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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
B60C11/03 100B
B60C11/03 200A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020175531
(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公開番号】P2022066922
(43)【公開日】2022-05-02
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 和正
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-127069(JP,A)
【文献】特開2008-201153(JP,A)
【文献】特開平09-142109(JP,A)
【文献】特開平04-215505(JP,A)
【文献】特開2015-229408(JP,A)
【文献】特開平04-063704(JP,A)
【文献】特開2020-100170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周方向主溝と、前記周方向主溝に区画されて成る複数の陸部とを備えるタイヤであって、
前記複数の周方向主溝のうちタイヤ幅方向の最外側に配置された一対のショルダー主溝と、前記複数の陸部のうちタイヤ幅方向の最外側に配置された一対のショルダー陸部とを定義し、
少なくとも一方の前記ショルダー陸部が、前記ショルダー主溝よりも浅い溝深さを有すると共にタイヤ全周に渡って連続して延在するショルダー浅溝と、一方の端部にてタイヤ接地端に開口すると共に他方の端部にて前記ショルダー浅溝に接続する複数の第一ショルダーラグ溝と、前記ショルダー浅溝および前記第一ショルダーラグ溝に区画されて成る複数の第一ショルダーブロックと、一方の端部にて前記ショルダー主溝に接続すると共に他方の端部にて前記ショルダー浅溝に接続する複数の第二ショルダーラグ溝と、前記ショルダー浅溝および前記第二ショルダーラグ溝に区画されて成る複数の第二ショルダーブロックと、前記ショルダー浅溝の溝底に形成されると共にタイヤ全周に渡って連続して延在する細リブと、を備えることを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記ショルダー浅溝の最大深さH11が、前記ショルダー主溝の最大深さHg1に対して0.50≦H11/Hg1<1.00の範囲にある請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ショルダー陸部の踏面から前記細リブの頂部までの最大距離H14が、前記ショルダー浅溝の最大深さH11に対して0≦H14/H11≦0.10の範囲にある請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
タイヤ接地端から前記細リブの中心線までの距離D11が、前記ショルダー陸部の最大接地幅Wb1に対して0.30≦D11/Wb1≦0.70の範囲にある請求項1~3のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第一および第二のショルダーラグ溝の溝中心線の延長線と前記ショルダー浅溝の溝中心線との交点の距離Dcが、前記第一ショルダーラグ溝の最大幅W12Aに対して0≦Dc/W12A≦0.80の範囲にある請求項1~4のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項6】
前記細リブの最大幅W14が、前記ショルダー浅溝の最大幅W11に対して0.20≦W14/W11≦0.60の範囲にある請求項1~5のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項7】
前記ショルダー浅溝の最大幅W11が、前記ショルダー陸部の最大接地幅Wb1に対して0.17≦W11/Wb1≦0.19の範囲にある請求項1~6のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項8】
前記細リブの頂部が、前記ショルダー陸部の踏面に平行な頂面を有し、且つ、
前記頂面の最大幅W14’が、前記細リブの最大幅W14に対して0.05≦W14’/W14≦0.20の範囲にある請求項6または7に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記細リブが、タイヤ赤道面側のエッジ部に上記平行な頂面を有する請求項8に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記ショルダー浅溝の最大深さH11が、前記第一および第二のショルダーラグ溝の最大深さH12に対して1.00≦H11/H12≦2.00の範囲にある請求項1~9のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項11】
前記細リブが、前記細リブの全周に渡って延在する面取部を頂部に有し、且つ、前記ショルダー陸部の踏面に対する前記面取部の傾斜角αが、1[deg]≦α≦60[deg]の範囲にある請求項1~10のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項12】
前記複数の陸部のうち前記ショルダー陸部に隣り合うミドル陸部を定義し、
前記ミドル陸部が、前記ミドル陸部を貫通する複数のミドルラグ溝と、前記ミドルラグ溝に区画された複数のミドルブロックとを備え、且つ、
前記ミドルブロックが、前記ミドルブロックのタイヤ赤道面側のエッジ部に沿って延在する細溝と、前記細溝に区画されて成る細リブとを有する請求項1~11のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイヤに関し、さらに詳しくは、タイヤの騒音性能、スノートラクション性能および耐横滑り性能を両立できるタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
重荷重用ウィンタータイヤでは、タイヤのスノートラクション性能および耐横滑り性能を向上すべき課題がある。このような課題に関する従来のタイヤとして、特許文献1に記載される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-144653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、近年の重荷重用タイヤでは、タイヤの騒音性能を向上すべき課題がある。
