(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】タイヤ材料の供給システムおよび筒状のタイヤ部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/30 20060101AFI20241218BHJP
B29D 30/60 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
B29D30/30
B29D30/60
(21)【出願番号】P 2023129634
(22)【出願日】2023-08-08
【審査請求日】2024-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】近藤 正智
(72)【発明者】
【氏名】松村 謙介
(72)【発明者】
【氏名】沼崎 康
(72)【発明者】
【氏名】河合 勝広
(72)【発明者】
【氏名】大石 潤平
(72)【発明者】
【氏名】善養寺 千裕
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 武大
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大
(72)【発明者】
【氏名】松丸 輝明
(72)【発明者】
【氏名】大西 康平
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 誠之
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-137028(JP,A)
【文献】特開2004-058328(JP,A)
【文献】特開2013-233740(JP,A)
【文献】実開昭60-041228(JP,U)
【文献】特開昭60-049931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/30
B29D 30/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストック位置に配置され、ストリップ状のタイヤ材料が種類毎に巻回されてストックされているそれぞれの供給ユニットと、それぞれの前記タイヤ材料がスパイラル状に巻き付けられる成形ドラム体と、それぞれの前記供給ユニットから繰り出された前記タイヤ材料を前記成形ドラム体にスパイラル状に巻付ける前記タイヤ材料の種類毎のヘッドとを備えた成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システムにおいて、
前記タイヤ材料の種類毎に前記供給ユニットから前記ヘッドまでの供給経路が独立していて、それぞれの前記供給経路には、前記供給ユニットと前記ヘッドとの間でその供給経路を通じて供給される前記タイヤ材料を所定量貯留するフェスツーン部が設置されていて、
それぞれの前記ヘッドが前記成形ドラム体に対してドラム前後方向に位置をずらして配置されていて、それぞれの前記ヘッドが一体的に前記成形ドラム体の幅方向にスライド移動するように構成されている成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システム。
【請求項2】
それぞれの前記ヘッドが前記成形ドラム体の下方に設置されている請求項1に記載の成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システム。
【請求項3】
それぞれの前記供給経路には複数の支持ローラが配置されていて、
