(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】搬送装置及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/38 20060101AFI20241218BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
B65H5/38
B65H5/06 F
(21)【出願番号】P 2020214116
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】向田 篤史
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-084780(JP,A)
【文献】特開2017-072641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/38
B65H 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体が装置高さ方向の下方へ搬送される下降経路と前記媒体が前記装置高さ方向の上方へ搬送される上昇経路とが、前記装置高さ方向においてオーバーラップする搬送経路が形成される装置本体と、
前記装置本体に対して外側へ移動可能に設けられ、前記装置本体に収納された状態において、前記下降経路及び前記上昇経路のそれぞれの前記装置高さ方向の上方に位置する上ガイド部と、
前記装置本体に設けられ、前記上ガイド部に対して前記装置高さ方向の下方に位置し、前記上ガイド部と共に前記下降経路及び前記上昇経路を形成する下ガイド部と、を備え、
前記下ガイド部は、前記下降経路を形成する第1経路形成部材と、前記媒体の搬送方向において前記第1経路形成部材より下流に配置され前記上昇経路を形成する第2経路形成部材とを有し、
前記第1経路形成部材は、第1位置及び第2位置に移動可能に設けられ、前記第1位置では前記下降経路を形成すると共に前記装置高さ方向において少なくとも一部が前記上ガイド部の移動領域とオーバーラップし、前記第2位置では前記装置高さ方向において前記移動領域とオーバーラップしない、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送装置において、
前記第1経路形成部材を前記第1位置及び前記第2位置の一方へ回転可能に支持する軸部が設けられ、
前記軸部は、前記下降経路と前記上昇経路との接続位置に対して前記装置高さ方向の下方且つ前記移動領域より下方に位置する、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の搬送装置において、
前記第2経路形成部材は、前記第1経路形成部材における前記軸部が取り付けられた部位に着脱可能に設けられる、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項3に記載の搬送装置において、
前記第2経路形成部材は、前記第1経路形成部材において前記軸部の周りに回転可能に装着され、前記第1経路形成部材への装着状態において、前記上ガイド部と対向する対向位置と、前記装置高さ方向において前記対向位置より上方の退避位置とに移動可能であり、
前記上ガイド部が前記装置本体に対して外側に位置する場合、前記第2経路形成部材は、前記退避位置において前記第1経路形成部材に対して着脱が可能となる、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項4に記載の搬送装置において、
前記第2経路形成部材は、前記第1経路形成部材と係合する係合部が設けられ、
前記第1経路形成部材は、前記係合部と係合する被係合部が設けられ、
前記係合部は、前記軸部の径方向に開口する開口部を有し、
前記被係合部は、前記第2経路形成部材が前記退避位置にある場合、前記開口部を通過可能となり、前記第2経路形成部材が前記対向位置にある場合、前記開口部の通過が不可となる異方形状を有する、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の搬送装置において、
前記装置本体は、前記媒体を検出可能なセンサーユニットが着脱可能に設けられ、
前記センサーユニットは、前記第2経路形成部材より前記搬送方向の下流において前記上昇経路と対向し、且つ前記第2経路形成部材が離脱されることで、前記装置本体からの離脱が可能となる、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項7】
請求項5に記載の搬送装置において、
前記装置本体は、前記媒体を検出可能なセンサーユニットが着脱可能に設けられ、
前記センサーユニットは、前記第2経路形成部材より前記搬送方向の下流において前記上昇経路と対向し、且つ前記第2経路形成部材が離脱されることで、前記装置本体からの離脱が可能となり、
前記第2経路形成部材は、前記対向位置に位置する状態において前記センサーユニットに取り付けられる、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の搬送装置において、
前記第2経路形成部材は、
前記媒体の幅方向及び前記搬送方向の両方と交差する交差方向に前記上昇経路の空間を拡げる拡幅部と、
前記上昇経路に沿って前記媒体を案内する案内部と、を備え、
前記案内部は、前記上昇経路に向けて突出する突出位置と、前記第2経路形成部材に収納される収納位置とに変位可能である、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の搬送装置と、
前記搬送装置によって搬送される媒体に記録を行う記録部と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のインクジェット記録装置は、搬送方向の上流の搬送ローラーから下流の搬ローラーへ向けて、記録媒体が上昇する搬送経路が示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のインクジェット記録装置において、装置を大型化させずに搬送経路の長さを長くする構成として、搬送経路の一部が装置高さ方向にオーバーラップするように、搬送経路の一部に下降経路及び上昇経路を設ける構成が考えられる。搬送経路は、装置本体に残る内側の部材と、装置本体に対して開閉可能な外側の部材とで構成される。
しかし、この構成では、搬送経路の一部に下降経路及び上昇経路が存在するので、搬送経路を開放する場合、外側に位置する部材と内側に位置する部材とが干渉し、搬送経路を開放できなくなる虞がある。
