(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】画像読取装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20241218BHJP
H04N 1/04 20060101ALI20241218BHJP
B65H 3/46 20060101ALI20241218BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20241218BHJP
B65H 7/02 20060101ALI20241218BHJP
G03B 27/62 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
H04N1/00 567Q
H04N1/00 L
H04N1/12 Z
B65H3/46 Z
B65H5/06 F
B65H7/02
G03B27/62
(21)【出願番号】P 2024012141
(22)【出願日】2024-01-30
(62)【分割の表示】P 2022202770の分割
【原出願日】2016-06-15
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【氏名又は名称】石井 博樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130535
【氏名又は名称】鈴木 明
(74)【代理人】
【識別番号】100183025
【氏名又は名称】大角 孝一
(72)【発明者】
【氏名】小柳 紀幸
(72)【発明者】
【氏名】奥野 徳次郎
(72)【発明者】
【氏名】有森 和彦
【審査官】鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-101905(JP,A)
【文献】特開2000-109238(JP,A)
【文献】特開2006-117385(JP,A)
【文献】特開2013-246383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
H04N 1/04
B65H 3/46
B65H 5/06
B65H 7/02
G03B 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を読み取る読取部と、
媒体給送経路に設けられ、媒体載置部に載置された媒体を前記読取部に向けて送る給送ローラーと、
前記給送ローラーと対向する位置に設けられ、前記給送ローラーとの間で媒体をニップして、分離する分離ローラーと、
前記給送ローラーよりも下流側に設けられる搬送ローラーと
、
前記給送ローラーを駆動する第1モーターと、
前記搬送ローラーを駆動する第2モーターと、
前記給送ローラー、前記搬送ローラー、前記第1モーター、及び前記第2モーターを内部に備える筐体と、
前記分離ローラーを回転させる複数の伝達ギアと、
を備えた画像読取装置であって、
前記筐体は、
前記筐体の下側部分を構成する下部ユニットと、
前記下部ユニットに対して開閉する上部ユニットと、
を備え、
前記第1モーターと前記第2モーターは、前記下部ユニットに設けられ、且つ、媒体搬送方向と交差する幅方向において、前記筐体の中央部に対して両側の位置にそれぞれ設けられ、
前記複数の伝達ギアは、
前記下部ユニットに設けられた下伝達ギアと、
前記上部ユニットに設けられ、かつ、前記下伝達ギアと係合する上伝達ギアと、
を含み、
前記第2モーターは、
前記上部ユニットが前記下部ユニットに対して開状態の場合、前記下伝達ギアと係合しない前記上伝達ギアに動力を出力せず、
前記上部ユニットが前記下部ユニットに対して閉状態の場合、前記下伝達ギアと係合する前記上伝達ギアに動力を出力する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の画像読取装置において、前記第2モーターはDCモーターであり、
前記第2モーターの駆動に応じて回転するスケールの回転量を検出するエンコーダーと、
前記エンコーダーによって検出された情報に基づいて、対応するモーターの駆動を制御する制御部と、を備える、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
請求項
1または請求項2に記載の画像読取装置において、
前記第1モーターのモーター本体から延設されるモーター出力軸に連結されて前記第1モーターの動力を伝達する第1伝達機構部を備え、
前記第1伝達機構部には、タイミングベルトが係わり合っている、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の画像読取装置において、
前記第2モーターは、前記幅方向に沿う方向を当該第2モーターのモーター出力軸の軸方向として配置され、前記第2モーターのモーター本体から延設される前記モーター出力軸に連結されてモーターの動力を伝達する第2伝達機構部が、前記第2モーターのモーター本体よりも前記幅方向の外側に位置するように取り付けられている、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像読取装置において、
前記第2伝達機構部には、タイミングベルトが係わり合っている、
ことを特徴とする画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を給送する媒体給送装置、および媒体給送装置を備える画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置の一例であるスキャナーにおいて、装置本体の内部には、各種駆動系の駆動源が設けられている。
例えば特許文献1には、複写機の光学系を移動させるための駆動源としてステッピングモーターが用いられている。
【0003】
ところで、スキャナーにおいては、媒体としての原稿を自動で送る媒体給送装置(ADF(Auto Document Feeder)とも呼ばれる)が設けられ、装置内に固定された画像読取部への複数枚の原稿の自動送り、及び読み込みを行える様に構成される場合がある(例えば、特許文献2)。