前記供給経路を通じて供給される前記タイヤ材料が、それぞれの前記支持ローラに架け渡されることにより、その搬送方向を変化させている請求項1または2に記載の成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システムを用いて、前記タイヤ材料を前記成形ドラム体に供給してスパイラル状に巻付けて筒状のタイヤ部材を製造する筒状のタイヤ部材の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システムを用いて、前記タイヤ材料を前記成形ドラム体に供給してスパイラル状に巻付けて筒状のタイヤ部材を製造する筒状のタイヤ部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ材料の供給システムおよび筒状のタイヤ部材の製造方法に関し、さらに詳しくは、成形ドラム体にストリップ状のタイヤ材料を供給してスパイラル状に巻付けて筒状のタイヤ部材を製造する工程で、オペレーションを煩雑にすることなく、種類の異なるタイヤ材料に迅速に切り換えて成形ドラム体に供給することができ、かつ、所望種類のタイヤ材料を成形ドラム体の幅方向の所望範囲に供給できるタイヤ材料の供給システムおよび筒状のタイヤ部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤはグリーンタイヤを加硫することで製造される。グリーンタイヤは多数種類のタイヤ部材が積層して成形される。例えば、成形ドラム上に筒状に形成されているベルト層の外周面に、ストリップ材がスパイラル状に巻付けられてベルト補強層が製造される。このようなストリップ材を巻付ける装置が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1で提案されている装置は、成形ドラムに対して複数種類のストリップ材を容易に切り換えて供給するために、左右一対の巻付けユニットを備えている。左右一対の巻付けユニットは、成形ドラムの幅方向中心に対して左右対称に配置されていて、それぞれの巻付けユニットには複数の巻付けヘッドが並列されている。並列されているそれぞれの巻付けヘッドには種類が異なるストリップ材が供給される。左側の巻付けユニットはドラム幅方向中心から左側の範囲でドラム幅方向(左右方向)に移動して、ストリップ材を成形ドラムに供給してスパイラル層を成形し、右側の巻付けユニットはドラム幅方向中心から右側の範囲でドラム幅方向(左右方向)に移動して、ストリップ材を成形ドラムに供給してスパイラル層を成形する。
【0004】
この装置は、左右それぞれの巻付けユニットによる巻き付け範囲が、ドラム幅方向中心を境界にして区分されているので、ストリップ材をドラム幅方向両側の範囲に巻付けるには、左右両方の巻付けヘッドをドラム幅方向に移動させる必要がある。さらに、所望種類のストリップ材を成形ドラムの幅方向の所望範囲に巻付けるには、それぞれの巻付けユニットや巻き付けヘッドを適切に制御する必要があるのでオペレーションが煩雑になる。それ故、オペレーションを煩雑にすることなく、種類の異なるタイヤ材料に迅速に切り換えて成形ドラムに供給することができ、かつ、所望種類のタイヤ材料を成形ドラムの幅方向の所望範囲に供給するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、オペレーションを煩雑にすることなく、種類の異なるタイヤ材料に迅速に切り換えて成形ドラム体に供給することができ、かつ、所望種類のタイヤ材料を成形ドラム体の幅方向の所望範囲に供給できるタイヤ材料の供給システムおよび筒状のタイヤ部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明のタイヤ材料の供給システムは、ストック位置に配置され、ストリップ状のタイヤ材料が種類毎に巻回されてストックされているそれぞれの供給ユニットと、それぞれの前記タイヤ材料がスパイラル状に巻き付けられる成形ドラム体と、それぞれの前記供給ユニットから繰り出された前記タイヤ材料を前記成形ドラム体にスパイラル状に巻付ける前記タイヤ材料の種類毎のヘッドとを備えた成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システムにおいて、前記タイヤ材料の種類毎に前記供給ユニットから前記ヘッドまでの供給経路が独立していて、それぞれの前記供給経路には、前記供給ユニットと前記ヘッドとの間でその供給経路を通じて供給される前記タイヤ材料を所定量貯留するフェスツーン部が設置されていて、それぞれの前記ヘッドが前記成形ドラム体に対してドラム前後方向に位置をずらして配置されていて、それぞれの前記ヘッドが一体的に前記