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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】難燃性ゴム組成物およびガスケット
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/16 20060101AFI20241217BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20241217BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20241217BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20241217BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C08L23/16
C08K3/22
C08K5/54
C09K3/10 Z
F16J15/10 Y
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024538823
(86)(22)【出願日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 JP2023016022
(87)【国際公開番号】W WO2024029144
(87)【国際公開日】2024-02-08
【審査請求日】2024-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2022125916
(32)【優先日】2022-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】饗庭 貴文
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/153234(WO,A1)
【文献】特開平03-263440(JP,A)
【文献】特開2013-127035(JP,A)
【文献】特開昭62-143953(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105273318(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0338109(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C09K 3/10-3/12
F16J 5/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体、60質量%以上の水酸化アルミニウム、8質量%以下のアルキル修飾シランカップリング剤、および0質量%以上の可塑剤を含有する難燃性ゴム組成物であって、
前記可塑剤が炭化水素系であり、
前記アルキル修飾シランカップリング剤と前記可塑剤の合計含有量が8質量%以下であり、
前記アルキル修飾シランカップリング剤が、前記水酸化アルミニウムの5質量%以上である
ことを特徴とする難燃性ゴム組成物。
【請求項2】
少なくともステアリン酸および脂肪酸アミド系化合物、またはさらに含フッ素系化合物を含む加工助剤を、合計で3質量%以下含有する請求項に記載の難燃性ゴム組成物。
【請求項3】
前記アルキル修飾シランカップリング剤と前記可塑剤の合計含有量が6質量%以上である
ことを特徴とする請求項1または請求項に記載の難燃性ゴム組成物。
【請求項4】
JIS A硬度が75以下であり、難燃性がUL94規格のV-0を満たす請求項に記載の難燃性ゴム組成物。
【請求項5】
請求項に記載の難燃性ゴム組成物からなる、電気自動車、ハイブリッド車、またはリチウムイオン電池用のガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性のエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合ゴム組成物およびガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム(Ethylene Propylene Diene Monomer;EPDM)に代表されるエチレン・α-オレフィン-非共役ジエン共重合体は、機械的特性、耐熱性、耐候性等に優れ、安価でもあるので、自動車部品、電気製品部品、土木建材用品等の幅広い製品における、ガスケット等のシールのためのゴム部品に用いられている。
【0003】
近年、自動車や電気製品等への性能要求が高度化するのに伴い、これらの製品、特に、電気自動車(Electrical Vehicle:EV)やハイブリッド車(Hybrid Energy Vehicle:HEV)、またはリチウムイオン電池に使用されるガスケットにも、低温性、安全性、および難燃性に高い性能が要求されている。エチレン・α-オレフィン-非共役ジエン共重合ゴムに難燃性を付与するために、ハロゲン系化合物/アンチモン系化合物、ポリリン酸アンモニウム、水和金属酸化物、膨張黒鉛等を添加する技術が多く報告されている。特に、塩素化ポリエチレン、塩素化パラフィン、デカブロモジフェニルエーテル等のハロゲン系化合物やさらに三酸化アンチモンの1種または2種以上を併用することにより、配合量が少量であっても高い難燃性を付与できることが知られている(例えば、特許文献1)。しかし、ハロゲン系化合物は燃焼時に毒性や腐食性を有するハロゲンガスを発生させ、また、三酸化アンチモンは有害物質であるので、それぞれ環境汚染を伴う虞がある。
