有度を利用する方式や、荷重での満員判定、或いはどちらかの判定手段を利用する形でも良い。
【0105】
ステップS53において、「NO」と判定された場合、すなわち、割り当てが不可であると判定された場合には、そのエレベーター1における割り当て判定を終了し、次の号機のエレベーターの割り当て判定ループに戻る。
【0106】
一方、ステップS53において、「YES」と判定された場合、すなわち、割り当て可能であると判定された場合には、そのエレベーター1が、乗場呼び要求のある乗場階に到達するまでの時間(待ち時間)に関する評価を行う(ステップS54)。ステップS54における待ち時間評価では、待ち時間に応じてエレベーター1の割り当ての優先度を評価する。
【0107】
そして、エレベーター運行管理部11で群管理されるすべての号機数のエレベーター1における割り当て判定が終了したら、「エレベーター号機数ループ」を終了する(ステップS55)。
【0108】
次に、割り当て演算処理部20は、割り当て判定ループで算出された判定結果に基づいて総合評価を行い、割り当てるエレベーター1の号機を決定する(ステップS56)。ここでは、割り当てが可能であると判定されたエレベーター1のうち、待ち時間評価において待ち時間が少なく、優先度が最も高いと評価された号機のエレベーター1を割り当て対象号機となるエレベーターに決定する。
【0109】
そして、割り当て演算処理部20は、ステップS56で算出された割り当て対象号機のエレベーター1に対応するエレベーター制御部10に、乗場呼びに対する応答指令を送信する(ステップS57)。これにより、割り当て対象となった号機のエレベーター1が、乗場呼び要求のある乗場階に停止するように、対応するエレベーター制御部10によって制御される。
【0110】
図13は、割り当てしたエレベーターが満員状態か判定し、サービス不可であれば、通過指令を行うフローである。
【0111】
まず、割り当て演算処理部20は、判定対象である号機のエレベーター1において、次の停止階に乗場呼び要求があるかを判定する(ステップS61)。ステップS61において、「NO」と判定された場合、すなわち、次の停止階に乗場呼び要求が無いと判定された場合には、そのエレベーター1に乗り込む人や物が無いため、空きスペースが減少することが無い。この場合、そのエレベーター1においては、割り当て評価値において、「サービス可能」を維持した状態で処理を終了する。この場合、
図12のステップS53では、「YES」の判定が為される。
【0112】
一方、ステップS61において、「YES」と判定された場合、すなわち、次の停止階に乗場呼び要求が有ると判定された場合には、割り当て演算処理部20において、そのエレベーター1の荷重が「満員」の基準を満たしている否かを判定する(ステップS62)。ステップS62において用いられる荷重値判定は、乗りかご2に設けられた荷重検知装置(図示を省略する)によって検出される荷重値に基づいて為される判定である。乗りかご2で検出された荷重値が規定された重量以上であれば「満員である」と判定され、規定された重量よりも小さい場合には、「満員でない」と判定される。
【0113】
ステップS62において、「NO」と判定された場合、すなわち、荷重値上「満員でない」と判定された場合には、そのエレベーター1における空きスペースは20%以下であるか否かを判定する(ステップS63)。なお、本実施形態例では、空きスペースの割合を20%にする例を説明したが、これに限定されるものではなく、15%以下や30%以下等、空きスペースの割合の閾値は任意に設定できるものである。
【0114】
ステップS63において、「NO」と判定された場合、すなわち、空きスペースが20%よりも多いと判定された場合には、そのエレベーター1の割り当て評価値において、「サービス可能」を維持した状態で処理を終了する。この場合は、
図12のステップS53では、「YES」の判定が為される。
【0115】
一方、ステップS62において、「YES」と判定された場合、すなわち、「満員である」と判定された場合、及び、ステップS63において、「YES」と判定された場合、すなわち、空きスペースが20%以下あった場合には、ステップS64に進む。
【0116】
