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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】眼鏡レンズ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/02 20060101AFI20241218BHJP
   B24B 9/14 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
B24B49/02 Z
B24B9/14 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020182769
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022073023
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】作田 隆真
(72)【発明者】
【氏名】山本 忠正
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-198359(JP,A)
【文献】特開2017-177234(JP,A)
【文献】特開昭62-137510(JP,A)
【文献】特開平06-034923(JP,A)
【文献】特開平04-305144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B1/00-1/04
B24B9/00-19/28
G02C1/00-13/00
B24B49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズの周縁を加工する眼鏡レンズ加工装置において、
眼鏡レンズを保持するレンズ保持軸と、
前記レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズの周縁を加工するための加工具と、
前記加工具の劣化を把握可能にするために、前記加工具によって加工された眼鏡レンズのコバ角部に発生した欠けを検出する欠け検出手段と、
前記欠け検出手段の検出結果を出力する出力手段と、を備え、
前記欠け検出手段は、前記加工具で加工された眼鏡レンズの前記コバ角部に当接する測定子と、前記測定子の位置を検知する測定子位置検知手段と、を備え、
また、前記欠け検出手段は、
前記コバ角部に欠けが発生していない場合の眼鏡レンズの粗加工後に予定する前記コバ角部の全周の位置データを取得する位置データ取得手段を備え、前記位置データ取得手段によって取得された位置データと、前記測定子位置検知手段による前記コバ角部の全周の検知データと、を比較することによって前記コバ角部に発生した欠けを検出する第1検出手段と、
前記測定子位置検知手段による前記コバ角部の全周の検知データに急峻に変化するデータがあるか否かに基づいて前記コバ角部に発生した欠けを検出する第2検出手段と、
の少なくとも一つを備えることを特徴とする眼鏡レンズ加工装置。
【請求項2】
請求項1の眼鏡レンズ加工装置において、
前記加工具は、眼鏡レンズの周縁を粗加工する粗加工具と、粗加工後の眼鏡レンズの周縁を仕上げ加工する仕上げ加工具と、を備え、
前記欠け検出手段による欠け検出は、前記粗加工具による粗加工後であって、前記仕上げ加工具による仕上げ加工前に行われることを特徴とする眼鏡レンズ加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2の眼鏡レンズ加工装置において、
前記加工具による眼鏡レンズの加工量を取得する加工量取得手段を備え、
前記欠け検出手段は、前記加工量取得手段によって取得された加工量が所定の加工量に達したときに欠け検出が実行されることを特徴とする眼鏡レンズ加工装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れかの眼鏡レンズ加工装置において、
前記欠け検出手段の検出結果に基づき、次回以降の前記加工具を使用する加工工程のうち、欠けが検出された加工工程を少なくとも含む、加工工程の加工条件を変更する加工条件変更手段を備えることを特徴とする眼鏡レンズ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼鏡レンズを加工する眼鏡レンズ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡レンズ加工装置において、眼鏡レンズの周縁を加工するためにカッター等の工具を使用した装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-198359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、加工具は眼鏡レンズの加工枚数が増えるに伴って摩耗する。特に加工具としてカッターが使用される場合、カッターの摩耗が進むと、カッターの切削能力が低下し、加工時に眼鏡レンズのコバ角部に欠けが発生するようになる。さらに加工枚数が増えると、加工時に眼鏡レンズに過大な負荷が掛かり、加工途中でカッターが破損することがある。また、粗加工では仕上げ加工軌跡より内側に欠けが大きく生じてしまうことがある。このため、眼鏡レンズを良好に加工できなくなる。
【0005】
本開示は、上記従来技術の問題点に鑑み、眼鏡レンズを良好に加工することが出来る眼鏡レンズ加工装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
眼鏡レンズの周縁を加工する眼鏡レンズ加工装置において、眼鏡レンズを保持するレンズ保持軸と、前記レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズの周縁を加工するための加工具と、前記加工具の劣化を把握可能にするために、前記加工具によって加工された眼鏡レンズのコバ角部に発生した欠けを検出する欠け検出手段と、前記欠け検出手段の検出結果を出力する出力手段と、を備え、前記欠け検出手段は、前記加工具で加工された眼鏡レンズの前記コバ角部に当接する測定子と、前記測定子の位置を検知する測定子位置検知手段と、を備え、また、前記欠け検出手段は、前記コバ角部に欠けが発生していない場合の眼鏡レンズの粗加工後に予定する前記コバ角部の全周の位置データを取得する位置データ取得手段を備え、前記位置データ取得手段によって取得された位置データと、前記測定子位置検知手段による前記コバ角部の全周の検知データと、を比較することによって前記コバ角部に発生した欠けを検出する第1検出手段と、前記測定子位置検知手段による前記コバ角部の全周の検知データに急峻に変化するデータがあるか否かに基づいて前記コバ角部に発生した欠けを検出する第2検出手段と、の少なくとも一つを備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】眼鏡レンズ加工装置の概略構成図である。
図2】レンズ形状測定ユニットの斜視図である。
図3】コバ角部形状測定ユニットを説明する図である。
図4】眼鏡レンズ加工装置の制御系の構成図である。
図5】カッターによるレンズの粗加工の例を説明する図である。
図6】粗加工後にコバ角部を測定する方法を説明する図である。
図7】欠けの有無の判定方法の例を説明する図である。
図8】実測のコバ角部形状データから欠けを検出する方法を説明する図である。
図9】仕上げ加工後のコバ角部を測定する測定ユニットの例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態を図面に基づいて説明する。図1~4は本実施形態に係る眼鏡レンズ加工装置について説明する図である。
【0010】
[概要]
例えば、眼鏡レンズの周縁を加工するための眼鏡レンズ加工装置(例えば、眼鏡レンズ加工装置1)は、眼鏡レンズを保持するために構成されたレンズ保持手段(例えば、レンズ保持ユニット100)を備える。例えば、レンズ保持手段は、眼鏡レンズを保持するレンズ保持軸(例えば、レンズチャック軸102L及び102R)を備える。例えば、眼鏡レンズ加工装置は、レンズ保持軸を回転することで、眼鏡レンズを回転するレンズ回転手段(例えば、モータ120)を備える。例えば、眼鏡レンズ加工装置は、レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズの周縁を加工するための加工具(例えば、カッター423、仕上げ用加工具163a、等)を備える。例えば、加工具は、眼鏡レンズの周縁を粗加工するための粗加工具(例えば、カッター423)を備える。例えば、加工具は、粗加工された眼鏡レンズの周縁を仕上げ加工するための仕上げ加工具(例えば、仕上げ用加工具163a、仕上げ加工具163c)を備える。なお、粗加工具及び仕上げ加工具は、カッターであってもよい。例えば、粗加工及び仕上げ加工具がカッターである場合、一つの加工具で一体的に構成されていてもよい(例えば、粗加工用カッターにヤゲン形成用の溝を形成することで、粗加工用カッターをヤゲンの仕上げ加工及び平仕上げ加工に兼用できる。)