【0004】
そこで、ポリリン酸アンモニウム、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の水和金属酸化物のような、ノンハロゲン・ノンアンチモン系難燃剤を添加した難燃性EPDMが開示されている。ただし、その多くは、気密や止水等のシール材、断熱材や防音材等の家電等の室内用品や自動車等の屋外用品、住宅等の建築物等の分野であり、発泡体であった(例えば、特許文献2,3)。これに対して、非発泡体のEPDMが開示されている(例えば、特許文献4,5,6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-314841号公報
【文献】特開2002-293976号公報
【文献】特開2007-204621号公報
【文献】特開2013-194232号公報
【文献】特開2018-16747号公報
【文献】国際公開第2021/153234号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水和金属酸化物は、親水性であるので金属との相互作用が強く、したがって、水和金属酸化物を多量に添加されたエチレン・α-オレフィン-非共役ジエン共重合ゴムは、金型や混練機等の製造設備に強く粘着し、加工性が低下する。また、水和金属酸化物は、充填剤としても機能するので、多量に添加すると硬度(硬さ)が高くなってシール材に不適となる。例えば、特許文献4に開示された難燃性EPDMは、水酸化アルミニウムがEPDMの70%以下の質量比に抑制され、水酸化アルミニウム、またはさらにポリリン酸アンモニウムのノンハロゲン系難燃剤だけでは難燃性が不十分であり、ハロゲン系難燃剤を併用している。あるいは、金型等への粘着を低減するために一般的にワックスや石鹸等の加工助剤が用いられるが、水和金属酸化物の配合量の増加に伴い加工助剤の配合量も多く必要となり、その結果、難燃剤の配合が低減して難燃性が低下することになる。
【0007】
特許文献5に開示された金属水酸化物を添加した難燃性EPDMは、鉄道車両の外幌を構成する組成物であり、金属水酸化物による耐久性の低下を抑制するためにその添加量を少なくするべく酸変性ポリオレフィンを添加しているが、成形物の硬度が高いと推測され、シール材には不適である。成形物の硬度を抑制するためには、可塑剤の添加が挙げられるが、可塑剤は可燃性であるので、難燃性が低下することになる。
【0008】
特許文献6に開示された難燃性ゴム組成物は、水和金属酸化物と共に、ビニルトリメトキシシランのようなビニル修飾されたシランカップリング剤をエチレン・α-オレフィン-非共役ジエン共重合体に添加することにより、水和金属酸化物が表面をシラン処理されて相溶性が向上することにより均一分散し易くなって、配合を抑制しつつ難燃性を向上させることができ、また、圧縮永久歪を向上させることができる。また、α-オレフィンをブテンとするエチレン-ブテン-ジエン共重合ゴム(Ethylene Butene Diene Monomer;EBDM)を適用することにより、低温特性に優れた難燃性ゴム組成物としている。しかし、ビニル修飾されたシランカップリング剤は、エチレン・α-オレフィン-非共役ジエン共重合体と反応して難燃性ゴム組成物を高硬度化させる。そのため、シール材に適した硬度とするために多量の可塑剤を配合する必要があり、水和金属酸化物の配合比が低くなると共に多量の可塑剤により難燃性が低下することになり、より適度な硬度と高い難燃性との両立が困難である。
【0009】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、難燃性に優れ、かつ環境負荷が低く、離型性が良好で、シール材に好適な物性を有するエチレン・α-オレフィン-非共役ジエン共重合体組成物、およびガスケットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために、難燃剤とする水酸化アルミニウムと共に必要な添加物とその含有量について検討を進めた。その結果、アルキル修飾されたシランカップリング剤を、水酸化アルミニウムに対して所定比以上を添加することにより、金型等への粘着を低減すると共に硬度の増加を抑制し、シランカップリング剤またはさらに可塑剤を所定の含有量で含有させることによって、難燃性を損なわずに適切な硬度となることを見出した。本発明は、このような知見を基に完成するに至ったものである。
【0011】
すなわち、本発明に係る難燃性ゴム組成物は、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体、60質量%以上の水酸化アルミニウム、8質量%以下のアルキル修飾シランカップリング剤、および0質量%以上の可塑剤を含有し、前記可塑剤が炭化水素系であり、前記アルキル修飾シランカップリング剤と前記可塑剤の合計含有量が8質量%以下であり、前記アルキル修飾シランカップリング剤が前記水酸化アルミニウムの5質量%以上であることを特徴とする。
