(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】インバータ用平滑回路、および、航空機用のインバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241218BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H05K7/20 F
(21)【出願番号】P 2020176151
(22)【出願日】2020-10-20
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】忽那 真志
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2018/198290(JP,A1)
【文献】特開2020-057507(JP,A)
【文献】特開2010-110065(JP,A)
【文献】特開2016-062953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行平板と、
行列状に配列されて前記平行平板に実装される複数のコンデンサと、
前記平行平板の法線方向に沿って見て前記複数のコンデンサの実装領域と重なる領域において、前記平行平板と筐体の間に介在して設けられる熱伝導シートと、
を備え、
前記複数のコンデンサが、行方向および列方向で、隣り合うコンデンサの隣り合う端子が同じ極性となるように、配列されており、
前記平行平板と半導体モジュールとが接続される接続部分の近傍領域に、熱伝導率が相対的に大きいシート片が配設される、
ことを特徴とする、インバータ用平滑回路。
【請求項2】
前記平行平板は、ラミネートブスバー又は厚銅基板で構成され
ることを特徴とする、
請求項1に記載のインバータ用平滑回路。
【請求項3】
前記平行平板は、ラミネートブスバー又は厚銅基板で構成さ
れ、
前記複数のコンデンサが互いに同種のコンデンサであり、
周囲を他のコンデンサに囲まれているコンデンサが実装されている領域と対応する領域に、熱伝導率が相対的に大きいシート片が配設される、
ことを特徴とする、
請求項1に記載のインバータ用平滑回路。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のインバータ用平滑回路、
を備えることを特徴とする、航空機用のインバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ用の平滑回路に関し、特に、航空機用のインバータに好適な平滑回路およびこれを備える航空機用のインバータに関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、インバータは、交流電源から与えられた交流電力を整流して直流電力を生成する整流回路、生成された直流電力を平滑する平滑回路、平滑された直流電力をスイッチングにより交流電力に変換する逆変換回路、などを含んで構成される。
【0003】
インバータには、必要に応じて様々な態様での熱対策が講じられる。例えば特許文献1には、半導体モジュールをヒートシンクに取り付け、ヒートシンクに設けられているフィンにファンから送られる外気をあてることで、半導体モジュールで発生した熱を放熱する構成が開示されている。またここでは、平滑用のコンデンサがヒートシンクを挟んでファンと逆側の位置に配置されており、ファンから送られる外気がヒートシンクの下流側でコンデンサにあたることで、コンデンサの放熱も促されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、航空機の推進用ファンモータを電動化する技術の開発が進められている。推進用ファンモータの電動化にあたっては、これを駆動するためのインバータが必要となる。
【0006】
航空機用のインバータは、例えば車両用のインバータと比べて流れる電流量が格段に大きいため、平滑用のコンデンサで発生する損失も大きい。したがって、特許文献1のように、半導体モジュールを冷却するためのファンで付随的にコンデンサも冷却する、という程度の熱対策では十分とはいえない。
【0007】
そこで、航空機用のインバータにおける平滑用のコンデンサの熱対策として、コンデンサが実装される平行平板と筐体との間に、TIM(Thermal Interface Material)からなる熱伝導シートを配設することが考えられる。この構成によると、コンデンサおよび平行平板で発生した熱を速やかに筐体に移動させて、外部に放熱させることが可能となる。
【0008】
