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特許7606060FMCWレーダーシステムのためのレーダー処理チェーン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】FMCWレーダーシステムのためのレーダー処理チェーン
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/34 20060101AFI20241218BHJP
   G01S 13/42 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
G01S13/34
G01S13/42
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020531441
(86)(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 US2018064578
(87)【国際公開番号】W WO2019113517
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】16/212,046
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/596,000
(32)【優先日】2017-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【弁護士】
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】ジューン チュル ロー
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-521669(JP,A)
【文献】国際公開第2016/188895(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0131394(US,A1)
【文献】Eugin Hyun et al.,”Moving and stationary target detection scheme using coherent integration and subtraction for automotive FMCW radar systems”,2017 IEEE Radar Conference (RadarConf),2017年05月,pp.0476-0481,DOI: 10.1109/RADAR.2017.7944250
【文献】Eugin Hyun et al.,"A Pedestrian Detection Scheme Using a Coherent Phase Difference Method Based on 2D Range-Doppler FMCW Radar",Sensors,2016年01月20日,Vol.16, No.1,pp.1-13,DOI: 10.3390/s16010124,https://www.mdpi.com/1424-8220/16/1/124
【文献】Eugin Hyun et al.,"Parallel and Pipelined Hardware Implementation of Radar Signal Processing for an FMCW Multi-channel Radar",Elektronika Ir Elektrotechnika,2015年,Vol.21, No.2,pp.65-71,DOI: 10.5755/j01.eee.21.2.7606,https://eejournal.ktu.lt/index.php/elt/article/view/7606
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-7/42
G01S 13/00-13/95
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
フレームを構成する複数のチャープを含む周波数変調された連続波(FMCW)電磁放射信号を対象領域に送信するように構成されるトランスミッタと、
レシーバフロントエンドであって、
複数のアンテナの各アンテナで各チャープに対して前記対象領域から反射された電磁放射信号を受信し、
前記複数のアンテナの各アンテナについて、前記受信された電磁放射信号と前記送信されたFMCW電磁放射信号とに基づいて各チャープに対してビート信号サンプルを生成する、
ように構成される、前記レシーバフロントエンドと、
信号プロセッサであって、
前記システムからの距離をそれぞれ表すレンジビンのセットの各レンジビンについて、それぞれのレンジビンに対するサンプル値を生成するために、前記ビート信号サンプルに対して周波数ドメイン変換を適用し、前記適用することが前記複数のアンテナの各アンテナに対して実行され、
前記複数のアンテナの各アンテナについて、前記それぞれのレンジビンに対して平均値を提供するために前記フレームにおける複数のチャープにわたって前記サンプル値の算術平均を計算し、前記それぞれのレンジビンに対するクラッタ補正サンプル値を提供するために前記それぞれのレンジビンに対するサンプル値から前記平均値を差し引き、前記計算することと前記差し引くこととが前記複数のアンテナの各アンテナに対して実行され、
前記クラッタ補正サンプル値から前記レンジビンのセットの少なくとも1つのレンジビンに対する角度スペクトルを判定する、
ことによって、オブジェクトが前記対象領域内にあるかを判定し、
前記レンジビンのセットにわたる前記判定された角度スペクトルから前記対象領域内の少なくとも1つのオブジェクトを検出し、前記少なくとも1つのオブジェクトの位置を判定し、