成形ドラム体の幅方向にスライド移動するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の筒状のタイヤ部材の製造方法は、上記の成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システムを用いて、前記タイヤ材料を前記成形ドラム体に供給してスパイラル状に巻付けて筒状のタイヤ部材を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のタイヤ材料の供給システムによれば、前記タイヤ材料の種類毎に前記供給ユニットから前記ヘッドまでの供給経路が独立しているので、使用する前記ヘッドを単純に切り換えることで、所望種類の前記タイヤ材料を前記成形ドラム体に巻付けることができる。それ故、オペレーションを煩雑にすることなく、種類の異なる前記タイヤ材料に迅速に切り換えて前記成形ドラム体に供給できる。
【0010】
それぞれの前記ヘッドが前記成形ドラム体に対してドラム前後方向に位置をずらして配置されていて、それぞれの前記ヘッドが一体的に前記成形ドラム体の幅方向にスライド移動する。これにより、それぞれの前記ヘッドが別の前記ヘッドに規制されずにスライド移動できる。そのため、オペレーションが煩雑化することなく、所望種類の前記タイヤ材料を前記成形ドラム体の幅方向の所望範囲に供給するには有利になる。
【0011】
それぞれの前記供給経路には、前記フェスツーン部が設置されているので、それぞれの前記タイヤ材料をその供給を中断させずに安定して補充を行える。これに伴い、連続的にそれぞれの前記タイヤ材料を前記成形ドラム体に供給する際のオペレーションの煩雑化を回避するには益々有利になる。
【0012】
本発明の筒状のタイヤ部材の製造方法によれば、上記の成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システムを用いることで、前記タイヤ部材を、オペレーションを煩雑にすることなく、生産性よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】タイヤ材料の供給システムの実施形態を平面視で例示する説明図である。
【
図2】
図1の成形ドラム体およびそれぞれのヘッドを側面視で例示する説明図である。
【
図3】
図1のそれぞれのヘッドを平面視で例示する説明図である。
【
図4】
図2の一方のヘッドによって一方のタイヤ材料を成形ドラム体に供給している状態を例示する説明図である。
【
図5】
図2の他方のヘッドによって他方のタイヤ材料を成形ドラム体に供給している状態を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システムおよび筒状のタイヤ部材の製造方法を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0015】
図1~
図3に例示する成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システム(以下、供給システムという)を用いて、ストリップ状のタイヤ材料M1、M2が成形ドラム体7にスパイラル状に巻き付けられて筒状のタイヤ部材Mが製造される。タイヤ材料M1、M2は、例えば未加硫ゴムや補強コードなどから形成されている。タイヤ材料M1、M2としてベルト補強材が、筒状のベルト層が形成されている成形ドラム体7にスパイラル状に巻き付けられて筒状に成形されることで、筒状のベルト補強層が製造される。このベルト補強層は、グリーンタイヤGの構成部材として使用され、グリーンタイヤGが加硫されることでタイヤTが製造される。
【0016】
図1~
図3に例示するように、この供給システムは、ストック位置P1に配置される供給ユニット1(1A、1B)と、成形ドラム体7と、ヘッド3A、3Bと、フェスツーン部2a、2bと、ヘッド3A、3Bを成形ドラム体7に対して近接させる近接移動手段5、5と、ヘッド3A、3Bを成形ドラム体7の幅方向(X方向)にスライド移動させるスライド移動手段6とを備えている。図中のX、Y、Z矢印はそれぞれ、供給システムの幅方向、前後方向、高さ方向を示していて互いに直交する方向である。図面では、前後方向(Y方向)でコンベヤから成形ドラム体7に向かう方向が前方である。
