(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】テストステロン及び/又はジヒドロテストステロン低下抑制用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/068 20060101AFI20241218BHJP
A61P 5/26 20060101ALI20241218BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20241218BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241218BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20241218BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20241218BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20241218BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20241218BHJP
A61K 35/64 20150101ALN20241218BHJP
【FI】
A61K36/068
A61P5/26
A61P13/08
A61P35/00
A61P3/04
A23L33/10
A23L2/00 F
A23L2/38 G
A61K35/64
(21)【出願番号】P 2021537371
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2020030140
(87)【国際公開番号】W WO2021025103
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2019145513
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020035899
(32)【優先日】2020-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316004055
【氏名又は名称】株式会社 沖縄UKAMI養蚕
(73)【特許権者】
【識別番号】592068200
【氏名又は名称】学校法人東京薬科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】仲宗根 豊一
(72)【発明者】
【氏名】岡松 滋美
(72)【発明者】
【氏名】宮岡 宏明
(72)【発明者】
【氏名】田村 和広
(72)【発明者】
【氏名】太田 浩一朗
(72)【発明者】
【氏名】吉江 幹浩
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104686208(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101849477(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109042067(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109644779(CN,A)
【文献】JIN, Y.Q. et al.,Cultivation of Eri-silkworm Cordyceps militaris and Determination of its Amino Acid Composition,Adv Mat Res,2013年,Vol. 796,pp. 21-24,ISSN 1022-6680
【文献】清川雪彦,多様なる世界の蚕糸行 --多化蚕から野蚕まで--,Discussion Paper Series A,一橋大学経済研究所,2004年,No. 457,pp. 1-17
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00
A61K 35/00
A23L 33/00
A23L 2/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物を含有する、テストステロン及び/又はジヒドロテストステロン低下抑制用
かつ前立腺肥大抑制用の組成物。
【請求項2】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物を含有する
、前立腺が
んの予防、及び/又は、治療用組成物。
【請求項3】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物を含有する、
テストステロン及び/又はジヒドロテストステロン低下抑制用かつ体重増加抑制用
の組成物。
【請求項4】
前記エリ蚕由来のサナギタケが、菌糸発生から90日以内に得られたものである、請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
経口用である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
飲食品、医薬部外品、又は、医薬品である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テストステロン及び/又はジヒドロテストステロン低下抑制用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
45~55歳頃の時期は、更年期と呼ばれ、身体の変化を感じやすい年代である。更年期の年代になると、体内の性ホルモンが減少することにより身体の変化を生じる。女性では、女性ホルモンとして知られるエストロゲン、男性では、男性ホルモンとして知られるテストステロンが関与することが知られている。
【0003】
このようなホルモンバランスの変化や、周囲環境が影響し、不快な状態・症状を生じさせ、人によっては、更年期障害に悩まされるほど重く生活に関わってくる。
【0004】
またホルモンバランスの変化は、必ずしも更年期の年代でなくとも、体質や、強いストレスを受ける環境等により、より若い年代においても更年期障害と同様の状態・症状が起こり得る。
【0005】
更年期障害やそれに関連する状態としては、筋力の低下、疲労感、睡眠の不良、関節痛、筋肉痛、抑うつ、月経異常、性欲の低下、及び、性的能力の低下などが知られている。また、ホルモンバランスの乱れが、前立腺肥大や、不妊に関連することも知られている。
【0006】
ホルモンバランスの変化に対して、種々の成分を用いて改善策が検討されており、例えば、特許文献1では、ツルニンジン属植物又はその抽出物により、血中テストステロン低下を抑制させることが試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ホルモンバランスの変化に対して有効に効果を発揮する成分の開発は未だに十分に報告されていない状況である。
【0009】
性ホルモンについては、これらの産生を促進させる技術はあるものの、血中での異化を抑え、血中での低下を抑制させることができなければ更年期障害やそれに関連する状態に対して有効にはなりにくい場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題に鑑み、鋭意検討を行った結果、テストステロンの低下だけではなく、男性ホルモンとしての強力な活性を示すジヒドロテストステロンの低下をも抑制させる成分として、エリ蚕由来のサナギタケ及びその抽出物を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記に掲げる組成物を提供する。
項1.
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物を含有する、テストステロン及び/又はジヒドロテストステロン低下抑制用組成物。
項2.
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物を含有する、更年期障害、前立腺肥大、前立腺がん、若しくは不妊の予防、及び/又は、治療用組成物。
項3.
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物を含有する、更年期状態、前立腺肥大状態、若しくは不妊状態の改善用食品組成物。
項4.
前記更年期障害又は状態が、筋力の低下、疲労感、睡眠の不良、関節痛、筋肉痛、抑うつ、月経異常、性欲の低下、及び、性的能力の低下からなる群より選択される少なくとも1種の状態を伴う、項2又は3に記載の組成物。
項5.
前記エリ蚕由来のサナギタケが、菌糸発生から90日以内に得られたものである、項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
項6.
経口用である、項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
項7.