【0005】
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、タイヤの騒音性能、スノートラクション性能および耐横滑り性能を両立できるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明にかかるタイヤは、複数の周方向主溝と、前記周方向主溝に区画されて成る複数の陸部とを備えるタイヤであって、前記複数の周方向主溝のうちタイヤ幅方向の最外側に配置された一対のショルダー主溝と、前記複数の陸部のうちタイヤ幅方向の最外側に配置された一対のショルダー陸部とを定義し、少なくとも一方の前記ショルダー陸部が、前記ショルダー主溝よりも浅い溝深さを有すると共にタイヤ全周に渡って連続して延在するショルダー浅溝と、一方の端部にてタイヤ接地端に開口すると共に他方の端部にて前記ショルダー浅溝に接続する複数の第一ショルダーラグ溝と、前記ショルダー浅溝および前記第一ショルダーラグ溝に区画されて成る複数の第一ショルダーブロックと、一方の端部にて前記ショルダー主溝に接続すると共に他方の端部にて前記ショルダー浅溝に接続する複数の第二ショルダーラグ溝と、前記ショルダー浅溝および前記第二ショルダーラグ溝に区画されて成る複数の第二ショルダーブロックと、前記ショルダー浅溝の溝底に形成されると共にタイヤ全周に渡って連続して延在する細リブと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明にかかるタイヤでは、(1)ショルダー陸部が、ショルダー浅溝に接続する第一および第二のショルダーラグ溝と、ショルダー浅溝の溝底に形成されると共にタイヤ全周に渡って連続して延在する細リブとを備えるので、細リブを備えていない構成と比較して、ショルダー浅溝とショルダーラグ溝との接続位置における雪柱せん断力が増加して、タイヤのスノートラクション性能が向上する利点がある。また、(2)細リブがタイヤ全周に渡って連続して延在するので、細リブのエッジ成分により、スノー路面の走行時におけるタイヤの横滑り性能が向上し、また、細リブの遮音作用により、タイヤの騒音性能が向上する利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、この発明の実施の形態にかかるタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。
図2図2は、図1に記載したタイヤのトレッド面を示す平面図である。
図3図3は、図2に記載したショルダー陸部を示す拡大図である。
図4図4は、図3に記載したショルダー陸部の要部を示す拡大図である。
図5図5は、図3に記載したショルダー陸部を示す断面図である。
図6図6は、図3に記載したショルダー陸部の細リブを示す拡大断面図である。
図7図7は、図2に記載したミドル陸部およびセンター陸部を示す拡大図である。
図8図8は、図7に記載したミドル陸部を示す断面図である。
図9図9は、この発明の実施の形態にかかるタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
図10図10は、この発明の実施の形態にかかるタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0010】
[タイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかるタイヤ1を示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、タイヤ径方向の片側領域の断面図を示している。また、この実施の形態では、タイヤの一例として、トラック、バスなどの長距離輸送用の車両の駆動輪、総舵輪あるいは総輪に装着される重荷重用空気入りラジアルタイヤについて説明する。
【0011】
同図において、タイヤ子午線方向の断面は、タイヤ回転軸(図示省略)を含む平面でタイヤを切断したときの断面として定義される。また、タイヤ赤道面CLは、JATMAに規定されたタイヤ断面幅の中点を通りタイヤ回転軸に垂直な平面として定義される。また、タイヤ幅方向は、タイヤ回転軸に平行な方向として定義され、タイヤ径方向は、タイヤ回転軸に垂直な方向として定義される。
【0012】
タイヤ1は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16と、一対のリムクッションゴム17、17とを備える(図1参照)。
【0013】
一対のビードコア11、11は、スチールから成る1本あるいは複数本のビードワイヤを環状かつ多重に巻き廻して成り、ビード部に埋設されて左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、ローアーフィラー121およびアッパーフィラー122から成り、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を補強する。
【0014】
カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造あるいは複数枚のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチールから成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で80[deg]以上90[deg]以下のコード角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの長手方向の傾斜角として定義される)を有する。
【0015】
ベルト層14は、複数のベルトプライ141~144を積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。これらのベルトプライ141~144は、高角度ベルト141と、一対の交差ベルト142、143と、ベルトカバー144と含む。高角度ベルト141は、スチールから成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で45[deg]以上70[deg]以下のコード角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの長手方向の傾斜角として定義される。)を有する。一対の交差ベルト142、143は、スチールから成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で10[deg]以上55[deg]以下のコード角度を有する。また、一対の交差ベルト142、143は、相互に異符号のコード角度を有し、ベルトコードの長手方向を相互に交差させて積層される(いわゆるクロスプライ構造を有する)。ベルトカバー144は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトカバーコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で10[deg]以上55[deg]以下のコード角度を有する。