しかしながら、航空機用のインバータにおいては、熱伝導シートを用いた熱対策を採用するにあたって大きな問題が存在する。すなわち、航空機に搭載されるあらゆる部品には軽量化が強く求められるところ、推進用ファンモータを駆動するためのインバータもその例外ではなく、グラム単位の軽量化が強く求められる。ところが、平滑用のコンデンサの熱対策のために熱伝導シートを設ける場合、コンデンサの実装領域を全面的にカバーするようなサイズの熱伝導シートが必要となり、そのサイズに応じた質量増加が避けられない。特に、航空機用のインバータでは、車両用のインバータなどと比べて、必要とされるコンデンサ容量が桁違いに大きいため、実装されるコンデンサの個数も多い。すなわち、一群のコンデンサの実装領域も広い。このため、必要な熱伝導シートのサイズ、ひいては、熱伝導シートが設けられることに伴う質量増加分が大きくなってしまう。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、質量増加を抑えつつも十分な冷却性能を有するインバータ用平滑回路の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0011】
すなわち、本発明は、インバータ用平滑回路であって、平行平板と、行列状に配列されて前記平行平板に実装される複数のコンデンサと、前記平行平板の法線方向に沿って見て前記複数のコンデンサの実装領域と重なる領域において、前記平行平板と筐体の間に介在して設けられる熱伝導シートと、を備え、前記複数のコンデンサが、行方向および列方向で、隣り合うコンデンサの隣り合う端子が同じ極性となるように、配列されている、ことを基本構成とする。
【0012】
例えば、複数のコンデンサの全てが同じ姿勢で行列状に配列される場合、
図7に例示されるように、行方向あるいは列方向のいずれか一つの方向(
図7の例では、列方向)に隣り合うコンデンサ9の隣り合う端子91が逆極性となる。この場合、該方向について、隣り合うコンデンサ9の端子91の間に、異極端子間の絶縁を確保するための所定の絶縁距離d1以上の離間距離を設ける必要がある。これに対し、上記の構成では、複数のコンデンサが、行方向および列方向の両方向で、隣り合うコンデンサの隣り合う端子が同じ極性となるように配列される。この構成によると、行方向および列方向のいずれについても、隣り合うコンデンサの端子の間にこのような絶縁距離d1以上の離間距離を設ける必要がなく、同極端子間の絶縁を確保するための所定の絶縁距離d2以上の離間距離を設ければ十分である(いうまでもなく、「d1>d2」である)。したがって、複数のコンデンサの密集度を高めることが可能となり、複数のコンデンサの実装領域を小さく抑えることができる。これによって、熱伝導シートのサイズ、ひいては、熱伝導シートが設けられることに伴う質量増加分を小さく抑えることが可能となる。したがって、質量増加を抑えつつも十分な冷却性能を実現することができる。
【0013】
そして、上記基本構成において、前記平行平板と半導体モジュールとが接続される接続部分の近傍領域に、熱伝導率が相対的に大きいシート片が配設される、ことを特徴とする。
【0014】
半導体モジュールは、コンデンサに比べて発熱量が大きくなる傾向があるため、半導体モジュールの近傍は、これからの熱を受けて昇温しやすい。また、半導体モジュールと平行平板の接続部分に交流電流が流れる場合、そこに交流電流の実効値に応じた損失が発生するため、該接続部分およびその近傍は昇温しやすい。上記の構成によると、平行平板と半導体モジュールとが接続される接続部分の近傍領域に、熱伝導率が相対的に大きいシート片が配設されるので、該近傍領域で発生した熱を効果的に放熱することができる。
【0015】
本発明は上記構成に加えて、平行平板がラミネートブスバー又は厚銅基板で構成されることを特徴とする。
【0016】
或いは、本発明は上記構成に加えて、平行平板がラミネートブスバー又は厚銅基板で構成されるとともに、前記複数のコンデンサが互いに同種のコンデンサであり、周囲を他のコンデンサに囲まれているコンデンサが実装されている領域と対応する領域に、熱伝導率が相対的に大きいシート片が配設される、ことを特徴とする。
【0017】
上記の通り、複数のコンデンサが、行方向および列方向の両方向で、隣り合うコンデンサの隣り合う端子が同じ極性となるように配列されることで、複数のコンデンサの密集度を高めることが可能となるところ、複数のコンデンサの密集度が高まると、周囲を他のコンデンサに囲まれているコンデンサで発生した熱が周囲に放熱されにくくなる。上記の構成によると、このようなコンデンサが実装されている領域と対応する領域に、熱伝導率が相対的に大きいシート片が配設されるので、このようなコンデンサで発生した熱を効果的に放熱することが可能となる。
【0018】
好ましくは、前記インバータ用平滑回路において、前記熱伝導シートが、熱伝導率が異なる複数のシート片を含んで構成されており、発熱量が相対的に大きい領域に、熱伝導率が相対的に大きいシート片が配設される、ことを特徴とする。
熱伝導シートが、熱伝導フィラーの含有率などによって熱伝導率が規定されるものである場合、熱伝導率が高いものほど質量が大きくなる。上記の構成においては、実装領域と重なる領域のうち、相対的に発熱量が小さい領域には、相対的に熱伝導率が小さいシート片が配設されるので、例えば、実装領域と重なる領域の全体に、相対的に発熱量が大きい領域を想定した熱伝導率の熱伝導シートが一律に配設される場合と比べて、熱伝導シートの総質量を抑えることができる。また、各領域の発熱量に応じて熱伝導率が異なる複数のシート片が使い分けられるので、発熱量が大きい領域ほど筐体に熱が移動しやすくなり、平行平板の面内における発熱量のムラが打ち消されて、平行平板の面内温度の均一性が高まる。平行平板の面内温度の均一性が高まることによって、ここに実装されている複数のコンデンサの寿命を均一化することが可能となり、製品の信頼性を向上させることができる。