所与のレンジビンとチャープとに対してビームフォーミングされた信号ブロックを提供するために、前記複数のアンテナにわたる前記レンジビンのセットの所与のレンジビンと前記複数のチャープの所与のチャープとに対する全てのクラッタ補正サンプル値を含む空間ベクトルに対してビームフォーミング動作を適用し、前記所与のレンジビンが前記少なくとも1つのオブジェクトに関連する少なくとも1つのレンジビンから選択され、
ドップラースペクトルベクトルを提供するために、前記所与のレンジビンに対する前記ビームフォーミングされた信号ブロックに高速フーリエ変換(FFT)を適用し、
前記ドップラースペクトルベクトルから前記所与のレンジビンに関連する前記少なくとも1つのオブジェクトに対するドップラー情報を抽出する、
ように構成される、前記信号プロセッサと、
を含む、システム。
【請求項2】
対象領域内のオブジェクトを検出するための方法であって、
フレームを構成する複数のチャープを含む周波数変調された連続波(FMCW)電磁放射信号をレーダーセンサモジュールから対象領域に送信することと、
前記複数のチャープの各チャープに対して、複数のアンテナの各アンテナにおいてそれぞれのチャープに関連する反射信号を受信することと、
前記複数のチャープの各チャープに対して、ビート信号を提供するために前記反射信号を前記送信されたFMCW電磁放射信号と混合することと、
前記複数のアンテナの各アンテナにおける前記複数のチャープの各チャープに対するビート信号サンプルを提供するために前記ビート信号をサンプリングすることと、
各々が前記レーダーセンサモジュールからの関連距離を表すレンジビンのセットの各レンジビンに対して、それぞれのレンジビンに対する周波数ドメインサンプル値を生成するために、前記フレームにおける前記複数のチャープにわたり前記ビート信号サンプルに対して周波数ドメイン変換を適用することであって、前記適用することが前記複数のアンテナの各アンテナに対して実行される、前記適用することと、
前記それぞれのレンジビンに対するクラッタ補正サンプル値を提供するために前記周波数ドメインサンプル値を補正することであって、
前記複数のアンテナの各アンテナに対して、アンテナとレンジビンとの各組み合わせによってそれぞれの直流(DC)成分が生成されるように、各レンジビンに対する前記周波数ドメインサンプル値の直流(DC)成分を提供するために、前記フレームにおける前記複数のチャープにわたって周波数ドメインサンプル値を平均化することと、
前記複数のアンテナの所与のアンテナにおける所与のレンジビンに対する周波数ドメインサンプル値から、アンテナとレンジビンとのそれぞれの組み合わせにおけるそれぞれのDC成分を減じることと、
を含む、前記補正することと、
前記クラッタ補正サンプル値から前記レンジビンのセットの少なくとも1つのレンジビンに対する角度スペクトルを判定することと、
前記判定された角度スペクトルに基づいてオブジェクトが存在するか否かを検出することと、
前記複数のアンテナにわたる前記レンジビンのセットの所与のレンジビンと前記複数のチャープの所与のチャープとに対する全てのクラッタ補正サンプル値を含む空間ベクトルに対してビームフォーミング動作を適用して、前記オブジェクトに関連する少なくとも1つのレンジビンから選択される前記所与のレンジビンと前記所与のチャープとに対して前記ビームフォーミングされた信号ベクトルを提供することと、
ドップラースペクトルベクトルを提供するために、前記所与のレンジビンに対する前記ビームフォーミングされた信号ブロックに高速フーリエ変換(FFT)を適用することと、
前記ドップラースペクトルベクトルから前記所与のレンジビンに関連する検出されたオブジェクトに対するドップラー情報を抽出することと、
を含む、方法。
【請求項3】
対象領域内のオブジェクトを検出するための方法であって、
フレームを構成する複数のチャープを含む周波数変調された連続波(FMCW)信号を送信することと、
複数のアンテナの各アンテナにおいて前記FMCW信号を受信することと、
前記受信されたFMCW信号と前記送信されたFMCW信号とに基づいて前記複数のアンテナの各アンテナにおける複数のチャープの各チャープについてのビート信号サンプルを生成することと、
複数のレンジビンの各レンジビンに対して、レーダーセンサモジュールからの関連距離を表すそれぞれのレンジビンに対するサンプル値を提供するために、前記複数のチャープにわたり前記ビート信号サンプルに対して周波数ドメイン変換を適用し、前記適用することが前記複数のアンテナの各アンテナに対して実行される、前記適用することと、
前記複数のアンテナの各アンテナに対して、前記それぞれのレンジビンに対するクラッタ補正サンプル値を提供するために、各レンジビンに対するサンプル値を補正することであって、
前記複数のアンテナの各アンテナに対して、前記それぞれのレンジビンに対して平均値を提供するために前記フレームにおける複数のチャープにわって前記サンプル値の算術平均を計算することと、
前記それぞれのレンジビンに対するクラッタ補正サンプル値を提供するために前記それぞれのレンジビンに対するサンプル値から前記平均値を差し引くことと、
を含む、前記補正することと、
前記クラッタ補正サンプル値から前記レンジビンのセットの少なくとも1つのレンジビンに対する角度スペクトルを判定することと、
前記対象領域内の少なくとも1つのオブジェクトの位置を前記少なくとも1つの判定された角度スペクトルから判定することと、
前記複数のアンテナにわたる前記レンジビンのセットの所与のレンジビンと前記複数のチャープの所与のチャープとに対する全てのクラッタ補正サンプル値を含む次元空間ベクトルに対して空間ビームフォーミングを適用することであって、前記所与のレンジビンとチャープとに対して、前記レンジビンに対するビームフォーミングされた信号ブロックを提供し、前記所与のレンジビンが前記少なくとも1つのオブジェクトに関連する少なくとも1つのレンジビンのセットから選択される、前記適用することと、
ドップラースペクトルベクトルを提供するために、前記所与のレンジビンに対するビームフォーミングされた信号ブロックに高速フーリエ変換(FFT)を適用することと、
前記ドップラースペクトルベクトルから、前記所与のレンジビンに関連する前記少なくとも1つのオブジェクトのオブジェクトに対するドップラー情報を抽出することと、