また、本発明に係るガスケットは、前記難燃性ゴム組成物からなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る難燃性ゴム組成物は、難燃性に優れ、かつ環境負荷が低く、離型性が良好で、シール材に好適な物性を有する。本発明に係るガスケットは、難燃性に優れ、かつ環境負荷が低く、シール材として好適な物性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、本発明の範囲は、以下に説明する具体例としての実施形態に限定されるわけではない。
【0014】
〔難燃性ゴム組成物〕
本実施形態に係る難燃性ゴム組成物は、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体、架橋剤、難燃剤である水酸化アルミニウム、アルキル修飾シランカップリング剤、炭化水素系可塑剤、架橋助剤、および加工助剤を含有する。難燃剤に水酸化アルミニウムを適用することにより、難燃性ゴム組成物の環境負荷を低減することができ、また、ノンハロゲン・ノンアンチモン系難燃剤の中では比較的少量で難燃性を付与できるので、硬度低減のための可塑剤等の配合量を少量とすることができる。アルキル修飾シランカップリング剤は、水酸化アルミニウムを疎水化して、難燃性ゴム組成物の、多量の水酸化アルミニウムによる金型等への粘着を弱くして離型性を確保することができ、また、硬度を低減させて、可塑剤を不要にまたはその添加量を少なくすることができる。そして、加工助剤および可塑剤を適量で配合することによって、難燃剤が付与する難燃性を損なうことなく、シール材として好適なゴム特性が得られる。以下、難燃性ゴム組成物を構成する各成分について説明する。
【0015】
(エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体)
エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体は、エチレンおよびα-オレフィンに、少量の非共役ジエン成分を共重合させたゴムである。α-オレフィンは、炭素数3以上のα-オレフィンであり、炭素数4以上のα-オレフィンであることがより好ましい。α-オレフィンの炭素数を3以上とすることで、ポリエチレンの結晶化を阻害することができる。炭素数3以上のα-オレフィンとしては、例えばプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン等が挙げられ、プロピレンや1-ブテンが好ましい。非共役ジエンとして、5-エチリデン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン等が好ましい。
【0016】
(架橋剤)
架橋剤は、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体の架橋に一般に使用可能なものを適用することができ、例えば有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物は、硫黄系化合物を含有せず、難燃性ゴム組成物に接触した金属材を腐食させないからである。有機過酸化物は、具体的には、第3ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、第3ブチルクミルパーオキサイド、1,1-ジ(第3ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。有機過酸化物の配合は、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体100質量部に対して3~6質量部であることが好ましい。
【0017】
(水酸化アルミニウム)
水酸化アルミニウムは、熱分解時の吸熱量が、水酸化マグネシウム等の他の水和金属酸化物よりも高いので、比較的少量でも難燃性を発現できる。したがって、難燃剤として水酸化アルミニウムを選択することにより、その配合を少量として、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体が有する硬度等のゴム特性への影響を抑制する。難燃性ゴム組成物は、高い難燃性を得る、具体的にはUL94規格においてV-0等級を満たすために、水酸化アルミニウムが60質量%以上含有するように配合される。水酸化アルミニウムの配合の上限は、後記するように水酸化アルミニウムに比例して配合されるアルキル修飾シランカップリング剤の含有量が規定の上限値を超えない値とする。
【0018】
水酸化アルミニウムは、粒子状のものが好ましい。混練時の分散性および作業性を向上させるために、水酸化アルミニウムは、平均粒径が0.6μm以上であることが好ましく、0.9μm以上であることがより好ましい。一方、難燃性ゴム組成物の機械的特性に影響し難くするために、水酸化アルミニウムは、平均粒径が10μm以下であることが好ましく、5.0μm以下であることがより好ましい。また、水酸化アルミニウムは、表面がシラン処理されたものを適用することもできる。
【0019】
(アルキル修飾シランカップリング剤)
シランカップリング剤は、水酸化アルミニウムの表面をシラン処理により疎水化する。水酸化アルミニウムの疎水化により、難燃性ゴム組成物が、金型等への粘着性を弱くして離型性を低下させないようにし、また、水酸化アルミニウムを、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体との相溶性を向上させて難燃性ゴム組成物において均一分散し易くして、配合量に対して難燃性を高くすることができる。また、充填剤としての水酸化アルミニウムのペイン効果が低減されて、水酸化アルミニウムの添加による高硬度化を抑制される。さらに、アルキル修飾されたシランカップリング剤は、表面処理対象である水酸化アルミニウムと反応するシラノール基以外の官能基を有しない。したがって、EPDM等のポリマーと共有結合を形成せず、難燃性ゴム組成物を高硬度化させず、さらには硬度を低減させる。また、水酸化アルミニウムと未反応のシランカップリング剤が存在しても、シラノール基は金型等に接合するが、ポリマーと結合する官能基がないので離型性を低下させない。