【0019】
好ましくは、前記インバータ用平滑回路において、前記複数のシート片の各々の熱伝導率が、該シート片が配設される領域の発熱量に基づいて規定されている、ことを特徴とする。
【0020】
この構成によると、平行平板の面内における発熱量のムラが適切に打ち消されるので、平行平板の面内温度の均一性が十分に高まる。
【0021】
また、本発明は、前記インバータ用平滑回路を備えることを特徴とする航空機用のインバータも対象としている。
【0022】
航空機用のインバータには、高い冷却性能が必要とされる一方で、軽量化も強く求められるところ、上記のインバータ用平滑回路では、質量増加を抑えつつも十分な冷却性能が実現されているので、これら両方の要請に応じることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、質量増加を抑えつつも十分な冷却性能を有するインバータ用平滑回路を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態に係る平滑回路を備えるインバータのブロック図。
【
図5】複数のコンデンサの配列態様を説明するための図。
【
図6】熱伝導シートを配設する領域を発熱量に応じて区画する態様を説明するための図。
【
図7】比較例としての複数のコンデンサの配列態様を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
<平滑回路の構成>
実施形態に係る平滑回路の構成について、
図1~
図4を参照しながら説明する。
図1は、平滑回路2が設けられるインバータINVのブロック図である。
図2、
図3、および、
図4は、それぞれ、平滑回路2の斜視図、分解図、および、平面図である。
【0027】
平滑回路2はインバータ用平滑回路であり、航空機用のインバータINV、具体的には例えば、航空機の推進用ファンモータMを駆動するためのインバータINVに、搭載される。
図1に示されるように、このインバータINVは、整流回路1、平滑回路2、逆変換回路3を含んで構成され、これら各部1~3が筐体4に収容されている。整流回路1は交流電源ACと接続されており、交流電源ACから与えられた交流電力を整流して直流電力を生成して平滑回路2に出力する。平滑回路2は、整流回路1から与えられた直流電力を平滑して逆変換回路3に与える。逆変換回路3は、スイッチング素子などを含んで構成され、平滑回路2から与えられた直流電力をスイッチングにより交流電力に変換し、これを航空機の推進用ファンモータMに出力する。インバータINVの構成は周知であるため、詳細な説明は省略する。
【0028】
平滑回路2は、
図2~
図4に示されるように、平行平板21と、複数のコンデンサ(平滑コンデンサ)22と、熱伝導シート23と、を備える。
【0029】
(平行平板21)
平行平板21は、例えば、大電流に対応可能なラミネートブスバーにより構成される。平行平板21は、平面視において略矩形状を呈しており、対向する一対の端辺のうちの一方の端辺側には、整流回路1が接続される接続領域(第1接続領域)21aが設けられ、他方側の端辺側には、逆変換回路3が接続される接続領域(第2接続領域)21bが設けられる。ただし、第2接続領域21bは、複数の接続片211が延出して設けられることによって全体として櫛歯状を呈しており、各接続片211に、逆変換回路3の構成要素であるIGBTなどの半導体モジュール31が接続される。各接続領域21a,21bを除く領域が、複数のコンデンサ22の実装領域21cであり、ここに複数のコンデンサ22が実装される。
【0030】
(コンデンサ22)
複数のコンデンサ22は、互いに同種のコンデンサであり、例えば、プリント基板実装用のフィルムコンデンサにより構成される。
図4に示されるように、コンデンサ22の下面には、一対の端子(端子電極)221が1組以上(図の例では2組)設けられており、一対の端子221のうちの一方が高圧側に接続され、他方が低圧側に接続される。両端子221を区別する場合は、高圧側に接続されて正極側となる端子221を「正端子221a」と呼び、低圧側に接続されて負極側となる端子221を「負端子221b」と呼ぶ。
【0031】
ここで、複数のコンデンサ22の配列態様について、
図2~
図4に加え、
図5を参照しながらさらに詳細に説明する。
図5は、該配列態様を説明するための図である。
【0032】
いま、平行平板21の面内において各接続領域21a,21bの延在方向と平行な方向を行方向とし、平行平板21の面内において行方向と直交する方向を列方向とすると、複数のコンデンサ22は、行方向および列方向に沿って行列状に配置されて平行平板21に実装される。
【0033】