さらに、この構成において、下降経路及び上昇経路を構成する部分を取り出してから搬送経路を開放させようとすると、下降経路及び上昇経路を構成する部分を取り出すための余分な空間が装置本体に必要となり、装置が大型化してしまう虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為の、本発明に係る搬送装置は、媒体が装置高さ方向の下方へ搬送される下降経路と前記媒体が前記装置高さ方向の上方へ搬送される上昇経路とが、前記装置高さ方向においてオーバーラップする搬送経路が形成される装置本体と、前記装置本体に対して外側へ移動可能に設けられ、前記装置本体に収納された状態において、前記下降経路及び前記上昇経路のそれぞれの前記装置高さ方向の上方に位置する上ガイド部と、前記装置本体に設けられ、前記上ガイド部に対して前記装置高さ方向の下方に位置し、前記上ガイド部と共に前記下降経路及び前記上昇経路を形成する下ガイド部と、を備え、前記下ガイド部は、前記下降経路を形成する第1経路形成部材と、前記媒体の搬送方向において前記第1経路形成部材より下流に配置され前記上昇経路を形成する第2経路形成部材とを有し、前記第1経路形成部材は、第1位置及び第2位置に移動可能に設けられ、前記第1位置では前記下降経路を形成すると共に前記装置高さ方向において前記上ガイド部の移動領域とオーバーラップし、前記第2位置では前記装置高さ方向において前記移動領域とオーバーラップしないことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係るプリンターの用紙の搬送経路を示す図。
【
図2】実施形態に係るプリンターの用紙の搬送経路の概略図。
【
図3】実施形態に係るプリンターの搬送経路が開放された状態を示す斜視図。
【
図4】実施形態に係る搬送部の搬送経路の一部を拡大した概略図。
【
図5】実施形態に係る第1経路形成部材、第2経路形成部材及び用紙幅センサーを示す斜視図。
【
図6】実施形態に係る搬送部のレバー部材の回転に伴って第1下ガイド部材が第1位置から第2位置へ移動する状態を示す側面図。
【
図7】実施形態に係る搬送部の第1経路形成部材、第2経路形成部材及び用紙幅センサーを幅方向から見た側面図。
【
図8】実施形態に係る搬送部における第1下ガイド部材と第2下ガイド部材との連結部を拡大した斜視図。
【
図9】実施形態に係る搬送部における第1下ガイド部材と第2下ガイド部材との連結部を拡大した斜視図。
【
図10】実施形態に係るプリンターのカバー部が開動作されることで搬送経路が開放された状態を示す概略図。
【
図11】実施形態に係る搬送部において第2下ガイド部材が回転された状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について概略的に説明する。
第1の態様に係る搬送装置は、媒体が装置高さ方向の下方へ搬送される下降経路と前記媒体が前記装置高さ方向の上方へ搬送される上昇経路とが、前記装置高さ方向においてオーバーラップする搬送経路が形成される装置本体と、前記装置本体に対して外側へ移動可能に設けられ、前記装置本体に収納された状態において、前記下降経路及び前記上昇経路のそれぞれの前記装置高さ方向の上方に位置する上ガイド部と、前記装置本体に設けられ、前記上ガイド部に対して前記装置高さ方向の下方に位置し、前記上ガイド部と共に前記下降経路及び前記上昇経路を形成する下ガイド部と、を備え、前記下ガイド部は、前記下降経路を形成する第1経路形成部材と、前記媒体の搬送方向において前記第1経路形成部材より下流に配置され前記上昇経路を形成する第2経路形成部材とを有し、前記第1経路形成部材は、第1位置及び第2位置に移動可能に設けられ、前記第1位置では前記下降経路を形成すると共に前記装置高さ方向において前記上ガイド部の移動領域とオーバーラップし、前記第2位置では前記装置高さ方向において前記移動領域とオーバーラップしないことを特徴とする。
本態様によれば、前記上昇経路及び前記下降経路を有することで、直線状の前記搬送経路を有する構成に比べて、前記搬送経路の経路長を長くすることができる。
また、前記第1経路形成部材が前記第2位置に移動されることで、前記上ガイド部を前記装置本体に対して外側へ移動可能となり、前記搬送経路が開放されるので、前記第2経路形成部材のメンテナンスを行い易くすることができる。
さらに、前記上ガイド部を前記装置本体に対して外側へ移動させる場合、前記下ガイド部において、前記第1経路形成部材のみを退避させればよいので、前記下ガイド部が退避する空間を最小限にすることができる。
【0008】
第2の態様に係る搬送装置は、第1の態様において、前記第1経路形成部材を前記第1位置及び前記第2位置の一方へ回転可能に支持する軸部が設けられ、前記軸部は、前記下降経路と前記上昇経路との接続位置に対して前記装置高さ方向の下方且つ前記移動領域より下方に位置することを特徴とする。
本態様によれば、前記第1経路形成部材が前記軸部を中心に回転されることで前記第1位置及び前記第2位置の一方へ移動されるので、簡単な構成で前記第1経路形成部材を移動させることができる。また、前記軸部が前記上ガイド部の前記移動領域より下方に位置するので、前記軸部が前記上ガイド部と接触するのを防ぐことができる。
【0009】
第3の態様に係る搬送装置は、第2の態様において、前記第2経路形成部材は、前記第1経路形成部材における前記軸部が取り付けられた部位に着脱可能に設けられることを特徴とする。
本態様によれば、前記第1経路形成部材を取り外さなくても前記第2経路形成部材を着脱できるので、前記第2経路形成部材の交換やメンテナンスの作業を行い易くすることができる。また、前記第2経路形成部材が前記第1経路形成部材に着脱されるので、前記第2経路形成部材が前記第1経路形成部材とは異なる部位に着脱される構成に比べて、前記第1経路形成部材に対する前記第2経路形成部材の位置精度を確保し易くなる。
【0010】
第4の態様に係る搬送装置は、第3の態様において、前記第2経路形成部材は、前記第1経路形成部材において前記軸部の周りに回転可能に装着され、前記第1経路形成部材への装着状態において、前記上ガイド部と対向する対向位置と、前記装置高さ方向において前記対向位置より上方の退避位置とに移動可能であり、前記上ガイド部が前記装置本体に対して外側に位置する場合、前記第2経路形成部材は、前記退避位置において前記第1経路形成部材に対して着脱が可能となることを特徴とする。
本態様によれば、前記上ガイド部が退避することで開放された空間を利用可能となるので、前記第2経路形成部材の着脱の作業を行い易くすることができる。
【0011】
