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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】媒体搬送装置、画像読取装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20241218BHJP
   H04N 1/04 20060101ALI20241218BHJP
   B65H 9/06 20060101ALI20241218BHJP
   B65H 7/02 20060101ALI20241218BHJP
   G03B 27/62 20060101ALI20241218BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
H04N1/00 567Q
H04N1/12 Z
H04N1/04 106A
B65H9/06
B65H7/02
G03B27/62
G03G21/00 370
G03G21/00 386
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020171036
(22)【出願日】2020-10-09
(65)【公開番号】P2022062867
(43)【公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】小柳 紀幸
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-137458(JP,A)
【文献】特開2020-019607(JP,A)
【文献】特開2020-115605(JP,A)
【文献】特開2007-050998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
H04N 1/04
B65H 9/06
B65H 7/02
G03B 27/62
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を下流に送る送りローラーと、
媒体を搬送する搬送路において前記送りローラーより下流に位置し、前記搬送路を遮断する遮断状態と前記搬送路を開放する開放状態とに切り換え可能な少なくとも一つのストッパーと、
前記送りローラーの回転と前記ストッパーの状態切り換えを制御する制御部であって、媒体の先端を前記遮断状態にある前記ストッパーに突き当てることで媒体の斜行を矯正する斜行矯正制御を実行可能な制御部と、
前記搬送路において前記送りローラーより下流であって前記ストッパーより上流の位置に設けられ、媒体先端の斜行を検出する為の斜行検出部と、
を備え、
前記制御部は、媒体の剛性に係わる情報を取得可能であるとともに、第1の媒体より剛性が低い第2の媒体を搬送する場合、前記ストッパーを前記遮断状態から前記開放状態に切り換えて前記斜行矯正制御を終了するタイミングを、前記第1の媒体よりも早め
更に前記制御部は、前記斜行検出部から受信する情報に基づき、前記斜行矯正制御を所定時間実行した時点での媒体の斜行が予め定められた程度を超える場合、エラー処理を行う、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
請求項に記載の媒体搬送装置において、前記エラー処理は、前記送りローラーの回転速度を減速して前記斜行矯正制御を継続する処理である、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項3】
請求項に記載の媒体搬送装置において、前記エラー処理は、前記送りローラーを逆転させて媒体を上流に戻し、前記斜行矯正制御のリトライを行う処理である、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項4】
請求項に記載の媒体搬送装置において、各種情報を表示する表示装置と、
前記送りローラーにより送られる媒体を載置する媒体載置部と、を備え、
前記エラー処理は、前記送りローラーを停止して前記表示装置に前記媒体載置部への媒体の再セットを案内する処理である、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の媒体搬送装置において、前記制御部は、媒体の剛性を、媒体の厚みに基づき判定する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項6】
請求項に記載の媒体搬送装置において、前記搬送路において前記送りローラーより下流であって前記ストッパーより上流の位置に、媒体の厚みを検出する為の厚み検出部を備える、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項7】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の媒体搬送装置において、媒体の種類に係わる情報の入力を受け付ける情報入力部を備え、
前記制御部は、前記情報入力部に入力された媒体の種類に基づき、媒体の剛性を判定する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項8】
媒体を下流に送る送りローラーと、
前記送りローラーにより送られる媒体を載置する媒体載置部と、
媒体を搬送する搬送路において前記送りローラーより下流に位置し、前記搬送路を遮断する遮断状態と前記搬送路を開放する開放状態とに切り換え可能な少なくとも一つのストッパーと、
前記送りローラーの回転と前記ストッパーの状態切り換えを制御する制御部であって、媒体の先端を前記遮断状態にある前記ストッパーに突き当てることで媒体の斜行を矯正する斜行矯正制御を実行可能な制御部と、
前記媒体載置部上の媒体の有無を検出する為の載置検出部と、
媒体の種類に係わる情報の入力を受け付ける情報入力部であって、各種情報を表示する表示装置で構成される情報入力部と、
を備え、
前記制御部は、前記情報入力部に入力された媒体の種類に基づき、媒体の剛性に係わる情報を取得可能であるとともに、第1の媒体より剛性が低い第2の媒体を搬送する場合、前記ストッパーを前記遮断状態から前記開放状態に切り換えて前記斜行矯正制御を終了するタイミングを、前記第1の媒体よりも早め