を含む、方法。
【請求項4】
請求項に記載の方法であって、
前記複数のチャープと前記複数のアンテナとにわたる前記レンジビンのセットの各レンジビンに対する総信号強度を表すレンジプロファイルベクトルを生成することと、
オブジェクトを含む可能性が高い前記レンジビンのセットのサブセットを判定するために、前記レンジプロファイルベクトルに1次元一定誤警報率アルゴリズムを適用することと、
を更に含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、概して電気システムに関し、より詳細には、周波数変調連続波(FMCW)レーダーシステムのためのレーダー処理チェーンに関する。
【背景技術】
【0002】
距離測定レーダーの1つの形態は周波数変調に基づいており、この手法では、戻ってきた信号の周波数が、送信された信号の周波数と比較される。この手法は連続波レーダーにおいて用いることができ、例えば、アダプティブクルーズコントロール(ACC)、非常ブレーキ、歩行者検出、及び360度感知などの車両応用例、並びに、ビルディングオートメーション、人数計測、及び監視などの産業応用例において用いられる。これらのシステムでは、キャリア信号が所定の方式で周波数変調されて、チャープを提供し、対象領域に送信される。対象領域からの受信反射は、チャープの送信と反射の受信との間の時間遅延を表す周波数トーンを生成するビート周波数変調器を用いて、送信されたチャープと連続的に比較され得る。これは、チャープの既知の周波数変調から判定され得る。信号がレーダーシステムから反射したオブジェクトの距離の2倍である、反射信号が進む距離は、この時間遅延から求めることができる。
【発明の概要】
【0003】
本開示の一態様に従って、周波数変調連続波レーダーシステムのためのレーダー処理チェーンが提供される。トランスミッタが、各々が電磁放射信号を含む複数のチャープを対象領域において送信し、複数のアンテナの各アンテナにおいて各チャープに対して時系列のビート信号サンプルを生成する。レシーバフロントエンドが、各チャープについて反射電磁放射を受けとる。信号プロセッサが、レシーバからのそれぞれの距離を表すレンジビンのセットに対するサンプル値として、ビート信号サンプルの各時系列の周波数ドメイン表現を提供すること、各レンジビンに対するクラッタ補正サンプルのセットを提供するためにレンジビンのセットの各々に対するサンプル値を補正すること、及び、クラッタ補正サンプルからのレンジビンのセットのサブセットの各々に対する角度スペクトルを判定することによって、対象領域内の任意のオブジェクトを検出する。
【0004】
本開示の別の態様に従って或る方法が提供される。各々が周波数変調連続波電磁放射信号を含む複数のチャープが、対象領域において送信される。各チャープ後に対象領域から反射された電磁放射が、レシーバフロントエンドで受信される。各チャープに対する受信された電磁放射は、ビート信号を提供するために送信チャープと混合される。ビート信号は、サンプリングされて、複数のアンテナの各アンテナにおける複数のチャープの各チャープに対する時系列のビート信号サンプルを提供する。各アンテナにおける各チャープに対して、各々がレシーバフロントエンドからの関連距離を表す、レンジビンのセットの各々についてサンプル値を提供するために、ビート信号サンプルの各時系列の周波数ドメイン表現が生成される。レンジビンのセットの周波数ドメイン表現を補正して、各アンテナでの各レンジビンと各チャープに対するサンプルを含む、クラッタ補正サンプルのセットを提供する。クラッタ補正サンプルからのレンジビンのセットのサブセットに対して角度スペクトルが判定される。対象領域内の任意のオブジェクトが、レンジビンのセットにわたる判定された角度スペクトルから検出される。
【0005】
本開示の更に別の態様に従って、対象領域内のオブジェクトを検出するためにレーダーリターンを処理するための方法が提供される。複数のアンテナの各アンテナにおける複数のチャープの各チャープに対して、時系列のビート信号サンプルが生成される。各アンテナにおける各チャープに対して、各々がレーダーセンサからの関連距離を表す、レンジビンのセットの各々についてサンプル値を提供するために、ビート信号サンプルの各時系列の周波数ドメイン表現が生成される。レンジビンのセットの周波数ドメイン表現を補正して、各アンテナでの各レンジビンと各チャープに対するサンプルを含む、クラッタ補正サンプルのセットを提供する。レンジビンのセットのサブセットの角度スペクトルが、クラッタ補正サンプルから判定される。対象領域内の少なくとも1つのオブジェクトの位置が、レンジビンのセットにわたる判定された角度スペクトルから判定される。所与のレンジビン及びチャープに対して、レンジビンのためのビームフォーミングされたベクトルを提供するために、複数のアンテナにわたってレンジビンのセットの所与のレンジビンと複数のチャープの所与のチャープとに対して全てのクラッタ補正サンプルを含む次元空間信号ブロックに空間ビームフォーミングが適用される。所与のレンジビンは、少なくとも1つのオブジェクトに関連する少なくとも1つのレンジビンのセットから選択される。ドップラースペクトルベクトルを提供するために、レンジビンのためのビームフォーミング信号ブロックに高速フーリエ変換(FFT)が適用される。ドップラースペクトルベクトルから、ドップラー情報が抽出されるか、又は所与のレンジビンに関連する少なくとも1つのオブジェクトのオブジェクトが抽出される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】周波数変調連続波(FMCW)レーダーシステムを図示する。
【0007】
図2】周波数変調連続波(FMCW)レーダー信号を処理するための信号処理構成要素の一例を図示する。
【0008】
図3】対象領域を監視するための方法の一例を図示する。
【0009】
図4】対象領域からの受信レーダー信号を処理するための方法の一例を図示する。
【0010】