【0011】
例えば、眼鏡レンズ加工装置は、加工具を回転する加工具回転手段(例えば、モータ421、モータ160)を備える。例えば、眼鏡レンズ加工装置は、加工具とレンズ保持軸に保持された眼鏡レンズとの相対的に位置関係を変更する変更手段(例えば、移動ユニット300、モータ120)を備える。例えば、眼鏡レンズ加工装置は、玉型に基づき、粗加工具によって眼鏡レンズの周縁を粗加工するための粗加工軌跡を取得する加工データ取得手段(例えば、制御部50)を備える。例えば、眼鏡レンズ加工装置は、粗加工軌跡に基づいて変更手段を制御し、粗加工具によって眼鏡レンズの周縁を粗加工する制御手段(例えば、制御部50)を備える。例えば、眼鏡レンズ加工装置は、玉型に基づき、仕上げ加工具によって眼鏡レンズの周縁を仕上げ加工するための仕上げ加工軌跡を取得する加工データ取得手段(例えば、制御部50)を備える。例えば、眼鏡レンズ加工装置は、仕上げ加工軌跡に基づいて変更手段を制御し、仕上げ加工具によって眼鏡レンズの周縁を粗加工する制御手段(例えば、制御部50)を備える。
【0012】
例えば、眼鏡レンズ加工装置は、眼鏡レンズの屈折面形状を取得する屈折面形状取得手段(例えば、レンズ形状測定ユニット200、制御部50)を備えていてもよい。例えば、屈折面形状取得手段は、眼鏡レンズの屈折面に接触させる屈折面用測定子(例えば、測定子260)と、レンズ保持軸の軸方向における屈折面用測定子の位置を検知する屈折面用測定子位置検知手段(例えば、センサ280、制御部50)と、を持ち、屈折面用測定子位置検知手段の検知結果に基づいて眼鏡レンズの屈折面形状を得る。
【0013】
例えば、眼鏡レンズ加工装置は、眼鏡レンズの外形形状を取得する外形形状取得手段(例えば、レンズ形状測定ユニット200、制御部50)を備えていてもよい。例えば、外形形状取得手段は、眼鏡レンズのコバ面に接触させるコバ面用測定子(例えば、測定子262の側面262a)と、レンズ保持軸の軸方向に直交する方向におけるコバ面用測定子の位置を検知するコバ面用測定子位置検知手段(例えば、センサ281、制御部50)と、を持ち、コバ面用測定子位置検知手段の検知結果に基づいて眼鏡レンズの外形形状を得る。
【0014】
例えば、眼鏡レンズ加工装置は、加工具で加工された眼鏡レンズのコバ角部に発生した欠けを検出する欠け検出手段(例えば、コバ角部形状測定ユニット230、制御部50)を備える。なお、欠け検出手段は、コバ角部に発生した欠けに限らず、コバ角部の周辺に発生した欠けを検出するように構成されていてもよい。例えば、粗加工具で眼鏡レンズの周縁が粗加工された場合、欠け検出は、粗加工後で仕上げ加工前に行われる。
【0015】
例えば、眼鏡レンズ加工装置は、欠け検出手段の検出結果を出力する出力手段(例えば、制御部50、ディスプレイ60)を備える。例えば、出力手段は欠け検出手段の検出結果を、後述する加工条件変更手段に出力する。また、例えば、出力手段は、欠け検出手段の検出結果を操作者に報知する報知手段を備える。
【0016】
これにより、加工具の劣化を早期に把握でき、劣化した加工具を新しいものに交換することにより、眼鏡レンズを良好に加工できる。例えば、粗加工具(例えば、カッター423)が摩耗してくると、粗加工後の眼鏡レンズのコバ角部に欠けが発生するが、粗加工後に仕上げ加工が行われることにより、コバ角部の欠けは削り取られてしまう。そのため、仕上げ加工後では、通常、操作者は粗加工時に欠けが発生したことを把握できない。しかし、本開示の欠け検出手段が設けられていることにより、操作者は粗加工具が摩耗していることを把握することが出来る。なお、摩耗は加工具の劣化の一例であり、これに限定されず、例えば、加工具の劣化は、加工具の破損や、加工具への加工屑の付着といったものを含む。
【0017】
例えば、欠け検出手段は、加工具で加工された眼鏡レンズのコバ角部に当接する測定子(例えば、測定子291、292)を備える。例えば、欠け検出手段は、測定子の位置を検知する測定子位置検知手段(例えば、センサ280、センサ281、制御部50)を備える。例えば、欠け検出手段は、測定子位置検知手段の検知信号の出力に基づいてコバ角部に発生した欠けを検出する。また、欠け検出手段は、例えば、レーザーを用いてコバ角部周辺の形状を測定する光学的な検出手段であってもよい。
【0018】
例えば、測定子位置検知手段は、レンズ保持軸の軸方向である第1方向の位置を検知する手段であってもよいし、第1方向に直交する第2方向の位置を検知する手段であってもよい。
【0019】
例えば、コバ角部に当接する測定子の先端部(例えば、先端部291a、292a)は、粗加工されたレンズのコバ部に対して平行な方向(例えば、レンズ保持軸の軸方向)に対して傾斜した形状を持ち、その傾斜は測定対象の眼鏡レンズの粗加工位置での屈折面(レンズ前面LEf、レンズ後面LEr)の傾斜角より小さな傾斜角に形成された形状である。例えば、先端部は、先細りの先端形状である。例えば、測定子の先端部は、コバ角部に発生する検出対象の欠けに入ることが可能な大きさにされている。例えば、先端部の形状は、コバ角部に検出対象の欠けが発生していないときに対し、コバ角部に検出対象の欠けが発生している部分に測定子の先端が当接したときに、測定子先端の位置変化が生じる大きさである。例えば、先端部の形状は、検出対象の欠けの大きさに応じて設計されている。これにより、コバ角部の欠けを、より適切に検知できる。
【0020】
例えば、欠け検出手段は、コバ角部に欠けが発生していない場合の眼鏡レンズの加工後に予定するコバ角部の位置データを取得する位置データ取得手段(例えば、制御部50)を備える。例えば、欠け検出手段は、次の第1検出手段と第2検出手段と少なくとも一つを備える。例えば、第1検出手段は、位置データ取得手段によって取得された位置データと、測定子位置検知手段による検知データと、を比較することによってコバ角部に発生した欠けを検出する。例えば、第2検出手段は、測定子位置検知手段による検知データに急峻に変化するデータが有るか否かに基づいてコバ角部に発生した欠けを検出する。
【0021】
例えば、測定子位置検知手段は、レンズ保持軸の軸方向である第1方向の位置を検知可能に構成されていてもよい。この場合、例えば、眼鏡レンズ加工装置は、レンズ保持軸の軸方向における眼鏡レンズの屈折面情報を得るレンズ屈折面情報取得手段(例えば、第1レンズ形状測定ユニット200A、制御部50)を備える。また、この場合、粗加工後のコバ角部の検知においては、例えば、位置データ取得手段は、第1方向(レンズ保持軸の軸方向)における加工後に予定するコバ角部の位置データを、レンズ屈折面情報取得手段によって得られた屈折面情報と、玉型又は粗加工軌跡と、に基づいて取得する。仕上げ加工後のコバ角部の検知においては、例えば、位置データ取得手段は、第1方向(レンズ保持軸の軸方向)における仕上げ加工後に予定するコバ角部の位置データを、レンズ屈折面情報取得手段によって得られた屈折面情報と、玉型又は仕上げ加工軌跡と、に基づいて取得する。
【0022】
例えば、測定子位置検知手段は、レンズ保持軸の軸方向である第1方向に直交する2方向の位置を検知可能に構成されていてもよい。この場合、粗加工後のコバ角部の検知においては、例えば、位置データ取得手段は、第2方向における粗加工後に予定するコバ角部の位置データを、玉型又は粗加工軌跡に基づいて取得する。仕上げ加工後のコバ角部の検知においては、例えば、位置データ取得手段は、第2方向における仕上げ加工後に予定するコバ角部の位置データを、玉型又は仕上げ加工軌跡に基づいて取得する。
【0023】
例えば、眼鏡レンズ加工装置は、欠け検出手段の検出結果に基づき、次回以降の、加工具を使用する加工工程の加工条件を変更する加工条件変更手段(例えば、制御部50)を備える。例えば、加工条件変更手段は、次回以降の加工具を使用する加工工程のうち、欠けが検出された加工工程を少なくとも含む、加工工程の加工条件を変更する。
例えば、加工条件変更手段は、加工条件として、変更手段による眼鏡レンズと加工具との位置関係を変化させる速度(例えば、送り速度)と、加工具回転手段による加工具の回転速度と、の少なくとも一つを変更する。眼鏡レンズにかかる負荷が低減されるように加工時の加工条件が変更されることで、摩耗した加工具であっても、長期間使用できるようになる。
【0024】
例えば、眼鏡レンズ加工装置は、加工具による眼鏡レンズの加工量(例えば、レンズの加工枚数、加工具の使用時間、加工具の移動距離の少なくとも一つ)を取得する加工量取得手段(例えば、制御部50)を備えていてもよい。この場合、例えば、欠け検出手段は、レンズ加工量取得手段によって第1の所定の加工量に達したことが取得されたときに、作動される構成にされていてもよい。さらに、加工条件変更手段が備えられている場合、加工条件が変更された後、さらに、加工量取得手段によって第2の所定の加工量(例えば、第1の所定の加工量よりも少ない加工量)に達したことが取得されたときに、作動される構成にされていてもよい。
【0025】
例えば、眼鏡レンズ加工装置が屈折面用測定子を持つ屈折面形状取得手段を備える場合、欠け検出手段は、屈折面形状取得手段の一部の構成(少なくとも、屈折面用測定子位置検知手段)を兼用するように構成されていてもよい。これにより、装置構成を簡素化できる。