飲食品、医薬部外品、又は、医薬品である、項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の効果】
【0012】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物を含有する組成物を適用することにより、テストステロン及び/又はジヒドロテストステロンの低下を抑制させることができる。また、更年期障害、前立腺肥大、若しくは不妊といったホルモンバランスの変化に関連する疾患又は状態を改善させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、試験例1-1における、血中テストステロン値の評価結果を示すグラフである。
【
図2】
図2は、試験例1-1における、血中ジヒドロテストステロン値の評価結果を示すグラフである。
【
図3】
図3は、試験例1-1における、血中テストステロン値の評価結果を示すグラフである。
【
図4】
図4は、試験例1-1における、血中ジヒドロテストステロン値の評価結果を示すグラフである。
【
図5】
図5は、試験例1-1における、試験後における前立腺重量を示すグラフである。
【
図6】
図6は、試験例1-1における、試験後における精嚢腺重量を示すグラフである。
【
図7】
図7は、試験例1-1における、試験の前後における体重の変化を示すグラフである。
【
図8】
図8は、試験例1-2における、血中テストステロン値の評価結果を示すグラフである。
【
図9】
図9は、試験例1-2における、血中ジヒドロテストステロン値の評価結果を示すグラフである。
【
図10】
図10は、試験例1-2における、試験の前後における前立腺重量を示すグラフである。
【
図11】
図11は、試験例1-2における、試験後における体重の変化を示すグラフである。
【
図12】
図12は、試験例2における、精巣細胞におけるテストステロン産生の評価結果を示すグラフである。
【
図13】
図13は、試験例2における、精巣細胞におけるテストステロン及びジヒドロテストステロン産生の評価結果を示すグラフである。
【
図14】
図14は、試験例3における、前立腺がん細胞の生存に対する評価結果を示すグラフである。
【
図15】
図15は、試験例3における、前立腺がん細胞の増殖に対する評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の組成物は、エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物を含有するものである。
【0015】
[エリ蚕由来のサナギタケ及びその抽出物]
エリ蚕「Samia cynthia ricini」は、通常用いられるカイコガ科に属する蚕系統とは異なり、ヤママユガ科に属する鱗翅目昆虫(絹糸昆虫)に含まれる。エリ蚕は、その一生において「卵(胚)」(産卵直後より孵化直前までの間)、「幼虫」(孵化直後から繭の形成終了直前(1齢期~5齢期に分けられる))、「蛹」(繭の形成終了直前から羽化する直前までの間)、ならびに「成虫(蛾)」(羽化直後より死亡までの間)の各状態を経るものであり、その一生にわたる形態のいずれをも含むものとする。
【0016】
エリ蚕は、卵より孵化した後の幼虫の状態では、亜熱帯植物を食べて発育する期間(齢)と、食べずに脱皮の準備をする期間(眠)を交互に繰り返す。蚕の幼虫において、孵化してから1回目の脱皮までを1齢期、1回目の脱皮から2回目の脱皮までを2齢期といい、通常、4回脱皮して5齢期が終齢である。その後1週間程度で蚕の幼虫は、絹糸を吐いて繭を形成し始め(この状態は「熟蚕」とも呼ばれる)、繭中で蛹化する。蛹の後、羽化して成虫となる。
【0017】
サナギタケ菌(Cordyceps militaris)は、冬虫夏草属菌(虫草菌とも言う)の一種であり、野生ではチョウ目の幼虫や蛹に菌が感染し、体内に菌糸体が蔓延し、その菌糸体から子実体(キノコ部)が発芽する。
【0018】
本明細書において、「エリ蚕由来のサナギタケ」は、サナギタケ菌が発芽するに際してエリ蚕が利用されているものであれば、特に限定されない。典型的には、エリ蚕に対して、サナギタケ菌を感染させて得られたサナギタケ(子実体)が例示される。また、エリ蚕を栄養成分の一種として含有する培地に対してサナギタケ菌を添加し、発芽するサナギタケ(子実体)であってもよい。
【0019】
一般に、得られたサナギタケは、感染する対象(宿主)の種類や、培養に用いられる栄養成分等によって、有する有効成分の種類や配合量が変わるものであるが、本発明では、特にエリ蚕を宿主又は栄養成分とすることによって、テストステロン及び/又はジヒドロテストステロンの産生を促進させ、ホルモンバランスの変化に関連する疾患又は状態を改善させること等が可能となることが見出された。
【0020】
エリ蚕としては、サナギタケ菌が感染し得る状態、又は、サナギタケ菌の栄養成分となり得る状態であれば、特に限定はされないが、好ましくは3齢期以降が好ましく、4齢期以降がより好ましく、5齢期以降が更に好ましく、蛹の状態であることが特に好ましい。
【0021】
エリ蚕の飼育地としては、特に限定はされないが、亜熱帯地域であることが好ましく、沖縄及び/又はインド・アッサム地方がより好ましい。
【0022】
エリ蚕に与える飼料としては、特に限定はされないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、キャッサバ(学名:Manihot esculenta)、及び、トウゴマ(学名:Ricinus communis)からなる群より選択される少なくとも1種を含有する飼料であることが好ましく、キャッサバ、及び/又は、トウゴマを主体とすることがより好ましく、キャッサバ、及び/又は、トウゴマの葉を主体とすることがより好ましい。
【0023】
また、用いられる「エリ蚕由来のサナギタケ」としては、子実体であることが好ましい。子実体は、発芽(菌糸発生とも言う)から少なくとも1週間経過したものが好ましく、10日経過したものがより好ましく、20日経過したものが更に好ましく、30日経過したものが特に好ましい。また、子実体は、発芽から少なくとも90日以内であることが好ましく、80日以内であることがより好ましく、70日以内であることが更に好ましく、60日以内であることが特に好ましい。
【0024】
また、用いられる「エリ蚕由来のサナギタケ」の形態は、本発明の効果が奏される限り、特に限定はされないが、例えば、粉末物又は抽出物であることが好ましい。
【0025】
「エリ蚕由来のサナギタケ」の粉末物は、公知の方法により製造され、限定はされないが、例えば、上記子実体を凍結乾燥させた後、粉砕して粉末状とすることにより得られる。
【0026】
「エリ蚕由来のサナギタケ」の抽出物は、公知の方法により製造され、特に限定はされない。抽出に用いられる溶媒としては、水及び/又は有機溶媒が挙げられ、メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトン、クロロホルム、ジオキサン、テトラヒドロフラン、イソプロピルアルコール、n-ヘキサン、酢酸エチルなどの有機溶媒を例示することができる。抽出溶媒としては、水(熱水含む)及び/又はエタノールが好ましい。抽出溶媒は、上記の溶媒や他の公知の溶媒を、1種または2種以上で、適宜組み合わせて用いることが可能である。
【0027】
得られた抽出液は、適宜、精製、凍結、乾燥などの処理を行って濃縮乾燥させ、固形の抽出物とすることが可能である。
【0028】
[用途]
本発明の組成物は、エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物を含有していることにより、テストステロン及び/又はジヒドロテストステロンの低下を抑制することが可能となる。
