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特許7606058世帯推定システム及び世帯推定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】世帯推定システム及び世帯推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20240101AFI20241218BHJP
【FI】
G06Q50/26
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021165491
(22)【出願日】2021-10-07
(65)【公開番号】P2023056251
(43)【公開日】2023-04-19
【審査請求日】2024-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】521443564
【氏名又は名称】秋山 祐樹
(73)【特許権者】
【識別番号】520115705
【氏名又は名称】株式会社ゼンリンマーケティングソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】秋山 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】横田 渉
【審査官】岩橋 龍太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-218838(JP,A)
【文献】杉浦 翔,賃金構造基本統計調査に基づく合成人口の労働者への就業属性別の所得の割当て,システム/制御/情報,日本,一般社団法人システム制御情報学会,2019年02月15日,第63巻 第2号,pp.23-32
【文献】枡井 大貴,統計データからの市民の属性復元のための進化計算とSAによる2段階最適化,システム/制御/情報,日本,一般社団法人システム制御情報学会,2017年06月15日,第61巻 第6号,pp.8-19
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
居住区画に関する建物データを記憶する建物データベースと、人口統計に関する統計データを記憶する統計データベースとにアクセス可能な少なくとも一つのプロセッサを備え、
前記少なくとも一つのプロセッサが、
対象地域内の複数の前記居住区画を前記建物データから特定し、
前記統計データから取得される、前記対象地域での世帯属性毎の世帯数を示す世帯分布に基づいて、前記世帯属性に対応する前記居住区画を世帯要素として決定し、
前記統計データから取得される、前記対象地域での居住者属性毎の人数を示す居住者分布に基づいて、前記世帯要素と前記居住者属性との世帯-居住者関係をランダムに設定し、
前記世帯-居住者関係の設定に基づいて算出される所与の推定分布と、前記統計データから取得される対応の参考分布との誤差に基づいて、前記世帯-居住者関係の一部をランダムに変更する入替処理を繰り返して、前記世帯-居住者関係を決定し、
前記世帯属性と前記居住者属性とを含む前記世帯要素を示す世帯データを出力する、
世帯推定システム。
【請求項2】
前記少なくとも一つのプロセッサが、前記入替処理の繰り返しにより得られる前記誤差の履歴に基づいて、前記入替処理の繰り返しの間に、前記世帯-居住者関係のうち前記入替処理よりも多い割合をランダムに変更する突然変異処理を実行する、
請求項1に記載の世帯推定システム。
【請求項3】
前記少なくとも一つのプロセッサが、前記入替処理を所定の回数繰り返した後の前記誤差が該繰り返し前の前記誤差以上である場合に、前記突然変異処理を実行する、
請求項2に記載の世帯推定システム。
【請求項4】
前記世帯属性が、世帯人員及び家族類型を含み、
前記少なくとも一つのプロセッサが、
前記統計データから取得される、前記対象地域での前記世帯人員毎の世帯数を示す人員-世帯分布に基づいて、前記居住区画と前記世帯人員との区画-人員関係をランダムに設定するステップと、
前記区画-人員関係に基づいて算出される所与の推定分布と、前記統計データから取得される対応の参考分布との誤差に基づいて、前記区画-人員関係の一部をランダムに変更する処理を繰り返して、前記世帯人員に対応する前記居住区画を前記世帯要素として決定するステップと、
前記統計データから取得される、前記対象地域での前記家族類型毎の世帯数を示す家族-世帯分布に基づいて、前記世帯要素と前記家族類型との世帯-家族関係をランダムに設定するステップと、
前記世帯-家族関係に基づいて算出される所与の推定分布と、前記統計データから取得される対応の参考分布との誤差に基づいて、前記世帯-家族関係の一部をランダムに変更する処理を繰り返して、前記世帯-家族関係を決定するステップと、
を実行して、前記世帯属性に対応する前記居住区画を前記世帯要素として決定する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の世帯推定システム。
【請求項5】
居住区画に関する建物データを記憶する建物データベースにアクセスし、対象地域内の複数の前記居住区画を前記建物データから特定するステップと、
人口統計に関する統計データを記憶する統計データベースにアクセスし、前記統計データから取得される、前記対象地域での世帯属性毎の世帯数を示す世帯分布に基づいて、前記世帯属性に対応する前記居住区画を世帯要素として決定するステップと、
前記統計データから取得される、前記対象地域での居住者属性毎の人数を示す居住者分布に基づいて、前記世帯要素と前記居住者属性との世帯-居住者関係をランダムに設定するステップと、
前記世帯-居住者関係の設定に基づいて算出される所与の推定分布と、前記統計データから取得される対応の参考分布との誤差に基づいて、前記世帯-居住者関係の一部をランダムに変更する入替処理を繰り返して、前記世帯-居住者関係を決定するステップと、
前記世帯属性と前記居住者属性とを含む前記世帯要素を示す世帯データを出力するステップと、
をコンピュータに実行させる世帯推定プログラム。
【請求項6】
居住区画に関する建物データを記憶する建物データベースと、人口統計に関する統計データを記憶する統計データベースとにアクセス可能な少なくとも一つのプロセッサを備え、
前記少なくとも一つのプロセッサが、
対象地域内の複数の前記居住区画を前記建物データから特定し、
前記統計データから取得される、前記対象地域での世帯人員毎の世帯数を示す人員-世帯分布に基づいて、前記居住区画と前記世帯人員との区画-人員関係をランダムに設定し、
前記区画-人員関係に基づいて算出される所与の推定分布と、前記統計データから取得される対応の参考分布との誤差に基づいて、前記区画-人員関係の一部をランダムに変更する処理を繰り返して、前記世帯人員に対応する前記居住区画を世帯要素として決定し、
前記統計データから取得される、前記対象地域での家族類型毎の世帯数を示す家族-世帯分布に基づいて、前記世帯要素と前記家族類型との世帯-家族関係をランダムに設定し、
前記世帯-家族関係に基づいて算出される所与の推定分布と、前記統計データから取得される対応の参考分布との誤差に基づいて、前記世帯-家族関係の一部をランダムに変更する処理を繰り返して、前記世帯-家族関係を決定し、
前記世帯人員と前記家族類型とを含む前記世帯要素を示す世帯データを出力する、
世帯推定システム。
【請求項7】
居住区画に関する建物データを記憶する建物データベースにアクセスし、対象地域内の複数の前記居住区画を前記建物データから特定するステップと、
人口統計に関する統計データを記憶する統計データベースにアクセスし、前記統計データから取得される、前記対象地域での世帯人員毎の世帯数を示す人員-世帯分布に基づいて、前記居住区画と前記世帯人員との区画-人員関係をランダムに設定するステップと、
前記区画-人員関係に基づいて算出される所与の推定分布と、前記統計データから取得される対応の参考分布との誤差に基づいて、前記区画-人員関係の一部をランダムに変更する処理を繰り返して、前記世帯人員に対応する前記居住区画を世帯要素として決定するステップと、
前記統計データから取得される、前記対象地域での家族類型毎の世帯数を示す家族-世帯分布に基づいて、前記世帯要素と前記家族類型との世帯-家族関係をランダムに設定するステップと、
前記世帯-家族関係に基づいて算出される所与の推定分布と、前記統計データから取得される対応の参考分布との誤差に基づいて、前記世帯-家族関係の一部をランダムに変更する処理を繰り返して、前記世帯-家族関係を決定するステップと、
前記世帯人員と前記家族類型とを含む前記世帯要素を示す世帯データを出力するステップと、
をコンピュータに実行させる世帯推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は世帯推定システム及び世帯推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、統計データとして活用できる地図上のメッシュデータを生成する技術が知られている。(例えば、特許文献1を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-228701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