図5図2に図示されたデジタルシグナルプロセッサなど、図1図4に開示されたシステム及び方法の例を実装することができるハードウェア構成要素の例示的なシステムを図示する概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
レーダー処理チェーンは、対象領域における人間の数及び位置を判定するなど、クラッタの多い環境において厳しい制約を有する。本明細書に記載されるシステム及び方法は、クラッタ除去アルゴリズムを含み、周波数変調連続波レーダーシステムのための高解像度到来方向(DoA)推定及び低複雑度ドップラー推定を可能にするレーダー信号処理チェーンを提供する。
【0012】
図1は、周波数変調連続波(FMCW)レーダーシステム100を図示する。システム100は、対象領域においてFMCW電磁放射(EM)信号を送信するトランスミッタ102を含む。トランスミッタは、1つ又は複数のアンテナを含み得ることが理解されよう。一実装において、周波数変調連続波EM信号は、時間と共に線形に増加する周波数を有する「チャープ」信号であるが、システム100は、周波数が時間と共に既知の様式で変化する、任意の適切な信号を利用し得ることが理解されるであろう。トランスミッタ102は、フレームと呼ばれる、セットのチャープ信号を提供し得る。一例において、各フレームは64個のチャープを含み、トランスミッタ102は毎秒20フレームを送信する。1つ又は複数のレシーバフロントエンド104は、複数のアンテナの各々において各チャープについて対象領域から反射された電磁放射を受信し、受信した電磁放射を送信された電磁信号と混合し、結果として得られるビート信号をサンプリングして、複数のアンテナの各々について時系列のビート信号サンプルを提供し、時系列のビート信号サンプルを信号プロセッサ106に提供する。1つの実装において、複数のアンテナは仮想アンテナであり、物理的な送信及び受信アンテナのアレイの出力からデジタル信号処理を介して抽出された出力を有する。このようなケースでは、仮想アンテナの各々に対して時系列のビート信号サンプルが生成される。仮想アンテナアレイの時分割多重化多入力多出力(TDM-MIMO)実装を用いるレーダーシステムの例は、TIアプリケーションレポートSWRA554A(http://www.ti.com/lit/an/swra554a/swra554a.pdf参照)に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0013】
1つ又は複数のレシーバフロントエンドは、複数のアンテナの各々について時系列のビート信号サンプルを提供する。具体的には、送信されたFMCW信号は、戻り信号と比較されて、送信された信号と返された信号との間の周波数の差が判定される。例えば、信号をヘテロダインミキシングにかけて、これら2つの信号からビート周波数を生成し得る。周波数変調パターンは既知であるので、所与の時間における信号間の周波数の変化は、その信号のための飛行時間(time of flight)を、及びそのため、返された信号が反射された範囲情報を提供し得る。
【0014】
信号プロセッサ106は、時系列のビート信号サンプルを評価して、対象領域内のオブジェクトを検出する。信号プロセッサは、例えば、専用マイクロプロセッサとして実装され得ることを理解されたい。信号プロセッサ106は、範囲にわたる戻り強度の離散化表現として、レーダーセンサモジュールからの距離を表すレンジビンのセットに対する値として、各時系列のビート信号サンプルの周波数ドメイン表現を提供する。従って、各チャープ信号について、高速フーリエ変換(FFT)を介して複数のアンテナの各々についてレンジビン値のセットが判定され得る。一実装において、レンジビン値のセットは、チャープのビート信号からの信号サンプルのセットを平均してDC成分を提供し、各サンプルからDC成分を減算してDC補償サンプルのセットを提供することによって判定される。DC補償されたサンプルはその後、レンジビン値のセットを提供するために高速フーリエ変換にかけられる。幾つかの応用例において、所与のチャープ後に受け取った全てのサンプルを使う代わりに、ウィンドゥオペレーションがDC補償に先行してもよい。
【0015】
次いで、信号プロセッサ106は、レンジビン値のセットの周波数ドメイン表現を補正して、クラッタ補正された信号を提供する。クラッタ補正は、例えば、所与のレンジビン及びアンテナについてフレームにおけるチャープにわたる平均(例えば、中間(mean))レンジビン値として直流(DC)成分を判定し、所与のレンジビンに関連し、所与のアンテナで受信される、各レンジビン値からの判定されたDC成分を減算することによって適用され得る。従って、チャープのフレームが評価された後、得られたデータは3次元データ構造として概念化され得、そこでは、クラッタ補正された信号における各サンプル値が、所与のチャープ、レンジビン、及び仮想アンテナを表す。
【0016】
また、信号プロセッサ106は、クラッタ補正された信号におけるサンプル値を用いて、各レンジビンについて角度スペクトルを判定する。実際には、角度スペクトルは、最小分散無歪応答(MVDR)アルゴリズム、多重信号分類(MUSIC)アルゴリズム、又はESPRIT(Estimation of Signal Parameters by Rotational Invariance Techniques)アルゴリズムなど、共分散に基づく到来方向判定アルゴリズムの応用例を介して判定され得る。次いで、信号プロセッサ106は、生成された角度スペクトルをレンジビンのセットにわたって検討して、オブジェクトが存在するかどうかを判定し得る。一実装において、判定された角度スペクトルは、レーダーセンサモジュールに対する「レンジ方位角プロファイル」と呼ばれる、レンジ及び方位角の二次元マッピングとして、返された信号の強度を表すレンジ方位角スペクトルマトリックスとして表される。このマトリックスは、例えば、一定誤警報率(CFAR)アルゴリズムを介して、ピーク値について検索され得る。次いで、任意の検出されたオブジェクトの位置は、後の使用のため、例えば、周波数変調連続波レーダーシステム100に関連する自動化されたシステムによって、非一時的なメモリ108にストアされ得る。