【0029】
テストステロンは、男性の場合は、主に精巣の間質細胞で分泌される。女性の場合は、卵巣や副腎から、男性の5~10%の分泌量にて分泌される。テストステロンは、5αリダクターゼにより活性型であるジヒドロテストステロンに変換され、各種の生理活性を発揮する。産生されたテストステロンやジヒドロテストステロンは、体内で異化され、これらの活性を失う。
【0030】
テストステロンが関与する生理活性には様々なものがあり、例えば、筋肉量と強度を保つ作用、疲労感を軽減する作用、睡眠を改善する作用、関節痛を改善する作用、筋肉痛を改善する作用、抑うつ作用、月経異常を改善する作用、性欲を改善する作用、性的能力を改善する作用、集中力を向上する作用、内臓脂肪を減らす作用、認知機能を改善する作用、骨密度を改善する作用等が知られている(堀江 重郎著、「男性更年期障害(LOH症候群)」日本内科学会雑誌、第102巻、第4号、2013年)。本発明では、テストステロンの低下を抑制することにより、テストステロンが関与する生理活性を生体に生じさせることが可能である。
【0031】
加齢や、ストレス等の周囲環境により、性ホルモンの低下を含むホルモンバランスの変化が生じてくる。45歳頃を過ぎると更年期と呼ばれる年代となり、いわゆる更年期障害や関連する状態に悩むことが増え、身体の変化を感じやすい年代(ゆらぎ世代とも呼ばれることがある)となる。低下が問題となる性ホルモンとして、女性ホルモンとして知られるエストロゲン、男性では、男性ホルモンとして知られるテストステロンが関与することが知られている。
【0032】
本明細書において、更年期障害とは、「更年期に現れる多種多様な症状のなかで、器質的変化に起因しない症状を更年期症状と呼び、これらの症状のなかで日常生活に支障を来す病態」を言い、更年期状態(更年期に関連する状態)とは、日常生活に支障を来すには至っていないものの、更年期症状の少なくとも一部を呈している、又は、更年期症状の少なくとも一部が気になる状態を言う。
【0033】
本明細書において、更年期症状とは、「更年期に現れる多種多様な症状のなかで、器質的変化に起因しない症状」と言うが、具体的には、熱感、のぼせ、心悸亢進、発汗、不眠などを中心とした自律神経失調症状と、不安感、抑うつ、恐怖感、疲労感などが中心の精神神経症状に大別され、筋力の低下や、関節痛、筋肉痛、月経異常、性欲低下、性的能力の低下を伴う場合も含まれる。
【0034】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物を含有する組成物は、性ホルモンの低下を抑制する効果を奏するため、更年期障害又は状態に効果的に作用し、筋力の低下、疲労感、睡眠の不良、関節痛、筋肉痛、抑うつ、月経異常、性欲の低下、及び、性的能力の低下からなる群より選択される少なくとも1種に有効である。
【0035】
ジヒドロテストステロンの生理活性については、過剰な産生亢進は毛髪や前立腺に対して不良な効果をもたらすことが知られつつあるが、ジヒドロテストステロンが低下してしまうと胎生期における男性としての成長や成人での生殖・性腺機能が阻害されるため、低下することも問題となる。
【0036】
また、近年の報告によると、テストステロンや、ジヒドロテストステロンは海馬においても産生されており、これらのホルモンが直接働いて神経シナプスやスパインを増やすことが見出されている(川戸 佳著、「脳海馬で合成される男性・女性ホルモンは記憶力を増強する」、Journal of Japanese Biochemical Society 88(3): 342-353 (2016))。加齢等によりテストステロンや、ジヒドロテストステロンが脳内で低下すると、スパイン数が減少し、記憶機能が低下し、認知症やアルツハイマー病に繋がる可能性が示唆されている。よって、テストステロン及び/又はジヒドロテストステロンの低下を抑制することにより、記憶機能、認知症、アルツハイマー病の改善、予防、又は、治療にも効果的である。
【0037】
また、後述の実施例において、エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物を含有する組成物は、継続的に取り込まれることにより、体重減少効果があることが見出された。よって、エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物は、抗肥満、脂肪増加の抑制等にも効果的に用いることが可能である。
【0038】
また、後述の実施例において、エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物を含有する組成物は、前立腺肥大を抑制することが見出された。よって、エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物は、前立腺肥大の予防、及び/又は、治療にも効果的に用いることが可能である。更に、前立腺肥大が抑制されると、排尿が正常に行われるようになるため、膀胱に蓄積される尿量が減り、頻尿状態が改善されることが期待される。よって、エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物は、排尿障害、及び/又は、頻尿の改善にも効果的に用いることが可能である。
【0039】
また、後述の実施例において、エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物を含有する組成物は、前立腺がん細胞の増殖を抑制することが見出された。よって、エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物は、前立腺がんの予防、及び/又は、治療にも効果的に用いることが可能である。
【0040】
また、データは示していないが、後述の実施例で用いた前立腺肥大モデルラットや、マウスに対して、エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物を含有する組成物を摂取させることにより、利尿作用が亢進することも見出されている。利尿作用が高められることにより、ナトリウムの排出を促し、むくみの改善に繋がることが期待される。よって、エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物は、むくみの改善にも効果的に用いることが可能である。
【0041】
本発明の組成物は、更に飲食品、機能性表示食品、特定保健用食品、医薬部外品、医薬品等に使用可能な有効成分や添加剤を適宜配合することができ、また、当該品目で使用される公知の製剤化方法により、適宜製剤化することができる。
【0042】
(製剤)
本発明において、本発明の組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤などの固形製剤;またはシロップ剤、注射剤などの液状製剤として経口(経口剤)または非経口的に投与することもできる。固形製剤には、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤;液状製剤には、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤などを用いることができる。また必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤などの添加物を用いることもできる。
【0043】