更に前記制御部は、前記表示装置に、媒体の種類に係わる情報の入力を受け付けるユーザーインターフェースを表示可能であり、
更に前記制御部は、搬送待機状態において前記載置検出部から受信する情報に基づき前記媒体載置部上に媒体が有ると判定する場合、前記表示装置に、前記ユーザーインターフェースを表示させ、
更に前記制御部は、前記媒体載置部上に媒体が無い状態で媒体の載置を待ち受け、前記載置検出部から受信する情報に基づき前記媒体載置部に媒体が載置されたと判定すると前記送りローラーを正転させて前記媒体載置部から媒体を送り出す待ち受け制御を実行可能であり、
更に前記制御部は、前記待ち受け制御において媒体の剛性に係わる情報を取得した後は、前記表示装置への前記ユーザーインターフェースの表示を行うことなく前記媒体載置部から媒体を送り出す、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項9】
媒体を搬送する請求項1から請求項のいずれか一項に記載の媒体搬送装置と、
前記媒体搬送装置により搬送される媒体の面を読み取る読み取り手段と、
を備えたことを特徴とする画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を搬送する媒体搬送装置、及びこれを備えた画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置の一例として媒体を搬送しながら画像を読み取るシートフィードタイプのものがあり、この様な画像読取装置では、特許文献1に示される様に媒体の斜行を矯正する機構を備えるものがある。
特許文献1記載の画像読取装置が備える媒体搬送装置は斜行矯正機構を備えており、この斜行矯正機構は、左側ストッパーと、右側ストッパーと、左側レバーと、右側レバーとを備えている。これら各部材は、原稿の搬送路を遮断する状態と開放する状態とを切り換え可能に設けられている。左側レバーと右側レバーは、左側ストッパーと右側ストッパーよりもやや上流に位置している。左側レバーは左側ストッパーを遮断状態にロックする機能を有しており、媒体先端が左側レバーを押し上げると、左側レバーによる左側ストッパーのロックが解除され、左側ストッパーが原稿の搬送路を解放できる様になる。同様に右側レバーは右側ストッパーを遮断状態にロックする機能を有しており、媒体先端が右側レバーを押し上げると、右側レバーによる右側ストッパーのロックが解除され、右側ストッパーが原稿の搬送路を解放できる様になる。
【0003】
特許文献1記載の斜行矯正機構は上記の様に構成されたことにより、媒体が斜行していると、媒体先端において先行している側が左側ストッパー或いは右側ストッパーに突き当たり、これにより媒体が回転して、斜行が矯正される。そして斜行矯正の過程で媒体先端が左側レバー及び右側レバーを押し上げることにより、左側ストッパー及び右側ストッパーのロックが解除され、媒体先端が下流に進むことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-037478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の斜行矯正機構において、媒体の剛性が或る程度高い場合には、斜行した場合に上述の様に媒体先端において先行している側が左側ストッパー或いは右側ストッパーに突き当たり、回転し、斜行が矯正される。
ところが媒体の剛性が低いと、斜行した場合に先行している側が左側ストッパー或いは右側ストッパーに突き当たっても、媒体が回転する前に突き当たった部位が潰れてしまい、ダメージが生じてしまう場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為の、本発明の媒体搬送装置は、媒体を下流に送る送りローラーと、媒体を搬送する搬送路において前記送りローラーより下流に位置し、前記搬送路を遮断する遮断状態と前記搬送路を開放する開放状態とに切り換え可能な少なくとも一つのストッパーと、前記送りローラーの回転と前記ストッパーの状態切り換えを制御する制御部であって、媒体の先端を前記遮断状態にある前記ストッパーに突き当てることで媒体の斜行を矯正する斜行矯正制御を実行可能な制御部と、を備え、前記制御部は、媒体の剛性に係わる情報を取得可能であるとともに、第1の媒体より剛性が低い第2の媒体を搬送する場合、前記ストッパーを前記遮断状態から前記開放状態に切り換えて前記斜行矯正制御を終了するタイミングを、前記第1の媒体よりも早めることを特徴とする。
また本発明の画像読取装置は、媒体を搬送する上記媒体搬送装置と、前記媒体搬送装置により搬送される媒体の面を読み取る読み取り手段とを備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ストッパーが遮断状態をとる場合のスキャナーの原稿送り経路の側面図。
図2】ストッパーが開放状態をとる場合のスキャナーの原稿送り経路の側面図。
図3】スキャナーの制御系統を示すブロック図。
図4】ストッパーと媒体との関係を示す搬送路の平面図。
図5】ストッパーと媒体との関係を示す搬送路の平面図。
図6】ストッパーと媒体との関係を示す搬送路の平面図。
図7】斜行矯正処理の流れを示すフローチャート。
図8】斜行矯正処理の他の実施例の流れを示すフローチャート。
図9】搬送路に進出した状態の剛性付与部の正面図。
図10】搬送路から退避した状態の剛性付与部の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を概略的に説明する。
第1の態様に係る媒体搬送装置は、媒体を下流に送る送りローラーと、媒体を搬送する搬送路において前記送りローラーより下流に位置し、前記搬送路を遮断する遮断状態と前記搬送路を開放する開放状態とに切り換え可能な少なくとも一つのストッパーと、前記送りローラーの回転と前記ストッパーの状態切り換えを制御する制御部であって、媒体の先端を前記遮断状態にある前記ストッパーに突き当てることで媒体の斜行を矯正する斜行矯正制御を実行可能な制御部と、を備え、前記制御部は、媒体の剛性に係わる情報を取得可能であるとともに、第1の媒体より剛性が低い第2の媒体を搬送する場合、前記ストッパーを前記遮断状態から前記開放状態に切り換えて前記斜行矯正制御を終了するタイミングを、前記第1の媒体よりも早めることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、前記斜行矯正制御を実行可能な制御部は、媒体の剛性に係わる情報を取得可能であるとともに、第1の媒体より剛性が低い第2の媒体を搬送する場合、前記ストッパーを前記遮断状態から前記開放状態に切り換えて前記斜行矯正制御を終了するタイミングを、前記第1の媒体よりも早めるので、前記第1の媒体より剛性が低い前記第2の媒体を搬送する際の、媒体先端の前記ストッパーへの突き当たりに伴う潰れを抑制できる。