また、各コンデンサ22は、負端子221bから正端子221aに向かう軸方向Tを列方向に沿わせるとともに負端子221bを第1接続領域21aの側に向けるような姿勢(第1姿勢)P1、あるいは、これと逆の姿勢、すなわち、軸方向Tを列方向に沿わせるとともに正端子221aを第1接続領域21aの側に向けるような姿勢(第2姿勢)P2で配置されるところ、行方向について隣り合うコンデンサ22同士は、互いに同じ姿勢とされ、列方向について隣り合うコンデンサ22同士は、互いに逆の姿勢とされる。各コンデンサ22がこのような姿勢とされて配列されることで、複数のコンデンサ22が、行方向および列方向の両方向で、隣り合うコンデンサ22の隣り合う端子221が同じ極性となるように配列されることになる。
【0034】
このような配列態様によると、行方向および列方向のいずれについても、隣り合うコンデンサ22の間に、異極端子間の絶縁を確保するための所定の絶縁距離d1(
図7参照)以上の離間距離を設ける必要がなく、同極端子間の絶縁を確保するための所定の絶縁距離d2以上の離間距離を設ければ十分である(いうまでもなく、「d1>d2」である)。したがって、複数のコンデンサ22の密集度を高めることが可能となり、複数のコンデンサ22を実装するために必要な実装領域21cの面積を小さく抑えることができる。
【0035】
(熱伝導シート23)
再び
図2~
図4を参照する。熱伝導シート23は、
図3に示されるように、平行平板21の法線方向に沿って見て実装領域21cと重なる領域において、平行平板21とこれが収容される筐体4(具体的には、筐体4の底面41)の間に介在して設けられる。具体的には、熱伝導シート23は、平行平板21と筐体4の底面41との間に配設され、上面の全体において平行平板21と接触するとともに、下面の全体において底面41と接触して設けられる。平行平板21と筐体4の間に熱伝導シート23が設けられることによって、コンデンサ22や平行平板21で発生した熱が、速やかに筐体4に移動する。筐体4は、熱伝導率が十分に高い材料(例えばアルミニウム)により形成されており、筐体4に移動した熱は速やかに外部に放熱される。
【0036】
熱伝導シート23は、TIM(Thermal Interface Material)からなる。TIMは、例えば、シリコーンポリマーなどの絶縁性基材に熱伝導性の添加剤(フィラー)を混合した物質であり、添加剤の含有量が多くなるほど、熱伝導率が高くなる。添加剤としては、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、などが用いられる。
【0037】
熱伝導シート23は、複数枚のシート片231から構成される。複数枚のシート片231の中には、熱伝導率が互いに異なるものが含まれており、発熱量が相対的に大きい領域に、熱伝導率が相対的に大きいシート片231が配設され、発熱量が相対的に小さい領域に、熱伝導率が相対的に小さいシート片231が配設される。具体的には、熱伝導シート23を配設する領域(すなわち、平行平板21の法線方向に沿って見て実装領域21cと重なる領域)が、発熱量に応じて複数種類の領域に区画されており、区画された各領域に、該領域の発熱量に応じて規定された熱伝導率のシート片231が配設される。
【0038】
ここで、熱伝導シート23を配設する領域を発熱量に応じて区画する態様について、
図6を参照しながら具体的に説明する。
図6は、この態様を説明するための図である。
【0039】
仮に、平行平板21の法線方向に沿って見て実装領域21cと重なる領域の全体に、熱伝導率が等しいシート片231を一様に設けた場合(あるいは、熱伝導シート23を設けない場合)、平行平板21の面内温度は、半導体モジュール31が接続される第2接続領域21bに近いほど(すなわち、接続片211に近いほど)、高温となる傾向がある。さらに、行列状に配列される複数のコンデンサ22のうち、周囲を他のコンデンサ22に囲まれているコンデンサ22が実装されている領域およびその近傍の領域が高温となる傾向もある。
【0040】
第2接続領域21bに近いほど高温となる傾向が現れる理由の一つは、交流電流が流れることに伴って発生する発生損失にあると考えられる。すなわち、半導体モジュール31と平行平板21の間に交流電流が流れる場合、そこに交流電流の実効値に応じた損失が発生する。特に、
図4に示されるように、接続片211が、半導体モジュール31に設けられている信号接続部311(すなわち、半導体モジュール31に信号を入力するための信号線を接続するための信号接続部311)を露出させるために幅狭の形状とされている場合、接続片211での電流密度が高くなるため、ここでの発生損失が特に大きくなりやすい。さらに、発生損失などの影響を受けて平行平板21に設けられている銅箔の温度が上がると、その抵抗が大きくなり、発生損失がさらに大きくなる、という悪循環も生じる。このような理由により、第2接続領域21bに近いほど高温になる傾向が現れると考えられる。
【0041】
また、第2接続領域21bに接続される半導体モジュール31は、コンデンサ22に比べて発熱量が大きいところ、半導体モジュール31が接続される接続片211およびその近傍領域は、比較的高温となる半導体モジュール31からの熱を受けることによっても昇温してしまう。これも、第2接続領域21bに近いほど高温になる傾向が現れる理由の一つと考えられる。