第5の態様に係る搬送装置は、第3の態様又は第4の態様において、前記第2経路形成部材は、前記第1経路形成部材と係合する係合部が設けられ、前記第1経路形成部材は、前記係合部と係合する被係合部が設けられ、前記係合部は、前記軸部の径方向に開口する開口部を有し、前記被係合部は、前記第2経路形成部材が前記退避位置にある場合、前記開口部を通過可能となり、前記第2経路形成部材が前記対向位置にある場合、前記開口部の通過が不可となる異方形状を有することを特徴とする。
本態様によれば、前記第2経路形成部材が前記対向位置にある場合、前記第2経路形成部材が前記第1経路形成部材から離脱されなくなる。換言すると、前記媒体が前記搬送経路に沿って搬送される場合、前記第2経路形成部材が前記第1経路形成部材に対して位置ずれすることが抑制されるので、前記上昇経路における前記媒体の搬送状態を安定させることができる。
【0012】
第6の態様に係る搬送装置は、第1の態様から第5の態様のいずれか1つにおいて、前記装置本体は、前記媒体を検出可能なセンサーユニットが着脱可能に設けられ、前記センサーユニットは、前記第2経路形成部材より前記搬送方向の下流において前記上昇経路と対向し、且つ前記第2経路形成部材が離脱されることで、前記装置本体からの離脱が可能となることを特徴とする。
本態様によれば、前記第2経路形成部材を離脱させることで、前記センサーユニットの着脱及びメンテナンスが可能となるので、前記下ガイド部の全てを取り外すことで前記センサーユニットのメンテナンスが可能となる構成に比べて、前記センサーユニットの着脱及びメンテナンスを行い易くすることができる。
【0013】
第7の態様に係る搬送装置は、第6の態様において、前記第2経路形成部材は、前記対向位置に位置する状態において前記センサーユニットに取り付けられることを特徴とする。
本態様によれば、前記センサーユニットに対する前記第2経路形成部材の位置精度を確保することができる。
【0014】
第8の態様に係る搬送装置は、第1の態様から第7の態様のいずれか1つにおいて、前記第2経路形成部材は、前記媒体の幅方向及び前記搬送方向の両方と交差する交差方向に前記上昇経路の空間を拡げる拡幅部と、前記上昇経路に沿って前記媒体を案内する案内部と、を備え、前記案内部は、前記上昇経路に向けて突出する突出位置と、前記第2経路形成部材に収納される収納位置とに変位可能であることを特徴とする。
本態様によれば、前記上昇経路において前記媒体が搬送される場合、前記案内部が前記突出位置に配置されることで前記上昇経路が形成される。
一方、例えば、前記媒体のスキュー補正などを行うために、前記上昇経路において前記媒体を撓ませる場合、前記案内部が前記収納位置に変位されることで、前記上昇経路の空間が前記拡幅部まで拡大される。これにより、前記媒体を撓ませる空間を確保できる。
このように、前記上昇経路の空間を用途によって使い分けることができる。
【0015】
第9の態様に係る印刷装置は、第1の態様から第8の態様のいずれか1つに記載の搬送装置と、前記搬送装置によって搬送される媒体に記録を行う記録部と、を備えることを特徴とする。
本態様によれば、第1の態様から第8の態様のいずれか1つに記載の作用及び効果を得ることができる。
【0016】
以下、本発明に係る搬送装置の一例としての搬送部40及び印刷装置の一例としてのプリンター10を具体的に説明する。
図1に示されるように、プリンター10は、媒体の一例としての用紙Pに対し、液体の一例であるインクQを吐出することで記録を行うインクジェット方式の装置として構成される。なお、各図において表すX-Y-Z座標系は直交座標系である。
X方向は、プリンター10の操作者から見た場合の装置幅方向であり、水平方向である。X方向のうち左に向かう方向を+X方向、右に向かう方向を-X方向とする。
Y方向は、用紙Pの搬送方向と交差する幅方向且つ装置奥行き方向であり、水平方向である。Y方向の手前に向かう方向を+Y方向、奥に向かう方向を-Y方向とする。
Z方向は、装置高さ方向の一例であり、鉛直方向である。Z方向の上方を+Z方向、下方を-Z方向とする。本実施形態において、「上方」は、Z方向における上方の成分を含む方向を意味する。「下方」は、Z方向における下方の成分を含む方向を意味する。
【0017】
プリンター10において、用紙Pは、破線で表す搬送経路Tを通って搬送される。なお、用紙Pが搬送される搬送方向は、搬送経路Tに沿った方向であるため、搬送経路Tの各部において異なる。
プリンター10は、装置本体12と、カバー部31と、後述する搬送部40と、ラインヘッド28とを備える。
装置本体12は、外郭となる筐体が含まれる。装置本体12のZ方向の中央より+Z方向には、記録された用紙Pが排出される空間を含む排出部13が形成される。また、装置本体12は、複数の用紙カセット14が設けられる。なお、装置本体12の-X方向の端部は、X方向に開口する開口部12Aが形成される。開口部12Aの開放状態において、後述する搬送経路Tは、露出される。装置本体12の一部は、一例として、後述する搬送部40の装置本体を兼ねる。
【0018】
図3に示されるように、カバー部31は、所定の厚さを有する板状に形成される。カバー部31は、装置本体12の-X方向の端部において、開口部12Aの-Y方向の端部に不図示のヒンジ部を介して設けられる。これにより、カバー部31は、Z方向に沿った不図示の軸回りに回転可能とされる。
カバー部31は、回転に伴って開口部12Aを開放又は閉止させることで、搬送経路Tを開閉可能とする。換言すると、カバー部31は、搬送経路Tを露出させる開放位置と、搬送経路Tを隠す閉止位置とに回転可能とされる。さらに、カバー部31は、一例として、後述する反転路形成部材33及び上ガイド部42が取り付けられる。
反転路形成部材33は、反転路T4(
図1)のZ方向の中央より上方を形成する上部33Aと、反転路T4のZ方向の中央より下方を内包する下部33Bとを有する。下部33Bは、上ガイド部42が取り付けられる。
【0019】
図1に示されるように、複数の用紙カセット14は、用紙Pが収納される。用紙カセット14に収納された用紙Pは、ピックローラー16及び搬送ローラー対17、18によって搬送経路Tに沿って搬送される。搬送経路Tは、不図示の外部装置から用紙Pが搬送される搬送路T1と、装置本体12に設けられた手差トレイ19から送込ローラー対26を介して用紙Pが搬送される搬送路T2とが合流する。
プリンター10におけるX方向の中央より-X方向の部位は、用紙Pを搬送する搬送装置の一例としての搬送部40として構成される。搬送部40の詳細については後述する。搬送部40の本体は、一例として、装置本体12と兼用される。
【0020】