【0010】
第2の態様は、第1の態様において、前記制御部は、媒体の剛性を、媒体の厚みに基づき判定することを特徴とする。
本態様によれば、前記制御部は、媒体の剛性を、媒体の厚みに基づき判定するので、媒体の剛性を容易に判定することができる。
【0011】
第3の態様は、第2の態様において、前記搬送路において前記送りローラーより下流であって前記ストッパーより上流の位置に、媒体の厚みを検出する為の厚み検出部を備えることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、前記搬送路において前記送りローラーより下流であって前記ストッパーより上流の位置に、媒体の厚みを検出する為の厚み検出部を備えるので、ユーザーが媒体の厚みに係わる情報を入力する必要がなく、装置の使い勝手が向上する。
【0013】
第4の態様は、第1の態様において、媒体の種類に係わる情報の入力を受け付ける情報入力部を備え、前記制御部は、前記情報入力部に入力された媒体の種類に基づき、媒体の剛性を判定することを特徴とする。
本態様によれば、前記制御部は、前記情報入力部に入力された媒体の種類に基づき、媒体の剛性を判定するので、媒体の剛性を正確に把握することができる。
【0014】
第5の態様は、第4の態様において、前記送りローラーにより送られる媒体を載置する媒体載置部と、前記媒体載置部上の媒体の有無を検出する為の載置検出部と、を備え、前記情報入力部は、各種情報を表示する表示装置で構成され、前記制御部は、前記表示装置に、媒体の種類に係わる情報の入力を受け付けるユーザーインターフェースを表示可能であり、前記制御部は、搬送待機状態において前記載置検出部から受信する情報に基づき前記媒体載置部上に媒体が有ると判定する場合、前記表示装置に、前記ユーザーインターフェースを表示させることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、前記制御部は、搬送待機状態において前記載置検出部から受信する情報に基づき前記媒体載置部上に媒体が有ると判定する場合、前記表示装置に、媒体の種類に係わる情報の入力を受け付けるユーザーインターフェースを表示させるので、ユーザーが前記ユーザーインターフェースを表示させる為の操作を行う必要がなく、ユーザーの使い勝手が向上する。
【0016】
第6の態様は、第5の態様において、前記制御部は、前記媒体載置部上に媒体が無い状態で媒体の載置を待ち受け、前記載置検出部から受信する情報に基づき前記媒体載置部に媒体が載置されたと判定すると前記送りローラーを正転させて前記媒体載置部から媒体を送り出す待ち受け制御を実行可能であり、前記制御部は、前記待ち受け制御において媒体の剛性に係わる情報を取得した後は、前記表示装置への前記ユーザーインターフェースの表示を行うことなく前記媒体載置部から媒体を送り出すことを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、前記制御部は、前記待ち受け制御において媒体の剛性に係わる情報を取得した後は、前記表示装置への前記ユーザーインターフェースの表示を行うことなく前記媒体載置部から媒体を送り出すので、ユーザーは前記媒体載置部に媒体を載置する度に媒体の剛性に係わる情報の入力を行う必要がなく、装置の使い勝手が向上する。
【0018】
第7の態様は、第1から第4の態様のいずれかにおいて、前記搬送路において前記送りローラーより下流であって前記ストッパーより上流の位置に、媒体先端の斜行を検出する為の斜行検出部を備え、前記制御部は、前記斜行検出部から受信する情報に基づき、前記斜行矯正制御を所定時間実行した時点での媒体の斜行が予め定められた程度を超える場合、エラー処理を行うことを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、前記制御部は、前記斜行検出部から受信する情報に基づき、前記斜行矯正制御を所定時間実行した時点での媒体の斜行が予め定められた程度を超える場合、エラー処理を行うので、媒体の斜行矯正が良好でない場合に、適切な処理結果を得ることができる。
【0020】
第8の態様は、第7の態様において、前記エラー処理は、前記送りローラーの回転速度を減速して前記斜行矯正制御を継続する処理であることを特徴とする。
本態様によれば、前記エラー処理は、前記送りローラーの回転速度を減速して前記斜行矯正制御を継続する処理であるので、媒体先端の前記ストッパーへの突き当たりに伴う潰れを抑制しつつ、媒体の回転によって斜行矯正が進行することを期待できる。
【0021】
第9の態様は、第7の態様において、前記エラー処理は、前記送りローラーを逆転させて媒体を上流に戻し、前記斜行矯正制御のリトライを行う処理であることを特徴とする。
本態様によれば、前記エラー処理は、前記送りローラーを逆転させて媒体を上流に戻し、前記斜行矯正制御のリトライを行う処理であるので、斜行矯正が良好に行われることが期待できる。
【0022】
第10の態様は、第7の態様において、各種情報を表示する表示装置と、前記送りローラーにより送られる媒体を載置する媒体載置部と、を備え、前記エラー処理は、前記送りローラーを停止して前記表示装置に前記媒体載置部への媒体の再セットを案内する処理であることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、前記エラー処理は、前記送りローラーを停止して前記表示装置に前記媒体載置部への媒体の再セットを案内する処理であるので、ユーザーにより前記媒体載置部への媒体の再セットが行われることで次回の媒体搬送時に斜行の少ない状態での搬送が期待できる。
【0024】
第11の態様に係る画像読取装置は、媒体を搬送する第1から第10の態様のいずれかに係る媒体搬送装置と、前記媒体搬送装置により搬送される媒体の面を読み取る読み取り手段とを備えたことを特徴とする。