ステップS64では、割り当て演算処理部20は、そのエレベーター1のエレベーター制御部10に対して、乗場呼び通過指令を発信する(ステップS64)。乗場呼び通過指令とは、ステップS51の乗場呼びに対して、そのエレベーター1を停止させずに通過させる指令である。
【0117】
その後、割り当て演算処理部20は、空きスペースが20%以下であると判定された場合、サービス予定のエレベーターは、満員にて「サービス不可」のため、当該乗場呼び要求に対して再評価が必要となるため、再割り当て評価を行う。この場合、
図12のステップS53では、「NO」の判定が為される。
【0118】
図13のフローにより、判定対象となる号機のエレベーター1が割り当て可能であるか不可能であるかが判定される。以上のようにして、
図12のステップS53では、割り当て評価が、「割り当て可能」であるか、「割り当て不可能」であるかに応じて、その判定結果が決定される。
【0119】
本実施形態によれば、エレベーター1の乗りかご2の荷重検知装置で検出される荷重値に基づく判定が、満員でないとされた場合でも、空きスペースが所定の割合(本実施形態では20%以下)であった場合には、乗場呼び要求のある乗場階に停止させない。これにより、荷重値判定のみによる無駄な停止を防ぐことができ、より適切な号機のエレベーター1を乗場呼び要求のある乗場階に停止させることができる。
【0120】
本実施形態では、ステップS63において、空きスペースに応じて割り当て可能か否かを判定する例としているが、占有度(面積)の割合に応じて割り当て可能か否かを判定する構成としてもよい。
【0121】
[アナウンス制御方法]
ところで、本実施形態では、
図11のフローにおいて、積載物は検出されていないが、人が乗れないスペースを非有効領域Nw、Ncとして検出し、空きスペースを算出している。この場合、例えば、乗客が、側壁2b側に移動することで空きスペースをより多く確保することができる場合がある。以下に、非有効度(非有効面積)が一定以上検出されている場合に、乗りかご2内の乗客に移動を促すアナウンスを実施する例について説明する。
【0122】
図14は、アナウンス部27におけるアナウンス制御方法を示すフローである。まず、アナウンス部27は、空きスペース検出部25から送信されてきた情報に基づいて、空きスペースは、閾値(本実施形態では、20%とする)以下か否かを判定する(ステップS71)。ステップS71において、「NO」と判定された場合、すなわち、空きスペースが20%よりも多くあった場合には、ステップS76に進む。ステップS76については後で詳述する。
【0123】
一方、ステップS71において、「YES」と判定された場合、すなわち、空きスペースが20%以下であると判定された場合、次に、ステップS72に進む。ステップS72では、アナウンス部27は、空きスペース(%)と非有効度(%)の和は、所定の閾値(本実施形態では、20%)以上か否かを判定する(ステップS72)。ステップS72において、「NO」と判定された場合、すなわち、空きスペース(%)と非有効度(%)の和が20%よりも低い場合は、ステップS76に進む。ステップS76については後で詳述する。
【0124】
一方、ステップS72において、「NO」と判定された場合、すなわち、空きスペース(%)と非有効度(%)の和が20%以上であると判定された場合、次に、ステップS73に進む。
【0125】
ステップS73では、1走行中におけるアナウンス履歴が無しか否かを判定する。ステップS73において、「NO」と判定された場合、すなわち、1走行中にアナウンス履歴があった場合には、ステップS76に進む。ステップS76については後で詳述する。
【0126】
ステップS73において、「YES」と判定された場合、すなわち、1走行中にアナウンス履歴が無かった場合には、ステップS74に進む。ステップS74では、アナウンス部27は、スペースを設ける旨のアナウンスを発信する。アナウンス部27からの発信により、乗りかご31内の乗車客に対して、壁側に移動を促す旨のアナウンスがなされる。
【0127】
次に、アナウンス部27は、ステップS74で発信されたアナウンスの履歴を、記憶部(図示を省略する)に記録する(ステップS75)。その後、ステップS76に進む。
【0128】
ステップS76では、アナウンス部27は、昇降制御部21及び戸開閉制御部22の情報に基づいて、エレベーター1が、戸開状態である、又は、昇降方向が無方向であるか否かを判定する。
