(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】電力合成器
(51)【国際特許分類】
H01P 5/12 20060101AFI20241218BHJP
H01P 5/107 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
H01P5/12 G
H01P5/107 C
H01P5/107 F
(21)【出願番号】P 2021041215
(22)【出願日】2021-03-15
【審査請求日】2023-10-12
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、防衛装備庁、安全保障技術研究推進制度、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井田 佳孝
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-293707(JP,A)
【文献】特開2013-005433(JP,A)
【文献】特表2001-505724(JP,A)
【文献】特開2018-082394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/12
H01P 5/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1マイクロストリップ線路が設けられた
誘電体基板である第1基板と、
第2マイクロストリップ線路が設けられた
誘電体基板である第2基板と、
前記第1マイクロストリップ線路及び前記第2マイクロストリップ線路に接続され、前記第1マイクロストリップ線路を伝送する第1電力と前記第2マイクロストリップ線路を伝送する第2電力とを合成して伝送する、中空の内壁に金属膜が設けられた中空導波路と、を備え
、
前記第1基板は、前記第1マイクロストリップ線路の前方に第1開口を有し、
前記第2基板は、前記第2マイクロストリップ線路の前方に第2開口を有し、
前記中空導波路は、前記第1基板と前記第2基板が積層され、前記第1開口と前記第2開口が繋がることで形成される、電力合成器。
【請求項2】
第1マイクロストリップ線路が設けられた第1基板と、
第2マイクロストリップ線路が設けられた第2基板と、
前記第1マイクロストリップ線路及び前記第2マイクロストリップ線路に接続され、前記第1マイクロストリップ線路を伝送する第1電力と前記第2マイクロストリップ線路を伝送する第2電力とを合成して伝送する、中空の内壁に金属膜が設けられた中空導波路と、を備え、
前記第1基板は、前記中空導波路に突出し、前記第1マイクロストリップ線路が設けられた第1突起部を備え、
前記第2基板は、前記中空導波路に突出し、前記第2マイクロストリップ線路が設けられた第2突起部を備え、
前記第1基板と前記第2基板は、前記第1突起部と前記第2突起部が積層方向にて重なるように積層され、
前記第1電力は前記第1突起部を介して前記中空導波路に伝送され、前記第2電力は前記第2突起部を介して前記中空導波路に伝送される、電力合成器。
【請求項3】
前記第1基板と前記第2基板は、前記第1マイクロストリップ線路と前記第2マイクロストリップ線路が積層方向にて重なるように積層される、請求項1または2に記載の電力合成器。
【請求項4】
前記第1マイクロストリップ線路は前記第1基板の前記第2基板とは反対側の面に設けられ、
前記第2マイクロストリップ線路は前記第2基板の前記第1基板とは反対側の面に設けられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の電力合成器。
【請求項5】
前記第1マイクロストリップ線路は前記第1基板の前記第2基板とは反対側の面に設けられ、
前記第2マイクロストリップ線路は前記第2基板の前記第1基板側の面に設けられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の電力合成器。
【請求項6】
前記中空導波路を伝送する電力が入力される第3マイクロストリップ線路が設けられた第3基板を備え、
前記中空導波路は、前記第3基板に向かって高さが徐々に低くなる、請求項1から
5のいずれか一項に記載の電力合成器。
【請求項7】
前記中空導波路は、前記第3基板に向かって高さが階段状に低くなる、請求項
6に記載の電力合成器。
【請求項8】
前記中空導波路は、前記第3基板に向かって高さがテーパ状に低くなる、請求項
6に記載の電力合成器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力合成器に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロストリップ線路の高密度実装のために、接地導体基板の両面に誘電体層を設けた基板の両面にマイクロストリップ線路を設けた構造が知られている。この場合に、一方のマイクロストリップ線路を伝送する電磁波を他方のマイクロストリップ線路に導くために、接地導体基板に結合穴を設け且つ結合穴から放射される電磁波を遮蔽する筐体を設けることが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーダーシステム及び携帯電話などの通信システムでは、高出力化のために、複数のトランジスタを並列に配置し、これら複数のトランジスタの出力電力を電力合成器で合成することが行われている。このような電力合成器としてトーナメント型の電力合成器が知られている。しかしながら、トーナメント型の電力合成器では、電力合成器自体が大型になってしまう。
【0005】
1つの側面では、電力合成器を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、第1マイクロストリップ線路が設けられた誘電体基板である第1基板と、第2マイクロストリップ線路が設けられた誘電体基板である第2基板と、前記第1マイクロストリップ線路及び前記第2マイクロストリップ線路に接続され、前記第1マイクロストリップ線路を伝送する第1電力と前記第2マイクロストリップ線路を伝送する第2電力とを合成して伝送する、中空の内壁に金属膜が設けられた中空導波路と、を備え、前記第1基板は、前記第1マイクロストリップ線路の前方に第1開口を有し、前記第2基板は、前記第2マイクロストリップ線路の前方に第2開口を有し、前記中空導波路は、前記第1基板と前記第2基板が積層され、前記第1開口と前記第2開口が繋がることで形成される、電力合成器である。