【0026】
例えば、眼鏡レンズ加工装置がコバ面用測定子を持つ外形形状取得手段を備える場合、欠け検出手段は、外形形状取得手段の一部の構成(少なくとも、コバ面用測定子位置検知手段)を兼用するように構成されていてもよい。この場合、装置構成を簡素化できる。
【0027】
[実施例]
本開示の典型的な実施例の一つについて、図面を参照して説明する。図1は、実施例に係る眼鏡レンズ加工装置1における加工機構部の構成を説明する図である。
【0028】
例えば、眼鏡レンズ加工装置1は、眼鏡レンズ(以下、レンズLE)を保持するためのレンズ保持軸を持つレンズ保持手段の例であるレンズ保持ユニット100を備える。例えば、眼鏡レンズ加工装置1は、レンズLEの形状(レンズLEの屈折面形状、レンズLEの外形形状)を取得するために構成されたレンズ形状測定ユニット200を備える(図2参照)。本実施例においては、レンズ形状測定ユニット200は、眼鏡レンズ加工装置1のベース2に設けられている。
【0029】
例えば、眼鏡レンズ加工装置1は第1加工具ユニット150を備える。第1加工具ユニット150は、レンズLEの周縁を加工する加工具を回転させるために構成されている。例えば、眼鏡レンズ加工装置1は、第2加工具ユニット400を備える。第2加工具ユニット400は、レンズLEの周縁を粗加工する粗加工具(例えば、カッター423)、等を回転させるために構成されている。例えば、眼鏡レンズ加工装置1は、加工具で加工されたレンズLEのコバ角部の形状を測定するために構成されたコバ角部形状測定ユニット230を備える。例えば、眼鏡レンズ加工装置1は、レンズ保持軸に保持されたレンズLEと粗加工具等の各種構成要素との位置関係を変更する(調整する)変更手段の例である移動ユニット300を備える。移動ユニット300は、レンズLEと第1加工具ユニット150が持つ加工具との相対的な位置関係を変える(調整する)ために使用される。また、移動ユニット300は、レンズLEと第2加工具ユニット400が持つ加工具との相対的な位置関係を変える(調整する)ために使用される。また、移動ユニット300は、レンズLEとレンズ形状測定ユニット200が持つ測定子との相対的な位置関係を変える(調整する)ために使用される。また、移動ユニット300は、レンズLEとコバ角部形状測定ユニット230が持つ測定子との相対的な位置関係を変える(調整する)ために使用される。
【0030】
<レンズ保持ユニット>
例えば、レンズ保持ユニット100は、レンズLEを保持(挟持)して回転させるためのレンズチャック軸102と、キャリッジ101と、を備える。レンズチャック軸102は、一対のレンズチャック軸102L及び102Rを備える。キャリッジ101の左腕101Lにレンズチャック軸102Lが回転可能に保持され、キャリッジ101の右腕101Rにレンズチャック軸102Rが回転可能に保持されている。レンズチャック軸102(すなわち、レンズLE)は、レンズ回転手段の例であるモータ120によって回転される。また、右腕101Rには右チャック軸102Rを左チャック軸102L側に移動するためのモータ110が配置されている。右チャック軸102Rが左チャック軸102L側に移動されることにより、レンズLEが2つのレンズチャック軸102L、102Rによって保持される。
【0031】
<第1加工具ユニット>
第1加工具ユニット150は、加工具回転軸161を回転するためのモータ160を備える。加工具回転軸161は、レンズチャック軸102と平行な位置関係で、ベース2に回転可能に保持されている。加工具回転軸161にレンズLEの周縁を加工するための複数の加工具163が取り付けられている。例えば、加工具163は、高カーブレンズの仕上げ用加工具163a、鏡面仕上げ用加工具163b、低カーブ用の仕上げ加工具163c、ガラス用の粗加工具163dの少なくとも何れか一つを備える。鏡面仕上げ用加工具163b及び仕上げ加工具163cは、それぞれヤゲン加工用のV溝と、平加工用の平仕上げ面と、の少なくとも何れかを備える。例えば、加工具163には砥石が利用されるが、カッターが使用されてもよい。なお、「鏡面仕上げ」、「ヤゲン加工」、「平加工」の用語について、先行技術文献(例えば、特開2017-177234号公報)と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0032】
<第2加工具ユニット>
例えば、第2加工具ユニット400は、キャリッジ101の後方に配置されている。第2加工具ユニット400は、例えば、レンズLEの周縁を加工するための溝堀加工具413を備える。また、第2加工具ユニット400は、レンズLEの周縁を粗加工するための粗加工具の例であるカッター423を備える。
【0033】
例えば、溝堀加工具413は、第1加工具駆動軸(例えば、シャフト)410に連結されている。例えば、第1加工具駆動軸410は、第2回転軸(例えば、シャフト)A2の内部に配置される。そして、第1加工具駆動軸410は、図示無き軸受け(例えば、ベアリング)により第2回転軸A2に対して回転可能に軸支されている。例えば、第1加工具駆動軸410は、モータ421の駆動軸400aと図示無き連結部材を介して連結される。これによって、溝堀加工具413とモータ421が直結される。すなわち、本実施形態において、溝堀加工具413の駆動軸である第1加工具駆動軸410と、モータ421の駆動軸400aとが、同軸上に配置される。もちろん、第1加工具駆動軸410と、モータ421の駆動軸400aとが、異なる軸上に配置されるようにしてもよい。
【0034】
例えば、モータ421が回転されることによって、溝掘加工具413が第1加工具駆動軸410を回転中心として回転する。この場合、第1加工具駆動軸410は、加工具回転軸と同軸となる。溝堀加工具413が回転された状態で、キャリッジ101が持つレンズチャック軸(レンズ回転軸)102L,102Rに挟持されたレンズLEが溝堀加工具413に圧接されることによって、レンズ周縁の加工が行われる。
【0035】
例えば、カッター423は、第2加工具駆動軸412に取り付けられる。例えば、本実施形態において、カッター423は、レンズLEに粗加工を行う加工具として使用される。例えば、第2加工具駆動軸412は、図示無き二つの軸受け(例えば、ベアリング)により保持部411に対して回転可能に軸支されている。例えば、第2加工具駆動軸412は、図示無き連結部材を介して、モータ421の駆動軸400aと連結される。本実施例において、カッター423の駆動軸である第2加工具駆動軸412は、モータ421の駆動軸400aの軸上とは異なる位置に配置される。すなわち、モータ421の駆動軸400aの回転が、ワンウェイクラッチ(図示を略す)、軸受け(例えば、ベアリング)、等を介して、第2加工具駆動軸412へ伝達される。これにより、モータ421の駆動軸400aの回転が、第2加工具駆動軸412に伝達される。もちろん、モータ421の駆動を、カッター423に伝達する構成としては種々の構成を適用することができる。
【0036】
例えば、第2加工具ユニット400は、加工具の位置を変化させるための旋回機構を備える。例えば、第1回転軸(例えば、シャフト)A1は、ベース部402の内部に配置され、支基ブロック401に固定されている。例えば、ベース部402は、第1回転軸A1と図示無き軸受け(例えば、ベアリング)を介して連結され、支基ブロック401に対して、第1回転軸A1を中心として、旋回可能に保持される。例えば、第1回転軸A1は、図示無き動力(例えば、モータ)の駆動によって回転させられる。第1回転軸A1の回転により、ベース部402は第1回転軸A1を中心に回転移動する。
【0037】
例えば、第2回転軸A2は、ベース部402の内部に配置され、図示無き軸受けを介して、ベース部402に対して回転可能に連結されている。例えば、第2回転軸A2は、第1回転軸A1はとは異なる回転軸である。例えば、第2回転軸は、図示無き動力(例えば、モータ)の駆動によって回転させられる。第2回転軸A2の回転により、第2回転軸A2に連結された保持部411が、第2回転軸A2を中心に回転移動する。これによって、保持部411に保持されたカッター423が第2回転軸A2を中心して旋回される。
【0038】
なお、第2加工具ユニット400の構成は、特開2017-177234号公報に記載された構成を採用できるので、詳細はこれを参照されたい。「溝堀加工」、「粗加工」の用語は、先行技術文献(例えば、特開2017-177234号公報)と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0039】
<移動ユニット>
例えば、移動ユニット300は、レンズチャック軸102と、加工具回転軸(加工具回転軸161及び第2加工具駆動軸412等)と、の軸間距離方向(以下、Y方向とする)の位置関係を相対的に変える第1移動ユニット310を備える。また、移動ユニット300は、レンズチャック軸102の軸L1方向(以下、X方向とする)におけるレンズLEと加工具(加工具163、カッター423等)との位置関係を相対的に変える第2移動ユニット330と、を備える。