賦形剤としては、例えば、D-ソルビトール、マンニトール、キシリトールなどの糖アルコール、ブドウ糖、白糖、乳糖、果糖などの糖類、結晶セルロース、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、リン酸水素カルシウム、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、β-シクロデキストリン、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、タルク、カオリン、オリーブ油などが挙げられる。
【0044】
結合剤としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アクリル酸系高分子、ゼラチン、アラビアガム、プルラン、アルファー化デンプン、カンテン、トラガント、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどが挙げられる。
【0045】
崩壊剤としては、例えば、デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、部分アルファー化デンプンなどが挙げられる。
【0046】
溶剤としては、例えば、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油などが挙げられる。
【0047】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ポリオキシル、セタノール、タルク、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ジメチルポリシロキサン、ミツロウ、サラシミツロウなどが挙げられる。
【0048】
溶解補助剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0049】
懸濁化剤・乳化剤としては、例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリンなどの界面活性剤;例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの親水性高分子;例えばシェラックロウ、ミツロウ、カルナバロウ、鯨ロウ、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、環状ラノリン、ラノリンワックス、キャンデリラロウ、モクロウ、モンタンロウ、セラックロウ、ライスワックスなどワックス類などが挙げられる。
【0050】
等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトールなどが挙げられる。
【0051】
緩衝剤としては、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩などの緩衝液などが挙げられる。
【0052】
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸などが挙げられる。
【0053】
抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸などが挙げられる。
【0054】
本発明の組成物を固形製剤とする場合、当該分野で公知の製造方法を用いることができる。例えば、組成物を練合し、スクリーンを通過させることで成型する押出造粒物を、粉砕し、整粒する方法、前記組成物に練合水を加え、バーチカルグラニュレーターによって成型する攪拌造粒の後に、コーミルを用いて粉砕・篩過する方法が挙げられる。また、前記製剤組成物をローラーコンパクターで圧縮した後、ロールグラニュレーターで粉砕し篩過する方法が挙げられる。また、撹拌造粒の後に、流動層乾燥する方法が挙げられる。また、例えば、直打により製造する場合には、組成物を混合した後、直接、打錠機に投入して打錠すればよい。
【0055】
(飲食品)
本発明の組成物は、飲食品組成物としても使用することができ、食品または機能性食品に含有させて提供され得る。このような食品または機能性食品としては、米飯;そば、うどん、はるさめ、中華麺、即席麺、カップ麺を含む各種の麺類;清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料、スポーツ飲料等の飲料;カレールー、シチュー、各種スープ類;アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;飴、クッキー、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、その他の焼き菓子等の菓子類;かまぼこ、はんぺん、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、ドレッシング、味噌、醤油、たれ等の調味料;スープ、シチュー、サラダ、惣菜、ふりかけ、漬物;その他種々の形態の健康・栄養補助食品・機能性表示食品・特定保健用食品などが例示される。
【0056】
更に、本発明の組成物を含有するサプリメント(散剤、顆粒剤、ソフトカプセル、ハードカプセル、錠剤、チュアブル錠、速崩錠、シロップ、ゼリー剤、液剤等)を調製してもよい。
【0057】
また、ペットなどの動物用の餌に対して本発明の組成物を含有させることもできる。
【0058】
飲食品には、必要に応じて、添加物が加えられる。このような添加物としては、例えばブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、マンニット、デキストリン、クエン酸、クエン酸ソーダ、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L-アスコルビン酸、dl-α-トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンC、ビタミンB類、ビタミンE、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、界面活性剤、色素、香料、保存剤などが挙げられる。
【0059】
本発明の組成物は、各種症状や状態の改善・予防の表示が許可されている飲食品ために用いることができる。ここで、本発明において、症状や状態の改善・予防の表示が許可されている飲食品とは、国や公共団体が許可・指定している医薬品的な効能を有する飲食品であり、例えば、機能性表示食品、特定保健食品等の保健機能食品、特別用途食品等である。なお、状況や時代、各国の制度により名称や規程が変化するが、本質的に同じであるものは本発明に含まれる。
【0060】
本発明の組成物の配合量は、特に制限されず、適用の目的(対象疾患や症状の種類等)、適用対象部位、適用者の性別や年齢、飲食品、機能性表示食品、特定保健用食品、医薬部外品、又は医薬品の形態、これらの投与又は摂取方法や回数、嗜好等に応じて適宜設定される。
【0061】
本発明の組成物を使用する場合には、エリ蚕由来のサナギタケ又はその抽出物の1日当たりの摂取量は、乾燥固形分換算にて、例えば、0.005~4,000mg、好ましくは0.1~3,000mg、より好ましくは0.5~2,000mg、更に好ましくは1~1,000mg、特に好ましくは2~500mg、最も好ましくは3~300mgで使用することができる。
【0062】
本発明の組成物の摂取期間は、特に制限されず、適用の目的(対象疾患や症状の種類等)、適用対象部位、適用者の性別や年齢、飲食品、機能性表示食品、特定保健用食品、医薬部外品、又は医薬品の形態等に応じて適宜設定される。本発明の組成物の摂取期間は、例えば、1日以上とすることができ、7日以上が好ましく、12日以上がより好ましく、1ヶ月以上が更に好ましい。
【0063】