1つの態様では、第1マイクロストリップ線路が設けられた第1基板と、第2マイクロストリップ線路が設けられた第2基板と、前記第1マイクロストリップ線路及び前記第2マイクロストリップ線路に接続され、前記第1マイクロストリップ線路を伝送する第1電力と前記第2マイクロストリップ線路を伝送する第2電力とを合成して伝送する、中空の内壁に金属膜が設けられた中空導波路と、を備え、前記第1基板は、前記中空導波路に突出し、前記第1マイクロストリップ線路が設けられた第1突起部を備え、前記第2基板は、前記中空導波路に突出し、前記第2マイクロストリップ線路が設けられた第2突起部を備え、前記第1基板と前記第2基板は、前記第1突起部と前記第2突起部が積層方向にて重なるように積層され、前記第1電力は前記第1突起部を介して前記中空導波路に伝送され、前記第2電力は前記第2突起部を介して前記中空導波路に伝送される、電力合成器である。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面として、電力合成器を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例1に係る電力合成器の斜視図である。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は、線路基板の斜視図である。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、線路基板の斜視図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、中間基板の斜視図である。
【
図7】
図7は、実施例1に係る電力合成器の動作を示す断面図である。
【
図8】
図8(a)及び
図8(b)は、比較例に係る電力合成器を示す平面図である。
【
図10】
図10は、実施例2に係る電力合成器の斜視図である。
【
図14】
図14は、実施例2に係る電力合成器の動作を示す断面図である。
【
図15】
図15は、シミュレーションに用いた各種寸法を示す図である。
【
図16】
図16は、実施例2に係る電力合成器の電界ベクトルのシミュレーション結果である。
【
図17】
図17は、実施例2に係る電力合成器の損失特性のシミュレーション結果である。
【
図18】
図18(a)は、実施例3に係る電力合成器の断面図、
図18(b)は、実施例3に係る電力合成器の動作を示す断面図である。
【
図19】
図19は、実施例4に係る電力合成器の断面図である。
【
図20】
図20は、実施例5に係る電力合成器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、実施例1に係る電力合成器100の斜視図である。
図2は、
図1のA-A間の断面図である。
図3は、
図1の電力合成器100の分解斜視図である。電力合成器100は、例えば並列に接続された複数のトランジスタの出力電力を合成して伝送するものであり、レーダーシステム又は携帯電話などの通信システムなど、様々なシステムに用いられる。
図1から
図3に示すように、電力合成器100は、マイクロストリップ線路13aが設けられた線路基板10aと、マイクロストリップ線路13bが設けられた線路基板10bと、中空導波路60と、を備える。マイクロストリップ線路13a及び13bの延伸方向をX軸方向、幅方向をY軸方向とし、線路基板10a及び10bの積層方向をZ軸方向とする。なお、以下において、電力合成器の上下方向を言及する場合には、Z軸方向の正方向を上方向とし、負方向を下方向とする。
【0011】
マイクロストリップ線路13aは線路基板10aの上面に設けられ、線路基板10aの下面は金属膜15aで覆われている。マイクロストリップ線路13bは線路基板10bの下面に設けられ、線路基板10bの上面は金属膜15bで覆われている。金属膜15a及び15bは、線路基板10a及び10bのマイクロストリップ線路13a及び13bとは反対側の面に設けられる接地導体膜である。
【0012】
線路基板10aと線路基板10bの間には中間基板30が設けられている。中間基板30は、上面が金属膜34で覆われ、下面が金属膜35で覆われている。金属膜34は、線路基板10aの下面に設けられた金属膜15aに接し、金属膜35は、線路基板10bの上面に設けられた金属膜15bに接している。
【0013】
ここで、線路基板10a及び10bと中間基板30について詳しく説明する。
図4(a)及び
図4(b)は、線路基板10aの斜視図である。
図4(a)は、線路基板10aを+Z側から見た斜視図であり、
図4(b)は、-Z側から見た斜視図である。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、線路基板10aは、中央部分が切り抜かれて開口19aが形成されている。また、線路基板10aは、開口19aにおける側面のうちマイクロストリップ線路13aが設けられた側の側面から開口19aに突き出た突起部18aを備える。
【0014】
図4(a)に示すように、線路基板10aの上面11aに設けられたマイクロストリップ線路13aは、上面11aの辺20aから開口19aにかけて延びている。マイクロストリップ線路13aは、突起部18aにも設けられている。マイクロストリップ線路13aは、例えば辺20aから一定の距離までは一定の幅(Y軸方向における長さが一定)であり、そこから開口19aに向けてテーパ状に幅が広がり、開口19a近傍では幅が更に大きく広がっている。辺20aに交差する辺20b及び20cと開口19aとの間には金属膜14aが設けられている。線路基板10aは、開口19aにおける側面のうちマイクロストリップ線路13aが設けられた側の側面に2つの切り欠き17aを有する。2つの切り欠き17aは突起部18aを挟んでいる。切り欠き17aによって、マイクロストリップ線路13aと金属膜14aとは分離している。