【0017】
ストック位置P1には、複数の供給ユニット1A、1Bが並列されている。一方の供給ユニット1Aにはタイヤ材料M1が巻回されてストックされている。他方の供給ユニット1Bにはタイヤ材料M2が巻回されてストックされている。それぞれの供給ユニット1A、1Bは巻取り芯を有していて、タイヤ材料M1、M2がその巻取り芯を中心にして巻回状態でストックされている。このように、タイヤ材料M1、M2が種類毎に巻回されてストックされている。
【0018】
成形ドラム体7はドラム軸心Cを中心にして回転する。ドラム軸心CはX方向に延在している(X方向と平行である)。成形ドラム体7には、それぞれの供給ユニット1A、1Bから繰り出されて供給されたタイヤ材料M1、M2がそれぞれのヘッド3A、3Bによってスパイラル状に巻き付けられる。
【0019】
タイヤ材料M1、M2の種類毎に、供給ユニット1A、1Bからヘッド3A、3Bまでの供給経路が独立している。即ち、一方の種類のタイヤ材料M1は、一方の供給ユニット1Aから一方のヘッド3Aまでの供給経路を通じて成形ドラム体7に供給される。他方のタイヤ材料M2は、他方の供給ユニット1Bから他方のヘッド3Bまでの供給経路を通じて成形ドラム体7に供給される。したがって、タイヤ材料M1、M2の種類毎に、供給ユニット1A、1B、ヘッド3A、3Bが備わっている。
【0020】
フェスツーン部2a、2bは、それぞれのタイヤ材料M1、M2の供給経路で、供給ユニット1A、1Bとヘッド3A、3Bとの間に設置されている。フェスツーン部2a、2bは、それぞれの供給経路を通じて供給されるタイヤ材料M1、M2を所定量貯留する。したがって、それぞれの供給ユニット1A、1Bから繰り出されたタイヤ材料M1、M2は、それぞれのフェスツーン部2a、2bを通過してそれぞれのヘッド3A、3Bに供給される。フェスツーン部2a、2bとしては、公知の種々のタイプを用いることができる。
【0021】
この実施形態では、それぞれのタイヤ材料M1、M2の供給経路には、複数の支持ローラが配置されていて、タイヤ材料M1、M2は、それぞれの支持ローラに架け渡されることにより、その搬送方向を変化させてそれぞれの供給ユニット1A、1Bから成形ドラム体7に供給される。この実施形態では、
図1に例示するようにそれぞれの供給ユニット1A、1Bから繰り出されたタイヤ材料M1、M2は、Y方向に沿って進んでそれぞれのフェスツーン部2a、2bを通過してから90°向きを変えてX方向に沿って進み(横方向移動区間)、その後、90°向きを変えてY方向に沿って進んで(ドラム供給区間)、成形ドラム体7に供給される。このドラム供給区間においては、平面視ではタイヤ材料M1、M2どうしは重なって延在していて、側面視では
図2に例示するように、一方のタイヤ材料M1に対して他方のタイヤ材料M2は上下に間隔をあけて上方に位置して延在している。
【0022】
それぞれのヘッド3A、3Bは、圧着部4を有している。圧着部4は、供給されるタイヤ材料M1、M2を誘導するとともに、成形ドラム体7の外周面に向かって押圧する。圧着部4には回転ローラ体などが用いられる。尚、それぞれのヘッド3A、3Bはタイヤ材料M1、M2を切断するカッターも備えている。
【0023】
近接移動手段5は、ヘッド3Aを成形ドラム体7に対して近接移動(近接および離反移動)させる。近接移動手段5としては、油圧シリンダなどの流体シリンダ類やサーボモータによって進退するロッドなどを用いることができる。
【0024】
スライド移動手段6は、それぞれのヘッド3A、3Bを一体的に成形ドラム体7に対して幅方向にスライド移動させる。スライド移動手段6としては、油圧シリンダなどの流体シリンダ類やサーボモータによって進退するロッドなどを用いることができる。
【0025】