本発明の組成物は、製剤上、剤型については特に制限されない。例えば、サプリメント、栄養ドリンク等の機能性食品、グミ、飴、ガム、クラッカー、ビスケット等の菓子類、アイスクリーム、ゼリー、ようかん、パン、茶わん蒸し、カレー等の食品、乳飲料、清涼飲料水、スープ等の飲料、ドレッシング、ポン酢等の調味料は、飲食できる飲食品組成物として例示される。
【0064】
限定はされないが、本発明の組成物は、本発明の効果の観点から、機能性食品として摂取することが好ましく、機能性食品のなかでも機能性表示食品、栄養機能食品、栄養補助食品、特定保健用食品が挙げられるが、用途を明確に表示できる点で機能性表示食品が好ましい。
【0065】
[適用対象者]
本発明の組成物が適用される対象者は、特に制限されないが、仕事等の生活環境からストレスを受けやすい年代である30歳頃以上であってもよく、ホルモンバランスの変化等により身体の変化を感じやすい年代である中年齢者(45歳頃以上55歳未満)であってもよく、高年齢者(55歳以上)であってもよい。ホルモンバランスの変化等により身体の変化を感じやすい観点から、本発明の組成物は、中高年齢者(40歳頃以上、45歳頃以上、50歳頃以上、55歳頃以上)に対して適用されることが好ましい。
【0066】
[pH]
本発明の組成物のpHは、他の配合成分の種類及び含有量、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定され、生理学的又は薬学的に許容できる範囲であれば制限されないが、例えば、pH2~9とすることができる。本発明の効果を安定的に発揮する観点から、本発明の組成物のpHは、好ましくは2~9.5、より好ましくは3~9、更により好ましくは4~8.5、更により好ましくは4.5~8、更により好ましくは5.5~7.5とすることができる。
【0067】
[実施形態]
上述した実施の形態に関し、限定はされないが、本発明は以下の実施形態を開示する。
【0068】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物を含有する、テストステロン及び/又はジヒドロテストステロン低下抑制用組成物。
【0069】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物を含有する、更年期障害、前立腺肥大、前立腺がん、若しくは不妊の予防、及び/又は、治療用組成物。
【0070】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物を含有する、更年期状態、前立腺肥大状態、若しくは不妊状態の改善用食品組成物。
【0071】
前記更年期障害又は状態が、筋力の低下、疲労感、睡眠の不良、関節痛、筋肉痛、抑うつ、月経異常、性欲の低下、及び、性的能力の低下からなる群より選択される少なくとも1種の状態を伴う、上記の組成物。
【0072】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物を含有する、胎生期における性成長改善用組成物。
【0073】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物を含有する、記憶機能、認知症、又は、アルツハイマー病の改善用組成物。
【0074】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物を含有する、肥満改善用組成物。
【0075】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物を含有する、前立腺肥大、排尿障害、又は、頻尿改善用組成物。
【0076】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物を含有する、前立腺がんの予防、及び/又は、治療用組成物。
【0077】
前記エリ蚕が、キャッサバ、及び/又は、トウゴマを主体とする飼料で飼育されたものである、上記の組成物。
【0078】
前記エリ蚕が、キャッサバ、及び/又は、トウゴマの葉を主体とする飼料で飼育されたものである、上記の組成物。
【0079】
前記エリ蚕が、蛹の状態においてサナギタケ菌の感染を受けたものである、上記の組成物。
【0080】
前記エリ蚕由来のサナギタケが、菌糸発生から90日以内に得られたものである、上記の組成物。
【0081】
前記エリ蚕由来のサナギタケの抽出物が、水、及び/又は、有機溶媒によって抽出されたものである、上記の組成物。
【0082】
前記有機溶媒が、メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトン、クロロホルム、ジオキサン、テトラヒドロフラン、イソプロピルアルコール、n-ヘキサン、及び、酢酸エチルからなる群より選択される少なくとも1種である、上記の組成物。
【0083】
経口用である、上記の組成物。
【0084】
経口剤である、上記の組成物。
【0085】
錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、又は、シロップ剤である、上記の組成物。
【0086】
機能性食品、飲食品、医薬部外品、又は、医薬品である、上記の組成物。
【0087】
40歳以上、45歳以上、50歳以上、又は、55歳以上の方に用いられるための、上記の組成物。
【0088】
テストステロン及び/又はジヒドロテストステロン低下抑制における使用のための、エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物。
【0089】
更年期障害、前立腺肥大、前立腺がん、若しくは不妊の予防、及び/又は、治療における使用のための、エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物。
【0090】
更年期状態、前立腺肥大状態、若しくは不妊状態の改善における使用のための、エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物。
【0091】
前記更年期障害又は状態が、筋力の低下、疲労感、睡眠の不良、関節痛、筋肉痛、抑うつ、月経異常、性欲の低下、及び、性的能力の低下からなる群より選択される少なくとも1種の状態を伴う、上記のエリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物。
【0092】
胎生期における性成長改善における使用のための、エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物。
【0093】
記憶機能、認知症、又は、アルツハイマー病の改善における使用のための、エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物。
【0094】
肥満改善における使用のための、エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物。
【0095】
前立腺肥大、排尿障害、又は、頻尿改善における使用のための、エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物。
【0096】
前立腺がんの予防、及び/又は、治療における使用のための、エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物。
【0097】
前記エリ蚕が、キャッサバ、及び/又は、トウゴマを主体とする飼料で飼育されたものである、上記のエリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物。
【0098】