搬送経路Tは、2つのプーリー21と、2つのプーリー21に巻き掛けられた搬送ベルト22と、用紙Pのスキュー補正などを行うスキューローラー対23と、用紙Pを搬送する複数の搬送ローラー対24と、用紙Pが搬送される経路を切り替える複数のフラップ25と、後述する媒体幅センサー30とが配置される。搬送経路Tにおける搬送ベルト22より下流には、排出部13に向かう搬送路T3と、用紙Pの表裏を反転させるための反転路T4と、が設けられる。
【0021】
図2及び
図4に示されるように、媒体幅センサー30は、用紙Pを検出可能なセンサーユニットの一例である。媒体幅センサー30は、装置本体12の不図示のフレームに着脱可能に設けられる。媒体幅センサー30が該フレームに対して着脱可能となる方法としては、スナップフィットなどの公知の着脱方法を利用可能である。なお、本実施形態では、検出精度を確保する観点から、不図示のねじを用いて着脱が行われる。
媒体幅センサー30は、一例として、後述する上昇経路R3に対して+X方向に配置され、上昇経路R3を移動中の用紙Pと間隔をあけて対向する。また、媒体幅センサー30は、後述する第2経路形成部材82より用紙Pの搬送方向の下流において上昇経路R3と対向し、且つ第2経路形成部材82が離脱されることで、装置本体12からの離脱が可能となる。
【0022】
図5に示されるように、媒体幅センサー30は、一例として、Y方向に延在する本体部32と、本体部32においてY方向に移動可能に設けられた検出部34と、検出部34をY方向に移動させるモーター36とを含んで構成される。そして、媒体幅センサー30は、検出部34がY方向に移動されながら用紙Pの有無を検出することで、用紙PのY方向の幅を検出可能である。検出方式としては、例えば、反射光の受光の有無により検出する光学方式がある。
本体部32の-X方向の端部には、側壁38が設けられる。側壁38の-X方向の側面39は、一例として、Y-Z面に沿った平面とされる。
【0023】
図2に示されるように、搬送経路Tにおいて、媒体幅センサー30に対する上流には湾曲経路Rが形成される。
湾曲経路Rは、1組の山部及び谷部を有する経路として形成される。具体的には、湾曲経路Rは、搬送ローラー対18から+X方向且つ+Z方向の位置に向けて湾曲する導入経路R1と、導入経路R1の+X方向の端部から+X方向且つ-Z方向の位置に向けて下降しながら湾曲する下降経路R2と、下降経路R2の+X方向の端部から+X方向且つ+Z方向に向けて上昇しながら湾曲する上昇経路R3とを有する。
【0024】
図1に示されるように、装置本体12は、インクQを収容するインクタンク27と、ラインヘッド28と、プリンター10の各部の動作を制御する制御部29とが設けられる。
ラインヘッド28は、用紙Pの搬送方向において媒体幅センサー30より下流に位置する。また、ラインヘッド28は、記録部の一例であり、搬送部40によって搬送される用紙Pに、インクタンク27から供給されたインクQを吐出することで記録する。
制御部29は、不図示のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びストレージを含んで構成され、プリンター10における用紙Pの搬送や、ラインヘッド28及び搬送部40を含む各部の動作を制御する。
【0025】
図4に示されるように、搬送部40は、一例として、装置本体12と、上ガイド部42と、下ガイド部62と、を備える。
装置本体12は、既述の通り、導入経路R1と、下降経路R2と、上昇経路R3とを有する搬送経路Tが形成される。
下降経路R2は、用紙Pが+Z方向の下方へ搬送される経路である。
上昇経路R3は、用紙Pの搬送方向において下降経路R2より下流に配置される。また、上昇経路R3は、用紙PがZ方向の上方へ搬送される経路である。
下降経路R2及び上昇経路R3は、後述する上ガイド部42と下ガイド部62とによって形成される。搬送経路Tに含まれる下降経路R2と上昇経路R3とは、Z方向における範囲ZAにおいてオーバーラップする。
【0026】
上ガイド部42は、一例として、カバー部31に取り付けられることで、カバー部31と共に、装置本体12に対して外側へ移動可能に設けられる。また、上ガイド部42は、装置本体12に収納された状態において、下降経路R2及び上昇経路R3のそれぞれのZ方向の上方に位置する。
具体的には、上ガイド部42は、カバー部31における-Z方向の端部に設けられる。また、上ガイド部42は、カバー部31が開口部12Aを閉止する、即ち、カバー部31が搬送経路Tを閉止する閉止状態において、後述する第2経路形成部材82と共に上昇経路R3を形成し、且つ後述する第1経路形成部材64と共に下降経路R2を形成する。なお、本実施形態において、上ガイド部42は、カバー部31に設けられた部材のうち下降経路R2及び上昇経路R3を形成する部位を指す。
【0027】
Y方向から見て、上ガイド部42の+Z方向の端部を通りX方向に沿う仮想線K1と、上ガイド部42の-Z方向の端部を通りX方向に沿う仮想線K2とで挟まれた領域を、上ガイド部42の移動領域Sと称する。
移動領域Sは、カバー部31が開閉される場合、上ガイド部42が移動する領域である。
図4では、移動領域Sが斜線の領域として示される。
【0028】
さらに、上ガイド部42は、一例として、ガイド部材44と、第2搬送ローラー52と、対向ローラー54と、被接触部56(
図3)とが設けられる。
ガイド部材44は、-Z方向の下端に位置する底壁46を有する。底壁46は、後述する第1経路形成部材64とZ方向に対向する凹部47と、凹部47より用紙Pの搬送方向の下流に位置する凸部48とを有する。
凹部47は、+Z方向に窪んだ部位である。また、凹部47は、+X方向且つ+Z方向の位置に向けて延びる斜面47Aと、斜面47Aより下流において+X方向且つ-Z方向の位置に向けて延びる斜面47Bとを有する。斜面47Bは、後述する上壁64AとZ方向に対向する。
凸部48は、-Z方向に突出した部位である。凸部48の頂部は、後述する第1搬送ローラー68とZ方向に対向する。
ここで、ガイド部材44と下ガイド部62は、所定の間隔dをあけて対向配置されることで、下降経路R2を形成する。
【0029】
第2搬送ローラー52は、一例として、凸部48の頂部に設けられる。第2搬送ローラー52は、Y方向に沿って延びる回転軸53を有する。回転軸53は、ガイド部材44に設けられた不図示のベアリングに回転可能に支持される。そして、第2搬送ローラー52は、後述する第1搬送ローラー68と共に用紙Pを挟み、回転されながら用紙Pを搬送する。
カバー部31が閉止状態となる場合、第1搬送ローラー68と第2搬送ローラー52とが、用紙Pを挟むニップ部N1を形成する。カバー部31が開放状態となる場合、ニップ部N1の形成が解除される。