【0040】
第1移動ユニット310は、レンズ形状測定ユニット200が持つ測定子260及びコバ角部形状測定ユニット230が持つ測定子290(図2参照)と、レンズチャック軸102に保持されたレンズLEと、のY方向の位置関係を変えるためにも使用される。また、第2移動ユニット330は、レンズ形状測定ユニット200が持つ測定子260及びコバ角部形状測定ユニット230が持つ測定子290(図2参照)と、レンズチャック軸102に保持されたレンズLEと、のY方向の位置関係を変えるためにも使用される。なお、例えば、Y方向はX方向に直交する方向である。
【0041】
第1移動ユニット310は、モータ315を備える。モータ315の回転により移動支基301がX方向に移動される。これにより、移動支基301に搭載されたキャリッジ101及びレンズチャック軸102(レンズLE)がX方向に移動される。なお、第1移動ユニット310の構成は、カッター423等の各加工具、測定子290等の各測定子をX方向に移動させる構成でもよい。
【0042】
第2移動ユニット330は、キャリッジ101(レンズチャック軸102)をY方向に移動するためのモータ335を備える。移動支基301にはY方向に延びるシャフト333が取り付けられている。移動支基301にはモータ335が固定されている。モータ335の回転はY方向に延びるボールネジ337に伝達され、ボールネジ337の回転によりキャリッジ101(レンズチャック軸102とレンズLE)はY方向に移動される。
【0043】
なお、実施例では第2移動ユニット330は、レンズチャック軸102をY方向に移動する構成であるが、カッター423等の各加工具、測定子290等の測定子をY方向に移動させる構成でもよい。
【0044】
<レンズ形状測定ユニット>
図2は、レンズ形状測定ユニット200の概略構成を説明する図である。本実施例においては、レンズ形状測定ユニット200は、眼鏡レンズ加工装置1のベース2に設けられている。
【0045】
実施例において、レンズ形状測定ユニット200は、レンズLEの屈折面(レンズ前面、レンズ後面)の形状を測定(取得)するための第1レンズ形状測定ユニット200Aと、レンズLEの外形形状を測定(取得)するための第2レンズ形状測定ユニット200Bと、を備える。なお、本実施例では第2レンズ形状測定ユニット200Bは、第1レンズ形状測定ユニット200Aの構成要素を一部兼用する構成とされている。もちろん、第2レンズ形状測定ユニット200Bは、第1レンズ形状測定ユニット200Aと別個の構成とされてもよい。
【0046】
第1レンズ形状測定ユニット200Aは、レンズLEの屈折面(レンズ前面又は後面の少なくとも一方)に接触する260が取付けられた保持ユニット250cであって、レンズチャック軸102R,102L(第1軸:X方向)に対して直交する軸S2を中心にX方向に傾斜可能な保持ユニット250cを備える。また、第1レンズ形状測定ユニット200Aは、保持ユニット250cのX方向の傾斜を検知するセンサ280を有する。第1レンズ形状測定ユニット200Aは、眼鏡レンズ加工装置1のベース2に固定される固定ユニット210と、固定ユニット210に対してX方向に揺動(傾斜)される可動ユニット250を備える。なお、可動ユニット250は、第2レンズ形状測定ユニット200Bと兼用するために、固定ユニット210に対して測定子260を前後方向(Y方向:レンズチャック軸102L、102Rに対して接近及び離れる方向)に傾斜される第1可動部250aと、固定ユニット210に対して測定子260を左右方向(X方向)に傾斜させる第2可動部250bと、の組み合わせで構成される。
【0047】
固定ユニット210は、レンズチャック軸102R,102Lに対して平行(X方向)に伸びるシャフト201と、可動ユニット250の前方(レンズチャック軸に近づく方向)への移動を制限するピン202、後方(レンズチャック軸から離れる方向)への移動を制限するピン203と、ブロック269と、を備える。
【0048】
第1可動部250aは、シャフト252に挿通される軸受け256と、レンズチャック軸102R,102Lに対して垂直な前後方向に伸びるシャフト252と、第2可動部250bのX方向の傾斜を制限するためのピン253a、253bと、第2可動部250bのX方向の初期位置を保持すると共に,レンズ形状測定時にレンズに対して測定圧を加えるためのバネ254a、254bとを備える。
【0049】
第2可動部250bは、シャフト201が挿通される軸受け251と、被加工レンズLEの屈折面(前後面)に当接される測定子260と、先端に測定子260を備える保持部材265と、支持軸263と保持部材265とを結合するアーム264と、アーム264を支持するための支持軸263を備え、保持部材265とアーム264と支持軸263で保持ユニット250cが構成される。
【0050】
支持軸263は、レンズ形状測定ユニット200がベース2に固定された状態で、上下方向に伸びる柱状の部材で構成されている。支持軸263の左右端がピン253a、253bに当接されることで、可動ユニット250を構成する保持ユニット250cの左右方向(X方向)の傾斜角度の最大値が決定される。支持軸263の前後がピン202、203に当接されることで保持ユニット250cの前後の傾斜角度の最大値が決定されるようになっている。ピン202、203は、第2レンズ形状測定ユニット200Bの構成要素となる。
【0051】
保持ユニット250cは、支持軸263の上端の位置でアーム264をレンズチャック軸102R,102Lに向かってに伸びるように取り付けることでL字型に形成されている。
【0052】
例えば、第1レンズ形状測定ユニット200Aは、レンズLEの屈折面に接触させる測定子260として、レンズ前面(前屈折面)に接触させる測定子261と、レンズ後面(後屈折面)に接触させる測定子262と、を備える。測定子262は円筒状の側面を有していてもよい。測定子262の側面262aは、レンズLEの外径形状を測定するために利用されても良く、もしくはレンズLE(デモレンズ)の外周に接触される測定子として利用されても良い。
【0053】
例えば、測定子261、262は、X方向に移動可能な保持部材265によって保持されている。本実施例では、保持部材265はU字状の形状を有し、アーム264の先端に配置されている。また、アーム264は支持軸263に取付けられ、支持軸263がX方向に移動可能にブロック269に保持されている。例えば、実施例では、ブロック269に保持された軸受け251を介して支持軸263がX方向に傾斜可能にされている。支持軸263はバネ254a、254bによって、図2の状態を中立位置として、レンズの前面側方向及び後面側方向にそれぞれ付勢されている。測定子261、262のX方向の位置は、保持部材265、アーム264及び支持軸263を介して、検知手段の例であるセンサ(検知器)280によって検知される。センサ280の構成は周知のものが使用される。
【0054】
なお、測定子260(261、262)をX方向に移動可能に保持する構成は、実施例に限られない。例えば、測定子260(261、262)をX方向に直線的に移動可能に保持する構成であってもよい。また、測定子261と測定子262を別々にX方向に移動可能に保持する構成であってもよい。また、本装置では測定中もレンズチャック軸102のX方向の移動制御を利用してレンズLEの前屈折面の形状測定が行われるが、これに限られない。測定中はレンズチャック軸102のX方向の移動は行わず、レンズLEの屈折面の変化にともなって移動する測定子260の位置の変化を検知することで測定が行われる構成であってもよい。
【0055】
以上のような構成の保持ユニット250cは、測定子260の先端がレンズチャック軸102R,102LのY方向の移動軌跡上に位置されるように支持軸263の高さとアーム264の長さ(レンズチャック軸102R、102Lに対する傾斜角度)が決定されている。測定子260がレンズチャック軸102R,102Lの移動軌跡上に置かれることで、レンズ保持ユニット100によるレンズLEの移動を利用してレンズ前後面の形状測定が行われるようになる。
【0056】
第2レンズ形状測定ユニット200Bは、レンズLEのコバ面にと当接する測定子として、測定子262の側面262aを兼用する。すなわち、側面262aは、レンズLEのコバ面(外周面)に当接する大きさを持つように形成されている。また、第2レンズ形状測定ユニット200Bは、アーム264、保持部材265、保持ユニット250c、固定ユニット210、等を兼用し、保持ユニット250cの第2方向(Y方向)への傾斜を検知する検知手段であるセンサ281を備える。また、支持軸263はバネ255によって、軸S1を中心として前側(測定子262が位置する側)に付勢されている。なお、支持軸263の前側への付勢は、ピン202によって図2の状態に制限される。なお、レンズ形状測定ユニット200の構成は、特開2014-4678号公報に記載された構成を採用できるので、詳細はこれを参照されたい。
【0057】
<コバ角部形状測定ユニット>