本態様によれば、画像読取装置において、上述した第1から第10の態様のいずれかの作用効果が得られる。
【0025】
以下、本発明を具体的に説明する。
以下では媒体の一例である原稿の表面及び裏面のうち少なくとも一面を読み取り可能なスキャナー1を画像読取装置の一例として説明する。スキャナー1は、読み取り手段に対して原稿を搬送させつつ読み取りを行う、所謂シートフィードタイプのスキャナーである。
【0026】
尚、各図において示すX-Y-Z座標系は、X軸方向が装置幅方向であり原稿幅方向でもある。Y軸方向は装置奥行き方向であり、水平方向に沿った方向である。Z軸方向は鉛直方向に沿った方向である。
以下では原稿が搬送されていく方向(+Y方向)を「下流」といい、これと反対の方向(-Y方向)を「上流」という場合がある。
【0027】
図1においてスキャナー1は、下部ユニット2aの上部に上部ユニット2bを備えている。上部ユニット2bは下部ユニット2aに対して+Y方向の端部に位置する不図示の回転軸を中心に回転可能であり、回転することで下部ユニット2aに対して開くことができる。上部ユニット2bを下部ユニット2aに対して開くことで、後述する搬送路6を露呈させることができる。
【0028】
上部ユニット2bは、上面に各種操作を行う操作パネル51を備えている。操作パネル51は、本実施形態では表示と入力の双方が行える所謂タッチパネルであり、各種情報の入力を受け付ける情報入力部と、各種情報を表示する為の表示装置とを兼用する。
【0029】
以下、スキャナー1内部における原稿送り経路について説明する。原稿送り経路の最も上流には、媒体載置部の一例である原稿載置部5が設けられており、原稿は、符号Paで示される様に原稿載置部5によって傾斜姿勢に支持される。
原稿載置部5の下流には、給送モーター52(図3参照)により駆動される給送ローラー10が設けられている。給送ローラー10は、原稿を下流に送る送りローラーの一例である。給送ローラー10は、原稿載置部5に載置された複数枚の原稿のうち、最も下の原稿を下流に送り出す。図1及び図2において符号Pは、原稿載置部5から送り出される原稿の一例を示している。
【0030】
給送ローラー10と対向する位置には分離パッド11が設けられている。分離パッド11は、給送ローラー10によって送り出される最も下の原稿に連れられて下流に進もうとする原稿の進行、即ち重送を抑制する。
給送ローラー10と分離パッド11の下流は、上部経路形成部材12と下部経路形成部材13とで原稿を搬送する搬送路6が形成される。搬送路6は、本実施形態では給送ローラー10から第1搬送ローラー対16までの区間とする。
尚、給送ローラー10及び分離パッド11は、X軸方向において搬送路6のX軸方向における中心位置CL(図9等参照)に設けられており、給送ローラー10による送り力が、原稿に対し斜行を生じさせない様に構成されている。
【0031】
搬送路6には、第1原稿検出部26、剛性検出部29、斜行検出部31、及びストッパー21が設けられているが、これらについては後に改めて説明する。
ストッパー21の下流には、第1搬送ローラー対16が設けられ、更にその下流には、原稿画像を読み取る読み取り手段としての読み取り部20が設けられ、更にその下流には、第2搬送ローラー対17が設けられている。
【0032】
第1搬送ローラー対16は、搬送モーター53(図3参照)により駆動される駆動ローラー16aと、従動回転する従動ローラー16bとを備えて成る。従動ローラー16bは、駆動ローラー16aに対して進退する方向に変位可能であるとともに、不図示の押圧部材により、駆動ローラー16aに向けて押圧されている。
【0033】
給送ローラー10により下流に送り出された原稿は第1搬送ローラー対16にニップされて、第1搬送ローラー対16の下流に位置する下部センサーユニット20A及び上部センサーユニット20Bと対向する位置に搬送される。
【0034】
読み取り部20は、原稿送り経路に対して下に位置する下部センサーユニット20Aと、原稿送り経路に対して上に位置する上部センサーユニット20Bとを備えている。下部センサーユニット20A及び上部センサーユニット20Bは、密着型イメージセンサーモジュール(CISM)である。
原稿送り経路に対して下に位置する下部センサーユニット20Aにより、原稿の下面が読み取られ、原稿送り経路に対して上に位置する上部センサーユニット20Bにより、原稿の上面が読み取られる。
【0035】
読み取り部20において上面及び下面の少なくとも一方の面の画像を読み取られた原稿は、読み取り部20の下流に位置する第2搬送ローラー対17にニップされて、排出口18から排出される。
第2搬送ローラー対17は、搬送モーター53(図3参照)により回転駆動される駆動ローラー17aと、従動回転する従動ローラー17bとを備えて成る。従動ローラー17bは、駆動ローラー17aに対して進退する方向に変位可能であるとともに、不図示の押圧部材により、駆動ローラー17aに向けて押圧されている。
【0036】
続いて図3及び必要に応じて図1を参照しつつスキャナー1における制御系統について説明する。
制御手段としての制御部50は原稿の給送、搬送、排出制御及び読み取り制御を含め、その他スキャナー1の各種制御を行う。特に制御部50は、後述する斜行矯正制御を実行可能である。制御部50には操作パネル51からの信号が入力され、また、操作パネル51の表示、特にユーザーインターフェース(以下、「UI」と称する)を表示させる為の信号が制御部50から操作パネル51に送信される。
【0037】
制御部50は、給送モーター52及び搬送モーター53を制御する。本実施形態では各モーターはDCモーターである。また制御部50には、給送モーター52及び搬送モーター53に対しそれぞれ設けられたロータリーエンコーダー(不図示)の検出値が入力され、これにより制御部50は各モーターの回転量を把握でき、ひいては各ローラーによる原稿の送り量を把握できる。
【0038】
制御部50は、左外側ソレノイド61A、左内側ソレノイド61B、右内側ソレノイド61C、及び右外側ソレノイド61Dを制御する。これらソレノイドを特に区別しない場合、ソレノイド61と総称する。ソレノイド61はソレノイドアクチュエーターであり、通電と非通電とを切り換えることでピストン動作する可動鉄芯を有し、この可動鉄芯の先端に後述するストッパー21が取り付けられている。ソレノイド61は、プル型及びプッシュ型のいずれであっても良い。
