(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】電源システム及び電源システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241218BHJP
H02H 3/24 20060101ALI20241218BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02H3/24 Q
H02J3/38 180
H02M7/48 L
(21)【出願番号】P 2023022255
(22)【出願日】2023-02-16
【審査請求日】2024-06-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】福田 有貴
(72)【発明者】
【氏名】柏原 弘典
(72)【発明者】
【氏名】河▲崎▼ 吉則
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-146331(JP,A)
【文献】特開2003-088139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02J 3/38
H02H 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統から負荷に給電するための電力線に設けられ、前記電力線を開閉する開閉スイッチと、
前記電力線に接続され、蓄電部の直流電力を交流電力に変換して前記電力線に給電する電力変換器と、
前記開閉スイッチを制御するスイッチ制御部と、
前記電力変換器を制御する電力変換器制御部と、
前記電力系統の異常を検出する異常検出部と
前記開閉スイッチに流れる電流を測定し、その測定値を前記電力変換器制御部に出力するスイッチ電流測定部とを備え、
前記スイッチ制御部は、前記異常検出部により前記電力系統の異常が検出された場合に、前記開閉スイッチを開放する開放信号を出力し、
前記電力変換器制御部は、前記異常検出部により前記電力系統の異常が検出された場合に、前記開閉スイッチに流れる電流を0とするように前記電力変換器を制御する電流遮断制御を行
い、
前記電流遮断制御において、前記開閉スイッチに流れる電流を0とする指令値と前記測定値との偏差に基づいて、比例ゲインを用いた比例制御を前記電力変換器に対して行う、電源システム。
【請求項2】
前記電力変換器制御部は、前記電流遮断制御の後に、前記負荷の電圧を補償するように前記電力変換器を制御する電圧補償制御を行う、請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記電力変換器は、三相インバータで構成される、請求項1又は2の何れかに記載の電源システム。
【請求項4】
電力系統の正常時に当該電力系統から負荷に給電し、前記電力系統の異常時に前記電力系統から前記負荷への給電を遮断するととともに、蓄電部から前記負荷に給電する電源システムの制御方法であって、
前記電源システムは、前記電力系統から前記負荷に給電するための電力線に設けられ、前記電力線を開閉する開閉スイッチと、
前記電力線に接続され、蓄電部の直流電力を交流電力に変換して前記電力線に給電する電力変換器と
、
前記開閉スイッチに流れる電流を測定するスイッチ電流測定部とを備えるものであり、
前記電力系統の異常を検出した場合に、前記開閉スイッチを開放するとともに、前記開閉スイッチに流れる電流を0とするように前記電力変換器を制御する電流遮断制御を行
い、
前記電流遮断制御において、前記開閉スイッチに流れる電流を0とする指令値と前記スイッチ電流測定部により測定された測定値との偏差に基づいて、比例ゲインを用いた比例制御を前記電力変換器に対して行う、電源システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システム及び電源システムの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電源システムでは、電力系統の異常が発生した場合、電力系統から負荷に給電するための電力線に設けられた遮断器を開放することによって、電力系統から負荷への給電を遮断している。その後、エネルギー貯蔵部に接続された電力変換器から負荷へと給電を行うことによって、負荷の電圧を補償している。
【0003】