【0017】
図2は、周波数変調レーダー信号を処理するための信号処理構成要素200の一例を図示する。例えば、信号処理構成要素200は、図1の信号プロセッサ106の機能を提供するために用いられ得る。図示される例において、信号処理構成要素200は、物理的なアンテナ又は仮想的なアンテナの一方を表すサンプルを、1つ又は複数のレシーバフロントエンドから受信する。図示の例200では、仮想アンテナのアレイが、物理的な送信及び受信アンテナのセットから導出されると仮定されるが、複数のアンテナは全て、送信されたチャープと、ミキサで生成され、チャーピング時間中にアナログデジタルコンバータ(ADC)でサンプリングされる各チャープからの受信信号との間のビート信号を表す物理的な受信アンテナであり得ることが理解されよう。各レシーバフロントエンドからのサンプルは、それぞれのレンジ処理ブロック206で処理される。
【0018】
各レンジ処理ブロック206は、関連するアンテナに対して、アンテナからの複数の個別のレンジの各々からの反射信号の強度を表す値のセットを提供するために、高速フーリエ変換(FFT)を行う。一実装において、FFTを生成する前に、FFTの入力サンプルに窓関数が適用され得る。入力信号サンプルにおける直流(DC)成分が、各チャープにおけるサンプルを平均することによって推定され得、チャープにおける各サンプルから減算され得る。窓関数が用いられる場合、DCのための任意の推定及び補償が、ウィンドゥオペレーションの後に適用される。図示の実装では、各アンテナに対する各チャープのFFTが、レンジビン値のセットとしてバッファにストアされる。各フレームにおいて複数のNチャープ、仮想アンテナの数Na、及び定義された数のレンジビンNがあるとすると、これは、N×N×Nエントリを有する三次元データ構造を提供する。
【0019】
クラッタの多い環境、とりわけ室内環境では、人間や他の生命体などの小さなレーダー断面(RCS)を持つオブジェクトを検出することは困難である場合がある。多くの場合、ビル構造体や家具などの大きなRCSを持つクラッタ源が受信信号を支配する可能性がある。その結果、小さなRCSを持つオブジェクトは、これらのクラッタ源からの強い干渉に埋もれ、検出が困難になる可能性がある。レーダーセンサが静止しているとき、クラッタ源及び全ての静止オブジェクトはドップラー成分を示さず、これは、残りのレーダー信号処理チェーンのための信号条件を改善するために、クラッタ除去構成要素208によって活用され得る。
【0020】
一実装において、各クラッタ除去構成要素208が、フレーム内のチャープにわたる各レンジビンのDC成分を推定し得る。DC成分推定は、下記のように、チャープにわたってレンジFFT出力サンプルを平均化することによって得られる。
ここで、レンジFFT出力サンプルは、{xn,k,p}と示され、ここで、xn,k,pは、p番目のアンテナにおけるk番目のチャープにおけるn番目のレンジビンに対する信号を表し、nは、1とレンジビンの数であるNとの間の整数であり、kは、1とフレームにおけるチャープの数であるNとの間の整数であり、pは、1とシステムのアンテナの数であるNとの整数である。
【0021】
各レンジFFT出力サンプルxn,k,pから、推定されたDC成分
を減じると、
となる。これをレンジビン毎、及びアンテナ毎に繰り返す。レンジ処理とクラッタ除去オペレーションは、各アンテナに適用され、得られたサンプルは、クラッタ補正サンプルのセットとしてストアされる。クラッタ補正されたサンプルは、レンジインデックスn、チャープインデックスk、アンテナインデックスpを用いてインデックス化された(サイズN×N×Nの)3次元データ構造として概念化され得る。
【0022】
各アンテナからのクラッタ補正されたサンプルは、到来方向(DoA)構成要素210に提供され、クラッタ補正されたサンプルを用いて各レンジビンのDoA角度スペクトルを判定する。集合的に、角度スペクトルはレンジ方位角スペクトルを形成する。具体的には、DoA構成要素210は、レーダーフレーム内で推定された空間共分散に基づいて、高解像度の到来方向スペクトル推定を行う。図示した例では、最小分散無歪応答(MVDR)ベースの到来方向(DoA)推定アプローチについて述べた。しかしながら、同じレーダー処理信号チェーンを用いることと同様に他の共分散ベースの高解像度DoA方法(例えば、MUSIC又はESPRIT)が用いられ得ることが理解されるであろう。
【0023】
DoA構成要素210はまず、下記のように、各レンジビン
に対して空間共分散を推定する。
ここで、xn,kは、n番目のレンジビン及びk番目のチャープに対するN次元空間ベクトルであり、これは、仮想アンテナにわたってサンプルをスタックすることにより形成されて、xn、k=[xn,k1,n,k2,...,n,k,Na]Tとなる。xは、ベクトルxのエルミート転置を表す。演算の量を減らすため、空間共分散を推定する際に、フレームにおける利用可能なチャープの数Nに等しいかそれより少ないチャープの数Kが用いられる。
【0024】
図示の実装のカポンのビームフォーミングとしても知られているMVDRのアプローチでは、方位角θに対してステアリングベクトルa(θ)が、下記のように線形1次元仮想レシーバアンテナアレイに対して判定される。
ここで、dは波長で正規化されたアンテナ間の間隔である。
【0025】
ステアリングベクトルは、各仮説DoA角に対する仮想アンテナアレイにわたる期待位相値を含み、事象レーダー無線周波数(RF)信号が方位角θから来るとき、仮想受信アンテナの各々に対する位相差を表す。n番目のレンジビンの角度スペクトルは、次の式で与えられる。
【0026】
対応するビームフォーミングベクトルは、次のように与えられる。
【0027】