前記エリ蚕が、キャッサバ、及び/又は、トウゴマの葉を主体とする飼料で飼育されたものである、上記のエリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物。
【0099】
前記エリ蚕が、蛹の状態においてサナギタケ菌の感染を受けたものである、上記のエリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物。
【0100】
前記エリ蚕由来のサナギタケが、菌糸発生から90日以内に得られたものである、上記のエリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物。
【0101】
前記エリ蚕由来のサナギタケの抽出物が、水、及び/又は、有機溶媒によって抽出されたものである、上記のエリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物。
【0102】
前記有機溶媒が、メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトン、クロロホルム、ジオキサン、テトラヒドロフラン、イソプロピルアルコール、n-ヘキサン、及び、酢酸エチルからなる群より選択される少なくとも1種である、上記のエリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物。
【0103】
経口用である、上記のエリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物。
【0104】
経口剤である、上記のエリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物。
【0105】
錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、又は、シロップ剤である、上記のエリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物。
【0106】
機能性食品、飲食品、医薬部外品、又は、医薬品である、上記のエリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物。
【0107】
40歳以上、45歳以上、50歳以上、又は、55歳以上の方に用いられるための、上記のエリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物。
【0108】
上記使用が、非治療的使用である、上記のエリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物。
【0109】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物の、テストステロン及び/又はジヒドロテストステロン低下抑制用組成物を製造するための使用。
【0110】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物の、更年期障害、前立腺肥大、前立腺がん、若しくは不妊の予防、及び/又は、治療用組成物を製造するための使用。
【0111】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物の、更年期状態、前立腺肥大状態、若しくは不妊状態の改善用組成物を製造するための使用。
【0112】
前記更年期障害又は状態が、筋力の低下、疲労感、睡眠の不良、関節痛、筋肉痛、抑うつ、月経異常、性欲の低下、及び、性的能力の低下からなる群より選択される少なくとも1種の状態を伴う、上記の使用。
【0113】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物の、胎生期における性成長改善用組成物を製造するための使用。
【0114】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物の、記憶機能、認知症、又は、アルツハイマー病の改善用組成物を製造するための使用。
【0115】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物の、肥満改善用組成物を製造するための使用。
【0116】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物の、前立腺肥大、排尿障害、又は、頻尿改善用組成物を製造するための使用。
【0117】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物の、前立腺がんの予防、及び/又は、治療用組成物を製造するための使用。
【0118】
前記エリ蚕が、キャッサバ、及び/又は、トウゴマを主体とする飼料で飼育されたものである、上記の使用。
【0119】
前記エリ蚕が、キャッサバ、及び/又は、トウゴマの葉を主体とする飼料で飼育されたものである、上記の使用。
【0120】
前記エリ蚕が、蛹の状態においてサナギタケ菌の感染を受けたものである、上記の使用。
【0121】
前記エリ蚕由来のサナギタケが、菌糸発生から90日以内に得られたものである、上記の使用。
【0122】
前記エリ蚕由来のサナギタケの抽出物が、水、及び/又は、有機溶媒によって抽出されたものである、上記の使用。
【0123】
前記有機溶媒が、メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトン、クロロホルム、ジオキサン、テトラヒドロフラン、イソプロピルアルコール、n-ヘキサン、及び、酢酸エチルからなる群より選択される少なくとも1種である、上記の使用。
【0124】
経口用である、上記の使用。
【0125】
経口剤である、上記の使用。
【0126】
錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、又は、シロップ剤である、上記の使用。
【0127】
機能性食品、飲食品、医薬部外品、又は、医薬品である、上記の使用。
【0128】
40歳以上、45歳以上、50歳以上、又は、55歳以上の方に用いられるための、上記の使用。
【0129】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物をヒトに摂取させることを含む、テストステロン及び/又はジヒドロテストステロン低下抑制方法。
【0130】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物をヒトに摂取させることを含む、更年期障害、前立腺肥大、前立腺がん、若しくは不妊の予防、及び/又は、治療方法。
【0131】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物をヒトに摂取させることを含む、更年期状態、前立腺肥大状態、若しくは不妊状態の改善方法。
【0132】
前記更年期障害又は状態が、筋力の低下、疲労感、睡眠の不良、関節痛、筋肉痛、抑うつ、月経異常、性欲の低下、及び、性的能力の低下からなる群より選択される少なくとも1種の状態を伴う、上記の方法。
【0133】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物をヒトに摂取させることを含む、胎生期における性成長改善方法。
【0134】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物をヒトに摂取させることを含む、記憶機能、認知症、又は、アルツハイマー病の改善方法。
【0135】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物をヒトに摂取させることを含む、肥満改善方法。