【0129】
ステップS76において、「NO」と判定された場合、すなわち、エレベーター1が戸開状態でもなく、昇降方向が無方向でもないと判定された場合には、アナウンス履歴を維持した状態で処理を終了する。
【0130】
一方、ステップS76において、「YES」と判定された場合、すなわち、エレベーター1が戸開状態であるか、又は、昇降方向が無方向である場合には、アナウンス部27は、記憶部に記憶されたアナウンス履歴を消去する(ステップS77)。以上により、アナウンス部27の処理は終了する。なお、
図14に示すフローは、
図9に示した空きスペースの算出が為された際に実施される。
【0131】
以上、本実施形態では、乗りかご内において、積載物を検出すると共に、積載物があることにより実際に乗車できないスペースを非有効領域として検出することで、より正確な空きスペースを算出することができる。さらに、本実施形態では、非有効領域が所定の面積以上である場合に、乗りかご内の乗客に対して、移動を促すアナウンスを発信することができる。これにより、乗客可能な人数をできるだけ増やすことができる。
【0132】
また、本実施形態では、乗りかご2内に常時設置してある手すり等の障害物を予め有効エリア40から外すことで、障害物が存在する領域を演算する必要が無いため、例えば、
図9における演算速度の向上を図ることができる。例えば、エレベーター1の据え付け後に、観葉植物や、小さい椅子等、常時設置されるような障害物が乗りかご2内に設置された場合には、
図9の演算処理により、常にそれらの障害物が検知されることとなる。この場合には、積載物ありとして検出されるエリアを有効エリア40から外す構成としてもよい。
【0133】
また、本実施形態では、有効エリア設定部15と、センサ情報抽出部26とをホストコンピューター14に備える例としたが、これらの構成は、エレベーター制御部10や、距離センサ制御部19側に備える例としてもよい。
【0134】
また、本実施形態では、距離センサ制御部19から得られるデータを画像データのように扱ったがこれに限らない。平面座標上の距離データを扱う物に関して全て本手法が活用できる。
【0135】
さらに、本実施形態では、非有効面積は、対象を壁と人との間を任意の閾値以下(具体的にはモデルを制定し、当該モデルの面積、或いは寸法以下)を非有効面積としたが、非有効面積を人と人の間に設定しても良い。この場合、上述の実施形態例では、解像度ループを1度回すことで対応したが、解像度ループを二重に回し、一度は実体の検出を整理する工程、次に非有効面積を算出する工程とすることも考えられる。或いは非有効面積を算出する場合には、X軸、Y軸それぞれに処理を行い、直線上の空いている範囲の長さによって判定する方式でも良い。或いは固定のモデル(X軸、Y軸にそれぞれ固定長のモデル。最も簡易的なモデルは長方形のモデル)によってスキャンを行い、距離データが格納されていないエリアを空きスペースとし、距離データが一部重なった場合は、距離データが格納されている座標以外のスキャン時のモデル範囲を全て非有効面積とする方式でも良い。
【0136】
更に、人と人との間に非有効面積を設定することを採用する方式では、人と人との間のパーソナル空間の定義が可能となる。これらは、例えば平日の1日の人と人との間の距離の最小値を移動平均的に扱い、パーソナル空間を非有効面積として算出する方が良い。具体的には、X軸の直線上の検出値が、500mm、400mm、550mmであり、壁との距離がそれぞれ50mm、30mmであり、人間距離がそれぞれ150mm、120mmであったX軸のパーソナル空間は、120mmとなる。またY軸の直線上の検出値が、300mm、330mm、280mm、260mmであり壁との距離がそれぞれ10mm、40mmであり、人間距離がそれぞれ200mm、180mm、200mmであったY軸のパーソナル空間は、180mmとなる。
【0137】
パーソナル空間は、前述した直線状の距離から直接算出する方式や、1日の空きスペースと非有効度の和の最小値を算出し、当該最小値を検出した時点の人数から、単位人数当たりの空きスペースを求めて、パーソナル空間を算出する方式でも良い。具体的には、空きスペースが20%、非有効度10%であった場合の人数が、12名であったとする。この場合、乗りかごの有効エリアがX軸、Y軸それぞれ1800mmであった場合、パーソナル空間は、これらの30%が空きで、且つ人数比で演算すると、各々45mmという計算となる。或いは一般的な人のモデルを制定し、X軸とY軸の比率からパーソナル空間の寸法を算出する方式でも良い。