この種の電源システムでは、例えば特許文献1に示すように、電力系統の異常が検出されて遮断器を開放する場合に、電力変換器から遮断器に対して任意の電圧を印加している。これにより、遮断器を高速に開放することができるので、電力系統の異常発生時において、電力系統から負荷への給電を高速に遮断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記の電源システムでは、遮断器を開放する際に、電力変換器から遮断器に対して電圧を印加しているので、遮断器の開放が完了して電圧補償を開始するまでの間に余分な電圧が印加される。その結果、余分な電圧が印加されることによる過電流が発生するので、電力変換器の耐量を持たせる必要があり、電力変換器のコストが増大する。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、電力系統の異常が発生して、遮断器を開放する場合に、余分な電圧が印加されることを防ぐことを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る電源システムは、電力系統から負荷に給電するための電力線に設けられ、前記電力線を開閉する開閉スイッチと、前記電力線に接続され、蓄電部の直流電力を交流電力に変換して前記電力線に給電する電力変換器と、前記開閉スイッチを制御するスイッチ制御部と、前記電力変換器を制御する電力変換器制御部と、前記電力系統の異常を検出する異常検出部とを備え、前記スイッチ制御部は、前記異常検出部により前記電力系統の異常が検出された場合に、前記開閉スイッチを開放する開放信号を出力し、前記電力変換器制御部は、前記異常検出部により前記電力系統の異常が検出された場合に、前記開閉スイッチに流れる電流を0とするように前記電力変換器を制御する電流遮断制御を行うものである。
【0008】
このような構成であれば、開閉スイッチに流れる電流が強制的に0となるので、その時点で開閉スイッチを開放することができ、その結果、余分な電圧が開閉スイッチに印加されることを防ぐことができる。さらに、余分な電圧の印加による過電流の発生を抑制することができるので、電力変換器の耐量を持たせる必要がなくなり、電力変換器のコスト上昇を抑制することができる。
【0009】
前記電力変換器制御部は、前記電流遮断制御の後に、前記負荷の電圧を補償するように前記電力変換器を制御する電圧補償制御を行うものが挙げられる。
このような構成であれば、開閉スイッチの開放完了後に電力変換器から負荷へと給電されるので、負荷の電圧を確実に補償することができる。
【0010】
前記電力変換器は、三相インバータで構成されることが好ましい。
このような構成であれば、単相インバータと比較して、各相を個別に制御する必要がなくなるので、電力変換器の利用率を向上することができるとともに、電力変換器の容量を増加させることができるので、電力変換器のコストの抑制を図ることができる。
【0011】
また、本発明に係る電源システムの制御方法としては、電力系統の正常時に当該電力系統から負荷に給電し、前記電力系統の異常時に前記電力系統から前記負荷への給電を遮断するととともに、蓄電部から前記負荷に給電する電源システムの制御方法であって、前記電源システムは、前記電力系統から前記負荷に給電するための電力線に設けられ、前記電力線を開閉するサイリスタスイッチと、前記電力線に接続され、蓄電部の直流電力を交流電力に変換して前記電力線に給電する電力変換器とを備えるものであり、前記電力系統の異常を検出した場合に、前記サイリスタスイッチの消弧指令を出力し、前記消弧指令の出力に伴って、前記サイリスタスイッチに流れる電流を0とするように前記電力変換器をフィードバック制御する電流遮断制御を行い、前記電流遮断制御の後に、前記負荷の電圧を補償するように前記電力変換器を制御する電圧補償制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このように構成した本発明によれば、電力系統の異常が発生し、遮断器を開放する場合に、余分な電圧の印加を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態における電源システムの構成を示す模式図である。
【
図2】同実施形態における制御ブロックを示す模式図である。
【
図3】同実施形態における電流遮断制御を行った場合のタイミングチャートである。
【
図4】従来例における一定電圧を印加した場合のタイミングチャートである。
【
図5】同実施形態における(a)三相インバータの回路構成、(b)単相インバータの回路構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る電源システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し、又は、誇張して模式的に描かれている場合がある。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0015】
<1.装置構成>
本実施形態における電源システム100は、
図1に示すように、電力系統10と負荷20との間に設けられ、三相回路を構成するものである。この電源システム100は、電力系統10の正常時に電力系統10から負荷20に給電し、電力系統10の短絡事故等により生じる電力系統10の異常時に電力系統10から負荷20への給電を遮断して、蓄電部6から負荷20に給電する。
【0016】