各レンジビンに対するDoAスペクトルは、マトリックス形態でスタックされ、n番目のローにはn番目のレンジビンP(θ)のDoAスペクトルが入れられる。このマトリックスは、ここではレンジ方位角スペクトルマトリックスと呼ばれ、レーダーセンサに対する距離と角度のセットで対象領域から反射される電磁放射の強度を表す。
【0028】
幾つかの状況において、所与のレンジビンの空間共分散推定が特異であるか、又はほぼ特異であり、これは、DoAスペクトル推定の一部としてマトリックスオペレーション(例えば、マトリックス反転)を行う際に数値安定性の問題を引き起こし得る。数値安定性の問題を回避する1つの方法は、下記のように、共分散推定マトリックスの対角線に沿って、対角負荷因子αと呼ばれる小さな値を付加することである。
【0029】
対角負荷因子αは、ノイズ分散推定
、及び定数βを用いて
として判定され得、対角負荷因子及び単位行列の積は、本明細書では対角負荷マトリックスと呼ばれる。具体的には、あるレーダーフレームにおけるチャーピングの時間スケールに比べて時間にわたる変動が遅い環境では、二つの隣り合うチャープ間で、クラッタ補正された出力の信号成分があまり変更しないが、ノイズ成分は独立に変更すると仮定できる。これを利用して、所与のレンジビンn及び仮想受信アンテナpに対して、レーダー信号に埋め込まれているノイズ電力又は分散を次のように見積もることができる。
ここで、xn,k,pは、DoA構成要素210に供給されるクラッタ補正されたサンプルである。
【0030】
レンジビンnのノイズ分散推定は、下記のように、仮想アンテナにわたって平均ノイズ分散を計算することによって判定され得る。
【0031】
DoAスペクトル推定に対する演算コストは、1つ又はそれ以上のオブジェクトを有する可能性の高いレンジビン上でのみDoA推定を行うことにより低減され得る。DoAスペクトル推定のための良好な候補を決定するために、一次元一定誤警報率(CRAR)アルゴリズムを用いることができる。一実装において、レンジプロファイルベクトルs=[s、s、...、sNr]のn番目の要素snが下記のように決定されるように、フレーム内の全てのチャープと全ての仮想受信アンテナとにわたってクラッタ補正サンプル値を平均することによって、CFARアルゴリズムが準備される。
【0032】
レンジプロファイルベクトルが決定されると、1次元CFARアルゴリズムをレンジプロファイルベクトルs上で実行して、本明細書で「検出レンジビン」と呼ぶ、オブジェクトを含む可能性があるレンジビンが判定され得る。CFARのアルゴリズムにおいて、ピークである、すなわち、アレイ(例えば、ベクトル又はマトリックス)及び背景レベルにおいて周囲の要素をより上に上がるレンジプロファイルベクトルにおける値が、検出されたレンジビンとして選択され得る。前述のDoAスペクトル推定は、検出されたレンジビンに対してのみ行うことができる。
【0033】
DoA構成要素210で決定されたレンジ方位角スペクトルマトリックスは、対象領域内の任意のオブジェクトの位置を特定するオブジェクト検出構成要素212に提供される。一実装において、オブジェクト検出構成要素212は、2次元CFARアルゴリズムをレンジ方位角スペクトルマトリックスに適用する。検出されたオブジェクトに関連する情報は、例えば、マトリックス内のレンジインデックスn、マトリックス内の角度インデックスm、電力レベル、及び、ノイズ電力レベル推定としてストアされ、ここで、iは、i番目の検出されたオブジェクトを表すインデックスである。
【0034】
オブジェクトのセットが位置特定されると、レンジ方位角スペクトルマトリックス内のそれらの位置がドップラー処理要素214に提供される。ドップラー処理要素214は、仮想アンテナからのデータの多重ストリームに空間ビームフォーミングを適用し、得られたビームフォーミングされたデータストリームに対してドップラーFFTを行う。一実施形態において、i番目の検出されたオブジェクトに対して、レンジビンnに対する各チャープにおける各空間ベクトルxn,kに空間ビームフォーミングが適用されて、下記の式10のように、ビームフォーミングされた信号ブロックの単一ストリームy=[y,k:k=1,...,N]が提供される。
ここで、
であり、上付きのHは、ベクトルのエルミート転置を示す。
【0035】
式5から、ビームフォーミング重みベクトルwni(θmi)は、特定のレンジビンに対する空間共分散推定に依存することが理解されるであろう。一例において、結果の信号ブロックytにウィンドゥオペレーションが適用され得る。結果のビームフォーミングされた信号ブロックyにFFTオペレーションが適用されて、ドップラースペクトルベクトルYを提供する。ドップラースペクトルベクトルYから、i番目の検出されたオブジェクトのドップラー情報が抽出され得る。その後、レンジ情報、ドップラー情報、DoA角度情報、並びに電力レベル及びノイズレベルを含み得る、検出されたオブジェクトの全ての情報が、収集され、「ポイントクラウドレーダーデータ」の形態としてバッファ216に保存される。
【0036】
上述の構造的及び機能的特徴に鑑みて、例示の方法は、図3及び図4を参照するとより良く理解されるであろう。説明を簡潔にするため、図3及び図4の例示の方法は順次実行されるものとして示され、説明されるが、幾つかの動作は、他の例において、本明細書で示され説明されるものとは異なった順で、複数の時間に、及び/又は同時に起こり得るので、本例は示される順によって限定されないことが理解され認識されるべきである。更に、或る方法を実装するために、説明された全てのアクションが行われることは必須ではない。
【0037】
図3は、対象領域を監視するための方法300の一例を図示する。302において、各々が周波数変調連続波(FMCW)電磁放射信号を含む複数のチャープが、対象領域において送信される。304において、各チャープ後、対象領域から反射される電磁放射が、レシーバフロントエンドで受信される。302で送信されたチャープは1つ又は複数のアンテナから送信され得、反射された電磁放射は複数の物理アンテナで受信され得ることが理解されよう。306において、各チャープに対する受信電磁放射は、送信されたチャープと混合されてビート信号を提供し、308において、ビート信号がサンプリングされて、複数のアンテナの各アンテナにおいて、複数のチャープの各チャープに対して時系列のビート信号サンプルを提供する。一実装において、各アンテナにおける各チャープに対する時系列のビート信号サンプルからの値を平均化することにより、それらの値の推定DC成分を提供し、所与のアンテナにおける所与のチャープに対する時系列の値の各々から、そのチャープ及びアンテナ対に対する推定DCを引くことによって、或るDCに対して各時系列のビート信号サンプルが補正され得る。