【0016】
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤ1のトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。一対のリムクッションゴム17、17は、左右のビードコア11、11およびカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側からタイヤ幅方向外側に延在して、ビード部のリム嵌合面を構成する。
【0017】
[トレッド面]
図2は、図1に記載したタイヤ1のトレッド面を示す平面図である。同図は、ウィンター用タイヤのトレッド面を示している。同図において、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸周りの方向をいう。また、符号Tは、タイヤ接地端であり、寸法記号TWは、タイヤ接地幅である。また、同図では、タイヤ1が略点対称なトレッド面を有するため、図中右側の領域にある構成要素の符号の一部が省略されている。
【0018】
図2に示すように、タイヤ1は、複数の周方向主溝21、22と、これらの周方向主溝21、22に区画された複数の陸部31~33とをトレッド面に備える。
【0019】
周方向主溝21、22は、タイヤ周方向に延在する溝であり、タイヤ全周に渡って連続する環状構造を有する。また、周方向主溝21、22のそれぞれが、JATMAに規定されるウェアインジケータの表示義務を有する主溝であり、6.0[mm]以上の最大幅および10[mm]以上の最大深さを有する。
【0020】
溝幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、溝開口部における対向する溝壁間の距離として測定される。切欠部あるいは面取部を溝開口部に有する構成では、溝幅方向かつ溝深さ方向に平行な断面視におけるトレッド踏面の延長線と溝壁の延長線との交点を端点として、溝幅が測定される。
【0021】
溝深さは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド踏面から溝底までの距離として測定される。また、部分的な凹凸部やサイプを溝底に有する構成では、これらを除外して溝深さが測定される。
【0022】
規定リムとは、JATMAに規定される「標準リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「MEASURING RIM」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が規定内圧での最大負荷能力の88[%]である。
【0023】
また、図2において、複数の周方向主溝21、22のうち、タイヤ幅方向の最外側にある一対の周方向主溝21、21をショルダー主溝として定義する。ショルダー主溝21は、タイヤ赤道面CLを境界とする左右の領域にてそれぞれ定義される。また、一対のショルダー主溝21、21よりもタイヤ赤道面CL側にある周方向主溝22をセンター主溝として定義する。
【0024】
図2の構成では、タイヤ赤道面CLを境界とする左右の領域のそれぞれが2本の周方向主溝21、22を有している。また、これらの周方向主溝21、22が、タイヤ赤道面CLを中心として、左右対称に配置されている。
【0025】
しかし、これに限らず、3本あるいは5本以上の周方向主溝が配置されても良いし、周方向主溝がタイヤ赤道面CLを中心として左右非対称に配置されても良い(図示省略)。また、1つの周方向主溝がタイヤ赤道面CL上に配置されても良い(図示省略)。
【0026】
陸部31~33は、周方向主溝21、22に区画されて成り、タイヤ全周に渡って延在する環状の踏面を構成する。また、図2の構成では、4本の周方向主溝21、22により、5列の陸部31~33が区画されている。また、1つの陸部33が、タイヤ赤道面CL上に配置されている。しかし、これに限らず、1つの周方向主溝がタイヤ赤道面CL上に配置されることにより、陸部がタイヤ赤道面CLから外れた位置に配置されても良い(図示省略)。
【0027】
また、図2において、複数の陸部31~33のうち、ショルダー主溝21、21に区画されたタイヤ幅方向外側の陸部31、31をショルダー陸部として定義し、タイヤ幅方向内側の陸部32、32をミドル陸部として定義する。また、ミドル陸部32、32よりもタイヤ赤道面CL側にある陸部33をセンター陸部として定義する。
【0028】
図2のような4本の周方向主溝21、22を備える構成では、一対のショルダー陸部31、31と、一対のミドル陸部32、32と、単一のセンター陸部33とが定義される。また、例えば、5本以上の周方向主溝を備える構成では、2列以上のセンター陸部が定義され(図示省略)、3本の周方向主溝を備える構成では、センター陸部が省略される(図示省略)。また、センター陸部33は、タイヤ赤道面CL上に配置されても良いし(図2参照)、タイヤ赤道面CLから外れた位置に配置されても良い(図示省略)。
【0029】
また、図2において、ショルダー陸部31の最大接地幅Wb1が、タイヤ接地幅TWに対して0.15≦Wb1/TW≦0.25の範囲にある。また、ミドル陸部32の最大接地幅Wb2が、タイヤ接地幅TWに対して0.10≦Wb2/TW≦0.15の範囲にある。また、センター陸部33の最大接地幅Wb3が、タイヤ接地幅TWに対して0.10≦Wb3/TW≦0.15の範囲にある。また、ショルダー陸部31の最大接地幅Wb1が、ミドル陸部32の最大接地幅Wb2に対して1.00≦Wb1/Wb2≦2.50の範囲にあり、好ましくは1.50≦Wb1/Wb2≦2.00の範囲にある。
【0030】
陸部の接地幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を付与したときの陸部と平板との接触面におけるタイヤ軸方向の直線距離として測定される。
【0031】
タイヤ接地幅TWは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を付与したときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の直線距離として測定される。
【0032】
タイヤ接地端Tは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を付与したときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大幅位置として定義される。