個々の世帯に着目した人口統計を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る世帯推定システムは、居住区画に関する建物データを記憶する建物データベースと、人口統計に関する統計データを記憶する統計データベースとにアクセス可能な少なくとも一つのプロセッサを備える。少なくとも一つのプロセッサは、対象地域内の複数の居住区画を建物データから特定し、統計データから取得される、対象地域での世帯属性毎の世帯数を示す世帯分布に基づいて、世帯属性に対応する居住区画を世帯要素として決定し、統計データから取得される、対象地域での居住者属性毎の人数を示す居住者分布に基づいて、世帯要素と居住者属性との世帯-居住者関係をランダムに設定し、世帯-居住者関係の設定に基づいて算出される所与の推定分布と、統計データから取得される対応の参考分布との誤差に基づいて、世帯-居住者関係の一部をランダムに変更する入替処理を繰り返して、世帯-居住者関係を決定し、世帯属性と居住者属性とを含む世帯要素を示す世帯データを出力する。
【0006】
本開示の一側面に係る世帯推定プログラムは、居住区画に関する建物データを記憶する建物データベースにアクセスし、対象地域内の複数の居住区画を建物データから特定するステップと、人口統計に関する統計データを記憶する統計データベースにアクセスし、統計データから取得される、対象地域での世帯属性毎の世帯数を示す世帯分布に基づいて、世帯属性に対応する居住区画を世帯要素として決定するステップと、統計データから取得される、対象地域での居住者属性毎の人数を示す居住者分布に基づいて、世帯要素と居住者属性との世帯-居住者関係をランダムに設定するステップと、世帯-居住者関係の設定に基づいて算出される所与の推定分布と、統計データから取得される対応の参考分布との誤差に基づいて、世帯-居住者関係の一部をランダムに変更する入替処理を繰り返して、世帯-居住者関係を決定するステップと、世帯属性と居住者属性とを含む世帯要素を示す世帯データを出力するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0007】
このような側面においては、世帯分布に基づいて、世帯属性に対応する居住区画が世帯要素として推定される。続いて、居住者分布に基づいてその世帯要素と居住者属性との対応関係がランダムに設定され、その対応関係が統計データとの比較に基づいて繰り返し変更されながら決定される。そして、世帯属性及び居住者属性を含む世帯要素を示す世帯データが出力される。この世帯データによって、個々の世帯に着目した詳細な人口統計を得ることができる。
【0008】
本開示の一側面に係る世帯推定システムは、居住区画に関する建物データを記憶する建物データベースと、人口統計に関する統計データを記憶する統計データベースとにアクセス可能な少なくとも一つのプロセッサを備える。少なくとも一つのプロセッサは、対象地域内の複数の居住区画を建物データから特定し、統計データから取得される、対象地域での世帯人員毎の世帯数を示す人員-世帯分布に基づいて、居住区画と世帯人員との区画-人員関係をランダムに設定し、区画-人員関係に基づいて算出される所与の推定分布と、統計データから取得される対応の参考分布との誤差に基づいて、区画-人員関係の一部をランダムに変更する処理を繰り返して、世帯人員に対応する居住区画を世帯要素として決定し、統計データから取得される、対象地域での家族類型毎の世帯数を示す家族-世帯分布に基づいて、世帯要素と家族類型との世帯-家族関係をランダムに設定し、世帯-家族関係に基づいて算出される所与の推定分布と、統計データから取得される対応の参考分布との誤差に基づいて、世帯-家族関係の一部をランダムに変更する処理を繰り返して、世帯-家族関係を決定し、世帯人員と家族類型とを含む世帯要素を示す世帯データを出力する。
【0009】
本開示の一側面に係る世帯推定プログラムは、居住区画に関する建物データを記憶する建物データベースにアクセスし、対象地域内の複数の居住区画を建物データから特定するステップと、人口統計に関する統計データを記憶する統計データベースにアクセスし、統計データから取得される、対象地域での世帯人員毎の世帯数を示す人員-世帯分布に基づいて、居住区画と世帯人員との区画-人員関係をランダムに設定するステップと、区画-人員関係に基づいて算出される所与の推定分布と、統計データから取得される対応の参考分布との誤差に基づいて、区画-人員関係の一部をランダムに変更する処理を繰り返して、世帯人員に対応する居住区画を世帯要素として決定するステップと、統計データから取得される、対象地域での家族類型毎の世帯数を示す家族-世帯分布に基づいて、世帯要素と家族類型との世帯-家族関係をランダムに設定するステップと、世帯-家族関係に基づいて算出される所与の推定分布と、統計データから取得される対応の参考分布との誤差に基づいて、世帯-家族関係の一部をランダムに変更する処理を繰り返して、世帯-家族関係を決定するステップと、世帯人員と家族類型とを含む世帯要素を示す世帯データを出力するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0010】
このような側面においては、人員-世帯分布に基づいて世帯人員と居住区画との区画-人員関係がランダムに設定され、その区画-人員関係が統計データとの比較に基づいて繰り返し変更されて、世帯人員に対応する居住区画が世帯要素として決定される。続いて、家族-世帯分布に基づいてその世帯要素と家族類型との世帯―家族関係がランダムに設定され、その世帯-家族関係が統計データとの比較に基づいて繰り返し変更されながら決定される。そして、世帯人員及び家族類型を含む世帯要素を示す世帯データが出力される。この世帯データによって、個々の世帯に着目した詳細な人口統計を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一側面によれば、個々の世帯に着目した人口統計を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る世帯推定システムの機能構成の一例を示す図である。
図2】世帯推定システムで用いられるコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】建物データのデータ構造の一例を示す図である。
図4】統計データのデータ構造の一例を示す図である。
図5】統計データのデータ構造の一例を示す図である。
図6】統計データのデータ構造の一例を示す図である。
図7】統計データのデータ構造の一例を示す図である。
図8】統計データのデータ構造の一例を示す図である。
図9】世帯推定システムによる世帯推定の一連の処理を示すフローチャートである。
図10】居住区画を特定する処理を示すフローチャートである。
図11】世帯要素を決定する処理を示すフローチャートである。
図12】各世帯要素の家族類型を決定する処理を示すフローチャートである。
図13】各世帯要素の居住者属性を決定する処理を示すフローチャートである。
図14】世帯-居住者関係を決定するための処理を示すフローチャートである。
図15】世帯データの表示の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本開示での実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
[システムの概要]
実施形態に係る世帯推定システム1は、個々の世帯に着目した人口統計を得るためのコンピュータシステムである。世帯推定システム1は、居住区画に関する建物データと、地域の人口統計に関する統計データとに基づいて、世帯が居住している居住区画と個々の世帯の詳細とを推定する。世帯とは、生活を共にする1以上の人の集合の単位のことをいう。建物データとは、現実世界に物理的に存在する個々の建物に関するデータのことをいう。居住区画とは一つの世帯が居住することが可能な空間をいう。典型的には、居住区画は、所有又は賃貸借の契約の対象となる1単位の不動産である。例えば、一つの戸建住宅は一つの居住区画に対応し、集合住宅は複数の居住区画を有する。本開示における統計データは、人口に関する調査(例えば国勢調査)をすることで得られるデータであり、例えば、様々な属性に基づく人口又は世帯数の分布を示す。
【0015】
[システムの構成]
図1は実施形態に係る世帯推定システム1の機能構成の一例を示す図である。世帯推定システム1は機能要素として属性付与部11、居住区画抽出部12、世帯推定部13、居住者推定部14、及び出力部15を備える。属性付与部11は、居住区画として処理される可能性がある物件である居住区画候補に地域属性を付与する機能要素である。地域属性とは、地域の性質又は特徴のことをいう。居住区画抽出部12は、居住区画候補から居住区画を抽出する機能要素である。世帯推定部13は、世帯が存在すると見込まれる居住区画を世帯要素として推定する機能要素である。世帯推定部13は、少なくとも一部の居住区画に世帯属性を関連付け、その関連付けを世帯要素として決定する。世帯属性とは、世帯が有する性質又は特徴のことをいう。居住者推定部14は、個々の世帯要素の居住者属性を推定する機能要素である。居住者属性とは、世帯を構成する居住者の性質又は特徴のことをいう。出力部15は、世帯属性及び居住者属性を含む世帯要素を示す世帯データを出力する機能モジュールである。