【0030】
対向ローラー54は、一例として、凹部47の最も窪んだ部位に対して+X方向の位置に設けられる。対向ローラー54は、Y方向に沿って延びる回転軸55を有する。回転軸55は、ガイド部材44に設けられた不図示のベアリングに回転可能に支持される。そして、対向ローラー54は、後述する支持ローラー72とZ方向に対向し且つ支持ローラー72と共に用紙Pを挟み、回転されることで用紙Pを搬送する。
後述する第1経路形成部材64が第1位置に配置された場合、支持ローラー72と対向ローラー54とがニップ状態とされ、ニップ部N2が形成される。カバー部31が開放状態とされ、第1経路形成部材64が第2位置に配置された場合、支持ローラー72と対向ローラー54とのニップ状態が解除される。
【0031】
図3に示されるように、ガイド部材44の+Y方向の端部には、被接触部56が設けられる。なお、被接触部56は、カバー部31に含まれる。
被接触部56は、一例として、Y-Z面に沿った被接触面57を有する。
被接触面57は、カバー部31が閉止される閉動作中及び閉止状態において、後述する接触部78C(
図6)とX方向に接触する。被接触面57が接触部78Cと接触することで、カバー部31から被接触面57及び接触部78Cを介して、後述するレバー部78(
図6)へ+X方向の押付力が作用される。これにより、レバー部78が回転され、第1経路形成部材64(
図2)が第1位置に配置される。
【0032】
図4に示されるように、下ガイド部62は、装置本体12に設けられ、上ガイド部42に対してZ方向の下方に位置し、上ガイド部42と共に下降経路R2及び上昇経路R3を形成する。また、下ガイド部62は、一例として、下降経路R2を形成する第1経路形成部材64と、第1経路形成部材64を移動させる移動部76(
図6)と、用紙Pの搬送方向において第1経路形成部材64より下流に配置され上昇経路R3を形成する第2経路形成部材82とを有する。ここでの移動とは、第1経路形成部材64に力を付与することで移動させる構成に限られず、第1経路形成部材64の支持を解除することで移動させる構成や、第1経路形成部材64を支持した状態で移動することで第1経路形成部材64を移動させる構成も含まれる。
【0033】
第1経路形成部材64は、Y方向から見て、X方向と交差する傾斜状態となるときの位置である第1位置と、X方向に沿った状態となるときの位置である第2位置とに移動可能に設けられる。第1経路形成部材64は、第1位置では下降経路R2を形成すると共に、一部がZ方向において上ガイド部42の移動領域Sとオーバーラップし、第2位置ではZ方向において移動領域Sとオーバーラップしない。換言すると、第1経路形成部材64は、第2位置において移動領域Sから離れる。
【0034】
第1経路形成部材64は、一例として、第1経路形成部材64を第1位置及び第2位置の一方へ回転可能に支持する軸部66が設けられる。
軸部66は、下降経路R2と上昇経路R3との接続位置に対してZ方向の下方且つ移動領域Sより下方に位置する。軸部66に対する+Z方向には、第2搬送ローラー52が位置する。
第1経路形成部材64の中央部より-X方向の一部は、カバー部31の閉止状態、即ち第1位置において、上ガイド部42の移動領域S内に位置する。
【0035】
図5に示されるように、軸部66は、Y方向に沿って延びる円柱状に形成される。軸部66のY方向の両端部は、装置本体12(
図1)の不図示のフレームに設けられたベアリング67によって回転可能に支持される。軸部66のY方向の中央部には、第1搬送ローラー68が設けられる。
第1搬送ローラー68は、軸部66の回転に伴って回転される。また、第1搬送ローラー68は、用紙Pを搬送可能である。本実施形態では、一例として、第1搬送ローラー68がY方向に間隔をあけて2つ設けられる。
【0036】
第1経路形成部材64は、上壁64Aと、前壁64Bと、後壁64C(
図8)と、2つの側壁64Dと、2つのアーム部64Eとを含んで構成される。なお、ここでは、第1経路形成部材64が第2位置に配置された状態、即ち、X方向に沿った状態にあるものとして、各構成の配置を説明する。
上壁64Aは、Z方向に所定の厚さを有する四角形の板状に形成される。上壁64AのY方向の幅は、用紙PのY方向の幅より大きい。
前壁64Bは、上壁64Aにおける-X方向の端部から-Z方向に延びる。なお、上壁64Aと前壁64Bとの接続部分は、R面とされる。
後壁64Cは、上壁64Aにおける+X方向の端部から-Z方向に延びる。
2つの側壁64Dは、上壁64AのY方向の両端部から-Z方向に延びる。
【0037】
上壁64AにおけるX方向の中央より-X方向の部位には、上壁64Aの上面65から-Z方向に窪んだ収納部69が形成される。収納部69は、支持ローラー72がY方向を軸方向として回転可能に設けられる。
支持ローラー72は、円柱状に形成されている。支持ローラー72の外周面72Aの一部は、上面65より+Z方向に突出される。支持ローラー72は、不図示のばねによって+Z方向に押圧される。支持ローラー72は、搬送される用紙Pを支持すると共に下流へ搬送する。
アーム部64Eは、側壁64Dの+X方向の両端部から+X方向に延びる。また、アーム部64Eは、軸部66の外周面と接触し且つ摺動可能である。換言すると、第1経路形成部材64は、軸部66の周りに回転、即ち揺動可能である。
【0038】
図5、
図8及び
図9に示されるように、アーム部64Eは、後述する第2経路形成部材82の係合部96(
図8)と係合する被係合部71が設けられる。
被係合部71は、アーム部64EのY方向の内側部分から、Y方向の中央に向けて突出される。被係合部71は、一例として、第1経路形成部材64が第1位置に配置された状態において、Y方向から見て、断面形状が+X方向に開口するC字状に形成される。具体的には、被係合部71は、本体部71Aと、孔部71Bと、切欠部71Cと、カット面71D、71Eとを有する。
【0039】
本体部71Aは、Y方向に所定の厚さを有するC字形の板状に形成される。本体部71Aは、Y方向から見て、切欠部71Cとカット面71D、71Eを除いて、外形が円形に形成される。孔部71Bは、本体部71AをY方向に貫通する円形の孔である。切欠部71Cは、本体部71Aの周方向の一部を取り除くことで形成され、孔部71Bと連通する。
Y方向から見て、カット面71Dは、本体部71Aの中心に対して切欠部71Cとは反対に位置する。また、カット面71Dは、孔部71Bの径方向と直交する方向に沿った面である。なお、切欠部71Cの開口方向は、一例として、カット面71Dの法線方向と揃えられる。
【0040】