この様なスキャナーに設けられる媒体給送装置は、原稿トレイに載置された原稿を送り出す送りローラー、前記送りローラーによって送り出された原稿を前記画像読取部に送る搬送ローラー等を備えており、これらがモーター等の駆動源により駆動されている。
【0004】
ここで、装置内に固定された前記画像読取部に原稿を送る媒体給送装置の駆動源として、特許文献1のようなステッピングモーターを用いると、前記画像読取部におけるスキャン時に前記駆動源の負荷変動が起きた場合に原稿の搬送が乱れ、これにより読み取り画像が乱れる虞がある。このため、媒体給送装置の駆動源としてDCモーターが用いられているものがある(例えば、特許文献3及び特許文献4)。
DCモーターは、エンコーダーを設けることにより、モーターの負荷変動に対応してフィードバック制御を行うことができ、前記モーターの負荷変動による読み取り画像の乱れの抑制を容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-242234号公報
【文献】特開2014-60494号公報
【文献】特開平6-54132号公報
【文献】特開2006-10855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような媒体給送装置を備えたスキャナーにおいて、ユーザーのニーズとしては装置の一層の小型化があるが、比較的重量も大きさもあるモーター等の駆動源を配置するスペースには限りがあり、構成部材のレイアウトにも制限がある。
特に、小型のスキャナーにおいては、特許文献2に記載のスキャナーのように、前記スキャナーを構成する筐体が上部ユニット(カバー部11b)と下部ユニット(本体部11a)に分かれ、媒体給送装置のメンテナンス等のために、上部ユニットが下部ユニットに対して開閉可能に構成されている場合には、上部ユニットが開いた際における重量バランスも重要である。
【0007】
上記問題点に鑑み、本発明の目的は、安定的な設置が可能な媒体給送装置及びこれを備えた画像読取装置を提供することにある。また、媒体の安定した給送が可能な媒体給送装置或いは画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様に係る媒体給送装置は、媒体載置部に載置された媒体を送る給送ローラーと、前記給送ローラーよりも下流側に設けられる搬送ローラーと、少なくとも前記給送ローラーを駆動する第1の駆動源と、少なくとも前記搬送ローラーを駆動する第2の駆動源と、前記給送ローラー、前記搬送ローラー、前記第1の駆動源、及び前記第2の駆動源を内部に備える筐体と、を備え、前記筐体は、前記筐体の下側部分を構成する下部ユニットと、前記下部ユニットに対して開閉する上部ユニットと、を備え、前記第1の駆動源と前記第2の駆動源とが、媒体搬送方向と交差する幅方向において、前記下部ユニットの中央部に対して両側にそれぞれ設けられている、ことを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、前記媒体給送装置における駆動源として前記第1の駆動源と前記第2の駆動源の二つを用い、前記第1の駆動源と前記第2の駆動源とが、媒体搬送方向と交差する方向において、前記下部ユニットの中央部に対して両側にそれぞれ設けられているので、前記媒体給送装置の重量バランスをよくすることができる。
また、前記第1の駆動源と前記第2の駆動源の両方が前記下部ユニットに設けられているので、前記上部ユニットを前記下部ユニットに対して開いた場合でも、前記筐体の安定性を維持することができる。以上のことによって、前記媒体給送装置の安定的な設置が可能となる。
【0010】
本発明の第2の態様に係る媒体給送装置は、第1の態様において、前記給送ローラーとの間で前記媒体をニップして分離する分離ローラーと、前記搬送ローラーの下流側に設けられる下流搬送ローラーと、前記給送ローラーに対して進退可能に設けられ、前記給送ローラーに対して進出することにより前記媒体載置部に載置された媒体を前記給送ローラー側に押圧する押圧ユニットと、前記押圧ユニットの前記給送ローラーに対する進出を規制する規制状態と前記押圧ユニットの前記給送ローラーに対する進出を許容する許容状態とを切り換え可能な規制部と、を備え、前記分離ローラー、前記下流搬送ローラー、及び前記規制部が、前記第2の駆動源によって駆動される、ことを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、前記分離ローラー、前記下流搬送ローラー、及び前記規制部を前記搬送ローラーと共通の駆動源(第2の駆動源)を用いて駆動することができる。
【0012】
本発明の第3の態様に係る媒体給送装置は、第1の態様または第2の態様において、前記第1の駆動源及び前記第2の駆動源はDCモーターであり、前記第1の駆動源の駆動に応じて回転するスケールの回転量を検出する第1のエンコーダーと、前記第2の駆動源の駆動に応じて回転するスケールの回転量を検出する第2のエンコーダーと、前記第1のエンコーダー、または前記第2のエンコーダーによって検出された情報に基いて、対応する駆動源の駆動を制御する制御部と、を備える、ことを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、前記制御部によって、前記第1のエンコーダー、または前記第2のエンコーダーによって検出された情報に基いて、対応する駆動源の駆動を制御することにより、駆動対象の回転状況に対応して前記給送ローラーまたは前記搬送ローラーを駆動することができる。
したがって、前記第1の駆動源または前記第2の駆動源により媒体を送る際の搬送の乱れを抑制することができる。
【0014】
本発明の第4の態様に係る媒体給送装置は、第3の態様において、前記第1の駆動源は、前記幅方向に沿う方向を当該第1の駆動源のモーター出力軸の軸方向として配置され、前記第1の駆動源のモーター本体から延設される前記モーター出力軸に連結されてモーターの動力を伝達する第1伝達機構部が、前記モーター本体よりも前記幅方向の外側に位置するように取り付けられており、前記第1のエンコーダーは、前記第1の駆動源の前記モーター本体よりも前記幅方向の内側に設けられている、ことを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、前記第1の駆動源は、前記幅方向に沿う方向をモーター出力軸の軸方向として配置され、モーター本体から延設される前記モーター出力軸に連結されてモーターの動力を伝達する第1伝達機構部が、前記モーター本体よりも前記幅方向の外側に位置するように取り付けられており、前記第1のエンコーダーは、前記第1の駆動源の前記モーター本体よりも前記幅方向の内側に設けられているので、前記第1のエンコーダーを、前記幅方向において省スペースで配置することができる。以って、装置の幅方向のサイズをコンパクトにすることができる。