【0033】
タイヤ接地領域の全域における溝面積比が0.35以上0.40以下である。上記下限により、タイヤの耐横滑り性能が確保され、上記上限により、タイヤのスノートラクション性能が確保される。
【0034】
溝面積比は、所定領域に配置された溝面積の総和と当該領域の面積との比として定義される。溝面積は、トレッド踏面における溝の開口面積であり、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を付与したときのタイヤと平板との接触面にて、測定される。また、溝は、タイヤ接地時に開口して排水性に寄与する溝をいい、タイヤ接地時に閉塞するサイプ、カーフなどを含まない。
【0035】
例えば、図2の構成では、タイヤ1が、タイヤ赤道面CL上に中心点をもつ点対称なトレッドパターンを有している。しかし、これに限らず、タイヤ1が、タイヤ赤道面CLを中心とする線対称なトレッドパターン、タイヤ回転方向に方向性を有するトレッドパターン、あるいは、左右非対称なトレッドパターンを有しても良い(図示省略)。
【0036】
[ショルダー陸部]
図3は、図2に記載したショルダー陸部31を示す拡大図である。図4は、図3に記載したショルダー陸部31の要部を示す拡大図である。図5は、図3に記載したショルダー陸部31を示す断面図である。図6は、図3に記載したショルダー陸部31の細リブ314を示す拡大断面図である。
【0037】
図3において、ショルダー陸部31は、単一のショルダー浅溝311と、複数の第一および第二のショルダーラグ溝312A、312Bと、複数の第一および第二のショルダーブロック313A、313Bと、単一の細リブ314と、複数の貫通サイプ315A、315Bおよび複数のクローズドサイプ316A、316Bとを備える。
【0038】
ショルダー浅溝311は、タイヤ全周に渡って連続して延在する浅溝であり、ショルダー陸部31のタイヤ幅方向の中央部に配置される。具体的には、図3に示すように、ショルダー浅溝311の溝中心線(図示省略)が、ショルダー陸部31の最大接地幅Wb1の30[%]以上70[%]以下の範囲にある。また、単一のショルダー浅溝311が、ショルダー陸部31に形成されて、ショルダー陸部31をタイヤ幅方向に二分割する。
【0039】
また、図3において、ショルダー浅溝311の最大幅W11が、ショルダー陸部31の最大接地幅Wb1に対して0.15≦W11/Wb1≦0.25の範囲にあり、好ましくは0.17≦W11/Wb1≦0.19の範囲にある。また、ショルダー浅溝311の最大幅W11が、4.5[mm]≦W11の範囲にある。上記下限により、ショルダー浅溝311の溝容積が確保されて、ショルダー浅溝311とショルダーラグ溝312A、312Bとの接続位置における雪柱せん断作用が確保され、上記上限により、第一および第二のショルダーブロック313A、313Bの接地幅が確保される。
【0040】
また、図5において、ショルダー浅溝311の最大深さH11が、ショルダー主溝21の最大深さHg1よりも浅い。具体的には、ショルダー浅溝311の最大深さH11が、ショルダー主溝21の最大深さHg1に対して0.50≦H11/Hg1<1.00の範囲にあり、好ましくは0.60≦H11/Hg1≦0.80の範囲にある。また、ショルダー浅溝311の最大深さH11が10[mm]≦H11の範囲にある。上記下限により、ショルダー浅溝311の最大深さH11が確保されて、ショルダー浅溝311とショルダーラグ溝312A、312Bとの接続位置における雪柱せん断力の向上作用が確保され、上記上限により、ショルダー陸部31の剛性が確保される。図5の構成では、ショルダー浅溝311が、後述する細リブ314によりタイヤ幅方向に二分割されて、一対の溝部(図中の符号省略)が形成されている。また、これらの溝部の最大幅が略等しく、具体的には、一方の溝部の最大幅が他方の溝部の最大幅の±10[%]の範囲にある。また、これらの溝部の最大深さが略等しく、具体的には、一方の溝部の最大深さが他方の溝部の最大深さの±10[%]の範囲にある。また、ショルダー浅溝311の溝壁角度(図中の寸法記号省略)が0[deg]以上5[deg]以下の範囲にある。
【0041】
また、図5において、ショルダー浅溝311の最大深さH11が、第一および第二のショルダーラグ溝の最大深さH12(H12A、H12B)に対して1.00≦H11/H12≦2.00の範囲にあり、好ましくは1.30≦H11/H12≦1.70の範囲にある。したがって、ショルダー浅溝311の最大深さH11が第一および第二のショルダーラグ溝の最大深さH12(H12A、H12B)に対して略等しい。上記下限により、ショルダー浅溝311の最大深さH11が確保され、上記上限により、ショルダー陸部31の剛性が確保される。
【0042】
ショルダー浅溝311の最大幅W11は、細リブ314を除外した、溝開口部における対向する溝壁間の距離として測定される。
【0043】
ショルダー浅溝311の最大深さH11は、上記のようにショルダー浅溝311が細リブ314によりタイヤ幅方向に二分割されるため、二分割された溝部のそれぞれで定義される。
【0044】
第一ショルダーラグ溝312Aは、図3に示すように、一方の端部にてタイヤ接地端Tに開口すると共に他方の端部にてショルダー浅溝311に接続する。また、複数の第一ショルダーラグ溝312Aが、タイヤ周方向に所定間隔で配列される。第二ショルダーラグ溝312Bは、一方の端部にてショルダー主溝21に接続すると共に他方の端部にてショルダー浅溝311に接続する。複数の第二ショルダーラグ溝312Bが、タイヤ周方向に所定間隔で配列される。
【0045】
また、図3に示すように、第一および第二のショルダーラグ溝312A、312Bが、ショルダー浅溝311を挟んで相互に対向して配置される。具体的には、図4に示すように、第一および第二のショルダーラグ溝312A、312Bの溝中心線の延長線とショルダー浅溝311の溝中心線との交点の距離Dcが、第一ショルダーラグ溝312Aの最大幅W12Aに対して0≦Dc/W12A≦0.80の範囲にあり、好ましくは0≦Dc/W12A≦0.40の範囲にある。これにより、第一および第二のショルダーラグ溝312A、312Bのタイヤ周方向へのオーバーラップ量が確保されて、タイヤのスノートラクション性が向上する。
【0046】
また、第一および第二のショルダーラグ溝312A、312Bのタイヤ周方向に対する傾斜角θ12A、θ12Bが、70[deg]以上110[deg]以下の範囲にある。図3の構成では、第一および第二のショルダーラグ溝312A、312Bがタイヤ周方向に対して同一方向に傾斜している。また、第一ショルダーラグ溝312Aの傾斜角θ12Aが、第二ショルダーラグ溝312Bの傾斜角θ12Bに対して0[deg]≦θ12A-θ12B≦10[deg]の範囲にある。