【0015】
図4(b)に示すように、線路基板10aの下面12aは金属膜15aで覆われている。金属膜15aは、突起部18aにも設けられている。
【0016】
図4(a)及び
図4(b)に示すように、線路基板10aの開口19aにおける側面に、金属膜14aと金属膜15aに接する金属膜16aが設けられている。線路基板10aの開口19aにおける側面のうち2つの切り欠き17aの間の側面には金属膜は設けられていない。よって、突起部18aの側面には金属膜は設けられていない。
【0017】
図5(a)及び
図5(b)は、線路基板10bの斜視図である。
図5(a)は、線路基板10bを+Z側から見た斜視図であり、
図5(b)は、-Z側から見た斜視図である。線路基板10bは、線路基板10aを表裏反転した態様となっている。
図5(a)及び
図5(b)に示すように、線路基板10bは、中央部分が切り抜かれて開口19bが形成され、開口19bにおける側面のうちマイクロストリップ線路13bが設けられた側の側面から開口19bに突き出た突起部18bを備える。
【0018】
図5(a)に示すように、線路基板10bの上面11bは金属膜15bで覆われている。金属膜15bは、突起部18bにも設けられている。
【0019】
図5(b)に示すように、線路基板10bの下面12bに設けられたマイクロストリップ線路13bは、下面12bの辺21aから開口19bにかけて延びている。マイクロストリップ線路13bは、突起部18bにも設けられている。マイクロストリップ線路13bは、例えば辺21aから一定の距離までは一定の幅(Y軸方向における長さが一定)であり、そこから開口19bに向けてテーパ状に幅が広がり、開口19b近傍では幅が更に大きく広がっている。辺21aに交差する辺21b及び21cと開口19bとの間には金属膜14bが設けられている。線路基板10bは、開口19bにおける側面のうちマイクロストリップ線路13bが設けられた側の側面に2つの切り欠き17bを有する。2つの切り欠き17bは突起部18bを挟んでいる。切り欠き17bによって、マイクロストリップ線路13bと金属膜14bとは分離している。
【0020】
図5(a)及び
図5(b)に示すように、線路基板10bの開口19bにおける側面に、金属膜14bと金属膜15bに接する金属膜16bが設けられている。線路基板10bの開口19bにおける側面のうち2つの切り欠き17bの間の側面には金属膜は設けられていない。よって、突起部18bの側面には金属膜は設けられていない。
【0021】
図6(a)及び
図6(b)は、中間基板30の斜視図である。
図6(a)は、中間基板30を+Z側から見た斜視図であり、
図6(b)は、-Z側から見た斜視図である。
図6(a)及び
図6(b)に示すように、中間基板30は、中央部分が切り抜かれて開口39が形成されている。また、中間基板30は、開口39における側面に開口39に突き出た突起部38を備える。突起部38は、線路基板10aの突起部18a及び線路基板10bの突起部18bに対応する位置に設けられている。
【0022】
図6(a)に示すように、中間基板30の上面31は金属膜34で覆われている。金属膜34は、突起部38にも設けられている。
図6(b)に示すように、中間基板30の下面32は金属膜35で覆われている。金属膜35は、突起部38にも設けられている。
【0023】
図6(a)及び
図6(b)に示すように、中間基板30の開口39における側面に、金属膜34と金属膜35に接する金属膜36が設けられている。金属膜36は、中間基板30の突起部38が設けられた側面にも設けられている。よって、突起部38の側面にも金属膜36は設けられている。
【0024】
図1から
図3に示すように、線路基板10bと中間基板30と線路基板10aが+Z方向にこの順に積層されている。線路基板10aと中間基板30と線路基板10bそれぞれの開口19a、39、19bを挟むように、線路基板10aの上面に上部基板40が設けられ、線路基板10bの下面に下部基板50が設けられている。これにより、開口19a、39、19bからなる中空61が形成されている。
【0025】
線路基板10aと線路基板10bは、マイクロストリップ線路13aとマイクロストリップ線路13bがZ軸方向にて重なるように積層されている。マイクロストリップ線路13aとマイクロストリップ線路13bが重なるとは、各々の面積の半分以上が重なる場合であり、80%以上が重なる場合が好ましく、90%以上が重なる場合がより好ましく、95%以上が重なる場合が更に好ましい。
【0026】
上部基板40は、上面に金属膜42が設けられ、下面に金属膜44が設けられている。金属膜44は、線路基板10aの上面に設けられたマイクロストリップ線路13a及び金属膜14aに接している。なお、金属膜42は設けられていない場合でもよい。
【0027】
下部基板50は、上面に金属膜52が設けられ、下面に金属膜54が設けられている。金属膜52は、線路基板10bの下面に設けられたマイクロストリップ線路13b及び金属膜14bに接している。なお、金属膜54は設けられていない場合でもよい。
【0028】
中空61の上側の内壁は、上部基板40の下面であり、金属膜44で覆われている。中空61の下側の内壁は、下部基板50の上面であり、金属膜52で覆われている。中空61の内側壁は、線路基板10aの開口19aにおける側面と中間基板30の開口39における側面と線路基板10bの開口19bにおける側面とで形成されている。それぞれの側面には金属膜16a、36、16bが設けられていることから、中空61の内側壁は、金属膜16a、36、16bより形成される金属膜62で覆われている。このため、中空61は、電磁波が伝搬する中空導波路60として機能する。電磁波は中空61内を伝搬する。
【0029】
なお、中空導波路60は、内側壁が金属膜62で覆われている場合に限られず、金属膜62の代わりに線路基板10a及び10bと中間基板30にスルーホールが設けられている場合など、その他の構成をしていてもよい。