【0016】
世帯推定システム1は通信ネットワークを介してデータベース群2と通信接続してデータを読み出したり書き出したりすることができる。通信ネットワークの構成及び種類は何ら限定されず、任意の方針で設計されてよい。例えば、通信ネットワークはインターネット、イントラネット、又はこれらの組み合わせによって構築されてもよい。また、通信ネットワークは有線ネットワーク、無線ネットワーク、又はこれらの組み合わせによって構築されてもよい。
【0017】
図2は世帯推定システム1で用いられるコンピュータ110のハードウェア構成の一例を示す図である。コンピュータ110は、世帯推定システム1を構成する一つ又は複数のコンピュータの一例である。コンピュータ110は制御回路100を有する。制御回路100は、一つ又は複数のプロセッサ101と、メモリ102と、ストレージ103と、通信ポート104と、入出力ポート105とを有する。プロセッサ101はオペレーティングシステム及びアプリケーションプログラムを実行する。ストレージ103はハードディスク、不揮発性の半導体メモリ、又は取り出し可能な媒体(例えば、磁気ディスク、光ディスクなど)の記憶媒体で構成され、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラムを記憶する。メモリ102は、ストレージ103からロードされたプログラム、又はプロセッサ101による演算結果を一時的に記憶する。一例では、プロセッサ101は、メモリ102と協働してプログラムを実行することで、上記の各機能モジュールとして機能する。通信ポート104は、プロセッサ101からの指令に従って、通信ネットワークNWを介して他の装置との間でデータ通信を行う。入出力ポート105は、プロセッサ101からの指令に従って、図示しないキーボード、マウス、モニタなどの入出力装置(ユーザインタフェース)との間で電気信号の入出力を実行する。
【0018】
[プログラム]
コンピュータを世帯推定システム1として機能させるためのプログラムは、該コンピュータを属性付与部11、居住区画抽出部12、世帯推定部13、居住者推定部14、及び出力部15として機能させるためのプログラムコードを含む。プログラムの少なくとも一部は、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの非一時的な記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、プログラムの少なくとも一部は、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。提供されたプログラムはストレージ103に記憶され、プロセッサ101がメモリ102と協働してそのプログラムを実行することで、該プログラムに対応する機能要素が実現する。
【0019】
世帯推定システム1は、一つ又は複数のコンピュータにより構成され得る。複数のコンピュータが用いられる場合には、通信ネットワークを介してこれらのコンピュータが互いに接続されることで世帯推定システム1が構成される。
【0020】
[データ構造]
データベース群2は世帯推定システム1による処理のために用いられる各種のデータを記憶する装置(記憶部)である。データベース群2は、世帯推定システム1とは異なるコンピュータ又はコンピュータシステムに設けられてもよいし、世帯推定システム1の一構成要素であってもよい。一例では、データベース群2は、様々なコンピュータシステム、機器、又は装置から提供されるデータを記憶する。図1に示すように、本実施形態では、データベース群2は、建物データを記憶する建物データベース21と、統計データを記憶する統計データベース22とを含む。図3図8を参照しながらこれらのデータの構造について詳しく説明する。図3は建物データのデータ構造の一例を示す図である。図4図8は統計データのデータ構造の一例を示す図である。
【0021】
一例では、建物データは、戸建住宅データ211、集合住宅データ212、及び施設データ213を含む。戸建住宅データ211は、戸建住宅に関するデータである。一例では、戸建住宅データ211の各レコードは、建物ID、建物種別、重心座標、形状、及び面積を含む。集合住宅データ212は、集合住宅に関するデータである。一例では、集合住宅データ212の各レコードは、建物ID、建物種別、重心座標、形状、面積、及び部屋情報を含む。施設データ213は、施設に関するデータである。施設は、特定の人が一定期間滞在する建物のことをいう。施設は、例えば、介護施設、老人ホーム、及び病院などである。一例では、施設データ213の各レコードは、建物ID、建物種別、重心座標、形状、及び面積を含む。
【0022】
建物IDは、個々の建物を一意に特定するための識別子である。建物種別は、建物の種類又は分類であり、例えば、「個人家屋」、「共同住宅」、「事務所兼住宅」、「病院」、「老人ホーム」、「介護施設」などを示す。重心座標は、建物が存在する土地の重心を示す座標である。形状は建物の平面形状又は3次元形状を示す。面積は、例えば建物延床面積によって表される。集合住宅データの部屋情報は、集合住宅が有する各部屋(各住戸)を示し、例えば部屋名、所在階などを含む。
【0023】
一例では、統計データは、小地域データ221、人員-世帯分布データ222、家族-世帯分布(7区分)データ223、居住者分布データ224、住宅-世帯分布データ225、面積-世帯分布データ226、家族-世帯分布(17区分)データ227、夫婦年齢分布データ228、世帯員年齢分布データ229、及び家族-年齢分布データ230を含む。
【0024】
小地域データ221は、所与の行政地域を構成する地域である小地域に関するデータである。小地域は、例えば、行政地域内の区画を町名及び街区符号により示す、「町丁字」という日本特有の地域体系により規定されてもよい。一例では、小地域データ221の各レコードは、小地域ID、行政地域ID、小地域名、重心座標、面積、及び周辺長を含む。小地域IDは、個々の小地域を一意に特定するための識別子である。行政地域IDは、個々の行政地域を一意に特定するための識別子である。行政地域は、例えば、都道府県又は市区町村である。重心座標は、小地域の重心を示す座標である。周辺長は、小地域の外縁の長さである。
【0025】
人員-世帯分布データ222は、それぞれの小地域における世帯人員毎の世帯数を示すデータである。世帯人員は一つの世帯を構成する人数であり、世帯属性の一例である。一例では、人員-世帯分布データ222の各レコードは、小地域ID、一般世帯についてのデータ項目、及び施設世帯についてのデータ項目を含む。一般世帯についてのデータ項目は、1人世帯数、2人世帯数、3人世帯数、4人世帯数、5人世帯数、6人世帯数、及び7人以上世帯数を含む。施設世帯についてのデータ項目は、世帯数及び世帯人員を含む。一般世帯とは、戸建住宅又は集合住宅に住む世帯のことをいう。施設世帯とは、施設に滞在している世帯のことをいう。
【0026】
家族-世帯分布データ(7区分)223は、それぞれの小地域における家族類型毎の世帯数及び総人数を示すデータである。家族類型は、世帯を構成する居住者の関係の種類をいい、世帯属性の一例である。一例では、家族-世帯分布データ(7区分)223の各レコードは、小地域IDと、7個の家族類型のそれぞれについての世帯数及び総人数とを含む。一例では、7個の家族類型は、「親族のみ」、「夫婦のみ」、「夫婦及び子供」、「核家族以外の世帯」、「非親族を含む世帯」、「単独」、及び「不詳」である。
【0027】
居住者分布データ224は、それぞれの小地域毎における年齢及び性別毎の人口を示すデータである。一例では、居住者分布データ224の各レコードは、小地域ID、年齢別の男性人口、及び年齢別の女性人口を含む。例えば、年齢別人口は、0歳~4歳人口、5~9歳人口、…、95~99歳人口、及び100歳以上人口というように、原則として5歳刻みで集計される。
【0028】
住宅-世帯分布データ225は、それぞれの小地域における建物種別毎の世帯数を示すデータである。一例では、住宅-世帯分布データ225の各レコードは、小地域ID、及びそれぞれの建物種別の世帯数を含む。一例では、建物種別は戸建、長屋建、共同住宅、1,2階建て住宅、3~5階建て住宅、6~10階建て住宅、11階以上建て住宅、及び施設を含む。長屋建及び共同住宅は集合住宅の分類である。長屋建は各住戸が外部と直接に接続する出入口を有する建物であるのに対して、共同住宅はその出入口を複数の住戸が共有する建物である。
【0029】
面積-世帯分布データ226は、それぞれの行政地域における建物種別及び面積の組合せ毎の世帯数を示すデータである。一例では、面積-世帯分布データ226の各レコードは、行政地域IDと、建物種別及び面積の組合せ毎の世帯数とを含む。建物種別は例えば、戸建、長屋建、及び共同住宅を含む。面積の分類は例えば、29m以下、30m~49m、50m~69m、70m~99m、100m~149m、及び150m以上を含む。