【0039】
制御部50には、読み取り部20からの読み取りデータが入力され、また、読み取り部20を制御する為の信号が制御部50から読み取り部20に送信される。
制御部50は、CPU55、フラッシュROM56、及びRAM57を備えている。CPU55はフラッシュROM56に格納されたプログラムに従って各種演算処理を行い、スキャナー1全体の動作を制御する。記憶手段の一例であるフラッシュROM56は読み出し及び書き込みが可能な不揮発性メモリであり、原稿の送り制御や読み取りに必要な各種制御プラグラム、パラメーター等が記憶されている。後述する斜行矯正制御に必要な各種プラグラム、パラメーター等もフラッシュROM56に記憶されている。また操作パネル51を介してユーザーが入力した各種設定情報も、フラッシュROM56に記憶される。揮発性メモリであるRAM57には、一時的に各種情報が格納される。
制御部50はインターフェース58を備えており、このインターフェース58を介して外部コンピューター90との通信が可能となっている。
【0040】
制御部50には、載置検出部28、第1原稿検出部26、第2原稿検出部27、剛性検出部29、及び斜行検出部31のこれら検出部からの信号も入力される。
載置検出部28は図1に示す様に原稿載置部5に設けられている。載置検出部28は一例として光学センサーであり、検出光を発する発光部(不図示)と、原稿で反射した検出光を受光する受光部(不図示)とを備えて成る。原稿載置部5上に原稿が載置されていると、載置検出部28が受光する検出光の強度が所定以上となる。制御部50は載置検出部28の検出信号に基づき、原稿載置部5上の原稿の有無を検知できる。
載置検出部28は、本実施形態では非接触式センサーで構成されるが、接触式のセンサーで構成しても良い。
【0041】
第1原稿検出部26は、給送ローラー10の下流に設けられている。第1原稿検出部26は一例として光学センサーであり、検出光を発する発光部(不図示)と、原稿で反射した検出光を受光する受光部(不図示)とを備えて成る。第1原稿検出部26に原稿が到達すると、第1原稿検出部26が受光する検出光の強度が所定以上となる。制御部50は第1原稿検出部26の検出信号に基づき、原稿先端或いは後端の通過を検知できる。第1原稿検出部26は、反射型センサーに代えて透過型センサーを採用しても良いし、また本実施形態では非接触式センサーで構成されるが、接触式のセンサーで構成しても良い。
【0042】
剛性検出部29は、第1原稿検出部26の下流に設けられている。本実施形態において剛性検出部29は、図1に示す様に搬送路6を挟んで対向配置される超音波発信部29a及び超音波受信部29bを備えて成る超音波センサーで構成される。後述する制御部50は、剛性検出部29から送信される信号の強度をもとに原稿の剛性を検出できる。即ち剛性検出部29の検出信号は、原稿の剛性に係わる情報となる。
【0043】
例えば、第1の原稿と、この第1の原稿より厚みが薄く剛性が低い第2の原稿がある場合、第2の原稿を透過して超音波受信部29bで受信される超音波は、第1の原稿を透過して超音波受信部29bで受信される超音波よりも強度が強くなる。これにより制御部50は、原稿の剛性を把握できる。また、原稿の材質が同じかまたは類似のものであれば、超音波受信部29bで受信される超音波の強度は原稿の厚みに応じて変化する為、本実施形態に係る剛性検出部29は原稿の厚みを検出する厚み検出部であると言える。この場合、超音波受信部29bで受信される超音波の強度が、原稿の厚みに係わる情報となる。
【0044】
尚、本実施形態では剛性検出部29を超音波式のセンサーで構成したが、これに限られずその他の公知の紙厚センサーを用い、紙厚に基づき原稿の剛性を判定しても良い。但し剛性検出部29を超音波式のセンサーで構成する場合、同じ厚みであっても剛性が異なる原稿、より具体的には密度が異なる原稿では、超音波受信部29bで受信される超音波の強度は異なり、これにより原稿の剛性をより好適に把握することができる。
また本実施形態では、給送ローラー10から送り出された原稿は、下部経路形成部材13に押し付けられ、下に凸となる様に湾曲する。この湾曲の程度は、原稿の剛性が低いほど強くなる。従って例えば、図1の第1原稿検出部26を公知の測距センサーで構成すれば、原稿の剛性を検出することもできる。即ち、原稿の剛性が低いほど、第1原稿検出部26と原稿との距離が短くなる。尚、原稿が存在しない場合、第1原稿検出部26で検出した距離は最も長くなる。
いずれにせよセンサーを利用して原稿の剛性或いは剛性に代えて厚みを判定する構成によれば、ユーザーが原稿の剛性に係わる情報を入力する手間が不要となり、ユーザーによる装置の使い勝手が向上する。
【0045】
斜行検出部31は、後述するストッパー21の上流近傍に位置する光学センサーであり、検出光を発する発光部(不図示)と、原稿で反射した検出光を受光する受光部(不図示)とを備えて成る。そして斜行検出部31に原稿が到達すると、斜行検出部31が受光する検出光の強度が所定以上となる。但し斜行検出部31は、反射型センサーに代えて透過型センサーを採用しても良い。
斜行検出部31は、図4図6に示す様に複数の検出部で構成されており、具体的には左外側検出部31A、左内側検出部31B、右内側検出部31C、及び右外側検出部31Dを含んでいる。図4図6において直線CLは、X軸方向における搬送路6の中心位置を示しており、各検出部は中心位置CLに対して左右対称となる様に、且つ、後述するストッパー21に対応する位置に配置されている。
原稿の先端Psが斜行していると、一例として図4に示す様に左外側検出部31Aのみが原稿を検出し、他の検出部は原稿を検出しない状態が生じる。即ち制御部50は、斜行検出部31を構成する各検出部の検出信号をもとにして、原稿の斜行を判定することができる。
【0046】