【0030】
線路基板10a及び10bと中間基板30に設けられた突起部18a、18b、38は、Z軸方向にて重なっている。ここで、突起部18a、18b、38が重なるとは、各々の面積の半分以上が重なる場合であり、80%以上が重なる場合が好ましく、90%以上が重なる場合がより好ましく、95%以上が重なる場合が更に好ましい。重なった突起部18a、18b、38をまとめて突起部8と称すこととする。突起部8は、マイクロストリップ線路13a及び13bと中空導波路60との間で電磁波の伝搬モードを滑らかに変換する機能を有する。また、マイクロストリップ線路13a及び13bの幅が開口19a及び19b近傍で広くなることによっても、マイクロストリップ線路13a及び13bと中空導波路60との間の電磁波の変換が低損失で行われるようになる。なお、中間基板30には突起部38が設けられていない場合でも、マイクロストリップ線路13a及び13bと中空導波路60との間の電磁波の変換を低損失でできる。しかしながら、更なる低損失のためには、中間基板30にも突起部38が設けられることが好ましい。
【0031】
線路基板10a及び10b、中間基板30、上部基板40、及び下部基板50は、誘電体基板であり、例えば樹脂材料(フッ素系樹脂材料など)で形成されている。マイクロストリップ線路13a及び13b、金属膜14a及び14b、金属膜15a及び15b、金属膜16a及び16b、金属膜34~36、金属膜42及び44、並びに、金属膜52及び54は、例えば銅などの導体金属で形成されている。
【0032】
次に、
図7を用いて、実施例1の電力合成器100の動作を説明する。
図7において、矢印はマイクロストリップ線路13a及び13bを電磁波が伝搬するときに発生する電界を示している。マイクロストリップ線路13a及び13bには、例えば並列に接続された2つのトランジスタ90a、90bから逆相の高周波信号が入力される。例えば、マイクロストリップ線路13aには初期位相が0°の高周波信号が入力され、マイクロストリップ線路13bには初期位相が180°の高周波信号が入力される。
【0033】
マイクロストリップ線路13a及び13bを電磁波が伝搬するときに電界が発生する。ここで、マイクロストリップ線路13aは線路基板10aの上面に設けられ、マイクロストリップ線路13bは線路基板10bの下面に設けられている。この場合に、マイクロストリップ線路13aと13bに逆相の高周波信号が入力されることで、マイクロストリップ線路13aと13bを伝搬する電磁波は電界の向きがほぼ揃って伝搬する。
【0034】
マイクロストリップ線路13a及び13bを伝搬する電磁波は、突起部8によって伝搬モードが変換された後、中空導波路60において電界の向きがほぼ揃った状態でそれぞれの電磁波の電力が合成される。これにより、損失の低下が抑制されつつ電力が合成されるようになる。
【0035】
[比較例]
図8(a)及び
図8(b)は、比較例に係る電力合成器を示す平面図である。
図9は、
図8(a)及び
図8(b)の中空導波路520の断面図である。
図8(a)に示す比較例1の電力合成器1000aは1段のトーナメント型電力合成器であり、
図8(b)に示す比較例2の電力合成器1000bは2段のトーナメント型電力合成器である。電力合成器1000a及び1000bは、中空導波路520によってトーナメント型回路が形成されている。中空導波路520は、
図9に示すように、金属膜522が設けられた基板512と金属膜524が設けられた基板514とが金属膜526が設けられた基板510を挟むことで形成される。基板510には開口が形成され、金属膜526は開口の側面に設けられている。金属膜522と金属膜524と金属膜526により囲まれた中空が中空導波路520となる。
【0036】
比較例1の電力合成器1000aは、並列に接続された2つのトランジスタ590a、590bから出力された高周波信号の電力をトーナメント型回路により合成して出力する。比較例2の電力合成器1000bは、並列に接続された4つのトランジスタ590a~590dから出力された高周波信号の電力をトーナメント型回路により合成して出力する。
【0037】
中空導波路520の幅Wは、伝搬する電磁波の波長の1/2程度となる。このような中空導波路520がトーナメント型に設けられた電力合成器1000a及び1000bでは、合成器自体が大型化してしまう。このため、中空導波路520が長くなり、損失の増大を招いてしまう。
【0038】
一方、実施例1の電力合成器100は、
図1から
図3のように、マイクロストリップ線路13aとマイクロストリップ線路13bに中空導波路60が接続されている。マイクロストリップ線路13aを伝送する電力とマイクロストリップ線路13bを伝送する電力は、中空導波路60により合成されて伝送する。この構成によれば、電力合成器100の幅方向(Y軸方向)の大きさは、1つの中空導波路60の幅程度とすることができ、電力合成器100を小型化することができる。電力合成器100が小型になることで、中空導波路60の長さが短くなり、損失の増大を抑制できる。
【0039】
また、実施例1では、
図1から
図3のように、中空導波路60は、積層された複数の線路基板10a、中間基板30、線路基板10bに設けられた開口19a、39、19bにより形成されている。この構成によれば、電力合成器100の幅方向(Y軸方向)の大きさは中空導波路60の幅程度となることに加え、高さ方向(Z軸方向)の大きさは複数枚の基板の合計厚さ程度となるため、電力合成器100を小型化することができる。
【0040】
また、実施例1では、
図2及び
図3のように、線路基板10aと線路基板10bは、マイクロストリップ線路13aとマイクロストリップ線路13bがZ軸方向(積層方向)にて重なるように積層されている。この構成によれば、マイクロストリップ線路13aを伝送する電力とマイクロストリップ線路13bを伝送する電力が、中空導波路60においてZ軸方向で略一致して合成されるため、損失の低下を抑制して電力を合成することができる。
【0041】