図2及び図3を用いて、粗加工後のレンズLEのコバの角部の形状を測定するための、コバ角部形状測定ユニット230について説明をする。本実施例では、コバ角部形状測定ユニット230は、第1レンズ形状測定ユニット200Aの構成要素を一部兼用する構成とされている。もちろん、コバ角部形状測定ユニット230は、第1レンズ形状測定ユニット200Aとは別に、専用に設けられていてもよい。
【0058】
コバ角部形状測定ユニット230は、粗加工後のレンズLEのコバ角部に当接する測定子290を備える。図3は測定子290の構成を説明する図であり、図3(a)は、測定子290が取り付けられた測定子261、262の付近の拡大図である。図3(a)に示すように、測定子290は、レンズ前面LEf側のコバ角部LKaに当接する測定子291と、レンズ後面LEr側のコバ角部LKbに当接する測定子292と、を備える。例えば、測定子291は、第1レンズ形状測定ユニット200Aの測定子261に取り付けられている。また、測定子292は、第1レンズ形状測定ユニット200Aの測定子262に取り付けられている。測定子261及び測定子262を備える保持部材265を含め、コバ角部形状測定ユニット230のその他の構成は、第1レンズ形状測定ユニット200Aの構成と兼用される。例えば、センサ280は、測定子290(測定子291、292)のX軸方向における位置を検知する検知器として兼用される。
【0059】
測定子291の先端部291aは、X方向(粗加工後のレンズLEのコバ面)に対して傾斜角SAで傾斜した形状を持つ。例えば、傾斜角SAは、測定対象のレンズLEの粗加工位置におけるレンズ前面LEfの傾斜角LfA(X方向に対する角度)よりも小さな角度に形成されている。例えば、傾斜角SAは、30~40度である。これにより、先端部291aは、レンズ前面LEfに接触することなく、コバ角部LKaに当接することができる。また、同様に、測定子292の先端部292aは、X方向(粗加工後のレンズLEのコバ面)に対して傾斜角SBで傾斜した形状を持つ。例えば、傾斜角SBは、測定対象のレンズLEの粗加工位置におけるレンズ後面LErの傾斜角LfB(X方向に対する角度)よりも小さな角度に形成されている。例えば、傾斜角SBは90度よりも小さく、80~60度である。これにより、先端部291aは、レンズ後面LErに接触することなく、コバ角部LKbに当接することができる。なお、傾斜角SA及び傾斜角SBの数値は、単に例であり、本開示の内容はこの数値に限定されない。
【0060】
図3(b)は、測定子291をX方向に沿って切断したときの断面をY方向から見た断面図と、レンズLEにコバ角度に発生した欠けを説明する図である。例えば、測定子291の先端部291aは、先細りの先端形状に形成されている。これにより、測定子の先端部291aが、欠けに入った後、欠けから離脱しやすくなる。そして、先端部291aは、コバ角部LKaに発生する検出対象の欠けChに入ることが可能な大きさの形状にされている。言い換えれば、先端部291aの形状は、コバ角部LKaに検出対象の欠けChが発生していないときに対し、コバ角部LKaに検出対象の欠けChが発生している部分に先端部291aが当接したときに、先端部291aの位置変化(ここでは、X方向の位置変化)が生じる大きさに形成されている。例えば、先端部291aの最先端が半径0.3~0.5mmの円弧形状に形成されることで、検出対象の欠けChの大きさが0.1mmのものでも検出可能とされる。測定子292の先端部292aも、先端部291aと同様な形状に形成されている。
【0061】
例えば、レンズ前面LEf側のコバ角部LKaの形状を測定する際に、X方向からレンズのコバ角部LKaと測定子291とが接触される。その場合、測定子291は、屈折面の形状を測定するための測定子260と同様に、バネ254a、254bによってX方向に測定圧が付与される。測定子291がコバ角部LKaに接触した状態でレンズLEが回転され、測定子291の位置変化が検知されることで、コバ角部LKaの形状が測定される。
【0062】
なお、コバ角部形状測定ユニット230の構成は上記に限定されない。例えば、コバ角部形状測定ユニット230は、レーザーをコバ角部に照射し、その反射光を検出することでコバ角部の形状を測定するような構成(光学的に欠けを検出する構成)であっても良い。その場合、コバ角部周辺の形状を測定することが出来るため、コバ角部を含むコバ角部周辺に発生する欠けを検出することが出来る。
【0063】
<制御系の構成>
図4は眼鏡レンズ加工装置1に関する制御ブロック図である。眼鏡レンズ加工装置1は制御部50を備える。制御部50に、図1及び2に示した各ユニットの電気系構成要素(モータ等)が接続されている。制御部50は、眼鏡レンズ加工装置1の制御部を兼ねる。制御部50は装置全体の制御を司るために構成されている。また、制御部50はレンズLEのコバの角部の形状測定、レンズLEの屈折面形状測定のための各種の演算、及びレンズ加工のための各種の演算を行うように構成されている。
【0064】
例えば、眼鏡レンズ加工装置1は、データ取得ユニット10を備える。データ取得ユニット10は入力ユニットの機能を兼ねていてもよい。例えば、データ取得ユニット10はディスプレイ60を備える。例えば、データ取得ユニット10は入力ユニット13を備える。例えば、ディスプレイ60はタッチパネルの機能を備え、入力ユニット13を含むように構成されていてもよい。また、制御部50及びディスプレイ60は、出力手段の機能を備える。
【0065】
データ取得ユニット10、メモリ20、選択ユニット52は、制御部50に接続されている。データ取得ユニット10は玉型形状測定装置30に接続されていてもよい。例えば、玉型形状測定装置30は、眼鏡フレームのリムを測定することで、レンズLEの玉型(レンズを周縁加工するための目標の外径形状)を得る。また、玉型はメモリ20に記憶されているものを使用してもよい。データ取得ユニット10は玉型形状測定装置30又はメモリ20から玉型データを取得する。「玉型」は動径長と動径角で定義される二次元の形状であって、例えば、先行技術文献(例えば、2017-177234号公報)と同様であるため、詳細な説明は略す。
【0066】
例えば、制御部50は、カッター423等の各加工具がどれだけ使用されたのかを検出するために、カッター423等の各加工具によるレンズLEの加工量を取得する機能を備えていてもよい。例えば、加工量取得手段としては、各加工具でレンズLEの加工が行われたレンズ枚数(回数)を記録する記録手段を兼ねている。例えば、制御部50は、加工開始のトリガ信号が入力された回数、又は加工終了の信号が入力された回数を計測している。なお、レンズの加工が行われた回数ではなく、レンズの加工のために研削した加工時間、加工具の移動距離を記録することで、各加工具がどれだけ使用されたのかを検出する構成であっても良い。
【0067】
以上のような構成を備える眼鏡レンズ加工装置1における動作を説明する。
【0068】
<玉型データ・レイアウトデータ取得>
初めに、データ取得ユニット10によってレンズLEの玉型データ(動径長r、動径角θ)が取得される。例えば、玉型形状測定装置30によって測定された眼鏡フレームのリムの輪郭形状がデータ取得ユニット10に入力される。玉型データはメモリ20に記憶されていたデータが呼び出されることで、データ取得ユニット10によって取得されてもよい。
【0069】
玉型データが取得されたら、作業者はレンズLEの周縁を加工するための加工条件を入力ユニット13によって設定(入力)する。例えば、レンズLEの周縁加工のために、玉型に対するレンズLEの光学中心位置を配置するためのレイアウトデータが入力される。例えば、レイアウトデータは、左右の玉型中心間距離FPDと、瞳孔間距離PDと、玉型中心に対する光学中心の高さ距離と、を含む。また、加工条件として、レンズの材質、フレームのタイプ(メタル、セル、リムレス、等)、レンズ周縁の加工タイプ(ヤゲン加工、平加工、溝堀加工、等)、鏡面加工の有無、等が入力される。
【0070】
<レンズ外形形状取得>
加工条件の入力が完了したら、作業者はレンズLEをレンズチャック軸102(102L、102R)に保持させ、眼鏡レンズ加工装置1の動作を開始させる。レンズLEの周縁加工に先立ち、制御部50によって眼鏡レンズ形状測定プログラムが実行され、レンズ形状測定ユニット200によるレンズLEの形状測定が行われる。
【0071】
例えば、まず、第2レンズ形状測定ユニット200Bによって未加工のレンズLEの外形形状の測定が行われる。レンズLEの外形形状の測定動作について説明する。制御部50は第2移動ユニット330を駆動させ、レンズLEをY方向に移動させることで、レンズLEのコバ面(端面)を測定子262の側面262aに接触させる。そして測定子260とレンズLEのコバ面とが接触してから、更に軸S1を中心として支持軸263(保持ユニット250c)が所定の傾斜角度傾くようにレンズLEをY方向に移動させる。
【0072】