【0016】
本発明の第5の態様に係る媒体給送装置は、第3の態様または第4の態様において、前記第2の駆動源は、前記幅方向に沿う方向を当該第2の駆動源のモーター出力軸の軸方向として配置され、前記第2の駆動源のモーター本体から延設される前記第2の駆動源のモーター出力軸に連結されてモーターの動力を伝達する第2伝達機構部が、前記第2の駆動源のモーター本体よりも前記幅方向の外側に位置するように取り付けられており、前記搬送ローラーを備える回転軸と、前記回転軸の軸方向の一方側端部であって前記第2の駆動源の配置側に取り付けられ、前記第2伝達機構部を介して前記第2の駆動源からの動力を受けて前記回転軸を回転させる駆動歯車を備える一方側ホルダーと、を備え、前記回転軸の前記一方側端部には、断面が円形の一部をカットした形状を有するDカット部が形成され、前記一方側ホルダーには、前記Dカット部に対応した形状を成すとともに前記Dカット部が圧入されるDカット穴が形成され、前記第2のエンコーダーのスケールは、前記一方側ホルダー以外に設けられて前記回転軸と一体に回転する構成である、ことを特徴とする。
【0017】
前記搬送ローラーによる精度の高い搬送を実現するためには、前記第2のエンコーダーのスケールは、前記回転軸と一体に回転するように設けることが望ましい。
一方で、前記回転軸と、前記回転軸を回転させる駆動歯車を備える一方側ホルダーとの係合が、断面が円形の一部がカットされたDカット形状の前記一方側端部を、前記一方側ホルダーのDカット穴に圧入することによって成されている場合、圧入によって一方側ホルダーの駆動歯車が偏心してしまう虞がある。したがって、前記第2のエンコーダーのスケールを前記一方側ホルダーに設けると、前記駆動歯車とともに前記スケールも偏心してしまい、前記回転軸の回転を正確に検出できなくなる虞がある。
【0018】
本態様によれば、前記第2のエンコーダーのスケールは、前記一方側ホルダー以外に設けられて前記回転軸と一体に回転する構成であるので、前記偏心の影響を少なくして前記回転軸の回転を検出することができ、前記搬送ローラーの精度の高い制御が可能となる。
【0019】
本発明の第6の態様に係る媒体給送装置は、第5の態様において、前記第2のエンコーダーのスケールは、円形穴に前記回転軸が圧入されて当該回転軸に一体に取り付けられる丸圧入ホルダーに取り付けられている、ことを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、前記第2のエンコーダーのスケールは、円形穴に前記回転軸が圧入されて当該回転軸に一体に取り付けられる丸圧入ホルダーに取り付けられているので、前記回転軸がDカット穴に圧入される前記一方側ホルダーにおける前記偏心の影響を少なくして、前記第2のエンコーダーのスケールを前記回転軸と一体に回転するように取り付けることができる。
【0021】
本発明の第7の態様に係る媒体給送装置は、第6の態様において、前記丸圧入ホルダーは、前記回転軸の前記一方側端部に対し、前記回転軸の軸方向の他方側に設けられる、ことを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、前記第2のエンコーダーのスケールが取り付けられる前記丸圧入ホルダーが、前記回転軸の前記一方側端部に対し、前記回転軸の軸方向の他方側に設けられる、即ち前記一方側ホルダーと前記丸圧入ホルダーが、前記回転軸に対し両側に設けられるので、前記一方側ホルダーと前記丸圧入ホルダーの双方を前記回転軸に対し同じ側に設ける構成に比して、装置幅寸法を抑制できる。
【0023】
本発明の第8の態様に係る媒体給送装置は、第1の態様から第7の態様のいずれかにおいて、前記第1伝達機構部或いは前記第2伝達機構部においてタイミングベルトが用いられている、ことを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、前記第1の駆動源或いは前記第2の駆動源の振動の影響を少なくして、それぞれの駆動源からの動力を伝達することができる。
【0025】
本発明の第9の態様に係る画像読取装置は、媒体を読み取る読取部と、前記媒体を前記読取部に向けて送る、第1の態様から第8の態様のいずれかの前記媒体給送装置と、を備える、ことを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、媒体を読み取る読取部を備え、前記媒体を前記読取部に向けて送る媒体給送装置を備えた画像読取装置において、第1の態様から第8の態様のいずれかと同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】本発明に係るスキャナーにおける給送状態を示す斜視図。
【
図4】本発明に係るスキャナーにおける給送経路を示す側断面図。
【
図5】本発明に係るスキャナーの装置本体の背面図。
【
図6】装置本体における第2の駆動源の配置側の背面斜視図。
【
図7】装置本体における第1の駆動源の配置側の背面斜視図。
【
図9】装置本体における駆動系構成部材を示す斜視図。
【
図12】上部ユニットを下部ユニットに対して開状態とした場合の斜視図。
【
図18】装置本体における第2の駆動源の配置側において第17伝達ギアを外した 状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[実施例1]
まず、本発明の一実施例に係る画像読取装置の概略について説明する。本実施例の画像読取装置の一例として、媒体の一例としての原稿の表面及び裏面の少なくとも一面を読み取り可能なドキュメントスキャナー(以下、単にスキャナー1と称する)を例に挙げる。
図1は、本発明に係るスキャナーを示す斜視図である。
図2は、本発明に係るスキャナーにおける給送状態を示す斜視図である。
図3は、
図2に示すスキャナーの背面斜視図である。