【0030】
家族-世帯分布(17区分)データ227は、それぞれの行政地域における家族類型毎の世帯数及び総人数を示すデータである。一例では、家族-世帯分布(17区分)データ227の各レコードは、行政地域IDと、17個の家族類型のそれぞれについての世帯数及び総人数とを含む。一例では、17個の家族類型は、「夫婦のみ」、「夫婦及び子供」、「男親及び子供」、「女親及び子供」、「夫婦及び両親」、「夫婦及びひとり親」、「夫婦、子供、及び両親」、「夫婦、子供、及びひとり親」、「夫婦及び他の親族」、「夫婦、子供、及び他の親族」、「夫婦、親、及び他の親族」、「夫婦、子供、親、及び他の親族」、「兄弟姉妹のみ」、「他の核家族以外の世帯」、「非親族を含む世帯」、「単独」、及び「不詳」を含む。
【0031】
夫婦年齢分布データ228は、それぞれの行政地域毎における夫及び妻それぞれの年齢毎の世帯数を示すデータである。一例では、夫婦年齢分布データ228の各レコードは、行政地域IDと、夫及び妻の年齢の組合せ毎の世帯数とを含む。一例では、年齢は15歳から84歳まで1歳毎に区分され、さらに85歳以上の区分が設けられる。
【0032】
世帯員年齢分布データ229は、それぞれの行政地域における世帯主及び世帯員それぞれの年齢毎の世帯数を示すデータである。一例では、世帯員年齢分布データ229の各レコードは、行政地域IDと、世帯主及び世帯員の年齢の組合せ毎の世帯数とを含む。一例では、世帯主の年齢は15歳から84歳まで1歳毎に区分され、さらに85歳以上の区分が設けられる。世帯員の年齢は0歳から84歳まで1歳毎に区分され、さらに85歳以上の区分が設けられる。
【0033】
家族-年齢分布データ230は、それぞれの行政地域における家族類型、年齢、及び性別の組合せ毎の人口を示すデータである。一例では、家族-年齢分布データ230の各レコードは、行政地域IDと、家族類型、年齢、及び性別の組合せ毎の人口とを含む。一例では、家族-世帯分布(17区分)データ227と同様に17個の家族類型が家族-年齢分布データ230において用いられる。年齢別人口は、居住者分布データ224と同様に、原則として5歳刻みで集計されてもよい。
【0034】
それぞれのデータを用意する方法は限定されない。例えば、戸建住宅データ211、集合住宅データ212、及び施設データ213は、地図管理者又は建物管理者によって建物データベース21に格納されてもよい。小地域データ221は、地籍調査のデータから生成されてもよい。人員-世帯分布データ222、家族-世帯分布データ(7区分)223、及び居住者分布データ224、住宅-世帯分布データ225、面積-世帯分布データ226、家族-世帯分布(17区分)データ227、夫婦年齢分布データ228、世帯員年齢分布データ229、及び家族-年齢分布データ230は、国勢調査のデータから生成されてもよい。
【0035】
個々のデータのデータ構造は図3図8に示す例に限定されず、任意の方針で設計されてよい。例えば、任意のデータが任意の方針で正規化又は非正規化されて一又は複数のデータテーブル上に記憶されてもよい。
【0036】
[システムの動作]
図9を参照しながら、世帯推定システム1の動作、すなわち、本実施形態に係る世帯推定方法について説明する。図9は、世帯推定システム1による世帯推定の一連の処理を処理フローS1として示すフローチャートである。
【0037】
ステップS11では、属性付与部11が行政地域を選択する。一例では、属性付与部11はユーザ操作に基づいて行政地域を選択してもよいし、所与のルールに基づいて自動的に行政地域を選択してもよい。上述したように、選択される行政地域は都道府県であってもよいし、市区町村であってもよい。
【0038】
選択された行政地域内のそれぞれの対象地域についてステップS12以降の処理が実行される。対象地域とは、個々の世帯に着目した人口統計を推定する対象として選択される地域である。例えば、対象地域は、選択された行政地域を構成する1以上の小地域のそれぞれである。
【0039】
ステップS12では、属性付与部11が、行政地域内のそれぞれの対象地域について、居住区画候補を特定する。一例では、属性付与部11はそれぞれの対象地域について以下のように居住区画候補を特定する。すなわち、属性付与部11は、小地域データ221により示される対象地域の重心座標、形状、及び面積に基づいて、対象地域の地理的範囲を画定する。また、属性付与部11は戸建住宅データ211、集合住宅データ212、及び施設データ213を参照して、重心座標がその地理的範囲内に位置する1以上の建物を選択する。そして、属性付与部11は選択された建物に対応する1以上の居住区画候補を特定する。
【0040】
ステップS13では、属性付与部11が、特定されたそれぞれの居住区画候補に地域属性を付与する。例えば、属性付与部11は、対象地域に対応する小地域ID、行政地域ID、行政地域名(例えば、都道府県名及び市町村名)、及び小地域名を付与する。一例では、属性付与部11は、行政地域のリストを管理するマスタデータ(図示せず)から、行政地域IDに対応する行政地域名を取得する。
【0041】
ステップS14では、居住区画抽出部12がそれぞれの対象地域について居住区画を特定する。図10を参照しながらステップS14の詳細を説明する。図10は、対象地域内の居住区画を特定する処理を示すフローチャートである。
【0042】
ステップS1401では、居住区画抽出部12は一つの対象地域を選択する。
【0043】
ステップS1402では、居住区画抽出部12は、対象地域内に少なくとも一つの居住区画候補が存在するか否かを判定する。
【0044】
ステップS1402において、居住区画候補が存在する場合には(ステップS1402においてYES)、処理はステップS1403に進む。ステップS1403では、居住区画抽出部12は居住区画候補の建物種別に基づいて対象地域内の個々の居住区画を特定する。
【0045】
一例では、居住区画抽出部12は人員-世帯分布データ222を参照して、対象地域内の一般世帯の総数Nを算出する。そして、居住区画抽出部12は一般世帯の建物種別に関する所与の優先度に従ってN個の居住区画候補を居住区画として特定する。建物種別の優先度として、第1優先度、第2優先度、第3優先度、…、第j優先度がそれぞれ「個人家屋」、「共同住宅」、「事務所兼住宅」、…、「事務所系建物」であるとする。この場合、居住区画抽出部12は、まず建物種別が「個人家屋」である個々の居住区画候補を居住区画として特定する。「個人家屋」の居住区画候補の個数が総数Nよりも小さい場合には、居住区画抽出部12は、建物種別が「共同住宅」である個々の居住区画候補を居住区画として特定する。「個人家屋」及び「共同住宅」の居住区画候補の個数が総数Nよりも小さい場合には、居住区画抽出部12は、建物種別が「事務所兼住宅」である個々の居住区画候補を居住区画として特定する。このように、居住区画抽出部12はN個の居住区画を特定するまで、第1優先度の居住区画候補から順に特定する。居住区画抽出部12は、第1優先度の居住区画候補のみを居住区画として特定するかもしれないし、第1優先度から第j優先度までの居住区画候補を居住区画として特定するかもしれない。一例では、居住区画抽出部12は、建物データで示される建物に対応する居住区画にフラグ「1」を設定する。
【0046】
一例では、居住区画抽出部12は、世帯を関連付けることが可能な施設(例えば、介護施設、老人ホーム、病院など)が存在するか否かを判定する。そのような施設が存在する場合には、居住区画抽出部12は人員-世帯分布データ222を参照して、対象地域内の施設世帯の世帯数Nを特定する。そして、居住区画抽出部12は施設の建物種別に関する所与の優先度に従って、N個の居住区画候補を居住区画として特定する。この特定方法は、上述した一般世帯の居住区画の場合と同様である。一方、世帯を関連付けることが可能な施設が存在しない場合には、居住区画抽出部12は対象地域の重心座標を居住区画として特定する。この処理は、建物データベース21に記録されていないが施設世帯が統計データベース22に記録されているというデータ間の不整合を想定して用意される。一例では、居住区画抽出部12は、建物データで示される施設に対応する居住区画にフラグ「1」を設定し、対象地域の重心座標で示される居住区画にフラグ「2」を設定する。
【0047】
ステップS1404では、居住区画抽出部12は個々の居住区画の床面積を推定する。居住区画抽出部12は、戸建の床面積を延床面積/総部屋数として算出してもよい。居住区画抽出部12は、集合住宅の共用空間が20%存在すると仮定して、集合住宅の床面積を(延床面積×0.8)/総部屋数として算出してもよい。
【0048】
ステップS1402において、居住区画候補が存在しない場合には(ステップS1402においてNO)、処理はステップS1405に進む。ステップS1405では、居住区画抽出部12は、対象地域の重心座標を居住区画として特定する。この処理は、建物(居住区画)が建物データベース21に記録されていないが世帯が統計データベース22に記録されているというデータ間の不整合を想定して用意される。一例では、居住区画抽出部12は、その重心座標で示される居住区画にフラグ「2」を設定する。