Y方向から見て、本体部71Aの円形部分の外周の直径に相当する幅をW1とする。
Y方向から見て、カット面71Eは、切欠部71Cの-X方向の端部に位置する。また、カット面71Eは、孔部71Bの径方向と直交する方向に沿った面であり、一例として、カット面71Dとほぼ平行に配置される。カット面71Dとカット面71Eとの距離に相当するX方向の幅をW2とする。
【0041】
ここで、アーム部64E及び被係合部71は、軸部66が孔部71Bに挿通されることで、軸部66の中心軸の周りに相対的に回転可能となるように、軸部66に連結される。
図8及び
図9では、軸部66と孔部71Bとの間に隙間が示されているが、Y方向にずれた位置では、軸部66の外周面と孔部71Bの壁面とが接触している。
第1経路形成部材64が第1位置に位置する状態において、切欠部71Cは、X方向成分を含む方向に開口される。カット面71Dは、Y-Z面に沿って位置する。
【0042】
被係合部71は、後述する第2経路形成部材82が退避位置にある場合(
図9)、後述する開口部96Cを通過可能となる。また、被係合部71は、第2経路形成部材82が対向位置にある場合(
図8)、開口部96Cの通過が不可となる。このように、被係合部71は、配置方向によって開口部96Cの通過の可、不可が異なる異方形状を有する。
【0043】
図6に示されるように、移動部76は、カバー部31(
図2)の開閉動作に伴って、第1経路形成部材64を既述の第1位置及び第2位置の一方に移動させる。具体的には、移動部76は、カバー部31が開動作される場合、第1経路形成部材64を第2位置へ移動させ、カバー部31が閉動作される場合、第1経路形成部材64を第1位置へ移動させる。なお、本実施形態において、移動部76は、第1経路形成部材64を第1位置において保持する保持部としても機能する。
【0044】
移動部76は、一例として、回転軸77と、レバー部78と、支持部79とを備える。
回転軸77は、第1経路形成部材64に対する-Z方向に位置する。また、回転軸77は、Y方向に沿って延びる円柱状に形成される。回転軸77のY方向の両端部は、装置本体12の不図示のフレームによって回転可能に支持される。
【0045】
レバー部78は、回転軸77の+Y方向の端部に固定される。また、レバー部78は、+Y方向の側壁64Dに対して+Y方向に配置される。そして、レバー部78は、カバー部31の被接触面57(
図3)と接触することで、カバー部31の開閉動作に連動して回転軸77を回転させる。レバー部78は、回転軸77から径方向に延びる取付部78Aと、取付部78Aの端部から径方向と交差する方向に延びる延在部78Bと、延在部78Bの先端に形成された接触部78Cとを有する。
【0046】
支持部79は、一例として、取付部78Aの位置とは異なる位置において回転軸77に固定される。また、支持部79は、第1経路形成部材64を第1位置において支持する。
レバー部78は、カバー部31が閉止状態の場合にカバー部31と接触され、カバー部31が開放状態の場合にカバー部31から離れる。具体的には、カバー部31が閉止状態の場合に、接触部78Cが被接触面57と接触される。レバー部78がカバー部31と接触する状態において、支持部79は第1経路形成部材64を支持する。
【0047】
図5に示されるように、第2経路形成部材82は、第1経路形成部材64に対して+X方向に位置する。第2経路形成部材82は、Y方向に長い長尺の部材である。第2経路形成部材82は、後述する対向位置に位置する状態において、媒体幅センサー30に取り付けられる。具体的には、第2経路形成部材82は、一例として、3つのねじ83を用いて側壁38に取り付けられる。
【0048】
第2経路形成部材82は、第1経路形成部材64において軸部66の周りに回転可能に装着される。そして、第2経路形成部材82は、第1経路形成部材64への装着状態において、上ガイド部42(
図4)とZ方向に対向するときの位置である対向位置と、Z方向において対向位置より上方の退避位置とに移動可能である。
上ガイド部42が装置本体12(
図2)に対して外側に位置する場合、換言すると、カバー部31が開放位置にある場合、第2経路形成部材82は、後述する退避位置において、第1経路形成部材64に対して着脱が可能となる。
【0049】
図7に示されるように、第2経路形成部材82は、一例として、基部84と、拡幅部102と、案内面104と、案内部106とを備える。
【0050】
図5に示されるように、基部84は、一例として、上壁85と、側壁86と、縦壁88と、窪み部92と、ローラー収納部94と、係合部96(
図8)とを含む。
上壁85は、基部84の+Z方向の端部を構成する。また、上壁85は、後述する拡幅部102及び案内部106が設けられる。上壁85の+Z方向の一部は、X-Y面に沿った上面85Aを有する。
【0051】
側壁86は、上壁85のY方向の両端部から-Z方向に延びる。
縦壁88は、側壁86の+X方向の端部からY方向の外側へ向けて延びる。また、縦壁88は、Y-Z面に沿った配置状態において、媒体幅センサー30の側壁38と接触され、ねじ83により側壁38に取り付けられる。
窪み部92は、上壁85にY方向に間隔をあけて配置され、上壁85から-Z方向に窪んだ部位である。
ローラー収納部94は、基部84の-X方向の端部におけるY方向の中央部が+X方向に窪んだ部位である。また、ローラー収納部94は、第1搬送ローラー68の一部を回転可能に収納する。
【0052】
図8及び
図9に示されるように、係合部96は、第1経路形成部材64の被係合部71と係合する。換言すると、第2経路形成部材82は、第1経路形成部材64における軸部66が取り付けられた部位に着脱可能に設けられる。
係合部96は、一例として、基部84の-X方向の端部におけるY方向の両端部に設けられる。係合部96は、基部84から-X方向に突出される。係合部96は、第2経路形成部材82が対向位置にある状態において、Y方向から見て、断面形状が-X方向に開口するC字状に形成される。具体的には、係合部96は、本体部96Aと、孔部96Bと、開口部96Cとを有する。
【0053】
本体部96Aは、開口部96Cを除いて、Y方向を軸方向とする円筒状に形成される。孔部96Bは、本体部96AをY方向に貫通する円形の孔である。
開口部96Cは、本体部96Aの周壁の一部を取り除くことで形成され、孔部96Bと連通する。また、開口部96Cは、軸部66の径方向に開口する。軸部66の延在方向から見た際の、開口部96Cの幅をW3(
図9)とする。幅W3は、幅W1より小さく且つ幅W2より大きい。
【0054】