図4は、本発明に係るスキャナーにおける給送経路を示す側断面図である。
図5は、本発明に係るスキャナーの装置本体の背面図である。
図6は、装置本体における第2の駆動源の配置側の背面斜視図である。
図7は、装置本体における第1の駆動源の配置側の背面斜視図である。
図8は、装置本体の側面図である。
【0029】
図9は、装置本体における駆動系構成部材を示す斜視図である。
図10は、給送ローラーの駆動機構を示す斜視図である。
図11は、分離ローラーの駆動機構を示す斜視図である。
図12は、上部ユニットを下部ユニットに対して開状態とした場合の斜視図である。
図13は、
図12におけるB部を別の角度から示す斜視図である。
図14は、規制部の動作について説明する図である。
図15は、第8伝達ギアの斜視図である。
図16は、第8伝達ギアの平面図である。
図17は、本発明に係るスキャナーのブロック図である。
【0030】
<スキャナーの概要>
本発明に係る画像読取装置としてのスキャナー1(
図1)は、装置外観の一部を構成する筐体7と、筐体7内に設けられる装置本体9を備えている。装置本体9は、本発明に係る「媒体給送装置」の一実施形態である媒体給送装置10と、媒体給送装置10によって送られる原稿の画像を読み取る画像読取部21(
図4)を備えている。
筐体7は、筐体7の下側部分を構成する下部ユニット2と、下部ユニット2に対して開閉する上部ユニット3によって構成されている。
【0031】
尚、各図において示すX-Y-Z座標系はX方向が装置幅方向であり用紙幅方向、Y方向が用紙搬送方向である。Z方向はY方向と交差する方向であって、概ね搬送される用紙の面と直交する方向を示している。また、+Y方向側を装置前面側とし、-Y方向側を装置背面側とする。また、装置前面側から見て右側を+X方向、左側を-X方向とする。また、+Z方向を装置上方(上部、上面等を含む)とし、-Z方向側を装置下方(下部、下面等を含む)とする。
また、スキャナー1において、媒体としての用紙Pは各図の+Y方向へ搬送される構成である。以下において、用紙Pが搬送されていく方向(+Y方向側)を「下流」といい、これと反対の方向(-Y方向側)を「上流」という。
【0032】
上部ユニット3は下部ユニット2に対して用紙搬送方向下流側(+Y側)を回動支点として回動可能に下部ユニット2に取り付けられている。上部ユニット3は、下部ユニット2に対して閉じて下部ユニット2とともに用紙Pの用紙搬送経路を構成する閉状態(
図2参照)と、下部ユニット2に対して装置前面側に回動して用紙Pの用紙搬送経路を露呈させて用紙Pの紙詰まりの処理等のメンテナンスを容易に行うことができる開状態(
図12参照)とを取り得る。
【0033】
上部ユニット3の上部には、上部ユニット3に対して開閉するペーパーサポート4が設けられている。ペーパーサポート4は、開状態(
図2を参照)において媒体の一例としての原稿(以下「用紙P」と称する場合がある)を支持する「媒体サポート」である。
【0034】
ペーパーサポート4は、
図1に示すように上部ユニット3の上部及び給送口6(
図2)を覆う非給送状態と、
図1の非給送状態から
図2に示すように装置背面側に回動し、給送口6を開放するとともにペーパーサポート4の裏面(用紙Pの媒体載置部11)に用紙Pをセット可能な給送状態とを取り得る。
【0035】
また、ペーパーサポート4の上流側には、補助ペーパーサポート15(
図2、
図3)が設けられている。補助ペーパーサポート15は、中空に形成されたペーパーサポート4に収納可能且つ引き出し可能に構成されている。補助ペーパーサポート15を引き出すことにより、搬送方向に沿う辺の長さが長い用紙Pであっても安定して支持することができる。
【0036】
下部ユニット2の装置前面側には用紙Pを排出する排出口8が設けられている。また、下部ユニット2は、排出口8から装置前面側に向けて引き出し可能な排紙トレイ5を備えている。排紙トレイ5は、下部ユニット2の底部に収納された状態(
図1参照)と、装置前面側に引き出された状態(
図2参照)とを取り得る。また、本実施形態において排紙トレイ5は複数のトレイ部材を連結して構成されており、排出される用紙Pの長さに応じて、排出口8からの引き出し長さを調整可能である。
【0037】
<スキャナーにおける給送経路について>
次に、
図4を参照して、スキャナー1における用紙搬送経路について説明する。
給送口6にセットされる用紙Pは、媒体載置部11に載置される。給送口6には、複数枚の用紙Pをセットすることができる。
尚、
図4において符号12は、用紙Pの幅方向(X軸方向)の両側縁をガイドする一対のエッジガイド(
図2も参照)である。エッジガイド12は、用紙Pのサイズに応じてX軸方向にスライド移動可能に設けられている。
【0038】
給送口6にセットされた用紙Pは、媒体給送装置10によって給送されて、後述する画像読取部21に向けて送られる。媒体給送装置10は、媒体載置部11に載置された用紙Pを送る給送ローラー13と、給送ローラー13よりも下流側に設けられる搬送ローラー20を備えている。尚、媒体給送装置10の駆動機構については後に詳述する。
給送ローラー13と対向する位置には、給送ローラー13との間で用紙Pをニップして分離する分離ローラー14が設けられている。
尚、給送ローラー13及び分離ローラー14外周面は、高摩擦材料(例えば、ゴムなどのエラストマー等)により構成されている。
【0039】
用紙Pは、下部ユニット2に対して回転可能に設けられた給送ローラー13によりピックアップされて下流側(+Y方向側)に給送される。具体的には、用紙Pにおいて媒体載置部11の載置面に対向する面に給送ローラー13が接触しつつ回転することにより、用紙Pを下流側に向けて給送する。したがって、スキャナー1において複数枚の用紙Pを給送口6にセットした場合には、下側の用紙から順に下流側に向けて給送される。
【0040】
図4において符号Gは、媒体載置部11に載置された用紙束を示している。用紙束Gは、給送開始前ではその先端がフラップ38により給送待機位置(
図4の位置)に保持され、給送ローラー13と分離ローラー14との間への入り込みが規制されている。フラップ38は、押圧ユニット39(
図8)に設けられている。
押圧ユニット39は、進出することにより媒体載置部11に載置された用紙Pを給送ローラー13側に押圧する。