【0049】
居住区画に設定されるフラグは、その居住区画が実際の建物に対応するか、それとも対象地域の重心座標に対応して設定されたかを示す情報である。
【0050】
ステップS1406では、居住区画抽出部12は、すべての対象地域を処理したかどうかを判定する。処理していない対象地域が存在する場合には(ステップS1406においてNO)、処理はステップS1401に戻る。居住区画抽出部12はそのステップS1401において次の対象地域を選択し、その対象地域についてステップS1402以降の処理を実行する。すべての対象地域を処理した場合には(ステップS1406においてYES)、居住区画抽出部12はステップS14を終了する。
【0051】
図9に戻って、ステップS15では、世帯推定部13が、それぞれの対象地域について、人員-世帯分布に基づいて世帯要素を決定する。図11を参照しながらステップS15の詳細を説明する。図11は対象地域内の世帯要素を決定する処理を示すフローチャートである。
【0052】
ステップS1501では、世帯推定部13は一つの対象地域を選択する。
【0053】
ステップS1502では、世帯推定部13は、居住区画と世帯人員との対応関係である区画-人員関係をランダムに設定する。一例では、世帯推定部13は人員-世帯分布データ222を参照して対象地域に対応するレコードを読み出し、そのレコードで示される世帯人員毎の世帯数を特定する。そして、世帯推定部13はその世帯数に基づいて、対象地域内の居住区画にランダムに世帯人員を関連付ける。例えば、1人世帯数が10であり、2人世帯数が8であるとする。この場合、世帯推定部13は、未だ世帯人員が関連付けられていない10個の居住区画をランダムに選択し、これらの居住区画に1人世帯という情報を関連付ける。さらに世帯推定部13は、未だ世帯人員が関連付けられていない対象地域内の8個の居住区画をランダムに選択して、これらの居住区画に2人世帯という情報を関連付ける。世帯推定部13は他の世帯人員についても同様に処理して、区画-人員関係を設定する。
【0054】
ステップS1503では、世帯推定部13は、区画-人員関係に基づく推定分布と、対応する参考分布との誤差を算出する。一例では、世帯推定部13は住宅-世帯分布データ225を参照して対象地域に対応するレコードを読み出し、建物種別毎の世帯数を第1参考分布として取得する。さらに、世帯推定部13は面積-世帯分布データ226を参照して、対象地域が属する行政地域に対応するレコードを読み出し、建物種別及び面積の組合せ毎の世帯数を取得する。そして、世帯推定部13はそれぞれの世帯数を割合(百分率)に変換して第2参考分布を取得する。世帯推定部13は区画-人員関係に基づいて、第1参考分布に対応する第1推定分布と、第2参考分布に対応する第2推定分布とを生成する。個々の居住区画は建物種別及び推定床面積の情報を有するので、世帯推定部13はこれらの情報に基づいて第1及び第2推定分布を生成できる。区画-人員関係は対象地域について設定されているのに対して、面積-世帯分布データ226は行政地域毎で集計されたものである。そのため、世帯推定部13は、面積-世帯分布データ226により示される分布が、行政地域を構成する個々の小地域(対象地域)にわたって一様であると仮定して、割合によって第2参考分布および第2推定分布を取得する。世帯推定部13は第1推定分布及び第1参考分布の第1誤差と、第2推定分布及び第2参考分布の第2誤差とを算出し、所与のルールに従ってこれらの誤差に基づいて現在誤差を設定する。現在誤差は第1誤差及び第2誤差の集合によって示されてもよいし、所与の計算式によって第1誤差及び第2誤差を統合して得られる一又は複数の値の集合で示されてもよい。
【0055】
ステップS1504では、世帯推定部13は、区画-人員関係の一部をランダムに変更する。世帯推定部13は、居住区画に関連付けられた世帯人員の一部をランダムに選択して、選択された世帯人員を別の居住区画にランダムに移動することで、区画-人員関係の一部をランダムに変更する。世帯推定部13は、世帯人員の一又は複数の情報を移動する。ランダムな移動は、世帯人員が関連付けられていない居住区画に、別の居住区画から世帯人員を移動させることであってもよい。あるいは、そのランダムな移動は、二つの居住区画の間で世帯人員を入れ替えることであってもよい。
【0056】
ステップS1505では、世帯推定部13は、ランダムに変更された区画-人員関係に基づく推定分布と、対応する参考分布との誤差を再度算出する。この再計算された誤差を変更後誤差という。一例では、世帯推定部13は第1誤差及び第2誤差を再度算出し、これらの誤差に基づいて変更後誤差を算出する。
【0057】
ステップS1506では、世帯推定部13は、ランダムな変更により誤差が小さくなったか否かを判定する。世帯推定部13は変更後誤差を現在誤差と比較してこの判定を実行する。
【0058】
変更後誤差が現在誤差より小さい場合には(ステップS1506においてYES)、処理はステップS1507に進む。ステップS1507では、世帯推定部13はランダムに変更された区画-人員関係を保存する。また、世帯推定部13は現在誤差を変更後誤差で更新する。
【0059】
変更後誤差が現在誤差以上である場合には(ステップS1506においてNO)、処理はステップS1508に進む。ステップS1508では、世帯推定部13はランダムに変更された区画-人員関係と変更後誤差とを破棄する。世帯推定部13は、ランダムに変更される前の区画-人員関係と現在誤差とを維持する。
【0060】
ステップS1509では、世帯推定部13は、区画-人員関係をさらにランダムに変更するか否かを判定する。ランダムな変更を終了する条件は、例えば、ランダムな変更を所与の回数繰り返したことであってもよい。あるいは、その終了条件は、過去の所定の実行回数において現在誤差の減少量が所与の閾値以下になったこと、すなわち現在誤差が収束したことであってもよい。ランダムな変更を繰り返す場合には(ステップS1509においてNO)、世帯推定部13はステップS1504以降の処理を繰り返し実行する。一方、ランダムな変更を終了する場合には(ステップS1509においてYES)、処理はステップS1510に進む。
【0061】
ステップS1510では、世帯推定部13はランダムな変更が終了した時点での区画-人員関係を対象地域の区画-人員関係として決定する。世帯推定部13は世帯人員に対応する居住区画を世帯要素として決定する。世帯推定部13はそれぞれの世帯要素に、個々の世帯を一意に特定するための世帯IDを設定する。
【0062】
ステップS1511では、世帯推定部13は、すべての対象地域を処理したかどうかを判定する。処理していない対象地域が存在する場合には(ステップS1511においてNO)、処理はステップS1501に戻る。世帯推定部13はそのステップS1501において次の対象地域を選択し、その対象地域についてステップS1502以降の処理を実行する。すべての対象地域を処理した場合には(ステップS1511においてYES)、世帯推定部13はステップS15を終了する。
【0063】
図9に戻って、ステップS16では、世帯推定部13が、それぞれの対象地域について、家族-世帯分布に基づいて各世帯要素の家族類型を決定する。図12を参照しながらステップS16の詳細を説明する。図12は対象地域内の各世帯要素の家族類型を決定する処理を示すフローチャートである。
【0064】
ステップS1601では、世帯推定部13は一つの対象地域を選択する。
【0065】
ステップS1602では、世帯推定部13は、世帯要素と家族類型との対応関係である世帯-家族関係をランダムに設定する。一例では、世帯推定部13は家族-世帯分布データ(7区分)223を参照して対象地域に対応するレコードを読み出し、そのレコードで示される家族類型毎の世帯数を特定する。そして、世帯推定部13はその世帯数に基づいて、世帯人員と家族類型との整合を取りつつ、対象地域内の世帯要素にランダムに家族類型を関連付ける。例えば、家族類型が「夫婦及び子供」である世帯数が9である場合には、その家族類型の世帯人員は少なくとも3であるので、世帯推定部13は、世帯人員が3以上である世帯要素のうち9個の世帯要素にランダムにその家族類型を関連付ける。家族類型「単独」については、世帯推定部13は世帯人員が1である世帯要素にランダムにその家族類型を関連付ける。世帯推定部13は他の家族類型についても同様に処理して、世帯-家族関係を設定する。
【0066】
ステップS1603では、世帯推定部13は、世帯-家族関係に基づく推定分布と、対応する参考分布との誤差を算出する。一例では、世帯推定部13は家族-世帯分布(17区分)データ227を参照して、対象地域が属する行政地域に対応するレコードを読み出し、17区分の家族類型毎の世帯数を取得する。そして、世帯推定部13はその世帯数の分布を、7区分の家族類型の世帯数の割合に変換して参考分布を取得する。世帯推定部13は世帯-家族関係に基づいて、参考分布に対応する推定分布を生成する。世帯-家族関係は対象地域について設定されているのに対して、家族-世帯分布(17区分)データ227は行政地域毎で集計されたものである。そのため、世帯推定部13は、家族-世帯分布(17区分)データ227により示される分布が、行政地域を構成する個々の小地域(対象地域)にわたって一様であると仮定して、割合によって参考分布および推定分布を取得する。世帯推定部13は、推定分布と参考分布との誤差を現在誤差として算出する。