レンズLEと側面262aが接触してから、更に支持軸263が軸S1を中心として初期位置から所定の角度α1傾斜されると、バネ255の反発力が生じ測定子260がレンズLEの測定面に押し当てられるようになる。これによりレンズチャック軸102からレンズLEの外形の各測定点までの距離が変化しても、バネ255の付勢によって、測定子262の側面262aがレンズLE屈折面上の測定点に追従されるようになる。制御部50は、測定子262の側面262aにレンズLEの外形が接触した状態でレンズLEを1回転する。これにより、制御部50は、レンズチャック軸102のY方向の移動情報と、センサ281の検知情報と、に基づいて未加工のレンズLEの外形形状を取得する。
【0073】
未加工のレンズLEの外形形状が取得されると、玉型データ及びレイアウトデータに基づき、玉型に対して未加工のレンズLEの径が不足しているか否かが制御部50によって確認される。レンズLEの径が不足している場合は、ディスプレイ60にその旨が表示され、操作者に警告される。
【0074】
<粗加工>
レンズLEの径が不足していなければ、粗加工工程に移行される。制御部50は、レンズを粗加工するための粗加工軌跡L2を求める。例えば、粗加工軌跡は、二次元の仕上げ軌跡となる玉型データ(rn, θn)の動径に仕上げ代β(例えば、1mm)を見込んだ軌跡(rn+β, θ)として求められる。
【0075】
粗加工軌跡を求めると、制御部50は、粗加工を開始する。粗加工を行う方法として、先行技術に記した方法と同様の方法が採用できる(例えば、特開2017-177234号公報参照)。
【0076】
粗加工軌跡が求められると、制御部50は、粗加工軌跡に基づいて移動ユニット300を駆動するための粗加工制御データ(制御データ)を求める。粗加工制御データが取得されると、制御部50は、モータ421を駆動してカッター423を粗加工位置に移動させた後、モータ315の駆動を制御し、レンズLEとカッター423を近づける。その後、制御部50は、レンズLEをモータ120により回転しながら、粗加工軌跡に基づいてモータ335の駆動を制御し、カッター423に対するレンズLEの位置関係を変更することで、レンズLEを粗加工する。
【0077】
例えば、カッター423による粗加工は、図5に示すように行われる。図5はカッター423によるレンズLEの粗加工の例を説明する図である。なお、図5では、レンズLEに対して想定的にカッター423が移動されるものとして説明する。初めに、経路M1にてカッター423が移動され、粗加工軌跡L2に達した後は、粗加工軌跡L2に沿った経路M2を進むようにカッター423が移動される。レンズLEの半周分までカッター423が移動されると、経路M3を進むようにカッター423が移動される。これにより、経路M2側のレンズLEが切り落される。次に、再び、カッター423が経路M3を進んだ後、粗加工軌跡L2に沿った経路M4を進むように移動される。これにより、残りの半周分のレンズLEが切り落され、レンズLEは粗加工軌跡L2で加工される。なお、カッター423による粗加工の制御は、図5の例に限られず、種々の制御方法を使用できる。
【0078】
<レンズ屈折面形状の取得>
粗加工が行われた後、第1レンズ形状測定ユニット200AによってレンズLEの屈折面(レンズ前面及びレンズ後面)の形状測定が行われる。例えば、初めに、レンズLEのレンズ前面の形状測定が行われる。
【0079】
制御部50は、移動ユニット300を制御し、Y方向における測定子261の位置が玉型に対応した位置となるように、レンズLE(レンズチャック軸102)をY方向に移動する。次に、制御部50は、レンズ前面が測定子261に接触するように、レンズLEをX方向に移動する。レンズ前面が測定子261に接触したことは、センサ280の出力信号を基に検知される。このときのレンズ前面のX方向の位置は、レンズチャック軸102をX方向に移動させた制御データ(モータ315の駆動データ)と、センサ280の検知データと、に基づいて得られる。その後、制御部50は、レンズLEを回転させながら移動ユニット300を制御し、測定子261のY方向の位置が玉型に対応した位置となるように、レンズLE(レンズチャック軸102)をY方向に移動すると共に、X方向における測定子261の位置が所定の範囲内となるように、レンズ前面形状の測定済み結果に基づいてレンズLEをX方向に移動させる。そして、制御部50は、レンズLEを1回転させることで、玉型に対応したレンズ前面のX方向の形状を、センサ280の検知結果とレンズチャック軸102のX方向における制御データとに基づいて取得する。なお、この測定時の制御動作は、特開2014-4678号公報に記載された技術を採用できるので、詳細はこれを参照されたい。
【0080】
レンズ前面の形状測定が終了すると、測定子262によるレンズ後面の形状測定が、レンズ前面と同様な制御方法によって行われる。玉型に対応したレンズ前面及びレンズ後面の形状が取得されると、例えば、レンズLEの周縁にヤゲン加工が行われる場合、所定のヤゲン計算に基づき、ヤゲン頂点位置を配置する仕上げ加工軌跡(rn,θn,z)が求められる。なお、仕上げ加工軌跡における「z」は、ヤゲン頂点を位置させるレンズLEのコバ部に平行な方向の位置であり、本実施例では、図1に示した眼鏡レンズ加工装置1のXYZ方向と異なるものとして扱っている。
【0081】
なお、レンズ屈折面の形状測定は、レンズ前面及びレンズ後面において、動径長が異なる位置でそれぞれレンズLEの2周測定が行われてもよい。例えば、レンズLEの周縁にヤゲン加工が行われる場合は、玉型に対応したヤゲン頂点位置とヤゲン肩の位置での2周の測定が行われる。これにより、玉型に対応した動径長(rn)付近におけるレンズ屈折面(レンズ前面及びレンズ後面)の傾斜情報が動径角(θn)毎に得られる。また、レンズ屈折面(レンズ前面及びレンズ後面)のカーブ情報が取得される。
【0082】
なお、レンズ屈折面形状の測定は、粗加工前に行われてもよい。ただし、レンズLEは、粗加工によって外形形状が変化することにより、粗加工前に対して粗加工後にはレンズ屈折面が光軸方向に多少歪むことがある。そのため、より精度のよいレンズ屈折面形状を得る上では、粗加工後にレンズ屈折面測定が行われることが好ましい。
【0083】
<コバ角部形状の取得>
粗加工及びレンズ屈折面形状の測定が行われた後、粗加工後のコバ角部の欠け検出が行われるように設定されている場合は、コバ角部形状測定ユニット230によるコバ角部の測定が実行される。例えば、初めに、レンズ前面のコバ角部の形状測定が行われる。図6はレンズ前面のコバ角部の形状測定を説明する図である。
【0084】
制御部50は、Y方向における測定子291(先端部291a)の幅の中央(又は中央よりやや離れた位置)に、粗加工後のレンズ前面側のコバ角部LKaが位置するように、粗加工軌跡に基づいて移動ユニット300を制御し、レンズLEをY方向に移動する。次に、制御部50は、図6(a)に示すように、コバ角部LKaが測定子291に当接するようにレンズLEをX方向に移動する。コバ角部LKaが測定子291に当接したことは、センサ280の出力信号を基に検知される。このときのコバ角部LKaのX方向の位置は、レンズチャック軸102をX方向に移動させた制御データ(モータ315の駆動データ)と、センサ280の検知データと、に基づいて得られる。
【0085】
その後、制御部50は、レンズ前面の形状測定と同様に、レンズLEを回転させながら移動ユニット300を制御し、測定子291のY方向の位置が粗加工軌跡に対応した位置となるように、レンズLE(レンズチャック軸102)をY方向に移動する。また、制御部50は、X方向における測定子291の位置が所定の範囲内となるように、コバ角部に欠けが発生していない場合にレンズLEの粗加工後に予定するX方向におけるコバ角部LKaの予定位置データKXa(後述の図7(a)参照)に基づいてレンズLEをX方向に移動させる。そして、制御部50は、レンズLEを1回転させることで、X方向におけるコバ角部LKaの実測の位置データKXb(θn、Xbn)(n=1,2,3,・・・,N)を、センサ280の検知結果とレンズチャック軸102のX方向における制御データとに基づいて得る。θnは動径角であり、XbnはX方向における基準位置からの距離データである。Nは測定ポイントの数であり、例えば、玉型及び粗加工軌跡のデータと同じく1,000ポイントである。
【0086】
このコバ角部LKaの形状測定において、粗加工によってコバ角部LKaに欠けChが発生していた場合、図6(b)に示すように、測定子291(先端部291a)は、コバ角部LKaの予定位置よりもレンズ後面側に移動することになり、その位置はセンサ280により検知される。図6(b)において、Δdはコバ角部LKaの予定位置に対して欠けChによってレンズ後面側に測定子291がX方向に移動した距離を示す。
【0087】
レンズ前面のコバ角部LKaの形状測定が終了すると、レンズ前面の場合と同様な制御方法によって、測定子292を用いたレンズ後面のコバ角部LKbの測定が実行され、X方向におけるコバ角部LKbの実測の位置データが制御部50によって取得される。
【0088】
<欠けの有無の判定>
レンズ前面及び後面のコバ角部の測定が終了すると、制御部50により、コバ角部に欠けが発生したか否かの判定が行われる。欠けの有無の判定方法の例を説明する。
【0089】