【0136】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物をヒトに摂取させることを含む、前立腺肥大、排尿障害、又は、頻尿改善方法。
【0137】
エリ蚕由来のサナギタケ及び/又はその抽出物をヒトに摂取させることを含む、前立腺がんの予防、及び/又は、治療方法。
【0138】
前記エリ蚕が、キャッサバ、及び/又は、トウゴマを主体とする飼料で飼育されたものである、上記の方法。
【0139】
前記エリ蚕が、キャッサバ、及び/又は、トウゴマの葉を主体とする飼料で飼育されたものである、上記の方法。
【0140】
前記エリ蚕が、蛹の状態においてサナギタケ菌の感染を受けたものである、上記の方法。
【0141】
前記エリ蚕由来のサナギタケが、菌糸発生から90日以内に得られたものである、上記の方法。
【0142】
前記エリ蚕由来のサナギタケの抽出物が、水、及び/又は、有機溶媒によって抽出されたものである、上記の方法。
【0143】
前記有機溶媒が、メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトン、クロロホルム、ジオキサン、テトラヒドロフラン、イソプロピルアルコール、n-ヘキサン、及び、酢酸エチルからなる群より選択される少なくとも1種である、上記の方法。
【0144】
経口摂取されることを含む、上記の方法。
【0145】
経口剤として摂取されることを含む、上記の方法。
【0146】
錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、又は、シロップ剤として摂取されることを含む、上記の方法。
【0147】
機能性食品、飲食品、医薬部外品、又は、医薬品として摂取されることを含む、上記の方法。
【0148】
40歳以上、45歳以上、50歳以上、又は、55歳以上の方に用いられるための、上記の方法。
【実施例】
【0149】
次に、実施例や試験例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例や試験例に限定されるものではない。
【0150】
(エリ蚕由来サナギタケの調製)
エリ蚕(株式会社沖縄UKAMI養蚕社、沖縄県産、キャッサバ(学名:Manihot esculenta)、及び/又は、トウゴマ(学名:Ricinus communis)の葉を主体とした飼料により飼育)の蛹に、サナギタケ菌(Cordyceps militaris)を感染させ、50日間、25℃の暗室で培養した。得られた子実体を凍結し、乾燥した。
【0151】
(熱水抽出物の調製1)
得られた乾燥子実体7.7gに300mLの精製水を加え、100℃、24時間で加熱することにより熱水抽出物1を得た。熱水抽出物1を定性濾紙(No.2 ADVANTEC社製)で吸引濾過し回収した。濾過残渣に300mLの精製水を加え、100℃、24時間で加熱することにより熱水抽出物2を得た。熱水抽出物2を定性濾紙(No.2 ADVANTEC社製)で吸引濾過し回収した。熱水抽出物1、2を合わせ、これを溶媒濃縮装置(EYELA DPE-1150,東京理化器械社製)およびロータリーエバポレーター(EYELA N-1210BVF-W,東京理化器械社製)で濃縮した。濃縮した熱水抽出物を凍結乾燥器(EYELA FDU-1200,東京理化器械)で凍結乾燥することで熱水抽出物の粉末物が得られた。
得られた熱水抽出物の粉末物は、乾燥重量が5.8gであり、乾燥子実体7.7gに対して、収率は75%であった。
【0152】
(熱水抽出物の調製2)
乾燥子実体10.9gを粉砕し、得られた子実体粉末に400mLの精製水を加え、100℃、36時間で加熱することにより熱水抽出物1を得た。熱水抽出物1を3800/rpm、23℃、10分間、遠心分離し、上清を濾紙(No.5A 桐山製作所社製)で吸引濾過し回収した。濾過残渣に400mLの精製水を加え、100℃、24時間で加熱することにより熱水抽出物2を得た。熱水抽出物2を3800/rpm、23℃、10分間、遠心分離し、上清を濾紙(No.5A 桐山製作所社製)で吸引濾過し回収した。熱水抽出物1、2を合わせ、これを溶媒濃縮装置(EYELA DPE-1150,東京理化器械社製)およびロータリーエバポレーター(EYELA N-1210BVF-W,東京理化器械社製)で濃縮した。濃縮した熱水抽出物を凍結乾燥器(EYELA FDU-1200,東京理化器械社製)で凍結乾燥することで熱水抽出物の粉末物が得られた。
得られた熱水抽出物の粉末物は、乾燥重量が8.4gであり、乾燥子実体10.9gに対して、収率は77%であった。
【0153】
(有機溶媒抽出物及び熱水抽出物の調製)
得られた乾燥子実体4.8gに100mLのn-ヘキサンを加え、23℃、24時間静置することによりn-ヘキサン抽出物1を得た。上清を傾斜法にて回収後、抽出残渣に100mLのn-ヘキサンを加え、室温で24時間静置することによりn-ヘキサン抽出物2を得た。上清を傾斜法にて回収後、再び100mLのn-ヘキサンを加え、室温で24時間静置することによりn-ヘキサン抽出物3を得た。上清を傾斜法にて回収後n-ヘキサン抽出物1、2と合わせ、定性濾紙(No.2 ADVANTEC社製)で吸引濾過し、総n-ヘキサン抽出物を得た。抽出残渣に100mLのアセトンを加え、室温で24時間静置することによりアセトン抽出物1を得た。上清を傾斜法にて回収後、抽出残渣に100mLのアセトンを加え、室温で24時間静置することによりアセトン抽出物2を得た。上清を傾斜法にて回収後、再び100mLのアセトンを加え、室温で24時間静置することによりアセトン抽出物3を得た。上清を傾斜法にて回収後アセトン抽出物1、2と合わせ、定性濾紙(No.2 ADVANTEC社製)で吸引濾過し、総アセトン抽出物を得た。
【0154】
抽出残渣に50mLのクロロホルムと50mLのメタノールを加え、室温で24時間静置することによりクロロホルム/メタノール抽出物1を得た。上清を傾斜法にて回収後、抽出残渣に50mLのクロロホルムと50mLのメタノールを加え、室温で24時間静置することによりクロロホルム/メタノール抽出物2を得た。上清を傾斜法にて回収後、再び50mLのクロロホルムと50mLのメタノールを加え、室温で24時間静置することによりクロロホルム/メタノール抽出物3を得た。上清を傾斜法にて回収後クロロホルム/メタノール抽出物1、2と合わせ、定性濾紙(No.2 ADVANTEC社製)で吸引濾過し、総クロロホルム/メタノール抽出物を得た。抽出残渣に100mLの精製水を加え、100℃、24時間で加熱することにより熱水抽出物1を得た。上清を傾斜法にて回収後、抽出残渣に100mLの精製水を加え、100℃、24時間で加熱することにより熱水抽出物2を得た。上清を傾斜法にて回収後、再び100mLの精製水を加え、100℃、24時間で加熱することにより熱水抽出物3を得た。上清を傾斜法にて回収後、熱水抽出物1、2と合わせ、定性濾紙(No.2 ADVANTEC社製)で吸引濾過し、総熱水抽出物を得た。総n-ヘキサン抽出物、総アセトン抽出物、総クロロホルム/メタノール抽出物、総熱水抽出物をそれぞれ溶媒濃縮装置(EYELA DPE-1150,東京理化器械社製)およびロータリーエバポレーター(EYELA N-1210BVF-W,東京理化器械社製)で濃縮した。濃縮した抽出物を凍結乾燥器(EYELA FDU-1200,東京理化器械)で凍結乾燥することでn-ヘキサン抽出物、アセトン抽出物、クロロホルム/メタノール抽出物、熱水抽出物の粉末物がそれぞれ得られた。
【0155】