また、実施例1では、マイクロストリップ線路13aは線路基板10aの線路基板10bとは反対側の上面11aに設けられ、マイクロストリップ線路13bは線路基板10bの線路基板10aとは反対側の下面12bに設けられている。この構成によれば、マイクロストリップ線路13aとマイクロストリップ線路13bに逆相の高周波信号に入力される場合に、中空導波路60において電界の向きがほぼ揃った状態でそれぞれの電磁波の電力が合成される。したがって、逆相の高周波信号が入力される場合に対応した電力合成器100を得ることができる。
【0042】
また、実施例1では、マイクロストリップ線路13aを伝送する電力は線路基板10aに設けられた突起部18aを介して中空導波路60に伝送される。マイクロストリップ線路13bを伝送した電力は線路基板10bに設けられた突起部18bを介して中空導波路60に伝送される。突起部18a及び18bは、マイクロストリップ線路13a及び13bと中空導波路60との間で電磁波の伝搬モードを滑らかに変換する機能を有するため、損失の低下を抑制しつつ電力を合成することができる。また、線路基板10aと線路基板10bは、突起部18aと突起部18bがZ軸方向(積層方向)にて重なるように積層されている。これにより、マイクロストリップ線路13aを伝送する電力とマイクロストリップ線路13bを伝送する電力は、中空導波路60においてZ軸方向で略一致した位置で合成されるため、更に損失の低下を抑制して電力を合成することができる。
【実施例2】
【0043】
図10は、実施例2に係る電力合成器200の斜視図である。
図11は、
図10のA-A間の断面図である。
図12は、
図10の電力合成器200の分解斜視図である。実施例2の電力合成器200は、
図10から
図12に示すように、4つの線路基板10c、10d、10e、10fを備える。線路基板10c及び10eは、
図4(a)及び
図4(b)に示した線路基板10aと同様の構成をしている。すなわち、線路基板10cは、開口19cと、2つの切り欠き17cの間の突起部18cと、を有する。線路基板10cの上面には、マイクロストリップ線路13cと金属膜14cが設けられている。線路基板10cの下面には、金属膜15cが設けられている。開口19cにおける線路基板10cの側面には金属膜16cが設けられている。線路基板10eは、開口19eと、2つの切り欠き17eの間の突起部18eと、を有する。線路基板10eの上面には、マイクロストリップ線路13eと金属膜14eが設けられている。線路基板10eの下面には、金属膜15eが設けられている。開口19eにおける線路基板10eの側面には金属膜16eが設けられている。金属膜15c及び15eは、線路基板10c及び10eのマイクロストリップ線路13c及び13eとは反対側の面に設けられる接地導体膜である。
【0044】
線路基板10d及び10fは、
図5(a)及び
図5(b)に示した線路基板10bと同様の構成をしている。すなわち、線路基板10dは、開口19dと、2つの切り欠き17dの間の突起部18dと、を有する。線路基板10dの上面には、金属膜15dが設けられている。線路基板10dの下面には、マイクロストリップ線路13dと金属膜14dが設けられている。開口19dにおける線路基板10dの側面には金属膜16dが設けられている。線路基板10fは、開口19fと、2つの切り欠き17fの間の突起部18fと、を有する。線路基板10fの上面には、金属膜15fが設けられている。線路基板10fの下面には、マイクロストリップ線路13fと金属膜14fが設けられている。開口19fにおける線路基板10fの側面には金属膜16fが設けられている。金属膜15d及び15fは、線路基板10d及び10fのマイクロストリップ線路13d及び13fとは反対側の面に設けられる接地導体膜である。
【0045】
線路基板10cと線路基板10dの間、及び、線路基板10eと線路基板10fの間、に中間基板30が設けられている。線路基板10cと線路基板10dの間に設けられた中間基板30の上面の金属膜34は線路基板10cの金属膜15cに接し、下面の金属膜35は線路基板10dの金属膜15dに接している。線路基板10eと線路基板10fの間に設けられた中間基板30の上面の金属膜34は線路基板10eの金属膜15eに接し、下面の金属膜35は線路基板10fの金属膜15fに接している。
【0046】
線路基板10dと線路基板10eの間には、中間基板70が4層積層されている。
図13(a)及び
図13(b)は、中間基板70の斜視図である。
図13(a)は、中間基板70を+Z側から見た斜視図であり、
図13(b)は、-Z側から見た斜視図である。
図13(a)及び
図13(b)に示すように、中間基板70は、中央部分が切り抜かれて開口79が形成されている。また、中間基板70は、開口79における中間基板70の側面に開口79に突き出た突起部78を備える。突起部78は、線路基板10c~10fの突起部18c~18f及び中間基板30の突起部38に対応する位置に設けられている。
【0047】
図13(a)に示すように、中間基板70の上面71は金属膜74で覆われている。金属膜74は、突起部78にも設けられている。
図13(b)に示すように、中間基板70の下面72は金属膜75で覆われている。金属膜75は、突起部78にも設けられている。
【0048】
図13(a)及び
図13(b)に示すように、開口79における中間基板70の側面に金属膜74と金属膜75に接する金属膜76が設けられている。金属膜76は、中間基板70の突起部78が設けられた側面にも設けられている。よって、突起部78の側面にも金属膜76が設けられている。このように、中間基板70は、中間基板30に比べて、外形が異なっている以外は同様の構成をしている。
【0049】
図10から
図12に示すように、+Z方向に向かって、線路基板10f、中間基板30、線路基板10e、4層の中間基板70、線路基板10d、中間基板30、線路基板10cがこの順に積層されている。それぞれの開口19f、39、19e、79、19d、39、19cを挟むように、線路基板10cの上面に上部基板40が設けられ、線路基板10fの下面に下部基板50が設けられている。これにより、開口19c、39、19d、79、19e、39、19fからなる中空61aが形成されている。