【0042】
一方、周囲を他のコンデンサ22に囲まれているコンデンサ22が実装されている領域およびその近傍の領域が高温となる傾向が現れる理由は、周囲を別のコンデンサ22で囲まれているコンデンサ22で発生した熱が放熱されにくいためと考えられる。いうまでもなく、コンデンサ22の放熱はその周囲にあるコンデンサ22の個数が多くなるほど困難になる。つまり、複数のコンデンサ22が行列状に配置される場合、行方向、列方向、および斜め方向の全方向から別のコンデンサ22に挟まれるコンデンサ22、すなわち、周囲を8個のコンデンサ22に囲まれているコンデンサ22が、最も放熱されにくい。特に、ここでは、複数のコンデンサ22が、行方向および列方向の両方向で隣り合うコンデンサ22の隣り合う端子221の極性が同じとなるように配列されることによって、コンデンサ22の密集度が高められているため、周囲を他のコンデンサ22に囲まれているコンデンサ22の放熱が特に阻害されやすく、このようなコンデンサ22が実装されている領域が、特に高温となりやすい。
【0043】
これらの傾向を踏まえて、この実施形態では、熱伝導シート23を配設する領域を、発熱量に応じて、第1領域Mx、第2領域My、および、第3領域Mzの3種類の領域に区画する。
【0044】
第1領域Mxは、半導体モジュール31が接続される第2接続部分21b(すなわち、接続片211が設けられている部分)の近傍に相当する領域である。ここでは、接続片211の側から数えて一行目のコンデンサ22と二行目のコンデンサ22との隙間を境界とし、この境界よりも接続片211の側の領域を、第1領域Mxとする。
【0045】
第2領域Myは、周囲を他のコンデンサ22で囲まれているコンデンサ22が実装されている領域と対応する領域(すなわち、平行平板21の法線方向に沿って見て、このようなコンデンサ22が実装されている領域と重なる領域)である。ただしここでは、行方向、列方向、および斜め方向の全方向から別のコンデンサ22に挟まれるコンデンサ22、すなわち、周囲を8個のコンデンサ22に囲まれているコンデンサ22を、「周囲を他のコンデンサ22に囲まれているコンデンサ22」とする。
【0046】
第3領域Mzは、第1領域Mxおよび第2領域Myを除いた領域である。
【0047】
このようにして規定される3種類の領域Mx,My,Mzの各々には、該領域の発熱量に応じて規定された熱伝導率のシート片231が配設される。各領域Mx,My,Mzに配設されるシート片231の熱伝導率を規定する態様について、
図3および
図6を参照しながら説明する。
【0048】
第3領域Mzに配置されるシート片231(他のシート片231と区別する場合、「第3シート片231z」という)の熱伝導率Kzを規定するにあたっては、まず、平行平板21全体の平均的な温度などに基づいて、平行平板21全体の平均的な発生損失A(W)を推定する。推定された発生損失A(W)と、許容される平行平板21の上昇温度をTo(℃)とから、シート片231zに求められる熱抵抗α=To/Aが特定される。熱抵抗α(℃/W)と熱伝導率Kzの間には、「α=d/(Kz×So)」の関係が成立する(ただし、「So」は平行平板21の全体面積である。また、「d」はシート片231の厚みであり、複数のシート片231は全て同じ厚みである。)。そこで、この関係式に基づいて算出される熱伝導率Kz(W/m・K)を、第3シート片231zの熱伝導率Kzとする。
【0049】
続いて、第1領域Mxに配置されるシート片231(他のシート片231と区別する場合、「第1シート片231x」ともいう)の熱伝導率Kxを規定するにあたっては、まず、第1領域Mxの温度と、平行平板21全体の平均的な温度との差分などに基づいて、第1領域Mxにおいて、平均的な発生損失Aから追加で発生している発生損失B(W)を推定する。推定された追加分の発生損失B(W)と、許容される平行平板21の上昇温度をTo(℃)とから、シート片231xに求められる熱抵抗β=To/(A+B)が特定される。熱抵抗β(℃/W)と熱伝導率Kxの間には、「β=d/(Kx×Sx)」の関係が成立する(ただし、「Sx」は第1領域Mxの面積であり、「d」はシート片231の厚みである)。そこで、この関係式に基づいて算出される熱伝導率Kx(W/m・K)を、第1シート片231xの熱伝導率Kxとする。
【0050】
また、第2領域Myに配置されるシート片231(他のシート片231と区別する場合、「第2シート片231y」ともいう)の熱伝導率Kyを規定するにあたっては、まず、第2領域Myの温度と、平行平板21全体の平均的な温度との差分などに基づいて、第2領域Myにおいて、平均的な発生損失Aから追加で発生している発生損失C(W)を推定する(多くの場合、「C<B」である)。推定された追加分の発生損失C(W)と、許容される平行平板21の上昇温度をTo(℃)とから、シート片231yに求められる熱抵抗γ=To/(A+C)が特定される。熱抵抗γ(℃/W)と熱伝導率Kyの間には、「γ=d/(Ky×Sy)」の関係が成立する(ただし、「Sy」は第2領域Myの面積であり、「d」はシート片231の厚みである)。そこで、この関係式に基づいて算出される熱伝導率Ky(W/m・K)を、第2シート片231yの熱伝導率Kyとする。