【0047】
ショルダーラグ溝312A、312Bの傾斜角θ12A、θ12Bは、トレッド平面視にて、ショルダーラグ溝312A、312Bの左右の開口部と溝中心線との交点を通る仮想直線を作図し、この仮想直線とタイヤ周方向とのなす角度として測定される。また、切欠部あるいは面取部がラグ溝の端部に形成された構成では、これらを除外したラグ溝の本体にて仮想直線が作図される。
【0048】
また、第一および第二のショルダーラグ溝312A、312Bが、6.0[mm]以上の最大幅W12A、W12B(図3参照)および10[mm]以上の最大深さH12A、H12B(図5参照)を有する。図3の構成では、第一ショルダーラグ溝312Aの最大幅W12Aが、第二ショルダーラグ溝312Bの最大幅W12Bに対して1.00≦W12A/W12B≦2.00の関係を有する。また、図5に示すように、第一ショルダーラグ溝312Aの最大深さH12Aが、第二ショルダーラグ溝312Bの最大深さH12Bに対して1.00≦H12A/H12B≦1.50の範囲にあり、好ましくは1.00≦H12A/H12B≦1.20の範囲にある。また、第二ショルダーラグ溝312Bの最大深さH12Bが、ショルダー主溝21の最大深さHg1に対して0.50≦H12B/Hg1≦0.90の範囲にある。また、ショルダーラグ溝312A、312Bの溝壁角度が0[deg]以上5[deg]以下の範囲にある(図示省略)。
【0049】
ショルダーラグ溝312A、312Bの最大幅W12A、W12Bは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、溝開口部における対向する溝壁間の距離として測定される。切欠部あるいは面取部がラグ溝の端部に形成されて溝幅が部分的に拡幅された構成では、これらを除外したラグ溝の本体にて溝幅が測定される。
【0050】
ショルダーラグ溝312A、312Bの最大深さH12A、H12Bは、トレッド踏面から溝底までの距離として測定される。切欠部あるいは面取部がラグ溝の端部に形成されて溝深さが部分的に拡大された構成では、これらを除外したラグ溝の本体にて溝深さが測定される。
【0051】
例えば、図3および図5の構成では、第一ショルダーラグ溝312Aがタイヤ接地端T側の端部に切欠部3121を有し、また、第二ショルダーラグ溝312Bがショルダー主溝21側の端部に切欠部3121を有している。そして、第一および第二のショルダーラグ溝312A、312Bの端部の溝幅および溝深さが、これらの切欠部3121により拡大されている。また、図3において、第二ショルダーラグ溝312Bの切欠部3121のタイヤ幅方向への延在距離D12’が、ショルダー陸部31の最大接地幅Wb1に対して0.05≦D12’/Wb1≦0.15の範囲にある。
【0052】
第一ショルダーブロック313Aは、ショルダー浅溝311および第一ショルダーラグ溝312Aに区画されて成る。また、複数の第一ショルダーブロック313Aがタイヤ周方向に所定間隔で配列される。第二ショルダーブロック313Bは、ショルダー浅溝311および第二ショルダーラグ溝312Bに区画されて成る。また、複数の第二ショルダーブロック313Bがタイヤ周方向に所定間隔で配列される。したがって、ショルダー陸部31が、2列のブロック列を有する。
【0053】
細リブ314は、ショルダー浅溝311の溝底に形成された幅狭なリブであり、ショルダー浅溝311と共にタイヤ全周に渡って連続して延在する。また、図3において、タイヤ接地端Tから細リブ314の中心線までの距離D11が、ショルダー陸部31の最大接地幅Wb1に対して0.30≦D11/Wb1≦0.70の範囲にある。したがって、細リブ314がショルダー陸部31の略中央部に配置される。
【0054】
上記の構成では、(1)ショルダー陸部31が、ショルダー浅溝311に接続する第一および第二のショルダーラグ溝312A、312Bと、ショルダー浅溝311の溝底に形成されると共にタイヤ全周に渡って連続して延在する細リブ314とを備えるので、細リブを備えていない構成(図示省略)と比較して、ショルダー浅溝311とショルダーラグ溝312A、312Bとの接続位置における雪柱せん断力が増加して、タイヤのスノートラクション性能が向上する。また、(2)細リブ314がタイヤ全周に渡って連続して延在するので、細リブ314のエッジ成分により、スノー路面の走行時におけるタイヤの横滑り性能が向上し、また、細リブ314の遮音作用により、タイヤの騒音性能が向上する。
【0055】
また、図3において、細リブ314の最大幅W14が、ショルダー浅溝311の最大幅W11に対して0.20≦W14/W11≦0.60の範囲にあり、好ましくは0.30≦W14/W11≦0.45の範囲にある。上記下限により、細リブ314の剛性が確保されて、スノー路面での横滑り性能の向上作用が確保される。上記上限により、ショルダー浅溝311の溝容積が確保されて、ショルダー浅溝311とショルダーラグ溝312A、312Bとの接続位置における雪柱せん断作用が確保される。
【0056】
細リブ314の最大幅W14は、ショルダー浅溝311の溝幅方向の断面視(図5参照)にて、トレッド踏面からショルダー浅溝311の最大深さH11の50[%]までの領域における最大幅として測定される。
【0057】
また、図6において、ショルダー陸部31の踏面から細リブ314の頂部までの最大距離H14が、ショルダー浅溝311の最大深さH11に対して0≦H14/H11≦0.30の範囲にあり、好ましくは0≦H14/H11≦0.10の範囲にある。また、最大距離H14が、H14≦0.5[mm]の範囲にあることが好ましい。上記上限により、細リブ314によるスノー路面でのエッジ作用および遮音作用が確保される。
【0058】
また、図6に示すように、細リブ314の頂部が、ショルダー陸部31の踏面に平行な頂面(図中の符号省略)を有する。そして、この頂面の幅W14’が、細リブ314の最大幅W14に対して0.05≦W14’/W14≦0.20の範囲にあり、好ましくは0.12≦W14’/W14≦0.14の範囲にある。頂面の最大幅W14’が、0.5[mm]≦W14’≦1.0[mm]の範囲にある。上記下限により、細リブ314によるスノー路面でのエッジ作用および遮音作用が確保され、上記上限により、ショルダー浅溝311の溝容積が確保される。
【0059】
例えば、図3の構成では、図6に示すように、細リブ314が、細リブ314の全周に渡って延在する面取部3141を頂部に有している。また、面取部3141が、細リブ314のタイヤ接地端T側のエッジ部のみに形成される。また、ショルダー陸部31の踏面に対する面取部3141の傾斜角αが、10[deg]≦α≦60[deg]の範囲にあり、好ましくは30[deg]≦α≦50[deg]の範囲にある。また、細リブ314が、タイヤ赤道面CL側のエッジ部に、上記したショルダー陸部31の踏面に平行な頂面を有している。しかし、これに限らず、細リブ314が、左右のエッジ部に面取部3141を備え、その中央部に上記した平行な頂面を有しても良い。また、図6において、細リブ314の側壁角度(図中の寸法記号省略)が0[deg]以上5[deg]以下の範囲にある。