【0038】
310において、ビート信号サンプルの各時系列の周波数ドメイン表現が生成されて、各アンテナにおける各チャープに対するレンジビンのセットの各々に対するサンプル値が提供される。各レンジビンは、レシーバからの関連する距離を表す。一例において、周波数ドメイン表現は、時系列の値の各々に高速フーリエ変換(FFT)を介して生成される。312において、レンジビンのセットの周波数ドメイン表現が補正されて、クラッタ補正されたサンプルのセットが提供され、これには、各アンテナにおける各レンジビン及び各チャープに対するサンプルが含まれる。一実装において、クラッタ補正サンプルのセットは、各アンテナにおける複数のチャープのサブセットにわたってサンプルを平均化することによって生成され得、各アンテナにおける各レンジビンに対して、アンテナ及びレンジビンのあり得る対毎にDC成分が生成されるように、値の推定直流(DC)成分が提供され得る。次いで、各レンジビン及びアンテナ対に対する推定されたDC成分は、所定のアンテナについて所定のレンジビンにおける値の各々から減算される。
【0039】
314において、レンジビンのセットのサブセットに対する角度スペクトルが、クラッタ補正されたサンプルから決定される。例えば、各レンジビンに対する角度スペクトルは、クラッタ補正サンプルに最小分散無歪応答(MVDR)アルゴリズムを適用することにより決定され得る。一実装において、レンジビンのセットのサブセットは、サブセットがレンジビンのセットと同一の広がりを有するように、レンジビンの全てを含む。別の実装において、レンジビンのサブセットは、複数のチャープ及び複数のアンテナにわたるレンジビンのセットの各々についての総信号強度を表すレンジプロファイルベクトルを生成すること、及び、レンジビンのセットのサブセットとしてオブジェクトを含む可能性のあるレンジビンのセットをレンジプロファイルベクトルから決定することによって選択される。例えば、レンジプロファイルベクトルに一次元一定誤警報率アルゴリズムが適用され得る。
【0040】
316において、対象領域内の任意のオブジェクトの位置が、レンジビンのセットにわたって決定された角度スペクトルから決定される。一実装において、レンジビンのセットのサブセットに対する角度スペクトルは、レーダーセンサモジュールに対する距離及び角度のセットで対象領域から反射される電磁放射の強度を表すレンジ方位角スペクトルマトリックスとして表すことができる。対象領域内の任意のオブジェクトの位置が、レンジ方位角スペクトルマトリックスに二次元一定誤警報率アルゴリズムを適用することによって決定され得る。検出されたオブジェクトに関する位置及び他の利用可能な情報がある場合、それらは、1つ又はそれ以上の他のシステムによって用いられるために、318でバッファにストアされ得る。
【0041】
図4は、対象領域内の受信レーダー信号を処理するための方法400の一例を図示する。402において、複数のアンテナの各アンテナにおける複数のチャープの各チャープに対して、時系列のビート信号サンプルが生成される。一実装において、時系列のビート信号サンプルは、各々が周波数変調電磁放射信号を含む複数のチャープを対象領域において送信し、各チャープ後に対象領域から反射された電磁放射をレシーバフロントエンドで受信することによって生成される。各チャープからの受信電磁放射は。送信されたチャープと混合されてビート信号を提供し、ビート信号は、サンプリングされて、複数のアンテナの各アンテナでの複数のチャープの各チャープに対して時系列のビート信号サンプルを提供する。
【0042】
404において、各時系列のビート信号サンプルの周波数ドメイン表現が生成されて、各アンテナにおける各チャープに対するレンジビンのセットの各々に対するサンプル値を提供する。各レンジビンは、レシーバからの関連する距離を表す。一例において、周波数ドメイン表現は、時系列の値の各々に対する高速フーリエ変換(FFT)を介して生成される。406において、レンジビンのセットの周波数ドメイン表現が補正されて、クラッタ補正サンプルのセットが提供され、これには、各アンテナにおける各レンジビンと各チャープとに対するサンプルが含まれる。一実装において、クラッタ補正サンプルのセットは、レンジビン及びチャープのあり得る対毎にDC成分が生成されるように、各アンテナにおける各レンジビンに対して、各アンテナにおける複数のチャープのサブセットにわたってレンジビンのセットについてのサンプルを平均化することによって、それらの値の推定直流(DC)構成要素を提供することによって、生成され得る。各レンジビン及びアンテナ対についての推定されたDC成分は、所与のアンテナについて所与のレンジビンにおける値の各々から減算される。
【0043】
408において、レンジビンのセットのサブセットに対する角度スペクトルが、クラッタ補正サンプルから決定される。例えば、各レンジビンに対する角度スペクトルは、クラッタ補正サンプルに共分散ベースの到着方向判定アルゴリズムを適用することによって判定され得る。一実装において、レンジビンのセットのサブセットは、サブセットがレンジビンのセットと同一の広がりを有するように、レンジビンの全てを含む。別の実装において、レンジビンのサブセットは、複数のチャープ及び複数のアンテナにわたるレンジビンのセットの各々についての総信号強度を表すレンジプロファイルベクトルを生成し、レンジビンのセットのサブセットとしてオブジェクトを含む可能性のあるレンジビンのセットをレンジプロファイルベクトルから判定することによって選択される。例えば、レンジプロファイルベクトルに一次元一定誤警報率アルゴリズムが適用され得る。