次に、第2原稿検出部27は、原稿送り方向において第1搬送ローラー対16と読み取り部20との間に位置する光学センサーであり、検出光を発する発光部(不図示)と、原稿で反射した検出光を受光する受光部(不図示)とを備えて成る。第2原稿検出部27に原稿が到達すると、第2原稿検出部27が受光する検出光の強度が所定以上となる。制御部50は、第2原稿検出部27から受信する信号により、第2原稿検出部27の配置位置での原稿先端或いは後端の通過を検出できる。第2原稿検出部27は、反射型センサーに代えて透過型センサーを採用しても良いし、或いは本実施形態では非接触式センサーで構成されるが、接触式のセンサーで構成しても良い。
【0047】
以上説明した給送ローラー10と制御部50は、後述するストッパー21も含めて、媒体搬送装置の一例である原稿搬送装置3(図1図2参照)を構成する。
原稿搬送装置3は、別の観点では、スキャナー1から原稿読み取りに係る機能、即ち読み取り部20を省いた装置と捉えることもできる。或いは、原稿読み取りに係る機能、即ち読み取り部20を備えていても、原稿搬送の観点に着目すれば、スキャナー1そのものが原稿搬送装置と捉えることもできる。
尚、剛性検出部29及び斜行検出部31は、原稿搬送装置3の任意の構成要素となる。
【0048】
続いてストッパー21を利用した斜行矯正制御について説明する。
図1及び図2に示す様に、搬送路6において給送ローラー10の下流には、ストッパー21が設けられている。ストッパー21は、図1に示す様に搬送路6を遮断する遮断状態と、図2に示す様に搬送路6を開放する開放状態とを切り換え可能に設けられている。
ストッパー21の状態切り換えは、制御部50によって制御されるソレノイド61の動力によって行われる。
【0049】
ストッパー21は、図4図6に示す様に複数のストッパーで構成されており、具体的には左外側ストッパー21A、左内側ストッパー21B、右内側ストッパー21C、及び右外側ストッパー21Dを含んでいる。各ストッパーは中心位置CLに対して左右対称となる様に配置されている。
尚、本実施形態では各ストッパーはX軸方向に沿って概ね等間隔で設けられているが、中心位置CLに対して左右対称となる様に配置されていればこの限りではない。また本実施形態では各ストッパーは中心位置CLに対して左右にそれぞれ2つ設けられているが、3つ以上設けられていても良いし、或いは中心位置CLに対して左右にそれぞれ1つのみ設けられていても良い。また或いは、ストッパー21は中心位置CLに対して左右対称となる様に形成された一つの部材で構成されていても良い。
【0050】
本実施形態において左外側ストッパー21Aは、左外側ソレノイド61A(図3参照)により駆動される。左内側ストッパー21Bは、左内側ソレノイド61B(図3参照)により駆動される。右内側ストッパー21Cは、右内側ソレノイド61C(図3参照)により駆動される。右外側ストッパー21Dは、右外側ソレノイド61D(図3参照)により駆動される。即ち各ストッパーは、本実施形態では独自に駆動することができる。但し、一つのソレノイドによって全てのストッパーを駆動する様に構成しても良い。
【0051】
原稿の給送が開始される際、ストッパー21は遮断状態にある。図4は、原稿P1が斜行した状態で送られて、先端Psにおいて先行している左側が遮断状態にある左外側ストッパー21Aに突き当たった状態を示している。勿論、斜行の方向が図4とは逆であれば、先端Psにおいて先行している右側が右外側ストッパー21Dに突き当たることとなる。また、原稿サイズが小さければ、先端Psにおいて先行している側は左内側ストッパー21B、或いは右内側ストッパー21Cに突き当たることとなる。
【0052】
図4に示す例では、原稿P1の先端Psにおいて先行している左側が左外側ストッパー21Aに突き当たると、原稿P1は引き続き給送ローラー10から送り力を受けることにより、左外側ストッパー21Aに突き当たった部位を支点として図4から図5への変化で示す様に回転する。図5において矢印Raは、このときの原稿P1の回転方向を示している。この様に原稿P1が回転することで、原稿P1の斜行が矯正される。
以上の通り、遮断状態にあるストッパー21に原稿先端を突き当て、そして給送ローラー10の回転を継続して原稿の回転を促す制御が、斜行矯正制御となる。この斜行矯正制御は、ストッパー21の遮断状態から開放状態への切り換えによって終了する。
【0053】
但し、上述した原稿P1よりも剛性が低い原稿P2の場合、図6に示す様に先端Psにおいて先行している左側が、遮断状態にある左外側ストッパー21Aに突き当たると、突き当たった部位が符号Pmで示す様に潰れてしまう場合がある。この場合原稿P2は回転せず、斜行が適切に矯正できないこととなる。この様な問題に鑑み、制御部50は原稿の剛性に応じた所定の制御を行う。
【0054】
以下、更に斜行矯正制御について図7を参照して説明する。尚、図7は上述した斜行検出部31を利用しない制御の一例である。
制御部50は、原稿の読み取り開始指令を受けると、給送ローラー10の回転を開始する(ステップS101)。そして第1原稿検出部26が原稿先端を検出すると(ステップS102においてYes)、剛性検出部29による検出値を取得し(ステップS103)、取得した検出値が予め定められた閾値Ka未満であるかを判断する(ステップS104)。
【0055】
即ち搬送されている原稿が、第1の原稿であるか(ステップS104においてNo)、或いは第1の原稿より剛性が低い第2の原稿であるか(ステップS104においてYes)を判断する。第1の原稿とは、剛性検出部29での検出値が閾値Ka以上となる原稿を意味し、第2の原稿とは、剛性検出部29での検出値が閾値Ka未満となる原稿を意味する。図4及び図5を参照して説明した原稿P1は第1の原稿の一例であり、図6を参照して説明した原稿P2は第2の原稿の一例である。
【0056】
剛性検出部29による検出値が閾値Ka以上の場合(ステップS104においてNo)、即ち第1の原稿の場合、制御部50は斜行矯正時間として時間t1を選択する。剛性検出部29による検出値が閾値Ka未満の場合(ステップS104においてYes)、即ち第2の原稿の場合、制御部50は斜行矯正時間として時間t2を選択する。詳しくは後述するが、時間t2は時間t1より短く設定されている。
【0057】
次に、制御部50は原稿の斜行矯正を実施し(ステップS107)、斜行矯正後、原稿の読み取り動作に進む(ステップS108)。