【0060】
貫通サイプ315A、315Bおよびクローズドサイプ316A、316Bは、トレッド踏面に形成された切り込みであり、1.5[mm]未満の最大幅および2.0[mm]以上の最大深さを有することにより、タイヤ接地時に閉塞する。図3の構成では、第一および第二のショルダーブロック313A、313Bのそれぞれが、単一の貫通サイプ315A、315Bと一対のクローズドサイプ316A、316A;316B、316Bとをそれぞれ備える。また、貫通サイプ315A;315Bが、ショルダーブロック313A;313Bのタイヤ周方向の中央部に配置されて、ショルダーブロック313A;313Bを一対の小ブロック部(図中の符号省略)に区画し、これらの小ブロックのそれぞれが単一のクローズドサイプ316A;316Bを有する。また、貫通サイプ315A、315Bおよび第一ショルダーブロック313Aのクローズドサイプ316Aがストレート形状を有し、第二ショルダーブロック313Bのクローズドサイプ316Bがステップ形状を有する。
【0061】
サイプ幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド踏面におけるサイプの開口幅として測定される。
【0062】
サイプ深さは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド踏面からサイプ底までの距離として測定される。また、サイプが部分的な底上部あるいは凹凸部をサイプ底に有する構成では、これらを除外してサイプ深さが測定される。
【0063】
[ミドル陸部およびセンター陸部]
図7は、図2に記載したミドル陸部32およびセンター陸部33を示す拡大図である。図8は、図7に記載したミドル陸部32を示す断面図である。
【0064】
図7に示すように、ミドル陸部32は、複数のミドルラグ溝321と、複数のミドルブロック322と、細溝323および細リブ324と、複数の貫通サイプ325および複数のクローズドサイプ326とを備える。
【0065】
ミドルラグ溝321は、ミドル陸部32をタイヤ幅方向に貫通して、ショルダー主溝21およびセンター主溝22に接続する。また、複数のミドルラグ溝321がタイヤ周方向に所定間隔で配列される。また、ミドルラグ溝321のタイヤ周方向に対する傾斜角θ21が、70[deg]以上80[deg]以下の範囲にある。また、図2に示すように、ミドルラグ溝321が、ショルダー陸部31の第二ショルダーラグ溝312Bに対してタイヤ周方向で逆方向に傾斜する。また、ミドル陸部32のミドルラグ溝321とショルダー陸部31の第二ショルダーラグ溝312Bとが、ショルダー主溝21に沿ってタイヤ周方向に千鳥状に配列される。これにより、スノートラクション作用が高められている。
【0066】
また、ミドルラグ溝321が、6.0[mm]以上の最大幅W21(図7参照)および10[mm]以上の最大深さH21(図8参照)を有する。また、図8において、ミドルラグ溝321の最大深さH21が、ショルダー主溝21の最大深さHg1に対して0.50≦H21/Hg1≦0.90の範囲にある。また、ミドルラグ溝321の溝壁角度が0[deg]以上5[deg]以下の範囲にある(図示省略)。また、図7の構成では、図8に示すように、ミドルラグ溝321が両端部に切欠部3211を有している。そして、ミドルラグ溝321の両端部の溝幅および溝深さが、これらの切欠部3211により拡大されている。また、ミドルラグ溝321が、溝底にサイプ(図中の符号省略)を有している。
【0067】
ミドルブロック322は、ミドルラグ溝321に区画されて成る。また、複数のミドルブロック322がタイヤ周方向に一列に配列される。
【0068】
細溝323および細リブ324は、図7に示すように、ミドルブロック322のタイヤ赤道面CL側のエッジ部に形成される。具体的には、細溝323が、ミドルブロック322のタイヤ赤道面CL側、すなわちセンター主溝22側のエッジ部に沿って延在して、ミドルブロック322をタイヤ周方向に貫通する。また、細リブ324が、細溝323により区画されて成り、ミドルブロック322のタイヤ赤道面CL側のエッジ部に沿って延在する。また、一組の細溝323および細リブ324が、複数のミドルブロック322のそれぞれに形成される。
【0069】
また、細溝323が、1.0[mm]以上3.0[mm]以下の最大幅W23(図7参照)および10[mm]以上20[mm]以下の最大深さH23(図8参照)を有する。また、図8において、細溝323の最大深さH23が、ミドルラグ溝321の最大深さH21に対して0.80≦H23/H21≦1.20の範囲にあり、センター主溝22の最大深さHg2に対して0.50≦H23/Hg2≦0.90の範囲にある。
【0070】
また、図7において、細リブ324の最大幅W24が、センター主溝22の最大幅Wg2に対して0.10≦W24/Wg2≦0.20の範囲にある。上記下限により、細リブ324の剛性が確保され、上記上限により、センター主溝22の溝容積が確保される。また、図8に示において、ミドル陸部32の踏面から細リブ324の頂部までの最大距離(図中の寸法記号省略)が、細溝323の最大深さH23に対して0[%]以上10[%]以下の範囲にある。また、細リブ324が、細リブ324の全周に渡って延在する面取部(図中の符号省略)を頂部に有する。また、面取部が、細リブ324のセンター主溝22側のエッジ部のみに形成される。また、ミドル陸部32の踏面に対する面取部の傾斜角(図中の寸法記号省略)が、0[deg]以上60[deg]以下の範囲にある。
【0071】
上記の構成では、ミドルブロック322がタイヤ赤道面CL側のエッジ部に細リブ324を有することにより、センター主溝22における雪柱せん断力が増加する。これにより、タイヤのスノートラクション性能が向上する。
【0072】
貫通サイプ325およびクローズドサイプ326は、トレッド踏面に形成された切り込みであり、1.5[mm]未満の最大幅および2.0[mm]以上の最大深さを有することにより、タイヤ接地時に閉塞する。図7の構成では、ミドルブロック322のそれぞれが、単一の貫通サイプ325と一対のクローズドサイプ326、326とをそれぞれ備える。また、貫通サイプ325が、ミドルブロック322のタイヤ周方向の中央部に配置されて、ミドルブロック322を一対の小ブロック部(図中の符号省略)に区画し、これらの小ブロックのそれぞれが単一のクローズドサイプ326を有する。また、貫通サイプ325がストレート形状を有し、クローズドサイプ326がステップ形状を有する。