【0020】
アルキル修飾シランカップリング剤は、炭素数8~20のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン等が挙げられる。難燃性ゴム組成物が十分な離型性を有するために、アルキル修飾シランカップリング剤は、水酸化アルミニウムの5質量%以上の配合とする。さらに、難燃性ゴム組成物は、所望の硬度に応じてアルキル修飾シランカップリング剤を配合することができ、後記の炭化水素系可塑剤を含有しない場合には6質量%以上含有することが好ましい。一方、アルキル修飾シランカップリング剤は可燃性であり、過剰に配合されると難燃性が低下するので、難燃性ゴム組成物は、アルキル修飾シランカップリング剤が8質量%以下含有するように配合され、さらに、後記の炭化水素系可塑剤を含有する場合には、これらの合計の含有量が8質量%以下となるようにする。
【0021】
本実施形態に係る難燃性ゴム組成物は、必要に応じて、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合ゴムにおける公知の添加剤を添加することができる。例えば、架橋助剤とする酸化亜鉛等の二価金属酸化物、炭化水素系可塑剤、加工助剤、着色剤、老化防止剤等を添加することによって、混練性、加工性、取扱性等を改善することができる。
【0022】
(炭化水素系可塑剤)
炭化水素系可塑剤は、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体との相溶性が良好で、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合ゴムの一般的な添加剤の一つであり、例えば、パラフィン系プロセスオイルやナフテン系プロセスオイル等の鉱油である。本発明に係る難燃性ゴム組成物においては、炭化水素系可塑剤は、水酸化アルミニウムの多量の添加による高硬度を低減するための可塑剤である。そのために、炭化水素系可塑剤は、難燃性ゴム組成物において、アルキル修飾シランカップリング剤との合計の含有量が6質量%以上であることが好ましい。一方で、炭化水素系可塑剤は燃焼し易く、配合量が多いほど難燃性が低下するので、難燃性ゴム組成物は、アルキル修飾シランカップリング剤と炭化水素系可塑剤との合計の含有量が8質量%以下となるようにする。
【0023】
(加工助剤)
加工助剤は、例えば、ステアリン酸、脂肪酸アミド系化合物、含フッ素系化合物、エチレン・α-オレフィン共重合体等である。ステアリン酸、脂肪酸アミド系化合物、および含フッ素系化合物は、滑剤であり、難燃性ゴム組成物の流動性を高くし、また、離型性を付与する。ステアリン酸、脂肪酸アミド系化合物、および含フッ素系化合物を添加する場合には、その効果を十分に発現させるために、それぞれ、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体100質量部に対して2質量部以上が好ましい。一方で、ステアリン酸、脂肪酸アミド系化合物、および含フッ素系化合物は、可燃性であり、過剰に配合されると難燃性が低下するので、難燃性ゴム組成物におけるこれらの合計の含有量を3質量%以下とし、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体100質量部に対してはそれぞれ3質量部以下であることが好ましく、合計で8質量部以下であることが好ましい。
【0024】
エチレン・α-オレフィン共重合体は、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体を含有する難燃性ゴム組成物の硬度を低下させる。α-オレフィンとしては、炭素数2~10のものが好ましい。エチレン・α-オレフィン共重合体を添加する場合には、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体100質量部に対して3~6質量部が好ましい。
【0025】
(難燃性ゴム組成物の特性)
本実施形態に係る難燃性ゴム組成物は、ガスケット等に製造された際に高いシール性を実現するために、JIS A硬度Hsが80以下であり、75以下であることが好ましい。また、ガスケット等として十分な強度を有するために、硬度Hsが60以上であることが好ましく、65以上であることがより好ましい。JIS A硬度は、JIS K6253に準拠して、硬度計(Durometer type A)で測定される。
【0026】
本実施形態に係る難燃性ゴム組成物は、難燃性がUL94規格においてV-0等級を満たすことが好ましい。このような難燃性を有することにより、難燃性ゴム組成物は、ガスケット等のシール材、特にEVやHEVのような高温環境下で使用されるガスケットに適用することができる。
【0027】
〔ガスケット〕