【0138】
前述したパーソナル空間の算出に用いる人数は、得られたかご内荷重から一般的な人の体重(例えば65kg)で除算して求める方法や、距離センサ3から得られた検出データから一般的な人の面積(例えば300mm×500mm)で除算する方式、更には、測定された距離データを解析し、人の凹凸を算出し、得られた頭部にあたる数を算出する方式などが挙げられる。
【0139】
また、乗場にも同じ上述した距離センサ3と同様の距離センサ(以下、乗場側距離センサ)を設置する構成としてもよい。乗場側距離センサを適用する場合には、有効エリアの設定は、乗場面積や、エレベーターの利用者が待機する位置を想定して適宜決定することができる。そして、有効エリア設定部において、乗場における乗場側有効エリアを算出し、センサ情報抽出部において、乗場側距離センサの取付位置座標を抽出し、取付位置座標を基準として、乗場側有効エリアに対応した乗場側距離センサの乗場側データ取得範囲を算出する。また、空きスペース検出部において、乗場側距離センサで検知された乗場側距離データと乗場側データ取得範囲とに基づいて、乗場側有効エリア内における積載物が検出された乗場側占有領域を算出することができる。
【0140】
乗場側距離センサを用いる場合、乗場側占有領域、或いは前述した方式によって得られた人数に応じて、乗場の人数規模を算出することもできる。乗場側距離センサを用いる場合には、検出された乗場の人数規模と、乗りかご内の空きスペースの状況とに基づいて、当該人数規模が乗車可能なエレベーターを決定することが可能となる。
【0141】
ここで、具体的に、乗りかごの空きスペースが、30%の乗りかごと、50%の乗りかごが存在する場合を例とする。ある任意の階の乗場に利用者が5名存在し、乗りかごのスペースを20%占有する程度の利用者であった場合には、30%の乗りかごは、5名の利用者が乗車した場合、閾値である空きスペース20%を達成しないため、当該乗りかごは割当対象から外した運行を考える。
【0142】
また、乗場側距離センサによる乗場の占有領域、或いは前述した方式によって得られた人数に応じて、エレベーターの運行を行う場合、前述したパーソナル空間を考慮する割当も可能である。この際に、例示として、ある任意の階の乗場に5名存在し、20%占有する程度の利用者であった場合、パーソナル空間は、一人当たり2.5%であった場合は、5人*2.5%とすると、12.5%がパーソナル空間となる。また、人と人の重なりを考慮し、重なる部分を0.5%と仮定して、人数*0.5%の数値を差し引く形でも良い。その場合、12.5%―2.5%=10%となる。よって、乗場の人数の占有面積は、30%となる。当該事例の場合は、パーソナル空間を考慮した場合も、50%空きがあるかごについては、5名の利用者が乗車した場合、20%の空きとなるため、閾値以下であり、問題なく運行可能である。
【0143】
以上により、利用者の使い勝手に沿った運行が可能となり、無駄停止が少なくなり、更なる運行改善に寄与することが可能となる。
【0144】
上述した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成について他の構成を加えることも可能である。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0145】
100…エレベーターシステム、1…エレベーター、3…距離センサ、2…乗りかご、3…距離センサ、4…かご内カメラ、10…エレベーター制御部、11…エレベーター運行管理部、12…統計データベース、13…保全データベース、14…ホストコンピューター、15…有効エリア設定部、16…通信網、17…通信中継部、18…かご内カメラ制御部、19…距離センサ制御部、20…割り当て演算処理部、21…昇降制御部、22…戸開閉制御部、23…距離センサ設定部、24…センサ情報取得部、25…空きスペース検出部、26…センサ情報抽出部、27…アナウンス部、28…入出力装置、30…障害物、31…かごドア、33…釣合い錘、34…巻上機、35…主ロープ、40…有効エリア、41…単位領域、50…距離センサ