図3に例示するように、それぞれのヘッド3A、3Bは成形ドラム体7に対して、ドラム前後方向(Y方向)に位置をずらして直列配置されている。それぞれのヘッド3A、3Bは、それぞれの近接移動手段5、5によって互いに独立して成形ドラム体7に対して近接および離反移動する。圧着部4は、成形ドラム体7の外周面から離れた待機位置と、近接する巻き付け位置とに移動し、巻き付け位置に移動させた圧着部4によってタイヤ材料M1、M2は成形ドラム体7の外周面に向かって押圧される。
【0026】
この実施形態では、それぞれのヘッド3A、3Bは連結体によって連結されていて、この連結体に1つのスライド移動手段6のロッドの先端が接続されている。1つのスライド移動手段6を用いて2つのヘッド3A、3Bを一体的に幅方向にスライド移動させる仕様にすることで、装置構成およびオペレーションの簡素化を図るには有利になる。そして、それぞれのヘッド3A、3Bがスライド移動する範囲は、タイヤ材料M1、M2を巻き付ける幅方向範囲を網羅するように設定されている。
【0027】
したがって、それぞれのヘッド3A、3Bは、互いの存在に規制されずに幅方向にスライド移動することができる。即ち、それぞれのヘッド3A、3Bの圧着部4、4は、別のヘッド3B、3Aの存在に規制されることなく、成形ドラム体7の幅方向一方端部から他方端部までの範囲を幅方向にスライド移動可能になっている。
【0028】
次に、この供給システムを用いて筒状のタイヤ部材Mを製造する手順の一例を説明する。
【0029】
この供給システムでは、連続的に筒状のタイヤ部材Mが製造される。一方のタイヤ材料M1を用いてタイヤ部材Mを製造する場合には、
図4に例示するように、ドラム軸心Cを中心にして成形ドラム体7を回転させるとともに、一方のヘッド3Aの圧着部4を成形ドラム体7の外周面に近接させた位置で幅方向の所望範囲に移動させる。これにより、ヘッド3Aに供給されるタイヤ材料M1を圧着部4によって成形ドラム体7にスパイラル状に巻付ける。1つのスライド移動手段6を用いてそれぞれのヘッド3A、3Bを一体的に幅方向にスライド移動させて、成形ドラム体7の幅方向の所望範囲にタイヤ材料M1を巻付けるとタイヤ材料M1を切断してタイヤ材料M1が筒状に成形されたタイヤ部材Mが製造される。
【0030】
例えば、成形ドラム体7上のベルト層の外周面に、ベルト補強材であるタイヤ材料M1をスパイラル状に巻付けて、タイヤ部材Mとしてベルト補強層を製造してベルト層に積層する。製造したタイヤ部材Mは成形ドラム体7から取外して、その後、同じ手順で成形ドラム体7に新たなタイヤ部材Mを連続的に製造する。
【0031】
タイヤ材料M1から種類の異なるタイヤ材料M2に切り換えて、成形ドラム体7を使用してタイヤ部材Mを製造する場合は、
図5に例示するように、ドラム軸心Cを中心にして成形ドラム体7を回転させるとともに、他方のヘッド3Bの圧着部4を成形ドラム体7の外周面に近接させた位置で、1つのスライド移動手段6を用いてそれぞれのヘッド3A、3Bを一体的に幅方向の所望範囲に移動させる。これにより、ヘッド3Bに供給されるタイヤ材料M2を圧着部4によって成形ドラム体7にスパイラル状に巻付ける。成形ドラム体7の幅方向の所望範囲にタイヤ材料M2を巻付けるとタイヤ材料M2を切断してタイヤ材料M2が筒状に成形されたタイヤ部材Mが製造される。製造したタイヤ部材Mを成形ドラム体7から取外して、その後、同じ手順で成形ドラム体7に新たなタイヤ部材Mを連続的に製造する。
【0032】
この供給システムによれば、使用するヘッド3A、3Bを単純に切り換えることで、所望種類のタイヤ材料M1、M2を成形ドラム体7に巻付けることができる。それ故、オペレーションを煩雑にすることなく、種類の異なるタイヤ材料M1、M2に迅速に切り換えて成形ドラム体7に供給することができる。
【0033】
成形ドラム体7に一方のタイヤ材料M1をスパイラル状に巻付けてタイヤ部材Mを製造した後、そのタイヤ部材Mに対して幅方向に隣接または離間して、或いは、そのタイヤ部材Mに積層するように他方のタイヤ材料M2をスパイラル状に巻付けてタイヤ部材Mを製造する場合もある。この場合も、タイヤ材料M1からタイヤ材料M2に切り換えて成形ドラム体7に供給するには、使用するヘッド3A、3Bを単純に切り換えればよいので、煩雑なオペレーションは不要である。
【0034】