【0050】
中空61aの上側の内壁は、上部基板40の下面であり、金属膜44で覆われている。中空61aの下側の内壁は、下部基板50の上面であり、金属膜52で覆われている。中空61aの内側壁は、開口19c~19fにおける線路基板10c~10fの側面と開口39における中間基板30の側面と開口79における中間基板70の側面とで形成されている。それぞれの側面には金属膜16c~16f、36、76が設けられていることから、中空61aの内側壁は、金属膜16c~16f、36、76より形成される金属膜62aで覆われている。このため、中空61aは中空導波路60aとして機能する。
【0051】
線路基板10c~10fは、それぞれのマイクロストリップ線路13c~13fがZ軸方向にて重なるように積層されている。また、線路基板10c~10fと中間基板30と中間基板70に設けられた突起部18c~18f、38、78は、Z軸方向にて重なっている。重なった突起部18c~18f、38、78をまとめて突起部8aと称すこととする。突起部8aは、マイクロストリップ線路13c~13fと中空導波路60aとの間で電磁波の伝搬モードを滑らかに変換する機能を有する。なお、中間基板30及び70には突起部38及び78が設けられていない場合でも、マイクロストリップ線路13c~13fと中空導波路60aとの間の電磁波の変換を低損失でできる。しかしながら、更なる低損失のためには、中間基板30及び70にも突起部38及び78が設けられていることが好ましい。
【0052】
次に、
図14を用いて、実施例2の電力合成器200の動作を説明する。
図14において、矢印はマイクロストリップ線路13c~13fを電磁波が伝搬するときに発生する電界を示している。マイクロストリップ線路13cと13eには、例えば並列に接続された4つのトランジスタ90a~90dのうちの2つのトランジスタ90a、90cから同相の高周波信号が入力される。マイクロストリップ線路13dと13fには、マイクロストリップ線路13cと13eに入力される高周波信号とは逆相の高周波信号が残りの2つのトランジスタ90b、90dから入力される。例えば、マイクロストリップ線路13c及び13eには初期位相が0°の高周波信号が入力され、マイクロストリップ線路13d及び13fには初期位相が180°の高周波信号が入力される。
【0053】
マイクロストリップ線路13c及び13eは線路基板10c及び10eの上面に設けられ、マイクロストリップ線路13d及び13fは線路基板10d及び10fの下面に設けられている。この場合に、マイクロストリップ線路13cと13eに同相の高周波信号が入力され、マイクロストリップ線路13dと13fにマイクロストリップ線路13c及び13eとは逆相の高周波信号が入力されることで、マイクロストリップ線路13c~13fを伝搬する電磁波は電界の向きがほぼ揃って伝搬する。
【0054】
マイクロストリップ線路13c~13fを伝搬する電磁波は、突起部8aによって伝搬モードが変換された後、中空導波路60aにおいて電界の向きがほぼ揃った状態でそれぞれの電磁波の電力が合成される。これにより、損失の低下が抑制されつつ電力が合成されるようになる。
【0055】
[シミュレーション]
実施例2の電力合成器200に対して行ったシミュレーションについて説明する。
図15は、シミュレーションに用いた各種寸法を示す図である。なお、
図15では、マイクロストリップ線路13c~13fをマイクロストリップ線路13と図示し、金属膜14c~14fを金属膜14と図示し、切り欠き17c~17fを切り欠き17と図示している。突起部18c~18f、38、78を突起部8aと図示している。
図15を参照しつつ、シミュレーションを行った条件を以下に示す。
線路基板10c~10f、中間基板30及び70:厚さが1.524mmのRogers RO4003C
マイクロストリップ線路13c~13f:厚さ35μmの銅膜
金属膜14c~14f、15c~15f、16c~16f、34~36、74~76:厚さ35μmの銅膜
マイクロストリップ線路13c~13fのテーパ前の幅W1:9mm
マイクロストリップ線路13c~13fのテーパ後の幅W2:11mm
マイクロストリップ線路13c~13fのテーパの長さL1:8mm
マイクロストリップ線路13c~13fの切り欠きの間の幅W3:18mm
突起部18c~18f、38、78の長さL2:7mm
突起部18c~18f、38、78の最大幅W4:3mm
切り欠き17c~17fの幅W5:0.5mm
中空導波路60aの幅W6:25mm
マイクロストリップ線路13c~13fの特性インピーダンス:25Ω
また、シミュレーションは、マイクロストリップ線路13cと13eに同相の高周波信号が入力され、マイクロストリップ線路13dと13fにマイクロストリップ線路13c及び13eとは逆相の高周波信号が入力されるとした。
【0056】
図16は、実施例2に係る電力合成器200の電界ベクトルのシミュレーション結果である。
図16において、矢印の向きでマイクロストリップ線路13c~13fを電磁波が伝搬するときに発生する電界の向きを示し、矢印の太さ及び長さで電界の大きさを示している。なお、
図16では、線路基板10c~10f、中間基板30、70の上下面に設けられた金属膜の図示は省略している。
図16に示すように、線路基板10c~10fに設けられるマイクロストリップ線路13c~13fを伝搬する電磁波は電界の向きがほぼ揃って伝搬することが確認された。また、中空導波路60aにおいて電界の向きがほぼ揃った状態でそれぞれの電磁波の電力が合成されることが確認された。
【0057】
図17は、実施例2に係る電力合成器200の損失特性のシミュレーション結果である。
図17の横軸は周波数[GHz]であり、縦軸は損失[dB]である。
図17に示すように、電力合成器200の電力の通過損失は、10GHzにおいて0.25dB程度であった。このように、マイクロストリップ線路13c~13fを伝搬する電磁波の電力を低損失で合成できていることが確認された。電力が低損失で合成されたのは、