【0067】
ステップS1604では、世帯推定部13は、世帯-家族関係の一部をランダムに変更する。世帯推定部13は、世帯人員と家族類型との整合を取りつつ、世帯要素に関連付けられた家族類型の一部を少なくとも二つの世帯要素間でランダムに入れ替える。
【0068】
ステップS1605では、世帯推定部13は、ランダムに変更された世帯-家族関係に基づく推定分布と、対応する参考分布との誤差を再度算出する。すなわち、世帯推定部13は変更後誤差を求める。
【0069】
ステップS1606では、世帯推定部13は、ランダムな変更により誤差が小さくなったか否かを判定する。世帯推定部13は変更後誤差を現在誤差と比較してこの判定を実行する。
【0070】
変更後誤差が現在誤差より小さい場合には(ステップS1606においてYES)、処理はステップS1607に進む。ステップS1607では、世帯推定部13はランダムに変更された世帯-家族関係を保存する。また、世帯推定部13は現在誤差を変更後誤差で更新する。
【0071】
変更後誤差が現在誤差以上である場合には(ステップS1606においてNO)、処理はステップS1608に進む。ステップS1608では、世帯推定部13はランダムに変更された世帯-家族関係を破棄する。世帯推定部13は、ランダムに変更される前の世帯-家族関係と現在誤差とを維持する。
【0072】
ステップS1609では、世帯推定部13は、世帯-家族関係をさらにランダムに変更するか否かを判定する。ランダムな変更を終了する条件は、例えば、ランダムな変更を所与の回数繰り返したことであってもよい。あるいは、その終了条件は現在誤差が収束したことであってもよい。ランダムな変更を繰り返す場合には(ステップS1609においてNO)、世帯推定部13はステップS1604以降の処理を繰り返し実行する。一方、ランダムな変更を終了する場合には(ステップS1609においてYES)、処理はステップS1610に進む。
【0073】
ステップS1610では、世帯推定部13は、ランダムな変更が終了した時点での世帯-家族関係を対象地域の世帯-家族関係として決定する。
【0074】
ステップS1611では、世帯推定部13は、すべての対象地域を処理したか否かを判定する。処理していない対象地域が存在する場合には(ステップS1611においてNO)、処理はステップS1601に戻る。世帯推定部13はそのステップS1601において次の対象地域を選択し、その対象地域についてステップS1602以降の処理を実行する。すべての対象地域を処理した場合には(ステップS1611においてYES)、世帯推定部13はステップS16を終了する。
【0075】
図9に戻って、ステップS17では、居住者推定部14が、それぞれの対象地域について、居住者分布に基づいて各世帯要素の居住者属性を決定する。図13を参照しながらステップS17の詳細を説明する。図13は対象地域内の各世帯要素の居住者属性を決定する処理を示すフローチャートである。
【0076】
ステップS171では、居住者推定部14は一つの対象地域を選択する。
【0077】
ステップS172では、居住者推定部14は、世帯要素と居住者属性との対応関係である世帯-居住者関係をランダムに設定する。一例では、居住者推定部14は居住者分布データ224を参照して対象地域に対応するレコードを読み出し、そのレコードで示される居住者属性(年齢及び性別)毎の人口を特定する。そして、居住者推定部14はその人口に基づいて、世帯人員、家族類型、および居住者の間の整合を取りつつ、対象地域内の世帯要素にランダムに、個々の居住者の属性(年齢及び性別)を関連付ける。例えば、居住者推定部14は、居住者の人数が世帯人員と一致するように個々の世帯要素に居住者属性を関連付ける。あるいは、居住者推定部14は、子供を含む世帯要素に19歳以下の居住者を含めるように、世帯要素に居住者属性を関連付ける。
【0078】
ステップS173では、居住者推定部14は、世帯-居住者関係に基づく推定分布と、対応する参考分布との誤差を算出する。
【0079】
一例では、居住者推定部14は夫婦年齢分布データ228を参照して、対象地域が属する行政地域に対応するレコードを読み出し、夫婦の年齢毎の世帯数を取得する。そして、居住者推定部14はその世帯数を割合に変換して第1参考分布を取得する。また、居住者推定部14は世帯員年齢分布データ229を参照して、その行政地域に対応するレコードを読み出し、世帯主及び世帯員の組合せ毎の世帯数を取得する。そして、居住者推定部14はその世帯数を割合に変換して第2参考分布を取得する。さらに、居住者推定部14は家族-年齢分布データ230を参照して、その行政地域に対応するレコードを読み出し、17区分の家族類型、年齢、及び性別の組合せ毎の人口を取得する。居住者推定部14は家族類型を17区分から7区分に変換した上で、その人口を割合に変換して第3参考分布を取得する。さらに、居住者推定部14は夫婦年齢分布データ228を参照して、対象地域が属する行政地域に対応するレコードを読み出し、年齢ごとの男女の人数比を算出する。次に、居住者推定部14は、世帯員年齢分布データ229を参照して、対象地域が属する行政地域に対応するレコードを読み出し、年齢ごとの世帯主数を取得する。居住者推定部14はその世帯主数と男女の人数比とに基づいて、年齢及び性別ごとの世帯主数を第4参考分布として取得する。
【0080】
居住者推定部14は世帯-居住者関係に基づいて、第1参考分布に対応する第1推定分布と、第2参考分布に対応する第2推定分布と、第3参考分布に対応する第3推定分布と、第4参考分布に対応する第4推定分布とを生成する。世帯-居住者関係は対象地域について設定されているのに対して、夫婦年齢分布データ228、世帯員年齢分布データ229、及び家族-年齢分布データ230は行政地域毎で集計されたものである。そのため、居住者推定部14は、それぞれのデータにより示される分布が、行政地域を構成する個々の小地域(対象地域)にわたって一様であると仮定して、割合によって参考分布および推定分布を取得する。
【0081】
居住者推定部14は第1推定分布及び第1参考分布の第1誤差と、第2推定分布及び第2参考分布の第2誤差と、第3推定分布及び第3参考分布の第3誤差と、第4推定分布及び第4参考分布の第4誤差とを算出し、所与のルールに従ってこれらの誤差に基づいて現在誤差を設定する。現在誤差は第1誤差、第2誤差、第3誤差、及び第4誤差の集合によって示されてもよいし、所与の計算式によって第1誤差、第2誤差、第3誤差、及び第4誤差を統合して得られる一又は複数の値の集合で示されてもよい。
【0082】
ステップS174では、居住者推定部14は、世帯-居住者関係を決定するための処理を実行する。図14を参照しながらステップS174の詳細を説明する。図14は、世帯-居住者関係を決定するための処理を示すフローチャートである。
【0083】
ステップS1741では、居住者推定部14は、世帯-居住者関係の一部をランダムに変更する入替処理を実行する。居住者推定部14は、世帯人員、家族類型、及び居住者の間の整合を取りつつ、世帯要素に関連付けられた居住者の一部を少なくとも二つの世帯要素間でランダムに入れ替える。この入替処理では、居住者推定部14はm人の居住者を移動する。居住者推定部14は或る一つの世帯要素について、一部の居住者のみを入れ替えるかもしれないし、すべての居住者を入れ替えるかもしれない。
【0084】
ステップS1742では、居住者推定部14はランダムに変更された世帯-居住者関係に基づく推定分布と、対応する参考分布との誤差を再度算出する。一例では、居住者推定部14は第1誤差、第2誤差、第3誤差、及び第4誤差を再度算出し、これらの誤差に基づいて変更後誤差を算出する。
【0085】
ステップS1743では、居住者推定部14は、ランダムな変更により誤差が小さくなったか否かを判定する。居住者推定部14は変更後誤差を現在誤差と比較してこの判定を実行する。
【0086】
変更後誤差が現在誤差より小さい場合には(ステップS1743においてYES)、処理はステップS1744に進む。ステップS1744では、居住者推定部14はランダムに変更された世帯-居住者関係を保存する。また、居住者推定部14は現在誤差を変更後誤差で更新する。
【0087】
変更後誤差が現在誤差以上である場合には(ステップS1743においてNO)、処理はステップS1745に進む。ステップS1745では、居住者推定部14はランダムに変更された世帯-居住者関係と変更後誤差とを破棄する。居住者推定部14は、ランダムに変更される前の世帯-居住者関係と現在誤差とを維持する。
【0088】
ステップS1746では、居住者推定部14は、突然変異処理を実行するか否かを判断する。本開示において突然変異処理とは、入替処理(ステップS1741)における人数よりも多くの居住者をランダムに入れ替える処理をいう。一例では、その入替処理(ステップS1741)を実行した回数が(k-1)回以下の場合には、居住者推定部14は突然変異処理を実行せず、処理はステップS1749に移る。その実行回数がk回以上の場合には、処理はステップS1747に移る。