得られたn-ヘキサン抽出物の粉末物は、乾燥重量が85.0mgであり、乾燥子実体4.8gに対して、収率は1.8%であった。得られたアセトン抽出物の粉末物は、乾燥重量が63.6mgであり、乾燥子実体4.8gに対して、収率は1.3%であった。得られたクロロホルム/メタノール抽出物の粉末物は、乾燥重量が1.8gであり、乾燥子実体4.8gに対して、収率は38%であった。得られた熱水抽出物の粉末物は、乾燥重量が1.1gであり、乾燥子実体4.8gに対して、収率は23%であった。
【0156】
(試験例1-1.男性更年期モデルラットにおけるエリ蚕由来サナギタケの効果検定)
ヒト更年期モデルとして、去勢(精巣摘出)ラットを用いた。8週齢の雄ラットに対して、精巣摘出術を施した。この去勢ラットに、プロピオン酸テストステロン(TP:1mg/kg、隔日投与)と共に、エリ蚕由来サナギタケの熱水抽出物(RK:20mg/0.2mL蒸留水/ラット:投与開始時平均体重317g)を12日間連続経口投与し、その後、採血及び剖検を行った。コントロールとしては、0.2mL蒸留水を投与した動物を用いた。
【0157】
採血後、血中テストステロン値、及び、血中ジヒドロテストステロン値を、以下の測定キットにより評価した。
EIA キット(Cayman社製)により測定した血中テストステロン値の結果、及び、ELISA キット(Abnova社製)にて測定した血中ジヒドロテストステロン値の結果を、それぞれ
図1及び
図2に示す。再現性の確認のため、同試験内容にて再試験を行った結果を
図3及び
図4に示す。
【0158】
剖検後、前立腺重量、精嚢腺重量の変化を評価した。前立腺重量の変化を
図5に示し、精嚢腺重量の変化を
図6に示す。
【0159】
図1~
図4の結果が示す通り、血中テストステロンやその活性代謝物ジヒドロテストステロン値は、エリ蚕由来サナギタケの熱水抽出物の投与により上昇傾向を示した。なお、この評価系では、精巣を摘出しているため、ラットの体内でテストステロンを新たに生成することはできない。エリ蚕由来サナギタケの熱水抽出物を投与することにより、プロピオン酸テストステロンとして投与されたテストステロン、及び、体内で変化した活性体であるジヒドロテストステロンが異化(分解)により低下することなく体内で維持されていることが推測された。
【0160】
また、
図5~
図6の結果が示す通り、去勢により萎縮した前立腺重量及び精嚢腺重量は、プロピオン酸テストステロンの投与により増加した(TP群)。エリ蚕由来サナギタケの熱水抽出物の投与は、精嚢腺重量やサイズに影響しなかったが、前立腺重量を有意に低下させた(TP+RK群)。また、試験の前後における体重増加を
図7に示す。
図7に示す通り、去勢動物へのプロピオン酸テストステロン投与により、体重の増加傾向がみられ、エリ蚕由来サナギタケの投与群(RK(20、80mg))の動物の体重増加は、TP群の増加量よりも低く、体重が増えにくい傾向が認められた。また、エリ蚕由来サナギタケ単独投与群(RK(20mg))群でも対照群(Control)と比べて、低下傾向がみられた。なお、投与開始前における両群間での体重に差異は認められなかった。
【0161】
(試験例1-2.前立腺肥大モデルラットにおけるエリ蚕由来サナギタケの効果検定)
試験例1-1の更年期モデルにおいて、プロピオン酸テストステロン(TP)による前立腺重量の増加をエリ蚕由来サナギタケの熱水抽出物(RK)が抑制したことから、前立腺肥大に効果があると仮定した。そこでTPの過剰量を成熟ラットに長期間投与する前立腺肥大モデルラットを用いて、RKの長期投与の効果を検討した。
【0162】
8週齢の雄Wistarラットに対して、3mg/kgのTPと共に、RK(10mg/0.2mL蒸留水/ラット、又は、20mg/0.2mL蒸留水/ラット:投与開始時平均体重268g)を1ヶ月間連続経口投与し、その後、採血及び剖検を行った。コントロールとしては、0.2mL蒸留水を投与した動物を用いた。
【0163】
採血後、血中テストステロン値、及び、血中ジヒドロテストステロン値を、以下の測定キットにより評価した。
EIA キット(Cayman社製)により測定した血中テストステロン値の結果、及び、Elisa キット(Abnova社製)にて測定した血中ジヒドロテストステロン値の結果を、それぞれ
図8及び
図9に示す。
【0164】
剖検後、前立腺重量、体重の変化を評価した。前立腺重量の変化を
図10に示し、体重の増加量を
図11に示す。
【0165】
図8及び
図9の結果が示す通り、TP投与による血中テストステロンとジヒドロテストステロン値の増加に対して、RK投与は、さらにそのレベルを統計学的に有意に高めた(Tukey-Kramer多重比較検定)。
図10に示す通り、前立腺重量はTP投与で増加し、RKで減少傾向にあった。
図11に示す通り、RK(単独)長期投与により、体重増加量は、減少傾向であることが確認された。試験例1-2の長期投与試験においても、RKによる血中テストステロンとジヒドロテストステロン値の増加、前立腺重量の低下、及び、体重が増えにくい点は、試験例1-1と同様の傾向であることが確認された。
【0166】
なお、雄Wistarラットに対して、急性毒性試験(RK:1000mg/mL単回投与)も行ったが、2週間の経過観察中、外見的又は行動の異常、死亡例はなく、男性ホルモン値の変化も認められなかった。
【0167】
(試験例2.培養生殖器細胞の内分泌と機能における有効成分の影響)
成熟ラットにおいて、精巣から分散精巣細胞を調製した。得られた精巣細胞を、精巣間質細胞(ライディヒ細胞)培養用のDMEM/Ham’s F12メディウム(富士フィルム和光純薬社製)にて一昼夜培養した。エリ蚕由来サナギタケの熱水抽出物(1:500に希釈)又は冬虫夏草の生理活性物質のひとつとして知られているcordycepin(0.5mM)で、1時間前処置後、黄体化ホルモン(LH:10、100ng/mL)、又はジブチリルcAMP(0.1、0.5mM)にて刺激した。刺激の90分後に、メディウムを回収し、テストステロンを定量した。結果を
図12に示す。再現性の確認のため、同試験内容にて再試験を行った結果を
図13に示す。再試験では、3回の独立した実験を行い、テストステロンに加え、ジヒドロテストステロンの定量も行っている。
【0168】
図12及び
図13の結果に示す通り、エリ蚕由来サナギタケの熱水抽出物(図中RK)を処置すると0.5mMのジブチリルcAMP(
図12では、db-cAMP、
図13では、Dbと表示)群を除く全群で、テストステロン値及びジヒドロテストステロンは、高値を示した。Cordycepin処置では、そのような上昇作用は認められなかった。このように、エリ蚕由来サナギタケの熱水抽出物は、精巣細胞における男性ホルモンの産生を直接促進させる作用も有することが示された。
【0169】
(試験例3.前立腺がんの増殖に対する影響)
ヒト前立腺がん細胞株(PC3、LNCaP)の培養系に、エリ蚕由来サナギタケの熱水抽出物を添加して48時間培養し、WST-8アッセイ(同仁化学研究所社製)にて細胞増殖(細胞生存率)を評価した。また、正常細胞としてヒト子宮内膜腺上皮細胞株を比較対照細胞として用い、がん細胞と比較した。細胞増殖に対するエリ蚕由来サナギタケの熱水抽出物の効果の結果を、
図14と
図15に示す。
【0170】
図14の結果に示す通り、エリ蚕由来サナギタケの熱水抽出物は、テストステロン非感受性PC3並びにテストステロン感受性LNCaP細胞の増殖を濃度依存的に抑制した。PC3細胞においては、エリ蚕由来サナギタケの熱水抽出物(800μg/mL)で80%以上の細胞増殖抑制活性を示した。また、この抽出物は、正常細胞の増殖には、有意な影響を与えなかった。
図15では、テストステロン(10、100nM)刺激下の細胞増殖もサナギタケの熱水抽出物(200μg/mL)により抑制されることを示している。これらのことから、エリ蚕由来の子実体(サナギタケ)成分は、ヒト前立腺がん細胞の増殖を抑制する成分を含有していることが推察された。