【0041】
給送ローラー13の周囲には規制部40が設けられている。規制部40は、押圧ユニット39の給送ローラー13に対する進出を規制する規制状態と押圧ユニット39の給送ローラー13に対する進出を許容する許容状態とを切り換え可能に構成されている。
原稿束Gは、給送開始前では規制状態をとる規制部40によって下から支持され、押し上げられて、給送ローラー13から離間させられている。即ち給送ローラー13との接触が防止されている。規制部40の駆動機構については後に詳述する。
【0042】
原稿の給送が開始されると、規制部40が下方に退避して原稿束Gのうち最下位の原稿が給送ローラー13と接触し、また、フラップ38は揺動可能な状態(姿勢切り換え可能な状態)となる。従って給送ローラー13の回転により、最下位の原稿が下流側に送り出される。フラップ38は、下流側に送り出された原稿によって下流側に揺動し、媒体給送経路を開放する姿勢をとる。
【0043】
給送ローラー13の下流側には、搬送ローラー20が設けられている。搬送ローラー20は、下部ユニット2に設けられた搬送駆動ローラー23と、上部ユニット3に設けられ、搬送駆動ローラー23に対して従動回転する搬送従動ローラー24を備えて構成されている。
【0044】
給送ローラー13によって給送された用紙Pは、互いに対向する案内面によって構成される搬送経路30を搬送される。互いに対向する案内面のうち、用紙Pを下方から支持する面を下側案内面29a、下側案内面29aと対向する面を上側案内面29bとする。
尚、給送ローラー13及び搬送駆動ローラー23は、下側案内面29aに対して一部が突出するように配置されている。
【0045】
搬送ローラー20の下流側には、画像を読み取る「読取部」としての画像読取部21が設けられており、搬送ローラー20によって用紙Pが画像読取部21に搬送される。
画像読取部21は、上部ユニット3側に設けられた上部画像読取センサー25と、下部ユニット2側に設けられた下部画像読取センサー26とを備えている。本実施形態において、上部画像読取センサー25及び下部画像読取センサー26は一例として密着型イメージセンサーモジュール(CISM)として構成されている。
【0046】
画像読取部21において、用紙Pの表面及び裏面の少なくとも一方の面の画像を読み取られた後、画像読取部21の下流側に位置する排出ローラー22によって用紙Pが送られて、下部ユニット2の装置前面側に設けられた排出口8から排出される。排出ローラー22は、下部ユニット2に設けられた排出駆動ローラー27と、上部ユニット3に設けられ、排出駆動ローラー27に対して従動回転する排出従動ローラー28とによって構成されている。
排紙トレイ5を引き出した状態において、排出口8から排出された用紙Pが排紙トレイ5上に積載される。
【0047】
<媒体給送装置について>
次に、前述した媒体給送装置10について、更に詳しく説明する。
まず、媒体給送装置10(
図5、
図6)は、給送ローラー13を駆動する「第1の駆動源」としての第1モーター31と、搬送ローラー20を駆動する「第2の駆動源」としての第2モーター32と、の二つの駆動源を備えている。第1モーター31及び第2モーター32は、給送ローラー13及び搬送ローラー20と同じ筐体7内に設けられている。
【0048】
そして、第1モーター31と第2モーター32は、
図5に示すように、媒体搬送方向(Y軸方向)と交差する幅方向(X軸方向)において、下部ユニット2の中央部Aに対して両側に位置するようにそれぞれが設けられている。
このように、二つの駆動源(第1モーター31と第2モーター32)を、装置幅方向において、下部ユニットの中央部に対して両側にそれぞれ配設することにより、媒体給送装置10を備えるスキャナー1の重量バランスをよくすることができる。
また、第1モーター31と第2モーター32の両方が下部ユニット2に設けられていることにより、上部ユニット3を下部ユニット2に対して開いた場合でも、筐体7の安定を維持することができる。以上のことによって、スキャナー1の安定性のある設置が可能となる。
【0049】
続いて、媒体給送装置10の駆動機構について説明する。
まず、第1モーター31によって駆動される給送ローラー13の駆動機構について説明する。
本実施例において第1モーター31はDCモーターであり、
図10に示すように、モーター本体31aと、モーター本体31aから延設されるモーター出力軸31bを備えて構成されている。第1モーター31は、装置幅方向(X軸方向)を第1モーター31のモーター出力軸31bの軸方向として配置されている。
第1モーター31は、装置前面側から見て右側(+X側)に設けられる右サイドフレーム33(
図7)にモーター本体31aが固定されて取り付けられている。尚、装置前面側から見て左側(-X側)には、左サイドフレーム34(
図6)が設けられている。
【0050】
第1モーター31のモーター出力軸31bには、モーターの動力を給送ローラー13に伝達するための「第1伝達機構部」としての第1伝達ギア41が連結されており、第1伝達ギア41は、モーター本体31aよりも装置幅方向の外側(+X側)に位置するように取り付けられている。本実施例において、第1伝達ギア41は右サイドフレーム33の外側に位置している(
図7及び
図10を参照)。
【0051】
図7に示すように、第1モーター31の動力は、第1伝達ギア41からタイミングベルト49を介して第2伝達ギア42に伝達される。第2伝達ギア42は第3伝達ギア43と係合し、第3伝達ギア43は第4伝達ギア44と係合している。第4伝達ギア44の回転軸47は、右サイドフレーム33の内側(右サイドフレーム33と左サイドフレーム34の間)に延設されているとともに、右サイドフレーム33の内側に位置する-X側端部に第5伝達ギア45が設けられている(
図10)。
【0052】
図10に示す第5伝達ギア45は、給送ローラー13の回転軸48の+X側端部に設けられる第6伝達ギア46に係合しており、これらの輪列によって第1モーター31の動力が給送ローラー13に伝達される。
尚、本実施例において、第1モーター31のモーター出力軸31bに設けられる第1伝達ギア41から第2伝達ギア42に動力を伝達する際、タイミングベルト49を介することにより、第1モーター31の振動の影響を少なくして動力を伝達することができる。