【0051】
このようにして、第1~第3シート片231i(i=x,y,z)の各々の熱伝導率Ki(i=x,y,z)が、該シート片231iが配設される領域Mi(i=x,y,z)の発熱量に基づいて規定される。上記の規定の態様によると、各領域Miの単位面積あたりの発熱量(すなわち、単位面積あたりの発生損失)と、対応するシート片231iの熱伝導率Kiが比例関係を有している。したがって、単位面積あたりの発熱量が、第1領域Mx、第2領域My、第3領域Mzの順で大きい場合、シート片231の熱伝導率は、第1シート片231x、第2シート片231y、第3シート片231zの順で大きな値とされ、発熱量が大きい領域ほど筐体4に熱が移動しやすくなる。また、上記の例では、各領域Miでの発生損失と熱抵抗の積である温度が同じ値となるように、各シート片231iの熱伝導率Kiが規定されている。すなわち、発熱量に応じた熱量が筐体4に移動した結果、各領域Miでの温度が互いに等しくなるように、各シート片231iの熱伝導率Kiが規定されている。したがって、平行平板21の面内における発熱量のムラが適切に打ち消されて、平行平板21の面内温度の均一性が十分に高まる。ただし、筐体4は、シート片231に比べて熱伝導率が十分に高い材料により形成されるため、筐体4に移動した熱は、その内部で速やかに均一化されて、外部に放熱される。
【0052】
<効果>
上記の実施形態に係るインバータ用の平滑回路2は、平行平板21と、行列状に配列されて平行平板21に実装される複数のコンデンサ22と、平行平板21の法線方向に沿って見て複数のコンデンサ22の実装領域21cと重なる領域において、平行平板21と筐体4の間に介在して設けられる熱伝導シート23と、を備え、複数のコンデンサ22が、行方向および列方向で、隣り合うコンデンサ22の隣り合う端子221が同じ極性となるように、配列されている。
【0053】
例えば、
図7に例示されるように、複数のコンデンサ9の全てが、同じ姿勢(例えば、負端子から正端子に向かう軸方向Tを列方向に沿わせるとともに負端子を第1接続領域21aの側に向けるような第1姿勢P1)で、行列状に配列される場合、行方向あるいは列方向のいずれか一つの方向(
図7の例では、列方向)に隣り合うコンデンサ9の隣り合う端子91が逆極性となる。この場合、該方向について、隣り合うコンデンサ9の端子91の間に、異極端子間の絶縁を確保するための所定の絶縁距離d1以上の離間距離を設ける必要がある。これに対し、上記の構成では、複数のコンデンサ22が、行方向および列方向の両方向で、隣り合うコンデンサ22の隣り合う端子221の極性が同じとなるように配列される。この構成によると、
図4に例示されるように、行方向および列方向のいずれについても、隣り合うコンデンサ22の端子221の間にこのような絶縁距離d1以上の離間距離を設ける必要がなく、同極端子間の絶縁を確保するための所定の絶縁距離d2以上の離間距離を設ければ十分である(いうまでもなく、「d1>d2」である)。したがって、複数のコンデンサ22の密集度を高めることが可能となり、複数のコンデンサ22の実装領域21cを小さく抑えることができる。これによって、熱伝導シート23のサイズ、ひいては、熱伝導シート23が設けられることに伴う質量増加分を小さく抑えることが可能となる。したがって、質量増加を抑えつつも十分な冷却性能を実現することができる。
【0054】
特に、平滑回路2が設けられるインバータINVが、航空機用のインバータである場合、高度の高い(すなわち、空気の薄い)環境での使用が想定されるため、異極端子間の絶縁を確保するための所定の絶縁距離d1は、地上での使用が想定される場合よりも大きくなる(例えば、10~20mm程度)。上記の構成では、このような大きな絶縁距離d1を確保する必要がないので、複数のコンデンサ22の密集度を大幅に向上させることが可能となる。
【0055】
また、複数のコンデンサ22の密集度が高まることによって、平滑回路2の配線長さが短くなり、配線インダクタンスが小さくなる。したがって、逆変換回路3において、スイッチング時に発生するサージ電圧を抑制することも可能となる。
【0056】
また、平滑回路2が設けられるインバータINVが、航空機用のインバータである場合、平滑回路2で発生した熱を、ファンを用いて筐体4の外部(すなわち、機体内部)に排熱することが許されないことが多い。また、航空機用のインバータは汚染度の高い空間に配置されることも多く、この場合は筐体4の内部を密閉空間としなければならず、この場合も、ファンを用いた熱対策は採用することができない。この点、上記の実施形態では、熱伝導シート23を用いて、コンデンサ22および平行平板21で発生した熱を筐体4に移動させて外部に放熱させるので、ファンを用いることができない使用環境にも対応することができる。
【0057】
また、上記の実施形態に係る平滑回路2では、熱伝導シート23が、熱伝導率が異なる複数のシート片231を含んで構成されており、発熱量が相対的に大きい領域に、熱伝導率が相対的に大きいシート片が配設される。