【0073】
センター陸部33は、図2に示すように、複数のセンターラグ溝331と、複数のセンターブロック332とを備える。
【0074】
センターラグ溝331は、センター陸部33をタイヤ幅方向に貫通して、左右のセンター主溝22、22に接続する。また、複数のセンターラグ溝331がタイヤ周方向に所定間隔で配列される。また、センターラグ溝331のタイヤ周方向に対する傾斜角(図中の寸法記号省略)が、70[deg]以上80[deg]以下の範囲にある。また、図2に示すように、センターラグ溝331が、ミドル陸部32のミドルラグ溝321に対してタイヤ周方向で逆方向に傾斜する。また、センター陸部33のセンターラグ溝331とミドル陸部32のミドルラグ溝321が、センター主溝22に沿ってタイヤ周方向に千鳥状に配列される。これにより、スノートラクション作用が高められている。また、複数のセンターラグ溝331がタイヤ周方向に所定間隔で配列される。センターラグ溝331が、6.0[mm]以上の最大幅および10[mm]以上の最大深さ(図中の寸法記号省略)を有する。
【0075】
センターブロック332は、センターラグ溝331に区画されて成る。また、複数のセンターブロック332がタイヤ周方向に一列に配列される。
【0076】
[効果]
以上説明したように、このタイヤ1は、複数の周方向主溝21、22と、周方向主溝21、22に区画されて成る複数の陸部31~33とを備える(図2参照)。また、少なくとも一方のショルダー陸部31が、ショルダー主溝21よりも浅い溝深さを有すると共にタイヤ全周に渡って連続して延在するショルダー浅溝311と、一方の端部にてタイヤ接地端Tに開口すると共に他方の端部にてショルダー浅溝311に接続する複数の第一ショルダーラグ溝312Aと、ショルダー浅溝311および第一ショルダーラグ溝312Aに区画されて成る複数の第一ショルダーブロック313Aと、一方の端部にてショルダー主溝21に接続すると共に他方の端部にてショルダー浅溝311に接続する複数の第二ショルダーラグ溝312Bと、ショルダー浅溝311および第二ショルダーラグ溝312Bに区画されて成る複数の第二ショルダーブロック313Bと、ショルダー浅溝311の溝底に形成されると共にタイヤ全周に渡って連続して延在する細リブ314と、を備える(図3参照)。
【0077】
かかる構成では、(1)ショルダー陸部31が、ショルダー浅溝311に接続する第一および第二のショルダーラグ溝312A、312Bと、ショルダー浅溝311の溝底に形成されると共にタイヤ全周に渡って連続して延在する細リブ314とを備えるので、細リブを備えていない構成(図示省略)と比較して、ショルダー浅溝311とショルダーラグ溝312A、312Bとの接続位置における雪柱せん断力が増加して、タイヤのスノートラクション性能が向上する利点がある。また、(2)細リブ314がタイヤ全周に渡って連続して延在するので、細リブ314のエッジ成分により、スノー路面の走行時におけるタイヤの横滑り性能が向上し、また、細リブ314の遮音作用により、タイヤの騒音性能が向上する利点がある。
【0078】
また、このタイヤ1では、ショルダー浅溝311の最大深さH11が、ショルダー主溝21の最大深さHg1に対して0.50≦H11/Hg1<1.00の範囲にある(図5参照)。上記下限により、ショルダー浅溝311の最大深さH11が確保されて、ショルダー浅溝311とショルダーラグ溝312A、312Bとの接続位置における雪柱せん断力の向上作用が確保され、上記上限により、ショルダー陸部31の剛性が確保される利点がある。
【0079】
また、このタイヤ1では、ショルダー陸部31の踏面から細リブ314の頂部までの最大距離H14が、ショルダー浅溝311の最大深さH11に対して0≦H14/H11≦0.10の範囲にある(図6参照)。上記上限により、細リブ314によるスノー路面でのエッジ作用および遮音作用が確保される利点がある。
【0080】
また、このタイヤ1では、タイヤ接地端Tから細リブ314の中心線までの距離D11が、ショルダー陸部31の最大接地幅Wb1に対して0.30≦D11/Wb1≦0.70の範囲にある。これにより、第一および第二のショルダーブロック313A、313Bの接地幅が確保される利点がある。
【0081】
また、このタイヤ1では、第一および第二のショルダーラグ溝312A、312Bの溝中心線の延長線とショルダー浅溝311の溝中心線との交点の距離Dc(図4参照)が、第一ショルダーラグ溝312Aの最大幅W12Aに対して0≦Dc/W12A≦0.80の範囲にある。これにより、第一および第二のショルダーラグ溝312A、312Bのタイヤ周方向へのオーバーラップ量が確保されて、タイヤのスノートラクション性が向上する利点がある。
【0082】
また、このタイヤ1では、細リブ314の最大幅W14が、ショルダー浅溝311の最大幅W11に対して0.20≦W14/W11≦0.60の範囲にある(図3参照)。上記下限により、細リブ314の剛性が確保されて、スノー路面での横滑り性能の向上作用が確保され、上記上限により、ショルダー浅溝311の溝容積が確保されて、ショルダー浅溝311とショルダーラグ溝312A、312Bとの接続位置における雪柱せん断作用が確保される利点がある。
【0083】
また、このタイヤ1では、ショルダー浅溝311の最大幅W11が、ショルダー陸部31の最大接地幅Wb1に対して0.17≦W11/Wb1≦0.19の範囲にある。上記下限により、ショルダー浅溝311の溝容積が確保されて、ショルダー浅溝311とショルダーラグ溝312A、312Bとの接続位置における雪柱せん断作用が確保され、上記上限により、第一および第二のショルダーブロック313A、313Bの接地幅が確保される利点がある。
【0084】
また、このタイヤ1では、細リブ314の頂部が、ショルダー陸部31の踏面に平行な頂面を有し、且つ、頂面の最大幅W14’が、細リブ314の最大幅W14に対して0.05≦W14’/W14≦0.20の範囲にある(図6参照)。上記下限により、細リブ314の頂面の最大幅W14’が確保されて、細リブ314によるスノー路面でのエッジ作用および遮音作用が確保され、上記上限により、ショルダー浅溝311の溝容積が確保されて、ショルダー浅溝311とショルダーラグ溝312A、312Bとの接続位置における雪柱せん断作用が確保される利点がある。
【0085】
また、このタイヤ1では、細リブ314が、タイヤ赤道面CL側のエッジ部に上記平行な頂面を有する(図2および図6参照)。これにより、細リブ314によるスノー路面でのエッジ作用および遮音作用が向上する利点がある。
【0086】