また、上述したように、それぞれのヘッド3A、3Bは他のヘッド3B、3Aに規制されずに幅方向にスライド移動できる。そして、それぞれのヘッド3A、3Bの幅方向のスライド移動には別のヘッド3B、3Aの存在を考慮する必要がないので、オペレーションが煩雑化することがなく、所望種類のタイヤ材料M1、M2を成形ドラム体7の幅方向の所望範囲に供給して巻き付けるには有利になる。即ち、それぞれの1つのヘッド3A、3Bを用いて、それぞれのタイヤ材料M1、M2を成形ドラム体7の幅方向に対して所望範囲に移動させてスパイラル状に巻付けることで、幅方向の所望範囲に筒状のタイヤ部材Mを容易に製造することができる。
【0035】
それぞれのタイヤ材料M1、M2の供給経路には、フェスツーン部2a、2bが設置されているので、それぞれの供給ユニット1A、1Bでのタイヤ材料M1、M2のストックが無くなった(少なくなった)場合は、フェスツーン部2a、2bでの貯留量が基準量以下になるまでにタイヤ材料M1、M2を補充すればよい。そのため、それぞれのタイヤ材料M1、M2のヘッド3A、3Bへの供給を中断させずに、安定してタイヤ材料M1、M2の補充を行える。これに伴い、連続的にそれぞれのタイヤ材料M1、M2を成形ドラム体7に供給してタイヤ部材Mを製造する際に、タイヤ材料M1、M2を緊急で補充するような煩雑なオペレーションを回避できる。
【0036】
この供給システムを用いることで、タイヤ材料M1、M2を成形ドラム体7に供給してスパイラル状に巻付けた筒状のタイヤ部材Mを、オペレーションを煩雑にすることなく、生産性よく製造するには有利になる。
【0037】
成形ドラム体7は、一般的な公知の様々な成形ドラムに限定されない。成形ドラム体7は例えば、製造するタイヤTの内面と実質的に同じ外面を有する所謂、剛性コアであってもよい。
【0038】
この実施形態では、2種類のタイヤ材料M1、M2を用いる場合を例示しているが、タイヤ材料は3種類以上にすることもできる。この場合も、上述したように、タイヤ材料の種類毎に、供給ユニットおよびヘッド(直列配置にしたヘッド)を設けて独立した搬送経路にして、1つのスライド移動手段6を設ける。
【0039】
それぞれのヘッド3A、3Bは成形ドラム体7の下方に設置されている。成形ドラム体7に対しては、その他のタイヤ材料(ベルト材など)を供給するために搬送コンベヤなどが配置される。この搬送コンベヤは成形ドラム体7の上方に設置されることが多いので、この搬送コンベヤを避けるために、この実施形態ではそれぞれのヘッド3A、3Bは成形ドラム体7の下方に設置されている。この搬送コンベヤが成形ドラム体7の下方に設置される場合は、それぞれのヘッド3A、3Bは成形ドラム体7の上方に設置される。
【0040】
この実施形態では、それぞれのタイヤ材料M1、M2の供給経路には複数の支持ローラが配置されていて、タイヤ材料M1、M2は、それぞれの支持ローラに架け渡されることにより、その搬送方向を変化させている。このように支持ローラを用いることで、タイヤ材料M1、M2の搬送経路を、3次元的に所望方向に延在させることができるので、狭いスペースであっても搬送経路を確保し易くなる。
【符号の説明】
【0041】
1(1A、1B) 供給ユニット
2a、2b フェスツーン部
3A、3B ヘッド
4 圧着部
5 近接移動手段
6 スライド移動手段
7 成形ドラム体
M1、M2 タイヤ材料
M タイヤ部材
【要約】
【課題】オペレーションを煩雑にすることなく、種類が異なるタイヤ材料に迅速に切り換えて成形ドラム体に供給し、所望種類のタイヤ材料を成形ドラム体の幅方向の所望範囲に供給する供給システムおよび筒状のタイヤ部材の製造方法を提供する。
【解決手段】ストリップ状のタイヤ材料M1、M2の種類毎の供給ユニット1A、1Bからヘッド3A、3Bまでの独立した各供給経路では、供給ユニット1A、1Bとヘッド3A、3Bとの間のフェスツーン部2a、2bに所定量のタイヤ材料M1、M2を貯留し、各ヘッド3A、3Bを成形ドラム体7に対してドラム前後方向に位置をずらして配置し、各ヘッド3A、3Bを一体的に成形ドラム体7の幅方向にスライド移動させて、タイヤ材料M1、M2を成形ドラム体7にスパイラル状に巻付けて筒状のタイヤ部材Mを製造する。
【選択図】
図1