【0044】
410において、レンジビンのセットにわたる決定された角度スペクトルからの対象領域内の任意のオブジェクトの位置特定。412において、複数のアンテナにわたるレンジビンのセットの所与のレンジビン及び複数のチャープの所与のチャープに関する全てのクラッタ補正されたサンプルを含むN長さの空間ベクトルに空間ビームフォーミングが適用されて、所与のレンジビン及びチャープに関して、レンジビンに対するビームフォーミングされた信号ブロックが提供される。レンジビンは、任意の検出されたオブジェクトに関連付けられたレンジビンのセットから選択され得ることが理解されるであろう。414において、ドップラースペクトルベクトルを提供するために、レンジビンに対し、ビームフォーミング信号ブロックにFFTが適用される。416において、レンジビンに関連するオブジェクトに対するドップラー情報が、ドップラースペクトルベクトルから抽出される。任意の検出されたオブジェクトの位置、抽出されたドップラー情報、及び、検出されたオブジェクトに関するその他の利用可能な情報は、1つ又は複数のその他のシステムによる使用のため、418においてバッファにストアされ得る。
【0045】
図5は、図2に図示されたデジタルシグナルプロセッサ200などの、図1~4に開示されたシステム及び方法の例を実装し得るハードウェア構成要素の例示のシステム500を図示する概略ブロック図である。システム500は、様々なシステム及びサブシステムを含み得る。システム500は、パーソナルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ワークステーション、コンピュータシステム、装置、特定用途向け集積回路(ASIC)、サーバー、サーバーブレードセンター、サーバーファームなどとされ得る。一実装において、システム500はマイクロプロセッサであり、この実装では構成要素502、504、506、508、510、512、514、516、及び518の幾つかは不要であり得ることが理解されよう。一例において、デジタルシグナルプロセッサ200は集積回路として実装され得る。この目的のために適合され得る集積回路ハードウェアの例は、http://www.ti.com/general/docs/datasheetdiagram.tsp?genericPartNumber=AWRl642&diagramId=SWRS203Aで利用可能なTIデータシートSWRS203A、及び、http://www.ti.com/general/docs/datasheetdiagram.tsp?genericPartNumber=AWRl443&diagramId=SWRS202Aにおいて利用可能な及びTIデータシートSWRS202Aに記載されており、これらは参考として本願に組み込まれている。
【0046】
システム500は、システムバス502、処理ユニット504、システムメモリ506、メモリデバイス508及び510、通信インタフェース512(例えば、ネットワークインタフェース)、通信リンク514、ディスプレイ516(例えば、ビデオスクリーン)、及び入力デバイス518(例えば、キーボード及び/又はマウス)を含み得る。システムバス502は、処理ユニット504及びシステムメモリ506と通信し得る。ハードディスクドライブ、サーバー、スタンドアロンデータベース、又はその他の不揮発性メモリなどの付加的なメモリデバイス508及び510も、システムバス502と通信し得る。システムバス502は、処理ユニット504、メモリデバイス506~510、通信インタフェース512、ディスプレイ516、及び入力デバイス518を相互接続する。幾つかの例において、システムバス502は、USB(ユニバーサルシリアルバス)ポートなどの付加的なポート(図示せず)も相互接続する。
【0047】
処理ユニット504は、コンピュータデバイスとされ得、特定用途向け集積回路(ASIC)を含み得る。処理ユニット504は、本明細書で開示される例のオペレーションを実装するために一連の命令を実行する。処理ユニットは処理コアを含み得る。
【0048】
付加的なメモリデバイス506、508及び510は、データ、プログラム、命令、テキスト又はコンパイル形式のデータベース問い合わせ、及び、コンピュータを動作させるために必要とされるその他の任意の情報をストアし得る。メモリ506、508、及び510は、例えば、メモリカード、ディスクドライブ、コンパクトディスク、又はネットワークを介してアクセス可能なサーバーなどの、コンピュータ可読媒体(統合され得又は取り外し可能)として実装され得る。幾つかの例において、メモリ506、508、及び510は、テキスト、画像、ビデオ、及び/又はオーディオを含み得、それらの一部は人間が理解できる形式で利用可能であり得る。加えて又は代替として、システム500は、システムバス502及び通信リンク514と通信可能な通信インタフェース512を介して、外部データソース又は問い合わせソースにアクセスし得る。
【0049】
オペレーションにおいて、システム500は、本開示に従った診断及び判定支援システムの1つ又は複数の部品を実装するために用いられ得る。特定の実施例に従って、システムメモリ506、及びメモリデバイス508、510のうちの1つ又はそれ以上に複合応用例試験システムを実装するためのコンピュータ実行可能論理が存在する。処理ユニット504は、システムメモリ506及びメモリデバイス508及び510から発せられる1つ又はそれ以上のコンピュータ実行可能命令を実行する。本明細書において用いられるように「コンピュータ可読媒体」という用語は、実行のために処理ユニット504に命令を提供することに関与する任意の媒体を指し、コンピュータ可読媒体は、処理ユニットに各々動作可能に接続される複数のコンピュータ可読媒体を含み得ることが理解されよう。
【0050】
本発明の特許請求の範囲内で、説明した例示の実施例に改変が成され得、他の実施例が可能である。

図1
図2
図3
図4
図5