例えば、レンズ前面の欠けの有無の判定は、コバ角部LKaに欠けが発生していない場合の粗加工後に予定する、X方向におけるコバ角部LKaの予定位置データKXaと、コバ角部形状測定ユニット230の測定によって得られたX方向におけるコバ角部LKaの実測の位置データKXbと、の比較に基づいて行われる。
【0090】
図7は、欠けの有無の判定方法の例を説明する図である。図7(a)は、コバ角部LKaに欠けが発生していない場合の粗加工後に予定するコバ角部LKaの予定位置データKXaをグラフにして示した図であり、横軸に動径角(0°~360°)を取り、縦軸にX方向における基準位置から距離(mm)を取っている。コバ角部LKaに欠けが発生していない場合、予定位置データKXaには急峻な変化は現れず、徐々に変化する傾向を示す。
【0091】
ここで、粗加工後に予定するX方向におけるコバ角部LKaの予定位置データKXaを得る方法の例を説明する。例えば、コバ角部LKaの予定位置データKXaは、レンズ前面(レンズ屈折面)の形状データと粗加工軌跡とに基づいて制御部50により求められる。例えば、レンズ前面の形状データは、第1レンズ形状測定ユニット200Aによって測定され、玉型に対応して得られたX方向におけるレンズ前面の位置データが利用される。例えば、X方向におけるレンズ前面の位置データの内の4点を使用することにより、レンズ前面のカーブ情報(球面)が求められ、このカーブ情報と粗加工軌跡とに基づき、粗加工軌跡に対応したX方向におけるコバ角部LKaの予定位置データKXaが数学的に求められる(制御部50により取得される)。なお、レンズ前面の形状データは、第1レンズ形状測定ユニット200Aによって測定された結果を使用するのではなく、予め、データ取得ユニット10によって取得された情報が使用されてもよい。
【0092】
図7(b)は、コバ角部LKaの実測の位置データKXbをグラフにして示した図であり、横軸及び縦軸は図7(a)に対応させている。コバ角部LKaに欠けが発生している場合、実測の位置データKXbには、予定位置データKXaとは異なる変化を示す急峻な変化CDhが現れる。したがって、予定位置データKXaと実測の位置データKXbとを比較することにより、欠けChの有無を判定することができる。
【0093】
例えば、図7(c)は、予定位置データKXaと実測の位置データKXbとの差分データΔDXを計算した値をグラフにした図であり、横軸及び縦軸は図7(a)に対応させている。例えば、差分データΔDXに基づく欠けの有無の判定は、差分データΔDXが所定の閾値SDを超えているか否かにより行われる。例えば、閾値SDは実験的に定められた値である。
【0094】
なお、予定位置データKXaの取得は上記に限られない。例えば、粗加工軌跡に対応したレンズ前面のX方向の位置を、粗加工前に第1レンズ形状測定ユニット200Aによって測定することで予定位置データKXaが取得されてもよい。また、粗加工前に対して粗加工後にレンズ屈折面が光軸方向に歪む現象がある場合は、制御部50は、粗加工前に玉型に対応したレンズ前面のX位置を測定して得たデータと、加工後に玉型に対応したレンズ前面のX位置を測定して得たデータと、に基づいて歪量を求める。そして、制御部50は、求めた歪量に基づき、粗加工前の第1レンズ形状測定ユニット200Aの測定によって得られた予定位置データを補正することで、予定位置データKXaが取得されてもよい。
【0095】
なお、欠けの有無の判定方法は上記に限られない。例えば、実測の位置データKXb(センサ280による測定子291の検知データに基づくX方向の位置データ)に急峻に変化するデータが有るか否かに基づいて欠けの有無を判定してもよい。すなわち、通常、欠けが生じていないコバ角部LKaの位置データKXbにおいては、各測定点(あるいは各測定点の間の変化量)は緩やかに変化する。一方、コバ角部LKaに欠けが生じている場合、図7(b)に示されるように、位置データKXbには急峻な変化CDhが現れる。位置データKXbに急峻な変化が有るか否かは、例えば、次のように判定することができる。例えば、制御部50は、位置データKXbの動径角毎の変化について、ある測定点の前の位置から変化量に基づき、その測定点以降の測定点での変化量を予測し、その予測結果に対して所定量以上の変化があった場合に、急峻な変化があると判定する。
【0096】
図8は、実測の位置データKXbに急峻な変化が有るか否かの判定方法の具体例を説明する図である。図8に示すように、制御部50は、ある測定点F(n)とその1つ前の測定点F(n-1)との位置データの変化量TD(n)を求め、また、測定点F(n)とその次の測定点F(n+1)との位置データの変化量TD(n+1)を求める。そして、制御部50は、変化量TD(n+1)と変化量TD(n)との差分量ΔTDを求め、この差分量ΔTDが判定用閾値STDを超えているか否かによって、急峻な変化の有無を判定する。図8の場合、測定点F(n)から測定点F(n+1)に欠けChによる急峻な変化CDhが発生している例である。なお、判定用閾値STDは、一定値でなく、測定点F(n)より前の幾つかの測定点の変化量に応じて定められると、より精度よく急峻な変化の有無を判定できる。
【0097】
以上のような欠けの有無の判定は、レンズ後面についても行われる。
【0098】
<仕上げ加工>
コバ角部の形状測定及び欠け判定が成された後、仕上げ加工の工程に移行される。例えば、ヤゲン加工が設定されている場合、初めに、制御部50により、玉型データ、レイアウトデータ、レンズ前面及び後面のレンズ形状測定の結果等に基づいてヤゲン軌跡(動径情報と軸L1方向におけるヤゲン頂点の位置の情報)の演算が行われる。その後、演算されたヤゲン軌跡に基づいて移動ユニット300が制御され、粗加工後のレンズLEの周縁が仕上げ加工具163cによってヤゲン加工される。
【0099】
なお、粗加工後のコバ角部に欠けが生じていたとしても、軽微な欠けだった場合、仕上げ加工が行われることにより、コバ角部の欠けは削り取られてしまうので、最終の仕上げ形状には支障はない。仮に、仕上げ代より大きな欠けが生じていた場合には、前述のコバ角部形状測定ユニット230によるコバ角部形状の取得結果に基づき、仕上げ代より大きな欠けが有るかの判定が行われ、仕上げ形状に影響する大きな欠けが有ると判定された場合には、仕上げ加工の工程は停止され、その旨がディスプレイ60によって報知される。
【0100】
<粗加工の加工条件の変更、欠け判定結果の出力>
前述の欠けの有無を判定するステップで、欠けが生じていると判定された場合、制御部50は、粗加工時に使用された加工具が次回以降に使用される際の加工条件を変更することで、次回以降、レンズLEに掛かる負荷を低減させる。例えば、加工条件を変更する例としては、粗加工に使用された加工具と、レンズLEとの位置関係を変化させる速度を変更することが挙げられる。すなわち、粗加工時のレンズチャック軸102の回転速度(送り速度)を減少させることで、単位時間あたりにカッター423がレンズLEを切削する量を減少させ、カッター423にかかる加工負荷を低減させる。また、例えば、制御部50は、粗加工時のカッター423の回転速度(すなわちモータ421の回転速度)を上昇させることで、単位回転あたりにカッター423がレンズを切削する量を減少させ、カッター423にかかる加工負荷を低減させることでもよい。なお、以上に挙げたレンズの回転速度の変更及びカッターの回転速度の変更は、加工負荷を低減させるための加工条件変更方法の一例であり、これに限定されない。粗加工具にかかる負荷が低減されるように粗加工時の加工条件が変更されれば、他の方法であってもよい。
【0101】
また、欠けが生じていると判定された場合、制御部50は判定結果を出力する。例えば、報知手段の一例であるディスプレイ60に粗加工後のコバ角部に欠けが検出された旨のメッセージを表示し、加工具が劣化(摩耗)していることを操作者に報知する。例えば、ディスプレイ60には、欠けが発生した旨の他、粗加工具(カッター423)が摩耗しているために、粗加工具の交換が必要な旨の報知がなされるようにしてもよい。また、欠け判定結果の報知は、レンズLEの加工が終了した後でもよい。
【0102】
また、例えば、粗加工時に変更する加工条件は、操作者が指定してもよい。その場合、例えば図示しないスイッチを操作することで、レンズチャック軸102の回転速度や、カッター423の回転速度を変更できるような構成であっても良い。
【0103】
例えば、粗加工時の加工条件は、その加工条件が変更された回数に基づいて設定される、予め定められた値であってもよい。すなわち、例えば、初回の加工条件変更ではレンズの回転速度をv1(rpm)に変更し、次回の加工条件変更ではレンズの回転速度をv2(rpm)に変更する、というように、加工条件が変更された回数に基づき、所定の加工条件に変更することでおよい。なお、この加工条件の変更は、次回の加工具使用時までに行われればよく、例えば加工条件の変更が行われるのは仕上げ加工の前であっても良い。
【0104】
<コバ角部の欠け検出のタイミング>