【0089】
ステップS1747では、居住者推定部14は、現在誤差がk回前の誤差(k回前の時点での現在誤差)より小さいか否かを判定する。現在誤差がk回前の誤差より小さい場合(ステップS1747においてYES)、居住者推定部14は突然変異処理を実行せず、処理はステップS1749に移る。現在誤差がk回前の誤差以上である場合には(ステップS1747においてNO)、処理はステップS1748に移る。
【0090】
ステップS1748では、居住者推定部14は、世帯-居住者関係の一部をランダムに変更する突然変異処理を実行する。居住者推定部14は、世帯人員、家族類型、及び居住者の間の整合を取りつつ、世帯要素に関連付けられた居住者の一部を少なくとも二つの世帯要素間でランダムに入れ替える。この突然変異処理では、居住者推定部14はn(>m)人の居住者を入れ替える。すなわち、居住者推定部14は、世帯-居住者関係のうち入替処理よりも多い割合をランダムに変更する。このステップでも、居住者推定部14は或る一つの世帯要素について、一部の居住者のみを入れ替えるかもしれないし、すべての居住者を入れ替えるかもしれない。ステップS1748の後に、処理はステップS1741に戻る。
【0091】
ステップS1747,S1748に示すように、居住者推定部14は、入替処理の繰り返しにより得られる誤差の履歴に基づいて、入替処理の繰り返しの間に突然変異処理を実行する。
【0092】
ステップS1749では、居住者推定部14は、世帯-居住者関係をさらにランダムに変更するか否かを判定する。ランダムな変更を終了する条件は、例えば、入替処理を所与の回数繰り返したことであってもよい。あるいは、その終了条件は現在誤差が収束したことであってもよい。ランダムな変更を繰り返す場合には(ステップS1749においてNO)、居住者推定部14はステップS1741以降の処理を繰り返し実行する。一方、ランダムな変更を終了する場合には(ステップS1749においてYES)、ステップS174が終了する。
【0093】
図13に戻って、ステップS175では、居住者推定部14は、ランダムな変更が終了した時点での世帯-居住者関係を対象地域の世帯-居住者関係として決定する。
【0094】
ステップS176では、居住者推定部14は、すべての対象地域を処理したかどうかを判定する。処理していない対象地域が存在する場合には(ステップS176においてNO)、処理はステップS171に戻る。居住者推定部14はそのステップS171において次の対象地域を選択し、その対象地域についてステップS172以降の処理を実行する。すべての対象地域を処理した場合には(ステップS176においてYES)、居住者推定部14はステップS17を終了する。
【0095】
図9に戻って、ステップS18では、出力部15が世帯要素に関する世帯データを出力する。例えば、出力部15は世帯データをモニタ上に表示する。図15は世帯データの表示の一例を示す図である。この例では、出力部15は世帯データを示す画面300を表示する、画面300は地図301および世帯詳細302を含む。地図301上には個々の世帯要素を示す複数の点310がプロットされている。ユーザ操作により一つの点310が選択されたことに応答して、出力部15はその点310に対応する世帯詳細302を表示する。図15の例では、世帯詳細302は、選択された点311に対応する世帯要素の情報を示す。
【0096】
世帯データの出力方法は限定されない。例えば、世帯データは、所与のデータベースに格納されてもよいし、他のコンピュータに送信されてもよいし、印刷されてもよい。世帯データの表現方法も限定されず、例えば、世帯データは地図、表、及びグラフの少なくとも一つを用いて表現されてもよい。いずれにしても、ユーザは世帯データから、対象地域内のどこに(どの建物に)どのような世帯が存在するかを把握することができる。
【0097】
ステップS15~S17に示すように、世帯推定システム1は、推定分布と参考分布との誤差が小さくなるように、すなわち、推定分布が参考分布に近づいていくように、世帯要素に関する情報の一部をランダムに変更する処理を繰り返す。これは、乱数を用いた試行を繰り返すことにより近似解を求める手法であるモンテカルロ法を導入した処理であるといえる。ステップS17は、そのモンテカルロ法に、遺伝的アルゴリズムの一要素である突然変異を組み入れた処理であるといえる。
【0098】
[効果]
以上説明したように、本開示の一側面に係る世帯推定システムは、居住区画に関する建物データを記憶する建物データベースと、人口統計に関する統計データを記憶する統計データベースとにアクセス可能な少なくとも一つのプロセッサを備える。少なくとも一つのプロセッサは、対象地域内の複数の居住区画を建物データから特定し、統計データから取得される、対象地域での世帯属性毎の世帯数を示す世帯分布に基づいて、世帯属性に対応する居住区画を世帯要素として決定し、統計データから取得される、対象地域での居住者属性毎の人数を示す居住者分布に基づいて、世帯要素と居住者属性との世帯-居住者関係をランダムに設定し、世帯-居住者関係の設定に基づいて算出される所与の推定分布と、統計データから取得される対応の参考分布との誤差に基づいて、世帯-居住者関係の一部をランダムに変更する入替処理を繰り返して、世帯-居住者関係を決定し、世帯属性と居住者属性とを含む世帯要素を示す世帯データを出力する。
【0099】
本開示の一側面に係る世帯推定プログラムは、居住区画に関する建物データを記憶する建物データベースにアクセスし、対象地域内の複数の居住区画を建物データから特定するステップと、人口統計に関する統計データを記憶する統計データベースにアクセスし、統計データから取得される、対象地域での世帯属性毎の世帯数を示す世帯分布に基づいて、世帯属性に対応する居住区画を世帯要素として決定するステップと、統計データから取得される、対象地域での居住者属性毎の人数を示す居住者分布に基づいて、世帯要素と居住者属性との世帯-居住者関係をランダムに設定するステップと、世帯-居住者関係の設定に基づいて算出される所与の推定分布と、統計データから取得される対応の参考分布との誤差に基づいて、世帯-居住者関係の一部をランダムに変更する入替処理を繰り返して、世帯-居住者関係を決定するステップと、世帯属性と居住者属性とを含む世帯要素を示す世帯データを出力するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0100】
このような側面においては、世帯分布に基づいて、世帯属性に対応する居住区画が世帯要素として推定される。続いて、居住者分布に基づいてその世帯要素と居住者属性との対応関係がランダムに設定され、その対応関係が統計データとの比較に基づいて繰り返し変更されながら決定される。そして、世帯属性及び居住者属性を含む世帯要素を示す世帯データが出力される。この世帯データによって、個々の世帯に着目した詳細な人口統計を得ることができる。
【0101】
他の側面に係る世帯推定システムでは、少なくとも一つのプロセッサが、入替処理の繰り返しにより得られる誤差の履歴に基づいて、入替処理の繰り返しの間に、世帯-居住者関係のうち入替処理よりも多い割合をランダムに変更する突然変異処理を実行してもよい。入替処理を行うだけでは、世帯-居住者関係が局所解に陥ったり、誤差が改善しなかったりする可能性がある。突然変異処理を導入することで、世帯-居住者関係が相対的に大きく変更されるので、世帯-居住者関係を正しく推定する確率をより高めることが可能になる。
【0102】
他の側面に係る世帯推定システムでは、少なくとも一つのプロセッサが、入替処理を所定の回数繰り返した後の誤差が繰り返し前の誤差以上である場合に、突然変異処理を実行してもよい。誤差が減少しない場合に突然変異処理を実行することで、突然変異処理を不必要に多く実行することなく世帯-居住者関係をより正しく推定できる。
【0103】
他の側面に係る世帯推定システムでは、世帯属性が、世帯人員及び家族類型を含み、少なくとも一つのプロセッサが、統計データから取得される、対象地域での世帯人員毎の世帯数を示す人員-世帯分布に基づいて、居住区画と世帯人員との区画-人員関係をランダムに設定するステップと、区画-人員関係に基づいて算出される所与の推定分布と、統計データから取得される対応の参考分布との誤差に基づいて、区画-人員関係の一部をランダムに変更する処理を繰り返して、世帯人員に対応する居住区画を世帯要素として決定するステップと、統計データから取得される、対象地域での家族類型毎の世帯数を示す家族-世帯分布に基づいて、世帯要素と家族類型との世帯-家族関係をランダムに設定するステップと、世帯-家族関係に基づいて算出される所与の推定分布と、統計データから取得される対応の参考分布との誤差に基づいて、世帯-家族関係の一部をランダムに変更する処理を繰り返して、世帯-家族関係を決定するステップと、を実行して、世帯属性に対応する居住区画を世帯要素として決定してもよい。この場合には、人員-世帯分布に基づいて世帯人員と居住区画との区画-人員関係がランダムに設定され、その区画-人員関係が統計データとの比較に基づいて繰り返し変更されて、世帯人員に対応する居住区画が世帯要素として決定される。続いて、家族-世帯分布に基づいてその世帯要素と家族類型との世帯-家族関係がランダムに設定され、その世帯-家族関係が統計データとの比較に基づいて繰り返し変更されながら決定される。この一連の処理によって、世帯人員および家族類型を含む世帯属性を精度良く推定できる。