ここでステップS107での斜行矯正時間は、上述したように剛性検出部29による検出値に応じて時間t1及び時間t2のいずれかが選択される。斜行矯正時間は、一例として第1原稿検出部26によって原稿先端を検出してから、ストッパー21を遮蔽状態から開放状態に切り換える為にソレノイド61を制御するまでの時間である。特に時間t1は、第2の原稿よりも相対的に剛性が高い第1の原稿が、図4から図5への変化で示した様に斜行矯正されるのに好適な時間に設定されており、実験的に求められている。
【0058】
ここで、時間t2は時間t1よりも短く設定されており、例えば時間t2は時間t1の70%~90%程度に設定されている。これにより第2の原稿が搬送される場合、ストッパー21が遮断状態から開放状態へ切り換えられるタイミング、即ち斜行矯正制御を終了するタイミングは、第2の原稿の場合が、第1の原稿の場合よりも早められる。
以上の様に、斜行矯正制御を実行可能な制御部50は、原稿の剛性に係わる情報を取得可能であるとともに、第1の原稿より剛性が低い第2の原稿を搬送する場合、ストッパー21を遮断状態から開放状態に切り換えて斜行矯正制御を終了するタイミングを、第1の原稿よりも早める。これにより第1の原稿より剛性が低い第2の原稿を搬送する際の、原稿先端のストッパー21への突き当たりに伴う潰れを抑制できる。
尚、上記の例では原稿の剛性を2種類に分類し、それに応じて斜行矯正時間も2種類設定したが、これに限られず原稿の剛性を3種類或いはそれ以上に分類し、それに応じて斜行矯正時間も3種類或いはそれ以上に設定しても良いことは勿論である。即ち第1の原稿と、これより剛性の低い第2の原稿とは、あくまで相対的な剛性の高低を表現するものに過ぎず、原稿の剛性を2種類に分類することに限定するものではない。
【0059】
尚、図7の例では、原稿の剛性を剛性検出部29を利用して把握したが、原稿の種類に係わる情報の入力を受け付ける情報入力部として操作パネル51を利用し、操作パネル51に、原稿の種類に係わる情報の入力を受け付けるUIを表示させ、このUIを介して得られた情報に基づき制御部50が原稿の剛性を把握しても良い。
上記UIとして、例えば「原稿の種類を設定してください」のメッセージとともに、原稿の種類を選択可能なプルダウンメニューを表示させる。原稿の種類には、一例として「薄紙」、「普通紙」、「写真用紙」を含める。原稿の剛性は、「薄紙」、「普通紙」、「写真用紙」の順に高くなり、「薄紙」は第2の原稿として分類し、「普通紙」及び「写真用紙」は第1の原稿として分類する。
この様に制御部50が、情報入力部に入力された原稿の種類に基づき、原稿の剛性を判定する構成によれば、原稿の剛性を正確に把握することができる。
また他の実施例として、上記UIとして、原稿の読み取りモードの選択を受け付けるUIを表示させ、このUIを介して得られた情報に基づき制御部50が原稿の剛性を把握しても良い。原稿の読み取りモードには、「薄紙モード」、「普通紙モード」、「厚紙モード」を含める。原稿の剛性は、「薄紙モード」、「普通紙モード」、「厚紙モード」の順に高くなり、「薄紙モード」は第2の原稿として分類し、「普通紙モード」及び「厚紙モード」は第1の原稿として分類する。
【0060】
尚、上記の様にUIを介して制御部50が原稿の剛性に係わる情報を得ることができる場合、剛性検出部29を省略することもできるが、剛性検出部29を設けた上で上記UIも表示可能とするとともに、上記UIの表示と非表示を、ユーザーが選択できる様にすることも好適である。
【0061】
尚、制御部50は、搬送待機状態において載置検出部28から受信する情報に基づき原稿載置部5上に原稿が有ると判定する場合、操作パネル51に、上記UIを表示させる様にしても良い。これによりユーザーが上記UIを表示させる為の操作を行う必要がなく、ユーザーの使い勝手が向上する。
【0062】
また制御部50は、原稿載置部5上に原稿が無い状態で原稿の載置を待ち受けて、載置検出部28から受信する情報に基づき原稿載置部5に原稿が載置されたと判定すると、給送ローラー10を正転させて原稿載置部5から原稿を送り出す待ち受け制御を実行可能に構成しても良い。そしてこの場合制御部50は、待ち受け制御において原稿の剛性に係わる情報を取得した後は、操作パネル51への前記UIの表示を行うことなく原稿載置部5から原稿を送り出す様にしても良い。このことによってユーザーは原稿載置部5に原稿を載置する度に原稿の剛性に係わる情報の入力を行う必要がなく、装置の使い勝手が向上する。
なお、待ち受け制御とは、例えば、原稿載置部5上に原稿を1枚ずつ載置し、原稿を送り出す制御である。この場合例えば、原稿載置部5上に1枚目の原稿が載置されたときには上記UIを表示させ、2枚目以降の原稿が載置されたときには上記UIを表示させないようにしても良い。
【0063】
続いて図8を参照して斜行矯正制御の他の実施例について説明する。図8は、斜行検出部31を利用する制御の一例である。
図8のステップS201~S207は、図7のステップS101~107と同様であるので、以下ではその説明は省略する。
ステップS208では、斜行検出部31を利用して原稿先端の斜行が許容範囲内であるか否か、換言すれば斜行の程度が予め定められた程度を超えるか否かを把握する。例えば、図5に示す様に少なくともX軸方向における中央の左内側検出部31B及び右内側検出部31Cが原稿を検出していれば、原稿の斜行が許容範囲であるとする。従ってY軸方向におけるストッパー21と斜行検出部31との間隔は、許容できる斜行の程度をもとに設定することが好適である。
尚、原稿のサイズが小さい場合、左外側検出部31Aと右外側検出部31Dは斜行の有無に係わらず原稿を検出しない為、左外側検出部31Aと右外側検出部31Dは、斜行が許容範囲内であるか否かの判断には用いなくとも良い。
【0064】
X軸方向における中央の左内側検出部31B及び右内側検出部31Cが原稿を検出していることを斜行の許容条件とすれば、図6に示した例は原稿の斜行が予め定めた程度を超えると判定することができる。尚、図6の例では原稿の給送を継続すれば、原稿先端の潰れを伴って左内側検出部31B及び右内側検出部31Cが原稿を検出してしまう虞もあるが、上述した様に剛性の低い第2の原稿では斜行矯正制御の時間が抑制されるので、その様な問題は回避できる。
【0065】