具体的に電源システム100は、電力系統10から負荷20への給電を開閉によって切り替える開閉スイッチ3と、電力系統10の電圧を測定する電圧測定部4と、開閉スイッチ3に流れる電流を測定するスイッチ電流測定部5と、蓄電部6の直流電力を交流電力に変換して電力線L1に給電する電力変換器7と、開閉スイッチ3及び電力変換器7を制御する制御装置8とを備える。
【0017】
開閉スイッチ3は、電力系統10から負荷20に給電するための電力線L1に設けられ、駆動回路(不図示)によって駆動されて電力線L1の開閉を切り替えるものである。開閉スイッチ3は、電力系統10の異常が発生した場合に、電力系統10から負荷20への給電をより速く遮断するために、電力系統10よりも負荷20側に設けられることが好ましいが、これに限定されない。なお、本実施形態において、開閉スイッチ3は、サイリスタスイッチである。
【0018】
電圧測定部4は、電力系統10の電圧を測定し、その測定された電圧を制御装置8に出力するものである。具体的に電圧測定部4は、
図1に示すように、電力線L1に接続されており、電力系統10の電圧をより早く測定することができるように、開閉スイッチ3よりも電力系統10側の電圧を測定している。
【0019】
スイッチ電流測定部5は、開閉スイッチ3に流れる電流を測定し、その測定値Iを制御装置8に出力するものである。具体的にスイッチ電流測定部5は、電力線L1において、電力変換器7と電力線L1との接続点の間に設けられ、開閉スイッチ3に直列、かつ、電力変換器7と並列に接続される。
【0020】
蓄電部6は、例えば、二次電池(蓄電池)などの電力貯蔵装置(蓄電デバイス)である。この蓄電部6は、直流電力を貯蔵しており、電力系統10の異常が検出された場合、蓄電部6に貯蔵された直流電力は、電力変換器7へと給電される。
【0021】
電力変換器7は、電力系統10の異常が発生した場合に、蓄電部6の直流電力を交流電力に変換して電力線L1に給電するものである。具体的に電力変換器7は、注入トランスTを介して電力線L1に接続されており、開閉スイッチ3と並列に接続されている。
【0022】
具体的に電力変換器7は、蓄電部6からの直流電力を交流電力に変換するインバータ部71と、インバータ素子71の出力側に直列に接続され、交流電流を安定化させるリアクトル72と、リアクトル素子72に接続され、電圧を安定化させるコンデンサ素子73とを備える。なお、本実施形態において、インバータ素子71は、三相インバータで構成される。また、リアクトル素子72及びコンデンサ素子73は、蓄電部6の直流電力を整流するために、インバータ素子71の入力側に接続されてもよい。
【0023】
制御装置8は、電力系統10の異常を検出して、開閉スイッチ3及び電力変換器7を制御するものである。制御装置8は、電力系統10の異常を検出する異常検出部81と、開閉スイッチ3を制御するスイッチ制御部82と、電力変換器7を制御する電力変換器制御部83とを備える。
【0024】
異常検出部81は、電圧測定部4が測定した電圧に基づいて、電力系統10の異常を検出するものである。具体的に異常検出部81は、複数サイクルに亘って系統電圧が整定値未満となった場合に電力系統10の異常と判断し、電力系統10の異常を示す異常信号をスイッチ制御部82及び電力変換器制御部83に出力する。なお、本実施形態の整定値は、瞬低又は停電を検出するための電圧値である。
【0025】
スイッチ制御部82は、開閉スイッチ3のオンとオフとを切り替える制御を行うものである。本実施形態において、スイッチ制御部82は、異常検出部81からの異常信号を取得して、開閉スイッチ3を開放する開放信号Cを駆動回路(不図示)に出力する。駆動回路は、開放信号を受けて開閉スイッチ3を開放させる。開閉スイッチ3の開放が完了すると、スイッチ制御部82は、電力変換器制御部83に対し、開閉スイッチ3の開放完了を示す開放完了信号Fを出力する。
【0026】
そして、電力変換器制御部83は、異常検出部81により電力系統10の異常が検出された場合に、開閉スイッチ3に流れる電流を0とするように電力変換器7を制御する電流遮断制御を行う電流遮断制御部831と、電流遮断制御の後に、負荷20の電圧を補償するように電力変換器7を制御する電圧補償制御を行う電圧補償制御部832と、電流遮断制御部831又は電圧補償制御部832による出力に基づいて、電力変換器7を制御する出力制御部833とを備える。
【0027】
具体的に電流遮断制御部831は、スイッチ制御部82が出力した開放信号Cに伴って、スイッチ電流測定部5によって測定されたスイッチ電流に基づいて、電力変換器7をフィードバック制御する。より詳細には、電流遮断制御部831は、スイッチ電流測定部5によって測定された測定値Iと、開閉スイッチ3に流れる電流を0とする電流指令値Irefとの偏差ΔIを算出する。そして、偏差ΔIに基づいて、比例ゲインKpを用いた比例制御を行い、電力変換器7における電圧の目標値である電圧目標値Voutを算出する。なお、本実施形態において、比例ゲインKp及び電圧目標値Voutは、それぞれ(1)式及び(2)式を満足している。