本実施形態に係る難燃性ゴム組成物は、ガスケットやOリング等のシール材に成形、加工されることができる。特に、EVやHEVに使用されるガスケット、リチウムイオン電池の筐体の外側をシールするガスケットに適用することができる。
【実施例
【0028】
以上、本発明に係る難燃性ゴム組成物について、本発明を実施するための形態について説明したが、以下に、本発明の効果を確認した実施例について説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0029】
(テストピースの作製)
実施例および比較例のそれぞれのゴム組成物の配合を表1に示す。表1において、本発明の範囲外の数値には下線を付す。実施例および比較例に用いた原料は、以下の通りである。
(1)エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体
(1-a)EPDM(エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネン共重合体);EP33、JSR(株)製
(1-b)EBDM(エチレン-ブテン-ジエン共重合体);EBT K-9330M、三井化学(株)製
(2)架橋剤
ジクミルパーオキサイド(DCP)、パークミル(登録商標)D、日本油脂(株)製
(3)加工助剤
(3-a)ステアリン酸;DTST、ミヨシ油脂(株)製
(3-b)オレイン酸アミド;ダイヤミッドO-200、日本化成(株)製
(3-c)含フッ素系化合物(官能化パーフルオロポリエーテル);テクノフロン(登録商標)FPA1、SOLVAY社製
(3-d)エチレン・α-オレフィン共重合体(エチレン-オクテン共重合体);Engage(登録商標)XLT8677、ダウ・ケミカル社製
(4)架橋助剤
酸化亜鉛、堺化学工業(株)製
(5)難燃剤
(5-a)シラン処理水酸化アルミニウム;BF013STV、日本軽金属(株)製
(5-b)ハロゲン系(デカブロモジフェニルエタン、Decabromodiphenyl Ethane;DBDPE);プラセフティ(登録商標)AM-1000、マナック(株)製
(5-c)三酸化アンチモン;ATOX-S、日本精鉱(株)製
(6)シランカップリング剤
(6-a)アルキル修飾シラン(オクチルトリエトキシシラン);Dynasylan(登録商標)OCTEO、Evonik Industries(株)製
(6-b)ビニル修飾シラン(ビニルトリエトキシシラン);SILQUEST A-151、Momentive Performance Materials社製
(7)可塑剤
(7-a)パラフィン系プロセスオイル;ダイアナプロセスオイルPW-380、出光興産(株)製
(7-b)アジピン酸エーテルエステル系;アデカサイザーRS-107、(株)ADEKA製
(8)着色剤
カーボンブラック;シーストG-SVH、東海カーボン(株)製
(9)老化防止剤
2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体(TMQ)、ノクラック224-S、大内新興化学工業(株)製
【0030】
各実施例、各比較例について、架橋剤を除く配合で、ニーダー(密閉式混練機)により調製し、さらに架橋剤を添加してオープンロールにより混練した。得られた架橋前の組成物を、離型剤を塗布したシート型金型において圧縮成形しながら180℃で6分間架橋し、厚さ2mmのテストピースを作製した。実施例および比較例のそれぞれのテストピースに対して、以下の通り、硬度の測定、および難燃性の評価を実施した。また、架橋前の組成物を2枚の離型剤を塗布していないSUS板で挟んで、厚さ2mmに圧縮成形しながら同様の条件で架橋した。
【0031】
(硬度)
テストピースに対して、JIS K6253に準拠する硬度計(Durometer type A)により測定した。硬度を表1に示す。合格基準を80以下とした。
【0032】
(金型離型性)
離型剤を塗布していないSUS板で成形したテストピースが、架橋後にSUS板から剥がされる際に破断しなかったものを合格「○」とし、破断したものを不合格「×」とした。結果を表1に示す。
【0033】
(難燃性)
テストピースに対して、UL94規格の燃焼性試験において、V-0であるかを判定した。V-0を満たしたものを合格「○」とし、満たさなかったものを不合格「×」とした。結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1に示すように、本発明の範囲の配合である実施例1~5の難燃性ゴム組成物は、適切な硬度、良好な離型性、および高い難燃性を示した。すなわち、ハロゲン系、アンチモン系の難燃剤を適用した比較例8と同等の特性とすることができる。特に、可塑剤であるパラフィン系プロセスオイルが、シランカップリング剤との合計で好適な含有量の実施例1,2,5は、75以下に硬度が低減した。これに対して、シランカップリング剤を添加しなかった比較例1,2、シランカップリング剤が不足していた比較例5は、いずれも離型性が得られなかった。比較例2はさらに、脂肪酸アミド等の加工助剤が過剰であったので、難燃性が低下した。比較例3は、難燃剤が不足していたので、難燃性が不十分であった。比較例4は、パラフィン系プロセスオイルが過剰であったので、難燃性が低下した。比較例6は、ビニル修飾されたシランカップリング剤を適用したことにより、EPDMの硬度が増大し、また、未反応のシランカップリング剤がEPDMと金型とを接合させて離型性が低下した。比較例7は、EPDMとの相溶性が悪いエーテルエステル系を可塑剤に適用したので、ブリードが発生した。