但し、原稿の給送量が想定の範囲を超えている場合、例えば図6の例において更に原稿の給送が進むと、原稿先端の潰れを伴って左内側検出部31B及び右内側検出部31Cが原稿を検出し、右外側検出部31Dのみが原稿を検出しない虞もある。この様な場合は、原稿の斜行が許容範囲内であると誤判定する虞がある。従ってX軸方向における中央の左内側検出部31B及び右内側検出部31Cが原稿を検出していても、左外側検出部31A及び右外側検出部31Dのうちいずれか一方のみが原稿を検出している場合、エラーとして後述するステップS209に分岐しても良い。
【0066】
次に、原稿の斜行が許容範囲内である場合は(ステップS208においてYes)、原稿の読み取り動作に進む(ステップS210)。そして原稿の斜行が許容範囲を超える場合は(ステップS208においてNo)、エラー処理に進む(ステップS209)。この様に原稿の斜行矯正が良好でない場合にエラー処理に進むことで、適切な処理結果を得ることができる。
【0067】
ステップS209のエラー処理として、例えば給送ローラー10の回転速度を減速して斜行矯正制御を継続する処理とすることができる。このことにより、原稿先端のストッパー21への突き当たりに伴う潰れを抑制しつつ、原稿の回転によって斜行矯正が進行することを期待できる。
【0068】
或いはステップS209のエラー処理として、例えば給送ローラー10を逆転させて原稿を上流に戻し、再度斜行矯正制御を行う処理とすることができる。このことにより、斜行矯正制御のリトライが行われ、斜行矯正が良好に行われることが期待できる。
【0069】
或いはステップS209のエラー処理として、給送ローラー10を停止して操作パネル51に原稿載置部5への原稿の再セットを案内する処理とすることができる。ユーザーにより原稿載置部5への原稿の再セットが行われることで、次回の原稿搬送時に斜行の少ない状態での搬送が期待できる。
尚、この例では原稿の給送を開始した後に原稿の斜行を検出して、ユーザーに対し原稿載置部5への原稿の再セットを促すが、原稿の給送開始前に、原稿の斜行を検出して、同様にユーザーに対し原稿載置部5への原稿の再セットを促す様にしても良い。給送開始前に、原稿先端が給送ローラー10より下流に入り込んでしまっている場合があるからである。
【0070】
次に、斜行矯正制御の際に原稿をより回転し易くする為の構成について図9及び図10を参照して説明する。尚、図9及び図10を参照して以下に説明する剛性付与部は原稿搬送装置3の必須構成ではない。
図9及び図10において、符号23Aは第1剛性付与部を示し、符号23Bは第2剛性付与部を示している。第1剛性付与部23A及び第2剛性付与部23Bは、図示は省略するが図1に示す搬送路6において給送ローラー10より下流であってストッパー21より上流の位置に設けられている。
【0071】
第1剛性付与部23A及び第2剛性付与部23Bは、図9に示す様に搬送路6に進出する状態と、図10に示す様に搬送路6から退避する状態とを切り換え可能に設けられている。第1剛性付与部23Aの状態切り換えは、制御部50により制御される第1ソレノイド63Aにより行われ、第2剛性付与部23Bの状態切り換えは、制御部50により制御される第2ソレノイド63Bにより行われる。尚、本実施形態では第1剛性付与部23A及び第2剛性付与部23Bのそれぞれに対して独立したソレノイドを設けているが、第1剛性付与部23A及び第2剛性付与部23Bを一つのソレノイドで駆動しても良い。
【0072】
第1剛性付与部23A及び第2剛性付与部23Bは、原稿の剛性に応じ、少なくとも斜行矯正制御を実行中において図9に示す様に搬送路6に進出する状態とされる。図9において符号P2は上述した第2の原稿を示しており、第2の原稿P2には、給送ローラー10及び分離パッド11とによるニップ部分と、第1剛性付与部23A及び第2剛性付与部23BとによってX軸方向に沿って波打つ形状が形成される。このことにより、第2の原稿P2は、原稿送り方向の剛性が向上する。原稿送り方向の剛性が向上すると、原稿先端がストッパー21に突き当たった際に原稿全体が回転し易くなり、ひいては斜行をより良好に矯正することができる。
尚、第2の原稿P2より剛性が高く回転し易い第1の原稿P1の場合は、図10に示す様に第1剛性付与部23A及び第2剛性付与部23Bは斜行矯正制御の実行中も含めて原稿の給送から読み取り、そして排出の全てにおいて搬送路6から退避した状態に維持される。これにより、第1の原稿P1に対して過剰な搬送負荷が付与されることが回避される。
尚、図9及び図10の例では、剛性付与部はX軸方向の中心位置CLに対し対称に位置する様に左右に1つずつ設けられているが、2つずつ或いはそれ以上設けても良いことは勿論である。
【0073】
本発明は上記において説明した実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
また上記実施形態では、媒体搬送装置を画像読取装置の一例であるスキャナー1に対して適用したが、媒体に対して記録を行う記録装置、特にインクジェットプリンターに対して適用することもできる。
【符号の説明】
【0074】
1…スキャナー、2a…下部ユニット、2b…上部ユニット、3…原稿搬送装置、5…原稿載置部、6…搬送路、10…給送ローラー、11…分離パッド、12…上部経路形成部材、13…下部経路形成部材、16…第1搬送ローラー対、16a…駆動ローラー、16b…従動ローラー、17…第2搬送ローラー対、17a…駆動ローラー、17b…従動ローラー、18…排出口、20…読み取り部、20A…下部センサーユニット、20B…上部センサーユニット、21…ストッパー、21A…左外側ストッパー、21B…左内側ストッパー、21C…右内側ストッパー、21D…右外側ストッパー、23A…第1剛性付与部、23B…第2剛性付与部、26…第1原稿検出部、27…第2原稿検出部、28…載置検出部、29…剛性検出部、29a…超音波発信部、29b…超音波受信部、31…斜行検出部、31A…左外側検出部、31B…左内側検出部、31C…右内側検出部、31D…右外側検出部、50…制御部、51…操作パネル、52…給送モーター、53…搬送モーター、55…CPU、56…フラッシュROM、57…RAM、58…インターフェース、61…ソレノイド、61A…左外側ソレノイド、61B…左内側ソレノイド、
61C…右内側ソレノイド、61D…右外側ソレノイド、63A…第1ソレノイド、63B…第2ソレノイド、90…外部コンピューター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10