Kp≧V2/S(V:定格電圧、S:電力変換器7の定格容量) (1)
Vout=Kp×ΔI (2)
【0028】
電圧補償制御部832は、電流遮断制御によって低下した負荷20の電圧を補償するように電力変換器7を制御するものである。具体的には、
図2に示すように、電圧補償制御部832は、電圧測定部4が測定した電圧Vと電圧指令値V
refとの偏差に基づいて、負荷20の電圧を補償する電圧補償値を算出し、電力変換器7をフィードバック制御する。
【0029】
出力制御部833は、電流遮断制御部831又は電圧補償制御部832による出力を受けて、電力変換器7に所定の電圧が生じるように制御するものである。具体的に出力制御部833は、電流遮断制御の場合に、電流遮断制御部831が算出した電圧目標値Voutに基づいて電力変換器7を制御し、電圧補償制御の場合に、電圧補償制御部832が算出した電圧補償値に基づいて、電力変換器7を制御する。
【0030】
さらに、出力制御部833は、開放完了信号Fを受けて、電流遮断制御から電圧補償制御へと切り替える切替信号を電流遮断制御部831及び電圧補償制御部832に出力する。
【0031】
<2.電源システムの制御動作>
次に電源システム100の制御動作について説明する。
【0032】
(1)電力系統10の正常時
電圧測定部4は、電力系統10の電圧を常時測定しており、その測定した電圧を異常検出部81に入力している。異常検出部81は、電圧測定部4が測定した電圧と予め定められた整定値とを比較する。
【0033】
電力系統10が正常の場合には、電圧測定部4が測定した電圧は整定値以上であり、開閉スイッチ3は通電状態となる。これにより、電力系統10から負荷20に交流電力が供給される。
【0034】
(2)電力系統10の異常時
電力系統10が異常の場合には、電圧測定部4が測定した電圧は整定値未満となるので、異常検出部81は、異常信号をスイッチ制御部82及び電力変換器制御部83に出力する。
【0035】
異常信号が出力されると、スイッチ制御部82は、駆動回路に対し開放信号Cを出力する。また開放信号Cの出力に伴って、電力変換器制御部83が、電力変換器7に対して電流遮断制御を行い、電力変換器7は、蓄電部6からの直流電力を交流電力に変換して、電力線L1に給電する。この交流電力は、開閉スイッチ3に流れる電流を0とするように給電されるので、開閉スイッチ3では強制的に電流ゼロ点が形成される。電流ゼロ点が形成されると、駆動回路は、開閉スイッチ3を開放させる。
【0036】
開閉スイッチ3の開放が完了し、スイッチ制御部82が開放完了信号Fを出力すると、出力制御部833は、電流遮断制御から電圧補償制御へと切り替える切替信号を電流遮断制御部831及び電圧補償制御部832に対し出力する。
【0037】
電流遮断制御部831は、出力制御部833からの切替信号を受けて、電流遮断制御を終了する。一方、電圧補償制御部832は、電流遮断制御によって低下した負荷20の電圧を補償するように電力変換器7を制御する。そして、負荷20の電圧が補償された後、電力系統10の電圧が回復する。
【0038】
<3.実験例>
上述した電源システム100における実験例を下記に示す。なお本発明は、以下の実験例によって制限を受けるものではなく、前記及び後記の趣旨に適合しうる範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0039】
(1)電流遮断制御及び従来の制御の比較
電力系統10に異常が発生して、開閉スイッチ3を開放する場合に、電力変換器制御部83が、開閉スイッチ3に流れる電流を0とするように電力変換器7を制御した実験例の結果を
図3に示す。
図3は、系統電圧、系統電流、負荷電圧、負荷電流、開閉スイッチ3に流れるスイッチ電流、インバータに流れるインバータ電流、PWM制御におけるパルス出力のそれぞれの時間変化を示す。
図3から分かるように、開閉スイッチ3に流れる電流が0になると、電力変換器7が出力する電流が低下し、負荷電圧及び負荷電流は発散しない。
【0040】
これに対し、電力変換器制御部83が、開閉スイッチ3に一定の電圧を印加するように電力変換器7を制御した実験例の結果を
図4に示す。
図4から分かるように、開閉スイッチ3に流れる電流が0になると、電力変換器7が出力する電流は増加し、負荷電圧及び負荷電流が増加してしまう。
【0041】
(2)三相インバータ及び単相インバータの比較
図5に示すように、インバータ素子71が三相インバータである場合(
図5(a)参照)と単相インバータである場合(
図5(b)参照)とを比較する。
図5に示すように、インバータ素子71が三相インバータである場合、1つの三相インバータは、6つのスイッチング素子Sを有する。また、インバータ素子71が単相インバータである場合、1つの単相インバータは、4つのスイッチング素子Sを有する。この場合、三相インバータ及び単相インバータによって出力される三相の交流電力は、それぞれ(3)式及び(4)式で示される。