【0058】
熱伝導シート23が、熱伝導フィラーの含有率などによって熱伝導率が規定されるものである場合、熱伝導率が高いものほど質量が大きくなる。上記の構成においては、実装領域21cと重なる領域のうち、相対的に発熱量が小さい領域(例えば、第3領域Mz)には、相対的に熱伝導率が小さいシート片231zが配設されるので、例えば、実装領域21cと重なる領域の全体に、相対的に発熱量が大きい領域(例えば、第1領域Mx)を想定した熱伝導率Kxの熱伝導シートが一律に配設される場合と比べて、熱伝導シート23の総質量を抑えることができる。また、熱伝導シート23は熱伝導率が高いほど高額になるところ、上記の構成によると、熱伝導シート23に係るコストも抑えることができる。さらに、各領域Mx,My,Mzの発熱量に応じて熱伝導率が異なる複数のシート片231が使い分けられるので、発熱量が大きい領域ほど筐体4に熱が移動しやすくなり、平行平板21の面内における発熱量のムラが打ち消されて、平行平板21の面内温度の均一性が高まる。平行平板21の面内温度の均一性が高まることによって、ここに実装されている複数のコンデンサ22の寿命を均一化することが可能となり、製品の信頼性を向上させることができる。
【0059】
また、上記の実施形態に係る平滑回路2では、平行平板21と半導体モジュール31とが接続される接続部分の近傍領域(第1領域)Mxに、熱伝導率が相対的に大きいシート片231xが配設される。
【0060】
半導体モジュール31は、コンデンサ22に比べて発熱量が大きくなる傾向があるため、半導体モジュール31の近傍は、これからの熱を受けて昇温しやすい。また、半導体モジュール31と平行平板21の接続部分に交流電流が流れる場合、そこに交流電流の実効値に応じた損失が発生するため、該接続部分およびその近傍は昇温しやすい。上記の構成によると、平行平板21と半導体モジュール31とが接続される接続部分の近傍領域である第1領域Mxに、熱伝導率が相対的に大きいシート片231xが配設されるので、該近傍領域Mxで発生した熱を効果的に放熱することが可能となる。
【0061】
第1領域Mxでの発熱量が大きくなる原因の一つは発生損失が大きいことにある。そこで例えば、平行平板21に設けられている銅箔の厚みを大きくして発生損失を低減することも考えられる。ところが、こうすると平行平板21の質量増加が避けられない。つまり、上記の構成によると、発生損失が大きな領域における局所的な昇温を、平行平板21の質量を増加させることなく、抑制することが可能となる。
【0062】
また、第1領域Mxでの発熱量が大きくなる別の原因は、半導体モジュール31からの熱を受けることにある。そこで例えば、半導体モジュール31の接続部位(すなわち、接続片211)を実装領域21cから離した位置に設けて、半導体モジュール31から受ける熱の影響を低減することも考えられる。ところが、こうすると平行平板21の大型化が避けられない。つまり、上記の構成によると、半導体モジュール31からの熱を受けることによる局所的な昇温を、平行平板21のサイズを増加させることなく、抑制することが可能となる。
【0063】
また、上記の実施形態に係る平滑回路2では、複数のコンデンサ22が互いに同種のコンデンサであり、周囲を他のコンデンサ22に囲まれているコンデンサ22が実装されている領域(第2領域)Myと対応する領域に、熱伝導率が相対的に大きいシート片231yが配設される。
【0064】
上記の通り、複数のコンデンサ22が、行方向および列方向の両方向で、隣り合うコンデンサ22の隣り合う端子221が同じ極性となるように配列されることで、複数のコンデンサ22の密集度を高めることが可能となるところ、複数のコンデンサ22の密集度が高まると、周囲を他のコンデンサ22で囲まれているコンデンサ22で発生した熱が周囲に放熱されにくくなる。上記の構成によると、このようなコンデンサ22が実装されている領域と対応する領域である第2領域Myに、熱伝導率が相対的に大きいシート片231yが配設されるので、該コンデンサ22で発生した熱を効果的に放熱することが可能となる。
【0065】
第2領域Myでの発熱量が大きくなる原因は、周囲を他のコンデンサ22で囲まれているコンデンサ22が放熱されにくいことにある。そこで例えば、このようなコンデンサ22からも十分な放熱がなされるように、隣り合うコンデンサ22の離間距離を大きくすることも考えられる。しかしながら、いうまでもなく、これはコンデンサ22の密集度を低下させることを意味している。つまり、上記の構成によると、コンデンサ22の密集度を高く維持したままで、コンデンサ22が密集している領域での局所的な昇温を抑制することが可能となる。
【0066】
また、上記の実施形態に係る平滑回路2では、複数のシート片231i(i=x、y、z)の各々の熱伝導率Ki(i=x、y、z)が、該シート片231iが配設される領域Mi(i=x、y、z)の発熱量に基づいて規定されている。
【0067】
この構成によると、平行平板21の面内における発熱量のムラが適切に打ち消されるので、平行平板21の面内温度の均一性が十分に高まる。
【0068】
また、上記の実施形態に係る平滑回路2は、航空機用のインバータINVに搭載されている。