図16に示すように、マイクロストリップ線路13c~13fを伝搬する電磁波は電界の向きがほぼ揃った状態で中空導波路60aにおいてそれぞれの電力が合成されたためと考えられる。
【0058】
実施例2によれば、マイクロストリップ線路13c~13fに中空導波路60aが接続されている。マイクロストリップ線路13c~13fを伝送するそれぞれの電力は、中空導波路60aにより合成されて伝送する。このため、実施例1と同様に、電力合成器200を小型化することができる。
【0059】
実施例2のように、中空導波路で合成される電力は、2つのマイクロストリップ線路を伝送する2つの電力の場合に限られない。中空導波路で合成される電力は、4つのマイクロストリップ線路を伝送する4つの電力の場合など、複数のマイクロストリップ線路を伝送する複数の電力の場合でもよい。
【実施例3】
【0060】
図18(a)は、実施例3に係る電力合成器300の断面図、
図18(b)は、実施例3に係る電力合成器300の動作を示す断面図である。実施例3の電力合成器300は、
図18(a)に示すように、+Z方向に向かって、下部基板50、線路基板10j、中間基板70、線路基板10i、中間基板70、線路基板10h、中間基板70、線路基板10g、上部基板40の順に積層されている。線路基板10g~10jは、
図4(a)及び
図4(b)に示した線路基板10aと同様の構成をしている。したがって、線路基板10g~10jは、上面にマイクロストリップ線路13g~13jが設けられている。また、線路基板10g~10jそれぞれの開口と中間基板70の開口により形成される中空61bが中空導波路60bとして機能する。マイクロストリップ線路13g~13jを伝送する電力は、線路基板10g~10jと中間基板70に設けられた突起部8bを介して中空導波路60bに伝送される。その他の構成は、実施例2と同じであるため説明を省略する。
【0061】
図18(b)に示すように、マイクロストリップ線路13g~13jには、例えば並列に接続された4つのトランジスタ90a~90dから同相の高周波信号が入力される。例えば、マイクロストリップ線路13g~13jに初期位相が0°の高周波信号が入力される。マイクロストリップ線路13g~13jは線路基板10g~10jの上面に設けられているため、マイクロストリップ線路13g~13jに同相の高周波信号が入力されることで、マイクロストリップ線路13g~13jを伝搬する電磁波は電界の向きがほぼ揃って伝搬する。このため、中空導波路60bにおいて電界の向きがほぼ揃った状態でそれぞれの電磁波の電力が合成される。これにより、損失の低下が抑制されつつ電力が合成されるようになる。
【0062】
実施例3によれば、マイクロストリップ線路13g~13jに中空導波路60bが接続されている。マイクロストリップ線路13g~13jを伝送するそれぞれの電力は、中空導波路60bにより合成されて伝送する。このため、実施例1と同様に、電力合成器300を小型化することができる。
【0063】
また、実施例3では、マイクロストリップ線路13gは線路基板10gの線路基板10hとは反対側の上面に設けられ、マイクロストリップ線路13hは線路基板10hの線路基板10g側の上面に設けられている。同様に、マイクロストリップ線路13hは線路基板10hの線路基板10iとは反対側の上面に設けられ、マイクロストリップ線路13iは線路基板10iの線路基板10h側の上面に設けられている。マイクロストリップ線路13iは線路基板10iの線路基板10jとは反対側の上面に設けられ、マイクロストリップ線路13jは線路基板10jの線路基板10i側の上面に設けられている。この構成によれば、マイクロストリップ線路13g~13jに同相の高周波信号が入力される場合に、中空導波路60bにおいて電界の向きがほぼ揃った状態でそれぞれの電磁波の電力が合成される。したがって、同相の高周波信号が入力される場合に対応した電力合成器300を得ることができる。
【実施例4】
【0064】
実施例1から実施例3では、高周波信号が入力する中空導波路の入口側について説明したが、実施例4、5では、高周波信号が出力する中空導波路の出口側について説明する。実施例4、5では、入口側が実施例2の電力合成器200の構成をしている場合を例に説明する。
【0065】
図19は、実施例4に係る電力合成器400の断面図である。なお、
図19では、中空導波路60aを伝搬する電磁波の電界を矢印で示している。実施例4の電力合成器400は、
図19に示すように、線路基板10dと10eの間に積層された4つの中間基板70a~70dのうち中央の中間基板70cにマイクロストリップ線路80と突起部88が設けられている。マイクロストリップ線路80は、中空導波路60aを伝送する電力を突起部88によりモード変換された後に伝送する。
【0066】
中間基板70cよりも+Z側に位置し、+Z方向に順に設けられた中間基板70b、中間基板70a、線路基板10d、中間基板30、線路基板10cは、開口の+X側の端が上記の順に-X側にシフトしている。中間基板70cよりも-Z側に位置し、-Z方向に順に設けられた中間基板70d、線路基板10e、中間基板30、線路基板10fは、開口の+X側の端が上記の順に-X側にシフトしている。また、中間基板70cの開口の+X側の端は他の基板よりも最も+X側に位置している。これにより、マイクロストリップ線路80が設けられた中間基板70cに向かって中空導波路60aの高さ(Z軸方向の長さ)が階段状に低くなっている。その他の構成は、実施例2に係る電力合成器と同じであるため説明を省略する。
【0067】
実施例4によれば、中空導波路60aを伝送する電力が入力されるマイクロストリップ線路80が設けられた中間基板70cに向かって、中空導波路60aの高さが徐々に低くなっている。これにより、中空導波路60aを伝送する高周波信号を低損失でマイクロストリップ線路80に伝送させることができる。
【0068】
また、実施例4では、中空導波路60aは、中間基板70cに向かって階段状に高さが低くなっている。中空導波路60aの高さが階段状に低くなることで、中空導波路60aの高さが徐々に低くなる構造を容易に得ることができる。例えば、中空導波路60aの階段状の段差を複数の線路基板10c~10f、中間基板30、70a~70dによって形成することができる。