なお、制御部50は、粗加工具によるレンズLEの加工量を得た結果に基づき、コバ角部形状測定ユニット230によるコバ角部の測定及びレンズの欠けの検出が行われるようにしてもよい。例えば、コバ角部の測定及びレンズの欠けの検出は、所定の枚数だけレンズLEが加工された場合に行われる。すなわち、例えば、レンズの加工枚数を記憶する記憶手段の例であるメモリ20にはレンズの加工枚数が記憶されており、例えば1000枚目、1500枚目、1700枚目、と所定の間隔で、粗加工後のコバ角部の測定及びレンズの欠けの検出が行われる。もちろん、レンズ加工毎にコバ角部の測定及びレンズの欠けの検出を行っても良い。
【0105】
もちろん、眼鏡レンズ加工装置1は、操作者が制御部50に対し、コバ角部の測定及びレンズの欠けの検出を行わせることができるような構成を備えていても良い。その場合、例えば、図示しないスイッチが眼鏡レンズ加工装置1に備えられており、操作者がそのスイッチを押すことで、制御部50がコバ角部の測定及びレンズの欠けの検出を行う、という構成であっても良い。
【0106】
<コバ角部形状測定ユニットの変容例>
前述した実施例において、コバ角部形状測定ユニット230は、測定子290(測定子291、292)を粗加工後のコバ角部(LKa,LKb)に当接させ、X方向におけるコバ角部の位置を検知するものとしたが、同じ測定子290(測定子291、292)を使用し、Y方向におけるコバ角部の位置を検知する構成としてもよい。この場合、例えば、図2に示された第2レンズ形状測定ユニット200Bの構成要素を一部兼用した構成とすることができる。例えば、Y方向における測定子290(測定子291、292)の位置を検知する検知手段は、第2レンズ形状測定ユニット200Bが備えるセンサ281を使用することができる。
【0107】
この変容における粗加工後のコバ角部の測定(検出)は、次のように行われる。例えば、レンズ前面側のコバ角部LKaの位置を測定する場合、制御部50は、粗加工軌跡に基づいて移動ユニット300を制御し、図6(a)の場合と同じく、コバ角部LKaが測定子291(先端部291a)の所定位置に当接するようにレンズLEをXY方向に移動させる。その後、制御部50は、レンズLEを回転させながら粗加工軌跡に基づいて移動ユニット300を制御し、レンズLEをY方向に移動させると共に、粗加工後に予定するX方向おけるコバ角部LKaの予定位置データKXa(図7(a)参照)に基づいてレンズLEをX方向に移動させる。そして、制御部50は、レンズLEを1回転させることで、Y方向におけるコバ角部LKaの実測の位置データKYb(θn、Ybn)(n=1,2,3,・・・,N)を、センサ281の検知結果と、レンズチャック軸102のY方向における制御データと、に基づいて得る。レンズ後面側のY方向におけるコバ角部LKbの測定は、測定子291が使用され、レンズ前面側と同様な制御によって、Y方向におけるコバ角部の位置データが得られる。
【0108】
レンズ前面及び後面のコバ角部の測定が終了した後、コバ角部の欠けの有無の判定が行われる。この判定は、X方向の欠けの有無の判定方法と同様に、Y方向おけるコバ角部LKaの予定位置データと、コバ角部の測定によって得られたY方向におけるコバ角部LKaの実測の位置データと、の比較に基づいて行うことができる。すなわち、図7(a)に示されたX方向におけるコバ角部LKaの予定位置データは、Y方向における予定位置データに置き換え、図7(b)に示されたX方向におけるコバ角部LKaの実測位置データは、Y方向におけるコバ角部LKaの実測の位置データに置き換える。そして、図7(c)と同様に、コバ角部LKaのY方向における予定位置データと、Y方向における実測の位置データと、の差分を計算することで、欠けCDhの有無を判定できる。
【0109】
また、X方向の場合と同様に、コバ角部LKaのY方向における実測の位置データに基づいて欠けCDhの有無を判定することでもよい。すなわち、実測の位置データKXbに急峻な変化が有るか否かに基づいて、欠けCDhの有無を判定することでもよい。
【0110】
<その他の変容例>
上記ではコバ角部の欠け検出(測定)を粗加工後に行う例を示したが、仕上げ加工具(例えば、仕上げ加工具163c、又はカッター423にヤゲン形成用の溝を形成することで、ヤゲン加工にも兼用する構成とした加工具)による仕上げ加工後にも行ってもよい。
【0111】
例えば、仕上げ加工後のコバ角部の欠け検出においても、コバ角部形状測定ユニット230、又は前述したコバ角部形状測定ユニットの変容例を使用できる。すなわち、図9に示すように、測定子291は仕上げ加工後のレンズ前面LEf側のコバ角部LKaに当接する測定子として使用され、測定子292は仕上げ加工後のレンズ後面LEr側のコバ角部LKBに当接する測定子として使用される。なお、仕上げ加工において、ヤゲン加工を行う場合は、測定子291の先端部291aの傾斜角SA及び測定子292の先端部292aの傾斜角SBは、レンズLEの周縁に形成されたヤゲン前面の傾斜角YA(X方向に対する角度)及びヤゲン後面の傾斜角YB(X方向に対する角度)に基づいて形成される。例えば、傾斜角SAは、傾斜角YAよりも大きく、かつレンズ前面LEfの傾斜角LfAよりも小さな角度に形成され、傾斜角SBは、傾斜角YBよりも大きく、かつレンズ後面LErの傾斜角LfBよりも小さな角度に形成されている。これにより、測定子がヤゲンに接触することなく、それぞれコバ角部LKa,LKbに当接して測定できる。
【0112】
コバ角部形状測定ユニット230による仕上げ加工後のコバ角部LKa,LKbの測定動作及び欠け検出は、基本的に、粗加工軌跡を、仕上げ軌跡及びヤゲン高さに基づいたヤゲン肩の軌跡に置き換えることで、粗加工後のコバ角部の測定動作及び検出と同様に行える。このため、詳細な説明は省略する。なお、仕上げ加工後のコバ角部の検知においては、例えば、制御部50は、X方向における仕上げ加工後に予定するコバ角部(ヤゲン肩のコバ角部)の位置データを、第1レンズ形状測定ユニット200Aによって得られた屈折面情報と、玉型又は仕上げ加工軌跡と、ヤゲンの高さ情報と、に基づいて取得する。
【0113】
このような構成によって仕上げ加工後のコバ角部の欠け検出が行える。例えば、特に、レンズLEを集中したて加工する加工センタにおいては、レンズLEの仕上げ加工まで自動的に行われる。そして、多数のレンズLEの仕上げ加工が完了した後に、作業者が加工されたレンズLEを検査するため、仕上げ加工工程が終了した段階で直ぐにコバ角部に欠けが発生したことを認識できない場合がある。そのため、仕上げ加工後のコバ角部についても、欠け検出を行うと都合がよい。
【0114】
また、本実施例において、加工条件を変更するステップの代わりに、劣化した加工具を交換するステップが実行されても良い。例えば、欠けを検知した場合、報知手段の一例であるディスプレイ60に劣化した加工具を交換する旨のメッセージが表示される。これにより、操作者は加工具を破損する前に交換できるため、レンズLEを良好に加工できる。もちろん、加工条件を変更するステップと、劣化した加工具を交換するステップの、少なくとも1つが実行される構成であっても良い。
【0115】
例えば、制御部50は、レンズの欠けを検知した場合、加工条件を変更するか、劣化した加工具を交換するか、操作者に選択させてもよい。例えば、ディスプレイ60に加工条件を変更するか、劣化した加工具を交換するか、選択する旨のメッセージが表示される。操作者は図示無きスイッチによって加工条件を変更するか、劣化した加工具を交換するかのいずれかを選択する、という構成であっても良い。
【0116】
例えば、制御部50は、粗加工(仕上げ加工も同様)の加工条件を変更した回数によって、加工条件を変更するか、加工具を交換するかを変更してもよい。すなわち、例えば加工条件を所定の回数(例えば、2回)変更した場合、次にレンズの欠けを検知した場合に、劣化した加工具を変更するステップを実行する、という構成であっても良い。
【0117】
例えば、制御部50は、レンズの欠けを検知した場合、今まで加工したレンズの加工量から、加工条件を変更するか、劣化した加工具を交換するかを変更しても良い。例えば、今まで加工したレンズの加工量は、例えば、レンズの加工枚数(加工具の使用回数)、加工具の使用時間、加工具の回転数、加工具の移動距離に基づいて求められる値である。
【0118】
例えば、制御部50は、加工条件が変更された状態で加工具が交換された場合、図示を略す粗加工具交換の検知手段(例えば、取り換えられた粗加工具の設置を検知するセンサや、操作者が入力するスイッチ信号)によって検知し、加工条件を変更する前の条件に戻しても良い。
【0119】
以上のように、上述した典型的な実施例は種々の変容が可能であり、また、本開示はここに示した実施例に限られず、本開示の技術思想を同一にする範囲においてさらに種々の変容が可能である。
【符号の説明】
【0120】
1 眼鏡レンズ加工装置
100 レンズ保持ユニット
102 レンズチャック軸
200 レンズ形状測定ユニット
230 コバ角部形状測定ユニット
280、281 センサ
290 測定子
300 移動ユニット
400 第2加工具ユニット
423 カッター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9