【0069】
航空機用のインバータINVには、高い冷却性能が必要とされる一方で、軽量化も強く求められるところ、上記の実施形態に係る平滑回路2では、質量増加を抑えつつも十分な冷却性能が実現されているので、これら両方の要請に応じることができる。
【0070】
<他の実施形態>
上記の実施形態において、熱伝導シート23は熱伝導率が異なる複数種類のシート片231x,231y,231xを含んで構成されるものとしたが、熱伝導シート23を構成する複数のシート片231の全てが同じ熱伝導率であってもよい。すなわち、平行平板21の法線方向に沿って見て実装領域21cと重なる領域の全体に、熱伝導率が等しいシート片231を、複数枚、同ピッチで満遍なく配列してもよい。また、上記の実施形態においては、熱伝導シート23は複数のシート片231を含んで構成されるものとしたが、熱伝導シート23は1枚のシートから構成されてもよい。すなわち、平行平板21の法線方向に沿って見て実装領域21cと重なる領域の全体を覆うような1枚のシートを配設してもよい。
【0071】
上記の各構成によると、温度のムラまでは抑制できないものの、各コンデンサ22および平行平板21で発生した熱が、各シート片231を介して筐体4に速やかに移動して、外部に放熱される点は上記の実施形態と同様である。したがって、これらの構成としても、各コンデンサ22および平行平板21の昇温を抑制することができる。
【0072】
上記の実施形態において、各領域Mx,My,Mzに配設されるシート片231の個数は、図に例示されるものに限らない。例えば、各領域Mx,My,Mzに配設されるシート片231x,231y,231zが、各々が配設される領域と合同であるような1枚のシート片により構成されてもよいし、該領域に比べて十分に小さい複数枚のシート片により構成されてもよい。
【0073】
上記の実施形態においては、熱伝導シート23を配設する領域を、発熱量に応じて3種類の領域Mx,My,Mzに区画していたが、領域を区画する態様はこれに限られるものではない。例えば、上記の実施形態では、周囲を8個のコンデンサ22で囲まれているコンデンサ22が実装されている領域と対応する領域を第2領域Myとしていたが、例えば、周囲を7個以上のコンデンサ22で囲まれているコンデンサ22が実装されている領域と対応する領域を第2領域Myとしてもよい。また例えば、第3領域Mzを、第2接続部分21bに近い側の領域と第1接続部分21aに近い側の領域とにさらに区画してもよい。区画される領域の総数が増えるほど、熱伝導シート23に含まれるシート片231のうち熱伝導率が互いに異なるものの数が増えることになり、平行平板21の面内温度の均一性を高めることが可能となる。
【0074】
上記の実施形態においては、熱伝導フィラーの含有率などによって各シート片231iの熱伝導率が調整されるものとしたが、各シート片231iの面積(各シート片231iが配設される領域Miに対するシート片231iの面積比)によって熱伝導率が調整されてもよい。
【0075】
上記の実施形態において、平滑回路2が備える平行平板21はラミネートブスバーにより構成されるものとしたが、平行平板21はラミネートブスバーに限られるものではない。例えば、平行平板21は、大電流に対応可能な基板、例えば、厚銅基板により構成されてもよい。
【0076】
上記の実施形態において、平滑回路2に設けられるコンデンサ22の総数は、何個であってもよい。また、行方向および列方向の各々におけるコンデンサ22の配列数も、何個であってもよい。また、コンデンサ22の種類は、フィルムコンデンサに限られるものではなく、セラミックコンデンサ、電解コンデンサ、などであってもよい。
【0077】
上記の実施形態では、インバータINVが交流電源ACと接続されるものとしたが、インバータはバッテリと接続されてもよい。この場合、インバータは、整流回路1を含まず、平滑回路2と逆変換回路3を含む構成とすることができる。すなわち、この場合、平滑回路2がバッテリと接続されるとともにここから与えられた直流電力を平滑して逆変換回路3に与え、逆変換回路3が該与えられた直流電力を交流電力に変換して、推進用ファンモータMなどに出力する。インバータがこのような構成である場合は、平滑回路2の平行平板21の第1接続領域21aには、バッテリが接続されることになる。
【0078】
また、上記の実施形態では、平滑回路2は、航空機の推進用ファンモータを駆動するためのインバータINVに搭載されるインバータ用平滑回路であるとしたが、平滑回路は、これ以外の各種のインバータに設けられてもよい。特に、質量増加を抑えつつも十分な冷却性能が必要とされるインバータに適用することが有効である。
【0079】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0080】
INV インバータ
1 整流回路
2 インバータ用平滑回路(平滑回路)
21 平行平板
21c 実装領域
22 コンデンサ
221 端子
23 熱伝導シート
231,231x,231y,231z シート片
3 逆変換回路
31 半導体モジュール
4 筐体
41 底面