【0053】
また、第1モーター31には、第1モーター31の駆動に応じて回転する第1スケール36と、第1スケール36の回転量を検出する第1のエンコーダー37と、が設けられている。スキャナー1は、制御部35(
図17)を備え、制御部35が、第1のエンコーダー37によって検出された情報に基いて第1モーター31の駆動を制御するように構成されている。第1のエンコーダー37によって検出された情報に基いて、第1モーター31の駆動を制御することにより、駆動対象の回転状況に対応して給送ローラー13を駆動することができ、用紙を送る際の搬送の乱れを抑制することができる。
【0054】
ここで、第1のエンコーダー37は、第1モーター31のモーター本体31aよりも装置幅方向の内側(-X側)に設けられている。本実施例において第1のエンコーダー37は、右サイドフレーム33の内側に設けられている。このことによって、第1のエンコーダー37を、装置幅方向において省スペースで配置することができるので、スキャナー1の幅方向のサイズをコンパクトにすることができる。
【0055】
次に、第2モーター32による駆動機構について説明する。本実施例において、第2モーター32は、搬送ローラー20を構成する搬送駆動ローラー23の駆動源である。
第2モーター32は、第1モーター31と同様にDCモーターであり、
図6に示すように、モーター本体32aと、モーター本体32aから延設されるモーター出力軸32bを備えて構成されている。第2モーター32は、装置幅方向(X軸方向)を第2モーター32のモーター出力軸32bの軸方向として配置されている。
第2モーター32は、装置前面側から見て左側(-X側)に設けられる左サイドフレーム34(
図11)にモーター本体32aが固定されて取り付けられている。
【0056】
第2モーター32のモーター出力軸32bには、モーターの動力を伝達するための「第2伝達機構部」としての第7伝達ギア51が連結されており、第7伝達ギア51は、モーター本体32aよりも装置幅方向の外側(-X側)に位置するように取り付けられている。本実施例において、第7伝達ギア51は左サイドフレーム34の外側に位置している。
【0057】
第2モーター32の動力は、モーター出力軸32bに設けられる第7伝達ギア51からタイミングベルト53を介して第8伝達ギア52に伝達されるように構成されている。第2モーター32においても、第7伝達ギア51から第8伝達ギア52に動力を伝達する際、タイミングベルト53を介しているので、第2モーター32の振動の影響を少なくして動力を伝達することができる。
【0058】
タイミングベルト53は、ベルトテンション機構80(
図18)により所定の張力(テンション)が与えられるように構成されている。ベルトテンション機構80は、回動するタイミングベルト53に従動回転可能な従動プーリー81と、従動プーリー81を支持するとともに、
図18における+C及び-Cで表す両矢印方向に移動可能なプーリーホルダー82と、タイミングベルト53にテンションを付与する付勢部材としての引っ張りバネ83と、を備えて構成されている。引っ張りバネ83により従動プーリー81が+C方向に引っ張られて、タイミングベルト53にテンションが付与されている。
【0059】
尚、左サイドフレーム34にはボス84が設けられており、このボス84にプーリーホルダー82に設けられた溝85が入り込むように設けられ、これによりプーリーホルダー82は、+C及び-Cで表す両矢印方向に案内される。また、プーリーホルダー82は、ねじ86によって取付位置が固定される様になっている。
【0060】
第8伝達ギア52は、第7伝達ギア51を介して第2モーター32からの動力を受けて回転軸54を回転させる駆動歯車である。そして、第8伝達ギア52は、搬送駆動ローラー23の回転軸54の一方側端部(-X側の端部54a)に取り付けられおり、第2モーター32の動力が搬送駆動ローラー23に伝達される様になっている。
言い換えると、第8伝達ギア52は、搬送駆動ローラー23の回転軸54の軸方向の一方側端部54aであって第2モーター32の配置側に取り付けられる、回転軸54の「一方側ホルダー」である。
【0061】
回転軸54の一方側端部54aには、断面が円形の一部をカットした形状を有するDカット部55(
図15)が形成され、「一方側ホルダー」としての第8伝達ギア52には、Dカット部55に対応した形状を成すとともにDカット部55が圧入されるDカット穴56(
図16)が形成されている。回転軸54のDカット部55が第8伝達ギア52のDカット穴56に圧入されて、回転軸54が第8伝達ギア52に取り付けられることにより、回転軸54の回転に伴う第8伝達ギア52の共回りを抑制または回避することができる。
尚、
図16において、Dカット穴56の内側に設けられるリブ74は、回転軸54のDカット部55を圧入した際に押し潰される潰しリブである。
【0062】
また、第2モーター32には、第2モーター32の駆動に応じて回転する第2スケール57と、第2スケール57の回転量を検出する第2のエンコーダー58(
図9)と、が設けられている。そして、制御部35(
図17)が第2のエンコーダー58によって検出された情報に基いて、第2モーター32の駆動を制御するように構成されている。第2のエンコーダー58によって検出された情報に基いて、第2モーター32の駆動を制御することにより、駆動対象の回転状況に対応して搬送駆動ローラー23を駆動することができ、用紙を送る際の搬送の乱れを抑制することができる。
【0063】
本実施例において、第2のエンコーダー58の第2スケール57は、第8伝達ギア52以外に設けられて回転軸54と一体に回転する構成である。
より具体的には、第2スケール57は、円形穴に円形の回転軸54の+X側の端部54b(
図7、
図11)が圧入されて当該回転軸に一体に取り付けられる丸圧入ホルダー59(
図7)に取り付けられている。すなわち、丸圧入ホルダー59は、Dカット部55が形成されている一方側端部54aに対して、回転軸54の軸方向の他方側の端部54bに設けられている。
【0064】
搬送駆動ローラー23(搬送ローラー20)による精度の高い搬送を実現するためには、第2のエンコーダー58の第2スケール57は、搬送駆動ローラー23の回転軸54と一体に回転するように設けることが望ましい。