P=√3VI×2(V:定格電圧、S:定格電流) (3)
P’=VI×3 (4)
【0042】
(3)式及び(4)式において、各インバータは同一の定格としている。また、単相インバータによって三相の交流電力を出力する場合、各相を個別に制御する必要があるので、単相インバータは少なくとも3つ必要になる。その結果、三相の交流電力を出力する単相インバータでは、スイッチング素子Sは12個必要になる。したがって、単相インバータ及び三相インバータが有するスイッチング素子Sの個数を同数にして比較を容易にするために、(3)式では、三相インバータが2つの場合にし、(4)式では、単相インバータが3つの場合にすることによって、どちらの場合もスイッチング素子Sを12個有するものとしている。
【0043】
(3)式及び(4)式によれば、三相インバータが出力する交流電力は、単相インバータの約1.15倍となるので、三相インバータの方が、単相インバータよりも出力される電力が増加することが分かる。
【0044】
<4.本実施形態の効果>
本実施形態によれば、開閉スイッチ3に流れる電流が強制的に0となるので、その時点で開閉スイッチ3を開放することができ、その結果、余分な電圧が開閉スイッチ3に印加されることを防ぐことができる。さらに、余分な電圧の印加による過電流の発生を抑制することができるので、電力変換器7の耐量を持たせる必要がなくなり、電力変換器7のコスト上昇を抑制することができる。
【0045】
また本実施形態によれば、開閉スイッチ3の開放完了後に電力変換器制御部83が電力変換器7から負荷20へと給電するように電力変換器7を制御するので、負荷20の電圧を確実に補償することができる。
【0046】
さらに本実施形態によれば、インバータ素子71は三相インバータで構成されているので、単相インバータと比較して、各相を個別に制御する必要がなくなる。その結果、電力変換器7の利用率を向上することができるとともに、電力変換器7の容量を増加させることができるので、電力変換器7のコストの抑制を図ることができる。
【0047】
<5.その他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0048】
本実施形態において、開閉スイッチ3はサイリスタスイッチであったが、開閉スイッチ3は、サイリスタスイッチに限られない。例えば開閉スイッチ3は、ガス絶縁開閉装置(VIS)又は真空遮断器(VCB)といった機械式スイッチであってもよい。この場合、電力系統10の異常時の電圧低下によって負荷20の電圧が低下することを抑制するために、機械式スイッチの開極時間は、無瞬断切替が可能な1/4サイクル以下であることが好ましい。
【0049】
本実施形態において、インバータ素子71は、三相インバータにより構成されていたが、インバータ素子71は、単相インバータにより構成されていてもよい。
【0050】
本実施形態における異常検出部81は、系統電圧の変化に基づいて電力系統10の異常を検出するものであったが、異常の検出はこれに限られない。例えば、異常検出部81は、電力系統10における電流又は周波数の変化に基づいて、電力系統10の異常を検出するものであってもよい。これに伴い、異常検出部81の整定値は、電力系統10の電圧値に限られず、電力系統10における電流値又は周波数であってもよい。
【0051】
本実施形態において、電力変換器制御部83は、開放信号Cと同時に電流遮断制御を行うものであったが、電力変換器制御部83は、異常信号又は開放信号Cの出力を受けた後に電流遮断制御を行うものであってもよい。
【0052】
本実施形態における出力制御部833は、開放完了信号Fの出力を受けて電力変換器7に対する制御を切り替えるものであったが、切り替えるタイミングは、開放完了信号Fの出力を受けなくともよい。例えば、開放信号Cが出力された時間、電力系統10の異常を検出した時間、電流遮断制御部831が制御を開始した時間、又は、開閉スイッチ3に流れる電流の測定値Iが0になった時間のいずれかの時間を始点として、その始点とした時間から所定の時間経過後に、出力制御部833が電流遮断制御から電圧補償制御に切り替えるものであってもよい。
【0053】
本実施形態において、電力系統10から負荷20への給電は、交流電力としていたが、電力系統10から負荷20への給電は、直流電力としてもよい。
【0054】
本実施形態において、電源システム100は、三相回路であったが、相の数は特に限定されない。
【0055】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
100・・・電源システム
10 ・・・電力系統
20 ・・・負荷
3 ・・・開閉スイッチ
4 ・・・電圧測定部
5 ・・・スイッチ電流測定部
6 ・・・蓄電部
7 ・・・電力変換器
8 ・・・制御装置
81 ・・・異常検出部
82 ・・・スイッチ制御部
83 ・・・電力変換器制御部
L1 ・・・電力線
C ・・・開放信号
S ・・・開放完了信号