また、このタイヤ1では、ショルダー浅溝311の最大深さH11が、第一および第二のショルダーラグ溝312A、312Bの最大深さH12(H12A、H12B)に対して1.00≦H11/H12≦2.00の範囲にある(図5参照)。上記下限により、ショルダー浅溝311の最大深さH11が確保され、上記上限により、ショルダー陸部31の剛性が確保される利点がある。
【0087】
また、このタイヤ1では、細リブ314が、細リブ314の全周に渡って延在する面取部3141(図6参照)を頂部に有し、且つ、ショルダー陸部31の踏面に対する面取部の傾斜角αが、10[deg]≦α≦60[deg]の範囲にある。かかる構成では、細リブ314の面取部3141により、ショルダー浅溝311の溝容積が確保される利点がある。
【0088】
また、このタイヤ1では、ミドル陸部32が、ミドル陸部32を貫通する複数のミドルラグ溝321と、ミドルラグ溝321に区画された複数のミドルブロック322とを備える(図2参照)。また、ミドルブロック322が、ミドルブロック322のタイヤ赤道面CL側のエッジ部に沿って延在する細溝323と、細溝323に区画されて成る細リブ324とを有する(図7参照)。かかる構成では、ミドルブロック322がタイヤ赤道面CL側のエッジ部に細リブ324を有することにより、センター主溝22における雪柱せん断力が増加する。これにより、タイヤのスノートラクション性能が向上する利点がある。
【0089】
[適用対象]
この実施の形態では、上記のように、タイヤの一例として重荷重用空気入りタイヤについて説明した。しかし、これに限らず、この実施の形態に記載された構成は、他のタイヤに対しても、当業者自明の範囲内にて任意に適用できる。他のタイヤとしては、例えば、エアレスタイヤ、ソリッドタイヤなどが挙げられる。
【実施例
【0090】
図9および図10は、この発明の実施の形態にかかるタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【0091】
この性能試験では、複数種類の試験タイヤについて、(1)騒音性能、(2)スノートラクション性能および(3)耐横滑り性能に関する評価が行われた。また、タイヤサイズ315/70R22.5の試験タイヤがリムサイズ22.5×9.00のリムに組み付けられ、この試験タイヤに900[kPa]の内圧およびJATMAの規定荷重が付与される。また、試験タイヤが、試験車両である2-D4トラクターの総輪に装着される。
【0092】
(1)騒音性能に関する評価では、ECE(Economic Commission for Europe )のR117-2(Regulation No.117 Revision 2)に準拠した試験条件下にて、車両の通過騒音(車外騒音)が測定される。そして、この測定結果に基づいて、比較例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、その数値が大きいほど好ましい。
【0093】
(2)スノートラクション性能に関する評価は、タイヤ全周にかかるタイヤ周方向に対するスノートラクションインデックスSTIが算出される。そして、この測定結果に基づいて、比較例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、その数値が大きいほど好ましい。
【0094】
スノートラクションインデックスSTIは、SAE(Society of Automotive Engineers)にて提案されたユニロイヤル社の実験式であり、以下の数式(1)により定義される。同式において、Pgは、溝密度[1/mm]であり、タイヤ接地面におけるタイヤ周方向に投影したすべての溝(サイプを除くすべての溝)の溝長さ[mm]と、タイヤ接地面積(タイヤ接地幅とタイヤ周長との積)[mm^2]との比として算出される。また、ρsは、サイプ密度[1/mm]であり、タイヤ接地面におけるタイヤ周方向に投影したすべてのサイプのサイプ長さ[mm]と、タイヤ接地面積[mm^2]との比として算出される。また、Dgは、タイヤ接地面におけるタイヤ周方向に投影したすべての溝の溝深さ[mm]の平均値である。
【0095】
STI=-6.8+2202×Pg+672×ρs+7.6×Dg ・・・(1)
【0096】
(3)耐横滑り性能に関する評価は、試験車両が規定のスノー試験路を走行し、専門ドライバーが制駆動および横滑りについて官能評価を行う。そして、この測定結果に基づいて比較例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど好ましい。
【0097】
実施例1の試験タイヤは、図1および図2の構成において、ショルダー陸部31がショルダー浅溝311に細リブ314を備え、一方で、ミドル陸部32が細溝323および細リブ324を備えていない。また、タイヤ接地幅TWが268[mm]であり、ショルダー陸部31の最大接地幅Wb1が57.6[mm]であり、ミドル陸部32の最大接地幅Wb2が30.4[mm]であり、センター陸部33の最大接地幅Wb3が37.8[mm]である。また、ショルダー主溝21およびセンター主溝22の最大深さHg1、Hg2が20.6[mm]である。また、ショルダー浅溝311の最大幅W11が9.1[mm]であり、最大深さH11が12.6[mm]である。また、ショルダーラグ溝312A、312Bの最大幅W12A、W12Bが6.9[mm]であり、最大深さH12A、H12Bが12.6[mm]である。また、距離D11が27.5[mm]である。
【0098】
比較例の試験タイヤは、実施例1の試験タイヤにおいて、ショルダー陸部31がショルダー浅溝311に細リブ314を備えていない。
【0099】
試験結果が示すように、実施例の試験タイヤでは、タイヤの騒音性能、スノートラクション性能および耐横滑り性能が両立することが分かる。
【符号の説明】
【0100】
1 タイヤ;11 ビードコア;12 ビードフィラー;121 ローアーフィラー;122 アッパーフィラー;13 カーカス層;14 ベルト層;141 高角度ベルト;142、143 交差ベルト;144 ベルトカバー;15 トレッドゴム;16 サイドウォールゴム;17 リムクッションゴム;21 ショルダー主溝;22 センター主溝;31 ショルダー陸部;311 ショルダー浅溝;312A、312B ショルダーラグ溝;3121 切欠部;313A、313B ショルダーブロック;314 細リブ;3141 面取部;315A 貫通サイプ;316A、316B クローズドサイプ;32 ミドル陸部;321 ミドルラグ溝;3211 切欠部;322 ミドルブロック;323 細溝;324 細リブ;325 貫通サイプ;326 クローズドサイプ;33 センター陸部;331 センターラグ溝;332 センターブロック
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図10