係合部96は、本体部71Aの-Z方向の円弧部分と開口部96CとがZ方向に並ぶ配置状態において、本体部71Aから+Z方向に離脱可能となる。換言すると、本体部71Aのカット面71Dとカット面71Eとが、本体部96Aの離脱方向に沿う位置にある際に、本体部96Aが本体部71Aに対して離脱可能となる。さらに換言すれば、本体部71Aのカット面71Dとカット面71Eを結ぶ不図示の仮想線が、本体部96Aの離脱方向と直交する際に、本体部96Aが本体部71Aに対して離脱可能となる。本体部71Aの-Z方向の円弧部分と開口部96CとがZ方向に並ぶ配置状態(
図9)となるのは、第2経路形成部材82が退避位置にある場合である。
また、係合部96は、本体部71Aの-Z方向の円弧部分と開口部96CとがZ方向に並ばない配置状態(
図8)において、本体部71Aから+Z方向への離脱が規制される。本体部71Aの-Z方向の円弧部分と開口部96CとがZ方向に並ばない配置状態となるのは、第2経路形成部材82が対向位置にある場合である。
【0055】
図7に示されるように、拡幅部102は、上壁85の+X方向の端部に設けられ且つ上面85Aから+Z方向に突出された部位である。拡幅部102は、+Y方向から見て、-X方向に斜辺が位置する直角三角形状に形成される。つまり、拡幅部102は、斜面103を有する。
斜面103は、Y方向に延在される。また、斜面103は、上面85Aの+X方向の端から+X方向且つ+Z方向の位置に向けて、斜め上方に延びるように傾斜される。
これにより、拡幅部102は、Y方向及び用紙Pの搬送方向の両方と交差する交差方向の一例としての+X方向に、上昇経路R3の空間を拡げる。
【0056】
上面85A及び斜面103と、上昇経路R3とで囲まれる空間部Vは、後述する案内部106が窪み部92(
図5)に収納された場合、他の部材が配置されない。このため、空間部Vは、用紙Pを撓ませることに利用可能となる。なお、用紙Pを撓ませる場合、スキューローラー対23(
図1)の回転を停止し且つ用紙Pの先端をスキューローラー対23に押し当てた状態において、第1搬送ローラー68及び第2搬送ローラー52(
図2)による用紙Pの搬送を続ければよい。
案内面104は、上面85Aに対する-X方向に形成される。案内面104は、Y方向から見て円弧状に形成され、上昇経路R3の一部を形成する。
【0057】
図8に示されるように、窪み部92は、一例として、上面85Aの-X方向の端部と案内面104の+X方向の端部とに跨っている。
案内部106は、一例として、回転軸107と、可動部108と、シート部材109と、引張ばね111とを有する。案内部106は、上昇経路R3に向けて突出する突出位置と、窪み部92に収納される収納位置とに変位可能である。そして、案内部106は、上昇経路R3に沿って用紙Pを斜め上方に案内する。
【0058】
回転軸107は、複数の窪み部92をY方向に貫通する円柱状の部材である。回転軸107のY方向の両端部は、窪み部92の一部の側壁92Aに支持される。
可動部108は、所定の厚さを有する矩形状の板部108Aと、板部108Aの-Z方向の端部から-Z方向に突出する引掛部108B(
図7)とを有する。板部108Aの一部は、回転軸107に取り付けられる。
【0059】
シート部材109は、用紙Pの搬送方向に長い矩形状に形成される。また、シート部材109は、可撓性を有する。シート部材109として、例えば、ルミラー(登録商標)などの樹脂製のフィルム部材を用いることが可能である。シート部材109の-Z方向の端部は、板部108Aの+Z方向の端部に取り付けられる。
引張ばね111は、一端が第2経路形成部材82の不図示の爪部に引っ掛けられ、他端が引掛部108B(
図7)に引っ掛けられる。これにより、引張ばね111は、可動部108に対して、可動部108の一部が上面85A及び案内面104から+Z方向に突出する方向の弾性力を付与する。
【0060】
次に、搬送部40及びプリンター10の作用について説明する。
図2に示されるように、カバー部31による閉止状態において、カバー部31が開口部12Aを閉止している。第1経路形成部材64は、第1位置に位置する。第2経路形成部材82は、対向位置に位置する。この閉止状態において、カバー部31が開動作されたとする。
【0061】
図3、
図4、
図6及び
図10に示されるように、カバー部31の-X方向の移動に伴って、被接触部56がレバー部78から離れる。これにより、レバー部78が自由に回転可能な状態になると共に、支持部79が第1経路形成部材64を支持する支持力が弱まる。
ここで、第1経路形成部材64の-X方向の部位が自重の作用によって下がることで、支持部79が回転すると共にレバー部78も回転する。
第1経路形成部材64は、X方向に沿って第2位置に位置する。換言すると、第1経路形成部材64は、上ガイド部42の移動領域Sに対して-Z方向に退避する。
第1経路形成部材64が-Z方向に退避することで、上ガイド部42の移動領域S内に、上ガイド部42の移動を規制する部材が無くなる。これにより、カバー部31は、開口部12A及び搬送経路Tが開放される位置まで開動作が可能となる。
【0062】
図5、
図9及び
図11に示されるように、開放状態において、ねじ83が外される。そして、基部84がZ方向に沿って起立する方向に、第2経路形成部材82が回転される。
ここで、基部84がZ方向に起立する状態では、本体部71Aの-Z方向の円弧部分と開口部96CとがZ方向に並ぶため、係合部96を+Z方向に離脱させることができる。つまり、第2経路形成部材82を+Z方向に取り外すことができる。なお、第2経路形成部材82を取り付ける場合、逆の手順で実行される。
【0063】
図2、
図4及び
図6に示されるように、搬送経路Tが開放された状態からカバー部31が閉動作された場合、レバー部78が被接触部56と接触することで、レバー部78が逆方向に回転される。そして、レバー部78の逆方向の回転に伴って支持部79も逆方向に回転されることで、第1経路形成部材64は、逆方向に回転されると共に第1位置に位置する。このとき、ニップ部N1及びニップ部N2が形成される。
このようにして、カバー部31が搬送経路T及び開口部12Aを閉止する。
【0064】
以上、説明した通り、搬送部40によれば、上昇経路R3及び下降経路R2を有することで、直線状の搬送経路Tを有する構成に比べて、搬送経路Tの経路長を長くすることができる。
また、第1経路形成部材64が第2位置に移動されることで、上ガイド部42を装置本体12に対して外側へ移動可能となり、搬送経路Tが開放されるので、第2経路形成部材82のメンテナンスを行い易くすることができる。
さらに、上ガイド部42を装置本体12に対して外側へ移動させる場合、下ガイド部62において、第1経路形成部材64のみを退避させればよいので、下ガイド部62が退避する空間を最小限にすることができる。