【0104】
本開示の一側面に係る世帯推定システムでは、居住区画に関する建物データを記憶する建物データベースと、人口統計に関する統計データを記憶する統計データベースとにアクセス可能な少なくとも一つのプロセッサを備える。少なくとも一つのプロセッサは、対象地域内の複数の居住区画を建物データから特定し、統計データから取得される、対象地域での世帯人員毎の世帯数を示す人員-世帯分布に基づいて、居住区画と世帯人員との区画-人員関係をランダムに設定し、区画-人員関係に基づいて算出される所与の推定分布と、統計データから取得される対応の参考分布との誤差に基づいて、区画-人員関係の一部をランダムに変更する処理を繰り返して、世帯人員に対応する居住区画を世帯要素として決定し、統計データから取得される、対象地域での家族類型毎の世帯数を示す家族-世帯分布に基づいて、世帯要素と家族類型との世帯-家族関係をランダムに設定し、世帯-家族関係に基づいて算出される所与の推定分布と、統計データから取得される対応の参考分布との誤差に基づいて、世帯-家族関係の一部をランダムに変更する処理を繰り返して、世帯-家族関係を決定し、世帯人員と家族類型とを含む世帯要素を示す世帯データを出力する。
【0105】
本開示の一側面に係る世帯推定プログラムでは、居住区画に関する建物データを記憶する建物データベースにアクセスし、対象地域内の複数の居住区画を建物データから特定するステップと、人口統計に関する統計データを記憶する統計データベースにアクセスし、統計データから取得される、対象地域での世帯人員毎の世帯数を示す人員-世帯分布に基づいて、居住区画と世帯人員との区画-人員関係をランダムに設定するステップと、区画-人員関係に基づいて算出される所与の推定分布と、統計データから取得される対応の参考分布との誤差に基づいて、区画-人員関係の一部をランダムに変更する処理を繰り返して、世帯人員に対応する居住区画を世帯要素として決定するステップと、統計データから取得される、対象地域での家族類型毎の世帯数を示す家族-世帯分布に基づいて、世帯要素と家族類型との世帯-家族関係をランダムに設定するステップと、世帯-家族関係に基づいて算出される所与の推定分布と、統計データから取得される対応の参考分布との誤差に基づいて、世帯-家族関係の一部をランダムに変更する処理を繰り返して、世帯-家族関係を決定するステップと、世帯人員と家族類型とを含む世帯要素を示す世帯データを出力するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0106】
このような側面においては、人員-世帯分布に基づいて世帯人員と居住区画との区画-人員関係がランダムに設定され、その区画-人員関係が統計データとの比較に基づいて繰り返し変更されて、世帯人員に対応する居住区画が世帯要素として決定される。続いて、家族-世帯分布に基づいてその世帯要素と家族類型との世帯-家族関係がランダムに設定され、その世帯-家族関係が統計データとの比較に基づいて繰り返し変更されながら決定される。そして、世帯人員及び家族類型を含む世帯要素を示す世帯データが出力される。この世帯データによって、個々の世帯に着目した詳細な人口統計を得ることができる。
【0107】
[変形例]
以上、本開示の実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。本開示は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0108】
世帯推定部13はステップS16を実行した後にステップS15を実行してもよい。すなわち、世帯推定部13は家族-世帯分布に基づいて居住区画と家族類型との対応関係を世帯要素として決定した後に、人員-世帯分布に基づいて世帯要素の世帯人員を決定してもよい。世帯要素(すなわち、世帯属性に対応する居住区画)を決定するためのステップS15,S16のいずれか一方が省略されてもよい。
【0109】
世帯推定システム1は居住者推定部14を備えなくてもよく、したがって、ステップS17が省略されてもよい。
【0110】
世帯推定システム1は属性付与部11および居住区画抽出部12を備えなくてもよく、したがって、ステップS12~S14が省略されてもよい。すなわち、世帯推定システムは対象地域の居住区画が既に特定されていることを前提として世帯データを生成してもよい。
【0111】
居住者推定部14は、突然変異処理を用いることなく世帯-居住者関係を決定してもよい。すなわち、ステップS1746~S1748が省略されてもよい。
【0112】
居住者推定部14はステップS174において、世代間の年齢差を更に考慮して、ランダムな変更を保存するか破棄するかを判定してもよい。居住者推定部14はその年齢差として、以下に示す、親と子供の年齢差と、世帯主と親との年齢差とのうちの少なくとも一つを用いてもよい。
【0113】
居住者推定部14はステップS173およびステップS1742において、世帯-居住者関係に基づいて、親との年齢差が所与の閾値未満である子供の数を算出する。例えば、居住者推定部14は、子供と女親との年齢差を算出し、男親のみを持つ子供についてはこの二人の年齢差を算出する。居住者推定部14は、家族-年齢分布データ230に記載されている年齢区分の差を年齢差として算出し、その区分差が3未満である子供の数を算出してもよい。ステップS1743において、居住者推定部14はその子供の数がランダムな変更の前から減ったか否かを更に判定する。居住者推定部14は、その子供の数が減少しかつ誤差が小さくなった場合には、ステップS1744においてランダムな変更を保存し、その子供の数が減っていない場合には、誤差が小さくなったか否かにかかわらずステップS1745においてランダムな変更を破棄する。
【0114】
居住者推定部14はステップS173およびステップS1742において、世帯-居住者関係に基づいて、世帯主との年齢差が所与の閾値未満である親の数を算出する。居住者推定部14は、家族-年齢分布データ230に記載されている年齢区分の差を年齢差として算出し、その区分差が3未満である親の数を算出してもよい。ステップS1743において、居住者推定部14はその親の数がランダムな変更の前から減ったか否かを更に判定する。居住者推定部14は、その親の数が減少しかつ誤差が小さくなった場合には、ステップS1744においてランダムな変更を保存し、その親の数が減っていない場合には、誤差が小さくなったか否かにかかわらずステップS1745においてランダムな変更を破棄する。
【0115】
本開示において、「少なくとも一つのプロセッサが、第1の処理を実行し、第2の処理を実行し、…第nの処理を実行する。」との表現、又はこれに対応する表現は、第1の処理から第nの処理までのn個の処理の実行主体(すなわちプロセッサ)が途中で変わる場合を含む概念である。すなわち、この表現は、n個の処理のすべてが同じプロセッサで実行される場合と、n個の処理においてプロセッサが任意の方針で変わる場合との双方を含む概念である。
【0116】
少なくとも一つのプロセッサにより実行される方法の処理手順は上記実施形態での例に限定されない。例えば、上述したステップ(処理)の一部が省略されてもよいし、別の順序で各ステップが実行されてもよい。また、上述したステップのうちの任意の2以上のステップが組み合わされてもよいし、ステップの一部が修正または削除されてもよい。あるいは、上記の各ステップに加えて他のステップが実行されてもよい。
【0117】
本開示において、二つの誤差の大小関係を比較する際には、「以上」及び「より大きい」という二つの基準のどちらを用いてもよく、「以下」及び「未満」という二つの基準のうちのどちらを用いてもよい。このような基準の選択は、二つの数値の大小関係を比較する処理についての技術的意義を変更するものではない。
【符号の説明】
【0118】
1…世帯推定システム、2…データベース群、11…属性付与部、12…居住区画抽出部、13…世帯推定部、14…居住者推定部、15…出力部、21…建物データベース、22…統計データベース、211…戸建住宅データ、212…集合住宅データ、213…施設データ、221…小地域データ、222…人員-世帯分布データ、223…家族-世帯分布データ(7区分)、224…居住者分布データ、225…住宅-世帯分布データ、226…面積-世帯分布データ、227…家族-世帯分布データ(17区分)、228…夫婦年齢分布データ、229…世帯員年齢分布データ、230…家族-年齢分布データ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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