一方で、回転軸54の、回転軸54を回転させる駆動歯車としての第8伝達ギア52への取り付けが、回転軸54の一方側端部54aに形成されたDカット部55を、第8伝達ギア52のDカット穴56に圧入することによって成されている場合、圧入によって第8伝達ギア52が偏心してしまう虞がある。したがって、第2スケール57を第8伝達ギア52に設けると第2スケール57も偏心してしまい、回転軸54の回転を正確に検出できなくなる虞がある。
【0065】
本実施例においては、第2スケール57が、Dカット部55が圧入される第8伝達ギア52以外の構成部材である丸圧入ホルダー59に設けられて回転軸54と一体に回転する構成であるので、前記偏心の影響を少なくして回転軸54の回転を検出することができ、搬送駆動ローラー23の精度の高い制御が可能となる。
また、円形穴に回転軸54が圧入されて回転軸54に一体に取り付けられる丸圧入ホルダー59に第2スケール57が取り付けられているので、回転軸54のDカット部55がDカット穴56に圧入されている第8伝達ギア52における前記偏心の影響を少なくして、第2スケール57を回転軸54と一体に回転するように取り付けることができる。
【0066】
また、第2のエンコーダー58の第2スケール57が取り付けられる丸圧入ホルダー59が、第8伝達ギア52のDカット穴56に圧入されるDカット部55を有する一方側端部54aに対し、回転軸54の軸方向の他方側の端部54bに設けられる、即ち第8伝達ギア52と丸圧入ホルダー59が、回転軸54に対し両側に設けられるので、第8伝達ギア52と丸圧入ホルダー59の双方を回転軸54に対し同じ側に設ける構成に比して、装置幅寸法を抑制できる。以って、スキャナー1のコンパクト化を図ることができる。
【0067】
また本実施例において、第2モーター32は、搬送駆動ローラー23の駆動源であるとともに、分離ローラー14と、搬送ローラー20の下流側に設けられる「下流搬送ローラー」としての排出ローラー22の駆動ローラー(排出駆動ローラー27)と、規制部40と、の駆動源としても用いられている。以下に、それぞれの駆動機構について説明する。
【0068】
まず、分離ローラー14の駆動機構について、
図11を参照して説明する。先に説明したように、第2モーター32の動力により搬送駆動ローラー23が回転駆動する。そして、搬送駆動ローラー23の回転軸54において、丸圧入ホルダー59の内側(-X側)には、第9伝達ギア60が設けられている。第9伝達ギア60は、第10伝達ギア61と係合している。更に、第10伝達ギア61は、複数のギアによって構成される輪列62に含まれる第11伝達ギア63に係合している。更に、輪列62の一のギアに連結される回転軸64、回転軸64に設けられる第12伝達ギア65、第12伝達ギア65と係合する第13伝達ギア66、第13伝達ギア66と係合する第14伝達ギア67が設けられている。第14伝達ギア67は、分離ローラー14の回転軸68に設けられている。
以上のように、第7伝達ギア51から第14伝達ギア67までの輪列によって、第2モーター32の動力が分離ローラー14に伝達される。
【0069】
尚、分離ローラー14は上部ユニット3に設けられているが、分離ローラー14の駆動機構において、第2モーター32から搬送駆動ローラー23の回転軸54に設けられる第9伝達ギア60までの構成部材は下部ユニット2に設けられており、第10伝達ギア61から分離ローラー14までの構成部材は上部ユニット3に設けられている。
下部ユニット2に対して上部ユニット3を開状態とした時(
図12)には、
図13に示すように、下部ユニット2側の第9伝達ギア60と上部ユニット3側の第10伝達ギア61とが分離されるようになっている。
【0070】
次に、排出ローラー22の駆動ローラーである排出駆動ローラー27の駆動機構について、
図9を参照して説明する。
排出駆動ローラー27の回転軸70において、装置幅方向において第2モーター32が位置する側である+X側の端部70aには、第16伝達ギア72が設けられている。第16伝達ギア72は、搬送駆動ローラー23の回転軸54を回転させる駆動歯車である第8伝達ギア52と係合する第15伝達ギア71と係合している。すなわち、第2モーター32の動力は、第7伝達ギア51、第8伝達ギア52、及び第15伝達ギア71を介して第16伝達ギア72に伝達され、排出駆動ローラー27の回転軸70が回転する様に構成されている。
【0071】
次に、媒体載置部11に載置された用紙を給送ローラー13側に押圧する押圧ユニット39の給送ローラー13に対する進出の規制状態または許容状態を切り換える規制部40の動作と駆動機構について、
図14を参照して説明する。
はじめに、規制部40の動作について説明する。押圧ユニット39は、給送ローラー13に対して進退可能に設けられているとともに、不図示の付勢手段によって給送ローラー13に対して進出する方向に付勢されている。
【0072】
また規制部40は揺動軸40aを中心に揺動可能に設けられているとともに、後述する駆動機構によって押圧ユニット39の給送ローラー13に対する進出を規制する規制状態(
図14の上図)と押圧ユニット39の給送ローラー13に対する進出を許容する許容状態(
図14の下図)と、を切り換え可能となっている。
そして規制部40は、規制状態では上述したようにセットされた原稿束Gを支持し、最下位の原稿の給送ローラー13への接触を防止する。
【0073】
一方、規制部40には係合部としての凹部40bが形成されており、規制部40の規制状態では、
図14の上図に示すようにフラップ38の先端38bが凹部40bに入り込んでいる。この状態では押圧ユニット39が、不図示の付勢手段の付勢力に抗し、フラップ38を介して規制部40により押し上げられ、給送ローラー13から離間した状態を維持している。この給送待機状態では、押圧ユニット39は原稿束Gを押圧していない。
【0074】
またこの給送待機状態では、フラップ38の先端38bが規制部40の凹部40bに入り込んでいる為、フラップ38は揺動軸38aを中心とした回動が規制され、媒体給送経路を遮蔽する遮蔽姿勢を維持している。即ち姿勢切り換えが行えない様に揺動動作が規制されている。
図14の上図は、押圧ユニット39が給送ローラー13から離間した状態、すなわち、規制部40が押圧ユニット39の給送ローラー13に対する進出を規制する規制状態を示している。