【0065】
搬送部40によれば、第1経路形成部材64が軸部66を中心に回転されることで第1位置及び第2位置の一方へ移動されるので、簡単な構成で第1経路形成部材64を移動させることができる。また、軸部66が上ガイド部42の移動領域Sより下方に位置するので、軸部66が上ガイド部42と接触するのを防ぐことができる。
搬送部40によれば、第1経路形成部材64を取り外さなくても第2経路形成部材82を着脱できるので、第2経路形成部材82の交換やメンテナンスの作業を行い易くすることができる。また、第2経路形成部材82が第1経路形成部材64に着脱されるので、第2経路形成部材82が第1経路形成部材64とは異なる部位に着脱される構成に比べて、第1経路形成部材64に対する第2経路形成部材82の位置精度を確保し易くなる。
【0066】
搬送部40によれば、上ガイド部42が退避することで開放された空間を利用可能となるので、第2経路形成部材82の着脱の作業を行い易くすることができる。
搬送部40によれば、第2経路形成部材82が対向位置にある場合、第2経路形成部材82が第1経路形成部材64から離脱されなくなる。換言すると、用紙Pが搬送経路Tに沿って搬送される場合、第2経路形成部材82が第1経路形成部材64に対して位置ずれすることが抑制されるので、上昇経路R3における用紙Pの搬送状態を安定させることができる。
【0067】
搬送部40によれば、第2経路形成部材82を離脱させることで、媒体幅センサー30の着脱及びメンテナンスが可能となるので、下ガイド部62の全てを取り外すことで媒体幅センサー30のメンテナンスが可能となる構成に比べて、媒体幅センサー30の着脱及びメンテナンスを行い易くすることができる。
搬送部40によれば、媒体幅センサー30に対する第2経路形成部材82の位置精度を確保することができる。
【0068】
搬送部40によれば、上昇経路R3において用紙Pが搬送される場合、案内部106が突出位置に配置されることで上昇経路R3が形成される。
一方、例えば、用紙Pのスキュー補正などを行うために、上昇経路R3において用紙Pを撓ませる場合、案内部106が収納位置に変位されることで、上昇経路R3の空間が拡幅部102まで拡大される。これにより、用紙Pを撓ませる空間を確保できる。このように、上昇経路R3の空間を用途によって使い分けることができる。
プリンター10によれば、搬送部40の作用及び効果を得ることができる。
【0069】
本発明の実施形態に係る搬送部40及びプリンター10は、以上のべたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内での部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0070】
プリンター10において、第1経路形成部材64の全部が移動領域Sに位置してもよい。下降経路R2及び上昇経路R3がX方向に逆に配置される構成、即ち、搬送経路Tの一部が+Z方向に山型となる構成であってもよい。媒体は、用紙Pに限らず、フィルムであってもよい。記録部は、ラインヘッド28に限らず、用紙Pの幅方向に往復移動するシリアルヘッドを有する構成であってもよい。装置高さ方向は、鉛直方向と交差する方向であってもよい。
プリンター10において、第1搬送ローラー68及び第2搬送ローラー52が設けられていなくてもよい。また、支持ローラー72及び対向ローラー54が設けられていなくてもよい。
【0071】
プリンター10において、第2経路形成部材82は、第1経路形成部材64における軸部66が取り付けられた部位から離脱できないものであってもよい。また、第2経路形成部材82は、軸部66に対してスライド可能に装着されるものであってもよい。
係合部96は、開口部96Cが形成されていなくてもよい。例えば、係合部と被係合部とが軸部66においてY方向に係合可能な構成であってもよい。
媒体幅センサー30に代えて、用紙Pの有無を検知する用紙センサーを設けてもよい。
第2経路形成部材82は、対向位置に位置する状態において、媒体幅センサー30とは異なる部材に取り付けられてもよい。
第2経路形成部材82は、拡幅部102を有していなくてもよい。案内部106は、第2経路形成部材82において固定されてもよい。
プリンター10の装置本体12は、搬送部40の装置本体を兼ねていなくてもよい。つまり、プリンター10において、搬送部40が装置本体12とは別体のユニットとして構成されてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10…プリンター、12…装置本体、12A…開口部、13…排出部、
14…用紙カセット、16…ピックローラー、17…搬送ローラー対、
18…搬送ローラー対、19…手差トレイ、21…プーリー、22…搬送ベルト、
23…スキューローラー対、24…搬送ローラー対、25…フラップ、
26…送込ローラー対、27…インクタンク、28…ラインヘッド、29…制御部、
30…媒体幅センサー、31…カバー部、32…本体部、33…反転路形成部材、
33A…上部、33B…下部、34…検出部、36…モーター、38…側壁、39…側面、
40…搬送部、42…上ガイド部、44…ガイド部材、46…底壁、47…凹部、
47A…斜面、47B…斜面、48…凸部、52…第2搬送ローラー、53…回転軸、
54…対向ローラー、55…回転軸、56…被接触部、57…被接触面、
62…下ガイド部、64…第1経路形成部材、64A…上壁、64B…前壁、
64C…後壁、64D…側壁、64E…アーム部、65…上面、66…軸部、
67…ベアリング、68…第1搬送ローラー、69…収納部、71…被係合部、
71A…本体部、71B…孔部、71C…切欠部、71D…カット面、71E…カット面、
72…支持ローラー、72A…外周面、76…移動部、77…回転軸、78…レバー部、
78A…取付部、78B…延在部、78C…接触部、79…支持部、
82…第2経路形成部材、84…基部、85…上壁、85A…上面、86…側壁、
88…縦壁、92…窪み部、92A…側壁、94…ローラー収納部、96…係合部、
96A…本体部、96B…孔部、96C…開口部、102…拡幅部、103…斜面、
104…案内面、106…案内部、107…回転軸、108…可動部、108A…板部、
108B…引掛部、109…シート部材、K1…仮想線、K2…仮想線、N1…ニップ部、
N2…ニップ部、Q…インク、R…湾曲経路、R1…導入経路、R2…下降経路、
R3…上昇経路、T…搬送経路、T1…搬送路、T2…搬送路、T3…搬送路、
T4…反転路、W1…幅、W2…幅、W3…幅