【実施例5】
【0069】
図20は、実施例5に係る電力合成器500の断面図である。なお、
図20では、中空導波路60aを伝搬する電磁波の電界を矢印で示している。
図20に示すように、実施例5の電力合成器500は、実施例4の電力合成器400と同様、線路基板10dと10eの間に積層された4つの中間基板70a~70dのうち中央の中間基板70cにマイクロストリップ線路80と突起部88が設けられている。
【0070】
線路基板10c~10f、中間基板30及び70a~70dの開口の+X側の端は略一致している。この開口によって形成された中空61a内に、上部基板40から中間基板70cに向かって傾斜した傾斜面を有する金属部材89aと、下部基板50から中間基板70cに向かって傾斜した傾斜面を有する金属部材89bと、が設けられている。金属部材89a及び89bは、例えば銅で形成されたブロックである。金属部材89a及び89bが設けられていることで、マイクロストリップ線路80が設けられた中間基板70cに向かって中空導波路60aの高さ(Z軸方向の長さ)がテーパ状に低くなっている、その他の構成は、実施例2に係る電力合成器と同じであるため説明を省略する。
【0071】
実施例5によれば、実施例4と同様に、中空導波路60aを伝送する電力が入力されるマイクロストリップ線路80が設けられた中間基板70cに向かって、中空導波路60aの高さが徐々に低くなっている。よって、中空導波路60aを伝送する高周波信号を低損失でマイクロストリップ線路80に伝送させることができる。
【0072】
また、実施例5では、中空導波路60aは、中間基板70cに向かってテーパ状に高さが低くなっている。中空導波路60aの高さが中間基板70cに向かってテーパ状に低くなることで、中空導波路60aを伝送する高周波信号を更に低損失でマイクロストリップ線路80に伝送させることができる。
【0073】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0074】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
(付記1)第1マイクロストリップ線路が設けられた第1基板と、第2マイクロストリップ線路が設けられた第2基板と、前記第1マイクロストリップ線路及び前記第2マイクロストリップ線路に接続され、前記第1マイクロストリップ線路を伝送する第1電力と前記第2マイクロストリップ線路を伝送する第2電力とを合成して伝送する、中空の内壁に金属膜が設けられた中空導波路と、を備える電力合成器。
(付記2)前記中空導波路は、積層された前記第1基板と前記第2基板を含む複数の基板に設けられた開口により形成される、付記1に記載の電力合成器。
(付記3)前記第1基板と前記第2基板は、前記第1マイクロストリップ線路と前記第2マイクロストリップ線路が積層方向にて重なるように積層される、付記1または2に記載の電力合成器。
(付記4)前記第1基板と前記第2基板は積層され、前記第1マイクロストリップ線路は前記第1基板の前記第2基板とは反対側の面に設けられ、前記第2マイクロストリップ線路は前記第2基板の前記第1基板とは反対側の面に設けられる、付記1から3のいずれか一項に記載の電力合成器。
(付記5)前記第1基板と前記第2基板の間に設けられ、前記第1基板側の面に前記第1マイクロストリップ線路に重なる第1金属膜を有し、前記第2基板側の面に前記第2マイクロストリップ線路に重なる第2金属膜を有する第3基板を備える、付記4に記載の電力合成器。
(付記6)前記第1基板と前記第2基板は積層され、前記第1マイクロストリップ線路は前記第1基板の前記第2基板とは反対側の面に設けられ、前記第2マイクロストリップ線路は前記第2基板の前記第1基板側の面に設けられる、付記1から3のいずれか一項に記載の電力合成器。
(付記7)前記第1基板と前記第2基板の間に、前記第2マイクロストリップ線路が露出する空隙が設けられている、付記6に記載の電力合成器。
(付記8)前記第1基板は、前記中空導波路に突出し、前記第1マイクロストリップ線路が設けられた第1突起部を備え、前記第2基板は、前記中空導波路に突出し、前記第2マイクロストリップ線路が設けられた第2突起部を備え、前記第1基板と前記第2基板は、前記第1突起部と前記第2突起部が積層方向にて重なるように積層され、前記第1電力は前記第1突起部を介して前記中空導波路に伝送され、前記第2電力は前記第2突起部を介して前記中空導波路に伝送される、付記1から7のいずれか一項に記載の電力合成器。
(付記9)前記中空導波路を伝送する電力が入力される第3マイクロストリップ線路が設けられた第3基板を備え、前記中空導波路は、前記第3基板に向かって高さが徐々に低くなる、付記1から8のいずれか一項に記載の電力合成器。
(付記10)前記中空導波路は、前記第3基板に向かって高さが階段状に低くなる、付記9に記載の電力合成器。
(付記11)前記階段状の段差は、積層された前記第1基板と前記第2基板を含む複数の基板によって形成される、付記10に記載の電力合成器。
(付記12)前記中空導波路は、前記第3基板に向かって高さがテーパ状に低くなる、付記9に記載の電力合成器。
(付記13)前記テーパ状の傾斜は、前記中空導波路内に設けられた金属部材によって形成される、付記12に記載の電力合成器。
【符号の説明】
【0075】
8~8b 突起部
10a~10j 線路基板
13~13j マイクロストリップ線路
14~14f 金属膜
15a~15j 金属膜
16a~16f 金属膜
17~17f 切り欠き
18a~18f 突起部
19a~19f 開口
30 中間基板
34、35、36 金属膜
38 突起部
39 開口
40 上部基板
42、44 金属膜
50 下部基板
52、54 金属膜
60、60a、60b 中空導波路
61、61a、61b 中空
62、62a 金属膜
70~70d 中間基板
74、75、76 金属膜
78 突起部
79 開口
80 マイクロストリップ線路
88 突起部
89a、89b 金属部材
100、200、300、400、500 電力合成器