図14の下図はその逆に、押圧ユニット39が給送ローラー13側に進出した状態、すなわち、押圧ユニット39の給送ローラー13に対する進出を許容する許容状態を示している。
尚、フラップ38は、例えば揺動軸38aに設けられるコイルばね(不図示)により、媒体給送経路を遮蔽する遮蔽姿勢(
図14の上図)に向けて付勢されている。
【0075】
原稿の給送が開始されると、規制部40は規制状態から
図14の下図に示す許容状態へと切り換わり、最下位の原稿が給送ローラー13と接触する。そしてこれにより押圧ユニット39は、フラップ38を介して規制部40から上方に押し上げられる状態が解消される為、不図示の付勢手段の付勢力によって給送ローラー13側へと進出し、原稿束Gを給送ローラー13側に押圧する。
【0076】
そして給送ローラー13が回転すると、当該給送ローラー13と接触している最下位の原稿が下流側へと送られる。フラップ38は、この下流側に送られる原稿によって
図14の下図に示す様に媒体給送経路を開放する姿勢に切り換える。この様にフラップ38は、給送待機状態(
図14の上図)では原稿束Gの下流側への進行を止めるが、用紙給送時(
図14の下図)には原稿の給送を阻害することはない。
【0077】
続いて、規制部40の駆動機構について説明する。
搬送駆動ローラー23の回転軸54の駆動歯車である第8伝達ギア52には、第17伝達ギア73が係合している。第17伝達ギア73の回転軸75には、規制部40の駆動カム76(
図8、
図9)が設けられている。第17伝達ギア73にはワンウェイクラッチが設けられており、第8伝達ギア52が搬送駆動ローラー23を用紙搬送方向に回転させる様に回転する際、すなわち、
図8において第8伝達ギア52が時計回りに回転する際には、第17伝達ギア73の回転軸75は回転しないように構成されている。このとき、規制部40は許容状態(
図14の下図)になっている。
一方、第8伝達ギア52が搬送駆動ローラー23を用紙搬送方向に回転させる方向とは逆(
図8において反時計回り)に回転した場合に、第17伝達ギア73は時計回りに回転し、駆動カム76が規制部40を上方へ押し下げることにより、許容状態(
図14の下図)から規制部40が規制状態(
図14の上図)へと切り換わる。
【0078】
尚、搬送駆動ローラー23が用紙搬送方向に回転している状態においては、第17伝達ギア73に前述したワンウェイクラッチが設けられていることにより、第17伝達ギア73の回転軸75は回転しないが、第8伝達ギア52或いは搬送駆動ローラー23の回転による振動により、第17伝達ギア73の回転軸75ががたついて音が生じる場合がある。このがたつきを抑制するため、
図18に示すように、第17伝達ギア73の回転軸75と左サイドフレーム34に設けられたフック部77との間に引っ張りバネ78が取り付けられており、第17伝達ギア73の回転軸75は、引っ張りバネ78によって軸方向と交差する方向に付勢されている。
図18においては、回転軸75を見易くするため、第17伝達ギア73は図示を省略している。
【0079】
回転軸75のがたつきを抑える手段としては、例えば、回転軸75の軸受け部に、回転軸75を軸方向に付勢する板バネやブッシュ等を設けることも考えられるが、取り付けが比較的困難であり、また、回転軸75の回転に対する負荷が増加し易い。
しかし、引っ張りバネ78により回転軸75の軸方向と交差する方向に付勢する構成では、回転軸75のがたつきを抑えるための引っ張りバネ78の荷重も小さくて足り、回転軸75の回転に対する負荷も増加しにくく、取り付けも容易である点で有利である。回転軸75側における引っ張りバネ78の取付部には、回転軸75の回転時に、回転軸75と引っ張りバネ78との間の摩擦を低減させるためのグリース等を用いることができる。
【0080】
尚、本実施例において、第1モーター31は、給送ローラー13以外の他の駆動系の駆動源として兼用されていてもよい。第2モーター32も、搬送ローラー20、分離ローラー14、排出ローラー22、及び規制部40に加え、更に他の駆動系の駆動源として兼用されていてもよい。
【0081】
その他、本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0082】
1…スキャナー(画像読取装置)、2…下部ユニット、3…上部ユニット、
4…ペーパーサポート、5…排紙トレイ、6…給送口、7…筐体、
8…排出口、9…装置本体、10…媒体給送装置、11…媒体載置部、
12…エッジガイド、13…給送ローラー、14…分離ローラー、
15…補助ペーパーサポート、20…搬送ローラー、21…画像読取部(読取部)、
22…排出ローラー(下流搬送ローラー)、23…搬送駆動ローラー、
24…搬送従動ローラー、25…上部画像読取センサー、26…下部画像読取センサー、27…排出駆動ローラー、28…排出従動ローラー、
29a…下側案内面、29b…上側案内面、30…搬送経路、
31…第1モーター(第1の駆動源)、31a…モーター本体、
31b…モーター出力軸、32…第2モーター(第2の駆動源)、
32a…モーター本体、32b…モーター出力軸、33…右サイドフレーム、
34…左サイドフレーム、35…制御部、36…第1スケール、
37…第1のエンコーダー、38…フラップ、39…押圧ユニット、40…規制部、
41…第1伝達ギア(第1伝達機構部)、42…第2伝達ギア、
43…第3伝達ギア、44…第4伝達ギア、45…第5伝達ギア、46…第6伝達ギア、47…回転軸、48…回転軸、49…タイミングベルト、
51…第7伝達ギア、52…第8伝達ギア(第2伝達機構部)、
53…タイミングベルト、54…回転軸、55…Dカット部、56…Dカット穴、
57…第2スケール、58…第2のエンコーダー、
59…丸圧入ホルダー、60…第9伝達ギア、61…第10伝達ギア、
62…輪列、63…第11伝達ギア、64…回転軸、65…第12伝達ギア、
66…第13伝達ギア、67…第14伝達ギア、68…回転軸、
70…回転軸、71…第15伝達ギア、72…第16伝達ギア、
73…第17伝達ギア、74…リブ、75…回転軸、76…駆動カム、
77…フック部、78…引っ張りバネ、80…ベルトテンション機構、
81…従動プーリー、82…プーリーホルダー、83…引っ張りバネ、
84…ボス、85…溝、86…ねじ、P…用紙